(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847961
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】固体表面製品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/73 20060101AFI20210315BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20210315BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20210315BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20210315BHJP
C08G 18/22 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
C08G18/73
C08G18/75
C08G18/40
C08G18/08 038
C08G18/22
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-535254(P2018-535254)
(86)(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公表番号】特表2018-529833(P2018-529833A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】ES2016070667
(87)【国際公開番号】WO2017051053
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2019年4月4日
(31)【優先権主張番号】15382464.4
(32)【優先日】2015年9月25日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518100753
【氏名又は名称】アルセッソ、ダイナミクス、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】ARCESSO DYNAMICS SL
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】エルネスト、モントン、マルティン
【審査官】
三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−086391(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/146705(WO,A1)
【文献】
特開平04−202214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準UNE.EN ISO 19712−1:2013で定義された硬質固体表面製品を製造するための熱硬化性硬質固体表面材料において、少なくとも1つのポリオール、少なくとも1つの金属系触媒、少なくとも1つの脂肪族系または脂環式系のイソシアネートおよび非膨張状態に対して直径が2〜5倍に増加した膨張性ポリマーマイクロスフィアを含んでなる、液状組成物から形成した熱硬化性硬質固体表面材料であって、
前記液状組成物中の該ポリオールがポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネートに基づくポリオール、マクログリコールに基づくポリオールまたはそれらの組み合わせであり、該ポリオールが、前記液状組成物中において4重量%〜20重量%の間で存在し、
硬質、不透明またはやや半透明および固体表面を保持しながらも部分的に膨張性であることを特徴とする、熱硬化性硬質固体表面材料。
【請求項2】
前記液状組成物が、安定剤、起泡剤、難燃剤、加水分解防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、フィラー、顔料およびナノ粒子からなる群から選択される、少なくとも1つの添加剤をさらに含んでなる請求項1に記載の熱硬化性硬質固体表面材料。
【請求項3】
前記液状組成物中の前記脂肪族系イソシアネートが、1,6−ヘキサン・ジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(H12MDI)、イソフォロン・ジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン・ジイソシアネート(TMDI)、ペンタメチレン・ジイソシアネート(PDI)またはこれらの組み合わせである、請求項1または2に記載の熱硬化性硬質固体表面材料。
