特許第6848032号(P6848032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6848032損傷又は疾患組織の非侵襲的治療のための、多重波長光線療法装置、システム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848032
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】損傷又は疾患組織の非侵襲的治療のための、多重波長光線療法装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20210315BHJP
【FI】
   A61F9/007 190A
   A61F9/007 190B
【請求項の数】32
【全頁数】98
(21)【出願番号】特願2019-201176(P2019-201176)
(22)【出願日】2019年11月6日
(62)【分割の表示】特願2017-514357(P2017-514357)の分割
【原出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2020-36919(P2020-36919A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2019年12月6日
(31)【優先権主張番号】62/048,211
(32)【優先日】2014年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/048,187
(32)【優先日】2014年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/048,182
(32)【優先日】2014年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517082364
【氏名又は名称】ルミセラ インク.
【氏名又は名称原語表記】LUMITHERA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】テッドフォード,クラーク,イー.
(72)【発明者】
【氏名】デラップ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー,スコット
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−516830(JP,A)
【文献】 特表2009−525141(JP,A)
【文献】 特表2013−521988(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0235493(US,A1)
【文献】 特開2013−235256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007 − A61F 9/008
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトバイオモジュレーション(PBM)を患者の眼組織に送達するための自立型装置であって、
内部を有するハウジング;
前記ハウジング上に配設され、かつ、アイピース又はアイボックスに隣接する前記患者の眼の配置のために構成されかつ配置された前記アイピース又はアイボックス;
近赤外(NIR)光を含む第1の治療用波長を有する第1の光線を生成するように構成されており、かつ、前記ハウジング内に配設された第1の光源;
第2の治療用波長を有する第2の光線を生成するように構成されており、かつ、前記ハウジング内に配設された第2の光源、ここで前記第2の治療用波長は、前記第1の治療用波長とは、少なくとも25nmだけ異なっている;
前記第1の光源及び前記第2の光源からの前記第1の光線及び前記第2の光線をそれぞれ受け取るように、そして、前記第1の光線及び前記第2の光線を前記アイピース又はアイボックスに向けるように構成されかつ配置されたリレー構造;
前記リレー構造の少なくとも一部を動かして、前記第1の光線及び前記第2の光線の少なくとも一つの向きを、少なくとも第1の位置から少なくとも第2の位置に変えるように構成されかつ配置されたアクチュエータ;及び
前記第1の治療用波長を有する光を実質的に透過させ、かつ、前記第2の治療用波長を有する光を実質的に反射するように構成されかつ配置されており、さらに前記ハウジング内に配設された反射フィルタ
を備えており
前記装置は、前記第1の光線と前記第2の光線を前記反射フィルタに向け、そして、前記アイピースを通してPBMを前記患者の眼組織に提供するように構成されかつ配置されている
装置。
【請求項2】
前記第1の光線と前記第2の光線とをそれぞれ生成するように前記第1及び第2の光源に指示するために、前記第1の光源と前記第2の光源とに動作可能に連結されたコントローラをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラに動作可能に連結され、前記患者の眼組織に関するリアルタイムのフィードバック情報を提供するように構成された生物医学的なセンサーをさらに備える請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1の光源及び前記第2の光源からの光の放射を、前記フィードバック情報に従って制御するように構成されかつ配置されている、請求項3に記載の装置
【請求項5】
(1)前記第1の波長は、800〜900nmの範囲にあり、前記第2の波長は、600〜700nmの範囲にあるか、又は
(2)前記第1の波長は、800〜900nmの範囲にあり、前記第2の波長は、550〜650nmの範囲にある
請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
第3の治療用波長を有する第3の光線を生成するように構成され、かつ、前記ハウジング内に配設された第3の光源をさらに備えており、前記第3の治療用波長は、前記第1及び第2の治療用波長とは、少なくとも25nmだけ異なっている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の光源は、時間的パルス幅を有する複数のパルスを含むパルス光線を放射するように構成されかつ配置されており、前記時間的パルス幅は、0.1ミリ秒〜150秒の範囲にある、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記眼組織は、網膜組織を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記アクチュエータは、前記第1の光線及び前記第2の光線の向きを、前記第1の光線及び前記第2の光線が、前記アイピース又はアイボックスに接する患者の左眼に向けられている少なくとも第1の位置から、前記第1の光線及び第2の光線が、前記アイピース又はアイボックスに接する患者の右眼に向けられている第2の位置に変えるように少なくとも前記リレー構造を動かすように構成されかつ配置されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
(1)前記第1の治療用波長は800〜900nmの範囲にあり、前記第2の治療用波長は600〜700nmの範囲にあるか、又は
(2)前記第1の治療用波長は、800〜900nmの範囲にあり、前記第2の治療用波長は、550〜650nmの範囲にある
請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記アクチュエータに動作可能に連結された光線位置決めメカニズムをさらに備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記光線位置決めメカニズムは、ジョイスティック、トラックボール、又はタッチスクリーンを備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第2の光源は、前記第1の光源とは別個となっている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記第2の治療用波長は、590nm±10%、670nm±10%、810nm±10%、又は1064nm±10%の範囲である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記第2の治療用波長は、
(1)850±30nm
(2)660±30nm、又は
(3)590±30nm
の範囲である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記第1の治療用波長及び前記第2の治療用波長は、
(1)それぞれ850±30nm及び590±30nm
(2)それぞれ850±30nm及び670±30nm、又は
(3)それぞれ850±30nm及び850±30nm
の範囲である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記第1の治療用波長は800〜900nmの範囲であり、前記第2の治療用波長は600〜700nmの範囲であり、前記第3の治療用波長は550〜650nmの範囲である、請求項6に記載の装置。
【請求項18】
前記第1の治療用波長は850±30nmの範囲であり、前記第2の治療用波長は660±30nmの範囲であり、前記第3の治療用波長は590±30nmの範囲である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
患者インターフェイスをさらに備えており、前記患者インターフェイスは、額当て、顎当て、又はその両方を備えている、請求項1〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記ハウジングの外側に配設されたユーザインターフェイスをさらに備えている、請求項1〜19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記コントローラは、対象の網膜組織に対する光の適用における光エネルギの放出、光エネルギの強度、光エネルギの持続時間、頻度、範囲、又は順番のうちの一つ又は複数を調整するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項22】
前記眼組織に達する前に光を拡散するための拡散器をさらに備える、請求項1〜21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記装置は、前記患者の眼の網膜組織に向けてフォトバイオモジュレーションを送達するために構成されかつ配置されている、請求項1〜22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
フォトバイオモジュレーション(PBM)を患者の眼の網膜組織へ送達するための装着型装置であって、
前側片と、前記前側片に取り付けられた少なくとも一つの付加要素とを備えるフレーム;
近赤外(NIR)光を含む第1の治療用波長を有する第1の光線を生成するように構成され、かつ、前記フレーム内に又はその上に配設された少なくとも一つの第1の光源;及び
第2の治療用波長を有する第2の光線を生成するように構成され、かつ、前記フレーム内に又はその上に配設された少なくとも一つの第2の光源
を備えており、
前記第2の治療用波長は、前記第1の治療用波長とは、少なくとも25nmだけ異なっており、
前記第1の光線及び前記第2の光線の少なくとも一部は、前記患者が前記装着型装置を装着しているときに、前記患者の前記網膜組織に向けられている
装置。
【請求項25】
第3の治療用波長を有する第3の光線を生成するように構成され、かつ、前記フレーム内又はその上に配設された少なくとも一つの第3の光源をさらに備えており、
前記第3の治療用波長は、前記第1の治療用波長及び前記第2の治療用波長とは、少なくとも25nmだけ異なっている
請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記第1の治療用波長は、800〜900nmの範囲であり、前記第2の治療用波長は、600〜700nmの範囲である;又は
前記第1の治療用波長は、800〜900nmの範囲であり、前記第2の治療用波長は、550〜650nmの範囲であ
請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記第1の治療用波長は、800〜900nmの範囲であり、前記第2の治療用波長は、600〜700nmの範囲であり、前記第3の治療用波長は、550〜650nmの範囲である
請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記第1の光源と前記第2の光源とは、前記フレームにおける前記前側片上のアレイとして配設されている
請求項24〜27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
前記フレームは、前記前側片において二つの視覚ポートをさらに画定しており、前記第1の光源及び前記第2の光源は、前記二つの視覚ポートの周辺に配設されている、請求項24〜28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
少なくとも一つの前記付加要素は、二つのイヤピースを含んでおり、
前記フレームは、前記前側片上に配設された少なくとも一つの反射器をさらに備えており、
前記第1の光源及び前記第2の光源は、前記イヤピース上に配設されており、かつ、前記反射器に向けて光を向けるように構成及び配置されており、
前記患者が前記装置を装着したときに、前記反射器は、前記第1の光源及び第2の光源からの前記光の少なくとも一部を、前記患者の網膜組織に向けて、向け直すように構成及び配置されている
請求項24〜29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
前記反射器は部分的に透明である、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記装置はさらに
前記フレーム内に配設され、かつ、前記第1の光源及び前記第2の光源から光を受け取るように、そして、前記光線を変調して変調光線を生成するように配置された空間光変調器、及び
前記患者が前記装置を装着したときに、前記変調光線を受け取り、そして、前記変調光線の少なくとも一部を前記患者の前記網膜組織に向けるための光指向要素
を備える請求項24〜31のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
2015年9月9日出願の本PCT国際特許出願は、それぞれ2014年9月9日に出願された米国特許仮出願第62/048,182号、同62/048,187号及び同62/048,211号の利益を主張する。米国特許仮出願第62/048,182号、同62/048,187号及び同62/048,211号は、それら全体を本明細書に参照により組み込む。
【0002】
(発明の分野)
本開示は概して、フォトバイオモジュレーション(「PBM」)を含む、多重波長光線療法に関する。更に具体的には、それぞれが異なる波長ピークを有する、2つ以上の光線量の、細胞若しくは組織への調整かつ標的化した送達により、細胞若しくは組織(例えば損傷若しくは疾患のある眼の細胞若しくは組織)の機能を改善又は回復するための眼科領域の光線療法装置、システム及び方法を含む、非侵襲的光線療法装置、システム及び方法を本明細書にて開示する。調整した方法で導光する際、2つ以上の光線量は2つ以上の感光性因子又は光受容体の活性を調節し、それによって損傷若しくは疾患のある細胞又は組織の治癒を促進する。
【背景技術】
【0003】
一般にフォトバイオモジュレーション(「PBM」)又は低レベルの光線療法と称される方法において、生物活性を刺激する又は抑制するために、光は細胞組織内で異なるメカニズムで機能することができる。PBMは、身体表面に適用されて広範囲の疾患状態に有益な効果を生成する、レーザー又は非コヒーレント光源により作成される、可視光から近赤外光(NIR)(500〜1000nm)の使用を含む。Chung et al.,Ann.Biomed.Eng(2011);Hashmi et al.,PM.R.2:S292〜S305(2010);Rojas et al.,Dovepress2011:49〜67(2011);and Tata and Waynant,Laser and Photonics Reviews5:1〜12(2010).PBMは、細胞に著しい損傷を引き起こさずに、好適な強度、エネルギー及び波長による光の使用を必要とする。
【0004】
細胞レベルのPBMのメカニズムは、代謝機能の安定化をもたらす、ミトコンドリア呼吸鎖複合体の活性化によるものだとされている。シトクロムcオキシダーゼ(CCO)が遠赤外光から近赤外光のスペクトル範囲における重要な光受容体であることを示す証拠が、相次いでいる。Grossman et al.,Lasers.Surg.Med.22:212〜218(1998);Kara et al.,J.Photochem.Photobiol.B.27:219〜223(1995);Karu and Kolyakov,Photomed.Laser Surg.23:355〜361(2005);Kara et al.,Lasers Surg.Med.36:307〜314(2005);and Wong−Riley et al.,J.Biol.Chem.280:4761〜4771(2005)。
【0005】
眼を悩まし得る外傷又は疾患を含む、多くの障害がある。眼疾患は、例えば緑内障、加齢関連黄斑変性症、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、中心性漿液性網膜症(CRS)、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)、レーバー遺伝性視神経疾患、ブドウ膜炎などを含むことができる。他の障害は、身体的外傷(例えば白内障若しくはレンズ手術)又は眼の損傷又は変性の他の原因を含むことができる。眼の変性とは主要な破壊的事象(例えば眼の外傷又は手術)から生じると共に、主要な破壊的又は疾患事象が理由で、細胞により生じる持続性、遅延性及び進行性破壊メカニズムから生じる細胞破壊のプロセスを含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの眼疾患、障害又は変性の治療のための方法及び装置を開発することは望ましい。手術若しくは薬学的治療より侵襲性でない若しくは副作用が少ない可能性がある、又は、手術若しくは薬学的治療と共に使用して治癒若しくは治療に役立つことができる、治療のための方法及び装置を開発することは特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、消失した若しくは減少した細胞若しくは組織機能に関連付けられる障害又は疾患の非侵襲的治療で使用するための、多重波長光線療法装置、システム及び方法を提供する。したがって本明細書で開示す多重波長光線療法装置、システム及び方法は、障害若しくは疾患を罹患した患者の細胞若しくは組織に、2つ以上の異なる波長の調整かつ標的化した送達による治療上の使用に適応して、障害若しくは疾患と関連付けられる細胞若しくは組織における、低下した機能を強化する、過活動機能を低下させる、又は変化した機能を修正して、それにより障害若しくは疾患の1つ以上の態様の症状を低減する、又は進行を遅らせることができる。
【0008】
特定の実施形態において本開示は、標的細胞の1つ以上の機能を改善する及び/又は回復させる、多重波長光線療法装置、システム及び方法を提供する。そのシステム及び方法は、2つ以上の異なる光の波長の細胞及び/又は組織への調整かつ標的化した送達を含んでおり、このことにより2つ以上の感光性因子又は光受容体の活性を促進して、それによって、標的細胞機能、特に障害及び/又は疾患と関連付けられる標的細胞の機能を改善する及び/又は回復させる。
【0009】
他の実施形態において本開示は、細胞及び/又は組織のシトクロムcオキシダーゼ(CCO)活性を刺激する方法を提供するための多重波長光線治療装置、システム及び方法を提供する。その方法は、CCO活性と関連付けられかつそれに必要な2つ以上の感光性因子を有する細胞への2つ以上の光線量の調整かつ標的化した送達を含む。第1の光線量は、CCOの第1の感光性因子を活性化することができる第1の波長を有しており、第2の光線量はCCOの第2の感光性因子を活性化することができる第2の波長を有しており、それによってCCO活性を刺激する。これらの実施形態の特定の態様において、CCO活性を刺激することは、標的細胞、特に障害及び/又は疾患と関連付けられる1つ以上の細胞を有する標的組織などの標的組織内の標的細胞の機能を改善及び/又は回復する。その特定の態様は逆転する場合もあり、及び/又はその進行を細胞内のCCO活性を増加させることによって遅らせることができる。
【0010】
更なる実施形態において本開示は、1つ以上の消失した若しくは減少した細胞機能と関連付けられる障害及び/又は疾患を罹患した患者の治療のための、多重波長光線療法装置、システム及び方法を提供する。前記システム及び方法は、消失した細胞機能を回復させて及び/又は低下した細胞機能を強化して、それにより障害及び/又は疾患を治療するために、患者の1つ以上の細胞に2つ以上の異なる光の波長の調整かつ標的化した送達を含む。これらの実施形態の特定の態様において、消失した又は低下した細胞機能は、細胞内機能に関連付けられかつそれに必要な2つ以上の感光性因子を有する標的細胞内の、細胞内のCCO活性などの細胞内機能を含む。
【0011】
更に他の実施形態において本開示は、眼の細胞の1つ以上の消失した及び/又は低下した機能と関連付けられる眼の障害及び/又は疾患を罹患した患者の治療のための、多重波長光線療法装置、システム及び方法を提供する。前記システム及び方法は、消失した及び/又は低下した眼の細胞に対する機能を回復させて及び/又は強化して、それにより障害及び/又は疾患を治療するために、患者の眼に2つ以上の異なる光の波長の調整かつ標的化した送達を含む。
【0012】
これらの装置、システム及び方法の特定の態様において、眼の障害及び/又は疾患は、急性又は慢性の眼の障害及び/又は疾患である。それは眼の変性疾患(かすみ目又は視力の低下、視力障害、炎症及びコントラスト感度の低下など)を含む。
【0013】
これらの装置、システム及び方法の他の態様において、眼の障害及び/又は疾患は眼症候群(例えば緑内障、萎縮型又は滲出型を含む加齢関連黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、CRS、NAION、レーバー疾患、眼科手術、ブドウ膜炎、高血圧性網膜症、又は脈管若しくは神経学的メカニズムを介する1つ以上の眼の機能を妨げるプロセス、及び視覚神経炎など)である。
【0014】
これらの装置、システム及び方法の更なる態様において、眼の障害及び/又は疾患は、眼瞼炎、眼窩周囲のしわ、脂漏症、又は他の眼瞼皮膚疾患(例えば乾癬及び湿疹など)を含む、急性又は慢性の眼瞼疾患である。
【0015】
これらの装置、システム及び方法の更なる他の態様において、眼の障害及び/又は疾患は、急性損傷(露出性角膜炎若しくはUV角膜炎など)、ドライアイ、ウイルス感染、細菌感染、角膜剥離、角膜浮腫、外科的切開、貫通傷、上強膜炎若しくは強膜炎を含む、急性又は慢性の眼の結膜又は角膜疾患である。
【0016】
これらの装置、システム及び方法の他の更なる態様において、眼の障害及び/又は疾患は、虹彩炎、硝子体炎、眼内炎(細菌及び無菌)を含む、急性又は慢性の前房及び硝子体疾患である。
【0017】
少なくいくつかの実施形態において、装置は、1つ以上の眼の障害若しくは疾患に関連付けられる症状を経験している対象、又は、開閉する瞼、強膜若しくは標的組織への接近を提供する任意の角度アプローチのいずれかと共に、対象の眼による1つ以上の眼の障害又は疾患と診断された対象へPBM治療を提供するのに適応している。装置は、独立型、非依存方式又は遠隔制御からの信号に応答して作動できるコントローラを含むことができる。コントローラは、対象の眼組織に光を送達するのに適している1つ以上の光源を起動させることができる。
【0018】
少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載の装置、システム及び方法は、急性若しくは慢性の眼の疾患などの眼の状態の結果としての影響、若しくはこのような眼の状態に関連付けられる症状を治療する、又は改善するために使用することができる。少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載の装置、システム及び方法は、眼の変性疾患(かすみ目若しくは視力の低下、視力障害、炎症、虚血、解剖学上の沈着(例えばリポフュージョン、βアミロイド若しくはドルーゼン)及びコントラスト感度の低下など)に関連付けられる症状若しくは影響を治療する、又は改善するために使用することができる。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載する装置、システム及び方法は、急性又は慢性の眼症候群(例えば緑内障、萎縮型又は滲出型の加齢関連黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、中心性漿液性網膜症(CRS)、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)、レーバー疾患、眼科手術、ブドウ膜炎、高血圧性網膜症、若しくは脈管若しくは神経学的メカニズムを介する1つ以上の眼の機能を妨げるプロセス、及び視覚神経炎)の症状を有する若しくは経験する対象を治療する、又は対処するために使用することができる。
【0020】
本明細書に記載する装置及び方法は、任意の急性損傷(露出性角膜炎若しくはUV角膜炎など)、ドライアイ、ウイルス感染、細菌感染、角膜剥離、角膜浮腫、外科的切開、貫通傷、上強膜炎及び強膜炎を含む、急性及び慢性の眼の結膜又は角膜疾患を有する対象を治療する、又は対処するために使用することもできる。本明細書に記載する装置及び方法は、虹彩炎、硝子体炎、眼内炎(細菌及び無菌)を含む、急性又は慢性の前房及び硝子体疾患を有する対象を治療する又は対処するために使用することもできる。分類は影響を受けた領域又は病因に基づいて決定されており、いくつかの障害、疾患又は状態は2つ以上の分類の間で重複できることは理解されなければならない。
【0021】
一実施形態において本開示は、患者の眼組織に光線療法を送達する自立型装置を提供する。装置は、内部を有するハウジングと、アイピースであって、ハウジング上に配設され、アイピースに隣接する患者の眼の配置のために構成かつ配置される、アイピースと、第1の治療用波長を有する第1の光線を生成し、ハウジング内に配設される第1の光源と、第2の治療用波長を有する第2の光線を生成し、ハウジング内に配設される第2の光源であって、第2の治療用波長が少なくとも25nmだけ第1の治療用波長とは異なる、第2の光源と、を含む。装置は、開口部及びアイピースを通るように第1及び第2の光線を方向付けて、患者の眼に光線療法を提供するように構成かつ配置されている。
【0022】
別の実施形態で本開示は、患者の眼の眼組織に光線療法を送達する自立型装置を提供する。装置は、内部を有するハウジングと、アイピースであって、ハウジング上に配設され、アイピースに隣接する患者の眼の配置のために構成かつ配置される、アイピースと、第1の治療用波長を有する第1の光線を生成し、ハウジング内に配設される第1の光源と、第2の治療用波長を有する第2の光線を生成し、ハウジング内に配設される第2の光源であって、第2の治療用波長が少なくとも25nmだけ第1の治療用波長とは異なる、第2の光源と、ハウジング内に配設され、第1の治療用波長を有する光を実質的に通過させるように構成かつ配置され、第2の治療用波長を有する光を実質的に反射するように構成かつ配置される、反射フィルターと、を含む。装置は、第1及び第2の光線を反射フィルターに向け、次にアイピースを通過するように方向付けて、患者の眼に光線療法を提供するように構成かつ配置される。
【0023】
他の実施形態において本開示は、患者の眼の眼組織にPBM治療を送達のための装着型装置を提供する。このような装着型装置は、前側片及び前側片から延在する2つのイヤピースを含む、フレームと、第1の治療用波長を有する第1の光線を生成し、フレーム内に又はその上に配設される、第1の光源と、第2の治療用波長を有する第2の光線を生成し、フレーム内に又はその上に配設される第2の光源であって、第2の治療用波長が少なくとも25nm第1の治療用波長とは異なる、第2の光源と、を含む。患者が装着型装置を装着するとき、少なくとも一部の第1及び第2の光線は患者の眼に向かって方向付けされる。
【0024】
関連する実施形態は、患者の眼の眼組織へのPBM治療の送達のための装着型装置である。装置は、前側片及び前側片から延在する2つのイヤピースを含む、フレームと、治療用波長を有する光線を生成し、フレーム内に配設される少なくとも1つの光源と、フレーム内に配設されており、光線を受光して光線を変調するように位置決めされて、変調光線を生成する空間光変調器と、患者が装置を装着するとき、変調光線を受光して少なくとも一部の変調光線を患者の眼に向かって方向付ける、光指向要素と、を含む。
【0025】
更なる実施形態において本開示は、本明細書に記載する器具、装置又はシステムのいずれかを使用して、患者の眼組織に光線療法を提供する方法を提供する。特定の態様において前記方法は、患者の眼の少なくとも1つを装置のアイピースに置くことと、第1の治療用波長又は第2の治療用波長のうちの少なくとも1つを、装置から患者の少なくとも1つの眼に向かって方向付けて、治療効果を生むことと、を含む。他の態様として前記方法は、患者上に装着型装置を置くことと、第1の治療用波長又は第2の治療用波長のうちの少なくとも1つを、装置から患者の少なくとも1つの眼に向かって方向付けて、治療効果を生むことと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示のこれらの及び他の態様は以下の図面に関連してより深く理解されて、図面は種々の実施形態の特定の態様を例証する。
図1A】本開示に従った、眼の光線療法装置の一実施形態の斜視背面図である。
図1B】本開示に従った、図1Aの眼の光線療法装置の正面図である。
図1C】本開示に従った、図1Aの眼の光線療法装置の側面図である。
図1D】本開示に従った、図1Aの眼の光線療法装置の側面図と患者である。
図2】本開示に従った、顎当てを備える眼の光線療法装置の第2の実施形態の一実施形態の側面図である。
図3A】本開示に従った、取り外し可能な患者のインターフェィスを有する眼の光線療法装置の第3の実施形態の斜視背面図である。
図3B】本開示に従った、図3Aの眼の光線療法装置の斜視側面図である。
図4】本開示に従った、光線療法装置と共に使用するための光エンジンの一実施形態の概略断面図である。
図5】本開示に従った、光線療法装置用と共に使用するための追加の光学構成要素を有する図4の光エンジンの一実施形態の概略断面図である。
図6A】本開示に従った、光線療法装置用と共に使用するための光学構成要素の一実施形態の側面斜視図である。
図6B】本開示に従った、患者の左眼に向かう光を共に示す図6Aの光学構成要素の側面斜視図である。
図6C】本開示に従った、患者の右眼に向かう光を共に示す図6Aの光学構成要素の側面斜視図である。
図7】本開示に従った、光線療法を提供するシステムの一実施形態の構成要素の概略ブロック図である。
図8】本開示に従った、光線療法を提供するシステムの空間光変調器の使用の概略ブロック図である。
図9】本開示に従った、装着型の眼の光線療法装置の一実施形態の斜視側面図である。
図10A】本開示に従った、装着型の眼の光線療法装置の第2の実施形態の背面/斜視側面図である。
図10B】本開示に従った、図10Aの眼の光線療法装置の背面図である。
図11A】本開示に従った、装着型の眼の光線療法装置の第3の実施形態の斜視背面/側面図である。
図11B】本開示に従った、図11Aの眼の光線療法装置の前面/側面図である。
図11C】本開示に従った、図11Aの眼の光線療法装置の背面図である。
図11D】本開示に従った、図11Aの眼の光線療法装置の側面図である。
図11E】本開示に従った、着用者の眼に進む光の方向を示す、図11Aの眼の光線療法装置の断面図である。
図12A】本開示に従った、装着型の眼の光線療法装置の第4の実施形態の斜視背面/側面図である。
図12B】本開示に従った、装着型の眼の光線療法装置の第5の実施形態の斜視背面/側面図である。
図12C】本開示に従った、着用者の眼に進む光の方向を示す、図12A又は図12Bの眼の光線療法装置の平面図である。
図13A】本開示に従った、装着型の眼の光線療法装置の第6の実施形態の斜視背面/側面図である。
図13B】本開示に従った、図13Aの眼の光線療法装置の平面図である。
図13C】本開示に従った、図13Aの眼の光線療法装置の側面図である。
図13D】本開示に従った、図13Aの眼の光線療法装置の投射システムの拡大図である。
図14A】本開示に従った、装着型の眼の光線療法装置の第7の実施形態の斜視背面/側面図である。
図14B】本開示に従った、図14Aの眼の光線療法装置の平面図である。
図14C】本開示に従った、図14Aの眼の光線療法装置の側面図である。
図14D】本開示に従った、図14Aの眼の光線療法装置の投射システムの拡大図である。
図15】本開示に従った、光線療法を提供するシステムの一実施形態の構成要素の概略ブロック図である。
図16】本開示のシステム及び方法に従った(実施例1に記載)、多重波長フォトバイオモジュレーション治療実施中の、すべての患者の平均値を示す、治療前(0)及び2、4、6及び12か月での1度当たり1.5サイクル(cpd;log単位)のコントラスト感度の棒グラフである。N=18。コントラスト感度の反復測定ANOVA(1.5サイクル/度):F(4,68)=4.39、pは0.0032未満(すなわち、統計学的に有意)。
図17】3cpd(log単位)のコントラスト感度の棒グラフであって、本開示のシステム及び方法に従った(実施例1に記載)、多重波長フォトバイオモジュレーション治療実施中の、治療前(0)及び治療後2、4、6及び12か月の、すべての患者の平均コントラスト感度値を示す。N=18。コントラスト感度のANOVAを反復測定(3サイクル/度):F(4,68)=11.44、pは0.0001未満(すなわち、統計学的に有意)。
図18】ETDRS視力(logMAR単位)の棒グラフであって、本開示のシステム及び方法に従った(実施例1に記載)、多重波長フォトバイオモジュレーション治療実施中の、治療前(0)及び治療後2、4、6及び12か月の、すべての患者の平均LogMAR ETDRS値を示す。N=18。反復測定ANOVA、産出F(4.68)=18.86、pは0.0001未満(すなわち、統計学的に有意)。
図19】本開示のシステム及び方法に従った、多重波長フォトバイオモジュレーション治療の過程を受けた、萎縮型成人発症型黄斑変性(萎縮型AMD)を罹患した患者の、特に中心黄斑での網膜スキャン及び部位(図19A)、網膜厚(図19B)を示す、光干渉断層撮影(OCT)データ(実施例2に記載され、表1にまとめたデータを代表する)である。
図20】1週当たり3回3週間の治療後の、視力(VA)ETDRSラインの改善に達した患者の眼のパーセンテージを示すグラフである。治療前のベースラインVA平均文字値対3週間治療後のVA平均文字値の間のt検定比較は、統計学的に有意であった(p<0.05)。N=41の眼。
図21】1週当たり3回3週間の治療後の個々の患者における、視力(VA)文字値の変化(基礎環境からの変化)を示すグラフである。治療前のベースラインVA文字値対3週間治療後のVA文字値の間のt検定比較は、統計学的に有意であった(p<0.05)。N=41の眼。
図22】本明細書に開示する方法に従った、フォトバイオモジュレーション(「PBM」)治療プロトコルに従う、解剖病理学的減少(ドルーゼン量)を示すグラフである。データは、1週当たり3回3週間の治療後の個々の患者から得た。治療前のベースラインドルーゼン量対3週間治療後のドルーゼン量の間のt検定比較は、統計学的に有意であった。p<0.05。N=41の眼。これらのデータは、本開示の方法によるPBM治療の治療効果を示す。
図23】PBM治療のベースライン、3週間後、3ヵ月後の、平均視力、コントラスト感度及び中央ドルーゼンを要約する表である。提示されるデータは、患者母集団+/−標準偏差(S.D.)からの平均である。
図24】光の2つ以上の異なる波長の、細胞への調整かつ標的化した送達による、2つ以上の感光性因子の活性を促進して、それにより標的細胞の機能を改善する又は回復する、標的細胞の機能を改善する又は回復するための多重波長光線療法システム及び方法の一実施形態の概略フローチャートである。
図25】CCO活性と関連付けられかつそれに必要な2つ以上の感光性因子を有する細胞への2つ以上の光線量の調整かつ標的化した送達による、細胞のシトクロムcオキシダーゼ(CCO)活性を刺激するための多重波長光線治療装置、システム及び方法の一実施形態の概略フローチャートである。第1の光線量はCCOの第1の感光性因子を活性化することができる第1の波長を有しており、第2の光線量はCCOの第2の感光性因子を活性化することができる第2の波長を有しており、それによってCCOの活性を刺激する。
図26】消失した細胞機能を回復させて又は低下した細胞機能を強化して、それにより障害又は疾患を治療するために、患者の1つ以上の細胞に2つ以上の異なる光の波長の調整かつ標的化した送達による、1つ以上の消失した若しくは減少した細胞機能と関連付けられる障害又は疾患を罹患した患者の治療のための、多重波長光線療法装置、システム及び方法の一実施形態の概略フローチャートである。
図27】眼の細胞の1つ以上の消失した若しくは減少した細胞機能と関連付けられる眼の障害又は疾患を罹患した患者の治療のための、多重波長光線療法装置、システム及び方法の一実施形態の概略フローチャートである。前記システム及び方法は、眼の細胞に対する消失した及び/若しくは減少した機能を回復させて並びに/又は強化して、それにより眼の障害又は疾患を治療するために、患者の眼に2つ以上の異なる光の波長の調整かつ標的化した送達を含む。
図28】本明細書に開示して実施例4で詳述する死体試験で使用する、原則測定場所を示す図である。
図29】本明細書に開示して実施例4で詳述する死体試験から得られた平均フルエンス率(開眼)を示すグラフである。
