特許第6848114号(P6848114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6848114
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】熱供給制御システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20060101AFI20210315BHJP
   F24F 11/85 20180101ALI20210315BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20210315BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20210315BHJP
【FI】
   F24D3/00 P
   F24F11/85
   F24F5/00 101Z
   F24F11/46
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-137604(P2020-137604)
(22)【出願日】2020年8月17日
【審査請求日】2020年8月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 貴志
(72)【発明者】
【氏名】羽深 嘉宣
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 優理
【審査官】 堀川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−165242(JP,A)
【文献】 特開平07−158935(JP,A)
【文献】 特開2011−242001(JP,A)
【文献】 特開2009−030821(JP,A)
【文献】 特開2005−300007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00
F24D 11/00
F25B 1/00
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒搬送手段により熱媒が循環供給され、前記熱媒からの熱エネルギーを受け入れる部位として、熱交換器を介して熱エネルギーを受け入れる間接受入部と、前記熱媒から直接に熱エネルギーを受け入れる直接受入部とが混在する配管系に熱供給を行うための熱供給制御システムであって、
前記間接受入部に設けられた温度調整弁から得られる温度調整弁開度情報、及び前記直接受入部における前記熱媒の流路から得られる熱媒情報に基づき、前記熱媒搬送手段を駆動させる制御部を有し、
前記直接受入部での前記熱媒情報は、前記直接受入部に設けられた差圧調整弁から得られる差圧調整弁開度情報であり、
前記制御部は、前記温度調整弁開度情報及び前記差圧調整弁開度情報に基づいて、前記温度調整弁の開度及び前記差圧調整弁の開度の双方が許容範囲内に収まるように前記熱媒搬送手段を駆動させ
前記温度調整弁は、前記間接受入部での熱エネルギーの要求が増大すると開度が大きくなり、前記間接受入部での熱エネルギーの要求が減少すると開度が小さくなる弁であり、
前記差圧調整弁は、入口圧と出口圧との差圧が設定圧以上になったときに主弁が開かれ、差圧が設定圧まで引き下げられ、入口圧と出口圧との差圧が設定圧以下になると、前記主弁が絞られ、差圧が設定圧まで引き上げられて、入口圧と出口圧の差圧を一定に保持する弁であり、
前記温度調整弁の許容開度範囲の上閾値をImaxとし、下閾値をIminとすると共に、前記差圧調整弁の許容開度範囲の上閾値をDmaxとし、下閾値をDminとしたとき、
前記温度調整弁開度情報が前記上閾値Imax以上の前記温度調整弁、又は前記差圧調整弁開度情報が前記下閾値Dmin以下の前記差圧調整弁がある場合に、熱エネルギーが必要とされているので、前記制御部が前記熱媒搬送手段の出力を上げ、熱エネルギーの供給を増加させることで、前記温度調整弁については開度を小さくさせ、前記差圧調整弁については開度を大きくさせるようにし、
