特許第6848098号(P6848098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6848098挿入装置、挿入装置の先端部材および蓋部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848098
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】挿入装置、挿入装置の先端部材および蓋部材
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/018 20060101AFI20210315BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   A61B1/018 514
   G02B23/24 A
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-568559(P2019-568559)
(86)(22)【出願日】2018年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2018030800
(87)【国際公開番号】WO2019150621
(87)【国際公開日】20190808
【審査請求日】2020年6月9日
(31)【優先権主張番号】特願2018-15056(P2018-15056)
(32)【優先日】2018年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 文俊
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2-40936(JP,A)
【文献】 特開2006-122327(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/199694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/018
G02B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に挿入される挿入部
前記挿入部の先端に配置される先端部材と、
前記先端部材を構成する基台部と、
前記基台部の表面に設けられた凹部と、
前記基台部の表面において、前記凹部の開口の周囲を囲うように形成された開口形成面と、
前記凹部の前記開口よりも大きく前記開口形成面に当接する当接面を有し、前記当接面が前記開口形成面に当接することによって前記凹部の前記開口を閉塞する板状の蓋部材と、
備えており
前記蓋部材は、前記当接面に隣接する側面の少なくとも一部を前記基台部の外面に露呈させるとともに、前記当接面と外部に露呈される前記側面とが交差する角の一部に、当該角を切り欠いた開口部を有することを特徴とする挿入装
【請求項2】
前記挿入部被検体管腔内挿入されることを特徴とする請求項1に記載の挿入装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記開口形成面と鋭角に交差する角度で前記角を切り欠いて形成されることを特徴とする請求項に記載の挿入装
【請求項4】
前記開口部は、前記角の一部面取りして形成されることを特徴とする請求項1に記載の挿入装
【請求項5】
前記蓋部材の前記側面は、前記蓋部材を前記開口形成面に接着するための固定用樹脂により覆われていることを特徴とする請求項に記載の挿入装
【請求項6】
前記固定用樹脂の外面は、当該先端部材の外面と同一面に形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の挿入装置。
【請求項7】
前記基台部は、前記開口形成面に設けられた、前記蓋部材の前記当接面と前記側面とが交差する角の一部を前記開口形成面から離間させる溝を有することを特徴とする請求項1に記載の挿入装置。
【請求項8】
被検体に挿入される挿入部の先端に配置される、挿入装置の先端部材であって、
基台部と、
前記基台部の表面に設けられた凹部と、
前記基台部の表面において、前記凹部の開口の周囲を囲うように形成された開口形成面と、
前記凹部の前記開口よりも大きく前記開口形成面に当接する当接面を有し、前記当接面が前記開口形成面に当接することによって前記凹部の前記開口を閉塞する板状の蓋部材と、
を備え、
前記蓋部材は、前記当接面に隣接する側面の少なくとも一部を前記基台部の外面に露呈させるとともに、前記当接面と外部に露呈される前記側面とが交差する角の一部に、当該角を切り欠いた開口部を有することを特徴とする挿入装置の先端部材。
