(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面(
図1〜
図7)を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0011】
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る画像形成装置100の構成について説明する。
図1は、画像形成装置100の構成を示す図である。画像形成装置100は、カラー複合機である。画像形成装置100は、原稿Rに形成された画像を読み取ると共に、トナーを用いて用紙Pに画像を形成する。
【0012】
図1に示すように、画像形成装置100は、画像形成ユニット10、原稿読取ユニット20、原稿搬送ユニット30及び操作パネル40を備える。画像形成ユニット10は、用紙Pに画像を形成する。原稿読取ユニット20は、原稿Rに形成された画像を読み取り、画像情報を生成する。原稿搬送ユニット30は、原稿Rを原稿読取ユニット20に搬送する。操作パネル40は、ユーザーからの操作を受け付ける。
【0013】
画像形成ユニット10は、筐体101、給送部102、搬送部L、トナー供給部103、画像形成部104、定着装置FX、排出部107及び排気ファン108を備える。画像形成部104は、転写部105を含む。定着装置FXは、定着部1及び制御部5を含む。制御部5は、画像形成装置100の動作を制御する。
【0014】
筐体101には、給送部102、搬送部L、トナー供給部103、画像形成部104、定着装置FX、排出部107及び排気ファン108が収容される。
【0015】
給送部102は、用紙Pを搬送部Lへ供給する。搬送部Lは、用紙Pを転写部105及び定着部1を経由して排出部107まで搬送する。用紙Pは、「記録媒体」の一例に相当する。
【0016】
トナー供給部103は、画像形成部104にトナーを供給する。画像形成部104は、用紙Pに画像を形成する。
【0017】
転写部105は、中間転写ベルト106を備える。画像形成部104が、中間転写ベルト106上にシアン色、マゼンタ色、イエロー色、及び黒色のトナー像を転写する。複数色のトナー像が中間転写ベルト106上で重畳され、中間転写ベルト106上に画像が形成される。転写部105は、中間転写ベルト106上に形成された画像を、用紙P上に転写する。その結果、用紙Pに画像が形成される。
【0018】
定着部1は、用紙Pを加熱及び加圧し、用紙Pに形成された画像を用紙Pに定着する。排出部107は、用紙Pを画像形成装置100の外部に排出する。
【0019】
排気ファン108は、筐体101の内部の空気を筐体101の外部に排出する。排気ファン108は、例えばモーターによって駆動され、制御部5によって制御される。排気ファン108は、「排気部」の一例に相当する。
【0020】
操作パネル40は、タッチパネル401を備える。タッチパネル401は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)を備え、種々の画像を表示する。また、タッチパネル401は、タッチセンサーを備え、ユーザーからの操作を受け付ける。
【0021】
次に、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る定着装置FXの機械的構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る定着装置FXの機械的構成の一例を示す図である。
【0022】
図2に示すように、定着装置FXの定着部1は、加圧ローラー2、ベルト部3及び誘導加熱部4を備える。
【0023】
加圧ローラー2は、ベルト部3との間でニップ部Nを形成する。加圧ローラー2は、芯金21、弾性層22及び離型層23を有する。加圧ローラー2は、「回転部材」の一例に相当する。弾性層22は、芯金21上に形成される。離型層23は、弾性層22の表面を覆う。芯金21は、例えばステンレス鋼で形成される。弾性層22は、例えばシリコーンゴムで形成される。離型層23は、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)のようなフッ素樹脂で形成される。
【0024】
