特許第6848344号(P6848344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848344
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/04 20060101AFI20210315BHJP
   B29D 30/48 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   B60C15/04 C
   B29D30/48
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-210740(P2016-210740)
(22)【出願日】2016年10月27日
(65)【公開番号】特開2018-69887(P2018-69887A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郷原 敬史
【審査官】 橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−151198(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/123081(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/072665(WO,A1)
【文献】 特開昭49−028001(JP,A)
【文献】 特開2007−216710(JP,A)
【文献】 特開2012−086719(JP,A)
【文献】 実公昭35−024206(JP,Y1)
【文献】 米国特許第04039015(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C15/00−15/06
B29D30/48/30/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単線で同線径の複数のビードワイヤが互いの端部を突き合わせた突合部を介して一連に配置されてタイヤ周方向に巻き回されて形成されたビードコアを有する空気入りタイヤ。
【請求項2】
複数の前記ビードワイヤは、前記突合部が接合された接合部を有して1本に繋がって設けられている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ビードコアは、子午断面において、タイヤ幅方向外側に最も突出した点と、タイヤ幅方向内側に最も突出した点とを結ぶ直線の中点を通過してタイヤ径方向に延在する中心線を境としたタイヤ幅方向外側領域に前記突合部の全てが配置されている請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ビードワイヤは、前記突合部における子午断面面積が、前記突合部以外の部分における子午断面面積の90%以上115%以下である請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ビードコアは、一連に配置された前記ビードワイヤの少なくとも一方の端部のタイヤ周方向の位置を0度とした場合に、前記突合部が90°以上270°以下の位置に配置される請求項1〜4のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ビードワイヤは、線径がφ1.2mm以上φ2.0mm以下である請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ビードワイヤは、単線強度が2.2kN以上のスチールワイヤである請求項1〜6のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ビードコアを有する空気入りタイヤについて記載されている。この空気入りタイヤは、ビードコアが、軽量金属材料から作られる中央コアと、中央コアを包むさや状の複数のスチールワイヤと、で構成されている。そして、中央コアはその両端が溶接され1つの連続する輪を形成している。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、ビードコアを有する空気入りタイヤについて記載されている。この空気入りタイヤは、ビードコアが、1本以上のビードコードを巻き回して構成され、ビードコアの横断面内の少なくとも一部で隣り合うビードコードのそれぞれに相互に整合する面を設け、整合面の全てを半田付けや接着剤により固着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4303483号公報
【特許文献2】特許第5623736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般にビードコアは、1本のビードワイヤを巻き回して構成されている。すなわち、製造にあたって、ビードコアは、1本に連続するビードワイヤを巻くことで形成される。このため、1つのビードコアを形成するためのビードワイヤが必要な長さ以下である場合はこれを用いず破棄しており生産性が悪化する問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ビードコアを形成するにあたり生産性を向上することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る空気入りタイヤは、複数のビードワイヤが互いの端部を突き合わせた突合部を介して一連に配置されてタイヤ周方向に巻き回されて形成されたビードコアを有する。
