特許第6848751号(P6848751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848751
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】押出機の洗浄装置及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/27 20190101AFI20210315BHJP
   B29C 45/24 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   B29C48/27
   B29C45/24
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-144600(P2017-144600)
(22)【出願日】2017年7月26日
(65)【公開番号】特開2019-25687(P2019-25687A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】517048164
【氏名又は名称】株式会社エムイーピーコム四日市
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小谷 知由
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−040415(JP,A)
【文献】 実開平01−101682(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/22
B29C 45/17,48/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機のバレル内壁を洗浄する洗浄装置であって、
先端にブラシが取り付けられた洗浄棒と、
前記洗浄棒の基端側を支持して該洗浄棒を回転すると共に、該洗浄棒の長手方向に沿って移動する後方支持部と、
前記洗浄棒を回転自在に支持する前方支持部と、
前記後方支持部と前記前方支持部との間で、前記洗浄棒を回転自在に支持すると共に、該洗浄棒の長手方向に沿って移動する中間支持部と、
を備える押出機の洗浄装置であって、
前記後方支持部と前記中間支持部とを同方向に、かつ、前記中間支持部の移動速度が前記後方支持部の移動速度よりも遅くなるように移動させる移動機構を備えたことを特徴とする押出機の洗浄装置。
【請求項2】
請求項において、前記中間支持部は、前記後方支持部と前記前方支持部との中間点に配置され、前記中間支持部の移動速度は、前記後方支持部の移動速度の1/2となっていることを特徴とする押出機の洗浄装置。
【請求項3】
請求項又はにおいて、前記後方支持部を移動させる動力源が前記後方支持部に設けられており、ローラーチェーンを介して前記中間支持部に動力が伝達され、前記中間支持部が移動することを特徴とする押出機の洗浄装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかにおいて、2本の前記洗浄棒が平行に設けられており、
第1洗浄棒の先端に取り付けられた第1ブラシと、第2洗浄棒の先端に取り付けられた第2ブラシとは、前記長手方向の前後にずらして配置されていることを特徴とする押出機の洗浄装置。
【請求項5】
請求項において、前記前方支持部、前記中間支持部及び前記後方支持部には、それぞれ、前記第1洗浄棒及び前記第2洗浄棒を回転自在に支持する交換可能な軸受が設けられており、
前記第1ブラシ及び前記第2ブラシは、前記第1洗浄棒及び前記第2洗浄棒の先端に交換可能に取り付けられていることを特徴とする押出機の洗浄装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかにおいて、前記前方支持部の位置は固定されていることを特徴とする押出機の洗浄装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかにおいて、前記後方支持部、前記中間支持部及び前記前方支持部はケース内に収容されており、該ケースの前方側の端面には前記洗浄棒が通された開口が設けられていることを特徴とする押出機の洗浄装置。
【請求項8】
請求項において、前記ケースには、冷気を供給するための供給口、及びケース内の空気を排出するための排気口が設けられていることを特徴とする押出機の洗浄装置。
【請求項9】
請求項又はにおいて、前記ケースの上面には開閉可能な蓋部が設けられており、該蓋部の開放時は動作が停止することを特徴とする押出機の洗浄装置。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれかにおいて、前記洗浄棒の移動範囲の設定を受け付ける制御機構をさらに備えることを特徴とする押出機の洗浄装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の洗浄装置を用いて押出機のバレル内壁を洗浄する方法であって、
