特許第6848722号(P6848722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848722
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】コネクタ及びコネクタの取付構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/73 20060101AFI20210315BHJP
【FI】
   H01R13/73
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-125405(P2017-125405)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-9047(P2019-9047A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智之
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−021325(JP,A)
【文献】 特開2009−272226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40−13/74
H01R12/00−12/91
H01R24/00−24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材により遊動可能に支持されるコネクタであって、
相手側部材と電気的に接続される接続部と、該接続部を前記相手側部材に面するように収容する筒状の筒状部と、前記筒状部の前記接続部が面する側とは反対側の端部から延出して前記支持部材と遊動が許容された状態で係合する係合部とを有し、
前記係合部は、前記支持部材を挿通可能な挿通溝を有し、前記筒状部の前記接続部が面する側とは反対側の端部端部に複数設けられ
複数設けられる前記係合部の1つに、ハーネスを保持するハーネス保持部が一体的に設けられるコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記係合部は、2つ設けられ、前記筒状部の周方向180度反対側に位置するように設けられるコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタであって、
複数設けられる前記係合部は、下端面が面一であるコネクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のコネクタであって、
複数設けられる前記係合部の1つが前記筒状部から逸脱した位置に設けられるコネクタ。
【請求項5】
コネクタと該コネクタを遊動可能に支持する支持部材とを備えた電気部品を相手側部材に組み付けることにより、前記コネクタを前記相手側部材の装着箇所に取り付けるためのコネクタの取付構造であって、
前記支持部材は、前記コネクタが組み付けられた状態で前記コネクタの遊動を許容し、
前記コネクタは、前記相手側部材と電気的に接続される接続部と、該接続部を前記相手側部材に面するように収容する筒状の筒状部と、前記筒状部の前記接続部が面する側とは反対側の端部から延出して前記支持部材と遊動が許容された状態で係合する前記支持部材と係合する係合部とを有し、
前記係合部は、前記支持部材を挿通可能な挿通溝を有し、前記筒状部の前記接続部が面する側とは反対側の端部端部に複数設けられ
複数設けられる前記係合部の1つに、ハーネスを保持するハーネス保持部が一体的に設けられることを特徴とするコネクタの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及びコネクタの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車のオートマチックトランスミッション等に用いられる電機部品として、コネクタとこのコネクタを支持する支持部材とを備え、電気部品を相手側に組み付けることにより、コネクタが相手側部材における所定の装着箇所に取り付けられる構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のコネクタは、相手側部材と電気的に接続される接続部と、該接続部を前記相手側部材に面するように収容する筒状の筒状部と、前記筒状部の前記接続部が面する側とは反対側の端部から延出して支持部材と係合する1つの係合部とを有する。係合部は筒状部の端部において筒状部の径方向外側寄りに1つ設けられ、支持部材(係止片)を挿通可能な挿通溝が設けられる。