特許第6848708号(P6848708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848708
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】油路切替装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/00 20060101AFI20210315BHJP
【FI】
   F16H61/00
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-116717(P2017-116717)
(22)【出願日】2017年6月14日
(65)【公開番号】特開2019-2455(P2019-2455A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江浪 健宏
【審査官】 古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−159176(JP,A)
【文献】 特開2016−041966(JP,A)
【文献】 特開2008−088992(JP,A)
【文献】 特開昭60−196451(JP,A)
【文献】 特開2018−80771(JP,A)
【文献】 特開平9−72410(JP,A)
【文献】 特開平10−238616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
F16H 61/16−61/24
F16H 61/66−61/70
F16H 63/40−63/50
F16H 57/04
F16N 27/02
F16D 48/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧源から被潤滑部へ潤滑油を供給する油圧回路に設けられる油路切替装置であって、
前記潤滑油が供給される第1入力ポート、第2入力ポート、およびパイロットポートと、第1出力ポートおよび第2出力ポートと、前記各ポートと接続された空間と、を備えたハウジングと、
前記空間内を一方または他方に摺動する第1摺動部材と、
前記第1摺動部材と並んで前記空間内に配置され、前記空間内を一方または他方に摺動する第2摺動部材と、
前記第1摺動部材と前記第2摺動部材との間に設けられ、前記第1摺動部材を前記第2摺動部材から離間させる方向へ付勢する第1弾性部材と、を有し、
前記第1弾性部材の付勢力によって前記第1摺動部材が前記第1入力ポートを閉塞する位置に移動させられた第1状態と、
前記第2入力ポートに供給された油圧によって前記第1摺動部材が前記第1入力ポートと前記第1出力ポートとが連通する位置に移動させられ、前記第2摺動部材が前記第1摺動部材に当接して第1の位置に移動させられた第2状態と、
前記第2入力ポートに供給された油圧および前記パイロットポートに供給された油圧によって前記第2摺動部材が前記第1摺動部材に当接して第2の位置に移動させられ、前記第1摺動部材が前記第1入力ポートと前記第2出力ポートとが連通する位置に移動させられた第3状態と、のいずれかに切り替えられる、
油路切替装置。
【請求項2】
前記第2摺動部材の受圧面積は、前記第1摺動部材の受圧面積よりも大きい、
請求項1記載の油路切替装置。
【請求項3】
前記第1入力ポートには、トルクコンバータからの前記潤滑油が供給され、
前記第2入力ポートには、ライン圧に調圧された前記潤滑油が供給され、
前記パイロットポートには、ソレノイドバルブからライン圧に調圧された前記潤滑油が供給され、
前記第1出力ポートは、前記第1入力ポートに供給された潤滑油を、ATFクーラを介して前記被潤滑部に接続された油路に供給し、
前記第2出力ポートは、前記第1入力ポートに供給された潤滑油を、前記ATFクーラを介さずに前記被潤滑部に接続された油路に供給する、
請求項1または2に記載の油路切替装置。
【請求項4】
前記空間には、前記第2摺動部材を前記第2の位置に停止させる第1ストッパと、前記第2摺動部材を前記第1の位置に停止させる第2ストッパと、が設けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の油路切替装置。
【請求項5】
前記第2摺動部材を前記第1摺動部材へ向けて付勢する第2弾性部材をさらに有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の油路切替装置。
【請求項6】
前記第1摺動部材は、第1凹部および第2凹部を有し、
前記第1状態では、前記第1入力ポートは、前記第2凹部によって閉塞され、
前記第2状態では、前記第2出力ポートは、前記第2凹部により閉塞されるとともに、前記第1入力ポートと前記第1出力ポートとが前記第1凹部を介して連通し、
