【実施例】
【0024】
ドワイトロイド(DL)式焼結機による焼結鉱の製造方法を模擬し、以下の条件のφ300mmの焼結鍋試験により、本発明の二段点火焼結法の効果を検証した。
1)焼結条件
下段層および上段層はどちらも層高300mmで装入した。すなわち、300mmの厚さの層を2層、合計600mmの厚さで装入した。
二段点火では直径300mm層高300mmの円柱形鍋を2本準備し、それぞれ第1の配合原料(下段層)および第2の配合原料(上段層)を装入しておく。まず第1の配合原料を装入した鍋を下段にセットして、1100℃1分間点火した。点火終了後、直ちに第2の配合原料を装入した鍋を下段にセットした鍋の上段にセットして、1100℃1分間点火した。吸引圧は、点火開始から1000mmAq(9.8kPa)一定とした。
【0025】
2)配合原料
原料の配合条件を表1に示す。
ケース1から3は、すべて下段層用の第1の配合原料と、上段層用の第2の配合原料を別系統で造粒した二系統造粒ケースである。カーボン系凝結材としては、粉コークスを使用した。
下段層を形成する第1の配合原料中の粉コークスの粒度は、ケース1において平均粒径(メジアン径)1.1mm、ケース2、3において平均粒径3.0mmとした。第1の配合原料中(下段層)の粉コークスの配合比はケース1、2において5.0%、ケース3において2.7%とした。ヘマタイトA、Dの銘柄の違い、ゲーサイトB、Cの銘柄の違いは産地の違いによる。
【0026】
【表1】
【0027】
試験条件として、配合条件、造粒条件を表2の上段に示す。
3)配合条件
比較例1は、配合を表1に示したケース1とした。すなわち、上段層、および下段層のコークス粒度は、共に通常の粒度である平均粒径1.1mmとした。
発明例1は、配合を表1に示したケース2とした。すなわち、上段層のコークス粒度は通常通り平均粒径1.1mmとし、下段層のコークス粒度は、粗粒とした平均粒径3.0mmとした。
発明例2から4は、配合を表1に示したケース3とした。すなわち、上段層のコークス粒度は通常通り平均粒径1.1mmとし、下段層のコークス粒度は、粗粒とした平均粒径3.0mmとした。
【0028】
4)造粒条件
第1の配合原料と第2の配合原料を別々に造粒する二系統造粒を行った。
I)上段層を形成する第2の配合原料は、すべての発明例、比較例で、ドラムミキサーで4分間混合後水分を添加してさらにドラムミキサーで処理することにより造粒した。水分は7.0%とした。
II)下段層を形成する第1の配合原料は以下の3通りの方法により造粒した。
比較例1、発明例1、2では、ドラムミキサーで4分間混合後水分を添加してさらにドラムミキサーで処理することにより造粒した。水分は7.8%とした。
発明例3では、
図3に示したように、アイリッヒミキサー(商品名)で30秒間混合後水分を添加してさらにアイリッヒミキサー(商品名)で30秒間処理した。さらにパンペレタイザーを使用し、5分間処理することにより造粒した。水分は7.8%とした。
発明例4では、
図2に示した場合のうち、アイリッヒミキサー(商品名)のみで造粒した。アイリッヒミキサー(商品名)で30秒間混合後水分を添加してさらにアイリッヒミキサー(商品名)で30秒間処理することにより造粒した。水分は7.8%とした。
ここで、各々の造粒機の仕様は以下のとおりである。ドラムミキサーの設備仕様は、直径600mm回転数25rpmである。アイリッヒミキサー(商品名)の設備仕様は、パン直径800mmに撹拌羽根が1本内臓されており、回転速度は、パンは20rpm撹拌羽根は300rpmである。パンペレタイザーの設備仕様は、パン直径800mm深さ150mm傾斜角45°、回転速度20rpmである。
【0029】
【表2】
【0030】
5)評価方法
各実施例について、生産性、被還元性、焼結強度の指標として、生産率、被還元性RI、還元粉化指数RDIを評価した。
被還元性RIは、粒径19−21mmの焼結鉱500gを、900℃において、還元ガス(CO[30体積%]/N
2[70体積%])15l(15リットル)にて3時間処理した後の重量変化から算出される脱酸素量を酸化鉄中の酸素量で除して求めた。
還元粉化指数RDIは、JIS M8720(2009年)に準じて測定した。具体的には、16.0mm超過20mm以下に篩分けられた500gの成品を、550℃のもとで還元ガス(CO:30体積%、N
2:70体積%)により30分間還元した。そして、還元後の成品を回転ドラムに充填し、900回転させた後、2.83mm以下の粒度を有する焼結鉱と他の焼結鉱とに篩分けた。そして、2.83mm以下の粒度を有する焼結鉱の総質量(500g)に対する割合を耐還元粉化指数とした。
生産率は、点火開始から排ガス温度がピークに到達するまでに要した時間を焼結時間として、成品量を焼結時間と鍋底面積で割って算出した。
【0031】
6)試験結果
試験結果を表2の下段に示す。以下に結果を詳述する。
(1)被還元性
比較例1と発明例1を対比すると、二段点火焼結法において、下段層に平均粒径3.0mm以上の粗粒炭材を使用することによって、還元粉化性をさほど悪化させずに、被還元性が2%以上向上したことがわかる。
また、発明例1と発明例2を対比すると、下段層の粉コークス配合比を3.0質量%以下に低下させるとさらに被還元性が向上したことがわかる。
これは、粉コークスの粗粒化や減配によって、下段層のO
2濃度低下を抑制されたためである。
発明例2から4は、造粒方法の比較であるが、被還元性に及ぼす影響は極めて小さかった。
(2)焼結強度
発明例1と発明例2を対比すると、下段層の粉コークス配合比を3.0質量%以下に低下させると還元粉化指数RDIの低下はさらに抑制されることがわかる。
発明例2から4は、造粒方法の比較であるが、還元粉化指数RDIに及ぼす影響は極めて小さかった。
(3)焼結生産性
比較例1と発明例1を対比すると、下段層に平均粒径3.0mm以上の粗粒炭材を使用することによって、生産率が向上したことがわかる。また、発明例1と発明例2を対比すると、下段層の粉コークス配合比を3.0質量%以下に低下させると生産率はさらに向上することがわかる。さらに、発明例1、2と発明例3、4を対比すると、アイリッヒミキサー(商品名)の採用、アイリッヒミキサーおよびパンペレタイザーを併用して造粒すると、造粒が強化され、生産率が10%程度顕著に向上することがわかる。