前記バレルに対して前記洗浄棒の軸合わせを行い、
前記洗浄棒を回転させながら前記ブラシを前記バレル内に進入させ、
前記洗浄棒を前進又は後退させ、前記バレル内壁を洗浄することを特徴とする洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機のバレル内壁に付着した汚れを除去する洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料中に安定剤や顔料等を混練する押出機は、1台で複数種の樹脂ペレットを製造するため、材料の変更が頻繁に行われている。前の製造時に用いられた材料が、後の製造に影響を及ぼさないように、押出機のバレル内壁の洗浄が行われる。
【0003】
従来の洗浄作業では、例えば、バレル長以上の長さの棒の一端をハンドドリルに取り付け、棒の他端(先端)にワイヤブラシを取り付け、ハンドドリルを持った作業者が前後に移動し、回転するワイヤブラシをバレル長手方向に繰り返し往復移動させて、バレル内壁に付着して残っている樹脂を除去していた。しかし、ハンドドリルは重く、振動があり、洗浄作業を連続して行える時間には限界があった。作業者が1人の場合は休憩をとりながら洗浄作業を行うため、洗浄完了までに時間がかかり、押出機の稼働効率向上の妨げになっていた。複数の作業者が交代で洗浄作業を行うことも考えられるが、人的コストがかかる。
【0004】
特許文献1には、回転軸の先端側にブラシを取り付け、回転軸の基端側を回転駆動手段となるモータに取り付け、モータを設置支持台に載置した清掃装置が提案されている。設置支持台の下端には走行手段となるキャスターが設けられている。設置支持台を移動させ、回転軸を回転させながらバレルのスクリュー口の前方側から後方側へ挿入することで、スクリュー口等を清掃する。この清掃装置では、モータが設置支持台に載置されているため、ハンドドリルを手持ちする洗浄作業と比較して、作業者の負担は軽減できる。しかし、バレル内壁を洗浄するには、作業者が設置支持台を前後に移動させる必要があるため、人手を要してコストがかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−40415号公報
【特許文献2】特開昭61−43533号公報
【特許文献3】特開平6−328542号公報
【特許文献4】特開2013−244737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであり、押出機バレルを速やかに洗浄すると共に、人的コストを削減できる押出機の洗浄装置及び洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による押出機の洗浄装置は、押出機のバレル内壁を洗浄する洗浄装置であって、先端にブラシが取り付けられた洗浄棒と、前記洗浄棒の基端側を支持して該洗浄棒を回転すると共に、該洗浄棒の長手方向に沿って移動する後方支持部と、前記洗浄棒を回転自在に支持する前方支持部と、前記後方支持部と前記前方支持部との間で、前記洗浄棒を回転自在に支持すると共に、該洗浄棒の長手方向に沿って移動する中間支持部と、を備えるものである。
【0008】
本発明の一態様では、前記後方支持部と前記中間支持部とは同方向に移動し、前記中間支持部の移動速度は、前記後方支持部の移動速度よりも遅い。
【0009】
本発明の一態様では、前記中間支持部は、前記後方支持部と前記前方支持部との中間点に配置され、前記中間支持部の移動速度は、前記後方支持部の移動速度の1/2となっている。
【0010】
本発明の一態様では、前記後方支持部を移動させる動力源が前記後方支持部に設けられており、ローラーチェーンを介して前記中間支持部に動力が伝達され、前記中間支持部が移動する。
【0011】
本発明の一態様では、2本の前記洗浄棒が平行に設けられており、第1洗浄棒の先端に取り付けられた第1ブラシと、第2洗浄棒の先端に取り付けられた第2ブラシとは、前記長手方向の前後にずらして配置されている。
【0012】
本発明の一態様では、前記前方支持部、前記中間支持部及び前記後方支持部には、それぞれ、前記第1洗浄棒及び前記第2洗浄棒を回転自在に支持する交換可能な軸受が設けられており、前記第1ブラシ及び前記第2ブラシは、前記第1洗浄棒及び前記第2洗浄棒の先端に交換可能に取り付けられている。
【0013】
本発明の一態様では、前記前方支持部の位置は固定されている。
【0014】
本発明の一態様では、前記後方支持部、前記中間支持部及び前記前方支持部はケース内に収容されており、該ケースの前方側の端面には前記洗浄棒が通された開口が設けられている。
【0015】