【請求項4】
前記ポリオールが、再生可能な資源を有するか、またはバイオマス由来である、請求項1に記載の熱硬化性硬質固体表面材料。
【請求項5】
前記液状組成物中の前記触媒が、ジラウリン酸ジブチル・スズ(DBTL)、ネオデカン酸亜鉛、カルボン酸ビスマスまたはこれらの組み合わせである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性硬質固体表面材料。
【請求項6】
前記液状組成物が微粒化ポリウレタンをさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性硬質固体表面材料。
【請求項7】
前記液状組成物中の前記脂肪族式系イソシアネートが、組成物中において7重量%〜75重量%の間で存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱硬化性硬質固体表面材料。
【請求項8】
前記液状組成物中の前記触媒が、組成物中において0.1重量%〜2重量%の間で存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性硬質固体表面材料。
【請求項9】
前記液状組成物中の前記少なくとも1つの添加剤が、全成分の100%を超過しない限り、組成物中において2重量%〜85重量%の間で存在する、請求項2〜8のいずれか一項に記載の熱硬化性硬質固体表面材料。
【請求項10】
前記液状組成物中の前記膨張性ポリマーマイクロスフィアが、組成物中において少なくとも0.1重量%で存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱硬化性硬質固体表面材料。
【請求項11】
前記液状組成物中の前記膨張性ポリマーマイクロスフィアに、炭化水素ガスが充填されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱硬化性硬質固体表面材料。
【請求項12】
前記液状組成物中の前記膨張性ポリマーマイクロスフィアが、組成物中において3重量%以上存在する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱硬化性硬質固体表面材料。
【請求項13】
外側部分でのシート厚が、2〜5mmであって、
密度が、1000g/cm3以上であり、
内側部分での密度が、200〜800g/cm3である、サンドイッチ構造を有する、請求項12に記載の熱硬化性固体表面材料によって形成された硬質固体表面製品。
【請求項14】
以下の工程を含んでなることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱硬化性硬質固体表面材料によって形成された硬質固体表面製品を得る方法:
(a)以下の工程を含んでなる液状組成物を得る工程:
(a1)少なくとも1つのポリオールを、少なくとも1つの触媒および膨張性ポリマーマイクロスフィアと混合する工程;
(a2)(a1)で得た生成物を、少なくとも1つの脂肪族系または脂環式系のイソシアネートと混合する工程;
(b)該液状組成物を型へ導入する工程;
(c)該型中で生成物を硬化する工程;
(d)一度固体となった該生成物を離型する工程。
【請求項15】
工程(a1)および(a2)における混合が、25〜50℃の間に行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記型が、25〜80℃の間の温度である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記工程(a1)において、さらに少なくとも1つの添加剤を混合する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体表面として知られている製品の分野に関する。特に、本発明は、熱硬化性であり硬質な固体表面材料の前駆液状組成物、当該液状組成物から形成された固形組成物、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体表面材料は、シート成形により加工することができるポリマーマトリックス、顔料およびフィラーによって形成された物質または成形品として定義されている。また、それは、ISO基準19712−1 UNE.EN:2013で定義されている(定義については3.1を参照)。
【0003】
これらの化合物の主な特性は次のとおりである:
−材料はシートまたは成形品の厚さの全体にわたって同一の組成を有している(それは均一な製品である)。
−シートおよび固体表面製品は元の状態を保持する単純な研磨によって補修可能である。
