特許第6848368号(P6848368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6848368水処理プロセスの設計装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848368
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】水処理プロセスの設計装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20210315BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20210315BHJP
   G06F 30/18 20200101ALI20210315BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20210315BHJP
【FI】
   C02F1/00 D
   G06F17/50 636L
   G06F17/50 608G
   G06F17/50 680Z
   G06F17/50 650Z
   G06F17/50 602A
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-219878(P2016-219878)
(22)【出願日】2016年11月10日
(65)【公開番号】特開2018-75539(P2018-75539A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】堀井 重希
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−188457(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/055924(WO,A1)
【文献】 特開2013−220389(JP,A)
【文献】 堀井重希,佐々木友野,水処理プロセスシミュレータ,学会誌「EICA」,2012年,第17巻,第1号,41-44頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
G06Q 50/00
G06F 17/00
G06F 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水処理ユニット、及び水処理ユニット間を接続するストリームを含む水処理フローを表示装置に表示された設計画面に描画する描画部と、
前記描画部により描画された水処理フローを複数ページに表示する表示処理部と、
各ページに表示された水処理フローにおける物質収支及び熱収支を計算する収支計算部と、
複数のページに表示される水処理フローで共通する設計パラメータの値を一括して設定するパラメータ設定部と、
を備え
前記表示処理部は、前記表示装置の第1表示領域に前記複数ページを切り替え可能に表示し、第2表示領域に前記複数ページの水処理フローで共通する設計パラメータの一覧を表示し、
前記パラメータ設定部は、前記第2表示領域に表示された設計パラメータの一覧を介して、設計パラメータの値の一括設定を受け付けることを特徴とする水処理プロセスの設計装置。
【請求項2】
請求項1において、前記描画部は、第1水処理フローが描画された第1ページを複製した第2ページ上で、該第1水処理フローの構成の一部を変更して第2水処理フローを作成する機能を有することを特徴とする水処理プロセスの設計装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、各ページに表示された水処理フローのイニシャルコスト及び/又はランニングコストを計算するコスト計算部をさらに備えることを特徴とする水処理プロセスの設計装置。
【請求項4】
請求項3において、前記表示処理部は、前記コスト計算部による計算結果を別ページに表示することを特徴とする水処理プロセスの設計装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記第1表示領域のページを切り替えても、前記第2表示領域の表示は変わらないことを特徴とする水処理プロセスの設計装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、前記表示処理部は、前記水処理フローに含まれる処理水ストリームと濃縮水ストリームとで、前記表示装置に表示する際の線の色、太さ、又は線種を変えることを特徴とする水処理プロセスの設計装置。
【請求項7】
表示装置に表示された設計画面の第1ページに、複数の水処理ユニットの配置及び水処理ユニット間を接続するストリームの形成により第1水処理フローを描画する工程と、
第2ページに第2水処理フローを新規作成するか、又は前記第1ページを複製した第2ページで、前記第1水処理フローの構成の一部を変更して第2水処理フローを作成する工程と、
前記第1ページに表示された第1水処理フロー及び前記第2ページに表示された第2水処理フローにおける物質収支及び熱収支を計算する工程と、
