(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態における細胞ファイバ製造システムの全体構成を示す模式図である。細胞ファイバ製造システム100は、第1貯留部102と、第2貯留部104と、第3貯留部106と、ノズル200と、リザーバ300と、を有していてよい。
【0013】
第1貯留部102は、細胞を含む第1流体を貯留する。第1流体は、例えば細胞を含むゲル又は液体(懸濁液)であってよい。これらのゲル又は液体の種類は、特に限定されない。これらのゲル又は液体は、例えば、キトサンゲル、コラーゲンゲル、ゼラチン、ペプチドゲル、フィブリンゲル、ラミニンゲル、ナノセルロース、プルラン、デキストラン、培地、又はアルギン酸、あるいはそれらの混合物などであってよい。
【0014】
第1流体に含まれる細胞の種類は、特に限定されない。そのような細胞は、例えば、分化万能性を有するES細胞やiPS細胞、分化多能性を有する各種の幹細胞(造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞など)、分化単一性を有する幹細胞(肝幹細胞、生殖幹細胞など)などであってよい。これらの代わりに、第1流体に含まれる細胞は、分化した各種の細胞、例えば骨格筋細胞や心筋細胞などの筋細胞、大脳皮質細胞などの神経細胞、線維芽細胞、上皮細胞、肝細胞、膵β細胞、皮膚細胞などであってもよい。さらに、第1流体に含まれる「細胞」は、単一の細胞に限定されず、複数の細胞からなる細胞組織の他に、細菌のような微生物をも含むことに留意されたい。
【0015】
第1流体は、細胞の培養、細胞の維持や増殖、又は細胞の機能発現などに適した各種の成長因子、例えば上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、神経成長因子(NGF)などを含んでいてもよい。
【0016】
第2貯留部104は、ハイドロゲル調製用の第2流体(ハイドロゲルの元となる溶液)を貯留する。第2流体は、アルギン酸塩又はアガロースであることが好ましい。より具体的には、第2流体は、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、及びこれらの組み合わせであってよい。また、アルギン酸は、天然抽出物であってもよく、化学修飾されたものであってもよい。化学修飾されたアルギン酸としては、例えばメタクリレート修飾アルギン酸等がある。また、第2流体は、前述したアルギン酸塩と、寒天(Agar)、アガロース(Agarose)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)又はナノセルロース等と、の混合系であってもよい。
【0017】
第3貯留部106は、第2流体と接触することで第2流体をゲル化する第3流体を貯留する。前述した第2流体が前述したアルギン酸ポリマー材料である場合、第3流体は、多価の陽イオンを含む溶液であってよい。そのような溶液として、例えば塩化カルシウム又は塩化バリウムのようなカルシウムイオン又はバリウムイオンを含む溶液が挙げられる。
【0018】
ノズル200は、第1インレット210と、第2インレット220と、第3インレット230と、射出口240と、を有していてよい。第1インレット210は、第1流体用の流入口であり、第1貯留部102と流体的に連通している。第2インレット220は、第2流体用の流入口であり、第2貯留部104と流体的に連通している。第3インレット230は、第3流体用の流入口であり、第3貯留部106と流体的に連通している。
【0019】
本明細書では、第1インレット210又は第1貯留部102から、射出口240に至る流路を「第1流路」と称する。すなわち、第1流路212は、細胞を含む第1流体が通る流路によって規定されていてよい。
【0020】
本明細書では、第2インレット220又は第2貯留部104から、第1流路212との合流点に至る流路を「第2流路」と称する。すなわち、第2流体は、第2流路222を通って第1流路212に合流し、それから射出口240に至る。ここで、第1流路212と第2流路222の合流点は、ノズル200内に位置することが好ましい。
【0021】
第2流路222は、ハイドロゲル調製用の第2流体を、第1流路212における第1流体のまわりに合流させるよう構成されている。これにより、第2流体は、第1流体の流れのまわりで第1流体の流れの方向に沿って流れる。すなわち、第2流体は、第1流体の流れに直交する断面において、第1流体を取り囲む。より具体的には、第1流体と第2流体は、層流を形成するように流れることが好ましい。
【0022】
本明細書では、第3インレット230又は第3貯留部106から、第1流路212との合流点に至る流路を「第3流路」と称する。すなわち、第3流体は、第3流路232を通って第1流路212と合流し、それから射出口240に至る。第3流路232は、第1流路212と第2流路222の合流点よりも下流側で、第3流体を、第1流路212に合流させる。ここで、第1流路212と第3流路232の合流点は、ノズル200内に位置することが好ましい。
【0023】
第3流体は、第1流路212と第3流路232の合流点より下流側で、第1流体のまわりを取り囲む第2流体のまわりで、第2流体の流れに沿って流れる。第3流体は、第1流体と第2流体とともに層流を形成することが好ましい。第2流体は、第3流体と接触することにより、ゲル化する。したがって、射出口240から射出された第2流体は、部分的に又は完全にゲル化した状態になる。
【0024】
第1流路212、第2流路222及び第3流路232の流路径のようなサイズは、製造する細胞ファイバの各部分のサイズに応じて適宜設計することができる。
【0025】
第1流路212は、少なくとも第1流路212と第2流路222の合流点よりも下流側では、おおむね重力に沿った方向に沿って延びていることが好ましい。これにより、第1流体の流れの方向に直交する方向に重力がかかり難いため、第1流体のまわりを流れる第2流体が、第1流体の流れの方向に直交する断面において第1流体のまわりを均等な厚みで覆い易くなる。
【0026】