図30】本明細書に開示して実施例4で詳述する死体試験から得られた平均フルエンス率(閉眼)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書で更に詳細に記載する多重波長光線療法装置、システム及び方法は、損傷した及び/又は疾患のある組織内の細胞応答を含む特定の細胞応答が、2つの異なった波長を有する光の、細胞への調整かつ標的化した送達により促進されることができるという発見に基づく。第1の波長(又は波長の範囲)を有する第1の光線量は、第1の細胞内活性を刺激できて、第2の波長(又は波長の範囲)を有する第2の光線量は、第2の細胞内活性を刺激できる。更に特定の治療効果は、損傷組織を癒やす及び/又は、疾患のある組織の疾患の進行を逆転する若しくは遅らせることに関与する、所望の細胞応答を促進することによって、損傷した及び/又は疾患のある組織で悩む患者において達成することができる。
【0028】
フォトバイオモジュレーション(「PBM」)は、対象(例えばヒト又は動物)への光エネルギー治療を含む、低レベルの光線療法(「PBM」)の非侵襲的形態である。それは生物組織の切断、焼灼又は切除で使用するものより低い照射度であり、未損傷の組織を残す一方で所望のフォトバイオモジュレーションの効果をもたらす。非侵襲的光線療法において、身体の外側に位置決めした光源を使用して治療する内部組織への有効な量の光エネルギーを適用することが望ましい(例えば米国特許第6,537,304号及び同第6,918,922号を参照。両方を参照によりその全体を本明細書に組み込む)。
【0029】
治療的効果は、損傷した及び/又は疾患のある組織の細胞内の1つ以上の細胞応答を促進することによって、損傷した及び/又は疾患のある組織で悩む患者において達成することができる。細胞応答は、2つ以上の光線量の調整かつ標的化した送達により促進されることができる。第1の光線量は第1の波長又は波長の範囲を有して、第1の細胞内活性を刺激でき、第2の光線量は第2の波長又は波長の範囲を有して、第2の細胞内活性を刺激できる。第1及び第2の細胞内活性の調整刺激は所望の細胞応答を促進し、それにより損傷した組織を治癒する、及び/又は疾患のある組織の疾患進行を逆転する又は遅らせるのを容易にする。
【0030】
本明細書に開示する非侵襲的又は最小限に侵襲的多重波長光線療法装置、システム及び方法において、有効な量の光エネルギーは、眼組織により本明細書で例示するように、1つ以上の光源から内部組織に送達される。光源は、(1)身体に対して外側(すなわち非侵襲的)、又は身体内の皮下位置に(すなわち最小限に侵襲的)にあり、並びに(2)異なる及び特定の波長並びに/又は周波数の範囲を有する光を生成できる。特に本明細書に開示する多重波長光線療法システム及び方法は、第1の感光性因子を刺激できる第1の波長又は波長の範囲を有する光、並びに第2の感光性因子を刺激できる第2の波長又は波長の範囲を有する光を使用する。第1の波長を有する光及び第2の波長を有する光の標的化かつ調整した送達は、標的組織内の細胞応答を促進して、それにより損傷した組織を治癒する、及び/又は疾患のある組織の疾患進行を逆転する又は遅らせるのを容易にする。
【0031】
本明細書で更に詳細に記載するように、単独で送達されるとき、このような多重波長光線療法装置、システム及び方法は治療的効果を提供する。治療的効果は、これらのシステム及び方法を1つ以上の低分子薬剤及び/若しくは生物学的薬剤と組み合わせて使用するとき、並びに/又は、第2の治療的に好適な装置及び/若しくは他の治療レジメンと組み合わせて使用するとき、更に強化されることができる。薬剤、生物学的薬剤、装置及び/又は治療レジメンは、多重波長光線療法の対象化かつ調整した送達の前に、それと同時に及び/又はその後に患者に投与することができる。
【0032】
単一の波長又は周波数の範囲、例えば600〜700nmの波長を有する赤色光、又は800〜900nmの波長を有する近赤外線(「NIR」)を示す光は、ミトコンドリアシトクロムcオキシダーゼ(「CCO」)酵素活性を刺激するために使用することができる。本明細書にて開示するように、それぞれが異なる波長及び強度を有する光源の、2つ以上の光源の標的化かつ調整した使用は、実質的に改善された、独特の、付加的又は相乗的な治療的効果を産生することができる。いくつかの態様において治療効果は、目的の細胞及び/若しくは組織に分離して送達されるとき、並びに/又は非標的化、非調整化した方法で送達されるときの各光の波長により示される単独の治療効果より大きくなる可能性がある。
【0033】
更に具体的には光の異なる波長は、標的細胞(例えばミトコンドリアシトクロムcオキシダーゼ(「CCO」)のCuA及びCuB部分)のタンパク質内の構造的かつ機能的に異なる部分を刺激できる。ミトコンドリアCCOのCuA及びCuB部分に光の2つ以上の波長の送達を時間的に調整することによって、CCO酵素を介した電子流及び酸素結合が、(a)CCO活性全体を実質的に改善する、(b)ミトコンドリア膜電位(「MMP」)を回復する、(c)ATP合成のレベルを上昇させるために、それぞれ独立して、連続的に、又は組み合わせて最適化されることができることは、本開示の一部として認識される。更に光の複数の波長のこのような時間的に調整かつ標的化された送達は、前述した、単一の波長光線療法システム及び方法の治療有効性を実質的に高める。
【0034】
したがって本開示の多重波長光線療法装置、システム及び方法は、損傷した及び/又は疾患のある組織のミトコンドリア膜電位(MMP)を回復する及び/又はATP生成を増加させるために、有利に使用されることができる。損傷した及び/又は疾患のある組織は、酸素へアクセスで特性低下を示す。
【0035】
本明細書で更に詳細に記載するように、本開示は、例えば約640nm〜約700nmの波長を有する光の標的化かつ調整した送達が、CCO CuB部分を活性化し、それにより1つ以上のCCO酸素結合部位を占める1つ以上のCCO抑制因子(例えば血管拡張NOなど)を引き離すことを想定している。したがってミトコンドリアからのNOの局所的放出は、局所血流を改善して、それにより損傷した及び/又は疾患のある組織のO及び栄養のレベルを上昇させることに利用できる。約640nm〜約700nmの波長を有する光の標的化送達は、CCO活性部位でのO結合親和性を優先的に増加させて、それによりATPの電子輸送及び好気生成を刺激するのに用いることもできる。
【0036】
更なる例として本開示は、近赤外(「NIR」)光(すなわち、約800nm〜約900nmの波長を有する光)の送達も提供する。NIR光は、シトクロムCからCCOへの光媒介電子移動を容易にして、それにより電子流の効率を改善しかつミトコンドリア膜電位(MMP)を回復することによる、治療的効果を示す。
【0037】
したがって本開示は、2つ以上の異なる波長又は波長の範囲を有する光を使用する装置、システム及び方法を提供する。そのシステム及び方法は調整した送達を含む。それは、所定の光学的パラメータ(例えば送達の持続期間、送達の頻度、連続送達、パルス化した送達、及び送達のフルエンスレベルなど)を有する光の複数の波長の同時送達及び時間的に調整した送達の両方を含み、それによって個々の個別化した治療レジメンを提供する。ミトコンドリア機能を回復、促進及び/又は強化して、結果として損傷した組織の回復を容易にして、及び/又は疾患のある組織の疾患の進行を逆転する、又は遅れせるために、それは最適化される。
【0038】
本明細書に記載されるように、このような多重波長光線療法装置、システム及び方法の種々の態様は、重要な細胞内メデュエーター(例えば、ATP、GTP、一酸化窒素(NO)及び/又は活性酸素種(ROS))に影響を及ぼすように変えることができる。それぞれは、1つ以上のシグナル伝達経路を介して、細胞内刺激を送信する細胞によって使用され、それにより下流の細胞活性/機能を調節する。
【0039】
この種の第2のメッセンジャー媒介細胞経路を制御する、本開示の装置、システム及び方法の能力は、細胞活性の重要な調節メカニズムに影響を及ぼす機会を提供する。例えばプロテインキナーゼは、タンパク質標的のリン酸化反応をもたらす酵素の主要な種類を表す。プロテインキナーゼの活性基質であるATPは、高エネルギーのリン結合をタンパク質標的へ転送する。したがってタンパク質活性は、1つ以上の部位で標的タンパク質のリン酸化によって増減されることができる。結果として酵素活性及び/又は細胞経路は、細胞へのATPの有効性及び細胞内のATPのレベルにより制御されることができる。例えばそれは、1つ以上のプロテインキナーゼによる、1つ以上のタンパク質標的の抑制又は活性化により達成されることができる。
【0040】
本開示の一部として、光の複数の波長の使用は、シグナル伝達を調整すること、プロテインキナーゼ活性を媒介すること、細胞パフォーマンスを改善すること及び細胞機能を回復することによって、損傷した及び/又は疾患のある組織を治療するための固有の機会を提供することがわかった。
【0041】
本明細書にて開示する多重波長光線療法装置、システム及び方法は、細胞の遺伝子発現を調整かつ制御するため、及び損傷した及び/又は疾患のある組織の細胞機能を回復するために容易に適応することができる。遺伝子発現パターンは、後の細胞活性に影響する多数の経路を調整かつ制御するために細胞によって使用される。例えば多重波長光線療法システム及び方法は、細胞代謝に伴う複数の遺伝子の遺伝子発現パターンを変えるのに使用するために適応することができる。電子鎖輸送に伴う複数の遺伝子の制御において、エネルギー代謝及び酸化的リン酸化は、細胞の代謝能を回復させて及び/又はATP生成を刺激するために利用できる。それは他の多面発現プロセスを刺激することができて、1つ以上の細胞機能の長期の改善及び/又はその正常化を集合的に容易にすることができる。関連する態様において、本明細書にて開示する多重波長光線療法システム及び方法は、NFkβ、炎症経路及び遺伝子発現の主要な細胞制御因子に影響を及ぼすのに適応することもできる。
【0042】
本明細書で詳述する、これら及び他の発見に基づき、本開示は以下を提供する。
1.細胞及び/又は組織のシトクロムcオキシダーゼ(CCO)活性を刺激する方法を提供するための多重波長光線治療装置、システム及び方法。その方法は、CCO活性と関連付けられる2つ以上の感光性因子を有する細胞への2つ以上の光線量の調整送達を含む。各光線量は、異なる波長又は周波数の範囲を有する。第1の光の波長は第1の感光性因子を刺激でき、第2の光の波長は第2の感光性因子を刺激でき、それにより標的細胞、特に標的組織内の標的細胞の1つ以上の機能を改善する、及び/又は回復することができる。
2.標的細胞の1つ以上の機能を改善する及び/又は回復させる、多重波長光線療法装置、システム及び方法。そのシステム及び方法は、2つ以上の異なる光の波長の細胞及び/又は組織への調整かつ標的化した送達を含んでおり、このことにより2つ以上の感光性分子の活性を促進して、それによって、標的細胞、特に標的組織内の標的細胞の1つ以上の機能を改善する及び/又は回復させる。
3.1つ以上の消失した及び/若しくは減少した細胞機能と関連付けられる障害並びに/又は疾患を罹患した患者の治療のための、多重波長光線療法装置、システム及び方法。このシステム及び方法は、患者の1つ以上の細胞に対する2つ以上の異なる光の波長を調整かつ標的化した送達を行って、それにより消失した細胞機能を回復させて及び/又は低下した細胞機能を強化して、それにより障害及び/又は疾患を治療することを含む。
4.眼の細胞の1つ以上の消失した及び/又は低下した機能と関連付けられる眼の障害及び/又は疾患を罹患した患者の治療のための、多重波長光線療法装置、システム及び方法。このシステム及び方法は、消失した及び/又は低下した眼の細胞に対する機能を回復させて及び/又は強化して、それにより障害及び/又は疾患を治療するために、患者の眼に2つ以上の異なる光の波長の調整かつ標的化した送達を含む。
【0043】
本開示のこれらの及び他の態様は、以下の非限定的な定義を参照することで、更に理解することができる。
【0044】
定義
以下の用語は当業者に十分理解されると考えられている一方で、以下の定義は本明細書にて開示する内容の説明を容易にするために記載される。
【0045】
他に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術的及び科学的用語は、本発明にて開示する内容が属する分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと類似した又は同等の任意の方法、装置及び材料を、本明細書で開示する内容を実施又は試験するために使用することが可能であるが、代表的な方法、装置及び材料をここで記載する。
【0046】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用する、成分量、反応条件等などを表すすべての数値は、いかなる場合においても、「約」という語で修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうでない旨の指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする望ましい特性に応じて変更可能な概算値である。本明細書で使用する場合「約」という用語は、値、又は質量、重量、時間、容量、濃度又はパーセンテージの量を意味する場合、指定された量から、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、いくつかの実施形態では±0.1%の差異を含むことを意味しており、このような差異は開示された方法を実行するために適切である。
【0047】
特に明記しない限り、用語は「開かれている」ことを目的としていると理解されよう(例えば、用語「含有する」は「含有するが、これに限定されるものではない」と解釈されなければならず、用語「有する」は「少なくとも有する」と解釈されなければならず、用語「含む」は「含むが、これに限定されるものではない」と解釈されなければならないなど)。例えば「少なくとも1つ」及び「1つ以上」という語句、並びに「a」又は「an」などの用語は、両方とも単数及び複数を含む。特許請求の範囲を含む本出願で使用する場合、長年の特許法慣例に従って、用語「a」、「an」及び「the」は「1つ以上」を意味する。すなわち例えば「細胞」への言及は、複数のこのような細胞を含むなど。
【0048】
例えばとりわけ条件つきの言語「できる」「できた」「かもしれない」「してよい」は、特に言及されない限り又は使用される文脈内で理解されない限り、特定の実施形態は特定の特徴、要素及び/又は工程を含むが、他の実施形態は含まないことを伝達することを通常目的とする。したがって、特徴、要素及び/又は工程がいかなる場合であっても1つ以上の実施形態に必要とされる、又は、ユーザー入力又は指示の有無にかかわらず、これらの特徴、要素及び/又は工程が含まれる若しくは又は任意の具体的実施形態で実行されることになっているか決めるための論理を、1つ以上の実施形態が必ずしも含むことを意味することを、このような条件つきの言語は一般に目的としない。
【0049】
開示の特徴又は態様がマーカッシュ群に関して記載されている場合、開示がマーカッシュ群の個々の部分又はサブグループに関しても記載されていることも目的とすると更に理解されよう。
【0050】
これらに限定されないが、米国、PCT又は米国以外の外国に関わらず、特許、特許出願、特許公報、すべて技術的及び/又は科学的な刊行物を含む、本明細書に引用したすべての文献は、前述、後出を問わず、その全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0051】
本明細書で使用する場合「光線療法」という用語は、1つ以上の治療的効果を達成するための、対象(例えばヒト又は他の哺乳動物)への光エネルギーの治療的送達を意味する。「光線療法」という用語は「低レベルの光線療法」又は「PBM」を含み、それは、1つ以上の所望の生体刺激効果を促進できる照射レベルで若しくはそれを超えている、又は生物組織を切断、焼灼及び/若しくは切除できる照射レベル未満での、照射レベルでの光エネルギーの治療的送達を意味する。米国特許第6,537,304号及び同第6,918,922号を参照し、これらはその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0052】
本明細書で使用する場合「光源」という用語は、光学出力を提供するように構成される(例えば、患者の眼組織などの標的組織に光線療法装置から光を送る)光線治療装置(別称、光線療法装置)の要素を意味する。本明細書で使用する場合「赤色光」という用語は約640nm〜約700nmの波長を有する光を意味し、「近赤外線」又は「NIR」という用語は約800nm〜約900nmの波長を有する光を意味する。
【0053】
本明細書で使用する場合「シトクロムcオキシダーゼ」、「CCO」、「複合体IV」及び「EC1.9.3.1」という用語は、ミトコンドリアで生じて、真核細胞のミトコンドリア膜内に位置する大きな膜貫通タンパク質複合体を意味する。CCOは、ミトコンドリアのミトコンドリア呼吸電子輸送連鎖の最後の酵素であり−4つのシトクロムc分子のそれぞれから電子を受け取り、それらを酸素分子へ移し、及び分子酸素を水の2つの分子に転化する。CCOは内水相からの4つのプロトンを結合して水を作り、膜を渡って4つのプロトンを転位置させて、それによって膜貫通プロトンの電気化学ポテンシャルを確立して、それはATP合成においてATPシンターゼによって使用される。
【0054】
本明細書で使用する場合「治療」「治療すること」「治療的レジメン」及び「治療レジメン」という用語は、損傷した組織の治癒を促進する、及び/又は疾患のある組織の疾患の進行を逆転させる若しくは遅らせる、治療的なシステム及び方法を意味し、それは損傷した及び/又は疾患のある組織内の細胞の1つ以上の機能を回復することによって達成できる。「治療」「治療すること」「治療的レジメン」及び「治療レジメン」という用語は、治療システム又は方法を提供するために用いるプロトコル及び付随する手順を含み、眼細胞及び組織を含む、1つ以上の標的細胞及び組織に光を照射する1つ以上の期間を含む。
【0055】
本明細書で使用する場合「標的」「標的区域」及び「標的領域」という用語は、特定の状態、疾患、障害又は損傷(例えば眼の状態、疾患、障害若しくは損傷)の治療に関連して光が送達される、組織(例えば網膜又は視神経)内の特定の眼の区域、領域、位置、構造、集団又は投射を意味する。特定の実施形態では、眼などの組織の照射部位はすべての組織を含むことができる。他の実施形態において、組織の照射部位は、組織の標的領域(例えば眼の網膜領域、黄斑又は角膜)を含むことができる。
【0056】
本明細書で使用する場合「変性」という用語は、主要な破壊的事象(例えば外傷又は手術)から生じると共に、主要な破壊的又は疾患事象が理由で、細胞により生じる持続性、遅延性及び進行性破壊メカニズムから生じる細胞破壊のプロセスを一般に意味する。
【0057】
本明細書で使用する場合「主要な破壊的事象」という用語は、疾患過程、又は手術を含む、身体的障害若しくは侵襲を意味するが、他の疾患及び状態を含む。眼の障害及び疾患の場合、緑内障、加齢関連黄斑変性症、糖尿病性網膜症、糖尿病性網膜症、CRS、NAION、レーバー疾患、眼科手術、ブドウ膜炎、局所的視神経虚血を含む脳虚血、及び、眼神経又は網膜の挫傷若しくは圧迫損傷又は眼の変性を生じる任意の急性損傷若しくは侵襲を含む身体的外傷(例えば眼組織への挫傷又は圧迫損傷など)を含むことができる。
【0058】
本明細書で使用する場合「二次破壊メカニズム」という用語は、これらに限定されないが、アポトーシス、ミトコンドリア膜透過性の変化が理由の細胞エネルギー貯蔵の欠乏、過剰なグルタミン酸塩の再摂取の放出又は失敗、フリーラジカル損傷、再灌流傷害、リポフスシン及びβ−アミロイドを含む不溶性タンパク質の堆積、並びに補体、サイトカイン及び炎症状態の活性を含む、神経毒性分子の生成及び放出につながる、任意のメカニズムを意味する。
【0059】
本明細書で使用する場合「細胞保護作用」という用語は、組織の変性喪失が主要な破壊事象又は二次破壊メカニズムと関連付けられる疾患メカニズムによるかに関わらず、主要な破壊事象後の変性による、眼組織など標的組織の他の不可逆的損失を遅くする、又は予防する治療戦略を意味する。
【0060】
主要及び二次メカニズムの両方は「危険区域」を形成する一因ともなり、主要な破壊事象後も生存した危険区域内の組織は、後遺症を有する1つ以上の過程が故に死の危険性が残存する。
【0061】
本明細書で使用する場合「回復」という用語は、比較できる通常の細胞(健康な個人からの組織など比較できる損傷しておらず、かつ無疾患組織からの細胞など)の機能に等しい又はそれより高いレベルへの、細胞(例えば損傷した及び/又は疾患のある組織からの細胞など)機能の増加を意味する。
【0062】
本明細書で使用する場合「有意性」又は「有意で」という用語は、2つ以上のエンティティの間の非ランダムな関連があるという確率の統計分析を意味する。関係が「有意で」ある又は「有意性」を有するか判断するために、データの統計操作は「p値」として表される確率を計算するために実施されることができる。ユーザー定義のカットオフ点を下回るこのようなp値は、有意であるとみなすことができる。いくつかの実施形態で0.05以下、いくつかの実施形態で0.01未満、いくつかの実施形態で0.005未満、いくつかの実施形態で0.001未満のp値は有意であるとみなすことができる。
【0063】
本明細書中で使用する場合「診断した」という用語は、損傷及び/又は疾患組織に関してなされた判定を意味する。本多重波長光線療法システム及び方法を使用する又は実行する前に、診断がなされてもよい。
【0064】
例えばとりわけ条件つきの言語「できる」「できた」「かもしれない」「してよい」は、特に言及されない限り又は使用される文脈内で理解されない限り、特定の実施形態は特定の特徴、要素又は工程を含むが、他の実施形態は含まないことを伝達することを通常目的とする。したがって、特徴、要素又は工程がいかなる場合であっても1つ以上の実施形態に必要とされる、又は、ユーザー入力又は指示の有無にかかわらず、これらの特徴、要素又は工程が含まれる若しくは又は任意の具体的実施形態で実行されることになっているか決めるための論理を、1つ以上の実施形態が必ずしも含むことを意味することを、このような条件つきの言語は一般に目的としない。用語「又は」は、特に明記しない限り、包括的な「又は」である。
【0065】
光送達装置
特定の態様において本開示は、自立型及び装着型の眼の多重波長光線療法装置を含む、眼の多重波長光線療法装置及び関連する治療方法を提供する。損傷した又は疾患のある眼組織の治癒を促進できる、光の選択された波長に眼をさらす装置及び方法である。例えば、施設で使用する自立型、若しくは自宅若しくは他の場所で使用する装着型機器又は装置は、低レベル光の治療的、個々に制御された多重波長の組み合わせを眼組織に送達できる。治療は例えば、単独で多重波長光線療法を送達できる眼科装置で、損傷した又は疾患のある組織を標的化すること含むことができる。装置及びセンサー又は他の画像診断法を、最適な眼の空間及び組織パラメータを確立して、有効な眼の治療を提供するための使用することができる。少なくともいくつかの実施形態において多重波長装置は、眼組織への光線療法を強化する又は個別化するために、他の医薬品又は装置と組み合わせて用いられる。
【0066】
選択された波長の調整、独立した使用及び多重波長PBMの選択された組み合わせの適用は、高度に標的化された有益な細胞応答を作成することができる。少なくともいくつかの実施形態において、眼疾患又は障害を治療する治療的アプローチは、2つ以上の波長だけを組み合わせて、又は医療装置と生物学的薬剤又は医薬品と組み合わせて1つ以上の波長を使用して、所望の治療的有用性を提供することができる。
【0067】
個々の波長(例えば赤色光(640〜700nm)又は近赤外(NIR)光(800〜900nm))の使用は、in vitro及びin vivoの両方の実験研究で見つかったように、ミトコンドリアシトクロムcオキシダーゼ(CCO)酵素活性をそれぞれ独立して刺激できる。しかし個々の波長は、CCOのマルチサブユニット内で異なる銅部位(例えば、CuA及びCuB)を標的として、異なる生物学的反応を生じさせることがわかった。したがってCuA及びCuBを標的とするため、並びにCCO酵素上の電子移動及び酸素結合の両方を連続的に強化するための組み合わせでの両方の波長の調整使用は、少なくともいくつかの実施形態において、全体の治療的CCO効果を改善することができる。CCO活性の効率、ミトコンドリア膜電位(MMP)の回復及びアデノシン三リン酸(ATP)合成の改善は、すべて密接に関連している可能性がある。この多重波長アプローチは、少なくともいくつかの実施形態においては、MMPを回復する又はATP生成を増加させる(例えば酸素の欠如又はその限定的利用が見られる疾患又は障害において)ために使用してもよい。
【0068】
一実施例において血流が制限されるとき、1つの波長の使用(CuB上の640〜700nmの範囲)は、一酸化窒素(NO)などの阻害物質を酸素結合部位から最初に移すことができる。NOは強力な血管拡張物質であり、ミトコンドリアからの局所的NO放出は、O及び栄養分を疾患のある組織領域に増加させて、局所血流を改善する。更に640〜700nmの範囲の波長を有する光による刺激は、O結合親和性を活性部位に優先して増加させて、電子輸送及び酸素生成ATPを刺激できる。他の例では、シトクロムCからCCOへ電子の電子鎖移動が機能不全である場合、ATP生成を解決するためのより実行可能な経路は、例えば810nm(又は800〜900nmの範囲)でNIRによりCuA治療を標的にすることができ、シトクロムCからの光媒介の電子の移動、及びMMP回復による電子流の改善された効率を提供できる。
【0069】
いくつかの実施形態では、所定の光学的パラメータ(例えば、持続期間、頻度、連続的若しくはパルス化、フルエンスレベルなど)の同時の又は順番での使用は、ミトコンドリア機能を回復するための治療を提供できる。それぞれ独立して制御された多重波長光線療法の利用は、治療的有効性の強化又は最適化を可能にして、及び障害若しくは疾患状態を監視する、又はそれに合わせて調整することができる。
【0070】
多重波長光線療法の使用は、重要な細胞内メディエータを達成するために必要に応じて調整することができる。ATP、グアノシン三リン酸(GTP)、NO、活性酸素種(ROS)はすべて、シグナル伝達のための活性基質としての細胞により使用されて、それは細胞内刺激を伝達するための公知の方法であり、それにより多数の細胞経路及び次の細胞活性を調節する。特定の第2のメッセンジャーによる細胞経路の制御は、細胞活性の重要な制御因子メカニズムを提供できる。プロテインキナーゼは、タンパク質標的のリン酸化をもたらす酵素の主要な種類を表す。ATPはプロテインキナーゼの活性基質であり、高エネルギーリン結合を標的タンパク質へ移送するために用いる。タンパク質活性は、1つ以上のリン酸化部位により増減し得る。したがって酵素又は細胞経路活動は、細胞のATP及びATPレベルの利用によって、プロテインキナーゼによる特定のタンパク質標的の抑制又は活性化によって大いに制御されることができる。
【0071】
複数の光の波長の使用により、例えばシグナル伝達を調節できる、プロテインキナーゼ活性を媒介できる、細胞パフォーマンスを改善できる、又は損傷又は疾患のある組織の細胞機能を回復できる。1つ以上の波長からの光子の組み合わせ利点により、特定の経路に影響を及ぼす第2のメッセンジャーの調整を容易にすることができる。例えば光線療法は、組み合わせ光線療法の役割においてNO、ROS又はATP監視の使用を含んで、フォトバイオモジュレーションの適用に適した特性を確立できる。
【0072】
別途、複数の光の波長の使用は、細胞の遺伝子発現を調整かつ制御して、損傷又は疾患のある組織の細胞機能を回復するために利用できる。遺伝子発現パターンは、後の細胞活性に影響する多数の経路を調整かつ制御するために細胞によって使用される。光線療法(670nm)は、細胞代謝に伴う複数の遺伝子における遺伝子発現パターンを変えることに関与している。電子鎖輸送に伴う複数の遺伝子の制御において、エネルギー代謝及び酸化的リン酸化が見られ、それにより細胞の代謝能を回復させて、ATP生成の増加を刺激する。それは、他の多面発現プロセスを刺激して、すべては細胞機能の長期の改善又はその正常化をもたらす。光線療法は、NFkβ、炎症経路及び遺伝子発現の主要な細胞制御因子に影響を及ぼすことができる。1つ以上の波長からの光子の組み合わせ利点により、特定の経路の遺伝子発現を標的化して調整できる。多重波長光線療法における遺伝子発現マッピングは、フォトバイオモジュレーション適用に適している特徴を確認するために用いることができる。
【0073】
少なくともいくつかの実施形態において、遺伝子治療と組み合わせた光線療法の使用は、ウィルスベクター又は他の遺伝子治療技術により核内に組み込まれる新規の遺伝子の調節及び発現を刺激できる、強化できる、又は制御できる。これは光で活性化した遺伝子産物を使用することとは異なり、選択された波長を利用して、新しく埋植した遺伝子治療のための細胞遺伝子発現プロファイルを自然に刺激する。少なくともいくつかの実施形態において、遺伝子治療の使用は網膜組織の再生を容易にして、ミトコンドリアの遺伝的眼障害(レーバー遺伝性視神経障害又はAMDなど)の遺伝子治療を提供することができる。そのような場合、特定のミトコンドリアの電子輸送タンパク質発現を刺激するフォトバイオモジュレーションと併用した遺伝子治療は、より良好な又は最適化した併用治療のアプローチを提供できる。
【0074】
別途、RNA及びタンパク質発現パターンは細胞によって用いられて、多数の経路及びその後の細胞活性を効果的に調整する。複数の光の波長は、RNA及びタンパク質発現を間接的に調整かつ改善して、損傷又は疾患のある組織の細胞機能を回復するために用いることができる。タンパク質マッピングは光線療法と併用して、フォトバイオモジュレーションの適用に適している特性を特定することができる。AMDは、慢性炎症性疾患と考えられており、タンパク質沈殿物が炎症の状態及び疾患の進行を更に拡大する。したがって多重波長PBMの使用は、併用治療を提供できる。RPE細胞実験で、590nmの光の使用はVEGF発現を抑制することを示し、したがって590nmのPBM(又は500〜650nmの範囲の別の波長)の使用は滲出型AMDサブタイプの治療に有用で、眼組織の局所的なVEGFタンパク質発現を抑制できる。
【0075】
VEGF抗体治療(Lucentis(登録商標))は、滲出型AMDのため現在承認されている薬剤治療である。別途、810nmのPBM(又は800〜900nmの範囲の別の波長)の使用はミトコンドリア機能を改善することができる、炎症マーカーを減らすことができる、又は加齢性アルツハイマーのマウスのβアミロイド沈殿を防ぐことができる(又はこれらの影響の任意の組み合わせ)。更に、670nmのPBM(又は600〜750nmの範囲の別の波長)の使用は、AMDマウスモデルの補体C3発現及び沈殿のような炎症マーカーを減らすことができるが、βアミロイド沈殿に影響を及ぼさない。リポ融合及びβアミロイド両方の沈殿は、AMD患者の疾患のある眼の病因に関係していた。多重波長PBMの組み合わせは、単独で使用することができる、又は1つ以上の薬剤(例えば1つ以上の抗VEGFモノクローナル抗体(MAb)(Lucentis(登録商標)及びAvastin(登録商標))、抗炎症剤(例えば非ステロイド性抗炎症剤、抗補体剤(例えば、Properidin、C3、MASP−2、C5抑制剤)、酸化防止剤又はビタミン剤(例えば、AREDSサプリメント(Lipotriad Visonary(商標)、Viteyes2(登録商標)、ICaps(登録商標)及びPreserVision(登録商標)、類似する成分を異なる比率で又は追加成分と共に含有する))、又は視覚サイクルかく乱剤(例えばイソメラーゼ抑制剤(ACU−4429))と共に使用することができる。
【0076】
少なくともいくつかの実施形態において、増加したCCO活性、MMPの回復及びATP合成の調節を介してミトコンドリア機能を改善するための、光線療法の標的化使用は、複数の光の波長を用いて達成されて、損傷又は疾患に好適な局所的細胞応答を生成することができる。外傷及び疾患の局所的細胞状態は、別々の組織又は器官領域で異なる可能性があり、動的な局所調節下にある。例えば局所CCO活性の光線療法は、O結合部位からの阻害NOの放出につながる可能性がある。NOは、標的組織に局所血流を調節できる、強力な血管拡張物質及び信号トランスデューサである。これは、損傷した又は疾患のある組織に局所虚血又は制限血流を逆転させるのに有用であり得る。
【0077】
少なくともいくつかの実施形態において、治療は、網膜及び関連する周囲の眼組織型内などの組織を、光線療法の別々の標的とすることを含むことができる。例えば、それは、非動脈炎性虚血性視神経症(NAION)で見られる別々の局所視神経虚血の治療に最も有益であり得る。別の例では、萎縮型AMDの炎症、虚血又は疾患における病巣であり得る細胞沈殿の解剖学的島を標的とするために最も有益であり得る。初期段階のAMDにおいて、リポ融合又はドルーゼンの別々の細胞沈着は、標準画像技術(OCT、蛍光画像)によって網膜に確認されることができる。このような実施例において画像診断法(例えばOCT又は蛍光)の使用は、多重波長光線療法を標的化して、疾患を遅らせ、タンパク質(例えばリポ融合又はβアミロイド)の沈着を止める又は逆転させて、疾患の進行を低減する、遅らせる又は止めるために用いることができる。
【0078】
これらの標的化した光線療法の適用は、慢性眼疾患に疾患修飾アプローチを提供する。器具は、単独で、又は、波長を組み合わせて目的及び対象細胞又は組織の境界の分離領域を確認して、患者の治療を強化する、最適化する又は個別化するためのアプローチとしてのOCT若しくはいくつかの他の画像装置(例えば、PET、MRI、超音波、ドップラー、蛍光、フェムトセンサーなど)と組み合わせて光線療法を生成できる。
【0079】
別のこのような実施例において、画像診断法(例えば局所網膜O濃度をモニタするフェムトセンサー)は、AMD患者を局所低酸素で識別する、光線療法と組み合わせて治療を改善する、増加したO濃度を監視してミトコンドリア網膜機能を回復するために使用することができる。
【0080】
少なくともいくつかの実施形態において、波長及び光線量及び治療パラメータの選択は、基礎疾患又は障害に応じて変化できる。光の複数の波長の個別の標的化は、1つ以上の局所光線療法、個別化した患者の光線療法、回復した細胞パフォーマンスを促進する、又は眼疾患の伝播を減速する若しくは止めることができる。これらのアプローチは単独で、既存の診断装置と併用して、又は光線療法及び診断法を併用する手段として、実行することができる。
【0081】
少なくともいくつかの実施形態において、フォトバイオモジュレーションは波長及び照射量パラメータの選択を含む。異なる波長は個々の組織吸収特性を有しており、それは浸透の深さ及び臨床的有効性のための好適な照射量に影響を与える。装置は構成要素(例えばカメラ又は他のセンサー)を含むことができ、それは深さ、サイズ、肌の色又は距離を含む患者の眼窩の特徴を捕えるために用いることができる。これによって、治療パラメータを強化する又は最適化するために、各波長の照射量を個別に又は既定値で組み合わせて設定することが可能になる。少なくともいくつかの実施形態において、センサーは、例えば組織の色又は厚みを考慮して、開閉眼瞼による照射量の選択を補助するために使用することができる。
【0082】
少なくともいくつかの場合で、光源と標的組織の間にいくらかの介在組織がある。少なくともいくつかの実施形態において、介在組織による吸収が損害をもたらす未満になるように、光の波長を選択できる。このような実施形態は、標的組織部位で低いが有効な照射度(例えば、約100μW/cm〜約10W/cmの間)で光源の出力を設定する、又は、治療している標的組織部位で有効なエネルギー密度を達成するために、組織に適用される光の時間的プロファイル(例えば、時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル、パルス周波数)、若しくは数百マイクロ秒〜分で光エネルギーの適用期間を設定することを含むことができる。他のパラメータも光線療法の使用で変化することができる。これらの他のパラメータは、実際に治療組織に送達されて、光線療法の有効性に影響を及ぼすことができる、光エネルギーに役立つ。
【0083】
少なくともいくつかの実施形態において、対象の組織の標的領域は、例えば視神経及び周囲の眼組織への損傷の領域を含む。いくつかの実施形態では、標的領域は眼の一部を含む。
【0084】
少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載する光線療法の装置及び方法は、眼の障害を治療するために用いる。本明細書で使用する場合、眼の障害とは、眼症候群(例えば、緑内障、加齢関連黄斑変性症、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、CRS、NAION、レーバー疾患、眼科手術、ブドウ膜炎など、及び本出願を通して記載される更なる徴候を含むがこれらに制限されない)の少なくとも1つの特徴又はそれを呈している症状を意味することができる。
【0085】
少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載する光線療法の装置及び方法は、身体的外傷(例えば、白内障又はレンズ手術)、若しくは眼の炎症若しくは変性の他の原因を治療する、又は身体的外傷によって生じる眼の変性の影響のリハビリテーションを助けるために用いる。眼の変性は、例えば主要な破壊事象(眼の外傷又は手術など)から、同様に主要な破壊若しくは疾患事象の発生が故に、細胞により生じる二次的な遅延かつ進行性破壊メカニズムから生じる細胞崩壊のプロセスを含むことができる。
【0086】
主要な破壊事象は、疾患プロセス又は手術を含む身体的損傷又は傷害を含むことができ、他の疾患及び状態(例えば緑内障、加齢関連黄斑変性症、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、CRS、NAION、レーバー疾患、眼科手術、ブドウ膜炎、局所的視神経虚血を含む脳虚血、及び身体的外傷(焦点性視神経虚血を含む脳虚血及び物理的な外傷(例えば眼神経又は網膜の挫傷若しくは圧迫損傷を含む、眼組織への挫傷若しくは圧迫損傷、又は眼の変性を生じる任意の急性損傷若しくは侵襲)も含むことができる。
【0087】
二次破壊メカニズムとは、これらに限定されないが、アポトーシス、ミトコンドリア膜透過性の変化が理由の細胞エネルギー貯蔵の欠乏、過剰なグルタミン酸塩の再摂取の放出又は失敗、フリーラジカル損傷、再灌流傷害、リポフスシン及びβ−アミロイドを含む不溶性タンパク質の堆積、並びに補体、サイトカイン及び炎症状態の活性を含む、神経毒性分子の生成及び放出につながる、任意のメカニズムを含むことができる。主要及び二次メカニズムの両方は、眼組織において「危険区域」を形成する一因ともなり、その区域の組織は少なくとも一時的に主要な破壊事象後も生存したが、後遺症を有する過程故に死の危険性がある。