前記表示装置の第1表示領域に前記第1ページ及び前記第2ページを切り替え可能に表示し、第2表示領域に前記第1水処理フローと前記第2水処理フローとで共通する設計パラメータの一覧を表示する工程と、
前記第2表示領域に表示された設計パラメータの一覧を介して、前記第1水処理フローと前記第2水処理フローとで共通する設計パラメータの値の一括設定を受け付ける工程と、
を備える水処理プロセスの設計方法。
【請求項8】
請求項において、前記第1水処理フロー及び前記第2水処理フローのイニシャルコスト及び/又はランニングコストを計算する工程と、
コスト計算結果を別ページに表示する工程と、
をさらに備えることを特徴とする水処理プロセスの設計方法。
【請求項9】
複数の水処理ユニットの配置及び水処理ユニット間を接続するストリームの形成により第1水処理フローを設計画面の第1ページに描画する工程と、
第2ページに第2水処理フローを新規作成するか、又は前記第1ページを複製した第2ページで、前記第1水処理フローの構成の一部を変更して第2水処理フローを作成する工程と、
前記第1ページに表示された第1水処理フロー及び前記第2ページに表示された第2水処理フローにおける物質収支及び熱収支を計算する工程と、
表示装置の第1表示領域に前記第1ページ及び前記第2ページを切り替え可能に表示し、第2表示領域に前記第1水処理フローと前記第2水処理フローとで共通する設計パラメータの一覧を表示する工程と、
前記第2表示領域に表示された設計パラメータの一覧を介して、前記第1水処理フローと前記第2水処理フローとで共通する設計パラメータの値の一括設定を受け付ける工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする水処理プロセスの設計プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の水処理ユニットで構成される水処理プロセスの設計装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の水処理ユニットで構成される水処理プロセスをコンピュータ上で設計する水処理プロセスシミュレータが知られている(例えば非特許文献1参照)。水処理プロセスシミュレータを用いることで、水処理プロセスの物質収支および熱収支を計算し、水処理ユニットの設計計算を自動で行うことができる。
【0003】
従来の水処理プロセスシミュレータでは、1つのファイルに1つの水処理フローを描画し、その水処理フローの設計計算およびコスト計算を行っていた。複数の水処理プロセスの候補がある場合、複数のファイルを順番に開き、同じ入力値をファイルごとに設定する必要があり、コスト比較のための作業が煩雑であった。
【0004】
また、コスト計算結果を比較するため1つずつファイルを開き、コスト計算結果を表計算ソフトのセルにコピー&ペーストしてグラフを作成するという作業を手動で行っており、手間がかかっていた。
【0005】
特許文献1に記載の水処理システムの構築支援装置では、水処理システムを構築するために、下流から上流側にさかのぼっていく設計方法がとられるが、これは、循環を多く含むような水処理プロセス、例えば、排水回収プロセス(下流側から上流側に処理水を移送させて工業用水使用量や排水量を減少させるプロセス)への適用は難しく、循環の無い逐次処理的な処理フローへの適用に限定される。
【0006】
特許文献2には、水処理プロセスの収支計算・設計計算を行うにあたり、水収支計算、熱収支計算、各成分の物質収支計算、設計計算の順番に計算を進める方法が開示されている。これは、複数ではなく個々の水処理プロセスのコスト計算に効率的な手法であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−220389号公報
【特許文献2】特開2014−188457号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】報文「水処理プロセスシミュレータ」、堀井・佐々木、2012年7月、EICA
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、複数の水処理プロセスのコスト比較を効率良く行うことができる水処理プロセスの設計装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水処理プロセスの設計装置は、複数の水処理ユニット、及び水処理ユニット間を接続するストリームを含む水処理フローを表示装置に表示された設計画面に描画する描画部と、前記描画部により描画された水処理フローを複数ページに表示する表示処理部と、各ページに表示された水処理フローにおける物質収支及び熱収支を計算する収支計算部と、を備えるものである。
【0011】
本発明の一態様では、前記描画部は、第1水処理フローが描画された第1ページを複製した第2ページ上で、該第1水処理フローの構成の一部を変更して第2水処理フローを作成する機能を有する。
【0012】
本発明の一態様では、各ページに表示された水処理フローのイニシャルコスト及び/又はランニングコストを計算するコスト計算部をさらに備える。
【0013】