前記第3状態では、前記第1出力ポートが前記第1凹部により閉塞されるとともに、前記第1入力ポートと前記第2出力ポートとが前記第2凹部を介して連通する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の油路切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧回路に設けられる油路切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オイルパンから汲み上げた潤滑油を、変速機内のクラッチ等の被潤滑部に供給する油圧回路が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような油圧回路には、電磁弁の出力に応じて油路を切り替える油路切替バルブと、内燃機関の停止時に油路を遮断する油路遮断バルブとを備えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−245790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、油路切替バルブと油路遮断バルブとを別体で設ける場合、製造コストがかかるという問題や、設置スペースが増大するためレイアウト性が悪化するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、コストの低減およびレイアウト性の向上を実現できる油路切替装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の油路切替装置は、油圧源から被潤滑部へ潤滑油を供給する油圧回路に設けられる油路切替装置であって、前記潤滑油が供給される第1入力ポート、第2入力ポート、およびパイロットポートと、第1出力ポートおよび第2出力ポートと、前記各ポートと接続された空間と、を備えたハウジングと、前記空間内を一方または他方に摺動する第1摺動部材と、前記第1摺動部材と並んで前記空間内に配置され、前記空間内を一方または他方に摺動する第2摺動部材と、前記第1摺動部材と前記第2摺動部材との間に設けられ、前記第1摺動部材を前記第2摺動部材から離間させる方向へ付勢する第1弾性部材と、を有し、前記第1弾性部材の付勢力によって前記第1摺動部材が前記第1入力ポートを閉塞する位置に移動させられた第1状態と、前記第2入力ポートに供給された油圧によって前記第1摺動部材が前記第1入力ポートと前記第1出力ポートとが連通する位置に移動させられ、前記第2摺動部材が前記第1摺動部材に当接して第1の位置に移動させられた第2状態と、前記第2入力ポートに供給された油圧および前記パイロットポートに供給された油圧によって前記第2摺動部材が前記第1摺動部材に当接して第2の位置に移動させられ、前記第1摺動部材が前記第1入力ポートと前記第2出力ポートとが連通する位置に移動させられた第3状態と、のいずれかに切り替えられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コストの低減およびレイアウト性の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る油圧回路を示す図
図2】本発明の実施の形態に係る油路切替装置の第1状態を示す断面図
図3】本発明の実施の形態に係る油路切替装置の第2状態を示す断面図
図4】本発明の実施の形態に係る油路切替装置の第3状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明の実施の形態に係る油圧回路100について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る油圧回路100を示す図である。
【0012】
図1に示す油圧回路100は、クラッチおよび変速機を備えた車両に搭載される。
【0013】
図1に示すように、エンジン(例えばディーゼルエンジン。図示略)で駆動されるオイルポンプ2によってオイルパン1からフィルタ1aを介して吸い上げられた潤滑油は、ライン圧油路L1に供給され、ライン圧制御バルブ3により、ライン圧に調圧される。ライン圧油路L1の潤滑油は、クラッチ制御用油路および変速制御用油路(ともに図示略)に供給され、クラッチの断接制御および変速機の変速制御に用いられる。
【0014】
また、ライン圧油路L1の潤滑油は、油路L2(第2油路の一例)および油路L3(第1油路の一例)に供給される。油路L2および油路L3は、油路切替装置5に接続されている。油路L3には、トルクコンバータ4が設けられている。
【0015】
油路切替装置5は、第1入力ポート5a、第2入力ポート5b、第1出力ポート5c、第2出力ポート5d、およびパイロットポート5eを有する。第1入力ポート5aには、トルクコンバータ4から潤滑油が供給され、第2入力ポート5bには、油路L2から潤滑油が供給される。パイロットポート5eには、後述のソレノイドバルブ6から潤滑油が供給される。なお、油路切替装置5の詳細な構成については、図2図4を用いて後述する。
【0016】
