(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遊星歯車装置は、第1サンギヤ、第1キャリヤ、及び第1リングギヤを有する第1遊星歯車機構と、第2サンギヤ、第2キャリヤ、及び第2リングギヤを有する第2遊星歯車機構と、を備え、
前記第1回転要素は、前記第1リングギヤであり、
前記第2回転要素は、一体的に回転する前記第1キャリヤと前記第2サンギヤであり、
前記第3回転要素は、一体的に回転する前記第1サンギヤと前記第2キャリヤであり、
前記第4回転要素は、前記第2リングギヤである請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
前記第1支持部材と前記第1入力部材との間に配置される軸受と、前記第1支持部材と前記第1出力部材との間に配置される軸受とが、前記第1軸を基準とする径方向視で互いに重複するように配置され、
前記第2支持部材と前記第2入力部材との間に配置される軸受と、前記第2支持部材と前記第2出力部材との間に配置される軸受とが、前記径方向視で互いに重複するように配置されている請求項7に記載の車両用駆動装置。
前記遊星歯車装置は、第1ピニオン軸受を介して第1ピニオンギヤを回転自在に支持する第1キャリヤを有する第1遊星歯車機構と、第2ピニオン軸受を介して第2ピニオンギヤを回転自在に支持する第2キャリヤを有する第2遊星歯車機構と、を備え、
前記第1出力部材は、前記第1キャリヤに連結されると共に第1出力軸受を介して回転自在に支持され、
前記第2出力部材は、前記第2キャリヤに連結されると共に第2出力軸受を介して回転自在に支持され、
前記第1キャリヤに、前記第1ピニオン軸受に油を供給するための油路と、前記第1出力軸受に油を供給するための油路とが形成され、
前記第2キャリヤに、前記第2ピニオン軸受に油を供給するための油路と、前記第2出力軸受に油を供給するための油路とが形成されている請求項1から9のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、第6軸受B6が「第1支持部材と第1出力部材との間に配置される軸受」及び「第1出力軸受」に相当し、第7軸受B7が「第2支持部材と第2出力部材との間に配置される軸受」及び「第2出力軸受」に相当し、第9軸受B9が「第1支持部材と第1入力部材との間に配置される軸受」に相当し、第12軸受B12が「第2支持部材と第2入力部材との間に配置される軸受」に相当し、第13軸受B13が「第1ピニオン軸受」に相当し、第14軸受B14が「第2ピニオン軸受」に相当する。また、本実施形態では、第7支持部41bが「第1出力部材の支持部」に相当し、第8支持部42bが「第2出力部材の支持部」に相当し、第9支持部41cが「第1入力部材の支持部」に相当し、第10支持部42cが「第2入力部材の支持部」に相当する。そして、本実施形態では、第1油路91が「第1ピニオン軸受に油を供給するための油路」に相当し、第2油路92が「第1出力軸受に油を供給するための油路」に相当し、第3油路93が「第2ピニオン軸受に油を供給するための油路」に相当し、第4油路94が「第2出力軸受に油を供給するための油路」に相当する。
【0014】
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を意味する。この概念には、2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態や、2つの回転要素が1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態が含まれる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれてもよい。但し、差動歯車装置又は差動歯車機構の各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該差動歯車装置又は当該差動歯車機構が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
【0015】
また、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。例えば、「径方向視で重複する」とは、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が、周方向の少なくとも一部の領域に存在することを指す。なお、以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての方向や位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。
【0016】
図1及び
図3に示すように、車両用駆動装置1は、第1回転電機11と、第2回転電機12と、第1車輪W1に駆動連結される第1連結部材51と、第2車輪W2に駆動連結される第2連結部材52と、伝達装置2と、を備えている。また、
図1に示すように、車両用駆動装置1は、第1回転電機11、第2回転電機12、第1連結部材51、第2連結部材52、及び伝達装置2を収容するケース3を備えている。ここで、「収容する」とは、収容対象物の少なくとも一部を収容することを意味する。例えば、
図1に示すように、本実施形態では、第1連結部材51の全体がケース3に収容される(すなわち、ケース3の内部に配置される)が、第1連結部材51の一部のみがケース3に収容される構成とすることもできる。
【0017】
伝達装置2は、第1回転電機11のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52のうちの少なくとも第1連結部材51に伝達すると共に、第2回転電機12のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52のうちの少なくとも第2連結部材52に伝達する装置である。第1連結部材51に伝達されたトルクにより第1車輪W1が回転駆動されると共に、第2連結部材52に伝達されたトルクにより第2車輪W2が回転駆動されることで、車両(車両用駆動装置1が搭載された車両、以下同様。)が走行する。
図3に示すように、車両には、第1車輪W1と一体的に回転する第1軸部材53と、第2車輪W2と一体的に回転する第2軸部材54とが設けられている。第1軸部材53は、第1車輪W1に連結されるドライブシャフトの少なくとも一部(第1車輪W1とは反対側の端部)を構成し、第2軸部材54は、第2車輪W2に連結されるドライブシャフトの少なくとも一部(第2車輪W2とは反対側の端部)を構成する。本実施形態では、第1連結部材51は、第1軸部材53と同軸に配置され、第2連結部材52は、第2軸部材54と同軸に配置されている。なお、第1車輪W1が第1軸部材53と同軸に配置される場合には、第1連結部材51は第1車輪W1と同軸に配置され、第2車輪W2が第2軸部材54と同軸に配置される場合には、第2連結部材52は第2車輪W2と同軸に配置される。そして、本実施形態では、第1連結部材51は、第1車輪W1と一体的に回転するように連結され、第2連結部材52は、第2車輪W2と一体的に回転するように連結されている。具体的には、
図3に示すように、本実施形態では、第1連結部材51は、第1軸部材53を介して第1車輪W1と一体的に回転するように連結され、第2連結部材52は、第2軸部材54を介して第2車輪W2と一体的に回転するように連結されている。第1車輪W1及び第2車輪W2は、互いに同軸(本実施形態では後述する第2軸A2上)に配置される左右一対の車輪である。
【0018】
このように、車両用駆動装置1は、左右一対の車輪を駆動するように車両に設けられる。例えば、車両が左右一対の前輪及び左右一対の後輪を備える場合には、車両用駆動装置1を、左右一対の前輪を駆動するように設け、或いは左右一対の後輪を駆動するように設けることができる。前者の場合、左右一対の前輪が第1車輪W1及び第2車輪W2となり、後者の場合、左右一対の後輪が第1車輪W1及び第2車輪W2となる。このように車両が左右一対の前輪及び左右一対の後輪を備える場合、左右一対の前輪及び左右一対の後輪のうちの車両用駆動装置1による駆動対象ではない左右一対の車輪が、別の駆動装置(車両用駆動装置1と同じ構成の駆動装置であっても良い。)により駆動される構成とすることもできる。
【0019】
図1及び
図3に示すように、伝達装置2は、第1軸A1上に配置され、第1連結部材51及び第2連結部材52は、第1軸A1に平行な第2軸A2上に配置されている。また、第1回転電機11及び第2回転電機12は、第1軸A1及び第2軸A2に平行な第3軸A3上に配置されている。すなわち、第3軸A3は、第1軸A1に平行な軸であり、第2軸A2は、第1軸A1及び第3軸A3に平行な軸である。これらの第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3は、互いに異なる軸(仮想軸)である。以下では、これらの各軸(第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3)に平行な方向(各軸の間で共通した軸方向)を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側(軸方向Lにおける軸方向第1側L1とは反対側)を「軸方向第2側L2」とする。本実施形態では、軸方向Lにおける第2回転電機12に対して第1回転電機11が配置される側が、軸方向第1側L1である。また、以下では、特に明記している場合を除き、「径方向R」は、第1軸A1を基準とする径方向を表す(
図2参照)。
【0020】
第1回転電機11は、ケース3等の非回転部材に固定される第1ステータ11aと、第1ステータ11aに対して回転自在に支持される第1ロータ11bと、を備えている。第1ロータ11bは、第1ロータ軸11cと一体的に回転するように連結されている。第2回転電機12は、ケース3等の非回転部材に固定される第2ステータ12aと、第2ステータ12aに対して回転自在に支持される第2ロータ12bと、を備えている。第2ロータ12bは、第2ロータ軸12cと一体的に回転するように連結されている。第1回転電機11及び第2回転電機12のそれぞれは、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置に電気的に接続されており、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、車両の慣性力等により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。
【0021】
本実施形態では、第1回転電機11はインナロータ型の回転電機であり、第1ロータ11bは、第1ステータ11aよりも径方向の内側であって径方向視で第1ステータ11aと重複する位置に配置されている。また、本実施形態では、第2回転電機12はインナロータ型の回転電機であり、第2ロータ12bは、第2ステータ12aよりも径方向の内側であって径方向視で第2ステータ12aと重複する位置に配置されている。なお、ここでの径方向は、第3軸A3を基準とする径方向である。
【0022】
図2及び
図3に示すように、車両用駆動装置1は、第1回転電機11に駆動連結される第1駆動ギヤ21aと、第2回転電機12に駆動連結される第2駆動ギヤ22aとを備えている。第1駆動ギヤ21aは、第1回転電機11のトルクを出力するためのギヤであり、伝達装置2が備える入力ギヤ(第1入力ギヤ71a)に噛み合っている。第1回転電機11のトルクは、第1駆動ギヤ21aと第1入力ギヤ71aとの噛み合い部から伝達装置2に入力される。第2駆動ギヤ22aは、第2回転電機12のトルクを出力するためのギヤであり、伝達装置2が備える入力ギヤ(第2入力ギヤ72a)に噛み合っている。第2回転電機12のトルクは、第2駆動ギヤ22aと第2入力ギヤ72aとの噛み合い部から伝達装置2に入力される。なお、伝達装置2は、第1入力部材71及び第2入力部材72を備えており、第1入力部材71が、第1駆動ギヤ21aに噛み合う第1入力ギヤ71aを備え、第2入力部材72が、第2駆動ギヤ22aに噛み合う第2入力ギヤ72aを備えている。
【0023】
本実施形態では、第1駆動ギヤ21aは、第1回転電機11(第1ロータ11b)と一体的に回転するように連結されている。具体的には、車両用駆動装置1は、第1ロータ軸11cと一体的に回転するように連結される第1駆動部材21(ここでは、軸部材)を、第1回転電機11に対して軸方向第2側L2に備えており、第1駆動部材21の外周面に第1駆動ギヤ21aが形成されている。また、本実施形態では、第2駆動ギヤ22aは、第2回転電機12(第2ロータ12b)と一体的に回転するように連結されている。具体的には、車両用駆動装置1は、第2ロータ軸12cと一体的に回転するように連結される第2駆動部材22(ここでは、軸部材)を、第2回転電機12に対して軸方向第1側L1に備えており、第2駆動部材22の外周面に第2駆動ギヤ22aが形成されている。
【0024】
図1及び