−固体表面製品は、視認できない組立接合によって連続的につなぎ合わせることができる。
【0004】
固体表面製品は、その低い製造原価および取扱い(切断、研磨、尖っていない端を得ること等)の容易さにより市場導入を達成した。組成物および製造方法の進歩で質感、色および鉱物効果に増々富化した製品を得て、天然石およびセラミックスなどの従来製品と競合可能となった。
【0005】
最も広範な用途の中でも、今日では、浴室用品および台所用品:トイレ、調理台等と関連するものを言及することができる。これに限られず、屋内のデザイン家具、店舗の窓、オフィス、ショップなどの他の分野や、同様にパネルまたはデザイン品などの他の用途でも使用される場合がある。
【0006】
現在、固体表面製品は2つの主要な樹脂タイプから構成されている。
−アクリル樹脂:この樹脂は化学的に熱可塑性であり、活性剤によって最終的に硬化する。60℃以上で加熱を行う。その後、硬化した材料をシートまたは形に切断して、既存の銘柄によっては片面または両面を研磨する。耐熱性を改善するために材料を160℃にして冷却する場合もある。
−その組成にメタクリル酸メチルを含有している不飽和ポリエステルのイソフタル酸系樹脂:アクリル酸変性ポリエステルの固体表面は型に射出して種々の固体の装飾デザイン形状を生産することができる。
【0007】
これら製品の主要成分は、導入したフィラー、主としてアルミナ三水和物であるが、異なるパーセンテージで「大理石チップ」(粉砕大理石)および石英を有する固体表面製品も見つけることができる。固体表面製品の製造で、より低い割合で使用される他のフィラーは、二酸化チタン、オニキス、炭酸カルシウムおよび二酸化チタンである。さらに、異なる比の湿潤剤および離型剤を混合物に添加される。
【0008】
典型的には、固体表面製品自体は、ペンキ、ニス、金属等いずれかでのコーティング(別の製品の別の層)で保護することを意図している場合、定義によればもはや固体表面製品とはならないので、UV光に対して非常に高い耐性を有していなければならない。
【0009】
しかしながら、化学製品への低い耐性、低い衝撃耐性および高い比重(例えば、Corianタイプの固体表面の密度は、1750kg/m
3である)などの他の重要な問題に加えてUV光に対する耐性が低い固体表面製品も存在する。
【0010】
本発明は、化学的に異なる樹脂から作製された既存のものを改善した固体表面製品を製造することを目的とする。特に、ポリウレタンに基づく処方物が開発された。ポリウレタン樹脂には、生産プロセス(サイクル回数の減少)および最終製品(重量の低減、改善された衝撃特性およびデザインのより高い用途性が可能であること)の点からみて重要な利点がある。加えて、本発明のポリウレタン樹脂はバイオマスから部分的に発生したものでもよく、これは環境上の点からみて重要な利点である。本明細書に記載された製品は、固体表面を保持しながらも、熱硬化性、硬質、不透明またはやや半透明、圧縮または部分的に膨張したポリウレタンである。したがって、軟質特性を有し、かつ光学的に透明な熱可塑性でエラストマーのポリマーである。
【0011】
固体表面製品の製造でのポリウレタン樹脂の使用は現在行われていないが、これらの樹脂は、生産プロセスおよび最終製品の点からみて重要な利点を有する。しかしながら、ポリウレタン処方物の使用は、ワークピースのいわゆる「黄色化」を防止するためにコーティング(ゲルコートまたはトップコート)を使用することが必要であるという相当な短所を示す。固体表面製品のポリウレタン処方物では、副反応を発生させて芳香族アミンの形成を引き起こす芳香族イソシアネートを使用する。UV照射は、これら芳香族アミンの酸化を引き起こし、キノンを形成する。キノンは黄色であり、ポリマー鎖の一部としてポリウレタンにこの色調をもたらす。時間とともに酸化プロセスは促進され、いわゆるポリウレタンの「黄色化」を引き起こす。従って、芳香族イソシアネートで作成したワークピースには、芳香族アミンの酸化を防止して、その結果ピースの「黄色化」を防止する、紫外線(UV)光に対する保護膜を付与する不透明なコーティングでの仕上げを行う必要がある。芳香族イソシアネートを処方物中で使用した場合にキノンが形成される。
【0012】
本発明の発明者らは、現在コーティング処方物、接着剤および透明ピースに専ら使用されている脂肪族イソシアネートで、変色しないポリウレタンを得ることが可能であり、かつ好適な方法によって、紫外線照射に対する保護のためのコーティング層を必要としない固体表面製品を製造することが可能であることを見出した。
【0013】