【請求項9】
前記開口部は、前記開口形成面と鋭角に交差する角度で前記角を切り欠いて形成されることを特徴とする、請求項8に記載の挿入装置の先端部材。
【請求項10】
前記開口部は、前記角の一部を面取りして形成されることを特徴とする、請求項8に記載の挿入装置の先端部材。
【請求項11】
前記蓋部材の前記側面は、前記蓋部材を前記開口形成面に接着するための固定用樹脂により覆われていることを特徴とする、請求項8に記載の挿入装置の先端部材。
【請求項12】
前記固定用樹脂の外面は、当該先端部材の外面と同一面に形成されていることを特徴とする、請求項11に記載の挿入装置の先端部材。
【請求項13】
基台部と、この基台部の表面に設けられた凹部と、前記基台部の表面において前記凹部の開口の周囲を囲うように形成された開口形成面とを備えた、被検体に挿入される挿入部に配置される先端部材の、前記開口を閉塞する板状の蓋部材であって、
前記蓋部材は、
前記開口形成面に当接する当接面に隣接する側面の少なくとも一部を前記基台部の外面に露呈させるとともに、
前記当接面と外部に露呈される前記側面とが交差する角の一部に、当該角を切り欠いた開口部を有する、
ことを特徴とする蓋部材。
【請求項14】
前記開口部は、前記開口形成面と鋭角に交差する角度で前記角を切り欠いて形成されることを特徴とする、請求項13に記載の蓋部材。
【請求項15】
前記開口部は、前記角の一部を面取りして形成されることを特徴とする、請求項13に記載の蓋部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入部に設けられ、凹部と当該凹部を覆う蓋部材とを備える挿入装置、挿入装置の先端部材および蓋部材に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡や医療用処置具等の被検体内部に挿入される挿入部を有する挿入装置には、当該挿入部に可動部材を備える型式のものがある。例えば日本国特開2007−136044号公報には、挿入部に可動部材である起立レバーおよび起立台を備える内視鏡が開示されている。
【0003】
日本国特開2007−136044号公報に開示の内視鏡では、起立レバーは、挿入部の先端部本体に形成された凹形状の空間であるレバー収容部内に配置されている。そして、日本国特開2007−136044号公報に開示の内視鏡では、レバー収容部は、薄板状のカバーにより塞がれている。カバーは、先端部本体に接着剤により固定されている。レバー収容部は、内視鏡の内部空間と連通した空間であることから、レバー収容部を塞ぐカバーは、液体を通さないよう強固に固定されている。
【0004】
日本国特開2007−136044号公報に開示の内視鏡において、起立レバー等の修理を行うためには、先端部本体に固定されたカバーを取り外す必要がある。一方で、前述のように、カバーを先端部本体に固定する強度も高くなければならない。
【0005】
本発明は、前述した問題を解決するものであり、凹部を塞ぐ蓋部材の固定強度を維持し
つつ、前記蓋部材の容易な取り外しを可能とする挿入装置、挿入装置の先端部材および蓋部材を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による挿入装置は、被検体に挿入される挿入部前記挿入部の先端に配置される先端部材と、前記先端部材を構成する基台部と、前記基台部の表面に設けられた凹部と、前記基台部の表面において、前記凹部の開口の周囲を囲うように形成された開口形成面と、前記凹部の前記開口よりも大きく前記開口形成面に当接する当接面を有し、前記当接面が前記開口形成面に当接することによって前記凹部の前記開口を閉塞する板状の蓋部材と、を備えており、前記蓋部材は、前記当接面に隣接する側面の少なくとも一部を前記基台部の外面に露呈させるとともに、前記当接面と外部に露呈される前記側面とが交差する角の一部に、当該角を切り欠いた開口部を有することを特徴とする挿入装
本発明の一態様による被挿入装置の先端部材は、検体に挿入される挿入部の先端に配置される、挿入装置の先端部材であって、基台部と、前記基台部の表面に設けられた凹部と、前記基台部の表面において、前記凹部の開口の周囲を囲うように形成された開口形成面と、前記凹部の前記開口よりも大きく前記開口形成面に当接する当接面を有し、前記当接面が前記開口形成面に当接することによって前記凹部の前記開口を閉塞する板状の蓋部材と、を備え、前記蓋部材は、前記当接面に隣接する側面の少なくとも一部を前記基台部の外面に露呈させるとともに、前記当接面と外部に露呈される前記側面とが交差する角の一部に、当該角を切り欠いた開口部を有する。
