特許第6848869号(P6848869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6848869化合物、樹脂、レジスト組成物又は感放射線性組成物、レジストパターン形成方法、アモルファス膜の製造方法、リソグラフィー用下層膜形成材料、リソグラフィー用下層膜形成用組成物、回路パターンの形成方法、及び、精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848869
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】化合物、樹脂、レジスト組成物又は感放射線性組成物、レジストパターン形成方法、アモルファス膜の製造方法、リソグラフィー用下層膜形成材料、リソグラフィー用下層膜形成用組成物、回路パターンの形成方法、及び、精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/96 20060101AFI20210315BHJP
   C07D 307/56 20060101ALI20210315BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20210315BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20210315BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   C07C69/96 ZCSP
   C07D307/56
   G03F7/039 601
   G03F7/004 501
   G03F7/11 503
   G03F7/11 502
【請求項の数】29
【全頁数】112
(21)【出願番号】特願2017-539209(P2017-539209)
(86)(22)【出願日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】JP2016076392
(87)【国際公開番号】WO2017043561
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年7月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-178545(P2015-178545)
(32)【優先日】2015年9月10日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】樋田 匠
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋子
(72)【発明者】
【氏名】牧野嶋 高史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104557552(CN,A)
【文献】 国際公開第2013/024778(WO,A1)
【文献】 特開2015−087115(JP,A)
【文献】 特開昭62−191850(JP,A)
【文献】 特表2015−514691(JP,A)
【文献】 米国特許第02587437(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表され、且つ、1、ヨウ素原子を含む基である化合物。
【化1】
(1)
(式(1)中、R1、芳香族基又は複素環基を有していてもよいメチレン基であり、R2〜R5は各々独立して、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基、水酸基又は水酸基の水素原子がアルコキシカルボニル基で置換された基であり、但し、R2〜R5から選ばれる少なくとも1つは水酸基の水素原子がアルコキシカルボニル基で置換された基であり、m2及びm3は各々独立して0〜8の整数であり、m4及びm5は、各々独立して0〜9の整数であり、但し、m2、m3、m4及びm5は同時に0となることはなく、nは1〜4の整数であり、p2〜p5は各々独立して0又は1である。)
【請求項2】
4及びR5からなる群より選ばれる少なくとも1つが、水酸基の水素原子がアルコキシカルボニル基で置換された基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
2及びR3からなる群より選ばれる少なくとも1つが、水酸基の水素原子がアルコキシカルボニル基で置換された基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1a)で表される化合物であり、且つ、R1が、ヨウ素原子を含む基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【化2】
(1a)
(式(1a)中、R1〜R5及びnは、前記式(1)で説明したものと同義であり、但し、R2〜R5からなる群より選ばれる少なくとも1つは水酸基の水素原子がアルコキシカルボニル基で置換された基であり、m2'及びm3'は各々独立して0〜4の整数であり、m4'及びm5'は各々独立して0〜5の整数であり、但し、m2'、m3'、m4'及びm5'は同時に0となることはない。)
【請求項5】
前記式(1a)で表される化合物が、下記式(1b)で表される化合物であり、且つ、R1が、ヨウ素原子を含む基である、請求項4に記載の化合物。
【化3】
(1b)
(式(1b)中、R1は前記式(1)で説明したものと同義であり、R6及びR7は各々独立して、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン原子又はチオール基であり、R8は、各々独立して水素原子又はアルコキシカルボニル基であり、但し、R8の少なくとも1つはアルコキシカルボニル基であり、m6及びm7は各々独立して0〜7の整数である。)
【請求項6】
前記式(1b)で表される化合物が、下記式(1c)で表される化合物であり、且つ、少なくとも一つのR9が、ヨウ素原子である、請求項5に記載の化合物。
【化4】
(1c)
(式(1c)中、R8は、前記式(1b)で説明したものと同義であり、R9は、各々独立して、水素原子、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基又は水酸基であり、但し、R8の少なくとも1つはアルコキシカルボニル基である。)
【請求項7】
前記式(1c)で表される化合物が、下記式(1d)で表される化合物である、請求項6に記載の化合物。
【化5】
(1d)
(式(1d)中、R8は、前記式(1b)で説明したものと同義であり、R10は各々独立して、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基又は水酸基であり、m9は0〜4の整数であり、但し、R8の少なくとも1つはアルコキシカルボニル基である。)
【請求項8】
請求項1に記載の化合物を構成成分として含む樹脂。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物及び/又は請求項8に記載の樹脂を含有する、レジスト組成物。
【請求項10】
溶媒をさらに含有する、請求項9に記載のレジスト組成物。
【請求項11】
酸発生剤をさらに含有する、請求項10に記載のレジスト組成物。
【請求項12】
酸拡散制御剤をさらに含有する、請求項10又は11に記載のレジスト組成物。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載のレジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、形成されたレジスト膜を露光する工程と、露光したレジスト膜を現像する工程とを含む、レジストパターン形成方法。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物及び/又は請求項8に記載の樹脂(A)、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)及び溶媒を含有する感放射線性組成物であって、該組成物中の溶媒の含有量が20〜99質量%であり、溶媒以外の成分の含有量が1〜80質量%である、感放射線性組成物。
【請求項15】
前記溶媒以外の成分が、前記化合物及び/又は前記樹脂(A)/前記ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)/任意成分(D)を、溶媒以外の成分基準の質量%で、1〜99/99〜1/0〜98含有する、請求項14に記載の感放射線性組成物。
【請求項16】
スピンコートによるアモルファス膜の形成に用いられる、請求項14又は15に記載の感放射線性組成物。
【請求項17】
請求項15〜16のいずれか一項に記載の感放射線性組成物を基板上に塗布する工程を含む、アモルファス膜の製造方法。
【請求項18】
請求項15〜16のいずれか一項に記載の感放射線性組成物を基板上に塗布してレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程及び露光した前記レジスト膜を現像する工程を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項19】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物及び/又は請求項8に記載の樹脂を含有する、リソグラフィー用下層膜形成材料。
【請求項20】
請求項19に記載のリソグラフィー用下層膜形成材料と溶媒とを含有する、リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項21】
酸発生剤をさらに含有する、請求項20に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項22】
架橋剤をさらに含有する、請求項20又は21に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれか一項に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて基板上に下層膜を形成する工程を含む、リソグラフィー用下層膜の製造方法。
【請求項24】
基板上に、請求項20〜22のいずれか一項に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程、前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う、レジストパターン形成方法。
【請求項25】
基板上に、請求項20〜22のいずれか一項に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成し、前記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成し、前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成し、その後、前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングし、得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングし、得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして前記基板をエッチングすることで前記基板にパターンを形成する、回路パターン形成方法。
【請求項26】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物及び/又は請求項8に記載の樹脂を、溶媒に溶解させて溶液(S)を得る工程と、
得られた溶液(S)と酸性の水溶液とを接触させて、前記化合物及び又は前記樹脂中の不純物を抽出する第一抽出工程とを含み、
前記溶液(S)を得る工程で用いる溶媒が、水と任意に混和しない溶媒を含む、精製方法。
【請求項27】
前記酸性の水溶液が、鉱酸水溶液又は有機酸水溶液であり、
前記鉱酸水溶液が、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の鉱酸水溶液であり、
前記有機酸水溶液が、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上の有機酸水溶液である、請求項26に記載の精製方法。
【請求項28】
前記水と任意に混和しない溶媒が、トルエン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び酢酸エチルからなる群より選ばれる1種以上の溶媒である、請求項26又は27に記載の精製方法。
【請求項29】
前記第一抽出工程後、前記化合物を含む溶液相を、さらに水に接触させて、前記化合物中の不純物を抽出する第二抽出工程を含む、請求項26〜28のいずれか一項に記載の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する化合物及び樹脂に関する。また、該化合物及び/又は該樹脂を含有するレジスト組成物、感放射線性組成物、該組成物を用いるレジストパターン形成方法、アモルファス膜の製造方法に関する。また、該化合物及び/又は樹脂を含有するリソグラフィー用下層膜形成材料、該材料を含むリソグラフィー用下層膜形成用組成物、該組成物を用いるレジストパターン形成方法又は回路パターン形成方法に関する。さらに、該化合物及び/又は該樹脂の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの一般的なレジスト材料は、アモルファス薄膜を形成可能な高分子系レジスト材料である。例えば、ポリメチルメタクリレート、酸解離性反応基を有するポリヒドロキシスチレン又はポリアルキルメタクリレート等の高分子系レジスト材料が挙げられる。そして、このような高分子系レジスト材料の溶液を基板上に塗布することにより作製したレジスト薄膜に紫外線、遠紫外線、電子線、極端紫外線(EUV)、X線などを照射することにより、45〜100nm程度のラインパターンを形成している。
【0003】
しかしながら、高分子系レジスト材料は分子量が1万〜10万程度と大きく、分子量分布も広いため、高分子系レジスト材料を用いるリソグラフィでは、微細パターン表面にラフネスが生じ、パターン寸法を制御することが困難となり、歩留まりが低下する。従って、従来の高分子系レジスト材料を用いるリソグラフィでは微細化に限界がある。これまでに、最先端の半導体製造用として、より解像性の高いレジストパターンを与える為のレジスト基材として、種々の低分子量レジスト材料が提案されている。低分子量レジスト材料は、低分子量であるため、分子サイズが小さく、解像性が高く、ラフネスが小さいレジストパターンを与えることが期待される。
【0004】
例えば、低分子量多核ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献1(特開2005−326838号公報)及び特許文献2(特開2008−145539号公報)参照)が提案されており、高耐熱性を有する低分子量レジスト材料の候補として、低分子量環状ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献3(特開2009−173623号公報)及び非特許文献1(T.Nakayama,M.Nomura,K.Haga,M.Ueda:Bull.Chem.Soc.Jpn.,71,2979(1998))参照)も提案されている。
【0005】
また、レジスト材料のベース化合物として、ポリフェノール化合物が、低分子量ながら高耐熱性を付与でき、レジストパターンの解像性やラフネスの改善に有用であることが知られている(例えば、非特許文献2(岡崎信次、他22名「フォトレジスト材料開発の新展開」株式会社シーエムシー出版、2009年9月、p.211−259)参照)。また、ポリカーボネート、ポリアリレート等の熱可塑性樹脂の原料、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の原料、硬化剤、改質剤等として種々のポリフェノールが用いられている(例えば、特許文献4(特開2006−213634号公報)〜特許文献5(特開2007−326847号公報)参照)。
【0006】
さらに、樹脂原料や樹脂硬化剤として、多価フェノール等で置換することにより、種々の特性(光学特性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐薬品性、電気特性、機械特性、寸法安定性等)を向上させたカルド構造を有するフルオレン化合物が知られている(例えば、特許文献6(特開2006−36648号公報)、特許文献7(特開2009−155256号公報)、特許文献8(特開2011−68624号公報)、特許文献9(特開2011−105887号公報)参照)。
【0007】
また、半導体、LCDや太陽電池を製造する際のリソグラフィーにおいては、ナフトキノンジアジド化合物等のキノンジアジド基を有する感光剤とアルカリ可溶性樹脂とが用いられる。このような組成からなるポジ型フォトレジストはアルカリ溶液による現像によって高い解像力を示し、IC、LSI等の半導体製造、LCD等の回路基材の製造に利用されている。
【0008】
例えば、低分子量多核ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型の化学増幅ポジ型感放射線性組成物(例えば、特許文献10(特開2005−266741号公報)参照)、低分子量環状ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型の化学増幅ポジ型感放射線性組成物(例えば、特許文献11(特開2012−83731号公報)参照)が提案されている。
【0009】
一方、半導体デバイスの製造において、フォトレジスト材料を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われているが、近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールによる更なる微細化が求められている。そして、現在汎用技術として用いられている光露光を用いたリソグラフィーにおいては、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。
【0010】
レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源は、KrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化されている。しかしながら、レジストパターンの微細化が進むと、解像度の問題若しくは現像後にレジストパターンが倒れるといった問題が生じてくるため、レジストの薄膜化が望まれるようになる。ところが、単にレジストの薄膜化を行うと、基板加工に十分なレジストパターンの膜厚を得ることが難しくなる。そのため、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間にレジスト下層膜を作製し、このレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきた。
【0011】
現在、このようなプロセス用のレジスト下層膜として、種々のものが知られている。例えば、従来のエッチング速度の速いレジスト下層膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、所定のエネルギーが印加されることにより末端基が脱離してスルホン酸残基を生じる置換基を少なくとも有する樹脂成分と溶媒とを含有する多層レジストプロセス用下層膜形成材料が提案されている(特許文献12(特開2004−177668号公報)参照)。また、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、特定の繰り返し単位を有する重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献13(特開2004−271838号公報)参照)。さらに、半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、アセナフチレン類の繰り返し単位と、置換又は非置換のヒドロキシ基を有する繰り返し単位とを共重合してなる重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献14(特開2005−250434号公報)参照)。
【0012】
一方、この種のレジスト下層膜において高いエッチング耐性を持つ材料としては、メタンガス、エタンガス、アセチレンガスなどを原料に用いたCVDによって形成されたアモルファスカーボン下層膜がよく知られている。しかしながら、プロセス上の観点から、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスでレジスト下層膜を形成できるレジスト下層膜材料が求められている。
【0013】
また、本発明者らは、光学特性及びエッチング耐性に優れるとともに、溶媒に可溶で湿式プロセスが適用可能な材料として、特定の構成単位を含むナフタレンホルムアルデヒド重合体及び有機溶媒を含有するリソグラフィー用下層膜形成組成物(特許文献15(国際公開第2009/072465)及び特許文献16(国際公開第2011/034062)を参照。)を提案している。
【0014】
なお、3層プロセスにおけるレジスト下層膜の形成において用いられる中間層の形成方法に関しては、例えば、シリコン窒化膜の形成方法(特許文献17(特開2002−334869号公報)参照)や、シリコン窒化膜のCVD形成方法(特許文献18(国際公開第2004/066377)参照)が知られている。また、3層プロセス用の中間層材料としては、シルセスキオキサンベースの珪素化合物を含む材料が知られている(特許文献19(特開2007−226170号公報)及び特許文献20(特開2007−226204号公報)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−326838号公報
【特許文献2】特開2008−145539号公報
【特許文献3】特開2009−173623号公報
【特許文献4】特開2006−213634号公報
【特許文献5】特開2007−326847号公報
【特許文献6】特開2006−36648号公報
【特許文献7】特開2009−155256号公報
【特許文献8】特開2011−68624号公報
【特許文献9】特開2011−105887号公報
【特許文献10】特開2005−266741号公報
【特許文献11】特開2012−83731号公報
【特許文献12】特開2004−177668号公報
【特許文献13】特開2004−271838号公報
【特許文献14】特開2005−250434号公報
【特許文献15】国際公開第2009/072465
【特許文献16】国際公開第2011/034062
【特許文献17】特開2002−334869号公報
【特許文献18】国際公開第2004/066377
【特許文献19】特開2007−226170号公報
【特許文献20】特開2007−226204号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】T.Nakayama,M.Nomura,K.Haga,M.Ueda:Bull.Chem.Soc.Jpn.,71,2979(1998)
【非特許文献2】岡崎信次、他22名「フォトレジスト材料開発の新展開」株式会社シーエムシー出版、2009年9月、p.211−259
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、前記特許文献1や2の組成物は耐熱性が十分では無く、得られるレジストパターンの形状が悪くなるおそれがあり、前記特許文献3や非特許文献1の組成物は、半導体製造プロセスに用いられる安全溶媒に対する溶解性が十分でなく、また、感度も十分でなく、得られるレジストパターン形状が悪くなる場合があり、低分子量レジスト材料のさらなる改良が望まれている。
また、前記特許文献4及び5や非特許文献2には溶解性について記載がなく、記載された化合物の耐熱性はいまだ十分ではなく、耐熱性、耐水性、耐薬品性、電気特性、機械特性等の諸特性の一段の向上が求められている。
また、前記特許文献6〜9のアルコール化合物では耐熱性等の特性が十分ではなく、さらに耐熱性が改良されたアルコール化合物が望まれている。
また、特許文献10及び11に記載の組成物は、形成されるレジストパターンのラフネスが大きく、更なる感放射線性組成物の改良が望まれている。
【0018】
さらに、上述したように、従来数多くのリソグラフィー用下層膜形成材料が提案されているが、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが適用可能な高い溶媒溶解性を有するのみならず、耐熱性及びエッチング耐性を高い次元で両立させたものはなく、新たな材料の開発が求められている。
【0019】
本発明の目的は、安全溶媒に対する溶解性が高く、耐熱性が高い化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂を提供することにある。また、レジストパターン形状を付与できるレジスト組成物、ラフネスの小さな良好なレジストパターンを与える感放射線性組成物及び該組成物を用いるレジストパターン形成方法、アモルファス膜の製造方法を提供することにある。
また、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れるフォトレジスト下層膜を形成するために有用な、リソグラフィー用下層膜形成材料、リソグラフィー用下層膜形成用組成物及び該材料を用いたパターン形成方法(レジストパターン形成方法及び回路パターン形成方法)を提供することにある。
さらに、上述の化合物又は樹脂に好適な、精製方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有する化合物又は樹脂を用いることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、次のとおりである。
<1> 下記式(1)で表される化合物。
【化1】

(1)
(式(1)中、Rは炭素数1〜60の2n価の基又は単結合であり、R〜Rは各々独立して、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基、水酸基又は水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基であり、但し、R〜Rから選ばれる少なくとも1つは水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基であり、m及びmは各々独立して0〜8の整数であり、m及びmは、各々独立して0〜9の整数であり、但し、m、m、m及びmは同時に0となることはなく、nは1〜4の整数であり、p〜pは各々独立して0〜2の整数である。)
<2> R及びRからなる群より選ばれる少なくとも1つが、水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基である、前記<1>に記載の化合物。
<3> R及びRからなる群より選ばれる少なくとも1つが、水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基である、前記<1>又は<2>に記載の化合物。
<4> R〜Rからなる群より選ばれる少なくとも1つが、ヨウ素原子を含む基である、前記<1>〜<3>のいずれか一つに記載の化合物。
<5> 前記式(1)で表される化合物が、下記式(1a)で表される化合物である、前記<1>〜<4>のいずれか一つに記載の化合物。
【化2】

(1a)
(式(1a)中、R〜R及びnは、前記式(1)で説明したものと同義であり、但し、R〜Rからなる群より選ばれる少なくとも1つは水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基であり、m2’及びm3’は各々独立して0〜4の整数であり、m4’及びm5’は各々独立して0〜5の整数であり、但し、m2’、m3’、m4’及びm5’は同時に0となることはない。)
<6> 前記式(1a)で表される化合物が、下記式(1b)で表される化合物である、前記<5>に記載の化合物。
【化3】

(1b)
(式(1b)中、Rは前記式(1)で説明したものと同義であり、R及びRは各々独立して、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン原子又はチオール基であり、Rは、各々独立して水素原子又は酸解離性基であり、但し、Rの少なくとも1つは酸解離性基であり、m及びmは各々独立して0〜7の整数である。)
<7> 前記式(1b)で表される化合物が、下記式(1c)で表される化合物である、前記<6>に記載の化合物。
【化4】

(1c)
(式(1c)中、Rは、前記式(1b)で説明したものと同義であり、Rは、各々独立して、水素原子、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基又は水酸基であり、但し、Rの少なくとも1つは酸解離性基である。)
<8> 前記式(1c)で表される化合物が、下記式(1d)で表される化合物である、前記<7>に記載の化合物。
【化5】

