特許第6848716号(P6848716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6848716インクジェット記録装置、インクジェット記録方法、及びコンピュータープログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848716
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置、インクジェット記録方法、及びコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20210315BHJP
【FI】
   B41J2/01 123
   B41J2/01 401
   B41J2/01 305
   B41J2/01 103
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-122253(P2017-122253)
(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-5959(P2019-5959A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】廣島 進
(72)【発明者】
【氏名】玉井 宏篤
(72)【発明者】
【氏名】上田 博之
(72)【発明者】
【氏名】西村 隆俊
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】小澤 範晃
(72)【発明者】
【氏名】井上 豊常
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−063084(JP,A)
【文献】 特開2015−063085(JP,A)
【文献】 特開2009−143179(JP,A)
【文献】 特開2011−201154(JP,A)
【文献】 特開2008−188877(JP,A)
【文献】 特開2012−213949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性インクを用いて印刷用紙に記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記水性インクを、前記印刷用紙へ吐出する記録ヘッドと、
水を含有する液体を、前記印刷用紙へ供給する液体供給部と、
前記記録ヘッドと前記液体供給部とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記水性インクが前記印刷用紙の第1面へ吐出された後に前記水性インクが前記第1面とは反対側に位置する前記印刷用紙の第2面へ吐出されるように、前記記録ヘッドを制御し、
前記制御部は、前記水性インクが前記第1面へ吐出された後であって前記水性インクが前記第2面へ吐出される前に前記液体が前記第2面における供給領域の少なくとも一部分へ供給されるように、前記液体供給部を制御し、
前記供給領域は、前記第2面の周縁に位置し、前記印刷用紙の長手方向に沿って延び、
前記供給領域は、前記第2面のうち、前記印刷用紙の短手方向両端部の各々から前記印刷用紙の短手方向内側へ離間した部位に位置し、
前記制御部は、前記第2面において、前記供給領域以外の領域には前記液体を供給しないように前記液体供給部を制御する、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記供給領域は、前記液体が供給される1又は複数の供給箇所と、前記液体が供給されない1又は複数の非供給箇所とを有し、
前記供給領域において、前記供給箇所及び前記非供給箇所は、前記印刷用紙の長手方向に沿って交互に位置する、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記供給領域において、前記印刷用紙の長手方向端部には、前記供給箇所が位置する、請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記水性インクが前記第1面及び前記第2面のうちの前記第1面のみへ吐出された印刷用紙の表裏を反転させる用紙反転部を、さらに備え、
前記制御部は、前記用紙反転部が表裏を反転させた印刷用紙の前記第2面へ前記液体が供給されるように、前記液体供給部を制御する、請求項1〜3の何れか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記供給領域は、前記第2面のうち、前記印刷用紙の短手方向両端部の各々から前記印刷用紙の短手方向内側へ3mm以上40mm以下離れた部位に、位置する、請求項1〜4の何れか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記水性インクが前記第1面における所定の印字領域の少なくとも一部分へ吐出された場合に前記液体が前記第2面へ供給されるように、前記液体供給部を制御し、
前記印字領域は、前記第1面のうち、前記印刷用紙の短手方向の少なくとも一方の端部から前記印刷用紙の短手方向内側へ3mm以上40mm以下離れた部位に、位置する、請求項1〜5の何れか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
水性インクを用いて印刷用紙の両面に記録を行うインクジェット記録方法であって、
