特許第6848089号(P6848089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848089
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】処置具及び処置具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20210315BHJP
   A61B 17/28 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   A61B18/14
   A61B17/28
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-556023(P2019-556023)
(86)(22)【出願日】2017年11月22日
(86)【国際出願番号】JP2017042035
(87)【国際公開番号】WO2019102552
(87)【国際公開日】20190531
【審査請求日】2020年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】武井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】田中 千博
(72)【発明者】
【氏名】高篠 智之
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/043120(WO,A1)
【文献】 特開2006−305236(JP,A)
【文献】 特開2005−177239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置対象に接触させる処置面と、処置面とは反対側を向く背面と、を備え、長手軸に沿って延設される導電プレートと、
前記導電プレートの前記背面に配置され、前記導電プレートから電気的に独立する電気的素子と、
背面側から前記導電プレートを支持するホルダーと、
熱可塑性樹脂から形成されるとともに、前記長手軸に対して交差する幅方向について前記電気的素子から離れて配置され、前記幅方向について前記導電プレートの端部を前記ホルダーに対して固定するコネクタと、
を具備する、処置具。
【請求項2】
前記電気的素子は、前記導電プレートと前記ホルダーとの間に配置される、請求項1の処置具。
【請求項3】
前記ホルダーは、前記電気的素子が嵌る嵌合凹部を備える、請求項2の処置具。
【請求項4】
前記コネクタは、
前記幅方向について前記導電プレートの一端部を前記ホルダーに対して固定する第1のコネクタと、
前記幅方向について前記長手軸に対して前記第1のコネクタとは反対側に設けられ、前記幅方向について前記導電プレートの他端部を前記ホルダーに対して固定する第2のコネクタと、
を備える、請求項1の処置具。
【請求項5】
前記幅方向についての前記電気的素子の寸法は、前記幅方向についての前記導電プレートの寸法に比べて、小さい、請求項1の処置具。
【請求項6】
前記電気的素子は、ヒータ及びセンサのいずれかである、請求項1の処置具。
【請求項7】
前記ホルダーは、前記コネクタと同一又は異なる組成の樹脂、及び、セラミックスのいずれかから形成される、請求項1の処置具。
【請求項8】
前記導電プレートの前記処置面に対して対向して配置され、前記導電プレートとの間が開閉可能なジョーをさらに具備する、請求項1の処置具。
【請求項9】
前記コネクタを形成する前記熱可塑性樹脂は、前記処置対象に処置エネルギーが付与されている状態での前記処置面の温度に比べて、高い融点を有する、請求項1の処置具。
【請求項10】
前記導電プレートは、前記幅方向について前記端部に設けられる係合爪を備え、
前記コネクタは、前記係合爪と係合する係合溝を備える、
請求項1の処置具。
【請求項11】
前記係合爪は、幅方向について外側に向かって尖鋭になるアンカー形状になる、請求項10の処置具。
【請求項12】
前記幅方向について前記導電プレートの前記端部には、貫通孔が形成され、
前記コネクタは、前記貫通孔に充填される充填部分を備える、
請求項1の処置具。
【請求項13】
処置対象に接触させる処置面と、処置面とは反対側を向く背面と、を備え、長手軸に沿って延設される導電プレートを形成することと、
前記導電プレートから電気的に独立する状態で、前記導電プレートの前記背面に電気的素子を配置することと、
ホルダーを形成し、前記電気的素子が配置された前記導電プレートを前記ホルダーによって背面側から支持することと、
前記ホルダーによって前記導電プレートが支持された状態で、前記長手軸に対して交差する幅方向について前記電気的素子から離れた領域において、熱の付加によって前記ホルダーの熱可塑性樹脂から形成される部分を軟化及び変形する、又は、加熱及び軟化された熱可塑性樹脂を射出することと、
前記ホルダーの変形された前記部分、又は、射出された前記熱可塑性樹脂を冷却及び硬化し、前記幅方向について前記導電プレートの端部を前記ホルダーに対して固定することと、
を具備する、処置具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
US2014/0155877A1には、一対のジョー(把持片)の間で処置対象を把持可能な処置具が開示されている。この処置具では、ジョーのそれぞれに、導電プレート(電極)が設けられ、導電プレートのそれぞれに電気エネルギー(高周波電力)が供給されることにより、導電プレートの間で、把持される処置対象を通して高周波電流が流れる。また、ジョーのそれぞれには、電気的素子としてヒータが設けられ、ヒータのそれぞれは、導電プレートに対して電気的に独立する。ジョーのそれぞれでは、ヒータに電気エネルギーがされることにより、ヒータで熱が発生し、発生した熱が導電プレートを通して伝達される。ジョーのそれぞれでは、導電プレートは、把持される処置対象に接触する処置面と、処置面とは反対側を向く背面と、を備え、ヒータは、導電プレートの背面に配置される。また、ジョーのそれぞれでは、導電プレートは、熱可塑性樹脂等から形成されるホルダーによって、背面側から支持される。
【0003】
US2014/0155877A1のような処置具の製造では、例えば、金型のキャビティーに導電プレート及びヒータ(電気的素子)が配置された状態で、熱可塑性樹脂等からホルダーをインサート成形(射出成形)する。この際、加熱及び軟化された樹脂が、キャビティーに射出される。そして、射出された熱可塑性樹脂を冷却及び硬化することにより、導電プレートがホルダーに取付けられる。前述のようにホルダーが形成される場合、インサート成形を行っている間において、加熱及び軟化した樹脂からの熱が、ヒータ等の電気的素子に影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的とするところは、導電プレートから電気的に独立する電気的素子が設けられ、製造時において電気的素子への熱の影響が低減される処置具、及び、その製造方法を提供することにある。
【0005】
前記目的を達成するため、本発明のある態様の処置具は、処置対象に接触させる処置面と、処置面とは反対側を向く背面と、を備え、長手軸に沿って延設される導電プレートと、前記導電プレートの前記背面に配置され、前記導電プレートから電気的に独立する電気的素子と、背面側から前記導電プレートを支持するホルダーと、熱可塑性樹脂から形成されるとともに、前記長手軸に対して交差する幅方向について前記電気的素子から離れて配置され、前記幅方向について前記導電プレートの端部を前記ホルダーに対して固定するコネクタと、を備える。
【0006】