前記温度調整弁開度情報が前記下閾値Imin以下の前記温度調整弁、又は前記差圧調整弁開度情報が前記上閾値Dmax以上の前記差圧調整弁がある場合に、必要とされる熱エネルギーが少ないので、前記制御部が前記熱媒搬送手段の出力を下げ、熱エネルギーの供給を低減させることで、前記温度調整弁については開度を大きくさせ、前記差圧調整弁については開度を小さくさせるようにする熱供給制御システム。
【請求項2】
前記温度調整弁の開度について、許容開度範囲内の前記上閾値Imaxに近い上範囲Iupを設定すると共に、前記差圧調整弁の開度について、許容開度範囲内の前記下閾値Dminに近い下範囲Ddwを設定したとき、
前記温度調整弁開度情報が前記上範囲Iupにある前記温度調整弁、又は前記差圧調整弁開度情報が下範囲Ddwにある前記差圧調整弁が存在するように、前記制御部が前記熱媒搬送手段の出力を制御する請求項に記載の熱供給制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーネットワークに用いられる熱供給制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱源機により生成された冷温水を複数の熱交換器に送水し、熱交換器を介して冷温水の熱エネルギーを複数の熱利用機器に供給する送水制御システムが開示されている(特許文献1参照)。この文献には、熱交換器へ送水する通路の入口温度と出口温度の温度差と、目標温度差との差に基づいて流量調整弁の開度を調整し、開度が所定値に達している流量調整弁があるときには、ポンプの回転数を増加させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−242001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来例には、熱エネルギーを受け入れる部位として、熱交換器を介して熱エネルギーを受け入れる間接受入部のみが配管系内に設けられている場合が想定されており、間接受入部と、熱交換器を介さずに熱媒から直接に熱エネルギーを受け入れる直接受入部とが混在する場合が想定されていない。
【0005】
本発明は、配管系内に熱エネルギーを受け入れる部位として間接受入部と直接受入部とが混在する場合において、搬送動力を適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る熱供給制御システムは、熱媒搬送手段により熱媒が循環供給され、前記熱媒からの熱エネルギーを受け入れる部位として、熱交換器を介して熱エネルギーを受け入れる間接受入部と、前記熱媒から直接に熱エネルギーを受け入れる直接受入部とが混在する配管系に熱供給を行うための熱供給制御システムであって、前記間接受入部に設けられた温度調整弁から得られる温度調整弁開度情報、及び前記直接受入部における前記熱媒の流路から得られる熱媒情報に基づき、前記熱媒搬送手段を駆動させる制御部を有し、前記直接受入部での前記熱媒情報は、前記直接受入部に設けられた差圧調整弁から得られる差圧調整弁開度情報であり、前記制御部は、前記温度調整弁開度情報及び前記差圧調整弁開度情報に基づいて、前記温度調整弁の開度及び前記差圧調整弁の開度の双方が許容範囲内に収まるように前記熱媒搬送手段を駆動させる
【0007】
この熱供給制御システムでは、熱エネルギーを受け入れる部位として間接受入部と直接受入部とが混在する配管系において、間接受入部の温度調整弁から得られる温度調整弁開度情報、及び直接受入部における熱媒の流路から得られる熱媒情報に基づき、制御部が熱媒搬送手段を駆動させる。これにより、熱需要に対応しつつ搬送動力を適切に制御することができる。
【0009】
また、この熱供給制御システムでは、制御部が、温度調整弁開度情報及び差圧調整弁開度情報に基づいて、温度調整弁の開度及び差圧調整弁の開度の双方が許容範囲内に収まるように熱媒搬送手段を駆動させる。これにより、熱需要に対応しつつ搬送動力を適切に制御することができる。
【0010】
