特許第6848325号(P6848325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6848325-ホース用ゴム組成物及びホース 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848325
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】ホース用ゴム組成物及びホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/08 20060101AFI20210315BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20210315BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20210315BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20210315BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   F16L11/08 A
   C08L23/16
   C08L23/08
   C08K3/04
   C08K5/37
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-204219(P2016-204219)
(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公開番号】特開2018-65899(P2018-65899A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】杉原 孝樹
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−121339(JP,A)
【文献】 特開2013−166899(JP,A)
【文献】 特開平09−040819(JP,A)
【文献】 特開2004−285088(JP,A)
【文献】 特開平11−021395(JP,A)
【文献】 特開2009−137272(JP,A)
【文献】 特開2005−106185(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/122415(WO,A1)
【文献】 「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」,2011年 6月16日,URL,https://web.archive.org/web/20110616195645/https://www.asahicarbon.co.jp/product/technology/cb_physics.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
F16L 9/00− 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン含有量が40質量%以上60質量%未満であるエチレン・プロピレン共重合体と、
エチレン・1−ブテン共重合体と、
窒素吸着比表面積が17〜52m2/gであるカーボンブラックとを含有し、
前記エチレン・プロピレン共重合体に対する前記エチレン・1−ブテン共重合体の質量比(エチレン・1−ブテン共重合体/エチレン・プロピレン共重合体)が、10/90〜90/10である、ホース用ゴム組成物を用いて形成された最外層を有する、自動車用エアコンホース。
【請求項2】
前記カーボンブラックの含有量が、前記エチレン・プロピレン共重合体と前記エチレン・1−ブテン共重合体の合計100質量部に対して、55〜130質量部である、請求項1に記載の自動車用エアコンホース
【請求項3】
前記ホース用ゴム組成物が、更にメルカプト基を有する老化防止剤を含有する、請求項1又は2に記載の自動車用エアコンホース
【請求項4】
前記最外層の内側に補強層を有し、前記補強層が補強糸をスパイラル構造および/又はブレード構造で編組された繊維補強層である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車用エアコンホース
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホース用ゴム組成物及びホースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費向上のためにエンジンのスリム化が進んでおり、それに伴って過給機(ターボ)を導入したエンジンを持つ自動車が増えてきている。過給機の導入により、エンジン周囲の温度が上昇し、ラジエーターホースやエアコンホース等にも高耐熱性ホースの要求が高まっている。
【0003】
一方、耐熱性を有するゴム組成物として、例えば、特許文献1が提案されている。
特許文献1には、
125℃におけるムーニー粘度が20以上であるエチレン・1−ブテン共重合体と、
125℃におけるムーニー粘度が20以上であり、エチレン含有量が40〜60質量%であるエチレン・プロピレン共重合体と、を含有し、
エチレン・1−ブテン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体との質量比が、10/90〜90/10である、耐熱コンベヤベルト用ゴム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−30761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようななか、本発明者は特許文献1を参考にしてゴム組成物を調製しこれを評価したところ、このようなゴム組成物は、自動車用エアコンホースに要求されている耐熱性を満足しない場合があること、及び、補強糸に対する接着性が低い場合があることが明らかとなった。
