(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、排気後処理装置の昇温を促進させることができれば、排気後処理装置の性能を早期に発揮させることができる。しかしながら、上述したような従来の技術では、排気後処理装置の昇温を促進させることは困難である。
【0006】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の排気後処理装置の昇温を促進させることができる内燃機関の制御装置、及び内燃機関システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関の排気後処理装置の暖機運転の時において、
排気行程で開閉させる前記内燃機関の排気バルブを
上死点の前に閉じ終え、前記排気行程の次の吸気行程で開閉させる前記内燃機関の吸気バルブを前記上死点よりも後に開き始め、さらに、前記上死点の前に閉じた前記排気バルブを前記上死点以後から前記吸気バルブが開き始めるまでの間に再び開閉させる制御処理を実行する吸排気バルブ開閉制御部を備えている。
【0008】
本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、内燃機関の排気後処理装置の暖機運転時において、排気バルブが排気行程で1回開閉した後に再び開閉してから吸気バルブが開閉するので、排気行程における1回目の排気バルブの開閉後に筒内に残留したガス(残留ガス)が吸気行程における吸気バルブの開弁によって吸気通路側に吹き返されることを抑制できるとともに、この残留ガスを2回目の排気バルブの開弁によって、排気通路側へ
排出することができる。この排気通路側へ
排出された残留ガスの分だけ、排気流量を増大させることができるので、排気後処理装置に流入する排気熱量を増大させることができる。これにより、排気後処理装置の昇温を促進させることができる。
【0009】
また上記構成において、
前記吸排気バルブ開閉制御部は、前記上死点から開く前記排気バルブの最大の開口面積を排気行程で開閉させる前記排気バルブの最大の開口面積よりも小さくする構成とすることができる。
【0010】
また上記構成は、前記排気後処理装置の暖機運転よりも前に実行される前記内燃機関の暖機運転の時において、
排気行程で開閉させる前記排気バルブの開弁時期及び閉弁時期を予め設定された基準値よりも進角させる制御処理を実行する排気バルブ進角制御部をさらに備え
、前記内燃機関の暖機運転の時において、排気行程で開閉する前記排気バルブが上死点の前に閉じ終わってから前記吸気バルブが開き始める構成とすることができる。
【0011】
この構成によれば、内燃機関の暖機運転時において排気バルブの開弁時期及び閉弁時期が進角することで、内燃機関の筒内に排気を多く残留させることができる(すなわち、残留ガスを増加させることができる)。これにより、この増加した残留ガスを排気行程で一度圧縮して高温・高圧状態にして残留ガスの内部エネルギを増加させることができ、この内部エネルギの増加した残留ガスを次の吸気行程で一旦、吸気側に放出させることができる。この結果、この内部エネルギの増加した残留ガスと、新気とを吸気行程で筒内に導入させることができるので、筒内に導入される吸気の温度を上昇させることができる。これにより、筒内のガスから内燃機関に伝達する熱量が増加するので、内燃機関の昇温を促進させて、内燃機関の暖機運転時間を短縮することができる。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明に係る内燃機関システムは、内燃機関と、前記内燃機関の排気通路に配置された排気後処理装置と、前記内燃機関の制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記内燃機関の前記排気後処理装置の暖機運転の時において、
排気行程で開閉させる前記内燃機関の排気バルブを
上死点の前に閉じ終え、前記排気行程の次の吸気行程で開閉させる前記内燃機関の吸気バルブを前記上死点よりも後に開き始め、さらに、前記上死点の前に閉じた前記排気バルブを前記上死点以後から前記吸気バルブが開き始めるまでの間で再び開閉させる制御処理を実行する吸排気バルブ開閉制御部を有している。
【0013】
