特許第6848133号(P6848133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6848133大型の光反射素子の製造方法及び光学結像装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6848133
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】大型の光反射素子の製造方法及び光学結像装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20210315BHJP
   G02B 30/56 20200101ALI20210315BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20210315BHJP
   G01B 11/16 20060101ALN20210315BHJP
【FI】
   G02B5/08 C
   G02B30/56
   G01B11/30 A
   !G01B11/16 H
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-562217(P2020-562217)
(86)(22)【出願日】2020年7月21日
(86)【国際出願番号】JP2020028314
【審査請求日】2020年11月16日
(31)【優先権主張番号】特願2020-25368(P2020-25368)
(32)【優先日】2020年2月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/175634(WO,A1)
【文献】 特開2016−212369(JP,A)
【文献】 特開2016−151690(JP,A)
【文献】 特開2017−203809(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/178424(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00− 5/136
G01B11/30
G02B30/56
G01B11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に垂直かつ所定間隔で平行配置された複数の光反射面を有する単位光反射素子が平面状に複数並べられて製造される大型の光反射素子の製造方法であって、
複数の前記単位光反射素子を、前記各光反射面が同一方向となるように、透明定盤の上に配置し、該透明定盤の一側に該透明定盤と一定の角度を有して配置されたディスプレイに前記各単位光反射素子の前記各光反射面に平行な横線を有する検査基準画像を表示して、該横線が前記各光反射面に1回反射して形成される鏡像の連続性を前記透明定盤の他側から観察し、隣り合う前記単位光反射素子の配置の良否を判定する工程Aを含むことを特徴とする大型の光反射素子の製造方法。
【請求項2】
一方の面に垂直かつ所定間隔で平行配置された複数の光反射面を有する平面視して正方形の単位光反射素子が平面状に複数並べられて製造される平面視して正方形の大型の光反射素子の製造方法であって、
複数の前記単位光反射素子を、前記各光反射面が同一方向となるように、透明定盤の上に配置し、該透明定盤の一側に該透明定盤と一定の角度を有して配置されたディスプレイに前記各単位光反射素子の前記各光反射面に平行な横線を有する検査基準画像を表示して、該横線が前記各光反射面に1回反射して形成される鏡像の連続性を前記透明定盤の他側から観察し、隣り合う前記単位光反射素子の配置の良否を判定する工程Aを含むことを特徴とする大型の光反射素子の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の大型の光反射素子の製造方法において、前記単位光反射素子は一辺が90〜200mmの正方形であることを特徴とする大型の光反射素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1記載の大型の光反射素子の製造方法において、前記透明定盤と前記ディスプレイのなす角度は40〜50度の範囲にあることを特徴とする大型の光反射素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1記載の大型の光反射素子の製造方法において、前記検査基準画像は、複数の前記横線と該各横線と直交する複数の縦線を有して格子状となっていることを特徴とする大型の光反射素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1記載の大型の光反射素子の製造方法において、前記工程Aで不良と判定された単位光反射素子を、別の単位光反射素子と交換して前記工程Aを再度実施することを特徴とする大型の光反射素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1記載の大型の光反射素子の製造方法において、前記検査基準画像は、コンピュータを用いて合成された画像であることを特徴とする大型の光反射素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1記載の大型の光反射素子の製造方法において、前記単位光反射素子の前記透明定盤への仮固定は、真空吸引によって行われることを特徴とする大型の光反射素子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1記載の大型の光反射素子の製造方法で製造された前記大型の光反射素子を用いて製造される光学結像装置の製造方法であって、
