特許第6848633号(P6848633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6848633画素形成用組成物、硬化膜および硬化膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848633
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】画素形成用組成物、硬化膜および硬化膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20210315BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20210315BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20210315BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20210315BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210315BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20210315BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20210315BHJP
   C08F 220/22 20060101ALI20210315BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20210315BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20210315BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20210315BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   H05B33/12 B
   G03F7/033
   G03F7/038 501
   H05B33/22 Z
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   G03F7/20 501
   C08F220/22
   C08F8/14
   H01L27/32
   G02B5/20 101
   G03F7/023
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-78794(P2017-78794)
(22)【出願日】2017年4月12日
(65)【公開番号】特開2018-10856(P2018-10856A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2020年1月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-130271(P2016-130271)
(32)【優先日】2016年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】堀江 慶太
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−060515(JP,A)
【文献】 特開2006−344869(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/074076(WO,A1)
【文献】 特開2015−038976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/20−5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−CF2R(Rは水素原子、アルキル基または−OR1(R1は水素原子またはアルキル基))で表される基を含む構成単位(a1)と、酸性基を含む構成単位(a2)とを有する重合体(A)および溶剤を含み、
前記重合体(A)100質量%中の前記構成単位(a1)の含量が31〜95質量%である、
画素形成用組成物。
【請求項2】
前記重合体(A)がさらに架橋性基を有する、請求項1に記載の画素形成用組成物。
【請求項3】
前記構成単位(a1)が下記式(1)で表される基を含む、請求項1または2に記載の画素形成用組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子、アルキル基または−OR1(R1は水素原子またはアルキル基)であり、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子であり、Aはエステル結合またはエーテル結合であり、nは1〜10の整数である。*は結合部位を表す。)
【請求項4】
前記架橋性基が、エチレン性不飽和基、含酸素飽和ヘテロ環基、ヒドロキシ基、活性水素を有するアミノ基、アミド結合、有機基で置換されていてもよいアルコキシシラン基、保護基で保護されたこれらの基、および、ブロックイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基である、請求項2または3に記載の画素形成用組成物。
【請求項5】
前記酸性基が、カルボキシル基、フェノール性水酸基、シラノール基、スルホン酸基および保護基で保護されたこれらの基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画素形成用組成物。
【請求項6】
画素形成用組成物中の全固形分100質量%に対し、前記重合体(A)を20〜85質量%含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の画素形成用組成物。
【請求項7】
さらに、前記重合体(A)以外の、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の画素形成用組成物。
【請求項8】
隔壁形成用である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の画素形成用組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の画素形成用組成物を用いて形成された、硬化膜。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の画素形成用組成物から塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射する工程を含む、硬化膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素形成用組成物、硬化膜および硬化膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、有機エレクトロルミネセンス(有機EL)素子やカラーフィルター等により画素を形成し、各画素の状態を変化させることで、数字、文字、図形、映像などを表示する電子装置である。
【0003】
例えば、有機EL素子では、バンクと呼ばれる隔壁を形成し、そこに有機層を形成したり、カラーフィルターでは、隔壁を形成し、そこに各着色部分を形成する。
このような隔壁は、画素形成材料として、一般的に感放射線性材料を用いて形成されている(例えば、特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−107476号公報
【特許文献2】特開2005−60515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の画素形成材料は、所望形状の硬化膜を容易に形成できるだけの塗布性が十分ではなく、また、該材料を用いた場合には、低屈折率の硬化膜を形成できない場合があり、さらに、得られる表示装置の信頼性が十分ではない場合があった。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、塗布性に優れ、低屈折率でアウトガスの少ない硬化膜を形成でき、かつ、信頼性に優れる表示装置を形成することができる画素形成用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、以下の構成により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。本発明の構成例は、以下の通りである。
【0008】
[1] −CF2R(Rは水素原子、アルキル基または−OR1(R1は水素原子またはアルキル基))で表される基を含む構成単位(a1)と、酸性基を含む構成単位(a2)とを有する重合体(A)および溶剤を含み、
前記重合体(A)100質量%中の前記構成単位(a1)の含量が31〜95質量%である、
画素形成用組成物。
【0009】
[2] 前記重合体(A)がさらに架橋性基を有する、[1]に記載の画素形成用組成物。
【0010】
[3] 前記構成単位(a1)が下記式(1)で表される基を含む、[1]または[2]に記載の画素形成用組成物。
【0011】
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子、アルキル基または−OR1(R1は水素原子またはアルキル基)であり、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子であり、Aはエステル結合またはエーテル結合であり、nは1〜10の整数である。*は結合部位を表す。)