図3に示すように、第1連結部材51及び第2連結部材52のそれぞれは、伝達装置2が備える出力ギヤに噛み合う従動ギヤを備えている。具体的には、第1連結部材51は、伝達装置2が備える第1出力ギヤ81aに噛み合う第1従動ギヤ51aを備え、第2連結部材52は、伝達装置2が備える第2出力ギヤ82aに噛み合う第2従動ギヤ52aを備えている。第1車輪W1を回転駆動するためのトルクは、第1出力ギヤ81aと第1従動ギヤ51aとの噛み合い部から第1連結部材51に出力され、第2車輪W2を回転駆動するためのトルクは、第2出力ギヤ82aと第2従動ギヤ52aとの噛み合い部から第2連結部材52に出力される。なお、伝達装置2は、第1出力部材81及び第2出力部材82を備えており、第1出力部材81が、第1従動ギヤ51aに噛み合う第1出力ギヤ81aを備え、第2出力部材82が、第2従動ギヤ52aに噛み合う第2出力ギヤ82aを備えている。
【0025】
本実施形態では、伝達装置2は、差動歯車装置6を備えている。ここで、差動歯車装置は、差動回転可能な複数の回転要素を有する歯車装置である。すなわち、差動歯車装置は、差動回転可能な複数の回転要素を有する差動歯車機構を用いて構成される。差動歯車装置は、例えば、遊星歯車式の差動歯車装置(すなわち、遊星歯車装置)とされ、この場合、差動歯車装置は、遊星歯車式の差動歯車機構(すなわち、遊星歯車機構)を用いて構成される。また、差動歯車装置は、例えば、傘歯車式の差動歯車装置とされ、この場合、差動歯車装置は、傘歯車式の差動歯車機構を用いて構成される。なお、差動歯車装置6が備える複数の回転要素の中に、ケース3等の非回転部材に固定される非回転要素が含まれる場合があるが、本明細書では、非回転要素も含めて「回転要素」という。
【0026】
差動歯車装置6は、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3、及び第4回転要素E4を有している(
図4参照)。第1回転要素E1に上述した第1入力部材71が連結されることで、第1回転電機11が第1回転要素E1に駆動連結され、第2回転要素E2に上述した第1出力部材81が連結されることで、第1連結部材51が第2回転要素E2に駆動連結され、第3回転要素E3に上述した第2出力部材82が連結されることで、第2連結部材52が第3回転要素E3に駆動連結され、第4回転要素E4に上述した第2入力部材72が連結されることで、第2回転電機12が第4回転要素E4に駆動連結されている。本実施形態では、差動歯車装置6は遊星歯車装置60である。すなわち、伝達装置2は、第1回転電機11に駆動連結される第1回転要素E1、第1連結部材51に駆動連結される第2回転要素E2、第2連結部材52に駆動連結される第3回転要素E3、及び、第2回転電機12に駆動連結される第4回転要素E4を少なくとも有する遊星歯車装置60を備えている。本実施形態では、遊星歯車装置60は、回転要素として、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3、及び第4回転要素E4のみを有している。
【0027】
図2及び
図3に示すように、遊星歯車装置60は、第1サンギヤS1、第1キャリヤC1、及び第1リングギヤR1を有する第1遊星歯車機構61と、第2サンギヤS2、第2キャリヤC2、及び第2リングギヤR2を有する第2遊星歯車機構62と、を備えている。第1キャリヤC1は、第13軸受B13を介して第1ピニオンギヤP1を回転自在に支持し、第2キャリヤC2は、第14軸受B14を介して第2ピニオンギヤP2を回転自在に支持している。そして、遊星歯車装置60は、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とを連結して構成されている。具体的には、本実施形態では、第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62の双方が、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。そして、第1キャリヤC1と第2サンギヤS2とが一体的に回転するように連結されていると共に、第1サンギヤS1と第2キャリヤC2とが一体的に回転するように連結されている。このように、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とは、それぞれが有する3つの回転要素のうちの2つずつが互いに連結されることで、全体として4つの回転要素を備えて一体的に差動動作を行うように構成されている。なお、第1遊星歯車機構61は、第2遊星歯車機構62に対して軸方向第1側L1に配置されている。また、本実施形態では、第1遊星歯車機構61は、第1回転電機11に対して軸方向第2側L2に配置され、第2遊星歯車機構62は、第2回転電機12に対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0028】
図3に示すように、本実施形態では、第1回転電機11は第1リングギヤR1に駆動連結され、第2回転電機12は第2リングギヤR2に駆動連結され、第1連結部材51は第1キャリヤC1に駆動連結され、第2連結部材52は第2キャリヤC2に駆動連結されている。よって、本実施形態では、第1回転電機11が駆動連結される第1回転要素E1は、第1リングギヤR1であり、第1連結部材51が駆動連結される第2回転要素E2は、一体的に回転する第1キャリヤC1と第2サンギヤS2であり、第2連結部材52が駆動連結される第3回転要素E3は、一体的に回転する第1サンギヤS1と第2キャリヤC2であり、第2回転電機12が駆動連結される第4回転要素E4は、第2リングギヤR2である。そして、本実施形態では、回転速度の順が、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3、及び第4回転要素E4の順となっている。
【0029】
なお、「回転速度の順」とは、各回転要素の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素の回転速度は、差動歯車装置6(遊星歯車装置60)の回転状態によって変化するが、各回転要素の回転速度の高低の並び順は、差動歯車装置6の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、「各回転要素の回転速度の順」は、各回転要素の速度線図(共線図、
図4参照)における配置順に等しい。ここで、「各回転要素の速度線図における配置順」とは、速度線図(共線図)における各回転要素に対応する軸が、当該軸に直交する方向に沿って配置される順番のことである。速度線図(共線図)における各回転要素に対応する軸の配置方向は、速度線図の描き方によって異なるが、その配置順は差動歯車装置6の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、
図4において、縦軸の「0」は回転速度がゼロであることを示し、上側が正、下側が負となっている。
【0030】
図4において、「Ti1」は、第1回転要素E1に第1回転電機11の側から入力されるトルク(第1入力トルクTi1)を表し、「Ti2」は、第4回転要素E4に第2回転電機12の側から入力されるトルク(第2入力トルクTi2)を表している。第1入力トルクTi1の大きさは、第1回転電機11の出力トルクの大きさと、第1回転電機11から第1回転要素E1までの変速比(第1変速比)とに応じて定まり、第2入力トルクTi2の大きさは、第2回転電機12の出力トルクの大きさと、第2回転電機12から第4回転要素E4までの変速比(第2変速比)とに応じて定まる。本実施形態では、第1駆動ギヤ21aと第2駆動ギヤ22aとが互いに同径に形成されていると共に、第1入力ギヤ71aと第2入力ギヤ72aとが互いに同径に形成されており、第1変速比と第2変速比とは互いに等しい。ここでは、第1変速比及び第2変速比は1より大きく、第1回転電機11の回転は減速されて第1回転要素E1に伝達され、第2回転電機12の回転は減速されて第4回転要素E4に伝達される。
【0031】
また、
図4において、「To1」は、第2回転要素E2から第1車輪W1の側に出力されるトルク(第1出力トルクTo1)を表し、「To2」は、第3回転要素E3から第2車輪W2の側に出力されるトルク(第2出力トルクTo2)を表している。第1車輪W1の駆動力の大きさは、第1出力トルクTo1の大きさと、第2回転要素E2から第1車輪W1までの変速比(第3変速比)とに応じて定まり、第2車輪W2の駆動力の大きさは、第2出力トルクTo2の大きさと、第3回転要素E3から第2車輪W2までの変速比(第4変速比)とに応じて定まる。本実施形態では、第1出力ギヤ81aと第2出力ギヤ82aとが互いに同径に形成されていると共に、第1従動ギヤ51aと第2従動ギヤ52aとが互いに同径に形成されており、第3変速比と第4変速比とは互いに等しい。ここでは、第3変速比及び第4変速比は1より大きく、第2回転要素E2の回転は減速されて第1車輪W1に伝達され、第3回転要素E3の回転は減速されて第2車輪W2に伝達される。
【0032】
上記のように第3変速比と第4変速比とが互いに等しいため、車両の直進時には、第2回転要素E2の回転速度と第3回転要素E3の回転速度とが等しくなり、遊星歯車装置60の全ての回転要素が同速で回転する状態となる。一方、車両の旋回時には、第1車輪W1及び第2車輪W2のうちの外側の車輪(旋回中心から遠い方の車輪)が駆動連結された回転要素の回転速度が、第1車輪W1及び第2車輪W2のうちの内側の車輪(旋回中心に近い方の車輪)が駆動連結された回転要素の回転速度よりも高い状態となる。
図4は、第1車輪W1が外側の車輪となる方向に車両が旋回している状態での遊星歯車装置60の各回転要素の状態を表している。
【0033】
トルクの釣り合いから、第1出力トルクTo1及び第2出力トルクTo2のそれぞれは、以下の式(1),(2)に示すように、第1入力トルクTi1、第2入力トルクTi2、第1遊星歯車機構61のギヤ比(第1ギヤ比λ1)、及び第2遊星歯車機構62のギヤ比(第2ギヤ比λ2)に応じて定まる。ここで、第1ギヤ比λ1は、第1リングギヤR1の歯数に対する第1サンギヤS1の歯数の比であり、第2ギヤ比λ2は、第2リングギヤR2の歯数に対する第2サンギヤS2の歯数の比である。
To1=(1+λ1)・Ti1−λ2・Ti2 ・・・(1)
To2=(1+λ2)・Ti2−λ1・Ti1 ・・・(2)
【0034】
このように、第1出力トルクTo1及び第2出力トルクTo2のそれぞれは、第1入力トルクTi1及び第2入力トルクTi2の双方に応じて定まる。すなわち、本実施形態では、伝達装置2は、第1回転電機11のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52の双方に伝達すると共に、第2回転電機12のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52の双方に伝達するように構成されている。言い換えれば、伝達装置2は、第1回転電機11及び第2回転電機12のトルクを、第1連結部材51及び第2連結部材52に分配して伝達するように構成されている。車両用駆動装置1をこのように構成することで、第1回転電機11と第1連結部材51との間の動力伝達経路と第2回転電機12と第2連結部材52との間の動力伝達経路とが分離されている場合に比べて、第1車輪W1と第2車輪W2との間で駆動力に差を設ける際に、第1車輪W1と第2車輪W2との合計駆動力を大きく確保して、車両の旋回時の走行性能の向上を図ることが可能となっている。
【0035】
補足説明すると、一例として、第1入力トルクTi1の大きさが200[N・m]である状況において、第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との差を160[N・m]とする場合を想定する。この場合、本実施形態に係る車両用駆動装置1とは異なりTo1=Ti1,To2=Ti2となる比較例の構成では、第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との差を160[N・m]とするための第2入力トルクTi2の大きさは40[N・m]となる。よって、この比較例の場合には、第1入力トルクTi1と第2入力トルクTi2との和(第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との和に等しい)は、240[N・m]となる。これに対して、本実施形態に係る車両用駆動装置1では、第1入力トルクTi1の大きさが200[N・m]である状況において、第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との差を160[N・m]とするための第2入力トルクTi2の大きさは、第1ギヤ比λ1及び第2ギヤ比λ2の双方が“0.4”である場合には、上記の式(1),(2)より111[N・m]となる。よって、この場合には、第1入力トルクTi1と第2入力トルクTi2との和(第1出力トルクTo1と第2出力トルクTo2との和)は311[N・m]となり、上記の比較例の場合に比べて、71[N・m](=311[N・m]−240[N・m])のトルク差に相当する分、第1車輪W1と第2車輪W2との合計駆動力を大きく確保することができる。
【0036】
次に、本実施形態の車両用駆動装置1におけるケース3の構成について説明する。ケース3は、シール部材4を介して接合される複数のケース部30を備えている。ケース部30のそれぞれは、ケース3の外面に露出する部分を有する。すなわち、ケース部30同士の接合部は、ケース3の外面に露出するように形成される。なお、ケース部30同士は、例えばボルトを用いて接合される。
【0037】