の態様は、第の態様に係る熱供給制御システムにおいて、前記温度調整弁の許容開度範囲の上閾値をImaxとし、下閾値をIminとすると共に、前記差圧調整弁の許容開度範囲の上閾値をDmaxとし、下閾値をDminとしたとき、前記温度調整弁開度情報が前記上閾値Imax以上の前記温度調整弁、又は前記差圧調整弁開度情報が前記下閾値Dmin以下の前記差圧調整弁がある場合に、前記制御部が前記熱媒搬送手段の出力を上げ、前記温度調整弁開度情報が前記下閾値Imin以下の前記温度調整弁、又は前記差圧調整弁開度情報が前記上閾値Dmax以上の前記差圧調整弁がある場合に、前記制御部が前記熱媒搬送手段の出力を下げる。
【0011】
この熱供給制御システムでは、温度調整弁開度情報が上閾値Imax以上の温度調整弁、又は差圧調整弁開度情報が下閾値Dmin以下の差圧調整弁がある場合に、制御部が熱媒搬送手段の出力を上げる。一方、温度調整弁開度情報が下閾値Imin以下の温度調整弁、又は差圧調整弁開度情報が上閾値Dmax以上の差圧調整弁がある場合に、制御部が熱媒搬送手段の出力を下げる。
【0012】
の態様は、第の態様に係る熱供給制御システムにおいて、前記温度調整弁の開度について、許容開度範囲内の前記上閾値Imaxに近い上範囲Iupを設定すると共に、前記差圧調整弁の開度について、許容開度範囲内の前記下閾値Dminに近い下範囲Ddwを設定したとき、前記温度調整弁開度情報が前記上範囲Iupにある前記温度調整弁、又は前記差圧調整弁開度情報が下範囲Ddwにある前記差圧調整弁が存在するように、前記制御部が前記熱媒搬送手段の出力を制御する。
【0013】
この熱供給制御システムでは、制御部が、温度調整弁開度情報が許容開度範囲内の上閾値Imaxに近い上範囲Iupにある温度調整弁、又は差圧調整弁開度情報が許容開度範囲内の下閾値Dminに近い下範囲Ddwにある差圧調整弁が存在するように、熱媒搬送手段の出力を制御する。これにより、温度調整弁開度情報の許容開度範囲内、又は差圧調整弁開度情報の許容開度範囲内において、搬送動力を低減することができる。なお、温度調整弁開度情報が上範囲Iupにあり、かつ差圧調整弁開度情報が下範囲Ddwにあってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配管系内に熱エネルギーを受け入れる部位として間接受入部と直接受入部とが混在する場合において、搬送動力を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る熱供給制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る熱供給制御システムにおける制御の流れの一例を示すフロー図である。
図3】温度調整弁の許容開度範囲、その範囲内の上閾値Imaxに近い上範囲Iup、差圧調整弁の許容開度範囲、その範囲内の下閾値Dminに近い下範囲Ddwを示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。
【0017】
(配管系)
図1において、配管系12には、熱媒搬送手段の一例としてのポンプ14により、配管18を通じて熱媒(図示せず)が循環供給される。配管系12には、例えば、熱媒を冷却する冷凍設備24と、冷却された熱媒を需要家31,32,33へ供給するためのポンプ14と、ポンプ14を駆動すると共にポンプ14の吐出量を変化させるためのインバータ28が設けられている。熱媒の温度は、冷凍設備24により例えば一定とされる。また、配管系12には、熱媒からの熱エネルギーを受け入れる部位として、熱交換器16A,16Bを介して熱エネルギーを受け入れる間接受入部22と、熱交換器を介さずに熱媒から直接に熱エネルギーを受け入れる直接受入部20とが混在している。
【0018】
間接受入部22及び直接受入部20は、各々の需要家に設けられている。一例として、需要家31には直接受入部20が設けられ、需要家32には間接受入部22が設けられ、需要家33には直接受入部20及び間接受入部22が設けられている。直接受入部20が設けられていることを、直接受入方式が採用されていると言い換えることもできる。同様に、間接受入部22が設けられていることを、間接受入方式が採用されていると言い換えることもできる。直接受入部20及び間接受入部22については、公知の構造を適用することができる。
【0019】
