(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
赤外域の第1照明光と複数色の可視光である第2照明光と、を出射する光出射部を有し、前記光出射部からの前記第1照明光および前記第2照明光を被検眼の眼底に対して同時に又は交互に照射する照射光学系と、
前記第1照明光および前記第2照明光における前記眼底からの戻り光を受光する受光素子を1つ又は複数有する受光光学系と、
前記照射光学系における前記光出射部と被検眼との間に配置される光学素子を駆動する駆動部であって、前記光学素子を駆動することで、前記第1照明光および前記第2照明光が被検眼に照射可能な第1状態と、前記第1照明光および前記第2照明光が被検眼に照射されることを妨げる第2状態と、に切り換える駆動部と、
前記受光素子から出力される信号に基づいて被検眼の眼底画像を形成する画像形成手段と、
前記第1照明光の戻り光に基づいて形成される時系列の赤外眼底画像を、観察画像としてモニタに表示する表示制御手段と、
キャプチャ画像を取得するためのトリガとなるトリガ信号を、前記観察画像が表示される間に出力するためのトリガ信号出力手段と、
前記第1照明光と前記第2照明光とのうち前記第1照明光を選択的に照射して前記第1照明光に基づく前記観察画像を表示するステップと、
前記トリガ信号の出力後、前記駆動部を制御して前記第1状態から前記第2状態へ変更し、前記光出射部に前記第2照明光の一時的な出力を前記トリガ信号の出力後に開始させてから、前記第2照明光の出力が安定する所定時間を待機するステップと、
前記所定時間の待機後に、前記駆動部を制御して前記第2状態から前記第1状態へ切り換えてから、前記第2照明光の戻り光に基づいて形成されるカラー眼底画像を、前記キャプチャ画像として取得するステップと、を実行する撮影制御手段と、を有する眼科撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本開示の典型的な実施形態に係る走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)を説明する。本開示における走査型レーザー検眼鏡(以下、「SLO」と記す)1は、レーザー光を眼底上で走査し、眼底からのレーザー光の戻り光を受光することによって眼底の正面画像を取得する装置である。SLO1の撮影手法として、眼底反射光を用いる撮影手法の他に、例えば、蛍光撮影の撮影手法が知られている。本開示に係る走査型レーザー検眼鏡は、光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)、視野計などの他の眼科装置と一体化された装置であってもよい。
【0010】
なお、以下説明する実施形態では、特に断りが無い限り、SLO1は、観察面上でスポット上に集光されるレーザー光を、走査部の動作に基づき,2次元的に走査することで眼底画像を得るものとする。但し、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、いわゆるラインスキャンSLOに対して本開示の技術が適用されてもよい。この場合、走査部の動作に基づいて、ライン状のレーザー光束が観察面上で一次元的に走査される。
【0011】
<本体側の光学構成>
初めに、
図1を参照して、SLO1に設けられた光学系を説明する。
図1に示すように、SLO1は、照射光学系10と、受光光学系20と、を有する(まとめて、「撮影光学系」と称す)。SLO1は、これらの光学系10,20を用いて眼底画像を撮影する。
【0012】
照射光学系10は、少なくとも走査部16と、対物レンズ系17と、を含む。また、
図1に示すように、照射光学系10は、更に、レーザー光出射部11、コリメーティングレンズ12、穴開きミラー13、レンズ14(本実施形態において、視度調節部40の一部)、および、レンズ15を有してもよい。
【0013】
