(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成または論理的意義を有する複数の構成を、必要に応じて透光板106a及び透光板106bのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。例えば、透光板106a及び透光板106bを特に区別する必要が無い場合には、単に透光板106と称する。
【0022】
<<壁面測定装置100及び壁面測定方法の概要>>
本発明の実施形態に係る壁面測定装置100及び壁面測定方法は、コークス炉の炭化室10の壁面12の凹凸を測定する装置及び方法である。本実施形態においては、先に説明したように、当該壁面測定装置100の有するラインCCDカメラ200の線状視野に含まれる壁面12上に、同じく当該壁面測定装置100の有するレーザ投光器300によりレーザ光を照射する。さらに、レーザ光の像が重畳する、高温で赤熱発光している壁面12の画像(原画像)を取得する。そして、本実施形態においては、取得した原画像上でのレーザ光像の炭化室の高さ方向における上下の変位を観測し、変位量により壁面12の凹凸量を求めることができる。
【0023】
まずは、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る壁面測定装置100の概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る壁面測定装置100の外観構成の一例を示す説明図である。詳細には、
図1には、炭化室10の一方の側から、炭化室10の奥行方向に沿って、壁面測定装置100が挿入されたときの様子を示している。なお、
図1中に示される、透光板106a〜106dから伸びる直線は、壁面測定装置100の内部に設けられたラインCCDカメラ(撮影部)200a〜200dのそれぞれの、透光板106a〜106dを介した視野範囲を示す。また、
図1中に示される透光板108a〜108bから伸びる直線は、壁面測定装置100の内部に設けられたレーザ投光器(照射部)300a〜300bから、透光板108a〜108bを介して照射されたレーザ光の光路の一部を示す。また、
図2は、本実施形態に係る垂直柱102とミラー管104と壁面12との配置関係の一例を示す説明図であり、詳細には、垂直柱102とミラー管104とを、それらの軸に垂直な方向に沿って切ったときの断面の概略を示す説明図である。なお、垂直柱102からミラー管104を介して壁面12bまで到達する矢印は、レーザ投光器300から照射されるレーザ光の光路を示す。
【0024】
壁面測定装置100は、
図1に示すように、複数のラインCCDカメラ200及び複数のレーザ投光器300が内蔵された垂直柱102と、側面にミラー400を有するミラー管104とを主に有している。垂直柱102及びミラー管104は、2重管構造を持ち、2重管構造を構成する内管と外管との間に冷却水を流すことにより、垂直柱102及びミラー管104のそれぞれの内部が高熱に曝されないようにしている。また、垂直柱102及びミラー管104は、一体で形成されており、炭化室10の内部を炭化室10の奥行方向に沿ってともに移動することができる。さらに、壁面測定装置100は、
図1には図示されない処理ユニット(画像処理部)110(
図7参照)を有する。当該処理ユニット110は、壁面測定装置100により取得された画像を処理等するための複数の機能部を有するユニットであり、その詳細は後で説明する。
【0025】
図1に示すように、垂直柱102の前面には、透光板106a〜106dが、所定の間隔で高さ方向に設けられている。垂直柱102の内部に設けられた複数のラインCCDカメラ200a〜200dは、それぞれ透光板106a〜106dを介して、ミラー管104のミラー400に映し出された像を撮影し、壁面12の原画像を取得する。ラインCCDカメラ200は、ミラー400に映し出される像を撮影することにより、極端に狭い幅を有する炭化室10の壁面12の画像を高精度に取得することができる。なお、本実施形態においては、炉壁の高さ方向に一列に投光した複数のレーザ光の像を撮像するため、撮影装置としては、エリアカメラではなくラインCCDカメラを用いることが好ましい。さらに、ラインCCDカメラ200は、壁面測定装置100が炭化室10の内部を炭化室10の奥行方向に沿って移動することで、壁面12の二次元画像を得ることができる。
【0026】
また、
図1に示すように、透光板106aと透光板106bとの間と、透光板106cと透光板106dとの間には、それぞれ透光板108a、108bが設けられている。さらに、垂直柱102の内部に設けられたレーザ投光器300a、300bのそれぞれは、例えば複数の半導体レーザ302(
図3参照)を有する。当該レーザ投光器300a、300bは、透光板108a、108bを介して、垂直柱102の外部へ、例えば690nm程度の波長を有する複数のレーザ光を、炭化室10の床面(図示省略)に対して傾く光路となるように、照射する(
図3参照)。外部へと照射されたレーザ光は、ミラー管104のミラー400での反射によってその光路は折り曲げられ、炭化室10の壁面12上のラインCCDカメラ200a〜200dの視野に到達する。このような照射により、壁面12上には、高さ方向に沿って概ね等間隔に位置する複数のレーザ光像が現れる。例えば、レーザ投光器300aは、その上方にあるラインCCDカメラ200aで撮影される複数のレーザ光像を、壁面12上につくりだすことができる。また、レーザ投光器300bは、その下方にあるラインCCDカメラ200bで撮影される複数のレーザ光像を、壁面12上につくりだすことができる。