平面視して外形が正方形となるように前記大型の光反射素子の角部を斜めに切断し、前記各光反射面が前記正方形の各辺に対して45度傾斜した中型の光反射素子を形成する工程aと、
2枚の前記中型の光反射素子をそれぞれの前記光反射面が直交するようにして重ね合わせる工程bとを有することを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項10】
請求項記載の光学結像装置の製造方法において、前記工程aで切り取った直角二等辺三角形状の前記角部を4枚合わせて該各角部の前記各光反射面が同一方向を向いた中型の光反射素子を2枚用意し、該2枚の光反射素子をそれぞれの前記光反射面が直交するようにして重ね合わせることを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが一側の面に垂直に所定間隔で平行配置された多数の光反射面を有する複数の単位光反射素子を平面状に並べて配置した大型の光反射素子の製品良否の判定方法を含む大型の光反射素子の製造方法及びその製造方法で製造された大型の光反射素子を用いた光学結像装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、大きな空間映像を表示可能な空間映像表示装置に必要な大型の光学結像装置を、簡単かつ高精度に製造することを目的とした光学結像装置の製造方法が開示されている。特許文献1に開示された光学結像装置の製造方法は、それぞれ多数の光反射面が平行に立設された2つミラーシート(光反射素子)を、ミラーシートの光反射面が互いに直交するように重ね合わせて単位光学結像素子を製造する工程と、複数の単位光学結像素子を、隣り合う単位光学結像素子のミラーシートの光反射面の方向を合わせた状態で所定の透明カバー板上に隣接させて二次元状に並べる工程と、上下の透明カバー板により、二次元状に並べられた単位光学結像素子群を、垂直な方向から挟み込むとともに、単位光学結像素子群の周囲を覆う工程と、内部の気圧を下げて上下の透明カバー板により単位光学結像素子群を平面状に固定する工程とを有する。
【0003】
また、特許文献2には、図14に示すように、厚み方向に直交する第1方向に沿って並ぶ複数の反射面をそれぞれ有する光反射素子(ミラープレート)を複数準備する工程と、複数の光反射素子の中から少なくとも2以上の光反射素子101、102を透光部103を有する平面体(基台部)104上に載置し、光反射素子101、102とは反射面が直交する光反射素子(参照ミラープレート)105を平面体104の透光部103の下部に配置し、互いに隣り合う光反射素子101、102の各々に含まれる複数の反射面の並び方に起因する被投影物(チャート)108の空中映像106、107のずれが小さくなる2つの反射素子の組合わせを選択する工程と、選択された組合わせに含まれる2つの光反射素子101、102を平面上で接合する工程とを備える結像素子の製造方法が開示されている。
【0004】
そして、特許文献3には、図15に示すように、複数枚の光反射素子(ミラープレート)110、111をその面方向に並ぶように配置する工程と、隣り合う光反射素子110、111に跨るように別の光反射素子(参照ミラープレート)112を配置しておき、複数枚の光反射素子110、111と光反射素子112により結像された被投影物114の鏡映像(実像)113を確認しながら、実像113が被投影物114の形状に対応するように複数枚の光反射素子110、111を相互に位置決めする工程と、相互に位置決めされた複数枚の光反射素子110、111の位置を固定する工程とを備えることが記載されている。なお、以上において、光反射素子101、102、110、111は単位反射素子を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−101230号公報
【特許文献2】特開2017−203809号公報
【特許文献3】WO2016/178424号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、2つの光反射素子(ミラーシートに同じ)を、光反射素子の光反射面が互いに直交するように重ね合わせることにより結像素子(単位光学結像素子に同じ)を製造し、複数の結像素子を、所定の透明平板(透明カバー板に同じ)上に隣接させて平面方向に二次元状に並べて、透明平板に押圧固定しているので、各結像素子の光反射面がずれていたり、多少変形したりしていると、形成される画像に歪が発生するという問題があった。そして、形成される画像に歪がある場合、上下の光反射素子が一体化された結像素子全体を交換する必要があった。
【0007】
また、特許文献2、3の場合は、比較対象として検査する光反射素子(ミラープレート)A、Bの他にこれらの光反射素子A、Bに対して光反射面が直交する光反射素子C(参照ミラープレート)がなければ、空中映像や鏡映像は結像しないため、光反射素子Cが必須の構成となっている。そして、この光反射素子Cの精度が悪いと単位光反射素子A、Bの正確な測定(選択、位置決め及び良否判定)はできない。
【0008】
更には、検査の対象となる像は空中映像であるので、検査(製造)装置全体が大型化するという問題もある。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、複数の単位光反射素子を平面状に並べて大型の光反射素子を製造するに当たり、光反射面の並びを確認(検査)するために、光反射面が直交する光反射素子を上下に対向して配置する必要がなく、空中映像や鏡映像の結像を必要としないで、平面状に並べた単位光反射素子の配置の良否を判定できる大型の光反射素子の製造方法及びその製造方法で製造された大型の光反射素子を用いた光学結像装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的に沿う第1の発明に係る大型の光反射素子の製造方法は、一方の面に垂直かつ所定間隔で平行配置された複数の光反射面を有する単位光反射素子が平面状に複数並べられて製造される大型の光反射素子の製造方法であって、