本発明の一態様による蓋部材は、基台部と、この基台部の表面に設けられた凹部と、前記基台部の表面において前記凹部の開口の周囲を囲うように形成された開口形成面とを備えた、被検体に挿入される挿入部に配置される先端部材の、前記開口を閉塞する板状の蓋部材であって、前記蓋部材は、前記当接面に隣接する側面の少なくとも一部を前記基台部の外面に露呈させるとともに、前記当接面と外部に露呈される前記側面とが交差する角の一部に、当該角を切り欠いた開口部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】挿入装置の概略的な構成を示す図である。
図2】挿入部の先端部の斜視図である。
図3】先端カバーと先端部材とを分離した状態で示す斜視図である。
図4】先端部材の上面を示す図である。
図5図4のV-V断面図である。
図6図4のVI-VI断面図である。
図7】先端部材の分解斜視図である。
図8】蓋部材を取り外した状態の先端部材の右側面を示す図である。
図9図4のIX-IX断面図である。
図10図9の円Cで囲まれた部分の拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0009】
図1は、挿入装置100の概略的な構成を示す図である。本実施形態の挿入装置100は、挿入装置本体1および先端カバー60を備える。本実施形態では一例として、挿入装置100は、被検体である人体内に挿入される挿入部2を有する内視鏡であり、より具体的には側視型の十二指腸用内視鏡である。
【0010】
挿入装置本体1は、被検体内に挿入される挿入部2と、挿入部2の基端側に設けられた操作部3と、操作部3から延出するユニバーサルコード4と、を備えて構成されている。
【0011】
操作部3には、湾曲操作装置11と、送気送水釦12と、吸引釦13と、起上台操作レバー14と、操作スイッチ15と、が設けられている。操作スイッチ15は、挿入部2に設けられた撮像装置42(図1には不図示)を操作するための電子スイッチである。
【0012】
操作部3には、図示しない処置具を体内に導入するための処置具挿入口16が設けられている。処置具挿入口16にはチャンネルチューブ17の基端側が接続されている。チャンネルチューブ17の先端側は、挿入部2の先端部5において開口している。
【0013】
挿入部2は、先端に配設される先端部5、先端部5の基端側に配設される湾曲自在な湾曲部6、および湾曲部6の基端側と操作部3とを接続する可撓性を有する可撓管部7が連設されて構成されている。先端部5には、先端カバー60が装着される。先端部5および先端カバー60の構成の詳細は後述する。
【0014】
湾曲部6は、操作部3に設けられた湾曲操作装置11の上下湾曲ノブ11aの回動に応じて上方向又は下方向に湾曲し、左右湾曲ノブ11bの回動に応じて左方向又は右方向に湾曲する。
【0015】
挿入部2内には、起上台操作ワイヤ18(図1には不図示)が挿通されている。起上台操作ワイヤ18は、起上台操作レバー14の揺動に応じて、長手方向に進退移動する。すなわち、起上台操作レバー14は、挿入部2内に挿通された起上台操作ワイヤ18を押し引きする装置を、使用者が操作するための操作部材である。起上台操作ワイヤ18の先端は、先端部5に設けられた後述する可動部材51(図1には不図示)に接続されている。
【0016】
図2は、先端部5の斜視図である。図2に示すように、先端部5には、先端カバー60が装着される。先端カバー60は、先端部5の所定の外表面を覆う鞘状の部材であり、先端部5に着脱可能である。図3は、先端カバー60と先端部5とを分離した状態で示す斜視図である。図4は、先端カバー60が装着されていない状態の先端部5の上面を示す図である。また、図5は、図4のV-V断面図である。図6は、図4のVI-VI断面図である。図7は、先端部材20の分解斜視図である。図8は、蓋部材23を取り外した状態の先端部材20の右側面を示す図である。
【0017】
先端カバー60は、本実施形態では一例として、ポリエチレンまたはポリプロピレン等の樹脂のうち、ゴム等に比べて弾性が低く、塑性変形や破断しやすい樹脂により形成される。本実施形態の先端カバー60は、先端部5に装着された後に当該先端部5から取り外される際に不可逆な変形や破断が生じるようになっており、再使用できないようになっている。図3においては、先端部5に一度も装着されたことのない状態(未使用状態)の先端カバー60を示している。