ノズル200は、細胞ファイバ製造装置100に対して交換可能に構成されていることが好ましい。これにより、ノズル200内の流路に目詰まりが生じた場合、ノズル200を交換することによって目詰まりを解消することができる。特に、ノズル200の部分は、細い流路を含むため、装置の他の部分よりも目詰まりの可能性が高い。したがって、ノズル200を交換可能に構成することで、細胞ファイバ製造装置100を長期にわたって使用することができるようになる。
【0027】
細胞ファイバ製造システム100は、第1流体を射出口240に向けて送液する第1ポンプ112と、第2流体を射出口240に向けて送液する第2ポンプ114と、第3流体を射出口240に向けて送液する第3ポンプ116と、を有していてよい。第1ポンプ112、第2ポンプ114及び第3ポンプ116は、それぞれ第1流体、第2流体及び第3流体の流量や流速を調整可能に構成されていてよい。
【0028】
第1ポンプ112、第2ポンプ114及び第3ポンプ116における流量の設定は、ユーザにより調整可能に構成されていてもよく、予め設定されたプログラムにより自動調整されていてもよい。この場合、細胞ファイバ製造システム100は、各種ポンプ112,114,116,132を制御する制御部を有していてよい。
【0029】
細胞ファイバ製造システム100は、第1流体の送液状態を検知する第1センサ122と、第2流体の送液状態を検知する第2センサ124と、第3流体の送液状態を検知する第3センサ126と、を有していてよい。第1センサ122、第2センサ124及び第3センサ126は、それぞれ第1流体、第2流体及び第3流体が詰まることなく流れているかどうかを検知する。
【0030】
細胞ファイバ製造システム100は、各種の情報をユーザに報知する報知部を有していてもよい。報知部は、例えばディスプレイ、発光部又はブザーなどであってよい。例えば、第1センサ122、第2センサ124及び/又は第3センサ126により流路中に目詰まりのような異常が発見された場合、報知部は、ユーザに対して報知を行う。そのような報知は、ディスプレイに表示される警告、異常を知らせる発光又は音などであってよい。
【0031】
細胞ファイバ製造システム100は、射出口240から射出される物を受け入れるリザーバ300と、リザーバ300を搭載するステージ400と、を有していてよい。細胞ファイバの製造時に、リザーバ300は、細胞ファイバの受け入れに適した溶液を収容していることが好ましい。そのような溶液は、例えば生理食塩水であってよい。
【0032】
細胞ファイバ製造システム100は、リザーバ300と射出口240との間の距離を変動させる調整機構410を有することが好ましい。本実施形態では、ステージ400が昇降可能に構成されている。この代わりに、ノズル200が昇降可能に構成されていてよい。
【0033】
調整機構410により、細胞ファイバの製造時に、射出口240とリザーバ300内の液面との位置関係を自在に変更することができる。ここで、細胞ファイバの製造時に、射出口240は、リザーバ300内の液面よりも下、すなわちリザーバ300内の液中に位置することが好ましい。これにより、射出口240から射出される細胞ファイバが液中に直接受け入れられるため、細胞ファイバの損傷を抑制することができる。
【0034】
細胞ファイバ製造システム100は、射出口240がリザーバ300内の液体内に位置したことを推定又は検出可能な検出部を有していてよい。これにより、調整機構410は、射出口240がリザーバ300内の液体内に位置するように自動でリザーバと射出口との間の距離を変動させることができる。このような検出部は、例えば、細胞ファイバ製造システムに備えられた撮像装置(例えばカメラ)であってよい。撮像装置により、リザーバ内の液面とノズルの射出口240との接触を検知することができる。
【0035】
細胞ファイバ製造システム100は、第1流路212、第2流路222及び第3流路232のうちの少なくとも一部を洗浄する洗浄機構を有していてよい。本実施形態では、細胞ファイバ製造システム100は、洗浄液を貯留する洗浄容器130と、洗浄容器130から洗浄液を送液可能な洗浄用ポンプ132と、を有していてよい。洗浄液は、生理食塩水であることが好ましい。
【0036】
洗浄容器130は、第1流路212、第2流路222及び第3流路232のうちの少なくとも一か所に洗浄流路134を介して流体的に連通していることが好ましい。すなわち、洗浄流路134は、第1流路212、第2流路222及び第3流路232のうちの少なくとも一か所に洗浄液を流入させることができる。これにより、洗浄流路を介して第1流路と第2流路の少なくとも一部を洗浄することができる。
【0037】
洗浄用ポンプ132は、洗浄流路134から射出口240まで洗浄液を送液するよう構成されていてよい。これにより、洗浄流路134から、第1流路212、第2流路222及び/又は第3流路232を経て、射出口240まで洗浄液を流すことができる。したがって、流路212,222,232内の目詰まりを抑制することができる。また、細胞ファイバ製造システム100を分解することなく流路212,222,232の洗浄ができるというメリットも生じる。
【0038】
洗浄流路134は、第1流路212、第2流路222及び第3流路232のうち、目詰まりを起こし易い部分に洗浄液を流すことができる位置に連通していることが好ましい。
図1に示す態様では、洗浄流路134は、第3流路232に洗浄液を流入させるよう構成されている。すなわち、洗浄液は、洗浄容器130から、洗浄流路134と第3流路232を経て射出口240に達する。
【0039】
この場合は、洗浄液は、洗浄流路134を介して、第3流路232の少なくとも一部、特に第1流路212と第3流路232の合流点付近を効果的に洗浄することができる。第3流路232は、第2流体をゲル化させる第3流体用の流路である。第2流体が意図せず第3流路232に流入すると、第2流体が第3流路232内でゲル化してしまう。そのため、特に第1流路212と第3流路232の合流点付近は、目詰まりが生じやすい。本態様では、洗浄流路134が第3流路232に連通していることで、洗浄液により、特に第1流路212と第3流路232の合流点付近の目詰まり抑制又は解消することができる。
【0040】