本発明に係る内燃機関システムによれば、内燃機関の排気後処理装置の暖機運転時において、内燃機関の排気バルブが排気行程で1回開閉した後に、再び開閉し、次いで内燃機関の吸気バルブが開閉するので、上述したのと同様の理由により、排気後処理装置に流入する排気熱量を増大させることができる。これにより、排気後処理装置の昇温を促進させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る内燃機関の制御装置及び内燃機関システムによれば、排気後処理装置の昇温を促進させることができる。また、このように排気後処理装置の昇温を促進させることができるので、排気後処理装置の性能を早期に発揮させることができる。また、排気後処理装置の暖機運転時間を短縮することもできる。これにより、内燃機関の燃費を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る内燃機関10の制御装置80、及びこの制御装置80を備える内燃機関システム1について図面を参照しつつ説明する。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように実際の製品から寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際の製品の比率と一致しているとは限らない。
【0017】
図1(a)は、本実施形態に係る内燃機関システム1の全体構成を模式的に示す概略図である。この内燃機関システム1が搭載されている車両の具体的な種類は特に限定されるものではないが、本実施形態においてはバスやトラック等の大型車両を用いる。
【0018】
本実施形態に係る内燃機関システム1は、内燃機関10、吸気通路(吸気マニホールド20、吸気マニホールド20の上流側端部に接続した吸気管21)、排気通路(排気マニホールド30、排気マニホールド30の下流側端部に接続した排気管31)、EGRシステム(EGR通路40、EGRバルブ41及びEGRクーラ42)、排気浄化装置50、排気後処理装置60、可変動弁機構70、及び制御装置80を備えている。
【0019】
図1(b)は内燃機関10の構成を説明するための概略図である。内燃機関10は、シリンダブロック11と、シリンダブロック11の上部に配置されたシリンダヘッド12と、シリンダブロック11に形成された気筒13に配置されたピストン14とを備えている。シリンダヘッド12には、吸気が通過する吸気ポート15と、排気が通過する排気ポート16とが設けられている。また内燃機関10は、吸気ポート15を開閉する吸気バルブ17と、排気ポート16を開閉する排気バルブ18とを備えるとともに、気筒13に燃料を直接噴射する燃料噴射弁19を備えている。
【0020】
なお、内燃機関10には、内燃機関10を冷却するための冷却水が通過する冷却通路(図示せず)が設けられている。この冷却通路の具体的構成は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る冷却通路は、シリンダブロック11の各気筒13の周辺部と、シリンダヘッド12の吸気ポート15及び排気ポート16の周辺部とに設けられている。冷却水は、ウォーターポンプによって圧送されて、この冷却通路を流動しながら内燃機関10を冷却する。
【0021】
なお、内燃機関10の種類は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例としてディーゼル機関を用いている。
【0022】
図1(a)に示すように、EGR通路40は、排気マニホールド30と吸気マニホールド20とを連通しており、排気通路の排気の一部を吸気通路へ導くための通路である。EGR通路40を通過する排気をEGRガスと称する。EGRバルブ41及びEGRクーラ42はEGR通路40の途中に接続されている。EGRバルブ41は制御装置80の指示を受けて開閉作動することで、EGRガスの流量を調整する。EGRクーラ42は制御装置80の指示を受けて作動することで、EGRガスを冷却する。
【0023】
排気浄化装置50は、排気管31に配置されている。本実施形態に係る排気浄化装置50は、ディーゼル酸化触媒51と、排気に含まれる煤等のPMを捕集可能なフィルター52とを備えている。フィルター52はディーゼル酸化触媒51よりも下流側に配置されている。本実施形態では、フィルター52の一例として、ディーゼルパティキュレートフィルターを用いている。ディーゼル酸化触媒51は、排気が通過可能なフィルターに、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属触媒が担持された構成を有している。このディーゼル酸化触媒51は、その貴金属触媒の酸化触媒作用によって、排気中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO
2)に変化させる酸化反応を促進させる。排気温度が所定温度以上になった場合、このディーゼル酸化触媒51において生成された二酸化窒素によって、フィルター52のPMを燃焼させて、二酸化炭素(CO
2)として排出させることができる。
【0024】
排気後処理装置60は、排気浄化装置50よりも下流側の排気管31に配置されている。本実施形態においては、排気後処理装置60の一例として、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)装置を用いている。この尿素SCR装置は、尿素水供給部61、尿素SCR触媒62、及びアンモニアスリップ触媒63を備えている。尿素水供給部61は、尿素SCR触媒62よりも上流側、且つフィルター52よりも下流側の排気管31に配置されており、制御装置80の指示を受けて排気中に尿素水を供給する尿素水噴射弁を備えている。
【0025】
尿素SCR触媒62は、アンモニア(NH
3)を用いて排気中のNOxを選択的に還元させる触媒である。尿素SCR触媒62の具体的な種類は特に限定されるものではなく、例えば、バナジウム、モリブデン、タングステン等の卑金属酸化物や、ゼオライト等、公知のNOx選択還元触媒を用いることができる。アンモニアスリップ触媒63は、尿素SCR触媒62よりも下流側に配置されている。このアンモニアスリップ触媒63は、尿素SCR触媒62を通過したアンモニアを酸化させる酸化触媒である。
【0026】
尿素水供給部61から尿素水が排気中に供給された場合、尿素水中の尿素は加水分解され、その結果、アンモニアが生成される。このアンモニアは、尿素SCR触媒62の触媒作用の下で、NOxを還元させる。この結果、窒素及び水が生成される。このようにして、排気後処理装置60としての尿素SCR装置は、排気中のNOxの低減を図っている。また本実施形態によれば、アンモニアスリップ触媒63を備えているので、アンモニアが内燃機関システム1の外部に排出されることが効果的に抑制されている。
【0027】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、可変動弁機構70は、制御装置80によって制御されて、各々の気筒13に対応した吸気バルブ17及び排気バルブ18の開弁時期及び閉弁時期を変更可能な機構である。この可変動弁機構70の構成自体は、公知の可変動弁機構を用いることができるので、詳細な説明は省略する。
【0028】
制御装置80は、内燃機関10の燃料噴射弁19、EGRバルブ41、EGRクーラ42、尿素水供給部61、及び可変動弁機構70を制御することで、内燃機関システム1の動作を総合的に制御する。このような制御装置80は、各種の制御処理を実行する制御部としての機能を有するCPU81と、CPU81の動作に必要な各種情報やプログラム等を記憶する記憶部としての機能を有するROM82、RAM83等と、を有するマイクロコンピュータを備えている。
【0029】
(内燃機関の暖機運転時の動作)
続いて、内燃機関10の暖機運転時における制御装置80の制御処理について説明する。
図2は、内燃機関10の暖機運転時において制御装置80が実行するフローチャートの一例である。制御装置80は、
図2のフローチャートを内燃機関10の始動後において所定周期で繰り返し実行する。なお、
図2の各ステップは制御装置80の具体的にはCPU81が実行する。
【0030】
ステップS10において、制御装置80は、内燃機関10が暖機運転時の状態であるか否かを判定する。ここで、本実施形態に係る制御装置80は、内燃機関10の始動開始(クランキング開始)から内燃機関10の温度が所定温度以上になるまでの間、内燃機関10の暖機運転を実行する。なお、本実施形態において、この内燃機関10の暖機運転は、後述する排気後処理装置60の暖機運転よりも前に実行されるものである。この内燃機関10の暖機運転において、制御装置80は、内燃機関10の回転数(クランクシャフトの回転数)がアイドル回転数よりも若干高い所定回転数になるように、内燃機関10の特に燃料噴射弁19を制御する。そして、ステップS10において制御装置80は、内燃機関10の運転状態が暖機運転実行中の状態であるか否かを判定し、暖機運転実行中の状態であると判定した場合にYESと判定する。なお、制御装置80は、ステップS10をYESと判定されるまで繰り返し実行する。
【0031】