図1に示すように、複数のケース部30には、第1ケース部31と第2ケース部32とが含まれる。第1ケース部31は、第2ケース部32に対して軸方向第1側L1から接合されている。第1ケース部31は、軸方向Lに延びる筒状に形成された第1周壁部31cを備えており、軸方向L視で第1周壁部31cにより囲まれた空間(第1収容空間H1)に、第1回転電機11、第1駆動部材21、第1連結部材51、及び伝達装置2の一部(具体的には、第1入力部材71、第1出力部材81、及び第1遊星歯車機構61)が配置されている。また、第2ケース部32は、軸方向Lに延びる筒状に形成された第2周壁部32cを備えており、軸方向L視で第2周壁部32cにより囲まれた空間(第2収容空間H2)に、第2回転電機12、第2駆動部材22、第2連結部材52、及び伝達装置2の一部(具体的には、第2入力部材72、第2出力部材82、及び第2遊星歯車機構62)が配置されている。本実施形態では、第1収容空間H1と第2収容空間H2とは、後述する第5ケース部35によって軸方向Lに区画されている。
【0038】
複数のケース部30には、更に、第3ケース部33と第4ケース部34とが含まれる。第1収容空間H1における第1回転電機11が配置される部分は、第1ケース部31によって軸方向第1側L1を区画されずに開口部が形成されており、当該開口部を閉じるように第3ケース部33が第1ケース部31に対して軸方向第1側L1から接合されている。また、第2収容空間H2における第2回転電機12が配置される部分は、第2ケース部32によって軸方向第2側L2を区画されずに開口部が形成されており、当該開口部を閉じるように第4ケース部34が第2ケース部32に対して軸方向第2側L2から接合されている。
【0039】
複数のケース部30には、更に、第5ケース部35が含まれる。第5ケース部35は、ケース3の内部空間(第1回転電機11、第2回転電機12、第1連結部材51、第2連結部材52、及び伝達装置2を収容するための収容空間H)を軸方向Lに区画する中間壁として機能する。具体的には、第5ケース部35は、径方向Rに延びる形状(例えば、板状)に形成されており、第1ケース部31と第2ケース部32との接合部36が形成される軸方向Lの位置に配置されている。そして、第5ケース部35は、第1ケース部31(第1周壁部31c)と第2ケース部32(第2周壁部32c)とにより軸方向Lの両側から挟まれた状態で、第1ケース部31及び第2ケース部32のそれぞれに接合されている。すなわち、本実施形態では、第1ケース部31と第2ケース部32とは、接合部36において、第5ケース部35を介して接合されている。よって、接合部36には、第1ケース部31と第5ケース部35との接合部と、第2ケース部32と第5ケース部35との接合部とが形成されている。
【0040】
第1ケース部31と第2ケース部32との接合部36における異なるケース部同士の接合面には、ケース3内の油のケース3外への漏れを防止するためのシール部材4が設けられている。すなわち、第1ケース部31と第2ケース部32とは、シール部材4を介して接合されている。ここで、「シール部材4を介して」とは、第1ケース部31と第2ケース部32との間に少なくともシール部材4が介在していることを意味し、シール部材4に加えてシール部材4以外の部材が介在している場合も含む概念である。上記のように、本実施形態では、第1ケース部31と第2ケース部32とは、接合部36において、第5ケース部35を介して接合されている。そして、接合部36においては、第1ケース部31と第5ケース部35との接合面(第1接合面36a)にシール部材4が設けられていると共に、第2ケース部32と第5ケース部35との接合面(第2接合面36b)にシール部材4が設けられている。すなわち、第1ケース部31と第2ケース部32とは、シール部材4を介して接合されるが、本実施形態では、第1ケース部31と第2ケース部32とは、第1接合面36aに設けられたシール部材4と、第2接合面36bに設けられたシール部材4と、第5ケース部35とを介して、接合されている。シール部材4として、例えば、液状ガスケットを用いることができる。なお、
図1では、シール部材4を簡略化して太線で示している。
【0041】
次に、本実施形態の車両用駆動装置1における第1連結部材51及び第2連結部材52の支持構造について説明する。なお、以下の第1連結部材51及び第2連結部材52の支持構造の説明における径方向は、特に明記している場合を除き、第2軸A2を基準とする径方向である。
【0042】
図1に示すように、車両用駆動装置1は、ケース3に固定される支持部材40を備えている。支持部材40は、ケース3の内部に配置される。そのため、支持部材40とケース3との固定部(本実施形態では、後述する第1固定部37a及び第2固定部37b)は、異なるケース部30同士の接合部とは異なり、ケース3の外面には露出しない。本実施形態では、車両用駆動装置1は、ケース3の内部にそれぞれ配置された支持部材40である第1支持部材41及び第2支持部材42を備えている。すなわち、車両用駆動装置1は、ケース3の内部に配置される第1支持部材41と、ケース3の内部に配置される第2支持部材42と、を備えている。第1支持部材41は、第5ケース部35に対して軸方向第1側L1に配置されて(すなわち、第1収容空間H1に配置されて)第1ケース部31に固定されており、第1収容空間H1に配置される部材を支持するために用いられる。すなわち、第1支持部材41は、複数のケース部30の1つである第1ケース部31の内部に固定されている。また、第2支持部材42は、第5ケース部35に対して軸方向第2側L2に配置されて(すなわち、第2収容空間H2に配置されて)第2ケース部32に固定されており、第2収容空間H2に配置される部材を支持するために用いられる。すなわち、第2支持部材42は、複数のケース部30の1つであって第1ケース部31とは異なる第2ケース部32の内部に固定されている。第1支持部材41や第2支持部材42は、例えばボルトを用いてケース3に固定される。
【0043】
第1連結部材51は、第1ケース部31に形成された第1支持部31aと、第1支持部材41(具体的には、第1支持部材41に形成された第5支持部41a)とにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第5支持部41aは、第1支持部31aよりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0044】
第1連結部材51は、第1支持部31aにより径方向外側から支持されている。具体的には、第1支持部31aの内周面と第1連結部材51の外周面との間に第1軸受B1(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第1連結部材51は、第1軸受B1を介して第1支持部31aにより径方向外側から支持されている。また、第1連結部材51は、第5支持部41aにより径方向内側から支持されている。具体的には、第5支持部41aの外周面と第1連結部材51の内周面との間に第2軸受B2(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第1連結部材51は、第2軸受B2を介して第5支持部41aにより径方向内側から支持されている。第1従動ギヤ51aは、第1連結部材51における、第2軸受B2よりも径方向外側であって径方向視で第2軸受B2と重複するように配置される部分の外周面に形成されている。すなわち、第2軸受B2は、径方向視で第1従動ギヤ51aと重複するように配置されている。
【0045】
第2連結部材52は、第2ケース部32に形成された第2支持部32aと、第2支持部材42(具体的には、第2支持部材42に形成された第6支持部42a)とにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。本実施形態では、第6支持部42aは、第2支持部32aよりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0046】
第2連結部材52は、第2支持部32aにより径方向外側から支持されている。具体的には、第2支持部32aの内周面と第2連結部材52の外周面との間に第4軸受B4(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第2連結部材52は、第4軸受B4を介して第2支持部32aにより径方向外側から支持されている。また、第2連結部材52は、第6支持部42aにより径方向内側から支持されている。具体的には、第6支持部42aの外周面と第2連結部材52の内周面との間に第3軸受B3(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第2連結部材52は、第3軸受B3を介して第6支持部42aにより径方向内側から支持されている。第2従動ギヤ52aは、第2連結部材52における、第3軸受B3よりも径方向外側であって径方向視で第3軸受B3と重複するように配置される部分の外周面に形成されている。すなわち、第3軸受B3は、径方向視で第2従動ギヤ52aと重複するように配置されている。
【0047】
以上のように、第1連結部材51及び第2連結部材52は、ケース3と支持部材40とにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に径方向に支持されている。よって、第1連結部材51及び第2連結部材52の双方を、軸方向Lの2ヶ所のそれぞれで非回転部材により支持することができ、第1連結部材51及び第2連結部材52のそれぞれを適切に支持することが可能となっている。その上で、上記のような第1連結部材51及び第2連結部材52の支持構造を採用することで、以下に述べるようにケース部30間のシール性能を適切に維持することが可能となっている。
【0048】
上述したように、第1支持部31aとは軸方向Lの異なる位置で第1連結部材51を回転自在に支持する第1支持部材41は、第1支持部31aが形成された第1ケース部31の内部に固定されるため、1つのケース部30とその内部に固定される支持部材40とにより第1連結部材51を支持することができる。このような構成とは異なり、シール部材4を介して接合される第1ケース部31と他のケース部30(例えば、第5ケース部35)とにより第1連結部材51を支持する場合には、第1従動ギヤ51aが第1出力ギヤ81aから受ける荷重(噛み合い力による荷重)に起因して、第1ケース部31と当該他のケース部30との接合部にこれら2つのケース部30を互いに離間させる方向の力(離間力)が作用し得る。これに対して、この車両用駆動装置1では、1つのケース部30(第1ケース部31)とその内部に固定される支持部材40(第1支持部材41)とにより第1連結部材51を支持することができる。そのため、ケース部30間の接合部に上記のような離間力が作用することを抑制し、或いは、当該離間力の大きさを小さく抑えることができ、この結果、ケース部30間のシール性能を適切に維持すること可能となっている。
【0049】
同様に、この車両用駆動装置1では、1つのケース部30(第2ケース部32)とその内部に固定される支持部材40(第2支持部材42)とにより第2連結部材52を支持することができる。そのため、第2従動ギヤ52aが第2出力ギヤ82aから受ける荷重(噛み合い力による荷重)に起因して、ケース部30間の接合部に上記のような離間力が作用することを抑制し、或いは、当該離間力の大きさを小さく抑えることができ、この結果、ケース部30間のシール性能を適切に維持することが可能となっている。なお、噛み合い力による荷重には、歯の圧力角に起因するラジアル荷重と、歯のねじれに起因するスラスト荷重とが含まれる。はすば歯車を用いる場合には、ラジアル荷重よりもスラスト荷重が支配的となる。
【0050】
なお、第1従動ギヤ51aが第1出力ギヤ81aから受ける荷重に起因して、第1支持部材41と第1ケース部31との固定部(第1固定部37a)に、第1支持部材41と第1ケース部31とを互いに離間させる方向の力が作用し得る。同様に、第2従動ギヤ52aが第2出力ギヤ82aから受ける荷重に起因して、第2支持部材42と第2ケース部32との固定部(第2固定部37b)に、第2支持部材42と第2ケース部32とを互いに離間させる方向の力が作用し得る。しかしながら、上述したように、第1固定部37aや第2固定部37bは、異なるケース部30同士の接合部とは異なり、ケース3の外面には露出しないため、第1固定部37aや第2固定部37bに作用し得る上記のような力がケース部(30)間のシール性能に与える影響は限定的である。
【0051】
上述したように、本実施形態では、第1連結部材51が第1車輪W1と一体的に回転するように連結され、第2連結部材52が第2車輪W2と一体的に回転するように連結される。そのため、第1連結部材51が、第1車輪W1の駆動トルクと同等の比較的大きなトルク(減速された後の回転電機(11,12)のトルク)の伝達を担い、第2連結部材52が、第2車輪W2の駆動トルクと同等の比較的大きなトルク(減速された後の回転電機(11,12)のトルク)の伝達を担う構成となり、第1従動ギヤ51aが第1出力ギヤ81aから受ける荷重や第2従動ギヤ52aが第2出力ギヤ82aから受ける荷重が大きくなりやすい。この点に関して、上記のように、この車両用駆動装置1では、第1従動ギヤ51aが第1出力ギヤ81aから受ける荷重がケース部30間のシール性能に与える影響や、第2従動ギヤ52aが第2出力ギヤ82aから受ける荷重がケース部30間のシール性能に与える影響を小さく抑えることができる。そのため、第1連結部材51が第1車輪W1と一体的に回転するように連結され、第2連結部材52が第2車輪W2と一体的に回転するように連結される構成においても、ケース部30間のシール性能を適切に維持することが可能である。
