(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジエン系ゴム成分が、ブタジエンゴムを40質量%以上含み、該ブタジエンゴム中に1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含有するブタジエンゴムを含む請求項2記載のタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のタイヤは、70℃かつ1%歪みにおける複素弾性率E
*(E
*(70℃))が6.0〜13.0MPaであり、70℃かつ1%歪みにおける損失正接tanδ(tanδ(70℃))が0.10以下であり、100℃かつ0.5%歪みにおけるtanδ(tanδ(100℃))が0.07以下であり、さらに式(1):tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000≦10.0を満たすクリンチエイペックス用ゴム組成物で構成されるクリンチエイペックスを備えることを特徴とする。この特徴により、同様の配合を用いるクリンチエイペックスを用いるタイヤと比較して従来と同等のクリンチエイペックスとしての機能は損なわず、高速走行時におけるビード部周辺の発熱を抑制し、高速耐久性能を向上することができる。具体的には、式(1)を満たすことにより、走行による温度の上昇速度を抑制し、tanδ(100℃)を0.07以下とすることにより、最終到達温度を従来よりも下げることができ、相乗的に高速耐久性能を向上させることができると考えられる。
【0012】
本開示のタイヤに用いるクリンチエイペックス用ゴム組成物の70℃における動的歪振幅1%での複素弾性率E
*(E
*(70℃)とも表わす。)は、6.0MPa以上であり、7.0以上が好ましく、8.0以上がより好ましい。E
*(70℃)が6.0MPa未満であると、操縦安定性が悪化する傾向がある。また、E
*(70℃)は、13.0MPa以下であり、12.0以下が好ましく、11.0以下がより好ましい。E
*(70℃)が13.0MPaを超えると、乗り心地性が悪化する傾向がある。なお、E
*(70℃)は、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0013】
本開示のタイヤに用いるクリンチエイペックス用ゴム組成物の70℃における動的歪振幅1%での損失正接tanδ(tanδ(70℃)とも表わす。)は、0.10以下であり、0.09以下が好ましく、0.08以下がより好ましく、0.07以下がより好ましい。tanδ(70℃)が0.10を超えると、発熱性が高くなり、転がり抵抗、高速耐久性が悪くなる傾向がある。また、tanδ(70℃)は、0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましい。tanδ(70℃)を0.04以上とすることにより、適度な減衰性が得られ、乗り心地性を悪化させにくい傾向がある。ここで、tanδ(70℃)は、本開示の効果をより良好に発揮できるという観点からは、0.03以上、または、0.05以下が好ましい。なお、tanδ(70℃)は、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0014】
本開示のタイヤに用いるクリンチエイペックス用ゴム組成物のE
*(70℃)とtanδ(70℃)との関係は、式(1):tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000≦10.0を満たすものであり、tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000は9.0以下が好ましく、8.0以下がより好ましい。tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000が10.0を超えると、転動における変形が大きくなり過ぎるため、タイヤの低燃費性能を十分に向上できない傾向や、走行による温度の上昇速度を十分に抑制できない傾向がある。また、tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000は、3.0以上が好ましく、4.3以上がより好ましく、4.5以上がより好ましい。tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000を3.0以上とすることにより、十分な乗り心地性を確保することができる傾向がある。ここで、式(1)は、本開示の効果をより良好に発揮できるという観点からは、2.0≦tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000≦10.0が好ましく、2.0≦tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000≦4.2がより好ましい。
【0015】
本開示のタイヤに用いるクリンチエイペックス用ゴム組成物の100℃における動的歪振幅0.5%での損失正接tanδ(tanδ(100℃)とも表わす。)は、0.07以下であり、0.06以下が好ましく、0.05以下がより好ましく、0.03以下がさらに好ましい。tanδ(100℃)が0.07を超えると、高速走行時におけるビード部周辺の発熱性を十分に抑制できず、高速耐久性能の十分な向上効果が得られない傾向がある。また、tanδ(100℃)の下限を特に設ける必要はないが、加工性の観点から0.02以上あることが好ましい。なお、tanδ(100℃)は、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0016】
本開示のタイヤに用いるクリンチエイペックス用ゴム組成物の70℃かつ1%歪みにおける複素弾性率E
*(E
*(70℃))が6.0〜13.0MPaであり、70℃かつ1%歪みにおける損失正接tanδ(tanδ(70℃))が0.10以下であり、100℃かつ0.5%歪みにおけるtanδ(tanδ(100℃))が0.07以下であり、式(1):tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000≦10.0を満たすものとすることは、例えば、変性ブタジエンゴムとシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するブタジエンゴムとを用い、その他の配合剤である、カーボンブラック、オイル、加硫剤などの量を調節することなどにより、当業者により過度の負担を強いることなく行われ得る。
