(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1面と対向する方向から見て、前記保護シートは前記粘着シートの外側まで広がっており、前記貫通孔は、前記保護シートのなかで前記粘着面に貼り付けられていない領域に位置する
請求項1に記載の経皮投与デバイス収容体。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
図1〜
図3を参照して、経皮投与デバイス収容体の第1実施形態について説明する。
[経皮投与デバイス収容体の構成]
図1〜
図3を参照して、経皮投与デバイス収容体の構成について説明する。
【0029】
図1が示すように、経皮投与デバイス収容体10は、経皮投与デバイス20と、経皮投与デバイス20を収容する収容部50とを備えている。
経皮投与デバイス20は、投与部の一例であるマイクロニードル21と、マイクロニードル21を薬剤の投与対象に固定するための粘着シート24と、粘着シート24の粘着面を保護する保護シート27とを備えている。
【0030】
収容部50は、第1本体部51と第2本体部52とから構成され、第1本体部51と第2本体部52との間に経皮投与デバイス20を挟むように、経皮投与デバイス20を収容している。
【0031】
図2が示すように、マイクロニードル21は、板状を有する基体22と、基体22から突き出た突起部23とを備えている。基体22は、突起部23の位置する面である第1面22Sと、第1面22Sとは反対側の面である第2面22Tとを有し、第1面22Sは突起部23の基端を支持している。すなわち、突起部23は、第1面22Sから突き出ている。
【0032】
第1面22Sと対向する方向である対向方向から見た基体22の形状は特に限定されず、基体22は、円形状や楕円形状であってもよいし、矩形形状であってもよいし、これらの形状とは異なる形状を有していてもよい。
【0033】
突起部23の形状は、円錐形状であってもよいし、角錐形状であってもよい。また、突起部23は、例えば、円柱形状や角柱形状のように、先端が尖っていない形状であってもよい。また、突起部23は、例えば、円柱に円錐が積層された形状のように、2以上の立体が結合した形状であってもよい。要は、突起部23は皮膚を刺すことが可能な形状であればよい。また、突起部23の側壁には、括れや段差が設けられていてもよい。
【0034】
マイクロニードル21が備える突起部23の数は、1以上であれば特に限定されない。マイクロニードル21が複数の突起部23を備える場合、複数の突起部23は、基体22の第1面22Sに規則的に並んでいてもよいし、不規則に並んでいてもよい。例えば、複数の突起部23は、格子状や同心円状に配列される。
【0035】
突起部23の長さHは、基体22の厚さ方向における、第1面22Sから突起部23の先端までの長さである。突起部23の長さHは、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、突起部23の長さHは、この範囲のなかで、突起部23によって穿孔の対象に形成される孔に必要な深さに応じて決定される。穿孔の対象が人体の皮膚であって、孔の底が角質層内に設定される場合、長さHは10μm以上300μm以下であることが好ましく、30μm以上200μm以下であることがより好ましい。孔の底が角質層を貫通し、かつ、神経層へ到達しない深さに設定される場合、長さHは200μm以上700μm以下であることが好ましく、200μm以上500μm以下であることがより好ましく、200μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。孔の底が真皮に到達する深さに設定される場合、長さHは200μm以上500μm以下であることが好ましい。孔の底が表皮に到達する深さに設定される場合、長さHは200μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0036】
突起部23の幅Dは、基体22の第1面22Sに沿った方向における突起部23の長さの最大値である。例えば、突起部23が正四角錐形状や正四角柱形状を有するとき、基体22の第1面22Sにて、突起部23の底部によって区画された正方形における対角線の長さが、突起部23の幅Dである。また、例えば、突起部23が円錐形状や円柱形状を有するとき、突起部23の底部によって区画された円の直径が、突起部23の幅Dである。突起部23の幅Dは、1μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0037】
突起部23の幅Dに対する長さHの比であるアスペクト比A(A=H/D)は、1以上10以下であることが好ましい。
突起部23の先端が尖った形状に形成され、突起部23によって角質層を貫通する深さの孔を形成する場合、突起部23の先端角θは5°以上30°以下であることが好ましく、10°以上20°以下であることがより好ましい。先端角θは、基体22の厚さ方向に沿った断面において、突起部23の先端が形成する角度の最大値である。例えば、突起部23が正四角錐形状を有するとき、突起部23の先端角θは、突起部23の底部が区画する正方形の対角線を底辺とし、正四角錐の頂点を頂点とする三角形の頂角である。
【0038】
突起部23の幅D、アスペクト比A、および、先端角θは、突起部23によって形成される孔が必要とする容積等に応じて決定される。長さH、幅D、アスペクト比A、および、先端角θが上記の範囲内であれば、突起部23の形状が、皮膚に対する孔の形成に適した形状となる。
【0039】
粘着シート24は、基材シート26と、基材シート26が有する2つの面のうちの一方を覆う粘着層25とを備えている。粘着層25における基材シート26と接する面とは反対側の面が、粘着シート24の粘着面24Sであり、基材シート26における粘着層25と接する面とは反対側の面が、粘着シート24の非粘着面24Tである。すなわち、粘着シート24において、非粘着面24Tは、粘着面24Sとは反対側の面である。粘着面24Sには、基体22の第2面22Tが貼り付けられており、これによって、粘着シート24にマイクロニードル21の基体22が貼り付けられている。
【0040】
対向方向から見て、粘着シート24の外形は基体22よりも大きく、基体22の外側に粘着シート24の粘着面24Sの一部がはみ出している。対向方向から見た粘着シート24の形状は特に限定されず、粘着シート24は、円形状や楕円形状であってもよいし、矩形形状であってもよいし、これらの形状とは異なる形状を有していてもよい。
【0041】
保護シート27は、粘着シート24の粘着面24Sのなかで、基体22の外側にはみ出している領域を覆っている。保護シート27は、経皮投与デバイス20の使用者が、保護シート27と粘着シート24とを指で摘んでこれらを相反する方向に引っ張ることにより生じる程度の力によって、保護シート27を粘着シート24から剥離することが可能に、粘着シート24の粘着面24Sに貼り付けられている。
【0042】
対向方向から見て、保護シート27の外形は粘着シート24の外形よりも大きく、保護シート27は、粘着シート24の外側まで広がっている。すなわち、対向方向から見て、保護シート27は、粘着シート24と重なっていない領域、換言すれば、粘着面24Sに貼り付けられていない領域を含んでいる。対向方向から見た保護シート27の形状は特に限定されず、保護シート27は、円形状や楕円形状であってもよいし、矩形形状であってもよいし、これらの形状とは異なる形状を有していてもよい。
【0043】
保護シート27は、その中央部に、マイクロニードル21の基体22と同程度か基体22よりもやや大きい開口28を有しており、開口28内にマイクロニードル21が位置している。また、保護シート27は、保護シート27のなかで粘着面24Sに貼り付けられていない領域に、保護シート27を厚さ方向に貫通する貫通孔29を有している。
【0044】
収容部50を構成する第1本体部51は、マイクロニードル21における基体22の第1面22Sと対向する。すなわち、第1本体部51は、突起部23の先端と対向する。第1本体部51は、対向方向から見て、経皮投与デバイス20を覆う程度の大きさに広がり、経皮投与デバイス20と対向する部分に、収容凹部53と、対向凹部54とを有している。
【0045】
収容凹部53は、マイクロニードル21と対向する位置に配置されており、突起部23の先端部分は、収容凹部53内に位置する。対向凹部54は、対向方向から見て、保護シート27の貫通孔29と重なる位置に配置されている。対向凹部54の周囲で、第1本体部51は、保護シート27に接している。
【0046】
第2本体部52は、粘着シート24の非粘着面24Tと対向する。換言すれば、第2本体部52は、粘着シート24を介して、マイクロニードル21の基体22の第2面22Tと対向する。第2本体部52は、粘着シート24の非粘着面24Tと接して経皮投与デバイス20を支持している。
【0047】
第2本体部52は、基体22の第2面22Tと対向する方向から見て、経皮投与デバイス20を覆う程度の大きさに広がっている。第2本体部52は、経皮投与デバイス20と対向する部分に、第2本体部52から経皮投与デバイス20に向かって突き出た円柱形状の対向凸部55を備えている。
【0048】
対向凸部55は、保護シート27の貫通孔29を通り、対向凸部55の先端部分は、第1本体部51の対向凹部54に嵌められている。対向凸部55と対向凹部54との嵌合によって、第1本体部51と第2本体部52との互いに対する位置が固定され、経皮投与デバイス20と収容部50とがひとまとまりの構造体となっている。