レーザー光出射部11は、照射光学系10の光源である。本実施形態では、レーザー光出射部11からのレーザー光が、照射光学系10から眼底Erへ照射される照明光として利用される。レーザー光出射部11は、例えば、レーザーダイオード(LD)、および、スーパールミネッセントダイオード(SLD)等を含んでいてもよい。具体的な構造についての説明は省略するが、レーザー光出射部11は、少なくとも1種類以上の波長域の光を出射する。本実施形態では、複数色の光が、同時に、又は選択的に、レーザー光出射部11から出射されるものとする。例えば、本実施形態では、レーザー光出射部11から、青,緑,赤の可視域の3色と、赤外域の1色と、の計4色の光が出射される。各色の光は、同時に、又は、交互に出射可能である。青,緑,赤の可視域の3色は、例えば、カラー撮影に利用される。例えば、光源11から青,緑,赤の3色が実質的に同時に出射されることによって、カラー撮影が行われる。また、可視域の3色のうち、いずれか1色が、可視蛍光撮影に利用されてもよい。例えば、青色の光が、可視蛍光撮影の一種であるFAG撮影(フルオレセイン蛍光造影撮影)に利用されてもよい。また、例えば、緑色の光が、FAF撮影(Fundus Auto-Fluorescence:自発蛍光)に利用されてもよい。つまり、眼底に蓄積された蛍光物質(例えば、リポフスチン)の励起光として利用されてもよい。また、例えば、赤外域の光は、赤外域の眼底反射光を用いる赤外撮影の他、赤外蛍光撮影に利用されてもよい。例えば、赤外蛍光撮影には、ICG撮影(インドシアニングリーン蛍光造影撮影)が知られている。この場合、レーザー光源11から出射される赤外光は、ICG撮影で使用されるインドシアニングリーンの蛍光波長とは異なる波長域に設定されていることが好ましい。
【0014】
レーザー光は、
図1に示した光線の経路にて眼底Erに導かれる。つまり、レーザー光出射部11からのレーザー光は、コリメーティングレンズ12を経て穴開きミラー13に形成された開口部を通り、レンズ14およびレンズ15を介した後、走査部16に向かう。走査部16によって反射されたレーザー光は、対物レンズ系17を通過した後、被検眼Eの眼底Erに照射される。その結果、レーザー光は、眼底Erで反射・散乱される、或いは、眼底に存在する蛍光物質を励起させ、眼底からの蛍光を生じさせる。これらの光(つまり、反射・散乱光および蛍光等)が、戻り光として、瞳孔から出射される。
【0015】
本実施形態において、
図1に示すレンズ14は、視度調節部40の一部である。視度調節部40は、被検眼Eの視度の誤差を矯正(軽減)するために利用される。例えば、レンズ14は、駆動機構14aによって、照射光学系10の光軸方向へ移動可能である。レンズ14の位置に応じて、照射光学系10および受光光学系20の視度が変わる。このため、レンズ14の位置が調節されることで、被検眼Eの視度の誤差が軽減され、その結果として、レーザー光の集光位置が、眼底Erの観察部位(例えば、網膜表面)に設定可能となる。なお、視度調節部40は、例えば、バダール光学系など、
図1とは異なる光学系が適用されてもよい。
【0016】
走査部16(「光スキャナ」ともいう)は、光源(レーザー光出射部11)から発せられたレーザー光を、眼底上で走査するためのユニットである。以下の説明では、特に断りが無い限り、走査部16は、レーザー光の走査方向が互いに異なる2つの光スキャナを含むものとする。即ち、主走査用(例えば、X方向への走査用)の光スキャナ16aと、副走査用(例えば、Y方向への走査用)の光スキャナ16bと、を含む。以下では、主走査用の光スキャナ16aはレゾナントスキャナであり、副走査用の光スキャナ16bはガルバノミラーであるものとして、実施例(
図3,4,5参照)を説明する。但し、各光スキャナ16a,16bには、他の光スキャナが適用されてもよい。例えば、各光スキャナ16a,16bに対し、他の反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ、および、MEMS等)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が適用されてもよい。なお、走査部16は、必ずしも複数の光スキャナである必要はなく、1つの光スキャナであってもよい。2次元的にレーザー光を走査する単一の光スキャナとしては、例えば、MEMSデバイス、及び、音響光学素子(AOM)等のいずれかを利用したものが提案されている。なお、いずれの光スキャナにおいても、光の進行方向を変化させる光学素子と、その光学素子を駆動させるための駆動部(ドライバ)と、が含まれる。