【0027】
なお、レーザ投光器は、壁面12がほぼ平らである場合に、複数のレーザ光像が、耐火煉瓦の壁面12の高さ方向の間隔(例えば130mm)にほぼ等しい間隔で、耐火煉瓦の目地と目地との間に現れるように、レーザ光の照射角度を調整することができる。
【0028】
また、本実施形態においては、ラインCCDカメラ200とレーザ投光器300とは、垂直柱102の管軸を回転軸としてともに旋回することができる構成を有する。ラインCCDカメラ200とレーザ投光器300とをともに旋回させることにより、炭化室10の一方の壁面12aと他方の壁面12bとを観察することができる。さらに、
図2に示すように、ミラー管104には、炭化室10の一方の壁面12aを正面から観察するためのミラー400aと、炭化室10の他方の壁面12bを正面から観察するためのミラー400bとが設けられている。これらのミラー400a、400bは、例えば、ミラー管104のステンレス製の外管の表面を鏡面研磨して鏡面化した後、クロムメッキを施すことにより形成することができる。また、これらのミラー400a、400bは、レーザ投光器300から照射されるレーザ光線の光軸に対してほぼ45°の角度を持って設置される。
【0029】
次に、
図2から
図4を参照して、本実施形態に係る壁面測定方法の概要について説明する。
図3は、本実施形態に係る壁面測定装置100による壁面12の凹凸量を測定する手法を説明するための説明図であり、詳細には、垂直柱102とミラー管104とを、それらの軸の方向に沿って切ったときの断面の概略を示す説明図である。さらに、
図4は、本実施形態に係る壁面測定装置100により得られる壁面画像(原画像)600の一例を示す図(画像)である。
【0030】
例えば、
図2及び
図3に示すように、ラインCCDカメラ200とレーザ投光器300とを、壁面12bをねらう位置に旋回させた場合、レーザ投光器300から出射される複数のレーザ光は、ミラー400bにおいて反射され、壁面12bに到達する。これにより、壁面12b上にレーザ光像が現れる。例えば、本実施形態では、ラインCCDカメラ200の線状視野の上で幅が2mm程度の複数のレーザ光像が現われる。先に説明したように、各レーザ投光器300は、複数の半導体レーザ302からなり、各レーザ投光器300の照射により、半導体レーザ302の個数分だけのレーザ光像が壁面12b上に炭化室10の高さ方向に沿って現われる。先に説明したように、レーザ光像の幅が2mm程度であるのに対し、炭化室10を構成する耐火煉瓦の目地の、炭化室10の高さ方向に沿った幅は、4mm〜5mm程度である。このように本実施形態においては、壁面12に現れるレーザ光像と耐火煉瓦の目地の、幅の差が1mmを超えるように設定されている。詳細については後述するが、このようにすることにより、レーザ光像と耐火煉瓦の目地の画像とを画像上で区別することができる。
【0031】
以上のようにして、レーザ光像が重畳された壁面12の画像を、ラインCCDカメラ200により撮影する。この際、壁面測定装置100を奥行き方向に沿って一定の速度(例えば、7.5m/分)で移動させる。詳細には、壁面測定装置100が所定の距離(例えば1mm)だけ移動するごとに、ラインCCDカメラ200により撮影し、撮影した画像を壁面測定装置100内の記憶部(図示省略)に格納する。これを繰り返すことにより、炭化室10の奥行方向の略全長に亘る壁面12の原画像を取得することができる。例えば、
図4のような壁面12の原画像600を取得することができる。
図4においては、その原画像600上には、炭化室10の奥行き方向に延びるレーザ光像700が表れている。また、当該原画像600上には、奥行き方向に伸びる耐火煉瓦の目地の像702等が含まれている。原画像600上に現れる像については、後で詳細を説明する。
【0032】
ここで、取得した画像上でのレーザ光像700の、炭化室10の高さ方向における上下の変位を観測し、当該変位量により壁面12の凹凸量を求める手法について、
図3を参照して説明する。例えば、壁面12に凹部が存在していると、壁面12が平らな場合に比べて、ミラー400と壁面12との間の距離が増大する(例えば、
図3中A地点)。この場合、取得した画像上では、レーザ光像700は上方向に長さBだけシフトする。これは、レーザ投光器300により、ラインCCDカメラ200の下方から、炭化室10の床面(図示省略)に対して斜めにレーザ光が照射されているためである。一方、例えば、壁面12に凸部が存在していると、壁面12が平らな場合に比べてミラー400と壁面12との間の距離が減少する。したがって、取得した画像上では、レーザ光像700は下方向にシフトする。なお、レーザ光像700のシフトする方向は、レーザ投光器300が照射するレーザ光の照射角度に応じて決定される。例えば、
図3のように照射角度が炭化室10の床面の方向に対して上方に傾いている場合には、レーザ光像700は凹部の存在により上方向にシフトし、凸部の存在により下方向にシフトする。一方、照射角度が炭化室10の床面の方向に対して下方に傾いている場合には、レーザ光像700は凹部の存在により下方向にシフトし、凸部の存在により上方向にシフトする。
【0033】
そこで、本実施形態においては、取得した画像上のレーザ光像700を追跡し、追跡結果に基づいて、レーザ光像700の位置情報、すなわち高さ方向における上下変位を測定する。さらに、当該測定によって得られた位置情報と、レーザ光像700に対応するレーザ光の出射角度、及びラインCCDカメラ200の視野角・視野サイズ等の幾何学的条件とに基づいて、三角測量の原理で、壁面12の凹凸量を求めることができる。