【0088】
少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載する装置及び方法は、細胞保護作用を提供するために用いる。細胞保護作用とは、組織の変性喪失が主要な破壊事象又は二次破壊メカニズムと関連付けられる疾患メカニズムによるかに関わらず、主要な破壊事象後の変性による、眼組織の他の不可逆的損失を遅くする、又は予防する治療戦略を含むことができる。
【0089】
少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載する装置及び方法は、眼の機能を改善する、眼の強化を提供する、眼機能の喪失の進行を防ぐ若しくは遅らせる、若しくは以前に失われた眼の機能を回復する、又はこれらの任意の組み合わせのために使用する。眼の機能とは、視力機能及びコントラスト感度機能を含むことができる。
【0090】
眼の機能に影響を及ぼす疾患又は状態は、主要な破壊事象、疾患過程、又は身体的損傷若しくは傷害(加齢関連黄斑変性症、並びに他の疾患及び状態(緑内障、脳卒中、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、CRS、NAION、レーバー疾患、眼科手術、ブドウ膜炎、局所的視神経虚血を含む脳虚血、及び身体的外傷(焦点性視神経虚血を含む脳虚血及び物理的な外傷(例えば眼神経又は網膜の挫傷若しくは圧迫損傷を含む、眼組織への挫傷若しくは圧迫損傷、又は眼の変性を生じる任意の急性損傷若しくは侵襲)を含む)を含むが、これらに限定されない。
【0091】
本明細書で使用する場合「治療用レジメン」「治療レジメン」という用語は、光が1つ以上の眼の標的領域に照射されている期間中の、1つ以上の期間を含む、治療的処置を提供するために用いるプロトコル及び関連する手順を意味する。本明細書で使用する場合「標的」「標的区域」及び「標的領域」という用語は、特定の眼の状態、疾患、障害若しくは損傷の治療に関連して光が照射される、特定の眼の区域、領域、位置、構造、集団又は投射(例えば網膜又は視神経内の)を意味する。少なくともいくつかの実施形態において、眼の照射部位は眼全体であり得る。他の実施形態において、眼の照射部位は、眼(例えば網膜領域、黄斑又は角膜)の標的領域である。
【0092】
少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載する装置及び方法は、網膜又は眼疾患用に、内在性原種網膜幹細胞の増殖、遊走及び移行を促進するために用いることができる。幹細胞は、自動再生する、及び有糸分裂後細胞を生成する、両方の能力を有する。網膜色素上皮(RPE)は、神経網膜の根底にあり、それ支持する細胞の単層である。それは可塑的組織としてはじまり、いくつかの種ではレンズ及び網膜を生成するが、成長の初期に分化して、通常生涯にわたって非増殖性であり続ける。しかし成人RPE細胞の部分母集団は、自己再生細胞、RPEマーカーを失う網膜色素上皮幹細胞(RPESC)にin vitroで活性化することができ、広範囲に増殖して、安定した玉石状RPE単層内に再分化することができる。クローン研究はRPESCが多能性であることを証明しており、一定の条件において神経及び間葉の子孫を生成できる。この可塑性はヒトの病理を説明し、そこで間葉の運命が眼で、例えば増殖性硝子体網膜症(PVR)及び眼球萎縮で見られる。利用可能なヒトCNS由来の多能性幹細胞、RPESCは、運命選択、補充治療及び疾患モデリングの研究に有用である。
【0093】
少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載する装置及び方法は、網膜又は眼疾患で使用する増殖、遊走及び再生細胞特性、その後の幹細胞の増殖を促進するために用いることができる。幹細胞を中心とした治療は、網膜変性疾患の治療で研究が続けられている。網膜幹細胞は、ヒトを含むいくつかの哺乳動物の種から単離された。しかしこれらの細胞の移植は、遊走して、ホスト網膜内に組み込まれる細胞の限定された能力が故に、最小限しか成功していない。骨髄由来幹細胞で代替できるかもしれないが、骨髄は、造血幹細胞、間葉系幹細胞、及び間葉組織に分化するが、おそらく他の組織型にも分化する非造血細胞の異質母集団を含む、複数の種類の分化可能/多能性細胞を含んでいる。
【0094】
少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載する方法及び装置は、網膜疾患及び障害のため細胞を中心とした治療又は再生治療に適用できる組成物及び方法と組み合わせて用いることができる。少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載する方法及び装置は、幹細胞(例えば、Very Small Embryonic様幹細胞(VSEL)、間葉系幹細胞、外胚葉幹細胞など)を使用する網膜組織の再生又は修復のために、医薬組成物、装置及び方法と共に使用することができる。
【0095】
例えば本明細書に記載する方法及び装置は、個人の網膜組織に外胚葉幹細胞集団をそれを必要とする個人に実施した後、及び間葉系幹細胞集団を個人に静脈内投与した後、網膜障害をPBMで治療する方法にて、使用可能である。外胚葉幹細胞は、胎児の神経組織由来でもよい。少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載する方法及び装置は、臍帯血、成人の骨髄及び胎盤のうちの少なくとも1つから選択される供給源から間葉系幹細胞集団を得る際にて、使用可能である。少なくともいくつかの実施形態において、本明細書に記載する方法及び装置は、黄斑変性症、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症、緑内障又は角膜縁上皮細胞欠損症を含む、1つ以上の疾患又は障害を治療するために使用することができるが、これらに限定されない。少なくともいくつかの実施形態において、細胞はin vitroで誘導されて、投与前に細胞又は上皮血統細胞に分化して、PBMで予め調整される。他の実施形態において、細胞は、少なくとも1つの他の薬剤(例えば眼治療のための薬剤、又は他の有益な補助剤(例えば抗炎症薬、抗アポトーシス剤、酸化防止剤又は成長因子))と共に投与される。これらの実施形態で、PBM治療は、産後細胞投与と同時に、又はその前に若しくはその後に実施されることができる。PBMは、幹細胞の再生態様を促進するため、有益な補助治療薬を補助するため、又はその両方で使用することができる。
【0096】
別の実施形態は、PBMで治療した間葉系幹細胞又は外胚葉幹細胞から調製された細胞可溶化物である。細胞可溶化物を、膜濃縮画分及び可溶細胞画分に分離することができる。本開示は、細胞可溶化物の調製前、患者への投与前、並びに患者への移植後の細胞へのin vitro PBM治療を特徴とする。
【0097】
本明細書に記載する、及び米国特許仮出願第62/048,211号の眼の状態の治療のためのPBM方法は、種々の光送達システムを用いて実施することができる。2014年9月9日出願、米国特許仮出願第62/048,211号、名称MULTI−WAVELENGTH PHOTOTHERAPY SYSTEMS AND METHODS FOR THE TREATMENT OF DAMAGED OR DISEASED TISSUEを、その全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0098】
一実施形態において本装置は、施設中心の使用のための構成になっている。装置は自立型でもよく、又は既存の装置に取り付けることもできる。本装置を拡張して、眼障害に関連する他の診断又治療能力を取り込む、又は他の装置とシステムを形成することができる。
【0099】
本明細書に記載する装置は、装着できる構成になっている。本装置を拡張して、眼障害に関連する他の診断又治療能力を取り込む、又は他の装置とシステムを形成することができる。
【0100】
光送達機器又は装置は、床、デスク、カート又はテーブルに基づくユニットであり得る。装置は、1つ以上の選択された波長の光を送達するための、1つ以上の光源を含有する1つ以上の照明エンジンを含む。光源からの光は、例えば光線成形光学素子、光学フィルター、光導路又はこれらの組み合わせを使用して組み合わせて、眼で所望の空間及びスペクトル照射パターンを達成することができる。他の光学構成要素は、光エンジンから眼に光を導くために含まれることができる。少なくともいくつかの実施形態において、装置出力は実質的に空間的に固定されており、その結果、標的領域の適正露出は、患者の位置が操作され最適化されることを必要とする。このような患者の操作は、調節可能な顎当て又は額当て又はその両方を用いて補助することができる。出力の微細な空間調整は、例えば、手動で又は電気的に作動する、装置内の移動要素(例えば折曲ミラーなど)を用いることにより達成され得る。他の実施形態において、装置の出力は、実質的に空間的に調節可能である、この場合、装置は患者のインターフェィスとして額当て又は顎当て又はその両方を含むことができ、装置の出力は標的領域を露出させるように調整することができる。大規模な空間調整は、例えば標的領域に光をリダイレクトするために平行移動する又は回転する、1つ又は複数の光学要素(例えばレンズ、折曲ミラーなど)で得ることができる。調整機能は単一の眼のための予想される位置範囲をカバーすることができる、又はそれは両眼のために予想される位置範囲をカバーすることができ、順番に両眼を治療する場合、患者を再調整する必要性を除去する。
【0101】
装置がオフィス環境に適している場合、多数の患者が装置を作動させることが予想され、個人間での相互汚染を制限するための手段をとることが可能である。少なくともいくつかの実施形態において、取り外し可能な額当て又は顎当ては、洗浄可能又は使い捨てとして提供されることができる。少なくともいくつかの実施形態において、額当て又は顎当ては、洗浄可能又は使い捨てバリアにより保護されていることができる。
【0102】
少なくともいくつかの実施形態において、装置は、ユーザー(医師、施術者又は患者)が制御を開始できるインターフェィスを含む。これは、種々の治療法を選択して、データを入力又は抽出して、装置診断法を実行するなどのタッチスクリーン又はキーボードを含むことができる。
【0103】
図1A図1Dは、光線療法装置100の一実施形態を示す。装置100は、ハウジング102、患者インターフェィス面104、及び少なくとも1つのアイボックス又はアイピース106を含む。装置はまた、任意にユーザーインターフェィス108、電源スイッチ110、ロックメカニズム112、及び光線位置決めメカニズム114も含む。以下に詳細に説明するように、ハウジング102は光エンジン及び他の光学素子を保持する。図示したハウジング102はハウジングの一例であって、他の光学装置に取り付ける又はそれを支えるハウジングを含む、他のハウジング構成が使用され得ることは理解されるであろう。
【0104】
光線療法で患者の眼又は両眼を照射するために患者が正しく位置決めされるように、患者インターフェィス面104は配置される。患者インターフェィス面は、患者の顔の輪郭におおよそ合うように調整されることができ、患者の相互汚染を防止する又は減らすために使い捨て又は洗浄可能な面を含むことができる。
【0105】
アイボックス又はアイピース106は、患者の両眼又は単一の眼だけを収容できる。いくつかの実施形態で、左右の眼のための別々のアイボックス又はアイピースがあり得る。アイボックス又はアイピース106は、患者の眼の周りの領域に接触することを目的とする周辺領域があり得る、又は患者インターフェィス面104は、光線療法を受けるために正しく患者を配置するのに十分であり得る。アイボックス又はアイピース106は、患者が内部にその眼を配置する開口部でもよく、又はアイボックス又はアイピースはレンズ又は他の光学構成要素を含むことができる。
【0106】
任意のユーザーインターフェィス108は装置内に組み込まれることができて、これらに限定されないが、タッチスクリーンインターフェィス、キーボード及びディスプレイなど等を含む任意の好適なインターフェィスであり得る。代替的に又は追加的に、装置100は、外部ユーザーインターフェィス(例えば外部コンピュータ、キーボード、マウス又はジョイスティックなど)を含む、又は有線で若しくは無線で接続するのを可能にすることができる。ユーザーインターフェィス108は医師又は他の施術者よって通常作動されるが、いくつかの実施形態では、患者によって、例えば光線療法を停止する若しくは開始するためのボタン又は他の要素を作動できる、ユーザーインターフェィス部分があり得る。ユーザーインターフェィス108は、治療パラメータ、患者情報を入力する、装置100を操作する、又は他の任意の好適な使用のために用いることができる。いくつかの実施形態で、施術者が診断又は光線療法を行うのを補助するため患者の眼を見ることができるように、ユーザーインターフェィス108は内蔵カメラ(例えば、図7のカメラ754)に連結することもできる。
【0107】
任意の電源スイッチ110は、任意の好適な形を有することができる。任意のロックメカニズム112は、ユーザーが装置100の操作をロックできるように提供されることができる。任意の光線位置決めメカニズム114は、光線を移動して患者の眼又は両眼に作用するために用いることができ、ジョイスティック、トラックボール又はタッチスクリーンを含む好適なメカニズムであり得るが、これらに限定されない。
【0108】
図2は装置200の別の実施形態を示しており、それはハウジング102、患者インターフェィス面104、少なくとも1つのアイボックス又はアイピース106、任意のユーザーインターフェィス108、任意の電源スイッチ110、任意のロックメカニズム112、任意の光線位置決めメカニズム114、及び顎当て116を含む。顎当て116は任意の好適な形を有することができ、患者の顎を受けるために使い捨て又洗浄可能である表面を有することができる。好ましくは、装置の残りと関連する顎当ての高さは調節可能である。
【0109】
図3A及び図3Bは装置300の更に別の実施形態を示しており、それはハウジング102、患者インターフェィス面104、少なくとも1つのアイボックス又はアイピース106、任意のユーザーインターフェィス108、任意の電源スイッチ110、任意のロックメカニズム112、及び任意の光線位置決めメカニズム114を含む。この実施形態では、患者インターフェィス面104は図3A及び図3Bで示すように、洗浄又は交換できるように、取り外し可能である。
【0110】
図4は、装置100と共に使用し(図1A参照)、装置100のハウジング102内に位置決めされている(図1A参照)、照明エンジン420の一例を示す。照明エンジン420は、エンジンハウジング421、1つ以上の光源422a、422b、422c、1つ以上の光指向構成要素424a、424b、任意のレンズ426及び任意の熱交換器又は放熱器428を含むことができる。光源422a、422b、422cから発する光は、それぞれ光線430a、430b、430cを形成する。
【0111】
本実施形態、又は本明細書に記載する他の任意の実施形態では、任意の好適な光源を使用することができ、それは発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード、ランプ、レーザーなどを含むが、これらに限定されない。少なくともいくつかの実施形態では、1つ以上の発光ダイオードを使用する。他の実施形態では、1つ以上のレーザーダイオードを使用する。1つ以上のレーザーダイオードは、例えばガリウム−アルミニウム−ヒ素(GaAlAs)レーザーダイオード、アルミニウムガリウムインジウムリン化物(AlGaLnP)レーザーダイオード、ダイオード励起固体(DPSS)レーザー、又は垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)ダイオードであり得る。
【0112】
複数の光源が使われる少なくともいくつかの実施形態において、光源は1つ以上の光ファイバに連結できる。好適な波長及び照射度を有する光を生成する又は発する他の光源も、使用できる。いくつかの実施形態において、複数の種類の光源の組み合わせを使用できる。各光源は、レンズ(例えば、レンズ423a、423b、423c)、拡散器、導波管、又は光源と関連付けられる他の光学素子のうちの1つ以上を任意に含むことができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、装置は、1つ以上の非光エネルギー源(例えば磁気エネルギー源、高周波エネルギー源、DC電界源、超音波エネルギー源、マイクロ波エネルギー源、機械的エネルギー源、電磁エネルギー源など)を含むこともできる。例えば光線療法は、OCT、PET、MRI、フェムトセンサーなどと組み合わせて、治療、診断、追跡、強化した標的化能力を器具に提供できる。
【0114】
2つ以上の光源を有する少なくともいくつかの実施形態において、個々の光源は、異なる波長の光を生成するために選択されることができる。眼に送達される波長又は波長の範囲は、光源により生成するが、他の波長の光の一部又は全部を除去するためにフィルターに通されることができる。少なくともいくつかの実施形態において、第1の光源は第1の波長の光を提供し(隣接する波長の光と共に送達され得る、又は他の光を除去するためにフィルターに通され得る)、第2の光源は第2の波長の光を提供する。少なくともいくつかの実施形態において、第1及び第2の波長は、少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、400又は500nm異なる。いくつかの実施形態では、第3の光源は第3の波長の光を提供して、第3の波長は、第1及び第2の波長とは少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、400又は500nm異なる。
【0115】
照明エンジン420は、1つ以上の光指向構成要素424a、424bを含む。図示の実施形態で、光指向構成要素424a、424bは反射フィルターである。第1の光源422aで生成した第1の波長を有する光線430aの光を通過させて、第2の光源422bで生成した第2の波長を有する光線430bの光を反射するように、光指向構成要素424aは選択される。第1の波長を有している光線430aの光及び第2の光源422bによって、発生する第2の波長を有する光線430bの光を通過するように、光指向構成要素424bは、選択される。光指向構成要素424bは、第2の光源422cによって発生する第3の波長を有する光線430cの光を反射する。光指向構成要素424bは、レンズ426に所望の光の波長を向ける。
【0116】
他の光指向構成要素は、光ファイバ、吸収フィルター、反射又は吸収偏光子、ビームスプリッタなどを含むことができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、装置は、2つ以上の光源が同時に光を生成するように作動する。他の実施形態において、装置は所定時間に光を単一光源から送達するために作動するが、光源は任意の好適な光送達順序でオン/オフされ得る。レンズ426は、単一レンズ又はレンズの組み合わせであり得て、他の光学構成要素(例えば拡散器、絞り、フィルターなど)を含むことができる。
【0117】
図5は、絞り530及びリレー構造532を含む追加の光学構成要素を備えた、図4の照明エンジン420を示す。絞り530は、レンズ426から光を受け取って、患者の眼に向かう光を制限する。リレー構造532は、光エンジン420から患者へ光を向けて、例えば1つ以上のミラー534及び1つ以上のレンズ536を含む、任意の数の好適な構成要素を含むことができる。
【0118】
図6A〜6Cは、照明エンジン642から患者への光の送達するための装置の追加の構成要素を示しており、装置の一部はハウジング102、フローミラー640及びアクチュエータ642を含むリレー構造532の一部(又は照明エンジン420の一部)を回転させて、光線644(図6B及び図6C)が向かう方向を調整するために、アクチュエータ642を使用することができる。図6Bは患者の左眼に向かう光線での位置示し、図6Cは患者の右眼に向かう光線での位置を示す。いくつかの実施形態では、アクチュエータ642は単に2つの位置を有することができる。他の実施形態において、アクチュエータ642は光線位置のより微細な調整を可能にする。少なくともいくつかの実施形態において、アクチュエータ642は、ユーザーインターフェィス108又は光線位置決めメカニズム114又は両方に連結する。
【0119】
少なくともいくつかの実施形態において、光線の照射量は、標的眼組織での所定の照射量を提供するように選択される。目標組織は標準医学画像技術を使用して確認された疾患又は外傷の影響を受けた眼の領域でもよく、それは特定の疾患の影響を受けたことが既知の眼の一部でもよく、それはある機能又は過程を制御するために既知である眼の一部でもよく、又はそれは眼の任意の領域でもよい。標的眼組織のレベルで所望の照射量を得るために、放出面から放射した光線の適切な照射量の選択は、多くの他の要因から、選択された光の波長又は複数の波長、疾患の種類(存在する場合)、対象の臨床状態及び対象領域までの距離を好ましくは含む。
【0120】
複数の光源がある、少なくともいくつかの実施形態において、特定の光源は、他の光源と比較して、より高い又は低い力で光を発する。したがって光源の出力は、眼瞼、角膜、又は光源の放出面と目標眼組織の間の他の介在組織の厚みに応じて、必要に応じて調整され得る。光源により放射される光のパラメータは、後で更に詳細に述べる。
【0121】
いくつかの実施形態で装置は、光源からの光を使用して画像を生成するため、又は眼の特定の一部(例えば、網膜又は網膜の一部)に光を標的化するのを容易にするための、空間光変調器を含むことができる。図8は、光を調整して、患者に変調光線を向ける空間光変調器(SLM)860に向かう光と、光源822(複数を含む)の配列を示す。空間光変調器860は、例えば、シリコン(LCOS)ディスプレイ上の液晶、液晶ディスプレイ(LCD)、デジタルライトプロセッサ(DLP)などのマイクロミラーアレイ、走査ミラー、又は光を反射できる他の任意の好適な装置であり得て、任意に画像を形成するために使用することができる。空間光変調器は、追加の投射光学系(例えば、レンズなど)を含むこともできる。少なくともいくつかの実施形態において、装置は患者の眼のレンズを利用して、画像形成を容易にすることもできる。
【0122】
空間光変調器は、図8に示すように、反射性でもよく、又は光がSLMを透過して調整されるように透過性でもよい。空間光変調器は、光路に沿った任意の好適な場所に挿入されることができる。例えば反射SLMは、図5で示す実施形態で、又は装置の任意の他の好適な部分において、折曲ミラー534の位置に配置できる。透過SLMは、図5で示す実施形態で、又は装置の任意の他の好適な部分において、レンズ426又は絞り口530の前後に配置できる。
【0123】
少なくともいくつかの実施形態において、患者の眼の特定部分上に光源を標的化することは、空間光変調器、カメラ(患者の眼を観察して光線、瞳孔追跡センサー若しくは任意のこれらの組み合わせの方向の手動又は自動調整を可能にする)を使用して実施可能である。
【0124】
図7は、眼疾患、障害、変性などの治療用の装置を作動するシステムの一実施形態を示す。システムは、コントローラ750、ユーザーインターフェィス708(例えば、図1A図3Aのユーザーインターフェィス108)、アクチュエータ742(例えば、図6A図6Cのアクチュエータ642)、光源722(例えば、図4及び図5の光源422a、422b、422c)、メモリ752、1つ以上のセンサー/カメラ754及び電源756を含む。これらの構成要素は、下で更に詳細に記載される。他のシステムはより多く又はより少ない構成要素を含むことができ、その構成要素は図7に示すものと異なる配列で一緒に連結されることを理解すべきである。例えば図8の空間光変調器860は、図7のコントローラ750に連結することもできる。更に構成要素間の任意の連結は、有線若しくは無線通信、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0125】
本開示の特定の実施形態において、光送達装置は装着可能であり、それにより携帯性を促進して、従来の眼科施設外での利用(例えば、自宅、仕事中、又はレクリエーション活動中及び移動中)の選択を可能にする。したがって本明細書中に記載する装着型装置は、患者の移動負担を減らして、治療の送達のための時間を選択する際患者に便宜を提供するような利点を提供する。
【0126】
単眼だけを光線療法にさらすことを目的とする点で、装着型装置は単眼でもよく、又はそれは双眼でもよく、その場合同時に、連続して、若しくは指定した順番で装置は両眼を治療することができる。両眼装置について本明細書で詳細に記載しており、本明細書で開示する設計上の問題、パラメータ及び構造は単眼装置でも実行可能である。
【0127】
装着型装置は、1つ以上の波長の1つ以上の光源を含むことができる。少なくともいくつかの実施形態において、装置は、眼の方向に向かい、特定の間隔で配置されて、眼上に所望の空間及びスペクトル照射量を生成する光源のアレイを含有する。少なくともいくつかの実施形態において、光学構成要素は、光源から着用者の眼に向かって光をリダイレクトするために使用することができる。中間の光学構成要素(例えば、レンズ、フィルター、拡散器)は、必要に応じて装置の出力を更に形成することができる。
【0128】
少なくともいくつかの実施形態において、光源は眼の視線から離れて位置決めされ、光は、光導管若しくは導波管、又は他の任意の好適な構成要素を介して眼に向けられる。導波管は、複数の波長を混合する又は装置出力を均質化するように機能できる。導波管は一体型レンズ、コーティング又は拡散器を組み込んで、導波管の入口及び出口で光線を形成することができる。少なくともいくつかの実施形態において、導波管は透明であり、その結果、ユーザーは装置を装着しながら、ほとんど妨げられてない視界を有する。平面光学エレメント(例えば体積位相ホログラム、表面レリーフホログラム、回折格子又は同様の構成要素)は、光を方向付けして、出力を形成するために導波管上に置かれる、又はその内部に組み込まれることができる一方で、導波管をほぼ透明に保つ。
【0129】
少なくともいくつかの実施形態において、光源は眼の視線から離れて位置決めされており、光は表面からの反射を介して眼に向けられる。コーティングは表面に配置されて、反射を促進できる。表面は平坦でもよく、又は曲線が装置の光出力を形成するために規定されている可能である場合、1つ以上の方向でカーブすることができる。表面は主に光の入射角で反射してもよく、主に垂直入射で透過してもよく、その結果、着用者の視界はほとんど妨げられない。コーティングは、特定の波長だけを反射する一方で他は透過するように、表面に適用されることができる。
【0130】
少なくともいくつかの実施形態において、装置は、無線で又は有線で外部制御ユニットに接続される。外部ユニットは、制御電子装置、関連ドライバ、ソフトウェアなど又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。それは、光の送達のための光ファイバーケーブルを備えた装着型装置にケーブル接続されることができる。少なくともいくつかの実施形態において、制御装置は、信号又は電力を供給するケーブルで装着型装置に接続している。少なくともいくつかの実施形態において、制御ユニットは、無線で装着型ユニットと接続する。制御ユニット及び/又は装着型装置は、1つ以上のバッテリによって動く、又は外部電源を介して駆動できる。
【0131】
少なくともいくつかの実施形態において、光源及び内蔵プログラマブルコントローラは、装置内の電源によって駆動する。少なくともいくつかの実施形態において、電源は装置から離れた位置に配置される。電源は1つ以上の電子構成要素(例えばコンデンサ、ダイオード、レジスタ、インダクタ、トランジスタ、調節装置、バッテリ、燃料電池、又は他の任意の好適なエネルギー貯蔵装置を含む)を含むことができる。電源は、電磁エネルギーを保存するように構成される、任意の種類の装置、部品又はシステムを使用することもできると考えられる。少なくともいくつかの実施形態において、電源は空気亜鉛電池を含み、それは補聴器で使用するものと同様のものである。
【0132】
これらの実施形態の特定の態様において、電源は再充電可能である。例えば電源は、リチウム五酸化バナジウム電池、二酸化マンガンリチウム電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池又は他の任意の好適な再充電可能な電池化学の電池を含むことができる。少なくともいくつかの実施形態において、電源は、外部充電ステーションによって、誘導的に充電できる誘導コイル及び充電回路を含むことができる。少なくともいくつかの実施形態において、電源は、高周波(RF)エネルギーにより充電できるRF給電装置でもよい。少なくともいくつかの実施形態において、外部電源は、装置を駆動するために任意に用いることができる。
【0133】
再充電可能な電源を使用する少なくともいくつかの実施形態において、電源の電荷容量は、少なくとも1つの治療セッションを通して持続するのに十分である。必要とされる治療の継続及び頻度は、関連する眼疾患の重篤度によって変化する。少なくともいくつかの実施形態において、電荷容量は、5分〜30分間プログラマブルコントローラ及び光源に電力を供給するのに十分であるために必要である。少なくともいくつかの実施形態において、治療期間は少なくとも20分である。長期間及び/又は高頻度の治療を必要とする対象において、いくつか実施形態は、プログラマブルコントローラ及び光源に連結する2つ、3つ以上の電源を使用して、より長く又はより頻繁な治療セッションのための十分な電力を提供する。少なくともいくつかの実施形態において、単一の高容量電源を使用することができる。少なくともいくつかの実施形態において、電源は、1つ以上のコンデンサ及び1つ以上のバッテリの組み合わせを含むことができる。
【0134】
図9は、装着型光治療装置900の一実施形態を示す。装置900は、フレーム902、患者の眼の前にある前側片104及び2つのイヤピース906を含む。
【0135】
図10A及び図10Bは、装着型光治療装置1000の一実施形態を示し、それは、フレーム1002、前側片1004、イヤピース1006、光源1010a、1010b、1010cの左右のアレイ1008、及び電子機器又はバッテリが収納され得る1つ以上のフレームケース1012を含む。イヤピース1006は、前側片1004に取り付けられて着用者上で装置1000を保持するフレーム1002の付加要素の一例である。他の付加要素の例としては、ヘッドバンド、ヘルメット、マスクなど又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。光源1010a、1010b、1010cは、同じ又は異なることができる。1つ以上のフレームケーシング1012は、ケース内にコントローラ、光源電子機器、バッテリ又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。少なくともいくつかの実施形態において、フレームケーシング1012又は他のフレーム1002の一部は、装置1000の操作を開始する、終了する又は変えるために使用可能な少なくとも1つのボタン又は他のユーザー入力要素を組み込むこともできる。代替的に又は追加的に、フレームのポートへの無線又は有線接続により、装置を始動できる又は終了できる、光送達のパラメータを入力できる、又は変えることができる。
【0136】
好適な波長及び照射量で光を生成する又は発する他の光源も、使用することができる。いくつかの実施形態において、複数の種類の光源の組み合わせを使用できる。各光源は、レンズ、拡散器、フィルター、又は光源と関連付けられる他の光学素子のうちの1つ以上を任意に含むことができる。少なくともいくつかの実施形態において、各光源の周波数、電力、パルス長、パルス幅、波長、若しくは他の任意の発光パラメータ、又はこれらのパラメータの任意の組み合わせのうちの1つ以上を、他の光源から独立して制御する又は調整することができる。
【0137】
2つ以上の異なる光源1010a、1010b、1010cに関する少なくともいくつかの実施形態において、個々の光源は、異なる波長の光を生成するように選択される。例えば、装置1000のアレイ1008は、任意の好適な配列であり得る3つの異なる光源1010a、1010b、1010cのアレイであり得る。例えば、光源1010a、1010b、1010cの行若しくは列若しくはその両方に沿った又は対角線に沿った繰り返し配列、光源1010aの行、列又は対角線での配列(繰り返すことができる)、次に光源1010bの行、列又は対角線での配列、次に光源1010cの行、列又は対角線での配列、又は他の任意の好適な規則的若しくは不規則な配置である。異なる波長を発する光源の数は3つに限定されず、2つ、4つ、5つ、6つ以上の異なる光の波長を発する異なる光源でもよいことも理解されよう。他の実施形態において、光源1010a、1010b、1010cのすべては、同じ光の波長(複数を含む)を発することができる。
【0138】
例えば少なくともいくつかの実施形態において、第1の光源1010aは第1の波長の光を提供し(隣接する波長の光と共に送達され得る、又は他の光を除去するためにフィルターに通され得る)、第2の光源1010bは第2の波長の光を提供する。少なくともいくつかの実施形態において、第1及び第2の波長は、少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、400又は500nm異なる。いくつかの実施形態では、第3の光源1010cは第3の波長の光を提供して、第3の波長は、第1及び第2の波長とは少なくとも25、50、75、100、150、200、250、300、400又は500nm異なる。
【0139】
図11A図11Eは、装着型光線療法装置1100の別の実施形態を示し、それは、フレーム1102、前側片1104、イヤピース1106、光源1110a、1110b、1110cの左右のアレイ1108、及び電子機器又はバッテリが収納され得る1つ以上のフレームケース1112を含む。特に明記しない限り、他の実施形態の同じ名称の要素に関して提供されたすべての設計上の問題、特性及び説明は、装置1100の要素にも適用できる。例えば、光源1110a、1110b、1110cは同じ又は異なることができる、又は、異なる光の波長を生成する1つ、2つ、3つ、4つ以上の異なる光源がある。
【0140】
この実施形態は、着用者がそれを通して見ることができる、1つ以上の視覚ポート1105も含む。これらの視覚ポートは開いてもいる、又は任意にレンズを形成するガラス又はプラスチックを組み込むことができる。少なくともいくつかの実施形態において、視覚ポート1105は、着用者の視力に基づいて選択される処方レンズを組み込む。
【0141】
特に図11A及び図11Cに示すように、光源1110a、1110b、1110cは視覚ポート1105の3つの側面周辺に配置される。他の実施形態において、光源を、視覚ポートの1つ、2つ、4つ以上の側面(ポートが4つ以上の側面を有するとき)周辺に配置できる。図11Eで示すように光源1110a、1110b、1110cは、着用者の眼の方向を少なくとも部分的に向かう光1114を生成するように配置される。少なくともいくつかの実施形態において、光源は、着用者の眼に向かって方向付けされ得る、又は、着用者の眼の方へ光を向ける若しくはリダイレクトする、少なくとも1つの光学素子(例えば、レンズ又は反射器)を含むことができる。他の実施形態において、光源は単に円錐方向に光を生成して、そのいくつかは着用者の眼に達する。
【0142】
図12Aは装着型光線療法装置1200の別の実施形態を示し、それは、フレーム1202、前側片1204、イヤピース1206、光源1210及び電子機器又はバッテリを収納できる1つ以上のフレームケース1212を含む。特に明記しない限り、他の実施形態の同じ名称の要素に関して提供されたすべての設計上の問題、特性及び説明は、装置1200の要素にも適用できる。
【0143】
光源1210は、フレーム内の別々の光生成要素(例えば、LED、レーザーダイオードなど)を使用して、光源1210により方向付ける光の異なる波長を提供できる。代替的に又は追加的に、行、列又は他の配列でフレーム上に配設される複数の光源1210があり得る。左イヤピース上の単一光源を示しているが、図12Cで示すように、右イヤピース上に類似の光源があり得ることは理解されよう。
【0144】
光源1210から光を受けて、少なくとも一部の光を着用者の眼にリダイレクトするために、反射器1216はフレーム上に提供される。反射器1216は、これらに限定されないが、ミラー、反射フィルター、反射偏光子、ビームスプリッタなどを含む任意の好適な反射器であり得て、少なくとも一部の光を着用者の眼にリダイレクトする。反射器1216は、光散乱機構など1つ以上の散乱要素を含むこともでき、それはリダイレクトした光を拡散する。
【0145】
図12Bは装着型光線療法装置1200の同様の実施形態を示し、それは、フレーム1202、イヤピース1206、光源1210及び電子機器又はバッテリを収納できる1つ以上のフレームケース1212を含む。特に明記しない限り、他の実施形態の同じ名称の要素に関して提供されたすべての設計上の問題、特性及び説明は、装置1200の要素にも適用できる。
【0146】
図12Bの実施形態において、反射器1216は部分的に透明であり、その結果、部分的に光を反射して、部分的に光を透過する。例えばこの反射器1216は、特定の波長又は波長帯域の光を反射して、他の波長の光を透過するなどの部分的なミラー、反射偏光子又は反射フィルターであり得る。反射器1216は、光源から着用者の眼へ少なくとも一部の光をリダイレクトする。反射器1216は、レンズの一部であり得る、又はその上に配設されてもよい。反射器1216は、光散乱機構など1つ以上の散乱要素を含むこともでき、それはリダイレクトした光を拡散する。
【0147】
図13A図13Dは、装着型光線療法装置1300の更に他の実施形態を示し、それはフレーム1302、前側片1304、イヤピース1306、光源1310及び電子機器又はバッテリを収納できる1つ以上のフレームケース1312を含む。特に明記しない限り、他の実施形態の同じ名称の要素に関して提供されたすべての設計上の問題、特性及び説明は、装置1300の要素にも適用できる。光源1310は、光源1310内の別々の光生成要素(例えば、LED、レーザーダイオードなど)を使用して、光の異なる波長を提供できる。