【0012】
[4] 前記架橋性基が、エチレン性不飽和基、含酸素飽和ヘテロ環基、ヒドロキシ基、活性水素を有するアミノ基、アミド結合、有機基で置換されていてもよいアルコキシシラン基、保護基で保護されたこれらの基、および、ブロックイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基である、[2]または[3]に記載の画素形成用組成物。
【0013】
[5] 前記酸性基が、カルボキシル基、フェノール性水酸基、シラノール基、スルホン酸基および保護基で保護されたこれらの基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基である、[1]〜[4]のいずれかに記載の画素形成用組成物。
【0014】
[6] 画素形成用組成物中の全固形分100質量%に対し、前記重合体(A)を20〜85質量%含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の画素形成用組成物。
【0015】
[7] さらに、前記重合体(A)以外の、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の画素形成用組成物。
【0016】
[8] 隔壁形成用である、[1]〜[7]のいずれかに記載の画素形成用組成物。
【0017】
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の画素形成用組成物を用いて形成された、硬化膜。
[10] [1]〜[8]のいずれかに記載の画素形成用組成物から塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射する工程を含む、硬化膜の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の画素形成用組成物は塗布性に優れ、該組成物によれば、低屈折率でアウトガスが少なく、撥液性の硬化膜を形成でき、かつ、信頼性に優れる表示装置を形成することができる。
また、本発明の画素形成用組成物は優れた塗布性を有し、低屈折率でアウトガスが少なく、撥液性の硬化膜を形成でき、さらに、高信頼性の表示装置を低コストで形成できるという効果をバランスよく有する。
なお、本発明において、表示装置の信頼性とは、例えば、形成した表示装置が所定の表示性を示し、所定の状態を維持することをいい、有機EL素子の場合には、具体的には、下記実施例における点灯評価、点灯ムラおよびアウトガスで評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の画素形成用組成物から形成された硬化膜(隔壁)を含む装置の一例を示す概略断面模式図である。なお、図1は、図2(A)のA−A断面図の一部でもある。
図2図2(A)は、実施例で形成した隔壁の概略平面図であり、図2(B)は、比較用有機EL素子における隔壁の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔画素形成用組成物〕
本発明に係る画素形成用組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、−CF2R(Rは水素原子、アルキル基または−OR1(R1は水素原子またはアルキル基))で表される基を含む構成単位(a1)を重合体100質量%に対して31〜95質量%と、酸性基を含む構成単位(a2)とを有する重合体(A)および溶剤を含む。
このような本組成物は、該重合体(A)を含むため、優れた塗布性を有し、低屈折率でアウトガスが少なく、撥液性の硬化膜を形成でき、さらに、高信頼性の表示装置を低コストで形成できるという効果をバランスよく有する。
また、本組成物は、放射線感度が高く、所望形状の硬化膜を容易に形成することができる。
【0021】
本組成物は、前記重合体(A)および溶剤(D)を含めば特に制限されないが、感光剤(B)を含むことが好ましく、さらにエチレン性不飽和二重結合を有する重合体(A)以外の化合物(C)を含むことが好ましい。
また、本組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含んでもよい。
なお、本組成物は、ポジ型であってもよく、ネガ型であってもよい。
【0022】
[重合体(A)]
前記重合体(A)は、−CF2R(Rは水素原子、アルキル基または−OR1(R1は水素原子またはアルキル基))で表される基を含む構成単位(a1)と、酸性基を含む構成単位(a2)とを有する。
重合体(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0023】
重合体(A)は、前記構成単位(a1)と(a2)とを有する重合体(A1)(但し、架橋性基を有さない重合体である。)であってもよく、前記構成単位(a1)と(a2)とを有し、さらに架橋性基を有する重合体(A2)であってもよい。
優れた塗布性を有する組成物を容易に得ることができ、低屈折率で特にアウトガスの少ない硬化膜を形成でき、さらに、高信頼性であって、光の取り出し効率に優れる表示装置を低コストで形成できるという効果をバランスよく有する等の点から、重合体(A)は、前記重合体(A2)であることが好ましい。
【0024】
重合体(A)のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値において、好ましくは2,000〜500,000、より好ましくは3,000〜100,000、さらに好ましくは4,000〜50,000である。
Mwが前記範囲にあると、溶剤や現像液に対する溶解性に優れる重合体を得ることができ、十分な機械的特性を有する硬化膜を得ることができる。
Mwは具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0025】
重合体(A)は、現像性に優れる重合体となり、本組成物から、所望の形状(パターン)の硬化膜を容易に形成することができる等の点から、アルカリ可溶性の重合体であることが好ましい。
なお、「アルカリ可溶性」とは、アルカリ溶液、例えば、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に溶解または膨潤可能であることを意味する。
【0026】
重合体(A)の含有量は、塗布性および放射線感度に優れる組成物が得られ、強度に優れ、低屈折率でアウトガスの少ない硬化膜を容易に形成でき、さらに、高信頼性の表示装置を低コストで形成できる等の点から、本組成物中の全固形分100質量%に対し、好ましくは20〜85質量%、より好ましくは30〜80質量%、さらに好ましくは40〜75質量%である。
【0027】
《構成単位(a1)》
構成単位(a1)は、−CF2R(Rは水素原子、アルキル基または−OR1(R1は水素原子またはアルキル基))で表される基を含む構成単位である。
重合体(A)が構成単位(a1)を含むことで、特に、低屈折率で撥液性の硬化膜を容易に形成でき、高信頼性の表示装置を容易に形成することができる。
重合体(A)には、1種の構成単位(a1)が含まれていてもよく、2種以上の構成単位(a1)が含まれていてもよい。
【0028】
前記−CF2Rで表される基は、低屈折率で撥液性の硬化膜をより容易に形成でき、高信頼性の表示装置をより容易に形成することができる等の点から、下記式(1)で表される基であることが好ましい。
【0029】
【化2】
(式(1)中、Rは水素原子、アルキル基または−OR1(R1は水素原子またはアルキル基)であり、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子であり、Aはエステル結合またはエーテル結合であり、nは1〜10の整数である。*は結合部位を表す。)
【0030】
前記RおよびR1におけるアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。
前記Rとしては、重合体(A)の製造容易性、低屈折率の硬化膜をより容易に形成できる等の点から、水素原子が好ましい。
【0031】
前記R2およびR3としては、少なくとも1つがフッ素原子であることが好ましい。
【0032】
前記nとしては、塗布性に優れる組成物が得られること、低屈折率の硬化膜を容易に形成できること、および、光の取り出し効率に優れる表示装置を容易に形成できることにバランスよく優れる等の点から、好ましくは3〜8であり、より好ましくは4〜7であり、さらに好ましくは4〜6である。
【0033】
前記式(1)で表される基としては、好ましくは、下記式(2)または(3)で表される基が挙げられる。
【0034】
【化3】
(式(2)および(3)中、AおよびRはそれぞれ独立に、前記式(1)と同義であり、式(2)中、xは0〜2の整数であり、yは1〜8の整数であり、式(3)中、zは1〜5の整数である。)
【0035】
重合体(A)を合成する際に、例えば、−CF2Rで表される基を有するモノマー(a−1)を用いることで、構成単位(a1)を有する重合体を容易に得ることができる。
モノマー(a−1)としては、特に制限されないが、例えば、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
モノマー(a−1)は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0036】
重合体(A)における構成単位(a1)の割合は、重合体(A)100質量%に対して、31〜95質量%である。構成単位(a1)の割合がこの範囲にあると、本組成物は、優れた塗布性を有し、低屈折率でアウトガスが少なく、撥液性の硬化膜を形成でき、さらに、高信頼性の表示装置を低コストで形成できるという効果をバランスよく有する。