本発明のある態様の処置具の製造方法は、処置対象に接触させる処置面と、処置面とは反対側を向く背面と、を備え、長手軸に沿って延設される導電プレートを形成することと、前記導電プレートから電気的に独立する状態で、前記導電プレートの前記背面に電気的素子を配置することと、ホルダーを形成し、前記電気的素子が配置された前記導電プレートを前記ホルダーによって背面側から支持することと、前記ホルダーによって前記導電プレートが支持された状態で、前記長手軸に対して交差する幅方向について前記電気的素子から離れた領域において、熱の付加によって前記ホルダーの熱可塑性樹脂から形成される部分を軟化及び変形する、又は、加熱及び軟化された熱可塑性樹脂を射出することと、前記ホルダーの変形された前記部分、又は、射出された前記熱可塑性樹脂を冷却及び硬化し、前記幅方向について前記導電プレートの端部を前記ホルダーに対して固定することと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る処置システムを示す概略図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るシャフトの先端部及びエンドエフェクタを示す概略図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るエンドエフェクタを、長手方向に垂直又は略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るジョーの一方の製造において、コネクタを形成する工程を説明する概略図である。
図5図5は、第1の実施形態の第1の変形例に係るジョーの一方を、長手軸に垂直又は略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図6図6は、第1の実施形態の第1の変形例に係るジョーの一方の製造において、コネクタを形成する工程を説明する概略図である。
図7図7は、第1の実施形態の第2の変形例に係るジョーの一方を、長手軸に垂直又は略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図8図8は、第1の実施形態の第3の変形例に係るジョーの一方に設けられる導電プレートを示す概略図である。
図9図9は、第1の実施形態の第3の変形例に係るジョーの一方において、コネクタ及びその近傍の構成を概略的に示す断面図である。
図10図10は、第1の実施形態の第4の変形例に係るシャフトの先端部及びエンドエフェクタを示す概略図である。
図11図11は、第1の実施形態の第4の変形例に係るジョーの一方の製造において、導電プレート及びブロックをホルダーに取付ける工程を説明する概略図である。
図12図12は、第1の実施形態の第5の変形例に係るジョーの一方に設けられる導電プレート及びブロックを示す概略図である。
図13図13は、第2の実施形態に係るジョーの一方を、長手軸に垂直又は略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図14図14は、第2の実施形態に係るジョーの一方の製造において、コネクタを形成する工程を説明する概略図である。
図15図15は、第2の実施形態のある変形例に係るジョーの一方において、コネクタ及びその近傍の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本実施形態の処置システム1を示す。図1に示すように、処置システム1は、処置具2と、電源装置3と、を備える。処置具2は、ケーブル5を介して電源装置3に、取外し可能に接続される。処置具2は、筒状のシャフト(シース)6と、保持可能なハウジング7と、エンドエフェクタ8と、を備える。シャフト6は、中心軸として長手軸Cを有する。ここで、長手軸Cに沿う方向の一方側を先端側(矢印C1側)とし、先端側とは反対側を基端側(矢印C2側)とする。シャフト6は、基端側から先端側へ長手軸Cに沿って延設され、ハウジング7は、シャフト6の基端側に連結される。また、エンドエフェクタ8は、シャフト6の先端側に接続され、シャフト6の先端部から先端側へ向かって延設される。エンドエフェクタ8は、基端部から先端部へ、エンドエフェクタ8の長手方向に沿って延設される。
【0009】
ハウジング7は、長手軸Cに交差する方向に沿って延設されるグリップ11を備える。また、ハウジング7には、ハンドル12が回動可能に取付けられる。ハンドル12がハウジング7に対して回動することにより、ハンドル12がグリップ11に対して開く又は閉じる。本実施形態では、ハウジング7に、ケーブル5の一端が接続される。ケーブル5の他端は、電源装置3に取外し可能に接続される。また、電源装置3には、フットスイッチ等の操作装置10が電気的に接続される。操作装置10では、電源装置3から処置具2に電気エネルギーを出力させる操作が、入力される。なお、ある実施例では、処置具2とは別体で操作装置10を設ける代わりに、又は、処置具2とは別体の操作装置10に加えて、処置具2のハウジング7等に取付けられる操作ボタン等が、操作装置として設けられる。そして、処置具2に取付けられる操作装置で、電源装置3から処置具2に電気エネルギーを出力させる操作が、入力される。
【0010】
図2は、シャフト6の先端部及びエンドエフェクタ8の構成を示す。図1及び図2に示すように、エンドエフェクタ8は、一対のジョー(把持片)15,16を備える。ジョー15,16のそれぞれは、エンドエフェクタ8の長手方向について、エンドエフェクタ8の基端部から先端部に渡って連続して延設される。一対のジョー15,16は、互いに対して開閉可能である。ある実施例では、ジョー15,16の一方がシャフト6と一体又はシャフト6に対して固定され、ジョー15,16の他方がシャフト6に回動可能に取付けられる。別のある実施例では、ジョー15,16の両方がシャフト6に回動可能に取付けられる。エンドエフェクタ8の開閉方向(矢印Y1及び矢印Y2で示す方向)、すなわち、エンドエフェクタ8の開動作及び閉動作でのジョー15,16の移動方向は、エンドエフェクタ8の長手方向に対して交差する(垂直又は略垂直である)。
【0011】
ハウジング7の内部では、可動部材17の基端部が、ハンドル12に連結される。可動部材17は、シャフト6及びハウジング7に対して長手軸Cに沿って移動可能である。可動部材17の先端は、ジョー15,16の少なくとも一方に接続される。ハンドル12をグリップ11に対して開く又は閉じることにより、可動部材17が長手軸Cに沿って移動する。これにより、ジョー15,16の少なくとも一方が回動し、ジョー15,16が互いに対して開く又は閉じる。ジョー15,16が互いに対して閉じることにより、ジョー15,16の間で、生体組織等の処置対象を把持可能になる。なお、ある実施例では、ハウジング7に、回転ノブ等の操作部材が取付けられる。そして、操作部材で操作が入力されると、エンドエフェクタ8及びシャフト6が一緒に、ハウジング7に対して長手軸Cの軸回りに回転する。
【0012】
また、別のある実施例では、ハウジング7に、ダイヤル等の操作部材が設けられ、操作部材での操作に対応して、エンドエフェクタ8がシャフト6及び長手軸Cに対して屈曲又は湾曲する。この実施例では、エンドエフェクタ8に設けられる中継部材(図示しない)が、シャフト6に屈曲可能又は湾曲可能に取付けられる。そして、ジョー15,16の一方が、中継部材に回動可能に取付けられる。なお、ジョー15,16の他方は、中継部材と一体、又は、中継部材に対して固定されてもよく、中継部材に回動可能に取付けられてもよい。
【0013】
