特許第6848905号(P6848905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848905
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/00 20060101AFI20210315BHJP
   B66C 23/04 20060101ALI20210315BHJP
   B66C 23/06 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   B66C23/00 A
   B66C23/04 Z
   B66C23/06 Z
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-43256(P2018-43256)
(22)【出願日】2018年3月9日
(65)【公開番号】特開2019-156536(P2019-156536A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 洋幸
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−285992(JP,A)
【文献】 特開2003−81578(JP,A)
【文献】 特開平11−171474(JP,A)
【文献】 特開昭50−159041(JP,A)
【文献】 米国特許第5645181(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00−23/94
B66C 13/00−15/06
B66D 1/00− 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起伏及び伸縮自在のブームと、
前記ブームから垂下するワイヤロープと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しをするウインチと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しによって昇降するフックと、を備えたクレーンにおいて、
前記ウインチの作動状態を指示できる巻回操作具を具備し、
前記巻回操作具の操作によって前記フックが所定の吊下長さまで上昇すると、その吊下長さを保つように前記ワイヤロープを巻き出しながら前記ブームが起立かつ伸長して前記フックの上昇動作を継続させる、ことを特徴とするクレーン。
【請求項2】
前記ブームの起立動作と伸長動作を調節して前記フックの上昇動作を鉛直上向きとする、ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記巻回操作具の操作によって前記ブームの起立動作と伸長動作による前記フックの上昇動作速度を変更できる、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクレーン。
【請求項4】
起伏及び伸縮自在のブームと、
前記ブームから垂下するワイヤロープと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しをするウインチと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しによって昇降するフックと、を備えたクレーンにおいて、
前記ウインチの作動状態を指示できる巻回操作具と、
前記フックの吊下長さを保つように指示できるスイッチと、を具備し、
前記スイッチが「入」状態のときに前記巻回操作具を一方へ操作すると、前記フックの吊下長さを保つように前記ワイヤロープを巻き出しながら前記ブームが起立かつ伸長して前記フックを上昇させ、
前記スイッチが「入」状態のときに前記巻回操作具を他方へ操作すると、前記フックの吊下長さを保つように前記ワイヤロープを巻き入れながら前記ブームが倒伏かつ収縮して前記フックを降下させる、ことを特徴とするクレーン。
【請求項5】
前記ブームの起立動作と伸長動作或いは前記ブームの倒伏動作と収縮動作を調節して前記フックの昇降動作を鉛直上向き又は鉛直下向きとする、ことを特徴とする請求項4に記載のクレーン。
【請求項6】
前記巻回操作具の操作によって前記ブームの起立動作と伸長動作或いは前記ブームの倒伏動作と収縮動作による前記フックの昇降動作速度を変更できる、ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のクレーン。
【請求項7】
起伏及び伸縮自在のブームと、
前記ブームから垂下するワイヤロープと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しをするウインチと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しによって昇降するフックと、を備えたクレーンにおいて、
前記ウインチの作動状態を指示できる巻回操作具と、
前記フックの揚程を保つように指示できるスイッチと、を具備し、
前記スイッチが「入」状態のときに前記巻回操作具を一方へ操作すると、前記フックの揚程を保つように前記ワイヤロープを巻き出しながら前記ブームが起立かつ伸長して当該ブームの姿勢を変化させ、
前記スイッチが「入」状態のときに前記巻回操作具を他方へ操作すると、前記フックの揚程を保つように前記ワイヤロープを巻き入れながら前記ブームが倒伏かつ収縮して当該ブームの姿勢を変化させる、ことを特徴とするクレーン。
【請求項8】
前記ブームの起立動作と伸長動作或いは前記ブームの倒伏動作と収縮動作を調節して前記フックの位置を維持する、ことを特徴とする請求項7に記載のクレーン。
【請求項9】
前記巻回操作具の操作によって前記ブームの起立動作と伸長動作或いは前記ブームの倒伏動作と収縮動作による当該ブームの姿勢変化速度を変更できる、ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンに関する。詳しくは、操作性の向上と安全性の向上を実現させたクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、代表的な作業車両であるクレーンが知られている(特許文献1参照)。クレーンは、主に走行体と旋回体で構成されている。走行体は、複数の車輪を備え、走行自在に構成されている。旋回体は、ブームのほかにワイヤロープとウインチとフックを備え、荷物を運搬自在に構成されている。
