【実施例】
【0042】
以下の実施例によって、本発明を更に詳細に説明する。しかし、本発明の保護範囲は実施例に限定されず、実施例中の各物性は以下の方法によって測定される。
【0043】
[撚り係数]
【0044】
撚り係数α=t*T1^(1/2)、
式中、t−撚り数(T/10cm)、T1−糸の繊度(tex)。
【0045】
[縦糸密度・横糸密度]
【0046】
JIS L1096 8.6密度法に基づき、密度計で織物の縦糸密度・横糸密度を測定し、密度計の測定範囲を1インチ(2.54cm)として測定したところ、縦糸密度がm本/2.54cm、横糸密度がn本/2.54cmであり、縦糸密度は(m/2.54*10)本/10cm、横糸密度は(n/2.54*10)本/10cmに換算され、縦糸、横糸密度は5個の測定値の平均値である。
【0047】
[目付]
【0048】
JIS L1096 8.4.2法に基づき、標準状態下で円形カッターを用いて面積100cm
2の試料を3枚カットし、それぞれの質量を標準状態下で秤量し、計算式:目付=質量/面積に従って、各試料の目付を求め、平均値をとる。
【0049】
[厚さ]
【0050】
JIS L1096 8.4.3法に基づき、標準状態下で20cm×20cmの試料を3枚カットし、厚さ計(型番THC−3ND、圧力240gf/cm
2)を用いてそれぞれ各試料の中間の厚さを測定し、平均値をとる。
【0051】
[気密性]
【0052】
中国建材産業標準JCT 211−2009「隔膜アスベスト布」標準4.5.2の気密性テスト方法に基づき、サイズ20cm×20cmの試料を取り、試料を水中に30分間浸漬させ、完全に浸透した後、試料をテスト装置に平坦に取り付け、水漏れしないように密封性を確保し、試料の上方に水を布から10cmに添加し、水面を観察し、水面に気体が2分間漏れないように確保し、この時の気密性試験値を記録し、各組の試料を少なくとも3個にして、平均値をとる。
【0053】
[吸水速度]
【0054】
JIS L1907−2010繊維製品の吸水性試験方法の7.1.1滴下法に基づきテストを行い、ビュレットに所定量の脱イオン水を添加し、ビュレットを垂直に固定し、被験布隔膜をクリップで平坦に張り、ビュレットの下方に水平に置き、ビュレットの位置を調節し、ビュレットの底部を布から1cmに位置させ、ビュレットのピストンをゆっくりと開け、布に滴下した水量を1滴とし、該水滴が完全に吸収される時間をストップウォッチで記録し、各組の試料を少なくとも5回測定し、平均値をとる。
【0055】
[吸水高さ]
【0056】
JIS L1907−2010繊維製品の吸水性試験方法の7.1.2バイレック法に基づきテストを行い、サイズ30cm×2.5cmの試料を取り、試料を垂直にテストクリップに挟み、下方の注水容器に所定量の脱イオン水を添加し、試料の下端から2cmを水中に浸漬させ、10分間維持し、試料が吸水する最高箇所にマークし、サンプルクリップから試料を取り出し、吸水高さ値を水平に測定し、各組の試料を少なくとも3回測定し、平均値をとる。
【0057】
[引張破断強度]
【0058】
JIS L1096 8.12.1A法(基布プル法)に基づき、一般織物に対し、試料のサイズを30cm×6cmとし、エッジの両側から同数の糸を除去し、残りの試料の幅を所定幅5cmとする。引張試験機において、治具で試料の両端を挟み、治具ヘッドの間隔20cm、定速20cm/minの速度で、試料が引き裂かれた時の破断強度を測定し、各組の試料を少なくとも3回測定し、平均値をとる。
【0059】
[親水基成分及びその酸素元素]
【0060】
X線光電子分光分析装置(ドイツThermo社製;型番:ESCALAB 250Xi)を用いて繊維表面の化学成分を定性・定量分析する。X線光電子スペクトルに基づき、繊維表面の酸素元素含有量を算出する。X線光電子スペクトル中の明らかに識別可能な各炭素酸素ピークの結合エネルギーに基づき、親水基成分を決定する。各組の試料に対し3個の点を測定し、各点は1つの酸素元素含有量に対応し、3個の点の試験値の平均値をとる。
【0061】
[カルボキシ基、チオオキシ基、ヒドロキシ基及びアミノ基の含有量]
【0062】
X線光電子分光分析装置(ドイツThermo社製;型番:ESCALAB 250Xi)を用いて繊維表面の化学成分を定性・定量分析する。X線光電子スペクトルに基づき算出された酸素元素含有量についてピークを分離し、ピーク値に応じて、カルボキシ基、チオオキシ基及びヒドロキシ基を判断し、対応する含有量を算出し、X線光電子スペクトルに基づき算出された窒素元素含有量についてピークを分離し、ピーク値に応じて、アミノ基を判断し、その含有量を算出する。
【0063】
[酸素元素含有量の減少率]
【0064】
X線光電子分光分析装置(ドイツThermo社製;型番:ESCALAB 250Xi)を用いて処理前のポリフェニレンサルファイド織物繊維表面の化学成分を定性・定量分析し、X線光電子スペクトルに基づき繊維表面の酸素元素含有量Mを算出し、次に、ポリフェニレンサルファイド織物繊維表面を30%のKOH溶液、温度80〜120℃で1カ月耐久性処理し、耐久性処理後のポリフェニレンサルファイド織物繊維表面の化学成分を定性・定量分析し、X線光電子スペクトルに基づき繊維表面の酸素元素含有量Nを算出し、耐久性処理前後の繊維表面の酸素元素の含有量によって酸素元素含有量の減少率を算出する。その計算式は以下の通りである。
【0065】
酸素元素含有量の減少率(%)=(N−M)/M*100%。
【0066】
実施例1
【0067】
繊度が300dtex、撚り係数が310の6本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が1800dtex、撚り係数が320のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が154本/10cm、横糸密度が106本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度90℃、速度30m/minで精練し、次に130℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、次に95%濃硫酸を用いて、処理温度80℃で12minスルホン化処理し、スルホン化処理後に洗浄して乾燥させ、次に処理強度50KW・s/m
2でプラズマ加工し、最終的に厚さ0.90mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が26重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の64%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が40%、カルボニル基の比率が30%、アルデヒド基の比率が30%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の10%であった。該ポリフェニレンサルファイド織物を温度90℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が8sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド隔膜の各物性は下記表1に示される。
【0068】
実施例2
【0069】
繊度が300dtex、撚り係数が310の4本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が1200dtex、撚り係数が435のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が177本/10cm、横糸密度が122本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度95℃、速度35m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、次に95%濃硫酸を用いて、処理温度90℃で10minスルホン化処理し、スルホン化処理後に洗浄して乾燥させ、次に処理強度100KW・s/m