また、ライン圧油路L1の潤滑油は、油路L4(第3油路の一例)に供給される。油路L4には、油路切替装置5のパイロットポート5eへの潤滑油の供給を制御するソレノイドバルブ6が設けられている。ソレノイドバルブ6は、ノーマルクローズタイプのオン−オフソレノイドバルブである。
【0017】
ソレノイドバルブ6の開閉は、制御装置50により制御される。ソレノイドバルブ6がオフの場合(図1の状態)、油路切替装置5のパイロットポート5eに潤滑油は供給されない。一方、ソレノイドバルブ6がオンの場合(図示略)、油路切替装置5のパイロットポート5eに潤滑油が供給される。
【0018】
油路切替装置5の第1出力ポート5cには、油路L5(第4油路の一例)が接続されている。油路L5には、第1オリフィス7、ATFクーラ8が順に設けられている。
【0019】
油路切替装置5の第2出力ポート5dには、油路L6(第5油路の一例)が接続されている。油路L6には、第2オリフィス9が設けられている。第2オリフィス9の長さは第1オリフィス7と同じである。また、第2オリフィス9の径は、第1オリフィス7の径よりも小さい。
【0020】
油路L5と油路L6は、ATFクーラ8の下流側および第2オリフィス9の下流側において合流して油路L7となる。油路L7は、変速機の入力軸(図示略)に設けられた潤滑油路に接続されている。この潤滑油路に供給された潤滑油は、クラッチの各クラッチ板(以下、クラッチ被潤滑部10という。被潤滑部の一例)に供給された後、オイルパン1に戻る。
【0021】
以上、本実施の形態に係る油圧回路100について説明した。
【0022】
以下、本実施の形態に係る油路切替装置5について、図2図4を用いて説明する。図2図4は、それぞれ、油路切替装置5の断面を示す図である。また、図2は、油路切替装置5の第1状態を示しており、図3は、油路切替装置5の第2状態を示しており、図4は、油路切替装置5の第3状態を示している。図1図3において、実線の矢印は、潤滑油の流れを示している。
【0023】
まず、油路切替装置5の構成について説明する。
【0024】
油路切替装置5は、ハウジング12を有する。ハウジング12には、上述した第1入力ポート5a、第2入力ポート5b、第1出力ポート5c、第2出力ポート5d、およびパイロットポート5eが設けられている。
【0025】
また、ハウジング12内には、空間13が設けられている。空間13は、第1入力ポート5a、第2入力ポート5b、第1出力ポート5c、第2出力ポート5d、およびパイロットポート5eと接続されている。
【0026】
空間13には、スプールバルブ14(第1摺動部材の一例)およびフリーピストン15(第2摺動部材の一例)が、それらの軸方向に並んで配置されている。スプールバルブ14およびフリーピストン15は、空間13内をその長手方向に摺動する。
【0027】
また、空間13において、スプールバルブ14とフリーピストン15との間には第1スプリング16(弾性部材の一例)が配置されており、フリーピストン15の右側には第2スプリング17が配置されている。第1スプリング16および第2スプリング17は、空間13の長手方向に伸縮する。
【0028】
また、空間13には、フリーピストン15の左方向(第1方向の一例)への移動を制限する第1ストッパ13aと、フリーピストン15の右方向(第2方向の一例)への移動を制限する第2ストッパ13bとが設けられている。
【0029】
スプールバルブ14の軸方向の中間部には、図中の左側から順に、環状の第1凹部14aおよび環状の第2凹部14bが設けられている。
【0030】
フリーピストン15の外径xは、スプールバルブ14の外径yよりも大きい。よって、フリーピストン15の受圧面積は、スプールバルブ14の受圧面積よりも大きい。
【0031】
以上、油路切替装置5の構成について説明した。このように構成された油路切替装置5は、以下に説明する第1の状態〜第3の状態のいずれかに切り替えられる。
【0032】
次に、油路切替装置5の第1状態〜第3状態のそれぞれについて説明する。
【0033】
図2を用いて第1状態について説明する。エンジンが停止した場合、第2入力ポート5bには油圧が供給されない。また、パイロットポート5eにも、油圧が供給されない。そのため、油路切替装置5は、図2に示す第1状態となる。
【0034】
このとき、図2に示すように、スプールバルブ14は、第1スプリング16により左方向へ付勢され、空間13の端部13c(左端)に当接する。
【0035】
また、図2に示すように、フリーピストン15は、第2スプリング17により左方向へ付勢され、第1ストッパ13aに当接する。また、フリーピストン15は、スプールバルブ14と離間する。
【0036】
これにより、第1入力ポート5aは、スプールバルブ14の第2凹部14bによって閉塞される。よって、油路L3から第1入力ポート5aへ流入した潤滑油の流れは、第2凹部14bにより遮断される(図中の実線矢印A参照)。その結果、トルクコンバータ4からの潤滑油の抜けを抑制できる。
【0037】
図3を用いて第2状態について説明する。エンジンの始動後においてソレノイドバルブ6がオフに制御されると、油路切替装置5は、図3に示す第2状態となる。