重合体(A)における構成単位(a1)の割合は、好ましくは40〜90質量%、より好ましくは50〜90質量%、さらに好ましくは60〜85質量%である。構成単位(a1)の割合がこの範囲にあると、前記効果に加え、さらに、現像性に優れる硬化膜を形成することができる。
【0037】
《構成単位(a2)》
構成単位(a2)は、酸性基を含む構成単位である。
重合体(A)が構成単位(a2)を含むことで、現像性、特に、アルカリ溶液を用いた現像性に優れる重合体となるため、本組成物から、所望のパターンを容易に形成することができる。
重合体(A)には、1種の構成単位(a2)が含まれていてもよく、2種以上の構成単位(a2)が含まれていてもよい。
【0038】
前記酸性基としては、特に制限されないが、本組成物の保存下で、下記架橋性基と反応しない基であることが好ましく、アルカリ溶液、特に、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液への溶解性等の点から、カルボキシル基、フェノール性水酸基、シラノール基、スルホン酸基および保護基で保護されたこれらの基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基であることが好ましく、カルボキシル基、フェノール性水酸基、シラノール基およびスルホン酸基がより好ましい。
【0039】
重合体(A)を合成する際に、酸性基、好ましくはカルボキシル基、フェノール性水酸基、シラノール基、スルホン酸基または保護基で保護されたこれらの基を有するモノマー(a−2)を用いることで、構成単位(a2)を有する重合体を容易に得ることができる。
モノマー(a−2)は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0040】
カルボキシル基を有するモノマー(a−2)としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などのジカルボン酸;2−マレイノロイルオキシエチルメタクリレート、2−サクシノロイルオキシエチルメタクリレート、2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチルメタクリレートなどのカルボキシル基およびエステル結合を有するメタクリル酸誘導体が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸、2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0041】
フェノール性水酸基を有するモノマー(a−2)としては、特に制限されないが、例えば、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニル−4−ヒドロキシベンゾエート、3−イソプロペニルフェノール、4−イソプロペニルフェノール等のフェノール性水酸基を有するビニル系モノマーが挙げられる。これらの中では4−イソプロペニルフェノールが好ましい。
【0042】
スルホン酸基を有するモノマー(a−2)としては、特に制限されないが、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。
【0043】
保護基で保護された基を有するモノマー(a−2)としては、前記モノマー(a−2)に、従来公知の方法で保護基を結合させたモノマー等が挙げられる。
該保護基としては、従来公知の保護基が挙げられ、特に制限されないが、
カルボキシル基の保護基としては、メチル基、エチル基、t−ブチル基またはベンジル基などのエステル形成基等が挙げられ、
フェノール性水酸基の保護基としては、メチル基、ベンジル基またはt−ブチル基などのエーテル形性基、メトキシメチル基などのアセタール形性基、アセチル基またはベンゾイル基などのアシル基、トリメチルシリル基またはt−ブチルジメチルシリル基などのシリルエーテル形性基等が挙げられる。
【0044】
また、保護基で保護されたシラノール基を有するモノマー(a−2)としては、特に制限されないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン等のアルコキシシリル基含有ビニル系モノマーの加水分解物が挙げられる。
【0045】
重合体(A)における構成単位(a2)の割合は、重合体(A)100質量%に対して、好ましくは5〜69質量%、より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。構成単位(a2)の割合がこの範囲にあると、本組成物は、優れた塗布性を有し、現像性に優れる低屈折率でアウトガスの少ない硬化膜を形成でき、さらに、高信頼性の表示装置を低コストで形成できるという効果をバランスよく有する。
【0046】
《重合体(A1)の合成方法》
重合体(A1)は、前記モノマー(a−1)および(a−2)を用いて重合することで容易に得ることができる。また、重合体(A1)の合成の際には、前記モノマー(a−1)および(a−2)以外のモノマー(a−3)を用いてもよい。
なお、重合体(A1)は、前記モノマー(a−1)および任意でモノマー(a−3)を用いて重合体を合成した後、得られた重合体が酸性基を有するように、従来公知の方法で酸性基を導入してもよい。
【0047】
前記モノマー(a−3)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルコキシエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の脂環式基含有エステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアリール基含有エステル;トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソボルニル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロベンジル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有(メタ)アクリレート;4−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)スチレン等のフッ素アルコール基含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどのビニル基含有芳香族化合物類;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ジメチルブタジエンなどの共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有重合性化合物;N−フェニルマレイミドなどのイミド基含有重合性化合物が挙げられる。
モノマー(a−3)は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0048】
重合体(A)におけるモノマー(a−3)由来の構成単位の割合は、重合体(A)100質量%に対して、好ましくは70質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0049】
前記モノマー(a−1)〜(a−3)の使用量は、該モノマー由来の構成単位の割合が前記範囲となるような量であることが好ましい。
【0050】
重合体(A1)は、例えば、前記モノマーのラジカル重合で合成することができる。ラジカル重合における重合触媒としては通常のラジカル重合開始剤が使用でき、例えば、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド等の有機過酸化物;過酸化水素が挙げられる。過酸化物をラジカル重合開始剤として使用する場合、過酸化物と還元剤とを組み合せてレドックス型の開始剤としてもよい。
【0051】
《重合体(A2)》
重合体(A2)は、前記構成単位(a1)と(a2)とを有し、さらに架橋性基を有すれば特に制限されず、前記モノマー(a−1)および(a−2)、必要により前記モノマー(a−3)と、下記モノマー(a−4)とを用いることで得ることができる。
重合体(A)が架橋性基を有することで、特に、アウトガスの少ない硬化膜を容易に形成でき、高信頼性の表示装置を容易に形成することができる。
【0052】
重合体(A)は、1種の架橋性基を有していてもよく、2種以上の架橋性基を有していてもよい。モノマー(a−4)は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0053】
前記架橋性基としては、本組成物の保存下で、前記構成単位(a1)や(a2)と反応しない架橋性の基であることが好ましく、エチレン性不飽和基、含酸素飽和ヘテロ環基、ヒドロキシ基、活性水素を有するアミノ基、アミド結合、有機基で置換されていてもよいアルコキシシラン基、保護基で保護されたこれらの基、および、ブロックイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基であることが好ましく、含酸素飽和ヘテロ環基がより好ましい。
【0054】
前記保護基としては、従来公知の保護基が挙げられ、具体的には、
ヒドロキシ基の保護基としては、前記フェノール性水酸基の保護基と同様の保護基が挙げられ、
アミノ基の保護基としては、t−ブトキシカルボニル基またはベンジルオキシカルボニル基などのカルバメート形成基、p−トルエンスルホニル基または2−ニトロベンゼンスルホニル基などのスルホンアミド形成基等が挙げられる。