2でプラズマ加工し、最終的に厚さ0.77mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が33重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の64%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が42%、カルボニル基の比率が28%、アルデヒド基の比率が30%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の8%であった。該ポリフェニレンサルファイド織物を温度100℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が9sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド隔膜の各物性は下記表1に示される。
【0070】
実施例3
【0071】
繊度が500dtex、撚り係数が350の8本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が4000dtex、撚り係数が300のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が110本/10cm、横糸密度が70本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度92℃、速度25m/minで精練し、次に135℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、次に95%濃硫酸を用いて、処理温度100℃で9minスルホン化処理し、スルホン化処理後に洗浄して乾燥させ、次に処理強度200KW・s/m
2でプラズマ加工し、最終的に厚さ1.50mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が40重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の68%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が48%、カルボニル基の比率が20%、アルデヒド基の比率が32%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の9%であった。該ポリフェニレンサルファイド織物を温度110℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が6sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド隔膜の各物性は下記表1に示される。
【0072】
実施例4
【0073】
繊度が400dtex、撚り係数が475のポリフェニレンサルファイド単糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が220本/10cm、横糸密度が180本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度93℃、速度20m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、さらに照射温度85℃で30h紫外線照射処理し、最終的に厚さ0.60mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が35重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の62%、カルボキシ基とヒドロキシの含有量が繊維表面における基の総数の69%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が44%、カルボニル基の比率が20%、アルデヒド基の比率が36%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の10%、アミノ基の含有量が繊維表面における基の総数の8%であった。温度90℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が5sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物の各物性は下記表1に示される。
【0074】
実施例5
【0075】
繊度が500dtex、撚り係数が350の5本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が2500dtex、撚り係数が316のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が120本/10cm、横糸密度が90本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度95℃、速度40m/minで精練し、次に145℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、さらに照射温度90℃で20h紫外線照射処理し、最終的に厚さ1.20mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が32重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の65%、カルボキシ基とヒドロキシの含有量が繊維表面における基の総数の74%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が48%、カルボニル基の比率が16%、アルデヒド基の比率が36%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の8%、アミノ基の含有量が繊維表面における基の総数の6%であった。温度90℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が8sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物の各物性は下記表1に示される。
【0076】
実施例6
【0077】
繊度が500dtex、撚り係数が350の10本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が5000dtex、撚り係数が268のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が100本/10cm、横糸密度が60本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度95℃、速度40m/minで精練し、次に150℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、さらに照射温度90℃で10h紫外線照射処理し、最終的に厚さ2.00mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が27重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の70%、カルボキシ基とヒドロキシの含有量が繊維表面における基の総数の78%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が40%、カルボニル基の比率が25%、アルデヒド基の比率が35%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の6%、アミノ基の含有量が繊維表面における基の総数の4%であった。温度90℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が9sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物の各物性は下記表1に示される。