前記水性インクを前記印刷用紙の第1面へ吐出させた後、前記水性インクを前記第1面とは反対側に位置する前記印刷用紙の第2面へ吐出させることと、
前記水性インクを前記第1面へ吐出させた後であって前記水性インクを前記第2面へ吐出させる前に、液体を前記第2面における供給領域の少なくとも一部分へ供給することと、
を含み、
前記液体は、水を含有し、
前記供給領域は、前記第2面の周縁に位置し、前記印刷用紙の長手方向に沿って延び、
前記供給領域は、前記第2面のうち、前記印刷用紙の短手方向両端部の各々から前記印刷用紙の短手方向内側へ離間した部位に位置し、
前記液体を前記第2面における前記供給領域の少なくとも一部分へ供給する際に、前記第2面において、前記供給領域以外の領域には前記液体を供給しない、インクジェット記録方法。
【請求項8】
水性インクを用いて印刷用紙に記録を行うインクジェット記録装置を構成するコンピューターに、
前記水性インクを前記印刷用紙の第1面へ吐出させた後、前記水性インクを前記第1面とは反対側に位置する前記印刷用紙の第2面へ吐出させることと、
前記水性インクを前記第1面へ吐出させた後であって前記水性インクを前記第2面へ吐出させる前に、液体を前記第2面における供給領域の少なくとも一部分へ供給することと、
を実行させ、
前記液体は、水を含有し、
前記供給領域は、前記第2面の周縁に位置し、前記印刷用紙の長手方向に沿って延び、
前記供給領域は、前記第2面のうち、前記印刷用紙の短手方向両端部の各々から前記印刷用紙の短手方向内側へ離間した部位に位置し、
前記液体を前記第2面における前記供給領域の少なくとも一部分へ供給する際に、前記第2面において、前記供給領域以外の領域には前記液体を供給しない、コンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置と、インクジェット記録方法と、コンピュータープログラムとに関する。
【背景技術】
【0002】
水性インクを用いて印刷用紙に記録を行うと、印刷用紙がカールすることがある。例えば、後述する特許文献1では、カールの発生を防止する方法として、1価アルコールを含む前処理液が予め付着した印刷用紙を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−269358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の方法で両面印刷を連続して実施すると、1価アルコールが揮発して記録ヘッドのノズル内へ侵入することがある。その結果、ノズル内の水性インクの安定性が低下することがある。
【0005】
また、一般的に、カールの発生を防止するための処理剤は、水性インクと混ざると凝集し易い。処理剤がノズル内の水性インクと混ざって凝集すると、ノズルが目詰まりを起こすことがある。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷の中断を招くことなく両面印刷を連続して実施可能なインクジェット記録装置、インクジェット記録方法、及びコンピュータープログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインクジェット記録装置は、水性インクを用いて印刷用紙に記録を行う。詳しくは、本発明に係るインクジェット記録装置は、前記水性インクを前記印刷用紙へ吐出する記録ヘッドと、水を含有する液体を前記印刷用紙へ供給する液体供給部と、前記記録ヘッドと前記液体供給部とを制御する制御部とを備える。前記制御部は、前記水性インクが前記印刷用紙の第1面へ吐出された後に前記水性インクが前記第1面とは反対側に位置する前記印刷用紙の第2面へ吐出されるように、前記記録ヘッドを制御する。前記制御部は、前記水性インクが前記第1面へ吐出された後であって前記水性インクが前記第2面へ吐出される前に前記液体が前記第2面における供給領域の少なくとも一部分へ供給されるように、前記液体供給部を制御する。前記供給領域は、前記第2面の周縁に位置し、前記印刷用紙の長手方向に沿って延びる。
【0008】
本発明に係るインクジェット記録方法では、水性インクを用いて印刷用紙の両面に記録を行う。詳しくは、本発明に係るインクジェット記録方法は、前記水性インクを前記印刷用紙の第1面へ吐出させた後、前記水性インクを前記第1面とは反対側に位置する前記印刷用紙の第2面へ吐出させることと、前記水性インクを前記第1面へ吐出させた後であって前記水性インクを前記第2面へ吐出させる前に、液体を前記第2面における供給領域の少なくとも一部分へ供給することとを含む。前記液体は、水を含有する。前記供給領域は、前記第2面の周縁に位置し、前記印刷用紙の長手方向に沿って延びる。
【0009】
本発明に係るコンピュータープログラムは、水性インクを用いて印刷用紙に記録を行うインクジェット記録装置を構成するコンピューターに、前記水性インクを前記印刷用紙の第1面へ吐出させた後、前記水性インクを前記第1面とは反対側に位置する前記印刷用紙の第2面へ吐出させることと、前記水性インクを前記第1面へ吐出させた後であって前記水性インクを前記第2面へ吐出させる前に、液体を前記第2面における供給領域の少なくとも一部分へ供給することとを実行させる。前記液体は、水を含有する。前記供給領域は、前記第2面の周縁に位置し、前記印刷用紙の長手方向に沿って延びる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、印刷の中断を招くことなく、両面印刷を連続して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系を示すブロック図である。