【0017】
<クリンチエイペックス用ゴム組成物>
(ゴム成分)
ゴム成分は特に限定されるものではなく、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)などのジエン系ゴムを用いることができる。ゴム成分は、1種または2種以上を用いることができる。なかでも、本開示の効果をより良好に発揮できるという理由から、天然ゴムおよびブタジエンゴムからなるものであるか、またはブタジエンゴムを含むものであることが好ましい。
【0018】
NRとしては特に限定されるものではなく、通常ゴム工業で使用されるものを用いることができ、具体的には、RSS#3、TSR20などが挙げられる。
【0019】
NRのゴム成分中の含有量は、特に限定されるものではないが、本開示の十分な効果の観点から、20質量%以上が好ましく、24質量%以上がより好ましく、28質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、該含有量は、低燃費性の観点から、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0020】
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス1,4結合含有率が50%未満のBR(ローシスBR)、シス1,4結合含有率が90%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらのBRのなかでも、変性BRおよびSPB含有BRを併用すること、変性BRおよび希土類系BRを併用すること、変性BRを使用すること、あるいは、希土類系BRを使用することが好ましい。一実施態様においては、BRとしては、変性BRおよび希土類系BRのみ、変性BRおよびSPB含有BRのみ、変性BRのみ、あるいは、希土類系BRのみが好ましい。BRとしても、1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
SPB含有BRは、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものが挙げられる。このようなSPB含有BRとしては、宇部興産(株)製のVCR−303、VCR−412、VCR−617等が挙げられる。SPB含有BRを用いることにより、同じ複素弾性率E
*を得る場合でも架橋密度を小さくすることができ、破壊強度、耐久性、耐摩耗性、亀裂成長性などを向上させることができ、リム組時の破損を防止することができる。
【0022】
SPBの融点は180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましい。SPBの融点を180℃以上とすることにより、プレスにおけるタイヤの顆粒中に結晶が溶融することを防ぎ、硬度の低下を抑えることができる傾向がある。また、SPBの融点は、220℃以下が好ましく、210℃以下がより好ましい。SPBの融点を220℃以下とすることにより、SPBを含むBRの分子量が大きくなり過ぎてゴム組成物中において分散性が悪化するのを防ぐことができる傾向がある。
【0023】
SPB含有BR中において、SPBの含有量は、2.5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。SPBの含有量を2.5質量%以上とすることにより、ゴム組成物の十分な硬度が得られる傾向がある。また、SPB含有BR中において、SPBの含有量は、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましい。SPBの含有量を20質量%以下とすることにより、ゴム組成物中での良好な分散や良好な加工性を得ることができる傾向がある。ここで、SPB含有BR中におけるSPBの含有量とは、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量を示す。
【0024】
変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3−ブタジエンの重合を行なったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ−炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)や、ブタジエンゴムの活性末端に縮合アルコキシシラン化合物を有するブタジエンゴム(シリカ用変性BR)等が挙げられる。このような変性BRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1250H(スズ変性)、住友化学工業(株)製のS変性ポリマー(シリカ用変性)等が挙げられる。スズ変性BRを使用することにより、ポリマーのTg(ガラス転移温度)を低下することができ、またカーボンブラック等のフィラーとポリマーとの結合を強固にすることもできる。
【0025】
リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウム、アリルリチウム、ビニルリチウム、有機スズリチウム、有機窒素リチウム化合物などのリチウム系化合物が挙げられる。リチウム系化合物を開始剤とすることで、高ビニル、低シス含量のスズ変性BRを作製することができる。
【0026】
スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、トリフェニルスズクロライド、ジフェニルジブチルスズ、ジフェニルスズジオクタノエート、ジビニルジメチルスズ、テトラベンジルスズ、ジブチルスズジステアレート、テトラアリルスズ、p−トリブチルスズスチレンなどが挙げられ、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
スズ変性BRのスズ原子の含有量は、50ppm以上が好ましく、60ppm以上がより好ましい。スズ原子の含有量を50ppm以上とすることにより、スズ変性BR中のカーボンブラックの分散を促進する効果が発揮されやすく、tanδの増大を抑制し得る傾向がある。また、スズ原子の含有量は、3000ppm以下が好ましく、2500ppm以下がより好ましく、250ppm以下がさらに好ましい。スズ原子の含有量を3000ppm以下とすることにより、混練物のまとまりが良く、混練物の良好な押出し加工性が得られる傾向がある。
【0028】