【0017】
光スキャナ16a,16bのうち少なくとも一つは、レーザー光が照射光路から外れるように、レーザー光を偏向可能であってもよい。ここでいう「レーザー光が照射光路から外れる」場合には、レーザー光は、被検眼Eへ照射されなくなる。
【0018】
対物レンズ系17は、SLO1の対物光学系である。対物レンズ系17は、走査部16によって走査されるレーザー光を、眼底Erに導くために利用される。そのために、対物レンズ系17は、走査部16を経たレーザー光が旋回される旋回点Pを形成する。旋回点Pは、照射光学系10の光軸L1上であって、対物レンズ系17に関して走査部16と光学的に共役な位置に形成される。なお、本開示において「共役」とは、必ずしも完全な共役関係に限定されるものではなく、「略共役」を含むものとする。即ち、眼底画像の利用目的(例えば、観察、解析等)との関係で許容される範囲で、完全な共役位置からズレて配置される場合も、本開示における「共役」に含まれる。但し、SLO1の対物光学系は、レンズ系に限定されるものではなく、ミラー系であってもよいし、レンズ系とミラー系とを組み合わせたものでもあってもよいし、その他の光学系であってもよい。
【0019】
走査部16を経たレーザー光は、対物レンズ系17を通過することによって、旋回点Pを経て、眼底Erに照射される。このため、対物レンズ系17を通過したレーザー光は、走査部16の動作に伴って旋回点Pを中心に旋回される。その結果として、本実施形態では、眼底Er上でレーザー光が2次元的に走査される。眼底Erに照射されたレーザー光は、集光位置(例えば、網膜表面)にて反射される。また、レーザー光は、集光位置の前後の組織にて散乱される。反射光および散乱光は、平行光としてそれぞれ瞳孔から出射する。
【0020】
SLO1は、レーザー光出射部11と被検眼Eとの間の光路上(換言すれば、照射光学系10の光路上)において、各色のレーザー光が被検眼に照射可能な第1状態と、各色のレーザー光が照射されることを妨げる第2状態とに、に切り替えるための駆動部(ドライバ)を備えてもよい。駆動部は、種々の具体例が考えられる。例えば、被検眼Eに対してレーザー光を走査するための光スキャナにおける駆動部であってもよい。また、照射光学系10のレーザー光の光路中に配置される遮光部材(例えば、シャッター)の駆動部であってもよい。勿論、これら以外であってもよい。以下の説明においては、シャッターユニット45と、光スキャナ16とのうち、少なくとも一方において、第1状態と第2状態との切換動作が実現される場合を例示する。
【0021】
なお、
図1に示すシャッターユニット45は、遮光部材(以下、「シャッター」ともいう)46と、駆動部47と、を有する。駆動部47は、照射光学系10の光路に対して遮光部材46を挿脱させる。このようなシャッターユニット45は、SLO1の動作中において、外部に(主には、被検眼に対して)不用意にレーザー光が照射されることを抑制するために利用される。シャッターユニット46としては、シャッター自体が移動するデバイス(
図1参照)に限られるものでない。例えば、液晶シャッターのように、シャッター自体の移動を必要としないデバイスであってもよい。
【0022】
本実施形態において、遮光部材46は、照射光学系10の光路に挿入されることによって、レーザー光出射部11から出射される全ての波長域の光を遮光するものとして説明する。但し、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、シャッターユニットは、例えば、光源ユニット11内に、色毎に、設けられていてもよい。なお、本実施形態のように、光源ユニット11の外部にシャッターユニット45を配置する場合は、照射光学10の独立光路(例えば、
図1における、光源ユニット11と、穴開きミラー13との間)において遮光部材46が挿脱されることが好ましい。
【0023】
次に、受光光学系20について説明する。受光光学系20は、1つ又は複数の受光素子を持つ。例えば、