(1d)
(式(1d)中、Rは、前記式(1b)で説明したものと同義であり、R10は各々独立して、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基又は水酸基であり、mは0〜4の整数であり、但し、Rの少なくとも1つは酸解離性基である。)
<9> 前記<1>に記載の化合物を構成成分として含む樹脂。
<10> 前記<1>〜<8>のいずれか一つに記載の化合物及び/又は前記<9>に記載の樹脂を含有する、レジスト組成物。
<11> 溶媒をさらに含有する、前記<10>に記載のレジスト組成物。
<12> 酸発生剤をさらに含有する、前記<11>に記載のレジスト組成物。
<13> 酸拡散制御剤をさらに含有する、前記<11>又は<12>に記載のレジスト組成物。
<14> 前記<10>〜<13>のいずれか一つに記載のレジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、形成されたレジスト膜を露光する工程と、露光したレジスト膜を現像する工程とを含む、レジストパターン形成方法。
<15> 前記<1>〜<8>のいずれか一つに記載の化合物及び/又は前記<9>に記載の樹脂(A)、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)及び溶媒を含有する感放射線性組成物であって、該組成物中の溶媒の含有量が20〜99質量%であり、溶媒以外の成分の含有量が1〜80質量%である、感放射線性組成物。
<16> 前記溶媒以外の成分が、前記化合物及び/又は前記樹脂(A)/前記ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)/任意成分(D)を、溶媒以外の成分基準の質量%で、1〜99/99〜1/0〜98含有する、前記<15>に記載の感放射線性組成物。
<17> スピンコートによるアモルファス膜の形成に用いられる、前記<15>又は<16>に記載の感放射線性組成物。
<18> 前記<15>〜<17>のいずれか一つに記載の感放射線性組成物を基板上に塗布する工程を含む、アモルファス膜の製造方法。
<19> 前記<15>〜<17>のいずれか一つに記載の感放射線性組成物を基板上に塗布してレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程及び露光した前記レジスト膜を現像する工程を含む、レジストパターン形成方法。
<20> 前記<1>〜<8>のいずれか一つに記載の化合物及び/又は前記<9>に記載の樹脂を含有する、リソグラフィー用下層膜形成材料。
<21> 前記<20>に記載のリソグラフィー用下層膜形成材料と溶媒とを含有する、リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
<22> 酸発生剤をさらに含有する、前記<21>に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物。
<23> 架橋剤をさらに含有する、前記<21>又は<22>に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物。
<24> 前記<21>〜<23>のいずれか一つに記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて基板上に下層膜を形成する工程を含む、リソグラフィー用下層膜の製造方法。
<25> 基板上に、前記<21>〜<23>のいずれか一つに記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程、前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う、レジストパターン形成方法。
<26> 基板上に、前記<21>〜<23>のいずれか一つに記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成し、前記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成し、前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成し、その後、前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングし、得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングし、得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして前記基板をエッチングすることで前記基板にパターンを形成する、回路パターン形成方法。
<27> 前記<1>〜<8>のいずれか一つに記載の化合物及び/又は前記<9>に記載の樹脂を、溶媒に溶解させて溶液(S)を得る工程と、
得られた溶液(S)と酸性の水溶液とを接触させて、前記化合物及び又は前記樹脂中の不純物を抽出する工程(第一抽出工程)とを含み、
前記溶液(S)を得る工程で用いる溶媒が、水と任意に混和しない溶媒を含む、精製方法。
<28> 前記酸性の水溶液が、鉱酸水溶液又は有機酸水溶液であり、
前記鉱酸水溶液が、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の鉱酸水溶液であり、
前記有機酸水溶液が、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上の有機酸水溶液である、前記<27>に記載の精製方法。
<29> 前記水と任意に混和しない溶媒が、トルエン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び酢酸エチルからなる群より選ばれる1種以上の溶媒である、前記<27>又は<28>に記載の精製方法。
<30> 前記第一抽出工程後、前記化合物を含む溶液相を、さらに水に接触させて、前記化合物中の不純物を抽出する工程(第二抽出工程)含む、前記<27>〜<29>のいずれか一つに記載の精製方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、安全溶媒に対する溶解性が高く、耐熱性が高い化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂を提供することができる。また、レジストパターン形状を付与できるレジスト組成物、ラフネスの小さな良好なレジストパターンを与える感放射線性組成物及び該組成物を用いるレジストパターン形成方法、アモルファス膜の製造方法を提供することができる。
さらに、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れるフォトレジスト下層膜を形成するために有用な、リソグラフィー用下層膜形成材料、リソグラフィー用下層膜形成用組成物及び該材料を用いたパターン形成方法(レジストパターン形成方法及び回路パターン形成方法)を提供することができる。
さらに、上述の化合物又は樹脂に好適な、精製方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
[化合物]
本実施形態の化合物は、下記式(1)で表される。
【0023】
【化6】

(1)
【0024】
前記式(1)中、Rは炭素数1〜60の2n価の基又は単結合であり、このRを介して各々の芳香環が結合している。前記2n価の基とは、例えば、n=1のときには、炭素数1〜60のアルキレン基、n=2のときには、炭素数1〜60のアルカンテトライル基、n=3のときには、炭素数2〜60のアルカンヘキサイル基、n=4のときには、炭素数3〜60のアルカンオクタイル基のことを示す。前記2n価の基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有するもの等が挙げられる。ここで、脂環式炭化水素基については、有橋脂環式炭化水素基も含まれる。
【0025】
また、前記2n価の基は二重結合、ヘテロ原子、複素環基又は炭素数6〜30の芳香族基を有していてもよい。さらに、該複素環基はシアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基、水酸基又は水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基を有していてもよい。また、該芳香族基はシアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基、水酸基又は水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基を有していてもよい。
【0026】
〜Rは、各々独立して、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基、水酸基及び水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基からなる群より選ばれる基である。前記アルケニル基及びアルコキシ基も、直線状又は分岐状、環状構造を有していてもよい。式(1)で表される化合物は、R及びRからなる群より選ばれる少なくとも1つを、水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基であることが好ましい。また、R及びRからなる群より選ばれる少なくとも1つが、水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基であってもよい。
【0027】
但し、前記R〜Rから選ばれる少なくとも1つは、水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基である。
なお、本明細書において、「R〜Rから選ばれる少なくとも1つ」とは、「R〜Rから選ばれる少なくとも1個の基」を意味し、「R〜Rから選ばれる少なくとも1種の基」を意味するものではない。
【0028】
及びmは各々独立して0〜8の整数である。m及びmは各々独立して0〜9の整数である。但し、m、m、m及びmは同時に0となることはない。nは1〜4の整数である。p〜pは各々独立して0〜2の整数である。p=0の場合には式(1)でナフタレン構造で示される部位は、ベンゼン構造を示し、p=1の場合にはナフタレン構造を示し、p=2の場合にはアントラセン又はフェナントレン等の三環構造を示す。
【0029】
本明細書において「酸解離性基」とは、酸の存在下で開裂して、アルカリ可溶性基等の変化を生じる特性基をいう。アルカリ可溶性基としては、特に限定されないが、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、ヘキサフルオロイソプロパノール基などが挙げられ、フェノール性水酸基及びカルボキシル基が好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。前記酸解離性基としては、特に限定されないが、例えば、KrFやArF用の化学増幅型レジスト組成物に用いられるヒドロキシスチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂等において提案されているもののなかから適宜選択して用いることができる。具体的には、特に限定されないが、例えば、置換メチル基、1−置換エチル基、1−置換−n−プロピル基、1−分岐アルキル基、シリル基、アシル基、1−置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基などが挙げられる。前記酸解離性基は、架橋性官能基を有さないことが好ましい。
【0030】
置換メチル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2〜20の置換メチル基が挙げられ、炭素数4〜18の置換メチル基が好ましく、炭素数6〜16の置換メチル基がさらに好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、2−メチルプロポキシメチル基、エチルチオメチル基、メトキシエトキシメチル基、フェニルオキシメチル基、1−シクロペンチルオキシメチル基、1−シクロヘキシルオキシメチル基、ベンジルチオメチル基、フェナシル基、4−ブロモフェナシル基、4−メトキシフェナシル基、ピペロニル基、又は下記式(13−1)で表される置換基等を挙げることができる。なお、下記式(13−1)中のR2’としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基等が挙げられる。
【0031】
【化7】

(13−1)
(式(13−1)中、R2’は、炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0032】
1−置換エチル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数3〜20の1−置換エチル基が挙げられ、炭素数5〜18の1−置換エチル基が好ましく、炭素数7〜16の置換エチル基がさらに好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、1−メトキシエチル基、1−メチルチオエチル基、1,1−ジメトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−エチルチオエチル基、1,1−ジエトキシエチル基、n−プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、t−ブトキシエチル基、2−メチルプロポキシエチル基、1−フェノキシエチル基、1−フェニルチオエチル基、1,1−ジフェノキシエチル基、1−シクロペンチルオキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−フェニルエチル基、1,1−ジフェニルエチル基又は下記式(13−2)で表される置換基等を挙げることができる。
【0033】
【化8】

(13−2)
(式(13−2)中、R2’は、前記式(13−1)の場合と同様である。)
【0034】
1−置換−n−プロピル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数4〜20の1−置換−n−プロピル基が挙げられ、炭素数6〜18の1−置換−n−プロピル基が好ましく、炭素数8〜16の1−置換−n−プロピル基がさらに好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、1−メトキシ−n−プロピル基又は1−エトキシ−n−プロピル基等を挙げることができる。
【0035】
1−分岐アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数3〜20の1−分岐アルキル基が挙げられ、炭素数5〜18の1−分岐アルキル基が好ましく、炭素数7〜16の分岐アルキル基がさらに好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2−メチルアダマンチル基又は2−エチルアダマンチル基等を挙げることができる。
【0036】
シリル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜20のシリル基が挙げられ、炭素数3〜18のシリル基が好ましく、炭素数5〜16のシリル基がさらに好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジエチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基又はトリフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0037】
アシル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2〜20のアシル基が挙げられ、炭素数4〜18のアシル基が好ましく、炭素数6〜16のアシル基がさらに好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、アセチル基、フェノキシアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、アダマンチルカルボニル基、ベンゾイル基又はナフトイル基等を挙げることができる。
【0038】
1−置換アルコキシメチル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2〜20の1−置換アルコキシメチル基が挙げられ、炭素数4〜18の1−置換アルコキシメチル基が好ましく、炭素数6〜16の1−置換アルコキシメチル基がさらに好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、1−シクロペンチルメトキシメチル基、1−シクロペンチルエトキシメチル基、1−シクロヘキシルメトキシメチル基、1−シクロヘキシルエトキシメチル基、1−シクロオクチルメトキシメチル基又は1−アダマンチルメトキシメチル基等を挙げることができる。
【0039】
環状エーテル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2〜20の環状エーテル基が挙げられ、炭素数4〜18の環状エーテル基が好ましく、炭素数6〜16の環状エーテル基がさらに好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基又は4−メトキシテトラヒドロチオピラニル基等を挙げることができる。
【0040】
アルコキシカルボニル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が挙げられ、炭素数4〜18のアルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数6〜16のアルコキシカルボニル基がさらに好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基又は下記式(13−3)のn=0で表される酸解離性基等を挙げることができる。
【0041】
アルコキシカルボニルアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアルキル基が挙げられ、炭素数4〜18のアルコキシカルボニルアルキル基が好ましく、炭素数6〜16のアルコキシカルボニルアルキル基がさらに好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、n−プロポキシカルボニルメチル基、イソプロポキシカルボニルメチル基、n−ブトキシカルボニルメチル基又は下記式(13−3)のn=1〜4で表される酸解離性基等を挙げることができる。
【0042】
【化9】

(13−3)
(式(13−3)中、R’は水素原子又は炭素数1〜4の直鎖あるいは分岐アルキル基であり、nは0〜4の整数である。)
【0043】
これらの酸解離性基のうち、置換メチル基、1−置換エチル基、1−置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、アルコキシカルボニル基、及びアルコキシカルボニルアルキル基が好ましく、置換メチル基、1−置換エチル基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシカルボニルアルキル基が高感度であるためより好ましく、さらに炭素数3〜12のシクロアルカン、ラクトン及び6〜12の芳香族環から選ばれる構造を有する酸解離性基がより好ましい。炭素数3〜12のシクロアルカンとしては、単環でも多環でもよいが、多環であることがより好ましい。具体例には、特に限定されないが、例えば、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等が挙げられ、より具体的には、特に限定されないが、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロデカン等のポリシクロアルカンが挙げられる。これらの中でも、アダマンタン、トリシクロデカン、テトラシクロデカンが好ましく、特にアダマンタン、トリシクロデカンが好ましい。炭素数3〜12のシクロアルカンは置換基を有してもよい。ラクトンとしては、特に限定されないが、例えば、ブチロラクトン又はラクトン基を有する炭素数3〜12のシクロアルカン基が挙げられる。6〜12の芳香族環としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、特にナフタレン環が好ましい。
特に下記式(13−4)で表される各基からなる群から選ばれる酸解離性基が、解像性が高く好ましい。
【0044】
【化10】

(13−4)
(式(13−4)中、R’は、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐アルキル基であり、R’は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐アルキル基、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子又はカルボキシル基であり、nは0〜4の整数、nは1〜5の整数、nは0〜4の整数である。)
【0045】
前記式(1)で表される化合物は、露光時の感度の観点から、式(1)中、R〜Rからなる群より選択される少なくともひとつはヨウ素原子を含む基であることが好ましい。
なお、「R〜Rからなる群より選択される少なくともひとつ」とは、「R〜Rからなる群より選択される少なくとも1個の基」であることを意味し、「R〜Rからなる群より選択される少なくとも1種の基」であることを意味するものではない。
【0046】
ヨウ素原子を含む基とは、Rについては、特に限定されないが、例えば、ヨウ素原子で置換された炭素数1〜60の直鎖状炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の分岐状炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の脂環式炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の複素環基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の複素環基を有する基、ヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基又はヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基を有する基等が挙げられる。
耐熱性の点から、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の分岐状炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の脂環式炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の複素環基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の複素環基を有する基、ヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基又はヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基を有する基が好ましく、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の脂環式炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の複素環基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の複素環基を有する基、ヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基又はヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基を有する基がより好ましく、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の複素環基を有する基又はヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基を有する基がさらに好ましい。
【0047】
ヨウ素原子を含む基とは、R〜Rについては、特に限定されないが、例えば、ヨウ素原子、ヨウ素原子で置換された炭素数1〜6の直鎖状脂肪族炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜6の分岐状脂肪族炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜6の環状脂肪族炭化水素基、又はヨウ素原子で置換された炭素数6のアリール基等が挙げられる。安全溶媒に対する溶解性等の点から、前記ヨウ素原子を含む基は、ヨウ素原子、ヨウ素原子で置換された炭素数1〜6の直鎖状脂肪族炭化水素基又はヨウ素原子で置換された炭素数3〜6の分岐状脂肪族炭化水素基が好ましく、ヨウ素原子又はヨウ素原子で置換された炭素数1〜6の直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましい。ヨウ素原子がさらに好ましい。
【0048】
前記式(1)で表される化合物は、架橋のし易さ、更なる有機溶媒への溶解性および塗膜の欠陥低減の観点から、R及びRから選ばれる少なくともひとつが水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基であることが好ましく、R及びRから選ばれる少なくともひとつが水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基であることがより好ましい。
【0049】
また、前記式(1)で表される化合物は、原料の供給性の観点から、下記式(1a)で表される化合物であることがより好ましい。
【0050】
【化11】

(1a)
【0051】
式(1a)中、R〜R及びnは、前記式(1)で説明したものと同義である。但し、R〜Rからなる群より選ばれる少なくとも1つは水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基である。m2’及びm3’は各々独立して0〜4の整数であり、m4’及びm5’は各々独立して0〜5の整数であり、但し、m2’、m3’、m4’及びm5’は同時に0となることはない。
【0052】
前記式(1a)で表される化合物は、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1b)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0053】
【化12】

(1b)
【0054】
前記式(1b)中、Rは前記式(1)で説明したものと同義である。R及びRは各々独立して、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン原子又はチオール基である。Rは、各々独立して水素原子又は酸解離性基である。但し、Rの少なくとも1つは酸解離性基である。m及びmは各々独立して0〜7の整数である。
【0055】
前記式(1b)で表される化合物は、さらなる有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1c)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0056】
【化13】

(1c)
【0057】
前記式(1c)中、Rは、各々独立して水素原子又は酸解離性基である。但し、Rの少なくとも1つは酸解離性基である。Rは品質安定化の観点から、各々独立して、水素原子、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基又は水酸基である。
【0058】
前記式(1c)で表される化合物は、架橋のし易さ、更なる有機溶媒への溶解性および塗膜の欠陥低減の観点の観点から、下記式(1d)で表される化合物であることが特に好ましい。
【化14】