加えて、ポリウレタンに基づくピースの好適な生産収率を得るために、成分の反応は、可能な限り速く引き起こされる。物理的な面からのこの反応は液体から固体への遷移である。すなわち、密度に変化がある。物質が素早く変化することで収縮効果または体積の減少が起こり、これはピースの体積が大きければ大きいほど大きくなり、ポリウレタンに基づく固体ピースの表面に、分岐状のひけマークなどの視認可能な欠陥を必然的に伴い、このことは固体表面材料のUNE.EN ISO 19712−1:2013基準で示される製造ピースには容認し得ないことである。
【0014】
本発明者らは、膨張性ポリマーマイクロスフィアの添加がこの密度変化への妨げを 助長し、したがって反応速度を維持しつつ固体ピースの生産で生じる表面マークが回避されることを見出した。
【0015】
さらに、より大量のマイクロスフィアを添加した場合に、既に架橋したポリウレタン固体の構造は明確に異なる2つの密度を有することができることさえも示された:シート厚が2〜5mmである「固体表面」製品には典型的である外側部分では、圧縮された密度1100g/cm
3超、内側部分またはコアでは、低密度または中密度の200〜800g/cm
3。
この特徴によってピースはサンドイッチ型構造を有し、これはピースの最終重量をより低くしながらも、例えば、破損および衝撃に対して良好な耐性などの非常に改善した物理的特性をもたらす。
【発明の概要】
【0016】
第一の側面では、本発明は、脂肪族系または脂環式系のイソシアネート、再生可能な資源を有し得るポリオールかまたはバイオマス由来であり得るポリオールおよび膨張性ポリマーマイクロスフィアを含んでなる熱硬化性硬質固体表面材料の前駆液状組成物に関する。
【0017】
第二の側面では、本発明は、第一の側面の液状組成物から形成された固形組成物に関する。
【0018】
第三の側面では、本発明は、第一の側面の液状組成物を得るための方法に関する。
【0019】
第四の側面では、本発明は、第二の側面の固形組成物を得るための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(1Aおよび1B)は、シート厚が2〜5mmである「固体表面」製品には典型的である外側部分では、圧縮された密度1100g/cm
3超であり、内側部分またはコアでは、低密度または中密度の200〜800g/cm
3である、本発明に記載の2サンドイッチ型構造を示す図である。
【
図2】
図2は、(A)典型的な分岐状ひけマークを有する1200g/cm
3超の単一密度の圧縮ピースおよび(B)同じタイプのピースの別の画像であるが、生産プロセスで炭化水素と膨張性ポリマーマイクロスフィアを取り込んだ後のこれらのひけマークがないものを示す図である。
【0021】
第一の側面では、本発明は、場合により少なくとも1つの再生可能な資源からのポリオールまたはバイオマス由来のポリオール、少なくとも1つの金属系触媒、少なくとも1つの脂環式系または脂肪族系のイソシアネートおよび好ましくは炭化水素系ガスで充填した膨張性ポリマーマイクロスフィアを含んでなる熱硬化性硬質固体表面材料の前駆液状組成物に関する。
【0022】
特別の実施態様では、上記の硬質固体表面材料の前駆液状組成物は、当該少なくとも1つのポリオール、当該少なくとも1つの触媒、当該ポリマーマイクロスフィアに加えて、ただ1つの脂肪族系または脂環式系のイソシアネートを含んでなることを特徴とする。
【0023】
熱硬化性ポリウレタンは、熱、光、光化学剤および化学薬品の影響で非可逆的に変化し、三次元共有結合を形成することによって可溶性および水溶性の物質から別の不溶性・非水溶性物質となるものである一方、熱可塑性ポリウレタンは、直鎖状エラストマー系ポリマーであり、その鎖は熱によって伸長し、より高いかまたはより低い粘度で液相に達し、温度が降下した場合に可逆的であるものである。
【0024】
ポリウレタン樹脂は、一般的に、幾つかの種類のポリオール(ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート等に基づく)の一群と、それらに対応する、通常はアミン系活性剤である活性剤および最終製品の用途によっては他の添加剤によって形成される。ほとんど全ての種類の添加剤を添加することが可能である。これらはすべて通常単一の成分に集めて一般には成分Aと呼ばれる。この成分Aの成分B(イソシアネート)との反応でポリウレタンと呼ばれるポリマーが生産される。
【0025】
ポリウレタンは重付加反応によって重合する。これらすべてのポリマーの共通の構造的要素はウレタン基(−NH−CO−O)である。ポリウレタンの特性は、それらの構成物質の分子構造および組成を適切に設計することで調整することができる。
【0026】
最終生産物の特性によってポリウレタン処方物には、種々のポリオール、通常はポリエステルおよびポリエーテル、異なる種類のイソシアネートおよび種々の添加剤が含まれる。
【0027】
イソシアネート成分