図1に示すように、複数の受光素子25,27,29を有してもよい。この場合、照射光学系10によって照射されたレーザー光による眼底Erからの光は、受光素子25,27,29によって受光される。
【0024】
図1に示すように、本実施形態における受光光学系20は、対物レンズ系17から穴開きミラー13までに配置された各部材を、照射光学系10と共用してもよい。この場合、眼底からの光は、照射光学系10の光路を遡って、穴開きミラー(本実施形態における光路分岐部材)13まで導かれる。穴開きミラー13は、被検眼の角膜,および,装置内部の光学系(例えば対物レンズ系のレンズ面等)での反射によるノイズ光の少なくとも一部を取り除きつつ、眼底Erからの光を、受光光学系20の独立光路へ導く。
【0025】
なお、照射光学系10と受光光学系20とを分岐させる光路分岐部材は、穴開きミラー13に限られるものではなく、その他のビームスプリッターが利用されてもよい。
【0026】
受光光学系20は、穴開きミラー13の反射光路に、レンズ21、ピンホール板23、および、光分離部(光分離ユニット)30を有する。また、光分離部30と各受光素子25,27,29との間に、レンズ24,26,28が設けられている。
【0027】
ピンホール板23は、眼底共役面に配置されており、SLO1における共焦点絞りとして機能する。すなわち、視度調節部40によって視度が適正に補正される場合において、レンズ21を通過した眼底Erからの光は、ピンホール板23の開口において焦点を結ぶ。ピンホール板23によって、眼底Erの集光点(あるいは、焦点面)以外の位置からの光が取り除かれ、残り(集光点からの光)が主に受光素子25,27,29へ導かれる。
【0028】
光分離部30は、眼底Erからの光を分離させる。本実施形態では、光分離部30によって、眼底Erからの光が波長選択的に光分離される。また、光分離部30は、受光光学系20の光路を分岐させる光分岐部を兼用していてもよい。例えば、
図1に示すように、光分離部30は、光分離特性(波長分離特性)が互いに異なる2つのダイクロイックミラー(ダイクロイックフィルター)31,32を含んでいてもよい。受光光学系20の光路は、2つのダイクロイックミラー31,32によって、3つに分岐される。また、それぞれの分岐光路の先には、受光素子25,27,29の1つがそれぞれ配置される。
【0029】
例えば、光分離部30は、眼底Erからの光の波長を分離させ、3つの受光素子25,27,29に、互いに異なる波長域の光を受光させる。例えば、青,緑,赤の3色の光を、受光素子25,27,29に1色ずつ受光させてもよい。この場合、各受光素子25,27,29の受光結果から、カラー画像を容易に得ることができる。
【0030】
また、光分離部30は、赤外撮影で使用される赤外域の光を、受光素子25,27,29の少なくとも1つに受光させてもよい。この場合において、例えば、蛍光撮影で使用される蛍光と、赤外撮影で使用される赤外域の光とが、互いに異なる受光素子に受光されてもよい。
【0031】
各受光素子25,27,29が感度を持つ波長帯は、互いに異なっていてもよい。また、受光素子25,27,29のうち、少なくとも2つが、共通の波長域に感度を持っていてもよい。それぞれの受光素子25,27,29は、受光した光の強度に応じた信号(以下、受光信号と称す)をそれぞれ出力する。本実施形態において、受光信号は、受光素子毎に別々に処理されて画像が生成される。つまり、本実施形態では、最大で3種類の眼底画像が、並行して生成される。
【0032】
<制御系の構成>
次に、
図2を参照して、SLO1の制御系を説明する。SLO1は、制御部70によっての各部の制御が行われる。制御部70は、SLO1の各部の制御処理と、演算処理とを行う電子回路を有する処理装置(プロセッサ)である。制御部70は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で実現される。制御部70は、記憶部71と、バス等を介して電気的に接続されている。また、制御部70は、レーザー光出射部11、受光素子25,27,29、駆動部14a,46a、走査部16、入力インターフェイス75、およびモニタ80等の各部とも電気的に接続されている。
