(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トランスの一次側巻き線の端末の一方は、前記第一スイッチ素子と前記第二スイッチ素子が接続された第一の接続点に接続され、前記トランスの一次側巻き線の端末の他方は、前記直列回路に接続されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
前記第一スイッチ素子と前記第二スイッチ素子が接続された第一の接続点は、前記直列回路を介して、前記トランスの一次側巻き線の端末の一方と接続していることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
前記一次側回路は、前記第一スイッチ素子及び前記第二スイッチ素子を直列接続した第一レグと、第三スイッチ素子及び第四スイッチ素子を直列接続した第二レグを有するフルブリッジ回路を備え、
前記第一レグにおける前記第一スイッチ素子と前記第二スイッチ素子が接続された第一の接続点、又は、前記第二レグにおける前記第三スイッチ素子と前記第四スイッチ素子が接続された第二の接続点、のうちのいずれか一方が、前記直列回路を介して、前記トランスの一次側巻き線の端末の一方と接続していることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
前記電圧クランプ回路は、前記コンデンサと並列に設けられ、前記コンデンサの両端の間にかかる電圧を、所定の変動幅に制限することを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載のスイッチング電源装置。
前記電圧クランプ回路は、少なくとも二つのツェナーダイオードからなり、前記二つのツェナーダイオードのアノード端子同士が接続されるか、又は、前記二つのツェナーダイオードのカソード端子同士が接続されることを特徴とする請求項6に記載のスイッチング電源装置。
前記第一電圧リミッタ回路及び前記第二電圧リミッタ回路は、少なくとも一つのダイオードと、少なくとも一つのツェナーダイオードを備え、互いのカソード端子同士、または、互いのアノード端子同士が接続されていることを特徴とする請求項8に記載のスイッチング電源装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前段の第一コンバータにおけるスイッチ素子のスイッチング制御の応答性が悪く、前段出力電圧の低減制御まで時間が掛かってしまう場合があり、そのような場合には、後段の第二コンバータに過電流が過渡的に流れてしまうという課題があった。また第二コンバータが
図9で示したようなLLC直列共振コンバータの場合、スイッチング周波数をPFM制御するための制御回路が複雑になる欠点があった。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡単な保護回路により、過電流保護が可能なスイッチング電源装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、直列接続される第一スイッチ素子及び第二スイッチ素子を少なくとも備える一次側回路と、出力端に接続される整流平滑回路を備える二次側回路と、前記一次側回路と前記二次側回路を結合するトランスと、前記一次側回路において、コンデンサと少なくとも一つのインダクタを備える直列回路と、前記コンデンサと前記インダクタのうち、少なくともいずれか一方にかかる電圧を、所定の電圧範囲内に制限する電圧クランプ回路とを有し、前記直列回路は、前記トランスの一次側巻き線へ直列に接続されることを特徴とするスイッチング電源装置を提供する。
【0009】
上記(1)に記載する発明によれば、直列回路(この場合、直列共振回路)を有する一次側回路を備えたスイッチング電源装置で、短絡等の原因で一次側回路に過電流が流れる可能性がある場合に、直列共振回路が備えるコンデンサとインダクタのうち、少なくともいずれか一方にかかる電圧を、所定の電圧範囲内に制限することができるので、一次側回路中に流れる電流を抑制することができる優れた効果を奏する。
【0010】
(2)本発明は、前記トランスの一次側巻き線の端末の一方は、前記第一スイッチ素子と前記第二スイッチ素子が接続された第一の接続点に接続され、前記トランスの一次側巻き線の端末の他方は、前記直列回路に接続されることを特徴とする上記(1)に記載のスイッチング電源装置を提供する。
【0011】
上記(2)に記載する発明によれば、ハーフブリッジ回路を備えたLLC直列共振コンバータにおいて、直列共振回路の両端の少なくともいずれか一方の端点、または、共振用コンデンサと共振インダクタの間の接続点の電位を所定の電圧範囲内に制限することができるので、簡単な回路構成で過電流保護が可能なスイッチング電源を構築できるという著しく優れた効果を奏する。