図1に示す態様では、洗浄容器130と連通する洗浄流路134は、第3流路232に連通している。この代わりに、洗浄容器130と連通する洗浄流路134は、第1流路212及び/又は第2流路222に連通していてもよい。洗浄流路134は、流路の目詰まりが生じやすいところに洗浄液を流すことができるよう構成されていればよい。また、洗浄容器130と連通する洗浄流路134は、第1流路212、第2流路222及び第3流路232のうちの一か所だけでなく、複数か所連通していてもよい。
【0041】
弁150が、洗浄流路134に設けられていることが好ましい。弁150は、例えば開閉弁又は一方向弁であってよい。これにより、洗浄流路134は、少なくとも洗浄液を送液しない間、弁150によって閉じられる。したがって、第1流体、第2流体及び/又は第3流体が洗浄流路134へ逆流することを防止することができる。特に
図1に示す態様では、第3流体が、洗浄液の非送液中に、洗浄流路134へ逆流することを防止することができる。
【0042】
図1に示すように、弁170が、第3流路232に設けられていてもよい。弁170は、例えば開閉弁又は一方向弁であってよい。これにより、第3流体が第3ポンプ116の停止後にも、流路232、流路212に流出するのを防ぎ、第3流路232の、第1流路212と第3流路232の合流点付近で、第2流体のゲル化による目詰まりを抑制することができる。弁170は、前述した洗浄機構の代わり、又は前述した洗浄機構とともに用いられてよい。もっとも、弁170は、必須の構成ではなく、不要であれば設けられていなくてもよい。
【0043】
[細胞ファイバ製造方法]
図2は、第1実施形態における細胞ファイバ製造方法のフローチャートを示す図である。
図3は、細胞ファイバ製造開始から製造終了までの期間において、第1流体、第2流体、第3流体及び洗浄液の送液量の時間変化を示すグラフである。ここで、
図3の縦軸は、送液量の相対的な値を示すものであることに留意されたい。第1実施形態における細胞ファイバ製造方法は、前述した細胞ファイバ製造システム100を用いて実現することができる。
【0044】
まず、細胞ファイバ製造システム100のステージ400上に、例えば生理食塩水のような液体を貯留したリザーバ300を置き、ノズル200の射出口240とリザーバ300との間の距離を調節する(ステップS11)。ここで、ノズル200の射出口240が、リザーバ300の液中に浸かるように、ステージ400の高さが調整される。
【0045】
ここで、細胞ファイバ製造システム100は、射出口240がリザーバ300内の液体内に位置したことを自動で推定又は検出し、調整機構410により自動でリザーバ300と射出口240との間の距離を変動させることが好ましい。もっとも、リザーバ300と射出口240との間の距離の設定は、ユーザが手動で実施してもよい。
【0046】
次に、細胞ファイバの製造開始段階において、ハイドロゲル調製用の第2流体と洗浄液を射出口240に向けて送液する(ステップS12)。第2流体の送液は、第2ポンプ114により実施できる。洗浄液の送液は、洗浄用ポンプ132により実施できる。この際、後述するように、第1流体と洗浄液で層流を形成させることが好ましい。
【0047】
洗浄液の送液は、ハイドロゲル調製用の第2流体の送液よりも前に実施してもよく、ハイドロゲル調製用の第2流体の送液と同時期に実施してもよい。第2流体の送液と洗浄液の送液を同時期に実施すれば、細胞ファイバの製造開始段階(準備段階)の期間を削減することができる。
【0048】
次に、第2流体が、少なくとも第1流路と第2流路との合流点に達した後、好ましくは射出口240に達した後に、洗浄液の送液を停止するとともに、第3流体の送液を開始する(ステップS13)。第3流体の送液は、第3ポンプ116により実施できる。なお、洗浄液の送液の停止と第3流体の送液の開始のタイミングは、どちらが先であっても構わない。
【0049】
ただし、洗浄液の送液の停止は、第3流体の送液の開始と同時期に行われることが好ましい。これにより、洗浄液の送液の停止及び第3流体の送液の開始のプロセスに要する期間が削減される。
【0050】
より好ましくは、洗浄液の送液量を徐々に低下させつつ、第3流体の送液量を徐々に増加させる。これにより、洗浄液の送液の停止及び第3流体の送液の開始のプロセスにおいて、第2流体が第3流路232内に入ることを抑制することができる。さらに、この場合、第2流体と洗浄液で層流を形成しておき、それから洗浄液の送液量を徐々に低下させつつ、第3流体の送液量を徐々に増加させることがより好ましい。これにより、層流が形成された状態を維持したまま、洗浄液の流れを第3流体の流れに置き換えることができる。したがって、第3流体を流し始める過程で第2流体と第3流体が乱流により交じり合う可能性が低くなり、ゲル化した第2流体によりノズル200内の流路が詰まる虞をより低減することができる。
【0051】
ステップS13において、第2流体が、少なくとも第3流路232と第1流路212の合流点に達した後、特に射出口240に達した後に、第3流体が送液されるよう構成されることが好ましい。
【0052】
次に、細胞ファイバの製造開始段階で、第2流体と第3流体の両方が、少なくとも第3流路232と第1流路212の合流点に達した後、好ましくは射出口240に達した後に、第1流体の送液が開始される(ステップS14)。第1流体の送液は、第1ポンプ112により実施できる。
【0053】
これにより、第2流体と第3流体が合流した後に、第1流体が送液されることになる。すなわち、第2流体が第3流体により部分的又は完全にゲル化した後に、細胞を含む第1流体が、第2流体及び第3流体に合流し始める。つまり、細胞を含む第1流体は、細胞ファイバの先端部分が部分的に又は完全にゲル化された後に、送液される。これにより、細胞がファイバの先端から漏れ出ることをより抑制することができる。特に、細胞ファイバ内で細胞が培養された場合であっても、細胞が、細胞ファイバの先端から漏れ出ることを抑制することができる。
【0054】
次に、第1流体、第2流体及び第3流体の送液を、所定の期間維持する(ステップS15)。この期間、第1流体、第2流体及び第3流体の合流により生成された物が、射出口240から射出される。具体的には、射出される物は、第2流体と第3流体の合流により生成されたおおむね管状のハイドロゲルと、当該ハイドロゲル内に充填された細胞を含む第1流体と、を含む細胞ファイバである。ステップS15における送液期間の長さに応じて、細胞ファイバの長さを調整することができる。