【0034】
<<本発明の実施形態を創作するに至った背景>>
しかしながら、最近では以前に比べ炭化室10の炉壁煉瓦の損傷が進行し、煉瓦欠損による壁面12の大きな段差でレーザ光像700が急激に上下変位するといった箇所が増加している。このような状況において、画像上でのレーザ光像700の逐次追跡の際、レーザ光像700ではなく、誤って目地等の像を追跡してしまうことがある。以下に、その詳細を
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、
図4の壁面画像(原画像)600の一部を拡大した図(画像)である。さらに、
図6は、従来の壁面測定装置により得られるレーザ光像700の追跡結果の一例を示す図(画像)である。
【0035】
詳細には、
図5に示される原画像602には、壁面12の凹凸量を測定するために用いられるレーザ光像700が3本含まれている(
図5中の奥行き方向に沿って伸びる細い輝線像)。また、これらレーザ光像700の一部分は、壁面12の凹部により下にシフトしている(
図5中の領域C)。さらに、当該原画像602には、レーザ光像700と同様に奥行き方向に沿って伸びる複数の太い輝線像が含まれている。この太い輝線像は、炉壁煉瓦の目地の像702である。目地の像702は、目地に付着したカーボン成分により煉瓦の地肌の像よりも明るい像となり、
図5に示すような輝線像として現れる。
【0036】
さらに、
図5の画像には、左右に伸びる細い輝線像704が含まれている(
図5中の下方に位置する左右に伸びる細い輝線像)。以下の説明においては、当該輝線像を「偽レーザ光像」704と呼ぶ。この偽レーザ光像704は、壁面測定装置100のミラー管104のミラー400にわずかな汚れや粉塵の付着等があると、ミラー400自体にレーザ光が写りこんでしまうことにより、原画像に現れる。このようにして画像に現れる偽レーザ光像704は、本来の測定に用いるレーザ光像700ではなく、不要な光の像である。しかしながら、コークス炉の炭化室10の内部は、1000℃の高温で、発塵が浮遊している環境であることから、ミラー400の表面が徐々に酸化したり、ミラー400にダストが付着したりすることを避けることは難しく、上述のような原画像602上の偽レーザ光像704は頻繁に発生する。
【0037】
このような原画像602に対して、当該原画像上でのレーザ光像700の追跡を行う。例えば、オペレータは原画像602の左側の端において追跡を開始する開始点を設定し、設定した開始点から原画像602上の左から右に向かって、炭化室10の奥行方向に沿って輝線像を追跡する。具体的には、まず開始点の右側の所定の高さ範囲にある最も輝度が高い画素を選択し、次に、選択した画素を新たな起点として同様に右側にある輝度が最も高い画素を探索する。この処理を右方向(炭化室の奥行方向)に逐次進め、高輝度画素を追跡する。この際、次の高輝度画素を探索する高さ方向の範囲は、炉壁上の段差である凹凸でレーザ光像が不連続に変位してもレーザ光像を追従できるように設定する。このような従来の壁面測定装置を用いて、目地の像702や偽レーザ光像704をも含む
図5の原画像602に対してレーザ光像700の追跡を行うと、例えば、
図6に示すような追跡結果620が得られることがあった。
【0038】
詳細には、
図6に示される追跡結果620においては、
図5の原画像上でレーザ光像700の追跡処理を行った結果を示す3本の追跡線706a、706b、706cが原画像602に重ねられるように示されている。具体的には、
図6中の一番上に位置する追跡線706aが
図6中の一番上に位置するレーザ光像700aに重なっていることから、レーザ光像700aに対しては適切に追跡がなされていることがわかる。それに対して、
図6中の中段に位置する追跡線706bは、
図6中の中段に位置するレーザ光像700bに一部は重なっているものの、
図6中の右側に位置する領域D(白い枠に囲まれている領域)においてはレーザ光像700に重なっていないことから、レーザ光像700bに対しては適切に追跡がなされていないことがわかる。さらに、当該領域Dでは追跡線706bは目地の像702と重なっていることから、目地の像702をレーザ光像700として追跡してしまっていることがわかる。以下の説明においては、この領域Dのように、本来追跡すべきレーザ光像700から外れて他の輝線像(目地の像702等)を追跡した場合を「追跡はずれ」と称する。また、
図6中の一番下に位置する追跡線706cは、
図6中の一番下に位置するレーザ光像700cに一部は重なっているものの、
図6中の右側に位置する領域E(白い枠に囲まれている領域)においてはレーザ光像700cに重なっていないことから、「追跡はずれ」が生じており、レーザ光像700cに対しては適切に追跡がなされていないことがわかる。さらに、当該領域Eでは追跡線706cは偽レーザ光像704と重なっており、偽レーザ光像704をレーザ光像700として追跡してしまっていることがわかる。
【0039】
このように、従来の壁面測定装置を用いてレーザ光像700の追跡を行った場合、「真の」レーザ光像700と、目地の像702もしくは偽レーザ光像704とが近接している箇所においては「追跡はずれ」が生じることがある。すなわち、「真の」レーザ光像700の近くに僅かにでも輝度の高い輝線像が存在すれば、従来の壁面測定装置においては、その存在箇所において、目地の像702もしくは偽レーザ光像704を追跡対象であるレーザ光像700と認識することがある。その結果、従来の壁面測定装置においては、画像上でのレーザ光像700の逐次追跡の際、本来追跡すべきレーザ光像700以外の輝線像を誤って追跡してしまうことから、適切にレーザ光像700の追跡ができないことがある。このような場合、適切にレーザ光像700の追跡ができていないことから、壁面12の凹凸量を適切に測定することができない。
