特許第6848350号(P6848350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848350
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20210315BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20210315BHJP
   B60B 35/18 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   F16C33/78 Z
   F16C19/18
   B60B35/18 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-214123(P2016-214123)
(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公開番号】特開2018-71716(P2018-71716A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 英将
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−534301(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0178010(US,A1)
【文献】 特開2017−036812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/66
F16C 33/72−33/82
B60B 35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪が取り付けられるフランジ部が外周面よりも車両アウタ側から径方向外側に延びて形成されているハブ軸と、前記ハブ軸の前記外周面よりも径方向外側に設けられている外輪と、前記ハブ軸と前記外輪との間に設けられている複数の転動体と、前記外輪に取り付けられている環状のシール部材と、前記ハブ軸に取り付けられ前記シール部材が滑り接触する環状のスリンガと、を備え、
前記スリンガは、前記ハブ軸の前記外周面に締り嵌めの状態で嵌合している第一の円筒部と、前記フランジ部の車両インナ側の側面に沿って配置されている円板部と、前記第一の円筒部の車両アウタ側の端部と前記円板部の内周端部との間に設けられた環状の中間部と、前記円板部の径方向外側の端部から車両インナ側に延びている第二の円筒部と、を備え、
前記中間部は、
前記第一の円筒部との境界において屈曲され、かつ車両アウタ側ほど大径となるテーパー状の第1傾斜部と、
前記円板部との境界において屈曲され、かつ車両アウタ側ほど大径となるテーパー状の第2傾斜部と、を有し、
前記第1傾斜部における前記第一の円筒部の内周面に対する傾斜角度は、前記第2傾斜部における前記円板部の車両アウタ側の側面に対する傾斜角度よりも大きく設定されている、車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記中間部は、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間に1以上の折れ点を有する、請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、車輪を回転自在に支持するために車輪用軸受装置(ハブユニット)が用いられている。車輪用軸受装置は、車輪が取り付けられるフランジ部を車両アウタ側に有するハブ軸と、このハブ軸の径方向外側に設けられている外輪と、ハブ軸と外輪との間に設けられている複数の転動体(例えば、複数の玉)と、複数の転動体を保持する保持器とを備えている。また、このような車輪用軸受装置では、ハブ軸と外輪との間であって転動体が設けられている軸受内部に、泥水等の異物が軸受外部から浸入するのを防ぐために、密封装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の密封装置として、外輪の内周面の一部にシール部材が取り付けられており、このシール部材のリップをハブ軸の一部に滑り接触させる構成が提案されている。しかし、ハブ軸は、例えば機械構造用炭素鋼からなるため、リップが滑り接触する部分に泥水が付着して錆が発生すると、錆がリップを攻撃してリップの摩耗が促進され、やがて、軸受内部に異物が浸入するおそれがある。そこで、図5に示すように、ハブ軸90に環状のスリンガ99(ステンレス製)を取り付け、シール部材93のリップ94をスリンガ99に滑り接触させることで、リップ94の摩耗を防ぐという対策が講じられているものがある。
【0004】