図3】(a)〜(c)は、各々、印刷用紙の第2面を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置、インクジェット記録方法、及びコンピュータープログラムを順に説明する。なお、図面において、同一の参照符号は、同一部分又は相当部分を表すものである。長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は、図面の明瞭化及び簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
【0013】
[インクジェット記録装置]
図1を用いて、インクジェット記録装置100の構成を説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す図である。なお、図1では、鉛直方向上側をZ1と記し、鉛直方向下側をZ2と記する。また、Z1からZ2へ向かう方向は、X1からX2へ向かう方向に対し、直交する。
【0014】
インクジェット記録装置100は、水性インクを用いて印刷用紙Pに記録を行う。インクジェット記録装置100は、両面印刷可能であれば、モノクロプリンターであってもカラープリンターであってもよい。また、印刷用紙Pは、例えば、普通紙、コピー紙、再生紙、薄紙、厚紙、又は光沢紙の何れであってもよい。
【0015】
詳しくは、インクジェット記録装置100は、第1搬送部11と、記録ヘッド13と、第2搬送部15と、用紙反転部17と、液体供給部19と、給紙カセット21と、手差しトレイ23と、排出トレイ25と、制御部51とを備える。以下、インクジェット記録装置100の構成を具体的に説明する。
【0016】
第1搬送部11は、給紙カセット21又は手差しトレイ23から供給された印刷用紙Pを、吸着しながら用紙搬送方向(X2側からX1側へ向かう方向)に沿って搬送する。詳しくは、第1搬送部11は、駆動ローラー111と、従動ローラー113と、無端状の搬送ベルト115と、吸引ユニット117とを有する。搬送ベルト115は、駆動ローラー111と従動ローラー113とにより回転自在に張設されている。搬送ベルト115には、多数の吸引孔が形成されている。搬送ベルト115の内側(搬送ベルト115の搬送面の裏側)には、吸引ユニット117が設けられている。駆動ローラー111と従動ローラー113とが回転することで、搬送ベルト115が回転する。また、吸引ユニット117が負圧を発生させることで、印刷用紙Pが搬送ベルト115の搬送面に吸着される。このようにして、搬送ベルト115の搬送面に吸着された印刷用紙Pが用紙搬送方向に沿って搬送される。
【0017】
記録ヘッド13は、第1搬送部11(より具体的には、搬送ベルト115の搬送面)よりも鉛直方向上側に設けられ、画像データと印刷条件とに基づいて水性インクを印刷用紙Pの一面へ吐出する。例えば、記録ヘッド13には、複数のノズルが形成されている。ノズルは、各々、記録ヘッド13の下面(ノズル面)13Aにおいて開口し、印刷用紙P(より具体的には、搬送ベルト115の搬送面に吸着された印刷用紙P)の一面へ水性インクを吐出する。水性インクは、インクジェット記録装置100が有するタンクに収容されており、必要なときにタンクから記録ヘッド13へ流入する。
【0018】
第2搬送部15は、第1搬送部11から搬送された印刷用紙Pを、吸着しながら用紙搬送方向(X2側からX1側へ向かう方向)に沿って搬送する。第2搬送部15は、第1搬送部11と同様に構成され、第1搬送部11と同様に機能する。詳しくは、第2搬送部15は、駆動ローラー151と、従動ローラー153と、無端状の搬送ベルト155と、吸引ユニット157とを有する。駆動ローラー151と従動ローラー153とが回転することで、搬送ベルト155が回転する。また、吸引ユニット157が負圧を発生させることで、印刷用紙Pが搬送ベルト155の搬送面に吸着される。このようにして、搬送ベルト155の搬送面に吸着された印刷用紙Pが用紙搬送方向に沿って搬送される。
【0019】
印刷用紙Pに吐出された水性インクは、印刷用紙Pが第2搬送部15を通過する間に、乾燥する。第2搬送部15を通過した印刷用紙Pは、排出トレイ25へ排出される、又は用紙反転部17へ搬送される。
【0020】
用紙反転部17は、両面印刷を行う場合に、水性インクが片面のみへ吐出された印刷用紙Pの表裏を反転させる。具体的には、用紙反転部17が印刷用紙Pの用紙搬送方向を反転させることで、印刷用紙Pの表裏が反転する。用紙反転部17が表裏を反転させた印刷用紙Pは、第1搬送部11へ搬送される。
【0021】
液体供給部19は、水を含有する液体(以下、「液体S」と記載する)を、印刷用紙Pの片面へ供給する。好ましくは、液体供給部19は、液体Sを、用紙反転部17が表裏を反転させることで印刷面となった印刷用紙Pの面へ供給する。より好ましくは、液体供給部19は、用紙反転部17よりも用紙搬送方向下流側に設けられている。
【0022】
水性インクと液体Sとについて、説明する。水性インクとしては、インクジェット記録装置を用いて印刷用紙に記録を行うさいに使用される水性インクとして公知の水性インクを特に限定されることなく使用できる。そのため、水性インクは、水を含有する水性媒体と、水性媒体に分散された複数の顔料粒子とを含むことが好ましい。
【0023】