なお、本実施形態においては、上述した内燃機関10の温度の一例として、内燃機関10の冷却水の温度を用いる。具体的には、本実施形態に係る内燃機関システム1は、内燃機関10の冷却水の温度を検出する温度センサ(図示せず)を備えており、制御装置80は、この温度センサの検出結果を取得することで、内燃機関10の冷却水の温度を取得している。但し、内燃機関10の温度は、このような冷却水の温度に限定されるものではなく、例えば内燃機関10のシリンダブロック11の温度やシリンダヘッド12の温度等を内燃機関10の温度の代表例として用いてもよい。
【0032】
ステップS10でYESと判定された場合(すなわち、内燃機関10が暖機運転時の場合)、制御装置80は排気バルブ18の開弁時期及び閉弁時期を進角させる排気バルブ進角制御を実行する(ステップS11)。具体的には制御装置80は、可変動弁機構70を制御することで、排気バルブ18の開弁時期及び閉弁時期をそれぞれ予め設定された基準値よりも所定の進角量だけ進角させる。なお、本実施形態では、この基準値の一例として、内燃機関10の通常時における排気バルブ18の開弁時期及び閉弁時期を用いている。
【0033】
このステップS11に係る排気バルブ進角制御について、図を用いて説明すると次のようになる。
図3は、通常時及び排気バルブ進角制御の実行後における吸気バルブ17及び排気バルブ18のバルブ開口面積の変化を示す模式図である。
図3の縦軸は吸気バルブ17又は排気バルブ18の開口面積を示し、横軸はクランク角を示している。なお、
図3の縦軸において、上方に向かうほど吸気バルブ17又は排気バルブ18のバルブリフト量が増大して、バルブ開口面積は大きくなる。曲線100は、通常時の場合における排気バルブ18のバルブ開口面積の変化を示している。曲線101は、通常時及び排気バルブ進角制御の実行後における吸気バルブ17のバルブ開口面積の変化を示している。曲線102は、排気バルブ進角制御の実行後における排気バルブ18のバルブ開口面積の変化を示している。
【0034】
可変動弁機構70は、ステップS11に係る排気バルブ進角制御において、曲線100に示す排気バルブ18の開弁時期及び閉弁時期を同じ角度(所定の進角量)だけ早める。この結果、排気バルブ進角制御の実行後における排気バルブ18の開口面積は曲線100から曲線102に変化する。なお、この排気バルブ進角制御が実行されても、曲線101に示すように、吸気バルブ17の開弁時期及び閉弁時期は変化しない。
【0035】
なお、制御装置80がステップS11に係る排気バルブ進角制御を実行した後に、排気バルブ18の開弁時期及び閉弁時期を通常時の基準値に戻す時期は、内燃機関10の温度が所定温度以上になった後以降(すなわち、内燃機関10の暖機運転が終了した後以降)であれば、特に限定されるものではない。但し、本実施形態に係る制御装置80は、一例として、後述する排気後処理装置60の暖機運転が終了するまで、排気バルブ18の開弁時期及び閉弁時期を進角させたままにしておくこととする。
【0036】
なお、本実施形態においてステップS11を実行する制御装置80のCPU81は、内燃機関10の暖機運転の時において、排気バルブ18の開弁時期及び閉弁時期を予め設定された基準値よりも進角させる制御処理を実行する排気バルブ進角制御部としての機能を
有する部材に相当する。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、内燃機関10の暖機運転時に排気バルブ進角制御が実行されることで、排気バルブ18の開弁時期及び閉弁時期が進角されるので、内燃機関10の筒内(気筒13内)に排気を多く残留させることができる(すなわち、残留ガスを増加させることができる)。これにより、この増加した残留ガスを排気行程で一度圧縮して高温・高圧状態にして、残留ガスの内部エネルギを増加させることができる。そして、この内部エネルギの増加した残留ガスを、次の吸気行程で、一旦、吸気側(具体的には吸気マニホールド20)に放出させることができる。この結果、この内部エネルギの増加した残留ガスと、新気とを吸気行程で筒内に導入させることができるので、筒内に導入される吸気の温度を上昇させることができる。
【0038】
このように筒内温度が上昇することで、筒内のガスから内燃機関10に伝達する熱量(具体的には、筒内のガスから内燃機関10の冷却水に伝達する熱量)を増加させることができる。この結果、内燃機関10の暖機を促進させることができ、これにより、内燃機関10の暖機運転時間の短縮を図ることができる。また、本実施形態によれば、このように内燃機関10の暖機運転時間の短縮を図ることができるので、内燃機関10の燃費を向上させることができる。