また、支持部材は、前記挿通溝に挿通される係止片によって支持部材は、前記コネクタが前記所定の装着箇所に取り付けられる直前までは、前記コネクタの遊動を規制しているものの、前記コネクタが支持部材に組み付けられて前記所定の装着箇所に取り付けられる取付途上においては、前記コネクタの遊動を可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−58137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなコネクタの取付構造では、1つの係合部により支持部材と遊動可能に支持されるが、支持部材との遊動可能に支持する構成を安定化させて調芯の安定化を図ることが望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、調芯の安定化を図るコネクタ及びコネクタの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するコネクタは、支持部材により遊動可能に支持されるコネクタであって、相手側部材と電気的に接続される接続部と、該接続部を前記相手側部材に面するように収容する筒状の筒状部と、前記筒状部の前記接続部が面する側とは反対側の端部から延出して前記支持部材と遊動が許容された状態で係合する係合部とを有し、前記係合部は、前記支持部材を挿通可能な挿通溝を有し、前記筒状部の前記接続部が面する側とは反対側の端部端部に複数設けられる。
【0008】
この構成によれば、筒状部の接続部が面する側とは反対側の端部から延出して支持部材と係合する係合部がその端部に複数設けられる。このように係合部を複数設ける構成とすることで、支持部材と複数箇所で遊動可能に支持(係合)されることとなるため、支持部材との遊動可能に支持する構成を安定化させて調芯の安定化を図ることができる。
【0009】
上記のコネクタにおいて、前記係合部は、2つ設けられ、前記筒状部の周方向180度反対側に位置するように設けられることが好ましい。
この構成によれば、係合部は2つ設けられ筒状部の周方向180度反対側に位置するように設けられるため、支持部材を挿通溝に挿通させて係合させる際に安定した支持が可能となる。
【0010】
上記のコネクタにおいて、複数設けられる前記係合部は、下端面が面一であることが好ましい。
この構成によれば、複数設けられる係合部の下端面が面一であるため、コネクタの係合部の下端面側で安定して載置することができる。
【0011】
上記のコネクタにおいて、複数設けられる前記係合部の1つが前記筒状部から逸脱した位置に設けられることが好ましい。
この構成によれば、係合部の1つが筒状部から逸脱した位置に設けられることで、係合部間の距離が長くなるため支持部材による安定した支持が可能となる。
【0012】
上記のコネクタにおいて、複数設けられる前記係合部の1つに、ハーネスを保持するハーネス保持部が一体的に設けられることが好ましい。
この構成によれば、ハーネス保持部が係合部の一つに一体的に設けられることで、部品点数を増やすことなくハーネスの保持することができる。
【0013】
また、上記課題を解決するコネクタの取付構造は、コネクタと該コネクタを遊動可能に支持する支持部材とを備えた電気部品を相手側部材に組み付けることにより、前記コネクタを前記相手側部材の装着箇所に取り付けるためのコネクタの取付構造であって、前記支持部材は、前記コネクタが組み付けられた状態で前記コネクタの遊動を許容し、前記コネクタは、前記相手側部材と電気的に接続される接続部と、該接続部を前記相手側部材に面するように収容する筒状の筒状部と、前記筒状部の前記接続部が面する側とは反対側の端部から延出して前記支持部材と遊動が許容された状態で係合する前記支持部材と係合する係合部とを有し、前記係合部は、前記支持部材を挿通可能な挿通溝を有し、前記筒状部の前記接続部が面する側とは反対側の端部端部に複数設けられる。
【0014】
この構成によれば、筒状部の接続部が面する側とは反対側の端部から延出して支持部材と係合する係合部がその端部に複数設けられる。このように係合部を複数設ける構成とすることで、支持部材と複数箇所で遊動可能に支持(係合)されることとなるため、支持部材との遊動可能に支持する構成を安定化させて調芯の安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコネクタ及びコネクタの取付構造によれば、調芯の安定化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態のコネクタ及びブラケットを組み付けた状態を示す斜視図。
図2】同実施形態のコネクタ及びブラケットを取り外した状態を示す斜視図。
図3】同実施形態のコネクタ及びブラケットの組み付け途中を示した正面図。
図4】同実施形態のコネクタ及びブラケットの組み付け途中を示した一部切り欠き側断面図。
図5】同実施形態のコネクタ及びブラケットの組み付け途中を示した正面図。