【0052】
次に、本実施形態の車両用駆動装置1における第1出力部材81及び第2出力部材82の支持構造について説明する。
【0053】
第1出力部材81及び第2出力部材82は、ケース3又は支持部材40により回転自在に支持されている。具体的には、第1出力部材81及び第2出力部材82のそれぞれは、ケース3又は支持部材40により、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。ここで、「ケース3又は支持部材40により、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持される」とは、軸方向Lの2ヶ所の双方でケース3により回転自在に支持されること、軸方向Lの2ヶ所の双方で支持部材40により回転自在に支持されること、軸方向Lの1ヶ所でケース3により回転自在に支持され軸方向Lの別の1ヶ所で支持部材40により回転自在に支持されることの、いずれをも含む概念である。
【0054】
図1に示すように、本実施形態では、第1出力部材81は、ケース3と第1支持部材41とにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。具体的には、第1出力部材81は、第1ケース部31に形成された第3支持部31bと、第1支持部材41に形成された第7支持部41bとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。第7支持部41bは、第3支持部31bよりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0055】
第1出力部材81は、第3支持部31bにより径方向Rの外側から支持されている。具体的には、第3支持部31bの内周面と第1出力部材81の外周面との間に第5軸受B5(ここでは、ラジアル型の円錐ころ軸受)が配置されており、第1出力部材81は、第5軸受B5を介して第3支持部31bにより径方向Rの外側から支持されている。また、第1出力部材81は、第7支持部41bにより径方向Rの外側から支持されている。具体的には、第7支持部41bの内周面と第1出力部材81の外周面との間に第6軸受B6(ここでは、ラジアル型の円錐ころ軸受)が配置されており、第1出力部材81は、第6軸受B6を介して第7支持部41bにより径方向Rの外側から支持されている。第1出力ギヤ81aは、第1出力部材81における、軸方向Lにおける第5軸受B5と第6軸受B6との間に配置される部分の外周面に形成されている。
【0056】
図1に示すように、本実施形態では、第2出力部材82は、ケース3と第2支持部材42とにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。具体的には、第2出力部材82は、第2ケース部32に形成された第4支持部32bと、第2支持部材42に形成された第8支持部42bとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。第8支持部42bは、第4支持部32bよりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0057】
第2出力部材82は、第4支持部32bにより径方向Rの外側から支持されている。具体的には、第4支持部32bの内周面と第2出力部材82の外周面との間に第8軸受B8(ここでは、ラジアル型の円錐ころ軸受)が配置されており、第2出力部材82は、第8軸受B8を介して第4支持部32bにより径方向Rの外側から支持されている。また、第2出力部材82は、第8支持部42bにより径方向Rの外側から支持されている。具体的には、第8支持部42bの内周面と第2出力部材82の外周面との間に第7軸受B7(ここでは、ラジアル型の円錐ころ軸受)が配置されており、第2出力部材82は、第7軸受B7を介して第8支持部42bにより径方向Rの外側から支持されている。第2出力ギヤ82aは、第2出力部材82における、軸方向Lにおける第7軸受B7と第8軸受B8との間に配置される部分の外周面に形成されている。
【0058】
以上のように、第1出力部材81及び第2出力部材82は、ケース3又は支持部材40により、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に径方向Rに支持されている。よって、第1出力部材81及び第2出力部材82の双方を、軸方向Lの2ヶ所のそれぞれで非回転部材により支持することができ、第1出力部材81や第2出力部材82が軸方向Lの1ヶ所でのみ非回転部材により支持される場合や、第1出力部材81や第2出力部材82が非回転部材により支持されない場合(すなわち、回転部材にのみ支持される場合)に比べて、第1出力部材81や第2出力部材82の支持剛性を高めることが可能となっている。すなわち、第1出力ギヤ81aが第1従動ギヤ51aから受ける荷重(噛み合い力による荷重)や第2出力ギヤ82aが第2従動ギヤ52aから受ける荷重(噛み合い力による荷重)を適切に支持することができるため、当該荷重が遊星歯車装置60に与える影響を低減することで、遊星歯車装置60に要求される剛性を確保することが容易となり、この結果、遊星歯車装置60の小型化を図ることが可能となっている。
【0059】
具体的に説明すると、本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、第1出力部材81は第1キャリヤC1に連結されており、第2出力部材82は第2キャリヤC2に連結されている。そのため、第1出力部材81の支持剛性が十分でない場合には、第1出力ギヤ81aが第1従動ギヤ51aから受ける荷重に起因して第1出力部材81から第1キャリヤC1に荷重が伝達されやすく、第1キャリヤC1に要求される剛性が高くなりやすい。また、第2出力部材82の支持剛性が十分でない場合には、第2出力ギヤ82aが第2従動ギヤ52aから受ける荷重に起因して第2出力部材82から第2キャリヤC2に荷重が伝達されやすく、第2キャリヤC2に要求される剛性が高くなりやすい。これに対して、本実施形態の車両用駆動装置1では、上記のように第1出力部材81や第2出力部材82の支持剛性を高めることができるため、第1出力ギヤ81aが受ける荷重に起因して第1出力部材81から第1キャリヤC1に伝達される荷重を低減することや、第2出力ギヤ82aが受ける荷重に起因して第2出力部材82から第2キャリヤC2に伝達される荷重を低減することができる。この結果、第1キャリヤC1や第2キャリヤC2に要求される剛性を確保することが容易となり、第1遊星歯車機構61や第2遊星歯車機構62の小型化を図ることが可能となっている。
【0060】
本実施形態では、更に、第1出力部材81は、第1キャリヤC1に対して軸方向Lに相対移動可能に連結され、第2出力部材82は、第2キャリヤC2に対して軸方向Lに相対移動可能に連結されている。具体的には、
図2に示すように、第1キャリヤC1は、第1ピニオンギヤP1に対して軸方向第1側L1に配置されて第1ピニオンギヤP1を回転自在に支持する第1円環板状部68aを備えている。第1円環板状部68aは、第13軸受B13を介して第1ピニオンギヤP1を径方向Rの内側から支持する第1ピニオン軸64aの、軸方向第1側L1の端部を保持している。そして、円筒状の外周面を有して軸方向Lに延びるように形成された第1軸方向延在部65aが、第1円環板状部68aに対して軸方向第1側L1に突出するように第1円環板状部68aに連結されている。本実施形態では、第1軸方向延在部65aは、第1円環板状部68aと一体的に形成されている。第1出力部材81は、軸方向Lに延びる円筒状に形成されており、第1軸方向延在部65aよりも径方向Rの外側であって径方向R視で第1軸方向延在部65aと重複するように配置されている。すなわち、本実施形態では、第1出力部材81は、第1遊星歯車機構61(第1遊星歯車機構61の噛み合い部)に対して軸方向第1側L1に配置されている。そして、第1軸方向延在部65aと第1出力部材81との周方向(第1軸A1を基準とする周方向)の相対回転が規制され、軸方向Lの相対移動が許容されるように、第1軸方向延在部65aの外周面に形成された係合部と第1出力部材81の内周面に形成された係合部とが、第3連結部66aにおいて係合(本実施形態では、スプライン係合)している。これにより、第1出力部材81は、第1キャリヤC1に対して軸方向Lに相対移動可能に連結されている。
【0061】
また、第2キャリヤC2は、第2ピニオンギヤP2に対して軸方向第2側L2に配置されて第2ピニオンギヤP2を回転自在に支持する第2円環板状部68bを備えている。第2円環板状部68bは、第14軸受B14を介して第2ピニオンギヤP2を径方向Rの内側から支持する第2ピニオン軸64bの、軸方向第2側L2の端部を保持している。そして、円筒状の外周面を有して軸方向Lに延びるように形成された第2軸方向延在部65bが、第2円環板状部68bに対して軸方向第2側L2に突出するように第2円環板状部68bに連結されている。本実施形態では、第2軸方向延在部65bは、第2円環板状部68bと一体的に形成されている。第2出力部材82は、軸方向Lに延びる円筒状に形成されており、第2軸方向延在部65bよりも径方向Rの外側であって径方向R視で第2軸方向延在部65bと重複するように配置されている。すなわち、本実施形態では、第2出力部材82は、第2遊星歯車機構62(第2遊星歯車機構62の噛み合い部)に対して軸方向第2側L2に配置されている。そして、第2軸方向延在部65bと第2出力部材82との周方向(第1軸A1を基準とする周方向)の相対回転が規制され、軸方向Lの相対移動が許容されるように、第2軸方向延在部65bの外周面に形成された係合部と第2出力部材82の内周面に形成された係合部とが、第4連結部66bにおいて係合(本実施形態では、スプライン係合)している。これにより、第2出力部材82は、第2キャリヤC2に対して軸方向Lに相対移動可能に連結されている。
【0062】
このように、本実施形態では、第1出力部材81は、第1キャリヤC1に対して軸方向Lに相対移動可能に連結され、第2出力部材82は、第2キャリヤC2に対して軸方向Lに相対移動可能に連結されている。そのため、第1出力部材81と第1キャリヤC1とが軸方向Lに相対移動不能な場合に比べて、第1出力部材81と第1キャリヤC1との連結部(第3連結部66a)における荷重の伝達を低減することができると共に、第2出力部材82と第2キャリヤC2とが軸方向Lに相対移動不能な場合に比べて、第2出力部材82と第2キャリヤC2との連結部(第4連結部66b)における荷重の伝達を低減することができる。この結果、第1出力ギヤ81aが第1従動ギヤ51aから噛み合い力による荷重を受けることに起因して第1出力部材81から第1キャリヤC1に伝達される荷重の低減や、第2出力ギヤ82aが第2従動ギヤ52aから噛み合い力による荷重を受けることに起因して第2出力部材82から第2キャリヤC2に伝達される荷重の低減を、より一層図ることが可能となっている。
【0063】
ところで、上述したように、第1出力部材81は、第6軸受B6を介して回転自在に支持され、第2出力部材82は、第7軸受B7を介して回転自在に支持されている。そして、以下に述べるように、本実施形態では、第1キャリヤC1に、第13軸受B13に油を供給するための第1油路91と、第6軸受B6に油を供給するための第2油路92とが形成され、第2キャリヤC2に、第14軸受B14に油を供給するための第3油路93と、第7軸受B7に油を供給するための第4油路94とが形成されている。
【0064】
図2に示すように、本実施形態では、第1油路91及び第2油路92が、第1円環板状部68aに形成されている。第1油路91は、径方向Rに延びるように形成されており、第1油路91における径方向Rの外側の端部は、第1ピニオン軸64aに形成された第13軸受B13に油を供給するため油路に接続されている。これにより、第1油路91に供給された油を第13軸受B13に供給して、第13軸受B13を潤滑することができる。第2油路92は、径方向Rに延びるように形成されており、第2油路92における径方向Rの外側の端部は、第1円環板状部68aにおける第6軸受B6に対して軸方向第2側L2に隣接する部分において開口している。これにより、第2油路92に供給された油を第6軸受B6に供給して、第6軸受B6を潤滑することができる。
【0065】
また、本実施形態では、第3油路93及び第4油路94が、第2円環板状部68bに形成されている。第3油路93は、径方向Rに延びるように形成されており、第3油路93における径方向Rの外側の端部は、第2ピニオン軸64bに形成された第14軸受B14に油を供給するため油路に接続されている。これにより、第3油路93に供給された油を第14軸受B14に供給して、第14軸受B14を潤滑することができる。第4油路94は、径方向Rに延びるように形成されており、第4油路94における径方向Rの外側の端部は、第2円環板状部68bにおける第7軸受B7に対して軸方向第1側L1に隣接する部分において開口している。これにより、第4油路94に供給された油を第7軸受B7に供給して、第7軸受B7を潤滑することができる。
【0066】