希土類系BRとしては、希土類元素系触媒を用いて合成され、ビニル結合量(1,2結合ブタジエン単位量)が好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.8%以下であり、シス含量(シス1,4結合含有率)が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上のものを好適に用いることができる。ビニル結合量およびシス含量が上記範囲内であることにより、本開示の効果をより良好に発揮できるという効果が得られる。なお、希土類系BRのビニル結合量およびシス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される値である。
【0029】
希土類系BRの合成に使用される希土類元素系触媒としては、公知のものを使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒があげられる。なかでも、高シス含量、低ビニル結合量のBRが得られるという点から、ランタン系列希土類元素化合物が好ましく、このうち、ネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が好ましい。
【0030】
BRのゴム成分中の含有量は、特に限定されるものではないが、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、65質量%以上がさらに好ましい。BRのゴム成分中の含有量を40質量%以上とすることにより、十分な耐屈曲亀裂成長性が得られる傾向がある。また、BRのゴム成分中の含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。BRのゴム成分中の含有量を80質量%以下とすることにより、耐亀裂発生性が悪化しにくい傾向がある。
【0031】
さらに一実施態様においては、BR中にSPB含有BRを含むことが好ましく、SPB含有BRのゴム成分中の含有量は、特に限定されるものではないが、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が最も好ましい。ゴム成分中のSPB含有BRの含有量を10質量%以上とすることにより、十分な破壊特性が得られ、リム組時の破損を防止できる傾向がある。また、ゴム成分中のSPB含有BRの含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。ゴム成分中のSPB含有BRの含有量を50質量%以下とすることにより、未加硫ゴムの加工性の悪化を予防することができる傾向がある。ここで、ゴム成分中のSPB含有BRの含有量は、本開示の効果をより良好に発揮できるという観点からは、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
【0032】
さらに一実施態様においては、BR中にスズ変性BRを含むことが好ましく、スズ変性BRのゴム成分中の含有量は、特に限定されるものではないが、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。スズ変性BRの含有量を20質量%以上とすることにより、tanδ(70℃)およびtanδ(100℃)を低下させることができる傾向がある。また、スズ変性BRの含有量は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。スズ変性BRの含有量を50質量%以下とすることにより、良好な加工性が得られる傾向がある。ここで、ゴム成分中のスズ変性BRの含有量は、本開示の効果をより良好に発揮できるという観点からは、40質量%以上、または、65質量%以下が好ましい。
【0033】
さらに一実施態様においては、BR中に希土類系BRを含むことが好ましく、希土類系BRのゴム成分中の含有量は、特に限定されるものではないが、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。また、ゴム成分中の希土類系BRの含有量は、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。ゴム成分中の希土類系BRの含有が上記範囲内であることにより、本開示の効果をより良好に発揮できるという効果が得られる。
【0034】
ゴム成分が天然ゴムおよびブタジエンゴムからなるものである場合、ゴム成分中の天然ゴムおよびブタジエンゴムの含有量は、好ましくは天然ゴムが20〜60質量%、ブタジエンゴムが40〜80質量%であり、より好ましくは天然ゴムが20〜35質量%、ブタジエンゴムが65〜80質量%であり、さらに好ましくは天然ゴムが30〜35質量%、ブタジエンゴムが65〜70質量%である。
【0035】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなど、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0036】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、耐候性や補強性の観点から40m
2/g以上が好ましく、50m
2/g以上がより好ましく、60m
2/g以上がより好ましく、70m
2/g以上がさらに好ましい。また、カーボンブラックのN
2SAは、低燃費性、分散性、破壊特性および耐久性の観点から250m
2/g以下が好ましく、220m
2/g以下がより好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックのN
2SAは、JIS K 6217−2「ゴム用カーボンブラック基本特性−第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」のA法に準じて測定される値である。
【0037】
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、110ml/100g以上が好ましく、115ml/100g以上がより好ましく、120ml/100g以上がさらに好ましい。カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量を110ml/100g以上とすることにより、良好な操縦安定性が得られる傾向がある。また、該DBPは、170ml/100g以下が好ましく、160ml/100g以下がより好ましく、128ml/100g以下がより好ましい。カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量を170ml/100g以下とすることにより、良好な低発熱性が得られる傾向がある。なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K 6217−4:2001に準拠して測定される。
