特許第6849152号(P6849152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6849152マスター回折格子の製造装置及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6849152
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】マスター回折格子の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20210315BHJP
【FI】
   G02B5/18
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-525147(P2020-525147)
(86)(22)【出願日】2018年6月20日
(86)【国際出願番号】JP2018023453
(87)【国際公開番号】WO2019244274
(87)【国際公開日】20191226
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】大上 裕紀
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−171565(JP,A)
【文献】 特開2002−40220(JP,A)
【文献】 特開平8−313713(JP,A)
【文献】 特開平6−34807(JP,A)
【文献】 特開2014−215375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 5/32
G03H 1/00− 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レプリカ回折格子を製造する際の母型となるマスター回折格子の製造装置であって、
マスター基板の基板表面に向けて光を照射することにより第1干渉縞を形成するための光源部と、
前記マスター基板の基板表面で反射した前記光源部からの光を反射させ、前記基板表面に再度導くことにより第2干渉縞を形成するための反射部材とを備え、
前記第1干渉縞及び前記第2干渉縞に基づくレジストパターンが、前記マスター基板の基板表面に形成されることを特徴とするマスター回折格子の製造装置。
【請求項2】
前記反射部材は、前記光源部からの光の光軸に対して、前記第1干渉縞が延びる方向に平行な方向に沿ってずれた位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のマスター回折格子の製造装置。
【請求項3】
前記光源部は、集光レンズと、前記集光レンズにより集光された光が通過するピンホールと、前記ピンホールを通過した光を平行光にするための凹面鏡とを有し、
前記反射部材は、前記凹面鏡と前記マスター基板の基板表面との間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のマスター回折格子の製造装置。
【請求項4】
レプリカ回折格子を製造する際の母型となるマスター回折格子の製造方法であって、
光源部からマスター基板の基板表面に向けて光を照射することにより第1干渉縞を形成するとともに、前記マスター基板の基板表面で反射した前記光源部からの光を反射部材で反射させ、前記基板表面に再度導くことにより第2干渉縞を形成し、前記第1干渉縞及び前記第2干渉縞に基づくレジストパターンを前記マスター基板の基板表面に形成するレジストパターン形成ステップと、
前記レジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことにより、前記マスター基板の基板表面に格子溝を有する格子パターンを形成する格子パターン形成ステップと、
前記格子パターン上に金属薄膜を成膜する成膜ステップとを含むことを特徴とするマスター回折格子の製造方法。
【請求項5】
前記反射部材は、前記光源部からの光の光軸に対して、前記第1干渉縞が延びる方向に平行な方向に沿ってずれた位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のマスター回折格子の製造方法。
【請求項6】
前記光源部は、集光レンズと、前記集光レンズにより集光された光が通過するピンホールと、前記ピンホールを通過した光を平行光にするための凹面鏡とを有し、
前記反射部材は、前記凹面鏡と前記マスター基板の基板表面との間に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のマスター回折格子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レプリカ回折格子を製造する際の母型となるマスター回折格子の製造装置及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回折格子を量産する際などに、マスター回折格子を製作し、当該マスター回折格子を用いてレプリカ回折格子を製作する方法が一般的に知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