ポリウレタンを形成するためには、分子中に2つ以上のNCO基を有するイソシアネートが必要である。芳香族、脂肪族および脂環式のジイソシアネートおよびポリイソシアネートがポリウレタンを形成するための化学反応に好適である。芳香族ポリウレタンが最も一般に使用され、その理由としては、それらのウレタン基が脂肪族の場合より反応性であって、かつはるかに安価であるためである。
【0028】
本発明は脂肪族か脂環式のイソシアネートにのみ関係する。特に、そのような脂環式系または脂肪族系のイソシアネートは、1,6−ヘキサン・ジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(H12MDI)、イソフォロン・ジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン・ジイソシアネート(TMDI)、ペンタメチレン・ジイソシアネート(PDI)またはこれらの組み合わせである。
【0029】
ポリオール成分
分子中にいくつかのヒドロキシル官能基を有する化合物はイソシアネートと共にポリウレタン処方物の主成分である。エチレングリコール、グリセロール、ブタンジオール、トリメチロールプロパンなどの低分子量化合物は橋架剤または鎖延長剤の役割を果たす。より高い分子量(平均分子量が最大8000)のポリオールは、ポリウレタン形成のベースとしての役割を果たすものである。これらの高分子量ポリオールは、主として2種類の生成物であるポリエーテルとポリエステルで構成されている。加えて、そしてより最近では、ポリカーボネートに基づくポリオールを言及することもできる。後者は、カーボネート基の存在により最終製品の耐久性および耐薬品性、耐熱性、耐UV性を増加させる。他の種類のポリウレタンは、ポリオレフィン・グリコール、ポリエステルアミド・グリコール、ポリカプロラクトン・グリコール、アミン末端マクログリコールまたはポリアクリレート・グリコールなどの他のマクログリコールを使用して調製することができる。同様に、官能価が2を超えるポリオールを使用することができる。
【0030】
本発明では、ポリオールとしてポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネートに基づくポリオール、マクログリコールに基づくポリオールまたはこれらの組み合わせが好ましく使用され、より好ましくはOH価が300〜950である三官能性ポリエーテル系のマクロジオールまたはOH価が120〜260であるポリカーボネートに基づくポリオールが使用される。
【0031】
加えて、再生可能な資源からのポリオールまたはバイオマス由来のポリオールを使用することができ、例えばその由来がヒマシ油、なたね油、大豆油およびひまわり油であるものを使用することができる。これらのポリオールは典型的にコストが高く、典型的には炭化水素(化石由来)に由来する他のポリオールに結合していることが多いので、それらは厳密には再生可能な資源またはバイオマスに部分的に由来するポリオールである。
【0032】
さらに、ブタンジオールおよびプロパンジオール(共にサトウキビ由来)など、化学プロセスによって合成されたが、バイオマスから生じるポリオールの状態を失わない再生可能資源に由来するポリオールも存在する。同様に、グリセロール、1,2,3−プロパントリオールも、イソシアネートの存在下で反応するOH基を3つ有するアルコールであるためポリウレタンの生産に好適なポリオールと見なすことができる。現在、グリセロールは、脂肪油と天然オイルなどの種々の資源から、同様にバイオディーゼル生産の副産物から得られる。
【0033】
本発明者らは、再生可能な資源またはバイオマスに由来するこれらのポリオールを使用することで、環境に有利であることに加えて、結果として生じる固体表面ピースの物理的収率が増加することを見出した。
【0034】
触媒成分:反応に必要な触媒成分は、基本的には、例えばジラウリン酸ジブチル・スズ(DBTL)、ネオデカン酸亜鉛、カルボン酸ビスマスまたはこれらの組み合わせなどの金属塩である。場合により、これらの触媒成分をアミンに基づく触媒と組み合わせることができる。
【0035】
添加剤成分
様々な添加剤をポリウレタン処方物中に使用することができる。これらの添加剤の使用が望ましい場合もあれば、他の場合では重合反応を実行するため、または最終製品の特定の性質を得るために必要とされる。
【0036】
ポリウレタン処方物中に使用する添加剤はポリウレタンの変換プロセスおよび種類に依存する。本発明で使用することができる添加剤の中でも言及することができるのは、例えば、安定剤、起泡剤、難燃剤、ポリウレタンを加水分解、酸化または紫外線から防止する化合物、フィラー(植物および/または鉱物由来からのもの、および場合により微粒化したもの)または顔料。上記の添加剤に加えて、最近では、特定の性質を達成するためにポリマーマトリックス中に組み込んだ異なる種類のナノ粒子も本発明で使用かつ考慮することができる。ナノ粒子はサイズが1〜100nmの範囲の粒子である。