図3は、エンドエフェクタ8を、長手方向に対して垂直又は略垂直な断面(長手方向に対して交差する断面)で示す。図3は、ジョー15,16が互いに対して閉じた状態を示す。ここで、エンドエフェクタ8において、長手方向に対して交差し(垂直又は略垂直で)、かつ、エンドエフェクタ8の開閉方向(矢印Y1及び矢印Y2で示す方向)に対して交差する(垂直又は略垂直な)方向を、幅方向(矢印W1及び矢印W2で示す方向)とする。ある実施例では、ジョー15,16のそれぞれにおいて、長手方向に沿う寸法が、幅方向についての寸法よりも大きい。図2及び図3に示すように、本実施形態では、一方のジョー15は、ホルダー21及び導電プレート(電極)22を備える。ホルダー21及び導電プレート22のそれぞれは、エンドエフェクタ8の長手方向について、ジョー15の基端部から先端部に渡って連続して延設される。ホルダー21は、例えば、耐熱性及び電気的絶縁性を有する樹脂等から形成さる。また、ある実施例では、金属等の芯材にインサート成形等によって樹脂を被覆することにより、ホルダー21を形成してもよい。導電プレート22は、導電性を有する金属等から形成される。
【0014】
ジョー15は、他方のジョー16と対向する把持面(対向面)23、及び、把持面23とは反対側を向く背面25を備える。把持面23及び背面25のそれぞれは、エンドエフェクタ8の長手方向について、ジョー15の基端部から先端部に渡って連続して延設される。本実施形態では、ホルダー21及びで導電プレート22によって把持面23が形成され、ホルダー21によって背面25が形成される。ジョー15,16の間で処置対象が把持された状態では、把持面23に処置対象が接触する。把持面23には、ジョー15,16が互いに対して閉じた状態で、ジョー16が当接可能な当接部26が設けられる。当接部26は、ホルダー21によって形成され、電気的絶縁性を有する材料から形成される。本実施形態では、当接部26は、エンドエフェクタ8の長手方向について、ジョー15の基端部から先端部に渡って連続して延設され、エンドエフェクタ8の幅方向についてジョー15の中央部に形成される。また、把持面23では、エンドエフェクタ8の幅方向について当接部26の両側に導電プレート22が配置される。
【0015】
また、図示しないある実施例では、ホルダー21は、例えば、金属等から形成され、かつ、適宜の剛性を有するフレームを備え、フレームによって背面25が形成される。なお、フレームが導電性を有する場合、フレームの外周面は、例えばポリエーテルフルオロエチレン(PTFE)等の電気的絶縁性を有する材料で、全体に渡ってコーティングされる。
【0016】
他方のジョー16は、中心軸として長手軸C´を有し、基端から先端まで長手軸C´に沿って延設される。ジョー15,16が互いに対して閉じた状態では、ジョー16の長手軸C´は、エンドエフェクタ8の長手方向に対して、平行又は略平行になる。また、エンドエフェクタ8の開閉方向は、長手軸C´に対して交差する(垂直又は略垂直である)。そして、エンドエフェクタ8の幅方向は、長手軸C´に対して交差し(垂直又は略垂直であり)、かつ、エンドエフェクタ8の開閉方向に対して交差する(垂直又は略垂直である)。ジョー16は、導電プレート(ブレード)31、電気的素子であるヒータ32、ホルダー33、及び、コネクタ35A,35Bを備える。導電プレート31、ヒータ32、ホルダー33及びコネクタ35A,35Bのそれぞれは、長手軸C´に沿う方向(エンドエフェクタ8の長手方向)について、ジョー16の基端部から先端部に渡って連続して延設される。
【0017】
また、ジョー16は、把持面23に対向する処置面(対向面)41、及び、処置面41とは反対側を向く背面42を備える。処置面(把持面)41及び背面42のそれぞれは、長手軸C´に沿う方向(エンドエフェクタ8の長手方向)について、ジョー16の基端部から先端部に渡って連続して延設される。本実施形態では、導電プレート31によって処置面41が形成され、ホルダー33によって背面42が形成される。このため、本実施形態では、ジョー15は、導電プレート31の処置面41に対して対向配置され、導電プレート31とジョー15との間が開閉可能である。ジョー15,16の間で処置対象が把持された状態では、処置面41に処置対象が接触する。
【0018】
導電プレート31は、導電性を有する金属等から形成され、本実施形態では、熱伝達性(熱伝導率)が高い材料から形成される。また、導電プレート31には、ジョー15側に向かって突出する突起43が形成される。突起43では、処置面41が、突起43以外の部位に比べて、ジョー15側へ突出する。本実施形態では、突起43は、長手軸C´に沿う方向について、ジョー16(導電プレート31)の基端部から先端部に渡って連続して延設され、エンドエフェクタ8の幅方向についてジョー16の中央部に形成される。また、処置面41では、エンドエフェクタ8の幅方向について突起43の両側に傾斜面45A,45Bが形成される。傾斜面45A,45Bは、導電プレート31によって形成され、長手軸C´に沿う方向について、ジョー16(導電プレート31)の基端部から先端部に渡って連続して延設される。傾斜面45A,45Bのそれぞれは、幅方向について突起43から離れるほどジョー16が開く側に向かう状態に、傾斜する。突起43は、鋭利に形成されていてもよく、鈍角形状に形成されていてもよい。
【0019】
ジョー15,16が互いに対して閉じた状態では、導電プレート31の突起43が、ジョー15の当接部26に当接する。ただし、導電プレート31が当接部26に当接した状態でも、導電プレート31は、ジョー15の導電プレート22から離れて位置し、導電プレート22と接触しない。このため、導電プレート22,31の互いに対する接触が、有効に防止される。
【0020】
導電プレート31は、処置面41とは反対側を向く背面(プレート背面)46を備える。背面46は、ジョー16が開く側を向く。ヒータ32は、背面46に配置され、背面46で、導電プレート31に固定される。本実施形態では、エンドエフェクタ8の幅方向について、ヒータ32は、ジョー16の中央部に配置される。また、エンドエフェクタ8の幅方向についてのヒータ32の寸法B1は、エンドエフェクタ8の幅方向についての導電プレート31の寸法B2に比べて、小さい。そして、寸法B1は、エンドエフェクタ8の幅方向についての処置面41の寸法B3に比べて、小さい。ヒータ32は、導電プレート31に対して絶縁層(図示しない)等によって電気的に絶縁される。このため、電気的素子であるヒータ32は、導電プレート31から電気的に独立する。
【0021】
本実施形態では、操作装置10で操作が入力されると、電源装置3から導電プレート22,31へ電気エネルギーとして高周波電力が出力される。これにより、導電プレート22,31が互いに対して電位が異なる電極として機能する。ジョー15,16の間で処置対象が把持された状態では、導電プレート22,31に電気エネルギーが供給されることにより、導電プレート22,31の間で把持される処置対象を通して高周波電流が流れ、処置対象に高周波電流が付与される。
【0022】
また、本実施形態では、操作装置10で操作が入力されると、電源装置3からヒータ32へ電気エネルギーとして直流電力又は交流電力が出力される。この際、導電プレート22,31へ電気エネルギーを供給する電気経路から独立した電気経路を通して、電気エネルギーがヒータ32へ供給される。ヒータ32に電気エネルギーが供給されることにより、ヒータ32の電気抵抗に起因して、ヒータ32において電気エネルギーが熱エネルギーに変換され、熱が発生する。ヒータ32で発生した熱は、導電プレート31を介して、処置面41に伝達される。ジョー15,16の間で処置対象が把持された状態では、ヒータ32に電気エネルギーが供給されることにより、ヒータ32で発生した熱が、処置面41から処置対象に付与される。
【0023】
ホルダー33は、背面46側から、すなわち、ジョー16が開く側から、導電プレート31を支持する。本実施形態では、ホルダー33は、金属等から形成される芯材51、及び、芯材51に被覆される被覆部52を備える。芯材51及び被覆部52のそれぞれは、長手軸C´に沿う方向について、ジョー16(ホルダー33)の基端部から先端部に渡って連続して延設される。被覆部52は、耐熱性及び電気的絶縁性を有し、かつ、熱伝達性(熱伝導率)が低い材料から形成される。したがって、ホルダー33の被覆部52は、導電プレート31に比べて熱伝達性が低い。被覆部52は、例えば、芯材51に樹脂をインサート成形(射出成形)することによって、形成される。なお、ある実施例では、グラスバブルズが添加された樹脂によって、被覆部52が形成される。また、別のある実施例では、発泡性を有する樹脂、すなわち、多孔質の樹脂によって、被覆部52が形成される。