マスター回折格子を製作する際には、まず、マスター回折格子の本体となるマスター基板の基板表面にフォトレジスト層を形成し、当該フォトレジスト層を露光することにより表面にレジストパターンを形成する。そして、当該レジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことにより、基板表面にブレーズ状(鋸歯状)の格子溝を有する格子パターンを形成する。その後、格子パターン上に金属薄膜を成膜することにより、当該金属薄膜により格子面が形成されたマスター回折格子を製作することができる。
【0004】
上記のようにして製作されたマスター回折格子を用いてレプリカ回折格子を製作する際には、まず、マスター回折格子における金属薄膜の表面(格子面)に離型剤層を形成し、当該離型剤層上に金属薄膜を成膜する。そして、レプリカ回折格子の本体となるレプリカ基板の表面に熱硬化型エポキシ樹脂などの接着剤を塗布し、当該接着剤を介して、レプリカ基板をマスター回折格子の表面に形成された金属薄膜に接着する。
【0005】
その後、離型剤層において剥離させることにより、離型剤層上の金属薄膜をマスター基板からレプリカ基板に転写させ、レプリカ回折格子を製作することができる。続けてレプリカ回折格子を製作する場合には、マスター回折格子の表面に離型剤層を再度形成し、当該離型剤層上に金属薄膜を成膜した後、上記と同様の作業を行うこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−215375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、マスター回折格子は、レプリカ回折格子を製造する際の母型となるものであり、マスター回折格子を用いて製造されたレプリカ回折格子が正規品となる。しかしながら、マスター回折格子を用いることなく、レプリカ回折格子を母型としてレプリカ回折格子を複製することにより、偽造品を製造することも可能である。従来は、このようにして偽造されたレプリカ回折格子について、偽造品であるか否かを確認することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、レプリカ回折格子が偽造品であるか否かを容易に確認することができるマスター回折格子の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るマスター回折格子の製造装置は、レプリカ回折格子を製造する際の母型となるマスター回折格子の製造装置であって、光源部と、反射部材とを備える。前記光源部は、マスター基板の基板表面に向けて光を照射することにより第1干渉縞を形成する。前記反射部材は、前記マスター基板の基板表面で反射した前記光源部からの光を反射させ、前記基板表面に再度導くことにより第2干渉縞を形成する。前記第1干渉縞及び前記第2干渉縞に基づくレジストパターンが、前記マスター基板の基板表面に形成される。
【0010】
このような構成によれば、マスター基板の基板表面に向けて光を照射することにより形成された第1干渉縞だけでなく、マスター基板の基板表面で反射した光を反射部材で反射させ、基板表面に再度導くことにより形成された第2干渉縞も用いて、マスター基板の基板表面にレジストパターンが形成される。このようにして製造されたマスター回折格子を母型としてレプリカ回折格子を製造した場合、そのレプリカ回折格子の格子面に特定波長の光を特定方向から照射すると、反射部材からの反射光に対応する形状の目印が特定方向に映し出される。したがって、目印が映し出されるか否かに基づいて、レプリカ回折格子が偽造品であるか否かを容易に確認することができる。
【0011】
(2)前記反射部材は、前記光源部からの光の光軸に対して、前記第1干渉縞が延びる方向に平行な方向に沿ってずれた位置に配置されていてもよい。
【0012】
このような構成によれば、製造されたマスター回折格子を母型として製造されたレプリカ回折格子の格子面に特定波長の光を特定方向から照射したときに、当該格子面による波長の分散方向とは異なる方向に目印が映し出される。これにより、目印が映し出されない場合と同様の性能で波長を分散させることができるため、レプリカ回折格子の本来の性能が損なわれるのを防止することができる。
【0013】