【0055】
細胞ファイバの製造停止段階において、まず、第1流体の送液を停止する(ステップS16)。第1流体の送液を停止した後も、所定の期間、第2流体及び第3流体の送液を継続することが好ましい。これにより、細胞ファイバの後端部分は(ゲル化された)第2流体で十分に閉じられることになる。これにより、細胞ファイバ内の細胞が、ファイバの後端から漏れ出ることを抑制することができる。
【0056】
次に、細胞ファイバの製造停止段階において、第3流体の送液を停止するとともに、洗浄液の送液を開始する(ステップS17)。洗浄液の送液の停止は、第3流体の送液の開始と同時期に行われることが好ましい。これにより、ノズル200内を流れる流体が、徐々に、第3流体から洗浄液に置き換えられる。その結果、ノズル200内の第3流体は、洗浄液によって射出口240から押し出される。これにより、第2流体が、第3流体と接触しなくなり、第2流体のゲル化が抑制されて停止段階における目詰まりの発生を抑制することができる。
【0057】
次に、細胞ファイバの製造停止段階において、第2流体の送液と洗浄液の送液を停止する(ステップS18)。洗浄液の送液の停止は、第2流体の送液の停止前であってもよく、第2流体の送液の停止後であってもよい。また、洗浄液の送液の停止は、第2流体の送液の停止と同時であってもよい。
【0058】
好ましくは、洗浄液の送液の停止は、第2流体の送液の停止と同時又はそれ以降である。これにより、第2流体が、第3流路232へ逆流することを抑制することができる。
【0059】
前述した方法では、細胞ファイバの製造停止段階で、第3流体の送液が停止された後に第2流体の送液が停止される。この場合、第2流体をゲル化させる第3流体を停止した後にも第2流体が流れる期間が存在する。したがって、第2流体が、第3流体の残留物を射出口240から押し出す期間が存在する。そのため、細胞ファイバの製造停止後に、ゲル化した第2流体がノズル200内に留まって目詰まりを起こすことを抑制することができる。
【0060】
前述のステップS11〜S18の後に、リザーバ300内に生成された細胞ファイバは、培養液中に入れ替えられてもよい。この場合、細胞ファイバ内に細胞が閉じ込められているため、細胞を培養液中に容易に移し替えることができる。また、リザーバ300内の廃液に細胞がほとんど混入しないため、廃液の処理も容易になる。
【0061】
細胞ファイバ内の細胞は、培養液中に移し替えられた状態で所定の期間、培養されてもよい。ファイバの延在方向の両端がハイドロゲルで閉じられているため、細胞が増えた場合であっても、細胞は、細胞ファイバ内に閉じ込められた状態を維持する。
【0062】
前述の細胞ファイバの製造開始段階又は停止段階において、洗浄液、第2流体及び/又は第3流体が、流路中の任意の位置又は射出口240に達したかどうかは、人の目又は細胞ファイバ製造システムにより人為的又は自動的に判断することができる。例えば、細胞ファイバ製造システムにカメラを搭載し、洗浄液、第2流体及び/又は第3流体が射出口240から射出されたかどうかをカメラで検知することで、細胞ファイバ製造システムは自動的に判断することができる。この代わりに、細胞ファイバ製造システムは、前述した第1センサ122、第2センサ124と、第3センサ126を用いて、洗浄液、第2流体及び/又は第3流体が、流路中の任意の位置又は射出口240に達したかどうかを判断してもよい。この場合、細胞ファイバ製造システムは、センサ122,124,126と、流路中の任意の位置又は射出口240との間の距離と、各種の流体の流速と、に基づいて、各種の流体がセンサ122,124,126から流路中の任意の位置又は射出口240に到達するまでの時間を推定すればよい。これにより、細胞ファイバ製造システムは、第1センサ122、第2センサ124と、第3センサ126を用いて、洗浄液、第2流体及び/又は第3流体が、流路中の任意の位置又は射出口240に達したかどうかを自動的に判断することができる。
【0063】
図4は、一実施形態における細胞ファイバの顕微鏡写真による像を示す図である。
図4は、前述した装置及び方法により製造した細胞ファイバの顕微鏡写真である。
図4は、細胞ファイバ内で長期間細胞が培養された後の状態を示している。
【0064】
この細胞ファイバは、ファイバに沿って並んだ複数の細胞800と、ファイバの延在方向に交差する断面において細胞の周りを覆うハイドロゲル810と、を含む。ハイドロゲル810は、細胞を閉じ込めるよう、ファイバの延在方向の両端820で閉じられている。このハイドロゲル810は、前述した第3流体によりゲル化された第2流体により構成されている。
図4に示す例では、第2流体としてアルギン酸ナトリウムが使用され、第3流体として塩化カルシウムが使用された。また、
図4に示す例では、第1流体内の細胞は、iPS細胞由来の心筋細胞である。
【0065】
細胞ファイバの外径は、特に限定されないが、例えば1μm〜5mm程度の範囲であってよい。細胞ファイバの長さは、特に限定されない。細胞ファイバの長さは、例えば、20mm〜100cm程度であってよい。細胞ファイバを構成するハイドロゲル(外殻)の内径は特に限定されないが、例えば100nm〜1000μm程度の範囲であってよい。さらに、細胞ファイバの延在方向における両端において、細胞を含まないゲル部分の領域の長さは、例えば細胞ファイバの外形の10倍以上であることが好ましい。例えば、細胞ファイバの延在方向における両端において、細胞を含まないゲル部分の領域の長さは、1mm、好ましくは5mm、さらに好ましくは20mmより大きければよい。これにより、ファイバ内の細胞が、ファイバの端部から漏れることを抑制することができる。
【0066】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態における細胞ファイバ製造方法のフローチャートを示す図である。
図6は、細胞ファイバ製造開始から製造終了までの期間において、第1流体、第2流体、第3流体及び洗浄液の送液量の時間変化を示すグラフである。ここで、