【0049】
上記構成では、第1本体部51が保護シート27と接し、第2本体部52が粘着シート24と接して、第1本体部51と第2本体部52との間に経皮投与デバイス20が挟まれているため、第1本体部51と第2本体部52との間で経皮投与デバイス20の位置が移動することが抑えられる。それゆえ、例えば経皮投与デバイス収容体10の運搬時等に、経皮投与デバイス収容体10が振動したとしても、収容部50内で経皮投与デバイス20が動いて突起部23が収容部50の内壁にぶつかることが抑えられる。したがって、突起部23の変形が抑えられるため、突起部23の穿刺機能が低下することが抑えられる。
【0050】
図3は、第1本体部51を取り外した状態で、対向方向から、第2本体部52に組み付けられた経皮投与デバイス20を見た図である。
図3が示すように、保護シート27の貫通孔29は、保護シート27の外縁よりも内側の領域のなかで、保護シート27の外縁に近い部分に位置している。例えば、保護シート27は略矩形形状を有し、向かい合う2つの短辺のそれぞれの中央部の付近に、貫通孔29が位置している。これら2つの貫通孔29は、対向方向から見て、マイクロニードル21を挟んで対称な位置に位置している。すなわち、対向方向から見て、2つの貫通孔29は、マイクロニードル21の基体22の周囲に均等に配置されている。
【0051】
第2本体部52の対向凸部55は、対向方向から見て、貫通孔29と重なる位置、詳細には、貫通孔29内に位置している。対向凸部55は貫通孔29を通る大きさを有していればよく、対向方向から見て、対向凸部55の大きさは、貫通孔29と同程度か貫通孔29よりもやや小さい。
【0052】
保護シート27は、対向方向から見て、保護シート27における粘着シート24の粘着面24Sに貼り付けられていない領域のなかで、貫通孔29とマイクロニードル21とに挟まれている部分に、脆弱部30を備えている。より詳細には、対向方向から見て、脆弱部30は、貫通孔29と、保護シート27における粘着面24Sに貼り付けられている領域とに挟まれて、保護シート27の外縁のうちの二箇所を結ぶ位置に配置されている。
【0053】
脆弱部30は、例えば、ミシン目が形成された部分に具体化され、保護シート27のせん断に対する強度が、脆弱部30の周囲の部分よりも低い部分である。すなわち、脆弱部30は、保護シート27のなかで脆弱部30以外の部分よりも外力によって裂けやすい部分である。
【0054】
なお、ミシン目が形成された部分に代わる脆弱部30の例として、脆弱部30は、脆弱部30の周囲よりも保護シート27の厚みが小さくされた部分であってもよい。また、脆弱部30は、ハーフカット加工等によって、厚さ方向に保護シート27の一部が切断された部分であってもよい。
【0055】
図3に示す例では、対向方向から見て、脆弱部30は直線形状を有し、マイクロニードル21と2つの貫通孔29のそれぞれとの間の各々で、保護シート27における向かい合う2つの長辺を繋ぐ位置に配置されている。なお、貫通孔29とマイクロニードル21とに挟まれて保護シート27の外縁のうちの二箇所を結んでいれば、脆弱部30は曲線形状を有していてもよい。
【0056】
上記経皮投与デバイス収容体10においては、第2本体部52の対向凸部55が保護シート27の貫通孔29を通る構造が、基体22の第1面22Sに沿った方向である面方向に第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置がずれることを、保護シート27の外縁よりも内側の領域にて抑えている。すなわち、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向にずれにくくなっている。そして、こうしたずれの抑制は、収容部50が閉じられている状態である閉状態、収容部50が開かれている状態である開状態、閉状態から開状態へ移行している状態のいずれにおいても、機能している。閉状態は、第1本体部51と第2本体部52とが嵌合している状態であり、開状態は、第2本体部52から第1本体部51が取り外された状態である。
【0057】
なお、上記経皮投与デバイス収容体10において、第2本体部52が対向凸部55を備え、第1本体部51が対向凸部55と嵌合可能な対向凹部54を有していれば、その他の収容部50の形状は、上述した形状と異なっていてもよい。
【0058】
例えば、マイクロニードル21における突起部23の長さHが、その先端が保護シート27の開口28から飛び出ない長さであれば、第1本体部51は、収容凹部53を有していなくてもよい。また、第2本体部52が、経皮投与デバイス20の置かれる凹部を有し、凹部内に対向凸部55が設けられていてもよい。また、第1本体部51および第2本体部52の各々は、上述の凹部や凸部以外の凹凸、例えば、使用者が第1本体部51を取り外す際において、起点とされる凹部や、持ち手となる凸部等を有していてもよい。また、対向凹部54と対向凸部55とは、相互に嵌合可能であればよく、嵌合を補助する突起等が対向凹部54の内周面や対向凸部55の外周面に設けられていてもよい。
【0059】
[経皮投与デバイス収容体の材料]
上述の経皮投与デバイス収容体10を構成する各部の材料について説明する。
マイクロニードル21を構成する材料としては、例えば、シリコンや、ステンレス鋼、チタン、あるいはマンガン等の金属や、医療用シリコーン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート、あるいは環状オレフィンコポリマー等の熱可塑性樹脂、水溶性材料等が挙げられる。マイクロニードル21は、生体適合性を有する材料から形成されることが好ましい。
【0060】
これらの材料のなかでも、マイクロニードル21を構成する材料は、水溶性材料、すなわち、皮膚が有する水分によって溶解する材料であることが好ましく、特に、生分解性を有する多糖類であることが好ましい。生分解性を有する多糖類としては、例えば、デキストラン、デキストリン、ペクチン、プルラン、コンドロイチン硫酸塩、アルギン酸塩、キトサン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。また、これら生分解性の多糖類のなかで二種類以上の材料が混合されて用いられてもよい。水溶性材料から形成された突起部23は、皮膚に刺された後、皮内で溶解する。
【0061】
水溶性材料から構成されたマイクロニードル21は、柔軟性が高く軽いため、取り扱いが困難である場合が多い。すなわち、従来の構成では、経皮投与デバイス収容体が、水溶性材料から構成されたマイクロニードル21を備える場合に特に、収容部からの経皮投与デバイスの取り出しに際して、経皮投与デバイスが収容部から滑り落ちやすい。したがって、本実施形態の経皮投与デバイス収容体10が水溶性材料から構成されたマイクロニードル21を備える構成では特に、経皮投与デバイス20の取り出しに際しての取り扱い性が高められることについての有益性が高い。
【0062】
なお、基体22と突起部23とは、互いに同一の材料から形成されてもよいし、互いに異なる材料から形成されてもよい。また、基体22は、可撓性を有するように構成されていてもよく、基体22が可撓性を有することによって、生体の皮膚等の曲面に対して基体22を沿わせつつ突起部23を刺すことができるため、薬剤の投与対象に突起部23を的確に刺すことができる。
【0063】
マイクロニードル21によって投与される薬剤は、突起部23の表面に付され、突起部23による孔の形成とともに皮内に送り込まれてもよいし、突起部23が上述のように溶解性を有する材料から形成されている場合には、突起部23の内部に含まれて、突起部23の溶解とともに皮内に送り込まれてもよい。あるいは、突起部23に溝や孔が形成されている場合には、溝や孔に薬剤が充填され、薬剤は、突起部23による皮膚への孔の形成とともに皮内に送り込まれてもよい。また、突起部23が皮膚に刺される前や後に、液状の薬剤が皮膚に塗布され、突起部23によって形成された孔から、薬剤が皮内に送り込まれてもよい。さらには、これらの方式が組み合わされた形態によって、薬剤が投与されてもよい。なお、突起部23が溶解性を有する材料から形成されている場合には、突起部23を構成する水溶性材料が薬剤として機能してもよい。
【0064】
マイクロニードル21が薬剤を含有する場合には、薬剤は突起部23のみに含まれ、基体22には含まれないことが好ましい。これによって、基体22内に残存して皮内に送り込まれない薬剤が生じることが抑えられるため、薬剤の無駄な消費を抑えることができる。
【0065】
薬剤は、皮内に投与されることにより機能する物質であれば、その種類は特に限定されない。薬剤としては、例えば、薬理活性物質や、化粧品組成物等が挙げられ、目的に応じて選択される。
【0066】
薬理活性物質としては、例えば、インフルエンザ等のワクチン、癌患者等のための鎮痛薬、インスリン、生物製剤、遺伝子治療薬、注射剤、経口剤、または、皮膚適用製剤等が挙げられる。マイクロニードル21を用いた経皮投与では、皮膚に形成された孔に薬剤が投与される。そのため、マイクロニードル21を用いた経皮投与は、従来の経皮投与に用いられる薬理活性物質以外に、皮下注射が必要な薬理活性物質の投与にも利用できる。特に、マイクロニードル21を用いた経皮投与は、投与の際に患者に痛みを与えないため、小児に対するワクチン等の注射剤の投与に適している。また、マイクロニードル21を用いた経皮投与は、投与の際に患者が薬剤を飲むことを要しないため、経口剤を飲むことが困難な小児に対する経口剤の投与に適している。