【0033】
記憶部71には、各種の制御プログラムおよび固定データ等が格納される。また、記憶部71には、一時データ等が記憶されてもよい。SLO1で得られた画像は、記憶部71に記憶されていてもよい。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、外部の記憶装置(例えば、LANおよびWANで制御部70に接続される記憶装置)へSLO1で得られた画像が記憶されてもよい。
【0034】
便宜上、本実施形態では、制御部70が画像処理部(画像形成部)を兼用するものとする。例えば、受光素子25,27,29から出力される受光信号を基に、制御部70が眼底画像を形成する。より詳細には、制御部70は、走査部16による光走査と同期して眼底画像を形成する。例えば、制御部70は、副走査用の光スキャナ16bがn回(nは、1以上の整数)往復する度に、少なくとも1フレーム(換言すれば、1枚)の眼底画像を、(受光素子毎に)形成する。なお、以下では、特段の断りが無い限り、便宜上、副走査用の光スキャナ16bの1往復につき、その1往復に基づく1フレームの眼底画像が形成されるものとする。本実施形態では、3つの受光素子25,27,29が設けられているので、制御部70は、それぞれの受光素子25,27,29からの信号に基づく最大3種類の画像が、副走査用の光スキャナ16bが1往復する度に生成される。
【0035】
制御部70は、上記のような装置の動作に基づいて逐次形成される複数フレームの眼底画像を、観察画像として時系列にモニタ80へ表示させてもよい。観察画像は、略リアルタイムに取得された眼底画像からなる動画像である。また、制御部70は、逐次形成される複数の眼底画像のうち一部を、撮影画像(キャプチャ画像)として取り込む(キャプチャする)。その際、撮影画像は記憶媒体に記憶される。撮影画像が記憶される記憶媒体は、不揮発性の記憶媒体(例えば、ハードディスク,フラッシュメモリ等)であってもよい。本実施形態では、例えば、トリガ信号(例えば、レリーズ操作信号等)の出力後、所定のタイミング(又は,期間)に形成される眼底画像がキャプチャされる。より詳細については、
図3以下を参照して後述する。
【0036】
また、本実施形態では、眼底画像の形成だけでなく、眼底画像に対する画像処理(画像の加工、解析等)についても、制御部70によって行われる。なお、画像処理部は、必ずしも制御部70である必要はなく、制御部70とは別体の装置であってもよい。
【0037】
入力インターフェイス75は、検者の操作を受け付ける操作部である。例えば、タッチパネル、マウス、および、キーボード等が、入力インターフェイス75として利用されてもよい。このような入力インターフェイス75は、SLO1とは別体のデバイスであってもよい。制御部70は、入力インターフェイス75(操作部)から出力される操作信号に基づいて、上記の各部材を制御する。入力インターフェイス75には、例えば、レリーズのための操作が入力されてもよい。レリーズのための操作が入力される場合、入力インターフェイス75は、制御部70に対してレリーズ操作信号を発する。これによって、制御部70からトリガ信号が各部へ出力され、撮影動作が行われる。撮影動作の結果として、SLO1において撮影画像がキャプチャされる。本実施形態では、レリーズ操作信号の出力タイミングと、トリガ信号の出力タイミングとは、略同時であるものとする。また、トリガ信号の出力契機は、必ずしも、検者によるレリーズ操作である必要は無い。例えば、SLO1の実施例として、制御部70がアライメント状態を観察画像に基づいて自動的に検出し、適正アライメント状態が検出された際に、自動的に撮影動作を行うものも考えられる。この場合、例えば、適正アライメント状態の検出を契機として、制御部70からトリガ信号が発せられてもよい(換言すれば、レリーズが行われてもよい)。
【0038】
<動作説明>
次に、
図3〜
図5のタイミングチャートを参照して、撮影動作の実施例を説明する。ここでは、具体例として、赤,緑,青の3色の撮影画像を取得する動作を示す。まず、
図3〜
図5において共通する、各チャートの概要を説明する。