【0040】
そこで、本発明者は、上記事情を鑑みて本発明の実施形態を創作するに至った。本発明の実施形態によれば、壁面の画像上のレーザ光像700を適切に追跡することができる。以下、このような本発明の実施形態に係る壁面測定装置100及び壁面測定方法を順次詳細に説明する。
【0041】
<<本発明の実施形態>>
<処理ユニット110の詳細>
先に説明したように、本実施形態に係る壁面測定装置100は、壁面測定装置100により取得された画像を処理等するための複数の機能部からなる処理ユニット(画像処理部)110を有する。以下に、
図7を参照して本実施形態に係る処理ユニット110を説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る壁面測定装置100が有する処理ユニット110の機能構成の一例を示すブロック図である。なお、処理ユニット110以外の壁面測定装置100の各構成要素については、先に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0042】
処理ユニット110は、例えば、パーソナルコンピュータ等、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disc Drive)、画像入出力ボード、及び各種のインターフェースを有した装置である。
図7に示すように、壁面測定装置100の処理ユニット110は、機能ブロックとして、原画像取得部500と、抽出画像取得部510と、追跡処理用画像取得部520と、追跡部530と、凹凸量算出部(検出部)540と、凹凸量表示部550とを主に有する。
【0043】
(原画像取得部500)
原画像取得部500は、先に説明した壁面12の原画像をラインCCDカメラ200から取得し、取得した原画像を記憶する。例えば、原画像取得部500の動作は、処理ユニット110の通信インターフェース(図示省略)を介して、ラインCCDカメラ200から原画像のデータを受信し、処理ユニット110のCPU(図示省略)が、コンピュータプログラムに従って、受信された原画像のデータを処理ユニット110のHDD(図示省略)等に記憶することにより実現できる。
【0044】
(抽出画像取得部510)
抽出画像取得部510は、原画像上で、レーザ光像700の、炭化室10の高さ方向に沿った幅と、耐火煉瓦の目地の像702の、炭化室10の高さ方向に沿った幅とが異なることを利用して、レーザ光像700の幅以下の幅を持つ輝線像を抽出する。抽出された輝線像には、耐火煉瓦の目地の像702の幅よりも狭い幅を持つレーザ光像700が含まれる。抽出画像取得部510がレーザ光像700を抽出することにより、追跡に供される画像においては目地の像702を除外することができることから、誤って目地の像702を追跡することを避けることができる。例えば、抽出画像取得部510の動作は、上記CPU(図示省略)が、コンピュータプログラムに従って、原画像取得部500が取得した原画像を上記HDD(図示省略)から読み出すと共に、読み出した原画像に対して処理を行うことで実現される。
【0045】
なお、ここで、レーザ光像700の幅と耐火煉瓦の目地の像702の幅とが異なるとは、これらの幅に対応する画素数が異なることを示す。例えば、レーザ光像700の幅と耐火煉瓦の目地の像702の幅との差が、画素数として「1」であればよい。しかしながら、レーザ光像700の幅や耐火煉瓦の目地の像702の幅が厳密には一定でないことを考慮すると、当該差は、画素数として「2」又は「3」又はそれ以上であることが好ましい。具体的には、耐火煉瓦の目地の像702の幅は、実際には4〜5mm程度であり、画像上では5〜7程度の画素数にあたる。一方、レーザ光像700の幅は、実際には2mm程度であり、画像上では2〜3程度の画素数にあたる。また、本実施形態においては、画像の分解能は、例えば、奥行方向で約1mm、高さ方向で約0.7mmとなっている。
【0046】
−トップハット処理−
ここで、抽出画像取得部510による、レーザ光像700の幅以下の幅を持つ輝線像を抽出する抽出処理の一例を説明する。抽出画像取得部510は、例えば、原画像に対してトップハット処理を行うことにより、レーザ光像700の幅以下の幅を持つ輝線像を抽出し、抽出画像を取得する。以下に、
図8を参照してトップハット処理を説明する。
図8は、本実施形態に係るトップハット処理の一例を説明するための説明図であり、詳細には、
図8には、
図8(a)から順に
図8(f)までが含まれており、それぞれ、トップハット処理における各段階における画像の状態を示している。
【0047】
トップハット処理では、所定の規則に基づいて画像に対して収縮処理及び膨張処理等を行うことにより、特定の線状の像のみを抽出する。本実施形態においては、収縮処理と膨張処理とを順次実行して、レーザ光像700の幅以下の幅を持つ輝線像を抽出する。先に説明したように、レーザ光像700の幅は、画像上で2〜3画素の太さになるように設計している。一方、目地の像702の幅は、画像上で5〜7画素以上である。抽出画像取得部510は、このような幅の差に着目して処理を行う。
【0048】
トップハット処理前の状態である
図8(a)に示されるように、原画像800は、6画素の幅の輝線像820、822、824と、3画素の幅の輝線像830とを含む。なお、輝線像820、822、824は、目地の像702に対応し、輝線像830は、レーザ光像700に対応する。