【0067】
化粧品組成物は、化粧品あるいは美容品として用いられる組成物である。化粧品組成物としては、例えば、保湿剤、色料、香料、または、シワやニキビや妊娠線等に対する改善効果や脱毛に対する改善効果等の美容効果を示す生理活性物質等が挙げられる。化粧品組成物として芳香を有する材料を用いると、マイクロニードル21に匂いを付与することができるため、美容品に適した経皮投与デバイス20が得られる。
【0068】
突起部23によって形成される孔の深さが角質層内に留まる長さであると、薬剤を角質層内に滞留させることができる。角質層はたえず新陳代謝により新規に生成されるため、角質層内の薬剤は時間の経過とともに体外へ排出される。このため、薬剤が生体内に保持された状態を、例えば、皮膚の洗浄や皮膚のピーリング等によって、容易に解除することができる。
【0069】
一方、突起部23によって形成される孔の深さが角質層を貫通しかつ神経層へ到達しない長さであると、薬剤を、角質層よりも深い位置に送達することができる。角質層に形成された孔は時間の経過とともに塞がるため、外界に対し角質層がバリアとなる結果、角質層よりも下に送達された薬剤は生体内に保持される。それゆえ、角質層の新陳代謝や、スキンケア等を目的とした皮膚の洗浄に起因して、薬剤が剥落することを低減できるため、長期間に渡って、薬剤が生体内に保持された状態が維持される。したがって、薬剤として化粧品組成物が用いられる場合、化粧品組成物が皮内に保持された状態を長期間に渡って維持することができる。例えば特に、眉、目の周囲、口唇の周囲等、長期間の色味の保持が求められる部位に対して、化粧品組成物として色料を投与するために、マイクロニードル21による薬剤の投与方法を好適に用いることができる。また、角質層以下の部位に原因がある皮膚の異常、例えば、スポット状の斑点等に対応するための化粧や治療としても、マイクロニードル21による薬剤の投与方法を好適に用いることができる。
【0070】
粘着シート24の材料は特に限定されないが、基材シート26としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、または、ポリビニルアルコール等からなる樹脂シートが用いられる。また、粘着層25は、例えば、シリコーン系の粘着剤、ゴム系の粘着剤、エポキシ系の粘着材、または、アクリル系の粘着剤等から形成される。
【0071】
保護シート27の材料は、保護シート27が粘着シート24から剥離されたとき、粘着シート24が、薬剤の投与対象に粘着シート24が貼り付いた状態を所望の期間に渡って保持できる粘着力を保持するとともに、粘着面24Sに、非生体適合性材料が残存しない材料であることが好ましい。具体的には、保護シート27の材料として、少なくとも一方の面にシリコーン系剥離剤またはフッ素系剥離剤がコーティングされた、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂からなるシートや紙を用いることができる。剥離剤がコーティングされた面が、粘着シート24の粘着面24Sに貼り付けられる面である。
【0072】
収容部50を構成する第1本体部51および第2本体部52の各々の材料は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、または、ポリスチレン等のアクリル系樹脂等が用いられる。
【0073】
[経皮投与デバイスの使用方法]
本実施形態の経皮投与デバイス収容体10にて、収容部50から経皮投与デバイス20を取り出し、マイクロニードル21を用いて薬剤を投与する際の手順について説明する。
【0074】
まず、経皮投与デバイス20の使用者は、使用者から見て第2本体部52が経皮投与デバイス20の下に位置するように経皮投与デバイス収容体10を配置して、第1本体部51を引き上げ、第2本体部52から第1本体部51を取り外す。すなわち、第2本体部52の対向凸部55から、第1本体部51の対向凹部54が外され、使用者からは、マイクロニードル21の突起部23が見えるようになる。このとき、第1本体部51が取り外される前から取り外された後までに渡って、先の
図2および
図3に示したように、第2本体部52の対向凸部55が保護シート27の貫通孔29に通されているため、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることが抑えられる。したがって、第1本体部51の取り外しに際して、第2本体部52が傾けられたとしても、経皮投与デバイス20が第2本体部52から滑り落ちることは抑えられる。それゆえ、経皮投与デバイス20の取り出しに際しての取り扱い性が高められる。
【0075】
経皮投与デバイス20が落下したり、経皮投与デバイス20の落下を防ごうと使用者が経皮投与デバイス20を不用意に掴んだりすると、突起部23の付近に大きな力が加わって突起部23が変形し、突起部23の穿刺機能が低下する虞がある。本実施形態の経皮投与デバイス収容体10によれば、経皮投与デバイス20の取り出しに際してこうした事態が生じることが抑えられる。
【0076】
また、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置の面方向へのずれが、保護シート27の外縁よりも内側の領域にて抑えられる。それゆえ、保護シート27の外縁が他の部材によって支持されること等によって経皮投与デバイス20の位置のずれが抑えられる構成と比較して、経皮投与デバイス20の位置のずれが的確に抑えられ、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置の安定性が高められる。
【0077】
さらには、第2本体部に経皮投与デバイス20を配置するための凹部を形成し、この凹部の深さを経皮投与デバイス20の厚さよりも十分に大きくすることによって、経皮投与デバイス20の位置のずれを抑える構成と比較して、収容部50の厚さが大きくなることも抑えられる。
【0078】
第2本体部52から第1本体部51を取り外した後、使用者は、経皮投与デバイス20にて2つの脆弱部30で挟まれる部分を引き上げる。これによって、脆弱部30にて保護シート27が破断され、貫通孔29に対向凸部55が通された状態のままで、使用者は、マイクロニードル21と粘着シート24と保護シート27のなかで2つの脆弱部30で挟まれる部分とからなる構造体を、第2本体部52から引き離すことができる。
【0079】
その後、使用者は、保護シート27を粘着シート24から剥離し、マイクロニードル21の基体22を、薬剤を投与する部位の皮膚に押し付け、基体22の外側の粘着シート24を皮膚に貼り付ける。これにより、突起部23が皮膚を穿孔して薬剤が投与される。
【0080】
粘着シート24によってマイクロニードル21が皮膚に固定されるため、薬剤が皮内に浸透するまでの間、突起部23が皮膚に刺さった状態を安定して維持することができる。なお、突起部23を皮膚に刺す際には、突起部23が皮膚に刺さる位置や方向を規定するためのアプリケータが用いられてもよい。
【0081】
第1実施形態においては、保護シート27の貫通孔29と第2本体部52の対向凸部55とから、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることを、保護シート27の外縁よりも内側の領域にて保護シート27と収容部50との接触に基づいて抑える位置管理部が構成される。なお、位置管理部は、経皮投与デバイス20が面方向に自由に動くことを抑える構成、すなわち、経皮投与デバイス20のずれの範囲を制限する構成であればよく、第1実施形態においては、経皮投与デバイス20の位置が面方向に移動しようとするとき、保護シート27における貫通孔29の縁に対向凸部55が接触し、経皮投与デバイス20の動きが制限されればよい。要は、位置管理部は、少なくとも、経皮投与デバイス20に対してその位置を面方向に移動させる力が加わっているときに、保護シート27と収容部50とが接して経皮投与デバイス20の動きを制限する構成であればよく、収容部50の閉状態において、貫通孔29の縁と対向凸部55との間には隙間が形成されていてもよい。
【0082】
以上説明したように、第1実施形態の経皮投与デバイス収容体10によれば、以下の効果が得られる。
(1)第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることが抑えられるため、収容部50からの経皮投与デバイス20の取出しに際して、第2本体部52が傾けられたとしても、経皮投与デバイス20が第2本体部52から滑り落ちることが抑えられる。したがって、経皮投与デバイス20の取り出しに際しての取り扱い性を高めることができる。
【0083】
また、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置のずれが保護シート27の外縁よりも内側の領域にて抑えられる。それゆえ、保護シート27の外縁が他の部材によって支持されること等によって経皮投与デバイス20の位置のずれが抑えられる構成と比較して、経皮投与デバイス20の位置のずれが的確に抑えられ、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置の安定性が高められる。
【0084】
(2)経皮投与デバイス20の位置のずれを抑える位置管理部が、保護シート27の貫通孔29と、貫通孔29に通された第2本体部52の対向凸部55とから構成されている。これによって、簡易な構成で、経皮投与デバイス20の面方向への位置のずれを的確に抑えることができる。
