特許第6848969号(P6848969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6848969
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】多色歯磨製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20210315BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20210315BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/46
   A61Q11/00
   A61K8/73
   A61K8/49
   A61K8/02
   A61K8/29
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-525173(P2018-525173)
(86)(22)【出願日】2017年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2017023562
(87)【国際公開番号】WO2018003793
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2020年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-128641(P2016-128641)
(32)【優先日】2016年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉江 誠
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5876701(US,A)
【文献】 国際公開第2012/163885(WO,A1)
【文献】 特開昭60−048918(JP,A)
【文献】 特開平2−072112(JP,A)
【文献】 特開昭59−231010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/81
A61K 8/02
A61K 8/29
A61K 8/46
A61K 8/49
A61K 8/73
A61Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)建染染料、油溶性染料及び顔料(但し、アルミニウムレーキを除く。)から選ばれる1種又は2種以上の水不溶性色素、
(B)アルミニウムレーキ色素、
(C)(C−1)ポリアクリル酸塩及びアルギン酸塩から選ばれる1種以上
を含有する着色歯磨組成物(I)と、
(D)白色粒子、
(C)(C−2)ポリアクリル酸塩及びアルギン酸塩から選ばれる1種以上
を含有する白色歯磨組成物(II)と
が、隣接して容器内に充填されてなることを特徴とする多色歯磨製剤。
【請求項2】
(A)、(B)成分が、それぞれ赤色色素、黄色色素及び橙色色素から選ばれる1種又は2種以上であり、(A)成分と(B)成分とが同色又は異色の色素である請求項1記載の多色歯磨製剤。
【請求項3】
(A)成分が、赤色202号及び赤色226号から選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の多色歯磨製剤。
【請求項4】
(B)成分が、黄色4号、黄色203号、赤色218号及び赤色223号から選ばれる1種又は2種以上の色素のアルミニウムレーキ化物である請求項1〜3のいずれか1項記載の多色歯磨製剤。
【請求項5】
(A)、(B)成分の配合比率を示す(A)/(B)が、質量比として0.2〜5である請求項1〜4のいずれか1項記載の多色歯磨製剤。
【請求項6】
着色歯磨組成物(I)全体に対して、(A)成分の含有量が0.0001〜0.02質量%であり、(B)成分の含有量が0.0001〜0.005質量%である請求項1〜5のいずれか1項記載の多色歯磨製剤。
【請求項7】
着色歯磨組成物(I)全体に対して、(C−1)成分の含有量が0.1〜1.4質量%である請求項1〜6のいずれか1項記載の多色歯磨製剤。
【請求項8】
着色歯磨組成物(I)が透明である請求項1〜7のいずれか1項記載の多色歯磨製剤。
【請求項9】
着色歯磨組成物(I)が、更にシリカ系研磨剤を着色歯磨組成物(I)全体に対して5〜35質量%含有し、屈折率が1.43〜1.45である請求項1〜8のいずれか1項記載の多色歯磨製剤。