【0055】
含酸素飽和ヘテロ環基としては、環を構成する原子数が3〜7個の環状エーテル基が好ましく、具体的には、オキシラニル基、オキセタニル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、テトラヒドロフラニル基等を挙げることができる。中でも、反応性の観点から、オキシラニル基、オキセタニル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基が好ましい。
【0056】
モノマー(a−4)としては特に制限されず、分子内に架橋性基および重合性基、好ましくは(メタ)アクリロイルオキシ基をそれぞれ1つ以上有する化合物であることが望ましい。
【0057】
含酸素飽和ヘテロ環基を有するモノマー(a−4)としては、好ましくは、下記式(10)で表される化合物が挙げられる。
【0058】
【化4】
【0059】
前記R4は水素原子またはメチル基である。
【0060】
前記R5は、単結合、−(C24O)q−(C36O)r−(C48O)s−で表される基または炭素数1〜12の炭化水素基である。
該q、rおよびsはそれぞれ独立に、0〜9の整数を示す。但し、q、rおよびsが同時に0になることはない。
前記−C24O−基、−C36O−基および−C48O−基は、任意の順序で結合していてもよい。
なお、前記−C24O−基は、エチレンオキシ基およびエタン−1,1−ジイルオキシ基を包含する連結基を意味し、−C36O−基は、プロパン−1,1−ジイルオキシ基、プロパン−1,2−ジイルオキシ基、プロパン−1,3−ジイルオキシ基、プロパン−2,2−ジイルオキシ基を包含する連結基を意味し、−C48O−はブタン−1,2−ジイルオキシ基、ブタン−1,3−ジイルオキシ基、ブタン−1,4−ジイルオキシ基、ブタン−2,2−ジイルオキシ基、ブタン−2,3−ジイルオキシ基等を包含する連結基を意味する。
【0061】
前記R6は、下記群(11)で表される何れかの基である。
【0062】
【化5】
(R7は、炭素数1〜6のアルキル基であり、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。)
【0063】
モノマー(a−4)としては、具体的には、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル等のエチレン性不飽和基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキセタン等の含酸素飽和ヘテロ環基含有(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸ジメチルアミノエチル等の活性水素基を有するアミノ基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド等のアミド結合含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸2−(O−[1'−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート等のブロックイソシアネート基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0064】
重合体(A2)におけるモノマー(a−4)由来の構成単位の割合は、光の取り出し効率に優れる表示装置を容易に得ることができる等の点から、重合体(A)100質量%に対して、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
【0065】
重合体(A2)は、前記モノマー(a−1)、(a−2)および(a−4)を、必要によりさらに前記モノマー(a−3)と共に用い、ラジカル重合等の重合をすることで得ることができる。前記モノマー(a−3)を用いない場合について具体的に例示すると、前記モノマー(a−1)、(a−2)および(a−4)を同時に反応させてもよいし、前記モノマー(a−1)および(a−2)を反応させて重合体(A1)を得た後、該重合体(A1)と前記モノマー(a−4)とを反応させてもよい。
【0066】
特に、架橋性基としてエチレン性不飽和基を有する重合体(A2)は、予めラジカル重合等の重合方法によって、カルボキシ基、エポキシ基、ヒドロキシ基、活性水素を有するアミノ基、フェノール性水酸基、(ブロック)イソシアネート基等の官能基を有する重合体(A')を合成し、該重合体と、該重合体に含まれる官能基と反応する基およびエチレン性不飽和基を有する化合物とを反応させることで得ることが好ましい。
【0067】
前記モノマー(a−1)〜(a−4)の使用量は、該モノマー由来の構成単位の割合が前記範囲となるような量であることが好ましい。
【0068】
前記重合体(A2)を合成する方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を用いればよい。
【0069】
例えば、前記重合体(A')とモノマー(a−4)との反応においては、反応促進の目的で触媒を用いてもよい。該触媒としては、特に制限されないが、例えば、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等のアミン類;テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム化合物;トリフェニルホスフィン;これらの混合物が挙げられる。
該触媒の使用量は、重合体(A')100質量部に対して、好ましくは0.1〜2.0質量部である。
【0070】
また、前記重合体(A')とモノマー(a−4)との反応においては、重合禁止剤を用いることが好ましい。該重合禁止剤としては、特に制限されないが、例えば、パラメトキシフェノール、ハイドロキノン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルが挙げられる。
該重合禁止剤の使用量は、その種類および反応条件によって適宜決定すればよいが、重合体(A')100質量部に対して、好ましくは0.1〜2.0質量部である。
【0071】
前記重合体(A')とモノマー(a−4)との反応は、反応速度の向上を目的として加熱することが好ましい。加熱温度は化合物(a−4)の種類等に応じて適宜設定すればよいが、通常60〜150℃の範囲である。
【0072】
[感光剤(B)]
前記感光剤(B)としては、例えば、光酸発生剤、光ラジカル重合開始剤が挙げられる。本組成物は、感光剤(B)を含有することで、感放射線特性を発揮することができ、かつ良好な放射線感度を有することができる。
感光剤(B)は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0073】
本組成物における感光剤(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常5〜100質量部であり、好ましくは5〜65質量部、より好ましくは10〜60質量部である。
感光剤(B)の含有量を前記範囲とすることで、現像液、特にアルカリ溶液等に対する放射線の照射部分と未照射部分との溶解度の差を大きくし、パターニング性能を向上させることができる。
【0074】
《光酸発生剤》
光酸発生剤は、放射線の照射を含む処理によって酸を発生する化合物である。
光酸発生剤としては、例えば、キノンジアジド化合物、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、N−スルホニルオキシイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物が挙げられる。これらの化合物を用いることで、ポジ型の感放射線特性を発揮する組成物を得ることができる。これらの中でも、キノンジアジド化合物が好ましい。
【0075】
《光ラジカル重合開始剤》
感光剤(B)として光ラジカル重合開始剤を用い、例えば、前記化合物(C)を用いることで、ネガ型の感放射線特性を発揮する組成物を得ることができる。
【0076】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ビイミダゾール化合物、トリアジン化合物、ベンゾフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、オキシムエステル化合物、アルキルフェノン化合物が挙げられる。これらの中でも、オキシムエステル化合物およびアルキルフェノン化合物が好ましい。
【0077】
オキシムエステル化合物としては、例えば、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)が挙げられる。
【0078】
アルキルフェノン化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンが挙げられる。
【0079】
[化合物(C)]
化合物(C)は、重合体(A)以外の化合物であり、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物である。化合物(C)としては、強度、耐熱性および絶縁性に優れる硬化膜を得ることができる等の点から、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が好ましい。
化合物(C)は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0080】