【0085】
(3)対向方向から見て、貫通孔29は、保護シート27のなかで粘着シート24の粘着面24Sに貼り付けられていない領域に位置している。保護シート27における貫通孔29の周囲の部分は、収容部50から経皮投与デバイス20が取り出された後には、第2本体部52の付近に残されるが、そもそも、保護シート27は、マイクロニードル21による薬剤の投与の際には剥離される。すなわち、薬剤の投与時には不要な部分に貫通孔29が位置しているため、経皮投与デバイス20を構成する部材を効率よく利用して、経皮投与デバイス20の位置のずれを抑えることができる。また、保護シート27と粘着シート24とに貫通孔が形成されている構成と比較して、粘着シート24の無駄な消費、すなわち、薬剤の投与対象へのマイクロニードル21の固定に用いられない部分としての消費を抑えることができる。
【0086】
また、保護シート27が粘着シート24の外側まで広がる構成では、使用者は、保護シート27のなかで粘着シート24から飛び出ている部分を摘んで、粘着シート24から保護シート27を剥離することができる。したがって、使用者にとって、粘着シート24からの保護シート27の剥離が容易である。
【0087】
(4)保護シート27は、対向方向から見て、保護シート27のなかで、貫通孔29とマイクロニードル21とに挟まれて保護シート27の外縁のうちの二箇所を結ぶ位置に脆弱部30を備えている。こうした構成によれば、貫通孔29から対向凸部55を抜かずとも、脆弱部30での保護シート27の破断によって、マイクロニードル21と粘着シート24と保護シート27の残部とからなる構造体を、第2本体部52から引き離すことができる。したがって、容易に経皮投与デバイス20を収容部50から取り出すことができる。また、脆弱部30の位置の調整によって、保護シート27にて破断される位置を調整することができるため、保護シート27における破断位置の設定が容易である。
【0088】
(5)対向方向から見て、保護シート27の有する2つの貫通孔29が、マイクロニードル21の周囲に均等に配置されており、それぞれの貫通孔29に対向凸部55が通されている。こうした構成によれば、経皮投与デバイス20の位置のずれが、マイクロニードル21の周囲にて均等に抑えられるため、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置の安定性が高められる。
【0089】
(6)対向方向から見て、第1本体部51と第2本体部52とは、対向凹部54と対向凸部55との嵌合によって互いに固定されている。すなわち、経皮投与デバイス20の位置ずれを抑えるための構成である対向凸部55が、収容部50の組み付けのためにも用いられるため、対向凸部55の有効な利用が可能である。また、対向凸部55とは異なる位置に第1本体部51と第2本体部52との嵌合のための凹部や凸部が設けられる構成と比較して、第1本体部51や第2本体部52の構成が簡易である。
【0090】
(7)基体22の第1面22Sと対向する第1本体部51と、粘着シート24の非粘着面24Tと対向する第2本体部52とのうち、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置のずれが抑えられる。こうした構成によれば、使用者から見て、第1本体部51が経皮投与デバイス20の上に位置し、第2本体部52が経皮投与デバイス20の下に位置する状態で収容部50を開けることができる。すなわち、使用者から突起部23の先端が見える状態で、収容部50から経皮投与デバイス20を取り出すことができるため、経皮投与デバイス20の取り出しに際して、使用者が不用意に突起部23に触れて突起部23が変形することが抑えられる。
【0091】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の経皮投与デバイス収容体10の変形例について説明する。なお、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。なお、経皮投与デバイス収容体は、以下で説明する各変形例の構成が組み合わされた構成を有していてもよい。
【0092】
[第1変形例]
第1変形例の経皮投与デバイス収容体は、貫通孔を有する部材が、第1実施形態と異なる。
【0093】
図4が示す構成では、保護シート27の全域が、粘着シート24の粘着面24Sに貼り付けられている。すなわち、対向方向から見て、保護シート27の外形と粘着シート24の外形とは一致している。粘着シート24は、対向方向から見て保護シート27の貫通孔と重なる位置に、粘着シート24を厚さ方向に貫通する貫通孔を有しており、保護シート27の貫通孔と粘着シート24の貫通孔とから貫通孔31が構成されている。すなわち、貫通孔31は、保護シート27と粘着シート24とを貫通している。そして、貫通孔31には、第2本体部52の対向凸部55が通されている。なお、対向方向から見た貫通孔31の位置は、第1実施形態の貫通孔29の位置と同様である。
【0094】
また、脆弱部32は保護シート27から粘着シート24に渡って設けられていることが好ましい。すなわち、対向方向から見て、保護シート27の備える脆弱部と重なる位置に、粘着シート24は、粘着シート24のなかで脆弱部以外の部分よりも外力によって裂けやすい部分である脆弱部を備えていることが好ましい。換言すれば、脆弱部32は、保護シート27と粘着シート24との積層体のなかで、脆弱部32以外の部分よりもこの積層体が外力によって裂けやすい部分である。経皮投与デバイス20の取り出しに際しては、保護シート27と粘着シート24との積層体を脆弱部32にて破断させることによって、マイクロニードル21と粘着シート24および保護シート27の残部とからなる構造体を、第2本体部52から引き離すことができる。
【0095】
こうした構成によっても、第1実施形態と同様に、対向凸部55が貫通孔31に通されているため、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることが抑えられる。したがって、経皮投与デバイス20の取り出しに際しての取り扱い性を高めることができる。
【0096】
第1変形例のように、対向凸部55の通される貫通孔31が、保護シート27のなかで粘着シート24の粘着面24Sに貼り付けられている領域に位置しており、保護シート27と粘着シート24とを貫通している構成では、保護シート27と粘着シート24との成形をまとめて行うことができる。すなわち、保護シート27の形成材料からなるシートと粘着シート24の形成材料からなるシートとを重ね合わせた積層体に対し、打ち抜き等の加工を行うことによって、保護シート27および粘着シート24の外形を整えたり、貫通孔31を形成したりすることができる。したがって、経皮投与デバイス20の製造の効率を高めることができる。
【0097】
なお、第1変形例においては、保護シート27および粘着シート24の貫通孔31と第2本体部52の対向凸部55とから、位置管理部が構成される。
[第2変形例]
第2変形例の経皮投与デバイス収容体は、貫通孔、対向凸部、および、脆弱部の位置が、第1実施形態と異なる。なお、
図5〜
図8は、第1本体部51を取り外した状態で、対向方向から、第2本体部52に組み付けられた経皮投与デバイス20を見た図である。
【0098】
図5が示す構成では、貫通孔29は、対向方向から見て、保護シート27における向かい合う2つの角部のそれぞれの付近に位置している。こうした構成においても、対向方向から見て、2つの貫通孔29は、マイクロニードル21の基体22の周囲に均等に配置されている。そして、第2本体部52の対向凸部55は、対向方向から見て、貫通孔29内に位置している。
【0099】
脆弱部30は、対向方向から見て、貫通孔29と、保護シート27における粘着面24Sに貼り付けられている領域とに挟まれて、保護シート27の外縁のうちの二箇所を直線状に結ぶ位置に配置されている。
【0100】
こうした構成によれば、第1実施形態の構成と比較して、脆弱部30の長さを短くすることが可能であり、すなわち、経皮投与デバイス20を第2本体部52から引き離す際に破断させる保護シート27の長さを短くすることが可能である。したがって、収容部50からの経皮投与デバイス20の取り出しがより容易である。
【0101】
また、貫通孔29および対向凸部55の組の数、すなわち、位置管理部の数は特に制限されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
図6が示す構成では、保護シート27は、1つの貫通孔29を有しており、第2本体部52の対向凸部55は、対向方向から見て、貫通孔29内に位置している。また、
図6が示す構成においては、対向方向から見て、保護シート27の1つの短辺の中央部の付近に、貫通孔29が位置している。これに代えて、
図7が示す構成のように、貫通孔29は、保護シート27の1つの角部の付近に位置していてもよい。いずれの場合であれ、脆弱部30は、対向方向から見て、貫通孔29と、保護シート27における粘着面24Sに貼り付けられている領域とに挟まれて、保護シート27の外縁のうちの二箇所を結ぶ位置に配置されていればよい。
【0102】
貫通孔29および対向凸部55の組の数が1つである構成は、貫通孔29および対向凸部55の組の数が2つ以上である構成と比較して、経皮投与デバイス20のなかで、脆弱部30における保護シート27の破断によって第2本体部52から引き離される部分を大きく確保しやすく、また、使用者は、経皮投与デバイス20を端から摘んで引っ張ることによって、脆弱部30で保護シート27を破断させることができる。したがって、収容部50からの経皮投与デバイス20の取り出しがより容易である。