【0039】
『1.動作』は、SLO1における動作の内容(又は、種別)を示している。「アライメント」の期間では、制御部70は、モニタ80へ観察画像を表示させる。また、「アライメント」の期間は、観察画像を利用して、被検眼Eに対する装置の位置合わせ(つまり、アライメント)のために利用されてもよい。また、観察画像は、視度調節部40による視度補正のために利用されてもよい。この場合、例えば、制御部70は、駆動機構14aを制御して画像のぼけが軽減されるように視度補正を行う。「撮影」の期間では、制御部70によって、撮影画像を取得するための処理が実行される。撮影画像は、この期間内の受光結果に基づいて形成される。また、本実施形態では、レリーズ(Release)のタイミングで、「アライメント」から「撮影」へ切り替えられる。
【0040】
『2.レーザ(IR)』に関するチャートは、本実施形態における観察用の照明光の出力状態を示す。具体例として、赤外光の出力状態が図示されている。ON状態では、レーザー光出射部11から観察用の照明光(ここでは、赤外光)が継続して出射される。一方、OFF状態では、レーザー光出射部11から観察用の照明光は出射されない。観察用の照明光の出力状態は、「アライメント」と「撮影」との切換えに連動して切換わる。
【0041】
『3.レーザー(R,G,B)』に関するチャートは、本実施形態における撮影用の照明光の出力状態を示す。具体例として、赤,緑,青の3色のレーザーにおける出力状態を示すチャートである。ON状態では、レーザー光出射部11から撮影用の照明光(ここでは、赤,緑,青の3色)が継続して出射される。一方、OFF状態のとき、レーザー光出射部11から撮影用の照明光は出射されない。例えば、撮影用の照明光と対応する光源への電力供給の有無が制御されることによって、ON状態とOFF状態とが切換えられる。本実施形態では、レリーズの後、所定の期間だけ、撮影用の照明光はON状態となる。また、撮影用の照明光の出力完了(ONからOFFへの切換)に伴って、撮影動作は完了される。なお、赤,緑,青の3色のレーザーは、本実施形態では同時に出射される。
【0042】
ところで、必ずしも、レーザー光の出力開始から、直ちに十分な光量が出力されるようになる,又は,直ちに出力が安定する、とは限らない。例えば、現状、赤外光のレーザー,赤色のレーザー,および,青色のレーザーと比べて、緑色のレーザーは、出力開始から出力が安定するまでの期間を短縮し難いことが知られている。例えば、緑色のレーザー光源では、電力の供給が開始されてから、所望の出力で安定するまでに数十ミリ秒(より詳細には、30ミリ秒〜40ミリ秒程度)を必要とすることが、本発明者において確認された。その間の受光結果に基づいて形成される画像では、副走査方向の位置に応じて、明るさが大きく異なってしまう。
【0043】
これに対し、本実施形態の制御部70は、トリガ信号の出力に基づいて撮影用の照明光の出射が開始されてから一定の期間(本実施形態における「第1期間」)が経過した後のタイミングを、キャプチャ画像の取得開始タイミング(例えば、キャップチャの開始タイミング)としている。ここでいう「一定の期間」は、タイミングチャートにおいてwaiting timeとして示されている。なお、waiting timeは、撮影用の照明光の出射が開始されてから安定するまでの期間以上の長さに設定されている。例えば、緑色のレーザー光の出力開始から出力が安定するまでに要する時間を考慮して定められていてもよい。例えば、50ミリ秒程度であってもよい。このような撮影動作によって、レリーズに基づいて撮影用の照明光を光源から出力し始めても、良好な撮影画像を比較的短時間で得ることができる。
【0044】
『4.シャッター』に関するチャートは、遮光部材(以下、「シャッター」ともいう)46の開閉状態を示す。CLOSE状態では、撮影用の照明光を遮光するために、遮光部材が、光源と被検眼Eとの間に挿入される。OPEN状態では、遮光部材が退避されることにより、撮影用の照明光が被検眼Eに対して照射され得る状態となる。
【0045】
