特許第6848125号(P6848125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許6848125同期された高周波モジュールを有するFMCWレーダセンサ
<>
  • 特許6848125-同期された高周波モジュールを有するFMCWレーダセンサ 図000002
  • 特許6848125-同期された高周波モジュールを有するFMCWレーダセンサ 図000003
  • 特許6848125-同期された高周波モジュールを有するFMCWレーダセンサ 図000004
  • 特許6848125-同期された高周波モジュールを有するFMCWレーダセンサ 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848125
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】同期された高周波モジュールを有するFMCWレーダセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/34 20060101AFI20210315BHJP
   G01S 13/46 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   G01S13/34
   G01S13/46
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-533346(P2020-533346)
(86)(22)【出願日】2018年7月12日
(65)【公表番号】特表2020-532748(P2020-532748A)
(43)【公表日】2020年11月12日
(86)【国際出願番号】EP2018068870
(87)【国際公開番号】WO2019048110
(87)【国際公開日】20190314
【審査請求日】2020年4月8日
(31)【優先権主張番号】102017215561.2
(32)【優先日】2017年9月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,マルセル
(72)【発明者】
【氏名】バウル,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ショール,ミハエル
【審査官】 東 治企
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−045072(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/118621(WO,A1)
【文献】 特開2003−156480(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/158281(WO,A1)
【文献】 Matthew Ash et al.,"A New Multistatic FMCW Radar Architecture by Over-the-Air Deramping",IEEE Sensors Journal,IEEE,2015年12月,Vol.15, No.12,pp.7045-7053,DOI: 10.1109/JSEN.2015.2466477
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00−7/42
G01S 13/00−13/95
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期信号(sync)によって互いに同期された複数の高周波モジュール(10、12)を有するFMCWレーダセンサであって、空間的に分離された少なくとも2つの高周波モジュール(10、12)を含み、該高周波モジュールが、周波数を変調された送信信号(TX)を送信するための送信部(16)及び/又はレーダエコー(E)を受信するための受信部(20)をそれぞれ有し、
それぞれの受信部(20)に、受信信号(RX)を送信信号(TX)の一部と混合することによって中間周波数信号(Z1、Z2)を生成するミキサ(22)、及び評価ユニット(24、34)が割り当てられており、該評価ユニット(24、34)が、測定期間(T)にわたって中間周波数信号(Z1、Z2)を時間(t)の関数として記録し、このようにして得られた時間信号(S1、S2)がフーリエ変換されるように構成されているFMCWレーダセンサにおいて、
少なくとも1つの評価ユニット(34)が、受信部(20)間の同期信号(sync)の所要時間差を補償するために、フーリエ変換の前に複素数値の窓関数(V)によって時間信号(Sl)に窓をかけるように構成されていることを特徴とするFMCWレーダセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダセンサにおいて、
少なくとも2つの高周波モジュール(10、12)が送信部(16)と受信部(20)とを有し、付属の評価ユニット(24、34)がそれぞれ1つの窓モジュール(36)を有し、該窓モジュールが、複素数値の窓関数と純粋に実数の窓関数との間で切換可能であるレーダセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーダセンサにおいて、
窓をかけることが、時間に依存した窓関数(V)を時間信号(S2)に乗じることであり、前記窓関数が、時間に依存して可変の値を有する実数係数の他に、
exp(−j・w・(t−x))
の形式の複素位相係数を含み、