【0049】
次に、この原画像800に対して、レーザ光像700の幅以下の輝線像を収縮させて、消失させる収縮処理を行う。例えば、3×3画素の矩形カーネルによる収縮処理(3×3画素の最も暗い輝度の画素値を選択する処理を原画像800の全ての画素を注目画素として行う処理)を2回実行する(
図8(b)及び
図8(c))。その結果、
図8(c)の画像804として示すような収縮処理画像を得ることができる。
図8(c)からわかるように、画像804においては、幅が3画素の輝線像830が消失しているのに対し、幅が6画素の輝線像820、822、824は2画素の幅の細い輝線像として残存する。
【0050】
次に、画像804に対して、輝線像を膨張させる膨張処理を行う。例えば、3×3画素の矩形カーネルによる膨張処理(上述の収縮処理とは逆の処理。ここでは、3×3画素の最も明るい輝度の画素値を選択する処理を画像804の全ての画素を注目画素として行う処理)を2回実行する(
図8(d)及び
図8(e))。すると、
図8(e)の画像808として示すような膨張処理画像を得ることができる。
図8(e)からわかるように、原画像800における幅が6画素の輝線像820、822、824は元の幅の輝線像に復元されるのに対し、収縮処理で消失した幅が3画素の輝線像830は復元されない。
【0051】
次に、原画像800の画素値と、収縮処理と膨張処理とを行った後に得られる膨張処理画像808(
図8(e)参照)の画素値であって、当該原画像800の画素に対応する画素の画素値との差分を求める。すると、
図8(f)に示すような抽出画像810を得ることができる。
図8(f)からわかるように、抽出画像810においては、原画像800における幅が3画素の輝線像830のみが抽出されている。
【0052】
以上の処理において、原画像800において幅が3画素よりも細い輝線像があったとしても、トップハット処理により、当該輝線像が抽出されることは明らかである。このように、トップハット処理により、特定の幅以下の輝線像だけを抽出することが可能である。なお、上述の説明においては、収縮処理及び膨張処理は、それぞれ2段階ずつ実施するものとして説明したが、本実施形態においては、これに限定されるものではなく、1段階でもよく、3段階以上でもよく、カーネルの大きさと抽出したい輝線像の幅等に応じて適宜選択される。また、本実施形態においては、収縮処理及び膨張処理の処理規則についても、同様に、抽出したい輝線像の幅等に応じて適宜選択される。
【0053】
(追跡処理用画像取得部520)
次に、処理ユニット110の機能構成の一例を示すブロック図である
図7に戻って、追跡処理用画像取得部520を説明する。追跡処理用画像取得部520は、画像に含まれる、炭化室10の奥行方向に延びる複数の輝線像に対して、その直線性を判断し、直線性の判断に基づいて当該画像を処理し、追跡処理用画像を取得する。詳細には、追跡処理用画像取得部520は、直線性の高い輝線像であると判断した輝線像を検出し、検出した輝度像を画像から削除することにより、偽レーザ光像704の検出、削除処理を実施する。追跡処理用画像取得部520がこのような処理を行うことにより、追跡に供される画像においては偽レーザ光像704を除外されていることから、誤って偽レーザ光像704を追跡することを避けることができる。ここで、直線性の高い輝線像とは、画像上において、炭化室10の高さ方向に沿って上下変動が全くない、もしくは、非常に少ない輝線像のことをいう。また、追跡処理用画像取得部520の動作は、上記CPU(図示省略)が、コンピュータプログラムに従って、抽出画像取得部510が処理した画像を上記HDD(図示省略)から読み出すと共に、読み出した画像に対して上記の処理を行うことで実現される。
【0054】
−偽レーザ光像の検出、削除処理−
ここで、追跡処理用画像取得部520による、偽レーザ光像704の検出、削除処理の一例を
図9及び
図10を参照して説明する。
図9及び
図10は、本実施形態に係る偽レーザ光像704の抽出処理の一例を説明するための説明図であり、詳細には、横軸が炭化室10の高さ方向に対応し、図中左から右に行くにしたがって、炭化室10の上方から床面(図示省略)に進むこととなる。また、
図9及び
図10の縦軸は、それぞれ、横軸の高さ方向の各位置における水平方向の平均輝度と、水平方向の平均輝度の変化量の大きさに対応する。
【0055】
まず、偽レーザ光像704の検出、削除処理を説明する前に、偽レーザ光像704の特徴を説明する。本実施形態に係る壁面測定装置100においてはラインCCDカメラ200とミラー400との位置関係は不変であるため、ミラー400に付着した汚れ等に起因してミラー400自体にレーザ光が写りこむことにより生じる偽レーザ光像704は、画像上で、高さ方向に沿って上下変動が全くない、もしくは、上下変動が非常に少ない直線性の高い像となる特徴がある。一方、画像上の「真の」レーザ光像700は、壁面12の凹凸や、炭化室10内を移動する壁面測定装置100の蛇行、揺れ等によって、炭化室10の高さ方向に沿って上下方向に変位する。そこで、本発明者は、このような偽レーザ光像704の特徴を利用して、画像上にて上下変動が全くない直線性の高い輝線像を検出することにより、偽レーザ光像704を検出する方法を独自に考案した。そして、追跡処理用画像取得部520により、偽レーザ光像704を検出し、検出した偽レーザ光像704を除外することにより、偽レーザ光像704を含まない追跡処理用画像が取得できることから、誤って偽レーザ光像704を追跡することを避けることができる。