スリンガ99は、円筒部98と、この円筒部98の車両アウタ側の端部から凹状の曲面部96を介して径方向外側に延びている円板部97とを有している。スリンガ99は、円筒部98がハブ軸90の一部に外嵌することにより、ハブ軸90に取り付けられた状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−95403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記密封装置のスリンガ99は、ハブ軸90の外周面91に対して圧入することで取り付けられるが、この際、スリンガ99の円筒部98が塑性変形してしまい、取り付け後において、ハブ軸90への嵌合力(締め付け力)が低下するおそれがある。この場合、車両の走行に伴ってスリンガ99が車両インナ側(シール部材93側)へ移動し、スリンガ99が転動体92に接触したり、シール部材93のリップ94の潰れ代が増加したりすることで、摩擦抵抗が増加して回転損失が大きくなる。また、リップ94の異常摩耗や発熱による劣化の原因にもなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、車輪用軸受装置において、スリンガをハブ軸に嵌合させるときの塑性変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車輪が取り付けられるフランジ部が外周面よりも車両アウタ側から径方向外側に延びて形成されているハブ軸と、前記ハブ軸の前記外周面よりも径方向外側に設けられている外輪と、前記ハブ軸と前記外輪との間に設けられている複数の転動体と、前記外輪に取り付けられている環状のシール部材と、前記ハブ軸に取り付けられ前記シール部材が滑り接触する環状のスリンガと、を備え、前記スリンガは、前記ハブ軸の前記外周面に締り嵌めの状態で嵌合している円筒部と、前記フランジ部の車両インナ側の側面に沿って配置されている円板部と、前記円筒部の車両アウタ側の端部と前記円板部の内周端部との間に設けられた環状の中間部と、を備え、前記中間部は、前記円筒部との境界において屈曲され、かつ車両アウタ側ほど大径となるテーパー状の第1傾斜部と、前記円板部との境界において屈曲され、かつ車両アウタ側ほど大径となるテーパー状の第2傾斜部と、を有し、前記第1傾斜部における前記円筒部の内周面に対する傾斜角度は、前記第2傾斜部における前記円板部の車両アウタ側の側面に対する傾斜角度よりも大きく設定されている。
【0009】
本発明によれば、スリンガの円筒部と円板部との間の中間部は、円筒部との境界で屈曲されたテーパー状の第1傾斜部と、円板部との境界で屈曲されたテーパー状の第2傾斜部とを有し、第1傾斜部における円筒部の内周面に対する傾斜角度は、第2傾斜部における円板部の車両アウタ側の側面に対する傾斜角度よりも大きく設定されている。
そのため、円筒部をハブ軸の外周面に圧入して嵌合させるときに、第1傾斜部と第2傾斜部との圧縮応力差によってスリンガの剛性差(撓み性)が生じる。これにより、ハブ軸の外周面に対してスリンガの円筒部を嵌合させるときに、円筒部が塑性変形するのを抑制することができる。
【0010】
前記中間部は、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間に1以上の折れ点を有するのが好ましい。この場合、スリンガの中間部は1以上の折れ点を有するので、折れ点が無い場合と比較すると、スリンガの剛性が弱くなって撓み易くなる。その結果、スリンガをハブ軸の外周面に容易に嵌合することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スリンガをハブ軸に嵌合させるときの塑性変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る車輪用軸受装置を示す断面図である。
図2】密封装置を示す拡大断面図である。
図3】スリンガの中間部を示す拡大断面図である。
図4】スリンガの中間部の変形例を示す拡大断面図である。
図5】従来のスリンガ及びその周囲を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車輪用軸受装置の断面図である。この車輪用軸受装置(ハブユニット)10は、例えば自動車の車体側の懸架装置(ナックル)に取り付けられ、車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置10は、ハブ軸11と、外輪12と、転動体13と、保持器14と、密封装置15,17とを備えている。
【0014】
外輪12は、円筒状の部材であり、例えば機械構造用炭素鋼により製造されている。外輪12は、円筒形状である外輪本体51と、この外輪本体51から径方向外側に延びて設けられている固定用のフランジ部52とを有している。このフランジ部52が車体側部材であるナックル(図示せず)に固定されることで、外輪12を含む車輪用軸受装置10はナックルに固定される。
【0015】
車輪用軸受装置10が車体側に固定された状態で、ハブ軸11が有する後述の車輪取り付け用のフランジ部56側が車両の外側となる。つまり、図1の左側(フランジ部56側)が車両アウタ側となり、図1の右側が車両インナ側となる。また、図1の左右方向が車輪用軸受装置10の軸方向となる。
【0016】
外輪12の内周面には、車両アウタ側の外輪軌道面12aと、車両インナ側の外輪軌道面12bとが形成されている。
【0017】
ハブ軸11は、軸本体部55と、車輪取り付け用のフランジ部56と、内輪部材57とを有している。これらは、例えば機械構造用炭素鋼により製造されている。軸本体部55は軸方向に長い軸部材である。フランジ部56は、軸本体部55の外周面よりも車両アウタ側から径方向外側に延びて設けられており、円環形状を有している。フランジ部56には、周方向に沿って複数の穴が形成されており、この穴に、車輪取り付け用のボルト69が取り付けられている。フランジ部56には、図外の車輪の他にブレーキロータが取り付けられる。内輪部材57は、環状の部材であり、軸本体部55の車両インナ側に嵌合して取り付けられている。軸本体部55の車両アウタ側の外周面に軸軌道面11aが形成され、内輪部材57の外周面に内輪軌道面11bが形成されている。