そこで、本発明は耐熱性及び補強糸に対する接着性に優れるホース用ゴム組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、ホースを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、カーボンブラックの窒素吸着比表面積が特定の範囲であることによって所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0007】
1. エチレン含有量が40質量%以上60質量%未満であるエチレン・プロピレン共重合体と、
エチレン・1−ブテン共重合体と、
窒素吸着比表面積が17〜52m2/gであるカーボンブラックとを含有し、
エチレン・プロピレン共重合体に対するエチレン・1−ブテン共重合体の質量比(エチレン・1−ブテン共重合体/エチレン・プロピレン共重合体)が、10/90〜90/10である、ホース用ゴム組成物。
2. カーボンブラックの含有量が、エチレン・プロピレン共重合体とエチレン・1−ブテン共重合体の合計100質量部に対して、55〜130質量部である、上記1に記載のホース用ゴム組成物。
3. 更にメルカプト基を有する老化防止剤を含有する、上記1又は2に記載のホース用ゴム組成物。
4. 上記1〜3のいずれかに記載のホース用ゴム組成物を用いて形成された最外層を有するホース。
5. 最外層の内側に補強層を有し、補強層が補強糸をスパイラル構造および/又はブレード構造で編組された繊維補強層である、上記4に記載のホース。
6. 自動車用エアコンホースである、上記4又は5に記載のホース。
【発明の効果】
【0008】
本発明のホース用ゴム組成物は、耐熱性及び補強糸に対する接着性に優れる。
本発明のホースは、耐熱性及び補強糸に対する接着性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明のホースの一例について、各層を切り欠いて模式的に表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルオキシはアクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを表す。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、補強糸に対する接着性を単に接着性と称する場合がある。
【0011】
[ホース用ゴム組成物]
本発明のホース用ゴム組成物(本発明のゴム組成物)は、
エチレン含有量が40質量%以上60質量%未満であるエチレン・プロピレン共重合体と、
エチレン・1−ブテン共重合体と、
窒素吸着比表面積が17〜52m2/gであるカーボンブラックとを含有し、
エチレン・プロピレン共重合体に対するエチレン・1−ブテン共重合体の質量比(エチレン・1−ブテン共重合体/エチレン・プロピレン共重合体)が、10/90〜90/10である、ホース用ゴム組成物である。
【0012】
本発明のゴム組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、耐熱性についてはおよそ以下のとおりと推測される。
本発明において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積が所定の範囲であることによって、高温条件下において、上記カーボンブラックの活性は、上記所定の範囲を超える窒素吸着比表面積を有するカーボンブラックよりも低くなり、このため、本発明においては上記カーボンブラックと、エチレン・プロピレン共重合体又はエチレン・1−ブテン共重合体との相互作用が高温条件下であっても維持されやすく、これによって本発明のゴム組成物は耐熱性に優れると考えられる。
以下、本発明のゴム組成物に含有される各成分について詳述する。
【0013】
<エチレン・プロピレン共重合体>
本発明のゴム組成物に含有されるエチレン・プロピレン共重合体(EPM)は、エチレンとプロピレンとの共重合体であり、エチレン・プロピレン共重合体に含有される、エチレンによる繰り返し単位の含有量(エチレン含有量)が、エチレン・プロピレン共重合体全体に対して、40質量%以上60質量%未満である。
【0014】
エチレン含有量は、耐熱性により優れるという観点から、エチレン・プロピレン共重合体全体に対して、40〜60質量%が好ましく、50〜60質量%がより好ましい。
【0015】
エチレン・プロピレン共重合体はその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0016】
<エチレン・1−ブテン共重合体>
本発明のゴム組成物に含有されるエチレン・1−ブテン共重合体(EBM)は、エチレンと1−ブテンとの共重合体である。
【0017】
エチレン・1−ブテン共重合体に含有される、エチレンによる繰り返し単位の含有量(エチレン含有量)は、耐熱性により優れるという観点から、エチレン・1−ブテン共重合体全体に対して、30〜90質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましい。
【0018】
エチレン・1−ブテン共重合体はその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0019】
<エチレン・プロピレン共重合体に対するエチレン・1−ブテン共重合体の質量比>