(1d)
【0059】
前記式(1d)中、Rは、各々独立して水素原子又は酸解離性基である。但し、Rの少なくとも一つは酸解離性基である。R10は各々独立して、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基又は水酸基である。mは0〜4の整数である。
【0060】
以下に、前記式(1)で表される化合物の具体例を例示するが、ここで列挙した限りではない。
【0061】
【化15】
【0062】
【化16】
【0063】
【化17】
【0064】
【化18】
【0065】
【化19】
【0066】
【化20】
【0067】
【化21】
【0068】
【化22】
【0069】
【化23】
【0070】
前記化合物中、R〜R、m〜mは、前記式(1)で説明したものと同義である。但し、m、m、m及びmは同時に0となることはなく、R〜Rから選ばれる少なくとも1つは水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基である。
【0071】
【化24】
【0072】
【化25】
【0073】
【化26】
【0074】
【化27】
【0075】
【化28】
【0076】
【化29】
【0077】
前記化合物中、R〜Rは、前記式(1)で説明したものと同義である。m2’及びm3’は各々独立して0〜4の整数であり、m4’及びm5’は各々独立して0〜5の整数である。但し、m4’及びm5’は同時に0となることはなく、R〜Rから選ばれる少なくとも1つは水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基である。
【0078】
【化30】
【0079】
【化31】
【0080】
【化32】
【0081】
前記化合物中、R〜R、m〜mは、前記式(1)で説明したものと同義である。但し、m、m、m及びmは同時に0となることはなく、R〜Rから選ばれる少なくとも1つは水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基である。
【0082】
【化33】
【0083】
【化34】
【0084】
【化35】
【0085】
【化36】
【0086】
前記化合物中、R〜Rは、前記式(1)で説明したものと同義である。m2’及びm3’は各々独立して0〜4の整数であり、m4’及びm5’は各々独立して0〜5の整数である。但し、m4’及びm5’は同時に0となることはなく、R〜Rから選ばれる少なくとも1つは水酸基の水素原子が酸解離性基で置換された基である。
【0087】
【化37】
【0088】
【化38】
【0089】
【化39】
【0090】
【化40】
【0091】
【化41】
【0092】
【化42】
【0093】
【化43】
【0094】
【化44】
【0095】
前記化合物中、Rは、各々独立して水素原子又は酸解離性基である。但し、Rの少なくとも1つは酸解離性基である。
【0096】
【化45】
【0097】
【化46】
【0098】
【化47】
【0099】
【化48】
【0100】
【化49】
【0101】
【化50】
【0102】
【化51】
【0103】
【化52】
【0104】
【化53】
【0105】
【化54】
【0106】
【化55】
【0107】
【化56】
【0108】
前記化合物中、Rは、各々独立して水素原子又は酸解離性基である。但し、Rの少なくとも1つは酸解離性基である。
【0109】
[式(1)で表される化合物の製造方法]
本実施形態の式(1)で表される化合物は、公知の手法を応用して適宜合成することができ、その合成手法は特に限定されない。例えば、常圧下、ビフェノール類、ビチオフェノール類、ビナフトール類、ビチオナフトール類又はビアントラセンオール類からなる群より選ばれる1種以上の化合物(A1)と、アルデヒド類及びケトン類からなる群より選ばれる1種以上の化合物(A2)とを酸触媒下にて重縮合反応させることによって、式(1)で表される化合物の前駆体となる化合物(式(1)においてR〜Rからなる群より選ばれる少なくとも1つが水酸基を有する化合物)を得ることができる。また、必要に応じて、加圧下で行うこともできる。
【0110】
前記ビフェノール類としては、例えば、ビフェノール、メチルビフェノール、メトキシビナフトール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのなかでも、ビフェノールを用いることが原料の安定供給性の点でより好ましい。
【0111】
前記ビチオフェノール類としては、例えば、ビチオフェノール、メチルビチオフェノール、メトキシビチオフェノール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのなかでも、ビチオフェノールを用いることが原料の安定供給性の点でより好ましい。
【0112】
前記ビナフトール類としては、例えば、ビナフトール、メチルビナフトール、メトキシビナフトール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのなかでも、ビナフトールを用いることが、炭素原子濃度を上げ、耐熱性を向上させる点でより好ましい。
【0113】
前記ビチオナフトール類としては、例えば、ビチオナフトール、メチルビチオナフトール、メトキシビチオナフトール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのなかでも、ビチオナフトールを用いることが、炭素原子濃度を上げ、耐熱性を向上させる点でより好ましい。
前記ビアントラセンオール類としては、例えば、ビアントラセンオール、メチルビアントラセンオール、メトキシビアントラセンオール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのなかでも、ビアントラセンオールを用いることが、炭素原子濃度を上げ、耐熱性を向上させる点でより好ましい。
【0114】
前記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、フルオロベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、プロピルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、フルオロベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、プロピルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボキシアルデヒド、フェナントレンカルボキシアルデヒド、ピレンカルボキシアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、ナフタレンジカルボキシアルデヒド、ビフェニルジカルボキシアルデヒド、アントラセンジカルボキシアルデヒド、ビス(ジホルミルフェニル)メタン、ビス(ジホルミルフェニル)プロパン、ベンゼントリカルボキシアルデヒドを用いることが、高い耐熱性を与える点で好ましい。
【0115】
前記アルデヒド類として好適な化合物は、1〜4個のホルミル基及びヨウ素原子を含む基を有する炭素数が2〜59の化合物であり、芳香族アルデヒド化合物と脂肪族アルデヒド化合物等から選択される。前記芳香族アルデヒド化合物としては、炭素数7〜24のアルデヒド化合物が好ましく、例えば、ヨードベンズアルデヒド、メチルヨードベンズアルデヒド、ジメチルヨードベンズアルデヒド、エチルヨードベンズアルデヒド、プロピルヨードベンズアルデヒド、ブチルヨードベンズアルデヒド、エチルメチルヨードベンズアルデヒド、イソプロピルメチルヨードベンズアルデヒド、ジエチルヨードベンズアルデヒド、メトキシヨードベンズアルデヒド、ヨードナフトアルデヒド、ヨードアントラアルデヒド、シクロプロピルヨードベンズアルデヒド、シクロブチルヨードベンズアルデヒド、シクロペンチルヨードベンズアルデヒド、シクロヘキシルヨードベンズアルデヒド、フェニルヨードベンズアルデヒド、ナフチルヨードベンズアルデヒド、アダマンチルヨードベンズアルデヒド、ノルボルニルヨードベンズアルデヒド、ラクチルヨードベンズアルデヒド、イソプロピルヨードベンズアルデヒド、ノルマルヨードベンズアルデヒド、ブロモヨードベンズアルデヒド、ジメチルアミノヨードベンズアルデヒド、ヒドロキシヨードベンズアルデヒド、ジヒドロキシヨードベンズアルデヒド、トリヒドロキシヨードベンズアルデヒド、5−ヨードバニリン等が挙げられ、ヨードベンズアルデヒド、メチルヨードベンズアルデヒド、ジメチルヨードベンズアルデヒド、エチルヨードベンズアルデヒド、5−ヨードバニリンがより好ましく、ヨードベンズアルデヒド又は5−ヨードバニリンがさらに好ましい。前記芳香族アルデヒド化合物は本発明の効果を損ねない範囲で炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、シアノ基、水酸基、ハロゲン等を有していてもよい。芳香族アルデヒド化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0116】
前記脂肪族アルデヒド化合物としては、炭素数3〜24の化合物が好ましく、例えば、ヨードプロパナール、ヨードイソプロパナール、ヨードブタナール、ヨードイソブタナール、ヨード‐t−ブタナール、ヨードペンタナール、ヨードイソペンタナール、ヨードネオペンタナール、ヨードヘキサナール、ヨードイソヘキサナール、ヨードオクタナール、ヨードデカナール、ヨードドデカナール、ヨードウンデセナール、ヨードシクロプロパンカルボキシアルデヒド、ヨードシクロブタンカルボキシアルデヒド、ヨードシクロヘキサンカルボキシアルデヒド等が挙げられ、ヨードイソブタナール、ヨード‐t−ブタナール、ヨードペンタナール、ヨードイソペンタナール、ヨードネオペンタナール、ヨードヘキサナール、ヨードイソヘキサナール、ヨードオクタナール、ヨードデカナール、ヨードドデカナール、ヨードウンデセナール、ヨードシクロプロパンカルボキシアルデヒド、ヨードシクロブタンカルボキシアルデヒド、ヨードシクロヘキサンカルボキシアルデヒドがより好ましく、ヨードオクタナール、ヨードデカナール、ヨードドデカナール、ヨードシクロヘキサンカルボキシアルデヒドがさらに好ましい。前記脂肪族アルデヒド化合物は本発明の効果を損ねない範囲で炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基、シアノ基、水酸基、ハロゲン原子等を有していてもよい。脂肪族アルデヒド化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0117】
また、カルバゾール−3−カルバルデヒド、N−メチルカルバゾール−3−カルバルデヒド、N−エチルカルバゾール−3−カルバルデヒド、N−プロピルカルバゾール−3−カルバルデヒド、N−(t−ブチル)カルバゾール−3−カルバルデヒド、N−ヒドロキシエチルカルバゾール−3−カルバルデヒド、N−シクロヘキシルカルバゾール−3−カルバルデヒド、N−フェニルカルバゾールー3−カルバルデヒド、4−ホルミルイミダゾール、1−メチル−4−ホルミルイミダゾール、2−メチル−4−ホルミルイミダゾール、2−ブチル−4−ホルミルイミダゾール、2−ヨード−4−ホルミルイミダゾール、5−ホルミルイミダゾール、1−メチル‐5−ホルミルイミダゾール、2−メチル−5−ホルミルイミダゾール、2−ブチル−5−ホルミルイミダゾール、2−ヨード−5−ホルミル2−ホルミルイミダゾール、2−フランカルボアルデヒド、5−ヨード−2−フランカルボアルデヒド等の複素環基を有するアルデヒド化合物も好適に用いられる。前記の複素環基を有するアルデヒド化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0118】
前記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ノルボルナノン、トリシクロヘキサノン、トリシクロデカノン、アダマンタノン、フルオレノン、ベンゾフルオレノン、アセナフテンキノン、アセナフテノン、アントラキノン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのなかでも、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ノルボルナノン、トリシクロヘキサノン、トリシクロデカノン、アダマンタノン、フルオレノン、ベンゾフルオレノン、アセナフテンキノン、アセナフテノン、アントラキノンを用いることが、高い耐熱性を与える点で好ましい。
【0119】
前記反応に用いる酸触媒については、公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されない。このような酸触媒としては、無機酸や有機酸が広く知られており、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸や、シュウ酸、マロン酸、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、蟻酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、或いはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらのなかでも、製造上の観点から、有機酸および固体酸が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫酸を用いることが好ましい。なお、酸触媒については、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、酸触媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01〜100質量部であることが好ましい。
【0120】
前記反応の際には、反応溶媒を用いてもよい。反応溶媒としては、用いるアルデヒド類又はケトン類と、ビフェノール類、ビチオフェノール類、ビナフトール類、ビチオナフトール類又はビアントラセンジオールとの反応が進行するものであれば、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、4−ブチロラクトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又はこれらの混合溶媒等が例示される。なお、溶媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0121】
また、これらの溶媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して0〜2000質量部の範囲であることが好ましい。さらに、前記反応における反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常10〜200℃の範囲である。
【0122】
本実施形態の式(1)で表される化合物の前駆体となる化合物を得るためには、反応温度は高い方が好ましく、具体的には60〜200℃の範囲が好ましい。なお、反応方法は、公知の手法を適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、ビフェノール類、ビチオフェノール類、ビナフトール類、ビチオナフトール類又はビアントラセンジオールと、アルデヒド類又はケトン類と、触媒とを一括で仕込む方法や、ビフェノール類、ビチオフェノール類、ビナフトール類、ビチオナフトール類又はビアントラセンジオールや、アルデヒド類又はケトン類を触媒存在下で滴下していく方法がある。重縮合反応終了後、得られた化合物の単離は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、系内に存在する未反応原料や触媒等を除去するために、反応釜の温度を130〜230℃ にまで上昇させ、1〜50mmHg程度で揮発分を除去する等の一般的手法を採ることにより、前駆体である化合物を得ることができる。
【0123】
好ましい反応条件としては、アルデヒド類又はケトン類1モルに対し、ビフェノール類、ビチオフェノール類、ビナフトール類、ビチオナフトール類又はビアントラセンジオールを1.0モル〜過剰量、及び酸触媒を0.001〜1モル使用し、常圧で、50〜150℃で20分〜100時間程度反応させることにより進行する。
【0124】
反応終了後、公知の方法により前駆体化合物を単離することができる。例えば、反応液を濃縮し、純水を加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離させ、得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトにより、副生成物と分離精製し、溶媒留去、濾過、乾燥を行って前記式(1)で表される化合物の前駆体を得ることができる。
【0125】
前記で得られた前駆体化合物に、公知の方法により、例えば、フェノール性水酸基の水素原子を酸解離性基に置換することで、目的物である前記式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0126】
フェノール性水酸基の水素原子を酸解離性基に置換する方法は特に限定されないが、例えば、以下のようにして、前記ポリフェノール化合物の少なくとも1つのフェノール性水酸基に酸解離性基を導入することができる。
酸解離性基を導入するための化合物は、公知の方法で合成もしくは容易に入手でき、例えば、酸クロライド、酸無水物、ジカーボネートなどの活性カルボン酸誘導体化合物、アルキルハライド、ビニルアルキルエーテル、ジヒドロピラン、ハロカルボン酸アルキルエステルなどが挙げられるが特に限定はされない。
【0127】
例えば、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の非プロトン性溶媒に前記の前駆体化合物を溶解又は懸濁させる。続いて、エチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル又はジヒドロピランを加え、ピリジニウム p−トルエンスルホナート等の酸触媒の存在下、常圧で、20〜60℃、6〜72時間反応させる。反応液をアルカリ化合物で中和し、蒸留水に加え白色固体を析出させた後、分離した白色固体を蒸留水で洗浄し、乾燥することにより式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0128】
また、アセトン、THF、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の非プロトン性溶媒に前駆体化合物を溶解又は懸濁させる。続いて、エチルクロロメチルエーテル等のアルキルハライド又はブロモ酢酸メチルアダマンチル等のハロカルボン酸アルキルエステルを加え、炭酸カリウム等のアルカリ触媒の存在下、常圧で、20〜110℃、6〜72時間反応させる。反応液を塩酸等の酸で中和し、蒸留水に加え白色固体を析出させた後、分離した白色固体を蒸留水で洗浄し、乾燥することにより式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0129】
本実施形態で使用する前記式(1)で表される化合物は単独でもよいが、2種以上混合することもできる。
【0130】
[樹脂]
本実施形態の樹脂は、前記式(1)で表される化合物を構成成分として含む樹脂であり、前記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を有する。
また、本実施形態の樹脂は、例えば、前記式(1)で表される化合物と架橋反応性のある化合物とを反応させることによって得られる。
【0131】
架橋反応性のある化合物としては、前記式(1)で表される化合物をオリゴマー化又はポリマー化し得るものである限り、公知のものを特に制限なく使用することができる。その具体例としては、例えば、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸ハライド、ハロゲン含有化合物、アミノ化合物、イミノ化合物、イソシアネート、不飽和炭化水素基含有化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0132】
本実施形態における樹脂の具体例としては、例えば、前記式(1)で表される化合物を架橋反応性のある化合物であるアルデヒドとの縮合反応等によってノボラック化した樹脂が挙げられる。
【0133】
ここで、前記式(1)で表される化合物をノボラック化する際に用いるアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、ホルムアルデヒドがより好ましい。なお、これらのアルデヒド類は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記アルデヒド類の使用量は、特に限定されないが、前記式(1)で表される化合物1モルに対して、0.2〜5モルが好ましく、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0134】
前記式(1)で表される化合物とアルデヒドとの縮合反応において、触媒を用いることもできる。ここで使用する酸触媒については、公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されない。このような酸触媒としては、無機酸や有機酸が広く知られており、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸や、シュウ酸、マロン酸、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、蟻酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、或いはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらのなかでも、製造上の観点から、有機酸および固体酸が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫酸が好ましい。なお、酸触媒については、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、酸触媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01〜100質量部であることが好ましい。但し、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどの非共役二重結合を有する化合物との共重合反応の場合は、必ずしもアルデヒド類は必要ない。
【0135】
前記式(1)で表される化合物とアルデヒドとの縮合反応において、反応溶媒を用いることもできる。この重縮合における反応溶媒としては、公知のものの中から適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はこれらの混合溶媒等が例示される。なお、溶媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0136】
また、これらの溶媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して0〜2000質量部の範囲であることが好ましい。さらに、反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常10〜200℃の範囲である。なお、反応方法は、公知の手法を適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、前記式(1)で表される化合物、アルデヒド類、触媒を一括で仕込む方法や、前記式(1)で表される化合物やアルデヒド類を触媒存在下で滴下していく方法がある。
【0137】
重縮合反応終了後、得られた化合物の単離は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、系内に存在する未反応原料や触媒等を除去するために、反応釜の温度を130〜230℃ にまで上昇させ、1〜50mmHg程度で揮発分を除去する等の一般的手法を採ることにより、目的物であるノボラック化した樹脂を得ることができる。
【0138】
ここで、本実施形態における樹脂は、前記式(1)で表される化合物の単独重合体であってもよいが、他のフェノール類との共重合体であってもよい。ここで共重合可能なフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、ブチルフェノール、フェニルフェノール、ジフェニルフェノール、ナフチルフェノール、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、ブチルカテコール、メトキシフェノール、メトキシフェノール、プロピルフェノール、ピロガロール、チモール等が挙げるが、これらに特に限定されない。
【0139】
また、本実施形態における樹脂は、上述した他のフェノール類以外に、重合可能なモノマーと共重合させたものであってもよい。かかる共重合モノマーとしては、例えば、ナフトール、メチルナフトール、メトキシナフトール、ジヒドロキシナフタレン、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルナエン、ピネン、リモネン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、本実施形態における樹脂は、前記式(1)で表される化合物と上述したフェノール類との2元以上の(例えば、2〜4元系)共重合体であっても、前記式(1)で表される化合物と上述した共重合モノマーとの2元以上(例えば、2〜4元系)共重合体であっても、前記式(1)で表される化合物と上述したフェノール類と上述した共重合モノマーとの3元以上の(例えば、3〜4元系)共重合体であってもよい。
【0140】
なお、本実施形態における樹脂の分子量は、特に限定されないが、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500〜30,000であることが好ましく、より好ましくは750〜20,000である。また、架橋効率を高めるとともにベーク中の揮発成分を抑制する観点から、本実施形態における樹脂は、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.2〜7の範囲内のものが好ましい。なお、前記Mnは、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0141】
[レジスト組成物]
本実施形態のレジスト組成物は、前記式(1)で表される化合物又は該化合物を構成成分として含む樹脂を含有する。また、本実施形態のレジスト組成物は、前記式(1)で表される化合物と該化合物を構成成分として含む樹脂の両方を含有してもよい。
【0142】
また、本実施形態のレジスト組成物は、溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等の乳酸エステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸n−ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチルプロピオン酸ブチル、3−メトキシ−3−メチル酪酸ブチル、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘキサノン(CHN)等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ラクトン等のラクトン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0143】
本実施の形態で使用される溶媒は、安全溶媒であることが好ましく、より好ましくは、PGMEA、PGME、CHN、CPN、2−ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくはPGMEA、PGME及びCHNから選ばれる少なくとも一種である。
【0144】
本実施の形態において、固形成分の量と溶媒との量は、特に限定されないが、固形成分の量と溶媒との合計質量100質量%に対して、固形成分1〜80質量%及び溶媒20〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは固形成分1〜50質量%及び溶媒50〜99質量%、さらに好ましくは固形成分2〜40質量%及び溶媒60〜98質量%であり、特に好ましくは固形成分2〜10質量%及び溶媒90〜98質量%である。
【0145】
本実施形態のレジスト組成物は、他の固形成分として、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。なお、本明細書において固形成分とは溶媒以外の成分をいう。
【0146】
以下、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)について説明する。
【0147】
[酸発生剤]
本実施形態のレジスト組成物において、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線及びイオンビームから選ばれるいずれかの放射線の照射により直接的又は間接的に酸を発生する酸発生剤(C)を一種以上含むことが好ましい。酸発生剤(C)の使用量は、固形成分全重量の0.001〜49質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。前記範囲内で使用することにより、高感度でかつ低エッジラフネスのパターンプロファイルが得られる。本発明では、系内に酸が発生すれば、酸の発生方法は限定されない。g線、i線などの紫外線の代わりにエキシマレーザーを使用すれば、より微細加工が可能であるし、また高エネルギー線として電子線、極端紫外線、X線、イオンビームを使用すればさらに微細加工が可能である。
【0148】
前記酸発生剤(C)としては、下記式(7−1)〜(7−6)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0149】
【化57】

(7−1)
【0150】
式(7−1)中、R13は、同一でも異なっていても良く、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状、分枝状若しくは環状アルキル基、直鎖状、分枝状若しくは環状アルコキシ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子であり;Xは、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基若しくはハロゲン置換アリール基を有するスルホン酸イオン又はハロゲン化物イオンである。
【0151】
前記式(7−1)で表される化合物は、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルトリルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジ−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル−4−t−ブトキシフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル−4−t−ブトキシフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(4−メトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(4−フルオロフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニル−p−トルエンスルホネート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム−2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム−2,4−ジフルオロベンゼンスルホネート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロベンゼンスルホネート、ジフェニルナフチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート及びシクロ(1,3−パーフルオロプロパンジスルホン)イミデートからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0152】
【化58】