ベルト部3は、ニップ部Nにおいて用紙Pを加熱及び加圧し、用紙Pに形成された画像を用紙Pに定着する。ベルト部3は、定着ベルト31、押圧パッド32、支持部材33、ベルトガイド部材34及び温度センサーS1を備える。
【0025】
定着ベルト31は、円筒状に形成された無端ベルトであり、磁性金属材料を含む誘導発熱層を有する。定着ベルト31の誘導発熱層は、誘導加熱部4が発生させる磁界の変化によって発熱する。加圧ローラー2が芯金21を中心に回転方向R1(反時計まわりの方向)に回転すると、定着ベルト31が回転方向R2(時計まわりの方向)に従動して回転する。すなわち、加圧ローラー2は、定着ベルト31の外周面に接し定着ベルト31を回転させる。
【0026】
押圧パッド32は、定着ベルト31を加圧ローラー2に押圧する。押圧パッド32は、定着ベルト31の内側において支持部材33に固定され、定着ベルト31を挟んで加圧ローラー2と対向する。押圧パッド32は、例えば、樹脂で形成される。押圧パッド32は、「押圧部材」の一例に相当する。押圧パッド32は、摺動面321を有する。摺動面321は、定着ベルト31との間で摺動する。摺動面321には、シリコーンオイルQが塗布されている。
【0027】
支持部材33は、定着ベルト31の内側に固定される。支持部材33は、誘導加熱部4によって加熱されないように、非磁性体で形成されることが好ましい。支持部材33は、例えばアルミニウムで形成される。
【0028】
ベルトガイド部材34は、定着ベルト31の内側において支持部材33に固定され、定着ベルト31を挟んで誘導加熱部4と対向する。ベルトガイド部材34は、定着ベルト31の内周面を支持して、定着ベルト31の走行軌道を安定させる。また、ベルトガイド部材34は、定着ベルト31に所定の張力を付与する。ベルトガイド部材34は、誘導加熱部4によって加熱されるように、磁性金属材料で形成されることが好ましい。ベルトガイド部材34は、例えば、鉄系の合金で形成される。
【0029】
温度センサーS1は、定着ベルト31の温度THを検出する。温度センサーS1は、例えば、ベルトガイド部材34のうち、定着ベルト31の近傍の位置に固定される。温度センサーS1としては、例えば、サーミスターが使用される。温度センサーS1の検出信号は、制御部5に伝送される。
【0030】
また、ベルト部3は、湿度センサーS2を更に備えてもよい。湿度センサーS2は、定着ベルト31近傍の湿度HUを検出する。湿度センサーS2は、ベルトガイド部材34のうち、定着ベルト31の近傍の位置に固定される。湿度センサーS2としては、例えば、抵抗変化型湿度センサーが使用される。湿度センサーS2の検出信号は、制御部5に伝送される。なお、以下の説明においては、ベルト部3が湿度センサーS2を備えない場合について説明する。
【0031】
誘導加熱部4は、いわゆる、IH(Induction Heating)方式で定着ベルト31を加熱する。誘導加熱部4は、コイルボビン41、コイル42、アーチ型コア部43及び一対のサイドコア部44を備える。誘導加熱部4は、「加熱部」の一例に相当する。
【0032】
コイルボビン41は、定着ベルト31の外周面から所定の間隔を隔てた位置に配置されて、定着ベルト31を挟んでベルトガイド部材34と対向する。コイルボビン41は、耐熱性樹脂で形成されることが好ましい。
【0033】
コイル42は、誘導加熱で定着ベルト31を加熱する。コイル42は、加圧ローラー2の軸方向に沿って導線(例えば、リッツ線)が複数回巻回されて形成される。コイル42は、コイルボビン41に固定される。
【0034】
アーチ型コア部43及び一対のサイドコア部44は、コイル42の外側を囲んでいる。アーチ型コア部43は、コイルボビン41に沿って、アーチ状に延びる。1対のサイドコア部44の各々は、アーチ型コア部43の両端部の近傍に配置される。アーチ型コア部43及び一対のサイドコア部44は、フェライトのような磁性材料で形成される。よって、コイル42によって発生された磁束は、アーチ型コア部43及び一対のサイドコア部44に導かれて、定着ベルト31に沿って形成される。
【0035】
次に、
図2及び
図3を参照して、定着装置FXの電気的構成について更に説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る定着装置FXの電気的構成の一例を示す図である。
