(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る注出口栓10について図を参照して説明する。
図1に、容器本体70に取付けられた注出口栓10の断面図及び点線で囲んだA部の拡大図を示す。また、
図2に、注出口栓10の分解図を示す。
【0012】
(注出口栓)
注出口栓10は、容器本体70に取付けられ、容器本体70に収容された内容液80を注出することができる。
図1、
図2に示すように、注出口栓10は、注出筒20と、注出筒20の内面に設けられた、第1リング板30、第2リング板40、逆止弁外殻50及び弁体板60を含む。注出筒20の内面には、容器本体70から内容液80が流入する開口である流入口20c側から順に、第1リング板30、逆止弁外殻50及び第2リング板40が順に並んで設けられる。弁体板60は、第1リング板30、逆止弁外殻50及び第2リング板40により囲まれた空間90に収容される。
【0013】
注出筒20は、第1リング板30、第2リング板40、逆止弁外殻50及び弁体板60を内面に収容する部材である。注出筒20は、容器本体70から内容液80が流入する開口である流入口20cと、内容液80を注出する開口である注出口20dとを含む円筒形状である。注出筒20は、外周面に図示しないキャップを螺着して取り付けるためのネジ山20aを有する。また、注出筒20は、流入口20c側の外周面に、注出口栓10を容器本体70に固定するためのフランジ20bを有する。なお、注出筒20へのキャップの取り付け方法は、螺着に限定されずヒンジにより固定する等の周知の技術を用いることができる。また、キャップは、取り付けなくてもよい。
【0014】
第1リング板30は、流入口20cからの内容液80の流入を許容するとともに、弁体板60の流入口20c側への動きを規制する。第1リング板30は、円盤状の部材であり、中央に内容液80が通ることのできる円形の連通孔30aが形成されている。
【0015】
逆止弁外殻50は、内容液80の流入口20cから注出口20dへの流通を許容するとともに、弁体板60の注出口20d側への動きを規制する。逆止弁外殻50は、注出筒20の内周面に挿入可能な円筒形状の円筒部50aと、円筒部50aの内面に周方向に亘って複数設けられるリブ50bとを含む。
【0016】
図3に、逆止弁外殻50の平面図及びB−B’線で切断した断面図を示す。
図3の断面図に示すように、リブ50bは、円筒部50aの第1リング板30に接する側の面(流入口20c側の面)から、第2リング板40に接する側の面(注出口20d側の面)に向かって注出筒20の内周面からの突出量が徐々に増加する傾斜面50cを有する。注出口栓10では、一例として、リブ50bは、円筒部50aの内周面に円周方向に等しい間隔で6個形成されているが、リブ50bの数は任意に設定可能である。
【0017】
第2リング板40は、注出口20dへの内容液80の注出を許容するとともに、逆止弁外殻50及び第1リング板30とともに空間90を形成して、空間90に内容液の一部を溜めることで弁体板60による連通孔30aの閉塞を促す。第2リング板40も第1リング板30と同様に、円盤状の部材であり、中央に内容液80が通ることのできる円形の連通孔40aが形成されている。
【0018】
弁体板60は、第1リング板30の連通孔30aを閉塞した状態と、閉塞しない状態との間で移動可能であるとともに、リブ50bにより注出筒20からの離脱が規制されることで逆止弁として機能する。弁体板60は、薄いフィルム材から形成される円盤状の部材である。
【0019】
第1リング板30、逆止弁外殻50、第2リング板30の材質には、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ABS等の一般的な包装用プラスチックを用いることができる。また、弁体板60の材質には、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の比較的薄く、コシのある材質を用いることができる。
【0020】
注出筒20への第1リング板30、逆止弁外殻50及び第2リング板30の取り付けには、例えば、溶着や接着剤を用いる等の周知の方法を用いることができる。
【0021】
(包装容器)
包装容器100は、注出口栓10を容器本体70に取付けることで得られる。注出口栓10は、注出筒20のフランジ20bを容器本体70に、例えば溶着により取付けることができる。注出口栓100の容器本体70への取り付け方法は、溶着に限定されず、接着剤を用いる等の周知の方法を用いることができる。容器本体70には、内容液80の注出にともなって容易に容積を減少できるフレキシブル包装袋を好適に用いることができる。
【0022】
(注出口栓の機能)
次に、注出口栓10の逆止弁としての機能について、
図1、
図4、
図5を用いて説明する。以下では、弁体板60により第1のリング板30の連通孔30が閉塞された状態を逆止弁が閉じた状態と呼ぶ。また、弁体板60により第1のリング板30の連通孔30が閉塞されていない状態を逆止弁が開いた状態と呼ぶ。
図1は、逆止弁が閉じている状態を示す断面図である。
図4は、逆止弁が開いて内容液を注出している状態を示す断面図である。