化合物(C)としては、例えば、多官能(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、特開2011−180478号公報および特開2013−76821号公報に記載された化合物が挙げられる。
【0081】
本組成物における化合物(C)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常1〜210質量部であり、好ましくは5〜160質量部、より好ましくは10〜150質量部、特に好ましくは30〜150質量部である。化合物(C)の含有量が前記範囲にあると、耐熱性により優れる硬化膜が得られる。
【0082】
[溶剤(D)]
本組成物は、溶剤(D)を含む。溶剤(D)を含むことで、本組成物の塗布性が向上する。
溶剤(D)は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0083】
溶剤(D)としては、例えば、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、ヒドロキシ基含有ケトン、環状エーテル、環状エステルが挙げられる。
【0084】
本組成物における溶剤(D)の含有量は、本組成物の固形分濃度が通常5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%となる量である。ここで固形分とは、溶剤(D)以外の全成分をいう。
【0085】
[その他の任意成分]
本組成物は、前記(A)および(D)成分ならびに必要に応じて用いられる(B)〜(C)成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記(A)〜(D)成分以外の、密着助剤(E)、界面活性剤(F)、無機フィラー(G)、遮光剤(H)等のその他の任意成分を含有してもよい。
その他の任意成分は、それぞれ1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0086】
《密着助剤(E)》
密着助剤(E)を用いることで、本組成物から得られる硬化膜と該硬化膜と接触する基板等の被着体との接着性を向上させることができる。密着助剤(E)は、特に無機物の被着体と前記硬化膜との接着性を向上させるために有用である。
密着助剤(E)としては、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられ、具体的には、特開2012−256023号公報、特開2013−242511号公報および特開2014−080578号公報に記載された化合物を挙げることができる。
【0087】
密着助剤(E)を用いる場合の本組成物中におけるその含有量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは0.01〜20質量部である。密着助剤(E)の含有量を前記範囲とすることで、被着体との密着性により優れる硬化膜を得ることができる。
【0088】
《界面活性剤(F)》
界面活性剤(F)を用いることで、本組成物の塗膜形成性を高めることができる。本組成物が界面活性剤(F)を含有することで、得られる塗膜の表面平滑性を向上でき、その結果、得られる硬化膜の膜厚均一性をより向上できる。
界面活性剤(F)としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が挙げられ、具体的には、特開2003−015278号公報および特開2013−231869号公報に記載された化合物を挙げることができる。
【0089】
界面活性剤(F)を用いる場合の本組成物中におけるその含有量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは0.01〜15質量部、さらに好ましくは0.05〜10質量部である。界面活性剤(F)の含有量を前記範囲とすることで、形成される塗膜の膜厚均一性をより向上することができる。
【0090】
《無機フィラー(G)》
無機フィラー(G)を用いることで、例えば、本組成物から得られる硬化膜の屈折率を調整することができる。
前記硬化膜の低屈折率化の際に好ましい無機フィラーとしては、例えば中空の無機粒子が挙げられ、具体的には中空シリカ粒子が挙げられる。中空シリカ粒子の屈折率は、通常1.20〜1.45、好ましくは1.25〜1.40である。
本組成物は、前記特定の重合体(A)を用いるため、このような中空の無機粒子を用いなくても、低屈折率の硬化膜を得ることができる。このため、低コストの点からは、該中空の無機粒子を用いないことが好ましいが、より低屈折率の硬化膜を得ることができる等の点から、該中空の無機粒子を用いてもよい。
【0091】
無機フィラー(G)を用いる場合の本組成物中におけるその含有量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは150質量部以下、より好ましくは140質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下である。
【0092】
《遮光剤(H)》
遮光剤(H)を用いることで、例えば、本組成物から得られる硬化膜の遮光性を調整することができ、これにより、該硬化膜を含む表示装置の発光ムラをより低減することができる。
好ましい遮光剤としては、例えば、顔料または染料、具体的には黒色の顔料または染料が挙げられる。顔料または染料としては、具体的には、特開2011−70156号公報、特開2012−237952号公報、国際公開第2012/133382号公報、特開2013−210578号公報、特開2010−244027号公報、特開2010−254964号公報、特開2011−59673号公報、特開2011−118365号公報、特許第5265844号公報に記載の顔料または染料等が挙げられる。
【0093】
遮光剤(H)を用いる場合の本組成物中におけるその含有量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは1〜80質量部、さらに好ましくは5〜50質量部である。
【0094】
〔硬化膜〕
本発明に係る硬化膜は、前記本組成物を用いて形成される。
本組成物は、塗布性に優れるため、表面平滑性および膜厚均一性に優れる硬化膜を得ることができる。また、前記硬化膜として、所望形状(例:微細かつ精巧なパターン)の硬化膜が必要な場合には、本組成物は、感放射線性に優れ、かつ、現像性に優れる構成にすることも容易であるため、このような所望形状の硬化膜を容易に形成することができる。
【0095】
また、本組成物は前記重合体(A)を含むため、該組成物を用いることで、撥液性の硬化膜を得ることができる。
従来の有機EL素子における発光材料層は蒸着で形成されており、該蒸着工程が有機EL素子の生産効率を向上できない原因となっている。このため、発光材料層の形成方法を蒸着からインクジェット塗布などの塗布方法等に変更することが考えられている。このように発光材料層を塗布方法等により形成する場合であって、撥液性隔壁を用いる場合には、塗布に用いられる発光材料含有組成物の隔壁への付着を抑制することができる。
従って、前記硬化膜を撥液性隔壁として用いれば、発光材料層等を塗布方法等により形成することができ、このような方法を用いても、塗布に用いられる発光材料含有組成物の隔壁への付着を抑制することができるため、各ピクセルを構成する発光材料が混ざりにくく、所定の表示性を示す表示装置を容易に得ることができる。
【0096】
前記硬化膜の25℃における波長589nmでの屈折率は、好ましくは1.40〜1.55であり、より好ましくは1.40〜1.52、特に好ましくは1.40〜1.50である。
屈折率が前記範囲にあると、発光ムラが起こり難く、光の取り出し効率の高い表示装置を容易に得ることができ、消費電力の少ない表示装置を容易に得ることができる。
屈折率は具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0097】
前記硬化膜の25℃における水接触角は、好ましくは85°〜120°であり、より好ましくは90°〜115°、特に好ましくは90°〜110°である。
水接触角は具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
硬化膜の水接触角が前記範囲にあると、該硬化膜は、撥液性硬化膜として、特に、撥液性隔壁として好適に使用することができる。
【0098】
前記硬化膜の膜厚は、所望の用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、成膜やパターニングの容易性を考えると、好ましくは1.0〜10.0μm、より好ましくは1.0〜8.0μm、さらに好ましくは1.0〜6.0μmである。
【0099】
[硬化膜の製造方法]
前記硬化膜は、本組成物から塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射する工程を含む方法で製造することができ、好ましくは、本組成物を、硬化膜を形成したい箇所に塗布し、必要によりプリベークすることで塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射し、必要によりポストベークする工程を含む方法で製造することができる。
例えば、前記保護基で保護された基やブロックイソシアネート基を有する重合体を用いる場合、保護基(ブロック基)を脱保護する工程、例えば加熱工程を含むことが好ましい。
【0100】
前記硬化膜を形成したい箇所としては、例えば、樹脂基板、ガラス基板、シリコンウエハ、製造途中の有機EL素子において、例えばTFTやその配線が形成されたTFT基板が挙げられる。