需要家31の直接受入部20では、配管18に空調負荷41が直接接続されており、配管18を通る熱媒の一部が空調負荷41に供給され、該空調負荷41を出入りするようになっている。つまり、空調負荷41も熱媒の循環路の一部となっている。また、需要家31の直接受入部20には、差圧調整弁46Aが設けられている。この差圧調整弁46Aは、配管18における空調負荷41の接続位置の上流側と下流側とをバイパス接続するように設けられている。需要家33の直接受入部20においても、同様に配管18に空調負荷43が直接接続されると共に、差圧調整弁46Bが設けられている。
【0020】
差圧調整弁46Aを例に挙げると、差圧調整弁46Aの入口は空調負荷41の接続位置の上流側に位置し、差圧調整弁46Aの出口は空調負荷41の接続位置の下流側に位置している。入口圧と出口圧との差圧が設定圧以上になったときに主弁が開かれ、差圧が設定圧まで引き下げられる。このとき、空調負荷41へ供給される熱媒の流量が減少する。逆に入口圧と出口圧との差圧が設定圧以下になると、主弁が絞られ、差圧が設定圧まで引き上げられる。このとき、空調負荷41へ供給される熱媒の流量が増加する。このように、差圧調整弁46Aは、入口圧と出口圧の差圧を一定に保持可能に構成されており、これによって空調負荷41へ供給される熱媒の流量を調整する。
【0021】
需要家32の間接受入部22では、空調負荷42側の配管34に熱媒が循環するように構成され、配管18の熱媒と配管34の熱媒の間での熱エネルギーの移動が熱交換器16Aで行われるようになっている。つまり、配管18と配管34が互いに独立した循環系を構成し、配管18の熱媒が空調負荷42を通らないようになっている。また、需要家32の間接受入部22には、温度調整弁40Aが設けられている。この温度調整弁40Aは、配管18に設けられている。需要家33の間接受入部22においても、空調負荷44側の配管36に熱媒が循環するように構成され、配管18の熱媒と配管36の熱媒の間での熱エネルギーの移動が熱交換器16Bで行われるようになっている。需要家33の間接受入部22にも、温度調整弁40Bが設けられている。この温度調整弁40Bは、配管18に設けられている。温度調整弁40Aの開度を大きくすると、空調負荷42へ供給される熱媒の流量が増加する。同様に、温度調整弁40Bの開度を大きくすると、空調負荷44へ供給される熱媒の流量が増加する。
【0022】
なお、空調負荷41,42,43,44は、空調機等の熱利用機器である。
【0023】
(熱供給制御システム)
本実施形態に係る熱供給制御システム10は、上記配管系12を通じて需要家31,32,33へ熱供給を行うためのシステムであり、制御部30を有している。制御部30は、間接受入部22に設けられた温度調整弁40A,40Bから得られる温度調整弁開度情報、及び直接受入部20における熱媒の流路から得られる熱媒情報に基づき、ポンプ14を駆動させる、例えば電子制御ユニットである。この制御部30は、ポンプ14の搬送動力の出力を決定し、インバータ28を介してポンプ14を駆動する。インバータ28を用いることにより、ポンプ14のモータの回転速度を変化させ、ポンプ14の吐出量を変化させることができるようになっている。
【0024】
直接受入部20での熱媒情報は、例えば、直接受入部20に設けられた差圧調整弁46A,46Bから得られる差圧調整弁開度情報である。この場合、制御部30が、温度調整弁開度情報及び差圧調整弁開度情報に基づいて、温度調整弁40A,40Bの開度及び差圧調整弁46A,46Bの開度の双方が許容範囲内に収まるようにポンプ14を駆動させてもよい。
【0025】
具体的な例を挙げると、図3において、温度調整弁40A,40B(図1)の許容開度範囲の上閾値をImaxとし、下閾値をIminとする(図3(A))と共に、差圧調整弁46A,46B(図1)の許容開度範囲の上閾値をDmaxとし、下閾値をDminとする(図3(B))。そして、温度調整弁開度情報が上閾値Imax以上の温度調整弁40A,40B、又は差圧調整弁開度情報が下閾値Dmin以下の差圧調整弁46A,46Bがある場合に、図1に示される制御部30がポンプ14の出力を上げるようにする。逆に、温度調整弁開度情報が下閾値Imin以下の温度調整弁40A,40B、又は差圧調整弁開度情報が上閾値Dmax以上の差圧調整弁46A,46Bがある場合に、制御部30がポンプ14の出力を下げるようにする。