【0103】
貫通孔29と対向凸部55との数が1つずつであっても、対向凸部55が貫通孔31に通されていれば、経皮投与デバイス収容体が貫通孔29および対向凸部55を備えない構成と比較して、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることは抑えられるため、経皮投与デバイス20の取り出しに際して、経皮投与デバイス20が落下することは抑えられる。したがって、経皮投与デバイス20の取り出しに際しての取り扱い性を高める効果は得られる。
【0104】
図8は、貫通孔29および対向凸部55の組の数が4つである構成を示す。対向方向から見て、保護シート27における4つの角部のそれぞれの付近に、貫通孔29が位置しており、第2本体部52の対向凸部55は、対向方向から見て、貫通孔29内に位置している。また、貫通孔29および対向凸部55の組に対応して、脆弱部30は4つ設けられており、対向方向から見て、脆弱部30は、貫通孔29と、保護シート27における粘着面24Sに貼り付けられている領域とに挟まれて、保護シート27の外縁のうちの二箇所を結ぶ位置に配置されている。
【0105】
貫通孔29および対向凸部55の組の数が4つである場合には、対向方向から見て、複数の貫通孔29が、マイクロニードル21の周囲に均等に配置されており、それぞれの貫通孔29に各別の対向凸部55が通されていることが好ましい。こうした構成によれば、第1実施形態の(5)の効果と同様の効果が得られる。
【0106】
なお、貫通孔29および対向凸部55の組の数およびその位置は、第1実施形態や第2変形例として示した構成に限られない。対向方向から見て、保護シート27の外縁よりも内側の領域に貫通孔29が形成されており、貫通孔29に対向凸部55が通されていれば、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置の面方向へのずれは抑えられ、経皮投与デバイス20の取り出しに際しての取り扱い性を高める効果は得られる。
【0107】
第2変形例においては、保護シート27の貫通孔29と第2本体部52の対向凸部55とから、位置管理部が構成される。
[第3変形例]
第3変形例の経皮投与デバイス収容体は、保護シートの形状が、第1実施形態と異なる。なお、
図9〜
図11は、第1本体部51を取り外した状態で、対向方向から、第2本体部52に組み付けられた経皮投与デバイス20を見た図である。
【0108】
図9が示す構成において、保護シート33は、円形のなかで対向する二箇所の端部が径方向に突出した形状を有している。そして、対向方向から見て、円形状の部分である中間部34から突出した部分である突出部35に、貫通孔29が位置しており、貫通孔29内に、第2本体部52の対向凸部55が位置している。
【0109】
脆弱部30は、対向方向から見て、貫通孔29と、保護シート33における粘着面24Sに貼り付けられている領域とに挟まれて、保護シート33の外縁のうちの二箇所を結ぶ位置に配置されており、突出部35の内部に位置している。なお、脆弱部30は、対向方向から見て、中間部34と突出部35との境界部分に配置されていてもよい。
【0110】
すなわち、上記構成では、対向方向から見て、保護シート33のなかで外側に突出した部分である突出部35に貫通孔29が位置しており、換言すれば、保護シート33は、2つの貫通孔29の間で膨らんだ形状を有している。そして、突出部35のなかで貫通孔29を含む領域を区画する位置に、脆弱部30が位置している。
【0111】
こうした構成によれば、経皮投与デバイス20の取り出しに際して、使用者は、保護シートの33の中間部34、すなわち、保護シート33のなかで膨らんだ部分を摘んで経皮投与デバイス20を引き上げることによって、保護シート33を脆弱部30で破断させることができる。したがって、使用者にとって保護シート33が摘みやすいため、経皮投与デバイス20の収容部50からの取り出しが容易である。また、保護シート33の破断に際しては、突出部35を第2本体部52に残すように、保護シート33が破断される。突出部35のなかで貫通孔29を含む領域を区画する位置に、脆弱部30が位置する構成では、第1実施形態と比較して、破断させる保護シート33の長さを短くすることが可能である。したがって、収容部50からの経皮投与デバイス20の取り出しがより容易である。
【0112】
なお、中間部34の形状は、円形状とは異なる形状であってもよい。保護シート33が、2つの貫通孔29の間で膨らんだ形状を有していれば、上述の効果と同様の効果は得られる。
【0113】
例えば、
図10が示すように、保護シート36は、菱形形状を有していてもよい。
図10が示す構成では、対向方向から見て、保護シート36における向かい合う2つの角部のそれぞれの付近に、貫通孔29が位置しており、貫通孔29内に、第2本体部52の対向凸部55が位置している。そして、対向方向から見て、角部と貫通孔29とを含む領域を区画する位置に、脆弱部30が位置している。
【0114】
こうした構成であっても、保護シート36は、2つの貫通孔29の間で膨らんだ形状を有しているため、上述の効果と同様の効果は得られる。また、先の
図5に示した構成においても、保護シート27は、2つの貫通孔29の間で膨らんだ形状を有している。ただし、
図5に示した構成のように、保護シートが、2つの貫通孔29の間のいずれかの貫通孔29に近い位置で最も膨らんだ形状を有する構成よりも、
図9や
図10に示した構成のように、保護シートが、2つの貫通孔29の間の中央部で最も膨らんだ形状を有する構成の方が、経皮投与デバイス20の取り出しに際して、使用者が保護シートを摘みやすいため好ましい。
【0115】
図11に示す構成においては、保護シート37は、摘み部38を備えている。摘み部38は、対向方向から見て、2つの脆弱部30に挟まれる領域にて、保護シート37の端部が外側に突出している部分である。換言すれば、摘み部38は、脆弱部30によって区画される領域のうち、マイクロニードル21が含まれる領域にて、保護シート37の端部が外側に突出している部分である。なお、摘み部38は、保護シート37における摘み部38以外の部分とは別々に形成されて、この部分に接着されてもよい。
【0116】
こうした構成においては、経皮投与デバイス20の取り出しに際して、使用者は、保護シートの37の摘み部38を摘んで経皮投与デバイス20を引き上げることによって、保護シート37を脆弱部30で破断させることができる。したがって、使用者にとって保護シート33が摘みやすいため、経皮投与デバイス20の収容部50からの取り出しが容易である。
【0117】
なお、第3変形例においては、保護シートの貫通孔29と第2本体部52の対向凸部55とから、位置管理部が構成される。
[第4変形例]
第4変形例の経皮投与デバイス収容体は、貫通孔および対向凸部の形状が、第1実施形態と異なる。なお、
図12は、第1本体部51を取り外した状態で、対向方向から、第2本体部52に組み付けられた経皮投与デバイス20を見た図である。
【0118】
図12が示す構成では、対向方向から見て、貫通孔39は、保護シート27に沿って延びる長円形状を有している。そして、第2本体部52の対向凸部56は、対向方向から見た形状が貫通孔39と同様の長円形状である柱状を有している。こうした構成によっても、貫通孔39に対向凸部56が通されていることによって、第2本体部52に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることが抑えられるため、経皮投与デバイス20の取り出しに際しての取り扱い性が高められる。
【0119】
また、貫通孔および対向凸部の形状は、第1実施形態や第4変形例として示した形状に限られない。対向方向から見て、貫通孔は、多角形形状を有していてもよいし、曲線や直線によって囲まれたその他の形状を有していてもよい。また、対向凸部の形状は、貫通孔に通されることが可能な形状であればよく、対向方向から見た対向凸部の形状は、貫通孔の形状と相似形状でなくてもよい。
【0120】
なお、第4変形例においては、保護シート27の貫通孔39と第2本体部52の対向凸部56とから、位置管理部が構成される。
[第5変形例]
第5変形例の経皮投与デバイス収容体は、対向凸部を有する部材が、第1実施形態と異なる。
【0121】
図13が示す構成では、第1本体部57が対向凸部55を備え、第2本体部58が対向凹部54を有している。対向凸部55は、保護シート27の貫通孔29を通り、対向凸部55の先端部分は、対向凹部54に嵌められている。対向凸部55と対向凹部54との嵌合によって、第1本体部57と第2本体部58との互いに対する位置が固定されている。
【0122】
上記構成においては、第1本体部57の対向凸部55が保護シート27の貫通孔29を通る構造が、第1本体部57に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることを、保護シート27の外縁よりも内側の領域にて抑えている。そして、こうしたずれの抑制は、収容部50が閉状態、開状態、閉状態から開状態へ移行している状態のいずれの状態であるときでも、機能している。閉状態は、第1本体部57と第2本体部58とが嵌合している状態であり、開状態は、第1本体部57から第2本体部58が取り外された状態である。
【0123】