液体Sは、水を含有すればよく、好ましくは透明インクである。透明インクは、水性インクから顔料粒子を除いたものに相当する。そのため、透明インクは、水性媒体を含むことが好ましい。より好ましくは、水性インクと液体Sとは、互いに同一の組成を有する水性媒体を含む。
【0024】
水性媒体は、例えば、水と、グリセリン及び/又はグリコールと、アルコール及び/又はグリコールエーテルとを含有することが好ましい。水性媒体がグリセリン及び/又はグリコールを含有すれば、水性インクの乾燥を防止でき、液体Sの乾燥を防止できる。水性媒体がアルコール及び/又はグリコールエーテルを含有すれば、印刷用紙Pに対する水性インクの浸透性を高めることができ、印刷用紙Pに対する液体Sの浸透性を高めることができる。水性媒体が含有する水は、イオン交換水であることが好ましい。
【0025】
図2を用いて、インクジェット記録装置100の制御系を説明する。図2は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系を示すブロック図である。インクジェット記録装置100の制御系は、記憶装置31と、入力表示部33と、インターフェイス41と、制御部51とを備える。
【0026】
記憶装置31は、不揮発性メモリーで構成されている。例えば、記憶装置31は、ハードディスクであることが好ましい。記憶装置31には、例えば、印刷用の画像データと、各種制御に係る制御プログラムと、制御プログラムで使用されるデータとが、格納されていることが好ましい。制御プログラムとしては、例えば、印刷用紙Pへの記録を制御するプログラム(以下、「記録制御プログラム」と記載する)を挙げることができる。記録制御プログラムは、液体供給プログラムと記録実行プログラムとを含むことが好ましい。液体供給プログラムは、液体Sを印刷用紙Pの片面へ供給するためのプログラムを意味する。記録実行プログラムは、印刷用紙Pへの記録を実行するためのプログラムを意味する。制御プログラムで使用されるデータとしては、例えば、印字領域、水性インクの吐出量、供給領域、又は液体Sの供給量を挙げることができる。
【0027】
入力表示部33は、入力部35と表示部37とを有する。入力部35は、インクジェット記録装置100のユーザー(以下、単に「ユーザー」と記載する)が入力する信号を、受信する。表示部37は、各種の情報を表示する。
【0028】
インターフェイス41は、記憶装置31、入力表示部33、記録ヘッド13、用紙反転部17、液体供給部19、第1搬送部11、及び第2搬送部15の各々と、制御部51とを通信可能に接続する。また、インターフェイス41は、制御部51と外部装置とを通信可能に接続する。ここで、「外部装置」とは、通信ネットワークを介して制御部51に接続された装置を意味する。通信ネットワークとしては、例えば、インターネット、又はLANが挙げられる。
【0029】
制御部51は、CPU53と、ROM55と、RAM57とを有する。CPU53は、各種の演算処理を行うプロセッサーである。ROM55は、不揮発性メモリーである。ROM55には、各種の演算処理をCPU53に実行させるための制御プログラムが、予め格納されている。記録制御プログラムは、記憶装置31ではなくROM55に格納されていてもよい。RAM57は、揮発性メモリーであり、より具体的にはCPU53が実行する各種の演算処理を一時的に記憶する。CPU53が制御プログラム(記憶装置31又はROM55に予め格納されている制御プログラム)を実行することで、制御部51がインクジェット記録装置100の動作を制御する。
【0030】
制御部51は、印刷用紙Pへの記録を制御するように構成されており、より具体的には、記録ヘッド13と液体供給部19とを制御するように構成されている。制御部51は、記録制御プログラムを実行可能なCPU53によって、具現化されることが好ましい。また、制御部51は、印刷用紙Pへの記録の要求時には、印刷用紙Pへの記録を制御するために使用される各種のパラメーターを初期化することが好ましい。ユーザーが入力表示部33の入力部35を操作することで、印刷用紙Pへの記録が要求されてもよい。ユーザーが外部装置(例えばパーソナルコンピューター)を操作することで、印刷用紙Pへの記録が要求されてもよい。印刷用紙Pへの記録の要求時としては、例えば、インクジェット記録装置100の電源がOFFからONへ切り換えられた時、又はインクジェット記録装置100が省電力モードから復帰した時が挙げられる。
【0031】
以下、制御部51について、より具体的に説明する。なお、以下では、両面印刷において最初に印字が行われる印刷用紙Pの面を「印刷用紙Pの第1面」と記載する。印刷用紙Pの第1面とは反対側に位置する印刷用紙Pの面を「印刷用紙Pの第2面」と記載する。印刷用紙Pの第1面に印字が行われることを「表面印刷」と記載する。表面印刷の後に印刷用紙Pの第2面に印字が行われることを「裏面印刷」と記載する。両面印刷において表面印刷の後であって裏面印刷の前を単に「裏面印刷前」と記載する。「印字」とは、水性インクが記録ヘッド13から印刷用紙Pの一面へ吐出されることによって印刷用紙Pへの記録が行われることを意味する。
【0032】
制御部51は、両面印刷の要求時には、記録ヘッド13を制御して水性インクが印刷用紙Pの第1面へ吐出された後に水性インクが印刷用紙Pの第2面へ吐出されるように、構成されている。より具体的には、制御部51は、記憶装置31又はROM55に格納されている画像データ及び印刷条件に基づいて水性インクを吐出するように構成されてもよいし、外部装置から入力された画像データ及び印刷条件に基づいて水性インクを吐出するように構成されてもよい。