【0078】
実施例7
【0079】
繊度が400dtex、撚り係数が475のポリフェニレンサルファイド単糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が220本/10cm、横糸密度が180本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度93℃、速度20m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、さらに照射温度85℃で20h紫外線照射処理し、最終的に厚さ0.60mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が33重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の63%、カルボキシ基とヒドロキシの含有量が繊維表面における基の総数の71%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が46%、カルボニル基の比率が20%、アルデヒド基の比率が34%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の7%、アミノ基の含有量が繊維表面における基の総数の5%であった。温度90℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が6sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物の各物性は下記表1に示される。
【0080】
実施例8
【0081】
繊度が500dtex、撚り係数が350の10本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が5000dtex、撚り係数が268のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が100本/10cm、横糸密度が60本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度95℃、速度40m/minで精練し、次に150℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、さらに照射温度60℃で10h紫外線照射処理し、最終的に厚さ2.00mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が20重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の66%、カルボキシ基とヒドロキシの含有量が繊維表面における基の総数の70%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が40%、カルボニル基の比率が22%、アルデヒド基の比率が38%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の6%、アミノ基の含有量が繊維表面における基の総数の4%であった。温度90℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が13sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物の各物性は下記表1に示される。
【0082】
実施例9
【0083】
繊度が300dtex、撚り係数が310の4本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が1200dtex、撚り係数が435のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が177本/10cm、横糸密度が122本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度95℃、速度35m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、さらに照射温度85℃で50h紫外線照射処理し、最終的に厚さ0.77mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が41重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の68%、カルボキシ基とヒドロキシの含有量が繊維表面における基の総数の75%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が45%、カルボニル基の比率が18%、アルデヒド基の比率が37%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の6%、アミノ基の含有量が繊維表面における基の総数の12%であった。温度90℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が10sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物の各物性は下記表1に示される。
【0084】
実施例10
【0085】
繊度が400dtex、撚り係数が475のポリフェニレンサルファイド単糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が220本/10cm、横糸密度が180本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度93℃、速度20m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、さらに照射温度85℃で20h紫外線照射処理し、最終的に厚さ0.60mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が46重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の72%、カルボキシ基とヒドロキシの含有量が繊維表面における基の総数の82%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が46%、カルボニル基の比率が20%、アルデヒド基の比率が34%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の6%、アミノ基の含有量が繊維表面における基の総数の3%であった。温度90℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が15sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物の各物性は下記表1に示される。
【0086】
実施例11
【0087】