図6の縦軸は、送液量の相対的な値を示すものであることに留意されたい。第2実施形態における細胞ファイバ製造方法は、例えば、第1実施形態で説明した細胞ファイバ製造システム100を用いて実現することができる(
図1も参照)。
【0067】
まず、細胞ファイバ製造システム100のステージ400上に、例えば生理食塩水のような液体を貯留したリザーバ300を置き、ノズル200の射出口240とリザーバ300との間の距離を調節する(ステップS31)。ステップS31は、第1実施形態におけるステップS11と同様である。
【0068】
次に、細胞ファイバの製造開始段階において、必要に応じて、洗浄液を射出口240に向けて送液する(ステップS32)。洗浄液の送液は、洗浄用ポンプ132により実施できる。
【0069】
第1流体、第2流体又は第3流体の送液前に洗浄液を流すことで、流路中に残留しているものを押し出すことができる。特に、ノズル200内の流路中に第2流体が残留している状態で第3流体が流入すると、第2流体がゲル化し、目詰まりを起こすことがある。最初に洗浄液を送液することで、このような目詰まりの可能性を低減することができる。
【0070】
次に、洗浄液の送液を停止し、第2流体をゲル化するための第3流体の送液を射出口240に向けて送液する(ステップS33)。第3流体の送液は、第3ポンプ116により実施できる。
【0071】
次に、ハイドロゲル調製用の第2流体を射出口240に向けて送液する(ステップS34)。第2流体の送液は、第2ポンプ114により実施できる。第2流体の送液は、第3流体が、少なくとも第3流路232と第2流路222の合流点に達した後、好ましくは射出口240に達した後に、開始される。より好ましくは、第2流体の送液は、第3流体の流れが安定した後に開始される。ステップS34において、第2流体と第3流体で層流が形成されることが好ましい。
【0072】
次に、細胞ファイバの製造開始段階で、第2流体と第3流体の両方が、少なくとも第3流路232と第1流路212の合流点に達した後、好ましくは射出口240に達した後に、第1流体の送液が開始される(ステップS35)。第1流体の送液は、第1ポンプ112により実施できる。
【0073】
これにより、第2流体と第3流体が合流した後に、第1流体が送液されることになる。すなわち、第2流体が第3流体により部分的又は完全にゲル化した後に、細胞を含む第1流体が、第2流体及び第3流体に合流し始める。
【0074】
次に、第1流体、第2流体及び第3流体の送液を、所定の期間維持する(ステップS36)。ステップS36は、第1実施形態におけるステップS15と同様である。
【0075】
次に、細胞ファイバの製造停止段階において、まず、第1流体の送液を停止する(ステップS37)。第1流体の送液を停止した後も、所定の期間、第2流体及び第3流体の送液を継続することが好ましい。これにより、細胞ファイバの後端部分は(ゲル化された)第2流体で十分に閉じられることになる。これにより、細胞ファイバ内の細胞が、ファイバの後端から漏れ出ることを抑制することができる。
【0076】
次に、細胞ファイバの製造停止段階において、第2流体の送液を停止する(ステップS38)。次に、第3流体の送液を停止する(ステップS39)。この代わりに、第3流体の送液を停止してから、第2流体の送液を停止してもよい。
【0077】
次に、洗浄液を射出口240に向かって送液する(ステップS40)。第2流体と第3流体の送液の停止後に、洗浄液を送液することで、ノズル200内の流路に残留物が残存することを抑制することができる。
【0078】
第2実施形態では、製造開始段階において、第3流体の送液を開始してから、第2流体の送液を開始している。この代わりに、製造開始段階において、第2流体と第3流体は、実質的に同じタイミングで送液を開始してもよい。
【0079】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態における細胞ファイバ製造システムの全体構成を示す模式図である。
図7において、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号が付されている。また、第1実施形態と同様の構成については、その説明を省略することがある。
【0080】
細胞ファイバ製造システム100は、第1貯留部102と、第2貯留部104と、ノズル200と、リザーバ300と、を有していてよい。第1貯留部102に貯留される第1流体は、第1実施形態と同様である。第2貯留部104に貯留される第2流体は、第1実施形態と同様である。
【0081】
第3実施形態では、細胞ファイバ製造システム100は、第3貯留部106や第3流路232を含んでいない。第2流体をゲル化する第3流体は、細胞ファイバの製造段階で、リザーバ300内に入れられている。なお、第3流体の材料は、第1実施形態と同様であってよい。
【0082】
第3実施形態では、射出口240は、第1流体と第2流体を一緒にリザーバ300内の第3流体内へ射出する。これにより、第2流体は、リザーバ300内で第3流体と接触し、ゲル化される。
【0083】
細胞ファイバ製造システム100は、第1流路212及び第2流路222のうちの少なくとも一部を洗浄する洗浄機構を有していてよい。第3実施形態では、洗浄流路134は、第2流路222に連通し、第2流路222に洗浄液を流入させるよう構成されている。この代わりに、洗浄流路134は、第1流路212に連通し、第1流路212に洗浄液を流入させるよう構成されていてもよい。
【0084】
[細胞ファイバ製造方法]
図8は、第3実施形態における細胞ファイバ製造方法のフローチャートを示す図である。
図9は、細胞ファイバ製造開始から製造終了までの期間において、第1流体、第2流体及び洗浄液の送液量の時間変化を示すグラフである。ここで、
図9の縦軸は、送液量の相対的な値を示すものであることに留意されたい。第3実施形態における細胞ファイバ製造方法は、
図7に示す細胞ファイバ製造システム100を用いて実現することができる。
【0085】