TFT基板は、例えば、支持基板と、第1電極に対応して支持基板に設けられた薄膜トランジスタ(TFT)と、TFTを被覆する平坦化層とを有する。例えば、第1電極は、前記平坦化層上に形成されており、前記平坦化層を貫通するスルーホールに形成された配線を介して、前記TFTと接続される。
【0101】
本組成物を塗布する方法としては、特に制限されないが、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法が挙げられる。これらの中でも、スピンコート法およびスリットダイ塗布法が好ましい。
【0102】
前記プリベークの条件としては、本組成物の組成等によっても異なるが、例えば、加熱温度を60〜130℃とし、加熱時間を30秒間〜15分間程度とする条件が挙げられる。加熱処理には、例えば、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を使用することができる。
【0103】
前記放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線が挙げられる。可視光線としては、例えば、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)が挙げられる。紫外線としては、例えば、i線(波長365nm)が挙げられる。遠紫外線としては、例えば、KrFエキシマレーザによるレーザ光が挙げられる。X線としては、例えば、シンクロトロン放射線が挙げられる。荷電粒子線としては、例えば、電子線が挙げられる。これらの放射線の中でも、可視光線および紫外線が好ましく、可視光線および紫外線の中でもg線および/またはi線を含む放射線が特に好ましい。
【0104】
i線を含む放射線を用いる場合、露光量は、好ましくは6000mJ/cm2以下、より好ましくは20〜2000mJ/cm2である。
【0105】
前記ポストベークの条件としては、特に限定されないが、例えば、加熱温度を130℃を超えて300℃以下とし、加熱時間を5分間〜90分間程度とする条件が挙げられる。前記ポストベークとしては、2回以上の加熱工程を行うステップベーク法等を用いることもできる。加熱処理には、例えば、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を使用することができる。
【0106】
[硬化膜の用途]
前記硬化膜は、前記効果を有するため、表示装置に好適に用いることができ、より具体的には隔壁に好適に用いることができる。
このため、本組成物は、好ましくは表示装置形成用組成物であり、より好ましくは隔壁形成用組成物である。
表示装置としては、例えば、自発光型ディスプレイ、特に有機ELディスプレイが挙げられる。
【0107】
前記硬化膜を含む表示装置としては、具体的には、基板と、前記基板上に形成された複数の画素とを有し、各画素は第1隔壁により区画されており、さらに各画素は第2隔壁により複数のサブ画素に区画されている装置が挙げられる。
そして、この装置における第1隔壁および第2隔壁が前記硬化膜であり、本組成物を用いて形成されるパターン化膜であることが好ましい。
【0108】
このような装置の一部の概略断面模式図を図1に示す。
図1では、基板100上に、複数の第1電極110と、複数の第1隔壁120とが形成されている。第1隔壁120は第1電極110の端部(周縁部)を覆い、それぞれ第1電極110を部分的に露出させるように形成されている。第1隔壁120により、複数の画素が区画されており、さらに、各画素は、第2隔壁121によりサブ画素に区画されている。
【0109】
前記第1隔壁および第2隔壁は、一体化して形成されることが好ましい。すなわち、第1隔壁および第2隔壁は、同一の材料から形成された隔壁であることが好ましく、同一の工程で同時に形成された隔壁であることがより好ましい。例えば、本組成物を用いて塗膜を形成し、この塗膜に対して所定のパターンマスクを介して露光現像する工程を含む方法により、好ましくは、前記硬化膜の製造方法と同様の方法で塗膜を形成した後、所定のパターンマスクを介して前記と同様の方法で放射線を照射し、次いで現像し、必要により前記と同様の方法でポストベークする工程を含む方法により、同一の材料からなる第1隔壁および第2隔壁を形成することができる。
【0110】
前記現像に用いられる現像液としては、アルカリ水溶液が好ましい。アルカリ水溶液に含まれるアルカリ性化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の特開2012−088459号公報の段落[0240]に記載された化合物が挙げられる。アルカリ水溶液におけるアルカリ性化合物の濃度としては、適当な現像性を得る等の点から、0.1〜5.0質量%が好ましい。
【0111】
現像方法としては、例えば、液盛り法(パドル法)、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法が挙げられる。現像時間は、本組成物の組成によって異なるが、通常10〜180秒間程度である。このような現像処理に続いて、例えば流水洗浄を30〜90秒間行った後、例えば圧縮空気や圧縮窒素で風乾することによって、所望のパターンを形成することができる。
【0112】
なお、現像した後ポストベークする前に、パターンに対してリンス処理や分解処理を行ってもよい。リンス処理では、溶剤(D)として挙げた溶剤を用い、塗膜を洗浄することが好ましい。分解処理では、高圧水銀灯等による放射線を全面に照射(後露光)することで、パターン中に残存した感光剤(B)を分解することができる。この後露光における露光量は、好ましくは1000〜5000mJ/cm2程度である。
【0113】
このようにして得られた第1隔壁および第2隔壁の断面形状は、図1に示すような順テーパー状であることが好ましい。なお、順テーパー状とは、第1隔壁120や第2隔壁121において図1に示す角度θが90°未満であることを意味する。以下、この角度θを「テーパー角度」ともいう。
テーパー角度θは、好ましくは80°以下、より好ましくは40〜80°、さらに好ましくは60〜80°である。
テーパー角度は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
テーパー角度は、例えば、露光量、現像時間、ポストベーク温度、ポストベーク時間、現像後の後露光等により調整することができる。
【0114】
第1隔壁および第2隔壁の断面形状が順テーパー状であると、隔壁形成後に発光層や第2電極等を形成する場合でも、境界部分においてこれらの膜が滑らかに形成され、段差に起因する膜厚ムラなどを低減させることができ、安定な特性を有する表示装置を得ることができる。
【0115】
前記表示装置としては、具体的には、TFT基板上に設けられ、かつ、TFTと接続された第1電極と、前記TFT基板の面上を複数の領域に区画する第1隔壁および第2電極と、前記隔壁により区画された領域(凹部)において第1電極上に形成された有機発光層と、有機発光層上に設けられた第2電極とを含む有機EL素子を有する、有機EL装置であることが好ましい。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0117】
[GPC分析]
下記合成例で得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、以下の条件で測定した。
・標準物質:ポリスチレン
・装置 :東ソー(株)製、商品名:HLC−8020
・カラム :東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSK gel GMHXL 2本、TSK gel G2000HXLを順次連結したもの
・溶媒 :テトラヒドロフラン
・サンプル濃度:0.7質量%
・注入量 :70μL
・流速 :1mL/min
【0118】
<重合体(A)の合成>
[合成例A1]重合体(A−1)の合成
フラスコ内を窒素置換した後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8gを溶解したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液250.0gを仕込んだ。引き続きメタクリル酸30gおよび1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート70gを仕込んだ後、ゆるやかに攪拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持した後、100℃で1時間加熱して重合を終結させた。その後、得られた溶液を多量のメタノールに滴下し反応物を凝固させた。この凝固物を水洗後、テトラヒドロフラン200gに再溶解させ、多量のメタノールで再度凝固させることで、凝固物を108g得た。
【0119】
得られた凝固物108gと、グリシジルメタクリレート7.2gと、トリフェニルホスフィン0.48gと、パラメトキシフェノール0.48gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250gとを仕込み、120℃で8時間加熱撹拌することで、重合体(A−1)を得た。
得られた重合体(A−1)のMwは9,600であった。
【0120】
[合成例2]重合体(A−2)の合成
メタクリル酸を60g、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレートを40g用いたこと以外は合成例1と同様にして重合体(A−2)を合成した。
得られた重合体(A−2)のMwは9,900であった。
