特許第6849068号(P6849068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6849068
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】電子写真感光体
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/06 20060101AFI20210315BHJP
   G03G 5/04 20060101ALI20210315BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20210315BHJP
   C07C 211/54 20060101ALN20210315BHJP
【FI】
   G03G5/06 312
   G03G5/06 319
   G03G5/06 315Z
   G03G5/06 314B
   G03G5/04
   G03G5/05 101
   !C07C211/54
【請求項の数】9
【全頁数】75
(21)【出願番号】特願2019-531036(P2019-531036)
(86)(22)【出願日】2018年7月17日
(86)【国際出願番号】JP2018026722
(87)【国際公開番号】WO2019017336
(87)【国際公開日】20190124
【審査請求日】2020年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-141457(P2017-141457)
(32)【優先日】2017年7月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】東 潤
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 健輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 智文
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英樹
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−016023(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/086439(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/073176(WO,A1)
【文献】 特開2014−149363(JP,A)
【文献】 特開2014−146001(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0153019(US,A1)
【文献】 特開2007−293342(JP,A)
【文献】 ORGANOMETALLICS,2011年,30,4432-4436
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,G03G
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、感光層とを備える、電子写真感光体であって、
前記感光層は、電荷発生剤と正孔輸送剤とバインダー樹脂とを少なくとも含有し、
前記感光層は、前記電荷発生剤を含有する電荷発生層、及び前記正孔輸送剤と前記バインダー樹脂とを含有する電荷輸送層を含むか、或いは
前記感光層は、前記電荷発生剤と前記正孔輸送剤と前記バインダー樹脂とを含有する単層の感光層であり、
前記正孔輸送剤は、一般式(1)で表される化合物を含み、
前記バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂を含み、
前記ポリアリレート樹脂は、一般式(10)で表される繰り返し単位の少なくとも1種と、一般式(11)で表される繰り返し単位の少なくとも1種とを含む、電子写真感光体
【化1】
(前記一般式(1)中、
1及びR2は、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、且つR1が表わす基の炭素原子数とR2が表わす基の炭素原子数との和は2であり、
3及びR4は、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、且つR3が表わす基の炭素原子数とR4が表わす基の炭素原子数との和は2である。)
【化2】
(前記一般式(10)中、
11及びR12は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、
13は水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し且つR14は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すか、或いはR13及びR14は互いに結合して炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基を表し、
1種の前記一般式(11)で表される繰り返し単位が含まれる場合、前記一般式(11)中のXは、化学式(X1)で表される二価の基を表し、
少なくとも2種の前記一般式(11)で表される繰り返し単位が含まれる場合、前記少なくとも2種の前記一般式(11)で表される繰り返し単位のうち、1種の前記一般式(11)中のXは前記化学式(X1)で表される二価の基を表し、他の種の前記一般式(11)中のXは、化学式(X2)、化学式(X3)、化学式(X4)、化学式(X5)又は化学式(X6)で表される二価の基を表す。)
【化3】
【化4】
【請求項2】
前記一般式(1)は、化学式(1−1)、(1−2)又は(1−3)で表される、請求項1に記載の電子写真感光体
【化5】
【請求項3】
前記バインダー樹脂の質量に対する前記正孔輸送剤の質量の比率は、0.50以上である、請求項に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
記ポリアリレート樹脂は、化学式(10−1)、化学式(11−X1)及び化学式(11−X3)で表される繰り返し単位を含むポリアリレート樹脂、
【化6】
化学式(10−2)、前記化学式(11−X1)及び前記化学式(11−X3)で表される繰り返し単位を含むポリアリレート樹脂、
【化7】
前記化学式(10−2)、前記化学式(11−X1)及び化学式(11−X2)で表される繰り返し単位を含むポリアリレート樹脂、又は
【化8】
化学式(10−3)、前記化学式(11−X1)及び前記化学式(11−X3)で表される繰り返し単位を含むポリアリレート樹脂である、請求項に記載の電子写真感光体。
【化9】
【請求項5】
記ポリアリレート樹脂は、化学式(10−1)、化学式(12−1)及び化学式(11−X3)で表される繰り返し単位を含むポリアリレート樹脂である、請求項に記載の電子写真感光体。
【化10】
【請求項6】
前記感光層は、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層を含み、
前記電荷輸送層は、電子アクセプター化合物を更に含有し、
前記正孔輸送剤の質量に対する前記電子アクセプター化合物の質量の比率は、0.01以上0.50以下である、請求項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記電子アクセプター化合物は、一般式(20)、一般式(21)、一般式(22)、一般式(23)又は一般式(24)で表される化合物を含む、請求項に記載の電子写真感光体。
【化11】
(前記一般式(20)中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、
前記一般式(21)中、Q11及びQ12は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、
前記一般式(22)中、Q21及びQ22は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよい、炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、
前記一般式(23)中、Q31は、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基を表し、
前記一般式(24)中、Q41及びQ42は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、Q43はハロゲン原子を表す。)
【請求項8】
前記電子アクセプター化合物は、化学式(20−E1)、化学式(20−E2)、化学式(21−E3)、化学式(22−E4)、化学式(23−E5)又は化学式(24−E6)で表される化合物を含む、請求項に記載の電子写真感光体。
【化12】
【請求項9】
前記感光層は、前記単層の感光層であり、
前記感光層は、電子輸送剤を更に含有し、
前記正孔輸送剤の質量に対する前記電子輸送剤の質量の比率は、0.01以上1.50以下である、請求項に記載の電子写真感光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物(特に、ターフェニル化合物)、電子写真感光体、及び化合物(特に、ターフェニル化合物)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター又は複合機)において用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。電子写真感光体としては、例えば、単層型電子写真感光体及び積層型電子写真感光体が用いられる。単層型電子写真感光体は、電荷発生の機能と、電荷輸送の機能とを有する単層の感光層を備える。積層型電子写真感光体は、電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを含む感光層を備える。
【0003】
特許文献1には、特定構造のテルフェニルジアミン電荷輸送成分を含有する少なくとも1つの電荷輸送層を備えた像形成部材が記載されている。テルフェニルジアミン電荷輸送成分は、例えば、化学式(II)で表される。
【0004】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−293342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者らの検討により、特許文献1に記載の像形成部材は、電気特性の点で不十分であることが判明した。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、感光層に含有させた場合に、電子写真感光体の電気特性の向上、及び感光層の結晶化の抑制が可能な化合物を提供することである。また、本発明の別の目的は、電気特性の向上、及び感光層の結晶化の抑制が可能な電子写真感光体を提供することである。また、本発明の更に別の目的は、上述の化合物の収率を向上させ、上述の化合物が感光層に含有された場合の電子写真感光体の感度特性を特に向上させる、上述の化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の化合物は、一般式(1)で表される。
【0009】
【化2】
【0010】
前記一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、且つR1が表わす基の炭素原子数とR2が表わす基の炭素原子数との和は2である。R3及びR4は、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、且つR3が表わす基の炭素原子数とR4が表わす基の炭素原子数との和は2である。
【0011】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、感光層とを備える。前記感光層は、電荷発生剤と正孔輸送剤とバインダー樹脂とを少なくとも含有する。前記感光層は、前記電荷発生剤を含有する電荷発生層、及び前記正孔輸送剤と前記バインダー樹脂とを含有する電荷輸送層を含む。或いは前記感光層は、前記電荷発生剤と前記正孔輸送剤と前記バインダー樹脂とを含有する単層の感光層である。前記正孔輸送剤は、上述の化合物を含む。
【0012】
本発明の化合物の製造方法は、上述の化合物の製造方法である。本発明の化合物の製造方法は、一般式(30)で表される配位子と遷移金属を含有する触媒とを用いて、又は前記配位子が配位した前記触媒を用いて、一般式(a)で表される化合物と、一般式(b)で表される化合物と、一般式(c)で表される化合物とを反応させる工程を含む。
【0013】
【化3】
【0014】
前記一般式(30)中、R31、R32、R33、及びR34は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。Ar35は、炭素原子数6以上14以下のアリーレン基を表す。
【0015】
【化4】
【0016】
前記一般式(a)中、Yはハロゲン原子を表す。前記一般式(b)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、且つR1が表わす基の炭素原子数とR2が表わす基の炭素原子数との和は2である。前記一般式(c)中、R3及びR4は、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、且つR3が表わす基の炭素原子数とR4が表わす基の炭素原子数との和は2である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の化合物によれば、感光層に含有させた場合に、電子写真感光体の電気特性の向上及び感光層の結晶化の抑制が可能である。本発明の電子写真感光体は、電気特性の向上及び感光層の結晶化の抑制が可能である。本発明の化合物の製造方法によれば、上述の化合物の収率を向上させ、上述の化合物が感光層に含有された場合の電子写真感光体の感度特性を特に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】電子写真感光体の一例を示す部分断面図であり、この電子写真感光体は本発明の実施形態に係る化合物を含有する。
図1B】電子写真感光体の一例を示す部分断面図であり、この電子写真感光体は本発明の実施形態に係る化合物を含有する。
図1C】電子写真感光体の一例を示す部分断面図であり、この電子写真感光体は本発明の実施形態に係る化合物を含有する。
図2A】電子写真感光体の別の例を示す部分断面図であり、この電子写真感光体は本発明の実施形態に係る化合物を含有する。
図2B】電子写真感光体の別の例を示す部分断面図であり、この電子写真感光体は本発明の実施形態に係る化合物を含有する。
図2C】電子写真感光体の別の例を示す部分断面図であり、この電子写真感光体は本発明の実施形態に係る化合物を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、「基を有してもよい」基、「基を有する」基、「ハロゲン原子を有してもよい」基、及び「ハロゲン原子を有する」基は、各々、「基で置換されてもよい」基、「基で置換された」基、「ハロゲン原子で置換されてもよい」基、及び「ハロゲン原子で置換された」基であることを意味する。
【0020】
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数6以上10以下のアリール基、炭素原子数6以上14以下のアリーレン基、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基、炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基、炭素原子数5以上12以下のシクロアルキリデン基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基及び炭素原子数2以上6以下のアルコキシカルボニル基は、何ら規定していなければ、各々次の意味である。
【0021】
ハロゲン原子(ハロゲン基)としては、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)及びヨウ素原子(ヨード基)が挙げられる。
【0022】
炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基及び炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基及びヘキシル基が挙げられる。炭素原子数1以上5以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上5以下である基である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上4以下である基である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上3以下である基である。
【0023】
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、ヘキシルオキシ基及び1−エチル−1−メチルプロポキシ基が挙げられる。炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上3以下である基である。
【0024】
炭素原子数6以上14以下のアリール基及び炭素原子数6以上10以下のアリール基は、各々、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基及びフェナントリル基が挙げられる。炭素原子数6以上10以下のアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0025】
炭素原子数6以上14以下のアリーレン基は、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、インダセンジイル基、ビフェニレンジイル基、アセナフチレンジイル基、アントリレンジイル基及びフェナントリレンジイル基が挙げられる。
【0026】
炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基は、非置換である。炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基が挙げられる。
【0027】
炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基及び炭素原子数5以上12以下のシクロアルキリデン基は、各々、非置換である。炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロオクチリデン基、シクロノニリデン基、シクロデシリデン基、シクロウンデシリデン基、シクロドデシリデン基、シクロトリデシリデン基及びシクロテトラデシリデン基が挙げられる。炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基は、下記一般式で表される。一般式中、tは1以上10以下の整数を表し、アスタリスクは結合手を表す。tは、1以上8以下の整数を表すことが好ましく、1、2又は8を表すことがより好ましく、2又は8を表すことが更に好ましい。
【0028】
【化5】
【0029】
炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基及び炭素原子数2以上6以下のアルコキシカルボニル基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するカルボニル基である。び炭素原子数2以上6以下のアルコキシカルボニル基は、炭素原子数1以上5以下のアルキル基を有するカルボニル基である。
【0030】
<一般式(1)で表される化合物>
本実施形態は、化合物(特にターフェニル化合物)に関する。本実施形態の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と記載することがある)である。
【0031】
【化6】
【0032】
一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、且つR1が表わす基の炭素原子数とR2が表わす基の炭素原子数との和は2である。R3及びR4は、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、且つR3が表わす基の炭素原子数とR4が表わす基の炭素原子数との和は2である。
【0033】
化合物(1)は、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)の感光層に含有された場合に、感光体の電気特性を向上させることができ、感光層の結晶化を抑制することができる。その理由を説明する。なお、感光体の電気特性とは、例えば、感光体の帯電特性、感度特性、及び耐露光メモリー性である。耐露光メモリー性は、感光体に露光メモリーが発生することを抑制できる特性である。露光メモリーは、露光の影響によって、感光体表面において、前の周の露光領域に対応する領域の帯電電位が、前の周の非露光領域に対応する領域よりも低下する現象である。感光体に露光メモリーが発生すると、形成画像にゴースト画像が発生する。露光メモリーに起因するゴースト画像は、形成画像において、感光体の前の周の露光領域に対応する領域が黒ずむ画像不良である。