【請求項10】
(D)白色粒子が、白色顔料及び水不溶性無機研磨剤である請求項1〜9のいずれか1項記載の多色歯磨製剤。
【請求項11】
着色歯磨組成物(I)と白色歯磨組成物(II)とがストライプ状に隣接した請求項1〜10のいずれか1項記載の多色歯磨製剤。
【請求項12】
容器内部に仕切り壁がない単一チューブ容器内に充填された請求項1〜11のいずれか1項記載の多色歯磨製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色合いの鮮やかさが優れ、かつ鮮明で安定な多色模様外観を与える多色歯磨製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨製剤として、審美性・魅力性の観点から、容器から押し出すとストライプ模様等に絞り出される多色練歯磨剤が上市されている。色の組み合わせとしては、練歯磨組成物の通常色である白色練部分と白色以外の着色練部分とからなるものが一般的である。
【0003】
通常、歯磨組成物を着色する場合は、色の鮮やかさ等の観点から、青色1号等の水溶性色素がよく使用されているが、一般的なチューブ容器等からストライプ状等の多色模様で押し出される多色歯磨製剤では、水溶性色素を使用すると色の異なる歯磨組成物間での色移り、色にじみを招き、これらを防ぐため、水不溶性の顔料やクロロフィル等を使用することは公知である。
しかし、顔料を使用した場合、その色合いは鮮やかさに欠け、特に着色部が赤色や黄色の暖色系の場合はその問題が顕著であった。更に、着色歯磨組成物の透明性が失われ、透明外観を与えることが難しいという問題もあり、見た目の審美性の点で難点があった。
【0004】
特許文献1(特開昭60−48918号公報)には、着色剤として水溶性の銅クロロフィリン等のクロロフィル誘導体を用いることで色混ざりを改善した多色練歯磨、特許文献2(特開2003−321333号公報)には、色が鮮明で透明性が高く、魅力あるストライプ模様が発現する水溶性銅化合物含有の多色練歯磨が提案されている。また、特許文献3(特開平2−72112号公報)には、有機顔料のβ−カロチン及びクロロフィリンを着色剤に使用した安定な非ブリードストライプ入り歯磨組成物、特許文献4(特開昭59−231010号公報)は、強い色を有する共役の顔料であるフタロシアニン型顔料を含有する、肉眼的に透明で縞模様を呈する着色歯磨剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−48918号公報
【特許文献2】特開2003−321333号公報
【特許文献3】特開平2−72112号公報
【特許文献4】特開昭59−231010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の多色歯磨製剤の審美性は未だ十分ではなく改善の余地があり、このため、色合いの鮮やかさを向上し、鮮明で安定な外観を与える技術の開発が望まれた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、色合いの鮮やかさが優れ、かつ経時的にも色にじみが抑えられ、色混ざりが抑制された鮮明で安定な多色模様外観を与える多色歯磨製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、非白色の着色歯磨組成物が白色歯磨組成物に隣接して容器内に充填された、多色模様を有する多色歯磨製剤において、前記着色歯磨組成物の着色剤として(A)特定の水不溶性色素と(B)アルミニウムレーキ色素とを組み合わせて使用し、更に(C)特定の粘結剤を使用することによって、これを(D)白色粒子及び(C)特定の粘結剤含有の白色歯磨組成物に隣接させることで、上記課題、目的が達成されることを知見した。即ち、本発明では、(A)建染染料、油溶性染料及び顔料(但し、アルミニウムレーキを除く。)から選ばれる1種又は2種以上の水不溶性色素、(B)アルミニウムレーキ色素、(C)(C−1)ポリアクリル酸塩及び/又はアルギン酸塩を含有する着色歯磨組成物(I)と、(D)白色粒子、(C)(C−2)ポリアクリル酸塩及び/又はアルギン酸塩を含有する白色歯磨組成物(II)とが、混ざり合うことなく隣接して容器内に充填されることによって、色合いの鮮やかさが優れ、かつ経時においても色にじみが抑えられ、色混ざりが抑制された鮮明で安定な多色模様外観を与える多色歯磨製剤を得ることができる。
【0009】