【0018】
車両アウタ側の外輪軌道面12aと軸軌道面11aとが径方向に対向し、車両インナ側の外輪軌道面12bと内輪軌道面11bとが径方向に対向し、車両アウタ側及びインナ側それぞれの軌道面間に転動体13である玉が配置されている。転動体(玉)13は二列設けられており、各列の転動体(玉)13は、環状の保持器14によって保持されている。ハブ軸11と外輪12との間に複数の転動体13が設けられていることで、外輪12は、ハブ軸11(軸本体部55)の径方向外側においてハブ軸11と同心状に設けられた構成となる。
【0019】
車両アウタ側の保持器14は、車両アウタ側に位置する転動体列に含まれる複数の転動体13を、周方向に間隔をあけて保持する。車両インナ側の保持器14は、車両インナ側に位置する転動体列に含まれる複数の転動体13を、周方向に間隔をあけて保持する。保持器14は、例えば樹脂製とすることができる。
【0020】
車両インナ側の密封装置17は、環状のシール部材40と、環状のスリンガ50とによって構成されている。シール部材40は、外輪12(外輪本体51)の内周側であって車両インナ側に嵌合して取り付けられている。スリンガ50は、内輪部材57の外周面に締り嵌めの状態で嵌合して取り付けられている。シール部材40(シール部材40のリップ)が、スリンガ50に滑り接触(摺接)することで、車両インナ側の外部から異物が軸受内部に浸入するのを抑制することができる。軸受内部とは、ハブ軸11と外輪12との間であって、二列の転動体13が設けられている領域である。
【0021】
車両アウタ側の密封装置15は、環状のシール部材20と、環状のスリンガ30とによって構成されている。シール部材20は、外輪12(外輪本体51)の内周側であって車両アウタ側に嵌合して取り付けられている。図2は、密封装置15を示す拡大断面図である。スリンガ30は、軸本体部55の外周面であって車両アウタ側に締り嵌めの状態で嵌合して取り付けられている。シール部材20のリップ21aが、スリンガ30に滑り接触(摺接)することで、車両アウタ側の外部から異物が軸受内部に浸入するのを抑制することができる。
【0022】
シール部材20は、金属製の芯金25と、ゴム製のシール本体26とを有している。芯金25は、外輪12(外輪本体51)の車両アウタ側の端部12cの内周面に締り嵌めの状態で取り付けられている。シール本体26は、芯金25に固定(加硫接着)されており、スリンガ30に滑り接触する複数(図例では二つ)の第一のリップ21aと、軸本体部55に滑り接触する第二のリップ21bとを有している。
【0023】
第一のリップ21aは、スリンガ30との間から泥水等の異物が軸受内部に浸入するのを防ぐ機能を有しており、第二のリップ21bは、主として軸受内部のグリースが外部へ流出するのを防ぐ機能を有している。第一のリップ21aは、スリンガ30に対して軸方向から接触する。第二のリップ21bは、軸本体部55に対して径方向から接触する。
【0024】
図2に示すシール本体26は、外輪12(外輪本体51)の車両アウタ側の端部12cの外周面に締め代を有して接触している第三のリップ22を更に有している。この第三のリップ22は、外輪12と芯金25との間を通って泥水等の異物が軸受内部に浸入するのを防ぐ機能を有している。
【0025】
スリンガ30は、金属製の環状部材であり、本実施形態ではステンレス製(SUS430)である。スリンガ30は、円筒部(第一の円筒部)31、円板部32、及び円筒部31の車両アウタ側の端部と円板部32の内周端部との間に設けられた環状の中間部33を有している。円筒部31は、円筒状の部材であり、軸本体部55における車両アウタ側の一部(29)の外周面28に締り嵌めの状態で嵌合している。
【0026】
円板部32は、円環状の平板部材であり、円筒部31の車両アウタ側の端部から中間部33を介して径方向外側に延びている。円板部32は、フランジ部56の車両インナ側の側面56aに沿って配置され、当該側面56aに当接している。なお、前記側面56aは、車輪用軸受装置10の軸線に対して直角に形成されている。
【0027】
スリンガ30は、更に、円板部32の径方向外側の端部32aから車両インナ側に延びている第二の円筒部35を有している。この第二の円筒部35は、シール部材20の第三のリップ22の径方向外側に位置している。第二の円筒部35と第三のリップ22との間にラビリンス隙間が形成されており、このラビリンス隙間は、第一のリップ21aとスリンガ30との滑り接触部分に、外部から泥水等の異物が浸入するのを抑制する機能を有している。
【0028】
以上のように、この車輪用軸受装置10では、外輪12の車両アウタ側の内周側の一部(端部12c)に取り付けられている環状のシール部材20と、ハブ軸11の車両アウタ側の外周側の一部(29)に取り付けられている環状のスリンガ30とを備えており、シール部材20(リップ21a)がスリンガ30に滑り接触する。スリンガ30は、ハブ軸11の車両アウタ側の外周側の一部(29)に締り嵌めの状態で嵌合して取り付けられている。ハブ軸11のうち、スリンガ30(円筒部31)が密着して嵌合することで取り付けられている部分(前記一部)を「取り付け部29」と呼ぶ。取り付け部29の外周面28は、ハブ軸11(車輪用軸受装置10)の軸線を中心線とする円筒面からなる。
