(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電極形成工程は、前記分散工程で得られた溶液を濾過することにより溶媒を除去し、炭素粉末と繊維状セルロースのシート状の電極を得る工程であることを特徴とする請求項9記載の電極の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.構成]
以下、本発明に係る電極および電極の製造方法の実施形態について詳細に説明する。まず、本実施形態の電極が適用されるキャパシタについて、コイン形の電気二重層キャパシタを例に説明する。なお、本発明に係る電極及び電極の製造方法は、電気二重層キャパシタに限らず適用可能である。例えば、リチウムイオンキャパシタを含む電気化学キャパシタなど、各種キャパシタや二次電池などの蓄電デバイスに適用することができる。
【0017】
また、本発明に係る電極及び電極の製造方法は、コイン型の電気二重層キャパシタに限らず、ラミネートフィルムを用いて熱封止したラミネート型に適用してもよい。また、正極電極及び負極電極の間にセパレータを介して巻回した円筒型素子に適用してもよい。さらに、正極電極及び負極電極の間にセパレータを介して積層した積層型素子を使用した各種キャパシタや二次電池などの蓄電デバイスにも適用することができる。
【0018】
(1)電気二重層キャパシタ
図1は、電気二重層キャパシタの一例として、炭素粉末および繊維状セルロースを用いたシート電極をコイン形セルに適用したコイン形電気二重層キャパシタの断面図である。コイン形の電気二重層キャパシタは、負極ケース1、電解質2、電極3、セパレータ4、電極5、正極ケース6、ガスケット7からなる。
【0019】
負極ケース1と正極ケース6は、重なり合って内部に空間を形成するセルの筐体である。負極ケース1は、負極集電体と負極端子を兼ねる。正極ケース6は、正極集電体と正極端子を兼ねる。ガスケット7は、負極ケース1と正極ケース6との間のカシメに介在する。ガスケット7は、負極と正極との間の電気的絶縁性を保ち、またセル内容物を密封及び封止する。
【0020】
電解質2、電極3、電極5、およびセパレータ4はセル内容物であり、負極ケース1と正極ケース6で形成された空間の内部に収容される。電極3および電極5は、炭素粉末および繊維状セルロースを用いたシート状の電極である。シート状の電極3および5は、不図示の集電体と一体化されている。
【0021】
電極3は、導電性樹脂接着剤やプレス圧着等により正極ケース6に固定されるとともに電気的に接続される。電極5は、導電性樹脂接着剤やプレス圧着等により負極ケース1に固定されるとともに電気的に接続される。セパレータ4は、対向する電極3及び電極5の接触による短絡を防止すべく、電極3と電極5との間に介在するように配設される。電解質2は、電極3、電極5及びセパレータ7に含浸される。以下、電気二重層キャパシタの各構成要素について、詳細に説明する。
【0022】
(2)電極
以上のような電気二重層キャパシタにおいて、電極3および電極5は、繊維状セルロースと炭素粉末との混合物を含む。具体的には、炭素粉末は、繊維状セルロースの繊維間に絡められて担持されている。電極3および電極5は、炭素粉末と、繊維状セルロースを溶媒中に分散させた後に、溶媒を除去することで得られるシート状の電極である。
【0023】
(繊維状セルロース)
繊維状セルロースは、繊維と繊維の間に極めて小さいナノサイズの炭素粉末を効率的に絡めることができるセルロースである。繊維状セルロースとしては、セルロースナノファイバー等を挙げることができる。セルロースナノファイバーは、幅4〜100nm、長さ50〜1000μmの繊維状セルロースが好ましい。
【0024】
繊維状セルロースには、表面にシランカップリング剤が結合されていても良い。シランカップリング剤としては、メタクリル基およびアルキル基を官能基として有するシランカップリング剤を用いることができる。特に、アルキル基を有するシランカップリング剤を用いると、初期の等価直列抵抗が低下し、負荷試験後の容量維持率が向上するので好ましい。
【0025】
繊維状セルロースに対するシランカップリング剤の結合は、以下の手順により行うことができる。例えば、イソプロピルアルコールに、繊維状セルロースとシランカップリング剤とを質量比で100:1の割合で添加した後、得られた液をホモジナイザーを用いて撹拌する。次いで、撹拌後の溶液を乾燥することにより、シランカップリング剤が表面に結合した繊維状セルロースを得ることができる。
【0026】
(炭素粉末)
炭素粉末は、電極の主たる容量を発現するものである。炭素粉末の種類としては、やしがら等の天然植物組織、フェノール等の合成樹脂、石炭、コークス、ピッチ等の化石燃料由来のものを原料とする活性炭、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック、カーボンナノホーン、無定形炭素、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化ケッチェンブラック、活性炭、メソポーラス炭素などを挙げることができる。
【0027】