(7−2)
【0153】
式(7−2)中、R14は、同一でも異なっていても良く、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状、分枝状若しくは環状アルキル基、直鎖状、分枝状若しくは環状アルコキシ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子を表す。Xは前記と同様である。
【0154】
前記式(7−2)で表される化合物は、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム p−トルエンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム−2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム−2,4−ジフルオロベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム p−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウム−2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム−2,4−ジフルオロベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムへキサフルオロベンゼンスルホネート、ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウム p−トルエンスルホネート、ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムベンゼンスルホネート及びジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネートからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0155】
【化59】

(7−3)
【0156】
式(7−3)中、Qはアルキレン基、アリーレン基又はアルコキシレン基であり、R15はアルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基又はハロゲン置換アリール基である。
【0157】
前記式(7−3)で表される化合物は、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)フタルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(n−オクタンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(パーフルオロベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(1−ナフタレンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−ナフタレンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エンー2,3−ジカルボキシイミド及びN−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ナフチルイミドからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0158】
【化60】

(7−4)
【0159】
式(7−4)中、R16は、同一でも異なっていても良く、それぞれ独立に、任意に置換された直鎖、分枝若しくは環状アルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたヘテロアリール基又は任意に置換されたアラルキル基である。
【0160】
前記式(7−4)で表される化合物は、ジフェニルジスルフォン、ジ(4−メチルフェニル)ジスルフォン、ジナフチルジスルフォン、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ジスルフォン、ジ(4−ヒドロキシフェニル)ジスルフォン、ジ(3−ヒドロキシナフチル)ジスルフォン、ジ(4−フルオロフェニル)ジスルフォン、ジ(2−フルオロフェニル)ジスルフォン及びジ(4−トルフルオロメチルフェニル)ジスルフォンからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0161】
【化61】

(7−5)
【0162】
式(7−5)中、R17は、同一でも異なっていても良く、それぞれ独立に、任意に置換された直鎖、分枝若しくは環状アルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたヘテロアリール基又は任意に置換されたアラルキル基である。
【0163】
前記式(7−5)で表される化合物は、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−4−メチルフェニルアセトニトリル及びα−(メチルスルホニルオキシイミノ)−4−ブロモフェニルアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0164】
【化62】

(7−6)
【0165】
式(7−6)中、R18は、同一でも異なっていても良く、それぞれ独立に、1以上の塩素原子及び1以上の臭素原子を有するハロゲン化アルキル基である。ハロゲン化アルキル基の炭素原子数は1〜5が好ましい。
【0166】
その他の酸発生剤として、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルアゾメチルスルホニル)デカンなどのビススルホニルジアゾメタン類、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−(ビストリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−(ビストリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどのハロゲン含有トリアジン誘導体等が挙げられる。
【0167】
前記酸発生剤のうち、芳香環を有する酸発生剤が好ましく、式(7−1)又は(7−2)で表され酸発生剤がより好ましい。式(7−1)又は(7−2)のXが、アリール基若しくはハロゲン置換アリール基を有するスルホン酸イオンを有する酸発生剤がさらに好ましく、アリール基を有するスルホン酸イオンを有する酸発生剤が特に好ましく、ジフェニルトリメチルフェニルスルホニウム p−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム p−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウム ノナフルオロメタンスルホナートが特に好ましい。該酸発生剤を用いることで、LERを低減することができる。
前記酸発生剤(C)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0168】
[酸架橋剤]
本実施形態において、酸架橋剤(G)を一種以上含むことが好ましい。酸架橋剤(G)とは、酸発生剤(C)から発生した酸の存在下で、式(1)で表される化合物を分子内又は分子間架橋し得る化合物である。このような酸架橋剤(G)としては、例えば式(1)で表される化合物を架橋し得る1種以上の基(以下、「架橋性基」という。)を有する化合物を挙げることができる。
【0169】
このような架橋性基の具体例としては、例えば(i)ヒドロキシ(C1−C6アルキル基)、C1−C6アルコキシ(C1−C6アルキル基)、アセトキシ(C1−C6アルキル基)等のヒドロキシアルキル基又はそれらから誘導される基;(ii)ホルミル基、カルボキシ(C1−C6アルキル基)等のカルボニル基又はそれらから誘導される基;(iii)ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジメチロールアミノメチル基、ジエチロールアミノメチル基、モルホリノメチル基等の含窒素基含有基;(iv)グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基等のグリシジル基含有基;(v)ベンジルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基等の、C1−C6アリルオキシ(C1−C6アルキル基)、C1−C6アラルキルオキシ(C1−C6アルキル基)等の芳香族基から誘導される基;(vi)ビニル基、イソプロペニル基等の重合性多重結合含有基等を挙げることができる。本発明の酸架橋剤(G)の架橋性基としては、ヒドロキシアルキル基、及びアルコキシアルキル基等が好ましく、特にアルコキシメチル基が好ましい。
【0170】
前記架橋性基を有する酸架橋剤(G)としては、特に限定されないが、例えば(i)メチロール基含有メラミン化合物、メチロール基含有ベンゾグアナミン化合物、メチロール基含有ウレア化合物、メチロール基含有グリコールウリル化合物、メチロール基含有フェノール化合物等のメチロール基含有化合物;(ii)アルコキシアルキル基含有メラミン化合物、アルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物、アルコキシアルキル基含有ウレア化合物、アルコキシアルキル基含有グリコールウリル化合物、アルコキシアルキル基含有フェノール化合物等のアルコキシアルキル基含有化合物;(iii)カルボキシメチル基含有メラミン化合物、カルボキシメチル基含有ベンゾグアナミン化合物、カルボキシメチル基含有ウレア化合物、カルボキシメチル基含有グリコールウリル化合物、カルボキシメチル基含有フェノール化合物等のカルボキシメチル基含有化合物;(iv)ビスフェノールA系エポキシ化合物、ビスフェノールF系エポキシ化合物、ビスフェノールS系エポキシ化合物、ノボラック樹脂系エポキシ化合物、レゾール樹脂系エポキシ化合物、ポリ(ヒドロキシスチレン)系エポキシ化合物等のエポキシ化合物等を挙げることができる。
【0171】
酸架橋剤(G)としては、さらに、フェノール性水酸基を有する化合物、並びにアルカリ可溶性樹脂中の酸性官能基に前記架橋性基を導入し、架橋性を付与した化合物及び樹脂を使用することができる。その場合の架橋性基の導入率は、フェノール性水酸基を有する化合物、及びアルカリ可溶性樹脂中の全酸性官能基に対して、通常、5〜100モル%、好ましくは10〜60モル%、さらに好ましくは15〜40モル%に調節される。前記範囲であると、架橋反応が十分起こり、残膜率の低下、パターンの膨潤現象や蛇行等が避けられるので好ましい。
【0172】
本実施形態において酸架橋剤(G)は、アルコキシアルキル化ウレア化合物若しくはその樹脂、又はアルコキシアルキル化グリコールウリル化合物若しくはその樹脂が好ましい。特に好ましい酸架橋剤(G)としては、下記式(8−1)〜(8−3)で表される化合物及びアルコキシメチル化メラミン化合物を挙げることができる(酸架橋剤(G1))。
【0173】
【化63】
【0174】
前記式(8−1)〜(8−3)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアシル基を表し;R〜R11はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、アルキル基又はアルコキシル基を表し;Xは、単結合、メチレン基又は酸素原子を表す。
【0175】
が表すアルキル基は、炭素数1〜6が好ましく、炭素数1〜3がより好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。Rが表すアシル基は、炭素数2〜6が好ましく、炭素数2〜4がより好ましく、例えばアセチル基、プロピオニル基が挙げられる。R〜R11が表すアルキル基は、炭素数1〜6が好ましく、炭素数1〜3がより好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。R〜R11が表すアルコキシル基は、炭素数1〜6が好ましく、炭素数1〜3がより好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられる。Xは単結合又はメチレン基であるのが好ましい。R〜R11、Xは、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子などで置換されていてもよい。複数個のR、R〜R11は、各々同一でも異なっていてもよい。
【0176】
式(8−1)で表される化合物として具体的には、例えば、以下に表される化合物等を挙げることができる。
【化64】
【0177】
式(8−2)で表される化合物として具体的には、例えば、N,N,N,N−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(エトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(n−プロポキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(イソプロポキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(n−ブトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N,N−テトラ(t−ブトキシメチル)グリコールウリル等を挙げることができる。この中で、特に、N,N,N,N−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリルが好ましい。
【0178】
式(8−3)で表される化合物として具体的には、例えば、以下に表される化合物等を挙げることができる。
【化65】
【0179】
アルコキシメチル化メラミン化合物として具体的には、例えば、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(メトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(エトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(n−プロポキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(イソプロポキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(n−ブトキシメチル)メラミン、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(t−ブトキシメチル)メラミン等を挙げることができる。この中で特に、N,N,N,N,N,N−ヘキサ(メトキシメチル)メラミンが好ましい。
前記酸架橋剤(G1)は、例えば尿素化合物又はグリコールウリル化合物、及びホルマリンを縮合反応させてメチロール基を導入した後、さらにメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール類でエーテル化し、次いで反応液を冷却して析出する化合物又はその樹脂を回収することで得られる。また前記酸架橋剤(G1)は、CYMEL(商品名、三井サイアナミッド製)、ニカラック(三和ケミカル(株)製)のような市販品としても入手することができる。
【0180】
また、他の特に好ましい酸架橋剤(G)として、分子内にベンゼン環を1〜6有し、ヒドロキシアルキル基及び/又はアルコキシアルキル基を分子内全体に2以上有し、該ヒドロキシアルキル基及び/又はアルコキシアルキル基が前記いずれかのベンゼン環に結合しているフェノール誘導体を挙げることができる(酸架橋剤(G2))。好ましくは、分子量が1500以下、分子内にベンゼン環を1〜6有し、ヒドロキシアルキル基及び/又はアルコキシアルキル基を合わせて2以上有し、該ヒドロキシアルキル基及び/又はアルコキシアルキル基が前記ベンゼン環のいずれか一、又は複数のベンゼン環に結合してなるフェノール誘導体を挙げることができる。
【0181】
ベンゼン環に結合するヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、及び2−ヒドロキシ−1−プロピル基などの炭素数1〜6のものが好ましい。ベンゼン環に結合するアルコキシアルキル基としては、炭素数2〜6のものが好ましい。具体的にはメトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、sec−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、2−メトキシエチル基又は2−メトキシ−1−プロピル基が好ましい。
【0182】
これらのフェノール誘導体のうち、特に好ましいものを以下に挙げる。
【0183】
【化66】
【0184】
【化67】
【0185】
【化68】
【0186】
【化69】
【0187】
【化70】
【0188】
【化71】
【0189】
前記式中、L〜Lは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基又はエトキシメチル基を表す。ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有さないフェノール化合物(前記式においてL〜Lが水素原子である化合物)とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させることによって得ることができる。この際、樹脂化やゲル化を防ぐために、反応温度を60℃以下で行うことが好ましい。具体的には、特開平6−282067号公報、特開平7−64285号公報等に記載されている方法にて合成することができる。
アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体とアルコールを酸触媒下で反応させることによって得ることができる。この際、樹脂化やゲル化を防ぐために、反応温度を100℃以下で行うことが好ましい。具体的には、EP632003A1等に記載されている方法にて合成することができる。
【0190】
このようにして合成されたヒドロキシメチル基及び/又はアルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は、保存時の安定性の点で好ましいが、アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は保存時の安定性の観点から特に好ましい。酸架橋剤(G2)は、単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0191】
また、他の特に好ましい酸架橋剤(G)として、少なくとも一つのα−ヒドロキシイソプロピル基を有する化合物を挙げることができる(酸架橋剤(G3))。α−ヒドロキシイソプロピル基を有する限り、その構造に特に限定はない。また、前記α−ヒドロキシイソプロピル基中のヒドロキシル基の水素原子を1種以上の酸解離性基(R−COO−基、R−SO−基等、Rは、炭素数1〜12の直鎖状炭化水素基、炭素数3〜12の環状炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の1−分岐アルキル基及び炭素数6〜12の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる置換基を表す)で置換されていてもよい。前記α−ヒドロキシイソプロピル基を有する化合物としては、例えば、少なくとも1つのα−ヒドロキシイソプロピル基を含有する置換又は非置換の芳香族系化合物、ジフェニル化合物、ナフタレン化合物、フラン化合物等の1種又は2種以上が挙げられる。具体的には、例えば、下記式(9−1)で表される化合物(以下、「ベンゼン系化合物(1)」という。)、下記式(9−2)で表される化合物(以下、「ジフェニル系化合物(2)」という。)、下記式(9−3)で表される化合物(以下、「ナフタレン系化合物(3」という。)、及び下記式(9−4)で表される化合物(以下、「フラン系化合物(4)」という。)等が挙げられる。
【0192】
【化72】
【0193】
前記式(9−1)〜(9−4)中、各Aは独立にα−ヒドロキシイソプロピル基又は水素原子を表し、かつ少なくとも1のAがα−ヒドロキシイソプロピル基である。また、式(9−1)中、R51は水素原子、ヒドロキシル基、炭素数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルカルボニル基又は炭素数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシカルボニル基を表す。さらに、式(9−2)中、R52は単結合、炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、−O−、−CO−又は−COO−を表す。また、式(9−4)中、R53及びR54は、相互に独立に水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表す。
【0194】
前記ベンゼン系化合物(1)として具体的には、例えば、α−ヒドロキシイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、1,2,4−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、1,3,5−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン等のα−ヒドロキシイソプロピルベンゼン類;3−α−ヒドロキシイソプロピルフェノール、4−α−ヒドロキシイソプロピルフェノール、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェノール、2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェノール等のα−ヒドロキシイソプロピルフェノール類;3−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル・メチルケトン、4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル・メチルケトン、4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル・エチルケトン、4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル・n−プロピルケトン、4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル・イソプロピルケトン、4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル・n−ブチルケトン、4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル・t−ブチルケトン、4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル・n−ペンチルケトン、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル・メチルケトン、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル・エチルケトン、2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル・メチルケトン等のα−ヒドロキシイソプロピルフェニル・アルキルケトン類;3−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸メチル、4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸メチル、4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸エチル、4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸n−プロピル、4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸イソプロピル、4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸n−ブチル、4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸t−ブチル、4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸n−ペンチル、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸メチル、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸エチル、2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸メチル等の4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸アルキル類等が挙げられる。
【0195】
また、前記ジフェニル系化合物(2)として具体的には、例えば、3−α−ヒドロキシイソプロピルビフェニル、4−α−ヒドロキシイソプロピルビフェニル、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ビフェニル、3,3’−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ビフェニル、3,4’−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ビフェニル、4,4’−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ビフェニル、2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ビフェニル、3,3’,5−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ビフェニル、3,4’,5−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ビフェニル、2,3’,4,6,−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ビフェニル、2,4,4’,6,−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ビフェニル、2,3’,4,5’,6−ペンタキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ビフェニル、2,2’,4,4’,6,6’−ヘキサキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ビフェニル等のα−ヒドロキシイソプロピルビフェニル類;3−α−ヒドロキシイソプロピルジフェニルメタン、4−α−ヒドロキシイソプロピルジフェニルメタン、1−(4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル)−2−フェニルエタン、1−(4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル)−2−フェニルプロパン、2−(4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル)−2−フェニルプロパン、1−(4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル)−3−フェニルプロパン、1−(4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル)−4−フェニルブタン、1−(4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル)−5−フェニルペンタン、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピルジフェニルメタン、3,3’−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルメタン、3,4’−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルメタン、1,2−ビス(4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル)エタン、1,2−ビス(4−α−ヒドロキシプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−α−ヒドロキシプロピルフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−α−ヒドロキシプロピルフェニル)プロパン、2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルメタン、3,3’,5−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルメタン、3,4’,5−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルメタン、2,3’,4,6−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルメタン、2,4,4’,6−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルメタン、2,3’,4,5’,6−ペンタキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルメタン、2,2’,4,4’,6,6’−ヘキサキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルメタン等のα−ヒドロキシイソプロピルジフェニルアルカン類;3−α−ヒドロキシイソプロピルジフェニルエーテル、4−α−ヒドロキシイソプロピルジフェニルエーテル、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルエーテル、3,3’−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルエーテル、3,4’−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルエーテル、2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルエーテル、3,3’,5−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルエーテル、3,4’,5−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルエーテル、2,3’ ,4,6−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルエーテル、2,4,4’,6−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルエーテル、2,3’,4,5’,6−ペンタキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルエーテル、2,2’,4,4’,6,6’−ヘキサキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルエーテル等のα−ヒドロキシイソプロピルジフェニルエーテル類;3−α−ヒドロキシイソプロピルジフェニルケトン、4−α−ヒドロキシイソプロピルジフェニルケトン、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルケトン、3,3’−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルケトン、3,4’−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルケトン、4,4’−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルケトン、2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルケトン、3,3’,5−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルケトン、3,4’,5−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルケトン、2,3’,4,6−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルケトン、2,4,4’,6−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルケトン、3,3’,5,5’−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルケトン、2,3’,4,5’,6−ペンタキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルケトン、2,2’,4,4’,6,6’−ヘキサキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ジフェニルケトン等のα−ヒドロキシイソプロピルジフェニルケトン類;3−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸フェニル、4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸フェニル、安息香酸3−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル、安息香酸4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸フェニル、3−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸3−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル、3−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル、4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸3−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル、4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル、安息香酸3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル、2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸フェニル、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸3−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル、3−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル、4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル、安息香酸2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル、2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸3−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル、2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸4−α−ヒドロキシイソプロピルフェニル、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル、3−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル、4−α−ヒドロキシイソプロピル安息香酸2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル、2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル、3,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル、2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)安息香酸2,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)フェニル等のα−ヒドロキシイソプロピル安息香酸フェニル類等が挙げられる。
【0196】
さらに、前記ナフタレン系化合物(3)として具体的には、例えば、1−(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、2−(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、1,5−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、1,6−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、1,7−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、2,6−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、2,7−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、1,3,5−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、1,3,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、1,3,7−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、1,4,6−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、1,4,7−トリス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン、1,3,5,7−テトラキス(α−ヒドロキシイソプロピル)ナフタレン等が挙げられる。
【0197】
また、前記フラン系化合物(4)として具体的には、例えば、3−(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、2−メチル−3−(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、2−メチル−4−(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、2−エチル−4−(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、2−n−プロピル−4−(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、2−イソプロピル−4−(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、2−n−ブチル−4−(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、2−t−ブチル−4−(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、2−n−ペンチル−4−(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、2,5−ジメチル−3−(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、2,5−ジエチル−3−(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、3,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、2,5−ジメチル−3,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン、2,5−ジエチル−3,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)フラン等を挙げることができる。
【0198】
前記酸架橋剤(G3)としては、遊離のα−ヒドロキシイソプロピル基を2以上有する化合物が好ましく、α−ヒドロキシイソプロピル基を2以上有する前記ベンゼン系化合物(1)、α−ヒドロキシイソプロピル基を2以上有する前記ジフェニル系化合物(2)、α−ヒドロキシイソプロピル基を2個以上有する前記ナフタレン系化合物(3)がさらに好ましく、α−ヒドロキシイソプロピル基を2個以上有するα−ヒドロキシイソプロピルビフェニル類、α−ヒドロキシイソプロピル基を2個以上有するナフタレン系化合物(3)が特に好ましい。
【0199】
前記酸架橋剤(G3)は、通常、1,3−ジアセチルベンゼン等のアセチル基含有化合物に、CHMgBr等のグリニヤール試薬を反応させてメチル化した後、加水分解する方法や、1,3−ジイソプロピルベンゼン等のイソプロピル基含有化合物を酸素等で酸化して過酸化物を生成させた後、還元する方法により得ることができる。
【0200】
本実施形態において酸架橋剤(G)の使用量は、固形成分全重量の0.5〜49質量%が好ましく、0.5〜40質量%がより好ましく、1〜30質量%がさらに好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。前記酸架橋剤(G)の配合割合を0.5質量%以上とすると、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性の抑制効果を向上させ、残膜率が低下したり、パターンの膨潤や蛇行が生じたりするのを抑制することができるので好ましく、一方、50質量%以下とすると、レジストとしての耐熱性の低下を抑制できることから好ましい。
【0201】
また、前記酸架橋剤(G)中の前記酸架橋剤(G1)、酸架橋剤(G2)、酸架橋剤(G3)から選ばれる少なくとも1種の化合物の配合割合も特に限定はなく、レジストパターンを形成する際に使用される基板の種類等によって種々の範囲とすることができる。
【0202】
全酸架橋剤成分において、前記アルコキシメチル化メラミン化合物及び/又は式(9−1)〜式(9−3)で表される化合物が50〜99質量%、好ましくは60〜99質量%、より好ましくは70〜98質量%、さらに好ましくは80〜97質量%であることが好ましい。アルコキシメチル化メラミン化合物及び/又は式(9−1)〜式(9−3)で表される化合物を全酸架橋剤成分の50質量%以上とすることにより、解像度を向上させることができるので好ましく、99質量%以下とすることにより、パターン断面形状として矩形状の断面形状とし易いので好ましい。
【0203】
[酸拡散制御剤]
本実施形態においては、放射線照射により酸発生剤から生じた酸のレジスト膜中における拡散を制御して、未露光領域での好ましくない化学反応を阻止する作用等を有する酸拡散制御剤(E)をレジスト組成物に配合しても良い。この様な酸拡散制御剤(E)を使用することにより、レジスト組成物の貯蔵安定性が向上する。また解像度が向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。このような酸拡散制御剤(E)としては、窒素原子含有塩基性化合物、塩基性スルホニウム化合物、塩基性ヨードニウム化合物等の放射線分解性塩基性化合物が挙げられる。酸拡散制御剤(E)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0204】
前記酸拡散制御剤としては、例えば、含窒素有機化合物や、露光により分解する塩基性化合物等が挙げられる。前記含窒素有機化合物としては、例えば、下記式(10):
【0205】
【化73】