【0037】
本発明のポリウレタン処方物では、充填してあってもしていなくてもよいが、好ましくは炭化水素系ガスで充填された膨張性ポリマーマイクロスフィアを添加することが必要であり、一種の膨張を発生させて、上で指定した標準による固体表面の定義に一致した一種の固体が得られる。好ましくは、これらのマイクロスフィアは百分率で、最終組成物に対して少なくとも0.1重量%、かつ最終組成物に対して最大18重量%で存在している。
【0038】
膨張性ポリマーマイクロスフィアの熱可塑性外被は、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、スチレンなどのモノマーまたはこれらの混合物から重合したポリマー若しくはコポリマーからなってもよい。
未膨張スフィアおよび膨張スフィアの粒径は広い範囲で変化してもよく、かつ最終製品の所望の特性に依存して選択される。未膨張マイクロスフィアの粒径の例として言及されるのは、1ミクロン〜1mm、好ましくは2μm〜0.5mm、特に5μm〜50μmである。膨張後、マイクロスフィアの直径は2〜5の因数増加する。未膨張マイクロスフィアは空(huecas)であってもよいし、または揮発性の液体であり熱供給で通気される発泡剤を含んでいてもよい。熱が供給されるとポリマー・カバーが軟化して、発泡剤が通気されるとマイクロスフィアが膨張する。発泡剤は、トリクロロフルオロメタンなどのフロン、n‐ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、ブタン、i−ブタンなどの炭化水素または本明細書で使用される種類のマイクロスフィアで従来的に用いられる他の発泡剤からなってもよい。発泡剤は、好ましくはマイクロスフィアの重量の5−30重量%を構成する。適切に好ましく、かつ市販されているマイクロスフィア製品の例としては、塩化ビニリデンコポリマー/アクリロニトリルの熱可塑性外被および発泡剤としてイソブタンを有するExpancel(商標)である。
【0039】
特別の場合では、熱可塑性膨張性マイクロスフィアをより多く、最終組成物の全体量の少なくとも3重量%、添加した場合、既に架橋したポリウレタン固体の構造は明確に異なる2つの密度を有することができることが示された:シート厚が2〜5mmである「固体表面」製品には典型的である外側部分では、圧縮された密度1100g/cm
3超、内側部分またはコアでは、低密度または中密度の200〜800g/cm
3。この特徴によってピースはサンドイッチ型構造を有し、これはピースの最終重量をより低くしながらも、例えば、破損および衝撃に対して良好な耐性などの非常に改善した物理的特性をもたらす。
【0040】
一層の実施態様では、既製のポリウレタンをさらなる添加剤として添加することさえも可能であり、それを微粒化して製造する本発明のポリウレタン処方物に組み入れる。したがって、得られた本発明のポリウレタンは、その特性により、使用されずに微粒化して本発明の別のポリウレタン処方物に組み入れることができる。従って、本発明によって得られたポリウレタンは常に再使用することができ、したがって、再利用可能である。
【0041】
本発明の液状組成物は最終組成物中に上で定義したポリオールを4重量%〜20重量%の量で含んでなることが好ましい。
【0042】
本発明の液状組成物は最終組成物中に上で定義した脂肪族または脂環式のイソシアネートを7重量%〜75重量%の量で含んでなることが好ましい。
【0043】
本発明の液状組成物は最終組成物中に上で定義した触媒を0.1重量%〜2重量%の量で含んでなることが好ましい。
【0044】
上で示すように、本発明の液状組成物は膨張性ポリマーマイクロスフィアではない添加剤を含んでなってもよく、それらは100%を超過しない限り、最終組成物に対して、2重量%〜85重量%の間で存在することができる(即ち、添加剤が85%に相当すれば、他の成分は15%を超える量とならない)。
【0045】
第二の側面では、本発明は、熱硬化性であって、かつ本発明の様々な実施態様で定義された液状組成物から形成される固形組成物(固体表面製品)に関する。
【0046】
第三の側面では、本発明は、次の工程を含んでなる、本発明の様々な実施態様で定義された液状組成物を得るための方法に関する:
(a)少なくとも1つのポリオールを、少なくとも1つの触媒および膨張性ポリマーマイクロスフィアと、場合により少なくとも1つの添加剤と混合する工程;
(b)(a)で得た生成物を、少なくとも1つの脂肪族系または脂環式系のイソシアネートと混合する工程。