炭素粉末には、賦活処理や開口処理などの多孔質化処理を施して使用するのが好ましい。炭素粉末の賦活方法としては、用いる原料により異なるが、通常、ガス賦活法、薬剤賦活法などの従来公知の賦活処理を用いることができる。ガス賦活法に用いるガスとしては、水蒸気、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、塩化水素、酸素またはこれらを混合したものからなるガスが挙げられる。また、薬剤賦活法に用いる薬剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;ホウ酸、リン酸、硫酸、塩酸等の無機酸類;または塩化亜鉛などの無機塩類などが挙げられる。この賦活処理の際には必要に応じて炭素粉末に加熱処理が施される。なお、これらの賦活処理以外にも炭素粉末に孔を形成する開口処理を用いても良い。
【0028】
また、炭素粉末は比表面積が、600〜2000m
2/gの範囲にあるものが望ましい。炭素粉末はその一次粒子の平均粒子径としては100nm未満が望ましく、その中でも特に50nm未満が望ましい。炭素粉末の平均粒子径が100nm未満であると、極めて小さい粒子径であるため拡散抵抗が低くその導電率は高い。また、多孔質化処理による比表面積が大きいため高容量発現効果を期待することができる。炭素粉末の平均粒子径が100nmより大きいと、炭素粉末の粒子内のイオン拡散抵抗が大きくなり、結果として得られるキャパシタの抵抗が高くなってしまう。一方、炭素粉末の凝集状況を考慮すると、平均粒子径は5nm以上が好ましい。なお、平均粒子径が100nm未満とした極めて小さな炭素粉末を個々に連結(数珠つなぎ状)した形態をとることで導電率の向上が得られる。炭素粉末としては特に賦活したカーボンブラックが好ましい。また、炭素粉末の平均粒子径としては10μm未満の場合にでも、分散方法として後述する超遠心処理及びジェットミキシングによる処理により、本発明の効果を奏することが可能である。
【0029】
(含有量)
本実施形態の電極は、以上のような炭素粉末と繊維状セルロースの混合物を含む。炭素粉末と繊維状セルロースを混合する場合、その含有率は、炭素粉末と繊維状セルロースの合計量に対し、繊維状セルロースが5〜40重量%、特には5〜15重量%含有されていることが好ましい。
【0030】
繊維状セルロースが40重量%までの範囲では、高容量密度及び低内部抵抗の範囲を維持するが、繊維状セルロースの含有量が50重量%まで増えると、キャパシタの内部抵抗が低内部抵抗の範囲を逸脱して上昇するとともに、容量密度が高容量密度の範囲を逸脱して減少する傾向がある。また、この範囲より小さいと炭素粉末が凝集されやすくなり、電極3および電極5をシート状に形成し難くなる。更に、繊維状セルロースが5重量%以上15重量%以下の範囲は、繊維状セルロースが5重量%以上40重量%以下の範囲内の中でも傑出した高容量密度及び低内部抵抗が達成されるため、好ましい。
【0031】
(分散溶液)
炭素粉末と繊維状セルロースとを分散させる溶媒としては、メタノール、エタノールや2−プロパノールなどのアルコール、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)やN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド系溶媒、水、これらの溶媒を単独で使用するものや2種類以上を混合するものなどの各種溶媒を使用することができる。またこの溶媒中には分散剤などの添加剤を加えてもよい。
【0032】
(集電体)
シート状電極3および電極5と一体化される集電体としては、アルミニウム箔、白金、金、ニッケル、チタン、鋼、およびカーボンなどの導電材料を使用することができる。集電体の形状は、膜状、箔状、板状、網状、エキスパンドメタル状、円筒状などの任意の形状を採用することができる。また集電体の表面はエッチング処理などによる凹凸面を形成してもよく、またプレーン面であってもよい。
【0033】
(3)負極ケース、正極ケース
負極ケース1は外側片面をNiメッキしたステンレス鋼製の板を絞り加工したものからなる。また、正極ケース6はセルケース本体となる外側片面をNiメッキしたステンレス鋼もしくはAl、Ti等の弁作用金属等からなる。
【0034】
負極ケース1および正極ケース6としては、SUS316、316Lや二層ステンレス等のMo含有ステンレス鋼やAl、Ti等の弁作用金属が、耐食性が高く好適に用いることができる。また、ステンレス鋼とAiやTi等の弁作用金属を冷間圧延等で圧着接合して貼り合せたクラッド材を、弁作用金属側をセルの内側面にして用いることが特に好ましい。高電圧印加に対する耐食性が高く、且つ封口時の機械的強度が高く、封口の信頼性の高いセルが得られるからである。なお、負極ケース1および正極ケース6は、前述の集電体として記載した材料を用いてもよく、またその形態を適用しても良い。
【0035】
(4)セパレータ