【0012】
(3)本発明は、前記第一スイッチと前記第二スイッチが接続された第一の接続点は、前記直列回路を介して、前記トランスの一次側巻き線の端末の一方と接続していることを特徴とする上記(1)に記載のスイッチング電源装置を提供する。
【0013】
上記(3)に記載する発明によれば、いわゆるLLC直列共振コンバータにおいて、直列共振回路の両端の少なくともいずれか一方の端点、または、共振用コンデンサと共振インダクタの間の接続点の電位を所定の電圧範囲内に制限することができるので、簡単な回路構成で過電流保護が可能なスイッチング電源を構築できるという著しく優れた効果を奏する。
【0014】
(4)本発明は、前記一次側回路は、前記第一スイッチ素子及び前記第二スイッチ素子を直列接続した第一レグと、第三スイッチ素子及び第四スイッチ素子を直列接続した第二レグを有するフルブリッジ回路を備え、前記第一レグにおける前記第一スイッチ素子と前記第二スイッチが接続された第一の接続点、又は、前記第二レグにおける前記第三スイッチ素子と前記第四スイッチ素子が接続された第二の接続点、のうちのいずれか一方が、前記直列回路を介して、前記トランスの一次側巻き線の端末の一方と接続していることを特徴とする上記(1)に記載のスイッチング電源装置を提供する。
【0015】
上記(4)に記載する発明によれば、フルブリッジ回路を備えたLLC直列共振コンバータにおいて、直列共振回路の両端の少なくともいずれか一方の端点、または、共振用コンデンサと共振インダクタの間の接続点の電位を所定の電圧範囲内に制限することができるので、簡単な回路構成で過電流保護が可能なスイッチング電源を構築できるという著しく優れた効果を奏する。
【0016】
(5)本発明は、前記所定の電圧範囲内とは、所定の第一電圧値以上、且つ、所定の第二電圧値以下であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載のスイッチング電源装置を提供する。
【0017】
上記(5)に記載する発明によれば、短絡等の原因で一次側回路に過電流が流れる可能性がある場合に、直列共振回路中のいずれかが備えるコンデンサとインダクタのうち、少なくともいずれか一方にかかる電圧を、所定の第一の電圧値以上、且つ、所定の第二電圧値以内に制限することができるので、一次側回路中に流れる電流を抑制することができるという優れた効果を奏する。
【0018】
(6)本発明は、前記電圧クランプ回路は、前記コンデンサと並列に設けられ、前記コンデンサの両端の間にかかる電圧を、所定の変動幅に制限することを特徴とする上記(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載のスイッチング電源装置を提供する。
【0019】
上記(6)に記載する発明によれば、直列共振回路を有する一次側回路を備えたスイッチング電源装置で、短絡等の原因で一次側回路に過電流が流れる可能性がある場合に、直列共振回路中の共振用コンデンサの両端の間にかかる電圧を、所定の変動幅に制限することができるので、一次側回路中に流れる電流を抑制することができる優れた効果を奏する。
【0020】
(7)本発明は、前記電圧クランプ回路は、少なくとも二つのツェナーダイオードからなり、前記二つのツェナーダイオードのアノード端子同士が接続されるか、又は、前記二つのツェナーダイオードのカソード端子同士が接続されることを特徴とする上記(6)に記載のスイッチング電源装置を提供する。
【0021】
上記(7)に記載する発明によれば、直列共振回路中の共振用コンデンサの両端の間にかかる電圧をツェナーダイオードの降伏電圧で制限することができるので、簡単な回路で一次側回路中を流れる電流を抑制することができる極めて優れた効果を奏する。
【0022】
(8)本発明、前記電圧クランプ回路が、前記コンデンサと前記インダクタが接続された接続点の電位が前記第一電圧値以上になった場合に、前記接続点を前記一次側回路の正極に短絡する第一電圧リミッタ回路と、前記接続点の電位が前記第二電圧値以下になった場合に、前記接続点を前記一次側回路の負極に短絡する第二電圧リミッタ回路とを備えることを特徴とした上記(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載のスイッチング電源装置を提供する。
【0023】
上記(8)に記載する発明によれば、直列共振回路中のコンデンサとインダクタが接続された接続点の電位を所定の電圧範囲内に制限することができるので、一次側回路中に流れる電流を抑制することができる優れた効果を奏する。
【0024】