【0047】
好ましくは、工程(a)および(b)の混合は25〜50℃の間の温度で行なわれる。
【0048】
第四の側面では、本発明は、次の工程を含んでなる、本発明の様々な実施態様で定義された固形組成物(固体表面製品)を得るための方法に関する:
(a)本発明の第三の側面による液状組成物を得る工程;
(b)当該液状組成物を型へ導入する工程;
(c)型中で生成物を硬化する工程;
(d)一度固体となった生成物を離型する工程。
【0049】
好ましくは、型の温度は25〜80℃の間である。
【0050】
実施例によって本発明を説明するが、それは本発明を単に例証することを意図していていかなる方法によっても本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0051】
一般例
1.使用製品
ポリオール:
OH価が300〜950である三官能性ポリエーテル系マクロジオール、OH価が120〜260のポリカーボネートに基づくポリオールを使用した。同様に、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2,3−プロパントリオールおよび1,5−ペンタンジオールなどの再生可能な資源から生じるポリオールも使用した。
イソシアネート:
脂肪族系ジイソシアネートである、1,6−ヘキサン・ジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(H12MDI)、イソフォロン・ジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン・ジイソシアネート(TMDI)およびペンタメチレン・ジイソシアネート(PDI)を使用した。
触媒:
ジラウリン酸ジブチル・スズ(DBTL)およびカルボン酸ビスマス。
添加剤:
泡除去剤(反起泡剤)、
脱泡剤
湿潤剤および分散剤、例えば酸コポリマーのヒドロキシル化基を有するアルキルアンモニウム塩の溶液
吸湿剤(Agentes inhibidores de la humedad)、例えばゼオライト
難燃剤、例えば三リン酸アンモニウム、リン酸トリエチル
色素形成剤、例えば二酸化チタン(TiO
2)およびポリオールと混合した無機染料濃縮物
無機フィラー、例えばアルミナ(酸化アルミニウム三水和物)、バライト、石英、ガラス・マイクロスフィア
ポリマーフィラー、例えば粉砕し、かつ微粒化したポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ならびに、空のポリマーマイクロスフィアおよび/または炭化水素で充填したポリマーマイクロスフィア
有機フィラー、例えば植物性繊維、粉砕し、かつ微粒化した農業副産物および林副産物
【0052】
種々の成分を次の基準に基づいて選択した。
−材料加工性:粘性
−機械的特性:耐衝撃性および耐熱性
−外観:色、表面均一性
−屋内および屋外の場所での色の管理:UV耐性
【0053】
生成物処方は、対応する添加剤を有するポリオール混合物の、脂肪族または脂環式のイソシアネートとの化学量論比に基づく。
【0054】
成分比の範囲は合計が100%であることを条件に以下のとおりであった。
ポリオール(ポリエーテル・ポリオール/ポリカーボネートに基づくポリオール/鎖延長剤):4重量%〜20重量%
反応用触媒:0.1重量%〜2重量%
添加剤:2重量%〜85重量%
膨張性ポリマーマイクロスフィア:0.1重量%から
脂肪族または脂環式のイソシアネート:7重量%〜75重量%
【0055】
2.混合物の型への導入
処方物を調製した後に、成分A(ポリオール+触媒、マイクロスフィア、添加剤)を成分B(脂肪族脂環式のイソシアネート)と混合して、型へ導入した。型は25℃〜80℃の温度に加熱すべきであり、事前に真空密閉してあることが好ましい。
【0056】
3.熱を加えることにより型内で硬化する生成物
事前に加熱した型内の材料は、反応して液体から固体となる。反応は5分〜60分続けることができ、この時間が硬化のための時間である。
【0057】
4. 既に固体状となった材料の離型
成形ピースを型から取り除く。このプロセスによって得られたピースは、型の形状をとり、完成したピースを得ることが可能である。
【0058】
実施例1:
成分Aと成分Bの混合を以下のように行なった。
第一に、成分A(ポリオール、添加剤、マイクロスフィアおよび触媒)を配合した。一旦成分Aを得ると、その後、35℃の温度で成分B(排他的にイソシアネート)と20秒間撹拌して混合した。
【0059】
以下に示される材料を、25〜30℃の温度で20分間撹拌して混合した。
【0060】
【表1】
【0061】