繊度が300dtex、撚り係数が310の6本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が1800dtex、撚り係数が320のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が154本/10cm、横糸密度が106本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度90℃、速度30m/minで精練し、次に130℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、次に95%濃硫酸を用いて、処理温度130℃で12minスルホン化処理し、スルホン化処理後に洗浄して乾燥させ、次に処理強度50KW・s/m
2でプラズマ加工し、厚さ0.90mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が55重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の72%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が50%、カルボニル基の比率が15%、アルデヒド基の比率が35%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の15%であった。該ポリフェニレンサルファイド織物を温度110℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が10sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド隔膜の各物性は下記表1に示される。
【0088】
実施例12
【0089】
繊度が400dtex、撚り係数が475のポリフェニレンサルファイド単糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が220本/10cm、横糸密度が180本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度93℃、速度20m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、次に95%濃硫酸を用いて、処理温度120℃で10minスルホン化処理し、スルホン化処理後に洗浄して乾燥させ、厚さ0.60mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が40重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の62%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が50%、カルボニル基の比率が15%、アルデヒド基の比率が35%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の8%であった。該ポリフェニレンサルファイド織物を温度110℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が7sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド隔膜の各物性は下記表1に示される。
【0090】
実施例13
【0091】
繊度が500dtex、撚り係数が350の6本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が3000dtex、撚り係数が320のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。グリッパー織機で製織し、縦糸密度が120本/10cm、横糸密度が90本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度95℃、速度20m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、次に95%濃硫酸を用いて、処理温度126℃で12minスルホン化処理し、スルホン化処理後に洗浄して乾燥させ、厚さ1.30mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が30重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の66%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が48%、カルボニル基の比率が17%、アルデヒド基の比率が35%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の10%であった。該ポリフェニレンサルファイド織物を温度110℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が6sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド隔膜の各物性は下記表1に示される。
【0092】
実施例14
【0093】
繊度が500dtex、撚り係数が350の6本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が3000dtex、撚り係数が320のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。グリッパー織機で製織し、縦糸密度が120本/10cm、横糸密度が90本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度95℃、速度20m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、次に95%濃硫酸を用いて、処理温度110℃で11minスルホン化処理し、スルホン化処理後に洗浄して乾燥させ、厚さ1.30mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が35重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の71%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が55%、カルボニル基の比率が7%、アルデヒド基の比率が38%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の12%であった。該ポリフェニレンサルファイド織物を温度110℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が8sであった。本発明の水電解槽用ポリフェニレンサルファイド隔膜の各物性は下記表1に示される。
【0094】
比較例1
【0095】
繊度が300dtex、撚り係数が310の4本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が1200dtex、撚り係数が435のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が165本/10cm、横糸密度が94本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度91℃、速度30m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、次に処理強度60KW・s/m