【0039】
(排気後処理装置の暖機運転時の動作)
続いて、排気後処理装置60の暖機運転時における制御装置80の制御処理について説明する。まず、本実施形態に係る内燃機関システム1は、前述した内燃機関10の暖機運転の後に、排気後処理装置60の暖機運転を行う。この排気後処理装置60の暖機運転時において、制御装置80は、内燃機関10の回転数をアイドル回転数よりも若干高い所定回転数に制御する。なお、この排気後処理装置60の暖機運転時における内燃機関10の回転数は、内燃機関10の暖機運転時における回転数と同じであってもよく、異なる値であってもよい。
【0040】
なお制御装置80が排気後処理装置60の暖機運転を終了させる時期は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、一例として、排気後処理装置60の尿素SCR触媒62の温度が予め設定された所定温度以上の温度になった場合に、この排気後処理装置60の暖機運転を終了させる。
【0041】
そして、本実施形態に係る制御装置80は、この排気後処理装置60の暖機運転時において、排気バルブ18が排気行程で1回開閉した後に、再び開閉し(これを、排気バルブ2回開閉制御と称する)、次いで吸気バルブ17が開閉するように、可変動弁機構70を制御する。この制御処理の詳細について、フローチャート等を用いて説明すると次のようになる。
【0042】
図4は、排気後処理装置60の暖機運転時において制御装置80が実行するフローチャートの一例である。
図5は、通常時及び排気後処理装置60の暖機運転時における吸気バルブ17及び排気バルブ18のバルブ開口面積の変化を示す模式図である。
図5の縦軸は吸気バルブ17又は排気バルブ18の開口面積を示し、横軸はクランク角を示している。曲線100は通常時における排気バルブ18のバルブ開口面積の変化を示し、曲線101は通常時における吸気バルブ17のバルブ開口面積の変化を示している。曲線200は排気後処理装置60の暖機運転時における1回目の排気バルブ18の開閉時のバルブ開口面積の変化を示し、曲線201は2回目の排気バルブ18の開閉時のバルブ開口面積の変化を示している。曲線202は排気後処理装置60の暖機運転時における吸気バルブ17のバルブ開口面積の変化を示している。
【0043】
まず、
図4を参照して、制御装置80は、排気後処理装置60の暖機運転時において
図4のフローチャートを所定周期で繰り返し実行する。ステップS20において、制御装置80は、排気後処理装置60が暖機運転時の状態であるか否かを判定する。具体的には制御装置80は、前述した内燃機関10の暖機運転が実行されて、内燃機関10の温度が所定温度以上になったと判定した場合に、排気後処理装置60の暖機運転を開始させる。そして、制御装置80は、この排気後処理装置60の暖機運転が開始された場合に、排気後処理装置60が暖機運転時の状態である(YES)と判定する。なお、ステップS20はYESと判定されるまで繰り返し実行される。
【0044】
ステップS20でYESと判定された場合、制御装置80はステップS21を実行する。このステップS21において制御装置80は、排気バルブ18を排気行程で1回開閉させた後に、再び開閉させる(すなわち、排気バルブ2回開閉制御を実行する)。この場合、
図5に示すように、排気バルブ18は、排気行程において曲線200に示すように1回開閉し、次いで、曲線201に示すように2回目の開閉を行う。
【0045】
なお、本実施形態において、曲線201に示す排気バルブ18の2回目の開閉時におけるバルブ開口面積の最大値(又はバルブリフト量の最大値)は、曲線200に示す1回目の開閉時におけるバルブ開口面積の最大値よりも小さく設定されている。具体的には本実施形態に係る排気バルブ18の2回目の開閉時のバルブ開口面積の最大値は、1回目の開閉時のバルブ開口面積の最大値の半分以下に設定されている。
【0046】
また、本実施形態において、排気バルブ18の2回目の開弁開始時期は上死点(TDC)になっている。
【0047】
すなわち、本実施形態に係る排気バルブ18は、排気行程における1回目の開閉後の上死点以降において2回目の開閉を行っている。
【0048】
図4を再び参照して、ステップS21の後に制御装置80はステップS22を実行する。このステップS22において制御装置80は、吸気バルブ17を開閉させる。すなわち、
図5に示すように、本実施形態に係る吸気バルブ17は、曲線201に示すような排気バルブ18の2回目の開閉後に、曲線202に示すように吸気行程で開閉している。ステップS22の後に制御装置80はフローチャートの実行を終了する。