図2に簡略化して示すように、車両用駆動装置1は油圧源5を備えており、油圧源5から吐出された油が、第1油路91、第2油路92、第3油路93、及び第4油路94のそれぞれに供給されるように構成されている。なお、油圧源5は、例えば、電動モータで駆動される電動オイルポンプ、又は、回転電機(11,12)と車輪(W1,W2)との間の動力伝達経路を伝わる動力によって駆動される機械式オイルポンプとすることができる。
図2に示すように、第1サンギヤS1及び第2サンギヤS2よりも径方向Rの内側には、軸方向Lに延びるように形成された第3軸方向延在部65cが配置されており、第3軸方向延在部65cは、第2円環板状部68bから軸方向第1側L1に突出するように第2円環板状部68bに連結されている。本実施形態では、第3軸方向延在部65cは、第2円環板状部68b及び第2軸方向延在部65bと一体的に形成されている。そして、第2軸方向延在部65bの径方向Rの中心部、第2円環板状部68bの径方向Rの中心部、及び第3軸方向延在部65cの径方向Rの中心部を、軸方向Lに連続して延びるように、軸内油路95が形成されている。油圧源5から吐出された油は、この軸内油路95を経由して、上述した各油路(91〜94)に供給される。
【0067】
具体的には、第3軸方向延在部65cにおける軸方向第1側L1の端部は、第1円環板状部68aの径方向Rの中心部に形成された孔部69に挿入されており、第3軸方向延在部65cにおける孔部69に挿入された部分に、第3軸方向延在部65cの内周面(軸内油路95の径方向Rの外側を区画する面)と外周面とを連通する油孔96が形成されている。また、第1油路91及び第2油路92のそれぞれは、孔部69の内周面に開口するように形成されている。これにより、油圧源5から軸内油路95に供給された油は、遠心力等の作用により、油孔96を経由して第1油路91や第2油路92に供給される。このように、第1油路91及び第2油路92の双方を第1キャリヤC1(ここでは、第1円環板状部68a)に形成することで、第1油路91及び第2油路92に対する油の供給構造を共通化して、油路構成の簡素化を図ることが可能となっている。
【0068】
なお、第1油路91及び第2油路92は共に第1円環板状部68aに形成されるため、第1油路91と第2油路92とは、軸方向Lの位置及び周方向(第1軸A1を基準とする周方向)の位置の少なくとも一方を互いにずらして形成すると好適である。
図2に示すように、本実施形態では、第1油路91を、径方向Rに平行に延びるように形成し、第2油路92を、径方向Rに対して傾斜した方向(径方向Rの外側に向かうに従って軸方向第1側L1に向かう方向)に延びるように形成することで、第1油路91と第2油路92との間で軸方向Lの位置を互いにずらしている。
図2に示す例では、第1油路91と第2油路92とは、軸方向Lの互いに同じ位置に配置される部分を一部にも有さないように、軸方向Lの位置が互いにずれている。また、本実施形態では、第1油路91と第2油路92とは、周方向(第1軸A1を基準とする周方向)の位置を互いにずらして形成されているが、
図2では、便宜上、第1油路91と第2油路92との双方を同じ断面に示している。
【0069】
また、第3油路93及び第4油路94のそれぞれは、第2円環板状部68bの内周面(軸内油路95の径方向Rの外側を区画する面)に開口するように形成されている。よって、油圧源5から軸内油路95に供給された油は、遠心力等の作用により、第3油路93や第4油路94に供給される。このように、第3油路93及び第4油路94の双方を第2キャリヤC2(ここでは、第2円環板状部68b)に形成することで、第3油路93及び第4油路94に対する油の供給構造を共通化して、油路構成の簡素化を図ることが可能となっている。
【0070】
なお、第3油路93及び第4油路94は共に第2円環板状部68bに形成されるため、第3油路93と第4油路94とは、軸方向Lの位置及び周方向(第1軸A1を基準とする周方向)の位置の少なくとも一方を互いにずらして形成すると好適である。
図2に示すように、本実施形態では、第3油路93を、径方向Rに平行に延びるように形成し、第4油路94を、径方向Rに対して傾斜した方向(径方向Rの外側に向かうに従って軸方向第2側L2に向かう方向)に延びるように形成することで、第3油路93と第4油路94との間で軸方向Lの位置を互いにずらしている。
図2に示す例では、第3油路93と第4油路94とは、軸方向Lの同じ位置において第2円環板状部68bの内周面に開口している。すなわち、第3油路93と第4油路94とは、軸方向Lの互いに同じ位置に配置される部分を一部有しつつ、軸方向Lの位置が互いにずれている。また、本実施形態では、第3油路93と第4油路94とは、周方向(第1軸A1を基準とする周方向)の位置を互いにずらして形成されているが、
図2では、便宜上、第3油路93と第4油路94との双方を同じ断面に示している。
【0071】
次に、本実施形態の車両用駆動装置1における第1入力部材71及び第2入力部材72の支持構造について説明する。
【0072】
第1入力部材71及び第2入力部材72は、ケース3又は支持部材40により回転自在に支持されている。具体的には、第1入力部材71及び第2入力部材72のそれぞれは、ケース3又は支持部材40により、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。
【0073】
図2に示すように、本実施形態では、第1入力部材71は、ケース3と第1支持部材41とにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。具体的には、第1入力部材71は、第5ケース部35に形成された第13支持部35aと、第1支持部材41に形成された第9支持部41cとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。第9支持部41cは、第13支持部35aよりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0074】
第1入力部材71は、第13支持部35aにより径方向Rの外側から支持されている。具体的には、第13支持部35aの内周面と第1入力部材71の外周面との間に第10軸受B10(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第1入力部材71は、第10軸受B10を介して第13支持部35aにより径方向Rの外側から支持されている。本実施形態では、第1入力部材71は、第1リングギヤR1を備えている。そして、第1リングギヤR1は、第1入力部材71における、第10軸受B10よりも径方向Rの内側であって径方向R視で第10軸受B10と重複するように配置される部分の内周面に形成されている。すなわち、第10軸受B10は、径方向R視で第1リングギヤR1と重複するように配置されている。また、第1入力部材71は、第9支持部41cにより径方向Rの内側から支持されている。具体的には、第9支持部41cの外周面と第1入力部材71の内周面との間に第9軸受B9(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第1入力部材71は、第9軸受B9を介して第9支持部41cにより径方向Rの内側から支持されている。第1入力ギヤ71aは、第1入力部材71における、第9軸受B9よりも径方向Rの外側であって径方向R視で第9軸受B9と重複するように配置される部分の外周面に形成されている。すなわち、第9軸受B9は、径方向R視で第1入力ギヤ71aと重複するように配置されている。また、第9軸受B9は、径方向R視で第6軸受B6と重複するように配置されている。
【0075】
図2に示すように、本実施形態では、第2入力部材72は、ケース3と第2支持部材42とにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。具体的には、第2入力部材72は、第5ケース部35に形成された第14支持部35bと、第2支持部材42に形成された第10支持部42cとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。第10支持部42cは、第14支持部35bよりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0076】
第2入力部材72は、第14支持部35bにより径方向Rの外側から支持されている。具体的には、第14支持部35bの内周面と第2入力部材72の外周面との間に第11軸受B11(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第2入力部材72は、第11軸受B11を介して第14支持部35bにより径方向Rの外側から支持されている。本実施形態では、第2入力部材72は、第2リングギヤR2を備えている。そして、第2リングギヤR2は、第2入力部材72における、第11軸受B11よりも径方向Rの内側であって径方向R視で第11軸受B11と重複するように配置される部分の内周面に形成されている。すなわち、第11軸受B11は、径方向R視で第2リングギヤR2と重複するように配置されている。また、第2入力部材72は、第10支持部42cにより径方向Rの内側から支持されている。具体的には、第10支持部42cの外周面と第2入力部材72の内周面との間に第12軸受B12(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第2入力部材72は、第12軸受B12を介して第10支持部42cにより径方向Rの内側から支持されている。第2入力ギヤ72aは、第2入力部材72における、第12軸受B12よりも径方向Rの外側であって径方向R視で第12軸受B12と重複するように配置される部分の外周面に形成されている。すなわち、第12軸受B12は、径方向R視で第2入力ギヤ72aと重複するように配置されている。また、第12軸受B12は、径方向R視で第7軸受B7と重複するように配置されている。
【0077】
以上のように、第1入力部材71及び第2入力部材72は、ケース3又は支持部材40により、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に径方向Rに支持されている。よって、第1入力部材71及び第2入力部材72の双方を、軸方向Lの2ヶ所のそれぞれで非回転部材により支持することができ、第1入力部材71や第2入力部材72が軸方向Lの1ヶ所でのみ非回転部材により支持される場合や、第1入力部材71や第2入力部材72が非回転部材により支持されない場合(すなわち、回転部材にのみ支持される場合)に比べて、第1入力部材71や第2入力部材72の支持剛性を高めることが可能となっている。すなわち、第1入力ギヤ71aが第1駆動ギヤ21aから受ける荷重(噛み合い力による荷重)や第2入力ギヤ72aが第2駆動ギヤ22aから受ける荷重(噛み合い力による荷重)を適切に支持することができるため、当該荷重が遊星歯車装置60に与える影響を低減することで、遊星歯車装置60に要求される剛性を確保することが容易となり、この結果、遊星歯車装置60の小型化を図ることが可能となっている。
【0078】
具体的に説明すると、本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、第1入力部材71は第1リングギヤR1を備えており、第2入力部材72は第2リングギヤR2を備えている。そのため、第1入力部材71の支持剛性が十分でない場合には、第1入力ギヤ71aが第1駆動ギヤ21aから受ける荷重に起因して第1入力部材71から第1リングギヤR1を介して第1キャリヤC1に荷重が伝達されやすく、第1キャリヤC1に要求される剛性が高くなりやすい。また、第2入力部材72の支持剛性が十分でない場合には、第2入力ギヤ72aが第2駆動ギヤ22aから受ける荷重に起因して第2入力部材72から第2リングギヤR2を介して第2キャリヤC2に荷重が伝達されやすく、第2キャリヤC2に要求される剛性が高くなりやすい。これに対して、本実施形態の車両用駆動装置1では、上記のように第1入力部材71や第2入力部材72の支持剛性を高めることができるため、第1入力ギヤ71aが受ける荷重に起因して第1入力部材71から第1キャリヤC1に伝達される荷重を低減することや、第2入力ギヤ72aが受ける荷重に起因して第2入力部材72から第2キャリヤC2に伝達される荷重を低減することができる。この結果、第1キャリヤC1や第2キャリヤC2に要求される剛性を確保することが容易となり、第1遊星歯車機構61や第2遊星歯車機構62の小型化を図ることが可能となっている。
【0079】
次に、本実施形態の車両用駆動装置1における第1駆動部材21及び第2駆動部材22の支持構造について説明する。なお、以下の第1駆動部材21及び第2駆動部材22の支持構造の説明における径方向は、特に明記している場合を除き、第3軸A3を基準とする径方向である。
【0080】
第1駆動部材21及び第2駆動部材22は、ケース3又は支持部材40により回転自在に支持されている。具体的には、第1駆動部材21及び第2駆動部材22のそれぞれは、ケース3又は支持部材40により、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。
【0081】