まず、細胞ファイバ製造システム100のステージ400上に、例えば生理食塩水のような液体を貯留したリザーバ300を置き、ノズル200の射出口240とリザーバ300との間の距離を調節する(ステップS21)。ここで、ノズル200の射出口240が、リザーバ300内の第3流体中に浸かるように、ステージ400の高さが調整される。
【0086】
ここで、細胞ファイバ製造システム100は、射出口240がリザーバ300内の第3流体内に位置したことを自動で推定又は検出し、調整機構410により自動でリザーバ300と射出口240との間の距離を変動させることが好ましい。もっとも、リザーバ300と射出口240との間の距離の設定は、ユーザが手動で実施してもよい。
【0087】
次に、細胞ファイバの製造開始段階において、洗浄液を射出口240に向けて送液する(ステップS22)。次に、洗浄液の送液を停止するとともに、ハイドロゲル調製用の第2流体を射出口240に向けて送液する(ステップS23)。
【0088】
次に、第2流体が、少なくとも第1流路と第2流路との合流点に達した後、好ましくは射出口240に達した後に、第1流体の送液を開始する(ステップS24)。この際、第1流体と第2流体で層流を形成させることが好ましい。細胞を含む第1流体が、第2流体よりも後に送液されるため、細胞ファイバの先端部分は(ゲル化された)第2流体で十分に閉じられることになる。これにより、細胞ファイバの製造中に細胞がファイバの先端から漏れ出ることを抑制することができる。
【0089】
次に、第1流体及び第2流体の送液を、所定の期間維持する(ステップS25)。この期間、第1流体及び第2流体の合流物が、射出口240から射出される。第2流体は、リザーバ300内で第3流体と接触し、ゲル化される。これにより、おおむね管状のハイドロゲルと、当該ハイドロゲル内に充填された細胞を含む第1流体と、を含む細胞ファイバが製造される。ステップS25における送液期間の長さに応じて、細胞ファイバの長さを調整することができる。
【0090】
細胞ファイバの製造停止段階において、まず、第1流体の送液を停止する(ステップS26)。第1流体の送液を停止した後も、所定の期間、第2流体の送液を継続することが好ましい。これにより、細胞ファイバの後端部分は(ゲル化された)第2流体で十分に閉じられることになる。したがって、細胞ファイバ内の細胞が、ファイバの後端から漏れ出ることを抑制することができる。
【0091】
次に、細胞ファイバの製造停止段階において、第2流体の送液を停止するとともに、洗浄液の送液を開始する(ステップS27)。これにより、細胞ファイバの製造停止段階において、ノズル200内を洗浄液で洗浄することができる。
【0092】
次に、細胞ファイバの製造停止段階において、洗浄液の送液を停止する(ステップS28)。第1実施形態と同様に、前述のステップS21〜S28の後に、リザーバ300内に生成された細胞ファイバは、培養液中に入れ替えられてもよい。
【0093】
上述したように、実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0094】
例えば、前述した第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態における細胞ファイバ製造方法は、開始段階又は停止段階で洗浄液を送液するステップを含む。しかしながら、洗浄液を送液するステップは、必須のステップではなく、必要に応じて実施すればよい。具体的には、洗浄液を送液するステップは、製造開始段階と停止段階の一方又は両方で実施されなくてもよい。製造開始段階と停止段階の一方又は両方で洗浄が実施されない場合であっても、上記の第1流体、第2流体及び/又は第3流体を流す順番は、前述したとおりに行えばよい。製造開始段階と停止段階で洗浄液を送液するステップが無い場合であっても、例えばメンテナンスのような適時のタイミングで洗浄を行えるよう、細胞ファイバ製造システムは、前述した洗浄流路134等を備えていることが好ましい。
【0095】
また、各実施形態で説明した各種の構成は、可能な限り、組み合わせ及び/交換可能であることに留意されたい。例えば、細胞ファイバ製造方法において、第1実施形態で説明した製造開始段階のプロセスと、第2実施形態で説明した製造停止段階のプロセスを組み合わせてもよい。また、第2実施形態で説明した製造開始段階のプロセスと、第3実施形態で説明した製造停止段階のプロセスを組み合わせてもよい。
【0096】
図2、
図5及び
図8に示すフローチャートは、人により手動又は半手動で行われてもよい。例えば、洗浄用ポンプ132、第1ポンプ112、第2ポンプ114及び第3ポンプ116の設定の切り替えは、人により手動で行われてもよい。この代わりに、洗浄用ポンプ132、第1ポンプ112、第2ポンプ114及び第3ポンプ116の設定条件の切り替えは、コンピュータ、例えば細胞ファイバ製造装置に搭載されたコンピュータが自動で行ってもよい。この場合、各種ポンプの設定条件、すなわち送液プロトコルは、プログラムにより予め決められていてよい。特に、細胞ファイバの製造開始段階、及び/又は細胞ファイバの製造停止段階における送液プロトコルは、予め決められたプログラムに従い実行されることが好ましい。
【0097】
図2、
図5及び
図8に示すフローチャートを参照して説明した前述の細胞ファイバ製造方法をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれることに留意されたい。このようなコンピュータプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)に格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0098】
前述した実施形態から少なくとも以下のような発明も説示されていることが理解できる。
【0099】
一態様に係る細胞ファイバ製造システムは、細胞を含む第1流体を流す第1流路と、ハイドロゲル調製用の第2流体を、前記第1流路における前記第1流体のまわりに合流させる第2流路と、少なくとも前記第1流体と前記第2流体を一緒に吐出する射出口と、を有する。細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造開始段階において、前記第2流体が、少なくとも前記第1流路と前記第2流路との合流点に達した後に、前記第1流体が送液されるよう構成されている。好ましくは、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造開始段階において、前記第2流体が、前記射出口に達した後に、前記第1流体が送液されるよう構成されている。