本発明の一態様では、前記ケースには、冷気を供給するための供給口、及びケース内の空気を排出するための排気口が設けられている。
【0016】
本発明の一態様では、前記ケースの上面には開閉可能な蓋部が設けられており、該蓋部の開放時は動作が停止する。
【0017】
本発明の一態様では、前記洗浄棒の移動範囲の設定を受け付ける制御機構をさらに備える。
【0018】
本発明による押出機の洗浄装置は、本発明の洗浄装置を用いて押出機のバレル内壁を洗浄する方法であって、前記バレルに対して前記洗浄棒の軸合わせを行い、前記洗浄棒を回転させながら前記ブラシを前記バレル内に進入させ、前記洗浄棒を前進又は後退させ、前記バレル内壁を洗浄するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、押出機バレルを安全かつ速やかに洗浄し、押出機の稼働効率を向上させることができる。また、バレル洗浄に要する人的コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態による洗浄装置の斜視図である。
図2】バレルの概略図である。
図3】同実施形態による洗浄装置の平面図である。
図4】同実施形態による洗浄装置の側面図である。
図5】同実施形態による洗浄装置の側面図である。
図6】洗浄棒の支持部の斜視図である。
図7】洗浄棒の支持部の位置を示す図であり、(a)は洗浄開始時を示し、(b)は洗浄途中を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る洗浄装置の斜視図である。洗浄装置は、先端にブラシ12a、12b(ワイヤブラシ)を取り付けた2本の洗浄棒10a、10bを回転させながら前進/後退させることで、図2に示すようなバレル80の内壁を洗浄する。バレル80の内壁断面形状は8字形となっており、開口端82,82から洗浄棒10a、10bが挿脱される。洗浄棒10a、10bの長さは、バレル80の長さ以上である。
【0023】
洗浄棒10a、10bを回転及び移動させる回転移動機構は、樹脂製の透明のケース1内に収容されている。ケース1の前方側の端面1bには開口1aが形成されており、開口1aを介して洗浄棒10a、10bが進退する。なお、本実施形態では、洗浄棒10a、10bがケース1から突出する方向を前方とする。
【0024】
ケース1の端面1bから複数の連結棒7が垂設されており、連結棒7の他端には当て板2が取り付けられている。当て板2には、開口2aが形成されており、開口2aを介して洗浄棒10a、10bが進退する。
【0025】
ケース1は支持台3上に昇降機構5を介して載置されている。回転ハンドル5aが回転軸5bを介して昇降ジャッキ(図示略)に連結されており、回転ハンドル5aを回してケース1の高さを調整できるようになっている。
【0026】
支持台3の下端にはキャスター4が設けられている。また、支持台3には、制御盤6が設けられており、洗浄装置の動作の設定が行えるようになっている。
【0027】
次に、洗浄棒10a、10bを回転及び移動させる回転移動機構の構成を、図3図6を参照して説明する。図3は回転移動機構の平面図である。図4は、図3の矢印Y1方向から見た回転移動機構の側面図である。図5は、図3の矢印Y2方向から見た回転移動機構の側面図である。
【0028】
回転移動機構は、洗浄棒10a、10bの基端側(後端側)を支持し、洗浄棒10a、10bを回転させる後方支持部20、ケース1内の前方側で洗浄棒10a、10bを回転自在に支持する前方支持部40、後方支持部20と前方支持部40との間で洗浄棒10a、10bを回転自在に支持する中間支持部30、ローラーチェーン50、洗浄棒10a、10bの長手方向(前後方向)に沿って延在するラック60等を備える。
【0029】
後方支持部20及び中間支持部30は前後方向に移動する。前方支持部40の位置は固定されている。
【0030】
後方支持部20において、洗浄棒10aの基端部は把持部27aにより把持され、モータ21a(回転駆動部)により回転できるようになっている。同様に、洗浄棒10bの基端部は把持部27bにより把持され、モータ21bによって回転できるようになっている。把持部27a、27bは、軸受26a、26bによって回転自在に支持されている。
【0031】
洗浄対象のバレル80の内壁断面形状は2つの円の一部が重なったような8字形であり、洗浄棒10aと洗浄棒10bとは近接して配置する必要がある。そのため、モータ21aとモータ21bとを左右方向(前後方向と直交する方向)に並べて配置することはできず、モータ21aとモータ21bとは前後にずらして配置される。
【0032】
図3に示す例では、モータ21aをモータ21bよりも後方側に配置している。また、軸受26aを軸受26bよりも後方側に配置している。モータ21aと把持部27aとの間は回転軸28により連結されている。