【0121】
[合成例3]重合体(A−3)の合成
メタクリル酸を10g、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレートを90g用いたこと以外は合成例1と同様にして重合体(A−3)を合成した。
得られた重合体(A−3)のMwは9,400であった。
【0122】
[合成例4]重合体(A−4)の合成
1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレートの代わりに1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルアクリレート(ダイキン工業(株)製)を用いたこと以外は合成例1と同様にして重合体(A−4)を合成した。
得られた重合体(A−4)のMwは9,400であった。
【0123】
[合成例5]重合体(A−5)の合成
1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレートの代わりに1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート(ダイキン工業(株)製)を用いたこと以外は合成例1と同様にして重合体(A−5)を合成した。
得られた重合体(A−5)のMwは9,900であった。
【0124】
[合成例6]重合体(A−6)の合成
合成例1と同様の方法で得られた凝固物を重合体(A−6)とした。
得られた重合体(A−6)のMwは9,000であった。
【0125】
[合成例7]重合体(A−7)の合成
フラスコ内を窒素置換した後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8gを溶解したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液250.0gを仕込んだ。引き続きメタクリル酸20g、グリシジルメタクリレート20gおよび1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート60gを仕込んだ後、ゆるやかに攪拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持した。その後、得られた溶液を多量のメタノールに滴下し反応物を凝固させた。この凝固物を水洗後、テトラヒドロフラン200gに再溶解させ、多量のメタノールで再度凝固させることで、重合体(A−7)を得た。
得られた重合体(A−7)のMwは8,800であった。
【0126】
[合成例8]重合体(A−8)の合成
グリシジルメタクリレートを用いず、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレートを80g用いたこと以外は合成例7と同様にして重合体(A−8)を合成した。
得られた重合体(A−8)のMwは8,900であった。
【0127】
[合成例9]重合体(A−9)の合成
1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレートの代わりに1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート(ダイキン工業(株)製)を用いたこと以外は合成例7と同様にして重合体(A−9)を合成した。
得られた重合体(A−9)のMwは9,000であった。
【0128】
[合成例10]重合体(A−10)の合成
1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレートの代わりに2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレートを用いたこと以外は合成例6と同様にして重合体(A−10)を合成した。
得られた重合体(A−10)のMwは9,800であった。
【0129】
[合成例11]重合体(A−11)の合成
1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレートの代わりにメタクリル酸ベンジルを用いたこと以外は合成例6と同様にして重合体(A−11)を合成した。
得られた重合体(A−11)のMwは10,500であった。
【0130】
[合成例12]重合体(A−12)の合成
メタクリル酸を80g、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレートを20g用いたこと以外は合成例6と同様にして重合体(A−12)を合成した。
得られた重合体(A−12)のMwは9,800であった。
【0131】
[合成例13]重合体(A−13)の合成
グリシジルメタクリレートの代わりにメタクリル酸ベンジルを60g、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレートを20g用いたこと以外は合成例7と同様にして重合体(A−13)を合成した。
得られた重合体(A−13)のMwは8,800であった。
【0132】
【表1】
【0133】
[実施例1]
重合体(A−1)55質量部、感光剤として2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(BASF社製の「IRGACURE 379EG」、以下「感光剤−1」ともいう。)10質量部、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(C)として東亞合成(株)製の「M−405」30質量部、密着助剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製の「KBM−573」)4質量部、および界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤(東レダウコーニング(株)製の「SH8400」)1質量部を混合し、固形分濃度が30質量%となるように、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合溶剤(質量比30:20:50)を添加し、撹拌した後、口径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、画素形成用組成物を調製した。
【0134】
[実施例2〜7、実施例11〜12および比較例1〜3]
重合体(A−1)の代わりに、表2に示す重合体(A−1)〜(A−7)、重合体(A−10)〜(A−12)を用いたこと以外は実施例1と同様にして画素形成用組成物を調製した。
【0135】
[実施例8]
重合体(A−7)85質量部、感光剤として4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(48質量%)と6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソナフタレン−1−スルホン酸(52質量%)とのエステル(以下「感光剤−2」ともいう。)10質量部、密着助剤としてN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(「KBM−573」)4質量部、および界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤(「SH8400」)1質量部を混合し、固形分濃度が30質量%となるように、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合溶剤(質量比30:20:50)を添加し、撹拌した後、口径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、画素形成用組成物を調製した。
【0136】
[実施例9〜10および比較例4]
重合体(A−7)の代わりに、それぞれ重合体(A−8)〜(A−9)または重合体(A−13)を用いたこと以外は実施例8と同様にして画素形成用組成物を調製した。
【0137】
[スリット塗布性]
スリット間隙が50μm、塗布有効幅が200mmのスリットヘッドを備えたスリット塗布装置を用いて、乾燥後の膜厚が4.0μmになるようにスリットと基板間との間隙を調節して、50mm/秒の塗布スピードで各実施例・比較例で得られた画素形成用組成物を、幅300mm、長さ300mm、厚み0.7mmの矩形状ガラス基板上に塗布し、長さ250mmの塗布面を得た。塗布後、ホットプレート上で90℃にて2分間プリベークし、次いで、塗布面を目視にて観察してスジ状のムラの本数をカウントし、下記基準で評価した。結果を表2に示す。
・AA:塗布面にスジ状のムラが全くない。
・BB:スジ状のムラが1〜5本見られる。
・CC:スジ状のムラが6本以上見られる。
【0138】
《隔壁の形成方法》
クリーントラック(東京エレクトロン(株)製:Mark VZ)を用いて、シリコン基板上に各実施例・比較例で得られた画素形成用組成物を塗布した後、ホットプレート上で90℃にて2分間プリベークして、厚さ5μmの塗膜を形成した。得られる隔膜の平面図が図2(A)のような形状となるように、直径5μmの円板状のパターンマスクを複数枚、得られた塗膜上に配置し、露光機((株)ニコン製のi線ステッパー「NSR−2005i10D」)を用いて、波長365nmにおける露光量150mJ/cm2で露光した。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて25℃にて120秒間液盛り法で現像し、超純水で1分間流水洗浄を行い、乾燥させて、シリコン基板上に隔壁を形成した。この塗膜をホットプレート上で230℃にて45分間ポストベークして、厚さ4μmの隔壁を形成した。