図5は、内容液80の注出が終わり、逆止弁が閉じる状態を示す断面図である。また、
図1、
図4及び
図5には、それぞれ、点線で囲んだ箇所(A〜C)の拡大図を示す。
【0023】
逆止弁が閉じた状態では、
図1に示すように、弁体板60は第1リング板30の注出口20d側の面に密着し、かつ、連通孔30aを閉塞する。この状態のとき、容器本体70の内部は弁体板60により外気から遮断されている。
【0024】
逆止弁が閉じた状態で、包装容器100の使用者が、包装容器100を傾けるまたは容器本体70を押圧することによって、
図4に示すように、内容液80が第1リング板30の連通孔30aを通過して弁体板60を注出口20cの方向へ押し出す。これにより、
図4に白矢印で示すように、弁体板60がリブ50bとの接触部を支点として、第1リング板30から離れて、連通孔30aが開放される。この結果、逆止弁が開いた状態となる。
【0025】
その後、容器本体70から流出した内容液80は、第1リング板30、逆止弁外殻50及び第2リング板40により囲まれた空間90に流入する。このとき、弁体板60は内容液80により注出口20dの方向へ向かって押し出されるが、リブ50bに接触するため注出口20d側への動きが規制される。このため、弁体板60は注出筒20から離脱しない。また、リブ50bは逆止弁外殻50内面に複数配置されているため、
図4に黒矢印で示すように、内容液80は弁体板60の外周を通った後、複数のリブ50bの間を通過して、第2リング板40の連通孔40aから注出口20dを通過して包装容器100の外方へ注出される。
【0026】
このように、逆止弁が開いた状態では、弁体板60の姿勢に関わらず、内容液80を複数のリブ50bの間から包装容器100の外方へ注出することができる。したがって、注出口栓10によれば、注出時の包装容器100の姿勢に関わらず、内容液80を安定して注出することができる。
【0027】
次に、使用者が、包装容器100の傾きを元に戻すか容器本体70の押圧をやめると、空間90を流れる内容液80の少なくとも一部は、
図5の黒矢印で示すように、逆流して第1リング板30の連通孔30aを通って容器本体70に流入する。このとき、
図5に白矢印で示すように、空間90に溜まった内容液80が、弁体板60を第1リング板30に向かい移動させる。この結果、弁体板60は第1リング板30に密着して連通孔30aを閉塞する。この際、弁体板60は、空間90に溜まった内容液80により連通孔30aへ移動させられる。このため、注出口栓10は、容器本体70の内部への外気の流入を抑止することができる。さらに、第1リング板30と弁体板60とは、これらの表面に付着した内容液80の界面張力により密着させることができるため、外気の流入を抑止する効果をより高めることができる。
【0028】
(注出口栓の各部寸法)
上記の効果を得るため、注出口栓10の各部は、次のような寸法関係にあることが好ましい。
図6には、注出口栓10の各部寸法を説明する断面図を示す。
【0029】
弁体板60の直径d1は逆止弁外殻50の円筒部50aの内周の最大直径より小さく、かつ、円筒部50aの内周面と、第1リング板30の連通孔30aの内周面との平面視における最大距離d2より大きく形成される。弁体板60が、第1リング板30から離れることが可能であり、かつ、連通孔30aを通り注出筒10の外部へ離脱することを防ぐためである。
【0030】
また、弁体板60の直径d1は、注出筒20の中心軸を含む断面において、傾斜面50cの流入口20c側端部と、中心軸を挟んだ円筒部50aの内周面の注出口20d側端部との距離d3より大きく形成されることが好ましい。弁体板60が空間90内で傾いた状態の時、弁体板60がリブ50bを乗り越えて注出口20d側へ出ることを防ぐためである。
【0031】
また、注出筒20の中心軸を含む断面において、傾斜面50cと注出筒20の中心軸と平行な方向とのなす鋭角a1が45°以上となるように形成されることが好ましい。弁体板60の一端部を第1リング板30から離れにくくするためであるとともに、離れた場合であっても弁体板60が傾斜面50cに引っかかりにくくして、傾斜面50cに沿って第1リング板30に戻りやすくし、一端を支点として、連通孔30aを開閉する逆止弁としての動きを保証するためである。
【0032】
また、第2リング板の連通孔の直径d4は、弁体板60の直径より小さくし、必要とする注出口栓の注出速度及び空間90に溜める内容液80の量に基づいて任意に設定できる。
【0033】
(変形例)
注出口栓10では、リブ50bは注出筒20と別体の逆止弁外殻50に設けて、逆止弁外殻50を注出筒20内に挿入する構造としたが、リブ50bは注出筒20内周面から直接突出するように一体的に形成してもよい。また、第1リング板30及び第2リング板40も、注出筒内周面に一体的に形成してもよい。さらに、第1リング板30、第2リング板40、逆止弁外殻50及び弁体板60を、注出筒20を閉栓するキャップの中に収納する構造としてもよい。
【0034】