【0003】
ところで、このようなクレーンは、ブームを起立かつ伸長させた状態で荷物の運搬作業を行うものである(特許文献2参照)。しかし、ワイヤロープを巻き出しながら同時にブームを起立かつ伸長させる操作は、複雑で難しいという問題があった。また、ブームの起立動作と伸長動作を適宜に操作しなければ、フック或いは荷物が水平方向へ動くこととなり、このフック或いは荷物が建築物等の側面に衝突してしまうという問題もあった。加えて、これらの問題は、ワイヤロープを巻き入れながら同時にブームを倒伏かつ収縮させる操作についても同様に存在する。そこで、操作性の向上と安全性の向上を実現させたクレーンが求められていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−122003号公報
【特許文献2】特開2017−30634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
操作性の向上と安全性の向上を実現させたクレーンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、
起伏及び伸縮自在のブームと、
前記ブームから垂下するワイヤロープと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しをするウインチと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しによって昇降するフックと、を備えたクレーンにおいて、
前記ウインチの作動状態を指示できる巻回操作具を具備し、
前記巻回操作具の操作によって前記フックが所定の吊下長さまで上昇すると、その吊下長さを保つように前記ワイヤロープを巻き出しながら前記ブームが起立かつ伸長して前記フックの上昇動作を継続させる、ものである。
【0007】
第二の発明は、第一の発明に係るクレーンにおいて、
前記ブームの起立動作と伸長動作を調節して前記フックの上昇動作を鉛直上向きとする、ものである。
【0008】
第三の発明は、第一又は第二の発明に係るクレーンにおいて、
前記巻回操作具の操作によって前記ブームの起立動作と伸長動作による前記フックの上昇動作速度を変更できる、ものである。
【0009】
第四の発明は、
起伏及び伸縮自在のブームと、
前記ブームから垂下するワイヤロープと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しをするウインチと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しによって昇降するフックと、を備えたクレーンにおいて、
前記ウインチの作動状態を指示できる巻回操作具と、
前記フックの吊下長さを保つように指示できるスイッチと、を具備し、
前記スイッチが「入」状態のときに前記巻回操作具を一方へ操作すると、前記フックの吊下長さを保つように前記ワイヤロープを巻き出しながら前記ブームが起立かつ伸長して前記フックを上昇させ、
前記スイッチが「入」状態のときに前記巻回操作具を他方へ操作すると、前記フックの吊下長さを保つように前記ワイヤロープを巻き入れながら前記ブームが倒伏かつ収縮して前記フックを降下させる、ものである。
【0010】
第五の発明は、第四の発明に係るクレーンにおいて、
前記ブームの起立動作と伸長動作或いは前記ブームの倒伏動作と収縮動作を調節して前記フックの昇降動作を鉛直上向き又は鉛直下向きとする、ものである。
【0011】
第六の発明は、第四又は第五の発明に係るクレーンにおいて、
前記巻回操作具の操作によって前記ブームの起立動作と伸長動作或いは前記ブームの倒伏動作と収縮動作による前記フックの昇降動作速度を変更できる、ものである。
【0012】
第七の発明は、
起伏及び伸縮自在のブームと、
前記ブームから垂下するワイヤロープと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しをするウインチと、
前記ワイヤロープの巻き入れ及び巻き出しによって昇降するフックと、を備えたクレーンにおいて、
前記ウインチの作動状態を指示できる巻回操作具と、
前記フックの揚程を保つように指示できるスイッチと、を具備し、
前記スイッチが「入」状態のときに前記巻回操作具を一方へ操作すると、前記フックの揚程を保つように前記ワイヤロープを巻き出しながら前記ブームが起立かつ伸長して当該ブームの姿勢を変化させ、
前記スイッチが「入」状態のときに前記巻回操作具を他方へ操作すると、前記フックの揚程を保つように前記ワイヤロープを巻き入れながら前記ブームが倒伏かつ収縮して当該ブームの姿勢を変化させる、ものである。
【0013】
第八の発明は、第七の発明に係るクレーンにおいて、
前記ブームの起立動作と伸長動作或いは前記ブームの倒伏動作と収縮動作を調節して前記フックの位置を維持する、ものである。
【0014】
第九の発明は、第七又は第八の発明に係るクレーンにおいて、
前記巻回操作具の操作によって前記ブームの起立動作と伸長動作或いは前記ブームの倒伏動作と収縮動作による当該ブームの姿勢変化速度を変更できる、ものである。
【発明の効果】
【0015】
第一の発明に係るクレーンは、ウインチの作動状態を指示できる巻回操作具を具備している。そして、巻回操作具の操作によってフックが所定の吊下長さまで上昇すると、その吊下長さを保つようにワイヤロープを巻き出しながらブームが起立かつ伸長してフックの上昇動作を継続させる。かかるクレーンによれば、ワイヤロープを巻き出しながら同時にブームを起立かつ伸長させる操作が不要となる。また、ブームを起立かつ伸長させる操作について操作ミスが生じえないので、フック或いは荷物が建築物等の側面に衝突するのを防ぐことができる。従って、操作性の向上と安全性の向上を実現できる。
【0016】
