【実施例1】
【0014】
本発明の一実施形態に係る無線電池システムの構成図を
図2に示す。基本構成は、1つのBC200(バッテリコントローラ)と複数のCC100(セルコントローラ)がネットワークを構築して、無線パケットを用いた通信を行う。CC100は、各電池セルまたは複数の電池セル毎に搭載され、電池セルの電力で動作する。CC100は、ICカードやRFIDのような無線電波の電力を使用して動作してもよい。無線電波の電力でCC100を動作させると、通信距離により電波電力が減衰するので、通信距離は電力依存になり、通信距離は数cmから数十cmになる。一方、電池セルの電力でCC100を動作させると、通信距離は送受信特性に依存し、数m程度にできる。また、各電池セル300および各CC100は直近に配置される。
【0015】
BC200は、各電池セル300の電池状態(電圧、温度など)を確認する為に、CC100−1に起動信号を周期的に送信する。CC100−1は、起動信号をパッシブ受信すると、セル300―1の電池状態(電圧、温度など)を計測し、その計測値をCC100−2へ送信する。この時、CC100−1はBC200へ起動信号を受信した事を通知するACK信号を送信してもよい。
【0016】
CC100−2は、CC100−1からの送信信号をパッシブ受信すると、電池セル300―2の電池状態を計測し、CC100―1からの受信データ(セル300―1の電池状態)に加えて、電池セル300―2の状態をCC100―3へ送信する。この時、CC100―2はCC100―1へデータを受信した事を通知するACK信号を送信してもよい。このように、BC200および各CC100はデイジーチェーン方式で無線通信し、BC200は、全てのCC100が計測した電池セル300の電池状態をパッシブ受信することが可能となる。
【0017】
以上のように、
図2では、複数のCC100は、CC100―1(第一のセルコントローラ)、CC100−2(第二のセルコントローラ)およびCC100−3(第三のセルコントローラ)を有しており、各CC100は、BC200からの起動信号または他のCC100からの電池セル300の電池状態をパッシブ受信すると、受信データを受信したことを示す応答信号をBC200または他のCC100へ返す。例えば、CC100−2は、CC100−2に接続されている電池セル300の電池状態を、CC100−1から受信したデータに追加して、CC100−3に送信する。
【0018】
この時、CC100―1よりもCC100―2、CC100―2よりもCC100―3の方が送信データが多くなり、送信時間が長くなる。各CC100の送信時間が異なると、各CC100の消費電力が異なり、電池セル300のSOC(充電状態)が異なってくる。そこで、各CC100で送信時間を合わせる為に、
図3のようにデータ送信はしていないが、無変調送信する区間を設けて送信時間を合わせるようにする。
図3は、本発明の一実施形態に係るCCの送信データの内容を示す図である。
【0019】
図4に本発明の一実施形態に係るCCの回路構成図、
図5に本発明の一実施形態に係るBCの回路構成図を示す。また、
図6には本発明の一実施形態に係るBC、CCの無線回路構成図を示す。
【0020】
まず、
図4にてCC100の回路構成を説明する。各CC100は、電池セル群10に取り付けられ、電池セル300の電池状態を計測する。電池セル群10は1または複数の電池セル300から成る。CC100内は、電池セル300の電池状態を計測するセンサー20、電池セル300の状態情報を取得し処理する処理部30、無線回路40および電波を入出力するアンテナ50、から構成される。センサー20は1つまたは複数からなる。
【0021】
処理部30は、電池セル群10から電源をもらって動作電圧を生成する電源回路31と、センサー20によって計測されたアナログ値をデジタルデータに変換するA/D変換器32(ADC)と、A/D変換器32によって変換されたデータを無線回路に出力する論理回路33と、個体識別情報(固有ID)などを記憶する記憶装置34(メモリ)と、クロック発生器35から構成される。クロック発生器35は、数MHzから数百MHz程度の高速クロックと数十kHz程度の低速クロックを切替えて発振することができる。また、論理回路33は、無線受信の有無や状態に応じて、無線回路40及び論理回路33内の一部の回路のオン/オフ、クロック発生器35のクロック周波数の切り替え、記憶装置34へのリード/ライトを実行することができる。
【0022】
次に、
図5にてBCの回路構成を説明する。BC200は、無線回路210、論理回路220、電池を含む電源回路230、記憶装置240(メモリ)、クロック発生器260、1つ以上のアンテナ250から構成される。電源回路230については、
図5では電池を内蔵しているが、外部から電源を供給しても構わない。
【0023】