本発明において、エチレン・プロピレン共重合体に対するエチレン・1−ブテン共重合体の質量比(エチレン・1−ブテン共重合体/エチレン・プロピレン共重合体)は、10/90〜90/10である。上記質量比が上記範囲であることによって、本発明は耐熱性及び加工性に優れる。
【0020】
上記質量比は、耐熱性により優れるという観点から、15/85〜85/15が好ましく、30/70〜70/30がより好ましい。
【0021】
<カーボンブラック>
本発明のゴム組成物は、窒素吸着比表面積が17〜52m2/gであるカーボンブラックを含有する。本発明において含有されるカーボンブラックが上記のような窒素吸着比表面積を有するソフトカーボンであることによって、本発明のゴム組成物は耐熱性及び接着性に優れる。
【0022】
<カーボンブラックの窒素吸着比表面積>
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐熱性により優れるという観点から、20〜30m2/gが好ましい。
本発明において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2に準じて測定された。
【0023】
(カーボンブラックの種類)
上記カーボンブラックとしては、例えば、
FEF(Fast Extruding Furnace)カーボンブラック、
GPF(General Purpose Furnace)カーボンブラック、
SRF(Semi−Reinforcing Furnace)カーボンブラックが挙げられる。
なかでも、耐熱性及び接着性により優れるという観点から、SRFカーボンブラックが好ましい。
【0024】
上記カーボンブラックの含有量は、耐熱性及び接着性により優れるという観点から、エチレン・プロピレン共重合体とエチレン・1−ブテン共重合体の合計100質量部に対して、55〜130質量部が好ましく、70〜110質量部がより好ましい。
【0025】
(添加剤)
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、上記EPM及びEBM以外のゴム、上記カーボンブラック以外の補強剤、架橋剤(例えば、過酸化物、共架橋剤)、受酸剤、加工助剤、架橋剤以外の加硫剤(例えば、チオ尿素系加硫剤、アミン系加硫剤)、加硫促進助剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸)、老化防止剤、可塑剤などが挙げられる。
【0026】
(老化防止剤)
本発明のゴム組成物は、更に、老化防止剤を含有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。上記老化防止剤は特に制限されない。例えば、アミン系老化防止剤、硫黄含有老化防止剤が挙げられる。
なかでも、耐熱性により優れるという観点から、メルカプト基を有する老化防止剤が好ましい。
【0027】
・メルカプト基を有する老化防止剤
メルカプト基を有する老化防止剤としては、例えば、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールが挙げられる。
【0028】
本発明のゴム組成物に含有される老化防止剤(全体)の含有量は、エチレン・プロピレン共重合体とエチレン・1−ブテン共重合体の合計100質量部に対して、5〜15質量部が好ましく、5〜10質量部がより好ましい。
【0029】
老化防止剤としてメルカプト基を有する老化防止剤を含有する場合、メルカプト基を有する老化防止剤の含有量は、耐熱性により優れ、接着性により優れるという観点から、エチレン・プロピレン共重合体とエチレン・1−ブテン共重合体の合計100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜8質量部がより好ましい。
老化防止剤として、メルカプト基を有する老化防止剤と、これとは別の老化防止剤とを併用する場合、上記の別の老化防止剤は特に制限されない。例えば、スチレン化されたジフェニルアミンのような有機物が挙げられる。上記の別の老化防止剤は、上記有機物と不活性充填剤との混合物であってもよい。
【0030】
(過酸化物)
本発明のゴム組成物は更に過酸化物を含有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
過酸化物は特に制限されない。例えば、ゴムの架橋に一般に用いられるものなどが挙げられる。具体的には、例えば、ジクミルペルオキシド、ジターシャリブチルペルオキシド、ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、4,4’−ジ(t−ブチルパーオキシ)吉草酸n−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンのような有機過酸化物が挙げられる。
【0031】
過酸化物の含有量は、エチレン・プロピレン共重合体とエチレン・1−ブテン共重合体の合計100質量部に対して、4〜10質量部が好ましく、5〜7質量部がより好ましい。
【0032】
(共架橋剤)
本発明のゴム組成物が更に過酸化物を含有する場合、このようなゴム組成物は更に共架橋剤を含有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
共架橋剤としては、例えば、エポキシ基又はエチレン性不飽和結合を複数有する化合物が挙げられる。
具体的には例えば、マグネシウムジメタクリレートのような(メタ)アクリロイルオキシ基を複数有する化合物;トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレートのような、アリル基を複数有する化合物が挙げられる。
【0033】
共架橋剤の含有量は、耐熱性及び/又は接着性により優れ、高物性となるという観点から、エチレン・プロピレン共重合体とエチレン・1−ブテン共重合体の合計100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0034】