【0148】
この装置1300は、投射システム1318及び反射プリズム1320を含んで、着用者に光線又は画像の形態で光線療法を提供する。図13Dは、光源1310、空間光変調器(SLM)1322、ビームスプリッタ1324、照明光学素子1326及び投射光学素子1328を含む、投射システム1318をより詳細に示す。空間光変調器1322は、例えば、シリコン(LCOS)ディスプレイ上の液晶、液晶ディスプレイ(LCD)、デジタルライトプロセッサ(DLP)などのマイクロミラーアレイ、走査ミラー、又は光を反射できる他の任意の好適な装置であり得て、任意に画像を形成するために使用することができる。照明光学素子1326及び投射光学素子1328は、例えば、1つ以上のレンズ、拡散器、偏光子、フィルターなどを含むことができる。
【0149】
光源1310から発生する光の少なくとも一部は、照明光学素子1326を透過して、ビームスプリッタ1324で空間光変調器1322にリダイレクトされる。光は空間光変調器により反射されて、それは光を使用する画像を形成できる、又は受信光を調整して、ビームスプリッタ1324及び投射光学素子1328によりプリズム1320へ戻る。図5Bで示すように、プリズム1320に入る少なくとも一部の光は、着用者の眼にリダイレクトされる。
【0150】
図14A図14Dは、装着型光線療法装置1400の更に他の実施形態を示し、それはフレーム1402、前側片1404、イヤピース1406、光源1410及び電子機器又はバッテリを収納できる1つ以上のフレームケース1412を含む。この装置1400は、投射システム1418及び導波管1430を含んで、着用者に光線又は画像の形態で光線療法を提供する。図14Dは、光源1410、空間光変調器(SLM)1422、ビームスプリッタ1424、照明光学素子1426及び投射光学素子1428を含む、投射システム1418をより詳細に示す。特に明記しない限り、他の実施形態の同じ名称の要素に関して提供されたすべての設計上の問題、特性及び説明は、装置1400の要素にも適用できる。光源1410は、光源1410内の別々の光生成要素(例えば、LED、レーザーダイオードなど)を使用して、光の異なる波長を提供できる。
【0151】
図13A図13Dの実施形態とは対照的に、図14A図14Dの実施形態は、図14Bで示すように、導波管1430を使用して、少なくとも一部の光を着用者の眼に届ける。導波管630は、投射システム1418から光を受ける内部連結回折光学素子1432又は他の配列を含むことができ、及び導波管から着用者の眼へ光を向ける外部連結回析光学素子1434又は他の配列を含むことができる。導波管1430及びプリズム1320は、空間光変調器1322、1422から変調光線を受けて、光を着用者の眼に向ける光指向要素の例である。
【0152】
図15は、眼疾患、障害、変性などを治療する装置を作動するシステム1570の別の実施形態を示す。システム1570は、コントローラ1550、ユーザーインターフェィス1560、電源1556、メモリ1552、及び1つ以上の装着型装置1500(例えば、上述の装着型装置900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400のいずれか)を含むことができる。装着型装置1500は、光源(複数を含む)1510(例えば、上述の光源910a、910b、910c、1010a、1010b、1010c、1110a、1110b、1110c、1210、1310、1410)、任意の内蔵コントローラ1556、1つ以上の任意のセンサー(複数を含む)/カメラ1554、メモリ1564、及び電源1562を含む。代替的に又は追加的に、センサー(複数を含む)/カメラ1554は、装置1500の外部であり得るが、外部コントローラ1550又は内蔵コントローラ1556に情報を提供できる。これらの構成要素は、下で更に詳細に記載される。他のシステムはより多く又はより少ない構成要素を含むことができ、その構成要素は図15に示すものと異なる配列で一緒に連結されることを理解すべきである。更に構成要素間の任意の連結は、有線若しくは無線通信、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0153】
例示のシステム1570は、無線で又は有線接続(又は任意のこれらの組み合わせ)で装着型装置1500の内蔵コントローラ1556と接続して、内蔵コントローラをプログラムすることができる外部コントローラ1550を含む。少なくともいくつかの実施形態において、外部コントローラ1550は、装置1500を操作する内蔵コントローラ1556をプログラムするためだけに用いる。いくつかの実施形態で、医療従事者だけが外部コントローラ1550にアクセスできる。他の実施形態において、ユーザーも、治療を修正する、開始する又は終了するために、外部コントローラに又は別の外部コントローラにアクセスすることができる。外部又は内蔵コントローラのうちの1つにより実行される本明細書に記載する機能は、他の実施形態では、外部又は内蔵コントローラの他の1つによって実行され得ることは理解されよう。
【0154】
他のシステムで装着型装置は、装置上の、装置に取り付け可能な、又は装置に無線で接続可能なユーザーインターフェィスを含むことができ、その結果外部コントローラが不必要であることは認識されよう。医療従事者、又は任意にユーザーはこのユーザーインターフェィスを使用して、直接内蔵コントローラ1556をプログラムすることができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、装置は1つ以上の非光エネルギー源を含むことができる、又は装置は、1つ以上の非光エネルギー源(例えば磁気エネルギー源、高周波源、DC電界源、超音波エネルギー源、マイクロ波エネルギー源、機械的エネルギー源、電磁エネルギー源など)を生成する別の装置と共に使用することができる。例えば光線療法は、OCT、PET、MRI、フェムトセンサーなどと組み合わせて、治療、診断、追跡、強化した標的化能力を器具に提供できる。
【0156】
プログラマブルコントローラ
対象の眼組織への光エネルギーの適用の、光エネルギー放出、光エネルギー強度、光エネルギー持続期間、頻度、領域又は順番の1つ以上、又は他の治療パラメータを調整するために、少なくともいくつかの実施形態は、プログラマブルコントローラ(例えば、図7のコントローラ750、又はユーザーインターフェィス708の一部、直接ユーザーインターフェィス1560、若しくは外部コントローラ1550によるものであり得る図15の内蔵コントローラ1550)を含む、又はユーザーインターフェィスに連結できる、又は装置に別々に連結できる。プログラマブルコントローラは、特定の治療レジメンに従って1つ以上の光源を操作すること、外部装置と通信すること、光源及び電源などの要素の状態をモニタすること、パラメータ又はプログラム命令をメモリに格納することなど、タスク又は作業を達成するメモリに保存される一組のプログラム命令を実行する。
【0157】
例えばプログラマブルコントローラは、治療レジメンに従って光を眼の特定の標的領域に発するために用いることができる。例えばプログラマブルコントローラは、各光源が放射状態にある起動時間又は期間のセット、及び光源が非放射状態にある非起動時間又は期間のセットを含む、治療プログラムを実行できる。特定の実施形態で、プログラマブルコントローラは、一般的な又は特別な目的のマイクロプロセッサを含む。少なくともいくつかの実施形態において、プログラマブルコントローラは、特定用途向け集積回路(ASIC)又は論理プログラミング可能デバイス(FPGA)を含むことができる。
【0158】
少なくともいくつかの実施形態において、プログラマブルコントローラは、内部メモリ(例えば、図7のメモリ752又は図15のメモリ1564)と通信して、ソフトウェア若しくはハードウェアのためのデータ若しくはプログラム命令を検索できる又は保存できる。少なくともいくつかの実施形態において、プログラマブルコントローラは、内部メモリ(例えば、図15のメモリ1564)と通信して、ソフトウェア若しくはハードウェアのためのデータ若しくはプログラム命令を検索できる又は保存できる。少なくともいくつかの実施形態において、プログラマブルコントローラは、中央演算処理装置(CPU)を含む。プログラマブルコントローラは、メモリ(情報の一次記憶域としてのランダムアクセスメモリ(RAM)又はフラッシュメモリ、読出し専用メモリ(ROM)、EPROMメモリ、又は情報の永続記憶装置としてのEEPROMメモリ)を更に含むことができる。
【0159】
少なくともいくつかの実施形態において、メモリは、最初のプログラミング後もプログラム可能であり得る。そのうえプログラマブルコントローラは、リアルタイムクロック、1つ以上のタイマー、アナログ−デジタル(A/D)コンバータ、デジタル−アナログ(D/A)コンバータ、シリアルコミュニケーションインターフェィス(例えばIC又はシリアルペリフェラルインターフェィス)、通信インターフェィス、又はパルス幅変調(PWM)発生器を含むことができる。電源はプログラマブルコントローラへ電力を供給して、それによりそれは1つ以上の光源を駆動することができる。少なくともいくつかの実施形態において、プログラマブルコントローラは、光源駆動装置により1つ以上の光源を駆動する。光源駆動装置は好適な電流又は電圧レベルを印加して、1つ以上の光源に通電することができる。プログラマブルコントローラが制御信号を生成して光源を駆動するとき、光は放出面から発される。それに対し、光源がプログラマブルコントローラから光を生成するための制御信号を受け取らないとき、放出面は非放出状態にある。光源は、種々の治療レジメンに従って、連続的に又は定期的に光を発するように構成され得る。
【0160】
少なくともいくつかの実施形態において、プログラマブルコントローラは、所与の対象のための治療パラメータの所望のセットで、ある予めプログラムされている(例えば、移植前に)。例えば、光エネルギー放出の望ましい頻度{例えば24時間ごと)、光エネルギー放出の期間(例えば、5分間)、光エネルギー放出の照射量(例えば、1mW〜10mW)、照射パターン又は光源放射の順序(例えば複数の光源を含むこれらの実施形態における、光エネルギーの一連の放射)、及び他のパラメータは、プログラマブルコントローラ内に予めプログラムされることができる。パルス光線量測定のために、治療パラメータは、パルス光線量測定のパルス当たりのデューティサイクル、パルス形状、繰り返し速度、パルス幅又は照射量を含むこともできる。
【0161】
複数の光源を利用する少なくともいくつかの実施形態において、プログラマブルコントローラは、特定の標的領域上の焦点に光源のサブセットを起動させるようにプログラムされることができる。少なくともいくつかの実施形態において、プログラマブルコントローラは、予め定められた治療レジメン、順序、テンプレート又は順番に従って光源を起動するようにプログラムされることができる。例えば治療レジメンは、本明細書に取り込まれた、米国特許出願公開第2009/0254154号の段落[0203]〜[0228]に記載されている順番と類似のパターンに従うことができる。治療レジメンは、医師によっても(例えば、遠隔測定又は無線若しくは有線ネットワークインターフェィスを介して)調節可能であり得る。
【0162】
少なくともいくつかの実施形態において、プログラマブルコントローラは、通信インターフェィスを介して動的に再プログラムされることができる。通信インターフェィスは、外部遠隔測定装置からRF通信を受けるように構成されるアンテナを含むことができる。通信インターフェィスは、情報を外部遠隔測定装置に発信するように構成されることもできる。他の種類の無線通信も使用可能である。少なくともいくつかの実施形態において、医師は、光線療法装置によって発生する警報又は警告に対応して、治療パラメータを調整できる。医師は、通信インターフェィスを介して無線でプログラマブルコントローラを再プログラムすることができる。
【0163】
少なくともいくつかの実施形態において、プログラマブルコントローラは、自動的にそれ自体を再プログラムすることができる、又はフィードバックセンサー(例えば、図7のセンサー754)から受けた制御信号に反応して、その治療パラメータを再調整できる。センサーは、光線療法のパラメータ又は対象(例えば、患者)の生理学的パラメータに関するフィードバックを提供できる。センサー(例えば、図7のセンサー754)は、生物医学センサー、生物化学センサー、温度センサーなどを含むことができる。少なくともいくつかの実施形態において、センサーは、侵襲的センサーであり得て、身体内に挿入され得る、又は少なくとも一時的に身体に取り付けることができる。少なくともいくつかの実施形態において、センサーは、非侵襲的又は最小限に侵襲的センサーを含むことができる。
【0164】
センサーは、例えばアデノシン三リン酸(ATP)濃度又は活性、視神経出力波(例えば、ERGセンサーシステムを使用する)、ミトコンドリア活性(例えば、NADH又はNADPH濃度を測定することにより)、一酸化窒素(NO)生成又は消費、サイトカイン(IL−6インターロイキン及び腫瘍壊死因子(TNF)など)、アポトーシス標識(バックス及びBcl−2など)、誘発反応光学走査(EROS)反応、酸素消費レベル、膜電位、解糖活性又はpHレベルを測定するために使用できる。例えば、細胞ATP濃度の増大及び細胞内のより多くの低減状態は、両方とも細胞代謝に関連しており、細胞が生存し及び健康である徴候であるとみなされる。標的眼組織内のNADHの増加した濃度、及び標的組織のレドックス状態の対応する改善は、細胞の代謝活動及び健康の両方を反映する。
【0165】
拡散
少なくともいくつかの実施形態において、光源又は装置は、眼又は眼組織に達して有利にも光線を均一化する前に、光を拡散するのに適している1つのディフューザーを含む。通常、角膜の介在組織は、対象の網膜の照明上の不均一な光線強度分布の影響を減らすことができる高散乱である。しかし、実質的に異質又は不均一な光線強度分布は、他より加熱した対象の眼のいくつかの部分をもたらす可能性がある(例えば、光線の「ホットスポット」が対象の眼に作用する局所的加熱)。
【0166】
少なくともいくつかの実施形態において、装置内の光源又は他の構成要素は光線を都合よく均一化して、不均一性を減らす。光源から発生する前の光の例示のエネルギー密度プロファイルは、特定の放出角でピークに達する。少なくともいくつかの実施形態において、装置の光源又は他の構成要素により拡散した後、光のエネルギー密度プロファイルは任意の特定の放出角で実質的ピークを有せず、放出角の範囲内で実質的に均一に分配される。光を拡散することによって、装置内の光源又は他の構成要素は、照射した領域上に実質的に均一に光エネルギーを分配し、それによって、さもなければ眼に温度増加を引き起こす「ホットスポット」を制御する、阻害する、防止する、最小化する、又は減らす。したがって光を拡散することによって、装置が光を拡散しない場合よりも、対象の眼の照射部位の温度は低くなる。例えば光を拡散することによって、対象の眼の照射部位の温度は、照射されなかった対象の眼の部位の温度より高くなる可能性があるが、照射されたが光が拡散されなかった対象の眼の部分の温度より低くなる。更に眼に達する前に光を拡散することによって、装置は光が作用する眼のスポットサイズを効果的に増大させて、それにより都合よく眼の照射量を低下させることができる。
【0167】
少なくともいくつかの実施形態において、装置の光源又は他の構成要素は、光の照射量が眼又は他の眼組織の最大許容レベルより少なくなるように、光の十分な拡散を提供する。例えば、特定の実施形態の最大許容可能レベルは対象が不快感又は痛みを経験するレベルであり、その一方で特定の他の実施形態で最大レベルは対象の眼又は眼組織が損傷するレベルである(例えば、熱損傷又は火傷)。少なくともいくつかの実施形態において、装置は、光の照射量が標的標組織で治療価と等しくなるように、光の十分な拡散を提供する。例えば装置は、Physical Optics Corp.(Torrance、California)から入手可能なもの及びReflexite Corp.(Avon,Connecticut.)製のDisplay Optics P/N SN1333などのホログラフィック拡散器を含むことができるが、これらに限定されない。
【0168】
標的化
光線療法は閉眼瞼を通して実施することができ、光のほとんどは網膜の比較的広い領域に散乱すると予想され得る、又はそれは開眼に実施されることができる。開眼の場合、大部分の治療用光は、最小限の散乱でレンズ及び眼の瞳孔を通して網膜に送達されると思われる。特定の実施形態で、装置は、瞳孔を通して網膜の特定の領域を標的化する能力を含む。これは、網膜上の露出領域を正確に形成し制御するための空間光変調器(SLM)を含有することにより実施することができる。SLMは、LCOSパネル、走査ミラー、変形可能ミラーアレイ又は他の変調装置でもよい。
【0169】
少なくともいくつかの実施形態において、SLMは、照明及び画像光学素子と組み合わせて、静止画像又は動画を患者に提供する。画像を使用して、患者の視線を方向付けることにより、治療中、治療する眼の焦点及び方向の制御に役立つことができる、又はそれらは治療中、ビジュアルエンターテインメントを患者に提供することにより、装置の使用性を増加させるように機能できる。特定の実施形態では、SLMの照明光源は画像ディスプレイのみ用いられて、その一方で治療は第2の光源(複数を含む)により提供される。他の実施態様において、SLM照明光源(複数を含む)は治療を提供する。
【0170】
フィードバック
少なくともいくつかの実施形態において、プログラマブルコントローラは、論理回路、論理回路に連結するクロック及び論理回路に連結するインターフェィスを含む。少なくともいくつかの実施形態のクロックは、論理回路が印加光のタイミング間隔を監視し、制御できるように、タイミング信号を論理回路に提供する。タイミング間隔の例は、全体の治療時間、印加光のパルスのパルス幅時間及び印加光のパルス間の時間間隔を含むが、これらに限定されない。少なくともいくつかの実施形態において、眼又は眼組織への熱負荷を減らして、選択された照射量を眼又は他の眼組織の特定領域に送達するために、光源は選択的にオン/オフされることができる。
【0171】
少なくともいくつかの実施形態のインターフェィスは、信号を論理回路に提供し、それを論理回路は使用して印加光を制御する。インターフェィスは、ユーザーインターフェィス、又は治療の少なくとも1つのパラメータをモニタするセンサー(例えば、図7のセンサー754又は図15のセンサー1554)へのインターフェィスを含むことができる。少なくともいくつかの実施形態において、プログラマブルコントローラは、センサーからの信号に応答して、測定した反応を最適化するために好ましくは治療パラメータを調整する。このようにプログラマブルコントローラは、光線療法を強化する又は最適化するために、種々の治療パラメータの閉ループモニタリング及び調整を提供できる。ユーザーからインターフェィスにより提供される信号は、実用光のための個々の対象の特徴(例えば、眼瞼の皮膚タイプ、脂肪率)、選択された印加照射量、標的時間間隔、及び印加光の照射量/タイミングプロファイルを含むパラメータを示すが、これらに限定されない。
【0172】
少なくともいくつかの実施形態において、論理回路は光源駆動装置に連結し、光源駆動装置は電源(例えば、図7の電源756又は図15の電源1562)に連結し、少なくともいくつかの実施形態でそれはバッテリ又は容量性エネルギー蓄積装置であり、他の実施形態では交流電流源を含む。光源駆動装置は、光源にも連結する。論理回路はクロックからの信号、及びユーザーインターフェィスからのユーザー入力に応答して、制御信号を光源駆動装置に送る。論理回路からの制御信号に応答して、光源駆動装置は、光源に印加した電力を調整し制御する。少なくともいくつかの実施形態において、コントロール回路は、リアルタイムの正又は負のフィードバックを提供するために用いることができる。
【0173】
少なくともいくつかの実施形態において、論理回路は、治療の少なくとも1つのパラメータを監視して印加光を制御するセンサーからの信号に応答する。例えば、少なくともいくつかの実施形態は、論理回路に皮膚の温度に関する情報を提供するための、皮膚又は眼瞼との熱伝達の温度センサーを含む。少なくともいくつかの実施形態において、論理回路は、温度センサーからの情報に応答して、所定のレベル未満で皮膚又は眼瞼温度を維持するように印加光のパラメータを調整するために、制御信号を光源駆動装置に伝える。好適なセンサーの他の例は、血流センサー、血液ガス(例えば、酸化、フェムトセンサー)センサー、ATP生成センサー又は細胞活性状態センサーを含む他の生物医学的センサーを含むが、これらに限定されない。このような生物医学的センサーは、リアルタイムフィードバック情報を論理回路に提供できる。
【0174】
例えば、ATP生成又はミトコンドリア活性レベルが特定の閾値レベル未満の場合、論理回路は光源(複数を含む)に制御信号を生成して印加光の治療パラメータ(例えば治療時間、波長、照射レベル又は他のパラメータ)を調整できる。少なくともいくつかの実施形態において、論理回路はセンサーからの信号に応答して、測定した反応を強化する又は最適化するように印加光のパラメータを好ましくは調整する。論理回路は、光線療法を強化する又は最適化するために、印加光の種々のパラメータの自動閉ループモニタリング及び調整を提供できる他の実施形態において、制御回路は、手動閉ループフィードバックを提供するように構成されることができる。センサー(例えば、図7のセンサー754又は図15のセンサー1554)は、生物化学的センサー、EEGセンサー、EROSセンサー、フォトセンサー又は他のセンサーも含むことができる。任意のセンサー又はセンサーの組み合わせを使用することができる。
【0175】
少なくともいくつかの実施形態において、装置は、患者の強膜、角膜、網膜又は眼の他の部分を撮像する方法を提供する。このような画像は、指定された位置又は他の領域に患者の視線を向けること、次に眼の所望領域の画像を見ること又は捉えるにより、得ることができる。少なくともいくつかの実施形態において、これは、自動化した方法で、焦点、露出、サイズ又は画像の位置を自動的に調整する装置で実行される。少なくともいくつかの実施形態において、ユーザーは、パラメータを捕捉する1つ以上の画像を手動で判定する。少なくともいくつかの実施形態において、次に画像からの情報は、眼の特定の治療又は標的領域を識別して確定するために、装置のユーザーによって使用される。少なくともいくつかの実施形態において、所望の照射量が標的領域に送達されるように、ユーザーは装置出力を手動で調整する。少なくともいくつかの実施形態において、標的領域は装置内にプログラムされて、次に論理回路は装置出力を動的に調整して、識別した領域に所望の治療を送達することができる。
【0176】
少なくともいくつかの実施形態において、論理回路は、患者の眼の空間位置又は配向(例えば、患者が見ている場所)を示す信号に応答する。これは、1つ以上のカメラ(例えば、図7のカメラ754又は図15のカメラ1554)及び関連するソフトウェアアルゴリズムを使用することで達成され得る。赤外線又は他の波長の補助エミッタを、視標追跡を容易にするための照明光源として使用してよい。あるいは、市販の視標追跡構成要素又はアルゴリズムを、装置に部分的に又は全部組み込むことができる。少なくともいくつかの実施形態において、論理回路は、眼配向信号を利用して、空間的に装置出力を調整して、前に識別した標的領域上の適正露出を維持できる。少なくともいくつかの実施形態において、装置出力の強度を調整するために信号を使用できる。このような強度変調は、装置出力を増減して所与の領域への適正露出を維持することを含むことができる、又はそれは治療の一時的中止を含むことができる。
【0177】
少なくともいくつかの実施形態において、装置は、治療中、患者の眼瞼(例えば、開閉)の状態を能動的に監視する。少なくともいくつかの実施形態において、信号は論理回路のインターロックとして使用されて、特定の眼瞼状態が検出される場合、装置の出力を一時的に止める。少なくともいくつかの実施形態において、信号は、装置の電力出力を増減するために論理回路により使用される。論理回路は、特定の眼瞼状態が治療過程にわたって存在する累積時間の測定を含むことができる。次に全体の治療時間は、全所望の照射量を送達するように自動的に調整されることができる。治療が名目上閉眼により送達される少なくともいくつかの実施形態において、開眼状態が検出されたときはいつでも、論理回路は治療を一次停止させることができる、又は、網膜上又は眼の他の部分上の照射量を維持するために、一時的に装置出力を減らすことができる。治療が名目上開眼により送達される少なくともいくつかの実施形態において、閉眼状態が検出されたときはいつでも、論理回路は治療を一次停止させることができる、又は、網膜上又は眼の他の部分上の照射量を維持するために、一時的に装置出力を増やすことができる。
【0178】
少なくともいくつかの実施形態において、装置は、1つ以上のカメラ(例えば、図7のカメラ754又は図15のカメラ1554)及び患者の瞳孔径を測定するための関連するソフトウェアアルゴリズムを含む。あるいは1つ以上のカメラは装置の外部にあるが、直接的又は間接的に情報を装置に提供してもよい。この測定は、一回、定期的に又は連続して実行することができる。それから論理回路は瞳孔径測定信号を使用して、網膜上の所望の照射量を得るために、治療パラメータを調整できる。
【0179】
少なくともいくつかの実施形態において、装置はセンサー(例えば、図7のセンサー754又は図15のセンサー1554)を含んで、患者に送達した空間的又は時間的照射パターンを監視する。本明細書にて開示する装着型装置などいくつかの実施形態において、1つ以上のセンサーは、装置の外部にあるが、直接又は間接的に情報を装置に提供してもよい。
【0180】
センサーは、1つ以上のフォトダイオードのアレイ、好適な波長及び時間感度のカメラ、又は送達した治療の空間的かつ時間的照射プロファイルを測定できる別のセンサーを含むことができる。次に得られた「ビームプロファイル」は、装置内のソフトウェアにより分析されて、送達した治療の特性を測定して、それは、直径(相対的円内エネルギーメトリック又は相対的強度メトリックにより定義される)、均一性、パルス周波数、全電力、最大強度などのうちの1つ以上を含む。少なくともいくつかの実施形態において、論理装置は、装置の出力を調整して所望の投与量を得るためのフィードバックとして、ビームプロファイルデータを使用する。
【0181】
少なくともいくつかの実施形態において、装置は、1つ以上のカメラ(例えば、図15のカメラ1554)及び患者の瞳孔径を測定するための関連するソフトウェアアルゴリズムを含む、又は、1つ以上のカメラは、装置の外部にあるが、直接的又は間接的に情報を装置に提供してもよい。この測定は、一回、定期的に又は連続して実行することができる。それから論理回路は瞳孔径測定信号を使用して、網膜上の所望の照射量を得るために、治療パラメータを調整できる。
【0182】
少なくともいくつかの実施形態において、装置は1つ以上のセンサー(例えば、図15のセンサー1554)を含んで、患者に送達した空間的又は時間的照射パターンを監視する、又は1つ以上のセンサーは装置の外部にあるが、直接的又は間接的に情報を装置に提供してもよい。センサーは、1つ以上のフォトダイオードのアレイ、好適な波長及び時間感度のカメラ、又は送達した治療の空間的かつ時間的照射プロファイルを測定できる別のセンサーを含むことができる。次に得られた「ビームプロファイル」は、装置内のソフトウェアにより分析されて、送達した治療の特性を測定して、それは、直径(相対的円内エネルギーメトリック又は相対的強度メトリックにより定義される)、均一性、パルス周波数、全電力、最大強度などのうちの1つ以上を含む。少なくともいくつかの実施形態において、論理装置は、装置の出力を調整して所望の投与量を得るためのフィードバックとして、ビームプロファイルデータを使用する。
【0183】
瞳孔拡張のモニタリング
眼球運動を追跡すること、網膜を標的化すること、光線の照準を定めること及び眼瞼位置を確認することに加えて、瞳孔径をモニタリングすることを、選択したビーム径が治療中、瞳孔によってカットされないことを確実にするために使用してもよい。瞳孔径が収縮する場合、予想照射量は標的組織に到達できない。瞳孔拡張溶液を適用することは、この治療において望ましくない。周辺光度を介して瞳孔径を制御することは、所定強度の可視光が治療の一部であるので、本用途において確実ではない又は実用的ではない可能性がある。患者集団全体の最小の瞳孔径について1つの値を推定することは実用的ではない、又はすべての標的組織に瞳孔を通して接近することを可能にしない。
【0184】
光の標的面への適用をマップする光度センサー
少なくともいくつかの実施形態において、装置は、光度を監視するための複合測定及びアルゴリズムを含むことができる。確認測定は、慎重なリスク緩和であり得る。例えば装置から出るビームプロファイルは、所望のとおり対象に選択されたパラメータ(ビーム径、光度マップ)が適用されていることを確認するために、測定され得る。少なくともいくつかの実施形態において、装置は、装置を出る前に光線を「漏洩」ミラーで反射できる。「漏洩」ミラーを透過する少量の光はセンサーアレイ(例えば、図7のセンサー754又は図15の1554)によってサンプリングされて、選択パラメータを測定できる。少なくともいくつかの実施形態において、カメラ(例えば、図7のカメラ754又は図15の1554)は、患者から反射する光を監視することができる。反射光は、患者に適用されるビームプロファイルを確認するためにサンプリングされ得る。
【0185】
光による皮膚又は眼組織の加熱による、対象への損傷又は不快感を制御する、抑制する、防止する、最小化する又は低減する共に、放出面から発した光線の種々のパラメータは治療を提供するように選択される。別途述べるように、後述のこれらの種々のパラメータは、本明細書に記載する実施形態に従って開示した値内で互いと組み合わせることができる。
【0186】
波長
少なくともいくつかの実施形態において、可視波長から近赤外線波長の範囲の光を、対象の皮膚又は眼組織を照射するために用いる。少なくともいくつかの実施形態において、特定の光源からの光は、実質的に単色である(すなわち1つの波長を有する光又は波長の狭帯域を有する光)。少なくともいくつかの実施形態において、所望の有益な又は治療的な生物学的反応は、1つ以上の選択された波長で得られる。少なくともいくつかの実施形態において、光は、550nm〜1064nmの間、又は590nm〜980nmの間の1つ以上の波長を含む。少なくともいくつかの実施形態では、複数の波長を使用する(例えば同時に又は連続的に適用して)。少なくともいくつかの実施形態において、特定の所望の波長の光は、ピーク波長でピークに達する波長分布を有しており、ピーク波長から±10nm未満のライン幅を有する。少なくともいくつかの実施形態において、特定の所望の波長の光は、エネルギー90%全幅で4nm未満のライン幅を有する。少なくともいくつかの実施形態において、1つ以上の選ばれた波長は、スペクトル線幅4nm未満、エネルギー90%全幅で、590nm±10%、670nm±10%、810nm±10%及び1064nm±10%から選択される。少なくともいくつかの実施形態において、特定の所望の波長の光は、ピーク波長でピークに達する波長分布を有しており、エネルギー50%でピーク波長から±40nm未満のライン幅を有する。少なくともいくつかの実施形態において、1つ以上の選ばれた波長は、スペクトル線幅40nm未満、エネルギー50%全幅で、590nm±10%、670nm±10%、810nm±10%及び1064nm±10%から選択される。
【0187】
少なくともいくつかの実施形態において、選択された波長は、例えば850nm±10、15又は30nmの範囲を含む、800〜900nmの範囲である。少なくともいくつかの実施形態において、選択された波長は、例えば660±10、15又は30nmの範囲を含む、600〜700nmの範囲である。少なくともいくつかの実施形態において、選択された波長は、例えば590±10、15又は30nmの範囲を含む、550〜650nmの範囲である。少なくともいくつかの実施形態において、装置は、本段落若しくは前段落で確認した波長又は波長範囲の任意の組み合わせを含む、光の複数の波長範囲を生成するが、これらに限定されない。
【0188】
少なくともいくつかの実施形態において、光の予め選択された各波長は、介在組織に関して、透過ピークである又はその近くである(又は吸収極小である又はその近くである)ように選択される。少なくともいくつかの実施形態において、1つの波長は、組織の透過スペクトルのピークに、又は820nm(NIR)に相当する。少なくともいくつかの実施形態において、1つの波長は、組織の透過スペクトルのピークに、又は670nm(赤色可視)に相当する。
【0189】
少なくともいくつかの実施形態において、光源は、前述のリストから選択される波長を有する、GaAlAsレーザーダイオードを連続的に発する、少なくとも1つを含む。少なくともいくつかの実施形態において、光源は少なくとも1つのLEDを含み、それは、前述のリストから選択される波長を有する、ノンコヒーレント光をそれぞれ提供する。
【0190】
少なくともいくつかの実施形態において、1つ以上の波長は、標的組織内で1つ以上の光受容体と機能するように選択される。理論によって又は特定のメカニズムにより束縛されるものではないが、より完全に他で記載されているように、例えば、1つ以上のCCO光受容体の照射は標的組織のATP生成を増加させる、又は損傷組織のアポトーシスを制御する、抑制する、防止する、最小化する又は減らし、それによって有益な効果を生成すると考えられている。他の波長は、標的組織の異なる生物学的反応を制御する、抑制する又は刺激するために光受容体と機能するように選択され得る。
【0191】
いくつかの光受容体(例えば水又はヘモグロビン)は遍在して、光エネルギーの組織内への浸透がほとんど又はまったく発生しない程度に光を吸収する。例えば、水は約1300nm超の光を吸収する。したがってこの範囲のエネルギーは、含水量故に、組織を透過する能力をほとんど有しない。しかし水は、300〜1300nmの間の波長を通す、又はほぼ通す。別の実施例はヘモグロビンであり、それは300〜670nmの範囲を大量に吸収するが、670nm超は適度に透明である。このような幅広い仮定に基づいて、身体内の「IRウインドウ」を定めることができる。ウインドウに、多少透過する可能性がある一定の波長がある。
【0192】
照射量又は電力密度
少なくともいくつかの実施形態において、光源は、光線断面にわたる0.005mW/cm〜10W/cm、0.01mW/cm〜5W/cm、0.01mW/cm〜1W/cm、1mW/cm〜500mW/cm、500mW/cm〜1W/cmの間の光源の放出面で(例えば網膜表面で)又はその重なり合う範囲で、時間平均照射量又は電力密度を有する光線を発する。少なくともいくつかの実施形態において、標的組織の時間平均照射量は、標的組織のレベルの少なくとも0.001mW/cm〜最高1W/cmである。少なくともいくつかの実施形態において、標的組織の時間平均表面照射量は、少なくとも0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900又は1000mW/cm以上であり、それは所望の臨床成績に依存する。
【0193】
パルス光線において、時間平均照射量は、パルスの時間的パルス幅と比較して長期間にわたって平均化される(例えば、時間的パルス幅よりほんの少しだけ、又は1秒、又は数秒にわたって平均化される)。時変照射量の連続波(CW)光線において、時間平均照射量は、光線の変動の特性期間より長い時間にわたって平均化した、瞬間的照射量の平均であり得る。少なくともいくつかの実施形態において、1%〜80%の間、10%〜30%の間の範囲のデューティサイクルを、0.001mW/cm〜1W/cm、0.01mW/cm〜500mW/cm、10mW/cm〜100mW/cm又は25mW/cm〜125mW/cmの標的組織のピーク照射量として使用することができる。例えば少なくともいくつかの実施形態で、20%デューティサイクル及び50mW/cmを有するパルス化線量測定を使用する。少なくともいくつかの実施形態において、パルス光線は、0.001μJ/cm〜150J/cmの間、0.01μJ/cm〜5J/cmの間、0.1μJ/cm〜1J/cmの間、0.01μJ/cm〜100mJ/cmの間、100mJ/cm〜1J/cmの間又はその重なり合う範囲の光源の放出面で、パルス当たりのエネルギー又はフルエンス(例えば、時間的パルス幅で乗じるピーク照射量)を有する。
【0194】
少なくともいくつかの実施形態の光線の断面積(例えば、マルチモード光線)は、光線強度分布の概算を使用して近似され得る。例えば下記により完全に記載されるように、光線強度分布の測定値は、ガウシアン(1/e測定値)によって、又は「頂冠」分布によって近似されることができ、光線強度分布の選択された外辺は、光線面積の境界を定めるために用いることができる。少なくともいくつかの実施形態において、放出面の照射は、標的組織で所望の照射量を提供するように選択される。
【0195】
光線の照射量は好ましくは制御可能に可変的であり、その結果、発された光エネルギーは、治療される組織で選択された照射量を提供するように調整されることができる。少なくともいくつかの実施形態において、放出面から発する光線は、4ワット〜6ワットの範囲の全放射電力を備える連続的である。少なくともいくつかの実施形態において、光線の放射電力は5ワット±20%(CW)である。特定の実施形態では、パルス光のピーク電力は、10ワット〜30ワットの範囲である(例えば20ワット)。少なくともいくつかの実施形態において、パルス光のデューティサイクルで乗じたパルス光におけるピーク電力は、4ワット〜6ワットの範囲(例えば5ワット)の平均放射電力を生じた。
【0196】
少なくともいくつかの実施形態において、光線の照射量は、標的組織で所定の照射量を提供するように選択される(例えば、網膜の着色上皮層の深さで)。所望の標的組織の照射量を得るために使用する、放出面から発する光線の適切な照射量の選択は、他の介在組織による散乱を考慮することを好ましくは含む。組織による光の散乱に関する詳しい情報は、米国特許第7,303,578号及びV.Tuchin in「Tissue Optics:Light Scattering Methods and Instruments for Medical Diagnosis,」SPIE Press(2000),Bellingham,WA,pp.3〜11,に提供されており、それらを参照により本明細書に組み込む。
【0197】