【0026】
図1において、例えば温度調整弁40Aからの温度調整弁開度情報が上閾値Imax以上である場合、空調負荷42が多くの熱エネルギーを必要としている。したがって、ポンプ14の出力を上げることで、熱エネルギーの供給を増加させることができるので、その分温度調整弁40Aの開度を小さくすることができる。なお、図3の○印は、各調整弁の開度を示している。
【0027】
また、例えば差圧調整弁46Aからの差圧調整弁開度情報が下閾値Dmin以下である場合、差圧調整弁46Aの入口圧と出口圧の差圧が所定の圧力より小さくなっている。このとき、空調負荷41は多くの熱エネルギーを必要としている。したがって、ポンプ14の出力を上げることで、差圧を大きくし、差圧調整弁46Aの開度を大きくすることができる。
【0028】
次に、例えば温度調整弁40Aからの温度調整弁開度情報が上閾値Imin以下である場合、空調負荷42が必要とする熱エネルギーは少ない。したがって、ポンプ14の出力を下げることで、熱エネルギーの供給を低減させることができるので、その分温度調整弁40Aの開度を大きくすることができる。
【0029】
また、例えば差圧調整弁46Aからの差圧調整弁開度情報が上閾値Dmax以上である場合、差圧調整弁46Aの入口圧と出口圧の差圧が所定の圧力より大きくなっている。このとき、空調負荷41が必要とする熱エネルギーは少ない。したがって、ポンプ14の出力を下げることで、差圧を小さくし、差圧調整弁46Aの開度を小さくすることができる。
【0030】
このようにすることで、温度調整弁40A,40Bの開度を、その許容開度範囲の上閾値Imaxと下閾値Iminの間に収めることが可能となり、かつ差圧調整弁46A,46Bの開度を、その許容開度範囲の上閾値Dmaxと下閾値Dminの間に収めることが可能となっている。
【0031】
更に、省エネ性を高めるために精度を上げることを考慮し、一定範囲内でポンプ14の出力を制御し、温度調整弁40A,40Bの開度について、許容開度範囲内の上閾値Imaxに近い上範囲Iupを設定すると共に、差圧調整弁46A,46Bの開度について、許容開度範囲内の下閾値Dminに近い下範囲Ddwを設定して、ポンプ14の出力を制御してもよい。制御部30は、温度調整弁開度情報が上範囲Iupにある温度調整弁40A,40B、又は差圧調整弁開度情報が下範囲Ddwにある差圧調整弁46A,46Bが存在するように、ポンプ14の出力を制御する。なお、温度調整弁開度情報が上範囲Iupにあり、かつ差圧調整弁開度情報が下範囲Ddwにあってもよい。
【0032】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1において、本実施形態に係る熱供給制御システム10は、熱エネルギーを受け入れる部位として間接受入部22と直接受入部20とが混在する配管系12において、間接受入部22の温度調整弁40A,40Bから得られる温度調整弁開度情報、及び直接受入部20における熱媒の流路から得られる熱媒情報に基づき、制御部30がポンプ14を駆動させる。具体的には、制御部30が、温度調整弁開度情報及び差圧調整弁開度情報に基づいて、温度調整弁40A,40Bの開度及び差圧調整弁46A,46Bの開度の双方が許容範囲内に収まるようにポンプ14を駆動させる。
【0033】
制御の流れの一例を図2のフロー図にしたがって説明すると、ステップS1において、各温度調整弁の開度情報、具体的には、温度調整弁開度情報及び差圧調整弁開度情報が収集される。収集されたデータを基に、制御部30(図1)が各種判定を行い、ポンプ14(図1)の出力を制御する。まず、ステップS2において、温度調整弁開度情報が上閾値Imax以上である温度調整弁40A,40Bがあるかどうかが判定される。この判定がYESの場合には、ステップS8においてポンプ14(図1)の出力が上げられる。ステップS2の判定がNOの場合にはステップS3へ進む。
【0034】
ステップS3において、差圧調整弁開度情報が下閾値Dmin以下の差圧調整弁46A,46Bがあるかどうかが判定される。この判定がYESの場合には、ステップS8においてポンプ14(図1)の出力が上げられる。ステップS3の判定がNOの場合にはステップS4へ進む。