【0024】
被覆部52は、導電プレート31に向かって、すなわち、ジョー16が閉じる側に向かって突出する支持突起53を備える。本実施形態では、支持突起53は、エンドエフェクタ8の長手方向について、ジョー16(ホルダー33)の基端部から先端部に渡って連続して延設され、エンドエフェクタ8の幅方向についてジョー16の中央部に形成される。導電プレート31は、支持突起53によって背面46側から支持され、支持突起53は、導電プレート31の背面46に当接する。
【0025】
また、支持突起53の突出端面には、ジョー16が開く側へ凹む嵌合凹部55が形成される。本実施形態では、嵌合凹部55は、エンドエフェクタ8の長手方向について、ジョー16(ホルダー33)の基端部から先端部に渡って連続して延設され、エンドエフェクタ8の幅方向について支持突起53の中央部に形成される。導電プレート31の背面46に固定されるヒータ32は、嵌合凹部55に嵌り、嵌合凹部55と係合する。このため、ジョー16では、ヒータ32は、エンドエフェクタ8の開閉方向について導電プレート31とホルダー33との間に配置される。なお、ホルダー33の被覆部52は、前述のように熱伝達性が低い材料から形成されるため、ヒータ32で発生した熱、及び、高周波電流に起因するジュール熱等は、ジョー16の背面42に伝達され難い。このため、ヒータ32の熱及び高周波電流に起因するジュール熱等によるジョー16の背面42の温度の上昇が、有効に防止される。
【0026】
ジョー16では、幅方向についてホルダー33の支持突起53の一方側にコネクタ(第1のコネクタ)35Aが設けられ、幅方向について支持突起53の他方側にコネクタ(第2のコネクタ)35Bが設けられる。このため、支持突起53は、幅方向についてコネクタ35A,35Bによって挟まれ、コネクタ35Aは、幅方向について、長手軸C´に対してコネクタ35Bとは反対側に設けられる。また、コネクタ35A,35Bのそれぞれは、エンドエフェクタ8の幅方向についてヒータ32から外側に離れて配置され、ホルダー33に対して固定される。コネクタ35Aによって、幅方向について導電プレート31の一端部が、ホルダー33に対して固定される。そして、コネクタ35Bによって、幅方向について導電プレート31の他端部が、ホルダー33に対して固定される。すなわち、コネクタ35A,35Bのそれぞれは、幅方向について導電プレート31の両端部の対応する一方を、ホルダー33に対して固定する。
【0027】
コネクタ35A,35Bのそれぞれは、熱可塑性樹脂から形成される。コネクタ35A,35Bのそれぞれを形成する熱可塑性樹脂は、耐熱性及び電気的絶縁性を有し、かつ、熱伝達性(熱伝導率)が低い。このため、コネクタ35A,35Bのそれぞれは、導電プレート31に比べて熱伝達性が低い。コネクタ35A,35Bのそれぞれを形成する熱可塑性樹脂としては、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)及びポリベンゾイミダゾール(PBI)等が、挙げられる。なお、ホルダー33の被覆部52を形成する樹脂は、コネクタ35A,35Bを形成する樹脂と同一の組成であってもよく、コネクタ35A,35Bを形成する樹脂とは異なる組成であってもよい。ただし、ホルダー33の被覆部52は、コネクタ35A,35Bを形成する樹脂と同一の組成の樹脂から形成されることが、好ましい。
【0028】
また、本実施形態では、コネクタ35A,35Bのそれぞれは、ホルダー33の被覆部52とは、別部材である。このため、ジョー16では、コネクタ35Aと被覆部52との間に、境界面X1が形成され、コネクタ35Bと被覆部52との間に、境界面X2が形成される。境界面X1,X2のそれぞれは、長手軸C´に沿う方向(エンドエフェクタ8の長手方向)について、ジョー16の基端部から先端部に渡って連続して形成される。
【0029】
また、コネクタ35A,35Bを形成する熱可塑性樹脂は、ヒータ32で発生する熱及び高周波電流等の処置エネルギーが処置対象に付与されている状態での処置面41の温度に比べて、高い融点を有する。ここで、ヒータ32で発生した熱によって処置対象を切開している状態では、ヒータ32及び処置面41の温度は、例えば、300℃程度になる。このため、ヒータ32で発生する熱によって処置対象を切開する処置具2では、300℃より高い融点を有し、かつ、300℃及びその近傍の温度では変形可能な程度まで軟化しない熱可塑性樹脂によって、コネクタ35A,35Bが形成される。この観点から、ヒータ32で発生する熱によって処置対象を切開する処置具2では、コネクタ35A,35Bを形成する熱可塑性樹脂として、LCP及びPEEK等が選択される。なお、ホルダー33の被覆部52を形成する樹脂も、処置エネルギーが処置対象に付与されている状態での処置面41の温度に比べて、高い融点を有する。このため、被覆部52を形成する樹脂も、300℃及びその近傍の温度では変形可能な程度まで軟化しない。
【0030】
導電プレート31には、幅方向について一端部に係合爪61Aが設けられ、幅方向について他端部に係合爪61Bが設けられる。係合爪61Aは、幅方向について、長手軸C´に対して係合爪61Bとは反対側に配置される。係合爪61A,61Bのそれぞれは、長手軸C´に沿う方向にいて、導電プレート31の全長又は略全長に渡って連続して形成され、導電プレート31においてジョー16が開く側に向かって突出する。また、コネクタ35Aには、係合爪61Aが係合する係合溝62Aが形成され、コネクタ35Bには、係合爪61Bが係合する係合溝62Bが形成される。係合溝62A,62Bのそれぞれは、長手軸C´に沿う方向にいて、ジョー16の基端部から先端部に渡って連続して形成される。また、係合溝62Aは、コネクタ35Aにおいて、ジョー16が開く側へ向かって凹み、係合溝62Bは、コネクタ35Bにおいて、ジョー16が開く側へ向かって凹む。
【0031】
長手軸C´に対して垂直又は略垂直な断面(長手軸C´に対して交差する断面)では、係合溝62A,62Bのそれぞれの断面形状は、係合爪61A,61Bの対応する一方と同様の断面形状となる。このため、係合溝62Aでは、コネクタ35Aから係合爪61Aへの押圧力等によって、係合溝62Aからの係合爪61Aの抜脱が防止され、係合爪61Aの係合溝62Aとの係合の解除が防止される。同様に、係合溝62Bでは、コネクタ35Bから係合爪61Bへの押圧力等によって、係合溝62Bからの係合爪61Bの抜脱が防止され、係合爪61Bの係合溝62Bとの係合の解除が防止される。したがって、本実施形態では、係合爪61Aの係合溝62Aとの係合によって、幅方向について導電プレート31の一端部がホルダー33に強固に固定され、係合爪61Bの係合溝62Bとの係合によって、幅方向について導電プレート31の他端部がホルダー33に強固に固定される。
【0032】
また、係合爪61A,61Bのそれぞれの突出端及びその近傍は、長手軸C´に対して垂直又は略垂直な断面において、幅方向について外側に向かって尖鋭になるアンカー形状(63A,63Bの対応する一方)を形成する。そして、長手軸C´に対して垂直又は略垂直な断面では、係合溝62A,62Bのそれぞれの底部及びその近傍の断面形状は、係合する係合爪(61A,61Bの対応する一方)のアンカー形状(63A,63Bの対応する一方)と同様のアンカー形状(65A,65Bの対応する一方)となる。このため、係合爪61A,61Bのそれぞれの対応する係合溝(62A,62Bの対応する一方)からの抜脱がさらに有効に防止され、係合爪61A,61Bのそれぞれの対応するコネクタ(35A,35Bの対応する一方)との結合強度が向上する。これにより、導電プレート31が、ホルダー33にさらに強固に連結される。