複数の前記単位光反射素子を、前記各光反射面が同一方向となるように、透明定盤の上に配置し、該透明定盤の一側に該透明定盤と一定の角度を有して配置されたディスプレイに前記各単位光反射素子の前記各光反射面に平行な横線を有する検査基準画像を表示して、該横線が前記各光反射面に1回反射して形成される鏡像の連続性を前記透明定盤の他側から観察し、隣り合う前記単位光反射素子の配置の良否を判定する工程Aを含む。
【0011】
前記目的に沿う第2の発明に係る大型の光反射素子の製造方法は、一方の面に垂直かつ所定間隔で平行配置された複数の光反射面を有する平面視して正方形の単位光反射素子が平面状に複数並べられて製造される平面視して正方形の大型の光反射素子の製造方法であって、
複数の前記単位光反射素子を、前記各光反射面が同一方向となるように、透明定盤の上に配置し、該透明定盤の一側に該透明定盤と一定の角度を有して配置されたディスプレイに前記各単位光反射素子の前記各光反射面に平行な横線を有する検査基準画像を表示して、該横線が前記各光反射面に1回反射して形成される鏡像の連続性を前記透明定盤の他側から観察し、隣り合う前記単位光反射素子の配置の良否を判定する工程Aを含む。
【0012】
第2の発明に係る大型の光反射素子の製造方法において、前記単位光反射素子は一辺が90〜200mmの正方形であるのが好ましいが、この発明はこの数字に限定されるものではない。
【0013】
第3の発明に係る大型の光反射素子の製造方法は、第1、第2の発明において、前記透明定盤と前記ディスプレイのなす角度が40〜50度の範囲にあるのが好ましい。
そして、第4の発明に係る大型の光反射素子の製造方法は、第1〜第3の発明において、前記検査基準画像は、複数の前記横線と該各横線と直交する複数の縦線を有して格子状となっているのが好ましい。
【0014】
また、第1〜第4の発明に係る大型の光反射素子の製造方法において、前記工程Aで不良と判定された単位光反射素子を、別の単位光反射素子と交換して前記工程Aを再度実施することもできる。
そして、第1〜第4の発明に係る大型の光反射素子の製造方法において、前記検査基準画像は、コンピュータを用いて合成された画像であるのが好ましい。
更に、以上の大型の光反射素子の製造方法において、前記単位光反射素子の前記透明定盤への仮固定は、真空吸引によって行われるのが好ましい。
【0015】
参考例1に係る大型の光反射素子の製造方法は、第1〜第4の発明において、
前記単位光反射素子が、
複数の透明板材を光反射材及び接着剤を介して積層し、高さがhで周囲に側面P〜Sを有する四角柱状のブロック材を製造する第1工程と、
前記ブロック材の対向する前記側面Q、Sを研磨して前記側面Qから前記側面Sまでの距離wを前記高さhと同一にし、前記側面P、Rを正方形状にする第2工程と、
前記第2工程で加工された前記ブロック材を前記側面P又は前記側面Rに平行に切断して同一厚みの光反射基材を複数製造する第3工程と、
切断された前記各光反射基材の両端面を研磨する第4工程とにより製造されたものである。
【0016】
参考例1に係る大型の光反射素子の製造方法において、前記第2工程で前記側面Q、Sを研磨する前に前記側面Qから前記側面Sまでの距離を粗調整する切断加工を行うのがよい。
また、参考例1に係る大型の光反射素子の製造方法において、前記第2工程で研磨した前記側面Q、S及び前記第4工程で研磨した前記単位光反射素子の前記両端面の粗度は30nm以下であるのが好ましいが、本発明はこの数値に限定されない。
参考例1に係る大型の光反射素子の製造方法において、前記光反射材は前記透明板材の少なくとも片面に形成された金属蒸着膜であるのが好ましいが、メタルフィルムであってもよい。
【0017】
の発明に係る光学結像装置の製造方法は、第1〜第の発明に係る大型の光反射素子の製造方法で製造された大型の光反射素子を用いて製造される光学結像装置の製造方法であって、
平面視して外形が正方形となるように前記大型の光反射素子の角部を斜めに切断し、前記各光反射面が前記正方形の各辺に対して45度傾斜した中型の光反射素子を形成する工程aと、
2枚の前記中型の光反射素子をそれぞれの前記光反射面が直交するようにして重ね合わせる工程bとを有する。
【0018】
の発明に係る光学結像装置の製造方法は、第の発明において、前記工程aで切り取った直角二等辺三角形状の前記角部を4枚合わせて該各角部の前記各光反射面が同一方向を向いた中型の光反射素子を2枚用意し、該2枚の光反射素子をそれぞれの前記光反射面が直交するようにして重ね合わせる。
【発明の効果】
【0019】
第1〜第の発明に係る大型の光反射素子の製造方法は、光反射面の並びを確認(検査)するのに光反射面で直接反射する表示装置の検査基準画像(鏡像)を使用しているので、特許文献2、3に開示されている空中映像や鏡映像より鮮明となり、参照光反射素子も使用しないので、装置自身も簡略化することができ、更には、参照光反射素子の精度が測定精度に影響を与える特許文献2、3に比べて信頼性に優れる。
【0020】
特に、単位光反射素子が、複数の透明板材を光反射材及び接着剤を介して積層し、高さがhで周囲に側面P〜Sを有する四角柱状のブロック材を製造する第1工程と、ブロック材の対向する側面Q、Sを研磨して側面Qから側面Sまでの距離wを高さhと同一にし、側面P、Rを正方形状にする第2工程と、第2工程で加工されたブロック材を側面P又は側面Rに平行に切断して同一厚みの光反射基材を複数製造する第3工程と、切断された
各光反射基材の両端面を研磨する第4工程とにより製造されたものである場合には、同一寸法の単位光反射素子をより効率的に製造できる。