【0034】
第一に、一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表している。また、R3及びR4は、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表している。これらにより、感光体の感度特性及び耐露光メモリー性を向上させることができる。
【0035】
第二に、一般式(1)中、R1が表わす基の炭素原子数とR2が表わす基の炭素原子数との和は2である。また、R3が表わす基の炭素原子数とR4が表わす基の炭素原子数との和は2である。これらにより、感光体の感度特性の向上、耐露光メモリー性の向上、及び感光層の結晶化の抑制が可能である。一方、和が2より小さい場合には、感光体の感度特性が低下する。また、和が2より小さい場合には、感光層の結晶化が抑制できない。このような化合物は、感光層を形成するための溶剤に対する溶解性、及びバインダー樹脂に対する相溶性が低いためだと考えられる。逆に、和が2より大きい場合には、感光体の感度特性及び耐露光メモリー性が低下する。
【0036】
第三に、一般式(1)中、R1はフェニル基のパラ位に結合し、R2はフェニル基のオルト位に結合している。また、R3はフェニル基のパラ位に結合し、R4はフェニル基のオルト位に結合している。これらにより、感光体の感度特性の向上、耐露光メモリー性の向上、及び感光層の結晶化の抑制が可能である。一方、フェニル基のメタ位及びパラ位に置換基が結合している場合には、感光体の感度特性が低下する。また、フェニル基のメタ位及びパラ位に置換基が結合している場合には、感光層の結晶化が抑制できない。更に、フェニル基のメタ位に置換基が結合している場合には、感光体の感度特性及び耐露光メモリー性の一方又は両方が低下する。
【0037】
第四に、化合物(1)は、メチルフェニル基を2個有している。これにより、感光体の感度特性を向上させることができる。また、感光層の結晶化を抑制することができる。感光層の結晶化が抑制される理由は、化合物(1)がメチルフェニル基を2個有していることで、感光層を形成するための溶剤に対する化合物(1)の溶解性、及びバインダー樹脂に対する化合物(1)の相溶性が向上するためだ考えられる。
【0038】
化合物(1)の好適な例としては、化学式(1−1)、(1−2)及び(1−3)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(1−1)、(1−2)及び(1−3)と記載することがある)が挙げられる。
【0039】
【化7】
【0040】
<化合物(1)の製造方法>
(反応(r1))
化合物(1)は、例えば、反応式(r1)で表される反応(以下、反応(r1)と記載することがある)に従って、又はこれに準ずる方法によって合成される。反応式(r1)で示される一般式(a)中のYは、ハロゲン原子を表す。一般式(b)及び(c)中のR1、R2、R3及びR4は、各々、一般式(1)中のR1、R2、R3及びR4と同義である。一般式(a)、(b)及び(c)で表される化合物の各々を、化合物(a)、(b)及び(c)と記載することがある。
【0041】
【化8】
【0042】
化合物(1)の製造方法は、化合物(a)と、化合物(b)と、化合物(c)とを反応させる工程(即ち、反応(r1))を含む。詳しくは、反応(r1)では、1モル当量の化合物(a)と、1モル当量の化合物(b)と、1モル当量の化合物(c)とを反応させて、1モル当量の化合物(1)を得る。反応(r1)において、原料である化合物(a)の極性と、反応生成物である化合物(1)の極性との差が比較的大きい。また、原料である化合物(b)及び(c)と、反応生成物である化合物(1)の極性との差が比較的大きい。これらのことから、反応(r1)によれば、化合物(1)の精製が容易となる。一般式(1)中のR1とR3とが互いに同じであり、R2とR4とが互いに同じである場合には、1モル当量の化合物(b)及び1モル当量の化合物(c)の代わりに、2モル当量の化合物(b)を使用する。
【0043】
一般式(30)で表される配位子(以下、配位子(30)と記載することがある)と遷移金属を含有する触媒とを用いて、反応(r1)を行うことが好ましい。或いは、配位子(30)が配位した遷移金属を含有する触媒を用いて、反応(r1)を行うことが好ましい。
【0044】
【化9】
【0045】
一般式(30)中、R31、R32、R33、及びR34は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。Ar35は、炭素原子数6以上14以下のアリーレン基を表す。
【0046】
遷移金属を含有する触媒と、配位子(30)とを用いて、反応(r1)を行うことで、化合物(1)の収率を向上できる。また、このように反応(r1)を行うことで、感光層に化合物(1)が含有された場合の感光体の感度特性を特に向上できる。これらの理由は、以下のように推測される。配位子(30)が電子供与性の窒素原子を有し且つ所定の構造を有することで、配位子(30)から遷移金属を含有する触媒への電子供与性が高まる。電子供与性の高まりにより、遷移金属を含有する触媒の活性が高くなり、反応(r1)が促進されて、化合物(1)の収率が向上する。化合物(1)の収率が向上することで、化合物(1)の純度が高まり、感光体の感度特性が特に向上する。
【0047】
一般式(30)中、R31、R32、R33、及びR34が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はtert−ブチル基がより好ましい。Ar35が表わす炭素原子数6以上14以下のアリーレン基としては、ナフタレンジイル基又はフェニレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0048】
配位子(30)としては、化学式(L−1)で表される配位子(以下、配位子(L−1)と記載することがある)が好ましい。なお、配位子(L−1)は、(4−ジメチルアミノフェニル)ジ゛−tert−ブチルホスフィンである。
【0049】
【化10】
【0050】
配位子(30)の配位数は特に限定されないが、例えば、1個又は2個である。
【0051】
触媒が含有する遷移金属としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、及びコバルトが挙げられる。触媒が含有する遷移金属としては、パラジウム又はニッケルが好ましく、パラジウムがより好ましい。パラジウムを含有する触媒としては、例えば、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ヘキサクロルパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)が挙げられる。パラジウムを含有する触媒としては、酢酸パラジウム(II)、又は塩化パラジウム(II)が好ましい。
【0052】
化合物(1)の収率を向上させ、化合物(1)が感光層に含有された場合の感光体の感度特性を特に向上させるためには、配位子(L−1)と酢酸パラジウム(II)とを用いて、反応(r1)を行うことが好ましい。或いは、配位子(L−1)が配位した酢酸パラジウム(II)を用いて、反応(r1)を行うことが好ましい。
【0053】
化合物(1)の収率を向上させ、化合物(1)が感光層に含有された場合の感光体の感度特性を特に向上させるためには、配位子(L−1)と塩化パラジウム(II)とを用いて、反応(r1)を行うことが好ましい。或いは、配位子(L−1)が配位した塩化パラジウム(II)を用いて、反応(r1)を行うことが好ましい。配位子(L−1)が配位した塩化パラジウム(II)の好適な例としては、化学式(L−2)で表される配位触媒(以下、配位触媒(L−2)と記載することがある)が挙げられる。化学式(L−2)中のPとPdとの間の結合は、配位結合を表す。
【0054】
【化11】
【0055】
なお、反応(r1)は、配位子(30)以外の配位子(以下、その他の配位子と記載することがある)と、遷移金属を含有する触媒とを用いて行われてもよい。また、反応(r1)は、その他の配位子が配位した遷移金属を含有する触媒を用いて行われてもよい。その他の配位子としては、例えば、化学式(L−3)、(L−4)、及び(L−5)で表される配位子(以下、それぞれを配位子(L−3)、(L−4)、及び(L−5)と記載することがある)、トリシクロヘキシルホスフィン(以下、配位子(L−6)と記載することがある)、トリフェニルホスフィン、並びにメチルジフェニルホスフィンが挙げられる。なお、配位子(L−4)は、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンである。化学式(L−4)中の「Ph」は、フェニル基を表す。
【0056】
【化12】
【0057】
反応(r1)は、塩基の存在下で行われてもよい。塩基としては、例えば、ナトリウムtert−ブトキシド、リン酸三カリウム及びフッ化セシウムが挙げられる。塩基の添加量は、1モル当量の化合物(b)に対して、1モル当量以上10モル当量以下であることがより好ましい。
【0058】
反応(r1)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0059】
反応(r1)の反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましい。反応(r1)の反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましい。反応(r1)は、不活性ガス(例えば、窒素ガス、又はアルゴンガス)の雰囲気下で行われてもよい。
【0060】
(反応(r0)及び反応(r0’))
化合物(b)は、例えば、反応式(r0)で表される反応(以下、反応(r0)と記載することがある)に従って、又はこれに準ずる方法によって合成されてもよい。化合物(1)の製造方法は、化学式(d)で表される化合物と、一般式(e)で表される化合物とを反応させて、化合物(b)を得る工程を更に含んでもよい。また、化合物(c)は、例えば、反応式(r0’)で表される反応(以下、反応(r0’)と記載することがある)に従って、又はこれに準ずる方法によって合成されてもよい。化合物(1)の製造方法は、化学式(f)で表される化合物と、一般式(g)で表される化合物とを反応させて、化合物(c)を得る工程を更に含んでもよい。以下、化学式(d)、一般式(e)、化学式(f)、及び一般式(g)で表される化合物を、各々、化合物(d)、(e)、(f)、及び(g)と記載することがある。
【0061】
【化13】
【0062】
一般式(e)中のR1及びR2、並びに一般式(g)中のR3及びR4は、一般式(1)中のR1、R2、R3及びR4と同義である。一般式(e)中のY1は、ハロゲン原子を表す。一般式(g)中のY2は、ハロゲン原子を表す。化合物(1)の収率を向上させるためには、一般式(e)中のY1、及び一般式(g)中のY2は、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、臭素原子であることがより好ましい。
【0063】
反応(r0)で得られた化合物(b)、及び反応(r0’)で得られた化合物(c)を用いて、反応(r1)が行われる。なお、一般式(1)中のR1とR3とが互いに同じであり、R2とR4とが互いに同じである場合には、反応(r0’)を省略して、反応(r0)で得られた化合物(b)を反応(r1)に使用できる。また、反応(r0)及び反応(r0’)とは異なる反応により製造した化合物(b)及び(c)を使用する場合、及び市販の化合物(b)及び(c)を使用する場合には、反応(r0)及び反応(r0’)を省略できる。
【0064】
反応(r0)では、1モル当量の化合物(d)と、1モル当量の化合物(e)とを反応させて、1モル当量の化合物(b)を得る。反応(r0’)では、1モル当量の化合物(f)と、1モル当量の化合物(g)とを反応させて、1モル当量の化合物(c)を得る。
【0065】
化合物(1)の収率を向上させ、化合物(1)が感光層に含有された場合の感光体の感度特性を特に向上させるためには、反応(r0)及び反応(r0’)は、遷移金属を含有する触媒と、配位子(30)とを用いて、行われることが好ましい。反応(r0)及び反応(r0’)において、配位子(30)が遷移金属を含有する触媒に配位した状態であってもよい。なお、反応(r0)及び反応(r0’)は、遷移金属を含有する触媒及びその他の配位子を用いて、行われてもよい。
【0066】
反応(r0)及び反応(r0’)は、塩基の存在下で行われてもよい。塩基としては、例えば、ナトリウムtert−ブトキシド、リン酸三カリウム及びフッ化セシウムが挙げられる。塩基の添加量は、1モル当量の化合物(d)又は(f)に対して、1モル当量以上10モル当量以下であることがより好ましい。
【0067】
反応(r0)及び反応(r0’)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0068】
反応(r0)及び反応(r0’)の反応温度は80℃以上140℃以下であることが好ましい。反応(r0)及び反応(r0’)の反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましい。反応(r0)及び反応(r0’)は、不活性ガス(例えば、窒素ガス、又はアルゴンガス)の雰囲気下で行われてもよい。
【0069】
反応(r0)及び反応(r0’)の後、得られた化合物(b)及び(c)を精製することなく反応(r1)に用いてもよい。精製を省略することで、製造方法を簡略化でき、製造コストを低減できる。
【0070】
<感光体>
次に、本実施形態の化合物(1)を含有する感光層を備える感光体について説明する。感光体は、導電性基体と感光層とを備える。感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを少なくとも含有する。感光体は、積層型電子写真感光体(以下、積層型感光体と記載することがある)であってもよく、単層型電子写真感光体(以下、単層型感光体と記載することがある)であってもよい。
【0071】
(積層型感光体)
以下、図1A図1Cを参照して、積層型感光体である場合の感光体1について説明する。図1A図1Cは、感光体1の一例(積層型感光体)を示す部分断面図である。
【0072】
図1Aに示すように、感光体1としての積層型感光体は、例えば、導電性基体2と感光層3とを備える。感光層3は、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとを含む。つまり、積層型感光体には、感光層3として、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとが備えられる。
【0073】
積層型感光体の耐摩耗性を向上させるためには、図1Aに示すように、導電性基体2上に電荷発生層3aが設けられ、電荷発生層3a上に電荷輸送層3bが設けられることが好ましい。しかし、図1Bに示すように、感光体1としての積層型感光体では、導電性基体2上に電荷輸送層3bが設けられ、電荷輸送層3b上に電荷発生層3aが設けられてもよい。
【0074】
図1Cに示すように、感光体1としての積層型感光体は、導電性基体2と感光層3と中間層4(下引き層)とを備えていてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に備えられる。図1A及び図1Bに示すように、感光層3は導電性基体2上に直接備えられてもよい。或いは、図1Cに示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して備えられてもよい。なお、感光層3上には、保護層5(図2C参照)が設けられていてもよい。
【0075】
電荷発生層3aの厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層3bの厚さは、特に限定されないが、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。以上、図1A図1Cを参照して、積層型感光体である場合の感光体1について説明した。
【0076】
(単層型感光体)
以下、図2A図2Cを参照して、単層型感光体である場合の感光体1について説明する。図2A図2Cは、感光体1の別の例(単層型感光体)を示す部分断面図である。
【0077】
図2Aに示すように、感光体1としての単層型感光体は、例えば、導電性基体2と感光層3とを備える。感光体1としての単層型感光体には、単層の感光層3(以下、単層型感光層3cと記載することがある)が備えられる。
【0078】
図2Bに示すように、感光体1としての単層型感光体は、導電性基体2と、単層型感光層3cと、中間層4(下引き層)とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と単層型感光層3cとの間に設けられる。図2Aに示すように、感光層3は導電性基体2上に直接備えられてもよい。或いは、図2Bに示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して備えられてもよい。
【0079】
図2Cに示すように、感光体1としての単層型感光体は、導電性基体2と、単層型感光層3cと、保護層5とを備えてもよい。保護層5は、単層型感光層3c上に設けられる。
【0080】
単層型感光層3cの厚さは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。以上、図2A図2Cを参照して、単層型感光体である場合の感光体1について説明した。以下、感光体について、更に詳細に説明する。
【0081】
<感光層>
感光体が積層型感光体である場合、感光層のうちの電荷発生層は、電荷発生剤を含有する。電荷発生層は、電荷発生層用バインダー樹脂(以下、ベース樹脂と記載することがある)を含有してもよい。電荷発生層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。感光層のうちの電荷輸送層は、正孔輸送剤とバインダー樹脂とを含有する。電荷輸送層は、電子アクセプター化合物を更に含有してもよい。電荷輸送層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。
【0082】
感光体が単層型感光体である場合、感光層としての単層型感光層は、電荷発生剤と正孔輸送剤とバインダー樹脂とを含有する。単層型感光層は、電子輸送剤を更に含有してもよい。単層型感光層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。
【0083】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤は、化合物(1)を含む。正孔輸送剤として、化合物(1)を感光層が含有する。感光層に化合物(1)が含有されることで、感光体の電気特性を向上させることができ、感光層の結晶化を抑制させることができる。感光層は、化合物(1)の1種のみを含有してもよいし、化合物(1)の2種以上を含有してもよい。
【0084】
バインダー樹脂の質量mResinに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mResinは、0.50以上であることが好ましい。比率mHTM/mResinが0.50以上であると、感光体の感度特性及び耐露光メモリー性の一方又は両方を向上させることができる。
【0085】
積層型感光体である場合、比率mHTM/mResinは、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂の質量mResinに対する、電荷輸送層に含有される正孔輸送剤の質量mHTMの比率である。積層型感光体である場合、比率mHTM/mResinは、0.60以上であることがより好ましく、0.70以上であることが更に好ましく、0.80以上であることが特に好ましい。積層型感光体である場合、比率mHTM/mResinの上限値は、例えば、1.00とすることができる。
【0086】
単層型感光体である場合、比率mHTM/mResinは、単層型感光層に含有されるバインダー樹脂の質量mResinに対する、単層型感光層に含有される正孔輸送剤の質量mHTMの比率である。単層型感光体である場合、比率mHTM/mResinは、0.55以上であることがより好ましい。単層型感光体である場合、比率mHTM/mResinの上限値は、例えば、0.70とすることができる。
【0087】
感光層に正孔輸送剤として化合物(1)のみが含有される場合には、正孔輸送剤の質量mHTMは化合物(1)の質量である。感光層に2種以上の正孔輸送剤が含有される場合には、正孔輸送剤の質量mHTMは2種以上の正孔輸送剤の質量の和である。
【0088】
感光層に1種のバインダー樹脂が含有される場合には、バインダー樹脂の質量mResinは1種のバインダー樹脂の質量である。感光層に2種以上のバインダー樹脂が含有される場合には、バインダー樹脂の質量mResinは2種以上のバインダー樹脂の質量の和である。
【0089】
電荷輸送層は、正孔輸送剤として、化合物(1)のみを含有してもよい。また、電荷輸送層は、化合物(1)に加えて、化合物(1)以外の正孔輸送剤(以下、その他の正孔輸送剤と記載することがある)を更に含有してもよい。
【0090】