多色歯磨製剤において、顔料等の水不溶性色素の不適切な使用では色合いの鮮やかさに欠け、また、水溶性色素の使用は色移りや色混じりを招き、このため、従来の技術では色合いの鮮やかさを高めつつ色にじみ、色混ざりを防止して鮮明かつ安定な外観を与えることは難しかったが、これに対して、本発明では、(A)、(B)成分という水不溶性の色素の組み合わせによって、予想外に、着色歯磨組成物の色合いが鮮やかになって多色模様外観のコントラストが明確になり、更に、(C)成分を併用することで、保存後も歯磨組成物間での色にじみが抑制され、また、容器を指で数回揉んだ後に押し出しても歯磨組成物間で色混ざりすることがない揉み安定性も付与できる。この場合、(A)成分に(B)成分を併用すると、色合いの鮮やかさは高まるものの経時で色がにじんだり、容器から押し出した際に色が混ざってしまうという、(A)成分単独では認識されない問題が生じるが、(C)成分を組み合わせることで、このような色にじみ、色混ざりも発生させることなく色合いが鮮やかで鮮明かつ安定なストライプ状等の多色模様外観を与えることができる。これにより、本発明では、上記(A)、(B)及び(C)((C−1))成分を含有する着色組成物と、(C)((C−2))及び(D)成分を含有する白色組成物の組合せが、格別な作用効果を奏する。
本発明によれば、特に色合いの鮮やかさが欠ける赤色、黄色、橙色等の暖色系に着色された多色歯磨製剤であっても、満足に鮮やかな色合いを付与することができ、また、着色歯磨組成物の透明性を高めて不透明な白色歯磨組成物との境界をより鮮明にすることが可能であり、審美性の更なる向上も期待できる。
【0010】
なお、特許文献1、2は水溶性色素、特許文献3、4は有機顔料のβ−カロチン及びクロロフィリン、フタロシアニン型顔料による色の改善であり、引用文献1〜4から、(A)、(B)、(C)、(D)成分を組合せて使用することによる、多色歯磨製剤の色合いの鮮やかさの向上、色にじみ及び色混ざりの抑制は予測できない。
【0011】
従って、本発明は、下記の多色歯磨製剤を提供する。
〔1〕
(A)建染染料、油溶性染料及び顔料(但し、アルミニウムレーキを除く。)から選ばれる1種又は2種以上の水不溶性色素、
(B)アルミニウムレーキ色素、
(C)(C−1)ポリアクリル酸塩及びアルギン酸塩から選ばれる1種以上
を含有する着色歯磨組成物(I)と、
(D)白色粒子、
(C)(C−2)ポリアクリル酸塩及びアルギン酸塩から選ばれる1種以上
を含有する白色歯磨組成物(II)と
が、隣接して容器内に充填されてなることを特徴とする多色歯磨製剤。
〔2〕
(A)、(B)成分が、それぞれ赤色色素、黄色色素及び橙色色素から選ばれる1種又は2種以上であり、(A)成分と(B)成分とが同色又は異色の色素である〔1〕記載の多色歯磨製剤。
〔3〕
(A)成分が、赤色202号及び赤色226号から選ばれる1種以上である〔1〕又は〔2〕記載の多色歯磨製剤。
〔4〕
(B)成分が、黄色4号、黄色203号、赤色218号及び赤色223号から選ばれる1種又は2種以上の色素のアルミニウムレーキ化物である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の多色歯磨製剤。
〔5〕
(A)、(B)成分の配合比率を示す(A)/(B)が、質量比として0.2〜5である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の多色歯磨製剤。
〔6〕
着色歯磨組成物(I)全体に対して、(A)成分の含有量が0.0001〜0.02質量%であり、(B)成分の含有量が0.0001〜0.005質量%である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の多色歯磨製剤。
〔7〕
着色歯磨組成物(I)全体に対して、(C−1)成分の含有量が0.1〜1.4質量%である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の多色歯磨製剤。
〔8〕
着色歯磨組成物(I)が透明である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の多色歯磨製剤。
〔9〕
着色歯磨組成物(I)が、更にシリカ系研磨剤を着色歯磨組成物(I)全体に対して5〜35質量%含有し、屈折率が1.43〜1.45である〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の多色歯磨製剤。
〔10〕