第二の発明に係るクレーンは、ブームの起立動作と伸長動作を調節してフックの上昇動作を鉛直上向きとする。かかるクレーンによれば、フック或いは荷物が水平方向へ動かないので、更なる安全性の向上を実現できる。
【0017】
第三の発明に係るクレーンは、巻回操作具の操作によってブームの起立動作と伸長動作によるフックの上昇動作速度を変更できる。かかるクレーンによれば、オペレータの意思に基づいて容易に上昇動作速度を加減速できるので、更なる操作性の向上と安全性の向上を実現できる。
【0018】
第四の発明に係るクレーンは、ウインチの作動状態を指示できる巻回操作具と、フックの吊下長さを保つように指示できるスイッチと、を具備している。そして、スイッチが「入」状態のときに巻回操作具を一方へ操作すると、フックの吊下長さを保つようにワイヤロープを巻き出しながらブームが起立かつ伸長してフックを上昇させ、スイッチが「入」状態のときに巻回操作具を他方へ操作すると、フックの吊下長さを保つようにワイヤロープを巻き入れながらブームが倒伏かつ収縮してフックを降下させる。かかるクレーンによれば、ワイヤロープを巻き出しながら同時にブームを起立かつ伸長させる操作が不要となる。また、ブームを起立かつ伸長させる操作について操作ミスが生じえないので、フック或いは荷物が建築物等の側面に衝突するのを防ぐことができる。同じく、かかるクレーンによれば、ワイヤロープを巻き入れながら同時にブームを倒伏かつ収縮させる操作が不要となる。また、ブームを倒伏かつ収縮させる操作について操作ミスが生じえないので、フック或いは荷物が建築物等の側面に衝突するのを防ぐことができる。従って、操作性の向上と安全性の向上を実現できる。
【0019】
第五の発明に係るクレーンは、ブームの起立動作と伸長動作或いはブームの倒伏動作と収縮動作を調節してフックの昇降動作を鉛直上向き又は鉛直下向きとする。かかるクレーンによれば、フック或いは荷物が水平方向へ動かないので、更なる安全性の向上を実現できる。
【0020】
第六の発明に係るクレーンは、巻回操作具の操作によってブームの起立動作と伸長動作或いはブームの倒伏動作と収縮動作によるフックの昇降動作速度を変更できる。かかるクレーンによれば、オペレータの意思に基づいて容易に昇降動作速度を加減速できるので、更なる操作性の向上と安全性の向上を実現できる。
【0021】
第七の発明に係るクレーンは、ウインチの作動状態を指示できる巻回操作具と、フックの揚程を保つように指示できるスイッチと、を具備している。そして、スイッチが「入」状態のときに巻回操作具を一方へ操作すると、フックの揚程を保つようにワイヤロープを巻き出しながらブームが起立かつ伸長してブームの姿勢を変化させ、スイッチが「入」状態のときに巻回操作具を他方へ操作すると、フックの揚程を保つようにワイヤロープを巻き入れながらブームが倒伏かつ収縮してブームの姿勢を変化させる。かかるクレーンによれば、ワイヤロープを巻き出しながら同時にブームを起立かつ伸長させる操作が不要となる。また、ブームを起立かつ伸長させる操作について操作ミスが生じえないので、フック或いは荷物が建築物等の側面に衝突するのを防ぐことができる。同じく、かかるクレーンによれば、ワイヤロープを巻き入れながら同時にブームを倒伏かつ収縮させる操作が不要となる。また、ブームを倒伏かつ収縮させる操作について操作ミスが生じえないので、フック或いは荷物が建築物等の側面に衝突するのを防ぐことができる。従って、操作性の向上と安全性の向上を実現できる。
【0022】
第八の発明に係るクレーンは、ブームの起立動作と伸長動作或いはブームの倒伏動作と収縮動作を調節してフックの位置を維持する。かかるクレーンによれば、フック或いは荷物が上下方向にも水平方向にも動かないので、更なる安全性の向上を実現できる。
【0023】
第九の発明に係るクレーンは、巻回操作具の操作によってブームの起立動作と伸長動作或いはブームの倒伏動作と収縮動作によるブームの姿勢変化速度を変更できる。かかるクレーンによれば、オペレータの意思に基づいて容易に姿勢変化速度を加減速できるので、更なる操作性の向上と安全性の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】クレーンを示す図。
図2】キャビンの内部を示す図。
図3】制御システムの構成を示す図。
図4】巻回操作具の操作に対する制御態様を示す図。
図5】ウインチの巻入動作によって荷物を吊り上げている状況を示す図。
図6】ブームの起立動作と伸長動作によって荷物を吊り上げている状況を示す図。
図7】ウインチの巻出動作によって荷物を吊り下ろしている状況を示す図。
図8】巻回操作具の操作に対する制御態様を示す図。
図9】ブームの起立動作と伸長動作によって荷物を吊り上げている状況を示す図。
図10】ブームの倒伏動作と収縮動作によって荷物を吊り下ろしている状況を示す図。
図11】巻回操作具の操作に対する制御態様を示す図。
図12】ブームの起立動作と伸長動作によって姿勢を変えている状況を示す図。
図13】ブームの倒伏動作と収縮動作によって姿勢を変えている状況を示す図。
図14】遠隔操作端末を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願に開示する技術的思想は、以下に説明するクレーン1のほか、他のクレーンにも適用できる。
【0026】
まず、図1及び図2を用いて、クレーン1の概略について説明する。
【0027】
クレーン1は、主に走行体2と旋回体3で構成されている。
【0028】
走行体2は、左右一対のフロントタイヤ4とリヤタイヤ5を備えている。また、走行体2は、荷物Wの運搬作業を行なう際に接地させて安定を図るアウトリガ6を備えている。更に、走行体2は、これらを駆動するためのアクチュエータのほか、エンジンやトランスミッションなどを備えている。なお、走行体2は、アクチュエータによって、その上部に支持する旋回体3を旋回自在としている。
【0029】