【0035】
ステップS4において、温度調整弁開度情報が上閾値Imin以下の温度調整弁40A,40B(図1)があるかどうかが判定される。この判定がYESの場合には、ステップS9においてポンプ14(図1)の出力が下げられる。ステップS4の判定がNOの場合にはステップS5へ進む。
【0036】
ステップS5において、差圧調整弁開度情報が上閾値Dmax以上の差圧調整弁46A,46Bがあるかどうかが判定される。この判定がYESの場合には、ステップS9においてポンプ14(図1)の出力が下げられる。ステップS5の判定がNOの場合にはステップS6へ進む。
【0037】
ステップS6において、温度調整弁開度情報が上範囲Iupにある温度調整弁40A,40B(図1)、又は差圧調整弁開度情報が下範囲Ddwにある差圧調整弁46A,46B(図1)があるかどうかが判定される。この判定がNOの場合には、ステップS9においてポンプ14(図1)の出力が下げられる。ステップS6の判定がYESの場合にはステップS7へ進む。
【0038】
ステップS7において、システム停止指示があるかどうかが判定される。この判定がYESの場合には、制御が終了する。この判定がNOの場合には、ステップS1に戻る。
【0039】
本実施形態では、図3に示されるように、温度調整弁開度情報が上閾値Imax以上の温度調整弁40A,40B(図1)、又は差圧調整弁開度情報が下閾値Dmin以下の差圧調整弁46A,46B(図1)がある場合に、制御部30がポンプ14の出力を上げる。一方、温度調整弁開度情報が下閾値Imin以下の温度調整弁40A,40B、又は差圧調整弁開度情報が上閾値Dmax以上の差圧調整弁46A,46Bがある場合に、制御部30がポンプ14の出力を下げる。また、制御部30が、温度調整弁開度情報が許容開度範囲内の上閾値Imaxに近い上範囲Iupにある温度調整弁40A,40B、又は差圧調整弁開度情報が許容開度範囲内の下閾値Dminに近い下範囲Ddwにある差圧調整弁46A,46Bが存在するように、ポンプ14の出力を制御する。これにより、温度調整弁開度情報の許容開度範囲内、かつ差圧調整弁開度情報の許容開度範囲内において、搬送動力を低減することができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、配管系12内に熱エネルギーを受け入れる部位として間接受入部22と直接受入部20とが混在する場合において、熱需要に対応しつつ搬送動力を適切に制御することができる。
【0041】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0042】
熱媒の流路から得られる熱媒情報として、差圧調整弁46A,46Bから得られる差圧調整弁開度情報を挙げたが、熱媒情報はこれに限られない。例えば、末端の空調負荷の前後差圧、差圧調整弁におけるバイパス流量、末端の空調負荷におけるバルブ開度情報等を熱媒情報として用いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 熱供給システム
12 配管系
14 ポンプ(熱媒搬送手段)
16A 熱交換器
16B 熱交換器
20 直接受入部
22 間接受入部
30 制御部
40A 温度調整弁
40B 温度調整弁
46A 差圧調整弁
46B 差圧調整弁
【要約】
【課題】配管系内に熱エネルギーを受け入れる部位として間接受入部と直接受入部とが混在する場合において、搬送動力を適切に制御する。
【解決手段】熱供給制御システム10は、ポンプ14(熱媒搬送手段)により熱媒が循環供給され、熱媒からの熱エネルギーを受け入れる部位として、熱交換器16A,16Bを介して熱エネルギーを受け入れる間接受入部22と、熱媒から直接に熱エネルギーを受け入れる直接受入部20とが混在する配管系12に熱供給を行うための熱供給制御システムであって、間接受入部22に設けられた温度調整弁40A,40Bから得られる温度調整弁開度情報、及び直接受入部20における熱媒の流路から得られる熱媒情報に基づき、ポンプ14を駆動させる制御部30を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3