(9)本発明は、前記第一電圧リミッタ回路及び前記第二電圧リミッタ回路は、少なくとも一つのダイオードと、少なくとも一つのツェナーダイオードを備え、互いのカソード端子同士、または、互いのアノード端子同士が接続されていることを特徴とする上記(8)に記載のスイッチング電源装置を提供する。
【0025】
上記(9)に記載する発明によれば、少数の受動素子を備える電圧リミッタ回路で、一次側回路中に流れる電流を抑制することができる優れた効果を奏する。
【0026】
(10)本発明は、前記インダクタが、チョークコイルであることを特徴とする上記(1)乃至(9)のうちのいずれかに記載のスイッチング電源装置を提供する。
【0027】
上記(7)に記載する発明によれば、漏れインダクタンスを利用した共振用インダクタだけでコンバータを構成する場合よりも設計自由度の高いスイッチング電源装置を実現でき、前述の電圧クランプ回路による過電流保護も実現できるという効果を奏する。
【0028】
(11)本発明は、前記インダクタが、前記トランスの漏れインダクタンスを含むことを特徴とする上記(1)乃至(9)のうちのいずれかに記載のスイッチング電源装置を提供する。
【0029】
上記(11)に記載する発明によれば、直列共振回路によるソフトスイッチングが可能なコンバータを極めて少ない部品数で実現できるとともに、前述の電圧クランプ回路による過電流保護も実現できるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、直列共振回路を有する一次側回路を備えたスイッチング電源装置で、短絡等の原因で一次側回路に過電流が流れる可能性がある場合に、直列共振回路中のいずれかの接続点または端点のうち少なくとも一点を、所定の電圧範囲内に制限することができるので、一次側回路中に流れる電流を抑制することができる優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0033】
図1〜
図8は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。
【0034】
図1に、本発明の第一実施例に係るスイッチング電源装置の回路図を示す。スイッチング電源装置1は、二段のコンバータを有する一次側回路25と、整流平滑回路を有する二次側回路70と、一次側回路25と二次側回路70を結合するトランス60を備える。二段のコンバータは、定常状態において、入力端子INから入力される入力電圧を、所定の前段出力電圧に変換して出力する。二段のコンバータは、上流側に位置する前段の第一コンバータ10と、第一コンバータ10から出力される前段出力電圧を、所定の後段出力電圧に変換する後段の第二コンバータ15とを備える。第二コンバータ15は、平滑コンデンサ20と、スイッチ素子Q1〜Q4を含むフルブリッジのスイッチング回路30と、第二コンバータ15とトランス60を接続する回路を流れる電流の電流値を検出する電流検出回路45を有する。電流検出回路45は、カレント・トランス40を備える。
【0035】
スイッチング電源装置1は、電流検出回路45で検出される電流値に基づいて第二コンバータのスイッチング回路30に含まれるスイッチ素子を駆動する駆動パルスの導通幅を制御する制御部80を更に備える。換言すると、制御部80は、PWM(Pulse Width Modulation)制御可能となっている。
【0036】
なお制御部80は、電流検出回路45で検出した電流値が、少なくとも所定の第一電流値以上である場合、前段の第一コンバータ10のスイッチ素子を制御して、第一コンバータ10から出力される電圧を前段基準出力電圧から下げる機能を同時に有する。
【0037】
第二コンバータ15は、LLC直列共振コンバータであり、第一スイッチ素子Q1、及び、第二スイッチ素子Q2を直列接続する第一レグ32と、第三スイッチ素子Q3、及び、第四スイッチ素子Q4を直列接続する第二レグ34を、入力端子INの間に並列接続するフルブリッジ回路を有する。
【0038】
なお、
図1中において、各スイッチ素子Q1〜Q4にダイオードが、各スイッチ素子に対して逆接続されている。このダイオードは、スイッチ素子であるMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)自体の寄生ダイオードを表す。
【0039】
第一レグにおける第一スイッチ素子Q1、及び、第二スイッチ素子Q2の接続点Hは、共振用インダクタ52と共振用コンデンサ54を備える直列共振回路50を介して、トランス60の一次側巻き線の端末の一方と接続される。第二レグにおける第三スイッチ素子Q3、及び、第四スイッチ素子Q4の接続点Iは、トランス60の一次側巻き線の端末の他方と接続される。
【0040】