【0021】
また、第の発明に係る光学結像装置の製造方法は、第1〜第4の発明に係る大型の光反射素子の製造方法で製造された大型の光反射素子を用いることにより、歪みの少ない大きな空間画像を表示可能な光学結像装置を歩留り良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(A)は単位光反射素子の説明図であり、(B)は同単位光反射素子を用いて製造された従来の光学結像装置の説明図であり、(C)は同光学結像装置を用いて製造された従来の大型の光学結像装置の説明図であり、(D)は同大型の光学結像装置から切り出された従来の他の光学結像装置の平面図である。
図2】(A)は本発明の一実施例に係る大型の光反射素子の製造方法に用いられる単位光反射素子の製造に使用するブロック材の斜視図、(B)は同ブロック材の加工状態を示す平面図である。
図3】(A)は同ブロック体の切断箇所を示す平面図、(B)は同側面図、(C)は同正面図である((B)において切断ピッチは極めて粗く記載されているが、ブロック体には例えば500〜3000枚の光反射基材がある)。
図4】(A)は同ブロック体から切り出された状態の光反射基材の側面図、(B)は同正面図である。
図5】(A)は研磨された単位光反射素子の側面図、(B)同斜視図である。
図6】同単位光反射素子を載せた透明定盤の平面図である。
図7】(A)は本発明の一実施例に係る大型の光反射素子の製造方法に用いる単位光反射素子の個別検査(良否判定)の説明図であり、(B)は表示装置に表示する検査基準画像(格子画像)であり、(C)は撮像装置で撮像された基準画像又は検査画像である。
図8】撮像装置で撮像された検査画像の分析図である。
図9】本発明の一実施例に係る大型の光反射素子の製造方法の説明図である。
図10】(A)、(B)は大型の光反射素子の良否判定方法の説明図である。
図11】(A)は撮像装置で撮像された検査画像、(B)はその詳細説明図である。
図12】(A)は撮像装置で撮像された他の検査画像、(B)はその詳細説明図である。
図13】本発明の他の実施例に係る光学結像装置の製造方法の説明図である。
図14】従来例に係る光学結像装置の製造方法の説明図である。
図15】従来例に係る光学結像装置の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付する図面を参照しながら、本発明の一実施例に係る大型の光反射素子の製造方法及び光学結像装置の製造方法について説明する。
本発明の大型の光反射素子の製造方法及び光学結像装置の製造方法について説明する前に、まず、従来の光学結像装置の製造方法について説明する。
図1(A)に平面視して正方形(一辺が90〜200mm)の単位光反射素子10を示す。単位光反射素子10は、透明平板11の内部に透明平板11の表面(又は裏面、即ち、一方の面)に対して垂直なアルミニウム等の金属蒸着膜(金属蒸着層)で形成された光反射材12が一定のピッチで多数平行配置されて構成されたものである。そして、符号11aは単位光反射素子10の光透過部を示し、各光反射材12の表面が光反射面12aとして機能する。2枚の単位光反射素子10を平面視して光反射面12aが直交するようにして重ね合わせることにより、図1(B)に示す光学結像装置13を形成することができるが、この構成では、一辺が20cmを超える光学結像装置を製造することは難しい。
【0024】
そこで、現状では複数の小型の光学結像装置13を平面状に(縦横に)並べて貼り合わせることにより、図1(C)に示す大型の光学結像装置15を製造している。このとき、2以上の自然数nの二乗個の光学結像装置を縦横にn個ずつ配置することにより、平面視して正方形の大型の光学結像装置を製造することができるが、大型の光学結像装置は必ずしも平面視して正方形である必要はなく、大型の光学結像装置の大きさ及び形状に応じて、貼り合わせる小型の光学結像装置の数及び配置を適宜、選択することができる。
但し、図1(C)に示した光学結像装置15のように、正方形の一辺に直交する方向に並ぶ光反射面12aを観察者に対して垂直又は水平に向けて使用すると、対象物からの光が上下いずれか一方の単位光反射素子10の光反射面12aのみで反射し、結像しないという問題がある。そこで、実際には、図1(C)に仮想線で示したように、大型の光学結像装置15の角部16を斜めに切断し、図1(D)に示すように、平面視した外形が正方形となって各光反射面12aが正方形の各辺に対して45度傾斜した光学結像装置17を製造して使用している。
【0025】
しかし、図1(B)に示した光学結像装置13は、上下1枚ずつの単位光反射素子10を1セットとしたものであるため、各単位光反射素子10に多少の歪等が存在しても正常に結像するのに対し、複数の光学結像装置13を組み合わせて製造される図1(C)の大型の光学結像装置15及び光学結像装置15から切り出して製造される図1(D)の光学結像装置17では、各光学結像装置13(各単位光反射素子10)の各光反射面12aの微小なずれ、歪み、曲がり等が組み合わされることにより結像が歪む場合があった。つまり、一辺が9〜20cmの単位光反射素子10を製造する過程で、微妙な外的要因により、光反射材12(光反射面12a)が歪んだり、曲がったりすると、結果的に大型の光学結像装置15に光学的歪が発生し、折角組み上げた大型の光学結像装置15が使用できなくなるという問題が発生するので、単位光反射素子10の良否を組立段階で個々に判断することが望まれていた。
【0026】