tは時間であり、wは、高周波モジュール(10、12)の間で同期信号(sync)が進む信号経路dに比例しており、xは、間隔[0,T]の任意の値であり、Tは、測定周期の持続時間であるレーダセンサ。
【請求項4】
請求項3に記載のレーダセンサにおいて、
送信部(16)が、測定周期Tの持続時間中に送信信号(TX)の周波数を周波数スイングBによってランプ状に変調し、複素位相係数が、
exp(−j・2・pi・(1/T)・(t−x)・b)
によって求められ、
b=d・2B/cであり、cが同期信号の伝搬速度であり、dが一方の高周波モジュールから他方の高周波モジュールへの同期信号(cync)の信号経路の長さであるレーダセンサ。
【請求項5】
請求項又はに記載のレーダセンサにおいて、
x=T/2であるレーダセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期信号によって互いに同期された複数の高周波モジュールを有するFMCWレーダセンサであって、空間的に分離された少なくとも2つの高周波モジュールを含み、これらの高周波モジュールが、周波数を変調された送信信号を送信するための送信部及び/又はレーダエコーを受信するための受信部をそれぞれ有し、受信した信号を送信信号の一部と混合することによって中間周波数信号を生成するミキサ、及び評価ユニットがそれぞれの受信部に割り当てられており、評価ユニットは、測定期間にわたって中間周波数信号を時間の関数として記録し、このようにして得られた時間信号がフーリエ変換されるように構成されているFMCWレーダセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のFMCWレーダセンサでは、送信信号の周波数はランプ状に変調される。受信部では、受信信号と送信信号とを混合することによって、実際に送信された信号と受信された信号との間の周波数差に依存した周波数を有する中間周波数信号が得られる。ランプ状の変調に基づいて、この周波数差は、センサから物体への、及びセンサへ戻るレーダ波の所要時間に依存する。フーリエ変換によって中間周波数信号のスペクトルが得られ、このスペクトルでは、位置特定されたそれぞれの物体は、物体の距離に依存する周波数においてピークとして現れる。ドップラー効果に基づいて、ピークの周波数位置は物体の相対速度にも依存する。距離に依存する成分と速度に依存する成分とを互いに分離するために、異なる勾配を有する連続した複数の周波数ランプを作ることが知られている。距離に依存した周波数成分のみがランプ勾配に依存しているので、異なるランプで得られた周波数位置を比較することによって物体の距離及び相対速度を決定することができる。
【0003】
制限された長さの測定期間しか時間信号を記録することができないという状況により、フーリエ変換時には、信号の解釈を困難にする二次最大値としてアーチファクトが生じる。適切な窓関数を使用してフーリエ変換の前に時間信号に「窓をかける」ことによって、例えば、時間信号に、同様に時間に依存した窓関数を乗じることによって、このような2次最大値を大幅に抑制することが知られている。窓関数、例えば、いわゆる「ハミング窓」は、主に、測定期間の開始及び終了時における時間信号の急激な遷移を平滑化し、これにより二次最大値を低減する効果を有する。
【0004】
この形式のレーダセンサは、既に自動車の運転者支援システムにおいてセンサ構成要素として広く使用されている。高度自律運転に向けて運転者支援システムがさらに開発される過程でレーダセンサの性能にはますます高い要求が課されている。これらの要求を満たすための比較的安価な方法は、より高性能の新しい部品を開発する代わりに、同じタイプの複数の部品を互いに並行して動作させることである。このことは、既存の大量生産された構成要素を使用することを可能にするが、複数の高周波モジュールが互いに正確に同期されることを前提とする。
【0005】
異なる高周波モジュールは、必然的に互いに対して所定の空間距離を有していなければならないので、十分に正確に同期させることは、一方のモジュールから他方のモジュールへの同期信号の不可避的な信号所要時間を考慮すると、困難であることが分かる。モジュールを対称的に配置することによって、又は迂回線によって、所要時間差を防止することが可能であるが、このことは、かなりの労力及びボード上の増大したスペースを必要とする。このことは、マスタとして同期信号を生成するモジュールが他のモジュール(スレーブ)とも同期することが望ましい場合に特に当てはまる。局所的に生成された同期信号は、マスタにおいて人為的に遅延させる必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式のレーダセンサにおいて、複数の高周波ユニットののより簡単な同期を可能にすることである。
【0007】
この課題は、本発明によれば、少なくとも1つの評価ユニットが、受信部間の同期信号の所要時間差を補償するために、フーリエ変換の前に複素数値の窓関数によって時間信号に窓をかけるように構成されていることによって解決される。
【0008】
本発明は、適切な複素数値の窓関数によって、フーリエ変換によって得られたスペクトルが周波数軸上で調整可能な量だけシフトさせることができるというフーリエ変換の特性を利用している。送信信号が1つのモジュールによって送信され、別のモジュールによって受信される場合、一方のモジュールから他方のモジュールへの同期信号の信号所要時間は、受信された信号が(同期信号と同期している)送信信号と混合されるときに周波数差をもたらし、この周波数差は、変更されたレーダ波の信号所要時間と同様に中間周波数信号のスペクトルに影響を及ぼし、物体距離の変化と見せかける。窓関数によって達成されるスペクトルのピークの周波数シフトは、物体距離の(見かけの)変化として解釈することもできる(相対速度が消失しない場合にはドップラー効果の影響を考慮する必要がない)ので、同期信号の信号所要時間は、同期信号のランレングスを個々のモジュールに適合させるための複雑な措置を必要とすることなしに、窓関数による適切な周波数シフトによって補償することができる。