保護回路Gは、直列共振回路50の共振用コンデンサ54に対して並列に接続される。すなわち共振用コンデンサ54の両端の間にかかる電圧を、所定の変動幅に制限する電圧クランプ回路が、共振用コンデンサ54と並列に備えられる。
【0041】
保護回路Gは、少なくとも二つのツェナーダイオードを備え、カソードコモンで直列に接続される。このような構成の保護回路Gを設けると、共振用コンデンサ54に印加される電圧がツェナーダイオード100の降伏電圧でクランプされるため、直列共振回路50を通して流れる電流は制限され、第二コンバータ15において過電流保護の効果を奏する。なお、二つのツェナーダイオード100は、カソードコモンで接続した形態を示したが、アノードコモンで直列に接続しても良い。
【0042】
図1において、共振用コンデンサ54の両端の接続点である、接続点B及び接続点Cのそれぞれの電位をV(B)、V(C)と定義する。ツェナーダイオード100の降伏電圧をV(ZD)とすると、共振用コンデンサ54の両端の間にかかる電圧は、−V(ZD)≦V(B)−V(C)≦V(ZD)と制限される。すなわち第一電圧値を−V(ZD)、第二電圧値をV(ZD)とすると、コンデンサ54にかかる電圧は、第一電圧値以上、且つ、第二電圧値以下に制限される。言い換えれば、共振用コンデンサ54の両端間にかかる電圧の絶対値は、V(ZD)を上限として制限されるため、回路中を流れる電流は制限され、スイッチ素子を過電流から保護することが可能になる。
【0043】
保護回路Gは、後述する、制御部80による第二コンバータのスイッチ素子駆動パルス幅制御との相乗効果により、過電流からの保護の効果をさらに奏する。
【0044】
なお、本実施形態においてスイッチ素子は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成しているが、他のスイッチ素子、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成されてもよい。
【0045】
また制御部80は、スイッチ素子制御用の半導体やトランジスタ等を用いた回路で構成されることが望ましい。共振用インダクタ52は、チョークコイルである。なおチョークコイルの代わりにトランス60の漏れインダクタンスを共振用インダクタとして利用してもよい。
【0046】
図2(A)は、スイッチング電源装置1が有する第二コンバータ15が備えるスイッチ素子Q1〜Q4を駆動するパルスの、定常運転時のタイミングチャートである。このパルス制御は制御部80がおこなう。ここでは、Duty比が略50%のパルスで駆動させる。すなわち、駆動パルスの周期をTとしたとき、まず、第一スイッチ素子Q1と第四スイッチ素子Q4を、ON状態が第一導通幅t1=T/2の期間持続するように制御する。このとき貫通電流が生じないように、第二スイッチ素子Q2と第三スイッチ素子Q3は、OFF状態に制御される。次に、第二スイッチ素子Q2と第三スイッチ素子Q3を、ON状態が第一導通幅t1=T/2の期間持続するように制御する。このとき貫通電流が生じないように、第一スイッチ素子Q1と第四スイッチ素子Q4は、OFF状態に制御される。
【0047】
さて、電流検出回路45が過電流を検出したとき、第二コンバータ15のスイッチ素子を駆動する駆動パルスのタイミングチャートを
図2(B)に示す。定常運転状態において、制御部80が、第二コンバータ15のスイッチ素子Q1〜Q4を駆動する駆動パルスの導通幅を第一導通幅と定義すると、制御部80は、電流検出回路45で検出した電流値が所定の第一電流値以上である場合に、スイッチ素子Q1〜Q4を駆動する駆動パルスの導通幅を、第一導通幅よりも狭い第二導通幅に制御する。
【0048】
すなわち本実施形態の場合、駆動パルスの導通幅を第一導通幅であるt1=T/2から、第二導通幅であるt2=T/4と、Duty比を略25%に変更する。
【0049】
なお一次側回路25、又は、二次側回路70において短絡が生じる場合に、電流検出回路45が検出する電流値が、第一電流値を越えるように、この第一電流値は設定される。
【0050】
一般にLLCコンバータでは、負荷の変化に対してPWM制御で追従させることが困難であるため、PFM制御をする。しかし過電流を検出したときに回路に流れる電流を抑制するという過電流からの保護が目的の場合、Duty比変更で十分である。このため、制御部80は複雑なPFM制御回路ではなく、Duty比が可変になるようにスイッチ素子を駆動する簡便なPWM制御回路の構成でよい。
【0051】