(D)白色粒子が、白色顔料及び水不溶性無機研磨剤である〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の多色歯磨製剤。
〔11〕
着色歯磨組成物(I)と白色歯磨組成物(II)とがストライプ状に隣接した〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の多色歯磨製剤。
〔12〕
容器内部に仕切り壁がない単一チューブ容器内に充填された〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の多色歯磨製剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、色合いの鮮やかさが優れ、かつ色にじみが経時においても抑えられ、色混ざりが抑制された鮮明かつ安定な多色模様外観を与える多色歯磨製剤を提供することができる。本発明では、更に、着色部を高透明性にして多色模様の鮮明性を高めることも可能であり、見た目の審美性が優れる多色歯磨製剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の多色歯磨製剤は、(A)建染染料、油溶性染料及び顔料(アルミニウムレーキを除く。)から選ばれる1種又は2種以上の水不溶性色素、(B)アルミニウムレーキ色素、(C)(C−1)ポリアクリル酸塩及び/又はアルギン酸塩を含有する着色歯磨組成物(I)と、(D)白色粒子、(C)(C−2)ポリアクリル酸塩及び/又はアルギン酸塩を含有する白色歯磨組成物(II)とを含み、非白色である着色歯磨組成物(I)と白色歯磨組成物(II)とが、混ざり合うことなく隣接して容器内に充填されたものである。
ここで、多色歯磨製剤としては、前記歯磨組成物(I)と(II)が隣接する隣接面を1又は2以上有するストライプ状や、外層(歯磨組成物(I))の内側に隣接した内層(歯磨組成物(II))を有する層状等が挙げられる。
【0014】
(A)成分の水不溶性色素は、建染染料、油溶性染料、顔料(アルミニウムレーキを除く。)から選ばれる1種又は2種類以上の色素である。好ましくは建染染料及び顔料から選ばれる1種又は2種類以上である。
ここで、建染染料は、水に不溶性の染料であり、ハイドロサルファイト(亜ジチオン酸ナトリウム)によって還元されて水溶性に変わり、空気酸化により元の水不溶性の染料となる性質を有する。
油溶性染料(油性染料ともいう。)は、水に不溶性の染料であり、アルコール又は油には溶解する性質を有する。
顔料とは、着色に用いる粉末で水や油、アルコールに不溶である性質を有する。
【0015】
(A)成分の水不溶性色素の色は、特に限定されず、暖色系でも寒色系でもよく、2種以上併用する場合は同色でも異色でもよいが、特に暖色系、例えば赤色、黄色、橙色等の色が好ましい。このような暖色系であると、色合いの鮮やかさがより改善する。
【0016】
(A)成分として具体的には、下記の水不溶性色素が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
建染染料:
赤色226号、青色201号、青色204号
油溶性染料:
赤色223号、225号、215号、218号、501号、505号;だいだい201号、206号、403号;黄色201号、204号、404号、405号;緑色202号;青色403号
顔料:
赤色220号、221号、228号、202号、203号、204号、206号、207号、208号、404号、405号、だいだい203号、204号、401号、黄色205号、401号、青色404号、ベンガラ(酸化鉄)
中でも、建染染料の赤色226号、顔料の赤色202号が、特に色にじみのなさ及び色合いの点から、より好適である。
【0017】
(A)成分の水不溶性色素の含有量は、着色歯磨組成物(I)全体に対して0.0001〜0.02%(質量%、以下同様。)が好ましく、より好ましくは0.0005〜0.01%である。含有量が多いほど色合いが良くなり、0.0001%以上であると、十分な色合いが得られる。0.02%以下であると、色の鮮やかさを十分に維持できる。
【0018】
(B)成分のアルミニウムレーキ色素は、水溶性色素及び油溶性染料のアルミニウムレーキ化物であり、水不溶性である。アルミニウムレーキ色素は公知の製法で得ることができ、例えば、水溶性色素及び油溶性染料を電離させ、担体としての金属イオンと電気的に結合させて不溶化処理することで得ることができる。