【0008】
この空気入りタイヤによれば、ビードコアを形成する製造時に、ビードワイヤの端材を極力生じさせずにビードコアを形成することが可能になる。この結果、ビードコアを形成するにあたり生産性を向上することができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、複数の前記ビードワイヤは、前記突合部が接合された接合部を有して1本に繋がって設けられていることが好ましい。
【0010】
この空気入りタイヤによれば、接合部を備えて複数のビードワイヤを1本に繋げることで、ビードコアの強度を向上することができ、耐久性能を確保することができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記ビードコアは、子午断面において、タイヤ幅方向外側に最も突出した点と、タイヤ幅方向内側に最も突出した点とを結ぶ直線の中点を通過してタイヤ径方向に延在する中心線を境としたタイヤ幅方向外側領域に前記突合部の全てが配置されていることが好ましい。
【0012】
この空気入りタイヤによれば、ビードコアにおいてタイヤ幅方向外側領域は、タイヤ幅方向内側領域に比較して空気圧を充填した際にビードワイヤに生じる張力や歪みが小さいため、このタイヤ幅方向外側領域に突合部の全てを配置することでビード部の耐久性能の低下を抑制して耐久性能を確保することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記ビードワイヤは、前記突合部における子午断面面積が、前記突合部以外の部分における子午断面面積の90%以上115%以下であることが好ましい。
【0014】
この空気入りタイヤによれば、突合部における子午断面面積を突合部以外の部分における子午断面面積の90%以上115%以下の範囲とすることで、ビードコアを形成するビードワイヤの巻き形状の崩れを抑えてビードワイヤの巻き形状を維持することができる。この結果、耐久性能の低下を抑制して耐久性能を確保することができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記ビードコアは、一連に配置された前記ビードワイヤの少なくとも一方の端部のタイヤ周方向の位置を0度とした場合に、前記突合部が90°以上270°以下の位置に配置されることが好ましい。
【0016】
この空気入りタイヤによれば、一連に配置されたビードワイヤの端部位置に対して突合部の位置を一定の距離に保つことができる。この結果、ビードワイヤの端部位置のタイヤ周方向での一致を避けることができ、耐久性能の低下を抑制して耐久性能を確保することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記ビードワイヤは、線径がφ1.2mm以上φ2.0mm以下であることが好ましい。
【0018】
この空気入りタイヤによれば、ビードワイヤの線径をφ1.2mm以上とすることで単線での強度を維持して耐久性能を確保することができる。また、ビードワイヤの線径をφ2.0mm以下とすることで接合する場合の難度が高くなる事態を抑えて生産性を確保することができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記ビードワイヤは、単線強度が2.2kN以上のスチールワイヤであることが好ましい。
【0020】
この空気入りタイヤによれば、ビードワイヤの単線強度を2.2kN以上とすることで単線での強度を維持して耐久性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ビードコアを形成するにあたり生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのビード部の子午断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのビードコアの子午断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのビードワイヤの部分拡大図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのビードワイヤの他の例の部分拡大図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのビード部の概略側面図である。
図6図6は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図7図7は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0024】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤのビード部の子午断面図である。