『5.レゾナントON/OFF』に関するチャートは、レゾナントスキャナ(主走査用の光スキャナ16bの具体例)の動作が有効であるか否かを示している。ON状態では、レゾナントスキャナは動作され、OFF状態では、レゾナントスキャナは停止される。本実施形態において、レゾナントスキャナは、常にON状態に設定されている。
【0046】
『6.ガルバノON/OFF』に関するチャートは、ガルバノミラーの動作が有効であるか否かを示している。ON状態では、ガルバノミラーは動作され、OFF状態では、ガルバノミラーは停止される。
【0047】
『7.ガルバノ波形』に関するチャートは、ガルバノミラーにおける往復動作の状態を示している。ここでは、入力に対し、リニアに変位するデバイスが想定されている。波形は、ガルバノミラーの変位量と、入力波(本実施形態では、三角波)との両方を示している。
図3〜
図5において、各三角波における長い直線部分が往路での走査を示しており、短い直線部分が復路での走査を示している。本実施形態において、ガルバノミラーは、一定の振り角(走査範囲)で往復される。また、本実施形態では、ガルバノミラーが一往復する毎に、制御部70は、受光素子毎に1フレームずつの眼底画像を形成可能である。本実施形態では、3つの受光素子25,27,29を有しているので、ガルバノミラーが往復走査される度に、最大3枚の眼底画像が形成される。このように、本実施形態の制御部70は、各々の受光素子25,27,29からの信号に基づいて形成される複数の被検眼の画像であって、互いに同一の期間での戻り光の受光結果に基づいて形成される複数の被検眼の画像(ここでは、眼底画像)を、それぞれキャプチャすることができる。複数の受光素子25,27,29による同一の期間での戻り光の受光結果に基づく上記複数の画像は、更に、制御部70によって、1枚に合成されてもよい。例えば、赤,緑,青の反射光にそれぞれ基づく3枚の眼底画像を合成して、カラー眼底画像を形成してもよい。
【0048】
本実施形態において、ガルバノミラーの走査範囲は、説明の便宜上、第1範囲A(有効範囲ともいう)と、第2範囲B(退避範囲ともいう)と、に大別される。第1範囲Aは、被検眼にレーザー光が照射される経路である照射経路中にレーザー光が偏向される振れ角の範囲である。第2範囲Bは、レーザー光が照射経路外に偏向される振れ角の範囲である。本実施形態では、ガルバノミラーの走査範囲における折り返しの位置が、少なくとも第2範囲Bに含まれている。より具体的には、往路と復路の折り返し位置,復路と往路の折り返し位置,の両方が第2範囲Bに含まれている。また、2つの第2範囲Bの中間部分が、第1範囲Aである。本実施形態では、眼底画像を得るためのガルバノミラーの走査範囲に、第2範囲が含まれているものしたが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ガルバノミラーは、通常、第1範囲内で往復動作が行われ、レリーズの際等の特定の機会にだけ、第2範囲に走査角度が変位されてもよい。
【0049】
<第1実施例>
第1実施例では、シャッターは、常に開放されている。また、第1実施例では、レリーズ後、ガルバノミラーの走査角度が第2範囲に変位された状態で、少なくとも撮影用の照明光(ここでは、赤,緑,青のレーザー光)の出力が安定するために必要な一定の期間だけ待機される。つまり、ガルバノミラーの動作は、第2範囲において一時的に停止される。一例として、
図3では、レリーズのタイミングで実行されている往復動作の終了を待ってから、ガルバノミラーは停止される。
【0050】
また、ガルバノミラーの停止と同期して、観察用のレーザー光はOFF状態に設定される(つまり、出力が停止される)。例えば、ガルバノミラーの駆動部(図示せず)から,往復動作の終了タイミングで出力される信号に基づいて、レーザー光がOFF状態に設定されてもよい。その後、撮影用のレーザーの出力が開始される。なお、撮影用のレーザーの出力が開始されるタイミングは、観察用のレーザーが停止されるタイミングと略同時であってもよい。即ち、若干後であってもよいし(
図5参照)、完全に同時であってもよい。
【0051】
撮影用の照明光の出力が開始されてから、一定期間(waiting time)の経過後に、ガルバノミラーによる走査が行われる。