【0036】
図3に示すように、定着装置FXは、更に、電源回路45を備える。電源回路45は、コイル42に高周波電流を供給する。具体的には、コイル42は、電源回路45に接続され、電源回路45から供給される高周波電流によって交流磁束(交流磁界)を発生する。交流磁束によって、定着ベルト31の誘導発熱層に渦電流が発生する。誘導発熱層に渦電流が発生すると、誘導発熱層の電気抵抗によってジュール熱が発生して、定着ベルト31が発熱する。
【0037】
制御部5は、プロセッサー51及び記憶部52を備える。プロセッサー51は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備える。記憶部52は、半導体メモリーのようなメモリーを備え、HDD(Hard Disk Drive)を備えてもよい。記憶部52は、制御プログラムを記憶している。プロセッサー51は、制御プログラムを実行することによって、電源回路45及び排気ファン108を制御する。
【0038】
具体的には、制御部5は、温度センサーS1が検出した温度THに基づいて、電源回路45及び排気ファン108を制御する。更に具体的には、制御部5は、定着ベルト31の温度THを所定温度で所定時間だけ保持するように電源回路45を制御する。また、所定温度は、シリコーンオイルの揮発開始温度THAに基づいて設定される。
【0039】
以上、
図2及び
図3を参照して説明したように、本発明の実施形態では、誘導加熱で定着ベルト31を加熱するため、制御部5が定着ベルト31の温度THを正確に制御できる。
【0040】
次に、
図2〜
図4を参照して、シリコーンオイルQの揮発開始温度THAについて説明する。揮発開始温度THAは、シリコーンオイルQが揮発を開始する温度を示す。すなわち、揮発開始温度THAは、シリコーンオイルQからのシロキサンの発生が開始する温度を示す。
図4は、シリコーンオイルQの揮発特性の一例を示す図である。
図4の横軸は、シリコーンオイルQの温度TSを示し、縦軸は、シリコーンオイルQの重量変化量ΔWを示す。
【0041】
重量変化量ΔWは、0.5mgのシリコーンオイルQを熱分析装置によって昇温加熱したときの重量変化を示す。温度TSの範囲は、30℃〜200℃であり、大気雰囲気において10℃/分で昇温した。
【0042】
グラフG11は、第1シリコーンオイルQ1の重量変化を示し、グラフG12は、第2シリコーンオイルQ2の重量変化を示し、グラフG13は、第3シリコーンオイルQ3の重量変化を示す。
【0043】
グラフG11に示すように、揮発開始温度THA1は、72℃であった。揮発開始温度THA1は、第1シリコーンオイルQ1の揮発開始温度THAを示す。また、グラフG12に示すように、揮発開始温度THA2は、126℃であった。揮発開始温度THA2は、第2シリコーンオイルQ2の揮発開始温度THAを示す。グラフG13に示すように、揮発開始温度THA3は、148℃であった。揮発開始温度THA3は、第3シリコーンオイルQ3の揮発開始温度THAを示す。すなわち、第1シリコーンオイルQ1〜第3シリコーンオイルQ3の揮発開始温度THAは、72℃〜148℃であった。
【0044】
また、制御部5は、定着ベルト31の温度THを、揮発開始温度THA未満の所定温度で所定時間だけ保持するように電源回路45を制御する。
【0045】
以上、
図2〜
図4を参照して説明したように、本発明の実施形態では、制御部5は、揮発開始温度THA未満の所定温度で所定時間だけ保持するように電源回路45を制御する。したがって、シロキサンの発生を抑制し、水分の蒸発を促進できる。
【0046】
例えば、揮発開始温度THAが100℃より高い場合には、所定温度は、100℃以下に設定される。すなわち、温度THを100℃以下で保持することによって、シロキサンの発生を抑制し、水分の蒸発を促進できる。
【0047】
また、温度THを80℃以上100℃以下で保持することによって、シロキサンの発生を抑制し、水分の蒸発を更に促進できる。
【0048】
次に、
図2〜