図6】同実施形態のコネクタ及びブラケットの組み付け途中を示した一部切り欠き側断面図。
図7】同実施形態のコネクタ及びブラケットの組み付け状態を示した正面図。
図8】同実施形態のコネクタ及びブラケットの組み付け状態を示した一部切り欠き側断面図。
図9】同実施形態のコネクタ及びブラケットの組み付け状態において幅方向及び上下方向に傾いた状態を示した正面図。
図10】同実施形態のコネクタ及びブラケットの組み付け状態において前後方向及び上下方向に傾いた状態を示した一部切り欠き側断面図。
図11】同実施形態のコネクタ及びブラケットの組み付け途中を示した断面図。
図12】同実施形態のコネクタ及びブラケットの組み付け状態を示した断面図。
図13】同実施形態のコネクタ及びブラケットの組み付け状態において幅方向及び前後方向に傾いた状態を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、コネクタを有する電気部品の一実施形態について、図1図13に従って説明する。なお、各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0018】
図1図4に示すように、本実施形態では、自動車のオートマチックトランスミッションのケース(図示せず)内に配される電気部品1が、相手側部材としてのケースRを介して外部回路に対して電気的に接続されるものを示す。なお、以下の説明において、幅方向とは図1の矢線X方向を基準とし、前後方向とは図1の矢線Y方向を基準として図示右下側を前側とし、上下方向とは図1の矢線Z方向を基準とする。
【0019】
ケースRは合成樹脂製のプレートR1を有している、プレートR1には、外部回路と接続される外部回路用接続部(図示略)と、電気部品1と接続される電気部品用接続部(図示せず)とが設けられている。この電気部品用接続部は、図1に示すように、プレートR1の一面(下面)に開口する取付孔(本発明の「装着箇所」の一例)R2の内部に設けられている。また、取付孔R2の開口縁には、外方(図示Z方向下方)に向けて間口が次第に大きくなる傾斜面を有する案内面R3が周設されている。なお、取付孔R2には、次述するコネクタ10が挿入可能(取付可能)である。
【0020】
図1図2図7及び図8に示すように、電気部品1は、コネクタ10と、コネクタ10の下端部に取り付けられた支持部材としてのブラケット30とを備えている。ブラケット30は、コネクタ10に組み付けられた状態でコネクタ10の遊動を許容するように支持している。
【0021】
ブラケット30は、金属板を打ち抜き、折り曲げ加工することによって形成されている。ブラケット30は、前後方向に延びる基底部31と、基底部31の後縁並びに前縁から上方に立ち上がる一対の取付片32とを備えている。
【0022】
各取付片32は、その上端部を幅広に形成した第1幅広部32aと、その第1幅広部32aよりも下側(基底部31側)に形成された第2幅広部32bとを備えている。
第2幅広部32bは、第1幅広部32aよりもやや幅広に設定されている。
【0023】
また、取付片32において第1幅広部32aの下端と第2幅広部32bの上端との間は、第1幅広部32aよりも幅狭に形成された第1幅狭部32cとされ、取付片32において第2幅広部32bの下端と連なる部分は、第2幅広部32bよりも幅狭に形成された第2幅狭部32dとされている。
【0024】
また、取付片32において板厚方向(前後方向)に貫通する貫通孔33が設けられる。貫通孔33は、第1幅狭部32cから第2幅広部32bの途中にかけての第1範囲A1と、第2幅広部32bの途中から第2幅狭部32dにかけての第2範囲A2とで幅が異なるように形成される。より具体的には、貫通孔33の第1範囲A1に対して第2範囲A2が幅広に設定されている。貫通孔33の第1範囲A1の上下寸法は第2範囲A2の上下寸法と略同程度に設定されている。
【0025】
コネクタ10は、上方に開口した円筒状をなす筒状部11と、筒状部11内部における奥端(下端)から上方に突出するように設けられる接続部としてのコネクタピン部12とを有する。
【0026】
筒状部11の外周面における上端部には、カム溝13が螺旋状に形成されている。一方、電気部品用接続部は回動部材(図示略)を有し、この回動部材に設けられたカムピン(図示略)がカム溝13内に進入可能となっている。
【0027】
このため、コネクタ10を取付孔R2内部に挿入させカムピンをカム溝13内部に進入させた後、前記回動部材を回動させることによりコネクタ10が取付孔R2の奥方(上方)へ引き込まれる。そして、コネクタ10が取付孔R2内部の正規位置まで挿入されると、コネクタ10が電気部品用接続部と正規嵌合する。
【0028】