【0033】
洗浄棒10a、10bの長さは同じであり、洗浄棒10aの先端は、洗浄棒10bの先端よりもやや後方に位置している。ブラシ12aはブラシ12bよりもやや後方に配置されている。
【0034】
モータ21a、21b、軸受26a、26b等は、ベース24上に載置されている。ベース24上にはモータ22がさらに設けられている。モータ22には、回転軸22aを介して歯付車23が取り付けられている。歯付車23はラック60上を走行する。モータ22、歯付車23、及びラック60は、いわゆるラック・アンド・ピニオンである。ベース24は図示しないレール上を前後に摺動する。
【0035】
ベース24を挟んでラック60と反対側にローラーチェーン50が設けられている。ローラーチェーン50(無端チェーン)は、複数のスプロケット51に巻回されている。ベース24から延出して設けられたスプロケット25がローラーチェーン50に巻回されており、後方支持部20の移動に伴いローラーチェーン50が回転する。
【0036】
中間支持部30は、洗浄棒10a、10bを回転自在に支持する軸受32a、32bと、軸受32a、32bを載置するベース34と、を備えている。ベース34の左右両端部から側壁34a、34bが略垂直に立ち上がっている。軸受32aは、軸受32bよりもやや後方側に配置されている。ベース34は図示しないレール上を前後に摺動する。
【0037】
側壁34a、34bを貫通して回動軸37が回動可能に設けられ、回動軸37の一端に歯付車33が取り付けられ、回動軸37の他端にスプロケット36aが取り付けられている。歯付車33はラック60上を走行する。側壁34bにはスプロケット36b、36cが設けられ、スプロケット36a〜36cにローラーチェーン50が巻回されている。ローラーチェーン50の回転が、スプロケット36a及び回動軸37を介して歯付車33に伝達され、歯付車33がラック60上を走行することで、中間支持部30が前後後方に移動するようになっている。
【0038】
歯付車33の径は、歯付車23の径よりも小さい。中間支持部30は後方支持部20と同じ方向に移動する。また、中間支持部30の移動速度は、後方支持部20の移動速度よりも遅くなっている。
【0039】
前方支持部40は、洗浄棒10a、10bを回転自在に支持する軸受42a、42bと、軸受42a、42bを載置するベース44と、を備えている。軸受42aは、軸受42bよりもやや後方側に配置されている。前方支持部40の位置は固定であり、ケース1の端面1b近傍に配置されている。
【0040】
軸受32a、32b、42a、42bは、図6に示すようなボールベアリングの他、すべり軸受など、公知のものを用いることができる。軸受26a、26bも同様である。
【0041】
制御盤6を操作し、洗浄装置の動作を制御することができる。例えば、洗浄棒10a、10bの回転速度、回転方向(正転/逆転)、移動速度等を設定することができる。また、洗浄棒10a、10bの前進時間、後退時間、前進及び後退のサイクルを繰り返す回数等を設定することができる。
【0042】
限定されるものではないが、本発明の方法において、ブラシ12a、12bが取り付けられる洗浄棒10a、10bの回転速度は1500〜3000rpmであるのが好ましく、中間支持部30の歯付車33の回転速度(移動速度)は3〜6rpmであるのが好ましい。
【0043】
制御盤6の操作により、手動操作/自動運転の条件設定変更を行うことができ、洗浄棒10a、10bの往復運動の条件(前進、後進時間及び回数)を任意に設定できる。手元スイッチでは、手動操作/自動運転の切り替え、各手動操作及び起動・停止/非常停止の操作ができる。また、任意の場所で移動を停止し、同じ箇所を連続して洗浄することも可能である。
【0044】
バレル80の内壁の洗浄を行う場合、洗浄装置を移動し、昇降機構5でバレル80と洗浄装置の高さを合わせ、当て板2をバレル80のフランジ81に当接させ、バレル内壁と洗浄棒10a、10bとの軸合わせを行う。制御盤6を操作し、洗浄作業を開始すると、モータ21a、21bが洗浄棒10a、10bを回転させる。
【0045】
モータ22が歯付車23を回転させることで洗浄棒10a、10bが前進し、ブラシ12a、12bが開口端82,82からバレル80内に進入する。回転するブラシ12a、12bが、バレル80内で前後に動くことで、バレル内壁に付着した汚れが除去される。
【0046】
バレル長以上の長さを有する洗浄棒10a、10bを、後方支持部20、中間支持部30、及び前方支持部40の3ヶ所で支持するため、洗浄棒10a、10bの撓みや軸ブレを抑え、回転させた洗浄棒10a、10bを安定的に前後方向に移動させることができる。
【0047】
中間支持部30の移動速度が、後方支持部20の移動速度の半分となるように歯付車33のサイズを調整し、図7(a)に示すように、洗浄開始時の中間支持部30の初期位置を、後方支持部20と前方支持部40との中間点付近にすることが好ましい。