眼の状態(例えば緑内障、AMD、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、CRS、NAION、レーバー疾患、眼科手術及びブドウ膜炎)の治療のための光線療法は、光線療法の関連する有効性を判定する際に、組織に適用する照射量又は電力密度(すなわち、ユニット領域当たりの電力又はユニット時間当たりユニット領域当たりの光子数)、及び光エネルギーのエネルギー密度(すなわち、ユニット領域当たりの電力又はユニット領域当たりの光子数)に少なくともある程度は依存することができる。主要損傷を包囲する危険区域に生存しているが危険にさらされた細胞を治療して救うことに関して、これは特に適用できる可能性がある。少なくともいくつかの実施形態において、光エネルギーの選択された波長を考慮すると、それは、光線療法の相対的有効性を決定できる組織に送達される光の放射量又はエネルギー密度(組織に送達される全電力又は全エネルギーとは対照的に)である。
【0198】
理論によって又は特定のメカニズムにより束縛されるものではないが、照射量及びエネルギー密度の特定の範囲内に送達された光エネルギーは、細胞内環境に所望のバイオ刺激的効果を提供し、その結果、適切な機能が、危険にさらされた細胞のこれまで無機能の、又は十分に機能していないミトコンドリアに戻される。バイオ刺激的効果は標的組織内の標的光受容体との相互作用を含むことができ、そのいくつかは、ATP生成を促進し、又は、疾患、加齢若しくは減少した血流(例えば、虚血による)を経験した損傷細胞のアポトーシスを制御する、抑制する、防止する、最小化する若しくは低減する。
【0199】
少なくともいくつかの実施形態において、光エネルギーの細胞保護量を送達することは、眼(例えば網膜)の標的領域での所定の照射量に対応する眼瞼又は角膜表面で光エネルギーの表面照射を選択することを含む。上述のように、組織を通って広がる光は、組織により散乱して吸収される。所定の照射量を選択された標的領域に送達するために眼瞼又は角膜面に適用される照射量の計算は、それが介在組織を通って広がるので、光エネルギーの減衰を考慮することができる。皮膚から眼に広がる光の減衰に影響を及ぼすことが知られる要因は、皮膚厚、対象の年齢及び性別、並びに眼の標的領域の位置、特に皮膚又は角膜表面と関連する領域の深さを含むが、これらに限定されない。
【0200】
対象の眼の標的領域に適用されるように選択される照射量は、印加光の波長、加熱問題、及び影響を受ける組織領域を含む対象の臨床状態を含む、多くの要因に依存する可能性があるが、これらに限定されない。対象の眼の標的領域に送達される光エネルギーの照射量又は電力密度は、他の任意の治療薬又は薬剤、特に薬学的神経保護剤と組み合わせるために調整されて、所望の生物学的効果を得ることができる。このような実施形態で、選択された波長及び照射量は、選択される追加の治療薬又は薬剤にも依存し得る。
【0201】
時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル、繰り返し速度及びパルス当たりの照射量
少なくともいくつかの実施形態に従う、パルス光線の一般的な時間的プロファイルを本明細書に記載する。時間的プロファイルは複数のパルス(P、P...P)を含み、各パルスは、時間的パルス幅を有しており、その間、パルスの瞬間強度又は照射量I(t)は実質的にゼロ以外である。例えば、パルス光線において、パルスPは時間t=0〜時間t=Tの時間的パルス幅を有する、パルスPは時間t=T〜時間t=Tの時間的パルス幅を有する。及びパルスPは時間t=T〜時間t=Ti+1の時間的パルス幅を有する。時間的パルス幅は「パルスON時間」と呼ばれることもできる。パルスは互いから期間によって時間的に間隔を置いて配置されており、その間、光線の瞬間強度又は照射量は実質的にゼロである。例えば、パルスPは、時間t=T−TだけパルスPから時間的に間隔を置いて配置される。パルス間の時間は「パルスOFF時間」と呼ばれることもできる。少なくともいくつかの実施形態において、パルスのパルスON時間は互いに実質的に等しく、その一方で他の実施形態では、パルスON時間は互いとは異なる。少なくともいくつかの実施形態において、パルス間のパルスOFF時間は互いに実質的に等しく、その一方で他の実施形態では、パルス間のパルスOFF時間は互いとは異なる。本明細書で使用する場合「デューティサイクル」という用語は、その最も広い合理的な解釈を有しており、それはパルスON時間及びパルスOFF時間の合計によって分割したパルスON時間を含むが、これに限定されない。パルス光線において、デューティサイクルは1未満である。デューティサイクル及び時間的パルス幅の値は、パルス光線の繰り返し速度を詳細に定める。
【0202】
各パルスは、時間関数としてパルスI(t)の瞬間強度又は照射量を記載する、時間的パルス形状を有することができる。例えば、パルス光線の時間的パルス形状は不規則であり、種々のパルスにおいて同一ではない。少なくともいくつかの実施形態において、パルス光線の時間的パルス形状は、種々のパルスにおいて実質的に同一である。例えばパルスは、正方形の時間的パルス形状を有することができ、そこで各パルスは、パルスON時間にわたって実質的に一定の瞬間的照射量を有する。少なくともいくつかの実施形態において、パルスのピーク照射量は互いとは異なるが、その一方で他の実施形態で、パルスのピーク照射量は互いに実質的に等しい。各種の他の時間的パルス形状(例えば、三角形、台形)は、少なくともいくつかの実施形態で更に互換性がある。少なくともいくつかの実施形態において、立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、パルスのピーク照射量の特定の画分と関連して表すことができる(例えば、パルスのピーク照射量の50%に対する立ち上がり/立ち下がり時間)。
【0203】
少なくともいくつかの実施形態において、パルスPのピーク照射量は、パルスの時間的パルス幅中の瞬間的照射量I(t)の最大値であり得る。少なくともいくつかの実施形態において、瞬間的照射量はパルスの時間的パルス幅中、変化しているが、その一方で他の実施形態では、瞬間的照射量は、パルスの時間的パルス幅中、実質的に一定である。
【0204】
少なくともいくつかの実施形態において、パルスPのパルス照射量
【0205】
【数1】
は、パルスの時間的パルス幅にわたって、パルスPの瞬間的照射量I(t)の積分である。
【0206】
【数2】
少なくともいくつかの実施形態において、総照射量ITOTALは、パルスのパルス照射量の合計であり得る。
【0207】
【数3】
少なくともいくつかの実施形態において、時間平均照射量IAVEは、パルスの時間的パルス幅と比較して大きい時間Tの期間にわたる、瞬間的照射量I(t)の積分であり得る。
【0208】
【数4】
積分
【0209】
【数5】
は、パルス光線のエネルギーを提供する。
【0210】
例えば、異なるパルス照射量
【0211】
【数6】
及び異なる時間的パルス幅ΔTの複数の正方形パルスにおいて、時間Tにわたる時間平均照射量は、
【0212】
【数7】
に等しい。別の例において、等しいパルス照射量I、等しい時間的パルス幅及び等しいパルスOFF時間(デューティサイクルDを有する)を有する複数の正方形のパルスにおいて、時間平均照射量はIAVE=I・Dに等しい。
【0213】
パルス照射量及びデューティサイクルは、所定の時間平均照射量を提供するように選択されることができる。時間平均照射量が連続波(CW)光線の照射量に等しい、少なくともいくつかの実施形態において、パルス光線及びCW光線は互いに同数の光子又は束を有する。例えば、5mW/cmのパルス照射量及び20%のデューティサイクルを有するパルス光線は、1mW/cmの照射量を有するCW光線と同数の光子を提供するする。しかしCW光線とは対照的に、パルス光線のパラメータは、CW光線を使用して入手できない結果を得る方法で光子を送達するように選択され得る。
【0214】
少なくともいくつかの実施形態において、パルス光線の時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル、繰り返し速度、及びパルス照射量のうちの1つ以上は、組織の一部が60℃超、55℃超、50℃超又は45℃超の温度まで加熱されないにように選択される。少なくともいくつかの実施形態において、パルス光線の時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル、繰り返し速度、及びパルス照射量のうちの1つ以上は、組織の一部が、そのベースライン温度より30℃超、そのベースライン温度より20℃超、又はそのベースライン温度より10℃超の温度まで加熱されないように選択される。少なくともいくつかの実施形態において、パルス光線の時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル、繰り返し速度、及びパルス照射量のうちの1つ以上は、組織の一部が、そのベースライン温度より5℃超、そのベースライン温度より3℃超、又はそのベースライン温度より1℃超の温度まで加熱されない対象をモニタするように選択される。少なくともいくつかの実施形態において、ベースライン温度とは、それが光による照射を受けない場合、組織が有するであろう温度である。これまでの低レベルの光線療法とは対照的に、パルス光線は、1ワット〜10ワットの範囲、又は4ワット〜6ワットの範囲の平均放射電力を有する。
【0215】
少なくともいくつかの実施形態において、パルス化された照射はより有効な治療を提供できる。パルス化された照射は、より短い時間でより高いピーク照射量を提供し、それによって標的組織に広がるより多くの電力を適用することができ、その一方で、パルス間に介在組織及び血液の熱緩和が介在組織を過度に加熱するのを回避することを可能にする。熱緩和のための時間スケールは、通常2、3ミリ秒の範囲である。例えば、ヒトの皮膚の熱緩和時定数(例えば、組織を高温から高温の1/2まで冷却する時間)は約3〜10ミリ秒であり、その一方でヒトの毛嚢の熱緩和時定数は約40〜100ミリ秒である。
【0216】
しかし、この時間スケールのパルス光は介在組織及び血液の加熱を都合よく減らす一方で、それは他の時間スケールと比較して、意図した効果の最適量を提供しない。少なくともいくつかの実施形態において、対象の眼又は眼組織は、熱の影響を減らすように最適化されていないが、その代わりに、細胞のパフォーマンス若しくは生存度の残存、再生又は回復に関係している、1つ以上の細胞間若しくは細胞内生物学的プロセスを刺激させるため、興奮させるため、誘起させるため、又はサポートするために選択される、パラメータを有するパルス光によって照射される。
【0217】
したがって少なくともいくつかの実施形態で、選択された時間的プロファイルは、照射された組織の温度をもたらすことができ、それは、他の時間的プロファイルから生じたものより高いが、他の時間的プロファイルより効果的である。少なくともいくつかの実施形態において、パルスパラメータは、組織の熱緩和を最適化する代わりに、生物学的プロセスの動力学を利用するように選択される。少なくともいくつかの実施形態において、パルス光線は、眼疾患又は損傷のあとに照射された細胞の細胞残存、細胞機能若しくはその両方を強化する、回復する又は活性化するために、膜電位を調整するように選択される時間的プロファイル(例えば、パルス当たりのピーク照射量、時間的パルス幅及びパルスデューティサイクル)を有する。
【0218】
例えば少なくともいくつかの実施形態で、パルス光は、網膜細胞の残存若しくは再生に関係する1つ以上の細胞間又は細胞内生物学的プロセスをサポートするが、照射された組織の熱緩和を最適化しない、時間的プロファイルを有する。少なくともいくつかの実施形態において、照射がない場合、細胞はその生存と比較して、照射後より長く生存する。例えば少なくともいくつかの実施形態で、光は、細胞に保護効果を及ぼすことができる、又は細胞の再生プロセスを引き起こすことができる。
【0219】
少なくともいくつかの実施形態において、時間的プロファイル(例えばピーク照射量、時間的パルス幅及びデューティサイクル)は、組織の照射部位を所定の温度未満に維持すると共に、生物学的プロセスの動力学を利用するために選択される。この所定の温度は、他の時間的プロファイル(例えば、ピーク照射量、時間的パルス幅及びデューティサイクルの他の値)で得られる温度より高く、それは照射による周囲組織の温度上昇を制限する又は最小化する。
【0220】
例えば、10W/cmのピーク照射量及び20%のデューティサイクルを有する時間的プロファイルは、2W/cmの時間平均照射量を有する。このようなパルス光線は、2W/cmの照射量を有する持続波(CW)光線と同数の光子を照射面に提供する。しかしパルス間の「暗時間」故に、パルス光線は、CW光線より低い温度の増加をもたらすことができる。
【0221】
組織の照射部位の温度上昇を減らす又は最小化するため、次のパルスが照射部位に達する前にパルス当たりで生成された熱の大部分が消散するように、時間的パルス幅及びデューティサイクルを選択できる。少なくともいくつかの実施形態において、光線時間的パラメータを最適化して温度上昇を最小化する代わりに、時間的パラメータは、光子の吸収に関与する生体分子プロセスのタイミングに、効果的に対応するように又は十分に近づくように選択されて、増大した有効性を提供する。数百マイクロ秒のオーダーの時間的パルス幅を有する代わりに、少なくともいくつかの実施形態は時間的パルス幅を利用し、それは照射された組織の熱緩和を最適化しない(例えば、ミリ秒、何十ミリ秒、何百ミリ秒)。これらのパルス幅が熱緩和時間スケールを著しく超えるので、得られる温度上昇はより小さなパルス幅より大きいが、パルス間時の熱消散が理由で、CW光線よりは少ない。
【0222】
多くの研究は、細胞の種々の態様でパルス光を使用する細胞のin vitro照射の効果を調べた。in vitro細胞接着の820nmの波長(10Hzのパルス繰り返し周波数、20ミリ秒のパルス幅、80ミリ秒のパルス間の暗期間及び20%のデューティファクタ(パルス周期に対するパルス持続期間の比))の非干渉性パルス照射の作用メカニズムの研究は、820nmのパルス赤外線が細胞マトリックス結合を増加させることを発見した。(Karu,Lasers in Surgery and Medicine 29:274〜281(2001)、この全体を参照により本明細書に組み込む)。この研究で、原形質膜を通過する一価のイオン束の調節及びアラキドン酸の放出でないことは、820nmでの照射により活性化する細胞シグナル伝達経路に関係していると仮定された。腹部の光受容器細胞の膜コンダクタンスに対する光誘起変化に関する研究は、2つの光誘起膜プロセスを示すパルスパラメータに依存する挙動を明らかにした。Lisman et al.,J.Gen.Physiology 58:544〜561(1971)、この全体を参照により本明細書に組み込む。酸化シトクロムcオキシダーゼへのレーザー活性化電子注入の研究は、プロトンポンプメカニズムの反応シーケンスを確立する動力学及び一部のその熱力学特性が数ミリ秒のオーダーの時定数を有することを観察した。Belevich et al.,Proc.Nat'l Acad.Sci.USA 104:2685〜2690(2007)and Belevich et al.,Nature 440:829〜832(2006)、この全体を参照により本明細書に組み込む。パルス赤外線に基づく神経活性化のin vivo研究は、活動電位の伝播を引き起こす膜貫通イオンチャネルの直接的又は間接的な活性化が得られる、過渡組織温度変化からフォトサーマル効果を提案した。Wells et al.,Proc.SPIE 6084:60840X(2006)、この全体を参照により本明細書に組み込む。
【0223】
少なくともいくつかの実施形態において、パルス光線の時間的プロファイルは、ピーク照射量、時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル、及びパルス繰り返し速度又は周波数を有する。パルス光線が眼の領域を透過する少なくともいくつかの実施形態において、ピーク照射量、時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル及びパルス繰り返し速度のうちの少なくとも1つは、光線断面にわたる0.01mW/cm〜1W/cmの間、10mW/cm〜10W/cmの間、100mW/cm〜1000mW/cmの間、500mW/cm〜1W/cmの間又は650mW/cm〜750mW/cmの間の光源の放出面で、時間平均照射量(複数のパルスを含む時間にわたって平均化した)を付与するように選択される。少なくともいくつかの実施形態において、治療されている網膜組織の時間平均照射量は、0.01mW/cmより大きい。
【0224】
少なくともいくつかの実施形態において、時間的パルス形状は通常、一般に矩形、一般に三角形、又は任意の他の形である。少なくともいくつかの実施形態において、パルスは、パルスON時間の1%未満の立ち上がり時間(例えば、ピーク照射量光の10%〜ピーク照射量の90%)又はパルスON時間の1%未満の立ち下がり時間(例えば、ピーク照射量光の90%〜ピーク照射量の10%)を有する。
【0225】
少なくともいくつかの実施形態において、パルスは、0.001ミリ秒〜150秒、0.01ミリ秒〜10秒、0.1ミリ秒〜1秒、0.5ミリ秒〜100ミリ秒、2ミリ秒〜20ミリ秒又は1ミリ秒〜10ミリ秒の範囲の時間的パルス幅(例えばパルスON時間)を有する。少なくともいくつかの実施形態において、パルス幅は、0.5、1、2、4、6、8、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280又は300ミリ秒である。少なくともいくつかの実施形態において、時間的パルス幅は0.1ミリ秒〜150秒の範囲である。
【0226】
少なくともいくつかの実施形態において、パルス間の時間(例えばパルスOFF時間)は、0.01ミリ秒〜150秒、0.1ミリ秒〜100ミリ秒間、4ミリ秒〜1秒間、8ミリ秒〜500ミリ秒間、8ミリ秒〜80ミリ秒間、又は10ミリ秒〜200ミリ秒間の範囲である。少なくともいくつかの実施形態において、パルス間の時間は、4、8、10、20、50、100、200、500、700又は1000ミリ秒である。
【0227】
少なくともいくつかの実施形態において、パルスデューティサイクルは、1%〜80%、又は10%〜30%の範囲にある。少なくともいくつかの実施形態において、パルスデューティサイクルは、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%である。
【0228】
少なくともいくつかの実施形態において、光源の放出面での光線断面にわたるパルス当たりのピーク照射量及びパルスエネルギー密度は、0.01mW/cm〜1W/cm、10mW/cm〜10W/cm、100mW/cm〜1000mW/cm、500mW/cm〜1W/cm、650mW/cm〜750mW/cm、20mW/cm〜20W/cm、200mW/cm〜2000mW/cm、1W/cm〜2W/cm、1300mW/cm〜1500mW/cm、1W/cm〜1000W/cm、10W/cm〜100W/cm、50W/cm〜100W/cm、又は、65W/cm〜75W/cmの範囲にある。
【0229】
少なくともいくつかの実施形態において、パルスエネルギー密度又はエネルギー密度は、パルス繰り返し速度又は周波数で分割した、時間平均電力密度として計算できる。例えば、最少パルスエネルギー密度は最少平均電力密度及び最速のパルス繰り返し速度で発生し、パルス繰り返し速度は時間的パルス幅で割ったデューティサイクルであり、最大パルスエネルギー密度は最大平均電力密度及び最も遅いパルス繰り返し速度で起こる。例えば、時間平均電力密度0.01mW/cm及び周波数100kHzで、パルスエネルギー密度は0.1μJ/cmであり、時間平均電力密度10W/cm及び周波数1Hzで、パルスエネルギー密度は10J/cmである。例えば、時間平均電力密度0.01mW/cm及び周波数100kHzで、パルスエネルギー密度は0.1μJ/cmであり、時間平均電力密度10W/cm及び周波数1Hzで、パルスエネルギー密度は1μJ/cmである。更に別の例として、時間平均電力密度700mW/cm及び周波数100Hzで、パルスエネルギー密度は7mJ/cmである。
【0230】
ビームサイズ及びビームプロファイル
少なくともいくつかの実施形態において、光源から発する光線は、10ミリメートル〜40ミリメートルの範囲、20ミリメートル〜35ミリメートルの範囲、又は30ミリメートルに等しい、公称直径を有する。少なくともいくつかの実施形態において、断面は通常1cm〜2cmの範囲の半径の円である。少なくともいくつかの実施形態において、放出面から発する光線は、光源の放出面で2cm超、又は2cm〜20cmの範囲の断面積を有する。
【0231】
アイボックス又はアイピース
ビーム径は、光線の最大強度の少なくとも1/eの強度で,光線から照射される眼の領域周囲の最大弦として定義されることができる。少なくともいくつかの実施形態において、ビーム径を測定するために用いる光線周囲は、光線強度が光線の最大強度の1/eである点である。少なくともいくつかの実施形態において、最大有効径は、対象の眼窩領域のサイズによって、及び照射による対象の眼窩領域の加熱によって制限される。少なくともいくつかの実施形態において、最小有効径は、加熱によって、及び実際に行われたであろう治療部位の総数によって制限される。例えば、対象の眼を小さなビーム径の光線で処理することは、多数の治療部位を相応して使用する。少なくともいくつかの実施形態において、治療部位当たりの照射時間は、それに応じて、所望の照射量を得るように調整されることができる。
【0232】
出口開口に集中する特定の半径の円形開口内の全光束を特定すること(「円内エネルギー」)は、放出面から発される光線上の力(照射)分布を特定する方法である。「円内エネルギー」は、光線が集中しすぎない、大きくなりすぎない、小さくなりすぎないことを確実にするために使用することができる。少なくともいくつかの実施形態において、放出面から発される光線は全放射電力を有しており、光線は、放出面で光線に集中する20mmの断面円内に全光束を有し、それは全放射電力の75%以下である。少なくともいくつかの実施形態において、放出面から発される光線は全放射電力を有しており、光線は、放出面で光線に集中する26mmの断面円内に全光束を有し、それは全放射電力の50%以下である。
【0233】
少なくともいくつかの実施形態において、ビーム強度プロファイルは半ガウスプロファイルを有しており、その一方で少なくともいくつかの実施形態で、ビーム強度プロファイルは「頂冠」プロファイルを有する。少なくともいくつかの実施形態において、光線は実質的に、ビーム強度プロファイルに高照射束領域なし、又は、3mm×3mmで平均化した局部照射束が平均照射束より10%超である「ホットスポット」なしである。少なくともいくつかの実施形態において、装置は実質的にホットスポットなしで光線を生成し、それにより大きな温度勾配を回避して、さもなければ、それは対象に不快感を引き起こすことができた。
【0234】
ビームの広がり
少なくともいくつかの実施形態において、放出面から発されるビームの広がりは、照射される体組織内での光の散乱角より著しく小さく、それは通常数度である。少なくともいくつかの実施形態において、光線は、ゼロ超及び35度未満の開き角を有する。
【0235】
全治療時間
全治療時間は、プログラマブルコントローラにより制御されることができる。プログラマブルコントローラのリアルタイムクロック及びタイマーは、特定の治療レジメンのタイミングを制御して、予定の治療(例えば毎日、1日2回又は1日おき)を可能にするために使用できる。少なくともいくつかの実施形態において、治療は、10秒〜2時間、1〜20分間、又は1〜5分間の期間で連続的に進行する。例えば少なくともいくつかの実施形態で全治療時間は、2分である。少なくともいくつかの実施形態において、光エネルギーは、1つの眼当たり少なくとも5分の少なくとも1つの全治療期間で、又は両眼では少なくとも10分の少なくとも1つの全治療期間で送達される。
【0236】
少なくともいくつかの実施形態の最少治療時間は、生物学的反応時間で制限される(それはマイクロ秒のオーダーである)。少なくともいくつかの実施形態の最大治療時間は、加熱及び実質的治療時間により制限されることができる(例えば、損傷の約24時間以内に治療を完了する)。光エネルギーは治療期間中パルス化されることができる、又は光エネルギーは治療期間中連続的に適用されることができる。光がパルス化される場合、パルスは長さ2ミリ秒であり得て、100Hz又は少なくとも長さ10ナノ秒の周波数で発生することができて、及び最高100kHzの周波数で発生できるが、より短い若しくはより長いパルス幅、又より低い若しくはより高い周波数を使用することができる。例えば光は、1Hz〜100Hz、100Hz〜1kHz、1kHz〜100kHz、1Hz未満、又は100kHz超の周波数でパルス化できる。
【0237】
少なくともいくつかの実施形態において、治療は1つの治療期間の後終了することができる一方で、他の実施形態では、治療は複数の治療期間を繰り返すことができる。次の処理期間の間の時間は、少なくとも5分、24時間、少なくとも1〜2日又は少なくとも1週間であり得る。治療は、1日当たり複数回、又は1週当たり複数回繰り返すことができる。治療時間の長さ及び治療期間の頻度はいくつかの要因に依存することができ、それは、対象の機能回復、治療を受ける損傷、疾患若しくは状態の画像分析の結果、パルス化若しくは連続ライトの使用、光の照射量、使用する光源の数、治療の順番又はパターンを含む。少なくともいくつかの実施形態において、タイミングパラメータは、対象をモニタする、センサー又は他の装置(例えば、磁気共鳴画像形成装置)からのフィードバック信号に反応して調整されることができる。
【0238】
ヒトの眼の透過
少なくともいくつかの実施形態において、3〜5J/cmの低さの赤色光又はNIRのフルエンスはin vivoで有益であるが、50〜100J/cmなど大量照射量は有益な効果を失う可能性がある。
【0239】
本明細書で示す説明及び図は、他の当業者に本開示、その原則及びその実用的用途を知らせることを目的とする。当業者は、特定の使用要件に適するように、多数の形態で本開示を適用できる。したがって記載される本開示の特定の実施形態は、本開示を網羅する、又は制限することを意図しない。
【0240】
本開示が特定の実施形態及び実施例との関係で議論される一方で、本開示は、特に開示された実施形態を越えて他の代替的実施形態へ及ぶ、又は、本開示及び明らかな変更態様並びにこれらの等価物に及ぶことは理解されなければならない。いくつかの実施形態は、添付の図面に関連して記載されている。しかし、図面は縮尺どおりには描かれていないことを理解しなければならない。距離、角度などは単に例示であり、示した装置の実際の寸法及びレイアウトとの正確な関係を必ずしも有するわけではない。構成要素を加え、除去し、又は再編成できる。そのうえ当業者は、任意の上記の方法は、好適な装置を用いて実施することができると理解するであろう。更に、種々の実施形態に関連する、特定の構造、態様、方法、性質、特徴、品質、属性、要素などを記載する本開示を、本明細書に記載する他の実施形態すべてで使用することができる。そのうえ処理工程を加え、除去し、又は再編成できる。多種多様な設計及び方法が可能である。
【0241】
本開示の目的のために、特定の態様、利点及び本開示の新しい特徴を本明細書に記載する。すべてのこのような利点が必ずしも、本開示の任意の特定の実施形態によって達成されない可能性があることを理解すべきである。このように例えば、本明細書で教示される又は示唆されるように、他の利点を必然的に得ずに、本明細書で教示する1つの利点又はその群を達成するような方法で、本開示は実施され得る又は実行され得ることを当業者は認識するであろう。
【0242】
多重波長光線療法システム及び方法
本明細書で更に詳細に記載するように、本開示の一部として、2つ以上の特定の及び異なる波長(又は周波数の範囲)を有する光の調整かつ標的化した細胞への送達は、有利にも使用されて、(a)増加したシトクロムcオキシダーゼ(「CCO」)活性を介して、細胞内ミトコンドリア機能を改善する、(b)細胞内ミトコンドリア膜電位(「MMP」)を回復する、(c)細胞内ATP合成を上方制御する、ことができる。そのうえこのような強化された細胞内活性は更に利用されて、局所的な細胞応答を促進でき、それは例えば、対応する通常の未損傷及び/又は健康な組織と比べて、損傷した及び/又は疾患のある組織に存在しない又は不十分なレベルで存在する細胞応答を含む。
【0243】
したがって特定の実施形態において、本開示は、所望の細胞応答を促進するための、多重波長光線療法システム及び方法を提供し、その方法は、光の2つ以上の光線量の細胞への調整かつ標的化した送達を含む。そこで、第1の光線量は第1の波長又は波長の範囲を有して、第1の細胞内活性を刺激でき、第2の光線量は第2の波長又は波長の範囲を有して、第2の細胞内活性を刺激できる。光の第1及び第2の光線量の調整かつ標的化した送達は、所望の細胞応答を促進する。
【0244】
関連する実施形態において、本開示は、損傷した及び/又は疾患のある組織の治療のための、多重波長光線療法システム及び方法を提供し、その方法は、光の2つ以上の光線量の損傷した及び/又は疾患のある組織への調整かつ標的化した送達を含む。そこで、第1の光線量は第1の波長又は波長の範囲を有して、第1の細胞内活性を刺激でき、第2の光線量は第2の波長又は波長の範囲を有して、第2の細胞内活性を刺激できる。光の第1及び第2の光線量の調整かつ標的化した送達は、損傷した及び/又は疾患のある組織内の所望の細胞応答を促進して、それにより損傷した組織を治癒する、及び/又は疾患のある組織の疾患進行を逆にする又は遅らせるのを促進できる。
【0245】
これらの実施形態の特定の態様において、本開示は、損傷した及び/又は疾患のある組織の治療のための、多重波長光線療法システム及び方法を例示し、その方法は、光の2つ以上の光線量の眼内の損傷した及び/又は疾患のある眼組織への調整かつ標的化した送達を含む。そこで、第1の光線量は第1の波長又は波長の範囲を有して、損傷した及び/又は疾患のある眼組織内の第1の細胞内活性を刺激でき、第2の光線量は第2の波長又は波長の範囲を有して、損傷した及び/又は疾患のある眼組織内の第2の細胞内活性を刺激できる。光の第1及び第2の光線量の調整かつ標的化した送達は、損傷した及び/又は疾患のある眼組織内の所望の細胞応答を促進でき、それにより損傷した組織を治癒する、及び/又は疾患のある眼組織の疾患進行を逆にする又は遅らせるのを促進できる。
【0246】
図24は、光の2つ以上の異なる波長の、細胞又は組織への調整化かつ標的化した送達によって、2つ以上の感光性因子の活性を促進して、それにより標的細胞の機能を改善する又は回復する、標的細胞若しくは組織の機能を改善する又は回復するための多重波長光線療法及び方法の一実施形態を示す。これらのシステム及び方法によって、第1の光源は、第1の光の波長の標的細胞への標的化した送達のために位置決めされ(2402)、第2の光源は、第2の光の波長の標的細胞への標的化した送達のために位置決めされ(2404)、標的細胞の第1の感光性因子を第1の光の波長により活性化し(2406)、標的細胞の第2の感光性因子を第2の光の波長により活性化する(2408)。
【0247】
図25は、細胞のシトクロムcオキシダーゼ(CCO)活性を刺激する方法を提供するための多重波長光線治療システム及び方法の一実施形態を示す。それは、CCO活性と関連付けられかつそれに必要な2つ以上の感光性因子を有する細胞への2つ以上の光線量の調整かつ標的化した送達による。第1の光線量は、CCOの第1の感光性因子を活性化することができる第1の波長を有しており、第2の光線量はCCOの第2の感光性因子を活性化することができる第2の波長を有しており、それによってCCO活性を刺激する。これらのシステム及び方法によって、第1の光源は、第1の光の波長の、シトクロムcオキシダーゼを生成する標的細胞への標的化した送達のために位置決めされ(2502)、第2の光源は、第2の光の波長の、シトクロムcオキシダーゼを生成する標的細胞への標的化した送達のために位置決めされ(2504)、標的細胞の第1のシトクロムcオキシダーゼ関連感光性因子を第1の光の波長により活性化し(2506)、標的細胞の第2のシトクロムcオキシダーゼ関連感光性因子を第2の光の波長により活性化する(2508)。
【0248】
図26は、消失した細胞機能を回復させて又は低下した細胞機能を強化して、それにより障害又は疾患を治療するために、患者の1つ以上の細胞に2つ以上の異なる光の波長の調整かつ標的化した送達による、1つ以上の消失した若しくは減少した細胞機能と関連付けられる障害又は疾患を罹患した患者の治療のための、多重波長光線療法装置、システム及び方法の一実施形態を示す。これらのシステム及び方法によって、第1の光源は、第1の光の波長の、障害若しくは疾患を罹患した患者の障害又は疾患に関連付けられる標的細胞への標的化した送達のために位置決めされ(2602)、第2の光源は、第2の光の波長の、障害若しくは疾患を罹患した患者の障害又は疾患に関連付けられる標的細胞への標的化した送達のために位置決めされ(2604)、障害又は疾患に関連する標的細胞の第1の感光性因子を第1の光の波長により活性化し(2606)、障害又は疾患に関連する第2の感光性因子を第2の光の波長により活性化する(2608)。
【0249】
図27は、眼の細胞の1つ以上の消失した又は低下した機能と関連する眼の障害又は疾患を罹患した患者の治療のための、多重波長光線療法システム及び方法の一実施形態を示す。このシステム及び方法は、消失した又は低下した眼の細胞に対する機能を回復させて又は強化して、それにより障害又は疾患を治療するために、患者の眼に2つ以上の異なる光の波長の調整かつ標的化した送達を含む。これらのシステム及び方法によって、第1の光源は、第1の光の波長の、眼の障害若しくは疾患を罹患した患者の眼の障害又は疾患に関連付けられる標的細胞への標的化した送達のために位置決めされ(2702)、第2の光源は、第2の光の波長の、眼の障害若しくは疾患を罹患した患者の眼の障害又は疾患に関連付けられる標的細胞への標的化した送達のために位置決めされ(2704)、眼の障害又は疾患に関連する標的細胞の第1の感光性因子を第1の光の波長により活性化し(2706)、眼の障害又は疾患に関連する第2の感光性因子を第2の光の波長により活性化する(2708)。
【0250】
損傷した及び/又は疾患のある眼組織の治療のため多重波長光線療法システム及び方法が、眼の障害及び/又は眼疾患の治療のための多重波長光線療法システム及び方法によって本明細書に例示される。治療は、緑内障、加齢関連黄斑変性症、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、CRS、NAION、レーバー疾患、外科的処置から生じる眼の損傷及び/又はブドウ膜炎を含む、眼の障害及び/又は疾患の1つ以上の症状を回復させて及び/又は強化する。
【0251】
これらの実施形態の特定の態様において、光は、閉眼瞼を通して送達されることができ、光のほとんどは網膜の比較的広い領域に散乱すると予想され得る、又はそれは開眼に実施されることができる。開眼の場合、大部分の治療用光は、最小限の散乱でレンズ及び眼の瞳孔を通して網膜に送達され得る。これは、例えば網膜上の露出領域を正確に形成し制御する空間光変調器(SLM)を含有することにより実施することができる。SLMは、LCOSパネル、走査ミラー、変形可能ミラーアレイ又は他の変調装置でもよい。
【0252】
光源から発される光線の種々のパラメータは、標的組織(例えば皮膚若しくは眼組織)の光誘起加熱から生じ得た、患者への損傷及び/若しくは不快感を制御する、抑制する、防ぐ、最小化する又は低減すると共に、治療的な利点を提供するように都合よく選択されることができる。これらの種々のパラメータは当業者より選択されることができて、本システム及び方法に従って組織の損傷又は疾患の治療のための好適な状態を得るために、本明細書で開示する値の範囲内で組み合わせることができる。
【0253】
光線パラメータは、(1)2つ以上の光源のそれぞれの波長、(2)2つ以上の光源のそれぞれの照射量又は電力密度、(3)2つ以上の光源のそれぞれの、時間的パルス幅及び形状、デューティサイクル、繰り返し速度、及びパルス当たりの照射量、(4)2つ以上の光源のそれぞれによる、全治療時間、を含むがこれらに限定されない。次に、本明細書で開示する多重波長システム及び方法で用いるこれらのパラメータ、並びにこれらのパラメータの選択におけるガイダンスを説明する。
【0254】
特定の実施形態では、可視波長から近赤外線波長の範囲の光を、標的細胞又は組織(例えば患者の皮膚又は眼組織)に送達することができる。光は、実質的に単色であり得て(すなわち、単一の波長又は波長の狭周波数帯を有する)、所望の細胞応答は光の2つ以上の選択された波長を用いて得ることができる。
【0255】
例えば、1つの光源は約550nm〜約1064nm、又は約590nm〜約980nmの波長を有することができる。光の複数の波長を用いることができ、第1の光の波長は第2の光の波長と同時に送達される、又は第1の光の波長は第2の光の波長から独立して連続して送達される。
【0256】
本光線療法システム及び方法の特定の態様において、光はピーク波長を示す波長分布を有しており、その波長分布はエネルギー90%で全幅で、ピーク波長から±10nm未満のライン幅、又はピーク波長から±4nm未満のライン幅を有する。関連する態様において、光の各波長は、590nm±10%、670nm±10%、810nm±10%及び1064nm±10%からそれぞれ独立して選択され、スペクトル線幅4nm未満、エネルギー90%全幅である。更なる態様において、光の各波長は、ピーク波長でピークに達する波長分布からそれぞれ独立して選択され、それはエネルギー50%でピーク波長から±40nm未満のライン幅を有する。更に他の態様において、光の各波長は、スペクトル線幅40nm未満、エネルギー50%全幅で、590nm±10%、670nm±10%、810nm±10%及び1064nm±10%からそれぞれ独立して選択される。
【0257】
治療した細胞又は組織に送られる光の量を最大化することを確実にするために、光の予め選択された各波長は、介在組織に関して、透過ピークである又はその近くである(又は吸収極小である又はその近くである)ように選択されることができる。例えば、第1の波長は約820nm(NIR)で組織の透過スペクトルのピークに対応することができ、第2の波長は約670nm(赤色可視光)で組織の透過スペクトルのピークに対応することができる。
【0258】
本光線療法システム及び方法は、それぞれが本明細書に記載する波長を有する、1つ以上の連続的に放射するGaAlAsレーザーダイオードを有する光源によって実行できる。あるいは本方法は、1つ以上のLEDを有しており、それぞれが本明細書に記載する波長を有する非コヒーレント光を提供する光源によって実行できる。