(B)成分のアルミニウムレーキ色素の色は、特に限定されず、(A)成分と同色であっても異色であってもよく、また、暖色系でも寒色系でもよく、2種以上併用する場合は同色でも異色でもよいが、特に暖色系、例えば赤色、黄色、橙色等の色が好ましい。このような暖色系であると、色合いの鮮やかさがより改善する。
【0019】
具体的には、下記の水溶性色素及び油溶性染料のアルミニウムレーキが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
水溶性色素:
赤色2号、3号、102号、104号、105号、106号、227号、230号、231号、232号、401号、502号、503号、504号、506号;だいだい205号、207号、402号;黄色4号、5号、202号、203号、402号、403号、407号;緑色3号、201号、204号、205号、402号;青色1号、2号、205号
油溶性染料:
赤色223号、225号、215号、218号、501号、505号;だいだい201号、206号、403号;黄色201号、204号、404号、405号;緑色202号;青色403号
これらの中では、特に黄色4号のアルミニウムレーキ、黄色203号のアルミニウムレーキ、赤色218号のアルミニウムレーキ、赤色223号のアルミニウムレーキが好ましく、とりわけ黄色4号のアルミニウムレーキ、黄色203号のアルミニウムレーキが、色合いの鮮やかさの点でより好ましい。
【0020】
(B)成分のアルミニウムレーキ色素の含有量は、着色歯磨組成物(I)全体に対して0.0001〜0.005%が好ましく、より好ましくは0.001〜0.003%である。含有量が多いほど色合いが良くなり、0.0001%以上であると、十分な色合いが得られる。0.005%以下であると、色にじみを十分に抑制できる。
【0021】
本発明では、(A)、(B)成分を特定割合で組み合わせることがより好ましい。(A)、(B)成分の配合比率を示す(A)/(B)は、質量比として0.2〜5であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5、更に好ましくは0.3〜3.3である。この範囲内であると、色にじみがより抑制され、より鮮やかな色合いを付与できる。0.2未満であると、色にじみが発生して抑えられなくなる場合があり、5を超えると十分に鮮やかな色合いを得ることができなくなる場合がある。
【0022】
(C)成分は、ポリアクリル酸塩及びアルギン酸塩から選ばれる1種以上であり、好ましくはポリアクリル酸塩とアルギン酸塩との併用である。粘結剤としてポリアクリル酸塩及び/又はアルギン酸塩を配合すると、色にじみが抑制され、揉み安定性が優れる。なお、ポリアクリル酸塩を欠くと、色にじみが抑えられない場合があり、アルギン酸塩を欠くと、色にじみが抑えられないばかりか、揉み安定性も劣る場合がある。
ポリアクリル酸塩、アルギン酸塩としては、これらのアルカリ金属塩、具体的には、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウムを使用し得る。市販の東亞合成(株)、(株)キミカ製等を使用できる。
【0023】
(C)(C−1)ポリアクリル酸塩及び/又はアルギン酸塩の総含有量は、着色歯磨組成物(I)全体に対して0.1〜1.4%、特に0.2〜1.4%が好ましく、より好ましくは0.4〜1.0%である。この範囲内であると、色にじみを十分に抑制でき、十分な揉み安定性が得られる。
更に、(C)成分((C−1)成分)として、ポリアクリル酸塩を含有する場合、その含有量は、着色歯磨組成物(I)全体の0.1〜1.4%、特に0.1〜0.7%が好ましく、より好ましくは0.2〜0.5%である。0.1%以上であると、色にじみを十分に抑制でき、1.4%以下であると、十分な揉み安定性が得られる。
また、アルギン酸塩を含有する場合、その含有量は、着色歯磨組成物(I)全体の0.1〜1.4%、特に0.1〜0.7%が好ましく、より好ましくは0.2〜0.5%である。0.1%以上であると、色にじみを十分に抑制できると共に十分な揉み安定性が得られ、1.4%以下であると、色にじみの抑制効果を満足に維持できる。
【0024】
ポリアクリル酸塩とアルギン酸塩とを併用する場合、これらの配合比率は、特に制限されないが、質量比として0.14〜7、特に0.25〜4が好ましい。この範囲内であると、色にじみの抑制効果、揉み安定性がより優れる。0.14未満であると色にじみが抑制できない場合があり、7を越えると、揉み安定性が低下する場合がある。