旋回体3は、その後部から前方へ突き出すようにブーム7を備えている。そのため、ブーム7は、アクチュエータによって旋回自在となっている。また、ブーム7は、アクチュエータによって起伏自在となっている(矢印A及びB参照)。更に、ブーム7は、アクチュエータによって伸縮自在となっている(矢印C及びD参照)。加えて、ブーム7には、ワイヤロープ8が架け渡されている。ブーム7の基端側には、ワイヤロープ8を巻き付けたウインチ9が配置され、ブーム7の先端側には、ワイヤロープ8によってフック10が垂下されている。ウインチ9は、アクチュエータと一体的に構成されており、ワイヤロープ8の巻き入れ及び巻き出しを可能としている。そのため、フック10は、アクチュエータによって昇降自在となっている(矢印E及びF参照)。なお、旋回体3は、ブーム7の側方にキャビン11を備えている。キャビン11の内部には、走行操作に必要となるハンドルやシフトレバーのほか、運搬操作に必要となる旋回操作具21や起伏操作具22、伸縮操作具23、巻回操作具24が設けられている。更に、切替ボタン25が設けられている。
【0030】
次に、図3を用いて、制御システムの概略について説明する。
【0031】
制御システムは、主に制御装置100で構成されている。制御装置100には、各種操作具21〜24が接続されている。また、制御装置100には、各種バルブ31〜34が接続されている。
【0032】
上述したように、ブーム7は、アクチュエータによって旋回自在となっている。本願においては、かかるアクチュエータを旋回用モータ51と定義する。旋回用モータ51は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ31によって適宜に稼動される。つまり、旋回用モータ51は、旋回用バルブ31が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、ブーム7の旋回角度や旋回速度は、図示しないセンサによって検出される。そのため、制御装置100は、ブーム7の旋回角度や旋回速度を認識することができる。
【0033】
また、上述したように、ブーム7は、アクチュエータによって起伏自在となっている(図1における矢印A及びB参照)。本願においては、かかるアクチュエータを起伏用シリンダ52と定義する。起伏用シリンダ52は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ32によって適宜に稼動される。つまり、起伏用シリンダ52は、起伏用バルブ32が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、ブーム7の起伏角度G(図1参照)や起伏速度は、図示しないセンサによって検出される。そのため、制御装置100は、ブーム7の起伏角度Gや起伏速度を認識することができる。
【0034】
更に、上述したように、ブーム7は、アクチュエータによって伸縮自在となっている(図1における矢印C及びD参照)。本願においては、かかるアクチュエータを伸縮用シリンダ53と定義する。伸縮用シリンダ53は、電磁比例切換弁である伸縮用バルブ33によって適宜に稼動される。つまり、伸縮用シリンダ53は、伸縮用バルブ33が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、ブーム7の伸縮長さH(図1参照)や伸縮速度は、図示しないセンサによって検出される。そのため、制御装置100は、ブーム7の伸縮長さHや伸縮速度を認識することができる。
【0035】
更に、上述したように、フック10は、アクチュエータによって昇降自在となっている(図1における矢印E及びF参照)。本願においては、かかるアクチュエータを巻回用モータ54と定義する。巻回用モータ54は、電磁比例切換弁である巻回用バルブ34によって適宜に稼動される。つまり、巻回用モータ54は、巻回用バルブ34が作動油の流動方向を切り替えたり作動油の流量を調節したりすることで適宜に稼動される。なお、フック10の吊下長さd(図1参照)や昇降速度は、図示しないセンサによって検出される。そのため、制御装置100は、フック10の吊下長さdや昇降速度を認識することができる。
【0036】
このような構成により、制御装置100は、各種バルブ31〜34を介して各アクチュエータ(51・52・53・54)を制御することができる。但し、近い将来には、各アクチュエータ(51・52・53・54)が電動アクチュエータに代わると予想される。この場合、制御装置100は、各種バルブ31〜34を介することなく、直接的に電動アクチュエータを制御することが可能となる。
【0037】
加えて、制御装置100には、切替スイッチ41と過巻センサ42が接続されている。
【0038】
切替スイッチ41は、上述した切替ボタン25の遊底部に取り付けられている。オペレータは、切替ボタン25を押すことにより、巻回操作具24の操作に対する制御態様の切り替えを制御装置100に指示できる。
【0039】
過巻センサ42は、ブーム7の先端部分に吊り下げられたウエイト12(図1参照)に取り付けられている。過巻センサ42は、フック10が上昇してウエイト12を持ち上げると作動するように設計されている。そのため、制御装置100は、フック10が所定の吊下長さd(図1参照)まで上昇したことを自動的に認識できる。但し、ウインチ9に巻き付いたワイヤロープ8の長さに基づいてブーム7の先端部分からフック10までの距離を算出するものとし、これによってフック10が所定の吊下長さdまで上昇したことを自動的に認識できるとしてもよい。
【0040】
次に、図4から図7を用いて、巻回操作具24の操作に対する制御態様について説明する。ここでは、切替ボタン25が押されていない場合について説明する。
【0041】
ステップS11において、制御装置100は、巻回操作具24が一方(フック10を上昇させる方向)へ操作されたか否かを判断する。巻回操作具24が一方へ操作されたと判断した場合はステップS12へ移行し、巻回操作具24が一方へ操作されていないと判断した場合はステップS16へ移行する。
【0042】
ステップS12において、制御装置100は、ウインチ9の巻入動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、巻回用バルブ34を制御し、巻回用モータ54へパイプ54aを通じて作動油を供給させる。すると、巻回用モータ54が適宜な速度で一方へ回転することとなる。つまりは、ウインチ9が適宜な速度で正転することとなる。こうして、ウインチ9がワイヤロープ8を巻き入れてフック10が上昇するので、荷物Wが吊り上げられるのである(図5参照)。その後、ステップS13へ移行する。