混合物(成分A+成分B)を事前に45℃に加熱した型へ注入または射出した。混合物を射出する前に型に離型剤の役割を果たす剥離剤を適用してあった。
【0062】
一旦材料を射出し、30分の硬化時間後に、型を開き、完成したピースを取り除いた。続けて材料の余剰分を除去するため、および生じている可能性のあるマークを研磨によって除去するために洗浄作業を適用することができる。結果として得られるのは、密度がおよそ1.3kg/m
3であり、UV照射に耐性である固体表面タイプピースの特徴を有する型穴形状の、固形、硬質、不透明なピースである。
【0063】
実施例2:
成分Aと成分Bの混合を以下のように行なった(ここでAおよびBは実施例1で示した通りである)。
【0064】
第一に成分Aを配合した。一旦、成分Aを得ると、その後、40℃の温度で成分Bと30秒間撹拌して混合した。
【0065】
以下に示される材料を、25℃の温度で20分間撹拌して混合した。
【0066】
【表2】
【0067】
混合物(成分A+成分B)を事前に45℃に加熱した型へ注入または射出した。混合物を射出する前に型に離型剤の役割を果たす剥離剤を適用してあった。
【0068】
一旦材料を射出し、35分の硬化時間後に、型を開き、完成したピースを取り除いた。続けて材料の余剰分を除去するため、および生じている可能性のあるマークを研磨によって除去するために洗浄作業を適用することができる。結果として得られるのは、密度がおよそ1.1kg/m
3であり、UV照射に耐性である固体表面タイプピースの特徴を有する型穴形状の、固形、硬質、半透明なピースである。
【0069】
実施例3:
成分Aと成分Bの混合を以下のように行なった(ここでAおよびBは実施例1で示した通りである)。
【0070】
第一に成分Aを配合した。一旦、成分Aを得ると、その後、35℃の温度で成分Bと20秒間撹拌して混合した。
【0071】
以下に示される材料を、25℃の温度で20分間撹拌して混合した。
【0072】
【表3】
【0073】
混合物(成分A+成分B)を事前に45℃に加熱した型へ注入または射出した。混合物を射出する前に型に離型剤の役割を果たす剥離剤を適用してあった。
【0074】
一旦材料を射出し、30分の硬化時間後に、型を開き、完成したピースを取り除いた。続けて材料の余剰分を除去するため、および生じている可能性のあるマークを研磨によって除去するために洗浄作業を適用することができる。結果として得られるのは、表面に欠陥がない、密度がおよそ1.3kg/m
3であり、UV照射に耐性である固体表面タイプピースの特徴を有する型穴形状の、固形、硬質、不透明なピースであり、その材料は組成物全体に対して50%超の再生可能な資源またはバイオマスに由来するものである。
【0075】
実施例4:
成分Aと成分Bの混合を以下のように行なった(ここでAおよびBは実施例1で示した通りである)。
【0076】
第一に成分Aを配合した。その後成分Bを配合した。
【0077】
一旦成分Aおよび成分Bを個々に得ると、それらを35℃の温度で20秒間撹拌して混合した。
【0078】
以下に示される材料を、25℃の温度で20分間撹拌して混合した。
【0079】
【表4】
【0080】
混合物(成分A+成分B)を事前に45℃に加熱した型へ注入または射出した。混合物を射出する前に型に離型剤の役割を果たす剥離剤を適用してあった。
【0081】
一旦材料を射出し、30分の硬化時間後に、型を開き、完成したピースを取り除いた。続けて材料の余剰分を除去するため、および生じている可能性のあるマークを研磨によって除去するために洗浄作業を適用することができる。結果として得られるのは、外側部分の密度がおよそ1.3kg/m
3であって厚さが約2mmであって内側部分またはコアの密度が約0.500kg/m
3と別の密度であり、かつUV照射に耐性である固体表面タイプピースの特徴を有する型穴形状の、固形、硬質、不透明なピースである。
【0082】
実施例5:衝撃試験および荷重下での熱による変形試験
シャルピー試験による衝撃試験および負荷をかけた上での熱による変形試験を同一の化学組成を有し、かつ同様の方法で製造し、ポリマーマイクロスフィアのみが異なる2つの固体サンプルで行ない、二つの密度(bi-densidad)(サンドイッチ)で得られた膨張構造を有するサンプルでは、単一密度(標準)の膨張構造のものよりも高い値が得られた。
【0083】
【表5】
【0084】
二つの密度を有する試験試料の外側密度は1000g/cm
3であり、その平均の厚さは2.5mmであり、かつ内側密度は412g/cm
3であり、厚さは5.2mmであった。
【0085】
二つの密度を有する試験試料については、膨張剤として炭化水素ガスで充填したポリマーマイクロスフィアおよび追加的な膨張ガスの組み合わせを使用した。
【0086】
標準試験試料には膨張剤として水を使用した。