セパレータ4はセルロース系セパレータ、合成繊維不織布系セパレータやセルロースと合成繊維を混抄した混抄セパレータなどが使用できる。ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、セラミクスやガラス等々の繊維からなる不織布や混抄紙あるいは多孔質フィルム等を好適に用いることができる。リフローハンダ付けを行なう場合には、熱変形温度が230℃以上の樹脂を用いる。例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、フッ素樹脂やセラミクス、ガラス等を用いることができる。キャパシタにおいては、耐酸性の材料(合成繊維不織布やガラス材料)を用いるのが好ましい。
【0036】
(5)電解質
電解質2は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルイソプロピルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソブチルスルホンなどの鎖状スルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ニトロメタン、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、水又はこれらの混合物などの溶媒を使用することができる。特に、電解質2として、スルホランと、スルホラン骨格に側鎖を有するスルホラン化合物又は鎖状スルホンとの混合物を溶媒とした場合には、電気二重層キャパシタの電極容量の時間経過による影響を低減することができる。スルホラン化合物は、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドの環状スルホン構造を有し、例えば、スルホラン、3−メチルスルホラン等のスルホラン骨格にアルキル基の側鎖を有する化合物、又はこれらの混合物である。鎖状スルホンは、2つのアルキル基がスルホニル基に結合して鎖状構造を有し、例えば、エチルイソプロピルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソブチルスルホン等を挙げることができる。
【0037】
電解質2としては、第4級アンモニウム塩またはリチウム塩からなる群から選ばれる1種以上の電解質が含有されている。第4級アンモニウムイオンやリチウムイオンを生成し得る電解質であれば、あらゆる第4級アンモニウム塩またはリチウム塩を用いることができる。第4級アンモニウム塩およびリチウム塩からなる群より選ばれる一種以上を用いることがより好ましい。特に、エチルトリメチルアンモニウムBF
4、ジエチルジメチルアンモニウムBF
4、トリエチルメチルアンモニウムBF
4、テトラエチルアンモニウムBF
4、スピロ−(N,N’)−ビピロリジニウムBF
4、メチルエチルピロリジニウムBF
4、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムBF
4、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムBF
4、エチルトリメチルアンモニウムPF
6、ジエチルジメチルアンモニウムPF
6、トリエチルメチルアンモニウムPF
6、テトラエチルアンモニウムPF
6、スピロ−(N,N’)−ビピロリジニウムPF
6、テトラメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、エチルトリメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、ジエチルジメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、トリエチルメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、テトラエチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、スピロ−(N,N’)−ビピロリジニウムビス(オキサラト)ボレート、テトラメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、エチルトリメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、ジエチルジメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、トリエチルメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、テトラエチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、スピロ−(N,N’)−ビピロリジニウムジフルオロオキサラトボレート、LiBF
4、LiPF
6、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等が好ましい。
【0038】