【0033】
なお、ある実施例では、係合爪61A,61Bのそれぞれは、長手軸C´に沿う方向について、断続的に形成される。この場合、係合溝62A,62Bのそれぞれは、係合爪61A,61Bに対応させて、長手軸C´に沿う方向について、断続的に形成される。そして、係合溝62A,62Bのそれぞれに、係合爪61A,61Bの対応する一方が係合する。
【0034】
次に、処置具2の製造方法、特に、電気的素子としてヒータ32が設けられるジョー16の製造方法について説明する。ジョー16を形成する際には、金属等の導電性を有する材料から、処置面41、背面46及び係合爪61A,61Bを備える導電プレート31を形成する。そして、電気的素子であるヒータ32を、導電プレート31の背面46に配置し、導電プレート31に固定する。この際、導電プレート31の背面46とヒータ32との間に絶縁層を介在させる等して、ヒータ32は、導電プレート31に対して電気的に独立する状態で、配置される。また、ジョー16の製造においては、ホルダー33を形成する。ホルダー33の形成においては、例えば、芯材51に樹脂をインサート成形(射出成形)することによって、被覆部52を形成する。そして、背面46にヒータ32が固定された導電プレート31を、背面46側からホルダー33によって支持する。この際、ホルダー33の支持突起53が導電プレート31の背面46に当接するとともに、ヒータ32がホルダー33の嵌合凹部55に嵌る。そして、ヒータ32は、導電プレート31とホルダー33との間に配置される。
【0035】
図4は、コネクタ35A,35Bを形成する工程を示す。図4に示すように、コネクタ35A,35Bは、互いに対して開閉可能な一対の金型101,102を用いて形成される。ここで、例えば、一方の金型101が固定型であり、他方の金型102が可動型である。金型101,102が互いに対して閉じることにより、金型101,102の間に、キャビティー103が形成される。コネクタ35A,35Bの形成においては、金型101,102が互いに対して開いた状態で、金型101に導電プレート31、ヒータ32及びホルダー33を固定する。この際、ホルダー33によって背面46側から導電プレート31が支持された状態で、導電プレート31、ヒータ32及びホルダー33が配置される。
【0036】
そして、金型101,102を互いに対して閉じ、形成されるキャビティー103に、導電プレート31、ヒータ32及びホルダー33を配置する。この際、キャビティー103において、ジョー16の幅方向についてホルダー33の支持突起53の両側の領域に、空間が形成される。そして、キャビティー103に形成される空間では、幅方向についてホルダー33の一方側に、係合爪61Aが配置され、幅方向についてホルダー33の他方側に、係合爪61Bが配置される。そして、キャビティー103において、加熱及び軟化された熱可塑性樹脂を、幅方向について支持突起53の両側の空間に射出する。すなわち、幅方向についてヒータ32から離れた領域に、熱可塑性樹脂が射出される。そして、射出された熱可塑性樹脂を冷却及び硬化する。この際、例えば自然冷却によって、熱可塑性樹脂が冷却される。これにより、幅方向について支持突起53の両側に、熱可塑性樹脂によって、コネクタ35A,35Bが形成される。すなわち、幅方向についてヒータ32から離れた領域に、熱可塑性樹脂によって、コネクタ35A,35Bがインサート成形される。
【0037】
コネクタ35Aが形成されることにより、幅方向について導電プレート31の一端部が、ホルダー33に対して固定される。そして、コネクタ35Bが形成されることにより、幅方向について導電プレート31の他端部が、ホルダー33に対して固定される。また、コネクタ35Aが形成されることにより、コネクタ35Aとホルダー33との間に境界面X1が形成され、コネクタ35Bが形成されることにより、コネクタ35Bとホルダー33との間に境界面X2が形成される。
【0038】
ここで、ヒータ32及びその近傍は、ヒータ32で発生した熱によって処置対象を切開している状態では、300℃程度になる。このため、ヒータ32及びその近傍の温度が300℃程度及び300℃以下の場合は、ヒータ32は、適切に作動される。ただし、ヒータ32及びその近傍の温度が350℃程度まで上昇すると、ヒータ32への熱の影響が大きくなり、ヒータ32が適切に作動されない可能性がある。
【0039】
そこで、本実施形態と同様にしてコネクタ35A,35Bをインサート成形する場合において、ヒータ32及びその近傍の温度を測定し、検証を行った。検証では、コネクタ35A,35BをPEEKからインサート成形する場合について、ヒータ32及びその近傍の温度を測定した。この際、金型101,102の温度を200℃とし、400℃のPEEK及びLCPのいずれかを射出した。この条件でコネクタ35A,35Bを本実施形態と同様にしてインサート成形した場合、コネクタ35A,35Bのインサート成形において、ヒータ32及びその近傍の温度は、250℃より低く保たれた。
【0040】
前述のように、いずれの検証においても、本実施形態と同様にしてコネクタ35A,35Bをインサート形成することにより、コネクタ35A,35Bのインサート成形において、ヒータ32及びその近傍の温度が350℃程度まで上昇することが防止された。したがって、製造時において、ヒータ32は、射出された熱可塑性樹脂からの熱の影響をほとんど受けないことが証明された。
【0041】
前述のように、本実施形態では、インサート成形において、幅方向についてヒータ32から離れた領域に、加熱された熱可塑性樹脂が射出される。そして、射出された樹脂とヒータ32との間には、導電プレート31に加えて、熱伝達性が低いホルダー33の被覆部52が存在する。このため、射出された樹脂からの熱は、主に導電プレート31を通してヒータ32に伝達され、ホルダー33の被覆部52を通してはヒータ32へ伝達され難い。 したがって、コネクタ35A,35Bのインサート成形において、すなわち、製造時において、射出された熱可塑性樹脂の熱のヒータ32への影響が低減される。製造時におけるヒータ32への熱の影響が低減されることにより、製造後の使用時において、ヒータ32が適切に作動され、ヒータ32で発生した熱を用いて適切に処置が行われる。
【0042】
また、本実施形態では、コネクタ35A,35B及びホルダー33の被覆部52を形成する樹脂は、処置エネルギーが処置対象に付与されている状態での処置面41の温度に比べて、高い融点を有する。そして、ヒータ32で発生した熱によって処置対象を切開している状態、すなわち、処置面41が300℃程度になる状態では、コネクタ35A,35B及び被覆部52は、変形可能な程度まで軟化しない。このため、例えばヒータ32で発生した熱によって処置対象を切開している状態等の処置において、コネクタ35A,35B及びホルダー33の変形が防止される。これにより、コネクタ35A,35B及びホルダー33から導電プレート31が取外れること等が、有効に防止される。
【0043】
(第1の実施形態の変形例)
なお、図5及び図6に示す第1の実施形態の第1の変形例では、ホルダー33に芯材(例えば51)等が設けられず、ホルダー33の全体が樹脂から形成される。この場合、ホルダー33を形成する材料としては、例えば、第1の実施形態において被覆部52を形成する樹脂と同一の組成の樹脂が、挙げられる。そして、ホルダー33は、樹脂を射出成形することにより、形成される。また、本変形例では、ホルダー33の全体が、樹脂の代わりに、セラミックスから形成されてもよい。ただし、いずれの場合も、ホルダー33は、耐熱性及び電気的絶縁性を有し、かつ、熱伝達性(熱伝導率)が低い材料から形成される。そして、ホルダー33は、導電プレート31に比べて熱伝達性が低い。本変形例でも、ホルダー33は、背面46側から導電プレート31を支持し、導電プレート31とホルダー33との間にヒータ32が配置される。