【0033】
また、制御部51は、液体供給部19を制御して裏面印刷前に液体Sが印刷用紙Pの第2面における供給領域の少なくとも一部分へ供給されるように、構成されている。供給領域は、印刷用紙Pの第2面の周縁に位置し、より具体的には印刷用紙Pの第2面の短手方向両端部の各々に位置する。供給領域は、印刷用紙Pの長手方向に沿って延びる帯状領域である。制御部51は、液体Sを供給領域の長手方向において連続的に供給するように構成されてもよいし、液体Sを供給領域の長手方向において断続的に供給するように構成されてもよい。以下、液体Sを印刷用紙Pの第2面における供給領域の少なくとも一部分へ供給することを単に「液体Sを供給する」と記載することがある。
【0034】
一般的に、インクジェット記録装置を用いて印刷用紙に記録を行う場合、環境負荷低減などの観点から水性インクの使用が提案されている。しかし、水性インクを用いて印刷用紙に記録を行うと、水が印刷用紙に吸収されるため、印刷用紙に含まれるセルロース繊維の膨潤、又はセルロース繊維の分子間水素結合の切断が起こり易い。そのため、水性インクが吐出された印刷用紙では、非印字面から印字面へ向かう方向に突出するカール(凸状カール)が起こり易い。
【0035】
凸状カールが起こった印刷用紙に対して裏面印刷を行う場合、第1搬送部へ搬送された印刷用紙では、周縁の方が中央に比べて鉛直方向上側に位置し易い。そのため、印刷用紙が第1搬送部へ搬送される時に、印刷用紙の用紙搬送方向前端が記録ヘッドに衝突することがある。印刷用紙が記録ヘッドに衝突したことで記録ヘッドがダメージを受けると、水性インクの吐出が困難となることがある。よって、印刷が中断することがある(給紙不良の発生:第1の不具合)。また、印刷用紙が第1搬送部を通過する時に、印刷用紙の用紙搬送方向後端がノズル面を擦ることがある。これにより、水性インクがノズル面を汚染することがある。ノズル面を汚染した水性インクがノズルの開口を塞ぐと、印刷が中断する(給紙不良の発生:第1の不具合)。また、ノズル面を汚染した水性インクが印刷用紙Pの非印字領域に付着することがある(画像欠陥の発生:第2の不具合)。
【0036】
第1及び第2の不具合の発生を防止する方法として、例えば、ノズル面を搬送面(より具体的には、第1搬送部に含まれる搬送ベルトの搬送面)から離隔させることが考えられる。しかし、この方法では、画像欠陥が発生することがある。また、サテライト滴が発生することがある。発生したサテライト滴が印刷用紙の非印字領域に付着すると、画像欠陥が発生する。発生したサテライト滴がインクジェット記録装置内の電気的接続部位に付着すると、電気的短絡が発生する。
【0037】
第1及び第2の不具合の発生を防止する別の方法として、裏面印刷前に印刷用紙に対して機械的に折り目を付けることが考えられる。しかし、この方法では、紙詰まりが発生し易いため、給紙不良が発生し易い。
【0038】
一方、インクジェット記録装置100では、裏面印刷前に液体Sを供給する。これにより、液体Sに含まれる水が供給領域に吸収されるため、供給領域では、印刷用紙Pに含まれるセルロース繊維の膨潤、又はセルロース繊維の分子間水素結合の切断が起こる。よって、印刷用紙Pの短手方向各端部では、印刷用紙Pの第1面のうち供給領域とは反対側に位置する部位から供給領域へ向かう方向に突出するカールが起こり易い。したがって、裏面印刷時に第1搬送部11へ搬送された印刷用紙Pでは、短手方向各端部が、短手方向内側に比べ、鉛直方向下側に位置し易い。以上より、凸状カールが起こった印刷用紙Pに対して裏面印刷を行う場合であっても、第1及び第2の不具合の発生を防止できる。そのため、インクジェット記録装置100を用いれば、印刷の中断を招くことなく両面印刷を連続して実施できる(以下、この効果を「所望の効果」と記載することがある)。例えば、インクジェット記録装置100を用いれば、両面印刷を高速且つ連続して実施できる。
【0039】
このように、インクジェット記録装置100では、液体Sに含まれる水が供給領域に吸収されることで、所望の効果が得られる。そのため、印刷用紙に対して機械的に折り目を付ける場合とは異なり、液体Sの供給直後に印刷用紙Pの短手方向端部においてカールが起こることを防止できる。よって、印刷用紙Pの搬送中における紙詰まりの発生を防止できる。
【0040】
液体Sが透明インクである場合、液体Sと水性インクとは、顔料粒子の有無を除いては同様の組成を有する。これにより、液体Sは、水性インクに対して高い親和性を示す。よって、液体Sが記録ヘッド13のノズル内へ侵入した場合であっても、液体Sと水性インクとの混合に起因する液体Sの凝集を防止できる。したがって、ノズル内の水性インクの安定性を確保できる。また、記録ヘッド13においてノズルが目詰まりを起こすことを効果的に防止できる。
【0041】
なお、前述したように、裏面印刷時に第1搬送部11へ搬送された印刷用紙Pでは、短手方向各端部が短手方向内側に比べて鉛直方向下側に位置し易い。しかし、裏面印刷時、吸引ユニット117は、印刷用紙Pを、搬送ベルト115の搬送面に吸引する。そのため、裏面印刷前に液体Sを供給しても、裏面印刷時には水性インクを印刷用紙Pの第2面における所望の位置へ供給できる。よって、裏面印刷時における画像欠陥の発生を防止できる。
【0042】