また、電解質には、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、リン酸類及びその誘導体(リン酸、亜リン酸、リン酸エステル類、ホスホン酸類等)、ホウ酸類及びその誘導体(ホウ酸、酸化ホウ酸、ホウ酸エステル類、ホウ素と水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物との錯体等)、硝酸塩(硝酸リチウム等)、ニトロ化合物(ニトロ安息香酸、ニトロフェノール、ニトロフェネトール、ニトロアセトフェノン、芳香族ニトロ化合物等)等があげられる。添加剤量は、導電性の観点から好ましくは電解質全体の10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下である。また、電解質には、ガス吸収剤を含有してもよい。電極から発生するガスの吸収剤として、電解質の各成分(溶媒、電解質塩、各種添加剤等)と反応せず、かつ、除去(吸着など)しないものであれば、特に制限されない。具体例としては、例えば、ゼオライト、シリカゲルなどが挙げられる。
【0039】
(6)ガスケット
ガスケット7は、電解質2に不溶性耐食性且つ電気絶縁性のある樹脂を主体とする。例えば、ガスケット7は、通常ポリプロピレンやナイロン等の樹脂が用いられる。リフローハンダ付けを行なう場合には、熱変形温度が230℃以上の樹脂を用いる。例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、また、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等々が使用できる。また、これらの材料に30重量%程度以下の添加量でガラス繊維、マイカウイスカー、セラミック微粉末等を添加したものを好適に用いることができる。
【0040】
[2.電極の製造方法]
上記のような本実施形態の電極の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)炭素粉末と、繊維状セルロースを溶媒中に分散させる分散工程
(2)分散工程で得られた溶液の溶媒を除去し、炭素粉末と繊維状セルロースの電極を得る電極形成工程
【0041】
(1)分散工程
分散工程では、炭素粉末と繊維状セルロースとを溶媒中に分散させる。すなわち、分散工程では、炭素粉末と繊維状セルロースを混合した混合溶液に対して、分散処理を行う。分散処理を行うことで、混合溶液中の炭素粉末と繊維状セルロースを細分化及び均一化し、溶液中に分散させる。つまり、分散処理前の混合溶液中の繊維状セルロースは、セルロース繊維同士がからみあった状態(バンドル状)である。分散処理を行うことにより、繊維状セルロースのバンドルが解れ、繊維状セルロースが溶液中に分散する。
【0042】
分散方法としては、ミキサー、ジェットミキシング(噴流衝合)、または、超遠心処理、その他超音波処理などを使用する。炭素粉末と繊維状セルロースに溶媒中における分散度合いの向上と、得られたシート電極の電極密度の向上を考慮すると、分散方法としては、ジェットミキシング又は超遠心処理が好ましい。特に、このようなジェットミキシング又は超遠心処理を用いることで、極めて小さい粒子径である炭素粉末と繊維状セルロースの凝集が抑制され、内部抵抗の低い電極を得ることができる。
【0043】
ミキサーによる分散方法では、炭素粉末と繊維状セルロースを含む混合溶液に対して、ボールミル、ホモジナイザー、ホモミキサーなどにより、物理的な力を加え、溶液中の炭素粉末と繊維状セルロースを撹拌することにより細分化する。炭素粉末に対して外力を加えることで、凝集した炭素粉末と繊維状セルロースを細分化及び均一化するとともに、絡み合った炭素粉末と繊維状セルロースを解すことができる。
【0044】
ジェットミキシングによる分散方法では、筒状のチャンバの内壁の互いに対向する位置に一対のノズルを設ける。炭素粉末と繊維状セルロースとを含む混合溶液を、高圧ポンプにより加圧し、一対のノズルより噴射してチャンバ内で正面衝突させる。これにより、繊維状セルロースのバンドルが粉砕され、分散及び均質化することができる。ジェットミキシングの条件としては、圧力は100MPa以上、濃度は5g/l未満が好ましい。
【0045】
超遠心処理による分散方法では、炭素粉末と繊維状セルロースを含む混合溶液に対して超遠心処理を行う。超遠心処理は、旋回する容器内で混合溶液の炭素粉末と繊維状セルロースにずり応力と遠心力を加える。例えば、超遠心処理では、容器の内筒内部に混合溶液を投入し、内筒を旋回することによってその遠心力で内筒内部の炭素粉末と繊維状セルロースが内筒の貫通孔を通って外筒の内壁に衝突し、薄膜状となって内壁の上部へずり上がる。この状態では炭素粉末と繊維状セルロースには内壁との間のずり応力と内筒からの遠心力の双方が同時に加わり、混合溶液中の炭素粉末と繊維状セルロースに大きな機械的エネルギーが加わることになる。
【0046】
この超遠心処理は、混合溶液中の炭素粉末と繊維状セルロースに加えられるずり応力と遠心力の機械的エネルギーによって実現できるものと考えられるが、このずり応力と遠心力は内筒内の混合溶液中の炭素粉末と繊維状セルロースに加えられる遠心力によって生じる。したがって、本発明に必要な内筒内の炭素粉末と繊維状セルロースに加えられる遠心力は1500N(kgms
−2)以上、好ましくは60000N(kgms
−2)以上、さらに好ましくは270000N(kgms
−2)以上である。
【0047】