図3では、(三角波の入力による)1フレーム分の走査が行われる。制御部70は、この走査によって形成される眼底画像を、撮影画像としてキャプチャする。
【0052】
1フレーム分の走査完了後、ガルバノミラーは第2範囲において、再度、一時的に停止される。また、ガルバノミラーの停止に同期して、撮影用の照明光の出射は停止される。その後、制御部70は、観察用の照明光の出射を開始させると共に、ガルバノミラーの往復動作を開始させ、随時、観察画像を取得する。
【0053】
第1実施例では、撮影用の照明光の出力が開始されてから,少なくとも出力が安定するために要する期間よりも長い一定の期間(waiting time)が経過するまでの間、ガルバノミラーが第2範囲にて停止される。これによって、不用意に撮影用の照明光が被検眼に照射されてしまうことが抑制される。実施例において、撮影用の照明光は可視光であるので、撮影光による眩しさを被検者に与えにくくなる。また、縮瞳が抑制される。但し、縮瞳を抑制することは、多数のフレーム数の画像を、一度の撮影動作で取得するような場合に、特に有用である。
【0054】
<第2実施例>
第2実施例では、第1実施例にて示した撮影に伴うガルバノミラーの制御部に加え、更に、シャッター機構45が制御される。具体的には、アライメントの際には開放されていたシャッターが、レリーズに基づいて閉鎖される。
【0055】
その後、シャッターは、撮影用の光の出力が開始されてから一定の期間(waiting time)が少なくとも経過したタイミングにおいて開放される。このタイミングは、例えば、レリーズに基づいて一時的に停止されていたガルバノミラーの往復動作が再開されるタイミングと同期してもよい。これにより、第2実施例では、不用意に撮影用の照明光が被検眼に照射されてしまうことが、シャッターによっても抑制される。また、撮影完了時に、シャッターが、再度、一時的に閉鎖されてもよい。このときの開閉のタイミングに関しても、ガルバノミラーにおけるON/OFFの状態と同期してもよい。
【0056】
<第3実施例>
第3実施例では、ガルバノミラーの往復動作が、レリーズに関わらず、絶えず繰り返される。また、シャッター機構45が制御されることで、不用意に撮影用の照明光が被検眼に照射されてしまうこと等が抑制される。この場合、ガルバノミラーの周期に同期して、シャッターの開閉が制御される。
【0057】
以上、実施形態に基づいて説明を行ったが、本開示を実施するうえで、実施形態の内容を適宜変更することができる。
【0058】
例えば、上記実施形態では、撮影画像(キャプチャ画像)として設定、および、保存される画像(つまり、キャプチャされる画像)を、撮影動作の際に制御部70が決定したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、事後的に、撮影画像として設定、および、保存される画像を、制御部70が決定してもよい。
【0061】
また、例えば、上記実施形態では、眼科撮影装置としてSLOを例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、上記実施形態では、撮影光の照明光として、可視域の光である赤,緑,青の3色が同時に被検眼に照射される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、照明光には、赤外域が含まれていてもよい。例えば、受光光学系に適宜フィルタを挿入したうえで、赤外域の光と、可視域の光とを同時に照射することで、可視蛍光による撮影画像と、赤外光の反射による撮影画像とを同時に取得することができる。これによれば、可視蛍光による撮影画像と対応する眼底の位置を、赤外光の反射による撮影画像を参照して確認することができる。例えば、緑色の光と、赤外域の光とを、撮影用の照明光として同時に出射することによって、緑色の光を励起光とする眼底の自発蛍光画像と、赤外光の反射による眼底画像とを、同時に撮影してもよい。
【0062】
また、例えば、SLO以外の眼科撮影装置(具体例としては、眼底カメラ、光断層像撮影装置、前眼部撮影装置等)に、上記実施形態に開示された技術が適用されてもよい。