図3(a)〜(c)を用いて、供給領域を具体的に説明する。図3(a)は、印刷用紙Pの第2面を示す平面図である。図3(b)及び図3(c)は、各々、印刷用紙Pの第2面の一部分を拡大して示す平面図である。なお、図3(a)〜図3(c)の各々では、印刷用紙Pの長手方向をD1と記し、印刷用紙Pの短手方向をD2と記す。また、図3(b)及び図3(c)の各々では、供給箇所に斜線を付している。以下では、図3(a)を用いて、供給領域を説明する。また、図3(b)及び図3(c)の各々を用いて、供給領域と供給箇所との関係を説明する。供給箇所とは、供給領域のうち、液体供給部19が実際に液体Sを供給する箇所を意味する。
【0043】
好ましくは、供給領域R1は、図3(a)に示すように、印刷用紙Pの第2面のうち、印刷用紙Pの短手方向各端部から印刷用紙Pの短手方向内側へ長さL1以上長さL2以下離れた部位に、位置する。長さL1と長さL2との好ましい組み合わせの一例としては、長さL1が3mmであり長さL2が40mmであるという組み合わせが挙げられる。これにより、裏面印刷時に第1搬送部11へ搬送された印刷用紙Pでは、短手方向各端部が短手方向内側に比べて鉛直方向下側に位置し易い。
【0044】
供給箇所R2は、供給領域R1の長手方向における一部分に位置してもよい。この場合、液体Sは、供給領域R1のうち供給領域R1の長手方向両端部を含む部位へ供給されることが好ましい。より具体的には、液体Sは、供給領域R1のうち供給領域R1の長手方向中央を除く部位へ供給されてもよいし(図3(b))、供給領域R1の長手方向に互いに間隔をあけて供給されてもよい(図3(c))。供給箇所R2は、供給領域R1の短手方向における一部分に位置してもよい。本発明者らは、印刷用紙Pの短手方向における供給箇所R2の寸法Wが25mm程度であれば、所望の効果が得られ易いことを確認している。制御部51が液体供給部19を制御することで、供給領域R1における供給箇所R2の位置を変更できる。なお、印刷用紙Pの第2面における供給箇所R2の平面形状は、図3(b)及び図3(c)の各々に示す形状に限定されない。
【0045】
以下、供給領域R1が図3(a)に示す部位に位置する場合に所望の効果が得られ易い理由として考えられる事項を説明する。
詳しくは、供給領域が印刷用紙の第2面のうち印刷用紙の短手方向端部の近傍に位置する場合には、印刷用紙の短手方向端部と供給領域との間の長さ(以下、単に「長さL」と記載する)が短すぎる。そのため、印刷用紙の短手方向端部においてカールが起こり難いことがある。
【0046】
一方、供給領域が印刷用紙の第2面のうち印刷用紙の短手方向内側に位置する場合には、長さLが長すぎる。そのため、印刷用紙のうち供給領域よりも印刷用紙の短手方向端部側に位置する部分の質量が大きくなり過ぎるため、その部分の形状維持が困難である。よって、第1又は第2の不具合が発生することがある。
【0047】
しかし、供給領域R1が図3(a)に示す部位に位置する場合には、長さLが適度な長さとなる。これにより、所望の効果が得られ易い。
【0048】
なお、印刷用紙Pの単位面積あたりの液体Sの供給量は、0.1mL/m2以上2.0mL/m2以下であることが好ましい。これにより、供給領域R1において、印刷用紙Pに含まれるセルロース繊維の膨潤が起こり易く、セルロース繊維の分子間水素結合の切断が起こり易い。制御部51は、ユーザーが両面印刷の要求時に選択した液体Sの供給量に基づいて液体Sを供給するように構成されていてもよい。
【0049】
以下、制御部51について、さらに具体的に説明する。
好ましくは、制御部51は、ユーザーが両面印刷の要求時に選択した印刷用紙Pのサイズに基づいて、又はユーザーが両面印刷の要求時に調整した手差しトレイ23における用紙ガイドの位置に基づいて、搬送中の印刷用紙Pの長手方向及び短手方向を判定するように、構成されている。これにより、液体Sを供給領域R1の少なくとも一部分へ精度良く供給できる。インクジェット記録装置100が印刷用紙Pのサイズを検知するセンサーを有する場合には、制御部51は、センサーによる検知結果に基づいて搬送中の印刷用紙Pの長手方向及び短手方向を判定するように構成されていてもよい。
【0050】
好ましくは、制御部51は、液体供給部19を制御して、用紙反転部17が表裏を反転させた印刷用紙Pの第2面における供給領域R1の少なくとも一部分へ液体Sが供給されるように、構成されている。これにより、液体Sの供給が容易となる。また、液体Sが供給されてから裏面印刷が開始するまでに適度な時間間隔を空けることができる。よって、印刷用紙Pが第1搬送部11へ搬送されたときには、液体Sに含まれる水が供給領域R1に十分吸収されているため、印刷用紙Pの短手方向各端部において適度なカールを発生させることができる。液体供給部19を用紙反転部17よりも用紙搬送方向下流側へ配置することで、この制御を容易に実現できる。
【0051】
好ましくは、制御部51は、液体供給部19を制御して表面印刷前には液体Sが供給されないように、構成されている。これにより、表面印刷前に印刷用紙Pの短手方向各端部においてカールが発生することを防止できる。よって、表面印刷時に第1及び第2の不具合が発生することを防止できる。また、制御部51は、液体供給部19を制御して裏面印刷後には液体Sが供給されないように構成されていることが好ましい。液体供給部19を用紙反転部17よりも用紙搬送方向下流側へ配置することで、これらの制御を容易に実現できる。
【0052】