この超遠心処理においては、混合溶液中の炭素粉末と繊維状セルロースにずり応力と遠心力の双方の機械的エネルギーが同時に加えられることによって、この機械的なエネルギーが、混合溶液中の炭素粉末と繊維状セルロースを均一化及び細分化させる。
【0048】
以上のような分散処理は、炭素粉末と繊維状セルロースとを混合した混合溶液に対して行うことが好ましい。ただし、別途繊維状セルロースを投入した溶液を準備し、この溶液に対して分散処理を行い、バンドルが解けた繊維状セルロースを得、この繊維状セルロースと炭素粉末とを混合して混合溶液を得ても良い。また、別途炭素粉末を投入した溶液を準備し、この溶液に対して分散処理を行い、細分化した炭素粉末を得、この炭素粉末と繊維状セルロースとを混合して混合溶液を得ても良い。さらには、別途繊維状セルロースを投入した溶液を準備し、この溶液に対して分散処理を行い、バンドルが解けた繊維状セルロースを得、同じく別途炭素粉末を投入した溶液を準備し、この溶液に対して分散処理を行い、細分化した炭素粉末を得、これらの繊維状セルロースと炭素粉末とを混合して混合溶液を得てもよい。これらの混合溶液についても、分散処理を施すと良い。
【0049】
(2)シート電極形成工程
シート電極形成工程では、抄紙成型で炭素粉末と繊維状セルロースからなるシート状の電極3及び電極5を得る。抄紙成型では、分散工程を経た混合溶液を濾過することで、分散工程を経た混合溶液の溶媒を除去する。抄紙成型では、ガラス繊維の不織布、有機系不織布(ポリテトラフルオロエチレンやポリエチレンなど)、または、金属製繊維の不織布などの濾紙を用いることが出来る。濾紙を用いて混合溶液を減圧濾過および乾燥することで、混合溶液中の溶媒が除去される。よって、この濾紙上に炭素粉末と繊維状セルロースが堆積し、シート電極3および電極5が得られる。炭素粉末は、繊維セルロース間に分散し、担持されている。シート状の電極3及び電極5は、濾紙から剥離して使用することが好ましい。
【0050】
このシート電極形成工程で作製した炭素粉末と繊維状セルロースのシート状の電極3および電極5は、集電体と同じサイズに切り取られる。切り取られたシート状の電極3および電極5は、集電体となるエッチング処理したアルミニウム箔の上に載せられ、箔およびシート電極の上下方向からプレスされることで、アルミニウム箔の凹凸面に食い込み一体化される。一体化については、前述のプレスでもよく、また導電性接着剤を用いても良い。なお、電極5及び電極7は、必要に応じて、集電体と一体化する前にプレスなどによる平坦化処理を施しても良い。
【0051】
[3.作用効果]
本実施形態の電極が奏する作用効果は以下の通りである。
(1)本実施形態の電極は、繊維状セルロースと炭素粉末と、を含み、炭素粉末は、繊維状セルロースの繊維間に絡められて担持されている。
以上のような本実施形態の電極では、繊維状セルロースがバインダーとしての役割を担い、少量にて炭素粉末を保持可能となるため、抵抗を低減した電極を提供することができる。
【0052】
(2)繊維状セルロースと炭素粉末とが濾紙上に堆積し、シート状に形成されている。
樹脂系のバインダーを使用せずに、混合溶液の濾過によって、濾紙上にシート状の電極を作製することで抵抗を低減することができる。
【0053】
(3)繊維状セルロースは、セルロースナノファイバーである。
セルロースナノファイバーを用いることで、炭素粉末を確実にセルロースナノファイバーの繊維間に絡めとることができる。そのため、内部抵抗の上昇を抑制することができる。
【0054】
(4)炭素粉末は、賦活処理されたカーボンブラックである。
賦活処理により多孔質化されたカーボンブラックは、比表面積が大きいため高容量発現効果を期待することができる。また、カーボンブラックは、小さな凝集体として網目状の繊維状セルロースに分散して担持される。よって、繊維状セルロースにおけるカーボンブラックの分散度合いを向上させることができる。そのため、内部抵抗の上昇を抑制することができる。
【0055】
(5)繊維状セルロースの表面には、シランカップリング剤が結合されている。
繊維状セルロースは、表面にOH基を有する。そのため、例えば非水系の電気二重層キャパシタにおいて繊維状セルロースを用いると、OH基に起因する水により加水分解が発生し、キャパシタの劣化要因となるおそれがある。繊維状セルロースの表面にシランカップリング剤が結合されている場合、シランカップリング剤の官能基が表面に配向する。シランカップリング剤の官能基は疎水性であるため、繊維状セルロースのOH基に起因する劣化が生じることを防止できる。
【0056】
(6)シランカップリング剤は、アルキル基を官能基として有する。
アルキル基を有するシランカップリング剤を用いた場合、初期の等価直列抵抗を低下させ、負荷試験後の容量維持率を向上させることができる。
【0057】
以上のような電極を、集電体の上に形成した電気二重層キャパシタによれば、等価直列抵抗を低減させることが可能となる。
【0058】
また、本実施形態の電極の製造方法が奏する作用効果は以下の通りである。
(7)本実施形態の電極の製造方法は、炭素粉末と、繊維状セルロースを溶媒中に分散させる分散工程と、前記分散工程で得られた溶液の溶媒を除去し、炭素粉末と繊維状セルロースのシート電極を得るシート電極形成工程と、を有する。