【0009】
本発明の有利な実施形態及びさらなる構成が従属請求項に記載されている。
【0010】
一実施形態では、高周波モジュールのうちの1つはマスタとして動作し、1つ又は複数のさらなる高周波モジュールはスレーブとして動作する。マスタ及びスレーブはいずれもそれぞれ送信部及び受信部を有することができ、マスタ又はスレーブのうちの1つが送信信号を送信する、動作モード間で切り換えることが可能である。この場合、全ての高周波ユニットによって、すなわち、送信信号を送信したユニットによってもレーダエコーを受信することができる。同調エラーは、レーダエコーを受信したが、自身では送信しないモジュールにおいてそれぞれ補償することができる。
【0011】
本発明は、単一の高周波モジュールが、空間的に互いに分離された異なる高周波モジュールによって送信された信号を受信する構成(例えば、時間、符号、又は周波数分割多重方式で信号分離を行う)においても使用することができる。
【0012】
以下に図面を参照して例示的な実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるレーダセンサの主要構成要素を示すブロック図である。
図2】FMCWレーダにおける周波数変調を示す時間線図である。
図3図1に示したレーダセンサの異なる高周波モジュールで受信される時間信号の例を示す図である。
図4図3の時間信号のスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すレーダセンサは、構成が同じ2つの高周波モジュール10、12を有し、これらの高周波モジュールは、アンテナ装置14と、局部発振器18を有する送信部16と、ミキサ22を有する受信部20とをそれぞれ含む。アンテナ装置14はレーダ波を送受信する役割を果たし、したがって、送信部16及び受信部20の共通の構成要素である。図示の例では、高周波モジュール10はマスタとして機能し、高周波モジュール12はスレーブとして機能する。マスタは同期信号syncを生成し、この同期信号syncは、スレーブとして動作する高周波モジュール12(及び、必要に応じて、さらなるスレーブ)に送信される。高周波モジュール12(スレーブ)内の局部発振器18は、同期信号syncに同期したランプ状の変調方式で周波数変調された送信信号TXを生成し、この送信信号TX(図示の例ではミキサ22を介して)をアンテナ装置14に送信し、レーダ波RWを放射する。物体(図示しない)によって反射されたレーダエコーEは、高周波モジュール12内のアンテナ装置によって受信される。受信信号RXはミキサ22において送信信号TXの一部と混合され、これにより中間周波数信号Z1が生成され、この中間周波数信号は評価ユニット24に出力される。
【0015】
評価ユニット24は、時間信号モジュール28を有する前処理ステージ26を含み、この前処理ステージでは中間周波数信号Z1がデジタル化され、特定の測定期間にわたって時間の関数として記録される。このようにして、デジタル時間信号S1が形成され、評価ユニット24のフーリエ変換モジュール30に供給され、そこでフーリエ変換によってスペクトルF[S1]に変換される。スペクトルは、図1にもグラフで示されており、単一のピーク32を含み、このピークの周波数位置は、位置決めされた物体の距離を示す(簡略化のために、ここでは、物体の相対速度がゼロであり、したがってドップラーシフトがないと仮定されるべきである)。
【0016】
この例では、マスタとして機能する高周波モジュール10は、送信するためではなく、レーダエコーEを受信するためだけの役割を果す。高周波モジュール10の局部発信機18は、高周波モジュール12と同様に周波数変調された送信信号TXを生成し、変調方式は、高周波モジュール10内で局所的に生成される同期シグナルsyncと同期される。しかしながら、この場合、送信信号TXはアンテナ装置14に転送されず、ミキサ22において受信信号RXと混合されるだけであり、この場合にも完全に同期した場合には中間周波数信号Z1と同一であるはずの中間周波数信号Z2が得られる。
【0017】
中間周波数信号Z2は、この図では26′により示す前処理段階に至り、この前処理段階は、中間周波数信号Z2から生成された時間信号S2を窓関数Vによって窓をかける窓モジュール36が時間信号モジュール28の下流側に接続されていることによってのみ、前処理段階26と異なる。これにより、修正された時間信号S2_mが形成され、この時間信号はフーリエ変換モジュール30においてフーリエ変換される。このようにして得られたスペクトルF[S2_m]は、理想的には、高周波モジュール12で得られるスペクトルF[S1]と同一であることが望ましく、したがって、周波数位置がピーク32の周波数位置と一致するピーク38を示す。この条件下では、2つの(又は複数の)高周波モジュールにおいて得られたスペクトルは、レーダセンサのより高い性能を達成するために複合的な評価を受けることができる。例えば、信号対雑音比を改善するために、2つのスペクトルを加えることができる。
【0018】