2でプラズマ加工し、厚さ0.75mmの水電解槽用隔膜を得た。得た隔膜をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、隔膜表面に含有される酸素元素含有量が25重量%、カルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の55%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が60%、カルボニル基の比率が10%、アルデヒド基の比率が30%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の5%、カルボキシ基とチオオキシ基の総含有量が繊維表面における基の総数の60%であった。該隔膜温度を90℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が300sより大きかった。該水電解槽用ポリフェニレンサルファイド隔膜の各物性は下記表2に示される。
【0096】
比較例2
【0097】
繊度が400dtex、撚り係数が475の7本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が2800dtex、撚り係数が300のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が105本/10cm、横糸密度が80本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度94℃、速度35m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、次に95%濃硫酸を用いて、処理温度70℃で4minスルホン化処理し、スルホン化処理後に洗浄し、最終的に厚さ1.30mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が12重量%、カルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の46%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が50%、カルボニル基の比率が10%、アルデヒド基の比率が40%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の4%、カルボキシ基とチオオキシ基の総含有量が繊維表面における基の総数の50%であった。該ポリフェニレンサルファイド織物を温度100℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が300sより大きかった。該水電解槽用ポリフェニレンサルファイド隔膜の各物性は下記表2に示される。
【0098】
比較例3
【0099】
繊度が300dtex、撚り係数が310の4本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が1200dtex、撚り係数が435のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が165本/10cm、横糸密度が94本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度94℃、速度35m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、次に95%濃硫酸を用いて、処理温度160℃で20minスルホン化処理し、スルホン化処理後に洗浄し、最終的に厚さ0.70mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が60重量%、カルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の74%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が60%、カルボニル基の比率が10%、アルデヒド基の比率が30%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の16%、カルボキシ基とチオオキシ基の総含有量が繊維表面における基の総数の90%であった。該ポリフェニレンサルファイド織物を温度100℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が12sであった。該織物の濃硫酸での処理時間が長すぎるため、該織物の強度が低下した。該水電解槽用ポリフェニレンサルファイド隔膜の各物性は下記表2に示される。
【0100】
比較例4
【0101】
繊度が400dtex、撚り係数が475の7本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が2800dtex、撚り係数が300のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が105本/10cm、横糸密度が80本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度94℃、速度35m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、さらに照射温度50℃で5h紫外線照射処理し、最終的に厚さ1.30mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が12重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の48%、カルボキシ基とヒドロキシの含有量が繊維表面における基の総数の50%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が40%、カルボニル基の比率が25%、アルデヒド基の比率が35%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の1%、アミノ基の含有量が繊維表面における基の総数の1%であった。温度90℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が300sより大きかった。該水電解槽用ポリフェニレンサルファイド隔膜の各物性は下記表2に示される。
【0102】
比較例5
【0103】
繊度が300dtex、撚り係数が310の4本のポリフェニレンサルファイド単糸を合撚して、繊度が1200dtex、撚り係数が435のポリフェニレンサルファイド糸を形成した。合撚したポリフェニレンサルファイド糸を縦糸、横糸とし、グリッパー織機で製織し、縦糸密度が165本/10cm、横糸密度が94本/10cmの平織物を得て、得た平織物を温度94℃、速度35m/minで精練し、次に140℃でシリンダードライヤーを用いて乾燥させ、さらに照射温度100℃で70h紫外線照射処理し、最終的に厚さ0.70mmの水電解槽用ポリフェニレンサルファイド織物を得た。得たポリフェニレンサルファイド織物をX線光電子分光分析装置によってテストしたところ、該ポリフェニレンサルファイド織物の繊維表面に親水基を含有し、且つ繊維表面の酸素元素含有量が35重量%、親水基中のカルボキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の53%、カルボキシ基とヒドロキシの含有量が繊維表面における基の総数の58%、カルボキシ基中のカルボキシル基の比率が35%、カルボニル基の比率が35%、アルデヒド基の比率が30%、チオオキシ基の含有量が繊維表面における基の総数の15%、アミノ基の含有量が繊維表面における基の総数の12%であった。温度90℃で30%のKOH溶液で処理したところ、吸水速度が10sであった。該織物の照射温度が高すぎ、照射時間が長すぎるため、該織物の強度が低下した。該水電解槽用ポリフェニレンサルファイド隔膜の各物性は下記表2に示される。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】