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、第1駆動部材21は、ケース3と第1支持部材41とにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。具体的には、第1駆動部材21は、第5ケース部35に形成された第15支持部35cと、第1支持部材41に形成された第11支持部41dとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。第11支持部41dは、第15支持部35cよりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0082】
第1駆動部材21は、第15支持部35cにより径方向外側から支持されている。具体的には、第15支持部35cの内周面と第1駆動部材21の外周面との間に第16軸受B16(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第1駆動部材21は、第16軸受B16を介して第15支持部35cにより径方向外側から支持されている。第16軸受B16は、第1軸A1を基準とする径方向視(すなわち、径方向R視)で第10軸受B10と重複するように配置されている。また、第1駆動部材21は、第11支持部41dにより径方向外側から支持されている。具体的には、第11支持部41dの内周面と第1駆動部材21の外周面との間に第15軸受B15(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第1駆動部材21は、第15軸受B15を介して第11支持部41dにより径方向外側から支持されている。第15軸受B15は、第2軸A2を基準とする径方向視で第2軸受B2と重複するように配置されている。第1駆動ギヤ21aは、第1駆動部材21における、軸方向Lにおける第15軸受B15と第16軸受B16との間に配置される部分の外周面に形成されている。
【0083】
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、第2駆動部材22は、ケース3と第2支持部材42とにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。具体的には、第2駆動部材22は、第5ケース部35に形成された第16支持部35dと、第2支持部材42に形成された第12支持部42dとにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持されている。第12支持部42dは、第16支持部35dよりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0084】
第2駆動部材22は、第16支持部35dにより径方向外側から支持されている。具体的には、第16支持部35dの内周面と第2駆動部材22の外周面との間に第17軸受B17(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第2駆動部材22は、第17軸受B17を介して第16支持部35dにより径方向外側から支持されている。第17軸受B17は、第1軸A1を基準とする径方向視(すなわち、径方向R視)で第11軸受B11と重複するように配置されている。また、第2駆動部材22は、第12支持部42dにより径方向外側から支持されている。具体的には、第12支持部42dの内周面と第2駆動部材22の外周面との間に第18軸受B18(ここでは、ラジアル型の玉軸受)が配置されており、第2駆動部材22は、第18軸受B18を介して第12支持部42dにより径方向外側から支持されている。第18軸受B18は、第2軸A2を基準とする径方向視で第3軸受B3と重複するように配置されている。第2駆動ギヤ22aは、第2駆動部材22における、軸方向Lにおける第17軸受B17と第18軸受B18との間に配置される部分の外周面に形成されている。
【0085】
以上のように、本実施形態では、第1支持部材41は、第1入力部材71及び第1出力部材81を支持するために用いられ、更に、第1連結部材51及び第1駆動部材21を支持するためにも用いられている。すなわち、第1支持部材41には、第1入力部材71の支持部(第9支持部41c)と、第1出力部材81の支持部(第7支持部41b)とが形成され、更に、第1連結部材51の支持部(第5支持部41a)と、第1駆動部材21の支持部(第11支持部41d)とが形成されている。また、本実施形態では、第2支持部材42は、第2入力部材72及び第2出力部材82を支持するために用いられ、更に、第2連結部材52及び第2駆動部材22を支持するためにも用いられている。すなわち、第2支持部材42には、第2入力部材72の支持部(第10支持部42c)と、第2出力部材82の支持部(第8支持部42b)とが形成され、更に、第2連結部材52の支持部(第6支持部42a)と、第2駆動部材22の支持部(第12支持部42d)とが形成されている。このように、第1支持部材41や第2支持部材42を複数の回転部材を支持するために用いることで、部品点数を少なく抑えることができると共に、各回転部材の支持精度(同じ支持部材40に支持される回転部材同士の相対位置の精度)を確保することが容易となる。
【0086】
本実施形態では、第1入力部材71、第2入力部材72、第1出力部材81、及び第2出力部材82のそれぞれが、ケース3又は支持部材40により回転自在に支持されている。そのため、第1入力部材71に連結される第1回転要素E1、第2入力部材72に連結される第4回転要素E4、第1出力部材81に連結される第2回転要素E2、及び、第2出力部材82に連結される第3回転要素E3のそれぞれの支持精度を適切に確保することができる。その上で、本実施形態では、第1遊星歯車機構61の回転要素と第2遊星歯車機構62の回転要素との連結部63を、径方向Rに隙間を有する連結構造としている。これにより、各部品の径方向Rにおける寸法誤差や組付誤差を連結部63で吸収することを可能として、第1遊星歯車機構61や第2遊星歯車機構62におけるギヤの噛み合い部に過大な荷重(偏荷重等)が作用することを回避可能としている。
【0087】
具体的には、本実施形態では、第1キャリヤC1と第2サンギヤS2とが一体的に回転するように連結されていると共に、第1サンギヤS1と第2キャリヤC2とが一体的に回転するように連結されている。そして、第1キャリヤC1と第2サンギヤS2との連結部63である第2連結部63bと、第1サンギヤS1と第2キャリヤC2との連結部63である第1連結部63aとを、径方向Rに隙間を有する連結構造としている。
【0088】
図2に示すように、第1キャリヤC1は、第1ピニオンギヤP1に対して軸方向第2側L2に配置されて第1ピニオンギヤP1を回転自在に支持する第3円環板状部68cを備えている。そして、第3円環板状部68cの径方向Rの内側の端部には、軸方向Lに延びる円筒状に形成された第3筒状部67cが連結されている。ここでは、第3筒状部67cは、第3円環板状部68cと一体的に形成されている。また、第2サンギヤS2には、軸方向Lに延びる円筒状に形成された第2筒状部67bが、第2サンギヤS2に対して軸方向第1側L1に突出するように連結されている。ここでは、第2筒状部67bは、第2サンギヤS2が外周面に形成された円筒状部材と一体的に形成されている。第2筒状部67bの外周面は第3筒状部67cの内周面よりも小径に形成されている。そして、第2筒状部67bと第3筒状部67cとの周方向(第1軸A1を基準とする周方向)の相対回転が規制され、軸方向Lの相対移動が許容されるように、第2筒状部67bの外周面に形成された係合部と第3筒状部67cの内周面に形成された係合部とが、第2連結部63bにおいて係合(本実施形態では、スプライン係合)している。第2連結部63bには、少なくとも第2筒状部67bと第3筒状部67cとの軸方向Lの相対移動を可能とする程度の径方向Rの隙間が形成されている。
【0089】
また、
図2に示すように、軸方向Lに延びる筒状に形成された第1筒状部67aの外周面に、第1サンギヤS1が形成されている。第1筒状部67aの内周面は、第3軸方向延在部65cの外周面よりも大径に形成されている。そして、第1筒状部67aと第3軸方向延在部65cとの周方向(第1軸A1を基準とする周方向)の相対回転が規制され、軸方向Lの相対移動が許容されるように、第1筒状部67aの内周面に形成された係合部と第3軸方向延在部65cの外周面に形成された係合部とが、第1連結部63aにおいて係合(本実施形態では、スプライン係合)している。第1連結部63aには、少なくとも第1筒状部67aと第3軸方向延在部65cとの軸方向Lの相対移動を可能とする程度の径方向Rの隙間が形成されている。
【0090】
〔その他の実施形態〕
次に、車両用駆動装置のその他の実施形態について説明する。
【0091】
(1)上記の実施形態では、第1キャリヤC1と第2サンギヤS2とが連結されると共に、第1サンギヤS1と第2キャリヤC2とが連結されることで、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とが全体として4つの回転要素(E1〜E4)を備えて一体的に差動動作を行う構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1キャリヤC1と第2リングギヤR2とが連結されると共に第1リングギヤR1と第2キャリヤC2とが連結されることで、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とが全体として4つの回転要素(E1〜E4)を備えて一体的に差動動作を行う構成とすることもできる。この場合、第1回転電機11が第1サンギヤS1に駆動連結され、第1連結部材51が一体的に回転する第1キャリヤC1と第2リングギヤR2に駆動連結され、第2連結部材52が一体的に回転する第1リングギヤR1と第2キャリヤC2に駆動連結され、第2回転電機12が第2サンギヤS2に駆動連結される構成とすることで、上記の実施形態と同様に、回転速度の順が、第1回転電機11に駆動連結される第1回転要素E1、第1連結部材51に駆動連結される第2回転要素E2、第2連結部材52に駆動連結される第3回転要素E3、及び、第2回転電機12に駆動連結される第4回転要素E4の順となる構成を実現することができる。
【0092】
(2)上記の実施形態では、第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62の双方が、シングルピニオン型の遊星歯車機構である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1遊星歯車機構61及び第2遊星歯車機構62の双方が、ダブルピニオン型の遊星歯車機構である構成とすることもできる。この場合、第1キャリヤC1と第2リングギヤR2とが連結されると共に第1リングギヤR1と第2キャリヤC2とが連結されることで、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とが全体として4つの回転要素(E1〜E4)を備えて一体的に差動動作を行う構成とすることができる。この場合、第1回転電機11が第1サンギヤS1に駆動連結され、第1連結部材51が一体的に回転する第1リングギヤR1と第2キャリヤC2に駆動連結され、第2連結部材52が一体的に回転する第1キャリヤC1と第2リングギヤR2に駆動連結され、第2回転電機12が第2サンギヤS2に駆動連結される構成とすることで、上記の実施形態と同様に、回転速度の順が、第1回転電機11に駆動連結される第1回転要素E1、第1連結部材51に駆動連結される第2回転要素E2、第2連結部材52に駆動連結される第3回転要素E3、及び、第2回転電機12に駆動連結される第4回転要素E4の順となる構成を実現することができる。
【0093】
(3)上記の実施形態では、伝達装置2が、第1回転電機11のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52の双方に伝達すると共に、第2回転電機12のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52の双方に伝達する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、伝達装置2が、第1回転電機11のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52のうちの第1連結部材51のみに伝達すると共に、第2回転電機12のトルクを第1連結部材51及び第2連結部材52のうちの第2連結部材52のみに伝達する構成とすることもできる。すなわち、第1回転電機11と第1連結部材51との間の動力伝達経路と第2回転電機12と第2連結部材52との間の動力伝達経路とが分離された構成とすることもできる。
【0094】
例えば、上記の実施形態のように第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とを連結せずに、第1遊星歯車機構61と第2遊星歯車機構62とが互いに独立に差動動作を行う構成とすることで、第1回転電機11と第1連結部材51との間の動力伝達経路と第2回転電機12と第2連結部材52との間の動力伝達経路とが分離された構成を実現することができる。この場合、第1遊星歯車機構61は、第1回転電機11に駆動連結される第1回転要素E1と、第1連結部材51に駆動連結される第2回転要素E2と、第5回転要素と、を備え、第2遊星歯車機構62は、第2連結部材52に駆動連結される第3回転要素E3と、第2回転電機12に駆動連結される第4回転要素E4と、第6回転要素と、を備える。すなわち、差動歯車装置6(遊星歯車装置60)は、全体として6つの回転要素を有する。この場合、例えば、第5回転要素が非回転部材に固定され、第6回転要素が非回転部材に固定される構成とすることができる。