本発明の一態様では、前記表示処理部は、前記コスト計算部による計算結果を別ページに表示する。
【0014】
本発明の一態様では、複数のページに表示される水処理フローで共通する設計パラメータの値を一括して設定するパラメータ設定部をさらに備える。
【0015】
本発明の水処理プロセスの設計方法は、表示装置に表示された設計画面の第1ページに、複数の水処理ユニットの配置及び水処理ユニット間を接続するストリームの形成により第1水処理フローを描画する工程と、前記第1ページを複製した第2ページで、前記第1水処理フローの構成の一部を変更して第2水処理フローを作成する工程と、前記第1ページに表示された第1水処理フロー及び前記第2ページに表示された第2水処理フローにおける物質収支及び熱収支を計算する工程と、を備えるものである。なお、第2ページの水処理フローは、第1ページを複製した水処理フローを編集するのではなく、新たに作成してもよい。
【0016】
本発明の一態様では、前記第1水処理フロー及び前記第2水処理フローのイニシャルコスト及び/又はランニングコストを計算する工程と、コスト計算結果を別ページに表示する工程と、をさらに備える。
【0017】
本発明の一態様では、前記第1水処理フローと前記第2水処理フローとで共通する設計パラメータの値を一括して設定する。
【0018】
本発明の水処理プロセスの設計プログラムは、複数の水処理ユニットの配置及び水処理ユニット間を接続するストリームの形成により第1水処理フローを設計画面の第1ページに描画する工程と、前記第1ページを複製した第2ページで、前記第1水処理フローの構成の一部を変更して第2水処理フローを作成する工程、又は第1ページと同様に第2水処理フローを新規に作成する工程と、前記第1ページに表示された第1水処理フロー及び前記第2ページに表示された第2水処理フローにおける物質収支及び熱収支を計算する工程と、をコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の水処理プロセスのコスト比較を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る水処理プロセスの設計装置の概略構成図である。
図2】設計プログラムを実行することで実現される機能ブロック図である。
図3】水処理フローの作成例を示す図である。
図4】水処理フローの設計画面の例を示す図である。
図5】コスト比較結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1図5を参照して実施の形態について説明する
【0022】
図1は、本実施形態に係る水処理プロセスの設計装置の概略構成を示す。設計装置は、演算制御装置1と、入力装置2と、表示装置3とを備えている。ユーザは、入力装置2を介して演算制御装置1に対して指示を入力することができる。入力装置2には、キーボードやマウス等を用いることができる。表示装置3は、演算制御装置1から出力されたデータを表示する。表示装置3には、液晶ディスプレイ等を用いることができる。
【0023】
演算制御装置1は、CPU(中央演算処理部)11、メインメモリ12、ディスク装置13、及び入出力部14を有する。演算制御装置1の各部はバス15を介して接続されている。演算制御装置1は、入出力部14を介して、入力装置2から入力を受け付けたり、表示装置3へデータを出力したりする。
【0024】
ディスク装置13は、CPU11により実行される設計プログラム21を格納する。また、ディスク装置13は、水処理プロセスで使用される水処理ユニットやストリーム(配管)のモジュール情報22を格納する。ここで、水処理ユニットは、例えば、原水タンク、逆浸透膜濾過装置、限外濾過膜装置、薬品添加槽、活性炭塔、砂濾過塔、熱交換器、蒸発濃縮器、沈殿槽、汚泥濃縮槽、加圧浮上器、真空脱気塔、脱炭酸塔、脱気膜、標準活性汚泥槽、硝化脱窒槽、イオン交換樹脂塔、軟化器、電気式脱イオン装置、紫外線酸化装置等である。
【0025】
モジュール情報22は、各ユニットの物質収支や熱収支等を計算するための計算ロジックが組み込まれている。
【0026】
モジュール情報22には、各種パラメータのデフォルト値が登録されていてもよい。例えば、水処理ユニットが逆浸透膜濾過装置(以下、ROユニットと記載する。)の場合、水回収率等のデフォルト値が登録されていてもよい。モジュール情報22は、表示装置3にアイコン表示される各ユニットのアイコン情報を含む。
【0027】
ディスク装置13は例えばハードディスクドライブである。なお、設計プログラム21は、ディスク装置13でなく、ROM(図示せず)に格納されていてもよい。
【0028】
CPU11は、ディスク装置13内の設計プログラム21をメインメモリ12にロードして、設計プログラム21を実行する。このとき、ディスク装置13内のモジュール情報22をメインメモリ12にロードするようにしてもよい。
【0029】
設計プログラム21の実行に伴い、メインメモリ12上には、水処理プロセスの処理フロー、及び各種計算結果を格納する領域が確保される。水処理フローはユーザにより作成されるものであり、作成方法については後述する。
【0030】