【0044】
本変形例では、ジョー16にベース70が設けられ、ベース70は、ジョー16が開く側からホルダー33を支持する。ベース70は、長手軸C´に沿う方向(エンドエフェクタ8の長手方向)について、ジョー16の基端部から先端部に渡って連続して延設される。また、ベース70は、金属等から形成される芯材71、及び、芯材71に被覆される被覆部72を備える。芯材71及び被覆部72のそれぞれは、長手軸C´に沿う方向について、ジョー16(ベース70)の基端部から先端部に渡って連続して延設される。本変形例では、芯材71は、ジョー16が開く側からホルダー33に当接する。また、被覆部72は、ジョー16の幅方向についてホルダー33の両側の部位、ジョー16の幅方向について芯材71の両側の部位、及び、芯材71に対してジョー16が開く側の部位に、形成される。
【0045】
また、本変形例では、被覆部72の一部によって、コネクタ35A,35Bが形成され、ホルダー33は、幅方向についてコネクタ35A,35Bの間に配置される。本変形例でも、コネクタ35Aは、幅方向について、長手軸C´に対してコネクタ35Bとは反対側に設けられる。また、コネクタ35A,35Bのそれぞれは、エンドエフェクタ8の幅方向についてヒータ32から外側に離れて配置され、ホルダー33に対して固定される。そして、コネクタ35A,35Bのそれぞれは、幅方向について導電プレート31の両端部の対応する一方を、ホルダー33に対して固定する。本変形例でも、コネクタ35Aとホルダー33との間に境界面X1が形成され、コネクタ35Bとホルダー33との間に境界面X2が形成される。
【0046】
被覆部72は、例えば、芯材71及びホルダー33に樹脂をインサート成形(射出成形)することによって、形成される。コネクタ35A,35Bを含む被覆部72を形成する材料としては、例えば、第1の実施形態においてコネクタ35A,35Bを形成する熱可塑性樹脂と同一の組成の熱可塑性樹脂が挙げられ、LCP及びPEEK等が挙げられる。また、コネクタ35A,35Bを含む被覆部72は、耐熱性及び電気的絶縁性を有し、かつ、熱伝達性(熱伝導率)が低い材料から形成される。そして、被覆部72は、導電プレート31に比べて熱伝達性が低い。また、被覆部72(コネクタ35A,35B)を形成する熱可塑性樹脂は、ヒータ32で発生する熱及び高周波電流等の処置エネルギーが処置対象に付与されている状態での処置面41の温度に比べて、高い融点を有する。
【0047】
図6は、本変形例においてコネクタ35A,35Bを形成する工程を示す。図6に示すように、本変形例でも、コネクタ35A,35Bは、一対の金型101,102を用いて形成される。ただし、本変形例では、金型102が固定型になり、金型101が可動型になる。コネクタ35A,35Bの形成においては、金型101,102が互いに対して開いた状態で、金型102に導電プレート31、ヒータ32、ホルダー33及び芯材71を固定する。この際、ホルダー33によって背面46側から導電プレート31が支持され、かつ、ジョー16が開く側から芯材71がホルダー33を支持した状態で、導電プレート31、ヒータ32、ホルダー33及び芯材71が配置される。
【0048】
そして、金型101,102を互いに対して閉じ、形成されるキャビティー103に、導電プレート31、ヒータ32、ホルダー33及び芯材71を配置する。この際、キャビティー103において、ジョー16の幅方向についてホルダー33及び芯材71の両側の領域、及び、芯材71に対してジョー16が開く側の領域に、空間が形成される。そして、キャビティー103に形成される空間では、幅方向についてホルダー33の一方側に、係合爪61Aが配置され、幅方向についてホルダー33の他方側に、係合爪61Bが配置される。そして、キャビティー103において、加熱及び軟化された熱可塑性樹脂を、形成される空間に射出する。この際、幅方向についてヒータ32から離れた領域に、熱可塑性樹脂が射出される。そして、射出された熱可塑性樹脂を冷却及び硬化する。これにより、被覆部72が形成され、幅方向についてホルダー33の両側に、熱可塑性樹脂によって、コネクタ35A,35Bが形成される。すなわち、幅方向についてヒータ32から離れた領域に、熱可塑性樹脂によって、コネクタ35A,35Bがインサート成形される。
【0049】
本変形例では、インサート成形において、幅方向についてヒータ32から離れた領域に、加熱された熱可塑性樹脂が射出される。そして、射出された樹脂とヒータ32との間には、導電プレート31に加えて、熱伝達性が低いホルダー33が存在する。このため、射出された樹脂からの熱は、主に導電プレート31を通してヒータ32に伝達され、ホルダー33を通してはヒータ32へ伝達され難い。したがって、本変形例でも第1の実施形態と同様に、コネクタ35A,35Bのインサート成形において、すなわち、製造時において、射出された熱可塑性樹脂の熱のヒータ32への影響が低減される。
【0050】
また、図7に示す第1の実施形態の第2の変形例では、第1の変形例と同様に、ベース70が設けられ、ベース70の被覆部72によってコネクタ35A,35Bが形成される。ただし、本変形例では、ホルダー33とベース70の芯材71との間に空間75が形成される。空間75が形成されることにより、ヒータ32で発生した熱、及び、高周波電流に起因するジュール熱等は、ジョー16の背面42に、さらに伝達され難くなる。
【0051】
また、図8及び図9に示す第1の実施形態の第3の変形例では、係合爪61A,61Bのそれぞれにアンカー形状(63A,63Bの対応する一方)が形成される代わりに、係合爪61A,61Bのそれぞれに貫通孔(76A,76Bの対応する一方)が形成される。貫通孔76A,76Bのそれぞれは、ジョー16の幅方向について対応する係合爪(61A,61Bの対応する一方)を貫通する。貫通孔76A,76Bのそれぞれは、長手軸C´に沿う方向にいて、ジョー16の基端部から先端部に渡って連続して形成されてもよく、長手軸C´に沿う方向について断続的に形成されてもよい。また、本変形例では、コネクタ35A,35Bのそれぞれには、対応する貫通孔(76A,76Bの対応する一方)に充填される充填部分(77A,77Bの対応する一方)が形成される。
【0052】
本変形例では、コネクタ35A,35Bのインサート成形において、射出された熱可塑性樹脂が、貫通孔76A,76Bに充填される。これにより、コネクタ35A,35Bのそれぞれに、充填部分(77A,77Bの対応する一方)が形成される。本変形例では、貫通孔76A,76B及び充填部分77A,77Bによって、係合爪61A,61Bのそれぞれの対応するコネクタ(35A,35Bの対応する一方)との結合強度が向上する。これにより、導電プレート31が、ホルダー33にさらに強固に連結される。
【0053】
また、図10及び図11に示す第1の実施形態の第4の変形例では、ジョー16の基端部にブロック80が設けられ、ブロック80は、導電プレート31の基端側に接続される。ブロック80は、電気的絶縁性を有し、かつ、熱伝達性(熱伝導率)が低い材料から形成され、例えば、樹脂から形成される。また、ブロック80において、ジョー16が閉じる側を向く面は、エンドエフェクタ8の幅方向に対して平行又は略平行に形成される。ブロック80には、ジョー16が閉じる側に向かって突出する突出部81が形成される。
【0054】