図3には、過電流保護を目的として、第二コンバータ15を構成するスイッチ素子を制御するための処理についてのフローチャートを示す。電流検出回路45は、第二コンバータ15の回路内を流れる電流を検出する(ステップS10)。そして制御部80で平均電流を検出し(ステップS20)、ステップ30において平均電流が第一電流値以上であるかどうかを判定する。この第一電流値は、いわゆる過電流のみを検知する値に設定される。ここで、一次側回路25、又は、二次側回路70において短絡が生じる場合に、電流検出回路45が検出する電流値は、第一電流値以上となる。第一電流値は、第二コンバータ15のスイッチ素子Q1〜Q4が故障しない電流値であることが望ましい。平均電流が第一電流値以上ならば(YESの場合)、制御部80は、第二コンバータ15のスイッチ素子Q1〜Q4を駆動するパルスの導通幅を、定常運転状態における第一導通幅t1から、第二導通幅t2に変更し(
図2参照)、Duty比を略25%まで下げ(ステップS40)、最初に戻る(ステップS10)。平均電流が第一電流値未満ならば(NOの場合)、さらに平均電流が第二電流値以下かどうかを判定する(ステップS50)。ここで第二電流値は、第一電流値よりも小さく設定される。第一電流値と第二電流値に差を設けることで、過電流時に、Duty比25%とDuty比50%のチャタリングを防止できる。
【0052】
なお第二電流値は、スイッチング電源装置1が問題なく、Duty比略25%で駆動されている場合に第二コンバータ15の回路を流れる電流値に設定する。
【0053】
平均電流が第二電流値以下のとき(YESの場合)、制御部80は、第二コンバータ15のスイッチ素子の駆動パルス幅をDuty比が略50%になるまで連続的に増大させていく。すなわち制御部80は、導通幅を第二導通幅t2から第一導通幅t1まで連続的に増大させる(
図2参照)。この過程でも電流検出回路45は常に、第二コンバータ15の回路内を流れる電流値をモニタしている(ステップS10に戻る)。平均電流が第二電流値より大きいとき(NOの場合)、ステップS10に戻る。以上の処理により、後段の第二コンバータ15を構成するスイッチ素子Q1〜Q4は、過電流から保護され、問題がなければ定常運転状態(Duty比略50%)に復帰する。
【0054】
本フローチャート(
図3参照)には記載していないが、
図3で示した処理と同時に制御部80は、第二コンバータ15の上流側にある前段のコンバータ10のスイッチ素子を制御して、第一コンバータ10から出力される電圧を前段基準出力電圧から下げる処理を行う。
【0055】
具体的には、例えば第一電流値より小さな第三電流値を設定し、電流検出回路45の検出する電流値が第三電流値以上になったならば、制御部80が、コンバータ10のパルス幅制御を行い、出力電圧をさげる制御を行う。この制御により後段の第二コンバータ15に流れる電流を抑制することができ、さらに効果的に第二コンバータ15を保護することが可能になるという顕著な効果を奏する。
【0056】
なお上記の前段のコンバータ10に対する処理は、他の実施形態、及び、他の変形実施例においても適用可能であることは言うまでもない。
【0057】
図4は、本発明の第二実施形態に係るスイッチング電源装置1である。一次側回路25は、単段のLLC電流共振コンバータであり、スイッチング回路30としては、フルブリッジ回路を備える。フルブリッジ回路を構成するスイッチ素子は、第一実施形態の第二コンバータ15と同様に、定常運転時、Duty比略50%で駆動されている。
【0058】
図1で示した多段のコンバータを備えた第一実施形態と同様に、一次側回路25のコンバータのスイッチング回路30を構成するスイッチ素子Q1〜Q4のいずれかに過電流が流れると、電流検出回路45で過電流を検出されて、制御部80によりDuty比が略25%に制御される。スイッチ素子Q1〜Q4の駆動パルスのタイミングチャート、及び、処理のフローチャートは、それぞれ
図2、及び、
図3と同様なので省略する。また、電流共振用コンデンサ54の両端には、電圧クランプのための保護回路Gを設ける。
【0059】
保護回路Gは、直列共振回路50の共振用コンデンサ54に対して並列に接続される。すなわち共振用コンデンサ54の両端の間にかかる電圧を、所定の変動幅に制限する電圧クランプ回路が、共振用コンデンサ54と並列に備えられる。
【0060】
保護回路Gは、少なくとも二つのツェナーダイオード100を備え、カソードコモンで直列に接続される。このような構成の保護回路Gを設けると、共振用コンデンサ54の両端間にかかる電圧が、ツェナーダイオード100の降伏電圧でクランプされるため、直列共振回路50を通して流れる電流は制限され、第二コンバータ15において過電流保護の効果を奏する。
【0061】
図4において、共振用コンデンサ54の両端の接続点である、接続点B及び接続点Cのそれぞれの電位をV(B)、V(C)と定義する。ツェナーダイオード100の降伏電圧をV(ZD)とすると、共振用コンデンサ54の両端の間にかかる電圧は、−V(ZD)≦V(B)−V(C)≦V(ZD)と制限される。言い換えれば、共振用コンデンサ54の両端間にかかる電圧の絶対値は、V(ZD)を上限として制限されるため、回路中を流れる電流は制限され、スイッチ素子を過電流から保護することが可能になる。