【0043】
ステップS13において、制御装置100は、過巻センサ42が作動したか否かを判断する。換言すると、フック10が所定の吊下長さdまで上昇したか否かを判断する。フック10が所定の吊下長さdまで上昇したと判断した場合はステップS14へ移行し、フック10が所定の吊下長さdまで上昇していないと判断した場合はウインチ9の巻入動作を継続させる。
【0044】
ステップS14において、制御装置100は、ブーム7の姿勢(ブーム角度G及びブーム長さH:図1参照)を認識する。これは、ブーム7の姿勢に応じて各制御対象の制御量が変わるからである。例えば、比較的にブーム7が倒伏したブーム角度Gが小さい姿勢においては、起立動作による角度変化に対してブーム7の伸長量が小さくなり、比較的にブーム7が起立したブーム角度Gが大きい姿勢においては、起立動作による角度変化に対してブーム7の伸長量が大きくなるからである。なお、ウインチ9によるワイヤロープ8の巻出量は、ブーム7の伸長量に連関することとなる。その後、ステップS15へ移行する。
【0045】
ステップS15において、制御装置100は、ウインチ9の巻出動作を開始させるとともに、ブーム7の起立動作と伸長動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、巻回用バルブ34を制御し、巻回用モータ54へパイプ54bを通じて作動油を供給させる。すると、巻回用モータ54が適宜な速度で他方へ回転することとなる。つまりは、ウインチ9が適宜な速度で逆転することとなる。
同時に、制御装置100は、ブーム7の起立動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、起伏用バルブ32を制御し、起伏用シリンダ52へパイプ52aを通じて作動油を供給させる。すると、起伏用シリンダ52が適宜な速度で伸長することとなる。つまりは、ブーム7が適宜な速度で起立することとなる。
更に同時に、制御装置100は、ブーム7の伸長動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、伸縮用バルブ33を制御し、伸縮用シリンダ53へパイプ53aを通じて作動油を供給させる。すると、伸縮用シリンダ53が適宜な速度で伸長することとなる。つまりは、ブーム7が適宜な速度で伸長することとなる。こうして、フック10の吊下長さdを保ったまま、ブーム7の起立動作と伸長動作によってフック10の上昇動作を継続させることができるのである(図6参照:矢印R)。なお、フック10は、重力の作用方向に対して平行な仮想線Xに沿って上昇するものとされる。これは、ブーム7が起立する速度とブーム7が伸長する速度を調節することで実現される。加えて、ブーム7が起立する速度とブーム7が伸長する速度は、互いの連関を保ちつつも巻回操作具24の操作によって変更可能である。従って、フック10の上昇動作速度は、巻回操作具24の操作によって変更可能となっている。また、所定の吊下長さdに至る直前のフック10の上昇動作速度に対して所定の吊下長さdに至った直後のフック10の上昇動作速度を連続させている。このようにしたのは、変速ショック(速度差による振動)によってフック10或いは荷物Wが不安定になるのを防ぐためである。
【0046】
ところで、ステップS16において、制御装置100は、巻回操作具24が他方(フック10を降下させる方向)へ操作されたか否かを判断する。巻回操作具24が他方へ操作されたと判断した場合はステップS17へ移行し、巻回操作具24が他方へも操作されていないと判断した場合はこのまま待機させる。
【0047】
ステップS17において、制御装置100は、ウインチ9の巻出動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、巻回用バルブ34を適宜に制御し、巻回用モータ54へパイプ54bを通じて作動油を供給させる。すると、巻回用モータ54が適宜な速度で他方へ回転することとなる。つまりは、ウインチ9が適宜な速度で逆転することとなる。こうして、ウインチ9がワイヤロープ8を巻き出してフック10が降下するので、荷物Wが吊り下ろされるのである(図7参照)。
【0048】
以上のように、本クレーン1は、ウインチ9の作動状態を指示できる巻回操作具24を具備している。そして、巻回操作具24の操作によってフック10が所定の吊下長さdまで上昇すると、その吊下長さdを保つようにワイヤロープ8を巻き出しながらブーム7が起立かつ伸長してフック10の上昇動作を継続させる。かかるクレーン1によれば、ワイヤロープ8を巻き出しながら同時にブーム7を起立かつ伸長させる操作が不要となる。また、ブーム7を起立かつ伸長させる操作について操作ミスが生じえないので、フック10或いは荷物Wが建築物等の側面に衝突するのを防ぐことができる。従って、操作性の向上と安全性の向上を実現できる。
【0049】
更に、本クレーン1は、ブーム7の起立動作と伸長動作を調節してフック10の上昇動作を鉛直上向きとする。かかるクレーン1によれば、フック10或いは荷物Wが水平方向へ動かないので、更なる安全性の向上を実現できる。
【0050】
更に、本クレーン1は、巻回操作具24の操作によってブーム7の起立動作と伸長動作によるフック10の上昇動作速度を変更できる。かかるクレーン1によれば、オペレータの意思に基づいて容易に上昇動作速度を加減速できるので、更なる操作性の向上と安全性の向上を実現できる。
【0051】
次に、図8から図10を用いて、巻回操作具24の操作に対する制御態様について説明する。ここでは、切替ボタン25の一方が押されている場合について説明する。
【0052】
ステップS21において、制御装置100は、巻回操作具24が一方(フック10を上昇させる方向)へ操作されたか否かを判断する。巻回操作具24が一方へ操作されたと判断した場合はステップS22へ移行し、巻回操作具24が一方へ操作されていないと判断した場合はステップS24へ移行する。