(ゴム組成物の製造方法)
本発明のゴム組成物はその製造方法について特に制限されない。例えば、上記エチレン・プロピレン共重合体と、上記エチレン・1−ブテン共重合体と、上記カーボンブラックと、必要に応じて使用することができる添加剤とを100〜180℃の条件下で混合することによって製造することができる。
【0035】
(ゴム組成物の加硫(架橋))
本発明のゴム組成物を加硫(架橋)する方法は特に制限されない。本発明のゴム組成物を、例えば、140〜190℃の条件下において、プレス加硫、蒸気加硫、オーブン加硫(熱気加硫)または温水加硫する加硫(架橋)方法が挙げられる。
【0036】
(用途)
本発明のゴム組成物は、ホース用に使用することができる。なかでも、自動車用エアコンホースに好適に使用できる。
【0037】
(補強糸)
本発明のゴム組成物に適用することができる補強糸は、補強性を有する繊維の糸であれば、特に制限されない。
補強糸の材質としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。
補強糸は、例えば、撚り糸であってもよい。
補強糸の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0038】
補強糸を用いて繊維補強層を製造することができる。このような繊維補強層をホースの補強層として使用することができる。繊維補強層としては、例えば、補強糸をスパイラル構造および/又はブレード構造で編組されたものが挙げられる。
繊維補強層の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0039】
[ホース]
本発明のホースは、本発明のホース用ゴム組成物を用いて形成された最外層を有するホースである。
最外層を形成するゴム組成物は本発明のゴム組成物であれば特に制限されない。
【0040】
(補強層)
本発明のホースは更に補強層を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。補強層は上記繊維補強層であることが好ましい。
補強層は最外層よりも内側に配置されればよい。接着性により優れるという観点から、補強層は最外層と隣接することが好ましい。
【0041】
上記補強層は、耐圧性及び構造安定性からなる群から選ばれる少なくとも1種に優れるという観点から、補強糸をスパイラル構造および/又はブレード構造で編組された繊維補強層であることが好ましい。
補強層及び繊維補強層はそれぞれ上記と同様である。
【0042】
本発明のホースは、更に、内層を有することができる。
内層を形成するゴム組成物は特に制限されない。例えば、本発明のゴム組成物で内層を形成してもよい。
本発明のホースは、内層、補強層及び最外層をこの順番で有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0043】
内層は複数であってもよい。内層が複数である場合、複数の内層のうちの少なくとも1層をガスバリア層とすることができる。ガスバリア層を形成する組成物は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
内層が複数である場合、隣り合う内層の間に補強層を配置することができる。
【0044】
本発明のホースの例について添付の図面を参照して説明する。本発明は添付の図面に制限されない。
図1は、本発明のホースの一例について、各層を切り欠いて模式的に表した斜視図である。
図1において、ホース100は、内層10と、補強層12と、最外層14とを備える。最外層14を本発明のゴム組成物で形成する。補強層12は繊維補強層であることが好ましい。
【0045】
本発明のホースはその製造方法について特に制限されない。例えば、マンドレル上に、内層を形成するためのゴム組成物、補強層および最外層を形成するためのゴム組成物(本発明のゴム組成物)をこの順に積層させ、得られた積層体を140〜190℃、30〜180分の条件で、プレス加硫、蒸気加硫、オーブン加硫(熱気加硫)または温水加硫することにより加硫接着させて製造する方法が挙げられる。
【0046】
本発明のホースの用途としては、例えば、エアコンディショナー(エアコン)用、パワーステアリング用、油圧用が挙げられる。自動車用エアコンホースが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<ゴム組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、ゴム組成物を製造した。
具体的には、まず、下記第1表に示す成分のうち架橋剤1〜4を除く成分をバンバリーミキサー(3.4リットル)で5分間混練し、160℃に達したときに放出し、マスターバッチを得た。次に、得られたマスターバッチに架橋剤1〜4をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
【0048】
<評価>
上記のとおり製造されたゴム組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0049】
(加硫シート及び引張試験に用いる試験片の作製)
得られた各ゴム組成物を150℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で45分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。
上記のとおり作製された各加硫シートからJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜いた。上記試験片を用いて引張試験を行った。