【0062】
以上の構成は、短絡に対する一次側回路25のスイッチ素子Q1〜Q4の過電流保護として十分な効果を奏する。
【0063】
図5〜
図8においては、第一実施形態、及び第二実施形態の応用として、別の方法で回路内の接続点の電位をクランプし、過電流保護効果を奏する他の実施形態を示す。
【0064】
図5〜
図8に示す実施形態においては、いずれの一次側回路においても、トランスと直列接続されるコンデンサ、及び、少なくとも一つのインダクタを含む直列共振回路を備え、コンデンサとインダクタからなる直列回路の両端の二点、及び、コンデンサとインダクタとの間にある接続点のうち、少なくともいずれか一点の電位を、所定の第一電圧値以上、且つ、所定の第二電圧値以下に制限する電圧クランプ回路を備える。
【0065】
具体的に
図5(A)の第三実施形態に係るスイッチング電源装置1は、スイッチング回路としてフルブリッジを備えたLLCコンバータであり、電流共振用コンデンサ54の端子の一端の電位をクランプする保護回路が設けられている。
【0066】
スイッチング電源装置1では、共振用コンデンサ54と共振用インダクタ52を直列接続する接続点Bに、保護回路Eと保護回路Fが接続される。この場合それぞれの保護回路は、一つのダイオード120と、一つのツェナーダイオード100を備え、互いのカソード端子同士が直列接続される。保護回路Eについては、ダイオードのアノード端子が接続点Bに接続され、ツェナーダイオードのアノード端子が入力端子INの正極側に接続される。保護回路Fについては、ツェナーダイオードのアノード端子が接続点Bに接続され、ダイオードのアノード端子が入力端子INの負極側に接続される。
【0067】
まず一次側回路における入力端子INの正極の電位をV(A)と定義し、負極の電位を0とする。また各接続点Bの電位をV(B)と表し、ツェナーダイオードの降伏電圧をV(ZD)と示す。保護回路Eは電圧を制限する電圧リミッタ回路であり、接続点Bの電位V(B)が、V(B)=V(A)+V(ZD)となった場合に、接続点Bを一次側回路の正極に短絡し、V(B)は、V(B)≦V(A)+V(ZD)となる(ダイオード120の降下電圧がV(ZD)よりも十分小さいと仮定した)。また保護回路Fも同様に電圧リミッタ回路であり、接続点Bの電位V(B)が、V(B)=−V(ZD)になった場合に、接続点Bを一次側回路の負極に短絡する。すなわち、保護回路Eおよび保護回路Fを接続点Bに接続することで、接続点Bの電位V(B)を、−V(ZD)≦V(B)≦V(A)+V(ZD)の範囲内に制限する。すなわちこの場合、第一電圧値を−V(ZD)とし、第二電圧値をV(A)+V(ZD)とすると、接続点Bの電位V(B)は、負の値になる第一電圧値以上、且つ、正の値になる第二電圧値以下に制限される。保護回路Eは、一次側回路の正極に短絡する第一電圧リミッタ回路の実施形態であり、保護回路Fは、一次側回路の負極に短絡する第二電圧リミッタ回路の一実施形態である。
【0068】
このように共振用コンデンサ54の一端の電位をクランプすることで、共振用コンデンサ54に係る電圧を制限し、回路内を流れる電流を抑制する。
【0069】
図5(B)で示す第四実施形態に係るスイッチング電源装置1では、フルブリッジ回路において、第一レグ32における第一スイッチ素子Q1と第二スイッチ素子Q2の接続点Hは、トランス60の一次側巻き線の端末の一方に直列に接続される。そして第二レグ34の第三スイッチ素子Q3と第四スイッチ素子Q4の接続点Iは、共振用コンデンサ54とリーケージインダクタ130を備える直列共振回路50を介して、トランス60の一次側巻き線の端末の他方と接続される。この場合、図内のリーケージインダクタ130は、トランス60の漏れインダクタンスであって、共振用インダクタとして利用される。
【0070】
保護回路Eと保護回路Fは、それぞれ一つのダイオードと、一つのツェナーダイオードを備え、互いのカソード端子同士が直列接続される。保護回路Eについては、ダイオードのアノード端子が接続点Bに接続され、ツェナーダイオードのアノード端子が入力端子INの正極側に接続される。保護回路Fについては、ツェナーダイオードのアノード端子が接続点Bに接続され、ダイオードのアノード端子が入力端子INの負極側に接続される。保護回路Eと保護回路Fの作用、効果は
図5(A)と同様なので省略する。
【0071】