【0095】
(4)上記の実施形態では、第1出力部材81及び第2出力部材82のそれぞれが、ケース3又は支持部材40により、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1出力部材81及び第2出力部材82の一方又は双方が、軸方向Lの1ヶ所でのみケース3又は支持部材40により回転自在に支持される構成や、第1出力部材81及び第2出力部材82の一方又は双方が、ケース3及び支持部材40のいずれにも支持されない構成(すなわち、回転部材にのみ回転自在に支持される構成)とすることもできる。
【0096】
(5)上記の実施形態では、第1入力部材71及び第2入力部材72のそれぞれが、ケース3又は支持部材40により、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1入力部材71及び第2入力部材72の一方又は双方が、軸方向Lの1ヶ所でのみケース3又は支持部材40により回転自在に支持される構成や、第1入力部材71及び第2入力部材72の一方又は双方が、ケース3及び支持部材40のいずれにも支持されない構成(すなわち、回転部材にのみ回転自在に支持される構成)とすることもできる。
【0097】
(6)上記の実施形態では、ケース3が第5ケース部35を備え、第1ケース部31と第2ケース部32とが第5ケース部35を介して接合される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ケース3が第5ケース部35を備えず、第1ケース部31と第2ケース部32とが第5ケース部35を介さずに接合される構成(すなわち、シール部材4のみを介して接合される構成)とすることもできる。この場合、例えば、第5ケース部35と同様の回転部材の支持機能を有する支持部材40を、第5ケース部35に代えて設けてもよい。
【0098】
(7)上記の実施形態では、第1キャリヤC1に第1油路91と第2油路92とが形成され、第2キャリヤC2に第3油路93と第4油路94とが形成される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1キャリヤC1に第2油路92が形成されず、第2キャリヤC2に第4油路94が形成されない構成とすることもできる。
【0099】
(8)上記の実施形態では、第9軸受B9が、径方向R視で第6軸受B6と重複するように配置され、第12軸受B12が、径方向R視で第7軸受B7と重複するように配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第9軸受B9が、径方向R視で第6軸受B6と重複しないように、第6軸受B6に対して軸方向第1側L1又は軸方向第2側L2に配置される構成や、第12軸受B12が、径方向R視で第7軸受B7と重複しないように、第7軸受B7に対して軸方向第1側L1又は軸方向第2側L2に配置される構成とすることもできる。
【0100】
(9)上記の実施形態では、第1支持部材41に、第5支持部41aと、第7支持部41bと、第9支持部41cと、第11支持部41dとが形成され、第2支持部材42に、第6支持部42aと、第8支持部42bと、第10支持部42cと、第12支持部42dとが形成される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第5支持部41a、第7支持部41b、第9支持部41c、及び第11支持部41dの一部のみが第1支持部材41に形成され、残りの支持部が他の支持部材40或いはケース3に形成される構成とすることもできる。また、第6支持部42a、第8支持部42b、第10支持部42c、及び第12支持部42dの一部のみが第2支持部材42に形成され、残りの支持部が他の支持部材40或いはケース3に形成される構成とすることもできる。
【0101】
(10)上記の実施形態では、第1出力部材81が、第1キャリヤC1に対して軸方向Lに相対移動可能に連結され、第2出力部材82が、第2キャリヤC2に対して軸方向Lに相対移動可能に連結される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1出力部材81が、第1キャリヤC1と一体的に形成されること等により、第1キャリヤC1に対して軸方向Lに相対移動不能に連結される構成とすることもできる。また、第2出力部材82が、第2キャリヤC2と一体的に形成されること等により、第2キャリヤC2に対して軸方向Lに相対移動不能に連結される構成とすることもできる。
【0102】
(11)上記の実施形態では、第1出力部材81が、第1遊星歯車機構61(第1遊星歯車機構61の噛み合い部)に対して軸方向第1側L1に配置され、第2出力部材82が、第2遊星歯車機構62(第2遊星歯車機構62の噛み合い部)に対して軸方向第2側L2に配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1出力部材81が、第1遊星歯車機構61(第1遊星歯車機構61の噛み合い部)に対して軸方向第2側L2に配置され、第2出力部材82が、第2遊星歯車機構62(第2遊星歯車機構62の噛み合い部)に対して軸方向第1側L1に配置される構成とすることもできる。
【0103】
(12)上記の実施形態では、第1駆動ギヤ21aが第1入力ギヤ71aに噛み合い、第2駆動ギヤ22aが第2入力ギヤ72aに噛み合う構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1駆動ギヤ21aと第1入力ギヤ71aとが別のギヤ又はギヤ機構を介して連結され、第2駆動ギヤ22aと第2入力ギヤ72aとが別のギヤ又はギヤ機構を介して連結される構成とすることもできる。
【0104】
(13)上記の実施形態では、第1出力ギヤ81aが第1従動ギヤ51aに噛み合い、第2出力ギヤ82aが第2従動ギヤ52aに噛み合う構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1出力ギヤ81aと第1従動ギヤ51aとが別のギヤ又はギヤ機構を介して連結され、第2出力ギヤ82aと第2従動ギヤ52aとが別のギヤ又はギヤ機構を介して連結される構成とすることもできる。
【0105】
(14)上記の実施形態では、第1連結部材51が第1車輪W1と一体的に回転するように連結され、第2連結部材52が第2車輪W2と一体的に回転するように連結される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1連結部材51が、第1軸部材53と同軸に配置されると共に歯車機構(例えば、差動歯車機構)を介して第1車輪W1に連結され、第2連結部材52が、第2軸部材54と同軸に配置されると共に歯車機構(例えば、差動歯車機構)を介して第2車輪W2に連結される構成とすることもできる。なお、第1連結部材51が第1軸部材53とは別軸に配置され、第2連結部材52が第2軸部材54とは別軸に配置される構成とすることも可能である。
【0106】
(15)上記の実施形態では、第1連結部材51が、ケース3に形成された第1支持部31aと、第1支持部材41とにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持され、第2連結部材52が、ケース3に形成された第2支持部32aと、第2支持部材42とにより、軸方向Lの2ヶ所で回転自在に支持される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1連結部材51が、軸方向Lの2ヶ所のそれぞれでケース3に回転自在に支持され、第2連結部材52が、軸方向Lの2ヶ所のそれぞれでケース3に回転自在に支持される構成とすることもできる。
【0107】
(16)上記の実施形態では、第1回転電機11及び第2回転電機12が、第3軸A3上に配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1回転電機11及び第2回転電機12の一方又は双方が、第1軸A1上に又は第2軸A2上に配置される構成とすることもできる。また、上記の実施形態では、第1連結部材51及び第2連結部材52が、第2軸A2上に配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1連結部材51及び第2連結部材52が、第1軸A1上に又は第3軸A3上に配置される構成とすることもできる。
【0108】
(17)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0109】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置の概要について説明する。
【0110】
第1回転電機(11)と、第2回転電機(12)と、第1車輪(W1)に駆動連結される第1連結部材(51)と、第2車輪(W2)に駆動連結される第2連結部材(52)と、前記第1回転電機(11)のトルクを前記第1連結部材(51)及び前記第2連結部材(52)のうちの少なくとも前記第1連結部材(51)に伝達すると共に、前記第2回転電機(12)のトルクを前記第1連結部材(51)及び前記第2連結部材(52)のうちの少なくとも前記第2連結部材(52)に伝達する伝達装置(2)と、前記第1回転電機(11)、前記第2回転電機(12)、前記第1連結部材(51)、前記第2連結部材(52)、及び前記伝達装置(2)を収容するケース(3)と、を備え、前記伝達装置(2)は、第1軸(A1)上に配置され、前記第1連結部材(51)及び前記第2連結部材(52)は、前記第1軸(A1)に平行な第2軸(A2)上に配置され、前記伝達装置(2)は、前記第1回転電機(11)に駆動連結される第1回転要素(E1)、前記第1連結部材(51)に駆動連結される第2回転要素(E2)、前記第2連結部材(52)に駆動連結される第3回転要素(E3)、及び、前記第2回転電機(12)に駆動連結される第4回転要素(E4)を少なくとも有する遊星歯車装置(60)と、前記第1回転要素(E1)に連結される第1入力部材(71)と、前記第2回転要素(E2)に連結される第1出力部材(81)と、前記第3回転要素(E3)に連結される第2出力部材(82)と、前記第4回転要素(E4)に連結される第2入力部材(72)と、を備え、前記第1出力部材(81)は、前記第1連結部材(51)が備える第1従動ギヤ(51a)に噛み合う第1出力ギヤ(81a)を備え、前記第2出力部材(82)は、前記第2連結部材(52)が備える第2従動ギヤ(52a)に噛み合う第2出力ギヤ(82a)を備え、前記第1出力部材(81)及び前記第2出力部材(82)のそれぞれが、前記ケース(3)又は前記ケース(3)に固定された支持部材(40)により、軸方向(L)の2ヶ所で回転自在に支持されている。
【0111】
この構成によれば、遊星歯車装置(60)の第2回転要素(E2)に連結される第1出力部材(81)が、ケース(3)又はケース(3)に固定された支持部材(40)により、軸方向(L)の2ヶ所で回転自在に支持される。すなわち、第1出力部材(81)を、軸方向(L)の2ヶ所のそれぞれで非回転部材により支持することができるため、第1出力部材(81)が軸方向(L)の1ヶ所でのみ非回転部材により支持される場合や、第1出力部材(81)が非回転部材により支持されない場合に比べて、第1出力部材(81)の支持剛性を高めることができる。従って、第1出力ギヤ(81a)が第1従動ギヤ(51a)から受ける荷重を適切に支持することができ、当該荷重が遊星歯車装置(60)に与える影響を低減することができる。同様に、遊星歯車装置(60)の第3回転要素(E3)に連結される第2出力部材(82)が、ケース(3)又はケース(3)に固定された支持部材(40)により、軸方向(L)の2ヶ所で回転自在に支持されるため、第2出力ギヤ(82a)が第2従動ギヤ(52a)から受ける荷重を適切に支持することができ、当該荷重が遊星歯車装置(60)に与える影響を低減することができる。
以上のように、上記の構成によれば、第1出力ギヤ(81a)や第2出力ギヤ(82a)が受ける荷重を適切に支持することができ、当該荷重が遊星歯車装置(60)に与える影響を低減することができる。そのため、遊星歯車装置(60)に要求される剛性を確保することが容易となり、遊星歯車装置(60)の小型化を図ることができる。
【0112】
ここで、前記第1回転電機(11)及び前記第2回転電機(12)は、前記第1軸(A1)及び前記第2軸(A2)に平行な第3軸(A3)上に配置されていると好適である。
【0113】
この構成によれば、第1回転電機(11)及び第2回転電機(12)が第1軸(A1)又は第2軸(A2)に配置される場合に比べて、第1回転電機(11)及び第2回転電機(12)を伝達装置(2)の軸方向(L)の配置領域の中心側に寄せて配置しやすくなり、この結果、装置全体の軸方向(L)の小型化を図りやすくなる。
【0114】