(10)
で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」という。)、同一分子内に窒素原子を2個有するジアミノ化合物(以下、「含窒素化合物(II)」という。)、窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物や重合体(以下、「含窒素化合物(III)」という。)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、及び含窒素複素環式化合物等を挙げることができる。なお、酸拡散制御剤(E)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0206】
前記式(10)中、R61、R62及びR63は相互に独立に水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、前記アルキル基、アリール基又はアラルキル基は、非置換でもよく、ヒドロキシル基等で置換されていてもよい。ここで、前記直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜15、好ましくは1〜10のものが挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、テキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。また、前記アリール基としては、炭素数6〜12のものが挙げられ、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、1−ナフチル基等が挙げられる。さらに、前記アラルキル基としては、炭素数7〜19、好ましくは7〜13のものが挙げられ、具体的には、ベンジル基、α−メチルベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0207】
前記含窒素化合物(I)として具体的には、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、シクロヘキシルアミン等のモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、メチル−n−ドデシルアミン、ジ−n−ドデシルメチル、シクロヘキシルメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジ(シクロ)アルキルアミン類;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、ジメチル−n−ドデシルアミン、ジ−n−ドデシルメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、1−ナフチルアミン等の芳香族アミン類等を挙げることができる。
【0208】
前記含窒素化合物(II)として具体的には、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン等を挙げることができる。
【0209】
前記含窒素化合物(III)として具体的には、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、N−(2−ジメチルアミノエチル)アクリルアミドの重合体等を挙げることができる。
【0210】
前記アミド基含有化合物として具体的には、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0211】
前記ウレア化合物として具体的には、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等を挙げることができる。
【0212】
前記含窒素複素環式化合物として具体的には、例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール等のイミダゾール類;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、2−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8−オキシキノリン、アクリジン等のピリジン類;及び、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を挙げることができる。
【0213】
また、前記放射線分解性塩基性化合物としては、例えば、下記式(11−1):
【0214】
【化74】

(11−1)
で表されるスルホニウム化合物、及び下記式(11−2):
【0215】
【化75】

(11−2)
で表されるヨードニウム化合物等を挙げることができる。
【0216】
前記式(11−1)及び(11−2)中、R71、R72、R73、R74及びR75は相互に独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子を表す。ZはHO、R−COO(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜11のアリール基若しくは炭素数7〜12のアルカリール基を表す。)又は下記式(11−3):
【0217】
【化76】