図6(A)で示す第五実施形態に係るスイッチング電源装置1は、スイッチング回路としてハーフブリッジを備えたLLCコンバータである。スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2を直列接続する接続点Hは、トランス60の一次側巻き線の端末の一方に接続される。リーケージインダクタ130と、共振用コンデンサ54は直列に接続され、リーケージインダクタ130と共振用コンデンサ54を接続する接続点Bに保護回路Eと保護回路Fが接続される。保護回路Eと保護回路Fは、
図5(B)と同様の構成を有する電圧クランプ回路であり、共振用コンデンサ54の一端の電位をクランプする。
【0072】
図6(B)で示す第六実施形態に係るスイッチング電源装置1は、スイッチング回路としてハーフブリッジを備えたLLCコンバータである。スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2を直列接続する接続点Hは、共振用コンデンサ54、及び、リーケージインダクタ130を介してトランス60の一次側巻き線の端末の一方に接続される。リーケージインダクタ130と、共振用コンデンサ54は直列に接続され、リーケージインダクタ130と共振用コンデンサ54を接続する接続点Bに保護回路Eと保護回路Fが接続される。保護回路Eと保護回路Fは、
図5(B)と同様の構成を有する電圧クランプ回路であり、共振用コンデンサ54の一端の電位をクランプする。
【0073】
図6(C)で示す第七実施形態に係るスイッチング電源装置1は、スイッチング回路としてハーフブリッジを備えたLLCコンバータである。スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2を直列接続する接続点Hは、共振用コンデンサ54、及び、インダクタ52を介してトランス60の一次側巻き線の端末の一方に接続される。共振用コンデンサ54と共振用インダクタ52を接続する接続点Bに保護回路Eと保護回路Fが接続される。保護回路Eと保護回路Fは、
図5(B)と同様の構成を有する電圧クランプ回路であり、共振用コンデンサ54の一端の電位をクランプする。
【0074】
図6(A)〜
図6(C)いずれの場合も、保護回路E、保護回路Fを設けることにより、接続点Bの電位V(B)を、−V(ZD)≦V(B)≦V(A)+V(ZD)の範囲内に制限する(ダイオード120の降下電圧がV(ZD)よりも十分小さいと仮定した)。このように共振用コンデンサ54の一端の電位をクランプすることで、共振用コンデンサ54に係る電圧を制限し、回路内を流れる電流を抑制する効果を奏する。
【0075】
なお、
図6(A)、
図6(B)において、図内のリーケージインダクタ130は、トランス60の漏れインダクタンスを共振用インダクタとして利用するものを表す。
【0076】
図7(A)で示す第八実施形態は、スイッチング回路としてフルブリッジを備えたLLCコンバータである。第三スイッチ素子Q3と第四スイッチ素子Q4を接続する接続点Iは、トランス60の一次側巻き線の端末の一方に接続され、第一スイッチ素子Q1と第二スイッチ素子Q2を接続するHは、共振用インダクタ52、共振用コンデンサ54、リーケージインダクタ130を介してトランス60の一次側巻き線の端末の他方に接続される。共振用インダクタ52と共振用コンデンサ54を直列接続する接続点Bに保護回路Eと保護回路Fが接続される。保護回路Eと保護回路Fは、
図5(B)と同様の構成を有する電圧クランプ回路であり、共振用インダクタ52の一端である接続点Bの電位をクランプする。
【0077】
すなわち、保護回路E、保護回路Fを設けることにより、接続点Bの電位V(B)は、−V(ZD)≦V(B)≦V(A)+V(ZD)の範囲内に制限される(ダイオード120の降下電圧がV(ZD)よりも十分小さいと仮定した)。これらの保護回路の接続が共振用コンデンサ54ではなく、共振用インダクタ52の一端の電位を制限するという点で上述の
図5及び
図6の場合と異なる。
【0078】
すなわち共振用コンデンサ54に係る電圧を制限するのではなく、共振用インダクタ52と、共振用コンデンサ54と、リーケージインダクタ130と、トランス60の一次側巻き線による励磁インダクタの直列共振の共振モード自体に変化を与える。この構成により、一次側回路25を流れる電流を抑制することができる。
【0079】
具体的には、二次側回路70の短絡等を原因として、平滑コンデンサから、一次側回路25に大電流が流れようとしても、保護回路Eと保護回路Fによって、接続点Bの電位V(B)が、−V(ZD)≦V(B)≦V(A)+V(ZD)の範囲内に制限されるため、インダクタ52は、磁場によるエネルギー蓄積を一定以上することがなくなる。つまり直列共振の共振周波数は、主に共振用コンデンサ54とリーケージインダクタ130によって決まるようになり、共振周波数が上がる。言い換えれば、インダクタ52が電圧源として動作するようになるため、インダクタ52のインダクタンス成分が無くなり、共振が共振用コンデンサ54とリーケージインダクタ130の共振周波数でおこなわれるようになるわけである。共振周波数が上がると、伝達効率が低下するので、一次側回路25を流れる電流を抑制することができる。