【0025】
なお、粘結剤として、(C)成分以外の物質、例えばキサンタンガム等のガム類、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース誘導体は、本発明の効果を妨げない範囲で添加してもよいが、特にセルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロースナトリウムを添加する場合、その添加量は組成物全体の0.1%以下、特に0.05%以下が好ましく、無添加(0%)であってもよい。
【0026】
白色歯磨組成物(II)に含まれる(D)白色粒子としては、(D−1)酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料、(D−2)水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等のカルシウム化合物、炭酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、ゼオライト、無水ケイ酸等の水不溶性無機研磨剤が挙げられる。これらは、1種又は2種以上使用できる。また、(D−1)成分又は(D−2)成分を使用してもよいが、好ましくは、(D−1)成分と(D−2)成分との併用、特に前記白色顔料と水不溶性無機研磨剤との併用であり、より好ましくは酸化チタンと無水ケイ酸との併用である。
(D−1)白色顔料の含有量は、白色歯磨組成物(II)全体の0.1〜2%が好ましく、より好ましくは0.2〜1%である。(D−2)研磨剤の含有量は、5〜50%、好ましくは10〜45%である。(D)成分がこの範囲内であると、着色歯磨との境界のコントラストが明確になり、きれいなストライプ歯磨が得られる。多すぎると、歯磨表面が荒れる場合がある。
【0027】
白色歯磨組成物(II)が含有する(C)成分((C−2)ポリアクリル酸塩及び/又はアルギン酸塩)に関しては、着色歯磨組成物(I)の(C−1)成分と同様である。
(C−2)成分としてポリアクリル酸塩を含有する場合、その含有量は、白色歯磨組成物(II)全体の0.1〜0.7%、特に0.2〜0.5%が好ましい。また、アルギン酸塩を含有する場合、その含有量は、白色歯磨組成物(II)全体の0.1〜0.7%、特に0.2〜0.5%が好ましい。更に、(C−2)ポリアクリル酸塩及び/又はアルギン酸塩の総含有量は、白色歯磨組成物(II)全体に対して0.2〜1.4%が好ましく、より好ましくは0.4〜1.0%である。この範囲内であることが、本発明の効果発現には、より好適である。
なお、(C)成分以外の粘結剤に関しては、上記と同様である。
【0028】
本発明において、着色歯磨組成物(I)は好ましくは半透明又は透明、より好ましくは透明であり、白色歯磨組成物(II)は半透明又は不透明である。
着色歯磨組成物(I)の屈折率を、配合する研磨剤の屈折率(シリカ系研磨剤の場合は1.43〜1.45)と同様になるように合わせることにより、高透明になり、色合いがより鮮やかになると共に、隣接した不透明な白色歯磨組成物(II)との境界もより鮮明になる。
【0029】
この場合、着色歯磨組成物(I)に配合される研磨剤としては、無水ケイ酸、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、炭酸カルシウム系研磨剤等が挙げられるが、シリカ系研磨剤の屈折率は約1.44であるのに対し、炭酸カルシウムの屈折率は1.50〜1.64と高く、炭酸カルシウム系研磨剤では、通常、歯磨組成物に用いられている溶媒では屈折率を合わせることが難しいことから、シリカ系研磨剤の使用が好ましい。研磨剤、特にシリカ系研磨剤の含有量は、着色歯磨組成物(I)全体に対して5〜35%、特に10〜25%が好ましい。
なお、本発明では、白色歯磨組成物(II)に(D−2)成分として水不溶性無機研磨剤、特に無水ケイ酸を使用し、着色歯磨組成物(I)にはシリカ系研磨剤として、前記(D−2)成分として用いた無水ケイ酸と同様のものを添加すると、両歯磨組成物の粘性等の物性差が小さくなり揉み安定性が良好になることから、効果発現の点で、より好ましい。
【0030】
なお、上記屈折率は、アッベ屈折計(NAR−1T SOLID、ATAGO社製)によって測定した(以下、同様。)。また、屈折率の調整は下記方法を採用できる。
屈折率の調整方法