【0025】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(図示せず)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、ラジアル方向とは、タイヤ赤道面に直交する子午線方向に沿いタイヤ径方向およびタイヤ幅方向を含む方向である。タイヤ赤道面とは、空気入りタイヤ1の前記回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から最も離れている部分間の距離である。
【0026】
図1に示すように、空気入りタイヤ(重荷重用空気入りタイヤ)1は、タイヤ径方向の最も外側となる部分に形成されるトレッド部(図示省略)のタイヤ幅方向の端部から、タイヤ径方向内側の所定の位置までに、サイドウォール部5が設けられている。つまり、サイドウォール部5は、空気入りタイヤ1の2ヶ所に設けられており、タイヤ幅方向両外側でタイヤ赤道面を基準とした対称位置に設けられている。さらに、空気入りタイヤ1は、それぞれのサイドウォール部5のタイヤ径方向内側にビード部10が設けられている。ビード部10は、サイドウォール部5と同様に空気入りタイヤ1の2ヶ所に設けられており、タイヤ幅方向両外側でタイヤ赤道面を基準とした対称位置に設けられている。
【0027】
ビード部10は、ビードコア11を有している。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤ11a(図2参照)をタイヤ周方向に沿ってリング状に巻くことにより形成されている。また、ビード部10は、そのタイヤ径方向内側がビードベース12として形成されている。ビードベース12は、ビードコア11のタイヤ径方向内側に位置し、リム(図示せず)に接触する部分である。また、ビード部10は、ビードコア11のタイヤ径方向外側にビードフィラー13が配設されている。ビードフィラー13は、ビードコア11寄りのロアービードフィラー13aと、そのタイヤ径方向外側のアッパービードフィラー13bとで構成される。
【0028】
また、空気入りタイヤ1は、トレッド部、サイドウォール部5およびビード部10に、カーカス層20が設けられている。カーカス層20は、タイヤ周方向に連続的に配設されており、ラジアル方向に沿って延在しタイヤ周方向に複数並べられるカーカスコードが、ゴム材からなる被覆材で被覆されている。カーカス層20は、タイヤ幅方向における両側に設けられるビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されている。また、カーカス層20は、ビード部10でビードコア11周りに、ビードコア11のタイヤ幅方向おける内側から外側に折り返された、ターンナップ構造になっている。
【0029】
つまり、カーカス層20は、図1に示すように、サイドウォール部5からビード部10に向かい、ビードコア11のタイヤ幅方向内側からビードコア11のタイヤ径方向内側を通り、さらにビードコア11のタイヤ幅方向外側を通っている。そして、カーカス層20は、ビードコア11のタイヤ幅方向外側に位置する部分が、ターンナップ部21となっており、ターンナップ部21におけるタイヤ径方向外側の端部が、カーカス層20の端部であるカーカス層端部22となっている。このカーカス層端部22は、ビードコア11よりもタイヤ径方向外側に位置し、本実施形態ではアッパービードフィラー13bのタイヤ幅方向外側に位置している。
【0030】
また、空気入りタイヤ1は、ビード部10に、スチール補強層30が設けられている。スチール補強層30は、カーカス層20の外側でカーカス層20に重ねられて配設され、ビードコア11周りにタイヤ幅方向における内側から外側に折り返されタイヤ周方向に連続的に配設されている。スチール補強層30は、カーカスコードに対して交差する複数のスチールコードが、ゴム材からなる被覆材で被覆されている。例えば、スチールコードは、ビードコア11のタイヤ径方向内側にて、カーカスコードが沿って延在するラジアル方向に対し−70[°]または+70[°]の角度を有して配置される。
【0031】
このスチール補強層30は、図1に示すように、ビード部10において、カーカス層20がビードコア11よりもタイヤ幅方向内側に位置している部分では、カーカス層20のタイヤ幅方向内側に位置している。また、スチール補強層30は、カーカス層20がビードコア11よりもタイヤ径方向内側に位置している部分では、カーカス層20のタイヤ径方向内側に位置している。さらに、スチール補強層30は、カーカス層20がビードコア11よりもタイヤ幅方向外側に位置している部分では、カーカス層20のタイヤ幅方向外側に位置している。
【0032】
また、スチール補強層30は、ビードコア11よりもタイヤ幅方向内側に位置している部分のタイヤ径方向外側の端部がスチール補強層内側端部31となっており、ビードコア11よりもタイヤ幅方向外側に位置している部分のタイヤ径方向外側の端部がスチール補強層外側端部32となっている。換言すると、スチール補強層内側端部31は、スチール補強層30におけるタイヤ幅方向内側の端部であり、スチール補強層外側端部32は、スチール補強層30におけるタイヤ幅方向外側の端部である。また、スチール補強層内側端部31およびスチール補強層外側端部32は、ともにビードコア11よりもタイヤ径方向外側に位置している。さらに、スチール補強層内側端部31は、カーカス層端部22の位置よりもタイヤ径方向外側に位置し、スチール補強層外側端部32は、カーカス層端部22の位置よりもタイヤ径方向内側に位置している。
【0033】