そこで、光学結像装置13を製造する前の単位光反射素子10(図1(A)参照)の段階で、各単位光反射素子10の構成に異常や欠陥が無いことを確認し、異常等のない単位光反射素子10を使用して、まず、大型の光反射素子を作り、この2枚の大型の光反射素子を平面視して光反射面が直交するように重ね合わせることにより、大型の光学結像装置が製造できることを確認して本発明を成し得た。平面視して正方形の単位光反射素子を4枚(又は、9枚、16枚、即ち、2以上の自然数nの二乗枚)組み合わせることにより、平面視して正方形の大型の光反射素子を製造することができる。なお、大型の光反射素子が平面視して正方形であればよく、単位光反射素子は必ずしも平面視して正方形である必要はなく、大型の光反射素子を構成する単位光反射素子の形状、数及び配置は、適宜、選択することができる。
【0027】
大型の光反射素子及び大型の光学結像装置を製造するに当たり、まず、図2図5を参照しながら、本発明の一実施例に係る大型の光反射素子の製造方法に用いられる単位光反射素子28(単位光反射素子28は単位光反射素子10と同様の構造を有する)を安価にかつ精度よく製造する新しい方法について説明する。図2(A)にその一部を示すように、光透過率が高く、厚みのバラツキが極めて小さく(例えば、厚みの誤差が5%以下、より好ましくは1%以下)、厚みが例えば0.2〜2mmの板ガラス又は硬質の透明樹脂板からなる複数の透明板材20を用意する。透明板材20の寸法は90〜250mmの矩形(正方形も含む)とするのがよく、面粗度(Ra)が100nm以下(好ましくは50nm以下、より好ましくは10nm以下)のものを使用するのがよいが、これらに限定されるものではない。なお、図面において▽▽▽は鏡面研磨を示す。
【0028】
この透明板材20を真空炉に入れて、その片面(又は両面に)アルミニウム等(白色系金属でもよい)の金属蒸着を行う。なお、この金属蒸着層(金属蒸着膜)が光反射材21を構成する。光反射材21によって、最終的に図3(B)の拡大図に示すように、透明板材20の片面(又は両面に)に光反射面22が形成される。また、ここで、光反射材として金属蒸着層の代わりに金属製反射シート(例えば、ミラーシート)を使用することもできるが、この場合は透明板材20の片面のみに形成(配置)するのがよい。
【0029】
次に、この光反射面22が形成された透明板材20を複数枚(例えば、500〜1500枚)、透明な接着剤を介して押圧積層する。ここで、接着剤には、熱硬化型、紫外線硬化型、常温硬化型、2液混合型等を適用できる。これによって図2(A)に示すように、6面が矩形状の四角柱状(立方体、又は直方体)のブロック材23が得られる。ここで、各透明板材20が下から上に積み上げられているとして、ブロック材23の周囲の側面をP、Q、R、Sとし、天井面及び底面をT、Uとする。
【0030】
ブロック材23の天井面T及び底面Uは透明板材20の表面又は光反射材21(金属蒸着面)であるので、研磨しなくても100nm以下(例えば、10nm)の表面粗度に保持されている。なお、基準面となる天井面T及び底面Uが±0.05度、好ましくは±0.02度以内の範囲内で平行であること、及び天井面Tから底面Uまでの距離(間隔)、即ち、ブロック材23の高さhは正確である必要があるので、必要に応じて、真空中で平面プレス等で押さえ込んで高さ調整する(高さ調整は接着剤が固まる前か、途中に行うのがよい)。また、天井面Tと底面Uの平行度、寸法(誤差1μm以内が好ましい)は、三次元測定器、又は高さ測定器等で測定し、確認するのが好ましい(以上、第1工程)。
【0031】
次に、ブロック材23を正面視して(側面Pから見て)、その幅方向の両端部を、対向する側面Q、Sと略平行に切断して幅調整(粗調整)する切断加工を行う。これは図2(B)、図3(A)〜(C)に示すように水平配置された定盤24の上にブロック材23を仮置して、定盤24に設けられた複数の真空吸着口27によってブロック材23を吸引保持し、バンドソー(又は、その他の切断手段)によって切断することによって行う。そして、切断加工された両側面(両切断面)を研磨することにより、2つの側面Q1、S1が新たに形成される。これらの側面Q1、S1は、天井面T又は底面Uに対して垂直であり、側面Q1から側面S1までの距離(幅)wは高さhと等しくなっている。これによって、図3(A)〜(C)に示すように、幅が短縮された(幅wを有する)新たな天井面T1と底面U1及び、幅wと等しい高さhを有する新たな側面Q1、S1で囲まれる新たな側面P1、R1が完全な正方形となったブロック体25(寸法精度が例えば0.5μm以内)が形成される(以上、第2工程)。なお、切断加工後の両側面(両切断面)の距離は、研磨代を考慮して高さhよりもやや大きくなるように(研磨後の幅w+研磨代となるように)切断することにより、研磨後に所望の寸法が得られる。
【0032】
次に、図3図4に示すように、側面S1、底面U1、側面Q1、天井面T1で囲まれ、側面P1側から見て正方形のブロック体25を定盤24の上に置いて固定し、側面P1(又は側面R1)に平行に順次又は同時に複数個所切断して、図4(A)、(B)に示すように、厚みが規格厚み(0.5〜2mm)+研磨代の光反射基材26を製造する(以上、第3工程)。
次に、切断された光反射基材26の端面(切断面)を鏡面研磨して、光学端面P2、R2とし、規格寸法厚の単位光反射素子28を製造する。
隣り合う積層端面Q2、T2、S2、U2が直交する所定厚みの単位光反射素子28を図5(A)、(B)に示すが、この実施例では透明板材20で形成された光透過部20aの片面にしか光反射材21を形成していない(図4(A)の拡大図参照)ので、単位光反射素子28の底面(積層端面U2)には、図5(A)に示すように、光透過部20aが露出する。これに対し、光透過部20aの両面に光反射材21を形成した場合は、上下両面(積層端面T2、U2)に光反射材21を有する単位光反射素子29(図6参照)が形成される。研磨された光学端面P2、R2及び研磨された積層端面Q2、S2の粗度は30nm(又はそれ以下、例えば、10nm以下)とするのがよい(以上、第4工程)。
【0033】