単層型感光層は、正孔輸送剤として、化合物(1)のみを含有してもよい。また、単層型感光層は、化合物(1)に加えて、その他の正孔輸送剤を更に含有してもよい。
【0091】
その他の正孔輸送剤としては、例えば、化合物(1)以外の含窒素環式化合物又は縮合多環式化合物を使用することができる。化合物(1)以外の含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物としては、例えば、ジアミン化合物(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体又はN,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物及びトリアゾール系化合物が挙げられる。
【0092】
(バインダー樹脂)
単層型感光層又は電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂及びメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ化合物のアクリル酸付加物及びウレタン化合物のアクリル酸付加物が挙げられる。単層型感光層又は電荷輸送層は、これらのバインダー樹脂の1種のみを含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
【0093】
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが更に好ましく、40,000以上であることが特に好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が10,000以上であると、バインダー樹脂の耐摩耗性が高まり、電荷輸送層又は単層型感光層が摩耗し難い。一方、バインダー樹脂の粘度平均分子量は、80,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が80,000以下であると、バインダー樹脂が電荷輸送層形成用の溶剤及び単層型感光層形成用の溶剤に溶解し易くなり、電荷輸送層及び単層型感光層の形成が容易になる。
【0094】
感光体の電気特性を更に向上させ、感光層の結晶化を更に抑制するために、バインダー樹脂としては、ポリアリレート樹脂又はポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0095】
(ポリアリレート樹脂の好適な例)
感光体の電気特性を更に向上させ、感光層の結晶化を更に抑制するために、ポリアリレート樹脂としては、一般式(10)で表される繰り返し単位の少なくとも1種と、一般式(11)で表される繰り返し単位の少なくとも1種とを含むポリアリレート樹脂が好ましい。以下、一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(10)及び(11)と記載することがある。
【0096】
【化14】
【0097】
一般式(10)中、R11及びR12は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。R13は水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し且つR14は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表す。或いは、R13及びR14は互いに結合して炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基を表す。
【0098】
ポリアリレート樹脂に1種の繰り返し単位(11)が含まれる場合、一般式(11)中、Xは、化学式(X1)で表される二価の基を表す。
【0099】
【化15】
【0100】
ポリアリレート樹脂に少なくとも2種の繰り返し単位(11)が含まれる場合、一般式(11)中、Xは、化学式(X1)、化学式(X2)、化学式(X3)、化学式(X4)、化学式(X5)又は化学式(X6)で表される二価の基を表す。少なくとも2種の繰り返し単位(11)のうち、1種の繰り返し単位(11)において、一般式(11)中のXは、化学式(X1)で表される二価の基を表す。少なくとも2種の繰り返し単位(11)のうち、他の種の繰り返し単位(11)において、一般式(11)中のXは、化学式(X2)、化学式(X3)、化学式(X4)、化学式(X5)又は化学式(X6)で表される二価の基を表す。
【0101】
【化16】
【0102】
(繰り返し単位(10))
繰り返し単位(10)について説明する。一般式(10)中、R13及びR14が表わす炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0103】
一般式(10)中、R13及びR14が互いに結合して表す炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基としては、炭素原子数5以上12以下のシクロアルキリデン基が好ましく、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基又はシクロドデシリデン基がより好ましく、シクロヘキシリデン基又はシクロドデシリデン基が更に好ましい。
【0104】
繰り返し単位(10)の好適な例としては、化学式(10−1)、(10−2)及び(10−3)で表される繰り返し単位が挙げられる。以下、化学式(10−1)、(10−2)及び(10−3)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(10−1)、(10−2)及び(10−3)と記載することがある。
【0105】
【化17】
【0106】
ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(10)として、繰り返し単位(10)の1種のみを含んでいてもよく、繰り返し単位(10)の少なくとも2種(例えば、2種又は3種)を含んでいてもよい。
【0107】
次に、ポリアリレート樹脂に1種の繰り返し単位(11)が含まれる場合、及び少なくとも2種の繰り返し単位(11)が含まれる場合に分けて、繰り返し単位(11)について説明する。
【0108】
(1種の繰り返し単位(11)が含まれる場合)
ポリアリレート樹脂に1種の繰り返し単位(11)が含まれる場合、一般式(11)中、Xは、化学式(X1)で表される二価の基を表す。この場合、ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(10)の少なくとも1種と、化学式(11−X1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(11−X1)と記載することがある)とを含む。この場合、ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(10)の1種と、繰り返し単位(11−X1)とを含むことが好ましい。
【0109】
【化18】
【0110】
(少なくとも2種の繰り返し単位(11)が含まれる場合)
ポリアリレート樹脂に少なくとも2種の繰り返し単位(11)が含まれる場合、一般式(11)中、Xは、化学式(X1)、化学式(X2)、化学式(X3)、化学式(X4)、化学式(X5)又は化学式(X6)で表される二価の基を表す。少なくとも2種の繰り返し単位(11)のうちの1種の繰り返し単位(11)において、一般式(11)中のXは、化学式(X1)で表される二価の基を表す。この場合、ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(10)の少なくとも1種と、繰り返し単位(11−X1)と、一般式(11’)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(11’)と記載することがある)の少なくとも1種を含む。この場合、ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(10)の1種と、繰り返し単位(11−X1)と、繰り返し単位(11’)の1種とを含むことが好ましい。
【0111】
【化19】
【0112】
一般式(11’)中のX’は、化学式(X2)、(X3)、(X4)、(X5)又は(X6)で表される二価の基を表す。X’は、化学式(X2)又は(X3)で表される二価の基を表すことが好ましい。
【0113】
繰り返し単位(11’)の例としては、化学式(11−X2)、(11−X3)、(11−X4)、(11−X5)及び(11−X6)で表される繰り返し単位(以下、それぞれを繰り返し単位(11−X2)、(11−X3)、(11−X4)、(11−X5)及び(11−X6)と記載することがある)が挙げられる。繰り返し単位(11’)としては、繰り返し単位(11−X2)又は(11−X3)が好ましい。
【0114】
【化20】
【0115】
感光体の電気特性を向上させ、感光層の結晶化を抑制するためには、ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(11)の少なくとも2種を含むことが好ましく、繰り返し単位(11)の2種以上8種以下を含むことがより好ましく、繰り返し単位(11)の2種又は3種を含むことが更に好ましく、繰り返し単位(11)の2種を含むことが特に好ましい。
【0116】
感光体の電気特性を向上させ、感光層の結晶化を抑制するためには、繰り返し単位(11−X1)の数と繰り返し単位(11’)の数との和に対する、繰り返し単位(11−X1)の数の比率(以下、比率pと記載することがある)が、0.10以上0.90以下であることが好ましく、0.20以上0.80以下であることがより好ましく、0.30以上0.70以下であることが更に好ましく、0.40以上0.60以下であることが一層好ましく、0.50であることが特に好ましい。比率pは、各々、1本の分子鎖から得られる値ではなく、感光層に含有されるポリアリレート樹脂の全体(複数の分子鎖)から得られる値の平均値である。比率pは、プロトン核磁気共鳴分光計を用いてポリアリレート樹脂の1H−NMRスペクトルを測定し、得られた1H−NMRスペクトルから算出することができる。
【0117】
繰り返し単位(10)の少なくとも1種と繰り返し単位(11)の少なくとも1種とを含むポリアリレート樹脂の好適な例としては、繰り返し単位(10−1)、繰り返し単位(11−X1)及び繰り返し単位(11−X3)を含むポリアリレート樹脂;繰り返し単位(10−2)、繰り返し単位(11−X1)及び繰り返し単位(11−X3)を含むポリアリレート樹脂;繰り返し単位(10−2)、繰り返し単位(11−X1)及び繰り返し単位(11−X2)を含むポリアリレート樹脂;及び繰り返し単位(10−3)、繰り返し単位(11−X1)及び繰り返し単位(11−X3)を含むポリアリレート樹脂が挙げられる。
【0118】
【化21】
【0119】
【化22】
【0120】
【化23】
【0121】
【化24】
【0122】
ポリアリレート樹脂において、芳香族ジオール由来の繰り返し単位と、芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位とは、隣接して互いに結合している。ポリアリレート樹脂が共重合体である場合、ポリアリレート樹脂は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体又はブロック共重合体であってもよい。
【0123】
芳香族ジオール由来の繰り返し単位は、例えば、繰り返し単位(10)である。ポリアリレート樹脂が繰り返し単位(10)の2種以上を含む場合、1種の繰り返し単位(10)と他種の繰り返し単位(10)との配列は特に限定されない。1種の繰り返し単位(10)と他種の繰り返し単位と(10)は、繰り返し単位(11)を介して、ランダムに、交互に、周期的に又はブロック毎に配列することができる。また、芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位は、例えば、繰り返し単位(11)である。ポリアリレート樹脂が繰り返し単位(11)の2種以上を含む場合、1種の繰り返し単位(11)と他種の繰り返し単位(11)との配列は特に限定されない。1種の繰り返し単位(11)と他種の繰り返し単位(11)とは、繰り返し単位(10)を介して、ランダムに、交互に、周期的に又はブロック毎に配列することができる。
【0124】
ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10)及び(11)のみを含んでいてもよい。また、ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(10)及び(11)に加えて、繰り返し単位(10)及び(11)以外の繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
【0125】
感光層には、バインダー樹脂として、繰り返し単位(10)の少なくとも1種と繰り返し単位(11)の少なくとも1種とを含むポリアリレート樹脂の1種のみが含有されてもよく、このようなポリアリレート樹脂の2種以上が含有されてもよい。また、感光層には、バインダー樹脂として、繰り返し単位(10)の少なくとも1種と繰り返し単位(11)の少なくとも1種とを含むポリアリレート樹脂に加えて、それ以外のバインダー樹脂が更に含有されてもよい。
【0126】
ポリアリレート樹脂の製造方法は、特に限定されない。ポリアリレート樹脂の製造方法として、例えば、繰返し単位を構成するための芳香族ジオールと、繰り返し単位を構成するための芳香族ジカルボン酸とを縮重合させる方法が挙げられる。縮重合させる方法としては、公知の合成方法(より具体的には、溶液重合、溶融重合又は界面重合等)を採用することができる。
【0127】
繰返し単位を構成するための芳香族ジオールは、例えば、一般式(BP−10)で表される化合物の少なくとも1種である。繰返し単位を構成するための芳香族ジカルボン酸は、例えば、一般式(DC−11)で表される化合物の少なくとも1種である。一般式(BP−10)及び(DC−11)中のR11、R12、R13、R14及びXは、各々、一般式(10)及び(11)中のR11、R12、R13、R14及びXと同義である。以下、一般式(BP−10)及び(DC−11)で表される化合物を、各々、化合物(BP−10)及び(DC−11)と記載することがある。
【0128】
【化25】
【0129】
化合物(BP−10)の好適な例としては、化学式(BP−10−1)〜(BP−10−3)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(BP−10−1)〜(BP−10−3)と記載することがある)が挙げられる。
【0130】
【化26】
【0131】
化合物(DC−11)の好適な例としては、化学式(DC−11−X1)〜(DC−11−X6)(以下、それぞれを化合物(DC−11−X1)〜(DC−11−X6)と記載することがある)が挙げられる。
【0132】
【化27】
【0133】
【化28】
【0134】
繰返し単位を構成するための芳香族ジオール(例えば、化合物(BP−10))を、芳香族ジアセテートに変形して使用してもよい。繰返し単位を構成するための芳香族ジカルボン酸(例えば、化合物(DC−11))を、誘導体化して使用してもよい。芳香族ジカルボン酸の誘導体の例としては、芳香族ジカルボン酸ジクロライド、芳香族ジカルボン酸ジメチルエステル、芳香族ジカルボン酸ジエチルエステル及び芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられる。芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、芳香族ジカルボン酸の2個の「−C(=O)−OH」基が各々「−C(=O)−Cl」基で置換された化合物である。
【0135】
芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸との縮重合において、塩基及び触媒の一方又は両方を添加してもよい。塩基及び触媒は、公知の塩基及び触媒から適宜選択することができる。塩基の例としては、水酸化ナトリウムが挙げられる。触媒の例としては、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、4級アンモニウム塩、トリエチルアミン及びトリメチルアミンが挙げられる。以上、ポリアリレート樹脂について説明した。
【0136】
(ポリアリレート樹脂の好適な別の例)
感光体の電気特性を更に向上させ、感光層の結晶化を更に抑制するために、ポリアリレート樹脂としては、繰返し単位(10−1)、下記化学式(12−1)で表される繰り返し単位、及び繰り返し単位(11−X3)を含むポリアリレート樹脂も好ましい。以下、化学式(12−1)で表される繰り返し単位を、繰り返し単位(12−1)と記載することがある。
【0137】
【化29】
【0138】
感光体の電気特性を向上させ、感光層の結晶化を抑制するためには、繰り返し単位(10−1)の数と繰り返し単位(12−1)の数との和に対する、繰り返し単位(10−1)の数の比率(以下、比率qと記載することがある)が、0.10以上1.00未満であることが好ましく、0.30以上0.95以下であることがより好ましく、0.50以上0.95以下であることが更に好ましく、0.70以上0.95以下であることが一層好ましく、0.80であることが特に好ましい。比率qは、各々、1本の分子鎖から得られる値ではなく、感光層に含有されるポリアリレート樹脂の全体(複数の分子鎖)から得られる値の平均値である。比率qは、比率pと同じ方法により算出できる。
【0139】
繰返し単位(10−1)、(12−1)、及び(11−X3)を含むポリアリレート樹脂は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体又はブロック共重合体であってもよい。ポリアリレート樹脂は、繰返し単位(10−1)、(12−1)、及び(11−X3)のみを含んでいてもよく、それら以外の繰り返し単位を更に含んでいてもよい。感光層には、バインダー樹脂として、繰返し単位(10−1)、(12−1)、及び(11−X3)を含むポリアリレート樹脂のみが含有されてもく、それ以外のバインダー樹脂が更に含有されてもよい。
【0140】
ポリアリレート樹脂の製造方法は、特に限定されない。ポリアリレート樹脂の製造方法として、例えば、化合物(BP−10−1)と、下記化学式(BP−12−1)で表される化合物と、化合物(DC−11−X3)とを縮重合させる方法が挙げられる。以下、化学式(BP−12−1)で表される化合物を、化合物(BP−12−1)と記載することがある。
【0141】
【化30】
【0142】
(ポリカーボネート樹脂の好適な例)
感光体の電気特性を更に向上させ、感光層の結晶化を更に抑制するためには、ポリカーボネート樹脂として、化学式(R−5)、(R−6)又は(R−7)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート樹脂が好ましい。以下、化学式(R−5)、(R−6)及び(R−7)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(R−5)、(R−6)及び(R−7)と記載することがある。
【0143】
【化31】
【0144】
感光体の電気特性を向上させつつ感光層の結晶化を抑制するために、ポリカーボネート樹脂の好適な例としては、繰り返し単位(R−5)を含むポリカーボネート樹脂、及び繰り返し単位(R−6)を含むポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0145】
バインダー樹脂として、繰り返し単位(R−5)、(R−6)又は(R−7)を含むポリカーボネート樹脂の1種のみが含有されてもよく、このようなポリカーボネート樹脂の2種以上が含有されてもよい。また、バインダー樹脂として、繰り返し単位(R−5)、(R−6)又は(R−7)を含むポリカーボネート樹脂に加えて、それ以外のバインダー樹脂が更に含有されてもよい。以上、ポリカーボネート樹脂について説明した。
【0146】
(ベース樹脂)
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生層は、ベース樹脂を含有する。ベース樹脂の例としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂及びメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ化合物のアクリル酸付加物及びウレタン化合物のアクリル酸付加物が挙げられる。電荷発生層は、これらのベース樹脂の1種のみを含有してもよく、2種以上を含有してもよい。電荷発生層及び電荷輸送層を良好に形成するためには、電荷発生層に含有されるベース樹脂は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂と異なることが好ましい。
【0147】
(電子アクセプター化合物)
感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層は電子アクセプター化合物を含有することが好ましい。電子アクセプター化合物が化合物(1)と錯体を形成することで、電荷輸送層形成用の溶剤に対して、形成された錯体が好適に溶解すると考えられる。これにより、均一な電荷輸送層が形成され易くなり、積層型感光体の電気特性が更に向上し、電荷輸送層の結晶化が更に抑制される。