【0038】
カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は40質量部以上が好ましく、43質量部以上がより好ましく、45質量部以上がさらに好ましい。カーボンブラックの含有量を40質量部以上とすることにより、リムとの間の耐摩耗性を十分に確保することができる傾向がある。また、カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は55質量部以下が好ましく、53質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。カーボンブラックの含有量を55質量部以下とすることにより、十分な低発熱性が得られる傾向がある。
【0039】
さらに、カーボンブラックは、ゴム組成物を製造する際の配合物中の含有量が26.0質量%以上であることが好ましく、26.1質量%以上がより好ましく、28.0質量%以上がより好ましく、29.0質量%以上がさらに好ましい。カーボンブラックの配合物中の含有量を26.0質量%以上とすることにより、十分な通電性が得られ、タイヤの電気抵抗の悪化を抑制する傾向がある。また、カーボンブラックの配合物中の含有量は32.0質量%以下が好ましく、31.7質量%以下がより好ましく、31.5質量%以下がより好ましく、31.4質量%以下がより好ましく、31.0質量%以下がより好ましく、29.7質量%以下がさらに好ましい。カーボンブラックの配合物中の含有量を32.0質量%以下とすることにより、十分な発熱性が得られる傾向がある。
【0040】
本開示のタイヤに用いるクリンチエイペックス用ゴム組成物には、前記成分以外にも、従来ゴム工業で一般に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック以外の補強用充填剤、シランカップリング剤、オイル、粘着付与樹脂、ワックス、加工助剤、各種老化防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、硫黄などの加硫剤、各種加硫促進剤などを適宜含有することができる。
【0041】
(カーボンブラック以外の補強用充填剤)
カーボンブラック以外の補強用充填剤としては、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルクなど、従来からクリンチエイペックス用ゴム組成物において用いられているものを配合することができる。
【0042】
シリカ
一の実施態様では、シリカが使用される。シリカを配合することにより、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能を向上できる。シリカとしては、特に限定されるものではなく、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)など、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。シリカは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、20m
2/g以上が好ましく、30m
2/g以上がより好ましく、100m
2/g以上がさらに好ましい。また、N
2SAは、400m
2/g以下が好ましく、300m
2/g以下がより好ましく、280m
2/g以下がさらに好ましい。上記範囲内であれば、低燃費性および加工性がよりバランス良く得られる傾向がある。なお、本明細書におけるシリカのN
2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0044】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましい。シリカの含有量を20質量部以上とすることにより、耐摩耗性能の向上効果が十分に得られる傾向がある。シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。シリカの含有量が50質量部を超えると、シリカのゴムへの分散性の悪化により、低燃費性能および耐摩耗性能が低下する傾向がある。
【0045】
(シランカップリング剤)
シリカを含有する場合は、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、Momentive社製のNXT−Z100、NXT−Z45、NXTなどのメルカプト系(メルカプト基を有するシランカップリング剤)、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
シランカップリング剤を含有する場合のシリカ100質量部に対する含有量は、3質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が3質量部未満の場合は、シリカ分散性の改善効果が十分に得られない傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、15質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が15質量部を超える場合は、コストに見合った効果が得られない傾向がある。
【0047】
(オイル)
オイルとしては、例えば、アロマチックオイル、プロセスオイル、パラフィンオイル等の鉱物油等が挙げられる。なかでも、環境への負荷低減という理由からプロセスオイルを使用することが好ましく、多環式芳香族化合物(polycyclic aromatic compound:PCA)の含量の低いプロセスオイル(低PCA含量プロセスオイル)がより好ましい。
【0048】
低PCA含量プロセスオイルとしては、芳香族系プロセスオイルを再抽出したTreated Distillate Aromatic Extract(TDAE)、アスファルトとナフテン油の混合油であるアロマ代替オイル、軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvates:MES)、重ナフテン系オイルなどが挙げられ、TDAEがより好ましい。