以下、本発明の一実施例に係る大型の光反射素子の製造方法について説明する。
単位光反射素子28を用いて大型の光反射素子を製造する場合、光透過部20a及び光反射材21の積層方向に隣り合う単位光反射素子28は、一方の単位光反射素子28の上面(積層端面T2)と、他方の単位光反射素子28の下面(積層端面U2)を向かい合わせて貼り合わせることにより、光透過部20aと光反射材21が交互に配置される。これに対し、上下両面(積層端面T2、U2)に光反射材21を有する単位光反射素子29を用いて大型の光反射素子を製造する場合、光透過部20a及び光反射材21の積層方向に隣り合う単位光反射素子29は、光反射材21同士を接着することになるが、金属蒸着膜及び接着層の厚さが薄いので、あまり問題とはならない。
【0034】
次に、単位光反射素子29(単位光反射素子28も同様、以下単位光反射素子29で代表)が正常(標準仕様)に製造されているか否かについて検査する手段及び方法について説明する。初めから大面積の透明板材及び光反射材を積層して大型の光反射素子(ミラープレート)を製造しようとすると、大型の製造装置が必要となり、寸法(平面度)の管理が難しくなるが、小型(この実施例では150mm角)の単位光反射素子29を複数枚製造し、敷き詰めて大型の光反射素子を製造することができる。まず、最初に各単位光反射素子29について個別に検査する装置及び方法について説明する。
【0035】
図6図7(A)に示すように、単位光反射素子の検査装置30は、固定配置された透明定盤31と、平面視して正方形の単位光反射素子29が所定位置に配置された透明定盤31の下方(一側)に、透明定盤31に対して40〜50度傾けて配置された表示装置(ディスプレイ)32と、単位光反射素子29の上側(他側)から単位光反射素子29を介して表示装置32の画像の鏡像を撮影する撮像装置33とを有している。
【0036】
ガラス板で形成された透明定盤31の周囲には図示しない枠体が配置されており、透明定盤31全体が、図7(A)に示すように、水平方向(x軸方向及びy軸方向)、垂直方向(z軸方向)に動き、傾動(x軸回り及びy軸回り)及びその場旋回(z軸回りの回転θ)も可能で、透明定盤31に載せた単位光反射素子29を任意の位置に配置することができる。そして、図6に示すように、透明定盤31のx軸方向基部、y軸方向基部には、互いに直交するxガイド34とyガイド35が設けられており、透明定盤31の上に載せた単位光反射素子29を光反射面22が同一方向となるように位置決めする(仮固定する)ことができる。また、透明定盤31には載置した単位光反射素子29を真空吸引してその場に保持(仮固定)する複数の吸着機構を設けることも可能であるが、測定の障害になるので、押圧機構29a、29bを設けて、側方から単位光反射素子29を押圧クランプするのがより好ましい。透明定盤31の上方には、図7(A)に示すように、単位光反射素子29の搬送を行う吸着搬送手段37が設けられている。
【0037】
図7(B)に示すように、表示装置32には検査基準画像の一例である全体が正方形の格子画像39が表示される。ここで、格子画像39は、x軸方向に垂直(y軸方向と平行)な複数の縦線41と、x軸方向に平行な複数の横線42がそれぞれ所定ピッチ(一定間隔)で配置されたものである。この格子画像39を各光反射面22に曲がりや歪の無い正規(基準)の単位光反射素子29dを介して撮像装置33で撮像すると図7(C)に示すような基準画像40dが得られるので、基準画像データとして保存する。ここで、単位光反射素子29dには沢山の光反射面22が等ピッチで並んでいるので、一枚のミラーを介して格子画像39を見る場合の画像とは異なり、平行配置された複数の光反射面22を介して格子画像39を見ることになり、図7(C)に示すように、基準画像40dは格子画像39の縦線41、横線42が、それぞれ基準縦線41d、基準横線42dに変形した台形状に見える。なお、基準となる単位光反射素子29dのサイズ(仕様)は検査を行おうとする単位光反射素子29と一致させることが好ましい。また、格子画像はコンピュータを用いて合成された画像であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、縦線と横線が正確に一定間隔で描かれていればよい。
【0038】
次に、単位光反射素子29の良否を判断する場合は、検査しようとする単位光反射素子29を透明定盤31の上に載置して位置決めを行う。そして、単位光反射素子29dと同様の手順で、表示手段32に表示された格子画像39の鏡像を単位光反射素子29を介して撮像装置33で撮像し、検査画像40aを得る。そして、検査画像40aに基準画像40dを重ねて表示することにより検査を行うが、検査画像40aも基準画像40dとほぼ同様の画像となるので、基準画像40d又は検査画像40aを移動、拡縮して両者の輪郭を合わせる(重ねる)ことにより、検査画像40aと基準画像40dとの類似性(相似性)から容易に比較(検査)を行うことができる。
単位光反射素子29の光反射面22に異常がある場合は、例えば検査画像40aの検査横線42aが基準画像40dの基準横線42dよりずれるので、その検査横線42aの歪み(位置ずれ)から単位光反射素子29の良否を判断することができる。なお、検査画像40aと基準画像40dを完全に重ねる(表示倍率を一致させる)代わりに、例えば、検査画像40aの大きさを基準画像40dに対して縦横0.9〜0.98倍の範囲で小さくしてもよい。
【0039】
以上の良否の判定は、目視で行ってもよいが、良、不良の境界が明確でない場合があるので、コンピュータを用いて演算処理(画像処理)を行うことが好ましい。