筒状部11の外周面においてカム溝13の下方には、径方向内側凹状をなす溝部14が周方向に連続するように設けられている。この溝部14にはゴムリング15が装着されており、筒状部11が取付孔R2内部に挿入されると、ゴムリング15が取付孔R2の内周面と溝部14を構成する周面との間で周方向に亘って密着した状態となる。このため、取付孔R2の外部から内部に水が浸入することが規制される。
【0029】
筒状部11の下面11a側には、第1及び第2ブラケット保持部21,22がそれぞれ設けられている。
第1ブラケット保持部21は、筒状部11の後端側の下面11aから垂下するように形成されている。すなわち、第1ブラケット保持部21は、筒状部11と上下方向において重なるように形成されている。
【0030】
第2ブラケット保持部22は、筒状部11の下面11a側から側方(前方)に延出した延出部11bから垂下するように形成される。すなわち、第2ブラケット保持部22は、筒状部11と上下方向において重ならない位置(筒状部11から逸脱した位置)に形成されている。また、第2ブラケット保持部22は、第1ブラケット保持部21に対して筒状部11の周方向180度反対側に位置するように設けられる。
【0031】
第1及び第2ブラケット保持部21,22の各下端面21a,22aは面一となるように構成される。
第1及び第2ブラケット保持部21,22は、取付片32の第1幅広部32aが挿通される第1挿通溝23と、取付片32の第2幅広部32bが挿通される第2挿通溝24とを備える。第1挿通溝23が第2挿通溝24の上方に配置されている。すなわち、第2挿通溝24よりも第1挿通溝23が筒状部11の下面11a寄りに設けられる。
【0032】
また、第1及び第2ブラケット保持部21,22は、各挿通溝23,24の前後両側にそれぞれ配置された保護壁25を有しており、挿通溝23,24が外部の衝撃によって損傷することが規制されている。
【0033】
各第1挿通溝23は、第1幅広部32aの両側側部を前後方向及び幅方向の双方から挟み付け可能に形成されている。すなわち、第1挿通溝23は、断面略門形をなす一対の溝部を有し、この溝部を構成する奥面側であるX方向規制壁23a同士が対向状態をなし両溝部が幅方向に所定間隔を空けて設置されている。X方向規制壁23a同士の間隔は、第1幅広部32aの幅寸法とほぼ同じか、あるいは第1幅広部32aの幅寸法よりもやや大きめとなるように設定され、第1幅狭部32cの幅寸法よりも幅広に設定されている。また、溝部を構成する前面側であるY方向規制壁23bは、同後面側であるY方向規制壁23cと対向配置され、各Y方向規制壁23b,23cの間隔は、第1幅広部32aの板厚とほぼ同じか、あるいは第1幅広部32aの板厚よりもやや大きめとなるように設定されている。
【0034】
第2挿通溝24は、第2幅広部32bの両側縁部を前後方向及び幅方向の双方から挟み付け可能に形成されている。すなわち、第2挿通溝24は、断面略門形をなす一対の溝部を有し、この溝部を構成する奥面側であるX方向規制壁24a同士が対向状態をなし両溝部が幅方向に所定間隔を空けて設置されている。X方向規制壁24a同士の間隔は、図12に示すように、第2幅広部32bの幅寸法とほぼ同じか、あるいは第2幅広部32bの幅寸法よりもやや大きめとなるように設定され、図12に示すように、第2幅狭部32dの幅寸法よりも幅広に設定されている。また、溝部を構成する前面側であるY方向規制壁24bは、同後面側であるY方向規制壁24cと対向配置され、各Y方向規制壁24b,24cの間隔は、第2幅広部32bの板厚とほぼ同じか、あるいは第2幅広部32bの板厚よりもやや大きめとなるように設定されている。
【0035】
第1及び第2ブラケット保持部21,22において第1挿通溝23の上端と筒状部11の下面11aとの間には、第1幅広部32aを収容可能とする第1収容空間26aが形成されている。第1収容空間26aは、その幅寸法が第1幅広部32aの幅寸法よりも幅広に設定され、その上下寸法が第1幅広部32aの上下寸法よりも大きめに設定されている。また、第1収容空間26a内部に収容された第1幅広部32aは、両保護壁25間で前後方向に自由に移動可能である。
【0036】
なお、第1収容空間26aは、保護壁25を略T字形に切り欠くことにより形成された切り欠き部25aにおいて幅方向に延びる開口部から前方に臨んでいる。この切り欠き部25aにおいて上下方向に延びる開口部の下端には、保護壁25の板厚方向(取付片32の板厚方向)に撓み可能な係止片27が上方に突出して設けられている。
【0037】
第1及び第2ブラケット保持部21,22において第1挿通溝23の下端と第2挿通溝24の上端との間には、第2幅広部32bを収容可能とする第2収容空間26bが形成されている。第2収容空間26bは、その幅寸法が第2幅広部32bの幅寸法よりも幅広に設定され、その上下寸法が第2幅広部32bの上下寸法よりもやや大きめとなるように設定されている。また、第2収容空間26b内部に収容された第2幅広部32bは、両保護壁25間で前後方向に自由に移動可能である。