【0259】
光の2つ以上の各波長を、標的細胞又は組織内の1つ以上の光受容体を刺激する又は活性化させるように選択できる。理論又は特定の動作のメカニズムよって束縛されないが、1つ以上CCO光受容体への光の送達は、例えば標的細胞又は組織のATP生成を増加させて、それにより損害を受けた組織のアポトーシスを制御する、抑制する、防止する、最小化する、又は低減して、そうして本明細書に詳述するとおり有益な治療効果を生成すると、考えられている。波長は、標的組織の異なる生物学的反応を制御する、抑制する又は刺激するために、1つ以上の光受容体を活性化するように選択され得る。
【0260】
いくつかの光受容体(例えば水又はヘモグロビン)は遍在して、光エネルギーが組織へ到達できない程度に光を吸収する。例えば、水は約1300nm超の光を吸収することが知られている。したがってこのような波長の光は、含水量故に効果的に標的組織を透過することができない。しかし水は、約300nm〜約1300nmの波長の光を通す、又はほとんど通す。同様に、約300nm〜約670nmの光を吸収するヘモグロビンは、約670nm超の光を適度に通す。光の有効な送達を制限するこれらの周知の要因に基づいて、「IRウインドウ」は標的組織に送達される光の透過性に関して定義されることができる。このIRウインドウ内で、光の一定波長は、光吸収分子(例えば水及びヘモグロビン)によってほとんど制限されずに透過できる。
【0261】
本光線療法システム及び方法の特定の態様において、光源は、光線の断面にわたる約0.005mW/cm〜約10W/cm、約0.01mW/cm〜約5W/cm、約0.01mW/cm〜約1W/cm、約1mW/cm〜約500mW/cm、又は約500mW/cm〜約1W/cmの間の光源の放出面で(例えば網膜表面など組織表面で)、時間平均照射量又は電力密度を有する光線を発するように用いることができる。
【0262】
本光線療法システム及び方法の他の態様において、光源は、光源が直接網膜に対する閉眼瞼に適用される場合、使用される値から1/e倍通常低減できる、時間平均照射量又は電力密度を有する光線を発するように用いることができる。例えば、標的組織(例えば眼瞼下の約2cmの深さ)への時間平均照射量は、所望の治療用途に応じて組織レベルで約0.001mW/cm〜約1W/cm、又は組織レベルで少なくとも約0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900若しくは1000mW/cm以上であり得る。
【0263】
パルス光線において、時間平均照射量は、パルスの時間的パルス幅と比較して長期間にわたって平均化されることができる(例えば、時間的パルス幅よりほんの少しだけ、又は1秒、又は数秒にわたって平均化される)。時変照射量の連続波(CW)光線において、時間平均照射量は、光線の変動の特性期間より長い時間にわたって平均化した、瞬間的照射量の平均であり得る。
【0264】
本光線療法システム及び方法の特定の態様において、デューティサイクルは、約0.001mW/cm〜約1W/cm、約0.01mW/cm〜約500mW/cm、約10mW/cm〜約100mW/cm又は約25mW/cm〜約125mW/cmの標的組織のピーク照射量で、約1%〜約80%又は約10%〜約30%であり得る。例えば、20%デューティサイクル、標的組織約50mW/cmのピーク照射量を有するパルス化線量測定を使用することができる。特定の実施形態で、パルス光線は、約0.001μJ/cm〜約150J/cm、約0.01μJ/cm〜約5J/cm、約0.1μJ/cm〜約1J/cm、約0.01μJ/cm〜約100mJ/cm、約100mJ/cm〜約1J/cmの光源の放出面で、パルス当たりのエネルギー又はフルエンス(例えば、時間的パルス幅で乗じるピーク照射量)を有する。
【0265】
光線の断面積(例えば、マルチモード光線)は、光線強度分布の概算を使用して測定され得る。例えば、光線強度分布の測定値は、ガウシアン(1/e測定値)によって、又は「頂冠」分布によって近似されることができ、光線強度分布の選択された外辺は、光線面積の境界を定めるために用いることができる。
【0266】
放出面の照射は、標的組織で所望の照射量を提供するように選択され得る。光線の照射量は可変的に制御可能であり、その結果、発された光エネルギーは、標的組織で選択された照射量を提供するように調整されることができる。放出面から発する光線は、約4ワット〜約6ワットの全放射電力を備える連続的であり得る。例えば光線の放射電力は5ワット±20%(CW)であり得る。
【0267】
パルス光のピーク電力は、約10ワット〜約30ワットの範囲であり得る(例えば約20ワット)。パルス光のデューティサイクルで乗じたパルス光におけるピーク電力は、約4ワット〜約6ワット(例えば約5ワット)の平均放射電力を生じる。
【0268】
光線の照射量は、標的組織で所定の照射量を提供するように選択され得る(例えば、網膜の着色上皮層の深さで)。所望の標的組織の照射量を得るために使用する、放出面から発される光線の適切な照射量の選択は、非標的介在組織によって引き起こされる光散乱を一般的に考慮する。組織による光の散乱に関する詳しい情報は、米国特許第7,303,578号及びTuchin,SPIE Press 3〜11(2000)に提供されており、そのそれぞれは全体を参照により本明細書に組み込む。
【0269】
眼の状態(例えば緑内障、AMD、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、CRS、NAION、レーバー疾患、眼科手術及びブドウ膜炎)の治療のための光線療法は、標的組織に適用する照射量又は電力密度(すなわち、ユニット領域当たりの電力又はユニット時間当たりユニット領域当たりの光子数)、及び光エネルギーのエネルギー密度(すなわち、ユニット領域当たりの電力又はユニット領域当たりの光子数)が所与の光線療法の有効性に実施的に影響するという、本明細書にて開示する発見にある程度は基づく。これらの要因は、主要損傷の部位を取り囲む領域にある「危険区域」内に生存しているが危険にさらされている細胞の有効性を保存するため光線療法を設計するとき、特に関連する。
【0270】
光エネルギーの所与の波長に関して、標的組織に送達される光の照射量及び/又はエネルギー密度−組織に送達される全電力又は全エネルギーとは対照的に−は所与の光線療法の相対的な治療有効性を決定することが、更に発見されて、本開示の一部として本明細書で呈示される。
【0271】
理論又は特定の動作のメカニズムに束縛されないが、発光及びエネルギー密度の特定の範囲の中に送達される光エネルギーは、細胞内環境にフォトバイオモジュレーション的効果を提供し、その結果、1つ以上の通常のミトコンドリア機能が、危険にさらされた細胞のこれまで無機能の又は十分に機能していないミトコンドリアに戻されると、考えられている。このようなフォトバイオモジュレーション的効果は、例えば、標的組織内の1つ以上の光受容体との1つ以上の相互作用を含むことができ、それは、ATP生成を容易にする、及び/又は疾患のある若しくは老化した細胞のアポトーシスを抑制する、防止する、最小化する若しくは低減する、又は虚血性組織の血流を増加させる、又はNO、ROS若しくは他の細胞内メディエータの放出を調整して、危険にさらされた細胞の遺伝子及びタンパク質発現を修正する。照射量及び露出時間の役割は、例えばHans et al.,Lasers in Surgery and Medicine 12:528〜537(1992)で議論されており、この全体を参照により本明細書に組み込む。
【0272】
光エネルギーの細胞保護量を送達することは、組織表面(例えば眼瞼又は角膜の表面)の光エネルギーの表面照射量の選択も含むことができ、表面照射量は、組織(例えば眼の角膜又は網膜)の標的領域で所定の照射量に相当する。更に詳細に本明細書で述べるように、組織により伝播する光は、その組織により放散及び吸収の両方がなされる。標的領域(瞼又は角膜面)に適用される照射量の計算はしたがって、それは1つ以上の介在する非標的組織により伝播するので、光エネルギーの減衰を考慮して、所定の及び目的の照射量が標的組織(例えば眼組織)の選択領域に送達されるのを確実にすることができる。皮膚から組織に広がる光の減衰の程度に影響を及ぼす要因は、例えば皮膚厚、対象の年齢及び/又は性別、並びに組織の標的領域の位置、特に皮膚表面、眼の場合は角膜表面と関連する領域の深さを含む。
【0273】
所与の組織の標的領域への送達のため照射量の選択に影響する要因は、適用される光、組織の光誘起加熱の考慮、並びに患者の損傷及び/又は疾患のある組織の状態並びに領域を含む。対象の眼の標的領域に送達される光エネルギーの照射量又は電力密度は、所望の光線療法レジメンが1つ以上に追加の治療薬(例えば1つ以上の神経保護剤)と共に送達される場合、影響され及び結果的に調整されて、所望の生物学的効果を得ることができる。光パラメータ(例えば波長及び照射量)の選択は、選択される特定の治療薬に影響されることは理解されよう。
【0274】
本開示のシステム及び方法は、所与の光療法レジメンの治療有効性を強化するために都合よく使用されることができる、パルス光線の種々の時間的プロファイルを更に考察する。時間的プロファイルは複数のパルス(P、P...P)を含み、各パルスは時間的パルス幅を示し、その間、パルスの瞬間強度又は照射量I(t)は実質的にゼロ以外である。例えば、パルス光線において、パルスPは時間t=0〜時間t=Tの時間的パルス幅(別名、パルスON時間)を有する、パルスPは時間t=T〜時間t=Tの時間的パルス幅を有する。及びパルスPは時間t=T〜時間t=Ti+1の時間的パルス幅を有する。パルスは互いから期間によって時間的に間隔を置いて配置されており、その間、光線の瞬間強度又は照射量は実質的にゼロである。例えば、パルスPは、時間t=T−TだけパルスPから時間的に間隔を置いて配置される(別名、パルスOFF時間)。パルスON及びパルスOFF時間は、互いに実質的に等しくてもよい、又は互いと異なり得る。
【0275】
本明細書で使用する場合「デューティサイクル」という用語は、一般的にパルスON時間及びパルスOFF時間の合計で割ったパルスON時間である。したがってパルス光線は、1未満のデューティサイクルを有する。デューティサイクル及び時間的パルス幅は共に、所与のパルス光線の繰り返し速度を詳細に定める。
【0276】
パルスは、時間関数としてパルスI(t)の瞬間強度又は照射量を記載する、時間的パルス形状を有することができる。例えば、パルス光線の時間的パルス形状は不規則であり得て、種々のパルスにおいて実質的に同一ではなく、パルス光線の時間的パルス形状は、種々のパルスにおいて実質的に同一であり得る。例えばパルスは、正方形の時間的パルス形状を有することができ、パルスON時間にわたって実質的に一定の瞬間的照射量を有する。パルスのピーク照射量は互いに異なることができる、又は互いに実質的に等しくなることができる。種々の他の時間的パルス形状(例えば、三角形及び台形)は、本開示のシステム及び方法で使用するためにも考察される。
【0277】
立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、パルスのピーク照射量の特定の画分と関連して表すことができる(例えば、パルスのピーク照射量の50%に対する立ち上がり/立ち下がり時間)。本明細書で使用する場合、パルスPの「ピーク照射量」という用語は、パルスの時間的パルス幅中の瞬間的照射量I(t)の最大値を意味する。瞬間的照射量は、パルスの時間的パルス幅中、変化できる又は実質的に一定のままであり得る。
【0278】
パルス照射量及びデューティサイクルは、所定の時間平均照射量を提供するように選択されることができる。時間平均照射量が連続波(CW)光線の照射量に等しい、本システム及び方法の特定の用途において、パルス光線及びCW光線は当量の光子及び/又は束を有する。例えば、5mW/cmのパルス照射量及び20%のデューティサイクルを有するパルス光線は、1mW/cmの照射量を有するCW光線と同数の光子を提供するする。しかしCW光線とは対照的に、パルス光線のパラメータは、CW光線によって入手できない細胞内及び/又は治療的効果を得る方法で光子を送達するように選択され得る。
【0279】
パルス光線のうちの1つ以上の時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル、繰り返し速度、及び/又はパルス照射量のうちの1つ以上は、組織の一部が約60℃超、約55℃超、約50℃超又は約45℃超の温度まで加熱されないにようにそれぞれ独立して選択され得る。
【0280】
パルス光線のうちの1つ以上の時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル、繰り返し速度、及びパルス照射量は、組織の一部がそのベースライン温度より約30℃超、又はそのベースライン温度より約20℃超、又はそのベースライン温度より約10℃超の温度まで加熱されないにようにそれぞれ独立して選択され得る。
【0281】
パルス光線のうちの1つ以上の時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル、繰り返し速度、及びパルス照射量は、組織の一部がそのベースライン温度より約5℃超、又はそのベースライン温度より約3℃超、又はそのベースライン温度より約1℃超の温度まで加熱されないにようにそれぞれ独立して選択されることができ、本明細書で使用する場合一般的にそれは、光線による照射前に標的組織の温度を意味する。本明細書にて開示されるシステム及び方法で適切に使用され得るパルス光線は、約1ワット〜約10ワット、又は約4ワット〜約6ワットの平均放射電力を有することができる。
【0282】
考察される正確な光線療法レジメンに基づき、パルス化照射量は1つ以上の性能強化を細胞機能及び/又は治療有効性に提供できる。パルス化された照射は例えば、より短い時間でより高いピーク照射量を提供し、それによって標的組織に送達するより多くの電力を適用することができ、その一方で、パルス間に介在組織及び血液の熱緩和を可能にして、それにより介在組織が加熱される程度を低減する。熱緩和のための時間スケールは、通常2、3ミリ秒の範囲である。例えば、ヒトの皮膚の熱緩和時定数(例えば、組織を高温から高温とベースライン温度の間の1/2まで冷却する時間)は約3ミリ秒〜10ミリ秒であり、その一方でヒトの毛嚢の熱緩和時定数は約40ミリ秒〜100ミリ秒である。したがって脱毛のための身体へのパルス光の以前の適用は、数百ミリ秒のパルス間の時間で40ミリ秒超の時間的パルス幅を最適化した。
【0283】
この時間スケール内のパルス光は介在組織及び血液の加熱を都合よく減らす一方で、しかしそれは他の時間スケールと比較して、最適な有効性を示さない。標的組織(例えば眼又は眼組織)は、熱の影響を減らすように最適化されていないが、その代わりに、標的細胞内の細胞のパフォーマンスの残存、再生又は回復を強化する、1つ以上の細胞間若しくは細胞内生物学的プロセスを刺激させるため、興奮させるため、誘起させるため、及び/又はサポートするために最適化される、パラメータを有するパルス光によって照射され得る。したがって選択された時間的プロファイルは、照射された組織の温度をもたらすことができ、ベースライン温度で又はその近くで標的組織温度を維持する時間的プロファイルと比較して、それは改善された治療有効性を更に提供する他の時間的プロファイルから生じるものより高い。
【0284】
本システム及び方法の他の態様では、パルス化しているパラメータは、組織の熱緩和を最適化する代わりに、生物学的工程の動力学を好むように選択されることができる。例えばパルス光線は、時間的プロファイル(例えば、パルス当たりのピーク照射量、時間的パルス幅及びパルスデューティサイクル)を有するように選択されることができる。それは、膜電位を調節して、それにより、照射を受けた細胞(例えば眼性障害、損傷、及び/又は疾患と関連付けられる細胞)の1つ以上の残存又は機能を強化する、回復する、及び/又は促進する。本システム及び方法のいくつかの態様では、パルス光は、細胞又は組織(例えば網膜細胞又は組織)の残存若しくは再生に関係する、1つ以上の細胞間又は細胞内生物学的プロセスをサポートするが、照射された細胞又は組織の熱緩和を得るために最適化しない、時間的プロファイルを有することができる。このような態様において、細胞及び/又は組織は、照射されていない同類の細胞及び/又は組織と比較して、照射後より長く生存する。例えば、光は保護効果を有することができる、及び/又は標的細胞又は組織の再生方法を生じさせる。
【0285】
時間的プロファイル(例えばピーク照射量、時間的パルス幅及びデューティサイクル)は、組織の照射された細胞又は組織の一部を所定の温度未満に維持すると共に、生物学的プロセスの動力学を好むように選択され得る。この所定の温度は、他の時間的プロファイル(例えば、ピーク照射量、時間的パルス幅及びデューティサイクルの他の値)で得られ得る最適化された温度より高くなることができ、それは照射による隣接細胞及び/又は周囲組織の温度上昇を制限する又は最小化する。
【0286】
10W/cmのピーク照射量及び20%のデューティサイクルを有する時間的プロファイルは、2W/cmの時間平均照射量を有する。このようなパルス光線は、2W/cmの照射量を有する持続波(CW)光線と同数の光子を照射面に提供する。しかしパルス間の「暗時間」故に、パルス光線は、CW光線より低い温度の増加を産生することができ、照射表面に同じ数の光子を提供する。
【0287】
組織の照射部位の温度上昇を最小化するため、次のパルスが照射部位に達する前にパルス当たりで生成された熱の大部分が消散するように、時間的パルス幅及びデューティサイクルを選択できる。このように光線の時間的パラメータを最適化して標的組織の温度増加を最小化する代わりに、時間的パラメータは、は光子の吸収に関与して、それによって治療有効性を増加させる生体分子プロセスのタイミングと、効果的に対応するように及び/又はそれと十分に合わせられるように選択されることができる。数百マイクロ秒のオーダーの時間的パルス幅を有する代わりに、時間的パルス幅を利用し、それは照射された組織の熱緩和を最適化しない(例えば、ミリ秒、何十ミリ秒、何百ミリ秒)。このようなパルス幅が熱緩和時間スケールを著しく超えるので、得られる温度上昇はより小さなパルス幅より大きいが、パルス間時の熱消散故に、パルス間の時間はCW光線による照射から生じる温度増加より少ない。
【0288】
パルス光を使用する細胞のin vitro照射の種々の効果は、文献に記載されている。in vitro細胞接着の820nmの波長(10Hzのパルス繰り返し周波数、20ミリ秒のパルス幅、80ミリ秒のパルス間の暗期間及び20%のデューティファクタ(パルス周期に対するパルス持続期間の比))の非干渉性パルス照射は、細胞マトリックス結合を促進することを示している。Karu et al.,Lasers in Surgery and Medicine 29:274〜281(2001)、この全体を参照により本明細書に組み込む。原形質膜を通過する一価のイオン束の調節及びアラキドン酸の放出でないことは、820nmでの照射により活性化する細胞シグナル伝達経路に関係していると仮定された。
【0289】
腹部の光受容器細胞の膜コンダクタンスに対する光誘起変化は、パルスパラメータに依存していることが判明し、2つ以上のプロセスが光誘起膜機能に関与していることを示唆する。Lisman et al.,J.Gen.Physiology 58:544〜561(1971)、この全体を参照により本明細書に組み込む。酸化シトクロムcオキシダーゼへのレーザー活性化電子注入は、プロトンポンプメカニズムの反応シーケンスを確立する動力学及び一部のその熱力学特性が数ミリ秒のオーダーの時定数を示すことをもたらした。Belevich et al.,Proc.Nat'l Acad.Sci.U.S.A.104:2685〜2690(2007)and Belevich et al.,Nature 440:829〜832(2006)、この全体を参照により本明細書に組み込む。パルス赤外線に基づく神経活性化のin vivo研究は、活動電位の伝播を引き起こす膜貫通イオンチャネルの直接的又は間接的な活性化が得られる、過渡組織温度変化からフォトサーマル効果を提案した。Wells et al.,Proc.SPIE 6084:60840X(2006)、この全体を参照により本明細書に組み込む。
【0290】
パルス光線の時間的プロファイルは、ピーク照射量、時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル、及びパルス繰り返し率を含むことができる。本明細書にて開示するシステム及び方法のこれらの態様において、パルス光線が組織(例えば、眼組織)の領域を透過する少なくともいくつかの実施形態において、ピーク照射量、時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル及び/又はパルス繰り返し率のうちの少なくとも1つは、光線の断面領域にわたる約0.01mW/cm〜約1W/cmの間、約10mW/cm〜約10W/cmの間、約100mW/cm〜約1000mW/cmの間、約500mW/cm〜約1W/cmの間又は約650mW/cm〜約750mW/cmの間の光源の放出面で、時間平均照射量(複数のパルスを含む時間にわたって平均化した)を付与するように選択され得る。例えばこれらのシステム及び方法の特定の態様で、組織(例えば網膜組織)の時間平均照射量は、0.01mW/cm超である。
【0291】
時間的パルス形状は、一般に矩形、一般に三角形、又は広範囲の形状の任意の1つであり得る。パルスは、パルスON時間の1%未満の立ち上がり時間(例えば、ピーク照射量光の10%〜ピーク照射量の90%)又はパルスON時間の1%未満の立ち下がり時間(例えば、ピーク照射量光の90%〜ピーク照射量の10%)を有することができる。
【0292】
パルスは、約0.001ミリ秒〜約150秒、約0.1ミリ秒〜約150秒、約0.01ミリ秒〜約10秒、又は約0.1ミリ秒〜約1秒、約0.5ミリ秒〜約100ミリ秒、約2ミリ秒〜約20ミリ秒、約1ミリ秒〜約10ミリ秒の時間的パルス幅(例えばパルスON時間)を有することができる。例えば、パルス幅は、約0.5、1、2、4、6、8、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280又は300ミリ秒であり得る。
【0293】
パルス(例えば、パルスOFF時間)間の時間は、約0.01ミリ秒〜約150秒、又は約0.1ミリ秒〜約100ミリ秒、又は約4ミリ秒〜約1秒、又は約8ミリ秒〜約500ミリ秒、又は約8ミリ秒〜約80ミリ秒、又は約10ミリ秒〜約200ミリ秒であり得る。例えば、パルス間の時間は、約4、8、10、20、50、100、200、500、700又は1000ミリ秒であり得る。
【0294】
パルスデューティサイクルは、約1%〜約80%、又は好ましくは約10%〜約30%であり得る。例えば、パルスデューティサイクルは、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%であり得る。
【0295】
光源の放出面での光線断面にわたるパルス当たりのピーク照射量及びパルスエネルギー密度は、約0.01mW/cm〜約1W/cm、約10mW/cm〜約10W/cm、約100mW/cm〜約1000mW/cm、約500mW/cm〜約1W/cm、約650mW/cm〜約750mW/cm、約20mW/cm〜約20W/cm、約200mW/cm〜約2000mW/cm、約1W/cm〜約2W/cm、約1300mW/cm〜約1500mW/cm、約1W/cm〜約1000W/cm、約10W/cm〜約100W/cm、約50W/cm〜約100W/cm、又は、約65W/cm〜約75W/cmの範囲であり得る。
【0296】
パルスエネルギー密度又はエネルギー密度は、パルス繰り返し速度又は周波数で分割した、時間平均電力密度として計算できる。例えば、最少パルスエネルギー密度は最少平均電力密度及び最速のパルス繰り返し速度で生じ、パルス繰り返し速度は時間的パルス幅で割ったデューティサイクルである。最大パルスエネルギー密度は最大平均電力密度及び最も遅いパルス繰り返し速度で起こる。例えば、時間平均電力密度0.01mW/cm及び周波数100kHzで、パルスエネルギー密度は0.1μJ/cmであり、時間平均電力密度10W/cm及び周波数1Hzで、パルスエネルギー密度は10J/cmである。別の例として、時間平均電力密度10mW/cm及び周波数10kHzで、パルスエネルギー密度は1μJ/cmである。更に別の例として、時間平均電力密度700mW/cm及び周波数100Hzで、パルスエネルギー密度は7mJ/cmである。
【0297】
本開示の多重波長光線療法システム及び方法は、強化された細胞機能及び/又は改善された治療有効性を得るための、好適な全処理時間を更に提供する。治療レジメンは例えば連続的、約10秒〜約2時間、又は約1分〜約20分、又は約1分〜約5分で進行できる。例えば全治療時間は約2分であり得る。
【0298】
関連する態様において、光エネルギーは、少なくとも約5分の少なくとも1つの全治療期間で、又は少なくとも10分の少なくとも1つの全治療期間で送達され得る。最少治療時間は、生物学的反応時間で制限され得る(それはマイクロ秒のオーダーである)。最大治療時間は、加熱及び/又は実質的治療時間により制限されることができる(例えば、損傷の約24時間以内に治療を完了する)。
【0299】
光エネルギーは治療期間中パルス化されることができる、又は光エネルギーは治療期間中連続的に適用されることができる。光エネルギーがパルス化される場合、パルスは長さ2ミリ秒であり得て、100Hz又は少なくとも長さ約10ナノ秒の周波数で発生することができて、及び最高約100kHzの周波数で発生できるが、より短い若しくはより長いパルス幅、及び/又より低い若しくはより高い周波数を使用することができる。例えば光は、約1Hz〜約100Hz、約100Hz〜約1kHz、約1kHz〜約100kHz、約1Hz未満、又は約100kHz超の周波数でパルス化できる。
【0300】
治療は1つの治療期間の後終了することができる、又は治療は複数の治療期間を繰り返すことができる。次の処理期間の間の時間は、約5分から、少なくとも24時間、少なくとも約1〜2日又は少なくとも約1週間であり得る。治療は、1日当たり複数回、及び/又は1週当たり複数回繰り返すことができる。治療時間の長さ及び治療期間の頻度はいくつかの要因に依存することができ、それは、細胞、組織及び/又は患者の機能回復;損傷した及び/又は障害組織の画像分析の結果;治療を受ける疾患又は状態;パルス化若しくは連続ライトの使用;光の照射量;使用する光源の数;及び/又は治療の順番若しくはパターンを含む。
【0301】
全治療時間は、プログラマブルコントローラにより制御されることができる。プログラマブルコントローラのリアルタイムクロック及びタイマーは、特定の治療レジメンのタイミングを制御して、予定の治療(例えば毎日、1日2回又は1日おき)を可能にするために使用できる。タイミングパラメータは、対象をモニタし、センサー又は他の装置(例えば、磁気共鳴画像形成装置)からのフィードバック信号に反応して調整されることができる。
【0302】
本開示の多重波長光治療システム及び方法は、1つ以上の光源を使用して、光の2つ以上の照射量の送達を得る。各照射量は異なる波長又は周波数の範囲を有する。好適な光源は、例えば、それぞれが2014年9月9日出願の同時係属米国特許仮出願第62/048,182号(代理人整理番号LUMI−01−0101USPl;「DEVICES AND METHODS FOR NON−INVASIVE MULTI−WAVELENGTH LOW LEVEL LIGHT THERAPY FOR OCULAR TREATMENTS」)、及び同62/048,187号(代理人整理番号LUMI−01−0201USP1、「WEARABLE DEVICES AND METHODS FOR MULTI−WAVELENGTH LOW LEVEL LIGHT THERAPY FOR OCULAR TREATMENTS」)に記載の施設中心の使用のための装着型及び/又は埋め込み可能装置を含み、その全体を参照により本明細書に組み込む。本明細書にて開示する多重波長光線療法システム及び方法で使用する、他の好適な光源は、Warp10(商標)(Quantum Devices,Inc.;Barneveld、WI)及びGentleWaves(登録商標)(Light Bioscience LLC;Virginia Beach,VA)器具を含む。このような光源は、標的組織(例えば眼組織)に、2つ以上の異なる波長又は波長の範囲の組み合わせを有する、低レベル光の治療上有効量の2つ以上の照射量送達するように構成されることができる。
【0303】
低レベルの光の多重波長の組み合わせを損傷した又は疾患組織に、目標化した方法でそれぞれ独立して送達するこのような装置は、センサー及び/又は他の画像診断法と組み合わせて、最適な眼の空間及び組織パラメータを確立して、有効な治療を標的組織に提供するための使用することができる。
【0304】
光源は、磁気エネルギー源、高周波エネルギー源、DC電界源、超音波エネルギー源、マイクロ波エネルギー源、機械的エネルギー源、電磁エネルギー源など、1つ以上の非光エネルギー源と組み合わせて本開示のシステム及び方法で使用することができる。
【0305】
例えば光線療法は、OCT、PET、MRI、フェムトセンサーなどと組み合わせて、光線療法を最適化する使用ための、治療、診断、追跡及び/又は強化した標的化能力を有する器具を提供する。光源は、レンズ、拡散器、導波管及び/又は他の光学的要素若しくは要素を含む。
【0306】
1つ以上の発光ダイオード(LED)及び/又は1つ以上のレーザーダイオードを、光源として使用できる。レーザーダイオードは、ガリウム−アルミニウム−ヒ素(GaAlAs)レーザーダイオード、アルミニウムガリウムインジウムリン化物(AlGaInP)レーザーダイオード、ダイオード励起固体(DPSS)レーザー、及び/又は垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)ダイオードであり得る。複数の光源を使用する本システム及び方法のこのような用途において、光源は1つ以上の光ファイバに連結できる。好適な波長及び照射度及び/又は複数の種類の光源の組み合わせで、光を生成する又は発する他の光源も、使用できる。
【0307】
光線の照射量は、標的組織(例えば眼組織)で所定の照射量を提供するように選択され得る。標的組織(例えば眼組織)は、疾患の影響を受けた、又は標準医学映像技術を用いて確認された外傷によって損傷を受けた可能性がある。標的組織(例えば眼組織)は、特定の疾患又は障害に影響を受けたことが既知である組織の一部でもよい。例えば標的組織は、ある機能及び/又は工程を制御することが既知である眼の一部であり得る。
【0308】
標的組織(例えば眼組織)のレベルで所望の照射量を得るために、放出面から放射した光線の適切な照射量の選択は、治療する細胞及び/又は組織の性質;治療する疾患、外傷及び/又は障害の種類;患者の臨床状態;及び光源と治療する標的細胞及び/又は組織領域の間の距離から選択された光の波長を含むことができる。
【0309】
複数の光源がある、いくつかの実施形態において、特定の光源は、他の光源と比較して、より高い又は低い力で光を発する。したがって光源の出力は、光源の放出面と標的眼組織の間の他の介在組織(瞼又は角膜など)の厚みに応じて、必要に応じて調整され得る。
【0310】
PBM治療(670nm)は、細胞代謝に伴う複数の遺伝子における遺伝子発現パターンを変えることに関係する(Masha,2012)。電子鎖輸送に伴う複数の遺伝子の制御において、エネルギー代謝及び酸化的リン酸化が見られ、それにより細胞の代謝能を回復させて、ATP生成の増加を刺激する。それは、他の多面発現プロセスを刺激して、すべては細胞機能の長期の改善及び/又はその正常化をもたらす。光線療法は、NFkβ、炎症経路及び遺伝子発現の主要な細胞制御因子に影響を及ぼすことができることは確立されている。1つ以上の波長からの光子の組み合わせ利点により、特定の経路の遺伝子発現を標的化して調整できることは明らかではないが、現在本開示は、フォトバイオモジュレーション適用に適している特徴を確認するために、多重波長光線療法における遺伝子発現マッピングを使用することを教示する。それは他の用途で使用される光とは異なっている。
【0311】
別の実施形態において、遺伝子治療と組み合わせた光線療法の使用は、独特のアプローチを提供して、ウィルスベクター又は他の遺伝子治療技術により核内に組み込まれる新規の遺伝子の調節及び発現を刺激できる、強化できる、又は制御できる。これは光で活性化した遺伝子産物を使用することとは異なるが、選択された波長を利用して、新しく埋植した遺伝子治療アプローチための細胞遺伝子発現プロファイルを自然に刺激する。更なる実施形態において、遺伝子治療の使用は、網膜組織の再生を容易にすることができる、又はミトコンドリアの眼障害(レーバー遺伝性視神経障害又はAMDなど)の遺伝子治療を提供することを容易にすると考えられている。そのような場合、特定のミトコンドリアの電子輸送タンパク質発現を刺激するPBMと組み合わせた遺伝子治療は、より良好な又は最適化した治療組み合わせのアプローチとして意図され得る。
【0312】
別途、RNA及びタンパク質発現パターンは細胞によって用いられて、多数の経路及びその後の細胞活性を効果的に調整する。複数の光の波長の使用は、独特のアプローチを提供して、RNA及びタンパク質発現を間接的に調整かつ改善して、損傷又は疾患のある組織の細胞機能を回復させる。1つ以上の波長からの光子の個々の利点により、特定の経路のタンパク質発現を調整できることは明らかではないが、ここで本開示は、フォトバイオモジュレーション適用に適している特徴を確認するために、光線療法の組み合わせにおけるタンパク質発現マッピングを使用することを教示する。それは他の用途で使用される光とは異なっている。AMDは慢性炎症性疾患と考えられており、タンパク質付着物が炎症の状態及び疾患の進行を更に拡大する。したがって多重波長PBMの使用は特有の組み合わせ治療を送達する可能性があり、個々の波長はこのような治療を提供しない。RPE細胞実験で、590nmの光の使用はVEGF発現を抑制することを示し、したがって590nmのPBMの使用は滲出型AMDサブタイプの治療の一態様において有用である。VEGF抗体治療(Lucentis(登録商標))は、滲出型AMDのため現在承認されている薬剤治療である。別途、810nmのPBMの使用は、ミトコンドリア機能を改善し、炎症マーカーを減らし、及び加齢性アルツハイマーのマウスのβアミロイド沈殿を防ぐことを示し(De Taboada et al,2011)、及びそれは疾患の別の態様で使用可能である。更に、670nmのPBMの使用は、AMDマウスモデルの補体C3発現及び沈殿などの炎症マーカーを減らすことができるが、βアミロイド沈殿に影響を及ぼさないことを示した。リポ融合及びβアミロイド両方の沈殿は、AMD患者の疾患のある眼の病因に関係していた。多重波長PBMの組み合わせは、単独で使用することができる、又は抗VEGF MoaB(Lucentis(登録商標)、Avastin(登録商標)、抗アミロイド剤(例えば、βセクレターゼ阻害剤)、抗炎症剤(例えば非ステロイド性抗炎症剤、抗補体剤(例えば、Properidin、C3、MASP−2、C5抑制剤)、酸化防止剤又はビタミン剤(例えば、AREDSサプリメント(Lipotriad Visonary(商標)、Viteyes2(登録商標)、ICaps(登録商標)及びPreserVision(登録商標)、類似する成分を異なる比率で又は追加成分と共に含有する))、又は視覚サイクルかく乱剤(例えばイソメラーゼ阻害剤(ACU−4429))を使用することができる。これらの実施例は独特のPBM治療の組み合わせを提供し、それは装置による1つ以上の波長、又は薬剤、又は光単独の2つ以上波長で表すことができる。
【0313】
別の実施形態において、増加したCCO活性、MMPの回復及びATP合成の調節を介してミトコンドリア機能を改善するための、光線療法の標的化使用は、複数の光の波長を用いて最良に達成されて、損傷又は疾患に好適な局所的細胞応答を生成することができる。
【0314】
外傷及び疾患の局所的細胞状態は、別々の組織又は器官領域で異なる可能性があり、動的な局所調節下にある。例えば局所CCO活性の多重波長光線療法は、O結合部位からの阻害NOの放出につながることができる。NOは、標的組織に局所血流を調節できる、強力な血管拡張物質及び信号トランスデューサである。したがって本明細書にて開示する方法は、損傷した又は疾患のある組織に局所虚血又は制限血流を逆転させるのに使用することができる。
【0315】
本明細書に開示する多重波長光治療システム及び方法は、組織(例えば網膜及び関連する周囲の組織タイプなど)を光線療法の別々の標的とすることを提供する。一例として、本多重波長光線療法システム及び方法は、非動脈炎性虚血性視神経症(NAION)で見られる別々の局所視神経虚血の治療、又は萎縮型AMDの炎症、虚血又は疾患における病巣であり得る細胞沈着の解剖学的島を標的とするのに適し得る。
【0316】
初期段階のAMDにおいて、リポ融合の別々の細胞沈殿は、標準画像技術(OCT、蛍光画像)によって網膜に確認されることができる。このような場合、本システム及び方法は、1つ以上の画像診断法(例えばOCT又は蛍光)を使用して、多重波長光線療法を標的化して、疾患を遅らせ、タンパク質(例えばリポ融合又はβアミロイド)の沈着を止める又は逆転させて、及び/又は疾患の進行を低減する、遅らせる又は止めるために用いることができる。本明細書にて開示する標的化した光線療法システム及び方法のこれらの態様は、慢性眼疾患に疾患修飾アプローチを提供する。
【0317】
したがって、本多重波長光線療法システム及び方法を単独で使用して、光の治療的に有効な光線量を送達することができる、又はOCT若しくは他の画像装置(例えば、PET、MRI、超音波、ドップラー、蛍光、フェムトセンサーなど)と更に組み合わせて使用して、目的の別個の領域を識別し、それにより光の波長と組み合わせて細胞又は組織の境界の標的化を容易にして、それによって患者の治療を最適化する又は個別化することができる。
【0318】
画像診断法(例えばフェムトセンサー)は、本多重波長光線療法システム及び方法と組み合わせて使用して、局所網膜のOレベルをモニタして、AMD患者を局所低酸素で識別し、治療を改善し、増加したOレベルをモニタしてミトコンドリア網膜機能を回復することができる。波長、照射量及び他の治療パラメータの選択が、基礎疾患又は疾患によって変化し得ることは理解されるであろう。光の複数の波長の調整した標的化は、患者の個別的治療を可能にして、細胞パフォーマンスを回復して、疾患の伝播を遅らせる又は止めることができる。このように本システム及び方法の特定の態様は、単独で、1つ以上の診断装置、並びに/又は光線療法及び診断法と合わさる器具と組み合わせて行うことができる。