【0050】
(常態物性の評価)
・引張試験(引張強さ、破断時伸び)
上記試験片を用いて、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251:2010に準拠して行い、常態物性としての、引張強さ(TB)[MPa]及び破断時伸び(EB)[%]を23℃±2℃の条件下で測定した。
【0051】
・硬度
上記のとおり作製した加硫シートを3枚重ねて、JIS K 6253−3に準じて、タイプAデュロメータを用いて23℃の条件下において硬度測定試験を行い、硬度を23℃±2℃の条件下で測定した。
【0052】
(老化物性)
・老化試験
上記試験片又は上記硬度の測定のために作製された3枚重ねの加硫シートを180℃の条件下に336時間置く老化試験を行った。
【0053】
・老化試験後の老化物性の測定
老化試験後の、試験片又は3枚重ねの加硫シートを用いて、上記常態物性の評価と同様にして、引張強度、破断時伸び及び硬度を23℃±2℃の条件下で測定した。
【0054】
・老化物性の評価
((ΔTB))
老化試験前後の引張強度を下記式に当てはめて引張り強度の変化率(ΔTB、単位%)を求めた。ΔTBの絶対値が小さいほど耐熱性に優れる。
変化率(ΔTB、単位%)={((老化試験後のTB)−(常態物性のTB))/(常態物性のTB)}×100
【0055】
((ΔEB))
破断時伸びについても同様にしてΔEBを求めた。ΔEBの絶対値が小さいほど耐熱性に優れる。
【0056】
((ΔHS))
硬度についても同様にしてΔHSを求めた。ΔHSの絶対値が小さいほど耐熱性に優れる。
【0057】
(接着性)
・ホース状試験片の製造
まず、外径25mmの鉄マンドレル上に、補強糸(ポリエステル製のコード)をスパイラル構造に編組された繊維補強層に巻き付け、補強層を形成した。ついで、補強層の上に、上記のとおり製造された各ゴム組成物から調製した厚さ2.5mmの未加硫のシートを貼り合わせて、これを157℃の条件下において、60分間加硫して、繊維補強層とゴム層とを有するホース状試験片を作製した。
【0058】
・剥離試験
上記のとおり作製された各ホース状試験片を用いて、剥離速度:毎分50mm、室温の条件下で、上記各ホース状試験片から幅25mmのゴム層を剥離する剥離試験を行い、幅25mmあたりの接着強度を測定した。
上記のとおり得られた、幅25mmあたりの接着強度を40倍した値(kN/m)の平均値を第1表の剥離力の欄に示した。
なお測定に使用された各ホース状試験片のサンプル数は2である。
【0059】
【表1】
【0060】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・EPM:エチレン含有量が52質量%であるエチレン・プロピレン共重合体、商品名「KEP−110」(KUMHO POLYCHEM社製)
【0061】
・EBM:エチレン含有量が74質量%であるエチレン・1−ブテン共重合体、商品名「Engage 7487」(ダウケミカル社製)
【0062】
・カーボン1 N220(比較):カーボンブラック、商品名「ショウブラックN220」(キャボットジャパン社製)、窒素吸着比表面積115m2/g、ISAFカーボンブラック
・カーボン2 N550:カーボンブラック、商品名「ニテロン♯10N」(新日化カーボン社製)、窒素吸着比表面積46m2/g、FEFカーボンブラック
・カーボン3 N770:カーボンブラック、商品名「アサヒ50」(旭カーボン社製)、窒素吸着比表面積25m2/g、SRFカーボンブラック
【0063】
・亜鉛華:商品名「酸化亜鉛3種」(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:商品名「ステアリン酸50S」(千葉脂肪酸社製)
・老化防止剤1:商品名「ノクラックMMB」(大内新興化学工業社製)、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール
・老化防止剤2:商品名「ノンフレックスLAS−P」(精工化学社製)、スチレン化ジフェニルアミンと不活性充填剤との混合物
【0064】
・可塑剤:商品名「SUNPAR 2280」(日本サン石油社製)
【0065】
・架橋剤1:商品名「パーカドックス14−40」(化薬アクゾ社製)、有機過酸化物
【0066】
・架橋剤2:マグネシウムジメチルアクリレート、商品名「ハイクロスGT」(精工化学社製)、共架橋剤
・架橋剤3:トリアリルイソシアヌレート、商品名「TAIC」(日本化成社製)、共架橋剤
・架橋剤4:ジアリルフタレート、商品名「ダイソーダップモノマー」、大阪ソーダ社製、共架橋剤
【0067】
第1表に示す結果から明らかなように、窒素吸着比表面積が所定の範囲を外れるカーボンブラックを含有する比較例1は、ΔTBの絶対値が大きく、耐熱性が低かった。また剥離力が小さく接着性が低かった。
窒素吸着比表面積が所定の範囲を外れるカーボンブラックを含有し、エチレン・1−ブテン共重合体を含有しない比較例2は、ΔTB及びΔEBの絶対値が大きく、耐熱性が低かった。
エチレン・1−ブテン共重合体を含有しない比較例3は、ΔTB、ΔEB及びΔHSの絶対値が大きく、耐熱性が低かった。また剥離力が小さく接着性が低かった。
【0068】
これに対して、本発明は耐熱性及び補強糸に対する接着性に優れた。
実施例2と実施例8とを比較すると、カーボンブラックの窒素吸着比表面積が25m2/gである実施例2は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積が46m2/gである実施例8よりも、耐熱性及び接着性により優れた。
【符号の説明】
【0069】
100 ホース
10 内層
12 補強層
14 最外層
図1