第1回転電機(11)と、第2回転電機(12)と、第1車輪(W1)に駆動連結される第1連結部材(51)と、第2車輪(W2)に駆動連結される第2連結部材(52)と、前記第1回転電機(11)のトルクを前記第1連結部材(51)及び前記第2連結部材(52)のうちの少なくとも前記第1連結部材(51)に伝達すると共に、前記第2回転電機(12)のトルクを前記第1連結部材(51)及び前記第2連結部材(52)のうちの少なくとも前記第2連結部材(52)に伝達する伝達装置(2)と、前記第1回転電機(11)、前記第2回転電機(12)、前記第1連結部材(51)、前記第2連結部材(52)、及び前記伝達装置(2)を収容するケース(3)と、を備え、前記伝達装置(2)は、第1軸(A1)上に配置され、前記第1回転電機(11)及び前記第2回転電機(12)は、前記第1軸(A1)に平行な第3軸(A3)上に配置され、前記伝達装置(2)は、前記第1回転電機(11)に駆動連結される第1回転要素(E1)、前記第1連結部材(51)に駆動連結される第2回転要素(E2)、前記第2連結部材(52)に駆動連結される第3回転要素(E3)、及び、前記第2回転電機(12)に駆動連結される第4回転要素(E4)を少なくとも有する遊星歯車装置(60)と、前記第1回転要素(E1)に連結される第1入力部材(71)と、前記第2回転要素(E2)に連結される第1出力部材(81)と、前記第3回転要素(E3)に連結される第2出力部材(82)と、前記第4回転要素(E4)に連結される第2入力部材(72)と、を備え、前記第1入力部材(71)は、前記第1回転電機(11)に駆動連結される第1駆動ギヤ(21a)に噛み合う第1入力ギヤ(71a)を備え、前記第2入力部材(72)は、前記第2回転電機(12)に駆動連結される第2駆動ギヤ(22a)に噛み合う第2入力ギヤ(72a)を備え、前記第1入力部材(71)及び前記第2入力部材(72)のそれぞれが、前記ケース(3)又は前記ケース(3)に固定された支持部材(40)により、軸方向(L)の2ヶ所で回転自在に支持されている。
【0115】
この構成によれば、遊星歯車装置(60)の第1回転要素(E1)に連結される第1入力部材(71)が、ケース(3)又はケース(3)に固定された支持部材(40)により、軸方向(L)の2ヶ所で回転自在に支持される。すなわち、第1入力部材(71)を、軸方向(L)の2ヶ所のそれぞれで非回転部材により支持することができるため、第1入力部材(71)が軸方向(L)の1ヶ所でのみ非回転部材により支持される場合や、第1入力部材(71)が非回転部材により支持されない場合に比べて、第1入力部材(71)の支持剛性を高めることができる。従って、第1入力ギヤ(71a)が第1駆動ギヤ(21a)から受ける荷重を適切に支持することができ、当該荷重が遊星歯車装置(60)に与える影響を低減することができる。同様に、遊星歯車装置(60)の第4回転要素(E4)に連結される第2入力部材(72)が、ケース(3)又はケース(3)に固定された支持部材(40)により、軸方向(L)の2ヶ所で回転自在に支持されるため、第2入力ギヤ(72a)が第2駆動ギヤ(22a)から受ける荷重を適切に支持することができ、当該荷重が遊星歯車装置(60)に与える影響を低減することができる。
以上のように、上記の構成によれば、第1入力ギヤ(71a)や第2入力ギヤ(72a)が受ける荷重を適切に支持することができ、当該荷重が遊星歯車装置(60)に与える影響を低減することができる。そのため、遊星歯車装置(60)に要求される剛性を確保することが容易となり、遊星歯車装置(60)の小型化を図ることができる。
【0116】
ここで、前記第1連結部材(51)及び前記第2連結部材(52)は、前記第1軸(A1)及び前記第3軸(A3)に平行な第2軸(A2)上に配置されていると好適である。
【0117】
この構成によれば、第1連結部材(51)及び第2連結部材(52)が第1軸(A1)又は第3軸(A3)に配置される場合に比べて、第1連結部材(51)及び第2連結部材(52)を伝達装置(2)の軸方向(L)の配置領域の中心側に寄せて配置しやすくなり、この結果、装置全体の軸方向(L)の小型化を図りやすくなる。
【0118】
ここで、前記遊星歯車装置(6)は、第1サンギヤ(S1)、第1キャリヤ(C1)、及び第1リングギヤ(R1)を有する第1遊星歯車機構(61)と、第2サンギヤ(S2)、第2キャリヤ(C2)、及び第2リングギヤ(R2)を有する第2遊星歯車機構(62)と、を備え、前記第1回転要素(E1)は、前記第1リングギヤ(R1)であり、前記第2回転要素(E2)は、一体的に回転する前記第1キャリヤ(C1)と前記第2サンギヤ(S2)であり、前記第3回転要素(E3)は、一体的に回転する前記第1サンギヤ(S1)と前記第2キャリヤ(C2)であり、前記第4回転要素(E4)は、前記第2リングギヤ(R2)であると好適である。
【0119】
この構成によれば、回転速度の順が、第1回転電機(11)に駆動連結される第1回転要素(E1)、第1連結部材(51)に駆動連結される第2回転要素(E2)、第2連結部材(52)に駆動連結される第3回転要素(E3)、第2回転電機(12)に駆動連結される第4回転要素(E4)の順となるため、第1回転電機(11)及び第2回転電機(12)のトルクを、伝達装置(2)により第1連結部材(51)及び第2連結部材(52)に分配して伝達することができる。よって、第1回転電機(11)と第1連結部材(51)との間の動力伝達経路と第2回転電機(12)と第2連結部材(52)との間の動力伝達経路とが分離されている場合に比べて、車両の旋回時の走行性能の向上を図ることができる。
【0120】
上記のように前記遊星歯車装置(60)が前記第1遊星歯車機構(61)と前記第2遊星歯車機構(62)とを備える構成において、前記第1遊星歯車機構(61)は、前記第2遊星歯車機構(62)に対して前記軸方向(L)の一方側である軸方向第1側(L1)に配置され、前記第1出力部材(81)は、前記第1遊星歯車機構(61)に対して前記軸方向第1側(L1)に配置され、前記第2出力部材(82)は、前記第2遊星歯車機構(62)に対して前記軸方向(L)における前記軸方向第1側(L1)とは反対側である軸方向第2側(L2)に配置され、前記第1出力部材(81)は、前記第1キャリヤ(C1)に対して前記軸方向(L)に相対移動可能に連結され、前記第2出力部材(82)は、前記第2キャリヤ(C2)に対して前記軸方向(L)に相対移動可能に連結されていると好適である。
【0121】
この構成によれば、第1出力部材(81)が第1キャリヤ(C1)に対して軸方向(L)に相対移動可能に連結されるため、第1出力部材(81)と第1キャリヤ(C1)とが一体的に形成される場合等、第1出力部材(81)と第1キャリヤ(C1)とが軸方向(L)に相対移動不能な場合に比べて、第1出力部材(81)と第1キャリヤ(C1)との連結部(66a)における荷重の伝達を低減することができる。これにより、第1出力ギヤ(81a)が第1従動ギヤ(51a)から荷重を受けることに起因して第1出力部材(81)から第1キャリヤ(C1)に伝達される荷重を低減することができる。同様に、上記の構成によれば、第2出力部材(82)が第2キャリヤ(C2)に対して軸方向(L)に相対移動可能に連結されるため、第2出力ギヤ(82a)が第2従動ギヤ(52a)から荷重を受けることに起因して第2出力部材(82)から第2キャリヤ(C2)に伝達される荷重を低減することができる。この結果、第1キャリヤ(C1)や第2キャリヤ(C2)に要求される剛性を確保することが容易となり、第1遊星歯車機構(61)や第2遊星歯車機構(62)の小型化を図ることができる。
【0122】
上記の各構成の車両用駆動装置(1)において、前記ケース(3)の内部にそれぞれ配置された前記支持部材(40)である第1支持部材(41)及び第2支持部材(42)を備え、前記第1支持部材(41)に、前記第1入力部材(71)の支持部(41c)及び前記第1出力部材(81)の支持部(41b)が形成され、前記第2支持部材(42)に、前記第2入力部材(72)の支持部(42c)及び前記第2出力部材(82)の支持部(42b)が形成されていると好適である。
【0123】
この構成によれば、第1支持部材(41)に、第1入力部材(71)の支持部(41c)及び第1出力部材(81)の支持部(41b)の双方が形成されるため、これらの支持部(41c,41b)が互いに異なる支持部材に形成される場合に比べて、部品点数を少なく抑えることができると共に、第1入力部材(71)と第1出力部材(81)との相対位置の精度を確保することが容易となる。同様に、上記の構成によれば、第2支持部材(42)に、第2入力部材(72)の支持部(42c)及び第2出力部材(82)の支持部(42b)の双方が形成されるため、これらの支持部(42c,42b)が互いに異なる支持部材に形成される場合に比べて、部品点数を少なく抑えることができると共に、第2入力部材(72)と第2出力部材(82)との相対位置の精度を確保することが容易となる。
【0124】
上記のように前記車両用駆動装置(1)が前記第1支持部材(41)及び前記第2支持部材(42)を備える構成において、前記第1支持部材(41)と前記第1入力部材(71)との間に配置される軸受(B9)と、前記第1支持部材(41)と前記第1出力部材(81)との間に配置される軸受(B6)とが、前記第1軸(A1)を基準とする径方向(R)視で互いに重複するように配置され、前記第2支持部材(42)と前記第2入力部材(72)との間に配置される軸受(B12)と、前記第2支持部材(42)と前記第2出力部材(82)との間に配置される軸受(B7)とが、前記径方向(R)視で互いに重複するように配置されていると好適である。
【0125】
この構成によれば、第1支持部材(41)と第1入力部材(71)との間に配置される軸受(B9)と、第1支持部材(41)と第1出力部材(81)との間に配置される軸受(B6)とが、径方向(R)視で重複する分、伝達装置(2)が占有するスペースを軸方向(L)に小さくできる。また、上記の構成によれば、第2支持部材(42)と第2入力部材(72)との間に配置される軸受(B12)と、第2支持部材(42)と第2出力部材(82)との間に配置される軸受(B7)とが、径方向(R)視で重複する分、伝達装置(2)が占有するスペースを軸方向(L)に小さくできる。
【0126】
上記の各構成の車両用駆動装置(1)において、前記遊星歯車装置(60)は、第1遊星歯車機構(61)と第2遊星歯車機構(62)とを連結して構成され、前記第1入力部材(71)、前記第2入力部材(72)、前記第1出力部材(81)、及び前記第2出力部材(82)のそれぞれは、前記ケース(3)又は前記支持部材(40)により回転自在に支持され、前記第1遊星歯車機構(61)の回転要素と前記第2遊星歯車機構(62)の回転要素との連結部(63)が、前記第1軸(A1)を基準とする径方向(R)に隙間を有する連結構造となっていると好適である。
【0127】
この構成によれば、第1入力部材(71)、第2入力部材(72)、第1出力部材(81)、及び第2出力部材(82)のそれぞれが、ケース(3)又は支持部材(40)により回転自在に支持されるため、第1入力部材(71)に連結される第1回転要素(E1)、第2入力部材(72)に連結される第4回転要素(E4)、第1出力部材(81)に連結される第2回転要素(E2)、及び、第2出力部材(82)に連結される第3回転要素(E3)のそれぞれの支持精度を適切に確保することができる。その上で、上記の構成によれば、第1遊星歯車機構(61)の回転要素と第2遊星歯車機構(62)の回転要素との連結部(63)が、径方向(R)に隙間を有する連結構造となっているため、各部品の径方向(R)における寸法誤差や組付誤差を連結部(63)で吸収することができ、第1遊星歯車機構(61)や第2遊星歯車機構(62)におけるギヤの噛み合い部に過大な荷重(偏荷重等)が作用することを回避しやすくなる。
【0128】
また、前記遊星歯車装置(60)は、第1ピニオン軸受(B13)を介して第1ピニオンギヤ(P1)を回転自在に支持する第1キャリヤ(C1)を有する第1遊星歯車機構(61)と、第2ピニオン軸受(B14)を介して第2ピニオンギヤ(P2)を回転自在に支持する第2キャリヤ(C2)を有する第2遊星歯車機構(62)と、を備え、前記第1出力部材(81)は、前記第1キャリヤ(C1)に連結されると共に第1出力軸受(B6)を介して回転自在に支持され、前記第2出力部材(82)は、前記第2キャリヤ(C2)に連結されると共に第2出力軸受(B7)を介して回転自在に支持され、前記第1キャリヤ(C1)に、前記第1ピニオン軸受(B13)に油を供給するための油路(91)と、前記第1出力軸受(B6)に油を供給するための油路(92)とが形成され、前記第2キャリヤ(C2)に、前記第2ピニオン軸受(B14)に油を供給するための油路(93)と、前記第2出力軸受(B7)に油を供給するための油路(94)とが形成されていると好適である。
【0129】
この構成によれば、第1出力軸受(B6)に油を供給するための油路(92)が、第1ピニオン軸受(B13)に油を供給するための油路(91)と同様に第1キャリヤ(C1)に形成されるため、これらの油路(91,92)に対する油の供給構造を共通化して、油路構成の簡素化を図ることができる。同様に、上記の構成によれば、第2出力軸受(B7)に油を供給するための油路(94)が、第2ピニオン軸受(B14)に油を供給するための油路(93)と同様に第2キャリヤ(C2)に形成されるため、これらの油路(93,94)に対する油の供給構造を共通化して、油路構成の簡素化を図ることができる。
【0130】
本開示に係る車両用駆動装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。