【0100】
細胞を含む第1流体が、第2流体よりも後に送液されるため、細胞ファイバの先端部分は(ゲル化された)第2流体で十分に閉じられることになる。これにより、細胞ファイバの製造中に細胞がファイバの先端から漏れ出ることを抑制することができる。なお、細胞ファイバから細胞が漏れた場合に、細胞がどこから漏れたかということを突き止めることは必ずしも容易ではない。本発明者は、条件によっては、細胞ファイバの先端部分又は後端部分から細胞が漏れ出るということを発見し、本発明に至ったことに留意されたい。
【0101】
別の態様に係る細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造停止段階で、前記第1流体の送液を停止した後に前記第2流体の送液を停止するよう構成されている。
【0102】
この態様では、細胞を含む第1流体の送液の停止後にも第2流体が送液されるため、細胞ファイバの後端部分は(ゲル化された)第2流体で十分に閉じられることになる。これにより、細胞ファイバの製造中に細胞がファイバの後端から漏れ出ることを抑制することができる。
【0103】
別の一態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、前記第2流体をゲル化させる第3流体を、前記第1流路と前記第2流路との合流点よりも下流側で、前記第1流路に合流させる第3流路を有する。
【0104】
この態様では、細胞を含む第1流体とハイドロゲル調製用の第2流体を射出口から射出する前に、第3流体で第2流体を部分的又は完全にゲル化させることができる。したがって、より安定した状態で、細胞ファイバを射出口から射出させることができるため、細胞ファイバの損傷を抑制することができる。また、第2流体をゲル化させる第3流体をノズル内で合流させる態様をとる場合、第3流体の流速を調整することにより、細胞ファイバの太さ等を調整することができるというメリットがある。
【0105】
別の一態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造開始段階で、前記第2流体と前記第3流体の両方が少なくとも前記第3流路と前記第1流路の合流点に達した後に、前記第1流体が送液されるよう構成されている。好ましくは、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造開始段階において、前記第2流体と前記第3流体の両方が前記射出口に達した後に、前記第1流体が送液されるよう構成されている。
【0106】
この態様では、第2流体と第3流体が合流した後に、第1流体が送液されることになる。すなわち、細胞を含む第1流体は、細胞ファイバの先端部分が部分的に又は完全にゲル化された後に、送液される。したがって、細胞ファイバの製造中に細胞がファイバの先端から漏れ出ることをより抑制することができる。
【0107】
別の一態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造開始段階で、前記第2流体が、前記第3流路と前記第1流路の合流点に達した後に、前記第3流体が送液されるよう構成されている。好ましくは、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造開始段階において、前記第2流体が前記射出口に達した後に、前記第3流体が送液されるよう構成されている。
【0108】
この態様では、第2流体の流れを安定させてから第3流体を流すことになるため、第2流体と第3流体とで層流を形成し易くなる。これにより、第2流体と第3流体が乱流により交じり合う可能性が低くなり、ゲル化した第2流体によりノズル200内の流路が詰まる虞を低減することができる。
【0109】
別の一態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造停止段階で、前記第1流体の送液を停止した後に前記第2流体と前記第3流体の送液を停止するよう構成されている。
【0110】
この態様では、細胞を含む第1流体の送液が停止された段階でも、第2流体と第3流体が合流し射出されることになる。すなわち、細胞ファイバの先端部分が部分的に又は完全にゲル化され、当該後端部分がハイドロゲルにより閉じられる。したがって、細胞がファイバの後端から漏れ出ることをより抑制することができる。
【0111】
別の一態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造停止段階で、前記第3流体の送液を停止した後に前記第2流体の送液を停止するよう構成されている。
【0112】
この態様では、第2流体をゲル化させる第3流体を停止した後にも第2流体が流れる期間が存在する。したがって、第2流体が、第3流体の残留を射出口から押し出すことになる。そのため、細胞ファイバの製造停止後に、ゲル化した流体が流路内に留まって目詰まりを起こすことを抑制することができる。
【0113】
別の一態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、前記第1流路と前記第2流路のうちの少なくとも一か所に洗浄液を流入させる洗浄流路を有する。
【0114】
この態様では、洗浄流路を介して第1流路と第2流路の少なくとも一部を洗浄することができる。したがって、流路の目詰まりを抑制することができる。また、細胞ファイバ製造システムを分解することなく流路の洗浄ができるというメリットも生じる。
【0115】
別の一態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、前記第3流路に洗浄液を流入させる洗浄流路を有する。
【0116】