【0319】
本システム及び方法の更なる態様において、所望の光療法レジメンは、所望の治療的効果を得るための好適な波長及び照射量パラメータを選択することを含む。光の異なる波長が組織特異的吸収特性を示し、それは光透過の深さに影響を与えて、したがって治療有効性を得るために必要な好適な照射量に影響することは理解されるであろう。
【0320】
カメラ又は他のセンサーなど追加の器具機能を本システム及び方法で使用して、眼窩の特徴(例えば深さ、サイズ、皮膚の色及び距離)を含む患者特有の特徴を捕えることができ、これによって、治療パラメータを最適化するために、設定した各波長の照射量を個別に又は既定値で組み合わせることが可能になる。センサーはまた、開閉眼瞼による照射量の選択を補助するために使用することができ、それによって組織の色及び厚みの変化を考慮できるようになる。
【0321】
慢性障害又は疾患(例えば慢性の神経又は眼の状態)の治療のためのシステム及び方法を含む、特定のシステム及び方法において、患者は、光線療法の照射を繰り返し頻繁に(例えば毎日)受ける必要があるかもしれない。したがって最小限に侵襲的な光線療法システム及び方法を用いてもよい。例えば緑内障患者の眼圧の治療のためのシステム及び方法で、毎日又は定期適なモニタリング及び光治療処理は、規則的な間隔で実施してよい。別の例では、視覚神経障害を患っている患者は、治療を開始するための能力が制限されているかもしれない、又は治療を行うことが物理的に可能でない場合がある。このような場合には、光線療法の最小限に侵襲的なシステム及び方法は、留置用装置(例えばLED)を使用できる。
【0322】
場合によっては送達された光の特定のパラメータを、光源と光が送達された標的組織の間にある介在組織による散乱及び/又はその加熱を防止するために使用できる。変化し得るこのようなパラメータは、送達した光の波長及び/又は照射量を含む。このような場合には、光は、例えば、標的組織部位で約100μW/cm〜約10W/cmの低いが効果的な照射量で送達され得る。例えば光が送達される時間と同様に送達された光の時間的プロファイル(時間的パルス幅、時間的パルス形状、デューティサイクル及び/又はパルス周波数)は、数百マイクロ秒から分まで制限されて、それにより治療している標的組織部位で有効なエネルギー密度を達成することができる。
【0323】
標的組織の標的領域(例えば視神経及び周囲の眼組織)は損傷領域を含むことができ、それは本明細書において「危険区域」と呼ばれる。標的組織の標的領域は更に、危険区域外にある組織(例えば眼組織)の一部も含むことができる。光線療法に関与している生医学的メカニズム及び反応は、Karu,Proc.SPIE 4159:1〜17(2000)and Hamblin et al.,Proc.SPIE 6140:614001(2006),に記載されており、これらの特許の各々は、参照によってその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0324】
本明細書に開示する多重波長光線療法システム及び方法を、身体的外傷(例えば白内障又はレンズ手術から生じた損傷)の治療のため;標的組織の炎症又は変性の治療のために;細胞保護作用を提供して、主要な破壊事象後の標的組織(例えば眼組織)の不可逆な変性及び損失を遅らせる又は防ぐために;標的組織の機能を高めて、標的組織機能の喪失の進行を防止する又は遅らせる及び/又は以前に失われた標的組織機能を回復するために;疾患の治療で使用するため内在性原種網膜幹細胞の増殖、遊走及び移行を促進するため;に使用できる。
【0325】
眼組織の場合、「眼の機能」という用語は、通常、視力及びコントラスト感度の両方を指す。眼の機能に影響を及ぼす疾患又は状態は、疾患プロセス又は身体的損傷又は傷害(例えば緑内障、加齢関連黄斑変性症、緑内障、脳卒中、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、CRS、NAION、レーバー疾患、眼科手術、ブドウ膜炎、局所的視神経虚血を含む脳虚血、及び身体的外傷(焦点性視神経虚血を含む脳虚血及び物理的な外傷(例えば眼神経又は網膜の挫傷若しくは圧迫損傷を含む、眼組織への挫傷若しくは圧迫損傷、又は眼の変性を生じる任意の急性損傷若しくは侵襲)を含む主要な破壊事象を含むが、これらに限定されない。
【0326】
本明細書で使用する場合「治療用レジメン」「治療レジメン」という用語は、光が1つ以上の眼の標的領域に照射されている期間中の、1つ以上の期間を含む、治療的処置を提供するために用いるプロトコル及び関連する手順を意味する。本明細書で使用する場合「標的」「標的区域」及び「標的領域」という用語は、特定の眼の状態、疾患、障害若しくは損傷の治療に関連して光が照射される、特定の眼の区域、領域、位置、構造、集団又は投射(例えば網膜又は視神経内の)を意味する。特定の実施形態において、眼の照射部位は眼全体を含む。他の実施形態において、眼の照射部位は、眼(例えば網膜領域、黄斑又は角膜)の標的領域を含むことができる。
【0327】
本多重波長光線療法システム及び方法は、網膜又は眼疾患用に、内在性原種網膜幹細胞の増殖、遊走及び移行を促進するために有利には用いることができる。幹細胞は、自動再生する、及び有糸分裂後細胞を生成する、両方の能力を有する。網膜色素上皮(RPE)は、神経網膜の根底にあり、それ支持する細胞の単層である。それは可塑的組織としてはじまり、いくつかの種ではレンズ及び網膜を生成するが、成長の初期に分化して、通常生涯にわたって非増殖性であり続ける。成人RPE細胞の部分母集団は、自己再生細胞、RPEマーカーを失う網膜色素上皮幹細胞(RPESC)にin vitroで活性化することができ、広範囲に増殖して、安定した玉石状RPE単層内に再分化することができる。RPESCは多能性であり、一定の条件において神経及び間葉の子孫を生成できる。それは、置換療法及び疾患モデリングで使用してもよい。
【0328】
網膜であるか眼疾患(例えば網膜変性疾患)の治療のための網膜幹細胞の移植の後、増殖、遊走及び再生細胞特性を進めるために、現在の多重波長光治療システム及び方法は更に都合よく使用されることもできる。そして、それの治療計画は、歴史的に、移動して、ホスト網膜に統合されるために網膜幹細胞の限られた能力によって、妨げられた。
【0329】
本多重波長光線療法システム及び方法は、間充織幹細胞及び/又は外胚葉幹細胞から、細胞可溶化物並びに膜濃縮及び可溶性細胞断片を調製するためのin vitro方法でも有利にも使用することができる。
【0330】
特定の実施形態で、本開示は、1つ以上の小分子薬剤、生体分子又は他の好適な装置のヒト患者への投与及び/又は送達を更に含む、多重波長光線療法システム及び方法を提供して、標的組織(例えば眼組織)の所与の光線療法レジメンを最適化して個別化する。他の実施形態において、本開示の多重波長光線療法システム及び方法は、標的組織の損傷及び/若しくは疾患の診断並びに/又はモニタリングを更に含むことができる。
【0331】
本開示の多重波長光線療法システム及び方法はAMDの治療に適することができ、それは炎症状態を伝播して、疾患進行を促進するタンパク質沈殿物の形成によって特徴づけられる慢性炎症性疾患である。特定の態様において、AMD治療のためのこのような多重波長光線療法システムと方法は、例えば、VEGF発現を阻害する590nmの光線量;ミトコンドリア機能を高めて、炎症性マーカーを減らして、βアミロイド沈殿を抑制する810nmの光線量;炎症性のマーカー(例えば補体C3)及びリポフスシンの生成及び沈殿を減らす670nmの光線量;の光照射の組み合わせの送達を含むことができる。
【0332】
これらの多重波長光線療法システム及び方法は、更なる組み合わせで使用することができる。1つ以上の抗VEGF抗体(例えばLucentis(登録商標)、Avastin(登録商標));1つ以上の抗炎症剤(例えば非ステロイド性抗炎症剤);1つ以上の抗アミロイド剤(例えばβセクレターゼ阻害剤);1つ以上の抗補体剤(例えばProperidin、C3、MASP−2、C5抑制剤);1つ以上の酸化防止剤又はビタミン剤(例えばAREDS補助剤(例えばLipotriad Visonary(商標)、Viteyes 2(登録商標)、ICaps(登録商標)及びPreserVision(登録商標));1つ以上の視覚サイクルかく乱剤(例えばイソメラーゼ阻害剤(ACU−4429));である。
【0333】
本開示は、網膜疾患及び障害のため細胞を中心とした治療又は再生治療に適用できる組成物及び方法と組み合わせて使用することを想定する。特に本開示は、1つ以上の組成物又は装置の投与、又は幹細胞(例えば、Very Small Embryonic様幹細胞(VSEL)、間葉系幹細胞、外胚葉幹細胞など)を使用する網膜組織の再生又は修復のための1つ以上の方法と組み合わせて使用することを含む、多重波長光線療法システム及び方法を提供する。本開示の一態様は、患者の網膜組織に外胚葉幹細胞集団をそれを必要とする患者に実施した後、及び間葉系幹細胞集団を患者に静脈内投与した後、網膜障害を光線療法システム及び方法で治療する方法である。外胚葉幹細胞は、胎児の神経組織由来でもよい。
【0334】
本開示の別の態様は、臍帯血、成人の骨髄及び胎盤のうちの少なくとも1つから選択される供給源から間葉系幹細胞集団を得ることにも関する。本開示の更に別の態様で、網膜障害は、1つ以上の黄斑変性症、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症、緑内障又は角膜縁上皮細胞欠損症であるが、これらに限定されない。
【0335】
特定の実施形態で、細胞はin vitro誘導されて、投与前に細胞又は上皮血統細胞に分化して、光線療法で予め調整され得る。他の実施形態において、細胞は、少なくとも1つの他の薬剤(例えば眼治療のための薬剤、又は他の有益な補助剤(例えば抗炎症薬、抗アポトーシス剤、酸化防止剤又は成長因子))と共に投与される。これらの実施形態では、光線療法は、産後細胞投与と同時に、又はその前に若しくはその後に実施することができる。光線療法システム及び方法は、幹細胞の再生態様を促進するため、有益な補助治療薬を補助するため、又はその両方で使用することができる。
【0336】
種々の実施形態が本明細書にて開示される一方で、他の実施形態も当業者にとって明らかである。本明細書にて開示した種々の実施形態は例示のものであって、限定を意図しておらず、本発明の実際の範囲及び趣旨は以下の特許請求の範囲によって示される。
【実施例】
【0337】
(実施例1)
萎縮型加齢関連黄斑変性症のフォトバイオモジュレーションによる治療
フォトバイオモジュレーション(PBM)が、萎縮型加齢関連黄斑変性症(AMD)を罹患した患者の視覚及びコントラスト感度を改善する方法で都合よく使用され得ることを、この実施例は示す。
【0338】
本実施例で呈示する試験は、萎縮型AMDの患者の眼に連続的治療で、近赤外光(NIR)、遠赤色及び黄色の波長の低電力光を適用する、プロスペクティブなIRB承認試験として計画された。50歳以上で、20/20〜20/200の範囲の最大矯正視力(BCVA)を有する萎縮型AMD患者を、この試験の対象とした。主な評価項目は、(i)視力、(ii)コントラスト感度,(iii)安定した固視を含む。過去や現在の滲出型AMD、癲癇の既往、認知障害、他の網膜疾患、過去の網膜手術、著しい中間透光体の混濁、瞳孔の禁忌のある被験者は、試験から除外した。
【0339】
確認した新血管形成の不存在は、Ocular Coherence Tomography(OCT)及びIntravenous Fluorescein Angiography(IVFA)の検査で、登録前に確認されて、網膜の専門医が確認した。
【0340】
全被験者は、視力を距離4メートルのETDRSチャート(Precision Vision、米国)でlogMAR単位で記録して判定、コントラスト感度を1度当たり1.5及び3サイクル(Stereo Vision Optec 6500、米国)でlogコントラスト感度として記録して判定、Nidek MP1マイクロペリメトリー(Nidek Technologies、Padova、イタリア)を用いて固視安定度を判定した。固視安定度の正確な評価は、Tarita et al.,Retina 28:125〜133(2008)で説明するように、双曲線楕円面積(BCEA)を計算することによって未処理のデータから得ることができた。計算は、固視微動に対応する楕円面積の長軸及び短軸に基づき、各記録された眼球運動の2つの標準偏差測定値を考慮した。結果を平方度で表した。
【0341】
測定は、(i)治療前;(2)治療プロトコル後すぐ、(3)治療プロトコル後6週間で、(4)治療プロトコル後4か月で、(5)治療プロトコル後6か月で、及び(6)治療プロトコル後12か月で行われた。
【0342】
治療は、Warp10(Quantum Devices)及びGentlewaves(Light Bioscience)の器具を用いて低エネルギー送達を使用する、黄色、遠赤色及び近赤外(IR)範囲の低レベルの光線療法(PBM)の使用を含み、器具は市販品として入手可能で、他の条件で使用するためにFDA及びHealth Canadaによって承認された。Warp10送達システムで従った治療パラメータは、50〜80mW/cmで670nm±15nm、88±8秒間に4〜7.68J/cmであった。Gentlewaves送達システムで従った治療パラメータは、4mW/cmで590nm±8nm及び0.6mW/cmで790nm±60nm、0.1J/cm/治療を送達中2.5Hzでパルス化(オン250ミリ秒、オフ150ミリ秒)であった。全被験者は、6週間の期間(6週間の1週当たり3回)にわたる合計18回の治療のための各治療訪問で、2つの装置を連続使用して治療された。
【0343】
データ分析は、度数分布、中心傾向(平均)の測度及び分散度(標準偏差)を含む、記述統計に基づいた。母集団間の平均の統計学的比較は、t検定及び反復測定の分散分析(反復測定ANOVA)によって行われた。差は、p値<0.05で統計学的に有意であるとみなされた。試験は、ヘルシンキ宣言のガイドラインを遵守して実行された。試験プロトコルは、independent Research Ethics Committee(IRB Services、Aurora、Canada)の承認を得た。すべての参加者から同意を得られた。
【0344】
12か月の期間、18のAMD試験眼(男性6人及び女性12人)(年齢61歳〜90歳(平均74.3歳/SD7.7))が組み入れられて、治療された。
【0345】
コントラスト感度(3サイクル/度)の反復測定ANOVAは、p値<0.0001でF(4.68)=11.44を得て、及びコントラスト感度(1.5サイクル/度)の反復測定ANOVAは、p値<0.0032でF(4.68)=4.39を得た。AMD群の平均ETDRS BCVAを、治療前0.25log Mar単位で、及び治療後12か月の0.13log Mar単位(p<0.0001)で測定した。反復測定ANOVAは、p値<0.0001でF(4,68)=18.86を得た。
【0346】
本実施例で開示するフォトバイオモジュレーション治療レジメンは、6か月以下の間、視力の即時改善で、地理状萎縮の辺縁の障害のある網膜細胞の機能を再生させて、活性化し及び改善した。
【0347】
コントラスト感度は、本開示のフォトバイオモジュレーション治療レジメンによって統計学的に有意に改善した。コントラスト感度の改善は12か月(図16図17)を持続した。
【0348】
ETDRS視力は治療後、すぐ統計学的に有意に改善し、ETDRS logMARスコアの若干の低下が4か月後明白であったが(図18)、この臨床状態の改善は12か月で統計的に有意なレベルを持続した。
【0349】
フォトバイオモジュレーションは、極めて十分に適している。不快感は報告されず、個々の治療は1眼につき5分未満で容易に行われた。重要な有害事象は、本実施例に記載されている試験中に示されなかった。
【0350】
(実施例2)
中心網膜厚低減のためのフォトバイオモジュレーション(PBM)の方法萎縮型加齢関連黄斑変性症(AMD)
萎縮型加齢関連黄斑変性症(AMD)を罹患した患者の眼の中心網膜厚の低減のための方法で、光干渉断層撮影(OCT)測定により、フォトバイオモジュレーション(PBM)が都合よく使用され得ることを、この実施例は示す。
【0351】
別個の非ランダム化症例において、萎縮型加齢関連黄斑変性症(萎縮型AMD)を罹患した8人の患者は、3週間、多重波長光線療法で治療された。CS及びVAの臨床評価項目を、実施例1のように実施した。これ以外にも網膜厚みの変化を、治療前後の、連続的スペクトル領域の光干渉断層撮影(SD−OCT)スキャンから判定した。中心網膜厚の全体的な減少が、本明細書に開示されるシステム及び方法に従った多重波長光線療法を用いた治療直後の萎縮型AMD患者で観察された。全体で、これらのデータは、これらの多重波長フォトバイオモジュレーション治療システム及び方法の臨床及び解剖学的治療有効性を裏付けて、及び萎縮型AMDの非侵襲的治療のためのこれらのシステム及び方法の適用を確認する。結果を表1に示す。
【0352】
PBM治療を受ける萎縮型AMDの患者(網膜検査、眼底の写真撮影、OCT評価及びIVFA(一部で)新生血管病変がないと判定)は、SD−OCTで、治療の前後にSPECTRALIS SD−OCTシステム(Heidelberg Engineering,Carlsbad,CA)で評価されて、それは、高速画像収集、及びノイズ除去を可能にして、長期にわたって正確な追跡を可能にする、カスタムTruTrack技術を組み合わせて、それにより撮像中、眼を積極的に追跡する。結果は、OCT及び眼底画像の正確かつ再現性の高いアラインメント、より優れた画像細部及び明快さ、並びに小さい変化のより確信のある評価を可能にする、眼底とOCTスキャン間のポイントツーポイント解剖学的相関である。SD−OCTと共焦点レーザー走査検眼鏡検査(cSLO)と統合することによって、Heidelberg SPECTRALISプラットフォームは、正確な追跡調査のための走査配置を可能にする。
【0353】
ボリューム網膜スキャンは、治療前、治療過程の直後、及び治療後の次の間隔で得られた。実施例1に示した試験で用いた同じデータ収集方法を、視力を文字スコアで距離4メートルで記録したETDRSチャート(Precision Vision、米国)で判定、及びコントラスト感度を1度当たり3サイクル(Stereo Vision Optec 6500、米国)でlogコントラスト感度として記録して判定して、利用した。加えて、Heidelberg Spectralis SD−OCTによる連続試験を本患者群で使用して、網膜厚みの変化を明らかにした。
【0354】
患者は、合計9つのセッションで3週間、週に3回治療を受け、その際、実施例1に記載の試験と同じPBMの総照射量を、患者コンプライアンスを容易にするためより短い治療時間で受けた。セッションは、Warp10(Quantum Devices)及びGentlewaves(Light Bioscience)の器具を用いて低エネルギー送達を使用する、黄色及び赤色〜近赤外(NIR)の範囲のPBMの使用を含んだ。Warp10送達システムで従った治療パラメータは、50〜80mW/cmで670nm±15nm、88±8秒間に4〜7.68J/cmであった。Gentlewaves送達システムで従った治療パラメータは、4mW/cmで590nm±8nm、0.6mW/cmで790nm±60nm35秒間、0.1J/cm/治療を送達中2.5Hzでパルス化(オン250ミリ秒、オフ150ミリ秒)であった。これらの3つの波長は、ミトコンドリアシトクロムcオキシダーゼ(CCO)活性のCuA及びCuB部分を刺激して、VEGFタンパク質生成のレベルを抑制するために、予め選択された。全AMD患者は、各治療訪問で2つの装置を連続使用して治療されて、それから同じセッションを繰り返した。
【0355】
以下は各患者の概要であり、それぞれSD−OCT分析から得た。
【0356】
被験者1は55歳の白色女性で、治療後後すぐ、24マイクロメートルの中心網膜厚さの減少を示し、それは3か月で27マイクロメートルに更に減少した。被験者1は、更なる3週間の治療期間を受けることを選択した。4か月で、網膜厚みの減少は19マイクロメートルであった。被験者1の最初の文字スコアは39で、それは治療後すぐ47に、3か月で46、2回の治療期間で42まで増加した。
【0357】
被験者2は52歳の白色男性で、文字スコアは治療後すぐに52から57へ増加し、コントラスト感度はlog1.76からlog2.06へ増加した。画像差分スキャンは、治療前の参照スキャンと比較して、治療後スキャンの網膜厚みの変化を示した。中心最小値は、20マイクロメートル減少した。この個々の領域で、治療後すぐに、患者2の中心ドルーゼの最も高い位置上の網膜厚みで18マイクロメートル減少した。
【0358】
被験者3は68歳の白色女性で、治療プロトコル後、14マイクロメートルの中心窩厚さの減少を示した。文字スコアは55から58へ増加し、コントラスト感度はlog1.60からlog1.90へ増加した。
【0359】
被験者4は85歳の白色女性で、処理前の文字スコアは51で、治療後に55に増加して、治療終了1年後に53に増加した。logCSスコアは、1.60から1.76に増えた。1年のOCTスキャンは、18マイクロメートルの減少を示した。1年の段階で彼女が更に治療期間を受けることを選び、及び治療3か月後、中心網膜厚みは参照スキャンから25マイクロメートルに減少した。第2の治療の6か月後、網膜厚みは19マイクロメートルの減少を持続した。第2の治療の1年後、網膜厚みは18マイクロメートルの減少を示した。第2の治療期間の3か月後(ベースラインから17か月)、25マイクロメートルの減少を示した。差分厚さマップは、ベースラインからその後2つの治療期間20か月で、網膜厚みの中心全体の減少を示した。
【0360】
被験者4の1年後の追跡調査のOCTスキャンは、CS及びVAの改善による網膜厚みの18マイクロメートルの減少を示した。被験者4の2回目の治療期間後3か月(すなわち、ベースラインから17か月)OCTスキャンは、網膜厚みの25マイクロメートルの減少を示した。
【0361】
被験者5は80歳の白色男性で、治療前の文字スコア48は、治療後すぐに53に増加して、logCSは1.00から1.90の大幅増加であった。被験者5の治療後の2つの部分(切片12及び切片13)のスキャンは、それぞれ45マイクロメートル及び22マイクロメートルの減少を示した。
【0362】
被験者6は67歳の白色男性で、最初の文字スコア31は治療後36に増加して、網膜厚は19マイクロメートル減少した。コントラスト感度はlog1.00からlog1.18へ増加した。
【0363】
被験者7は86歳の白色女性で、両眼の治療を受けた。被験者7は最初の文字スコアは51で、それは治療後54、3か月で54、6か月で57まで増加した。LogCSスコアは最初1.6で、治療後1.9に増加し、3か月で1.76、6か月で1.6であった。最初の文字スコア41は43に増加して、その後訪問すべてで43を持続した。LogCSスコアは1.46ではじまり、治療後1.46、3か月で1.60に増加して、6か月で1.46であった。
【0364】
図16図19に示し、表1にまとめた実施例1及び実施例2に示される結果は、最も疾患のある網膜のすぐ上の特に着目される中心網膜厚みの減少、及び通常の領域上の網膜厚みに減少がないことによる、中心網膜厚みの解剖学的変化を示した。それは、治療が疾患のある網膜上の網膜厚みを特に減らしていることを示唆する。SD−OCTスキャンの分解能による解剖学的証拠、及び同じ網膜位置を連続測定で確実にスキャンすることにより、プラセボ効果による影響があるとは考えられず、将来的な治験で使用できる重要な客観的な評価項目を表す。
【0365】
【表1】
【0366】
この症例に参加した7人の被験者は視力及びコントラスト感度の改善を示し、それは、実施例1に示す萎縮型AMD臨床パイロット試験で観察された改善と一致した。本明細書で呈示する解剖学的証拠、それは同じ網膜位置を連続測定でスキャンすることを確実にする高解像度SD−OCTスキャンから得られており、重要な客観的な評価項目を表して、プラセボ効果による影響があるとは考えられず、将来的な治験で使用できる。PBM治療後の網膜組織のこのような客観的な変化、並びに主観的パラメータ(すなわち、ETDRS、VA及びCS)の改善との相関は、萎縮型AMD患者の非侵襲的、低リスク治療のためPBMの使用を裏付ける。
【0367】
PBMは最近、非中心糖尿病性黄斑浮腫の局所性網膜厚の著しい低減を生じることが明らかになった。Tang et al.,Br J Ophthalmol,published online 28Mar14 doi:10.1136/bjophthalmol−2013−304477.Tangらに記載される試験で使用する装置は実施例2で呈示する症例で使用する装置と同一である一方で、AMD患者での本試験は、血管内皮細胞増殖因子の発現の減少に影響を及ぼして萎縮型AMDの滲出型AMDへの転化を低減するように計画した、黄色及び赤外波長光のパルスを使用した。Kiire et al.,Retina Today(Jan/Feb 2011)(sub−threshold micropulse laser therapy for retinal disorders;Barnstable et al.,Prog Ret Eye Res.23(5):561〜577(2004);Glaser et al.,Ophthalmology 94:780〜784(1987);Miller et al.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.27:1644〜1652(1986);and Ogata et al.,Am.J.Ophthalmol.132(3):427〜429(2001).
【0368】
(実施例3)
患者のデータ収集における萎縮型加齢関連黄斑変性症の更なる治療(TOPRA II)
実施例3で呈示する試験は、萎縮型AMDの患者の眼に連続的治療で、近赤外光(NIR)、遠赤色及び黄色の波長の低電力光を適用する、患者のデータ収集として計画された。このTORPA II試験は、視力の転帰のための治療、及び萎縮型AMDを患う被験者の網膜の解剖学的変化として、フォトバイオモジュレーション(PBM)の使用を試験した。この試験は、組み入れ及び除外基準に適合し、既に発表されたTORPA試験の結論後、適応外PBM治療を受けた被験者を含んだ。
【0369】
50歳以上で、20/20〜20/200の範囲の最大矯正視力(BCVA)を有する萎縮型AMD患者を、この試験の対象とした。主な評価項目は、(1)視力及び(ii)コントラスト感度を含む。過去や現在の滲出型AMD、癲癇の既往、認知障害、他の網膜疾患、過去の網膜手術、著しい中間透光体の混濁、瞳孔の禁忌のある被験者は、試験から除外した。
【0370】
確認した新血管形成の不存在は、Ocular Coherence Tomography(OCT)及びIntravenous Fluorescein Angiography(IVFA)の検査で、登録前に確認されて、網膜の専門医が確認した。全被験者は、視力を距離4メートルのETDRSチャート(Precision Vision、米国)でlogMAR単位で記録して判定、コントラスト感度を1度当たり1.5、3及び6サイクル(Stereo Vision Optec6500、米国)でlogコントラスト感度として記録して判定した。測定は、(i)治療前;(2)3週間治療プロトコル後すぐ、(3)治療プロトコル後3か月で、(4)治療プロトコル後6か月で、及び(5)治療プロトコル後12か月で行われた。この時点で患者は処理に参加していて、データの部分的なリストが提示された。
【0371】
治療は、Warp10(Quantum Devices)及びGentlewaves(Light Bioscience)の器具を用いて低エネルギー送達を使用する、黄色、遠赤色及び近赤外(NIR)範囲のPBMの使用を含み、器具は市販品として入手可能で、他の条件で使用するためにFDA及びHealth Canadaによって承認された。Warp10送達システムで従った治療パラメータは、50〜80mW/cmで670nm±15nm、88±8秒間に4〜7.68J/cmであった。Gentlewaves送達システムで従った治療パラメータは、4mW/cmで590nm±8nm、及び0.6mW/cmで790nm±60nm、35秒間、0.1J/cm/治療を送達中2.5Hzでパルス化(オン250ミリ秒、オフ150ミリ秒)であった。
【0372】
この患者のデータ収集の目的は、同じ総PBM照射量を維持して、安全性及び有効性を示すと共に、治療の全体数を減らすことであった。全被験者は、3週間の期間(3週間の1週当たり3回)にわたる合計9回の治療のための各治療訪問で、2つの装置を連続使用して治療された。3週間の治療群において患者は同じPBM照射量を実施されて、6週間の治療群において、各セッションは倍の治療であった。
【0373】
各治療におけるすべての評価項目のための記述統計は、被験者数、平均値、標準偏差、中央値、連続変数の最低値及び最大値、並びにカテゴリ変数の度数及びパーセンテージを含む。差は、p値<0.05で統計学的に有意であるとみなされた。主要解析。
【0374】
PBMのVA効果:主要解析は、VAの治療後、PBM治療を受けた被験者のBL(治療前)から3週間までの平均変化の差を試験する。解析は、線形混合効果モデルを使用する。探索的解析は、試料サイズに応じて3か月以降で同じ評価項目を調べる。
【0375】
副次的解析PBMのCS効果:最初の副次的解析は、コントラスト感度の治療後、PBM治療を受けた被験者のBL(治療前)から3週間まで平均変化の差を試験する。解析は、線形混合効果モデルを使用する。探索的解析は、試料サイズに応じて3か月以降で同じ評価項目を調べる。
【0376】
眼底自発蛍光(FAF)を使用する網膜イメージングへの影響、及びPBMの光干渉断層撮影(OCT):OCTスキャンは参照スキャンの正確な解剖学的領域で再現可能なスキャンを比較して、被験者は萎縮型AMD病理の確認のためにBLでスキャンされた。FAFを繰り返して、OCTスキャンは、治療後及び追跡調査のための訪問(例えば、3、6及び12か月)で行われた。OCT解析は探索的であった。記述統計は、治療前及び治療後FAF及びOCTスキャンで得られた。FAF及びOCT画像分析において、集中リーダーは解剖的パラメータを確認して、PBM前及びその後の解剖学的変化を比較する。OCT解析、ベースラインから治療後3週間までの変化を調べた。解析は、線形混合効果モデルを使用する。探索的解析は、試料サイズに応じて3か月以降で同じ評価項目を調べた。ドルーゼン量、平均中心1mmのドルーゼン厚、及び地理状萎縮病変領域が、ここでの主な評価項目であった。そのうえCRT及び網膜ボリュームを評価した。解析を実施して、AREDSカテゴリによる、及び網状偽ドルーゼン(RPD)有無による、サブグループの有効性を比較した。治療前及び治療後の完全な光受容体状態を、Fisherの直接検定を使用して比較した。正常に分布しない変数を、パワー変換を使用する、又はランク値を使用して解析することができる。
【0377】
約41の萎縮型AMD試験眼が、この解析に含まれた。患者はすべて3週間治療だった。3週間のデータのための1週当たり3回の予備データを、VAで示す(図20及び図21)。
【0378】
【表2】
【0379】
本実施例で開示するフォトバイオモジュレーション治療レジメンは、視力の即時改善(図20及び図21)及びコントラスト感度(図示せず)で、地理状萎縮の辺縁の障害のある網膜細胞の機能を再生させて、活性化し及び改善した。臨床効果は、両方の臨床評価項目に関して、3か月の間隔で依然として統計的に有意であった。
【0380】
視力は3週間の治療後後すぐに統計学的に有意に改善し、この臨床改善は、TORPA試験(図16〜18)の延長した6週間の治療と同様であった。2つの治療は3つの波長の同じ照射量を提供したが、処理セッションの総数を減らすために最適化された。更なる分析は反復治療の頻度を判定して、最大限の利点を維持する。
【0381】
本明細書に開示されるPBMシステム及び方法が十分に忍容性に優れていることを、この実施例に示すデータは証明し、更に具体的には、不快は報告されず、個々の処置は1眼につき5分未満で容易に行われて、重要な有害事象は本実施例に記載されている実験中に示されなかった。
【0382】
更に驚くことは、PBM治療は、中心ドルーゼン量の著しい低減、疾患の特徴をもたらすということである。19人の患者及び33の眼の光干渉断層撮影(OCT)網膜スキャンを分析することによって、低減は3週間の処理直後に明白であり、処理後3か月の期間維持された(表3及び図22)。治療が中心ドルーゼ量の臨床及び解剖学的効果を示したのは、これが初めてである。任意の局所細胞損傷のない萎縮型AMD疾患の病理における有益な低減によって、解剖学的レベルでPBM治療の安全性を示す網膜光受容体層に影響は見られなかった。本開示のTORPA II研究によって得られた視力(VA)、コントラスト感度及び中心ドルーゼのデータを図23にまとめた。
【0383】
【表3】
【0384】
(実施例4)
死体試験
各波長は異なる組織散布及び光透過特性を有し、そうして周知の光の強度の眼組織への有効な送達を確実にし、目的の波長での介在組織の光学特性は、光の透過性を一組のヒト死体の眼で測定した本開示の試験より得られた。死体試験中実行される実験の計画及び死体研究から得られるデータは、眼領域への特定の波長及び電力の光の適用から生じる網膜フルエンス率を確立した。実施例3で開示する臨床試験(TORPA)の予想する網膜フルエンス率を決定して、それに応じて将来の治療装置のための安全限度を確立するために、本明細書で開示する結果を用いた。
【0385】
眼内の電力の測定はMedlight(SD200)から等方性ファイバプローブで実施して、Opir(PD300)からシリコンベースの電力検出器に接続した。検出器はOphirメータ(Nova II)に接続した。全体装置出力は、Ophir(L50)300Aから広域熱式電力メータで測定されて、それは同じメータに接続した。スペクトル測定はOcean Optics分光計(USB2000)で行われて、ラップトップに保存した。図28で示す測定位置と各眼を試験するための一般手順を、表4で概説する。
【0386】
【表4】
【0387】
各死体について、両眼で測定を行った。主要試験で6(12の眼)を使用した。
【0388】
主要試験の各試験片の被験者データを、任意の適用可能な観察とともに表5に示す。皮膚の色は、Fitzpatrick皮膚タイプ分類スケール当たりで定性的に評価した。
【0389】
【表5】
【0390】
各光源の装置出力、P3は、電子データベースにデータ収集シートから転記した。未加工の測定データも、収集形態から転記した。これらの未処理データは正確なフルエンスレベルでないが、メータに示されるように、プローブからOphir PD300検出器に送達される電力を表す。これらを実際のフルエンス率(mW/cm)に変換するために、プローブ収集効率、検出器のスペクトル感度及び照明の等方性を考慮して、較正係数でそれらを乗算しなければならない。較正係数は試験の各光源ごとに決定されて、表4に示される。
【0391】
【表6】
【0392】
表6に示されるように、プローブの較正値は、プローブが湿っている又は乾燥しているかに依存して異なった。したがって使用する正しい値は、特定の測定中、プローブの位置に依る。眼瞼でなされる測定において、プローブは大部分が空気に囲まれるので、「乾」較正値が使われた。眼の前房及び後房内で測定をされるとき、プローブは流体に浸漬されるので、「湿」較正値がこれらの読み取りで使用された。大部分のプローブがその位置でウェットティッシュと接触していた場合、「湿」値は閉眼の角膜での測定値のために使用された。開眼での角膜の測定値において、プローブがその読み取り中、湿った表面との部分的な接触した場合、乾及び湿の較正値の平均値が使われた。
【0393】
これらの較正値は未加工の記録データに適用されて、次にデータは各電源用装置から1Wの電力出力の一般の値まで正規化された。各測定値の平均及び標準誤差を、表5に示す。これらのデータは視覚的に図29に示されて、平均フルエンス率及び標準誤差を、開眼の測定場所の関数としてプロットした。
【0394】
【表7】
【0395】
各測定値の不確定度は、較正値の不確定度の一次関数である。これらは各光源ごとに計算されて、追加の±3%を加えて、全装置電力を測定するために用いるメータの不確定度を考慮する。それから得られた総不確定度は、黄色で±7.3%、赤色で±14.3%、及びIRで±6.9%であった。測定中のプローブ位置の不確定度は、眼瞼、角膜及び前房で±2mm、及び後房で±5mmである。平均フルエンス率及び標準誤差は、表6の閉眼の測定位置の関数として示されて、視覚的に図30に図示され、平均フルエンス率及び標準誤差は、閉目の測定場所の関数としてプロットした。各位置で収集したスペクトルは、Matlab内に含まれて、比較のために正規化された。
【0396】
【表8】
【0397】
各曲線について、ピーク波長を測定した。各光源のピークの最小値、最大値、平均及び標準偏差を表9に示す。
【0398】
【表9】
【0399】
測定されたスペクトルのいくつかの変化は、試験中、最も特に赤色光源で生じた。この偏差は測定位置に依存せず、スペクトル表示中、LED電力出力に非常に依存する。出力スペクトルはLED温度に依存するので、それが増加するにつれて電力が増加するのは、理解されかつ予想できる。すべての光源の測定されたスペクトルをそれらの公開された仕様書と比較すると、すべてピーク波長の範囲が仕様書内であることを示す。
【0400】
開閉眼において、図29及び図30に示す測定されたフルエンス率は、予想見込み、赤外線の最も高い伝送、そして赤色及び黄色が続く。これは、ヒト組織上の公開された透過データと一致する。
【0401】
本明細書に示す結果は1Wの装置電力に正規化される一方で、眼瞼のフルエンス率は、任意の組織を通過する伝送前で、他の2つの波長においてより黄色の波長で著しく高い。プローブが等方性で、眼瞼及び周囲組織から後ろへ反射される光と同様に器具から放射する光の両方を集めると考える場合、この偏差は場合により理解される。赤又はIRより高いパーセンテージで反射する黄色光源について、偏差は次に組織の拡散反射率に対するスペクトル依存を示す。これは一般にヒトの皮膚の拡散反射率の以前の測定値と一致する。Murphy et al.,J.Biomed.Opt.10:064020(2005)and Lim et al.,J.Biomed.Opt.16:011012(2011).