以下に、コンピュータによる基準画像40dと検査画像40aの類似性の判断(良否判定)の一例を以下に説明する。ここで、図8に示すように、基準画像40dの外枠43d内の各基準縦線41dにx1、x2・・・xn・・、各基準横線42dにy1、y2・・・yn・・を付す。nは例えば5〜50程度でよい。なお、基準画像40dと検査画像40aを比較する際、それぞれの外枠43d、43aをできるだけ一致させるのがよい。但し、目視で比較する場合は、検査横線42aの歪みを観察すればよいので、外枠43d、43aの一致は必須の要件ではない。
【0040】
検査をしようとする単位光反射素子29に異常がある場合、検査横線42aの位置が基準画像40dの基準横線42dから上又は下方向にずれるので、各基準縦線41d(x1、x2・・・xn・・、)と各検査横線42aが交わる位置で、各検査横線42aの上方向のずれAnを測定してその最大値(又は平均値)を算出し、その値Kuが基準値より大きい場合(ケース1)、又は、各検査横線42aの下方向のずれAm(図示せず)を測定してその最大値(又は平均値)を算出し、その値Ksが基準値より大きい場合(ケース2)は、単位光反射素子29に異常があると判断され、不良となる。測定した値Ku、Ksは画素の単位で計測した値の大きい方を採用するのが好ましい。基準値は実験により求める。なお、単位光反射素子29の光反射面22は検査画像40aの検査横線42aに沿っているので、単位光反射素子29を正しく置いた場合は、通常は検査縦線41aの歪みは観測されない。
前記方法では、個々に測定した各検査横線42aのずれAnの最大値(又は平均値)を算出したが、全てのずれAnの二乗平均値(Root Mean Square Value)を計算し、予め測定して得られた基準値と比較してその合否(類似度合い)を求めることもできる。
【0041】
このようにして、正方形の単位光反射素子29の良否を判断し、4枚(又は9枚或いは16枚)の良品の単位光反射素子29を各光反射面22が同一方向となるように平面状に並べて貼り合せることにより、大型の光反射素子51を最低2枚製造する。そして、図9に示すように、2枚の大型の光反射素子51をそれぞれの光反射面22が直交するように大型の透明定盤52の上で重ね合わせ、互いに直交するxガイド53、yガイド54、可動ガイド55、56によって位置決めして接着剤で接合し、大型の光学結像装置を形成することができる。
ここで、図7に示した検査装置30と同一構造の大型のものを用意すると共に大型の表示装置32も用意して、前述のように一枚の単位光反射素子29を検査するのと同様な方法で大型の光反射素子51を検査することもできるが、個々の単位光反射素子29を厳格に検査し、良品のみを必要枚数用意して、これらを並べて接合することにより、大型の光反射素子51を製造するのが好ましい。
なお、複数の単位光反射素子を並べて接合する際には、複数の単位光反射素子を透明板の上に並べて、隣り合う単位光反射素子同士を接合すると同時に、透明板に対して各単位光反射素子を接合することにより、複数の単位光反射素子を確実に一体化することができ、大型の光反射素子の取扱い性及び形態の安定性に優れる。
【0042】
また、以上の実施例においては、単位光反射素子29の全体について、光反射面22の歪みについて検査したが、歪が発生するのは部分的であることが多いので、単位光反射素子29の一部についてのみ合否の検査を行う場合も本発明は適用される。
上記実施例においては、検査基準画像の撮像や検査画像の検査等が一カ所から行われているが、対象となる光反射素子が大型となる場合は、検査基準画像も大型となるので、複数個所から同時に撮像や検査を行ってもよいし、撮像装置33を移動させながら大型の光反射素子の一部を順次撮像して部分毎に検査画像(鏡像)と基準画像を比較してもよい。なお、目視で観察する場合も複数個所から行うことができるが、基準画像はあってもなくてもよい。
【0043】
続いて、図10(A)、(B)、図11(A)、(B)、図12(A)、(B)を参照しながら、本発明の一実施例に係る大型の光反射素子の良否判定方法について説明する。図10(A)に示すように、透明定盤60の上に平面視して正方形の単位光反射素子61〜64(それぞれ一辺が90〜200mm)を各光反射面69が同一方向となるように4枚密着させて並べる。これら4枚の単位光反射素子61〜64を接合することにより、大型の光反射素子65が得られるが、この時点では単位光反射素子61〜64は接合されていない(例えば、真空吸引によって透明定盤60に仮固定されている)。透明定盤60の下方には、平面状のディスプレイ66が透明定盤60と一定の角度(40〜50度)をなすように傾斜して配置されている。ディスプレイ66には図7(B)に示したような格子画像(検査基準画像の一例)39が表示されている。この格子画像の縦線及び単位光反射素子61〜64の各光反射面69に平行な横線の本数と配置(ピッチ)は大型の光反射素子65の光反射面69の数と配置に応じて自由に設定できる。
【0044】
この状態でディスプレイ66に格子画像39(縦線41、横線42)を表示させて、大型の光反射素子65の中央基部の直上位置にカメラ68を置いて、大型の光反射素子65を観察すると、図11(A)に示すように、検査画像が視認される。この場合、大型の光反射素子65の一つの光反射面69に反射してカメラ68に入る横線42の画像(鏡像)は、光反射面69の高さに応じて一本又は少数本となる。ここで、隣り合う単位光反射素子61〜64の光反射面69の位置がずれている場合は、図11(B)に示すように、検査縦線41a又は検査横線42aの繋ぎ部分にずれや段違いが生じるので、この鏡像の連続性から各単位光反射素子61〜64の配置の良不良を判定できる。なお、ディスプレイ66の角度等を調整して検査画像(検査縦線41a又は検査横線42a)に最大のずれが発生するようにするのがよい(工程A)。
【0045】
図12(A)、(B)は、カメラ68で撮像された他の検査画像を示しているが、検査縦線41aに不連続部71が見られ、検査横線42aに段違い72が見られ、これにより大型の光反射素子65の良否を判定できる。