【0053】
ステップS22において、制御装置100は、ブーム7の姿勢(ブーム角度G及びブーム長さH:図1参照)を認識する。これは、ブーム7の姿勢に応じて各制御対象の制御量が変わるからである。例えば、比較的にブーム7が倒伏したブーム角度Gが小さい姿勢においては、起立動作による角度変化に対してブーム7の伸長量が小さくなり、比較的にブーム7が起立したブーム角度Gが大きい姿勢においては、起立動作による角度変化に対してブーム7の伸長量が大きくなるからである。なお、ウインチ9によるワイヤロープ8の巻出量は、ブーム7の伸長量に連関することとなる。その後、ステップS23へ移行する。
【0054】
ステップS23において、制御装置100は、ウインチ9の巻出動作を開始させるとともに、ブーム7の起立動作と伸長動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、巻回用バルブ34を制御し、巻回用モータ54へパイプ54bを通じて作動油を供給させる。すると、巻回用モータ54が適宜な速度で他方へ回転することとなる。つまりは、ウインチ9が適宜な速度で逆転することとなる。
同時に、制御装置100は、ブーム7の起立動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、起伏用バルブ32を制御し、起伏用シリンダ52へパイプ52aを通じて作動油を供給させる。すると、起伏用シリンダ52が適宜な速度で伸長することとなる。つまりは、ブーム7が適宜な速度で起立することとなる。
更に同時に、制御装置100は、ブーム7の伸長動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、伸縮用バルブ33を制御し、伸縮用シリンダ53へパイプ53aを通じて作動油を供給させる。すると、伸縮用シリンダ53が適宜な速度で伸長することとなる。つまりは、ブーム7が適宜な速度で伸長することとなる。こうして、フック10の吊下長さdを保ったまま、ブーム7の起立動作と伸長動作によってフック10を上昇させることができるのである(図9参照:矢印R)。なお、フック10は、重力の作用方向に対して平行な仮想線Xに沿って上昇するものとされる。これは、ブーム7が起立する速度とブーム7が伸長する速度を調節することで実現される。加えて、ブーム7が起立する速度とブーム7が伸長する速度は、互いの連関を保ちつつも巻回操作具24の操作によって変更可能である。従って、フック10の上昇動作速度は、巻回操作具24の操作によって変更可能となっている。
【0055】
ところで、ステップS24において、制御装置100は、巻回操作具24が他方(フック10を降下させる方向)へ操作されたか否かを判断する。巻回操作具24が他方へ操作されたと判断した場合はステップS25へ移行し、巻回操作具24が他方へも操作されていないと判断した場合はこのまま待機させる。
【0056】
ステップS25において、制御装置100は、ブーム7の姿勢(ブーム角度G及びブーム長さH:図1参照)を認識する。これは、ブーム7の姿勢に応じて各制御対象の制御量が変わるからである。例えば、比較的にブーム7が起立したブーム角度Gが大きい姿勢においては、倒伏動作による角度変化に対してブーム7の収縮量が大きくなり、比較的にブーム7が倒伏したブーム角度Gが小さい姿勢においては、倒伏動作による角度変化に対してブーム7の収縮量が小さくなるからである。なお、ウインチ9によるワイヤロープ8の巻入量は、ブーム7の伸長量に連関することとなる。その後、ステップS26へ移行する。
【0057】
ステップS26において、制御装置100は、ウインチ9の巻入動作を開始させるとともに、ブーム7の倒伏動作と収縮動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、巻回用バルブ34を制御し、巻回用モータ54へパイプ54aを通じて作動油を供給させる。すると、巻回用モータ54が適宜な速度で一方へ回転することとなる。つまりは、ウインチ9が適宜な速度で正転することとなる。
同時に、制御装置100は、ブーム7の倒伏動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、起伏用バルブ32を制御し、起伏用シリンダ52へパイプ52bを通じて作動油を供給させる。すると、起伏用シリンダ52が適宜な速度で収縮することとなる。つまりは、ブーム7が適宜な速度で倒伏することとなる。
更に同時に、制御装置100は、ブーム7の収縮動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、伸縮用バルブ33を制御し、伸縮用シリンダ53へパイプ53bを通じて作動油を供給させる。すると、伸縮用シリンダ53が適宜な速度で収縮することとなる。つまりは、ブーム7が適宜な速度で収縮することとなる。こうして、フック10の吊下長さdを保ったまま、ブーム7の倒伏動作と収縮動作によってフック10を降下させることができるのである(図10参照:矢印D)。なお、フック10は、重力の作用方向に対して平行な仮想線Xに沿って降下するものとされる。これは、ブーム7が倒伏する速度とブーム7が収縮する速度を調節することで実現される。加えて、ブーム7が倒伏する速度とブーム7が収縮する速度は、互いの連関を保ちつつも巻回操作具24の操作によって変更可能である。従って、フック10の降下動作速度は、巻回操作具24の操作によって変更可能となっている。
【0058】
以上のように、本クレーン1は、ウインチ9の作動状態を指示できる巻回操作具24と、フック10の吊下長さdを保つように指示できるスイッチ(切替スイッチ41)と、を具備している。そして、スイッチ(41)が「入」状態のときに巻回操作具24を一方へ操作すると、フック10の吊下長さdを保つようにワイヤロープ8を巻き出しながらブーム7が起立かつ伸長してフック10を上昇させ、スイッチ(41)が「入」状態のときに巻回操作具24を他方へ操作すると、フック10の吊下長さdを保つようにワイヤロープ8を巻き入れながらブーム7が倒伏かつ収縮してフック10を降下させる。かかるクレーン1によれば、ワイヤロープ8を巻き出しながら同時にブーム7を起立かつ伸長させる操作が不要となる。また、ブーム7を起立かつ伸長させる操作について操作ミスが生じえないので、フック10或いは荷物Wが建築物等の側面に衝突するのを防ぐことができる。同じく、かかるクレーン1によれば、ワイヤロープ8を巻き入れながら同時にブーム7を倒伏かつ収縮させる操作が不要となる。また、ブーム7を倒伏かつ収縮させる操作について操作ミスが生じえないので、フック10或いは荷物Wが建築物等の側面に衝突するのを防ぐことができる。従って、操作性の向上と安全性の向上を実現できる。