収容部50から経皮投与デバイス20を取り出すとき、使用者は、使用者から見て第1本体部57が経皮投与デバイス20の下に位置するようにして、第2本体部58を引き上げ、第1本体部57から第2本体部58を取り外す。すなわち、第2本体部58を取り外したとき、第1本体部57に経皮投与デバイス20が乗っている状態となり、使用者からは、粘着シート24の非粘着面24Tが見える。このとき、第2本体部58が取り外される前から取り外された後までに渡って、対向凸部55が貫通孔29に通されているため、第1本体部57に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることが抑えられる。したがって、第2本体部58の取り外しに際して、第1本体部57が傾けられたとしても、経皮投与デバイス20が第1本体部57から滑り落ちることは抑えられる。それゆえ、経皮投与デバイス20の取り出しに際しての取り扱い性が高められる。
【0124】
第1本体部57から第2本体部58を取り外した後、使用者は、経皮投与デバイス20にて2つの脆弱部30で挟まれる部分を引き上げる。これによって、脆弱部30にて保護シート27が破断され、貫通孔29に対向凸部55が通された状態のままで、使用者は、マイクロニードル21と粘着シート24と保護シート27のなかで2つの脆弱部30で挟まれる部分とからなる構造体を、第1本体部57から引き離すことができる。
【0125】
こうした構成においては、保護シート27の貫通孔29と第1本体部57の対向凸部55とから、第1本体部57に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることを、保護シート27の外縁よりも内側の領域にて抑える位置管理部が構成される。
【0126】
このように、経皮投与デバイス収容体の備える位置管理部は、第1実施形態のように、第2本体部52、すなわち、粘着シート24の非粘着面24Tと対向する本体部に対する経皮投与デバイス20の位置の面方向へのずれを抑える構成であってもよいし、第5変形例のように、第1本体部57、すなわち、マイクロニードル21における基体22の第1面22Sと対向する本体部に対する経皮投与デバイス20の位置の面方向へのずれを抑える構成であってもよい。
【0127】
また、
図14が示すように、複数の対向凸部55の一部を第1本体部59が備え、複数の対向凸部55の残部を第2本体部60が備えていてもよい。第1本体部59は、第2本体部60の対向凸部55と対向する位置に、対向凹部54を有し、第2本体部60は、第1本体部59の対向凸部55と対向する位置に、対向凹部54を有している。
【0128】
第1本体部59の対向凸部55は、保護シート27の貫通孔29を通り、この対向凸部55の先端部分は、第2本体部60の対向凹部54に嵌められている。第2本体部60の対向凸部55は、保護シート27の貫通孔29を通り、この対向凸部55の先端部分は、第1本体部59の対向凹部54に嵌められている。対向凸部55と対向凹部54との嵌合によって、第1本体部59と第2本体部60との互いに対する位置が固定されている。
【0129】
収容部50から経皮投与デバイス20を取り出すとき、使用者は、第1本体部59を引き上げて、第2本体部60から第1本体部59を取り外してもよいし、第2本体部60を引き上げて、第1本体部59から第2本体部60を取り外してもよい。
【0130】
第2本体部60から第1本体部59を取り外すとき、第1本体部59の対向凸部55は貫通孔29から抜けるが、第2本体部60の対向凸部55は、第1本体部59が取り外される前から取り外された後までに渡って、貫通孔29に通されているため、第2本体部60に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることが抑えられる。一方、第1本体部59から第2本体部60を取り外すとき、第2本体部60の対向凸部55は貫通孔29から抜けるが、第1本体部59の対向凸部55は、第2本体部60が取り外される前から取り外された後までに渡って、貫通孔29に通されているため、第1本体部59に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることが抑えられる。
【0131】
このように、第1本体部59および第2本体部60の一方が取り外されるとき、第1本体部59および第2本体部60の他方に対する経皮投与デバイス20の位置のずれが抑えられる。したがって、こうした構成によっても経皮投与デバイス20の取り出しに際しての取り扱い性が高められる。そして、こうした構成によれば、使用者は、第1本体部59および第2本体部60のいずれを取り外しても、経皮投与デバイス20を落下させることなく、収容部50から経皮投与デバイス20を取り出すことができる。
【0132】
こうした構成においては、第1本体部59が取り外されるとき、保護シート27の貫通孔29と第2本体部60の対向凸部55とが、第2本体部60に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることを、保護シート27の外縁よりも内側の領域にて抑える位置管理部として機能する。また、第2本体部60が取り外されるとき、保護シート27の貫通孔29と第1本体部59の対向凸部55とが、第1本体部59に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることを、保護シート27の外縁よりも内側の領域にて抑える位置管理部として機能する。
【0133】
要は、経皮投与デバイス収容体は、収容部50が閉状態、開状態、閉状態から開状態へ移行している状態のいずれの状態にあるときでも、第1本体部59および第2本体部60の一方に対する経皮投与デバイス20の位置の面方向へのずれが抑えられるように構成されていればよい。
【0134】
(第2実施形態)
図15および
図16を参照して、経皮投与デバイス収容体の第2実施形態について説明する。第2実施形態の経皮投与デバイス収容体は、第1本体部と第2本体部との嵌合に関する構成が、第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0135】
図15が示すように、第2実施形態の経皮投与デバイス収容体11においては、第1本体部61と第2本体部62とは、対向凸部55の外側で相互に嵌合する。
図16が示すように、第1本体部61は、収容凹部53と、対向凹部63と、嵌合凹部64とを有している。収容凹部53は、マイクロニードル21と対向する位置に配置されており、突起部23の先端部分は、収容凹部53内に位置する。対向凹部63は、対向方向から見て、保護シート27の貫通孔29と重なる位置に配置されている。嵌合凹部64は、収容凹部53および対向凹部63よりも外側に位置し、対向方向から見て、対向凸部55および貫通孔29よりも外側に位置している。
【0136】
第2本体部62は、支持凹部65を有し、支持凹部65内に経皮投与デバイス20が配置されている。対向凸部55は、支持凹部65の底面から突き出ている。対向凸部55は、保護シート27の貫通孔29を通り、対向凸部55の先端部分は、第1本体部61の対向凹部63内に位置している。第2実施形態においては、対向凹部63の内径は、対向凸部55の外径よりも大きく、対向凸部55の先端部分の外周面と対向凹部63の内周面との間には隙間が空いている。
【0137】
第2本体部62は、さらに、第2本体部62から経皮投与デバイス20に向かって突き出た嵌合凸部66を備えている。嵌合凸部66は、対向方向から見て、対向凸部55よりも外側に位置し、さらに、支持凹部65の外側に位置する。そして、嵌合凸部66は、第1本体部61の嵌合凹部64と対向する位置に配置されており、嵌合凹部64に嵌められている。嵌合凹部64と嵌合凸部66との嵌合によって、第1本体部61と第2本体部62との互いに対する位置が固定されている。
【0138】
嵌合凹部64と嵌合凸部66とは、相互に嵌合可能であればよく、嵌合凹部64の形状と嵌合凸部66の形状とは、特に限定されない。また、嵌合凹部64と嵌合凸部66との組の数や位置も特に限定されない。例えば、
図15および
図16に示す例では、嵌合凹部64と嵌合凸部66との対向方向から見た形状は、収容部50の外縁に沿って延びる長円形状である。また、経皮投与デバイス収容体11は、嵌合凹部64と嵌合凸部66との組を2つ有しており、これらの組は、対向方向から見て、経皮投与デバイス20に対して対称な位置に配置されている。また、嵌合を補助する突起等が嵌合凹部64の内周面や嵌合凸部66の外周面に設けられていてもよい。
【0139】
上記構成では、第1本体部61が対向凹部63の周囲で保護シート27と接し、第2本体部62が支持凹部65の底面で粘着シート24と接して、第1本体部61と第2本体部62との間に経皮投与デバイス20が挟まれている。
【0140】
こうした構成においては、対向方向から見て、第1本体部61と第2本体部62とが対向凸部55の位置とは異なる位置で嵌合している。すなわち、収容部50は、対向凸部55の位置とは異なる位置に、第1本体部61と第2本体部62とが相互に嵌合する嵌合構造を備えている。したがって、第1実施形態のように、対向凸部55が第1本体部と第2本体部との嵌合に用いられる構成と比較して、第1本体部61と第2本体部62とを嵌め合わせるための凹部や凸部、すなわち、嵌合凹部64や嵌合凸部66の形状や数を自由に設定することができる。
【0141】