【0080】
図7(B)で示す第九実施形態に係るスイッチング電源装置1は、スイッチング回路としてハーフブリッジを備えたLLCコンバータである。スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2を直列接続する接続点Hは、インダクタ52、共振用コンデンサ54、リーケージインダクタ130を介してトランス60の一次側巻き線の端末の一方に接続される。共振用インダクタ52と共振用コンデンサ54を接続する接続点Bに、保護回路Eと保護回路Fが接続される。保護回路Eと保護回路Fは、
図5(B)と同様の構成を有する電圧クランプ回路であり、共振用インダクタ52の一端の電位をクランプする。
【0081】
図8(A)で示す第十実施形態に係るスイッチング電源装置1は、スイッチング回路としてハーフブリッジを備えたLLCコンバータである。スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2を直列接続する接続点Hは、インダクタ52、共振用コンデンサ54、リーケージインダクタ130を介してトランス60の一次側巻き線の端末の一方に接続される。共振用インダクタ52と共振用コンデンサ54を接続する接続点Bに、保護回路Eと保護回路Fが接続される。保護回路Eと保護回路Fは、
図5(B)と同様の構成を有する電圧クランプ回路であり、共振用インダクタ52の一端の電位をクランプする。
【0082】
図8(B)で示す第十一実施形態に係るスイッチング電源装置1は、スイッチング回路としてハーフブリッジを備えたLLCコンバータである。スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2を直列接続する接続点Hは、インダクタ52、共振用コンデンサ54、リーケージインダクタ130を介してトランス60の一次側巻き線の端末の一方に接続される。共振用インダクタ52と共振用コンデンサ54を接続する接続点Bに、保護回路Eと保護回路Fが接続される。保護回路Eと保護回路Fは、
図5(B)と同様の構成を有する電圧クランプ回路であり、共振用インダクタ52の一端の電位をクランプする。
【0083】
図7(B)、
図8(A)、
図8(B)のいずれの場合においても、保護回路Eと保護回路Fが接続されることによって、接続点Bの電位V(B)は、−V(ZD)≦V(B)≦V(A)+V(ZD)の範囲内に制限される(ダイオード120の降下電圧がV(ZD)よりも十分小さいと仮定した)。この構成により、
図7(A)と同様な理由で一次側回路25を流れる電流を抑制することができる。
【0084】
また
図8(C)で示す第十二実施形態に係るスイッチング電源1は、スイッチング回路としてフルブリッジを備えたLLCコンバータである。保護回路Gがインダクタ52に対して並列に接続させて設けられる。保護回路Gは、少なくとも二つのツェナーダイオードを備え、カソードコモンで直列に接続される。このような構成の保護回路Gを設けると、インダクタ52に印加される電圧がツェナーダイオード100の降伏電圧でクランプされる。この場合も、インダクタ52が電圧源として動作するようになるため、インダクタ52はインダクタンスとしての性質を失い、共振が共振用コンデンサ54とリーケージインダクタ130の共振周波数でおこなわれるようになる。共振周波数が上がると、伝達効率が低下するので、一次側回路25を流れる電流を抑制することができる。
【0085】
なお、二つのツェナーダイオード100は、カソードコモンで接続した形態を示したが、アノードコモンで直列に接続しても良い。また
図8(C)では、スイッチング回路としてフルブリッジを備えたLLCコンバータを示したが、ハーフブリッジを備えていても良い。
【0086】
なお
図5〜
図8で示した実施形態については、一次側回路25にコンバータを一つ設ける態様について説明したが、図示したコンバータを後段のコンバータとして、その上流側に前段のコンバータを備えた多段のコンバータで一次側回路25を構成しても良い。その場合、第一実施形態と同様に、制御部80が電流検出回路45で検出した電流値に基づいて、前段のコンバータのスイッチ素子を制御し、前段のコンバータの出力電圧を低減させる処理を行うことが望ましい。
【0087】
尚、本発明のスイッチング電源装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。