しかしながら、2つの高周波ユニット10、12の間には不可避的に一定の空間距離が存在し、したがって同期信号syncはマスタからスレーブへ一定の信号経路dを進まなければならないことにより、複雑性が生じる。したがって、同期信号は、高周波モジュール12に到達した場合には信号所要時間d/c(cは同期信号の伝搬速度)だけ遅延されている。この遅延は、2つの高周波モジュールにおける送信信号TXの変調パターン間の同期エラーをもたらす。
【0019】
図2は、変調方式の(簡略化した)例を示す。送信信号の周波数frは、この図では時間tの関数として示されており、ランプ勾配B/Tを有する変調ランプ40のシーケンスを有し、この場合、Bは周波数スイングであり、Tは変調ランプの持続時間である。この持続時間Tは、時間信号が時間信号モジュール28に記録される測定期間の持続時間でもある。
【0020】
ここでは送信機として動作する高周波モジュール12において、それぞれの変調ランプ40の開始は、高周波モジュール10における変調ランプの開始と比較して、信号所要時間d/cだけ遅延される。両方の高周波モジュール10、12において同じ受信信号RXが受信されるが、この信号は互いに時間的にずらされた送信信号TXと混合されるので、高周波モジュール10内の時間信号S2の周波数は、位置特定された物体の距離及びレーダ波の対応する信号所要時間のみによって決定されるのではなく、高周波モジュール10において変調ランプ40が時間d/cだけ早く開始されたことに基づく付加的な成分も含む。高周波モジュール10のための評価ユニット26′内の窓モジュール36は、この周波数オフセットを補正する目的を有する。
【0021】
図3は、時間信号S1及びS2を時間tの関数として示す。垂直軸には、標準化された(複素)振幅Aの実部ReAのみが示されている。上述の同期エラーに基づいて、時間信号S2の周波数が時間信号S1の周波数に比べて増大していることが分かる。この周波数オフセットは、窓モジュール36において再び取り消されるので、理想的な場合には、修正された時間信号S2mは時間信号S1と一致する。このために、窓モジュール36では、時間信号S2、すなわち、時間に依存した関数S2(t)は、同様に時間に依存した関数
V(t)=exp(−j・2・pi・(1/T)・(t−x)・b) (1)
によって乗じられる。この場合、jは(−1)の根であり、piは円周率であり、Tは測定期間の持続時間であり、同時にランプ持続時間であり、bは、同期誤差が補正されるように選択される、いわゆる「ビンオフセット」であり、xは一定の位相シフトを引き起こす間隔[0,T]からの任意の値である。x=T/2が有利であることが判明した。
【0022】
窓関数V(t)は複素数値関数であり、常に値1となり、位相は時間t及びビンオフセットbに比例する。「ビンオフセット」という表現は、F[S2_m]及びF[S1]が定義されている周波数fの範囲が、図4に示すように多数の(例えば512の)ビンに分割されており、これらのBinがそれぞれ1つのビン幅W=c/2Bを有することによる。
【0023】
比較のために、図4は、時間信号S2をフーリエ変換することによって、すなわち、窓関数Vによる窓をかけずに得られるスペクトルF[S2]も示す。スペクトルの対応するピークは、図3にも見られるように、周波数差と一致するスペクトルF[S2_m]及びF[S1]のピークよりもいくぶん高い周波数に位置していることが分かる。
【0024】
ビン幅Wは長さの寸法を有し、図4の水平軸では、周波数fは、独立変数として与えられていることに留意されたい。物体距離Dを有する物体のレーダエコーについて、物体に起因するピークが位置する周波数fは、
f=(B/T)・2D/c (2)
によって求められる。
【0025】
したがって、周波数fは、物体距離Dの尺度とみなすこともできる。したがって、図4に示す周波数ビンは、ビン幅Wを有する距離ビンに等しい。
【0026】
ビンオフセットbは、同期信号のランレングスdとビン幅Wとの比によって与えられ、すなわち、
b=d/W=d・2B/c (3)
である。
【0027】
これらの条件下では、スペクトルF[S2]及びF[S2_m]のピーク間の周波数オフセットは、ランレングスdに等しい物体距離Dの見かけの変化に等しい。結果として、図4のスペクトルF[S2_m]は、他の周波数モジュールで得られたスペクトルF[S1]と実質的に一致し、同期エラーが補正される。
【0028】
実際の実施形態では、高周波モジュール12に割り当てられた前処理段階26にも窓モジュール36が含まれる。式(1)で指定された複素位相係数に加えて、窓関数Vは、二次最大値を抑制するために用いられる実数係数を含むこともできる。2つの前処理段階における窓モジュールは、同期エラーを補正する必要があるか否かに応じて、複素数の位相係数を有する窓と、この係数なしの実数の窓との間で切り換えることができる。例えば、マスタ、すなわち高周波モジュール10が送受信を行い、スレーブ、すなわち高周波モジュール12が排他的に受信する動作モードを実現することも可能である。この場合、複素位相係数を高周波モジュール10において無効にし、高周波モジュール12において有効にする。
【0029】
同様に、窓関数を適切に適合させることにより、高周波モジュール12がマスタを形成し、高周波モジュール10がスレーブを形成する動作モードも可能である。
【0030】
原則として、同期信号syncは、マスタによって生成された送信信号TXによって直接に形成することもできる。スレーブが送信している場合、スレーブは、マスタから取得した同期信号を送信信号としてアンテナ装置14に単に転送する。この場合、スレーブは、固有の局部発振器を有する必要はない。
図1
図2
図3
図4