図2に、CPU11が設計プログラム21を実行することで実現される機能ブロック図を示す。設計プログラム21の実行により、描画部210、表示処理部220、パラメータ設定部230、収支計算部240、及びコスト計算部250が実現される。描画部210は、ユニット配置部211、ストリーム配置部212、ストリーム・ユニット接続部213、及び複製部214を有している。なお、複製部214は、既存ページを複製する機能を有していることを意味しており、描画部210は、新たに「新規ページ」を作成し、そこに水処理フローを最初から構築しても構わない。
【0031】
描画部210は、各種ユニットやストリームに対応するアイコンを表示装置3に表示する(図4のウィンドウW2参照)。アイコンは単なる図形ではなく、アイコンの種類ごとに予め決められた形式で、パラメータ名とその値が格納されるデータ領域を保有している。
【0032】
ユニット配置部211は、入力装置2を介してユーザにより選択されたユニットを設計画面(図4のウィンドウW1)に描画される処理フロー内に配置する。配置されたユニットは、それぞれ識別番号が付与されており、各種パラメータが設定可能である。
【0033】
ストリーム配置部212は、入力装置2を介してユーザにより選択されたストリームを、設計画面(図4のウィンドウW1)に描画される処理フロー内に配置する。ストリーム・ユニット接続部213は、配置されたストリームとユニットとを接続する。ユニットには接続ポイントが用意されており、ストリームの始点又は終点の位置を接続ポイントと一致させることで、ユニットとストリームとを接続できる。描画部210により描かれた各ストリームは、それぞれ識別番号が付与され、流量、温度、各成分濃度等の計算値が表示可能である。
【0034】
例えば、図3に示すように、描画部210は、ユーザからの指示に基づき、水質設定ユニットU1、ROユニットU2〜U4を配置し、ROユニットU2〜U4にストリームS1〜S7を接続する。ROユニットU2〜U4には、それぞれ3本のストリームが接続される。
【0035】
水質設定ユニットU1とROユニットU2とを接続するストリームS1が原水に対応する。ROユニットU2の逆浸透膜を透過した処理水ストリームS2がROユニットU4に接続される。ROユニットU2の濃縮水ストリームS3がROユニットU3に接続される。
【0036】
ROユニットU3には、処理水ストリームS4及び濃縮水ストリームS5が接続される。同様に、ROユニットU4には、処理水ストリームS6及び濃縮水ストリームS7が接続される。
【0037】
処理水ストリームS2、S4、S6と、濃縮水ストリームS3、S5、S7とは、表示装置3に表示する際に色を変えてもよいし、線の太さや、実線/破線を変えてもよい。
【0038】
本実施形態による設計装置では、1ファイル内に水処理フローが描画されるページを複数作成することができる。表示処理部220は、図4に示すように、ウィンドウ(表示領域)W1にて、タブ切替により複数のページを切り替え可能に表示する。各ページの水処理フローは、ユーザが描画したものでもよいし、描画済みのページをユーザからの指示に基づいて複製部214が複製したものでもよい。
【0039】
例えば、第1ページで水処理フローを作成後、第1ページを複製して第2ページとする。第2ページでは、ストリームをつなぎかえたり、ユニットを入れ替えたりするなどの簡易な変更操作で、新たな水処理フローを作成できる。例えば、RO処理水の行先となるタンクを変えたり、膜脱気装置を真空脱気装置に入れ替えたりする。
【0040】
なお、図4のウィンドウW2には、ユニットやストリームのアイコンが表示されている。ユニットのアイコンを選択し、ウィンドウW1内へドラッグ&ドロップすることで、水処理フローにユニットを配置できる。ストリームも同様にアイコンを選択してウィンドウW1内へドラッグ&ドロップすることで、水処理フローにストリームを配置できる。ユニットには接続ポイントが用意されているので、ストリームの矢印の始点又は終点の位置を接続ポイントに一致させることで、ユニットとストリームとが接続される。
【0041】
パラメータ設定部230は、水処理フローのユニットやストリームにパラメータを設定する。パラメータ設定部230は、複数ページの水処理フローで共通する設定項目を紐付け(リンクさせ)、ウィンドウW3でこの項目のパラメータの値を設定(変更)した場合、他のページの水処理フローにも反映させる。ウィンドウW3は独立して存在する表示領域であり、ページを切り替えても表示は変わらない。
【0042】
複数ページの水処理フローで共通する設定項目は、例えば原水の流量、温度、水質である。新しいページの水処理フローは最初から作成してもよいが、既存のページを複製し、一部編集(例えばユニットの入れ替えや、ストリームのつなぎ替え)することが簡便である。また、新しいページの各種パラメータの値を既存ページのものから変更したり、リンクの設定を追加又は解除したりしてもよい。
【0043】