【0059】
炭素粉末と繊維状セルロースを混合溶液中において分散させ、溶液の溶媒を除去することにより電極を作成することで、繊維状セルロースがバインダーとしての役割を担う。よって、抵抗を増大させる樹脂系のバインダーが不要となるため、電極の抵抗を低減することができる。また、ジェットミキシングや超遠心処理などの分散手法を用いて、炭素粉末と繊維状セルロースの混合溶液中における分散度合いを向上させることで、シート電極が緻密・均質な形態とされ電極密度が高まる。よって、従来のミクロンサイズの炭素粉末を用いた電極と同等レベルの容量を得ることができる優れたシート電極が実現される。
【実施例】
【0060】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0061】
(1)特性評価
<実施例1の電気二重層キャパシタの作成>
まず、水蒸気賦活処理した平均粒子径12nmのカーボンブラックを、電極に含まれる炭素粉末と繊維状セルロースの合計量50mgに対して80wt%となるように、40mg量り取った。次に、繊維状セルロースとして、外径20nm、長さ150μmのセルロースナノファイバーを、電極に含まれる炭素粉末と繊維状セルロースの合計量50mgに対して20wt%となるように、10mg量り取った。合計量が50mgであるカーボンブラックとセルロースナノファイバーを、50mlのメタノールと混合させて混合溶液を作製した。
【0062】
上記の混合溶液に対して、超遠心分散処理において、周速40m/sで30秒間分散処理を行い、炭素粉末/繊維状セルロース/メタノール分散液を作製した。この分散液をPTFE濾紙(直径:80mm、平均細孔0.2μm)を用いて減圧濾過し、抄紙成型した炭素粉末/繊維状セルロースのシート電極を得た。これをアルミニウム板の上に載せ、別のアルミニウム板で挟み、板の上下方向から1t/cm
2の圧力で1分間プレスし、炭素粉末と繊維状セルロースのシート電極を得た。
【0063】
この炭素粉末と繊維状セルロースのシート電極をアルミニウム板から剥離し、集電体と同じサイズに切り分けた。切り分けたシート電極を、集電体となるアルミニウム箔の上に導電性接着剤により貼り付け、常圧下120℃にて1時間乾燥し、2枚の電極体を得た。得られた2枚の電極体を、セルロース系セパレータを介して配置し、電気二重層キャパシタ素子を作製した(電極面積:2.1cm
2)。そして、スルホラン(SL)溶媒1Lに、電解質としてTEMABF
4を1.4モル添加した(1.4M TEMABF
4/SL)電解液を素子に含浸した後、ラミネートフィルムを用いて熱封止し、評価用セル(電気二重層キャパシタ)を作製した。
【0064】
<実施例2の電気二重層キャパシタの作成>
炭素粉末として、平均粒子径数μmの活性炭を用いた点以外は、実施例1と同様に作成した。
【0065】
<比較例1の電気二重層キャパシタの作成>
活性炭粉末に、アセチレンブラック等の導電性物質及びポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン樹脂等の樹脂をバインダーとして添加して混合した後、加圧成型してシート電極を形成した点以外は、実施例1と同様に作成した。
【0066】
(a)シート電極のSEM像
図2に、実施例1において得られた、カーボンブラックとセルロースナノファイバーのシート電極のSEM(×10.0k)像を示す。
図2からも明らかな通り、カーボンブラックは、セルロースナノファイバーの繊維と繊維の間に絡め取られるようにして担持されている。また、超遠心処理により分散処理が行われている実施例1のシート電極は、セルロースナノファイバーのバンドルが充分に解け、セルロースナノファイバーの網目も密となっている。さらに、カーボンブラックの凝集状態が崩れ、小さな凝集体に細分化されている。密な網目状のセルロースナノファイバーには、カーボンブラックが細分化された凝集体の状態で担持され、セルロースナノファイバーとカーボンブラックが均一に分散されている。よって、シート電極の表面の形状が緻密である。
【0067】
評価用セルについて、初期特性評価として、静電容量の算出と初期の直流抵抗の測定を行った結果を以下に示す。
【0068】
(b)静電容量の算出
図3は、実施例1,2及び比較例1における、充電電圧と容量密度の関係を表したグラフである。なお、
図3は各例について2サンプルずつ測定した結果を示している。このグラフから、充電電圧2.7V〜3.3Vの範囲において、実施例1,2の容量密度は、比較例1の容量密度と大きな変化が無いことが分かった。すなわち、実施例1,2の繊維状セルロースと炭素粉末を含む電気二重層キャパシタでは、従来同様に電極単位体積当たりの静電容量が高い電気二重層キャパシタを得ることができる。
【0069】
(c)初期直流抵抗の測定
図4は、実施例1,2及び比較例1における、充電電圧と直流抵抗(DCIR)の関係を表したグラフである。それぞれ2.7V、3V、3.3Vにおいて、30分間電圧印加後に測定した結果を示す。なお、