【0139】
[現像性]
前記《隔壁の形成方法》において、現像後の未露光部が完全に溶解したか否かを目視で確認した。
評価基準は、開口部が直径5μmのパターンを形成し、かつ、隔壁の剥がれまたは現像残渣なく隔壁が形成された場合を「良好」とし、現像残渣がある場合、開口部が直径5μmのパターンを形成できない場合、または、隔壁の剥がれが発生した場合を「不良」とした。
【0140】
[テーパー角度]
前記《隔壁の形成方法》において、得られた隔壁の基板面からの立ち上がり角度(テーパー角度)をSEM((株)日立ハイテクノロジーズ製の「SU3500」)で観察した。
【0141】
[屈折率]
前記《隔壁の形成方法》において、パターンマスクを用いず、現像を行わないこと以外は同様の方法により、シリコン基板上に厚さ4μmの隔壁(硬化膜)を形成した。得られた硬化膜について、JIS K7105に従い、(株)アタゴ製アッベ屈折計を用いて、25℃における波長589nmでの屈折率を測定した。
【0142】
[水接触角]
前記《隔壁の形成方法》において、パターンマスクを用いず、現像を行わないこと以外は同様の方法により、シリコン基板上に厚さ4μmの隔壁(硬化膜)を形成した。続いて、協和界面科学(株)製接触角計DMo−701を用いて、得られた硬化膜の表面に1.5μLの超純水(25℃)を滴下し、液適法により25℃における水接触角を測定した。
【0143】
[アウトガス]
前記《隔壁の形成方法》において、パターンマスクを用いず、現像を行わないこと以外は同様の方法により、シリコン基板上に厚さ4μmの隔壁(硬化膜)を形成した。続いて、シリコン基板を1×5cmの大きさにカットした後、日本分析工業(株)製JTD−505と(株)島津製作所製GC−QP−2010とからなるP&T−GCMS装置を用いて、230℃で15分間ベークを行い、クロマトグラムを得た。硬化膜を用いて測定したクロマトグラムのC18のピーク面積と、別途同装置を用いて測定した標準試料C18のクロマトグラムのピーク面積を用いて、下記式よりアウトガス量を算出した。なお、下記標準試料の導入量とは、標準試料C18のクロマトグラムを得る際に前記装置に導入した該標準試料の導入量のことである。
アウトガス量(μg)=(硬化膜のクロマトグラムのピーク面積/標準試料のピーク面積)×標準試料の導入量(μg)
評価基準は、前記アウトガス量が10μg未満である場合をAA、10〜50μgである場合をBB、50μgを超える場合をCCとした。
【0144】
《素子特性評価》
ガラス基板(コーニング社製の「コーニング7059」)を用い、このガラス基板上にITOをスパッタし、続いて感光性レジスト(「NN700」、JSR(株)製)をスピンコート法で塗布して乾燥し、所定のパターンマスクを介して露光した。露光後現像し、加熱硬化させて、所定のレジストパターンを形成した。続いてエッチング液を用いて、ITO膜をエッチングして、アレイ状のITO膜のパターン(ITO透明電極)を形成した後、レジストパターンを剥離液で除去した。
【0145】
ITO透明電極が形成されたガラス基板上に、感光性レジスト(「NN700」、JSR(株)製)をスピンコート法で膜厚が5μmとなるように塗布した後、ホットプレート上で90℃にて2分間プリベークして、塗膜を形成した。次いで、この塗膜を所定のパターンマスクを介して露光した。露光後、現像し、クリーンオーブン中で230℃にて30分間ポストベークした。このようにして、ITO透明電極の一部のみが露出したコンタクトホールを有する平坦化層を、ガラス基板上に形成した。ポストベーク後の平坦化層の膜厚は4μmであった。以上のようにして平坦化層が形成されたガラス基板を複数用意し、以下の工程で用いた。
【0146】
Alターゲットを用いてDCスパッタ法により、平坦化層を形成したガラス基板の平坦化層上に膜厚100nmのAl膜を形成した。続いて感光性レジスト(「NN700」、JSR(株)製)をスピンコート法で塗布して乾燥し、所定のパターンマスクを介して露光した。露光後現像し、加熱硬化させて、所定のレジストパターンを形成した。続いて混酸のエッチング液を用いてAl膜をエッチングして、所定のAl膜のパターンを形成した後、レジストパターンを剥離液で除去した。その後、ガラス基板をスパッタ装置に移送して、ITOターゲットを用いてDCマグネトロンリアクティブスパッタリング法により、Alパターン上に膜厚20nmのITO膜を形成した。続いて感光性レジスト(「NN700」、JSR(株)製)をスピンコート法で塗布して乾燥し、所定のパターンマスクを介して露光した。露光後、現像し、加熱硬化させて、所定のレジストパターンを形成した。続いてエッチング液を用いてITO膜をエッチングして、Al膜上にAl膜と同様のITO膜のパターンを形成した後、レジストパターンを剥離液で除去した。このようにしてAl膜とITO膜とからなる陽極を有する陽極基板を形成した。
【0147】
シリコン基板の代わりに、得られた陽極基板を用い、該陽極基板の陽極上に、前記《隔壁の形成方法》と同様の方法によって、各実施例・比較例で得られた画素形成用組成物を用いて、基板上の領域を(メイン)画素ごとに区画する第1隔壁、および各画素における陽極上の領域をサブ画素ごとに区画する第2隔壁を形成した(図2(A)参照)。得られた第1および第2隔壁の膜厚は4μmであった。
【0148】
続いて、陽極および隔壁が形成された基板に対して、真空蒸着法により有機EL素子を形成した。有機EL素子は以下の手順により作成した。
陽極および隔壁が形成された基板を超音波洗浄し、続いて洗浄後の基板をN2雰囲気中に移送し、200℃で3時間乾燥した。次いで、乾燥後の基板を酸素プラズマ処理装置へ移し、真空排気し、基板付近に設けたリング状電極に50WのRF電力を印加し、酸素プラズマ洗浄処理を行った。この時の酸素圧力を0.6Pa、処理時間を40秒とした。
【0149】
洗浄処理後の基板を真空成膜室へ移動し、成膜室を1E−4Paまで排気した後、該基板上に、所定パターンの蒸着マスクを用いて、正孔注入性を有する酸化モリブデン(MoOx)の層を抵抗加熱蒸着法により成膜速度0.004〜0.005nm/secの条件で成膜し、膜厚1nmの正孔注入層を形成した。
【0150】
抵抗加熱蒸着法により正孔注入層を形成した際と同様の排気条件となるよう排気した後、正孔注入層上に、所定パターンの蒸着マスクを用いて、正孔輸送性を有する4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)の層を、成膜速度0.2〜0.3nm/secの条件で成膜し、膜厚35nmの正孔輸送層を形成した。
【0151】
抵抗加熱蒸着法により正孔輸送層を形成した際と同様の排気条件となるよう排気した後、正孔輸送層上に、所定パターンの蒸着マスクを用いて、緑色の発光材料としてアルキレート錯体であるAlq3の層を、成膜速度0.5nm/sec以下の条件で成膜し、膜厚35nmの発光層を形成した。
【0152】
抵抗加熱蒸着法により正孔注入層を形成した際と同様の排気条件となるよう排気した後、発光層上に、フッ化リチウムの層を、成膜速度0.004nm/sec以下の条件で成膜し、膜厚0.8nmの電子注入層を形成した。
【0153】
続いて、別の成膜室(スパッタ室)に電子注入層を形成した基板を移送し、電子注入層上に、ITOターゲットを用いてRFスパッタリング法により、膜厚130nmの陰極を形成した。
【0154】
グローブボックスに、陰極を形成した基板を移送し、N2リークして、吸湿材を貼り付けておいた封止ガラス基板を、UV硬化型のアクリル系接着剤を用いて、吸湿材が陰極側となるように前記基板と接着させ、該基板を封止した。
以上のようにして、評価用有機EL素子を得た。
【0155】
[点灯評価]
評価用有機EL素子の1つのメイン画素(第1隔壁で囲まれた部分=16個のサブ画素を有する部分)を点灯させ、点灯状態を評価した。評価結果を表2に示す。評価は、全てのサブ画素で点灯が観測された場合をAA、いずれかのサブ画素で点灯が観測されなかった場合をBB、全てのサブ画素で点灯が観測されなかった場合をCCとした。
【0156】
[発光ムラ評価]
評価用有機EL素子の1つのメイン画素を点灯させ、その際の輝度を評価した。その際の各発光ピクセル(サブ画素)の輝度を測定し、全ての発光ピクセルの輝度がその中央値に対して±5%未満の範囲にある場合をAAとし、発光ピクセルの輝度の最大値または最小値が中央値に対して、±5%以上±10%未満の範囲にある場合をBB、±10%以上の範囲にある場合をCCとした。
【0157】
輝度測定は(株)トプコンテクノハウス製の輝度計SR−3ARを用いて暗室中で行い、輝度測定領域が16個のサブ画素(第2隔壁で囲まれた部分)を含む1つのメイン画素全体(第1隔壁で囲まれた部分)を含むように、輝度測定領域を設定した。
【0158】
[光取り出し評価]
評価用有機EL素子の1つのメイン画素を点灯させ、その際の輝度を前記[発光ムラ評価]と同様に測定し、以下の基準にて評価した。
【0159】
まず、図2(B)に示すような、前記評価用有機EL素子における、1つのメイン画素中に含まれる16個のサブ画素の合計面積と同程度の面積を有するメイン画素のみの、比較用有機EL素子を、前記評価用有機EL素子を作成した方法と同様の方法で作成し、該素子を用いて輝度を測定した。
【0160】
評価用有機EL素子の16個のサブ画素の平均輝度が比較用有機EL素子の輝度に対して、105%を超えている場合をAA、100%以上105%以下の場合をBB、100%未満の場合をCCとした。
【0161】
【表2】
【符号の説明】
【0162】
100…基板、110…第1電極、120…第1隔壁、121…第2隔壁、PC…画素、SPC…サブ画素(開口部)
図1
図2