【0056】
まず、追跡処理用画像取得部520は、抽出画像取得部510によるトップハット処理後の画像に対して炭化室10の奥行方向に沿ったプロジェクション処理(炭化室10における高さ方向の各位置において、奥行方向に沿って分布する画像の輝度の総和を算出する)を行い、算出された輝度の総和を用いて奥行方向における平均値を算出し、高さ方向の各位置での平均輝度を取得する。例えば、上述の奥行方向のプロジェクション処理等によって算出された、高さに対する平均輝度の遷移の結果は
図9のように示される。なお、
図9の横軸は、先に説明したように、炭化室10の高さ方向に対応し、図中左から右に行くにしたがって、炭化室10の上方から床面(図示省略)に進むこととなる。
【0057】
図9には、複数のピーク900、902、904、910が含まれているが、ピーク910の高さは、他のピーク900、902、904に比べて極端に高く、鋭い。当該ピーク910は、偽レーザ光像704に起因したピークであり高い平均輝度を示す。先に説明したように、偽レーザ光像704は上下変位のない直線性の高い輝線像であるため、偽レーザ光像704に対応する高さにおいては、平均輝度は高い値を持ち、且つ、急峻なピークを持つこととなる。一方、他のピーク900、902、904は、「真の」レーザ光像700に起因したピークであり、「真の」レーザ光像700は上下変位を持つため、偽レーザ光像704に起因したピーク910に比べて低く、且つ、広がったピークとなる。従って、このように算出された平均輝度から、あらかじめ設定した閾値(所定の値)以上の高い数値の平均輝度を有するピークを検出することにより、直線性の高い偽レーザ光像704の位置を特定することができる。さらに、追跡処理用画像取得部520によって、特定した位置に基づいて当該位置に存在する輝線像を画像から除外することにより、偽レーザ光像704を含まない追跡処理用画像を取得することができる。
【0058】
また、本実施形態においては、より確実に偽レーザ光像704の位置を特定するため、
図9の平均輝度の結果に対して、微分処理を行い(
図9における隣り合う2つの平均輝度値の差分(変化量)を算出する)平均輝度の変化量の絶対値を算出し、さらに、算出した絶対値を
図9の全データの標準偏差で規格化してもよい。例えば、上述の微分処理等によって算出された、高さに対する平均輝度の変化量の遷移の結果は
図10のように示される。なお、
図10の横軸は、先に説明したように、炭化室10の高さ方向に対応し、図中左から右に行くにしたがって、炭化室10の上方から床面(図示省略)に進むこととなる。
【0059】
図10には、複数のピーク920、922、930が含まれているが、ピーク930の高さは、他のピーク920、922に比べて極端に高く、鋭い。
図9の結果と同様に、当該ピーク930は、偽レーザ光像704に起因したピークであり、急激に変化する輝度の変化量のために、
図9における偽レーザ光像704に起因したピーク910に比べて、より顕著な急峻なピークとなる。上述のような処理を行うことにより偽レーザ光像704に起因したピークをより急峻なピークとして強調することができ、さらに規格化により画像の全体的な明るさに左右されることなく、より確実に偽レーザ光像704の位置を特定することができる。そして、このように算出された変化量から、あらかじめ設定した閾値(所定の値)以上の高い数値の変化量を有するピークを検出することにより、偽レーザ光像704の高さ方向における位置を特定することができる。さらに、
図9と同様に、追跡処理用画像取得部520によって、特定した位置に基づいて当該位置に存在する輝線像を画像から除外することにより、偽レーザ光像704を含まない追跡処理用画像を取得することができる。
【0060】
すなわち、本実施形態においては、追跡処理用画像取得部520が、高さに対する輝度に関する値を用いて、画像に含まれる奥行方向に延びる複数の輝線像に対してその直線性を判断し、直線性の判断に基づいて、高い直線性を持つ輝度像を偽レーザ光像704として検出し、検出した偽レーザ光像704を画像から除外する処理を行う。従って、本実施形態においては、偽レーザ光像704を含まない追跡処理用画像を取得することができる。その結果、追跡に供される画像においては偽レーザ光像704が除外されていることから、誤って偽レーザ光像704を追跡することを避けることができる。
【0061】
なお、上述の説明においては、
図9の例では輝度の平均値を算出し、閾値(所定の値)以上の高い数値の平均輝度を有するピークを検出することにより、直線性の高い偽レーザ光像704を検出するとしていたが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、輝度の総和値を直接用いて、偽レーザ光像704を検出してもよい。また、本実施形態においては、例えば、画像に含まれる複数の輝線像に対してそれぞれの自己相関値を数学的に算出することにより、偽レーザ光像704を検出してもよい。具体的には、各輝度像に対して、ある領域における輝度像の形状と、当該領域から所定の距離だけ奥行方向にシフトさせた領域における当該輝度像の形状とが、どれだけ良く整合しているかを示す尺度としての自己相関を算出する。偽レーザ光像704は、レーザ光像700に比べて直線性が高いことから、どのようにシフトさせた場合であっても、その形状は整合し、レーザ光像700に比べて高い自己相関値を持つこととなる。従って、自己相関値を算出し、高い相関値を有する輝度像を検出することにより、直線性の高い偽レーザ光像704を検出することができる。また、本実施形態においては、このような数学的処理の他にも、パターンマッチング等を用いて偽レーザ光像704を検出してもよい。すなわち、本実施形態においては、各輝度像の直線性の判断に基づいて高い直線性の輝度像を検出することにより、偽レーザ光像704を検出する方法については、上述の方法に限定されるものではなく、画像上のレーザ光像700や偽レーザ光像704の状態や、所望する検出の精度等に応じて、適宜選択することができる。