(3)本発明に係るマスター回折格子の製造方法は、レプリカ回折格子を製造する際の母型となるマスター回折格子の製造方法であって、レジストパターン形成ステップと、格子パターン形成ステップと、成膜ステップとを含む。前記レジストパターン形成ステップでは、光源部からマスター基板の基板表面に向けて光を照射することにより第1干渉縞を形成するとともに、前記マスター基板の基板表面で反射した前記光源部からの光を反射部材で反射させ、前記基板表面に再度導くことにより第2干渉縞を形成し、前記第1干渉縞及び前記第2干渉縞に基づくレジストパターンを前記マスター基板の基板表面に形成する。前記格子パターン形成ステップでは、前記レジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことにより、前記マスター基板の基板表面に格子溝を有する格子パターンを形成する。前記成膜ステップでは、前記格子パターン上に金属薄膜を成膜する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造されたマスター回折格子を母型としてレプリカ回折格子を製造した場合、そのレプリカ回折格子の格子面に特定波長の光を特定方向から照射すると、反射部材からの反射光に対応する形状の目印が特定方向に映し出されるため、目印が映し出されるか否かに基づいて、レプリカ回折格子が偽造品であるか否かを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るマスター回折格子の製造方法を段階的に示した概略断面図である。
図2】マスター回折格子の製造装置の一例を示した概略図である。
図3】第2干渉縞を形成する方法について説明するための概略平面図である。
図4】第2干渉縞を形成する方法について説明するための概略側面図である。
図5】ホログラムを再生する際の態様について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.マスター回折格子の製造方法
図1は、本発明の一実施形態に係るマスター回折格子100の製造方法を段階的に示した概略断面図である。マスター回折格子100は、回折格子を量産する際などに母型として用いられるものであり、当該マスター回折格子を用いて複数のレプリカ回折格子を製作することができる。
【0017】
マスター回折格子100を製作する際には、まず、図1(a)及び(b)に示すように、マスター基板101の基板表面にフォトレジスト層102が形成される(レジスト層形成ステップ)。マスター基板101としては、例えばBK7又は石英ガラスなどからなるガラス基板を用いることができる。
【0018】
マスター基板101の基板表面に形成されたフォトレジスト層102は、例えばホログラフィック露光法などを用いて干渉縞が露光されることにより、図1(c)に示すように、その表面にレジストパターンが形成される(レジストパターン形成ステップ)。本実施形態では、このレジストパターン形成ステップにおけるレジストパターンの形成方法に特徴がある。レジストパターンの具体的な形成方法については後述する。
【0019】
レジストパターンが形成されたマスター基板101の表面には、エッチングが施されることにより、図1(d)に示すように、基板表面に格子溝を有する格子パターン103が形成される。エッチングの方法としては、例えばイオンビームエッチングを例示することができる。レジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことにより、図1(d)に示すように、マスター基板101の基板表面にブレーズ状(鋸歯状)の格子溝を形成することができる(格子パターン形成ステップ)。
【0020】
その後、格子パターン103上に金属薄膜104を形成することにより、格子パターン103全体が金属薄膜104で覆われ、当該金属薄膜104の表面に格子面が形成される(成膜ステップ)。金属薄膜104は、例えばアルミニウム、金又は白金などにより格子パターン103上に成膜することができる。
【0021】
上記のような製作工程により、レプリカ回折格子のレプリカ基板に金属薄膜を転写させるためのマスター基板101を有するマスター回折格子100を製作することができる。製作されたマスター回折格子100は、図1(e)に示すように、マスター基板101の基板表面上に、金属薄膜104が形成された構成となっている。
【0022】
2.マスター回折格子の製造装置
図2は、マスター回折格子100の製造装置1の一例を示した概略図である。この製造装置1は、レーザ光源2、平面鏡3、ビームスプリッタ4、平面鏡7、スペイシャルフィルタ8、凹面鏡9及び平面鏡10などを備えている。第1光源部5及び第2光源部6は、スペイシャルフィルタ8及び凹面鏡9などにより構成されており、同一の部材が互いに対称配置された構成である。
【0023】
レーザ光源2から出射されるレーザ光は、平面鏡3で反射した後、ビームスプリッタ4に入射する。このとき、ビームスプリッタ4で反射したレーザ光は、一方の平面鏡7で反射して第1光源部5側へと導かれ、ビームスプリッタ4を透過したレーザ光は、他方の平面鏡7で反射して第2光源部6側へと導かれる。第1光源部5及び第2光源部6のそれぞれにおいて、ビームスプリッタ4からのレーザ光はスペイシャルフィルタ8に入射する。
【0024】