【0038】
また、本例のコネクタ10では、第2ブラケット保持部22側にハーネス保持部40が設けられる。ハーネス保持部40は、上下方向の一方側である下方側が開口された溝状をなしている。ハーネス保持部40の下方側の開口部40a寄りには、対向する側壁41からそれぞれ延出する2つの保持片42を有する。保持片42は、開口部40aの開口量を狭めて開口部40aからハーネスが脱落することが抑えられている。また、各保持片42は、開口部40a側にテーパ部を有する。各テーパ部は、開口部40a側ほど互いに離間するような傾斜面となっている。これによって、開口部40a側からハーネスを挿通(収容)しやすくなっている。
【0039】
さて、上述したようにコネクタ10は、ブラケット30に対して規制位置と許容位置との間で上下方向に移動可能となっており、取付孔R2に取り付けられる直前までは、規制位置に位置して遊動が規制されているものの、取付孔R2に取り付けられる取付途上においては、許容位置に位置して遊動が許容されるように構成されている。
【0040】
コネクタ10が規制位置にあるときには、図3に示すように、第1幅広部32aの上端部が第2挿通溝24の下端部に進入した状態となっている。このため、コネクタ10は、前後方向に移動することが規制されている。
【0041】
コネクタ10が許容位置へ向かう途上では、図5に示すように、第1幅広部32aが第1挿通溝23内によって挿通され、第2幅広部32bが第2挿通溝24によって挿通されている。このため、コネクタ10は、幅方向及び前後方向の双方に移動することが規制されている。このとき係止片27は、図6に示すように撓み変形しつつ、上端係止面27aが取付片32において第1幅広部32aを乗り上げた状態となっている。そして、コネクタ10が許容位置に至ると、図8に示すように、係止片27が復帰して上端係止面27aが貫通孔33に嵌り込んだ状態となる。
【0042】
コネクタ10が許容位置にあるときには、図7に示すように、第1幅広部32aが第1収容空間26a内に収容され、第1幅狭部32cが第1挿通溝23の両溝部間に配置され、第2幅広部32bが第2収容空間26b内に収容され、第2幅狭部32dが第2挿通溝24の両溝部間に配置されている。このため、コネクタ10は、図9図10、又は図13に示すように、幅方向及び前後方向の双方に移動することが許容される。
【0043】
さらに、上下方向については、図8に示すように、係止片27の上端係止面27aと貫通孔33の内周面における上面との間に隙間が形成されているから、この隙間の分だけコネクタ10が上方へ移動することが許容される。
【0044】
コネクタ10は、図7及び図8に示すように、遊動可能な状態でブラケット30に取り付けられているから、図9に示すように、幅方向及び上下方向に移動することが許容されると共に、図10に示すように、前後方向及び上下方向に移動することが許容される。
【0045】
次に、本実施形態の作用について説明する。
コネクタ10が許容位置(組み付け状態)にあるときには、図7に示すように、第1幅広部32aが第1収容空間26a内に収容され、第1幅狭部32cが第1挿通溝23の両溝部間に配置され、第2幅広部32bが第2収容空間26b内に収容され、第2幅狭部32dが第2挿通溝24の両溝部間に配置されている。このため、コネクタ10は、図9図10、又は図13に示すように、幅方向及び前後方向の双方に移動することが許容される。
【0046】
引き続き、電気部品1のケースRへの組み付けを行い、コネクタ10を取付片32に対して相対的に接近させる作業に続けて、コネクタ10を取付孔R2に挿入することができる。このとき、電気部品1の組み付け方向が正規の組み付け方向に対して傾いた姿勢となることがあるものの、コネクタ10がブラケット30に対して遊動可能に支持されているから、コネクタ10が取付孔R2の内周面に押し当てられる等のおそれがなく、円滑な挿入が可能になる。すなわち、電気部品1をケースRへ組み付ける作業における組み付け誤差を吸収することができるから、コネクタ10の取付孔R2に対する円滑な挿入動作を確保することができる。
【0047】
以上のように本実施形態では、コネクタ10を取付孔R2に取り付ける取付途上においては、コネクタ10の遊動が許容されているから、コネクタ10の軸芯位置が取付孔R2の軸心に対して位置ずれするおそれがない。したがって、コネクタ10を取付孔R2に取り付ける取付作業が容易になる。
【0048】
また、コネクタ10の取付孔R2への取付方向とコネクタ10の取付片32への挿通方向が一致しているため、取付片32を両挿通溝23,24へ挿通する作業に続けて、コネクタ10を取付孔R2に取り付ける作業を行うことができる。