【0148】
正孔輸送剤の質量mHTMに対する電子アクセプター化合物の質量mEAの比率mEA/mHTMは、0.01以上0.50以下であることが好ましい。比率mEA/mHTMが0.01以上0.50以下であると、感光層の結晶化を抑制しつつ、感光体の感度特性を更に向上させることができる。感光層の結晶化を抑制しつつ、感光体の感度特性を更に向上させるためには、比率mEA/mHTMは、0.05以上であることがより好ましく、0.08以上であることが更に好ましい。感光層の結晶化を抑制しつつ、感光体の感度特性を更に向上させるためには、比率mEA/mHTMは、0.20以下であることがより好ましく、0.10以下であることが更に好ましい。なお、電荷輸送層に2種以上の電子アクセプター化合物が含有される場合には、電子アクセプター化合物の質量mEAは2種以上の電子アクセプター化合物の質量の和である。電荷輸送層に2種以上の正孔輸送剤が含有される場合には、正孔輸送剤の質量mHTMは2種以上の正孔輸送剤の質量の和である。
【0149】
電子アクセプター化合物としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。1種の電子アクセプター化合物が含有されてもよいし、2種以上の電子アクセプター化合物が含有されてもよい。
【0150】
電子アクセプター化合物の好適な例としては、一般式(20)、(21)、(22)、(23)及び(24)で表される化合物(以下、それぞれを、化合物(20)、(21)、(22)、(23)及び(24)と記載することがある)が挙げられる。電子アクセプターが化合物(20)、(21)、(22)、(23)又は(24)である場合、電子アクセプター化合物が化合物(1)と好適に錯体を形成する傾向がある。そのため、電荷輸送層形成用の溶剤に対して、形成された錯体が好適に溶解すると考えられる。これにより、均一な電荷輸送層が形成され易くなり、積層型感光体の電気特性が更に向上し、電荷輸送層の結晶化が更に抑制される。
【0151】
【化32】
【0152】
一般式(20)中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。一般式(21)中、Q11及びQ12は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。一般式(22)中、Q21及びQ22は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよい、炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。一般式(23)中、Q31は、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基を表す。一般式(24)中、Q41及びQ42は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、Q43はハロゲン原子を表す。
【0153】
一般式(20)中のQ1、Q2、Q3及びQ4、一般式(21)中のQ11及びQ12、並びに一般式(24)中のQ41及びQ42が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基又はヘキシル基が好ましく、メチル基、tert−ブチル基又は1−エチル−1−メチルプロピル基がより好ましい。
【0154】
一般式(20)中のQ1、Q2、Q3及びQ4、並びに一般式(21)中のQ11及びQ12が表わす炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。
【0155】
一般式(20)中のQ1、Q2、Q3及びQ4、並びに一般式(21)中のQ11及びQ12が表わす炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が好ましい。
【0156】
一般式(20)中のQ1、Q2、Q3及びQ4、一般式(21)中のQ11及びQ12、一般式(22)中のQ21及びQ22が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0157】
一般式(22)中のQ21及びQ22が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基として、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよい。このような置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。Q21及びQ22が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する置換基(具体的には炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基)の数は、1以上3以下であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0158】
一般式(23)中のQ31が表わす炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基としては、ブトキシカルボニル基が好ましく、n−ブトキシカルボニル基がより好ましい。
【0159】
一般式(24)中のQ43が表わすハロゲン原子としては、塩素原子又はフッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0160】
一般式(20)中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。一般式(21)中、Q11及びQ12は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。一般式(22)中、Q21及びQ22は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。一般式(23)中、Q31は、炭素原子数2以上6以下のアルコキシカルボニル基を表すことが好ましい。一般式(24)中、Q41及びQ42は、各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、Q43は塩素原子を表すことが好ましい。
【0161】
電子アクセプター化合物として好ましくは、化学式(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)及び(24−E6)で表される化合物(以下、それぞれを、化合物(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)及び(24−E6)と記載することがある)が挙げられる。化合物(20)の好適な例としては、化合物(20−E1)及び(20−E2)が挙げられる。化合物(21)の好適な例としては、化合物(21−E3)が挙げられる。化合物(22)の好適な例としては、化合物(22−E4)が挙げられる。化合物(23)の好適な例としては、化合物(23−E5)が挙げられる。化合物(24)の好適な例としては、化合物(24−E6)が挙げられる。
【0162】
【化33】
【0163】
電子アクセプター化合物として、化合物(20)、(21)、(22)、(23)及び(24)の1種のみを感光層が含有してもよく、2種以上を感光層が含有してもよい。化合物(20)〜(24)に加えて、化合物(20)〜(24)以外の電子アクセプター化合物を感光層が含有してもよい。
【0164】
また、電子アクセプター化合物として、化合物(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)及び(24−E6)の1種のみを感光層が含有してもよく、2種以上を感光層が含有してもよい。また、化合物(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)及び(24−E6)に加えて、それ以外の電子アクセプター化合物を感光層が含有してもよい。
【0165】
(電子輸送剤)
感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層は電子輸送剤を含有することが好ましい。単層型感光層が電子輸送剤を含有することで、感光層の結晶化を抑制しつつ、感光体の感度特性及び耐露光メモリー性を向上させることができる。また、電子輸送剤が化合物(1)と錯体を形成することで、単層型感光層形成用の溶剤に対して、形成された錯体が好適に溶解すると考えられる。これにより、均一な単層型感光層が形成され易くなり、単層型感光体の電気特性が更に向上し、単層型感光層の結晶化が更に抑制される。
【0166】
正孔輸送剤の質量mHTMに対する電子輸送剤の質量mETMの比率mETM/mHTMは、0.01以上1.50以下であることが好ましい。比率mETM/mHTMが0.01以上であると、感光体の感度特性及び耐露光メモリー性を更に向上させることができる。比率mETM/mHTMが1.50以下であると、感光体の感度特性及び耐露光メモリー性を更に向上させることができ、感光層の結晶化を更に抑制することができる。感光層の結晶化を抑制しつつ、感光体の感度特性を更に向上させるためには、比率mETM/mHTMは、0.40以上であることがより好ましく、0.50以上であることが更に好ましく、0.60以上であることが一層好ましい。感光層の結晶化を抑制しつつ、感光体の感度特性及び耐露光メモリー性を更に向上させるためには、比率mETM/mHTMは、1.00以下であることがより好ましく、0.70以下であることが更に好ましい。なお、単層型感光層に2種以上の電子輸送剤が含有される場合には、電子輸送剤の質量mETMは2種以上の電子輸送剤の質量の和である。単層型感光層に2種以上の正孔輸送剤が含有される場合には、正孔輸送剤の質量mHTMは2種以上の正孔輸送剤の質量の和である。
【0167】
電子輸送剤の好適な例は、電子アクセプター化合物の好適な例と同じである。電子輸送剤が化合物(20)、(21)、(22)、(23)又は(24)である場合、電子輸送剤が化合物(1)と好適に錯体を形成する傾向がある。そのため、単層型感光層形成用の溶剤に対して、形成された錯体が好適に溶解すると考えられる。これにより、均一な単層型感光層が形成され易くなり、単層型感光体の電気特性が更に向上し、単層型感光層の結晶化が更に抑制される。
【0168】
1種の電子輸送剤が含有されてもよいし、2種以上の電子輸送剤が含有されてもよい。電子輸送剤として、化合物(20)、(21)、(22)、(23)及び(24)の1種のみを感光層が含有してもよく、2種以上を感光層が含有してもよい。化合物(20)〜(24)に加えて、化合物(20)〜(24)以外の電子輸送剤を感光層が含有してもよい。また、電子輸送剤として、化合物(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)及び(24−E6)の1種のみを感光層が含有してもよく、2種以上を感光層が含有してもよい。また、化合物(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)及び(24−E6)に加えて、それ以外の電子輸送剤を感光層が含有してもよい。
【0169】
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料及びキナクリドン系顔料が挙げられる。感光層は、電荷発生剤の1種のみを含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
【0170】
フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。無金属フタロシアニンは、化学式(CGM−1)で表される。チタニルフタロシアニンは、化学式(CGM−2)で表される。
【0171】
【化34】
【0172】
【化35】
【0173】
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
【0174】
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
【0175】
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。
【0176】
電荷発生剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることが特に好ましい。
【0177】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤及びレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール(例えば、ジ(tert−ブチル)p−クレゾール)、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びこれらの誘導体が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、有機硫黄化合物及び有機燐化合物も挙げられる。レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイルが挙げられる。増感剤としては、例えば、メタターフェニルが挙げられる。
【0178】
(材料の組み合わせ)
感光体が積層型感光体である場合に、感光体の電気特性を更に向上させ、感光層の結晶化を更に抑制するためには、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子アクセプター化合物が、次に示す組み合わせであることが好ましい。また、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子アクセプター化合物が次に示す組み合わせであり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることがより好ましい。
【0179】
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−1)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−1)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−1)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X2)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X2)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X2)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−3)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−3)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−3)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−5)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−5)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−5)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−6)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−6)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−6)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−7)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−7)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−7)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;又は
正孔輸送剤が化合物(1−1)、(1−2)、又は(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−1)と繰り返し単位(12−1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子アクセプター化合物が(20−E2)である。
【0180】
感光体が単層型感光体である場合に、感光体の電気特性を更に向上させ、感光層の結晶化を更に抑制するためには、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤が、次に示す組み合わせであることが好ましい。また、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤が次に示す組み合わせであり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることがより好ましい。
【0181】
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−1)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−1)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−1)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X2)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X2)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X2)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−3)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−3)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−3)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−5)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−5)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−5)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−6)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−6)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−6)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−7)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−7)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;又は
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−7)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)である。
【0182】
<導電性基体>
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
【0183】
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
【0184】
<中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
【0185】
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛)の粒子及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0186】
中間層用樹脂の例は、上述したバインダー樹脂の例と同じである。中間層及び感光層を良好に形成するためには、中間層用樹脂は、感光層に含有されるバインダー樹脂と異なることが好ましい。中間層は、添加剤を含有してもよい。中間層に含有される添加剤の例は、感光層に含有される添加剤の例と同じである。
【0187】
<感光体の製造方法>
感光体の製造方法として、積層型感光体の製造方法の一例、及び単層型感光体の製造方法の一例を説明する。
【0188】
(積層型感光体の製造方法)