スペイシャルフィルタ8は、集光レンズ81及びピンホール82を含む。スペイシャルフィルタ8に入射するレーザ光は、集光レンズ81により集光され、その集光位置に配置されたピンホール82を通過する。これにより、干渉縞に生じるノイズを抑制することができるため、より良好にレジストパターンを形成することが可能になる。
【0025】
スペイシャルフィルタ8を通過したレーザ光は、凹面鏡9で反射することにより平行光とされた後、平面鏡10で反射し、マスター基板101側へと導かれる。上述の通り、マスター基板101の基板表面にはフォトレジスト層102が予め形成されており、このフォトレジスト層102に平面鏡10からのレーザ光が照射されることにより、レジストパターンが形成される。
【0026】
このとき、第1光源部5及び第2光源部6の両方からフォトレジスト層102にレーザ光が照射されるため、2光束干渉により干渉縞が得られ、この干渉縞に対応する箇所のレジストが感光する。ただし、2光束干渉に限らず、3光束以上を干渉させることにより干渉縞を形成するような構成であってもよい。
【0027】
このように、レーザ光源2、平面鏡3、ビームスプリッタ4、平面鏡7、第1光源部5及び第2光源部6、平面鏡10は、マスター基板101の基板表面に向けてレーザ光を照射することにより干渉縞(第1干渉縞)を形成するための光源部を構成している。本実施形態では、第1干渉縞とは別に第2干渉縞を形成し、第1干渉縞及び第2干渉縞に基づくレジストパターンをマスター基板101の基板表面に形成する点を特徴としている。
【0028】
3.第2干渉縞の形成方法
図3及び図4は、第2干渉縞を形成する方法について説明するための概略図である。図3は概略平面図を示しており、図4は概略側面図を示している。図3及び図4では、説明を分かりやすくするために、ピンホール82とマスター基板101との位置関係を簡略的に示しており、一部の部材を省略している。
【0029】
各ピンホール82からマスター基板101の基板表面に向かうレーザ光の光軸は、図3に示すように、基板表面に垂直な方向に対して対称に延びている。上述した第1干渉縞は、各ピンホール82からマスター基板101の基板表面(フォトレジスト層102上)に直接照射されるレーザ光が互いに干渉することにより形成される。このようにして形成される第1干渉縞は、1対のピンホール82が並ぶ方向D1に対して垂直な方向D2に沿って延び、この方向D2が、最終的に製作されるマスター回折格子100の格子パターン103における各格子溝が延びる方向となる。一方、方向D1は、最終的に製作されるマスター回折格子100の格子パターン103における波長の分散方向となる。この分散方向は、マスター回折格子100を母型として製作されるレプリカ回折格子における波長の分散方向と一致している。
【0030】
第2干渉縞は、マスター基板101の基板表面で反射したレーザ光を基板表面側に再度反射させることにより形成される。そのために、本実施形態では、マスター基板101の基板表面で反射したレーザ光を反射させ、基板表面側に再度導くための反射部材11が設けられている。
【0031】
反射部材11は、図4に示すように、基板表面に垂直な軸上に位置するピンホール82に対して波長の分散方向D1に垂直な方向D2にずらして配置される。これにより、マスター基板101の基板表面に到達する光束領域を避けた位置に反射部材11が配置されている。すなわち、反射部材11は、レーザ光の光軸に対して、第1干渉縞が延びる方向D2に平行な方向に沿ってずれた位置(波長の分散方向に対して直交方向に沿ってずれた位置)に配置されている。なお、図3では、説明を分かりやすくするために、反射部材11の位置を実際とは異なる位置に示している。
【0032】
図3に示すように、第2干渉縞を形成する際、一方のピンホール821を通過したレーザ光(破線で示す。)は、マスター基板101の基板表面で反射した後、反射部材11の反射面111で反射し、基板表面側に再度導かれる。他方のピンホール822を通過したレーザ光(実線で示す。)は、マスター基板101の基板表面で反射した後、一方のピンホール821における開口の周縁部で反射し、基板表面側に再度導かれる。これにより、一方のピンホール821を通過したレーザ光と、他方のピンホール822を通過したレーザ光とが、光路長が同一になる位置で互いに干渉し、第2干渉縞が形成される。
【0033】
本実施形態では、ピンホール821における開口の周縁部に、例えばアルミなどの金属からなる反射面83が形成されている。これにより、他方のピンホール822を通過したレーザ光(実線で示す。)は、一方のピンホール821における反射面83で反射して基板表面側に導かれるようになっている。ただし、このような構成に限らず、他方のピンホール822を通過したレーザ光を基板表面側に反射させるための反射部材が、一方のピンホール821の近傍に設けられていてもよい。
【0034】