【0059】
更に、本クレーン1は、ブーム7の起立動作と伸長動作或いはブーム7の倒伏動作と収縮動作を調節してフック10の昇降動作を鉛直上向き又は鉛直下向きとする。かかるクレーン1によれば、フック10或いは荷物Wが水平方向へ動かないので、更なる安全性の向上を実現できる。
【0060】
更に、本クレーン1は、巻回操作具24の操作によってブーム7の起立動作と伸長動作或いはブーム7の倒伏動作と収縮動作によるフック10の昇降動作速度を変更できる。かかるクレーン1によれば、オペレータの意思に基づいて容易に昇降動作速度を加減速できるので、更なる操作性の向上と安全性の向上を実現できる。
【0061】
次に、図11から図13を用いて、巻回操作具24の操作に対する制御態様について説明する。ここでは、切替ボタン25の他方が押されている場合について説明する。
【0062】
ステップS31において、制御装置100は、巻回操作具24が一方(フック10を上昇させる方向)へ操作されたか否かを判断する。巻回操作具24が一方へ操作されたと判断した場合はステップS32へ移行し、巻回操作具24が一方へ操作されていないと判断した場合はステップS34へ移行する。
【0063】
ステップS32において、制御装置100は、ブーム7の姿勢(ブーム角度G及びブーム長さH:図1参照)を認識する。これは、ブーム7の姿勢に応じて各制御対象の制御量が変わるからである。例えば、比較的にブーム7が倒伏したブーム角度Gが小さい姿勢においては、起立動作による角度変化に対してブーム7の伸長量が小さくなり、比較的にブーム7が起立したブーム角度Gが大きい姿勢においては、起立動作による角度変化に対してブーム7の伸長量が大きくなるからである。なお、ウインチ9によるワイヤロープ8の巻出量は、ブーム7の伸長量に連関することとなる。その後、ステップS33へ移行する。
【0064】
ステップS33において、制御装置100は、ウインチ9の巻出動作を開始させるとともに、ブーム7の起立動作と伸長動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、巻回用バルブ34を制御し、巻回用モータ54へパイプ54bを通じて作動油を供給させる。すると、巻回用モータ54が適宜な速度で他方へ回転することとなる。つまりは、ウインチ9が適宜な速度で逆転することとなる。
同時に、制御装置100は、ブーム7の起立動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、起伏用バルブ32を制御し、起伏用シリンダ52へパイプ52aを通じて作動油を供給させる。すると、起伏用シリンダ52が適宜な速度で伸長することとなる。つまりは、ブーム7が適宜な速度で起立することとなる。
更に同時に、制御装置100は、ブーム7の伸長動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、伸縮用バルブ33を制御し、伸縮用シリンダ53へパイプ53aを通じて作動油を供給させる。すると、伸縮用シリンダ53が適宜な速度で伸長することとなる。つまりは、ブーム7が適宜な速度で伸長することとなる。こうして、フック10の揚程hを保ったまま、ブーム7の起立動作と伸長動作によってブーム7の姿勢を変えることができるのである(図12参照)。なお、フック10は、上下方向にも水平方向にも動かないよう、その位置を維持される。これは、ワイヤロープ8を巻き出す速度とブーム7が起立する速度とブーム7が伸長する速度を調節することで実現される。加えて、ワイヤロープ8を巻き出す速度とブーム7が起立する速度とブーム7が伸長する速度は、互いの連関を保ちつつも巻回操作具24の操作によって変更可能である。従って、ブーム7の姿勢変化速度は、巻回操作具24の操作によって変更可能となっている。
【0065】
ところで、ステップS34において、制御装置100は、巻回操作具24が他方(フック10を降下させる方向)へ操作されたか否かを判断する。巻回操作具24が他方へ操作されたと判断した場合はステップS35へ移行し、巻回操作具24が他方へも操作されていないと判断した場合はこのまま待機させる。
【0066】
ステップS35において、制御装置100は、ブーム7の姿勢(ブーム角度G及びブーム長さH:図1参照)を認識する。これは、ブーム7の姿勢に応じて各制御対象の制御量が変わるからである。例えば、比較的にブーム7が起立したブーム角度Gが大きい姿勢においては、倒伏動作による角度変化に対してブーム7の収縮量が大きくなり、比較的にブーム7が倒伏したブーム角度Gが小さい姿勢においては、倒伏動作による角度変化に対してブーム7の収縮量が小さくなるからである。なお、ウインチ9によるワイヤロープ8の巻入量は、ブーム7の伸長量に連関することとなる。その後、ステップS36へ移行する。
【0067】
ステップS36において、制御装置100は、ウインチ9の巻入動作を開始させるとともに、ブーム7の倒伏動作と収縮動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、巻回用バルブ34を制御し、巻回用モータ54へパイプ54aを通じて作動油を供給させる。すると、巻回用モータ54が適宜な速度で一方へ回転することとなる。つまりは、ウインチ9が適宜な速度で正転することとなる。
同時に、制御装置100は、ブーム7の倒伏動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、起伏用バルブ32を制御し、起伏用シリンダ52へパイプ52bを通じて作動油を供給させる。すると、起伏用シリンダ52が適宜な速度で収縮することとなる。つまりは、ブーム7が適宜な速度で倒伏することとなる。