図4に示すように、水処理フローのページが表示されるウィンドウW1とは別のウィンドウW3に、各ページの水処理フローに共通する設定項目の一覧が表示される。このウィンドウ内のデータは、適宜数値を変更することができる。データのリンクを設定したい項目を選択して、ウィンドウW1に表示されている水処理フロー内のユニット又はストリームにドラッグ&ドロップすることで、データのリンクを設定できる。ページを複製した場合でもデータのリンクに関する設定情報は継承されるため、複数ページの水処理フローにわたって、対応するユニット又はストリームのパラメータを一括して設定することができる。
【0044】
計算の実行の準備として、原水の流量、温度、各成分の濃度を設定する。具体的には図3図4のStartユニットで流量、温度、各成分の濃度の値を設定する。このとき、ウィンドウW3のデータのうち、該当する項目を選択し、値をリンクさせてもよい。
【0045】
収支計算部240は、ユーザから計算実行指示を受け付けると、各水処理フローについて、処理フロー全体の水収支や熱収支、各成分の物質収支を計算する。複数の水処理フローの収支計算は、順に行ってもよいし、並列に行ってもよい。
【0046】
例えば、ROユニットについて、設定された水回収率に基づいて、処理水流量、濃縮水量を計算する。また、設定された各成分の脱塩率から、処理水、濃縮水の水質を計算する。
【0047】
収支計算部240は、各ユニットについて、入口流量と出口流量の差が所定値以下となるように流量を調整する。所定値としては例えば0.01とする。
【0048】
各ユニットについて、入口熱量合計及び出口熱量合計を計算し、各ストリームの温度を求める。熱量は、熱量=流量×比熱×温度で求めることができる。そして、例えば、すべてのユニットで、|入口熱量合計−出口熱量合計|/((入口熱量合計+出口熱量合計)×0.5)<所定値となった場合、熱収支が収束したと判定する。所定値としては例えば0.01とする。
【0049】
各ユニットにおいて、各成分について、入口成分質量流量合計及び出口成分質量流量合計を計算する。成分質量流量は、成分質量流量=成分濃度×流量で求めることができる。そして、例えば、すべてのユニットにおいて、各成分について、|入口成分質量流量合計−出口成分質量流量合計|/((入口成分質量流量合計+出口成分質量流量合計)×0.5)<所定値となった場合、各成分の物質収支が収束したと判定する。所定値としては例えば0.01とする。
【0050】
多くの場合、水処理フローには、下流側から上流側に処理水を戻す循環ラインが含まれる。水処理プロセスシミュレータでは、原則として上流側から下流側へとユニット計算を進めることになるが、循環ラインがあることで、途中のユニットで物質収支や熱収支が合わなくなることがある。このとき、収支が合わないユニットから再計算を行うことが好ましい。つまり、物質収支または熱収支が合わないユニットを探索し、そのユニットから再計算を行うという操作を繰り返し行うことによって、全体の物質収支・熱収支を収束させることができる。
【0051】
コスト計算部250は、ユーザからの指示に基づいて、各ページに描画された水処理フローのコストを計算する。計算されるコストは、イニシャルコストや、電力コスト、蒸気コスト、冷水コスト等のランニングコストである。複数の水処理フローのコスト計算は、順に行ってもよいし、並列に行ってもよい。
【0052】
表示処理部220は、コスト計算部250により計算された各水処理フローのコストを別ページ(又は別ウィンドウ)に出力し、グラフや表の形式で表示する。例えば、図5に示すように、各水処理フローのランニングコストを棒グラフで表示する。これにより、複数の水処理フローのコストを視覚的に容易に比較できる。
【0053】
このように、本実施形態によれば、類似の水処理フローを作成する際、水処理フローを作成した既存のページを複製し、複製後のページ上でユニットを入れ替えたり、ストリームをつなぎかえたりするなどの簡単な編集を加えることで、容易に新しい水処理フローを作成することができる。
【0054】
また、水処理フローが描画された複数のページが1ファイルに含まれ、必要に応じて、各ページの水処理フローの設定値をリンクさせることができるため、共通のパラメータ値を1箇所で変更すれば、全ページの水処理フローの設定値を同時に変更できる。共通の設定項目がファイル上の一箇所(例えば図4のウィンドウW3)で管理されるので、従来のように、1つずつファイルを開いてパラメータを変更するといった煩雑な作業が不要となり、パラメータの設定ミスを防止することができる。
【0055】
また、各ページの水処理フローのコスト計算結果を、同じファイルの中で表示して比較することができるので、どの水処理フローが最も適切かを、迅速かつ定量的に判断することができる。与えられた設計条件に対して、あらかじめ準備しておいた複数の水処理フロー候補の中から、最も安価な水処理プロセスを短時間で提案できる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 演算制御装置
2 入力装置
3 表示装置
11 CPU
12 メインメモリ
13 ディスク装置
14 入出力部
15 バス
21 設計プログラム
22 モジュール情報
210 描画部
211 ユニット配置部
212 ストリーム配置部
213 ストリーム・ユニット接続部
214 複製部
220 表示処理部
230 パラメータ設定部
240 収支計算部
250 コスト計算部
図1
図2
図3
図4
図5