図5を参照して、大気中の水蒸気量WとUFP(Ultra−Fine Particle)粒子の平均粒径Φとの関係について説明する。UFP粒子は、シリコーンオイルQの揮発によってシロキサンが発生し、シロキサンに起因してUFP粒子が発生する。
【0049】
図5(a)は、UFP粒子の粒径分布の一例を示す図である。
図5(a)の横軸は、UFP粒子の粒径φを示し、縦軸はUFP粒子の個数濃度Dを示す。個数濃度Dは、単位体積(1cm
3)当たりのUFP粒子の個数を示す。
【0050】
<実験条件>
以下に、実験条件について説明する。実験に用いたチャンバーの容積は、5m
3であった。チャンバーの換気回数は、1換気(清浄空気)であった。加熱機器は、セラミックヒーターを用いた。加熱温度は220℃であった。粒径分布計測器(TSI Incorporated社製「高速応答型パーティクルサイザー FMPS 3091」)を用いて、以下のようにして、UFPの個数を測定した。すなわち、ドイツ連邦共和国の連邦環境自然保護原子力安全省が定める環境ラベル制度「ブルーエンジェル」で規定する測定条件に従って、UFP粒子の個数を測定した。
【0051】
<実験結果>
図5(a)のグラフG31には、空気中の水蒸気量Wが6.18g/m
3の場合のUFP粒子の個数濃度Dを示した。グラフG32には、空気中の水蒸気量Wが10.3g/m
3の場合のUFP粒子の個数濃度Dを示した。グラフG33には、空気中の水蒸気量Wが18.2g/m
3の場合のUFP粒子の個数濃度Dを示した。
図5(a)に示すように、空気中の水蒸気量Wが多い程、UFP粒子の粒径分布は、粒径が大きい方向に変化した。
【0052】
図5(b)は、水蒸気量WとUFP粒子の平均粒径Φとの関係を示す図である。点P1は、
図5(a)のグラフG31に対応する平均粒径Φを示す。点P2は、
図5(a)のグラフG32に対応する平均粒径Φを示す。点P3は、
図5(a)のグラフG33に対応する平均粒径Φを示す。グラフG4は、点P1〜点P3の回帰直線を示す。回帰直線は、最小二乗法で求めた。
【0053】
グラフG4に示すように、空気中の水蒸気量Wが多い程、UFP粒子の平均粒径Φは増大した。
【0054】
図2〜
図5を参照して説明したように、空気中の水蒸気量Wが多い程、UFP粒子の平均粒径Φは増大する。したがって、定着ベルト31周辺の空気の湿度を増加することによって、UFP粒子を凝集させることができる。その結果、コストの増大を回避しつつ、シリコーンオイルQから発生するUFP粒子の個数を減少することができる。
【0055】
次に、
図2〜
図6を参照して、定着ベルト31の温度THの制御部5による制御について説明する。
図6(a)は、定着ベルト31の温度THの制御の一例を示す図である。
図6(b)は、定着ベルト31の温度THの制御の別の一例を示す図である。
図6(a)及び
図6(b)の横軸は時間T(分)を示し、縦軸は、温度TH(℃)を示す。
【0056】
図6(a)に示す定着ベルト31の温度THの制御は、
図4に示す第2シリコーンオイルQ2及び第3シリコーンオイルQ3のように、シリコーンオイルQの揮発開始温度THAが100℃より高い場合に制御部5によって実行される。これに対して、
図6(b)に示す定着ベルト31の温度THの制御は、
図4に示す第1シリコーンオイルQ1のように、シリコーンオイルQの揮発開始温度THAが100℃以下である場合に制御部5によって実行される。
【0057】
図6(a)のグラフG21に示すように、制御部5は、時点T11で定着ベルト31の昇温を開始し、時点T12で定着ベルト31の温度THが第1温度TH11に到達する。第1温度TH11は、例えば100℃である。そして、制御部5は、時点T12から時点T13までの期間PH1において、定着ベルト31を第1温度TH11に保持する。期間PH1は、例えば5秒である。そして、制御部5は、時点T13で、定着ベルト31の昇温を開始し、時点T14で定着ベルト31の温度THが第2温度TH12に到達する。第2温度TH12は、例えば、150℃である。そして、制御部5は、時点T14以降において、定着ベルト31を第2温度TH12に保持する。
【0058】
第1温度TH11は、「所定温度」の一例に相当する。期間PH1は、「所定時間」の一例に相当する。第2温度TH12は、いわゆる、「定着温度」に相当する。「定着温度」とは、定着部1が用紙Pに形成された画像を用紙Pに定着する際の定着ベルト31の温度THを示す。