(11−3)
で表されるアニオンを表す。
【0218】
前記放射線分解性塩基性化合物として具体的には、例えば、トリフェニルスルホニウムハイドロオキサイド、トリフェニルスルホニウムアセテート、トリフェニルスルホニウムサリチレート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムハイドロオキサイド、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムアセテート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムサリチレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロオキサイド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロオキサイド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムサリチレート、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムハイドロオキサイド、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムアセテート、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムサリチレート等が挙げられる。
【0219】
酸拡散制御剤(E)の配合量は、固形成分全重量の0.001〜49質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.01〜5質量%がさらに好ましく、0.01〜3質量%が特に好ましい。前記範囲内であると、解像度の低下、パターン形状、寸法忠実度等の劣化を防止することができる。さらに、電子線照射から放射線照射後加熱までの引き置き時間が長くなっても、パターン上層部の形状が劣化することがない。また、配合量が10質量%以下であると、感度、未露光部の現像性等の低下を防ぐことができる。またこの様な酸拡散制御剤を使用することにより、レジスト組成物の貯蔵安定性が向上し、また解像度が向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0220】
本実施形態のレジスト組成物には、その他の成分(F)として、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等の各種添加剤を1種又は2種以上添加することができる。
【0221】
[溶解促進剤]
低分子量溶解促進剤は、式(1)で表される化合物の現像液に対する溶解性が低すぎる場合に、その溶解性を高めて、現像時の前記化合物の溶解速度を適度に増大させる作用を有する成分であり、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。前記溶解促進剤としては、例えば、低分子量のフェノール性化合物を挙げることができ、例えば、ビスフェノール類、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン等を挙げることができる。これらの溶解促進剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。溶解促進剤の配合量は、使用する前記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜49質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0222】
[溶解制御剤]
溶解制御剤は、式(1)で表される化合物が現像液に対する溶解性が高すぎる場合に、その溶解性を制御して現像時の溶解速度を適度に減少させる作用を有する成分である。このような溶解制御剤としては、レジスト被膜の焼成、放射線照射、現像等の工程において化学変化しないものが好ましい。
【0223】
溶解制御剤としては、特に限定されないが、例えば、フェナントレン、アントラセン、アセナフテン等の芳香族炭化水素類;アセトフェノン、ベンゾフェノン、フェニルナフチルケトン等のケトン類;メチルフェニルスルホン、ジフェニルスルホン、ジナフチルスルホン等のスルホン類等を挙げることができる。これらの溶解制御剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
溶解制御剤の配合量は、使用する前記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜49質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0224】
[増感剤]
増感剤は、照射された放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤(C)に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を有し、レジストの見掛けの感度を向上させる成分である。このような増感剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ビアセチル類、ピレン類、フェノチアジン類、フルオレン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの増感剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。増感剤の配合量は、使用する前記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜49質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0225】
[界面活性剤]
界面活性剤は、本発明のレジスト組成物の塗布性やストリエーション、レジストの現像性等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系あるいは両性のいずれでもよい。好ましい界面活性剤はノニオン系界面活性剤である。ノニオン系界面活性剤は、レジスト組成物の製造に用いる溶媒との親和性がよく、より効果がある。ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類等が挙げられるが、特に限定はされない。市販品としては、以下商品名で、エフトップ(ジェムコ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業社製)、フロラード(住友スリーエム社製)、アサヒガード、サーフロン(以上、旭硝子社製)、ペポール(東邦化学工業社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社油脂化学工業社製)等を挙げることができる。界面活性剤の配合量は、使用する前記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜49質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0226】
[有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体]
感度劣化防止又はレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体を含有させることができる。なお、酸拡散制御剤と併用することも出来るし、単独で用いても良い。有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルなどの誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸又はそれらのエステルなどの誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルなどの誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体は、単独で又は2種以上を使用することができる。有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体の配合量は、使用する前記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜49質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0227】
[上述した添加剤(溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等)以外のその他添加剤]
さらに、本実施形態のレジスト組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、前記溶解制御剤、増感剤、及び界面活性剤以外の添加剤を1種又は2種以上配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、染料、顔料、及び接着助剤等が挙げられる。例えば、染料又は顔料を配合すると、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できるので好ましい。また、接着助剤を配合すると、基板との接着性を改善することができるので好ましい。さらに、他の添加剤としては、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤、形状改良剤等、具体的には4−ヒドロキシ−4’−メチルカルコン等を挙げることができる。
【0228】
本実施の形態のレジスト組成物において、任意成分(F)の合計量は、固形成分全重量の0〜99質量%であり、0〜49質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましく、0〜5質量%がさらに好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0229】
[各成分の配合割合]
本実施形態のレジスト組成物において、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂の含有量は、特に限定されないが、固形成分の全質量(式(1)で表される化合物、式(1)で表される化合物を構成成分として含む樹脂、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)(「任意成分(F)」とも記す)などの任意に使用される成分を含む固形成分の総和、以下同様。)の50〜99.4質量%であることが好ましく、より好ましくは55〜90質量%、さらに好ましくは60〜80質量%、特に好ましくは60〜70質量%である。前記含有量の場合、解像度が一層向上し、ラインエッジラフネス(LER)が一層小さくなる。
なお、前記式(1)で表される化合物と該化合物を構成成分として含む樹脂との両方を含有する場合、前記含有量は、前記式(1)で表される化合物と該化合物を構成成分として含む樹脂の合計量である。
【0230】
本実施の形態のレジスト組成物において、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂(以下、成分(A)と記す場合がある。)、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)、任意成分(F)の含有量(成分(A)/酸発生剤(C)/酸架橋剤(G)/酸拡散制御剤(E)/任意成分(F))は、固形物基準の質量%で、
好ましくは50〜99.4/0.001〜49/0.5〜49/0.001〜49/0〜49、
より好ましくは55〜90/1〜40/0.5〜40/0.01〜10/0〜5、
さらに好ましくは60〜80/3〜30/1〜30/0.01〜5/0〜1、
特に好ましくは60〜70/10〜25/2〜20/0.01〜3/0、である。
各成分の配合割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。前記配合にすると、感度、解像度、現像性等の性能に優れる。
【0231】
本実施形態のレジスト組成物は、通常は、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することにより調製される。
【0232】
本実施形態のレジスト組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、本実施形態の樹脂以外の他の樹脂を含むことができる。当該樹脂は、特に限定されず、例えば、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。前記樹脂の含有量は、特に限定されず、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、成分(A)100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0233】
[レジスト組成物の物性等]
本実施形態のレジスト組成物は、スピンコートによりアモルファス膜を形成することができる。また、一般的な半導体製造プロセスに適用することができる。用いる現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン及びネガ型レジストパターンのいずれかを作り分けることができる。
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05〜5Å/secがより好ましく、0.0005〜5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、レジストとすることができる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する露光部と、現像液に溶解しない未露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果がある。
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果がある。
前記溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬前後の膜厚を、目視、エリプソメーターまたはQCM法等の公知の方法によって測定し決定できる。
【0234】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果がある。
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05〜5Å/secがより好ましく、0.0005〜5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、レジストとすることができる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果がある。
【0235】
[感放射線性組成物]
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、後述するジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と併用し、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線を照射することにより、現像液に易溶な化合物となるポジ型レジスト用基材として有用である。g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線により、成分(A)の性質は大きくは変化しないが、現像液に難溶なジアゾナフトキノン光活性化合物(B)が易溶な化合物に変化することで、現像工程によってレジストパターンを作り得る。
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、前記式(1)に示すとおり、比較的低分子量の化合物であることから、得られたレジストパターンのラフネスは非常に小さい。また、前記式(1)中、R〜Rからなる群より選択される少なくとも1つがヨウ素原子を含む基であることが好ましい。本実施形態の感放射線性組成物は、このような好ましい態様であるヨウ素原子を含む基を有する成分(A)を適用した場合は、電子線、極端紫外線(EUV)、X線などの放射線に対する吸収能を増加させ、その結果、感度を高めることが可能となり、非常に好ましい。
【0236】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上、特に好ましくは150℃以上である。成分(A)のガラス転移温度の上限値は、特に限定されないが、例えば、400℃である。成分(A)のガラス転移温度が前記範囲内であることにより、半導体リソグラフィープロセスにおいて、パターン形状を維持しうる耐熱性を有し、高解像度などの性能が向上する。
【0237】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)のガラス転移温度の示差走査熱量分析により求めた結晶化発熱量は20J/g未満であるのが好ましい。また、(結晶化温度)−(ガラス転移温度)は好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは130℃以上である。結晶化発熱量が20J/g未満、又は(結晶化温度)−(ガラス転移温度)が前記範囲内であると、感放射線性組成物をスピンコートすることにより、アモルファス膜を形成しやすく、かつレジストに必要な成膜性が長期に渡り保持でき、解像性を向上することができる。
【0238】
本実施形態において、前記結晶化発熱量、結晶化温度及びガラス転移温度は、島津製作所製DSC/TA−50WSを用いた示差走査熱量分析により求めることができる。試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス気流中(50mL/分)昇温速度20℃/分で融点以上まで昇温する。急冷後、再び窒素ガス気流中(30mL/分)昇温速度20℃/分で融点以上まで昇温する。さらに急冷後、再び窒素ガス気流中(30mL/分)昇温速度20℃/分で400℃まで昇温する。ステップ状に変化したベースラインの段差の中点(比熱が半分に変化したところ)の温度をガラス転移温度(Tg)、その後に現れる発熱ピークの温度を結晶化温度とする。発熱ピークとベースラインに囲まれた領域の面積から発熱量を求め、結晶化発熱量とする。
【0239】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、常圧下、100以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは140℃以下、特に好ましくは150℃以下において、昇華性が低いことが好ましい。昇華性が低いとは、熱重量分析において、所定温度で10分保持した際の重量減少が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1%以下であることを示す。昇華性が低いことにより、露光時のアウトガスによる露光装置の汚染を防止することができる。また低ラフネスで良好なパターン形状を得ることができる。
【0240】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、シクロペンタノン(CPN)、2−ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれ、かつ、成分(A)に対して最も高い溶解能を示す溶媒に、23℃で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは、PGMEA、PGME、CHNから選ばれ、かつ、(A)レジスト基材に対して最も高い溶解能を示す溶媒に、23℃で、20質量%以上、特に好ましくはPGMEAに対して、23℃で、20質量%以上溶解する。前記条件を満たしていることにより、実生産における半導体製造工程での使用が可能となる。
【0241】
[ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)]
本実施形態の感放射線性組成物に含有させるジアゾナフトキノン光活性化合物(B)は、ポリマー性及び非ポリマー性ジアゾナフトキノン光活性化合物を含む、ジアゾナフトキノン物質であり、一般にポジ型レジスト組成物において、感光性成分(感光剤)として用いられているものであれば特に制限なく、1種又は2種以上任意に選択して用いることができる。
【0242】
このような感光剤としては、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライド等と、これら酸クロライドと縮合反応可能な官能基を有する低分子化合物又は高分子化合物とを反応させることによって得られた化合物が好ましいものである。ここで、酸クロライドと縮合可能な官能基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基等が挙げられるが、特に水酸基が好適である。水酸基を含む酸クロライドと縮合可能な化合物としては、特に限定されないが、例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’ ,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン等のヒドロキシベンゾフェノン類、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン等のヒドロキシフェニルアルカン類、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタン、4,4’,2”,3”,4”−ペンタヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタン等のヒドロキシトリフェニルメタン類などを挙げることができる。
また、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライドなどの酸クロライドとしては、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルフォニルクロライド、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォニルクロライドなどが好ましいものとして挙げられる。
【0243】
本実施形態の感放射線性組成物は、例えば、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することにより調製されることが好ましい。
【0244】
[感放射線性組成物の特性]
本実施形態の感放射線性組成物は、スピンコートによりアモルファス膜を形成することができる。また、一般的な半導体製造プロセスに適用することができる。用いる現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン及びネガ型レジストパターンのいずれかを作り分けることができる。
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05〜5Å/secがより好ましく、0.0005〜5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、レジストとすることができる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する露光部と、現像液に溶解しない未露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果がある。
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果がある。
前記溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬前後の膜厚を、目視、エリプソメーターまたはQCM法等の公知の方法によって測定し決定できる。
【0245】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により照射した後、又は、20〜500℃で加熱した後の露光した部分の、23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上が好ましく、10〜10000Å/secがより好ましく、100〜1000Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、10000Å/sec以下の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果がある。
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により照射した後、又は、20〜500℃で加熱した後の露光した部分の、23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05〜5Å/secがより好ましく、0.0005〜5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、レジストとすることができる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果がある。
【0246】
[各成分の配合割合]
本実施形態の感放射線性組成物において、成分(A)の含有量は、固形成分全重量(成分(A)、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)及びその他の成分(D)などの任意に使用される固形成分の総和、以下同様。)に対して、好ましくは1〜99質量%であり、より好ましくは5〜95質量%、さらに好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは25〜75質量%である。本実施形態の感放射線性組成物は、成分(A)の含有量が前記範囲内であると、高感度でラフネスの小さなパターンを得ることができる。
【0247】
本実施形態の感放射線性組成物において、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)の含有量は、固形成分全重量(成分(A)、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)及びその他の成分(D)などの任意に使用される固形成分の総和、以下同様。)に対して、好ましくは1〜99質量%であり、より好ましくは5〜95質量%、さらに好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは25〜75質量%である。本実施の形態の感放射線性組成物は、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)の含有量が前記範囲内であると、高感度でラフネスの小さなパターンを得ることができる。
本実施形態の感放射線性組成物としては、例えば、成分(A)、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)及び溶媒を含有する感放射線性組成物であって、該組成物中の溶媒の含有量が20〜99質量%であり、溶媒以外の成分の含有量が1〜80質量%である、感放射線性組成物を用いることができる。
【0248】
[その他の成分(D)]
本実施の形態の感放射線性組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、成分(A)及びジアゾナフトキノン光活性化合物(B)以外の成分として、上述の酸発生剤、酸架橋剤、酸拡散制御剤、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等の各種添加剤を1種又は2種以上添加することができる。なお、本明細書において、その他の成分(D)を任意成分(D)ということがある。
【0249】
本実施形態の感放射線性組成物において、各成分の配合割合(成分(A)/ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)/任意成分(D))は、固形成分基準の質量%で、
好ましくは1〜99/99〜1/0〜98、
より好ましくは5〜95/95〜5/0〜49、
さらに好ましくは10〜90/90〜10/0〜10、
特に好ましくは20〜80/80〜20/0〜5、
最も好ましくは25〜75/75〜25/0、である。
各成分の配合割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。本実施の形態の感放射線性組成物は、各成分の配合割合を前記範囲にすると、ラフネスに加え、感度、解像度等の性能に優れる。
【0250】
本実施形態の感放射線性組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、本実施形態以外の樹脂を含んでもよい。このような樹脂としては、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。これらの樹脂の配合量は、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、成分(A)100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0251】
[レジストパターンの形成方法]
本実施形態によるレジストパターンの形成方法は、上述した本実施形態のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、形成されたレジスト膜を露光する工程と、前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程とを備える。本実施形態におけるレジストパターンは多層プロセスにおける上層レジストとして形成することもできる。
【0252】
レジストパターンを形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、従来公知の基板上に前記本実施形態のレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって塗布することによりレジスト膜を形成する。従来公知の基板とは、特に限定されず、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例表することができる。より具体的には、シリコンウェハー、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が挙げられる。また必要に応じて、前述基板上に無機系及び/又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。ヘキサメチレンジシラザン等による表面処理を行ってもよい。
【0253】
次に、必要に応じて、塗布した基板を加熱する。加熱条件は、レジスト組成物の配合組成等により変わるが、20〜250℃が好ましく、より好ましくは20〜150℃である。加熱することによって、レジストの基板に対する密着性が向上する場合があり好ましい。次いで、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線、及びイオンビームからなる群から選ばれるいずれかの放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光する。露光条件等は、レジスト組成物の配合組成等に応じて適宜選定される。本実施形態においては、露光における高精度の微細パターンを安定して形成するために、放射線照射後に加熱するのが好ましい。加熱条件は、レジスト組成物の配合組成等により変わるが、20〜250℃が好ましく、より好ましくは20〜150℃である。
【0254】
次いで、露光されたレジスト膜を現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。前記現像液としては、使用する式(1)で表される化合物又は式(1)で表される化合物を構成成分として含む樹脂に対して溶解度パラメーター(SP値)の近い溶剤を選択することが好ましく、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤又はアルカリ水溶液を用いることができる。
【0255】
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。
【0256】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等を挙げることができる。
【0257】
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(2−プロパノール)、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
【0258】
エーテル系溶剤としては、例えば、前記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0259】
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
【0260】
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0261】
前記の溶剤は、複数混合してもよいし、性能を有する範囲内で、前記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が70質量%未満であり、50質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましく、実質的に水分を含有しないことが特に好ましい。すなわち、現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、30質量%以上100質量%以下であり、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
【0262】
アルカリ水溶液としては、例えば、モノ−、ジ−あるいはトリアルキルアミン類、モノ−、ジ−あるいはトリアルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等のアルカリ性化合物が挙げられる。
【0263】
特に、現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液が、レジストパターンの解像性やラフネス等のレジスト性能を改善するため好ましい。
【0264】
現像液の蒸気圧は、20℃において、5kPa以下が好ましく、3kPa以下がさらに好ましく、2kPa以下が特に好ましい。現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0265】
5kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0266】
特に好ましい範囲である2kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0267】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば、特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることがさらに好ましい。
【0268】
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0269】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。パターンの現像を行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒間〜90秒間である。
【0270】
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0271】
現像の後には、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0272】
現像後のリンス工程に用いるリンス液としては、架橋により硬化したレジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液又は水を使用することができる。前記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらにより好ましくは、現像の後に、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらにより好ましくは、現像の後に、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、現像の後に、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。パターンのリンスを行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒間〜90秒間である。
【0273】
ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、シクロペンタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノールなどを用いることができ、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノールなどを用いることができる。
【0274】
前記各成分は、複数混合してもよいし、前記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0275】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、より良好な現像特性を得ることができる。
【0276】
現像後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃において0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下がさらに好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性がより向上し、さらにはリンス液の浸透に起因した膨潤がより抑制され、ウェハ面内の寸法均一性がより良化する。
【0277】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0278】
リンス工程においては、現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
【0279】
レジストパターンを形成した後、エッチングすることによりパターン配線基板が得られる。エッチングの方法はプラズマガスを使用するドライエッチング及びアルカリ溶液、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液等によるウェットエッチングなど公知の方法で行うことが出来る。
【0280】
レジストパターンを形成した後、めっきを行うことも出来る。前記めっき法としては、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっきなどがある。
【0281】
エッチング後の残存レジストパターンは有機溶剤で剥離することが出来る。前記有機溶剤として、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート),PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル),EL(乳酸エチル)等が挙げられる。前記剥離方法としては、例えば、浸漬方法、スプレイ方式等が挙げられる。また、レジストパターンが形成された配線基板は、多層配線基板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0282】
本実施形態において得られる配線基板は、レジストパターン形成後、金属を真空中で蒸着し、その後レジストパターンを溶液で溶かす方法、すなわちリフトオフ法により形成することもできる。
【0283】
[リソグラフィー用下層膜形成材料]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、前記式(1)で表される化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含有する。本実施形態において前記物質は塗布性及び品質安定性の点から、リソグラフィー用下層膜形成材料中、1〜100質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましく、50〜100質量%であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0284】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、湿式プロセスへの適用が可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れる。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は前記物質を用いているため、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性にも優れた下層膜を形成することができる。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料はレジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを得ることができる。なお、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、本発明の効果が損なわれない範囲において、既に知られているリソグラフィー用下層膜形成材料等を含んでいてもよい。
【0285】
[リソグラフィー用下層膜形成用組成物]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、前記リソグラフィー用下層膜形成材料と溶媒とを含有する。
【0286】
[溶媒]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物において用いられる溶媒としては、上述した式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂が少なくとも溶解するものであれば、公知のものを適宜用いることができる。
【0287】
溶媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0288】
前記溶媒の中で、安全性の点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル、アニソールが特に好ましい。
【0289】
溶媒の含有量は、特に限定されないが、溶解性及び製膜上の観点から、前記下層膜形成材料100質量部に対して、100〜10,000質量部であることが好ましく、200〜5,000質量部であることがより好ましく、200〜1,000質量部であることがさらに好ましい。
【0290】
[架橋剤]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、インターミキシングを抑制する等の観点から、必要に応じて架橋剤を含有していてもよい。本実施形態で使用可能な架橋剤の具体例としては、例えば、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、エポキシ化合物、チオエポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基などの2重結合を含む化合物であって、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基を置換基(架橋性基)として有するものなどが挙げるが、これらに特に限定されない。なお、これらの架橋剤は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらは添加剤として用いてもよい。なお、前記架橋性基を式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂におけるポリマー側鎖にペンダント基として導入してもよい。また、ヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いることができる。
【0291】
メラミン化合物の具体例としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1〜6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1〜6個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物などが挙げられる。エポキシ化合物の具体例としては、例えば、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0292】
グアナミン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1〜4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物などが挙げられる。グリコールウリル化合物の具体例としては、例えば、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物などが挙げられる。ウレア化合物の具体例としては、例えば、テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレアの1〜4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレアなどが挙げられる。
【0293】
アルケニルエーテル基を含む化合物の具体例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルなどが挙げられる。
【0294】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物において、架橋剤の含有量は、特に限定されないが、下層膜形成材料100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量部である。前記の好ましい範囲にすることで、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にあり、また、反射防止効果が高められ、架橋後の膜形成性が高められる傾向にある。
【0295】
[酸発生剤]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、熱による架橋反応をさらに促進させるなどの観点から、必要に応じて酸発生剤を含有していてもよい。酸発生剤としては、熱分解によって酸を発生するもの、光照射によって酸を発生するものなどが知られているが、いずれのものも使用することができる。
【0296】
酸発生剤としては、
1)下記一般式(P1a−1)、(P1a−2)、(P1a−3)又は(P1b)のオニウム塩、
2)下記一般式(P2)のジアゾメタン誘導体、
3)下記一般式(P3)のグリオキシム誘導体、
4)下記一般式(P4)のビススルホン誘導体、
5)下記一般式(P5)のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル、
6)β−ケトスルホン酸誘導体、
7)ジスルホン誘導体、
8)ニトロベンジルスルホネート誘導体、
9)スルホン酸エステル誘導体
等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、これらの酸発生剤は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0297】
【化77】
【0298】
前記式中、R101a、R101b、R101cはそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基;炭素数6〜20のアリール基;又は炭素数7〜12のアラルキル基若しくはアリールオキソアルキル基を表し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基等によって置換されていてもよい。また、R101bとR101cとは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101b、R101cはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキレン基を表す。Kは非求核性対向イオンを表す。R101d、R101e、R101f、R101gは、それぞれ独立してR101a、R101b、R101cに水素原子を加えて表される。R101dとR101e、R101dとR101eとR101fとは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R101dとR101e及びR101dとR101eとR101fは炭素数3〜10のアルキレン基を表し、又は、式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環を表す。
【0299】
前記のR101a、R101b、R101c、R101d、R101e、R101f、R101gは互いに同一であっても異なっていてもよい。具体的には、アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、プロぺニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基等や、2−オキソプロピル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。オキソアルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、2−オキソ−4−シクロヘキセニル基、2−オキソ−4−プロペニル基等が挙げられる。アリール基としては、以下に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基等や、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基、m−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基;メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基;メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基;ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基;ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェネチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。Kの非求核性対向イオンとしては、以下に限定されないが、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン;トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート;トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート;メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート等が挙げられる。
【0300】
また、R101d、R101e、R101f、R101gが式中の窒素原子を環の中に有する複素芳香族環である場合、その複素芳香族環としては、イミダゾール誘導体(例えばイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えばピロリン、2−メチル−1−ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えばピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えばピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1−メチル−2−ピリドン、4−ピロリジノピリジン、1−メチル−4−フェニルピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H−インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えばキノリン、3−キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が例示される。
【0301】
前記式(P1a−1)と式(P1a−2)のオニウム塩は、光酸発生剤及び熱酸発生剤としての機能を有する。前記式(P1a−3)のオニウム塩は、熱酸発生剤としての機能を有する。
【0302】
【化78】
【0303】
式(P1b)中、R102a、R102bはそれぞれ独立して炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R103は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を示す。R104a、R104bはそれぞれ独立して炭素数3〜7の2−オキソアルキル基を示す。Kは非求核性対向イオンを表す。
【0304】
前記R102a、R102bの具体例としては、以下に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。R103の具体例としては、以下に限定されないが、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、1,4−シクロへキシレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロオクチレン基、1,4−シクロヘキサンジメチレン基等が挙げられる。R104a、R104bの具体例としては、以下に限定されないが、2−オキソプロピル基、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソシクロヘプチル基等が挙げられる。Kは式(P1a−1)、(P1a−2)及び(P1a−3)で説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0305】
【化79】
【0306】
前記式(P2)中、R105、R106はそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はハロゲン化アルキル基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン化アリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基を表す。
【0307】
105、R106のアルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、アミル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
ハロゲン化アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、トリフルオロメチル基、1,1,1−トリフルオロエチル基、1,1,1−トリクロロエチル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
アリール基としては、以下に限定されないが、例えば、フェニル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基、m−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基等が挙げられる。ハロゲン化アリール基としては、以下に限定されないが、例えば、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、1,2,3,4,5−ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。アラルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0308】
【化80】
【0309】
式(P3)中、R107、R108、R109はそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又はハロゲン化アルキル基;炭素数6〜20のアリール基若しくはハロゲン化アリール基;又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。R108、R109は互いに結合して環状構造を形成してもよく、環状構造を形成する場合、R108、R109はそれぞれ炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。
【0310】
107、R108、R109のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、アラルキル基としては、R105、R106で説明したものと同様の基が挙げられる。なお、R108、R109のアルキレン基としては、以下に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0311】
【化81】
【0312】
前記式(P4)中、R101a、R101bは前記と同様である。
【0313】
【化82】
【0314】
前記式(P5)中、R110は炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数2〜6のアルケニレン基を表す。これらの基の水素原子の一部又は全部は、さらに炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、ニトロ基、アセチル基、又はフェニル基で置換されていてもよい。R111は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状若しくは置換のアルキル基、アルケニル基又はアルコキシアルキル基、フェニル基、又はナフチル基を表す。これらの基の水素原子の一部又は全部は、さらに炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基;炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基又はアセチル基で置換されていてもよいフェニル基;炭素数3〜5のヘテロ芳香族基;又は塩素原子、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0315】
ここで、R110のアリーレン基としては、以下に限定されないが、例えば、1,2−フェニレン基、1,8−ナフチレン基等が挙げられる。アルキレン基としては、以下に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、フェニルエチレン基、ノルボルナン−2,3−ジイル基等が挙げられる。アルケニレン基としては、以下に限定されないが、例えば、1,2−ビニレン基、1−フェニル−1,2−ビニレン基、5−ノルボルネン−2,3−ジイル基等が挙げられる。R111のアルキル基としては、R101a〜R101cと同様のものが挙げられる。アルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプレニル基、1−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、ジメチルアリル基、1−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基等が挙げられる。アルコキシアルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ペンチロキシメチル基、ヘキシロキシメチル基、ヘプチロキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、ペンチロキシエチル基、ヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基、ブトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシブチル基、プロポキシブチル基、メトキシペンチル基、エトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、メトキシヘプチル基等が挙げられる。
【0316】
なお、さらに置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基又はアセチル基で置換されていてもよいフェニル基としては、以下に限定されないが、例えば、フェニル基、トリル基、p−tert−ブトキシフェニル基、p−アセチルフェニル基、p−ニトロフェニル基等が挙げられる。炭素数3〜5のヘテロ芳香族基としては、以下に限定されないが、例えば、ピリジル基、フリル基等が挙げられる。
【0317】
酸発生剤の具体例としては、以下に限定されないが、トリフルオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリエチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ピリジニウム、カンファースルホン酸トリエチルアンモニウム、カンファースルホン酸ピリジニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラフェニルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、エチレンビス[メチル(2−オキソシクロペンチル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート]、1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等のオニウム塩;ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソアミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−tert−アミルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン誘導体;ビス−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(p−トルエスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(シクロヘキサンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等のグリオキシム誘導体;ビスナフチルスルホニルメタン、ビストリフルオロメチルスルホニルメタン、ビスメチルスルホニルメタン、ビスエチルスルホニルメタン、ビスプロピルスルホニルメタン、ビスイソプロピルスルホニルメタン、ビス−p−トルエンスルホニルメタン、ビスベンゼンスルホニルメタン等のビススルホン誘導体;2−シクロヘキシルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2−イソプロピルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン等のβ−ケトスルホン誘導体;ジフェニルジスルホン誘導体、ジシクロヘキシルジスルホン誘導体等のジスルホン誘導体、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,4−ジニトロベンジル等のニトロベンジルスルホネート誘導体;1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン等のスルホン酸エステル誘導体;N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−オクタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−メトキシベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−クロロエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド−2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドp−トルエンスルホン酸エステル等のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体等が挙げられる。
【0318】
これらのなかでも、特に、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等のオニウム塩;ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン誘導体;ビス−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等のグリオキシム誘導体、ビスナフチルスルホニルメタン等のビススルホン誘導体;N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル等のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体等が好ましく用いられる。
【0319】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物において、酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、下層膜形成材料100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜40質量部である。前記の好ましい範囲にすることで、酸発生量が多くなって架橋反応が高められる傾向にあり、また、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にある。
【0320】
[塩基性化合物]
さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、保存安定性を向上させる等の観点から、塩基性化合物を含有していてもよい。
【0321】
塩基性化合物は、酸発生剤より微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐための、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。このような塩基性化合物としては、例えば、第一級、第二級又は第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0322】
具体的には、第一級の脂肪族アミン類の具体例としては、以下に限定されないが、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。第二級の脂肪族アミン類の具体例としては、以下に限定されないが、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N−ジメチルメチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルテトラエチレンペンタミン等が挙げられる。第三級の脂肪族アミン類の具体例としては、以下に限定されないが、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
【0323】
また、混成アミン類の具体例としては、以下に限定されないが、ジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。芳香族アミン類及び複素環アミン類の具体例としては、以下に限定されないが、アニリン誘導体(例えばアニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、N,N−ジメチルトルイジン等)、ジフェニル(p−トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレン、ピロール誘導体(例えばピロール、2H−ピロール、1−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、N−メチルピロール等)、オキサゾール誘導体(例えばオキサゾール、イソオキサゾール等)、チアゾール誘導体(例えばチアゾール、イソチアゾール等)、イミダゾール誘導体(例えばイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えばピロリン、2−メチル−1−ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えばピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えばピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1−メチル−2−ピリドン、4−ピロリジノピリジン、1−メチル−4−フェニルピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H−インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えばキノリン、3−キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が挙げられる。
【0324】
さらに、カルボキシ基を有する含窒素化合物の具体例としては、以下に限定されないが、アミノ安息香酸、インドールカルボン酸、アミノ酸誘導体(例えばニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、メトキシアラニン)等が挙げられる。スルホニル基を有する含窒素化合物の具体例としては、以下に限定されないが、3−ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム等が挙げられる。水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物の具体例としては、以下に限定されないが、2−ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4−キノリンジオール、3−インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノ−ル、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、8−ヒドロキシユロリジン、3−クイヌクリジノール、3−トロパノール、1−メチル−2−ピロリジンエタノール、1−アジリジンエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド等が挙げられる。アミド誘導体の具体例としては、以下に限定されないが、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド等が挙げられる。イミド誘導体の具体例としては、以下に限定されないが、フタルイミド、スクシンイミド、マレイミド等が挙げられる。
【0325】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物において、塩基性化合物の含有量は、特に限定されないが、下層膜形成材料100質量部に対して、0.001〜2質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1質量部である。前記の好ましい範囲にすることで、架橋反応を過度に損なうことなく保存安定性が高められる傾向にある。
【0326】
[その他の添加剤]
また、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、熱硬化性の付与や吸光度をコントロールする目的で、他の樹脂及び/又は化合物を含有していてもよい。このような他の樹脂及び/又は化合物としては、ナフトール樹脂、キシレン樹脂ナフトール変性樹脂、ナフタレン樹脂のフェノール変性樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ジシクロペンタジエン樹脂、(メタ)アクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート、ビニルナフタレン、ポリアセナフチレンなどのナフタレン環、フェナントレンキノン、フルオレンなどのビフェニル環、チオフェン、インデンなどのヘテロ原子を有する複素環を含む樹脂や芳香族環を含まない樹脂;ロジン系樹脂、シクロデキストリン、アダマンタン(ポリ)オール、トリシクロデカン(ポリ)オール及びそれらの誘導体等の脂環構造を含む樹脂又は化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。前記公知の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0327】
[リソグラフィー用下層膜及び多層レジストパターンの形成方法]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜は、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物から形成される。本実施形態のリソグラフィー用下層膜の製造方法は、上述のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて基板上に下層膜を形成する工程を含む。
【0328】
また、本実施形態のパターン形成方法(レジストパターン形成方法)は、基板上に、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程(A−1)と、前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(A−2)と、前記第2の形成工程の後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程(A−3)と、を有する。
【0329】
さらに、本実施形態の他のパターン形成方法(回路パターン形成方法)は、基板上に、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程(B−1)と、前記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成する工程(B−2)と、前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(B−3)と、前記工程(B−3)の後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程(B−4)と、前記工程(B−4)の後、前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングし、得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングし、得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程(B−5)と、を有する。
【0330】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜は、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物から形成されるものであれば、その形成方法は特に限定されず、公知の手法を適用することができる。例えば、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物をスピンコートやスクリーン印刷等の公知の塗布法或いは印刷法などで基板上に付与した後、有機溶媒を揮発させるなどして除去することで、下層膜を形成することができる。
【0331】
下層膜の形成時には、上層レジストとのミキシング現象の発生を抑制するとともに架橋反応を促進させるために、ベークをすることが好ましい。この場合、ベーク温度は、特に限定されないが、80〜450℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは200〜400℃である。また、ベーク時間も、特に限定されないが、10〜300秒の範囲内であることが好ましい。なお、下層膜の厚さは、要求性能に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、通常、30〜20,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは50〜15,000nmとすることが好ましい。
【0332】
下層膜を作製した後、2層プロセスの場合はその上に珪素含有レジスト層、或いは通常の炭化水素からなる単層レジスト、3層プロセスの場合はその上に珪素含有中間層、さらにその上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することが好ましい。この場合、このレジスト層を形成するためのフォトレジスト材料としては公知のものを使用することができる。
【0333】
基板上に下層膜を作製した後、2層プロセスの場合はその下層膜上に珪素含有レジスト層あるいは通常の炭化水素からなる単層レジストを作製することができる。3層プロセスの場合はその下層膜上に珪素含有中間層、さらにその珪素含有中間層上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することができる。これらの場合において、レジスト層を形成するためのフォトレジスト材料は、公知のものから適宜選択して使用することができ、特に限定されない。
【0334】
2層プロセス用の珪素含有レジスト材料としては、酸素ガスエッチング耐性の観点から、ベースポリマーとしてポリシルセスキオキサン誘導体又はビニルシラン誘導体等の珪素原子含有ポリマーを使用し、さらに有機溶媒、酸発生剤、必要により塩基性化合物等を含むポジ型のフォトレジスト材料が好ましく用いられる。ここで珪素原子含有ポリマーとしては、この種のレジスト材料において用いられている公知のポリマーを使用することができる。
【0335】
3層プロセス用の珪素含有中間層としてはポリシルセスキオキサンベースの中間層が好ましく用いられる。中間層に反射防止膜として効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。例えば、193nm露光用プロセスにおいて、下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなる傾向にあるが、中間層で反射を抑えることによって、基板反射を0.5%以下にすることができる。このような反射防止効果がある中間層としては、以下に限定されないが、193nm露光用としてはフェニル基又は珪素−珪素結合を有する吸光基を導入された、酸或いは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0336】
また、Chemical Vapour Deposition(CVD)法で形成した中間層を用いることもできる。CVD法で作製した反射防止膜としての効果が高い中間層としては、以下に限定されないが、例えば、SiON膜が知られている。一般的には、CVD法よりスピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによる中間層の形成の方が、簡便でコスト的なメリットがある。なお、3層プロセスにおける上層レジストは、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、また、通常用いられている単層レジストと同じものを用いることができる。
【0337】
さらに、本実施形態における下層膜は、通常の単層レジスト用の反射防止膜或いはパターン倒れ抑制のための下地材として用いることもできる。本実施形態の下層膜は、下地加工のためのエッチング耐性に優れるため、下地加工のためのハードマスクとしての機能も期待できる。
【0338】
前記フォトレジスト材料によりレジスト層を形成する場合においては、前記下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが好ましく用いられる。また、レジスト材料をスピンコート法などで塗布した後、通常、プリベークが行われるが、このプリベークは、80〜180℃で10〜300秒の範囲で行うことが好ましい。その後、常法にしたがい、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行うことで、レジストパターンを得ることができる。なお、レジスト膜の厚さは特に制限されないが、一般的には、30〜500nmが好ましく、より好ましくは50〜400nmである。
【0339】
また、露光光は、使用するフォトレジスト材料に応じて適宜選択して用いればよい。一般的には、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3〜20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0340】
前記の方法により形成されるレジストパターンは、本実施形態における下層膜によってパターン倒れが抑制されたものとなる。そのため、本実施形態における下層膜を用いることで、より微細なパターンを得ることができ、また、そのレジストパターンを得るために必要な露光量を低下させ得る。
【0341】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。2層プロセスにおける下層膜のエッチングとしては、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、酸素ガスを用いたエッチングが好適である。酸素ガスに加えて、He、Arなどの不活性ガスや、CO、CO2、NH3、SO2、N2、NO2、2ガスを加えることも可能である。また、酸素ガスを用いずに、CO、CO2、NH3、N2、NO2、2ガスだけでガスエッチングを行うこともできる。特に後者のガスは、パターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護のために好ましく用いられる。
【0342】
一方、3層プロセスにおける中間層のエッチングにおいても、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、前記の2層プロセスにおいて説明したものと同様のものが適用可能である。とりわけ、3層プロセスにおける中間層の加工は、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行うことが好ましい。その後、上述したように中間層パターンをマスクにして、例えば酸素ガスエッチングを行うことで、下層膜の加工を行うことができる。
【0343】
ここで、中間層として無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開2002−334869号公報(特許文献6)、WO2004/066377(特許文献7)に記載された方法を用いることができる。このような中間層膜の上に直接フォトレジスト膜を形成することができるが、中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。
【0344】
中間層として、ポリシルセスキオキサンベースの中間層も好ましく用いられる。レジスト中間層膜に反射防止膜として効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。ポリシルセスキオキサンベースの中間層の具体的な材料については、以下に限定されないが、例えば、特開2007−226170号(特許文献8)、特開2007−226204号(特許文献9)に記載されたものを用いることができる。
【0345】
また、次の基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば、基板がSiO2、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p−SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行うことができる。基板をフロン系ガスでエッチングする場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中間層は、基板加工と同時に剥離される。一方、塩素系或いは臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、珪素含有レジスト層又は珪素含有中間層の剥離が別途行われ、一般的には、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離が行われる。
【0346】
本実施形態における下層膜は、これら基板のエッチング耐性に優れる特徴がある。なお、基板は、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に限定されないが、Si、α−Si、p−Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等が挙げられる。また、基板は、基材(支持体)上に被加工膜(被加工基板)を有する積層体であってもよい。このような被加工膜としては、Si、SiO、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等種々のLow−k膜及びそのストッパー膜等が挙げられ、通常、基材(支持体)とは異なる材質のものが用いられる。なお、加工対象となる基板或いは被加工膜の厚さは、特に限定されないが、通常、50〜10,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは75〜5,000nmである。
【0347】
[化合物及び/又は樹脂の精製方法]
本実施形態の化合物及び/又は樹脂の精製方法は、式(1)で表される化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂から選ばれる1種以上を、溶媒に溶解させて溶液(S)を得る工程と、得られた溶液(S)と酸性の水溶液とを接触させて、前記化合物及び/又は前記樹脂中の不純物を抽出する工程(第一抽出工程)とを含み、前記溶液(S)を得る工程で用いる溶媒が、水と任意に混和しない有機溶媒を含む。
当該第一抽出工程において、前記樹脂は、前記式(1)で表される化合物と架橋反応性のある化合物との反応によって得られる樹脂であることが好ましい。本実施の形態の精製方法によれば、上述した特定の構造を有する化合物又は樹脂に不純物として含まれうる種々の金属の含有量を低減することができる。
より詳細には、本実施の形態の精製方法においては、前記化合物及び/又は前記樹脂を、水と任意に混和しない有機溶媒に溶解させて溶液(S)を得て、さらにその溶液(S)を酸性水溶液と接触させて抽出処理を行うことができる。これにより、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂を含む溶液(S)に含まれる金属分を水相に移行させたのち、有機相と水相とを分離して金属含有量の低減された、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂を得ることができる。
【0348】
本実施形態の精製方法で使用する前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂は単独でもよいが、2種以上混合することもできる。また、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂は、各種界面活性剤、各種架橋剤、各種酸発生剤、各種安定剤等を含有していてもよい。
【0349】
本実施形態で使用される水と任意に混和しない溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましく、具体的には、室温下における水への溶解度が30%未満である有機溶媒であり、より好ましくは20%未満であり、特に好ましくは10%未満である有機溶媒が好ましい。当該有機溶媒の使用量は、使用する前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂に対して、1〜100質量倍であることが好ましい。
【0350】
水と任意に混和しない溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2‐ヘプタノン、2−ペンタノン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;n‐ヘキサン、n‐ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル等が好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルがよりさらに好ましい。メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等は、前記式(1)で表される化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂の飽和溶解度が比較的高く、沸点が比較的低いことから、工業的に溶媒を留去する場合や乾燥により除去する工程での負荷を低減することが可能となる。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0351】
本実施形態の精製方法で使用される酸性の水溶液としては、一般に知られる有機系化合物若しくは無機系化合物を水に溶解させた水溶液の中から適宜選択される。以下に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸を水に溶解させた鉱酸水溶液、又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸を水に溶解させた有機酸水溶液が挙げられる。これら酸性の水溶液は、それぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。これら酸性の水溶液の中でも、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の鉱酸水溶液、又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上の有機酸水溶液であることが好ましく、硫酸、硝酸、及び酢酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸等のカルボン酸の水溶液がより好ましく、硫酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸の水溶液がさらに好ましく、蓚酸の水溶液がよりさらに好ましい。蓚酸、酒石酸、クエン酸等の多価カルボン酸は金属イオンに配位し、キレート効果が生じるために、より効果的に金属を除去できる傾向にあるものと考えられる。また、ここで用いる水は、本実施の形態の精製方法の目的に沿って、金属含有量の少ない水、例えばイオン交換水等を用いることが好ましい。
【0352】
本実施形態の精製方法で使用する酸性の水溶液のpHは特に限定されないが、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂への影響を考慮し、水溶液の酸性度を調整することが好ましい。通常、pH範囲は0〜5程度であり、好ましくはpH0〜3程度である。
【0353】
本実施形態の精製方法で使用する酸性の水溶液の使用量は特に限定されないが、金属除去のための抽出回数を低減する観点及び全体の液量を考慮して操作性を確保する観点から、当該使用量を調整することが好ましい。前記観点から、酸性の水溶液の使用量は、前記溶液(S)100質量%に対して、好ましくは10〜200質量%であり、より好ましくは20〜100質量%である。
【0354】
本実施形態の精製方法においては、前記のような酸性の水溶液と、前記式(1)で表される化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂から選ばれる1種以上、及び水と任意に混和しない溶媒を含む溶液(S)とを接触させることにより、溶液(S)中の前記化合物又は前記樹脂から金属分を抽出することができる。
【0355】
本実施形態の精製方法においては、前記溶液(S)が、さらに水と任意に混和する有機溶媒を含むことが好ましい。水と任意に混和する有機溶媒を含む場合、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂の仕込み量を増加させることができ、また、分液性が向上し、高い釜効率で精製を行うことができる傾向にある。水と任意に混和する有機溶媒を加える方法は特に限定されない。例えば、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法、予め水又は酸性の水溶液に加える方法、有機溶媒を含む溶液と水又は酸性の水溶液とを接触させた後に加える方法のいずれでもよい。これらの中でも、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法が操作の作業性や仕込み量の管理のし易さの点で好ましい。
【0356】
本実施形態の精製方法で使用される水と任意に混和する有機溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましい。水と任意に混和する有機溶媒の使用量は、溶液相と水相とが分離する範囲であれば特に限定されないが、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂に対して、0.1〜100質量倍であることが好ましく、0.1〜50質量倍であることがより好ましく、0.1〜20質量倍であることがさらに好ましい。
【0357】
本実施形態の精製方法において使用される水と任意に混和する有機溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、N−メチルピロリドン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類等の脂肪族炭化水素類が挙げられる。これらの中でも、N−メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましく、N−メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0358】
抽出処理を行う際の温度は通常、20〜90℃であり、好ましくは30〜80℃の範囲である。抽出操作は、例えば、撹拌等により、よく混合させたあと、静置することにより行われる。これにより、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂と有機溶媒を含む溶液に含まれていた金属分が水相に移行する。また、本操作により、溶液の酸性度が低下し、式(1)で表される化合物及び/又は該化合物をモノマーとして得られる樹脂の変質を抑制することができる。
【0359】
前記混合溶液は静置により、前記式(1)で表される化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂から選ばれる1種以上と溶媒を含む溶液相と、水相とに分離するので、デカンテーション等により前記式(1)で表される化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂から選ばれる1種以上と溶媒とを含む溶液相を回収する。静置する時間は特に限定されないが、溶媒を含む溶液相と水相との分離をより良好にする観点から、当該静置する時間を調整することが好ましい。通常、静置する時間は1分以上であり、好ましくは10分以上であり、より好ましくは30分以上である。また、抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。
【0360】
本実施形態の精製方法において、前記第一抽出工程後、前記化合物又は前記樹脂を含む溶液相を、さらに水に接触させて、前記化合物又は前記樹脂中の不純物を抽出する工程(第二抽出工程)を含むことが好ましい。具体的には、例えば、酸性の水溶液を用いて前記抽出処理を行った後に、該水溶液から抽出され、回収された前記式(1)で表される化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂から選ばれる1種以上と溶媒を含む溶液相を、さらに水による抽出処理に供することが好ましい。前記の水による抽出処理は、特に限定されないが、例えば、前記溶液相と水とを、撹拌等により、よく混合させたあと、得られた混合溶液を、静置することにより行うことができる。当該静置後の混合溶液は、前記式(1)で表される化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂から選ばれる1種以上と溶媒とを含む溶液相と、水相とに分離するのでデカンテーション等により前記式(1)で表される化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂から選ばれる1種以上と溶媒とを含む溶液相を回収することができる。
また、ここで用いる水は、本実施の形態の目的に沿って、金属含有量の少ない水、例えば、イオン交換水等であることが好ましい。抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。また、抽出処理における両者の使用割合や、温度、時間等の条件は特に限定されないが、先の酸性の水溶液との接触処理の場合と同様で構わない。
【0361】
こうして得られた前記式(1)で表される化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂から選ばれる1種以上と溶媒とを含む溶液に混入しうる水分については、減圧蒸留等の操作を施すことにより容易に除去できる。また、必要により前記溶液に溶媒を加え、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂の濃度を任意の濃度に調整することができる。
【0362】
得られた前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂と溶媒とを含む溶液から、前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂を単離する方法は、特に限定されず、減圧除去、再沈殿による分離、及びそれらの組み合わせ等、公知の方法で行うことができる。必要に応じて、濃縮操作、ろ過操作、遠心分離操作、乾燥操作等の公知の処理を行うことができる。
【実施例】
【0363】
以下、実施例を挙げて、本実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本実施形態はこれらの実施例に限定はされない。
【0364】
(化合物の構造)
化合物の構造は、Bruker社製Advance600II spectrometerを用いて、以下の条件で、H−NMR測定を行い、確認した。
周波数:400MHz
溶媒:d6−DMSO
内部標準:TMS
測定温度:23℃
【0365】
(炭素濃度及び酸素濃度)
有機元素分析により炭素濃度及び酸素濃度(質量%)を測定した。
装置:CHNコーダーMT−6(ヤナコ分析工業(株)製)
【0366】
(分子量)
化合物の分子量は、FD−MS分析により、JEOL社製JMS−T100GCVを用いて測定した。
あるいは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
装置:Shodex GPC−101型(昭和電工(株)製)
カラム:KF−80M×3
溶離液:THF 1ml/min
温度:40℃
【0367】
(熱分解温度(Tg))
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製EXSTAR6000DSC装置を使用し、試料約5mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/min)気流中昇温速度10℃/minで500℃まで昇温した。その際、ベースラインに減少部分が現れる温度を熱分解温度(Tg)とし、以下の基準で耐熱性を評価した。
−基準−
評価A:熱分解温度が≧150℃
評価C:熱分解温度が<150℃
【0368】
(溶解性)
23℃にて、化合物の1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)に対して5質量%溶液になるよう溶解させ、その後5℃にて30日間放置し、その結果を以下の基準で評価した。
−基準−
評価A:目視にて析出物なしを確認
評価C:目視にて析出物ありを確認
【0369】
[合成例1]BisF−1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器を準備した。この容器に、4,4−ビフェノール(東京化成社製試薬)30g(161mmol)と、4−ビフェニルアルデヒド(三菱瓦斯化学社製)15g(82mmol)と、酢酸ブチル100mLとを仕込み、p−トルエンスルホン酸(関東化学社製試薬)3.9g(21mmol)を加えて、反応液を調製した。この反応液を90℃で3時間撹拌して反応を行った。次に、反応液を濃縮し、ヘプタン50gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離した。濾過により得られた固形物を乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で表される目的化合物(BisF−1)5.8gを得た。
得られた化合物について、前記方法により分子量を測定した結果、536であった。
得られた化合物について、前記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)9.4(4H,O−H)、6.8〜7.8(23H,Ph−H)、6.2(1H,C−H)
【0370】
【化83】