上述のように、弁体板60と第1リング板30とは、表面に付着した内容液80の界面張力により密着することができる。界面張力を高めるため、内容液80の弁体板60及び第1リング板30の少なくともいずれかは、部材表面に親水性を有することが好ましい。具体的には、弁体板60及び第1リング板30の少なくともいずれかを、親水性のある部材で形成したり、部材表面に親水性が向上する加工を施したりすることができる。
【実施例】
【0035】
実施例1〜3に係る寸法の異なる注出口栓10を製造して評価を行った。作製した第1リング板30、第2リング板40、逆止弁外殻50及び弁体板60の各部寸法を次に示す。
【0036】
(実施例1)
第1リング板30の外周直径は16.3mmとし、連通孔30aの直径は12mmとした。また、第2リング板40の外周直径は16.3mmとし、連通孔40aの直径は6mmとした。また、逆止弁外殻50の外周直径は16.3mmとし、内周直径は12mmとし、厚みは3mmとした。また、逆止弁外殻50の中心軸を挟み対向するリブ50b間の距離は6mmとし、リブ50bの幅は1mmとした。弁体板60の直径は10mmとし、厚みは100μmとした。
【0037】
(実施例2)
第1リング板30の外周直径は16.3mmとし、連通孔30aの直径は14mmとした。また、第2リング板40の外周直径は16.3mmとし、連通孔40aの直径は8mmとした。また、逆止弁外殻50の外周直径は16.3mmとし、内周直径は14mmとし、厚みは3mmとした。また、逆止弁外殻50の中心軸を挟み対向するリブ50b間の距離は8mmとし、リブ50bの幅は1mmとした。弁体板60の直径は12mmとし、厚みは100μmとした。
【0038】
(実施例3)
第1リング板30の外周直径は16.3mmとし、連通孔30aの直径は15mmとした。また、第2リング板40の外周直径は16.3mmとし、連通孔40aの直径は9mmとした。また、逆止弁外殻50の外周直径は16.3mmとし、内周直径は15mmとし、厚みは3mmとした。また、逆止弁外殻50の中心軸を挟み対向するリブ50b間の距離は9mmとし、リブ50bの幅は1mmとした。弁体板60の直径は13mmとし、厚みは100μmとした。
【0039】
各実施例の第1リング板30及び第2リング板40の材質にはPETを用い、逆止弁外殻50の材質にはABS樹脂を用い、弁体板60の材質にはPETを用いた。作製した各注出口栓10を、0.75lの水が入ったフレキシブル包装袋に取付けて包装容器100を製造した。
【0040】
(評価1)
製造した包装容器100の注出口栓10から内容液80を10回に分けて注出し、注出速度、内容液80の自重による注出の可否、注出後の外気の流入の有無を評価した。注出速度についての評価結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、第1のリング板30及び第2リング板40の連通孔30a、40aの直径が大きくなることで注出速度が大きくなることから、連通孔径により注出速度を制御できることが確認できた。また、いずれの実施例でも、内容液80が50mlとなるまで内容液80の自重により注出が可能であることが確認できた。さらに、内容液80注出後の包装容器100は圧縮状態となり、注出に伴う外気の流入がないことが確認できた。
【0043】
(評価2)
製造した包装容器100にキャップを取付けない状態で1時間放置し、容器本体70に流入した外気の有無を評価した。
【0044】
いずれの包装容器100でも外気の流入は確認されず、注出口栓10により密閉状態が保持できることが確認できた。
【0045】
以上説明したように、実施形態に係る注出口栓10は、弁体板60を注出筒10、第1リング板30、逆止弁外殻50及び第2リング板40により囲まれた空間90に収容する。このため、弁体板60は、第1リング板30の連通孔30aを閉塞した状態と、閉塞しない状態との間で移動可能であり、かつ、リブ50bにより注出筒20からの離脱が規制される。この結果、内容液80の注出時には、弁体板60の姿勢に関わらず、内容液80を複数のリブ50bの間から包装容器100の外方へ注出することができる。また、内容液80の注出をやめると、弁体板60は、空間90に溜まった内容液80により連通孔30aへ移動させられるため、注出口栓10は、容器本体70の内部への外気の流入を抑止することができる。
【0046】
また、注出口栓10は、逆止弁60の閉栓に内容液自体を利用するため、外気の容器本体70内部への流入を防ぐことができ、内容液80の酸化等を長期間防止することができる。
【0047】
また、注出口栓10は、弁体板60をフィルムのような重量の小さい部材で形成できるため、内容液80の自重のみでの開閉が可能となり、絞り出し動作をすることなく簡単に内容液80を注出することができる。
【0048】
また、注出口栓10は、第1リング板30及び第2リング板40の連通孔30a、40aの直径を変更することにより、内容液80の注出速度を容易に変更することができる。
【0049】
また、連通孔40aを大きく設定できるため、従来技術と比べて注出速度を早く設定することができる。
【0050】
また、注出口栓10は、構造が単純であるため、安価に製造することができる。
【0051】
また、逆止弁構造を、注出口栓10の長さ方向に対して比較的薄い構造とすることができるため、取り付け場所の設計自由度が高い。