図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤのビードコアの子午断面図である。図3は、本実施形態に係る空気入りタイヤのビードワイヤの部分拡大図である。図4は、本実施形態に係る空気入りタイヤのビードワイヤの他の例の部分拡大図である。図5は、本実施形態に係る空気入りタイヤのビード部の概略側面図である。
【0034】
上述したように構成された空気入りタイヤ1において、ビードコア11は、図2に示すように、ビードワイヤ11aがタイヤ周方向に巻き回されて形成されている。ビードワイヤ11aは、単線のスチールワイヤであり、タイヤ周方向に一連に巻かれてビードコア11を形成する。例えば、ビードワイヤ11aは、図2においてタイヤ径方向最内側であってタイヤ幅方向最内側を始端としてタイヤ周方向に巻かれ、そこからタイヤ幅方向外側に向かって巻かれた後、タイヤ径方向外側に重なりながらタイヤ幅方向内側に戻って巻かれ、これを繰り返してタイヤ径方向外側に重ねることでビードコア11を形成する。
【0035】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、このようなビードコア11において、図3に示すように、ビードワイヤ11aは、複数用いられており互いの端部を対向させて突き合わせた突合部11bを介することで一連に配置されてタイヤ周方向に巻き回されている。すなわち、ビードワイヤ11aは、複数に分割されており、互いの端部を対向させて突き合わせた突合部11bを介して一連に配置されてタイヤ周方向に巻き回されている。
【0036】
この空気入りタイヤ1によれば、ビードコア11を形成する製造時に、ビードワイヤ11aの端材を極力生じさせずにビードコア11を形成することが可能になる。この結果、ビードコア11を形成するにあたり生産性を向上することができる。
【0037】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図4に示すように、複数のビードワイヤ11aは、突合部11bが接合された接合部11cを有していることで1本に繋がって設けられていることが好ましい。
【0038】
接合部11cは、突合部11bを溶接することで複数のビードワイヤ11aを接合する。また、接合部11cは、溶接の他、接着剤により接着することで複数のビードワイヤ11aを接合してもよい。
【0039】
この空気入りタイヤ1によれば、接合部11cを備えて複数のビードワイヤ11aを1本に繋げることで、ビードコア11の強度を向上することができ、ビード部10の耐久性能を確保することができる。
【0040】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図2に示すように、ビードコア11は、子午断面において、タイヤ幅方向外側に最も突出した点Aと、タイヤ幅方向内側に最も突出した点Bとを結ぶ補助直線ALの中点Cを通過してタイヤ径方向に延在する中心線CLを境としてタイヤ幅方向内側領域αとタイヤ幅方向外側領域βとを設けた場合、タイヤ幅方向外側領域βに突合部11bの全てが配置されていることが好ましい。
【0041】
ここで、本実施形態においてビードコア11は、図2に示す子午断面において、各ビードワイヤ11aの外形をなぞる外形直線(図2に一点鎖線で示す)により仮想的な外形をなしている。そして、この外形においてタイヤ幅方向外側に最も突出した点Aと、タイヤ幅方向内側に最も突出した点Bと、補助直線ALを得る。また、中心線CLは、空気入りタイヤ1をリム組みしていない状態において、両ビード部10間を正規リムに組んだ間隔に配置して得る。または、中心線CLは、空気入りタイヤ1を正規リムに組んだ状態で得てもよい。なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。
【0042】
また、タイヤ幅方向外側領域βに突合部11bの全てが配置されているとは、子午断面において突合部11bの外形の全てがタイヤ幅方向外側領域β内に存在することをいう。すなわち、突合部11bの外形領域に中心線CLが掛かっている場合は、当該突合部11bはタイヤ幅方向外側領域βに存在していないと見なす。
【0043】
この空気入りタイヤ1によれば、ビードコア11において、タイヤ幅方向外側領域βは、タイヤ幅方向内側領域αに比較して空気圧を充填した際にビードワイヤ11aに生じる張力や歪みが小さいため、このタイヤ幅方向外側領域βに突合部11bの全てを配置することでビード部10の耐久性能の低下を抑制してビード部10の耐久性能を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、ビードワイヤ11aは、突合部11bにおける子午断面面積が、突合部11b以外の部分における子午断面面積の90%以上115%以下であることが好ましい。
【0045】
突合部11bにおける子午断面面積は、複数のビードワイヤ11aを突き合わせる端面の面積に相当する。また、突合部11bにおける子午断面面積は、突合部11bを接合した接合部11cにおける子午断面面積に相当する。
【0046】
この空気入りタイヤ1によれば、突合部11b(接合部11c)における子午断面面積を突合部11b以外の部分における子午断面面積の90%以上115%以下の範囲とすることで、ビードコア11を形成するビードワイヤ11aの巻き形状の崩れを抑えてビードワイヤ11aの巻き形状を維持することができる。この結果、ビード部10の耐久性能の低下を抑制してビード部10の耐久性能を確保することができる。上記範囲を逸脱すると、ビードワイヤ11aの巻き形状の崩れが発生しやすい傾向となる。