【0049】
なお、本実施形態において
図4のステップS21及びステップS22を実行する制御装置80のCPU81は、排気後処理装置60の暖機運転の時において、排気バルブ18を排気行程で1回開閉させた後に、再び開閉させ、次いで、吸気バルブ17を開閉させる制御処理を実行する吸排気バルブ開閉制御部としての機能を有する部材に相当する。
【0050】
以上説明した本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。まず、
図5を参照して、本実施形態によれば、曲線201に示す排気バルブ18の2回目の開閉時において、曲線202に示す吸気バルブ17が閉弁状態になっているので、1回目の排気バルブ18の閉弁後に筒内に残留したガス(残留ガス)が吸気行程における吸気バルブ17の開弁によって吸気通路側に吹き返されることを抑制できるとともに、この残留ガスを排気バルブ18の2回目の開弁によって、排気通路側へ
排出することができる。この排気通路側へ
排出された残留ガスの分だけ、排気流量を増大させることができるので、排気後処理装置60に流入する排気熱量を増大させることができる。これにより、排気の昇温を促進させることができ、排気後処理装置60(特に尿素SCR触媒62及びアンモニアスリップ触媒63)の昇温を促進させることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、このように排気後処理装置60の昇温を促進させることが
できるので、排気後処理装置60の性能を早期に発揮させることができる。また、排気後処理装置60の暖機運転時間の短縮を図ることもできる。これにより、内燃機関10の燃費を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、前述した
図2や
図3で説明したように、内燃機関10の暖機運転時に排気バルブ進角制御が実行されているので、内燃機関10の暖機運転時間の短縮も図られている。
【0053】
但し、本実施形態の構成はこれに限定されるものではなく、例えば本実施形態は、内燃機関10の暖機運転時に排気バルブ進角制御を実行しない構成とすることもできる。この場合、内燃機関システム1は、内燃機関10の暖機運転時に排気バルブ18の開弁時期を通常時のままで維持することになる。この場合においても、排気後処理装置60の暖機運転時に
図4のステップS21に係る排気バルブ2回開閉制御及びステップS22に係る吸気バルブ17の開閉が行われれば、排気後処理装置60の昇温を促進させることは可能である。
【0054】
なお、上述した内燃機関10の暖機運転時の制御処理(
図2)と排気後処理装置60の暖機運転時の制御処理(
図4)による効果について、別の観点から説明すると次のようになる。
図6は、通常時(Aのグラフ)と、内燃機関10の暖機運転時(Bのグラフ)と、排気後処理装置60の暖機運転時(Cのグラフ)とにおける排気熱量を示す図である。
【0055】
本実施形態によれば、内燃機関10の暖機運転時(Bのグラフ)の場合、通常時(Aのグラフ)よりも排気熱量がXだけ増加している。この排気熱量の増加分(X)は、
図2のステップS11に係る排気バルブ進角制御が実行されることにより、吸気行程で高温・高圧状態の残留ガスが一旦、吸気側に放出され、次いで、この高温・高圧状態の残留ガスと新気とが吸気行程で筒内に導入され、これが排気行程で排出されることによって得られる排気熱量の増加分である。この排気熱量の増加によって、内燃機関10の暖機運転時において、内燃機関10が昇温されるとともに、排気後処理装置60も昇温される。
【0056】
また、本実施形態によれば、排気後処理装置60の暖機運転時(Cのグラフ)の場合においても、通常時(Aのグラフ)よりも排気熱量が増加している。この排気熱量の増加分(X)は、
図4のステップS21及びステップS22が実行されることにより、1回目の排気バルブ18の閉弁後における筒内の残留ガスが吸気行程における吸気バルブ17の開弁によって吸気通路側に吹き返されることが抑制されているので、この吸気通路側に吹き返されなかった熱量(X)が、排気行程において排気熱量として増加したものである。この排気熱量の増加によって、排気後処理装置60の暖機運転時に排気後処理装置60の昇温を促進させることができる。
【0057】
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。