ジョー16には、ヒータ32のヒータ線を含む回路系82が設けられる。また、シャフト6の内部には、ヒータ32に電気エネルギーを供給する電気配線83が延設される。ジョー16の基端部には、電気配線83の回路系82への接続部分が形成される。ブロック80は、回路系82の基端部及び電気配線83の回路系82への接続部分の露出を防止するカバーとなる。また、ジョー15,16の間で処置対象が把持された状態では、ブロック80の突出部81によって、突出部81から基端側への処置対象の侵入が防止される。これにより、シャフト6の内部への把持された処置対象の侵入が、有効に防止される。
【0055】
本変形例では、ホルダー33は、導電プレート31の背面46側から導電プレート31及びブロック80を支持する。そして、コネクタ35A,35Bのそれぞれは、幅方向について導電プレート31の両端部の対応する一方を、ホルダー33に対して固定するとともに、幅方向についてブロック80の両端部の対応する一方を、ホルダー33に対して固定する。
【0056】
本変形例では、コネクタ35A,35Bのインサート成形において、ホルダー33が導電プレート31及びブロック80を支持した状態で、熱可塑性樹脂を射出する。そして、射出した樹脂によってコネクタ35A,35Bを形成し、導電プレート31及びブロック80をコネクタ35A,35Bを介してホルダー33に取付ける。
【0057】
なお、図12に示す第1の実施形態の第5の変形例のように、ブロック80に、突出部(例えば81)が設けられなくてもよい。この場合も、ブロック80によって、回路系82の基端部及び電気配線83の回路系82への接続部分の露出が、防止される。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図13及び図14を参照して、説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態での処理を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0059】
図13に示すように、本実施形態では、ホルダー33の被覆部52の一部によって、コネクタ35A,35Bが形成される。本実施形態でも、コネクタ35Aは、幅方向について、長手軸C´に対してコネクタ35Bとは反対側に設けられる。また、コネクタ35A,35Bのそれぞれは、エンドエフェクタ8の幅方向についてヒータ32から外側に離れて配置される。そして、コネクタ35A,35Bのそれぞれは、幅方向について導電プレート31の両端部の対応する一方を、ホルダー33に対して固定する。ただし、本実施形態は、コネクタ35A,35Bがホルダー33と一体であるため、境界面X1,X2は、形成されない。
【0060】
本実施形態でも、被覆部52は、第1の実施形態と同様に、芯材51に樹脂をインサート成形(射出成形)することによって、形成される。コネクタ35A,35Bを含む被覆部52を形成する材料としては、例えば、第1の実施形態においてコネクタ35A,35Bを形成する熱可塑性樹脂と同一の組成の熱可塑性樹脂が挙げられ、LCP及びPEEK等が挙げられる。また、本実施形態でも第1の実施形態と同様に、コネクタ35A,35Bを含む被覆部52は、耐熱性及び電気的絶縁性を有し、かつ、熱伝達性(熱伝導率)が低い材料から形成される。そして、被覆部52は、導電プレート31に比べて熱伝達性が低い。また、被覆部52(コネクタ35A,35B)を形成する熱可塑性樹脂は、ヒータ32で発生する熱及び高周波電流等の処置エネルギーが処置対象に付与されている状態での処置面41の温度に比べて、高い融点を有する。
【0061】
本実施形態では第1の実施形態と同様に、被覆部52は、ジョー16が閉じる側に向かって突出する支持突起53を備える。また、本実施形態では、被覆部52は、支持突起53に加えて、ジョー16が閉じる側へ向かって突出する突起91A,91Bを備える。突起91Aは、ジョー16の幅方向について支持突起53の一方側に配置され、突起91Bは、ジョー16の幅方向について支持突起53の他方側に配置される。突起91A,91Bのそれぞれは、ジョー16の基端部から先端部に渡って連続して形成される。また、突起91A,91Bのそれぞれは、エンドエフェクタ8の幅方向についてヒータ32から外側に離れて配置される。
【0062】
本実施形態では、ジョー16の幅方向について支持突起53と突起91Aとの間に、係合溝62Aが形成される。そして、係合溝62Aには、導電プレート31の係合爪61Aが係合する。したがって、被覆部52では、係合溝62A及びその近傍部位によって、コネクタ35Aが形成される。同様に、本実施形態では、ジョー16の幅方向について支持突起53と突起91Bとの間に、係合溝62Bが形成される。そして、係合溝62Bには、導電プレート31の係合爪61Bが係合する。したがって、被覆部52では、係合溝62B及びその近傍部位によって、コネクタ35Bが形成される。
【0063】
図14は、本実施形態においてコネクタ35A,35Bを形成する工程を示す。本実施形態でも第1の実施形態と同様に、芯材51をインサート形成することにより、ホルダー33の被覆部52が形成される。ただし、図14に示すように、インサート成形された被覆部52には、幅方向について支持突起53と突起91Aとの間に凹部93Aが形成される。同様に、インサート成形された被覆部52には、幅方向について支持突起53と突起91Bとの間に凹部93Bが形成される。この際、凹部93A,93Bのそれぞれは、ホルダー33の基端部から先端部に渡って連続して延設される。
【0064】
そして、導電プレート31を、ホルダー33によって背面46側から支持する。ある実施例では、導電プレート31の係合爪61A,61Bは、ホルダー33に対して長手方向に沿って移動させることにより、所望の位置に配置される。別のある実施例では、導電プレート31の係合爪61A,61Bは、長手方向及び幅方向に直交する方向から、ホルダー33に対して所望の位置に配置する。これにより、ホルダー33の支持突起53が導電プレート31の背面46に当接する。また、導電プレート31の係合爪61Aが凹部93Aに挿入され、導電プレート31の係合爪61Bが凹部93Bに挿入される。ここで、長手軸C´に対して垂直又は略垂直な断面(長手軸C´に対して交差する断面)では、凹部93A,93Bのそれぞれの断面形状は、係合爪61A,61Bの対応する一方の断面形状とは異なる。このため、係合爪61A,61Bのそれぞれは、凹部(93A,93Bの対応する一方)から抜脱可能である。
【0065】
本実施形態では、加熱されたホーン105を用いて、コネクタ35A,35Bを形成する。この際、ホルダー33が導電プレート31を支持し、かつ、係合爪61A,61Bのそれぞれが凹部(93A,93Bの対応する一方)に挿入された状態で、加熱されたホーン105を、被覆部52の突起91A,91Bに接触させる。これにより、被覆部52の突起91A,91Bに、熱が付加される。すなわち、幅方向についてヒータ32から離れた領域において、ホルダー33の被覆部52に、熱が付加される。熱の付加によって、熱可塑性樹脂から形成される突起91A,91Bは、軟化及び変形する。そして、変形された突起91A,91Bを冷却及び硬化する。これにより、幅方向についてホルダー33の両端部に、コネクタ35A,35Bが形成される。すなわち、ホルダー33の一部(突起91A,91B)を熱カシメ(thermal caulking又はthermal swaging)することにより、ホルダー33にコネクタ35A,35Bが形成される。
【0066】
熱カシメによって突起91A,91Bが変形することにより、ホルダー33では、長手軸C´に垂直又は略垂直な断面での凹部93A,93Bのそれぞれの断面形状が変化する。熱カシメによって凹部93A,93Bの断面形状が変化することにより、ホルダー33では、幅方向について支持突起53と突起91Aとの間に係合溝62Aが形成され、幅方向について支持突起53と突起91Bとの間に係合溝62Bが形成される。係合溝62A,62Bが形成されることにより、係合爪61A,61Bのそれぞれの対応する係合溝(62A,62Bの対応する1つ)からの抜脱が、防止される。