(BisF−1)
【0371】
[合成実施例1]BisF−1−BOCの合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、前記得られた化合物(BisF−1)6.7g(12.5mmol)とジ−t−ブチルジカーボネート(アルドリッチ社製)11.0g(50mmol)とをアセトン100mLに仕込み、炭酸カリウム(アルドリッチ社製)6.9g(50mmol)を加えて、内容物を20℃で6時間撹拌して反応を行って反応液を得た。次に反応液を濃縮し、濃縮液に純水100gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って固形物を分離した。
得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことで、下記式(BisF−1−BOC)で示される目的化合物(BisF−1−BOC)を2g得た。
得られた化合物(BisF−1−BOC)について、前記方法により分子量を測定した結果、937であった。また、炭素濃度は73.1%、酸素濃度は20.4%であった。
得られた化合物(BisF−1−BOC)について、前記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BisF−1−BOC)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)6.8〜7.8(23H,Ph−H)、6.2(1H,C−H)、1.6(36H,C−CH
【0372】
【化84】

(BisF−1−BOC)
【0373】
[合成例2] BisF−I−1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器を準備した。この容器に、4,4−ビフェノール(東京化成社製試薬)30g(161mmol)と、4−ヨードベンズアルデヒド(東京化成社製試薬)15g(65mmol)と、4‐ブチロラクトン100mLとを仕込み、p−トルエンスルホン酸(関東化学社製試薬)3.9g(21mmol)を加えて、反応液を調製した。この反応液を90℃で3時間撹拌して反応を行った。次に、反応液を濃縮し、ヘプタン50gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離した。濾過により得られた固形物を乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で表される目的化合物(BisF−I−1)4.2gを得た。
得られた化合物について、前記方法により分子量を測定した結果、586であった。
得られた化合物について、前記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)9.4(4H,O−H)、6.8〜7.8(18H,Ph−H)、6.2(1H,C−H)
【0374】
【化85】