積層型感光体の製造方法において、感光層形成工程は、電荷発生層形成工程と電荷輸送層形成工程とを有する。電荷発生層形成工程では、まず、電荷発生層を形成するための塗布液(以下、電荷発生層用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷発生層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した電荷発生層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して電荷発生層を形成する。電荷発生層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、ベース樹脂と、溶剤とを含む。このような電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤及びベース樹脂を溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。電荷発生層用塗布液は、必要に応じて添加剤を加えてもよい。
【0189】
電荷輸送層形成工程では、まず、電荷輸送層を形成するための塗布液(以下、電荷輸送層用塗布液と記載することがある)を調製する。電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布する。次いで、塗布した電荷輸送層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して電荷輸送層を形成する。電荷輸送層用塗布液は、化合物(1)と、バインダー樹脂と、溶剤とを含む。電荷輸送層用塗布液は、化合物(1)と、バインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製することができる。電荷輸送層用塗布液には、電子アクセプター化合物を加えてもよい。電荷輸送層用塗布液には、必要に応じて、添加剤を加えてもよい。
【0190】
(単層型感光体の製造方法)
単層型感光体の製造方法において、感光層形成工程では、単層型感光層を形成するための塗布液(以下、単層型感光層用塗布液と記載することがある)を調製する。単層型感光層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した感光層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して単層型感光層を形成する。単層型感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、化合物(1)と、バインダー樹脂と、溶剤とを含む。このような単層型感光層用塗布液は、電荷発生剤と、化合物(1)と、バインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製する。単層型感光層用塗布液には、電子輸送剤を加えてもよい。単層型感光層用塗布液には、必要に応じて添加剤を加えてもよい。
【0191】
電荷発生層用塗布液、電荷輸送層用塗布液及び単層型感光層用塗布液(以下、塗布液と記載することがある)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン又はキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル又はジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル又は酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの溶剤のうち、非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
【0192】
電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、電荷発生層用塗布液に含有される溶剤と、異なることが好ましい。電荷発生層上に電荷輸送層用塗布液を塗布する場合に、電荷発生層が電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましいからである。
【0193】
塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散器を用いることができる。
【0194】
各成分の分散性又は形成される各々の層の表面平滑性を向上させるために、塗布液は、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有してもよい。
【0195】
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法又はバーコート法が挙げられる。
【0196】
塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る方法であれば、特に限定されない。除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理の温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理の時間は、例えば、3分間以上120分間以下の時間である。
【0197】
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて中間層を形成する工程を更に有してもよい。中間層を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
【実施例】
【0198】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0199】
積層型感光体の電荷発生層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤を準備した。積層型感光体の電荷輸送層を形成するための材料として、以下の正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子アクセプター化合物を準備した。単層型感光体の単層型感光層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤を準備した。
【0200】
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、実施形態で述べた化学式(CGM−2)で表されるY型チタニルフタロシアニンを準備した。
【0201】
(電子アクセプター化合物及び電子輸送剤)
電子アクセプター化合物として、実施形態で述べた化合物(20−E1)、化合物(20−E2)、化合物(21−E3)、化合物(22−E4)、化合物(23−E5)及び化合物(24−E6)を準備した。電子輸送剤として、実施形態で述べた化合物(20−E1)、化合物(21−E3)、化合物(22−E4)、化合物(23−E5)及び化合物(24−E6)を準備した。
【0202】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(1−1)〜(1−3)を準備した。化合物(1−1)〜(1−3)の各々は、以下の方法で合成した。
【0203】
(化合物(1−1)の合成)
容量500mLの三口フラスコに、4,4’’−ジブロモ−p−ターフェニル(11.98g、30.9mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.069g、0.307mmol)、(4−ジメチルアミノフェニル)ジ゛−tertブチルホスフィン(0.205g、0.772mmol)、及びナトリウムtert−ブトキシド(7.702g、80.15mmol)を入れた。フラスコ内の脱気及び窒素ガス置換を2回繰り返すことにより、フラスコ内の空気を窒素ガスに置換した。次いで、フラスコ内に、2,4,4’−トリメチルジフェニルアミン(13.85g、63.3mmol)及びキシレン(100mL)を入れた。還流させながら、フラスコ内容物を120℃で3時間攪拌した。次いで、フラスコ内容物の温度を50℃まで低下させた。フラスコ内容物を濾過して灰分を除去し、濾液を得た。濾液に活性白土(日本活性白土株式会社製「SA−1」、24g)を入れて、80℃で10分間攪拌して混合物を得た。次いで、混合物を濾過し、濾液を得た。濾液を減圧留去して、残渣を得た。残渣にトルエン20gを加えて100℃まで加熱した。これにより、残渣をトルエンに溶解させて、溶液を得た。溶液がわずかに白濁するまで、溶液にn−ヘキサンを添加した。次いで、溶液を5℃まで冷却し、濾過により析出した結晶を取り出した。得られた結晶を乾燥させて、化合物(1−1)を得た。化合物(1−1)の収量は18.2gであった。4,4’’−ジブロモ−p−ターフェニルからの化合物(1−1)の収率は、90.8モル%であった。
【0204】
(化合物(1−2)の合成)
63.3mmolの(2,4−ジメチルフェニル)(4’−メチルフェニル)アミンを、63.3mmolの(2−エチルフェニル)(4’−メチルフェニル)アミンに変更した以外は、化合物(1−1)の合成と同じ方法で、化合物(1−2)を得た。
【0205】
(化合物(1−3)の合成)
63.3mmolの(2,4−ジメチルフェニル)(4’−メチルフェニル)アミンを、63.3mmolの(4−エチルフェニル)(4’−メチルフェニル)アミンに変更した以外は、化合物(1−1)の合成と同じ方法で、化合物(1−3)を得た。
【0206】
また、比較例で使用する正孔輸送剤として、化学式(HTM−4)〜(HTM−11)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(HTM−4)〜(HTM−11)と記載することがある)も準備した。なお、化合物(HTM−9)は、特許文献1に記載の化学式(II)で表されるテルフェニルジアミンに相当する。
【0207】
【化36】
【0208】
【化37】
【0209】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、実施形態で述べた樹脂(R−1)〜(R−8)の各々を準備した。
【0210】
(樹脂(R−1))
樹脂(R−1)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10−1)、(11−X1)及び(11−X3)のみを有するポリアリレート樹脂であった。樹脂(R−1)は、繰り返し単位(11)として繰り返し単位(11−X1)及び(11−X3)の2種を有しており、比率pは0.50であった。樹脂(R−1)の粘度平均分子量は、50,500であった。
【0211】
【化38】
【0212】
樹脂(R−1)を、以下の方法で合成した。具体的には、反応容器として、温度計、三方コック、及び容量200mLの滴下ロートを備えた容量1Lの三口フラスコを用いた。反応容器に、化合物(BP−10−1)10g(41.28ミリモル)と、tert−ブチルフェノール0.062g(0.413ミリモル)と、水酸化ナトリウム3.92g(98ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド0.120g(0.384ミリモル)とを入れた。反応容器内の空気をアルゴンガスで置換した。反応容器の内容物に水300mLを加えた。反応容器の内容物を50℃で1時間攪拌した。次いで、反応容器の内容物の温度が10℃になるまで反応容器の内容物を冷却して、アルカリ性水溶液Aを得た。
【0213】
一方、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(化合物(DC−11−X1)のジクロライド)4.10g(16.2ミリモル)と、4,4’−オキシビス安息香酸ジクロライド(化合物(DC−11−X3)のジクロライド)4.78g(16.2ミリモル)とを、クロロホルム150mLに溶解させた。これにより、クロロホルム溶液Bを得た。
【0214】
滴下ロートからクロロホルム溶液Bを、アルカリ性水溶液Aに110分間かけてゆっくりと滴下した。反応容器の内容物の温度(液温)を15±5℃に調節しながら、反応容器の内容物を4時間攪拌して重合反応を進行させた。次いで、デカントを用いて反応容器の内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、容量1Lの三角フラスコに、イオン交換水400mLを入れた。フラスコ内容物に、得られた有機層を加えた。フラスコ内容物に、クロロホルム400mL及び酢酸2mLを更に加えた。次いで、フラスコ内容物を、室温(25℃)で30分間攪拌した。その後、デカントを用いてフラスコ内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。分液ロートを用いて、得られた有機層をイオン交換水1Lで洗浄した。イオン交換水による洗浄を5回繰り返し、水洗した有機層を得た。
【0215】
次に、水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。容量1Lのビーカーに1Lのメタノールを入れた。ビーカー内のメタノールに得られたろ液をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過により取り出した。取り出した沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。その結果、樹脂(R−1)が得られた。
【0216】
(樹脂(R−2))
樹脂(R−2)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10−2)、(11−X1)及び(11−X3)のみを有するポリアリレート樹脂であった。樹脂(R−2)は、繰り返し単位(11)として繰り返し単位(11−X1)及び(11−X3)の2種を有しており、比率pは0.50であった。樹脂(R−2)の粘度平均分子量は、47,500であった。
【0217】
【化39】
【0218】
樹脂(R−2)は、以下の方法で合成した。具体的には、41.28ミリモルの化合物(BP−10−1)を41.28ミリモルの化合物(BP−10−2)に変更した以外は、樹脂(R−1)の合成方法と同じ方法で、樹脂(R−2)を得た。
【0219】
(樹脂(R−3))
樹脂(R−3)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10−2)、(11−X1)及び(11−X2)のみを有するポリアリレート樹脂であった。樹脂(R−3)は、繰り返し単位(11)として繰り返し単位(11−X1)及び(11−X2)の2種を有しており、比率pは0.50であった。樹脂(R−3)の粘度平均分子量は、50,500であった。
【0220】
【化40】
【0221】
樹脂(R−3)は、以下の方法で合成した。具体的には、41.28ミリモルの化合物(BP−10−1)を41.28ミリモルの化合物(BP−10−2)に変更したこと、及び16.2ミリモルの化合物(DC−11−X3)のジクロライドを16.2ミリモルの化合物(DC−11−X2)のジクロライドに変更したこと以外は、樹脂(R−1)の合成方法と同じ方法で、樹脂(R−3)を得た。
【0222】
(樹脂(R−8))
樹脂(R−8)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10−1)、(12−1)及び(11−X3)のみを有するポリアリレート樹脂であった。樹脂(R−8)の比率qは0.80であった。樹脂(R−8)の粘度平均分子量は、50,500であった。
【0223】
【化41】
【0224】
樹脂(R−8)は、以下の方法で合成した。具体的には、41.28ミリモルの化合物(BP−10−1)を33.02ミリモルの化合物(BP−10−1)及び8.26ミリモルの化合物(BP−12−1)に変更したこと、並びに16.2ミリモルの化合物(DC−11−X1)のジクロライド及び16.2ミリモルの化合物(DC−11−X3)のジクロライドを32.4ミリモルの化合物(DC−11−X3)のジクロライドに変更したこと以外は、樹脂(R−1)の合成方法と同じ方法で、樹脂(R−8)を得た。
【0225】
(樹脂(R−4))
樹脂(R−4)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10−3)、(11−X1)及び(11−X3)のみを有するポリアリレート樹脂であった。樹脂(R−4)は、繰り返し単位(11)として繰り返し単位(11−X1)及び(11−X3)の2種を有しており、比率pは0.50であった。樹脂(R−4)の粘度平均分子量は、55,000であった。
【0226】
【化42】
【0227】
樹脂(R−4)は、以下の方法で合成した。具体的には、反応容器として、温度計、三方コック、及び容量400mLの滴下ロートを備えた容量2Lの三口フラスコを用いた。反応容器に、化合物(BP−10−3)29.10g(82.56ミリモル)と、tert−ブチルフェノール0.124g(0.826ミリモル)と、水酸化ナトリウム7.84g(196ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド0.240g(0.768ミリモル)とを入れた。反応容器内の空気をアルゴンガスで置換した。反応容器の内容物に水600mLを加えた。反応容器の内容物を20℃で1時間攪拌した。次いで、反応容器の内容物の温度が10℃になるまで反応容器の内容物を冷却して、アルカリ性水溶液Cを得た。
【0228】
一方、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(化合物(DC−11−X1)のジクロライド)9.84g(38.9ミリモル)と、4,4’−オキシビス安息香酸ジクロライド(化合物(DC−11−X3)のジクロライド)11.47g(38.9ミリモル)とを、クロロホルム300mLに溶解させた。これにより、クロロホルム溶液Dを得た。
【0229】
滴下ロートからクロロホルム溶液Dを、アルカリ性水溶液Cに110分間かけてゆっくりと滴下した。反応容器の内容物の温度(液温)を13±3℃に調節しながら、反応容器の内容物を3時間攪拌して重合反応を進行させた。次いで、デカントを用いて反応容器の内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、容量2Lの三角フラスコに、イオン交換水500mLを入れた。フラスコ内容物に、得られた有機層を加えた。フラスコ内容物に、クロロホルム300mL及び酢酸6mLを更に加えた。次いで、フラスコ内容物を、室温(25℃)で30分間攪拌した。その後、デカントを用いてフラスコ内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。分液ロートを用いて、得られた有機層をイオン交換水500mLで洗浄した。イオン交換水による洗浄を5回繰り返し、水洗した有機層を得た。
【0230】
次に、水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。容量3Lのビーカーに1.5Lのメタノールを入れた。ビーカー内のメタノールに得られたろ液をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過により取り出した。取り出した沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。その結果、樹脂(R−4)が得られた。
【0231】
(樹脂(R−5))
樹脂(R−5)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(R−5)のみを有するポリカーボネート樹脂であった。樹脂(R−5)の粘度平均分子量は、50,600であった。
【0232】
【化43】
【0233】
(樹脂(R−6))
樹脂(R−6)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(R−6)のみを有するポリカーボネート樹脂であった。樹脂(R−6)の粘度平均分子量は、49,400であった。
【0234】
【化44】
【0235】
(樹脂(R−7))
樹脂(R−7)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(R−7)のみを有するポリカーボネート樹脂であった。樹脂(R−7)の粘度平均分子量は、50,900であった。
【0236】
【化45】
【0237】
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、合成した化合物(1−1)〜(1−3)及び樹脂(R−1)〜(R−4)の1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。化合物(1−1)〜(1−3)のうちの代表例として、化合物(1−1)の化学シフト値を以下に示す。化学シフト値から、化合物(1−1)が得られていることを確認した。樹脂(R−1)〜(R−4)のうちの代表例として、樹脂(R−1)及び(R−4)の化学シフト値を以下に示す。化学シフト値から、樹脂(R−1)及び(R−4)が各々得られていることを確認した。化合物(1−2)及び化合物(1−3)、並びに樹脂(R−2)及び(R−3)についても同じ方法で、化合物(1−2)及び化合物(1−3)、並びに樹脂(R−2)及び(R−3)が各々得られていることを確認した。
【0238】
化合物(1−1):1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ=7.57(s, 4H), 7.42−7.45(m, 4H), 7.01−7.07(m, 18H), 2.34(s, 6H), 2.29(s, 6H), 2.03(s, 6H).