【0018】
先端部5の構成について説明する。なお、以下の説明において、細長な挿入部2の長手方向に沿う軸を長手軸2aと称する。また、長手軸2aに沿って挿入部2の先端側に向かう方向を先端方向Aと称し、先端方向Aの反対の方向を基端方向Bと称する。また、長手軸2aに直交する平面上において互いに直交する2つの直線軸をX軸およびY軸と定義する。そして、X軸に沿って一方の側に向かう方向を右方向Rと称し、右方向Rの反対方向を左方向Lと称する。また、Y軸に沿って一方の側に向かう方向を上方向Uと称し、上方向Uの反対方向を下方向Dと称する。X軸およびY軸は、湾曲部6の湾曲方向と略平行である。本実施形態では一例として、長手軸2aに沿って基端側から先端側に向かって見た場合であって、X軸を水平とした場合において、右側が右方向Rであり上側が上方向Uであるとする。
【0019】
図3に示すように、先端部5は、先端部材20と、絶縁部20jと、を備える。先端部材20は、湾曲部6の先端に固定される基部20aと、基部20aから先端方向Aに向かって突出する一対の腕部である第1腕部20bおよび第2腕部20cと、第1腕部20bおよび第2腕部20cの間に形成された空間である起上台収容空間20dと、を有している。基部20aの外形は略柱状である。
【0020】
絶縁部20jは、基部20aの外周を覆う環状の部材である。絶縁部20jは電気絶縁性を有する樹脂またはセラミック製である。
【0021】
先端部材20の第1腕部20bおよび第2腕部20cは、間に形成される空間である起上台収容空間20dが、上方向U、下方向Dおよび先端方向Aの三方に向かって開放されるように配置されている。すなわち、第1腕部20bおよび第2腕部20cは、起上台収容空間20dを間に挟んでX軸に沿う方向に配列されている。本実施形態では一例として、第1腕部20bが起上台収容空間20dの左方向L側に配置されており、第2腕部20cが起上台収容空間20dの右方向R側に配置されている。
【0022】
第1腕部20bの外周面のうちの上方向Uに面する上面には、照明レンズ41、撮像装置42および洗浄ノズル43が配設されている。照明レンズ41は撮像装置42の被写体に向かって照明光を出射するためのものである。
【0023】
図5に示すように、第1腕部20bの内部には、撮像装置収容室20eが形成されている。撮像装置収容室20e内には、光ファイバケーブル41aの先端部および撮像装置42が配設される。光ファイバケーブル41aは、挿入部2内に挿通されており、発光装置から出射された照明光を照明レンズ41まで導く。
【0024】
撮像装置42の視野は、概ね上方向Uを中心としている。すなわち、撮像装置42は、挿入部2の側方を視野に入れている。洗浄ノズル43は、照明レンズ41および撮像装置42に向かって流体を噴出する部位である。
【0025】
第2腕部20c内には、可動部材51が配設される収容室22が設けられている。可動部材51は、起上台操作ワイヤ18の動きを起上台50に伝える部材である。
【0026】
また図5に示すように、第2腕部20cには、可動部材51に固定された軸部51aを回動可能に支持する軸受28が設けられている。軸部51aの回動軸はX軸に略平行である。軸部51aは、収容室22から起上台収容空間20dまで貫通している。
【0027】
図8に示すように、可動部材51は、収容室22内において、軸部51aに直交する方向に延出するレバー51bを備える。収容室22は、貫通孔21dを介して湾曲部6内と連通している。貫通孔21dは、収容室22内から基端方向Bに向かって基部20aを貫通している。貫通孔21d内には、起上台操作ワイヤ18が挿通されている。レバー51bには、軸部51aから所定の距離だけ離れた位置において、起上台操作ワイヤ18の先端が接続されている。
【0028】
前述のように、起上台操作ワイヤ18は、起上台操作レバー14の揺動に応じて、長手方向に進退移動する。可動部材51は、起上台操作ワイヤ18の進退移動に伴い、回動軸周りに回動する。
【0029】
軸部51aの起上台収容空間20dに突出した部分には、起上台50が固定されている。図6に示すように、起上台50は、可動部材51の回動に伴い、起上台収容空間20d内において回動する。
【0030】
起上台50は、軸部51aから一方向に延出する舌状の部材である。起上台収容空間20d内において、起上台50の基端方向B側には、処置具チャンネルチューブ17が開口している。起上台50の揺動に伴い、処置具チャンネルチューブ17から突出する処置具の角度が変化する。
【0031】