【0059】
また、第1温度TH11は、シリコーンオイルQの揮発開始温度THAに基づいて設定される。具体的には、第1温度TH11は、シリコーンオイルQの揮発開始温度THA未満に設定される。
【0060】
また、
図6(b)のグラフG22に示すように、制御部5は、時点T21で定着ベルト31の昇温を開始し、時点T22で定着ベルト31の温度THが第1温度TH21に到達する。第1温度TH21は、例えば70℃である。そして、制御部5は、時点T22から時点T23までの期間PH2において、定着ベルト31を第1温度TH21に保持する。期間PH2は、例えば10秒である。そして、制御部5は、時点T23で、定着ベルト31の昇温を開始し、時点T24で第2温度TH22に到達する。第2温度TH22は、例えば、150℃である。そして、制御部5は、時点T24以降において、定着ベルト31を第2温度TH22に保持する。
【0061】
第1温度TH21は、「所定温度」の一例に相当する。期間PH2は、「所定時間」の一例に相当する。第2温度TH22は、いわゆる、「定着温度」に相当する。以下の説明において、第1温度TH11と第1温度TH21とを第1温度TH1と総称する場合がある。また、第2温度TH12と第2温度TH22とを第2温度TH2と総称する場合がある。更に、期間PH1と期間PH2とを期間PHと総称する場合がある。
【0062】
また、第1温度TH21は、シリコーンオイルQの揮発開始温度THAに基づいて設定される。具体的には、第1温度TH21は、シリコーンオイルQの揮発開始温度THA未満に設定される。
【0063】
以上、
図2〜
図6を参照して説明したように、第1温度TH1で期間PHだけ保持するため、第1温度TH1及び期間PHを適正に設定することによって、シリコーンオイルQから発生したシロキサン由来のUFP粒子を凝集させ、UFP粒子の個数を低減できる。具体的には、第1温度TH1及び期間PHを適正に設定することによって、シリコーンオイルQから水分を蒸発させる。そして、発生した水分によって、UFP粒子を凝集できる。
【0064】
例えば、第1温度TH1がシリコーンオイルQの揮発開始温度THA以上であると、水分が蒸発する前にシロキサンが発生してしまい、UFP粒子の個数を低減できない。したがって、第1温度TH1がシリコーンオイルQの揮発開始温度THAに基づいて設定されるため、第1温度TH1を適正な温度に設定できる。具体的には、第1温度TH1がシリコーンオイルQの揮発開始温度THA未満に設定されるため、第1温度TH1を適正な温度に設定できる。
【0065】
更に、シリコーンオイルQの揮発開始温度THAが100℃より高い場合には、第1温度TH11を100℃としてもシロキサンは発生しない。また、水の沸点は100℃であるため、第1温度TH11を100℃に近付ける程、水分の蒸発が促進される。よって、第1温度TH11を100℃とすることによって、シロキサンの発生を抑制し、水分の蒸発を促進できる。したがって、温度THがシリコーンオイルQの揮発開始温度THAに上昇する前に、湿度を増加できるため、UFP粒子を凝集できる。
【0066】
また、シリコーンオイルQの揮発開始温度THAが100℃以下の場合には、水の沸点(100℃)より揮発開始温度THAが低い。一方、シリコーンオイルQに含まれる水分は、温度THが高い程蒸発し易い。よって、第1温度TH21を揮発開始温度THAと略一致させることによって、シロキサンの発生を抑制し、水分の蒸発を促進できる。したがって、シリコーンオイルQの揮発開始温度THAに上昇する前に、湿度を増加できるため、UFP粒子を凝集できる。
【0067】
更に、第1温度TH1が高い程、水分の蒸発を促進できる。よって、例えば、第1温度TH1が高い程、期間PHを短くできる。したがって、適正な期間PHを設定できる。
【0068】
次に、
図2〜
図7を参照して、制御部5の処理について説明する。
図7は、制御部5の処理の一例を示すフローチャートである。
まず、
図7に示すように、ステップS101において、制御部5は、定着ベルト31の昇温を開始するか否かを判定する。