【0062】
(追跡部530)
次に、処理ユニット110の機能構成の一例を示すブロック図である
図7に戻って、追跡部530を説明する。追跡部530は、上述の抽出画像取得部510及び追跡処理用画像取得部520によって処理がなされた後の画像においてレーザ光像700を追跡する追跡処理を行う。本実施形態では、例えば、上述の処理後の壁面12の画像を液晶ディスプレイ等の表示装置(図示省略)に表示し、その表示を参照して、オペレータが、ユーザインターフェースを操作して、追跡を開始する開始点を当該画像上に指定する。追跡部530は、指定された開始点から当該画像上に輝線像を奥行方向に沿って追跡する。なお、開始点の指定は、オペレータの手動によるものに限定されるものではなく、処理ユニット110が当該画像等を解析して自動的に指定してもよい。また、追跡部530の動作は、例えば、上記CPU(図示省略)が、コンピュータプログラムに従って、抽出画像取得部510及び追跡処理用画像取得部520によって処理がなされた後の画像を上記HDD(図示省略)から読み出すと共に、レーザ光像700の追跡に用いる条件等を上記HDDから読み出し、読み出した画像に対して追跡処理を行うことで実現される。
【0063】
(凹凸量算出部540)
凹凸量算出部540は、追跡部530により得られたレーザ光像700の追跡結果と、レーザ光の出射角度、及びラインCCDカメラ200の視野角・視野サイズ等の幾何学的条件とに基づいて、三角測量の原理で壁面12の凹凸量を算出する。先に説明したように、壁面12に凹凸部が存在した場合には、レーザ光像700は、炭化室10の高さ方向において上下にシフトする。したがって、レーザ光像700の追跡結果を用いることにより、壁面12の全体に亘って凹凸量を検出することができる。例えば、凹凸量算出部540の動作は、上記CPU(図示省略)が、コンピュータプログラムに従って、追跡部530のレーザ光像700の追跡結果を上記RAM(図示省略)等から読み出すと共に、幾何学的条件を上記HDD(図示省略)等から読み出し、処理を行うことで実現される。
【0064】
(凹凸量表示部550)
凹凸量表示部550は、凹凸量算出部540によって算出された壁面12の凹凸量を示すデータを液晶ディスプレイ等の表示装置(図示省略)に表示させる。例えば、凹凸量表示部550の動作は、上記CPU(図示省略)が、コンピュータプログラムに従って、壁面12の凹凸量を上記RAM(図示省略)等から読み出して当該凹凸量の表示データを生成し、上記表示装置に出力することによって実現される。
【0065】
<壁面測定方法>
次に、本実施形態に係る壁面測定方法を、
図5、
図11から
図15を用いて説明する。
図11は、本実施形態に係る壁面測定方法の一例を示すフローチャート図である。
図12は、本実施形態に係るトップハット処理より得られる抽出画像604の一例を示す図(画像)である。
図13は、比較例として、
図12のトップハット処理による抽出画像604に対してレーザ光像700の追跡を行った追跡結果622の一例を示す図(画像)である。
図14は、本実施形態に係る偽レーザ光像704の検出により得られる結果624の一例を示す図(画像)である。
図15は、
図14の結果624に基づいて、レーザ光像700の追跡を行った追跡結果626の一例を示す図(画像)である。
【0066】
図11に示すように、本実施形態に係る壁面測定方法は、ステップS100からS150までの主に6つのステップを含む。
【0067】
(ステップS100)
壁面測定装置100が、炭化室10の壁面12に対して、奥行方向に移動しながらレーザ光を照射し(照射工程)、レーザ光像700が重畳された壁面12を連続的に撮影した後に、原画像取得部500は、壁面測定装置100で得られた壁面12の原画像を取得する(原画像取得工程)。例えば、ステップS100で取得される原画像は、
図5に示されるような原画像602のようになる。この原画像602には、レーザ光像700、目地の像702、及び偽レーザ光像704が含まれている。
【0068】
(ステップS110)
抽出画像取得部510は、ステップS100で取得された原画像602に対して、上述したようなトップハット処理を行う。トップハット処理を行うことにより、レーザ光像700の幅以下の幅を持つ輝線像を抽出する。例えば、ステップS110における処理により、
図12に示すような抽出画像604を取得することができる。この抽出画像604には、レーザ光像700及び偽レーザ光像704が含まれているものの、レーザ光像700の幅よりも広い幅を持つ目地の像702は含まれていない。
【0069】
ところで、本実施形態に対する比較例として、ステップS110で得られた抽出画像604に対してレーザ光像700の追跡処理を行った場合には、ステップS110で得られた抽出画像には偽レーザ光像704が含まれているため、適切にレーザ光像700の追跡ができないことがある。例えば、
図13に示される比較例の追跡結果622においては、
図12の抽出画像604に基づいてレーザ光像700の追跡処理を行った結果である3本の追跡線706d、706e、706fが原画像602に重ねられるように示されている。具体的には、