【0067】
ここで、本実施形態と同様に熱カシメによってコネクタ35A,35Bを形成する場合において、ヒータ32及びその近傍の温度を測定し、検証を行った。検証では、ホルダー33の被覆部52(コネクタ35A,35B)がPEEKから形成される場合について、ヒータ32及びその近傍の温度を測定した。この際、ホーン105の温度を350℃として、ホルダー33の突起91A,91Bに熱を付加した。この条件でコネクタ35A,35Bを本実施形態と同様にして形成した場合、突起91A,91Bの熱カシメにおいて、ヒータ32及びその近傍の温度は、300℃より低く保たれた。また、別の検証では、ホルダー33の被覆部52(コネクタ35A,35B)がLCPから形成される場合について、ヒータ32及びその近傍の温度を測定した。この際、ホーン105の温度を370℃として、ホルダー33の突起91A,91Bに熱を付加した。この条件でコネクタ35A,35Bを本実施形態と同様にして形成した場合、突起91A,91Bの熱カシメにおいて、ヒータ32及びその近傍の温度は、300℃より低く保たれた。
【0068】
前述のように、いずれの検証においても、本実施形態と同様に熱カシメによってコネクタ35A,35Bを形成することにより、熱カシメにおいて、ヒータ32及びその近傍の温度が350℃程度まで上昇することが防止された。したがって、製造時において、ヒータ32は、ホルダー33に付加される熱の影響をほとんど受けないことが証明された。
【0069】
前述のように、本実施形態では、コネクタ35A,35Bの形成において、幅方向についてヒータ32から離れた領域で、ホルダー33に熱が付加される。そして、ホルダー33において熱が付加される部位とヒータ32との間には、導電プレート31に加えて、熱伝達性が低いホルダー33の被覆部52が存在する。このため、ホーン105から付加された熱は、主に導電プレート31を通してヒータ32に伝達され、ホルダー33の被覆部52を通してはヒータ32へ伝達され難い。したがって、コネクタ35A,35Bの形成において、すなわち、製造時において、ホルダー33に付加される熱のヒータ32への影響が低減される。すなわち、本実施形態でも第1の実施形態と同様に、製造時におけるヒータ32への熱の影響が低減される。したがって、本実施形態でも、製造後の使用時において、ヒータ32が適切に作動され、ヒータ32で発生した熱を用いて適切に処置が行われる。
【0070】
また、本実施形態では、コネクタ35A,35Bを含むホルダー33の被覆部52を形成する樹脂は、処置エネルギーが処置対象に付与されている状態での処置面41の温度に比べて、高い融点を有する。そして、ヒータ32で発生した熱によって処置対象を切開している状態、すなわち、処置面41が300℃程度になる状態では、コネクタ35A,35Bを含む被覆部52は、変形可能な程度まで軟化しない。このため、本実施形態でも第1の実施形態と同様に、例えばヒータ32で発生した熱によって処置対象を切開している状態等の処置において、コネクタ35A,35B及びホルダー33の変形が防止される。
【0071】
(第2の実施形態の変形例)
また、図15に示す第2の実施形態のある変形例 では、図8及び図9で示した第1の実施形態の変形例と同様に、係合爪61A,61Bのそれぞれに貫通孔(76A,76Bの対応する一方)が形成される。本変形例でも、第2の実施形態と同様に、ホルダー33にコネクタ35A,35Bが形成されるとともに、ホルダー33に、突起91A,91Bが設けられる。ただし、本変形例では、突起91A,91Bのそれぞれに、対応する貫通孔(76A,76Bの対応する一方)に挿入される挿入部分(95A,95Bの対応する一方)が形成される。挿入部分95A,95Bのそれぞれは、ジョー16の幅方向について外側から、対応する貫通孔(76A,76Bの対応する一方)に挿入される。
【0072】
本変形例では、加熱されたホーン106からホルダー33の突起91A,91Bに熱を付加し、突起91A,91Bを軟化及び変形させることにより、突起91A,91Bのそれぞれを、対応する貫通孔(76A,76Bの対応する一方)に挿入する。すなわち、熱カシメによって、突起91A,91Bのそれぞれが対応する貫通孔(76A,76Bの対応する一方)に挿入される。これにより、ホルダー33の突起91A,91Bのそれぞれに、挿入部分(95A,95Bの対応する一方)が形成される。本変形例では、貫通孔76A,76B及び挿入部分75A,75Bによって、係合爪61A,61Bのそれぞれの対応するコネクタ(35A,35Bの対応する一方)との結合強度が向上する。これにより、導電プレート31が、ホルダー33にさらに強固に連結される。
【0073】
また、ある変形例では、ホルダー33は、導電プレート31の背面46にのみ当接し、ヒータ32に当接しない。この場合、ホルダー33とヒータ32との間に空間が形成され、ヒータ32に対してジョー16が開く側に隣接して、空間が形成される。
【0074】
また、ある変形例では、コネクタ35A,35Bがホルダー33と一体に形成される構成において、図10及び図11で示した第1の実施形態の変形例と同様に、ブロック80が設けられる。この場合、ホルダー33の一部を熱カシメによって軟化及び変形し、コネクタ35A,35Bを形成することにより、導電プレート31及びブロック80が、コネクタ35A,35Bを介してホルダー33に取付けられる。
【0075】
(その他の変形例)
なお、前述の実施形態等では、電気的素子としてヒータ32が設けられるが、ある変形例では、電気的素子として、例えば、エンドエフェクタ8の温度を検知するセンサ又は位置及び姿勢を検知するセンサ等が設けられてもよい。この場合も、センサは、導電プレート31に対して電気的に絶縁され、導電プレート31から電気的に独立する。また、本変形例でも、操作装置10での操作に基づいて、導電プレート22,31に電気エネルギーが供給される。導電プレート22,31に電気エネルギーが供給されることにより、導電プレート22,31の間で把持される処置対象を通して高周波電流が流れ、処置対象に高周波電流が付与される。この際、高周波電流に起因するジュール熱によって、処置面41の温度は120℃〜130℃程度となる。したがって、電気的素子としてヒータ32の代わりにセンサが設けられる本変形例では、130℃より高い融点を有し、かつ、130℃及びその近傍の温度では変形可能な程度まで軟化しない熱可塑性樹脂によって、コネクタ35A,35Bが形成される。
【0076】
また、ある変形例では、前述の実施形態等と同様に導電プレート31、及び、導電プレート31から電気的に独立したヒータ32及びセンサ等の電気的素子が設けられる構成において、導電プレート31の処置面41を移動可能なカッターが設けられてもよい。この場合、カッターは、処置面41をエンドエフェクタ8の長手軸に沿って移動可能である。ジョー15,16の間に処置対象が把持された状態で、処置面においてカッターを移動させることにより、把持される処置対象が切開される。また、前述の実施形態等では、エンドエフェクタ8が一対のジョー15,16を備えるが、ある変形例では、人体等の被検体に設置される対極板が、ジョー15の代わりに設けられる。この場合、操作装置10での操作に基づいて、導電プレート31及び対極板に電気エネルギーが供給される。そして、導電プレート31の処置面41が処置対象に接触する状態において導電プレート31及び対極板に電気エネルギーが供給されることにより、処置対象を通して高周波電流が流れ、処置対象に高周波電流が付与される。すなわち、一対のジョーの間で高周波電流を流すバイポーラ処置を行う処置具に加えて、対極板とエンドエフェクタとの間で高周波電流を流すモノポーラ処置を行う処置具にも、前述の構成が適用可能である。
【0077】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15