【0048】
図7(b)に示すように、歯付車33が回転し、後方支持部20が距離L前進した場合、歯付車33が設けられた中間支持部30は距離L/2だけ前進する。後方支持部20との間の距離と、中間支持部30と前方支持部40との間の距離とが、洗浄中、常に同一になり、洗浄棒10a、10bを安定した姿勢で保持することができる。
【0049】
また、本実施形態では、洗浄作業開始後、洗浄装置が洗浄棒10a、10bの回転、前進、後退を自動で行うため、作業者が常に監視している必要はなく、人的コストを抑えることができる。洗浄作業を連続して行うことができ、洗浄完了までの時間を短縮し、押出機の稼働効率を向上させることができる。
【0050】
本実施形態による洗浄装置を用いた場合のバレル洗浄所要時間と、先端にワイヤブラシを取り付けた棒をハンドドリルで回転させ、ハンドドリルを手持ちする作業者が前後に移動する従来の洗浄作業によるバレル洗浄所要時間との比較例を以下の表1に示す。
【0051】
洗浄対象樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂を主成分とする組成物(PBT非強化と略す)、ポリブチレンテレフタレート樹脂にガラス繊維を30質量%混合したものを主成分とする組成物(PBT強化と略す)、及び、ポリフェニレンエーテル系樹脂を主成分とする組成物(PPEと略す)を用いた。
【0052】
尚、洗浄時の、ブラシの回転速度は1500rpm、回転方向は回転1モータ(制御盤側):正回転、回転2モータ(反制御盤側):逆回転とした。また、中間支持部30の移動速度775rpm(30Hz)×1/120(減速比)駆動で歯車20枚、後方指示部20の歯車40枚であり、中間支持部30の移動速度は、後方支持部20の移動速度の1/2とした。
【0053】
また、洗浄したバレルの長さは、PBT強化及び非強化においては、バレル全長全てであり、PPEにおいては、バレル開口端82から、バレル全長の9割の地点までの間とした。
【0054】
【表1】
【0055】
本実施形態では、洗浄作業を連続して行うことができる。また、バレル内壁断面形状が8字形となっている場合、従来の洗浄作業では開口端82,82の各々からワイヤブラシを挿入してバレル内壁を1本ずつ洗浄する必要があるが、本実施形態では2本の洗浄棒10a、10bで同時に洗浄できる。そのため、洗浄時間(洗浄開始から完了までに要する時間)を大幅に短縮することができる。
【0056】
洗浄するバレルの長さは、汚れの付着している部分のみ行うためにバレルの一部であってもよいし、全体的に洗浄するためにバレルの全長であってもよいが、好ましくはバレルの開口部82からバレル全長の8割以上であり、より好ましくは9割以上である。
【0057】
上記実施形態において、ケース1の上面を複数に分割した蓋部で構成し、各蓋部を取り外し可能としてもよい。この蓋部の開放時は洗浄装置の動作が停止するように、すなわち洗浄棒10a、10bの回転や移動が行われないように、リミットスイッチ等によるインターロック機能が取り付けられていてもよい。
【0058】
2本の洗浄棒10a、10bの一方を取り外して、1本の洗浄棒で洗浄作業を行ってもよい。
【0059】
軸受フレーム(軸受26a,26b、32a,32b、42a,42b)やブラシ12a,12bを脱着・交換することで、様々なサイズのバレルに対応することが可能となる。
【0060】
ケース1に、スポットクーラーからの冷気を供給する供給口と、モータの動作で温まったケース内の空気を排出する排気口とを形成してもよい。
【0061】
上記実施形態では、後方支持部20と前方支持部40との間に設ける中間支持部30は1個でなくてもよく、2個以上であってもよい。複数の中間支持部30を設ける場合、前方側ほど移動速度が遅くなるようにすることが好ましい。
【0062】
ローラーチェーン50を省略し、中間支持部30に歯付車33を回転させるモータを設けてもよい。
【0063】
本発明の洗浄装置を用いた洗浄方法が対象とする樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられ、特にポリエステル樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 ケース
2 当て板
3 支持台
5 昇降機構
6 制御盤
10a、10b 洗浄棒
12a、12b ブラシ
20 後方支持部
21a、21b、22 モータ
23、33 歯付車
30 中間支持部
32a、32b、42a、42b 軸受
40 前方支持部
50 ローラーチェーン
51 スプロケット
60 ラック
80 バレル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7