好ましくは、制御部51は、液体供給部19を制御して、水性インクが印刷用紙Pの第1面における所定の印字領域(以下、「印字領域Rp」と記載する)の少なくとも一部分へ吐出された場合に液体Sが供給されるように、構成されている。ここで、印字領域Rpは、印刷用紙Pの第1面のうち、印刷用紙Pの短手方向の少なくとも一方の端部から印刷用紙Pの短手方向内側へ3mm以上40mm以下離れた部位に、位置する。本発明者らが実験したところ、水性インクが印字領域Rpの少なくとも一部分へ吐出された場合に、凸状カールが印刷用紙Pに発生し易かった。よって、水性インクが印字領域Rpの少なくとも一部分へ吐出された場合に液体Sを供給することで、第1及び第2の不具合が発生することを効果的に防止できる。この場合、制御部51は、記憶装置31又はROM55に格納されている画像データに基づいて、又は外部装置から入力された画像データに基づいて、水性インクが印字領域Rpの少なくとも一部分へ吐出されたか否かを判定するように、構成されていることが好ましい。
【0053】
好ましくは、制御部51は、裏面印刷前の印刷用紙Pのカール量に基づいて液体Sの供給条件を決定するように、構成されている。より具体的には、制御部51は、印字領域だけでなく、水性インクの種類、印刷用紙Pの種類、又は表面印刷時における水性インクの吐出量に基づいて液体Sの供給条件を決定するように、構成されていることが好ましい。液体Sの供給条件には、液体Sの供給の有無と、供給箇所R2の位置と、印刷用紙Pの単位面積あたりの液体Sの供給量とが含まれる。
【0054】
好ましくは、制御部51は、液体供給部19を制御して液体Sが印刷用紙Pの目方向に対して平行な方向に供給されるように、構成されている。これにより、液体Sに含まれる水が供給領域R1に吸収され易い。よって、裏面印刷時に第1搬送部11へ搬送された印刷用紙Pでは、短手方向各端部が短手方向内側に比べて鉛直方向下側に位置し易い。より好ましくは、制御部51は、ユーザーが両面印刷の要求時に入力した印刷用紙Pの目方向に関する情報に基づいて印刷用紙Pの目方向を判定するように、構成されている。
【0055】
なお、液体供給部19は、例えば、液体Sが周面に付着されたローラー、又は液体Sが含浸されたスポンジであってもよいが、液体Sが収容された噴霧器であることが好ましい。液体供給部19が噴霧器であれば、印刷用紙Pのサイズが変更となったときであっても、液体Sを所望の位置に供給できる。また、液体供給部19が噴霧器であれば、印刷用紙Pを所定の部材で挟むことなく液体Sを供給できるため、液体Sが印刷用紙Pのうち供給領域R1ではない部位(例えば印刷用紙Pの第1面)へ付着することを防止できる。
【0056】
また、インクジェット記録装置100は、第2搬送部15よりも用紙搬送方向下流側であって用紙反転部17よりも用紙搬送方向上流側に、カール矯正部を備えていてもよい。インクジェット記録装置100がカール矯正部を備えていても、裏面印刷前に液体Sを供給することで、所望の効果が得られ易い。
【0057】
また、制御部51の具現化方法は、前述の方法に限定されない。例えば、制御部51は、インクジェット記録装置100の外部に設けられた電子回路及び/又はプログラムと協働して、具現化されてもよい。より具体的には、通信ネットワーク上の所定のサーバーに保持されている印刷ジョブ制御プログラムをユーザーが実行又はダウンロードすることで、制御部51が具現化されてもよい。
【0058】
[インクジェット記録方法]
以下、インクジェット記録装置100を用いたインクジェット記録方法について、説明する。ユーザーが両面印刷を要求すると、制御部51が記録制御プログラムを実行する。詳しくは、ユーザーが両面印刷を要求すると、制御部51が表面印刷と液体Sの供給と裏面印刷とを順に実行する。CPU53が記録制御プログラム(記憶装置31又はROM55に記憶されている記録制御プログラム)を実行することで、表面印刷と液体Sの供給と裏面印刷とを順に実行することができる。
【0059】
以下、図4を用いて、記録制御プログラムの一例を説明する。図4は、記録制御プログラムの手順の好ましい一例を示すフローチャートである。CPU53が記録制御プログラムを実行することで、図4に示す処理を行うことができる。
【0060】
詳しくは、ユーザーが両面印刷を要求すると、ステップS101において制御部51が表面印刷を行う。より具体的には、まず、制御部51が、印刷用紙Pを、給紙カセット21又は手差しトレイ23からインクジェット記録装置100内へ供給する。次に、制御部51が、インクジェット記録装置100内へ供給された印刷用紙Pを、第1搬送部11へ搬送した後、吸引ユニット117に吸着させる。続いて、制御部51が、記録ヘッド13を制御して、水性インクを記録ヘッド13から印刷用紙Pの第1面へ吐出させる(表面印刷)。続いて、制御部51が、表面印刷された印刷用紙Pを、第1搬送部11から第2搬送部15へ搬送させた後、用紙反転部17へ搬送させる。その後、ステップS102へ進む。
【0061】
ステップS102では、制御部51が、用紙反転部17を制御して、表面印刷された印刷用紙Pの表裏を反転させる。その後、ステップS103へ進む。
【0062】
ステップS103では、制御部51が、液体供給部19を制御して、液体Sを液体供給部19から印刷用紙Pの第2面における供給領域R1の少なくとも一部分へ供給する。その後、ステップS104へ進む。
【0063】