図6は、BC、CCの無線回路を示す。送信は、乗算回路(ミキサ)で送信データに応じてASK変調波を作り、送信アンプで増幅してアンテナへ出力する。一方、受信は、アンテナで受信したASK変調波をダイオード、抵抗、コンデンサのパッシブ部品で包絡線復調(パッシブ受信)する。換言すれば、複数のCC100はパッシブ受信で制御されている。これにより、受信待ち受け時や、受信時の無線回路の消費電力をゼロに近づけることが可能である。
【0024】
図7には、角型の電池セルにCCを実装した図を示す。
図8は、角型の電池セル上面からCCを見た図である。BC200およびCC100のアンテナ放射パターンは、側面A側に強くなるようにすることで、両横のCC100との電波強度が強くでき通信エラーを軽減することが可能となる。換言すれば、CC100およびBC200は、データを送受信するアンテナを有し、複数のCC100のいずれかのCC100が有するアンテナは、デーの受信先または送信先であるCC100またはBC200のアンテナの方向に指向性が強くなっていることで、両横のCC100との電波強度が強くでき通信エラーを軽減することが可能となる。
【0025】
図9は、アンテナ放射パターンを踏まえてセルを10個配置した時の図である。ここで、どの程度の高信頼の無線通信ができるのかを確認した。特許文献1のような1つのBC200で複数のCC100と通信するような1対Nの通信をする場合、BC200は
図10に示すように、各CC100の上面に配置するとした。
図10は、従来の1対Nでの無線電池システムの配置図である。また、
図10の例では、BC200は一般的なダイポールアンテナ(最大絶対利得2.14dBi)でアンテナ放射角度30°以上で通信させようと配置した時の例である。
【0026】
図11は、ダイポールアンテナの放射パターンの例であり、CC100―1およびCC100−10の放射角度は30°になるので、アンテナゲインの相対比は−7.5dBとなる。また、最長通信距離は、CC100―1とCC100―10で153mmとなる。通信周波数を2.45GHzとした場合、(式1)のフリスの公式から、153mmの空間ロスは−24dBとなる。また、アンテナの指向性を考慮したアンテナゲイン(ロス)は、−5.36dB(=2.14−7.5)となり、空間ロスと合わせると、CC100―1、CC100―10では−29.36dBのロスとなる。(式1)において、d:距離(m)、λ:波長(m)、である。
【0027】
空間ロス(dB)= 20×log(4π×d/λ)・・・・・(1)
【0028】
一方、本発明の構成である
図9では、1対1通信となる為、BC200−CC100間、CC100間の通信距離はセルの側面B幅である26.5mmで、2.45GHzでの空間ロスは(式1)から−8.7dBとなる。また、アンテナの指向性による相対比は0dB(
図8参照)とすることが可能で、合計のロスは距離による空間ロス−8.7dBにダイポールアンテナゲイン2.14dBiを加えた−6.56dBとなる。1対Nの通信の場合のロス−29.36dBと比較すると、22.8dBのロスが軽減されることになる。これは、S/Nが22.8dBよくなることと同じである。
【0029】
図12に、ASK復調時のS/N(信号対ノイズ比率)とBER(ビットエラーレート)の相関図を示す。S/N=0dBでのBERは10
−1、S/N=20dBでのBERは、約10
−13となる。この結果から、本発明により通信信頼性が向上することがわかる。
【実施例2】
【0030】
図13Aと
図13Bに、無線電池システムの構成図を示す。BC200は交互に送信先、受信先のCC100を変えて通信する。換言すれば、BC200は、送信先のCC100へ起動信号を送信し、起動信号送信から所定時間経過後、データ受信先のCC100からデータを受信する。次に、データ受信先のCC100へ起動信号を送信し、起動信号送信から所定時間経過後、送信先のCC100からデータを受信するように、送信先とデータ受信先を交互に入れ替えて通信している。例えば、
図13AではBC200は、CC100−1へ起動信号を送信し、CC100−Nから各CC100のデータを受信する。次にBC200が起動信号を送る時は、
図13Bのように、CC100−Nへ起動信号を送信し、CC100−1から各CC100のデータを受信する。
【0031】
また、
図13Aおよび
図13Bにおける各CCの送信データの内容を
図14Aと
図14Bに示す。BC200は交互に送信先、受信先のCC100を変えて通信することで、各CC100の送信データ数は同じで送信時間も同じにすることが可能となる。
【0032】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。複数の電池セルに形成された複数のセルコントローラと、
複数のセルコントローラと無線で接続されるバッテリコントローラとを備え、バッテリコントローラと複数のセルコントローラとはデイジーチェーン方式で接続され、複数のセルコントローラはパッシブ受信で制御される。これにより、無線通信エラーが少ない高信頼の無線通信が可能で、セルコントローラにおいてはパッシブ受信により低消費電力動作が可能となる。