図13中の一番上及び中段に位置する追跡線706d、706eは、
図13中の一番上に位置するレーザ光像700d及び
図13の中段に位置するレーザ光像700eにそれぞれ重なっており、適切にレーザ光像700d、700eの追跡がなされていることがわかる。それに対して、また、
図13中の一番下に位置する追跡線706fは、
図13中の一番下に位置するレーザ光像700fに一部は重なっているものの、
図13中の右側に位置する領域F(白い枠に囲まれている領域)においては、レーザ光像700fに重なっていないことから、「追跡はずれ」が生じており、レーザ光像700fに対しては適切に追跡がなされていないことがわかる。さらに、当該領域Fでは、追跡線706fは偽レーザ光像704aに重なっており、すなわち、偽レーザ光像704aをレーザ光像700として追跡してしまっていることがわかる。そこで、本実施形態においては、適切にレーザ光像700の追跡を行うために、次のステップS120を行うこととなる。
【0070】
(ステップS120)
追跡処理用画像取得部520は、ステップS110で得られたトップハット処理後の抽出画像604に対して、抽出画像604に含まれる奥行方向に延びる複数の輝線像に対してその直線性を判断し、直線性の判断に基づいて偽レーザ光像704を検出する。例えば、ステップS120における処理により、
図14に示すような結果624を取得することができる。詳細には、追跡処理用画像取得部520は、直線性の高い輝線像を偽レーザ光像704aとして検出し、検出した偽レーザ光像704aを
図14の下側に位置する枠940で囲むことにより、当該検出結果を示す。そして、追跡処理用画像取得部520は、検出した偽レーザ光像704aを抽出画像604から除外して、次のステップS130での追跡処理のための追跡処理用画像を取得する。
【0071】
(ステップS130)
追跡部530は、ステップS120で得られた追跡処理用画像に対してレーザ光像700を追跡する追跡処理を行う(追跡工程)。例えば、ステップS130における処理により、
図15に示すような追跡結果626を取得することができる。詳細には、
図15に示される追跡結果626においては、ステップS120で得られた追跡処理用画像に基づいてレーザ光像700の追跡処理を行った結果である3本の追跡線706g、706h、706iが原画像602に重ねられるように示されている。これら3本の追跡線706g、706h、706iは、それぞれ
図15中のレーザ光像700g、700h、700iと重なっており、適切にレーザ光像700g、700h、700iの追跡がなされていることがわかる。本実施形態によれば、上述のステップS110及びステップS120での処理を経た追跡処理用画像に対して追跡処理を行うことにより、「追跡はずれ」が生ずることなく、「真の」レーザ光像700を追跡することができる。
【0072】
(ステップS140)
凹凸量算出部540は、ステップS130で得られたレーザ光像700の追跡結果に基づいて、壁面12の凹凸を検出し、凹凸量を算出する(検出工程)。
【0073】
(ステップS150)
凹凸量表示部550は、ステップS140で算出された壁面12の凹凸量を示すデータを表示装置(図示省略)に表示させる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明した。本実施形態においては、トップハット処理を行うことにより、レーザ光像700の幅以下の幅を持つ輝線像を抽出することができるため、追跡処理用画像から目地の像702を除外することができる。さらに、本実施形態においては、画像に含まれる奥行方向に延びる複数の輝線像に対してその直線性を判断し、直線性の判断に基づいて偽レーザ光像704を検出することにより、追跡処理用画像から偽レーザ光像704aを除外することができる。従って、本実施形態によれば、目地の像702及び偽レーザ光像704が除外された追跡処理用画像に対して、レーザ光像700の追跡を行うことができることから、「追跡はずれ」が生ずることなく、「真の」レーザ光像700を適切に追跡することができる。その結果、本実施形態によれば、壁面12の凹凸量を適切に測定することができる。
【0075】
<<補足>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0076】
また、上述した実施形態の方法における各ステップは、必ずしも記載された順序に沿って処理されなくてもよい。例えば、各ステップは、適宜順序が変更されて処理されてもよい。また、各ステップは、時系列的に処理される代わりに、一部並列的に又は個別的に処理されてもよい。さらに、各ステップの処理の方法についても、必ずしも記載された方法に沿って処理されなくてもよく、例えば、他の機能部によって処理されていてもよい。
【0077】
さらに、上述した実施形態にかかる方法の少なくとも一部は、コンピュータを機能させる情報処理プログラムとして、ソフトウェアで構成することが可能であり、ソフトウェアで構成する場合には、これらの方法の少なくとも一部を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD(Conpact Disc)−ROM等の記録媒体に収納し、壁面測定装置100等、もしくは、壁面測定装置100以外の他の装置に読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。さらに、これらの方法の少なくとも一部を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。