【0038】
図3に示すように、ライン圧に調圧された潤滑油が第2入力ポート5bに供給されると(図中の実線矢印B参照)、スプールバルブ14は、第1スプリング16および第2スプリング17の付勢力に抗して右方向へ移動する。このとき、スプールバルブ14は、フリーピストン15に当接してフリーピストン15を右方向へ移動させる。右方向へ移動したフリーピストン15は、第2ストッパ13bに当接する。なお、図3に示したフリーピストン15の位置(フリーピストン15がストッパ13bに当接する位置)は、フリーピストン15の「第1の位置」の一例に相当する。
【0039】
これにより、第2出力ポート5dが第2凹部14bにより閉塞されるとともに、第1入力ポート5aと第1出力ポート5cとが第1凹部14aを介して連通する。よって、油路L3から第1入力ポート5aへ流入した潤滑油は、第1出力ポート5cから油路L5(図1参照)に供給される(図3中の実線矢印C参照)。油路L5に供給された潤滑油は、油路L5、ATFクーラ8、油路L7を経由して、クラッチ被潤滑部10に供給される。
【0040】
本実施の形態では、第2状態における油路切替装置5内の圧力損失と、後述の第3状態における油路切替装置5内の圧力損失とが同じになるように調整されている。また、油路L5の圧力損失は、油路L6の圧力損失よりも小さくなるように設定されている。そのため、油路L3に供給される潤滑油の流量が一定であると仮定した場合、油路L3、油路切替装置5、油路L5、および油路L7を介してクラッチ被潤滑部100に供給される潤滑油の流量は、油路L3、油路切替装置5、油路L6、および油路L7を介してクラッチ被潤滑部100に供給される潤滑油の流量よりも多くなる。
【0041】
図4を用いて第3状態について説明する。エンジンの始動後においてソレノイドバルブ6がオンに制御されると、油路切替装置5は、図4に示す第3状態となる。
【0042】
図4に示すように、ライン圧に調圧された潤滑油が第2入力ポート5bに供給され(図中の実線矢印D参照)、かつ、ライン圧に調圧された潤滑油がパイロットポート5eに供給されると(図中の実線矢印E参照)、フリーピストン15は、左方向へ移動する。このとき、フリーピストン15は、スプールバルブ14に当接し、第2入力ポート5bのライン圧に抗してスプールバルブ14を左方向へ移動させる。左方向へ移動したフリーピストン15は、第1ストッパ13aに当接する。このとき、スプールバルブ14は、空間部13の端部13cに当接しない。なお、図4に示したフリーピストン15の位置(フリーピストン15がストッパ13aに当接する位置)は、フリーピストン15の「第2の位置」の一例に相当する。
【0043】
これにより、第1出力ポート5cが第1凹部14aにより閉塞されるとともに、第1入力ポート5aと第2出力ポート5dとが第2凹部14bを介して連通する。よって、油路L3から第1入力ポート5aへ流入した潤滑油は、第2出力ポート5dから油路L6(図1参照)に供給される(図中の実線矢印F参照)。油路L6に供給された潤滑油は、油路L6、油路L7を経由して、クラッチ被潤滑部10に供給される。
【0044】
以上、油路切替装置5の第1状態〜第3状態のそれぞれについて説明した。
【0045】
以上の説明から、本実施の形態の油路切替装置5によれば、第1スプリング16の付勢力によってスプールバルブ14が第1入力ポート5aを閉塞する位置に移動させられた第1状態と、第2入力ポート5bに供給された油圧によってスプールバルブ14が第1入力ポート5aと第1出力ポート5cとが連通する位置に移動させられ、フリーピストン15がスプールバルブ14に当接して第1の位置(フリーピストン15がストッパ13bに当接する位置)に移動させられた第2状態と、第2入力ポート5bに供給された油圧およびパイロットポート5eに供給された油圧によってフリーピストン15がスプールバルブ14に当接して第2の位置(フリーピストン15がストッパ13aに当接する位置)に移動させられ、スプールバルブ14が第1入力ポート5aと第2出力ポート5dとが連通する位置に移動させられた第3状態と、を切り替える。すなわち、本実施の形態の油路切替装置5は、従来は別体で設けられていた油路切替バルブと油路遮断バルブの両方の機能を備える。したがって、本実施の形態の油路切替装置5は、コストの低減およびレイアウト性の向上を実現できる。
【0046】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。以下、各変形例について説明する。
【0047】
例えば、実施の形態では、油路切替装置5が第2スプリング17を備える場合を例にあげて説明したが、油路切替装置5は第2スプリング17を備えなくてもよい。
【0048】