樹脂(R−1):1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ=8.85(s,2H),8.29(d,2H),8.23(dd,4H),8.12(d,2H),7.04−7.24(m,16H),2.16(q,4H),1.65(s,6H),0.78(t,6H).
樹脂(R−4):1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ=8.84(s, 2H), 8.28(d, 2H), 8.22(d, 4H), 8.11(d, 2H), 7.10−7.31(m, 20H), 2.12(brs, 8H), 1.38(brs, 28H), 1.00(brs, 8H).
【0239】
<積層型感光体(A−1)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)の製造>
上述した電荷発生剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子アクセプター化合物を用いて、積層型感光体(A−1)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)を製造した。
【0240】
(積層型感光体(A−1)の製造)
まず、中間層を形成した。表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製「試作品SMT−A」、数平均一次粒径10nm)を準備した。SMT−Aは、アルミナとシリカとを用いて酸化チタンを表面処理し、表面処理された酸化チタンを湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて更に表面処理したものであった。次いで、SMT−A(2質量部)と、ポリアミド樹脂(東レ株式会社製「アミラン(登録商標)CM8000」、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66及びポリアミド610の四元共重合ポリアミド樹脂)(1質量部)とを、メタノール(10質量部)、ブタノール(1質量部)及びトルエン(1質量部)を含む溶剤に対して添加した。ビーズミルを用いて、これらの材料及び溶剤を5時間混合し、溶剤中に材料を分散させた。これにより、中間層用塗布液を調製した。得られた中間層用塗布液を、目開き5μmのフィルターを用いてろ過した。その後、ディップコート法を用いて、導電性基体の表面に中間層用塗布液を塗布した。導電性基体としては、アルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長246mm)を用いた。続いて、塗布した中間層用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、導電性基体上に中間層(膜厚2μm)を形成した。
【0241】
次に、電荷発生層を形成した。詳しくは、Y型チタニルフタロシアニン(1.5質量部)と、ベース樹脂としてのポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBX−5」)(1質量部)とを、プロピレングリコールモノメチルエーテル(40質量部)及びテトラヒドロフラン(40質量部)を含む溶剤に添加した。ビーズミルを用いて、これらの材料及び溶剤を2時間混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷発生層用塗布液を作製した。得られた電荷発生層用塗布液を、目開き3μmのフィルターを用いてろ過した。次いで、得られたろ液を、中間層上にディップコート法を用いて塗布し、50℃で5分間乾燥させた。これにより、中間層上に電荷発生層(膜厚0.3μm)を形成した。
【0242】
次に、電荷輸送層を形成した。詳しくは、正孔輸送剤としての化合物(1−1)60.0質量部と、バインダー樹脂としての樹脂(R−1)100.0質量部と、電子アクセプター化合物としての化合物(20−E1)10.0質量部と、ヒンダードフェノール酸化防止剤(BASF社製「イルガノックス(登録商標)1010」)0.5質量部と、レベリング剤(ジメチルシリコーンオイル、信越化学工業株式会社製「KF96−50CS」)0.05質量部とを、テトラヒドロフラン350.0質量部及びトルエン350.0質量部を含む溶剤に対して添加した。これらを混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上にディップコート法を用いて塗布し、120℃で40分間乾燥させた。これにより、電荷発生層上に電荷輸送層(膜厚20μm)を形成した。その結果、積層型感光体(A−1)が得られた。積層型感光体(A−1)において、導電性基体上に中間層が、中間層上に電荷発生層が、電荷発生層上に電荷輸送層が備えられていた。
【0243】
(積層型感光体(A−2)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)の製造)
次の点を変更した以外は、積層型感光体(A−1)の製造と同じ方法で、積層型感光体(A−2)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)の各々を製造した。積層型感光体(A−1)の製造においては正孔輸送剤として化合物(1−1)60.0質量部を使用したが、積層型感光体(A−2)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)の各々の製造においては表1〜表3に示す種類及び量の正孔輸送剤を使用した。積層型感光体(A−1)の製造においてはバインダー樹脂として樹脂(R−1)を使用したが、積層型感光体(A−2)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)の各々の製造においては表1〜表3に示す種類のバインダー樹脂を使用した。積層型感光体(A−1)の製造においては電子アクセプター化合物として化合物(20−E1)10.0質量部を使用したが、積層型感光体(A−2)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)の各々の製造においては表1〜表3に示す種類及び量の電子アクセプター化合物を使用した。
【0244】
<積層型感光体(A−1)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)の帯電特性の評価>
積層型感光体(A−1)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)の各々に対して、温度10℃及び相対湿度20%RHの環境下で、帯電特性を評価した。詳しくは、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、積層型感光体の回転数31rpm及び積層型感光体への流れ込み電流−10μAの条件下で、積層型感光体を帯電させた。帯電させた積層型感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、積層型感光体の帯電電位(V0、単位:−V)とした。積層型感光体の帯電電位(V0)を、表1〜表3に示す。
【0245】
<積層型感光体(A−1)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)の感度特性の評価>
積層型感光体(A−1)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)の各々に対して、温度10℃及び相対湿度20%RHの環境下で、感度特性を評価した。詳しくは、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、積層型感光体の表面を−600Vに帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:0.26μJ/cm2)をハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出し、積層型感光体の表面に照射した。単色光の照射終了から50ミリ秒が経過した時点の積層型感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、積層型感光体の露光後電位(VL、単位:−V)とした。積層型感光体の露光後電位(VL)を、表1〜表3に示す。なお、露光後電位(VL)の絶対値が小さいほど、積層型感光体の感度特性が優れていることを示す。露光後電位(VL)の絶対値が130V以上である積層型感光体を、積層型感光体の感度特性が不良(NG)であると評価した。
【0246】
<積層型感光体(A−1)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)の結晶化抑制の評価>
積層型感光体(A−1)〜(A−23)及び(B−1)〜(B−8)の各々の表面(感光層)全域を、肉眼で観察した。そして、感光層における結晶化した部分の有無を確認した。確認結果に基づき、下記評価基準で結晶化が抑制されているか否かを評価した。評価結果を表1〜表3に示す。なお、評価がCである積層型感光体を、感光層の結晶化が抑制されていないと評価した。
【0247】
(結晶化抑制の評価基準)
評価A:結晶化した部分が確認されなかった。
評価B:結晶化した部分が若干確認された。
評価C:結晶化した部分が明確に確認された。
【0248】
表1〜表3中、HTM、Resin、EA、部、V0及びVLは、各々、正孔輸送剤、バインダー樹脂、電子アクセプター化合物、質量部、帯電電位及び露光後電位を示す。
【0249】
表1〜表3中、「HTM/Resin」は、バインダー樹脂の質量mResinに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mResinを示す。比率mHTM/mResinは、計算式「比率mHTM/mResin=正孔輸送剤の量(単位:質量部)/バインダー樹脂の量(単位:質量部)」から求めた。
【0250】
表1〜表3中、「EA/HTM」は、正孔輸送剤の質量mHTMに対する電子アクセプター化合物の質量mEAの比率mEA/mHTMを示す。比率mEA/mHTMは、計算式「比率mEA/mHTM=電子アクセプター化合物の量(単位:質量部)/正孔輸送剤の量(単位:質量部)」から求めた。
【0251】
【表1】
【0252】
【表2】
【0253】
【表3】
【0254】
<単層型感光体の製造>
上述した電荷発生剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤を用いて、単層型感光体(C−1)〜(C−20)及び(D−1)〜(D−8)を製造した。
【0255】
(単層型感光体(C−1)の製造)
容器内に、電荷発生剤としてのY型チタニルフタロシアニン2.0質量部、正孔輸送剤としての化合物(1−1)60.0質量部、バインダー樹脂としての樹脂(R−1)100.0質量部、電子輸送剤としての化合物(20−E1)25.0質量部、及び溶剤としてのテトラヒドロフラン800.0質量部を投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて50時間混合して、溶剤に材料を分散させた。これにより、感光層用塗布液を得た。感光層用塗布液を、導電性基体(アルミニウム製のドラム状支持体、直径30mm、全長238.5mm)上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した感光層用塗布液を、120℃で60分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、単層型感光層(膜厚28μm)を形成した。その結果、単層型感光体(C−1)が得られた。単層型感光体(C−1)において、導電性基体上に単層型感光層が備えられていた。
【0256】
(単層型感光体(C−2)〜(C−20)及び(D−1)〜(D−8)の製造)
次の点を変更した以外は、単層型感光体(C−1)の製造と同じ方法で、単層型感光体(C−2)〜(C−20)及び(D−1)〜(D−8)の各々を製造した。単層型感光体(C−1)の製造においては正孔輸送剤として化合物(1−1)60.0質量部を使用したが、単層型感光体(C−2)〜(C−20)及び(D−1)〜(D−8)の各々の製造においては表4〜表6に示す種類及び量の正孔輸送剤を使用した。単層型感光体(C−1)の製造においてはバインダー樹脂として樹脂(R−1)を使用したが、単層型感光体(C−2)〜(C−20)及び(D−1)〜(D−8)の各々の製造においては表4〜表6に示す種類のバインダー樹脂を使用した。単層型感光体(C−1)の製造においては電子輸送剤として化合物(20−E1)25.0質量部を使用したが、単層型感光体(C−2)〜(C−20)及び(D−1)〜(D−8)の各々の製造においては表4〜表6に示す種類及び量の電子輸送剤を使用した。
【0257】
<単層型感光体の帯電特性の評価>
単層型感光体(C−1)〜(C−20)及び(D−1)〜(D−8)の各々に対して、温度10℃及び相対湿度20%RHの環境下で、帯電特性を評価した。詳しくは、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、単層型感光体の回転数31rpm及び単層型感光体への流れ込み電流+8μAの条件下で、単層型感光体を帯電させた。帯電させた単層型感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、単層型感光体の帯電電位(V0、単位:+V)とした。単層型感光体の帯電電位(V0)を、表1〜表3に示す。
【0258】
<単層型感光体の感度特性の評価>
単層型感光体(C−1)〜(C−20)及び(D−1)〜(D−8)の各々に対して、温度10℃及び相対湿度20%RHの環境下で、感度特性を評価した。詳しくは、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、単層型感光体の表面を+620Vに帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:1.3μJ/cm2)をハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出し、単層型感光体の表面に照射した。単色光の照射終了から80ミリ秒が経過した時点の単層型感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、単層型感光体の露光後電位(VL、単位:+V)とした。単層型感光体の露光後電位(VL)を、表4〜表6に示す。なお、露光後電位(VL)の絶対値が小さいほど、単層型感光体の感度特性が優れていることを示す。露光後電位(VL)の絶対値が150V以上である単層型感光体を、単層型感光体の感度特性が不良(NG)であると評価した。