図3に示すように、先端カバー60は、先端方向A側が閉じており基端方向B側が開口している鞘状の部材である。先端カバー60の基端方向B側に設けられた開口を、挿入口60dと称する。先端カバー60を先端部5に装着する際には、挿入口60dを経由して先端カバー60内に先端部5が挿入される。
【0032】
先端カバー60には、先端部5に装着された状態において、起上台収容空間20dを上方向Uのみに向かって露呈させる開口部60aを有する。また、先端カバー60が先端部材20に装着されている状態において、照明レンズ41、撮像装置42および洗浄ノズル43も、開口部60aを介して上方向Uに向かって露出する。
【0033】
先端カバー60の外表面において、開口部60aは、挿入口60dと接続していない。よって、先端カバー60の基端60bには、長手軸2a周りに全周が環状に繋がった環状部60eが形成されている。先端カバー60が先端部材20に装着されている状態では、環状部60eが、絶縁部20jの外周に嵌合する。
【0034】
次に、先端部材20の第2腕部20cに設けられた収容室22の構成について説明する。図9は、図4のIX-IX断面図である。図10は、図9において円Cにより囲んだ箇所の拡大図である。
【0035】
図4図5および図7に示すように、第2腕部20cは、先端部材20と一体である基台部21と、基台部21に固定用樹脂26により接着固定されている蓋部材23と、によって構成されている。本実施形態では、蓋部材23は、基台部21の右側面(図4中の右方向R側)に固定されている。そして収容室22は、基台部21に形成された凹部21aの内面と、凹部21aを覆う蓋部材23の内面とによって囲まれた空間である。
【0036】
より詳細に、基台部21は、凹部21a、開口形成面21bおよび壁面部21cを備える。凹部21aは、基台部21の表面のうちの、開口形成面21b内において開口している。すなわち、開口形成面21bは、凹部21aの開口の周囲を囲うように形成された面である。
【0037】
開口形成面21bの形状は特に限定されるものではなく、例えば単一の平面により構成されていてもよいし、複数の平面により構成されていてもよいし、曲面により構成されていてもよい。
【0038】
本実施形態では一例として、図5および図9に示すように、開口形成面21bは、長手軸2aに略平行であって互いに交差する角度で配置された一対の平面21b1および21b2を含む。一対の平面21b1および21b2は、両者の交線が外側に向かって凸となる稜線となるように、柱状である基台部21の表面において異なる方向に面している。
【0039】
この一対の平面21b1および21b2を含む開口形成面21bは、長手軸2aに直交する断面において山状に屈曲した形状となる。
【0040】
壁面部21cは、開口形成面21bから基台部21の外側に向かって立設されている。壁面部21cについては後述する。
【0041】
蓋部材23は、板状の部材であり、当接面23bを備える。当接面23bは、開口形成面21bに当接する面である。また、当接面23bは、凹部21aの開口よりも大きく、凹部21aの開口の周囲全体にわたって開口形成面21bと当接する。したがって、当接面23bが開口形成面21bに当接した状態では、凹部21aの開口は、蓋部材23によって閉塞される。
【0042】
当接面23bは、凹部21aを閉塞するため、開口形成面21bに密着する形状である。具体的に本実施形態では、開口形成面21bが長手軸2aに平行な断面において山状に屈曲した形状であることから、当接面23bは開口形成面21bの屈曲に合わせて谷状に屈曲した形状を有している。すなわち、当接面23bは、開口形成面21bの一対の平面21b1および21b2に平行となる一対の平面23b1および23b2を含む。
【0043】
このように、基台部21側の開口形成面21bが山形状であり、蓋部材23側の当接面23bが谷形状であることから、開口形成面21bに当接面23bを当接させることにより、蓋部材23の基台部21に対する長手軸2a周りの周方向の位置決めがなされる。本実施形態では、蓋部材23の基台部21に対する長手軸2a周りの周方向の位置決めとは、概ねY軸に沿った上方向Uおよび下方向Dの位置決めとなる。
【0044】
基台部21に設けられた壁面部21cは、開口形成面21bから基台部21の外側に向かって立設されており、当接面23bが開口形成面21bに当接した状態の蓋部材23の側面23dの少なくとも一部に対向する面を有する。
【0045】
本実施形態の壁面部21cは、蓋部材23の周囲を、側面23dから所定の距離だけ離間して囲うように配設されている。すなわち本実施形態では、壁面部21cは、基台部21の表面に形成され、蓋部材23が内側に嵌り込む形状の凹部の側壁面であり、開口形成面21bは当該凹部の底面にあたる。