図4は各例について2サンプルずつ測定した結果を示している。直流抵抗は、このグラフから、充電電圧2.7V〜3.3Vの範囲において、不純物として作用する樹脂系のバインダーを用いた比較例1の直流抵抗は高いことが分かった。これに対して、炭素粉末と、繊維状セルロースを分散させた混合溶液を濾過した実施例1および2では、炭素粉末は、繊維状セルロースの繊維間に絡められて担持されている。すなわち、繊維状セルロースがバインダーとしての役割を担っているため、樹脂系のバインダーを用いた比較例1と比較して、直流抵抗が極めて優れた値となっている。
【0070】
評価用セルについて、加速試験として、60度で3.3V定電圧負荷試験を行い、任意の時間において、容量維持率および直流抵抗(DCIR)を測定した結果を以下に示す。
【0071】
(d)容量維持率の測定
図5は、実施例1,2及び比較例1における、負荷時間と容量維持率の関係を表したグラフである。容量維持率は、3.3Vで30分間電圧印加した後の電極容量と、各測定時間において電圧印加した後の電極容量を測定し、その容量の比(各測定時間において電圧印加した後の容量/30分間電圧印加した後の容量)×100%の値とした。
図5より、比較例1の評価用セルでは、特に500時間以降の容量維持率が極端に低下している。一方、炭素粉末と、繊維状セルロースを分散させた混合溶液を濾過した実施例1および2では、比較例1と比較して、容量維持率の低下が抑制されていることが分かった。
【0072】
(e)直流抵抗の測定
図6は、実施例1,2及び比較例1における、負荷時間と直流抵抗(DCIR)の関係を表したグラフである。
図6より、比較例1の評価用セルでは、不純物として作用する樹脂系バインダーが用いられていることから、負荷時間が長くなるに従い直流抵抗が極端に増加している。一方、炭素粉末と、繊維状セルロースを分散させた混合溶液を濾過した実施例1および2では、樹脂系バインダーを用いた比較例1と比較して、直流抵抗の増加が抑制されていることが分かった。
【0073】
(2)シランカップリング剤の特性評価
<実施例3の電気二重層キャパシタの作成>
イソプロピルアルコールに、セルロースナノファイバーと、メタクリル基を官能基として有するシランカップリング剤と、を質量比で9:1の割合で添加した。得られた液をホモジナイザーを用いて、回転数9500rpmで5分間撹拌した。セルロースナノファイバーを回収し、乾燥することにより、シランカップリング剤が表面に結合した繊維状セルロースを得た。
【0074】
水蒸気賦活処理した平均粒子径12nmのカーボンブラックを、電極に含まれる炭素粉末と繊維状セルロースの合計量50mgに対して90wt%となるように、45mg量り取った。次に、得られたセルロースナノファイバーを、電極に含まれる炭素粉末と繊維状セルロースの合計量50mgに対して10wt%となるように、5mg量り取った。合計量が50mgであるカーボンブラックとセルロースナノファイバーを、50mlのメタノールと混合させて混合溶液を作製した。
【0075】
上記の混合溶液に対して、超遠心分散処理において、周速40m/sで30秒間分散処理を行い、繊維状セルロース/メタノール分散液を作製した。この分散液をPTFE濾紙(直径:80mm、平均細孔0.2μm)を用いて減圧濾過し、抄紙成型した繊維状セルロースのシート電極を得た。これをアルミニウム板の上に載せ、別のアルミニウム板で挟み、板の上下方向から1t/cm
2の圧力で1分間プレスし、繊維状セルロースのシート電極を得た。
【0076】
この炭素粉末と繊維状セルロースのシート電極をアルミニウム板から剥離し、集電体と同じサイズに切り分けた。切り分けたシート電極を、集電体となるアルミニウム箔の上に導電性接着剤により貼り付け、常圧下120℃にて1時間乾燥し、2枚の電極体を得た。得られた2枚の電極体を、セルロース系セパレータを介して配置し、電気二重層キャパシタ素子を作製した(電極面積:2.1cm
2)。そして、スルホラン(SL)溶媒1Lに、電解質としてTEMABF
4を1.4モル添加した(1.4M TEMABF
4/SL)電解液を素子に含浸した後、ラミネートフィルムを用いて熱封止し、評価用セル(電気二重層キャパシタ)を作製した。
【0077】
<実施例4の電気二重層キャパシタの作成>
シランカップリング剤として、官能基にアルキル基を有するシランカップリング剤を用いた点以外は、実施例3と同様に作成した。
【0078】
<比較例2の電気二重層キャパシタの作成>
シランカップリング剤を添加しなかった点以外は、実施例3と同様に作成した。
【0079】
(a)静電容量および初期直流抵抗の測定
表1に、実施例3、実施例4、および比較例2について、充電電圧3.3Vにおいて静電容量の算出および直流抵抗(DCIR)の測定を行った結果を示す。
【表1】
【0080】
表1より、アルキル基を官能基に有するシランカップリング剤を用いた実施例4では、シランカップリング剤を用いていない比較例2と比較して、容量密度が高く、かつ、直流抵抗が低い電気二重層キャパシタを得ることができた。メタクリル基を官能基に有するシランカップリング剤を用いた実施例3では、シランカップリング剤を用いていない比較例2と比較して、容量密度が低く、かつ、直流抵抗が高くなるということが分かった。
【0081】
(b)容量維持率の測定