更に同時に、制御装置100は、ブーム7の収縮動作を開始させる。具体的に説明すると、制御装置100は、伸縮用バルブ33を制御し、伸縮用シリンダ53へパイプ53bを通じて作動油を供給させる。すると、伸縮用シリンダ53が適宜な速度で収縮することとなる。つまりは、ブーム7が適宜な速度で収縮することとなる。こうして、フック10の揚程hを保ったまま、ブーム7の倒伏動作と収縮動作によってブーム7の姿勢を変えることができるのである(図13参照)。なお、フック10は、上下方向にも水平方向にも動かないよう、その位置を維持される。これは、ワイヤロープ8を巻き入れる速度とブーム7が倒伏する速度とブーム7が収縮する速度を調節することで実現される。加えて、ワイヤロープ8を巻き入れる速度とブーム7が倒伏する速度とブーム7が収縮する速度は、互いの連関を保ちつつも巻回操作具24の操作によって変更可能である。従って、ブーム7の姿勢変化速度は、巻回操作具24の操作によって変更可能となっている。
【0068】
以上のように、本クレーン1は、ウインチ9の作動状態を指示できる巻回操作具24と、フック10の揚程hを保つように指示できるスイッチ(切替スイッチ41)と、を具備している。そして、スイッチ(41)が「入」状態のときに巻回操作具24を一方へ操作すると、フック10の揚程hを保つようにワイヤロープ8を巻き出しながらブーム7が起立かつ伸長してブーム7の姿勢を変化させ、スイッチ(41)が「入」状態のときに巻回操作具24を他方へ操作すると、フック10の揚程hを保つようにワイヤロープ8を巻き入れながらブーム7が倒伏かつ収縮してブーム7の姿勢を変化させる。かかるクレーン1によれば、ワイヤロープ8を巻き出しながら同時にブーム7を起立かつ伸長させる操作が不要となる。また、ブーム7を起立かつ伸長させる操作について操作ミスが生じえないので、フック10或いは荷物Wが建築物等の側面に衝突するのを防ぐことができる。同じく、かかるクレーン1によれば、ワイヤロープ8を巻き入れながら同時にブーム7を倒伏かつ収縮させる操作が不要となる。また、ブーム7を倒伏かつ収縮させる操作について操作ミスが生じえないので、フック10或いは荷物Wが建築物等の側面に衝突するのを防ぐことができる。従って、操作性の向上と安全性の向上を実現できる。
【0069】
更に、本クレーン1は、ブーム7の起立動作と伸長動作或いはブーム7の倒伏動作と収縮動作を調節してフック10の位置を維持する。かかるクレーン1によれば、フック10或いは荷物Wが上下方向にも水平方向にも動かないので、更なる安全性の向上を実現できる。
【0070】
更に、本クレーン1は、巻回操作具24の操作によってブーム7の起立動作と伸長動作或いはブーム7の倒伏動作と収縮動作によるブーム7の姿勢変化速度を変更できる。かかるクレーン1によれば、オペレータの意思に基づいて容易に姿勢変化速度を加減速できるので、更なる操作性の向上と安全性の向上を実現できる。
【0071】
次に、図14を用いて、遠隔操作端末200について説明する。但し、遠隔操作端末200は、遠隔操作端末の一例であり、これに限定するものではない。
【0072】
遠隔操作端末200には、運搬操作に必要となる旋回操作具210や起伏操作具220、伸縮操作具230、巻回操作具240などが設けられている。また、遠隔操作端末200には、切替ボタン250が設けられている。
【0073】
クレーン1は、オペレータが旋回操作具210を操作すると、上述した旋回操作具21を操作したときと同様に稼動する。また、オペレータが起伏操作具220を操作すると、上述した起伏操作具22を操作したときと同様に稼動する。更に、オペレータが伸縮操作具230を操作すると、上述した伸縮操作具23を操作したときと同様に稼動し、オペレータが巻回操作具240を操作すると、上述した巻回操作具24を操作したときと同様に稼動する。加えて、クレーン1は、オペレータが切替ボタン250を押すと、上述した切替ボタン25を操作したときと同様に稼動する。従って、かかる遠隔操作端末200を用いても、本願に開示する技術的思想を実現できる。
【0074】
最後に、本クレーン1においては、各種操作具21〜23の代わりにジョイスティックを備え、かつ巻回操作具24の代わりにスイッチ等を備えた構成であってもよい。また、遠隔操作端末200においても、各種操作具210〜230の代わりにジョイスティックを備え、かつ巻回操作具240の代わりにスイッチ等を備えた構成であってもよい。このようなクレーンによれば、オペレータは、ブーム7やウインチ9を操作対象として操作を行うのではなく、荷物Wを操作対象として操作を行うことができる。この場合、荷物Wの移動方向を直接的に指示することとなり、その指示を実現するようにブーム7やウインチ9が稼動することとなる。
【0075】
加えて、本願に係る発明は、ブーム7とウインチ9を制御対象としたものである。ここで、ブーム7の先端部分にジブを備え、このジブが起伏自在である場合、第一から第三の発明は、ブーム7の起立の代わりにジブの起立としてもよい。また、第四から第六の発明は、ブーム7の起立又は倒伏の代わりにジブの起立又は倒伏としてもよい。更に、第七から第九の発明も、ブーム7の起立又は倒伏の代わりにジブの起立又は倒伏としてもよい。つまり、ジブは、ブーム7の構成要素としてブーム7に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0076】
1 クレーン
2 走行体
3 旋回体
7 ブーム
8 ワイヤロープ
9 ウインチ
10 フック
12 ウエイト
21 旋回操作具
22 起伏操作具
23 伸縮操作具
24 巻回操作具
25 切替ボタン
31 旋回用バルブ
32 起伏用バルブ
33 伸縮用バルブ
34 巻回用バルブ
41 切替スイッチ(スイッチ)
42 過巻センサ(センサ)
51 旋回用モータ
52 起伏用シリンダ
53 伸縮用シリンダ
54 巻回用モータ
100 制御装置
d 吊下長さ
h 揚程
W 荷物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14