具体的には、第1実施形態の対向凸部55や対向凹部54よりも、嵌合凹部64や嵌合凸部66を大きくすることによって、第1本体部61と第2本体部62との固定を強固にすることができる。また、小さい凹部と凸部とを、これらが相互に嵌合するように収容部50に形成するためには、凹部と凸部との形成位置の位置合わせに高い精度が要求される。これに対し、第1実施形態の対向凸部55や対向凹部54よりも、嵌合凹部64や嵌合凸部66を大きくすることによって、嵌合に用いられる凹部と凸部との形成が容易になる。一方で、第2実施形態では、対向凸部55よりも対向凹部63が大きく形成されているため、対向凸部55に対する対向凹部63の位置に多少のずれがあったとしても、対向凸部55は対向凹部63に入る。したがって、これらの凹部と凸部とを収容部50に形成する際には、対向凸部55と対向凹部63との形成位置の位置合わせに第1実施形態ほどの高い精度が要求されないため、収容部50の製造が容易である。
【0142】
また、対向方向から見て、第1本体部61と第2本体部62とが対向凸部55よりも外側で嵌合する構成では、より収容部50の外縁に近い位置で第1本体部61と第2本体部62とが嵌合する。これによっても、第1本体部61と第2本体部62との固定を強固にすることができる。
【0143】
なお、上記経皮投与デバイス収容体11において、対向方向から見て、第1本体部61と第2本体部62とが対向凸部55の位置とは異なる位置で嵌合していれば、第1本体部61と第2本体部62とが相互に嵌合する嵌合構造は、上述の構造と異なっていてもよい。
【0144】
例えば、第1本体部が嵌合凸部66を備え、第2本体部が嵌合凹部64を有しており、嵌合凹部64と嵌合凸部66とが嵌合してもよい。また、嵌合凹部64と嵌合凸部66との配置される位置は、対向方向から見て、対向凸部55の位置と異なる位置であればよい。またあるいは、第1本体部と第2本体部との各々が箱状を有して、第1本体部の内周に第2本体部が嵌められてもよいし、第2本体部の内周に第1本体部が嵌められてもよい。
【0145】
また、対向凸部55が保護シート27の貫通孔29から飛び出ない大きさであれば、第1本体部61は対向凹部63を有していなくてもよい。あるいは、第1本体部61における対向凹部63の位置に、対向凹部63に代えて、第1本体部61を貫通する貫通孔が形成されており、対向凸部55はこの貫通孔内に挿入されていてもよい。こうした構成では、第1本体部61をより容易に製造することができる。
【0146】
第2実施形態においては、保護シート27の貫通孔29と第2本体部62の対向凸部55とから、第2本体部62に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることを、保護シート27の外縁よりも内側の領域にて抑える位置管理部が構成される。なお、第2実施形態の構成に、第1実施形態の各変形例の構成が組み合わされてもよい。
【0147】
以上説明したように、第2実施形態の経皮投与デバイス収容体11によれば、第1実施形態の(1)〜(5),(7)の効果に加えて、以下の効果が得られる。
(8)収容部50が、対向凸部55の位置とは異なる位置に、第1本体部61と第2本体部62とが相互に嵌合する嵌合構造を備えているため、第1本体部61と第2本体部62との嵌合のための凹部や凸部の位置や数の自由度が高められる。したがって、こうした凹部や凸部の位置や数の調整によって、第1本体部61と第2本体部62との嵌め合わせを強固にしたり、第1本体部61や第2本体部62の製造を容易にしたりすることができる。
【0148】
(第3実施形態)
図17〜
図19を参照して、経皮投与デバイス収容体の第3実施形態について説明する。第3実施形態の経皮投与デバイス収容体は、経皮投与デバイスの位置のずれを抑える構成が、第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0149】
図17が示すように、第3実施形態の経皮投与デバイス収容体12において、第1本体部67は、収容凹部53と対向凹部69とを有している。収容凹部53は、マイクロニードル21と対向する位置に配置されており、突起部23の先端部分は、収容凹部53内に位置する。対向凹部69は、対向方向から見て、保護シート27の貫通孔40と重なる位置に配置されている。
【0150】
第2本体部68が備える対向凸部70は、第2本体部68から第1本体部67に向かって突き出ている。対向凸部70は、保護シート27の貫通孔40を通り、対向凸部70の先端部分は、第1本体部67の対向凹部69に嵌められている。
【0151】
第1本体部67は、対向凹部69の周囲で保護シート27に接しており、第2本体部68は、対向凸部70の周囲で保護シート27に接している。すなわち、保護シート27は、貫通孔40の周囲で第1本体部67と第2本体部68とに挟み込まれており、これによって、保護シート27は、第1本体部67と第2本体部68とに固定されている。また、対向凸部70と対向凹部69との嵌合によって、第1本体部67と第2本体部68との互いに対する位置が固定されている。
【0152】
なお、対向凸部70と対向凹部69とは、人の手の力で第1本体部67を引き上げることによっては、対向凹部69が対向凸部70から外れない程度に強く、互いに対して固定されていることが好ましく、例えば、接着剤等を用いて対向凸部70と対向凹部69とが互いに固定されていてもよい。
【0153】
図18が示すように、対向方向から見て、貫通孔40、対向凹部69、および、対向凸部70のそれぞれは、収容部50の外縁に沿って延びる形状を有し、収容部50の外縁に近い位置に配置されている。
【0154】
第1本体部67は、対向方向から見て、対向凹部69と収容凹部53との間に、折り曲げ促進部71を備えている。折り曲げ促進部71は、第1本体部67の外縁のうちの二箇所を結ぶ位置に直線状に配置されている。すなわち、折り曲げ促進部71は、第1本体部67のなかで、保護シート27と固定されている領域と、マイクロニードル21および粘着シート24と対向している領域との間に位置している。
【0155】
折り曲げ促進部71は、例えば、折り曲げ促進部71の周囲よりも第1本体部67の厚みが小さくされた部分であって、第1本体部67の曲げに対する強度が、折り曲げ促進部71の周囲の部分よりも低い部分である。すなわち、折り曲げ促進部71は、第1本体部67のなかで折り曲げ促進部71以外の部分よりも外力によって折り曲げられやすい部分である。
【0156】
なお、第1本体部67の厚みが小さくされた部分に代わる折り曲げ促進部71の例として、折り曲げ促進部71は、ミシン目が形成された部分であってもよい。また、折り曲げ促進部71は、ハーフカット加工等によって、厚さ方向に第1本体部67の一部が切断された部分であってもよい。
【0157】
上記構成においては、保護シート27を第1本体部67および第2本体部68の各々に固定している構造が、第1本体部67および第2本体部68の各々に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることを、保護シート27の外縁よりも内側の領域にて抑えている。そして、こうしたずれの抑制は、収容部50が閉状態、開状態、閉状態から開状態へ移行している状態のいずれの状態であるときでも、機能している。閉状態は、第1本体部67が閉じられている状態であり、開状態は、第1本体部67が引き上げられている状態である。収容部50は、保護シート27が第1本体部67および第2本体部68の各々に固定されている部分を支点として、第1本体部67が第2本体部68から引き上げられることによって開けられるように構成されている。
【0158】
なお、収容部50は、第1本体部67と第2本体部68との互いに対する位置の固定のために、経皮投与デバイス20の周囲で、対向凹部69および対向凸部70とは異なる位置に、さらに嵌合構造を備えていてもよい。
【0159】
図19が示すように、経皮投与デバイス収容体12において、経皮投与デバイス20を収容部50から取り出す際には、使用者は、使用者から見て第2本体部68が経皮投与デバイス20の下に位置するようにして、折り曲げ促進部71で第1本体部67を折り曲げるように、第1本体部67を引き上げる。これにより、第1本体部67と第2本体部68と保護シート27とが固定されている部分、すなわち、貫通孔40、対向凹部69、および、対向凸部70が位置する部分を支点として、第1本体部67が引き上げられる。このとき、第1本体部67が引き上げられる前から引き上げられた後までに渡って、保護シート27は、第1本体部67と第2本体部68とに固定されているため、第1本体部67および第2本体部68の各々に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることが抑えられる。したがって、経皮投与デバイス20の取り出しに際しての取り扱い性が高められる。
【0160】
そして、使用者は、経皮投与デバイス20において脆弱部30によって区画される部分のうち、マイクロニードル21が位置する方の部分を引き上げる。これによって、脆弱部30にて保護シート27が破断され、使用者は、マイクロニードル21と粘着シート24と保護シート27の一部とからなる構造体を、収容部50から取り出すことができる。
【0161】
こうした構成においては、保護シート27が第1本体部67と第2本体部68とに固定されているため、経皮投与デバイス20を収容部50から取り出す際に経皮投与デバイス収容体12をどのような向きに傾けたとしても、経皮投与デバイス20が収容部50から落ちることが抑えられる。
【0162】