【0047】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図5に示すように、ビードコア11は、一連に配置されたビードワイヤ11aの少なくとも一方の端部のタイヤ周方向の位置を0度とした場合に、突合部11b(接合部11c)が90°以上270°以下の位置に配置されることが好ましい。
【0048】
ここで、ビードコア11は、一連に配置されたビードワイヤ11aの両端のタイヤ周方向の位置を0度に揃えることが好ましい。
【0049】
この空気入りタイヤ1によれば、一連に配置されたビードワイヤ11aの端部である、例えば、巻き始め位置に対して突合部11b(接合部11c)の位置を一定の距離に保つことができる。この結果、ビードワイヤ11aの端部位置のタイヤ周方向での一致を避けることができ、ビード部10の耐久性能の低下を抑制してビード部10の耐久性能を確保することができる。
【0050】
なお、ビードワイヤ11aの端部位置をタイヤ周方向で極力離してビード部10の耐久性能の低下を抑制するうえで、一連に配置されたビードワイヤ11aの少なくとも一方の端部のタイヤ周方向の位置を0度とした場合に、突合部11b(接合部11c)が135°以上225°以下の位置に配置されることがより好ましい。
【0051】
また、一連に配置されたビードワイヤ11aの各端部は、図2に示すような子午断面における周囲がゴムで被覆されることで止められる。
【0052】
また、突合部11b(接合部11c)が複数存在する場合、突合部11b(接合部11c)同士もタイヤ周方向で離れて配置されていることが好ましい。
【0053】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、ビードワイヤ11aは、線径がφ1.2mm以上φ2.0mm以下であることが好ましい。
【0054】
この空気入りタイヤ1によれば、ビードワイヤ11aの線径をφ1.2mm以上とすることで単線での強度を維持してビード部10の耐久性能を確保することができる。また、ビードワイヤ11aの線径をφ2.0mm以下とすることで接合(溶接)する場合の作業難度が高くなる事態を抑えて生産性を確保することができる。
【0055】
なお、ビード部10の耐久性能を確保すると共に生産性を確保するうえで、ビードワイヤ11aの線径をφ1.4mm以上φ1.7mm以下とすることがより好ましい。
【0056】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、ビードワイヤ11aは、単線強度が2.2kN以上のスチールワイヤであることが好ましい。
【0057】
単線強度は、JIS G 3510−1992に記載の切断荷重に準拠する。
【0058】
この空気入りタイヤ1によれば、ビードワイヤ11aの単線強度を2.2kN以上とすることで単線での強度を維持してビード部10の耐久性能を確保することができる。
【0059】
なお、上述した実施形態では空気入りタイヤ1として重荷重用空気入りタイヤを図示しているが、これに限らない。すなわち、空気入りタイヤ1は乗用車用空気入りタイヤであってもよい。ただし、空気入りタイヤ1を重荷重用空気入りタイヤに適用することがビードコアを形成するにあたり生産性を向上しつつ耐久性能を確保するうえで好ましい。
【実施例】
【0060】
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、生産性およびビード部の耐久性能に関する性能試験が行われた(図6および図7参照)。
【0061】
生産性の評価は、ビードコアを形成する製造時にビードワイヤの端材が発生したか否かで判断する。端材が発生した場合を×とし、端材が発生しない場合を○とし、端材が発生しない○であるほうが生産性が高く優れていることを示す。
【0062】
耐久性能の性能試験は、タイヤサイズ225/80R17.5の空気入りタイヤを、正規リムにリム組みした状態で、加圧された水を徐々に充填し、タイヤが破壊したときの圧力が測定される。そして、測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が100に近く95以上であるほど耐久性能が確保されていることを示す。
【0063】
図6において、従来例の空気入りタイヤは、ビードワイヤが1本に連続した構成である。一方、図6において、実施例1および実施例2の空気入りタイヤは、1箇所の突合部を介して2本のビードワイヤが一連に配置されている。また、図6および図7において、実施例3〜実施例16の空気入りタイヤは、突合部が接合部(溶接)により接合されている。すべての空気入りタイヤは、ビードワイヤの単線強度が2.5kNのスチールワイヤである。
【0064】
図6および図7の試験結果に示すように、実施例1〜実施例16の空気入りタイヤは、生産性が向上し、耐久性能が確保されていることが分かる。
【符号の説明】
【0065】
1 空気入りタイヤ
10 ビード部
11 ビードコア
11a ビードワイヤ
11b 突合部
11c 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7