ステップS104では、制御部51が裏面印刷を行う。より具体的には、まず、制御部51が、液体Sが供給された印刷用紙Pを、第1搬送部11へ搬送した後、吸引ユニット117に吸着させる。次に、制御部51が、記録ヘッド13を制御して、水性インクを記録ヘッド13から印刷用紙Pの第2面へ吐出させる(裏面印刷)。続いて、制御部51が、両面印刷された印刷用紙Pを、第1搬送部11から第2搬送部15へ搬送させた後、排出トレイ25へ排出する。このようにして、図4に示す処理が終了する。
【0064】
なお、図4に示す処理は、ステップS103の前に所定の判断ステップを含んでもよい。所定の判断ステップでは、制御部51が、ステップS101において水性インクが印字領域Rpの少なくとも一部分へ吐出されたか否かを判断する。そして、水性インクがステップS101において印字領域Rpの少なくとも一部分へ吐出されたと判断された場合、この時点で裏面印刷を行うと第1及び第2の不具合の発生を招くことがあるため、ステップS103へ進む。一方、水性インクがステップS101において印字領域Rpの少なくとも一部分へ吐出されなかったと判断された場合、この時点で裏面印刷を行っても第1及び第2の不具合が発生し難いと判断できるため、ステップS104へ進む。
【0065】
[コンピュータープログラム]
インクジェット記録装置100の制御に係る機能は、コンピュータープログラム(ソフトウェア)によって実現されてもよい。本実施形態に係るコンピュータープログラムは、インクジェット記録装置100を構成するコンピューターに、記録制御プログラムを実行させる。
【0066】
制御部51が実行するプログラム(記録制御プログラム)は、コンピューターに読み取り可能な記録媒体に格納されて、配布可能にされてもよい。また、記録制御プログラムを通信ネットワーク上の所定のサーバーに保持させ、ユーザーが記録制御プログラムを実行又はダウンロードできるようにしてもよい。
【0067】
記録制御プログラムが液体供給プログラムと記録実行プログラムとを含む場合、液体供給プログラムと記録実行プログラムとの両方が、コンピューターに読み取り可能な記録媒体に格納されてもよいし、通信ネットワーク上の所定のサーバーに保持されてもよい。また、液体供給プログラムと記録実行プログラムのうち、一方が、コンピューターに読み取り可能な記録媒体に格納され、他方が、通信ネットワーク上の所定のサーバーに保持されてもよい。
【0068】
[液体Sに含まれる材料の例示]
液体Sは、水性媒体とは別に、界面活性剤、溶解安定剤、保湿剤、及び浸透剤のうちの少なくとも1つをさらに含有してもよい。液体Sが界面活性剤を含有すれば、印刷用紙Pに対する液体Sの濡れ性が向上する。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であることが好ましく、例えばアセチレングリコール系界面活性剤であることが好ましい。液体Sにおける界面活性剤の含有量は、0.05質量%以上2.00質量%以下であることが好ましい。
【0069】
液体Sが溶解安定剤を含有すれば、液体Sに含まれる成分が相溶し易くなるため、液体Sの溶解状態を安定化できる。溶解安定剤は、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、及びγ−ブチローラークトンのうちの少なくとも1つであることが好ましい。液体Sにおける溶解安定剤の含有量は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0070】
液体Sが保湿剤を含有すれば、液体Sからの液体成分の揮発を抑制できるため、液体Sの粘性を安定化できる。保湿剤は、好ましくは、ポリアルキレングリコール類、アルキレングリコール類、及びグリセリンのうちの少なくとも1つである。ポリアルキレングリコール類は、ポリエチレングリコール、又はポリプロピレングリコールであることが好ましい。アルキレングリコール類は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3−ブタンジオール、又は1,5−ペンタンジオールであることが好ましい。液体Sにおける保湿剤の含有量は、好ましくは2質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上25質量%以下である。
【0071】
液体Sが浸透剤を含有すれば、印刷用紙Pへの液体Sの浸透性が向上する。浸透剤は、好ましくは、へキシレングリコール、1,2−オクタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルのうちの少なくとも1つである。液体Sにおける浸透剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
【0072】
液体Sは、例えば、下記表1に示す組成の透明インクであることが好ましい。なお、表1に示す組成の透明インクは、表1に示す比率で表1に示す材料を混合した後、所定の孔径(例えば5μmの孔径)のフィルターを用いて加圧濾過することで、得られる。
【0073】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係るインクジェット記録装置は、例えば両面印刷可能なプリンターとして用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
13 記録ヘッド
17 用紙反転部
19 液体供給部
51 制御部
100 インクジェット記録装置
P 印刷用紙
R1 供給領域


図1
図2
図3
図4