評価用セルについて、加速試験として、60度で3.3V定電圧負荷試験を行い、任意の時間において、容量維持率を測定した結果を以下に示す。容量維持率は、3.3Vで30分間電圧印加した後の電極容量と、各測定時間において電圧印加した後の電極容量を測定し、その容量の比(各測定時間において電圧印加した後の容量/30分間電圧印加した後の容量)×100%の値とした。
【0082】
図7は、実施例3〜4、および比較例2における、負荷時間と容量維持率の関係を表したグラフである。上記の通り、メタクリル基を官能基に有するシランカップリング剤を用いた実施例3では、初期特性の面では比較例2に劣っていた。しかし、
図7より、実施例3は、実施例4および比較例2と比較して、容量維持率が高いことが分かった。また、初期特性が良好であった実施例4も、比較例2と比較して良好な容量維持率を得られることがわかった。以上より、アルキル基を官能基に有するシランカップリング剤では、初期特性および容量維持率の双方において良好な結果が得られることがわかった。
【0083】
(3)繊維状セルロースの含有率評価
炭素粉末と繊維状セルロースの合計量50mgに対して繊維状セルロースの比率が9wt%、10wt%、15wt%、20wt%、30wt%、40wt%及び50wt%となるように、炭素粉末と繊維状セルロースを各々量り取って、50mlのメタノールと混合させて、繊維状セルロースの含有率が異なる計7種類の混合溶液を作製した。炭素粉末は、水蒸気賦活処理した平均粒子径12nmのカーボンブラックであり、繊維状セルロースは、外径20nm、長さ150μmのセルロースナノファイバーである。
【0084】
これら混合溶液に対して、超遠心分散処理において、周速40m/sで30秒間分散処理を行い、炭素粉末/繊維状セルロース/メタノール分散液を各々作製した。この分散液をPTFE濾紙を用いて減圧濾過し、抄紙成型した炭素粉末/繊維状セルロースのシート電極を各々得た。これをアルミニウム板の上に載せ、別のアルミニウム板で挟み、板の上下方向からプレスし、炭素粉末と繊維状セルロースのシート電極を得た。
【0085】
この炭素粉末と繊維状セルロースの各シート電極をアルミニウム板から剥離し、集電体と同じサイズに切り分けた。切り分けた各シート電極を、集電体となるアルミニウム箔の上に導電性接着剤により貼り付け、常圧下120℃にて1時間乾燥し、2枚の電極体を各々得た。得られた2枚の電極体を、セルロース系セパレータを介して配置し、各電気二重層キャパシタ素子を作製した(電極面積:2.1cm
2)。そして、プロピレンカーボネート(PC)の溶媒1Lに、電解質として1.4MのTEMABF
4を1.4モル添加して調製された1.4M TEMABF
4/PC電解液を各電気二重層キャパシタ素子に含浸した後、ラミネートフィルムを用いて熱封止し、評価用セル(電気二重層キャパシタ)を各々作製した。
【0086】
(a)静電容量密度の算出
図8は、炭素粉末と繊維状セルロースの合計量に対して繊維状セルロースの含有率を9wt%、10wt%、15wt%、20wt%、30wt%、40wt%及び50wt%とした電極体で作製された各評価用セルに関し、静電容量密度を示すグラフであり、横軸は炭素粉末と繊維状セルロースの合計量に対して繊維状セルロースの含有率(%)を示し、縦軸は静電容量密度(F/cc)を示す。静電容量密度の測定に際し、電圧範囲を3−0Vとし、定電流密度を2mA/cm
2として、各評価用セルを充放電した。
【0087】
図8に示すように、繊維状セルロースが40重量%までの範囲では、10F/cc以上の静電容量密度を達成したが、繊維状セルロースの含有量が50重量%に増えると、8F/ccの静電容量密度となった。即ち、繊維状セルロースが40重量%までの範囲では高容量密度を達成することが確認された。更に、繊維状セルロースの含有率を5−15重量%とした範囲では、13F/cc以上の静電容量密度を達成した。即ち、繊維状セルロースの含有率を5−15重量%とした範囲では傑出した高容量密度を達成することが確認された。
【0088】
(b)内部抵抗の算出
図9は、炭素粉末と繊維状セルロースの合計量に対して繊維状セルロースの含有率を9wt%、10wt%、15wt%、20wt%、30wt%、40wt%及び50wt%として電極体を用いて作製された各評価用セルに関し、内部抵抗を示すグラフであり、横軸は炭素粉末と繊維状セルロースの合計量に対して繊維状セルロースの含有率(%)を示し、縦軸は内部抵抗(Ω・cm
2)を示す。内部抵抗の測定に際し、電圧範囲を3−0Vとし、定電流密度を2mA/cm
2として、各評価用セルを充放電した。
【0089】
図9に示すように、繊維状セルロースが40重量%までの範囲では、5Ω・cm
2以下の内部抵抗値を達成したが、繊維状セルロースの含有量が50重量%に増えると、6弱Ω・cm
2の内部抵抗値まで上がった。即ち、繊維状セルロースの含有率が40重量%までの範囲では低内部抵抗を達成することが確認された。更に、繊維状セルロースの含有率が5−15重量%の範囲では、4Ω・cm
2未満の内部抵抗値を達成した。即ち、繊維状セルロースの含有率が5−15重量%までの範囲では傑出した高容量密度を達成することが確認された。