【0259】
<単層型感光体の耐露光メモリー性の評価>
単層型感光体(C−1)〜(C−20)及び(D−1)〜(D−8)の各々に対して、京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「モノクロプリンターFS−1300D」の改造機を用いて、耐露光メモリー性を評価した。評価環境は、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境であった。評価用紙として、京セラドキュメントソリューションズ株式会社販売「京セラドキュメントソリューションズブランド紙VM−A4(A4サイズ)」を使用した。評価機に感光体を搭載し、評価機の条件を下記の通りに設定した。
【0260】
(評価機の条件)
線速:168mm/秒
帯電部:スコロトロン帯電器
ワイヤー電流(Icc):+200μA
グリッド電圧(Vg):+600V
転写方式:直接転写方式
転写電流:−20μA
表面電位計:Monroe Electronics社製「MODEL244」
表面電位プローブ:Monroe Electronics社製「MODEL1017AE」
【0261】
評価機を用いて、4枚の用紙に画像を連続して印刷した。具体的には、第一枚目及び第二枚目の用紙に白紙画像を印刷し、第三枚目の用紙に全面ソリッド画像(画像濃度100%)を印刷し、第四枚目の用紙に白紙画像を印刷した。第二枚目の印刷開始から感光体が1周する間の感光体の帯電電位を測定し、測定された帯電電位の平均値をV0A(単位:+V)とした。また、第四枚目の印刷開始から感光体が1周する間の感光体の帯電電位を測定し、測定された帯電電位の平均値をV0B(単位:+V)とした。測定されたV0A及びV0Bから、計算式「V0A−V0B」に従って、値V0A−V0Bを算出した。算出した値V0A−V0Bを、表4〜表6に示す。なお、値V0A−V0Bが小さいほど、露光メモリーが発生し難く、単層型感光体の耐露光メモリー性が優れていることを示す。値V0A−V0Bが+60V以上である単層型感光体を、単層型感光体の耐露光メモリー性が不良(NG)であると評価した。
【0262】
<単層型感光体の結晶化抑制の評価>
単層型感光体(C−1)〜(C−20)及び(D−1)〜(D−8)の各々の表面(感光層)全域を、肉眼で観察した。そして、感光層における結晶化した部分の有無を確認した。確認結果に基づき、下記評価基準で結晶化が抑制されているか否かを評価した。評価結果を表4〜表6に示す。なお、評価がCである単層型感光体を、感光層の結晶化が抑制されていないと評価した。
【0263】
(結晶化抑制の評価基準)
評価A:結晶化した部分が確認されなかった。
評価B:結晶化した部分が若干確認された。
評価C:結晶化した部分が明確に確認された。
【0264】
表4〜表6中、HTM、Resin、ETM、部、V0及びVLは、各々、正孔輸送剤、バインダー樹脂、電子輸送剤、質量部、帯電電位及び露光後電位を示す。表4〜表6中、「−」は、結晶化抑制の評価結果がC評価であったため、耐露光メモリー性の評価を行わなかったことを示す。
【0265】
表4〜表6中、「HTM/Resin」は、バインダー樹脂の質量mResinに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mResinを示す。比率mHTM/mResinは、計算式「比率mHTM/mResin=正孔輸送剤の量(単位:質量部)/バインダー樹脂の量(単位:質量部)」から求めた。
【0266】
表4〜表6中、「ETM/HTM」は、正孔輸送剤の質量mHTMに対する電子輸送剤の質量mETMの比率mETM/mHTMを示す。比率mETM/mHTMは、計算式「比率mETM/mHTM=電子輸送剤の量(単位:質量部)/正孔輸送剤の量(単位:質量部)」から求めた。
【0267】
【表4】
【0268】
【表5】
【0269】
【表6】
【0270】
積層型感光体(A−1)〜(A−23)の各々は、化合物(1)を含有していた。具体的には、積層型感光体(A−1)〜(A−23)の各々は、一般式(1)に包含される化合物(1−1)、(1−2)又は(1−3)を含有していた。そのため、表1及び表2から明らかなように、積層型感光体(A−1)〜(A−23)では、露光後電位(VL)の絶対値が130V未満であり、感度特性が優れていた。また、積層型感光体(A−1)〜(A−23)の結晶化抑制の評価はA又はBであり、感光層の結晶化が抑制されていた。
【0271】
一方、積層型感光体(B−1)〜(B−8)の各々は、正孔輸送剤として化合物(HTM−4)〜(HTM−11)の何れかを含有していた。しかし、化合物(HTM−4)〜(HTM−11)は何れも、一般式(1)に包含される化合物ではなかった。そのため、表3から明らかなように、積層型感光体(B−1)〜(B−8)では、露光後電位(VL)の絶対値が130V以上であり、感度特性が劣っていた。また、積層型感光体(B−1)〜(B−4)及び(B−7)の結晶化抑制の評価はCであり、感光層の結晶化が抑制されていなかった。
【0272】
単層型感光体(C−1)〜(C−20)の各々は、化合物(1)を含有していた。具体的には、単層型感光体(C−1)〜(C−20)の各々は、一般式(1)に包含される化合物(1−1)、(1−2)又は(1−3)を含有していた。そのため、表4及び表5から明らかなように、単層型感光体(C−1)〜(C−20)では、露光後電位(VL)の絶対値が150V未満であり、感度特性が優れていた。また、単層型感光体(C−1)〜(C−20)では、値V0A−V0Bが+60V未満であり、耐露光メモリー性が優れていた。また、単層型感光体(C−1)〜(C−20)の結晶化抑制の評価はA又はBであり、感光層の結晶化が抑制されていた。
【0273】
一方、単層型感光体(D−1)〜(D−8)の各々は、正孔輸送剤として化合物(HTM−4)〜(HTM−11)の何れかを含有していた。しかし、化合物(HTM−4)〜(HTM−11)は何れも、一般式(1)に包含される化合物ではなかった。そのため、表6から明らかなように、単層型感光体(D−1)〜(D−4)、(D−6)及び(D−7)では、露光後電位(VL)の絶対値が150V以上であり、感度特性が劣っていた。また、単層型感光体(D−5)、(D−6)及び(D−8)では、値V0A−V0Bが+60V以上であり、耐露光メモリー性が劣っていた。また、単層型感光体(D−1)〜(D−4)及び(D−7)の結晶化抑制の評価はCであり、感光層の結晶化が抑制されていなかった。
【0274】
以上のことから、本発明に係る化合物は、感光層に含有させた場合に、感光体の電気特性の向上及び感光層の結晶化の抑制が可能であることが示された。また、本発明に係る感光体は、電気特性の向上及び感光層の結晶化の抑制が可能であることが示された。
【0275】
<化合物(1)の製造方法の検討>
実施形態で述べた配位子(L−1)及び(L−3)〜(L−6)、並びに配位触媒(L−2)を準備した。これらの配位子又は配位触媒を使用して、以下の合成方法によって、化合物(1)を合成した。
【0276】
(積層型感光体(E−1)用の化合物(1−2)の合成)
反応(r1)を行った。詳しくは、容量500mLの三口フラスコに、4,4’’−ジブロモ−p−ターフェニル(以下、化合物(a−1)と記載する、11.98g、30.9mmol)と、触媒である酢酸パラジウム(II)(0.069g、0.307mmol)と、(4−ジメチルアミノフェニル)ジ゛−tertブチルホスフィン(配位子(L−1)、0.205g、0.772mmol)と、ナトリウムtert−ブトキシド(7.702g、80.15mmol)とを入れた。フラスコ内の脱気及び窒素ガス置換を2回繰り返すことにより、フラスコ内の空気を窒素ガスに置換した。次いで、フラスコ内の液に、2−エチル−4’−メチルジフェニルアミン(以下、化合物(bc−2)と記載する、13.85g、63.3mmol)と、キシレン(100mL)とを加えた。フラスコ内の液が還流するまで、液を昇温させた。液を還流させながら、液を130℃で5時間攪拌した。次いで、フラスコ内の液を冷却することなく、液を濾過して液中の灰分を除去し、濾液を得た。次いで、活性白土処理を行った。詳しくは、濾液にキシレン100gと、活性白土(日本活性白土株式会社製「SA−1」、6g)とを入れて、80℃で10分間攪拌した後、濾過して濾液を得た。このような活性白土処理を、合計3回行った。活性白土処理後に、濾液を減圧濃縮して、濃縮液を得た。濃縮液がわずかに白濁するまで、濃縮液にイソヘキサン(20g程度)を添加した。次いで、濃縮液に、メタノール50gを更に加えた。濃縮液を5℃まで冷却し、析出した結晶を濾過により取り出した。得られた結晶を乾燥させて、積層型感光体(E−1)用の化合物(1−2)を得た。積層型感光体(E−1)用の化合物(1−2)の収量は20.1gであった。反応(r1)において、積層型感光体(E−1)用の化合物(1−2)の収率は、92モル%であった。
【0277】
(積層型感光体(E−2)用の化合物(1−1)の合成)
2−エチル−4’−メチルジフェニルアミン(化合物(bc−2)、63.3mmol)を、2,4,4’−トリメチルジフェニルアミン(以下、化合物(bc−1)と記載する、63.3mmol)に変更したこと以外は、積層型感光体(E−1)用の化合物(1−2)の合成と同じ方法で、積層型感光体(E−2)用の化合物(1−1)を合成した。反応(r1)における積層型感光体(E−2)用の化合物(1−1)の収率を、表7に示す。
【0278】
(積層型感光体(E−3)用の化合物(1−2)の合成)
酢酸パラジウム(II)(0.069g、0.307mmol)を添加しなかったこと、及び配位子(L−1)(0.772mmol)を配位触媒(L−2)(0.772mmol)に変更したこと以外は、積層型感光体(E−1)用の化合物(1−2)の合成と同じ方法で、積層型感光体(E−3)用の化合物(1−2)を合成した。反応(r1)における積層型感光体(E−3)用の化合物(1−2)の収率を、表7に示す。
【0279】
(積層型感光体(F−1)用の化合物(1−2)の合成)
配位子(L−1)(0.772mmol)を配位子(L−3)(0.772mmol)に変更したこと以外は、積層型感光体(E−1)用の化合物(1−2)の合成と同じ方法で、積層型感光体(F−1)用の化合物(1−2)を合成した。反応(r1)における積層型感光体(F−1)用の化合物(1−2)の収率を、表7に示す。
【0280】
(積層型感光体(F−2)用の化合物(1−2)の合成)
配位子(L−1)(0.772mmol)を配位子(L−4)(0.772mmol)に変更したこと以外は、積層型感光体(E−1)用の化合物(1−2)の合成と同じ方法で、積層型感光体(F−2)用の化合物(1−2)を合成した。反応(r1)における積層型感光体(F−2)用の化合物(1−2)の収率を、表7に示す。
【0281】
(積層型感光体(F−3)用の化合物(1−2)の合成)
配位子(L−1)(0.772mmol)を配位子(L−5)(0.772mmol)に変更したこと以外は、積層型感光体(E−1)用の化合物(1−2)の合成と同じ方法で、積層型感光体(F−3)用の化合物(1−2)を合成した。反応(r1)における積層型感光体(F−3)用の化合物(1−2)の収率を、表7に示す。
【0282】
(積層型感光体(F−4)用の化合物(1−2)の合成)
配位子(L−1)(0.772mmol)を配位子(L−6)(トリシクロヘキシルホスフィン、0.772mmol)に変更したこと以外は、積層型感光体(E−1)用の化合物(1−2)の合成と同じ方法で、積層型感光体(F−4)用の化合物(1−2)を合成した。反応(r1)における積層型感光体(F−4)用の化合物(1−2)の収率を、表7に示す。
【0283】
(積層型感光体(G−1)用の化合物(1−2)の合成)
まず、反応(r0)を行った。詳しくは、容量500mLの三口フラスコに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.366g、0.400mmol)と、(4−ジメチルアミノフェニル)ジ゛−tertブチルホスフィン(配位子(L−1)、0.212g、0.800mmol)と、ナトリウムtert−ブトキシド(17.686g、184.15mmol)とを入れた。フラスコ内の脱気及び窒素ガス置換を2回繰り返すことにより、フラスコ内の空気を窒素ガスに置換した。次いで、フラスコ内の液に、2−エチルアニリン(以下、化合物(df−2)と記載する、8.72g、72.0mmol)と、4−ブロモトルエン(以下、化合物(eg−1)と記載する、13.68g、80.0mmol)と、キシレン(100mL)とを加えた。フラスコ内の液が還流するまで、液を昇温させた。液を還流させながら液を120℃で3時間攪拌した後、液の温度を50℃まで下げた。
【0284】
次いで、精製することなく、反応(r1)を行った。詳しくは、反応(r0)を行った後のフラスコ内の液に、4,4’’−ジブロモ−p−ターフェニル(化合物(a−1)、11.98g、30.9mmol)と、触媒である酢酸パラジウム(II)(0.069g、0.307mmol)と、(4−ジメチルアミノフェニル)ジ゛−tertブチルホスフィン(配位子(L−1)、0.205g、0.772mmol)とを加えた。フラスコ内の液を、140℃まで昇温した。昇温によって、発生した副生成物のtert−ブタノールは除去された。フラスコ内の液を還流させながら、液を140℃で5時間攪拌した。フラスコ内の液を冷却することなく、液を濾過して、液中の灰分を除去し、濾液を得た。次いで、活性白土処理を行った。詳しくは、濾液にキシレン100gと、活性白土(日本活性白土株式会社製「SA−1」、8g)とを入れて、80℃で10分間攪拌した後、濾過して濾液を得た。このような活性白土処理を、合計6回行った。活性白土処理後に、濾液を減圧濃縮して、濃縮液を得た。濃縮液がわずかに白濁するまで、濃縮液にイソヘキサン(20g程度)を加えた。次いで、濃縮液に、メタノール50gを更に添加した。濃縮液を5℃まで冷却し、析出した結晶を濾過により取り出した。得られた結晶を乾燥させて、積層型感光体(G−1)用の化合物(1−2)を得た。積層型感光体(G−1)用の化合物(1−2)の収量は19.0gであった。反応(r0)及び(r1)を通しての積層型感光体(G−1)用の化合物(1−2)の2段階収率は、89モル%であった。