角膜面でフルエンス値を決めるための更なる要因は、その位置での較正値の選択を含むことができる。「乾」値は眼瞼で、「平均」値は開眼の角膜で、及び「湿」値は閉眼の角膜で使用されるが、後者のプローブの「乾燥」又は「湿り」の程度が偏差をもたらす可能性がある。これは、この位置での算出フルエンス率のより多くの不確定度をもたらす場合がある。
【0402】
眼用装置の光学的放出限度は、IEC15004−2により定義される。(国際標準化機構。眼光学機器−基本的要求事項及びその試験方法−第2部:光ハザードからの保護。ISO 15004−2:1〜37(2007))。放出ハザードを生じないために定められるグループ1装置の放出限度を、表10に示す。
【0403】
【表10】
【0404】
上述の計算、指定した限度及び測定された装置スペクトルを用いて、網膜及び角膜の各光源の最大の発光限度を算出できる。結果を表11に示す。これらの値は、装置が持続波(CW)モードで作動して、単一光源だけが所定時間に起動すると仮定する。
【0405】
【表11】
【0406】
表5及び表6の正規化フルエンス率によって表11の値を割ることで、それがIEC15004−2当たりのグループ1と分類され得るように、装置の最大出力を与える。厳格には、この計算で使用する表7及び表8からの値は、最大値(平均値+SEM)である。結果を表12に示す。これらの値は市販計器への直接的な比較を提供して、治療介入のための安全クラスを確立する。
【0407】
【表12】
【0408】
本実施例で示す試験は、ヒトの死体眼の光錯乱及び浸透の確実な理解を提供して、更にヒトの医学的状態のPBMの安全性及び有効性を確立する。光線療法を用いた治療的用途を開発するとき、独特の光学的器官である眼は、光吸収及び組織拡散特性の特別な考察が必要である。死体は生命も持った組織でないと共に、解剖学的特徴及び組織特性は組織散乱及び吸収の測定値の影響を受けやすく、臨床状況の光のヒトの曝露の推定値を許容する。所与の波長における実際の組織散乱及び吸収を表す、個々の波長依存的照射量曲線を確立することの重要性を示すために、試験は更に行われた。
【0409】
本明細書に提示する試験結果は、眼内により深く浸透する光として、吸収の増加と共に眼のすべてのレベルでの測定可能な光を示す。吸収は波長に依存しており、得られた結果は、ヒト組織の光錯乱及び吸収に注目する他の試験と一致しかつ確認する。光のNIR波長は、前房及び後房を含むより深い領域でより少ない損失で、眼組織に最も直ちに浸透する。黄色<遠赤外<NIRは、組織浸透の確立する順番であり、他の多重波長組織試験を裏付ける。Murphy et al.,J.Biomed.Opt.10:064020(2005)and Lim et al.,J.Biomed.Opt.16:011012(2011).網膜又は眼の他の領域を標的化として、臨床照射量の最適化を可能にするために、これらの研究は重要である。
【0410】
実施例3に示すTORPA試験(Merry et al.,Association for Research in Vision and Ophthalmology53:2049(2012)も参照)は、2つの市販の計器、Quantum WARP 10及びGentlewavesを利用した。表13に示される波長及び照射量は一連の6週間で試験されて、繰り返された。
【0411】
【表13】
【0412】
TORPA試験パラメータ及び本開示の死体試験で得られた結果に基づき、表14に示す網膜フルエンス率はTORPA試験のために測定されることができる。
【0413】
【表14】
【0414】
3つの波長の細胞標的は異なり、このように個々の用量反応曲線を有するが、本試験は、TORPA試験で示す有益な臨床結果手段に翻訳される組織露出に関連を提供する。工業ガイドライン(すなわち、IEC15004)によって設定される眼安全基準下で、すべてのフルエンスは良好である。しかし、萎縮型AMDに効果的な本多重波長アプローチを作成する、3つの波長のフルエンスレベルレベルには、異なりかつ驚くべき違いがある。
【0415】
レーザーによって生じるコヒーレント光と対照的に、Lumithera LED装置により発される光は非コヒーレントであり、光学利得はダイオード内で発生しない。したがって非コヒーレント光を発するランプと同等としてLEDを処理するために、安全基準は進化した。適用規格は、International Commission on Non−Ionizing Radiation Protection(ICNIRP),the American Conference of Governmental Industrial Hygienists(ACGIH)、及び非コヒーレント光源を対象とする多数の他の独立研究者によって述べられるものを含む。LEDの曝露限度(EL)及び限界値(TLV)は確立されている。
【0416】
Lumithera装置内の3つのLED光源の死体試験は、各光源の装置から発される電力が表14に示す関連する値未満で保たれる場合黄色、赤色及びNIR波長の光の送達光線量は、確立された安全性パラメータ内であることを確認した。
【0417】
全体で、本明細書で示すデータは多重波長フォトバイオモジュレーションシステム及び方法の安全性及び治療有効性をサポートして、更に、多重波長フォトバイオモジュレーション治療後、網膜組織の客観的な改善を示し、それは改善された主観的パラメータ(ETDRS VA及びCS)と関連する。このように、本明細書に呈示するデータは、眼の障害及び疾患、及び更に具体的には乾性黄斑変性(萎縮型AMD)を含む、障害並びに疾患の治療のための本開示の多重波長光治療システムと方法の使用を支える。
【0418】
(付記)
本発明は下記の項目のように記載できる:
(項目1)
患者の眼の眼組織に光線療法を送達する自立型装置であって、前記装置は、
内部を含むハウジングと、
アイピースであって、ハウジング上に配設され、アイピースに隣接する患者の眼の配置のために構成かつ配置される、アイピースと、
第1の治療用波長を有する第1の光線を生成し、前記ハウジング内に配設される第1の光源と、
第2の治療用波長を有する第2の光線を生成し、前記ハウジング内に配設される第2の光源であって、前記第2の治療用波長が少なくとも25nmだけ前記第1の治療用波長とは異なる、第2の光源と、
前記ハウジング内に配設される開口部と、を含み、前記装置が、前記開口部及び前記アイピースを通るように前記第1及び前記第2の光線を方向付けて、前記患者の眼に光線療法を提供するように構成かつ配置されている、装置。
(項目2)
第3の治療用波長を有する第3の光線を生成し、前記ハウジング内に配設される第3の光源を更に含み、前記第3の治療用波長が少なくとも25nmだけ前記第1及び前記第2の治療用波長とは異なる、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記第1の光源が、時間的パルス幅を有する複数のパルスを含むパルス光線を発するように構成かつ配置されており、前記時間的パルス幅が0.1ミリ秒〜150秒の範囲である、項目1に記載の装置。
(項目4)
前記開口部からの前記第1及び前記第2の光線を受けて、前記第1及び前記第2の光線を前記アイピースに方向付けるための、リレー光学素子を更に含む、項目1に記載の装置。
(項目5)
前記第1及び前記第2の光線の方向を、前記第1及び前記第2の光線が前記アイピースに接する患者の左眼に方向付けされている少なくとも第1の位置から、前記第1及び前記第2の光線が前記アイピースに接する患者の右眼に方向付けされている第2の位置まで、変えるために、少なくとも前記リレー光学素子を動かすように構成かつ配置されるアクチュエータを更に含む、項目4に記載の装置。
(項目6)
前記第1及び前記第2の光線をそれぞれ生成するために前記第1及び前記第2の光源を方向付けるため、前記第1及び前記第2の光源に動作可能に連結されるコントローラを更に含む、項目1に記載の装置。
(項目7)
前記コントローラに動作可能に連結され、前記患者の眼に関するリアルタイムフィードバック情報を提供するように構成される、生物医学的センサーを更に含む、項目6に記載の装置。
(項目8)
前記コントローラが、前記フィードバック情報に従って前記第1及び前記第2の光源からの光の放射を制御するように構成かつ配置されている、項目7に記載の装置。
(項目9)
前記第1の波長が800〜900nmの範囲であり、前記第2の波長が600〜700nmの範囲である、項目1に記載の装置。
(項目10)
前記第1の波長が800〜900nmの範囲であり、前記第2の波長が550〜650nmの範囲である、項目1に記載の装置。
(項目11)
患者の眼組織に光線療法を送達する自立型装置であって、前記装置が、
内部を含むハウジングと、
アイピースであって、ハウジング上に配設され、アイピースに隣接する患者の眼の配置のために構成かつ配置される、アイピースと、
第1の治療用波長を有する第1の光線を生成し、前記ハウジング内に配設される第1の光源と、
第2の治療用波長を有する第2の光線を生成し、前記ハウジング内に配設される第2の光源であって、前記第2の治療用波長が少なくとも25nmだけ前記第1の治療用波長とは異なる、第2の光源と、
前記ハウジング内に配設され、前記第1の治療用波長を有する光を実質的に通過させるように構成かつ配置され、前記第2の治療用波長を有する光を実質的に反射するように構成かつ配置される、反射フィルターと、を含み、前記装置が前記第1及び前記第2の光線を前記反射フィルターに向け、次に前記アイピースを通過するように方向付けて、前記患者の眼に光線療法を提供するように構成かつ配置されている、装置。
(項目12)
前記第11及び前記第2の光線をそれぞれ生成するために前記第1及び前記第2の光源を方向付けるため、前記第1及び前記第2の光源に動作可能に連結されるコントローラを更に含む、項目1に記載の装置。
(項目13)
前記コントローラに動作可能に連結され、前記患者の眼に関するリアルタイムフィードバック情報を提供するように構成される、生物医学的センサーを更に含む、項目12に記載の装置。
(項目14)
前記第1の波長が800〜900nmの範囲であり、前記第2の波長が600〜700nmの範囲である、項目11に記載の装置。
(項目15)
前記第1の波長が800〜900nmの範囲であり、前記第2の波長が550〜650nmの範囲である、項目11に記載の装置。
(項目16)
光治療を項目1の装置を使用して患者の眼組織に提供する方法であって、前記方法が、
前記患者の眼の少なくとも1つを前記装置の前記アイピースに置くことと、
前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長のうちの少なくとも1つの光を、装置から前記患者の前記少なくとも1つの眼に向けて方向付けて、治療効果を生むことと、
を含む、方法。
(項目17)
光を方向付けることが、前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長のうちの少なくとも1つの光を、装置から前記患者の眼瞼を通って、前記患者の前記少なくとも1つの眼に向けて方向付けて、治療効果を生むことを含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
光を方向付けることが、前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長の両方を、装置から前記患者の眼瞼を通って、前記患者の前記少なくとも1つの眼に向けて方向付けて、治療効果を生むことを含む、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長の両方の光を方向付けることが、前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長の両方を、装置から前記患者の眼瞼を通って、前記患者の前記少なくとも1つの眼に向けて連続して方向付けて、治療効果を生むことを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長の両方の光を方向付けることが、前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長の両方を、装置から前記患者の眼瞼を通って、前記患者の前記少なくとも1つの眼に向けて連続して方向付けて、治療効果を生むことを含む、項目18に記載の方法。
(項目21)
患者の眼の眼組織に光線療法を送達する装着型装置であって、前記装置が、
前側片及び前記前側片に取り付けられた少なくとも1つの付加要素を含む、フレームと、
第1の治療用波長を有する第1の光線を生成し、前記フレーム内に又はその上に配設される、少なくとも1つの第1の光源と、
第2の治療用波長を有する第2の光線を生成し、前記フレーム内に又はその上に配設される第2の光源であって、前記第2の治療用波長が少なくとも25nmだけ前記第1の治療用波長とは異なる、少なくとも1つの第2の光源と、を含み、
前記患者が前記装着型装置を装着するとき、少なくとも一部の前記第1及び前記第2の光線は前記患者の眼に向かって方向付けされている、装置。
(項目22)
第3の治療用波長を有する第3の光線を生成し、前記フレーム内に又はその上に配設される第3の光源であって、前記第3の治療用波長が少なくとも25nmだけ前記第1及び前記第2の治療用波長とは異なる、少なくとも1つの第3の光源を更に含む、項目21に記載の装置。
(項目23)
前記第1の波長が800〜900nmの範囲であり、前記第2の波長が600〜700nmの範囲である、項目21に記載の装置。
(項目24)
前記第1の波長が800〜900nmの範囲であり、前記第2の波長が550〜650nmの範囲である、項目21に記載の装置。
(項目25)
前記第1の波長が800〜900nmの範囲であり、前記第2の波長が600〜700nmの範囲であり、前記第3の波長が550〜650nmの範囲である、項目22に記載の装置。
(項目26)
前記第1及び前記第2の光源が前記フレームの前記前側片上の1つ以上のアレイに配設されている、項目21に記載の装置。
(項目27)
前記フレームが前記前側片の2つの視覚ポートを更に画定し、前記第1及び前記第2の光源が2つの前記視覚ポート周辺に配設されている、項目21に記載の装置。
(項目28)
前記少なくとも1つの付加要素が2つのイヤピースを含み、前記フレームが前記前側片上に配設される少なくとも1つの反射器を更に含み、前記第1及び前記第2の光源が前記イヤピース上に配設され、前記反射器に向かって光を方向付けるように構成かつ配置されており、前記患者が前記装置を装着するとき、前記反射器が、前記患者の眼に向かって前記第1及び前記第2の光源から少なくとも一部の光をリダイレクトするように構成かつ配置されている、項目21に記載の装置。
(項目29)
前記反射器が部分的に透明である、項目28に記載の装置。
(項目30)
前記装置が、
前記フレーム内に配設され、前記第1及び前記第2の光源から光を受光し、前記光線を変調して、変調光線を生成するように位置決めされた空間光変調器と、
前記患者が前記装置を装着するとき、前記変調光線を受光して少なくとも一部の前記変調光線を前記患者の眼に向かって方向付ける、光指向要素と、
を更に含む、項目21に記載の装置。
(項目31)
患者の眼の眼組織に光線療法を送達する装着型装置であって、前記装置が、
前側片及び前記前側片に取り付けられた少なくとも1つの付加要素を含む、フレームと、
治療用波長を有する光線を生成し、前記フレーム内に配設される少なくとも1つの光源と、
前記フレーム内に配設され、前記光線を受光し、前記光線を変調して変調光線を生成するように位置決めされた、空間光変調器と、
前記患者が前記装置を装着するとき、前記変調光線を受光して少なくとも一部の前記変調光線を前記患者の眼に向かって方向付ける、光指向要素と、
を含む、装置。
(項目32)
前記光指向要素がプリズム又は導波管である、項目31に記載の装置。
(項目33)
前記空間光変調器が、画像を形成するために前記光線を変調するように構成かつ配置されている、項目31に記載の装置。
(項目34)
前記少なくとも1つの前記光源が、
第1の治療用波長を有する第1の光線を生成し、前記フレーム内に配設される、少なくとも1つの第1の光源と、
第2の治療用波長を有する第2の光線を生成し、前記フレーム内に配設される第2の光源であって、前記第2の治療用波長が少なくとも25nmだけ前記第1の治療用波長とは異なる、少なくとも1つの第2の光源と、
を含む、項目31に記載の装置。
(項目35)
前記少なくとも1つの光源が、
第3の治療用波長を有する第3の光線を生成し、前記フレーム内に配設される第3の光源であって、前記第3の治療用波長が少なくとも25nmだけ前記第1及び前記第2の治療用波長とは異なる、少なくとも1つの第3の光源を更に含む、項目34に記載の装置。
(項目36)
光治療を項目21の装着型装置を使用して患者の眼組織に提供する方法であって、前記方法が、
前記患者上に前記装着型装置を置くことと、
前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長のうちの少なくとも1つの光を、装置から前記患者の前記少なくとも1つの眼に向けて方向付けて、治療効果を生むことと、
を含む、方法。
(項目37)
光を方向付けることが、前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長のうちの少なくとも1つの光を、装置から前記患者の眼瞼を通って、前記患者の前記少なくとも1つの眼に向けて方向付けて、治療効果を生むことを含む、項目36に記載の方法。
(項目38)
光を方向付けることが、前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長の両方を、装置から前記患者の眼瞼を通って、前記患者の前記少なくとも1つの眼に向けて方向付けて、治療効果を生むことを含む、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長の両方の光を方向付けることが、前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長の両方を、装置から前記患者の眼瞼を通って、前記患者の前記少なくとも1つの眼に向けて連続して方向付けて、治療効果を生むことを含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長の両方の光を方向付けることが、前記第1の治療用波長又は前記第2の治療用波長の両方を、装置から前記患者の眼瞼を通って、前記患者の前記少なくとも1つの眼に向けて連続して方向付けて、治療効果を生むことを含む、項目38に記載の方法。
(項目41)
標的細胞若しくは組織の1つ以上の機能を改善する又は回復するための多重波長光線療法システムであって、前記システムが、
標的細胞又は組織に光を送達するために構成されている2つ以上の光源を備え、前記2つ以上の光源からの光が異なる波長ピークを示し、前記2つ以上光源からの光が、前記標的細胞又は組織の2つ以上の感光性分子の活性を優先的に刺激することができ、前記標的細胞又は組織内の前記2つ以上の感光性分子の活性の調整刺激が、前記標的細胞又は組織の1つ以上の細胞機能を改善できる又は回復できる、システム。
(項目42)
細胞又は組織のシトクロムcオキシダーゼ(CCO)活性を刺激する多重波長光線療法システムであって、前記システムが、
CCO並びにCCO活性に両方とも必要な第1の感光性因子及び第2の感光性因子を有する、標的細胞又は組織への光の調整かつ標的化した送達のために構成されている、第1の光源及び第2の光源を、備え、
前記第1の光源からの光が、前記第1の感光性因子の活性を優先的に刺激することができる第1の波長ピークを示し、前記第2の光源からの光が、前記第2の感光性因子の活性を優先的に刺激することができる第2の波長ピークを示し、
前記第1及び前記第2の光源からの前記光の調整かつ標的化した送達による前記第1及び前記第2の感光性因子の活性の調整刺激が、前記標的細胞又は前記組織の前記CCOの活性を刺激できる、システム。
(項目43)
前記CCO活性の刺激が、障害若しくは疾患と関連付けられる標的細胞若しくは組織の機能を改善する又は回復して、それによって前記障害若しくは疾患の進行を遅くする又は逆転させることができる、項目42に記載の多重波長光線療法システム。
(項目44)
1つ以上の細胞機能の消失若しくは減少と関連付けられる障害又は疾患を罹患した患者の治療のための、多重波長光線療法システムであって、前記システムが、
前記患者の標的細胞又は組織に光の調整かつ標的化した送達のために構成された、2つ以上の光源を備え、
前記2つ以上の光源のそれぞれからの光が異なる波長ピークを示し、
前記2つ以上の光源から前記標的細胞への光の送達を調整することが、標的細胞機能を回復するか又は強化し、それによって前記障害若しくは疾患の進行を遅くすることができる、システム。
(項目45)
消失若しくは減少した機能を示す眼細胞と関連付けられる、眼の障害又は疾患を罹患した患者の治療のための多重波長光線療法システムであって、前記システムが、
眼の障害若しくは疾患を罹患した患者の眼内の標的細胞に、2つ以上の異なる波長ピークを示す光の調整かつ標的化した送達のために構成された2つ以上の光源を備え、
前記2つ以上の異なる波長ピークを示す光の眼細胞への送達を調整かつ標的化することが、前記眼細胞の機能を回復するか又は強化して、それによって前記眼の障害若しくは疾患の進行を遅くすることができる、システム。
(項目46)
ヒトの眼の損傷した又は疾患のある眼組織の治療のための多重波長光線療法システムであって、前記システムが、
a.第1の波長ピークを示す第1の治療有効光線量の前記眼への送達のために構成されている第1の光源と、
b.第2の波長ピークを示す第2の治療有効光線量の前記眼への送達のために構成されている第2の光源と、を備え、
前記第1及び前記第2の光源が、前記第1及び第2の治療有効光線量の調整かつ標的化した送達のために更に構成されており、それによって、前記損傷した若しくは疾患のある眼組織の進行を逆転させる、修復する、回復させる、又は遅らせる、システム。
(項目47)
前記システムが、前記第1の治療有効な光線量及び前記第2の治療有効な光線量の同時送達のために構成されている、項目46に記載の多重波長光線療法システム。
(項目48)
前記システムが、前記第1の治療有効な光線量及び前記第2の治療有効な光線量の個々のために構成されている、項目46に記載の多重波長光線療法システム。
(項目49)
前記光源のそれぞれが、患者の眼内の標的細胞への光の送達のために位置決めされている、項目41〜48のいずれか一項に記載の多重波長光線療法システム。
(項目50)
前記光源のそれぞれが、前記眼の瞼又は角膜を通る光の透過のために構成されている、項目49に記載の多重波長光線療法システム。
(項目51)
前記光源のうちの1つ以上が発光ダイオードを含む、項目41〜50のいずれか一項に記載の多重波長光線療法システム。
(項目52)
前記発光ダイオードが垂直共振器型面発光レーザーダイオードである、項目51に記載の多重波長光線療法システム。
(項目53)
前記光源のうちの1つ以上が、0.1ミリ秒〜150秒の時間的パルス幅を有する複数のパルスを含むパルス光線を発するように構成されている、項目41〜52のいずれか一項に記載の多重波長光線療法システム。
(項目54)
標的細胞への前記パルス光ビームの送達は、前記標的細胞のパフォーマンス若しくは生存能の残存、再生、若しくは回復に伴う、細胞間の又は細胞内の生物学的プロセスを刺激する、誘起する、誘導する、又は促進することができる、項目53に記載の多重波長光線療法システム。
(項目55)
前記標的細胞が眼の細胞である、項目54に記載の多重波長光線療法システム。
(項目56)
前記標的細胞が幹細胞である、項目54に記載の多重波長光線療法システム。
(項目57)
前記パルス光線のそれぞれがデューティサイクルを有し、前記時間的パルス幅及び前記デューティサイクルが、標的細胞への前記パルス光線の送達において細胞活性を刺激するように構成されることができ、前記刺激された標的細胞活性が、前記標的細胞の残存又は機能を強化することができる、項目53に記載の多重波長光線療法システム。
(項目58)
前記第1及び前記第2の波長ピークのそれぞれが、急性または慢性の眼の障害又は疾患の治療のために選択される、項目41〜57のいずれか一項に記載の多重波長光線療法システム。
(項目59)
前記第1及び前記第2の波長ピークのそれぞれが、独立して500nm〜1100nmから選択される、項目58に記載の多重波長光線療法システム。
(項目60)
前記第1の波長ピーク又は前記第2の波長ピークが、570nm〜600nmである、項目59に記載の多重波長光線療法システム。
(項目61)
前記第1の波長ピーク又は前記第2の波長ピークが、640nm〜700nmである、項目59に記載の多重波長光線療法システム。
(項目62)
前記第1の波長ピーク又は前記第2の波長ピークが、810nm〜900nmである、項目59に記載の多重波長光線療法システム。
(項目63)
前記システムが、眼瞼の外面又は眼の角膜面に、10W/cm以下の照射量で光を送達するために構成されている、項目58に記載の多重波長光線療法システム。
(項目64)
前記システムが、前記眼瞼の外面又は前記角膜面に、0.1mW/cm〜1W/cmの照射量で光を送達するために構成されている、項目63に記載の多重波長光線療法システム。
(項目65)
前記システムが、前記眼瞼の外面又は前記眼の角膜面に、0.5mW/cm〜10mW/cmの照射量で光を送達するために構成されている、項目63に記載の多重波長光線療法システム。
(項目66)
前記急性又は慢性の眼の障害又は疾患が、緑内障、加齢関連黄斑変性症、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、CRS、NAION、レーバー疾患、眼科手術、及びブドウ膜炎からなる群から選択される、項目58に記載の多重波長光線療法システム。
(項目67)
前記急性又は慢性の眼の障害又は疾患が、眼瞼炎、眼窩周囲のしわ、脂漏症、及び乾癬又は湿疹を含む眼瞼の皮膚状態からなる群から選択される、項目58に記載の多重波長光線療法システム。
(項目68)
前記急性又は慢性の眼の障害又は疾患が、露出性角膜炎、UV角膜炎、ドライアイ、ウイルス感染、細菌感染、角膜剥離、角膜浮腫、外科的切開、貫通傷、上強膜炎、及び強膜炎からなる群から選択される急性傷害である、項目58に記載の多重波長光線療法システム。
(項目69)
前記急性又は慢性の眼の障害又は疾患が、虹彩炎、硝子体炎、細菌性眼内炎、及び無菌性眼内炎からなる群から選択される前房又は硝子体疾患である、項目58に記載の多重波長光線療法システム。
(項目70)
前記急性又は慢性の眼の障害又は疾患が、萎縮型AMD、滲出型AMD、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症、網膜色素変性症(RP)、血管又は神経メカニズムを介して機能を妨げるプロセス、緑内障、及び視神経炎からなる群から選択される網膜疾患である、項目58に記載の多重波長光線療法システム。
(項目71)
標的細胞若しくは組織の1つ以上の機能を改善する又は回復するための多重波長光線療法であって、前記方法が、
標的細胞又は組織に2つ以上の光源からの光の送達を調整かつ標的化することを含み、
前記2つ以上の光源からの光が異なる波長ピークを示し、
前記2つ以上光源からの光が、前記標的細胞又は前記組織の2つ以上の感光性分子の活性を優先的に刺激し、
前記標的細胞又は前記組織内の前記2つ以上感光性分子の活性化の調整刺激が、前記標的細胞又は前記組織の1つ以上の細胞機能を改善する又は回復する、方法。
(項目72)
標的細胞又は組織のシトクロムcオキシダーゼ(CCO)活性を刺激するための多重波長光線療法であって、前記方法が、
CCO、並びにCCO活性に両方とも必要な第1の感光性因子及び第2の感光性因子を有する、標的細胞又は組織への第1の光源からの光及び第2の光源からの光の送達を調整かつ標的化することを含み、
前記第1の光源からの光が、前記第1の感光性因子の活性を優先的に刺激する第1の波長ピークを示し、前記第2の光源からの光が、前記第2の感光性因子の活性を優先的に刺激する第2の波長ピークを示し、
前記第1及び前記第2の光源からの前記光の調整かつ標的化した送達による前記第1及び前記第2の感光性因子の活性の調整刺激が、前記標的細胞又は前記組織の前記CCOの活性を刺激する、方法。
(項目73)
前記刺激したCCO活性が、障害若しくは疾患と関連付けられる標的細胞若しくは組織の機能を改善する又は回復して、それによって前記障害若しくは疾患の進行を遅くする又は逆転させる、項目72に記載の多重波長光線療法。
(項目74)
1つ以上の細胞機能の消失若しくは減少と関連付けられる障害又は疾患を罹患した患者の治療のための多重波長光線療法であって、前記方法が、
前記患者の標的細胞又は組織に2つ以上の光源からの光の送達を調整かつ標的化することを含み、
前記2つ以上の光源のそれぞれからの光が異なる波長ピークを示し、
前記2つ以上の光源からの前記標的細胞への光の送達を調整することが、標的細胞機能を回復するか又は強化し、それによって前記障害若しくは疾患の進行を遅くする、方法。
(項目75)
消失若しくは減少した機能を示す眼細胞と関連付けられる、眼の障害又は疾患を罹患した患者の治療のための多重波長光線療法であって、前記方法が、
眼の障害若しくは疾患を罹患した患者の眼内の標的細胞内に、2つ以上の異なる波長ピークを示す光の送達を調整かつ標的化することを含み、
前記2つ以上の異なる波長ピークを示す光の眼細胞への調整かつ標的化した送達が、前記眼細胞の機能を回復するか又は強化して、それによって前記眼の障害若しくは疾患の進行を遅くする、方法。
(項目76)
ヒトの眼の損傷した又は疾患のある眼組織の治療のための多重波長光線療法であって、前記方法が、
a.第1の波長ピークを示す第1の治療有効光線量を前記眼へ送達することと、
b.第2の波長ピークを示す第2の治療有効光線量を前記眼へ送達することと、を含み、
前記第1の治療有効な光線量及び前記第2の治療有効な光線量の調整送達が、前記損傷した若しくは疾患のある眼組織の進行を逆転させる、修復する、回復させる、又は遅らせる、方法。
(項目77)
前記第1の治療有効な光線量が前記第2の治療有効な光線量と同時に送達される、項目76に記載の多重波長光線療法。
(項目78)
前記第1の治療有効な光線量が前記第2の治療有効な光線量とは独立して送達される、項目76に記載の多重波長光線療法。
(項目79)
前記光源のそれぞれが、患者の眼内の標的細胞に光を送達するために位置決めされている、項目71〜78のいずれか一項に記載の多重波長光線療法。
(項目80)
前記光源のそれぞれからの光が、眼瞼又は前記眼の角膜を透過する、項目79に記載の多重波長光線療法。
(項目81)
前記光源のうちの1つ以上が発光ダイオードを含む、項目71〜80のいずれか一項に記載の多重波長光線療法。
(項目82)
前記発光ダイオードが垂直共振器型面発光レーザーダイオードである、項目81に記載の多重波長光線療法。
(項目83)
前記光源のうちの1つ以上が、0.1ミリ秒〜150秒の時間的パルス幅を有する複数のパルスを含むパルス光線を発するように構成されている、項目71〜82のいずれか一項に記載の多重波長光線療法。
(項目84)
標的細胞への前記パルス光ビームの送達は、前記標的細胞のパフォーマンス若しくは生存能の残存、再生、若しくは回復に伴う、細胞間の又は細胞内の生物学的プロセスを刺激する、誘起する、誘導する、又は促進する、項目83に記載の多重波長光線療法。
(項目85)
前記標的細胞が眼細胞である、項目84に記載の多重波長光線療法。
(項目86)
前記標的細胞が幹細胞である、項目84に記載の多重波長光線療法。
(項目87)
前記パルス光線のそれぞれがデューティサイクルを有し、前記時間的パルス幅及び前記デューティサイクルが、標的細胞への前記パルス光線の送達が細胞活性を刺激するように選択され、それによって前記標的細胞の残存又は機能を強化する、項目83に記載の多重波長光線療法。
(項目88)
前記第1及び前記第2の波長ピークのそれぞれが、急性または慢性の眼の障害又は疾患の治療のために選択される、項目71〜87のいずれか一項に記載の多重波長光線療法。
(項目89)
前記第1及び前記第2の波長ピークのそれぞれが、独立して500nm〜1100nmから選択される、項目88に記載の多重波長光線療法。
(項目90)
前記第1の波長ピーク又は前記第2の波長ピークが、570nm〜600nmである、項目88に記載の多重波長光線療法。
(項目91)
前記第1の波長ピーク又は前記第2の波長ピークが、640nm〜700nmである、項目88に記載の多重波長光線療法。
(項目92)
前記第1の波長ピーク又は前記第2の波長ピークが、810nm〜900nmである、項目88に記載の多重波長光線療法。
(項目93)
前記光が、眼瞼の外面又は眼の角膜面に10W/cm以下の照射量で送達される、項目88に記載の多重波長光線療法。
(項目94)
前記光が、前記眼瞼の外面又は前記眼の角膜面に、0.1mW/cm〜1W/cmの照射量で送達される、項目83に記載の多重波長光線療法。
(項目95)
前記光が、前記眼瞼の外面又は前記眼の角膜面に、0.5mW/cm〜10mW/cmの照射量で送達される、項目83に記載の多重波長光線療法。
(項目96)
前記急性又は慢性の眼の障害又は疾患が、緑内障、加齢関連黄斑変性症、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、CRS、NAION、レーバー疾患、眼科手術、及びブドウ膜炎からなる群から選択される、項目88に記載の多重波長光線療法。
(項目97)
前記急性又は慢性の眼の障害又は疾患が、眼瞼炎、眼窩周囲のしわ、脂漏症、及び乾癬又は湿疹を含む眼瞼の皮膚状態からなる群から選択される、項目88に記載の多重波長光線療法。
(項目98)
前記急性又は慢性の眼の障害又は疾患が、露出性角膜炎、UV角膜炎、ドライアイ、ウイルス感染、細菌感染、角膜剥離、角膜浮腫、外科的切開、貫通傷、上強膜炎、及び強膜炎からなる群から選択される急性傷害である、項目88に記載の多重波長光線療法。
(項目99)
前記急性又は慢性の眼の障害又は疾患が、虹彩炎、硝子体炎、細菌性眼内炎、及び無菌性眼内炎からなる群から選択される前房又は硝子体疾患である、項目88に記載の多重波長光線療法。
(項目100)
前記急性又は慢性の眼の障害又は疾患が、萎縮型AMD、滲出型AMD、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症、網膜色素変性症(RP)、血管又は神経メカニズムを介して機能を妨げるプロセス、緑内障、及び視神経炎からなる群から選択される網膜疾患である、項目88に記載の多重波長光線療法。
(項目101)
前記急性若しくは慢性の眼性障害又は疾患のための治療有効性を有する、1つ以上の薬剤又は生物学的薬剤を投与することを更に含む、項目88に記載の多重波長光線療法。
(項目102)
フォトバイオモジュレーションを患者の眼の網膜組織に送達するための装着型装置であって、
前側片と、前記前側片に取り付けられた少なくとも一つの付加要素とを備えるフレーム;
近赤外(NIR)光を含む治療用波長を有する光線を生成するように構成され、かつ、前記フレーム内に配設された少なくとも一つの光源;
前記フレーム内に配設され、かつ、前記光線を受け取るように配置され、かつ、前記光線を変調して変調光線を生成するように構成された空間光変調器;及び
前患者が前記装置を装着したときに、前記変調光線を受け取るように、かつ、前記変調光線の一部を前記患者の前記網膜組織に向けるように構成された光指向要素
を備える前記装置。
(項目103)
前記光指向要素は、プリズム又は導波路のいずれかである、項目102に記載の装置。
(項目104)
前記空間光変調器は、画像を生成するために前記光線を変調するように構成されかつ配置されている
項目102又は103に記載の装置。
(項目105)
少なくとも一つの前記光源は、
第1の治療用波長を有する第1の光線を生成するように構成され、かつ、前記フレーム内に配設された少なくとも一つの第1光源、及び
第2の治療用波長を有する第2の光線を生成するように構成され、かつ、前記フレーム内に配設された少なくとも一つの第2光源
を含んでおり、
ここで前記第2の治療用波長は、前記第1の治療用波長とは、少なくとも25nmだけ異なっている
項目102〜104のいずれか1項に記載の装置。
(項目106)
少なくとも一つの前記光源は、
第3の治療用波長を有する第3の光線を生成可能であり、かつ、前記フレーム内に配設された少なくとも一つの第3の光源
をさらに備えており、
前記第3の治療用波長は、前記第1及び第2の治療用波長とは、少なくとも25nmだけ異なっている
項目105に記載の装置。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30