【0046】
壁面部21cの端面は、先端部材20の外面となる。蓋部材23と壁面部21cとの間に、硬化前の固定用樹脂26を流し込み、その後に固定用樹脂26を硬化させることにより、基台部21に蓋部材23が接着固定される。図4に示すように、蓋部材23と固定用樹脂26の外面は、先端部材20の外面と同一面となるよう形成されている。
【0047】
本実施形態の挿入装置100の先端部材20では、蓋部材23の周囲を壁面部21cで囲み、固定用樹脂26を蓋部材23の周囲全体を囲むように配置するため、蓋部材23の固定強度を向上させることができる。
【0048】
そして、本実施形態では、図7図9および図10に示すように、壁面部21cの一部に、当該壁面部21cを開口形成面21bまで切り欠いた切り欠き21eが形成されている。切り欠き21eは、蓋部材23の当接面23bに隣接する側面23dの一部を、基台部21の外面に露呈する。なお、図4図5に示されたように先端部材20が組み立てられている状態では、切り欠き21eは絶縁部20jにより覆われている。
【0049】
蓋部材23の側面23dは、基台部21に設けられた壁面部21cによって囲まれているが、切り欠き21eが形成された箇所においては、当該箇所に配置されている固定用樹脂26を取り除けば、先端部材20の外側から側面23dを見ることができるようになる。
【0050】
より詳細には、壁面部21cに設けられた切り欠き21eにおいては、蓋部材23と基台部21との境界が、基台部21の外面に露呈する。蓋部材23と基台部21との境界とは、開口形成面21bと当接面23bとが接する箇所である。
【0051】
このように、本実施形態の挿入装置では、切り欠き21eが形成された箇所において、当該箇所に配置されている固定用樹脂26を取り除いた後に、開口形成面21bと当接面23bとが接する箇所を、先端部材20の外側に露出させることができる。
【0052】
したがって、本実施形態の挿入装置100の先端部材20では、切り欠き21eが設けられた箇所に配置されている固定用樹脂26を取り除けば、開口形成面21bと当接面23bとが接する箇所に薄板状またはくさび状の工具を差し込むことができる。また、前述のように、本実施形態の先端部材20では、固定用樹脂26を蓋部材23の周囲全体を囲むように配置することにより、蓋部材23の固定強度を向上させることができる。よって、本実施形態の挿入装置100の先端部材20では、凹部21aを塞ぐ蓋部材23の固定強度を維持しつつ、蓋部材23の容易な取り外しが可能である。
【0053】
また、本実施形態では、図7図9および図10に示すように、壁面部21cに切り欠き21eが設けられた箇所の近傍において、蓋部材23の当接面23bと側面23dとが交差する角の一部に、当該角を切り欠いた開口部23eが形成されている。
【0054】
開口部23eは、開口形成面21bと鋭角に交差する角度で蓋部材23の角を切り欠いた、いわゆる面取り形状である。開口部23eは、蓋部材23と基台部21との境界に沿って凹部21aに向かって入り込むくさび状の空間を形成する。
【0055】
このような本実施形態では、壁面部21cに切り欠き21eが形成された箇所において、当該箇所に配置されている固定用樹脂26を取り除けば、蓋部材23の開口部23eが形成された箇所が基台部21の外面に露呈する。そして、本実施形態の先端部材20では、開口部23e内に薄板状またはくさび状の工具を差し込むことによって、蓋部材23を開口形成面21bから剥離させる方向の力を蓋部材23に容易に加えることができ、蓋部材23の容易な取り外しが可能である。
【0056】
なお、開口部23eは、基台部21の開口形成面21bの一部を彫り込むことにより、蓋部材23の当接面23bと側面23dとが交差する角の一部を開口形成面21bから離間させる溝であってもよい。
【0057】
本発明は、前述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う挿入装置の先端部材もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0058】
本出願は、2018年1月31日に日本国に出願された特願2018−015056号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものとする。
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