定着ベルト31の昇温を開始しないと制御部5が判定した場合(ステップS101でNO)には、処理が待機状態になる。定着ベルト31の昇温を開始すると制御部5が判定した場合(ステップS101でYES)には、処理がステップS103に進む。
そして、ステップS103において、制御部5が排気ファン108の駆動を停止する。
次に、ステップS105において、制御部5が定着ベルト31を加熱する。具体的には、制御部5が、定着ベルト31の温度THが上昇するように電源回路45を制御する。
【0069】
次に、ステップS107において、制御部5は、温度THが第1温度TH1に到達したか否かを判定する。
温度THが第1温度TH1に到達していないと制御部5が判定した場合(ステップS107でNO)には、処理がステップS105に戻る。温度THが第1温度TH1に到達したと制御部5が判定した場合(ステップS107でYES)には、処理がステップS109に進む。
そして、ステップS109において、制御部5は、温度THを第1温度TH1に保持する。具体的には、制御部5が、定着ベルト31の温度THが第1温度TH1に保持されるように電源回路45を制御する。
次に、ステップS111において、制御部5は、温度THが第1温度TH1に到達した時点から期間PHが経過したか否かを判定する。
期間PHが経過していないと制御部5が判定した場合(ステップS111でNO)には、処理がステップS109に戻る。期間PHが経過したと制御部5が判定した場合(ステップS111でYES)には、処理がステップS113に進む。
そして、ステップS113において、制御部5は、排気ファン108の駆動を開始し、処理がステップS115に進む。
【0070】
次に、ステップS115において、制御部5が定着ベルト31を加熱する。
次に、ステップS117において、温度THが第2温度TH2に到達したか否かを判定する。
温度THが第2温度TH2に到達していないと制御部5が判定した場合(ステップS117でNO)には、処理がステップS115に戻る。温度THが第2温度TH2に到達したと制御部5が判定した場合(ステップS117でYES)には、処理がステップS119に進む。
そして、ステップS119において、制御部5は、温度THを第2温度TH2に保持し、処理が終了する。
【0071】
以上、
図2〜
図7を参照して説明したように、本発明の実施形態では、第1温度TH1で期間PHだけ保持している間は、排気ファン108を停止する。よって、シリコーンオイルQから発生した水蒸気が外部に漏れることを抑制できる。したがって、湿度を効率的に増加できるため、UFP粒子を効率的に凝集できる。
【0072】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(3))。図面は、理解し易くするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0073】
(1)
図1及び
図2を参照して説明したように、本発明の実施形態では、定着部1が誘導加熱部4を備えるが、本発明はこれに限定されない。定着部1が、定着ベルト31を加熱する加熱部を備えればよい。例えば、定着ベルト31をハロゲンランプで加熱してもよい。
【0074】
(2)
図2〜
図6を参照して説明したように、本発明の実施形態では、定着部1が温度センサーS1を備えるが、本発明はこれに限定されない。定着部1が湿度センサーS2を更に備えてもよい。定着部1が湿度センサーS2を備える場合には、制御部5は、湿度センサーS2によって検出された湿度HUに基づいて、定着ベルト31の温度THを制御できる。
【0075】
具体的には、湿度HUが高い程、期間PHを短く設定できる。更に、制御部5は、所定の湿度HUに到達した時点で、第1温度TH1から第2温度TH2に加熱できる。すなわち、期間PHを設定する必要がない。
【0076】
(3)
図2〜
図6を参照して説明したように、本発明の実施形態では、制御部5が、定着ベルト31の温度THを第1温度TH1に期間PHだけ保持するが、本発明はこれに限定されない。制御部5が、定着ベルト31の温度THを所定の温度範囲に期間PHだけ保持すればよい。すなわち、「所定温度」は一定温度に限定されない。「所定温度」は所定の温度範囲であってもよい。所定の温度範囲は、例えば、80℃〜100℃である。