この態様では、洗浄流路を介して、第3流路の少なくとも一部を洗浄することができる。第3流路は、第2流体をゲル化させる第3流体用の流路である。第2流体が意図せず第3流路に流入すると、第2流体が第3流路内でゲル化してしまう。これにより、第3流路で目詰まりが生じることがある。洗浄流路が第3流路に連通していることで、洗浄液により、このような第3流路内の目詰まりを解消することができる。
【0117】
別の一態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、前記洗浄流路から前記射出口まで前記洗浄液を送液する送液用ポンプを有する。
【0118】
この態様では、送液用ポンプによって、洗浄流路から、第1流路、第2流路及び/又は第3流路を経て、射出口まで洗浄液を流すことができる。また、第3流体は、第2流体をゲル化させるものであるため、第3流体が通る流路では、目詰まりが発生しやすい。したがって、洗浄液は、第3流路と第1流路の合流点と、合流点よりも下流を通るよう構成されることがより好ましい。
【0119】
別の態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造開始段階で、少なくとも前記第1流体の送液の開始前に、前記洗浄液の送液を行うよう構成されている。
【0120】
この態様では、ノズル内の流路を洗浄した後に細胞ファイバの製造を開始できる。
【0121】
別の態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造停止段階で、少なくとも前記第1流体の送液の停止後に、前記洗浄液の送液を行うよう構成されている。
【0122】
この態様では、細胞ファイバの製造停止段階でノズル内の流路を洗浄することができるため、停止後に流路内に目詰まりが生じることを抑制できる。
【0123】
別の態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造開始段階で、少なくとも前記第3流体の送液の開始時又は開始前に、前記洗浄液の送液を行うよう構成されている。
【0124】
この態様では、ノズル内の流路を洗浄した後に第2流体をゲル化し始めることができる。すなわち、ハイドロゲルを生成する前に、ノズル内の流路を洗浄することができる。
【0125】
別の態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、細胞ファイバの製造停止段階で、少なくとも前記第3流体の送液の停止時又は停止後に、前記洗浄液の送液を行うよう構成されている。
【0126】
この態様では、製造停止段階において、洗浄液の送液により第2流体が第3流路に逆流することを抑制できる。また、第2流体が第3流路に混入して第3流路内でゲル化したとしても、洗浄液の送液により射出口から押し出すことができる。これにより、ノズル200内の目詰まりをより抑制できる。
【0127】
別の態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、前記洗浄流路に設けられた弁を有する。弁は、例えば開閉弁又は一方向弁であってよい。
【0128】
この態様では、洗浄流路は、少なくとも洗浄液を送液しない間、弁によって閉じられるため、第1流体、第2流体及び/又は第3流体が洗浄流路へ逆流することを防止することができる。
【0129】
別の態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、前記第3流路に設けられた弁を有する。弁は、開閉弁又は一方向弁であってよい。
【0130】
この態様では、第2流体が、第3流路に逆流することを防止することができる。これにより、第3流路の、第1流路と第3流路の合流点付近で、第2流体のゲル化による目詰まりを抑制することができる。
【0131】
別の態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、前記射出口から射出される物を受け入れるリザーバと、前記リザーバと前記射出口との間の距離を変動させる調整機構と、を有する。
【0132】
この態様では、細胞ファイバの製造時に、射出口とリザーバ内の液面との位置関係を自在に変更することができる。
【0133】
別の態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、前記射出口が前記リザーバ内の液体内に位置したことを推定又は検出可能な検出部を有する。
【0134】
この態様では、細胞ファイバの製造前に、射出口がリザーバ内の液体内に位置していることを検知できる。これにより、調整機構は、射出口がリザーバ内の液体内に位置するように自動でリザーバと射出口との間の距離を変動させることができる。
【0135】
別の態様によれば、細胞ファイバ製造システム及び/又は方法は、前記第1流路と前記第2流路と前記第3流路と前記射出口を含むノズルを有し、前記ノズルは交換可能に構成されている。
【0136】
この態様では、ノズル200内の流路に目詰まりが生じた場合、ノズルを交換することによって目詰まりを容易に解消することができる。したがって、ノズルを交換可能に構成することで、細胞ファイバ製造システムを長期にわたって使用することができるようになる。
【0137】
別の態様によれば、細胞ファイバ製造システム用のノズルは、細胞を含む第1流体を流す第1流路と、ハイドロゲル調製用の第2流体を、前記第1流路における前記第1流体のまわりに合流させる第2流路と、前記第2流体をゲル化させる第3流体を、前記第1流路と前記第2流路との合流点よりも下流側で、前記第1流路に合流させる第3流路と、少なくとも前記第1流体と前記第2流体と前記第3流体を一緒に吐出する射出口と、を有する。このノズルは、前記細胞ファイバ製造システムに対して交換可能に構成されている。
【0138】
別の態様によれば、細胞ファイバは、ファイバに沿って並んだ複数の細胞と、前記ファイバの延在方向に交差する断面において前記細胞の周りを覆うハイドロゲルと、を含む。前記ハイドロゲルは、前記細胞を閉じ込めるよう、前記ファイバの延在方向の両端で閉じられている。
【0139】
この態様では、細胞が、ファイバの前後の両端でハイドロゲルによって閉じられる。したがって、ファイバ内で細胞を培養したとしても、細胞ファイバの製造中に細胞がファイバの先端又は後端から漏れ出ることを抑制することができる。