なお、保護シート27が、保護シート27の外縁よりも内側の領域にて、第1本体部67および第2本体部68の各々に固定されている構成であれば、その固定のための構成は上述のように貫通孔40、対向凹部69、および、対向凸部70と異なっていてもよい。例えば、保護シート27は貫通孔40を有さず、第1本体部67は対向凹部69を有さず、第2本体部68は対向凸部70を有さず、保護シート27は、保護シート27の外縁よりも内側の領域にて、第1本体部67および第2本体部68の各々に、接着剤によって固定されていてもよいし、あるいは、保護シート27と第1本体部67と第2本体部68とを貫通する留め具によって固定されていてもよい。
【0163】
また、第1本体部67が人の手の力によって折り曲げることの可能な程度の剛性を有する場合には、第1本体部67は折り曲げ促進部71を備えていなくてもよい。また、第1本体部67が、第1本体部67と第2本体部68と保護シート27とが固定されている部分の付近で破断されることによって、収容部50が開けられてもよい。また、第1本体部67と第2本体部68とは、第1本体部67と第2本体部68と保護シート27とが固定されている部分に近い端部で繋がっていてもよい。
【0164】
第3実施形態においては、保護シート27が第1本体部67と第2本体部68との各々に固定されている部分が、第1本体部67および第2本体部62の各々に対する経皮投与デバイス20の位置が面方向へずれることを、保護シート27の外縁よりも内側の領域にて抑える位置管理部として機能する。こうした構成においても、経皮投与デバイス20の位置が面方向に移動しようとするとき、位置管理部は、保護シート27と収容部50との接触に基づいて、すなわち、保護シート27と収容部50とが接して固定される構造により、経皮投与デバイス20の動きを制限する。
【0165】
なお、第3実施形態の構成に、第1実施形態の各変形例の構成が組み合わされてもよい。例えば、収容部50は、保護シート27が第1本体部67および第2本体部68の各々に固定されている部分を支点として、第2本体部68が第1本体部67から引き上げられることによって開けられるように構成されていてもよい。また、保護シート27が粘着シート24の粘着面24Sに貼り付けられている領域において、保護シート27と粘着シート24との積層体が、第1本体部67と第2本体部68との各々に固定されていてもよい。
【0166】
以上説明したように、第3実施形態の経皮投与デバイス収容体12によれば、第1実施形態の(1),(3),(4)の効果に加えて、以下の効果が得られる。
(9)保護シート27が、第1本体部67および第2本体部68の各々に固定されているため、経皮投与デバイス20を収容部50から取り出す際に経皮投与デバイス収容体12をどのような向きに傾けたとしても、経皮投与デバイス20が収容部50から落ちることが抑えられる。
【0167】
(変形例)
上記各実施形態および各変形例は、以下のように変更して実施することが可能である。
・第1実施形態および第2実施形態では、収容部は、第1本体部と第2本体部との一方が他方から取り外されることによって、第1本体部と第2本体部とが完全に離れるように開けられる構成を有している。また、第3実施形態では、収容部は、第1本体部と第2本体部と保護シートとが固定されている部分を支点として、第1本体部と第2本体部との一方が他方から引き上げられることによって、開けられる構成を有している。収容部を開けるための構成は、これに限られない。例えば、収容部は、第1本体部と第2本体部との一方を、他方に対して面方向に動かすことによって開けられるように構成されていてもよい。
【0168】
具体的には、例えば、
図20が示す経皮投与デバイス収容体13では、第1本体部72は、対向凸部55が貫通孔29を通って嵌められる対向孔部73と、突起部23の先端部分が収められる収容凹部74とを有している。対向孔部73は、第1本体部72を貫通する孔であり、対向孔部73と収容凹部74とは、基体22の第1面22Sに沿った同一の方向に向かって、第1本体部72の端部に開口している。こうした構成においては、第1本体部72を、第2本体部52に対して面方向に動かすことによって、対向凸部55が対向孔部73から抜けるとともに、突起部23の先端部分が収容凹部74から抜ける。これにより、第1本体部72が第2本体部52から取り外され、収容部50が開けられる。
【0169】
・第1実施形態と第2実施形態とが組み合わされ、第1本体部と第2本体部とは、対向方向から見て、対向凸部の位置と、対向凸部の位置とは異なる位置との双方において嵌め合わせられていてもよい。
【0170】
・貫通孔とマイクロニードルとに挟まれた位置で保護シートを破断させるための構成は、脆弱部に限らず、例えば、保護シートにおける破断させたい位置の端部に切り込みが形成されていてもよい。また、保護シートは、貫通孔とマイクロニードルとに挟まれた位置で保護シートを破断させるための構成を有していなくともよく、例えば、第1実施形態や第2実施形態では、使用者は、経皮投与デバイス20を持ち上げて、保護シートの貫通孔から対向凸部を抜くことによって、経皮投与デバイス20を収容部50から取り出してもよい。
【0171】
・投与部が有する突起部の形状は、針状、すなわち、基体22の第1面22Sと直交する方向に沿って延びる形状に限られない。突起部の形状は、ブレード状、すなわち、突起部が基体22の第1面22Sに沿った方向である1つの延在方向に沿って延び、突起部の先端が、基体22の第1面22Sと直交する方向とは異なる方向、例えば延在方向に延びる線状に形成された形状であってもよい。例えば、突起部は、延在方向に沿って延びる三角柱形状であって、三角柱が有する3つの矩形の側面のなかの1つが基体22に接し、かつ、他の2つの側面を区画する辺が突起部の先端として機能する形状を有していてもよい。
【0172】
(実施例)
上述した経皮投与デバイス収容体について、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
【0173】
[実施例]
<経皮投与デバイスの作製>
まず、精密機械加工によってシリコン基板を加工し、36本の正四角錐(底面:38μm×38μm、長さ:120μm)の突起部が、1mm間隔で6列6行の格子状に配列されているマイクロニードルの原版を形成した。次に、上記シリコン基板から形成された原版に対し、フッ素系コーティング剤を用いて離型処理を行った。離型処理後の原版に、型取り用ウレタン(日立化成社製:KU−5550)を滴下し、150℃で硬化させた後、原版を除去して、凹版を作製した。
【0174】
上記凹版に、ヒドロキシプロピルセルロース(東京化成工業社製:6−10mPa・s、2% in water at 20℃)の20重量%水溶液を充填した。40℃に設定したホットプレート上にヒドロキシプロピルセルロース水溶液を充填した凹版を8時間置き、充填物を乾燥させて水分を蒸発させた。その後、凹版から成形物を剥離した。剥離された成形物を打ち抜いて、成形物の外形を直径16mmの円形に整えることにより、マイクロニードルを得た。
【0175】
皮膚貼付用粘着シート(厚さ:0.1mm)を直径24mmの円形に打ち抜いて粘着シートを作製し、粘着シートの中心に上記マイクロニードルを貼り付けた。
片面にシリコーンコートが施されたPETフィルム(厚さ:75μm)を用い、外形を50mm×70mmの長方形形状に整形し、中心に直径22mmの円形の開口を形成した。さらに、上記シートの一方の短辺から7.5mm、一方の長辺から25mmの位置の点を中心とする直径5mmの円形の貫通孔、および、上記シートの他方の短辺から7.5mm、他方の長辺から25mmの位置の点を中心とする直径5mmの円形の貫通孔を形成した。そして、各貫通孔の中心からシートの中央に向かって5mm離れた位置に、短辺と平行なミシン目線を形成することにより、保護シートを作製した。
【0176】
上記粘着シートの粘着面と上記保護シートのシリコーンコートされた面とが接着するように、かつ、上記保護シートの中央の開口内にマイクロニードルが配置されるように、粘着シートと保護シートとを貼り合わせることによって、実施例の経皮投与デバイスを作製した。
【0177】
<経皮投与デバイス収容体の作製>
厚さが0.5mmのPETシートを成形することによって、第1本体部と第2本体部とを作製した。第2本体部の外形は約90mm×約70mmの長方形形状であり、その中央部に、平面視で約70mm×約50mmの長方形形状を有し、約5mmの深さを有する支持凹部を形成するとともに、支持凹部の底面に、高さが約7mmの円柱形状を有する2つの対向凸部を設けた。対向凸部の位置は、保護シートの貫通孔の位置と対応する位置である。また、第1本体部の外形も約90mm×約70mmの長方形形状であり、第1本体部には、2つの対向凹部を、第2本体部の対向凸部と対応する位置に形成するとともに、第1本体部の中央部には、平面視で直径が約24mmの円形である収容凹部を形成した。
【0178】
第2本体部の支持凹部内に経皮投与デバイスを配置するとともに、対向凸部を保護シートの貫通孔に通し、対向凸部の先端部分が対向凹部に嵌まるように第1本体部を被せた。これにより、実施例の経皮投与デバイス収容体が得られた。
【0179】
[比較例]
第2本体部に対向凸部を設けないこと以外は、実施例と同様の工程によって、比較例の経皮投与デバイス収容体を得た。
【0180】
[評価結果]
実施例と比較例との各々について、第1本体部を第2本体部から取り外して、経皮投与デバイスを取り出すことを複数回試みた。その結果、実施例については、経皮投与デバイスが第2本体部から滑り落ちなかったが、比較例については、経皮投与デバイスが第2本体部から滑り落ちることがあった。