このように、本実施形態では、レーザ光源2からレーザ光を出射させることにより、第1干渉縞及び第2干渉縞を同時に形成することができる。これにより、レジストパターン形成ステップでは、第1干渉縞及び第2干渉縞に基づくレジストパターン102がマスター基板101の基板表面に形成される。その結果、格子パターン形成ステップでは、反射部材11の存在がホログラムとして加味された格子パターン103がマスター基板101の基板表面に形成される。
【0035】
最終的に製作されたマスター回折格子100を母型としてレプリカ基板を製作した場合、そのレプリカ基板の格子面に対して特定波長の光を特定方向から照射すると、反射部材11からの反射光に対応する形状の目印が特定方向に映し出されることにより、ホログラムが再生される。
【0036】
4.ホログラムの再生
図5は、ホログラムを再生する際の態様について説明するための概略図である。ホログラムを再生する際には、ホログラム再生用光源12からレプリカ回折格子200の格子面201に特定波長の光が照射される。レプリカ回折格子200の格子面201に照射された光は、その照射方向に応じた特定の方向に反射される。そのため、光の反射方向に紙などの媒体13を配置しておけば、その媒体13に反射光と共にホログラムを再生することができる。
【0037】
再生されるホログラムは、反射部材11からの反射光に対応する形状の目印となる。したがって、例えば反射部材11が均一な反射率を有する円形状の反射面111を有する場合には、反射光と共に円形状の目印が媒体13に映し出される。目印が媒体13に映し出されるか否かに基づいて、レプリカ回折格子200が偽造品であるか否かを容易に確認するという観点によれば、反射部材11の反射面111には、部分的に反射率が異なる肖形部(図示せず)が形成されていることが好ましい。この場合、肖形部の形状が目印として媒体13に映し出されることとなる。
【0038】
5.作用効果
(1)本実施形態では、マスター基板101の基板表面に向けてレーザ光を照射することにより形成された第1干渉縞だけでなく、マスター基板101の基板表面で反射したレーザ光を反射部材11で反射させ、基板表面に再度導くことにより形成された第2干渉縞も用いて、マスター基板101の基板表面にレジストパターンが形成される。このようにして製造されたマスター回折格子100を母型としてレプリカ回折格子200を製造した場合、そのレプリカ回折格子200の格子面201に特定波長の光を特定方向から照射すると、反射光と共に反射部材11からの反射光に対応する形状の目印が特定方向に映し出される。したがって、目印が映し出されるか否かに基づいて、レプリカ回折格子200が偽造品であるか否かを容易に確認することができる。
【0039】
(2)本実施形態では、反射部材11が、各ピンホール82からのレーザ光の光軸に対して、第1干渉縞が延びる方向D2に平行な方向に沿ってずれた位置に配置されている。そのため、製造されたマスター回折格子100を母型として製造されたレプリカ回折格子200の格子面201に特定波長の光を特定方向から照射したときに、当該格子面201による波長の分散方向D1とは異なる方向に目印が映し出される。これにより、目印が映し出されない場合と同様の性能で波長を分散させることができるため、レプリカ回折格子200の本来の性能が損なわれるのを防止することができる。
【0040】
(3)反射部材11は、凹面鏡9とマスター基板101の基板表面との間に配置されていてもよい。この場合、凹面鏡9によりレーザ光が平行光とされるため、平行光を反射部材11で反射させ、基板表面に再度導くことにより、第2干渉縞を形成することができる。このようにして第2干渉縞を形成した場合、製造されたマスター回折格子100を母型として製造されたレプリカ回折格子200の格子面201に特定波長の光を特定方向から照射したときに、当該格子面201による波長の分散方向D1に対して、より離れた位置に目印が映し出される。これにより、レプリカ回折格子200の本来の性能が損なわれるのを効果的に防止することができる。
【0041】
6.変形例
以上の実施形態では、光源部が、平面鏡7及び平面鏡10を含むような構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、光源部は、干渉縞を形成することができるような構成であれば、上記のいずれかの部材が省略されていてもよいし、他の部材が含まれていてもよい。
【0042】
マスター回折格子100及びレプリカ回折格子200は、平面上に格子パターンが形成された平面回折格子に限らず、凹湾曲面上に格子パターンが形成された凹面回折格子であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 マスター回折格子の製造装置
2 レーザ光源
3 平面鏡
4 ビームスプリッタ
5 第1光源部
6 第2光源部
7 平面鏡
8 スペイシャルフィルタ
9 凹面鏡
10 平面鏡
11 反射部材
12 ホログラム再生用光源
13 媒体
81 集光レンズ
82 ピンホール
83 反射面
100 マスター回折格子
101 マスター基板
111 反射面
200 レプリカ回折格子
201 格子面
図1
図2
図3
図4
図5