【0285】
(積層型感光体(G−2)用の化合物(1−2)の合成)
反応(r0)においてトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)を添加しなかったこと、反応(r0)において配位子(L−1)(0.800mmol)を配位触媒(L−2)(0.800mmol)に変更したこと、反応(r1)において酢酸パラジウムを添加しなかったこと、及び反応(r1)において配位子(L−1)(0.772mmol)を配位触媒(L−2)(0.772mmol)に変更したこと以外は、積層型感光体(G−1)用の化合物(1−2)の合成と同じ方法で、積層型感光体(G−2)用の化合物(1−2)を合成した。反応(r0)及び(r1)を通しての積層型感光体(G−2)用の化合物(1−2)の2段階収率を、表9に示す。
【0286】
(積層型感光体(G−3)用の化合物(1−1)の合成)
反応(r0)において2−エチルアニリン(化合物(df−2)、72.0mmol)を2,4−ジメチルアニリン(以下、化合物(df−1)と記載する、72.0mmol)に変更したこと以外は、積層型感光体(G−1)用の化合物(1−2)の合成と同じ方法で、積層型感光体(G−3)用の化合物(1−1)を合成した。反応(r0)及び(r1)を通しての積層型感光体(G−3)用の化合物(1−1)の2段階収率を、表9に示す。
【0287】
(積層型感光体(G−4)〜(G−6)用の化合物(1−2)の合成)
合成した積層型感光体(G−1)用の化合物(1−2)を、積層型感光体(G−4)〜(G−6)用の化合物(1−2)としても使用した。
【0288】
(積層型感光体(H−1)用の化合物(1−2)の合成)
反応(r0)において配位子(L−1)(0.800mmol)を配位子(L−3)(0.800mmol)に変更したこと、及び反応(r1)において配位子(L−1)(0.772mmol)を配位子(L−3)(0.772mmol)に変更したこと以外は、積層型感光体(G−1)用の化合物(1−2)の合成と同じ方法で、積層型感光体(H−1)用の化合物(1−2)を合成した。反応(r0)及び(r1)を通しての積層型感光体(H−1)用の化合物(1−2)の2段階収率を、表9に示す。
【0289】
(積層型感光体(H−2)用の化合物(1−2)の合成)
反応(r0)において配位子(L−1)(0.800mmol)を配位子(L−4)(0.800mmol)に変更したこと、及び反応(r1)において配位子(L−1)(0.772mmol)を配位子(L−4)(0.772mmol)に変更したこと以外は、積層型感光体(G−1)用の化合物(1−2)の合成と同じ方法で、積層型感光体(H−2)用の化合物(1−2)を合成した。反応(r0)及び(r1)を通しての積層型感光体(H−2)用の化合物(1−2)の2段階収率を、表9に示す。
【0290】
(積層型感光体(H−3)用の化合物(1−2)の合成)
反応(r0)において配位子(L−1)(0.800mmol)を配位子(L−5)(0.800mmol)に変更したこと、及び反応(r1)において配位子(L−1)(0.772mmol)を配位子(L−5)(0.772mmol)に変更したこと以外は、積層型感光体(G−1)用の化合物(1−2)の合成と同じ方法で、積層型感光体(H−3)用の化合物(1−2)を合成した。反応(r0)及び(r1)を通しての積層型感光体(H−3)用の化合物(1−2)の2段階収率を、表9に示す。
【0291】
(積層型感光体(H−4)用の化合物(1−2)の合成)
反応(r0)において4−ブロモトルエン(化合物(eg−1)、80.0mmol)を4−クロロトルエン(以下、化合物(eg−2)と記載する、80.0mmol)に変更したこと、反応(r0)において配位子(L−1)(0.800mmol)を配位子(L−5)(0.800mmol)に変更したこと、及び反応(r1)において配位子(L−1)(0.772mmol)を配位子(L−5)(0.772mmol)に変更したこと以外は、積層型感光体(G−1)用の化合物(1−2)の合成と同じ方法で、積層型感光体(H−4)用の化合物(1−2)を合成した。反応(r0)及び(r1)を通しての積層型感光体(H−4)用の化合物(1−2)の2段階収率を、表9に示す。
【0292】
<積層型感光体(E−1)〜(E−3)、(F−1)〜(F−4)、(G−1)〜(G−6)、及び(H−1)〜(H−4)の製造>
(積層型感光体(E−1)の製造)
まず、中間層を形成した。表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製「試作品SMT−A」、数平均一次粒径10nm)を準備した。SMT−Aは、アルミナとシリカとを用いて酸化チタンを表面処理し、表面処理された酸化チタンを湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて更に表面処理したものであった。次いで、SMT−A(2質量部)と、ポリアミド樹脂(東レ株式会社製「アミラン(登録商標)CM8000」、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66及びポリアミド610の四元共重合ポリアミド樹脂)(1質量部)とを、メタノール(10質量部)、ブタノール(1質量部)及びトルエン(1質量部)を含む溶剤に対して添加した。ビーズミルを用いて、これらの材料及び溶剤を5時間混合し、溶剤中に材料を分散させた。これにより、中間層用塗布液を調製した。得られた中間層用塗布液を、目開き5μmのフィルターを用いてろ過した。その後、ディップコート法を用いて、導電性基体の表面に中間層用塗布液を塗布した。導電性基体としては、アルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長246mm)を用いた。続いて、塗布した中間層用塗布液を130℃で30分間乾燥させて、導電性基体上に中間層(膜厚2μm)を形成した。
【0293】
次に、電荷発生層を形成した。詳しくは、Y型チタニルフタロシアニン(1.5質量部)と、ベース樹脂としてのポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックBX−5」)(1質量部)とを、プロピレングリコールモノメチルエーテル(40質量部)及びテトラヒドロフラン(40質量部)を含む溶剤に添加した。ビーズミルを用いて、これらの材料及び溶剤を2時間混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷発生層用塗布液を作製した。得られた電荷発生層用塗布液を、目開き3μmのフィルターを用いてろ過した。次いで、得られたろ液を、中間層上にディップコート法を用いて塗布し、50℃で5分間乾燥させた。これにより、中間層上に電荷発生層(膜厚0.3μm)を形成した。
【0294】
次に、電荷輸送層を形成した。詳しくは、正孔輸送剤としての積層型感光体(E−1)用の化合物(1−2)100.0質量部と、バインダー樹脂としての樹脂(R−1)100.0質量部と、電子アクセプター化合物としての化合物(20−E2)2.0質量部と、ヒンダードフェノール酸化防止剤(BASF社製「イルガノックス(登録商標)1010」)0.5質量部と、レベリング剤(ジメチルシリコーンオイル、信越化学工業株式会社製「KF96−50CS」)0.05質量部とを、テトラヒドロフラン350.0質量部及びトルエン350.0質量部を含む溶剤に対して添加した。これらを混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上にディップコート法を用いて塗布し、120℃で40分間乾燥させた。これにより、電荷発生層上に電荷輸送層(膜厚20μm)を形成した。その結果、積層型感光体(E−1)が得られた。積層型感光体(E−1)において、導電性基体上に中間層が、中間層上に電荷発生層が、電荷発生層上に電荷輸送層が備えられていた。
【0295】
(積層型感光体(E−2)〜(E−3)、(F−1)〜(F−4)、(G−1)〜(G−3)、及び(H−1)〜(H−4)の製造)
表8及び表10に示す正孔輸送剤を使用したこと以外は、積層型感光体(E−1)の製造と同じ方法で、積層型感光体(E−2)〜(E−3)、(F−1)〜(F−4)、(G−1)〜(G−3)、及び(H−1)〜(H−4)の各々を製造した。なお、表8及び表10の「感光体」欄に記載の感光体用であって「HTM」欄に記載の化合物を、正孔輸送剤として使用した。例えば、表8の積層型感光体(E−2)の製造では、「感光体欄」に(E−2)と記載され、「HTM」欄に(1−1)と記載されているため、感光体(E−2)用の化合物(1−1)を、正孔輸送剤として使用した。
【0296】
(積層型感光体(G−4)〜(G−6)の製造)
表10に示すバインダー樹脂を使用したこと以外は、積層型感光体(G−1)の製造と同じ方法で、積層型感光体(G−4)〜(G−6)の各々を製造した。
【0297】
なお、積層型感光体(E−1)〜(E−3)、(F−1)〜(F−4)、(G−1)〜(G−6)、及び(H−1)〜(H−4)において、バインダー樹脂の質量mResinに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mResinは、1.00であった。積層型感光体(E−1)〜(E−3)、(F−1)〜(F−4)、(G−1)〜(G−6)、及び(H−1)〜(H−4)において、正孔輸送剤の質量mHTMに対する電子アクセプター化合物の質量mEAの比率mEA/mHTMは、0.02であった。
【0298】
<積層型感光体(E−1)〜(E−3)、(F−1)〜(F−4)、(G−1)〜(G−6)、及び(H−1)〜(H−4)の帯電特性の評価>
積層型感光体(E−1)〜(E−3)、(F−1)〜(F−4)、(G−1)〜(G−6)、及び(H−1)〜(H−4)の各々に対して、温度10℃及び相対湿度20%RHの環境下で、帯電特性を評価した。詳しくは、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、積層型感光体の回転数31rpm及び積層型感光体への流れ込み電流−10μAの条件下で、積層型感光体を帯電させた。帯電させた積層型感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、積層型感光体の帯電電位(V0、単位:−V)とした。積層型感光体の帯電電位(V0)を、表8及び表10に示す。
【0299】
<積層型感光体(E−1)〜(E−3)、(F−1)〜(F−4)、(G−1)〜(G−6)、及び(H−1)〜(H−4)の感度特性の評価>
積層型感光体(E−1)〜(E−3)、(F−1)〜(F−4)、(G−1)〜(G−6)、及び(H−1)〜(H−4)の各々に対して、温度10℃及び相対湿度20%RHの環境下で、感度特性を評価した。詳しくは、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、積層型感光体の表面を−600Vに帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:0.80μJ/cm2)をハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出し、積層型感光体の表面に照射した。単色光の照射終了から120ミリ秒が経過した時点の積層型感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、積層型感光体の露光後電位(VL、単位:−V)とした。積層型感光体の露光後電位(VL)を、表8及び表10に示す。
【0300】
表7〜表10中、酢酸Pd、Pd2(dba)3、HTM、Resin、EA、V0及びVLは、各々、酢酸パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、正孔輸送剤、バインダー樹脂、電子アクセプター化合物、帯電電位及び露光後電位を示す。
【0301】
【表7】
【0302】
【表8】
【0303】
【表9】
【0304】
【表10】
【0305】
表7及び表9に示すように、積層型感光体(E−1)〜(E−3)及び(G−1)〜(G−6)用の化合物(1)の製造においては、化合物(a)(具体的には、化合物(a−1))と、化合物(b)(具体的には、化合物(bc−1)又は(bc−2))と、化合物(c)(具体的には、化合物(bc−1)又は(bc−2))とを反応させる工程が実施されていた。この反応は、配位子(30)(具体的には、配位子(L−1))と遷移金属を含有する触媒(具体的には、酢酸パラジウム(II))とを用いて実施された。或いは、この反応は、配位子(L−1)が配位した塩化パラジウム(II)(具体的には、配位触媒(L−2))を用いて実施された。そのため、表7及び表9に示すように、積層型感光体(E−1)〜(E−3)及び(G−1)〜(G−6)用の化合物(1)は、積層型感光体(F−1)〜(F−4)及び(H−1)〜(H−4)用の化合物(1)と比較して、高い収率で製造された。また、表8及び表10に示すように、上述の反応工程を実施することにより製造された化合物(1)を含有する積層型感光体(E−1)〜(E−3)及び(G−1)〜(G−6)は、積層型感光体(F−1)〜(F−4)及び(H−1)〜(H−4)と比較して、感度特性が特に優れていた。
【0306】
以上のことから、本発明に係る化合物の製造方法によれば、高い収率で化合物(1)を製造できることが示された。また、本発明に係る製造方法によって製造された化合物(1)は、感光層に含有された場合に、感光体の感度特性を特に向上できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0307】
本発明に係る化合物、及び本発明に係る製造方法により製造された化合物は、感光体に利用することができる。本発明に係る感光体は、画像形成装置に利用することがきる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C