【0029】
図3は、スリンガ30の中間部33を示す拡大断面図である。中間部33は、取り付け部29の外周面28とフランジ部56の側面56aとの間に形成された凹アール形状の曲面58に対応して配置されている。そして、中間部33はシール部材20(図2参照)が直接当接しない領域とされている。本実施形態の中間部33は、円筒部31との境界において屈曲して形成されたテーパー状の第1傾斜部36と、円板部32との境界において屈曲して形成されたテーパー状の第2傾斜部37とを有している。
【0030】
第1傾斜部36は、車両インナ側から車両アウタ側に向かうに従って大径となるように傾斜しており、円筒部31の内周面に対して所定の傾斜角度θ1で傾斜している。第2傾斜部37も、車両インナ側から車両アウタ側に向かうに従って大径となるように傾斜しており、円板部32の車両アウタ側の側面に対して所定の傾斜角度θ2で傾斜している。第1傾斜部36の傾斜角度θ1は、第2傾斜部37の傾斜角度θ2よりも大きく設定されている。本実施形態では、傾斜角度θ1は30°に設定され、傾斜角度θ2は20°に設定されている。
【0031】
第1傾斜部36と第2傾斜部37との境界には屈曲部38が一体に形成されている。したがって、本実施形態の中間部33は、第1傾斜部36と第2傾斜部37との間に1つの折れ点である屈曲部38を有している。
【0032】
以上、本実施形態の車輪用軸受装置10によれば、スリンガ30の円筒部31と円板部32との間の中間部33は、円筒部31との境界で屈曲されたテーパー状の第1傾斜部36と、円板部32との境界で屈曲されたテーパー状の第2傾斜部37とを有する。そして、第1傾斜部36における円筒部31の内周面に対する傾斜角度θ1は、第2傾斜部37における円板部32の車両アウタ側の側面に対する傾斜角度θ2よりも大きく設定されている。
【0033】
そのため、円筒部31を取り付け部29の外周面28に圧入して嵌合させるときに、第1傾斜部36と第2傾斜部37との圧縮応力差によってスリンガ30の剛性差(撓み性)が生じる。これにより、ハブ軸11の取り付け部29の外周面28に対してスリンガ30の円筒部31を嵌合させるときに、円筒部31が塑性変形するのを抑制することができる。なお、前記傾斜角度θ1よりも前記傾斜角度θ2を大きく設定した場合、円筒部30を取り付け部29の外周面28に圧入して嵌合させるときに、スリンガ30が突っ張って前記圧縮応力差が生じないため、スリンガ30の剛性差を得ることができない。
【0034】
また、スリンガ30の中間部33は、第1傾斜部36と第2傾斜部37との間に折れ点(屈曲部)38を有するので、折れ点が無い場合と比較すると、スリンガ30の剛性が弱くなって撓み易くなる。その結果、スリンガ30をハブ軸11の前記外周面28に容易に嵌合することができる。
【0035】
図4は、スリンガ30の中間部33の変形例を示す拡大断面図である。この中間部33は、第1傾斜部36と第2傾斜部37との間に折れ点(屈曲部)を有していない。すなわち、本変形例では、第1傾斜部36と第2傾斜部37とが直線状に連続して傾斜している。そして、本変形例においても、第1傾斜部36の傾斜角度θ1は、第2傾斜部37の傾斜角度θ2よりも大きく設定されている。図例では、傾斜角度θ1は55°に設定され、傾斜角度θ2は35°に設定されている。このため、上記実施形態と同様に、ハブ軸11の軸本体部55の外周面28に対してスリンガ30の円筒部31を嵌合させるときに、円筒部31が塑性変形するのを抑制することができる。
【0036】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の車輪用軸受装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
例えば、本発明の車輪用軸受装置は、上記実施形態で示すハブユニットに限らず、他の形態のハブユニットにも適用することができる。例えば、転動体として玉ではなく円すいころを用いたハブユニットにも適用することができる。
【0037】
また、図2に示すスリンガ30は径方向外側に第二の円筒部35を有しているが、この円筒部35は省略されてもよいし、他の形状であってもよい。また、シール部材20は図示した形状以外であってもよい。また、第1及び第2傾斜部36,37の傾斜角度θ1,θ2は、θ1>θ2であれば、上記実施形態に限定されるものではない。また、スリンガ30の中間部33は、2つ以上の折れ点と3つ以上の傾斜部とを有していてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10:車輪用軸受装置、11:ハブ軸、12:外輪、13:転動体、20:シール部材、30:スリンガ、31:円筒部、32:円板部、33:中間部、36:第1傾斜部、37:第2傾斜部、38:屈曲部(折れ点)、56:フランジ部、56b:曲面、θ1:第1傾斜部の傾斜角度、θ2:第2傾斜部の傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5