【0049】
また、本例のコネクタ10では、2つのブラケット保持部21,22によってブラケット30に対して組み付けられているため、ブラケット30による安定した支持が可能となる。これにより、調芯の安定化が図られる。また、従来のような1つの保持部(係合部)と構造の異なる複数の規制部を設けることがないため、同じブラケット保持部21,22を2つ設ける構成としてコネクタ10のブラケット保持部21,22が設けられる側の端部を短尺化させることが可能となる。
【0050】
次に、本実施形態の効果を記載する。
(1)筒状部11のコネクタピン部12が面する側とは反対側の端部(下面11a)から延出してブラケット30と係合するブラケット保持部21,22がその端部に複数設けられる。このようにブラケット保持部21,22を複数設ける構成とすることで、ブラケット30と複数箇所で遊動可能に支持(係合)されることとなるため、ブラケット30との遊動可能に支持する構成を安定化させて調芯の安定化を図ることができる。
【0051】
(2)ブラケット保持部21,22は2つ設けられ、筒状部11の周方向180度反対側に位置するように設けられるため、ブラケット30を挿通溝23,24に挿通させて係合させる際に安定した支持が可能となる。
【0052】
(3)複数設けられるブラケット保持部21,22の下端面21a,22aが面一であるため、コネクタ10のブラケット保持部21,22の下端面21a,22a側で安定して載置することができる。
【0053】
(4)ブラケット保持部21,22の内の1つのブラケット保持部22が筒状部11から逸脱した位置に設けられることで、ブラケット保持部21,22間の距離が長くなるためブラケット30による安定した支持が可能となる。
【0054】
(5)ハーネス保持部40がブラケット保持部22に一体的に設けられることで、部品点数を増やすことなくハーネスの保持することができる。
(6)筒状部11のコネクタピン部12が面する側とは反対側の端部(下面11a)から延出してブラケット30と係合するブラケット保持部21,22がその端部に複数設けられる。このように同じブラケット保持部21,22を複数設ける構成とすることで、ブラケット保持部21,22と異なる構造の規制部を省略することができる。コネクタ10のブラケット保持部21,22が設けられる側の端部を短尺化させてコネクタ10全体の短尺化に寄与できる。
【0055】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、第1及び第2ブラケット保持部21,22を2つ有する構成としたが、その数は3つ以上に変更してもよい。
【0056】
・上記実施形態では第1ブラケット保持部21と第2ブラケット保持部22とが筒状部11の周方向180度反対側に位置する構成としたが、その角度は任意に変更してもよい。上述したようにブラケット保持部の個数の変更に伴い周方向等角度間隔で設ける構成であってもよい。
【0057】
・上記実施形態では、第1及び第2ブラケット保持部21,22の各下端面21a,22aが面一となるように構成したが、これに限らない。第1及び第2ブラケット保持部21,22の延出長さを変更し下端面21a,22aの位置が異なるような構成としてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、第1ブラケット保持部21を筒状部11と上下方向において重なる位置に設け、第2ブラケット保持部22を筒状部11と上下方向において重ならない位置(筒状部11から逸脱した位置)に設ける構成としたが、これに限らない。例えば、第1及び第2ブラケット保持部21,22の両方が筒状部11と上下方向において重ならない位置(筒状部11から逸脱した位置)に設ける構成や、第1及び第2ブラケット保持部21,22の両方が筒状部11と上下方向において重なる位置に設ける構成としてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、ハーネス保持部40を第2ブラケット保持部22と一体的に設ける構成としたが、別の位置にハーネス保持部40を設ける構成を採用してもよい。
・上記実施形態並びに各変形例は適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…電気部品
10…コネクタ
11…筒状部
12…コネクタピン部(接続部)
21…第1ブラケット保持部(係合部)
21a…下端面
22…第2ブラケット保持部(係合部)
22a…下端面
23…第1挿通溝(挿通溝)
24…第2挿通溝(挿通溝)
30…ブラケット(支持部材)
40…ハーネス保持部
R…ケース(相手側部材)
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