また、例えば、実施の形態では、油圧回路100が第1オリフィス7および第2オリフィス9を備える場合を例に挙げて説明したが、油圧回路100は第1オリフィス7および第2オリフィス9を備えなくてもよい。その場合、第2状態における油路切替装置5内の圧力損失と、第3状態における油路切替装置5内の圧力損失とを調整することで、クラッチ被潤滑部10に供給する潤滑油の流量を調整してもよい。具体的には、第1出力ポート5cの径を、第2出力ポート5dの径よりも大きくしてもよい。または、第1凹部14aと第1出力ポート5c(または、第1入力ポート5aでもよい)との連通部分の面積を、第1凹部14bと第2出力ポート5d(または、第1入力ポート5aでもよい)との連通部分の面積よりも大きくしてもよい。
【0049】
また、例えば、実施の形態において、エンジンの始動後、制御装置50は、潤滑油の温度または/およびクラッチ板の温度に基づいて、第2状態または第3状態のいずれかに切り替えてもよい。例えば、制御装置50は、潤滑油の温度または/およびクラッチ板の温度が閾値以上である場合、ソレノイドバルブ6をオフに制御して第2状態に切り替える一方、潤滑油の温度または/およびクラッチ板の温度が閾値未満である場合、ソレノイドバルブ6をオンに制御して第3状態に切り替えてもよい。
【0050】
<本開示のまとめ>
本発明の油路切替装置は、油圧源から被潤滑部へ潤滑油を供給する油圧回路に設けられる油路切替装置であって、前記潤滑油が供給される第1入力ポート、第2入力ポート、およびパイロットポートと、第1出力ポートおよび第2出力ポートと、前記各ポートと接続された空間と、を備えたハウジングと、前記空間内を一方または他方に摺動する第1摺動部材と、前記第1摺動部材と並んで前記空間内に配置され、前記空間内を一方または他方に摺動する第2摺動部材と、前記第1摺動部材と前記第2摺動部材との間に設けられ、前記第1摺動部材を前記第2摺動部材から離間させる方向へ付勢する第1弾性部材と、を有し、前記第1弾性部材の付勢力によって前記第1摺動部材が前記第1入力ポートを閉塞する位置に移動させられた第1状態と、前記第2入力ポートに供給された油圧によって前記第1摺動部材が前記第1入力ポートと前記第1出力ポートとが連通する位置に移動させられ、前記第2摺動部材が前記第1摺動部材に当接して第1の位置に移動させられた第2状態と、前記第2入力ポートに供給された油圧および前記パイロットポートに供給された油圧によって前記第2摺動部材が前記第1摺動部材に当接して第2の位置に移動させられ、前記第1摺動部材が前記第1入力ポートと前記第2出力ポートとが連通する位置に移動させられた第3状態と、のいずれかに切り替えられる。
【0051】
なお、上記油路切替装置において、前記第2摺動部材の受圧面積は、前記第1摺動部材の受圧面積よりも大きくてもよい。
【0052】
また、上記油路切替装置において、前記第1入力ポートには、トルクコンバータからの前記潤滑油が供給され、前記第2入力ポートには、ライン圧に調圧された前記潤滑油が供給され、前記パイロットポートには、ソレノイドバルブからライン圧に調圧された前記潤滑油が供給され、前記第1出力ポートは、前記第1入力ポートに供給された潤滑油を、ATFクーラを介して前記被潤滑部に接続された油路に供給し、前記第2出力ポートは、前記第1入力ポートに供給された潤滑油を、前記ATFクーラを介さずに前記被潤滑部に接続された油路に供給してもよい。
【0053】
また、上記油路切替装置において、前記空間には、前記第2摺動部材を前記第2の位置に停止させる第1ストッパと、前記第2摺動部材を前記第1の位置に停止させる第2ストッパと、が設けられてもよい。
【0054】
また、上記油路切替装置において、前記第2摺動部材を前記第1摺動部材へ向けて付勢する第2弾性部材をさらに有してもよい。
【0055】
また、上記油路切替装置において、前記第1摺動部材は、第1凹部および第2凹部を有し、前記第1状態では、前記第1入力ポートは、前記第2凹部によって閉塞され、前記第2状態では、前記第2出力ポートは、前記第2凹部により閉塞されるとともに、前記第1入力ポートと前記第1出力ポートとが前記第1凹部を介して連通し、前記第3状態では、前記第1出力ポートが前記第1凹部により閉塞されるとともに、前記第1入力ポートと前記第2出力ポートとが前記第2凹部を介して連通してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、油圧回路に設けられる油路切替バルブに適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 オイルパン
1a フィルタ
2 オイルポンプ
3 ライン圧制御バルブ
4 トルクコンバータ
5 油路切替装置
5a 第1入力ポート
5b 第2入力ポート
5c 第1出力ポート
5d 第2出力ポート
5e パイロットポート
6 ソレノイドバルブ
7 第1オリフィス
8 ATFクーラ
9 第2オリフィス
10 クラッチ被潤滑部
12 ハウジング
13 空間
13a 第1ストッパ
13b 第2ストッパ
13c 端部
14 スプールバルブ
14a 第1凹部
14b 第2凹部
15 フリーピストン
16 第1スプリング
17 第2スプリング
50 制御装置
100 油圧回路
L1 ライン圧油路
L2、L3、L4、L5、L6、L7 油路
図1
図2
図3
図4