(BisF−I−1)
【0375】
[合成実施例2]BisF−I−1−BOCの合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、前記得られた化合物(BisF−I−1)7.3g(12.5mmol)とジ−t−ブチルジカーボネート(アルドリッチ社製)11.0g(50mmol)とをアセトン100mLに仕込み、炭酸カリウム(アルドリッチ社製)6.9g(50mmol)を加えて、内容物を20℃で6時間撹拌して反応を行って反応液を得た。次に反応液を濃縮し、濃縮液に純水100gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って固形物を分離した。
得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことで、下記式(BisF−I−1−BOC)で示される目的化合物(BisF−I−1−BOC)を2g得た。
得られた化合物(BisF−I−1−BOC)について、前記方法により分子量を測定した結果、987であった。また、炭素濃度は62.1%、酸素濃度は19.4%であった。
得られた化合物(BisF−I−1−BOC)について、前記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BisF−I−1−BOC)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)6.8〜7.8(18H,Ph−H)、6.2(1H,C−H)、1.6(36H,C−CH
【0376】
【化86】

(BisF−I−1−BOC)
【0377】
[合成例3]BisF−I−2の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積300mLの容器に4,4−ビフェノール(東京化成社製試薬)15.0g(81mmol)と、と5−ヨードバニリン(東京化成工業社製試薬)5.6g(20mmol)とを100mLのγ―ブチロラクトンに仕込み、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて、90℃で87時間撹拌して反応を行って反応液を得た。次に反応液を純水1000gに加えたあと、酢酸エチルにより抽出、濃縮を行って溶液を得た。
【0378】
得られた溶液を、カラムクロマトによる分離後、クロロホルム洗浄を行い、下記式(BisF−I−2)で表される目的化合物を2.0g得た。
得られた化合物(BisF−I−2)について、上記方法により分子量を測定した結果、632であった。
得られた化合物(BisF−I−2)について、上記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BisF−I−2)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)9.7,9.3(5H,O−H)、7.2〜8.5(16H,Ph−H)、6.4(1H,C−H)、3.7(3H,O−C−H)
【0379】
【化87】

(BisF−I−2)
【0380】
[合成実施例3]BisF−I−2−BOCの合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、上記化合物(BisF−I−2)6.5g(12.5mmol)とジ−t−ブチルジカーボネート(アルドリッチ社製)5.5g(25mmol)とをアセトン100mLに仕込み、炭酸カリウム(アルドリッチ社製)3.45g(25mmol)を加えて、内容物を40℃で10時間撹拌して反応を行って反応液を得た。次に反応液を濃縮し、濃縮液に純水100gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って固形物を分離した。
得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことで、下記式(BisF−I−2−BOC)で表される目的化合物を1.7g得た。
【0381】
得られた化合物(BisF−I−2−BOC)について、上記方法により分子量を測定した結果、1033であった。また、有機元素分析の結果、得られた化合物(BisF−I−2−BOC)の炭素濃度は60.6%、酸素濃度は21.1%であった。
得られた化合物(BisF−I−2−BOC)について、上記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BisF−I−2−BOC)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)9.2(1H,O−H)7.2〜8.6(16H,Ph−H)、6.2(1H,C−H)、3.4(3H,O−C−H)、1.6(36H,C−CH
【0382】
【化88】

(BisF−I−2−BOC)
【0383】
[合成例4]BisF−I−3の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積300mLの容器に4,4−ビフェノール(東京化成工業社製試薬)15.0g(81mmol)と5−ヨード−2−フランカルボアルデヒド(東京化成工業社製試薬)9.0g(40mmol)とを100mLのγ―ブチロラクトンに仕込み、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて、90℃で24時間撹拌して反応を行って反応液を得た。次に反応液を純水300gに加えたあと、酢酸エチルにより抽出、濃縮を行って溶液を得た。
【0384】
得られた溶液を、カラムクロマトによる分離後、クロロホルム洗浄を行い、下記式(BisF−I−3)で表される目的化合物4.5gを得た。
得られた化合物(BisF−I−3)について、上記方法により分子量を測定した結果、576であった。
得られた化合物(BisF−I−3)について、上記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BisF−I−3)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)9.2(4H,O−H)、7.3〜8.7(16H,Ph−H)、6.2(1H,C−H)
【0385】
【化89】

(BisF−I−3)
【0386】
[合成実施例4]BisF−I−3−BOCの合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、上記化合物(BisF−I−3)7.2g(12.5mmol)とジ−t−ブチルジカーボネート(アルドリッチ社製)5.5g(25mmol)とをアセトン100mLに仕込み、炭酸カリウム(アルドリッチ社製)3.45g(25mmol)を加えて、内容物を20℃で10時間撹拌して反応を行って反応液を得た。次に反応液を濃縮し、濃縮液に純水100gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って固形物を分離した。
得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことで、下記式(BisF−I−3−BOC)で表される目的化合物を2.6g得た。
【0387】
得られた化合物(BisF−I−3−BOC)について、上記方法により分子量を測定した結果、976であった。また、有機元素分析の結果、得られた化合物(BisF−I−3−BOC)の炭素濃度は60.3%、酸素濃度は21.0%であった。
得られた化合物(BisF−I−3−BOC)について、上記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BisF−I−3−BOC)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)7.2〜8.3(16H,Ph−H)、6.1(1H,C−H)、1.6(36H,C−CH
【0388】
【化90】

(BisF−I−3−BOC)
【0389】
[合成実施例5]樹脂(BisFR−1−BOC)の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、合成実施例1で得られたBisF−1−BOCを65.6g(70mmol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液21.0g(ホルムアルデヒドとして280mmol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてオルソキシレン(和光純薬工業(株)製試薬特級)180.0gを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、オルソキシレンを減圧下で留去することにより、褐色固体の樹脂(BisFR−1−BOC)54.2gを得た。
【0390】
得られた樹脂(BisFR−1−BOC)は、Mn:2175、Mw:4360、Mw/Mn:2.0であった。また、炭素濃度は71.3質量%、酸素濃度は20.1質量%であった。
【0391】
[合成実施例6]樹脂(BisFR−2−BOC)の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、合成実施例1で得られたBisF−1−BOCを65.6g(70mmol、三菱ガス化学(株)製)、4−ビフェニルアルデヒド50.9g(280mmol、三菱ガス化学(株)製)、アニソール(関東化学(株)製)100mL及びシュウ酸二水和物(関東化学(株)製)10mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら12時間反応させた。その後、希釈溶媒としてオルソキシレン(和光純薬工業(株)製試薬特級)180.0gを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、有機相の溶媒および未反応の4−ビフェニルアルデヒドを減圧下で留去することにより、褐色固体の樹脂(BisFR−2−BOC)87.7gを得た。
【0392】
得られた樹脂(BisFR−2−BOC)は、Mn:2382、Mw:4510、Mw/Mn:1.89であった。また、炭素濃度は75.2質量%、酸素濃度は19.5質量%であった。
【0393】
[合成比較例1]
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積10Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5−ジメチルナフタレン1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製試薬特級)1.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5−ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。
得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒドの分子量は、Mn:562、であった。
【0394】
続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、前記のようにして得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後さらに、1−ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた。溶剤希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下で除去することにより、黒褐色固体の変性樹脂(CR−1)126.1gを得た。
得られた樹脂(CR−1)は、Mn:885、Mw:2220、Mw/Mn:4.17であった。また、炭素濃度は89.1質量%、酸素濃度は4.5質量%であった。
【0395】
[実施例1〜6、比較例1]
(耐熱性及び溶解性)
BisF−1−BOC、BisF−I−1−BOC、BisF−I−2−BOC、BisF−I−3−BOC、BisFR−1−BOC、BisFR−2−BOC及びCR−1を用いて、耐熱性試験及び溶解度試験を行った結果を表1に示す。
【0396】
(レジスト組成物の調製)
前記で合成した各化合物を用いて、表1に示す配合でレジスト組成物を調製した。なお、表1中のレジスト組成物の各成分のうち、酸発生剤(C)、酸拡散制御剤(E)及び溶媒については、以下のものを用いた。
酸発生剤(C)
P−1:トリフェニルベンゼンスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(みどり化学(株))
酸拡散制御剤(E)
Q−1:トリオクチルアミン(東京化成工業(株))
溶媒
S−1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株))
【0397】
(レジスト組成物のレジスト性能の評価)
均一なレジスト組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ60nmのレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜に対して、電子線描画装置(ELS−7500、(株)エリオニクス社製)を用いて、50nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射した。当該照射後に、レジスト膜を、それぞれ所定の温度で、90秒間加熱し、TMAH2.38質量%アルカリ現像液に60秒間浸漬して現像を行った。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。形成されたレジストパターンについて、ラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製S−4800)により観察し、レジスト組成物の電子線照射による反応性を評価した。
【0398】
【表1】
【0399】
表1から明らかなように、実施例1〜6で用いた化合物(順に、BisF−1−BOC及びBisF−I−1−BOC、BisF−I−2−BOC、BisF−I−3−BOC、BisFR−1−BOC、BisFR−2−BOC)は耐熱性及び溶解性が良好であるが、比較例1で用いた化合物(CR−1)は耐熱性及び溶解性が劣ることが確認できた。
また、レジストパターン評価については、実施例1〜6では50nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射により、良好なレジストパターンを得た。一方、比較例1では良好なレジストパターンを得ることはできなかった。
【0400】
このように本発明の要件を満たす化合物は、耐熱性が高く、安全溶媒に対する溶解性が高い。また、該化合物を含むレジスト組成物は、比較化合物(CR−1)を含むレジスト組成物に比べて、良好なレジストパターン形状を付与できる。前記した本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した化合物以外の化合物についても同様の効果を示す。
【0401】
[実施例7〜12、比較例2]
(感放射線性組成物の調製)
表2記載の成分を調合し、均一溶液としたのち、得られた均一溶液を、孔径0.1μmのテフロン(登録商標)製メンブランフィルターで濾過して、感放射線性組成物を調製した。調製した各々の感放射線性組成物について以下のとおり評価を行った。
【0402】
【表2】
【0403】
なお、比較例2におけるレジスト基材として、次のものを用いた。
PHS−1:ポリヒドロキシスチレン Mw=8000(シグマ−アルドリッチ社)
光活性化合物(B)として、次のものを用いた。
B−1:化学構造式(G)のナフトキノンジアジド系感光剤(4NT−300、東洋合成工業(株))
溶媒として、次のものを用いた。
S−1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株))
【化91】
【0404】
(感放射線性組成物のレジスト性能の評価)
前記で得られた感放射線性組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ200nmのレジスト膜を形成した。該レジスト膜に対して、紫外線露光装置(ミカサ製マスクアライナMA−10)を用いて紫外線を露光した。紫外線ランプは超高圧水銀ランプ(相対強度比はg線:h線:i線:j線=100:80:90:60)を使用した。照射後に、レジスト膜を、110℃で90秒間加熱し、TMAH2.38質量%アルカリ現像液に60秒間浸漬して現像を行った。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄し、乾燥して、5μmのポジ型のレジストパターンを形成した。
形成されたレジストパターンにおいて、得られたラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製S−4800)により観察した。ラインエッジラフネスはパターンの凹凸が50nm未満を良好とした。
【0405】
実施例7〜12における感放射線性組成物を用いた場合は、解像度5μmの良好なレジストパターンを得ることができた。また、そのパターンのラフネスも小さく良好であった。
一方、比較例2における感放射線性組成物を用いた場合は、解像度5μmの良好なレジストパターンを得ることができた。しかしながら、そのパターンのラフネスは大きく不良であった。
【0406】
前記のように、本実施例7〜12では、比較例2に比べて、ラフネスが小さく、かつ良好な形状のレジストパターンを形成することができることがわかった。前記した本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した以外の感放射線性組成物も同様の効果を示す。
【0407】
合成実施例1〜6で得られた化合物は、比較的に低分子量で低粘度であり、また、ガラス転移温度がいずれも100℃以下と低いことから、これを用いたリソグラフィー用下層膜形成材料は埋め込み特性が比較的に有利に高められ得る。また、熱分解温度はいずれも150℃以上(評価A)であり、酸解離性基の脱離後は、その構造の剛直さにより高い耐熱性を有するので、高温ベーク条件でも使用することができる。
【0408】
[実施例13〜18、比較例3]
(リソグラフィー用下層膜形成用組成物の調製)
表3に示す組成となるように、リソグラフィー用下層膜形成用組成物を調製した。すなわち、下記の材料を使用した。
酸発生剤:みどり化学社製 ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウムノナフルオロメタンスルホナート(DTDPI)
架橋剤:三和ケミカル社製 ニカラックMX270(ニカラック)
有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
ノボラック:群栄化学社製 PSM4357
【0409】
次に、下記に示す条件でエッチング試験を行い、エッチング耐性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0410】
[エッチング試験]
エッチング装置:サムコインターナショナル社製 RIE−10NR
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:5:5(sccm)
(エッチング耐性の評価)
エッチング耐性の評価は、以下の手順で行った。
まず、実施例13で用いた化合物(BisF−1−BOC)に代えてノボラック(群栄化学社製 PSM4357)を用いること以外は、実施例13と同様の条件で、ノボラックの下層膜を作製した。そして、このノボラックの下層膜を対象として、前記のエッチング試験を行い、そのときのエッチングレートを測定した。
次に、実施例13〜18及び比較例3の下層膜を対象として、前記エッチング試験を同様に行い、そのときのエッチングレートを測定した。
そして、ノボラックの下層膜のエッチングレートを基準として、以下の評価基準でエッチング耐性を評価した。
−評価基準−
A:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、−10%未満
B:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、−10%〜+5%
C:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、+5%超
【0411】
【表3】
【0412】
[実施例19]
次に、実施例13のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を膜厚300nmのSiO基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚85nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚140nmのフォトレジスト層を形成した。
なお、ArFレジスト溶液としては、下記式(5)の化合物:5質量部、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナート:1質量部、トリブチルアミン:2質量部、及びPGMEA:92質量部を配合して調製したものを用いた。
式(5)の化合物は、次のように調製した。すなわち、2−メチル−2−メタクリロイルオキシアダマンタン4.15g、メタクリルロイルオキシ−γ−ブチロラクトン3.00g、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート2.08g、アゾビスイソブチロニトリル0.38gを、テトラヒドロフラン80mLに溶解させて反応溶液とした。この反応溶液を、窒素雰囲気下、反応温度を63℃に保持して、22時間重合させた後、反応溶液を400mLのn−ヘキサン中に滴下した。このようにして得られる生成樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をろ過し、減圧下40℃で一晩乾燥させて下記式で表される化合物を得た。
【0413】
【化92】

(5)
(式(5)中、40、40、20とあるのは、各構成単位の比率を示すものであり、ブロック共重合体を示すものではない。)
【0414】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS−7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層を露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、ポジ型のレジストパターンを得た。
【0415】
[比較例4]
下層膜の形成を行わないこと以外は、実施例19と同様にして、フォトレジスト層をSiO基板上に直接形成し、ポジ型のレジストパターンを得た。
【0416】
[評価]
実施例19及び比較例4のそれぞれについて、得られた45nmL/S(1:1)及び80nmL/S(1:1)のレジストパターンの形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4800)を用いて観察した。現像後のレジストパターンの形状については、パターン倒れがなく、矩形性が良好なものを良好とし、そうでないものを不良として評価した。また、当該観察の結果、パターン倒れが無く、矩形性が良好な最小の線幅を解像性として評価の指標とした。さらに、良好なパターン形状を描画可能な最小の電子線エネルギー量を感度として、評価の指標とした。その結果を、表4に示す。
【0417】
【表4】
【0418】
表4から明らかなように、実施例19における下層膜は、比較例4に比して、解像性及び感度ともに有意に優れていることが確認された。また、現像後のレジストパターン形状もパターン倒れがなく、矩形性が良好であることが確認された。さらに、現像後のレジストパターン形状の相違から、実施例19におけるリソグラフィー用下層膜形成材料は、レジスト材料との密着性がよいことが示された。
【0419】
[実施例20]
実施例13で用いたリソグラフィー用下層膜形成用組成物を膜厚300nmのSiO基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚90nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、珪素含有中間層材料を塗布し、200℃で60秒間ベークすることにより、膜厚35nmの中間層膜を形成した。さらに、この中間層膜上に、前記ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚150nmのフォトレジスト層を形成した。なお、珪素含有中間層材料としては、特開2007−226170号公報<合成例1>に記載の珪素原子含有ポリマーを用いた。
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS−7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層をマスク露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、45nmL/S(1:1)のポジ型のレジストパターンを得た。
その後、サムコインターナショナル社製 RIE−10NRを用いて、得られたレジストパターンをマスクにして珪素含有中間層膜(SOG)のドライエッチング加工を行い、続いて、得られた珪素含有中間層膜パターンをマスクにした下層膜のドライエッチング加工と、得られた下層膜パターンをマスクにしたSiO膜のドライエッチング加工とを順次行った。
【0420】
各々のエッチング条件は、下記に示すとおりである。
レジストパターンのレジスト中間層膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:1min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:8:2(sccm)
レジスト中間膜パターンのレジスト下層膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:5:5(sccm)
レジスト下層膜パターンのSiO膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:C12ガス流量:Cガス流量:O2ガス流量
=50:4:3:1(sccm)
【0421】
[評価]
前記のようにして得られた実施例20のパターン断面(エッチング後のSiO膜の形状)を、(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4800)を用いて観察したところ、本発明の下層膜を用いた実施例は、多層レジスト加工におけるエッチング後のSiO膜の形状は矩形であり、欠陥も認められず良好であることが確認された。
【0422】
上述したとおり、本実施形態は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0423】
本発明により、安全溶媒に対する溶解性が高く、耐熱性が高い化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂を提供できる。したがって、本発明は、半導体用フォトレジスト等の感光性材料の基材、集積回路の封止材料等に用いられるエポキシ樹脂の原料や硬化剤、感熱記録材料に用いられる顕色剤や退色防止剤、このほか、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤などに好適に利用される。
また、本発明は金属含有量の低減された前記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂を工業的に有利に製造することができる。
【0424】
本発明のレジスト組成物は、特定の構造を有し、安全溶媒に対する溶解性が高い化合物を含み、レジストパターン形状を与える。したがって、本発明は、酸増幅型非高分子系レジスト材料等のレジスト組成物が使用される半導体分野、ディスプレイ分野、フォトマスク、薄膜磁気ヘッド、化合物半導体、研究開発等において有用である。
【0425】
また、本発明は、感放射線性組成物及び該組成物を用いるレジストパターン形成方法に好適に使用される。特に、本発明の感放射線性組成物は、特定の化学構造式で表されるレジスト基材、光活性化合物及び溶媒を含むことにより、例えば、非化学増幅低分子系レジスト材料として有用である。
【0426】
さらに、本発明の化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂は、耐熱性が比較的に高く、溶媒溶解性も比較的に高く、湿式プロセスが適用可能である。そのため、本発明の化合物及び/又は樹脂を用いるリソグラフィー用下層膜形成材料、及び該材料を含む組成物は、これらの性能が要求される各種用途において、広く且つ有効に利用可能である。したがって、本発明は、例えば、電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体用封止樹脂、プリント配線板用接着剤、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載される電気用積層板、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載されるプリプレグのマトリックス樹脂、ビルドアップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤、半導体用のコーティング剤、半導体用のレジスト用樹脂、下層膜形成用樹脂等において、広く且つ有効に利用可能である。特に、本発明はリソグラフィー用下層膜及び多層レジスト用下層膜の分野において有効に利用可能である。
2015年9月10日に出願された日本国特許出願2015−178545号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
また、明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。