歯磨組成物の屈折率は、ソルビトール、プロピレングリコール、平均分子量280〜1,050(医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量)のポリエチレングリコール等から選ばれる1種又は2種以上の糖アルコール、多価アルコールの量と、水分の量で決まるため、それぞれの量のバランスによって屈折率を調整できる。多価アルコールの量は、着色歯磨組成物(I)全体の40〜70%が好ましい。
なお、歯磨組成物では、上記糖アルコールや多価アルコールは粘稠剤として、水は液体媒体として一般的に配合され、本発明でも同様に配合できる。
【0031】
本発明の多色歯磨製剤は、特に練歯磨剤として好適であり、着色歯磨組成物(I)、白色歯磨組成物(II)には、それぞれ、上記成分に加えて歯磨組成物の一般的成分を本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて配合できる。例えば界面活性剤、甘味剤、防腐剤、香料、有効成分等が挙げられる。なお、研磨剤、粘稠剤については、白色歯磨組成物(II)に関しても上記と同様である。
【0032】
界面活性剤としては、歯磨組成物に一般的に用いられるアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合できる。
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、N−ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム等が挙げられ、両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン系、アルキルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン系、イミダゾリン系が挙げられる。
界面活性剤の配合量は、歯磨組成物全体の0.001〜10%、特に0.01〜5%がよい。
【0033】
甘味剤としてはサッカリンナトリウム等、防腐剤としてはパラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸又はその塩等が挙げられる。
【0034】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料や、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。また、上記の香料素材は、組成物中に0.000001〜1%使用するのが好ましく、上記香料素材を使用した賦香用香料は、組成物中に0.1〜2%使用するのが好ましい。
【0035】
有効成分としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン性殺菌剤、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン等の抗炎症剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等の酵素、水溶性リン酸化合物、水溶性銅化合物、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、アスコルビン酸又はその誘導体、ビタミン類等が挙げられる。有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量である。
【0036】
本発明の多色歯磨製剤は、着色歯磨組成物(I)と白色歯磨組成物(II)とが、混ざり合うことなく好ましくはストライプ状、渦巻き状、ドット状、より好ましくはストライプ状に隣接して容器内に充填され、このような形状を保って容器から排出される。着色歯磨組成物(I)と白色歯磨組成物(II)の比率は特に制限はなく、所望の練歯磨外観(デザイン)となるように適宜設定することができる。例えば、多色歯磨製剤の外観上、(I)/(II)=0.1/99.9〜99.1/0.1(質量比)が好ましく、より好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜80/20の範囲で設定することができる。形状がストライプ状、渦巻状の場合は、(I)/(II)=1/99〜99/1が好ましく、5/95〜95/5がより好ましく、10/90〜90/10が更に好ましく、20/80〜80/20が特に好ましい。形状がドット状の場合は、(I)/(II)=0.1/99.9〜20/80が好ましく、1/99〜10/90がより好ましい。
【0037】