なお、複数枚(2以上の自然数nの二乗枚)の単位光反射素子を並べて配置する大型の光反射素子を検査する場合は、最初に2枚の単位光反射素子を並べて検査を行い、次に1枚の単位光反射素子を足して検査をする工程Aを順次繰り返すこともできる。これによって同時に多数の光反射素子を並べて検査するより、不良の単位光反射素子の特定が容易となる。各光反射素子の移動、取り換えは吸着搬送手段にて行い、工程Aで不良と判定された単位光反射素子を、別の単位光反射素子と交換して工程Aを再度実施することにより、最終的に良品と判断された単位光反射素子のみを接着剤で固定(接合)して大型の光反射素子65が得られる。
【0046】
以上の実施例においては、一つの単位光反射素子に対しては1方向からの検査しか行われていないが、単位光反射素子を平面内で180度回転させて、光反射面22の方向を揃えて再検査(工程Aの確認検査)を行うことができる。これにより良品判定の精度が向上する。更に、検査対象となる単位光反射素子を裏返して、検査を行うこともできる。なお、本実施例に係る大型の光反射素子の良否判定を行う場合は、先に説明した各単位光反射素子の個別検査を省略してもよい。
【0047】
続いて本発明の一実施例に係る光学結像装置の製造方法について説明する。
まず、平面視して外形が正方形となるように、前述の大型の光反射素子65の角部を斜めに切断し、各光反射面69が正方形の各辺に対して45度傾斜した中型の光反射素子(図示せず)を形成する(工程a)。そして、2枚の中型の光反射素子をそれぞれの光反射面69が直交するようにして重ね合わせることにより、(中型の)光学結像装置を製造することができる(工程b)。こうして得られる光学結像装置は、図1(D)に示した光学結像装置17と同様の構造であるが、それを構成する各単位光反射素子61〜64及び大型の光反射素子65について良否判定が行われていることにより、従来の大型の光学結像装置よりも高品質となっている。なお、本実施例では、大型の光反射素子65の角部を斜めに切断して中型の光反射素子を形成した後、2枚の中型の光反射素子をそれぞれの光反射面69が直交するようにして重ね合わせて(接合して)光学結像装置を製造したが、2枚の大型の光反射素子65をそれぞれの光反射面69が直交するようにして重ね合わせて接合した後、角部を斜めに切断してもよい。
【0048】
次に本発明の他の実施例に係る光学結像装置の製造方法について説明する。
図13に示すように、上記の工程aで切り取った直角二等辺三角形状の角部(光反射素子の一部)57を4枚合わせて各角部57の各光反射面69が同一方向を向いた中型の光反射素子58を2枚用意し、2枚の光反射素子58をそれぞれの光反射面69が直交するように大型の透明定盤52の上で重ね合わせることにより、上記の工程aで切断した角部57を有効利用して、上記の工程bで製造された光学結像装置と同等の光学結像装置を製造することができ、省資源性に優れる。なお、4枚の角部57を接合して中型の光反射素子58を製造する際には、4枚の角部57を透明板の上に並べ、隣り合う角部57同士を接合すると同時に、透明板に対して各角部57を接合することにより、4枚の角部57を確実に一体化することができ、中型の光反射素子58の取扱い性及び形態の安定性に優れる。但し、前述のように、2枚の大型の光反射素子65を接合した後に、角部(光学結像装置の一部)を斜めに切断した場合は、切断した4つの角部を透明板の上に並べ、隣り合う角部同士を接合すると同時に、透明板に対して各角部を接合するだけで光学結像装置が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
小型の単位光反射素子を用いて大型の光反射素子を製造するに際し、各単位光反射素子及び大型の光反射素子を簡便に検査することができ、高品質な大型の光反射素子及び光学結像装置を安価に製造できる。
【符号の説明】
【0050】
10:単位光反射素子、11:透明平板、11a:光透過部、12:光反射材、12a:光反射面、13:光学結像装置、15:大型の光学結像装置、16:角部、17:光学結像装置、20:透明板材、20a:光透過部、21:光反射材、22:光反射面、23:ブロック材、24:定盤、25:ブロック体、26:光反射基材、27:真空吸着口、28、29:単位光反射素子、29a、29b:押圧機構、29d:正規の光反射素子、30:検査装置、31:透明定盤、32:表示手段(ディスプレイ)、33:撮像装置、34:xガイド、35:yガイド、37:吸着搬送手段、39:格子画像(検査基準画像)、40a:検査画像、40d:基準画像、41:縦線、41a:検査縦線、41d:基準縦線、42:横線、42a:検査横線、42d:基準横線、43a、43d:外枠、51:大型の光反射素子、52:透明定盤、53:xガイド、54:yガイド、55、56:可動ガイド、57:角部、58:中型の光反射素子、60:透明定盤、61〜64:単位光反射素子、65:大型の光反射素子、66:ディスプレイ、68:カメラ、69:光反射面、71:不連続部、72:段違い

【要約】
複数の単位光反射素子61〜64を、各光反射面69が同一方向となるように、透明定盤60の上に配置し、透明定盤60の一側に透明定盤60と一定の角度を有して配置されたディスプレイ66に各単位光反射素子61〜64の各光反射面69に平行な横線42を有する検査基準画像39を表示して、横線42が各光反射面69に1回反射して形成される鏡像の連続性を透明定盤60の他側から観察し、隣り合う単位光反射素子61〜64の配置の良否を判定する工程Aを含む大型の光反射素子の製造方法及び光学結像装置の製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15