なお、歯磨製剤の調製法は、通常の方法を採用でき、着色歯磨組成物(I)と白色歯磨組成物(II)をそれぞれ調製し、両者を容器内に充填して得ることができる。具体的には、後述の実施例の方法等によって調製できる。
【0038】
また、充填容器は、歯磨製剤用として一般的な容器を使用でき、充填部や口部等の容器内部に仕切り壁がない単一チューブ容器に充填して歯磨製品として使用し得る。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記例中、%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0040】
[実施例、比較例]
表1〜3に示すように、表1〜3に示す組成の透明な着色歯磨組成物(I)と、表4に示す組成の不透明な白色歯磨組成物(II)とをそれぞれ常法によって調製した後、ストライプ歯磨用充填機に着色歯磨及び白色歯磨をそれぞれのホッパーに移し、互いが混ざり合うことなくストライプ状に隣接させてチューブ容器(容器内に仕切り壁のない、歯磨剤用として一般的なチューブ容器)に充填し、多色歯磨製剤(試験製剤)を得た。着色歯磨組成物(I)/白色歯磨組成物(II)=1/1(質量比)である。
試験製剤を下記方法で評価し、結果を表1〜3に併記した。
なお、屈折率は、アッベ屈折計(NAR−1T SOLID、ATAGO社製)によって測定した。
【0041】
<色合いの鮮やかさの評価方法>
試験製剤の歯磨組成物をチューブ容器から歯ブラシ上に押し出して載せた時の練りの色合いの鮮やかさについて、下記基準に従って目視判定した。
ここで、練りの色合いの鮮やかさとは、着色部の明るさやクリアさを示す。
判定基準
◎;クリアで鮮やかな色合いである
○;ややクリアさには欠けるが鮮やかな色合いである
△;色合いはほぼクリアであるが、明るさに欠ける
×;くすんだ色合いで、明るさにも欠ける
【0042】
<色にじみのなさの評価方法>
試験製剤を50℃で30日間保存した後、歯磨組成物をチューブ容器から歯ブラシ上に押し出して載せた時の練りの色にじみ(色にじみのなさ)について、下記基準に従って目視判定した。
判定基準
◎;色にじみがなく、きれいなストライプ状である
○;色にじみがわずかに認められるがストライプの形態は保っている
△;色にじみが認められ、若干、ストライプの境界が重なり合っている
が、ストライプの形態を残している
×;色にじみでストライプ間の境界がはっきりせず、完全に混ざり合っ
ている
【0043】
<揉み安定性(色混ざりのなさ)の評価方法>
試験製剤中の歯磨組成物の充填量を半量程度にし、チューブ容器の真ん中を指で10回揉んだ後、歯磨組成物をチューブ容器から歯ブラシ上に押し出した時の練りの色混ざり(色混ざりのなさ)について、下記基準に従って目視判定した。
判定基準
◎;色混ざりがなく、きれいなストライプ状である
○;色混ざりはわずかに認められるがストライプの形態は保っている
△;色混ざりが認められ、若干、ストライプ間の境界が重なり合ってい
るが、ストライプの形態を残している
×;ストライプの境界がはっきりせず、完全に色が混ざり合っている
【0044】
使用原料の詳細を下記に示す。
(A)D&C Red 7(赤色202号)
NEELIKON社製、Lavanya Indica
(A)D&C Red 30(赤色226号)
NEELIKON社製、Lavanya Roseum
(B)D&C Yellow 5 アルミニウムレーキ(黄色4号アルミニウムレーキ)
NEELIKON社製、Neelicert FD&C Yellow 5 AL Lake
(B)D&C Yellow 10 アルミニウムレーキ(黄色203号アルミニウムレーキ)
NEELIKON社製、Lavanya Mimosa
(B)D&C Red 27 アルミニウムレーキ(赤色218号アルミニウムレーキ)
NEELIKON社製、Lavanya Lilac
(B)D&C Red 21 アルミニウムレーキ(赤色223号アルミニウムレーキ)
NEELIKON社製、Lavanya Carlotta
(C)((C−1)、(C−2))ポリアクリル酸ナトリウム
東亜合成(株)製、RHEOGIC 260H
(C)((C−1)、(C−2))アルギン酸ナトリウム
(株)キミカ製、キミカアルギン
(D)(D−1)酸化チタン
石原産業(株)製、酸化チタン
(D)(D−2)無水ケイ酸(研磨剤)
PQ社製
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】