【0049】
オイルを含有させる場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、破断伸びの向上、加工性などの観点から2質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また、オイルを含有させる場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、粘着性が低くなりすぎて加工性や生産性が低下する可能性があるなどの観点から30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。一実施態様においては、該含有量は、7質量部以下が好ましい。
【0050】
(粘着付与樹脂)
粘着付与樹脂としては、シクロペンタジエン系樹脂、クマロン樹脂、石油系樹脂(C5系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂等)、フェノール系樹脂、ロジン誘導体等が挙げられる。C5系石油樹脂は、C5(炭素数5)系石油系炭化水素を重合して得られる樹脂、言い換えると、C5系石油炭化水素に基づく構成単位を有する樹脂である。C5系石油炭化水素とは、ナフサの熱分解により得られるC5留分(炭素数5の留分)のことをいい、具体的には、イソプレン、1,3−ペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ピペリレンなどのジオレフィン類や2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、シクロペンテンなどのものオレフィン類が挙げられる。
【0051】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩などの老化防止剤を適宜選択して配合することができ、これらの老化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでもアミン系老化防止剤やキノリン系老化防止剤が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−4−メチル−2−ペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアリール−p−フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミンなどのp−フェニレンジアミン系がより好ましく、なかでもN−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンおよび2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を併用することが特に好ましい。
【0052】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、特に限定されるものではないが、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましい。また、老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。老化防止剤の含有量が上記範囲内である場合、充填剤が良好に分散されやすく、得られるゴム組成物は混練されやすい。
【0053】
その他、ワックス、加工助剤、酸化亜鉛、ステアリン酸は、従来ゴム工業で使用されるものを用いることができる。
【0054】
(加硫剤)
加硫剤は特に限定されるものではなく、ゴム工業において一般的なものを使用することができるが、硫黄原子を含むものが好ましく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などが挙げられる。
【0055】
加硫剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、加硫剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、5.0質量部以下であり、4.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましい。
【0056】
(加硫促進剤)
加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系もしくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤が挙げられ、なかでも、所望の効果がより好適に得られる点から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0057】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどが挙げられる。チアゾール系加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾリルジスルフィドなどが挙げられる。チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)などが挙げられる。グアニジン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、所望の効果がより好適に得られる点から、CBSが特に好ましい。
【0058】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、6質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、4質量部以下がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
【0059】
(クリンチエイペックス用ゴム組成物の製造方法)
クリンチエイペックス用ゴム組成物の製造方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、密閉式混練機等のゴム混練装置を用いて上記各成分のうち、加硫剤および加硫促進剤以外の成分を混練し(ベース練り工程)、その後加硫剤および加硫促進剤を加えてさらに混練りして(仕上げ練り工程)未加硫のクリンチエイペックス用ゴム組成物を得、その後加硫する方法等により製造することができる。
【0060】
混練条件としては特に限定されるものではないが、クリンチエイペックス用ゴム組成物の場合、ベース練り工程では、排出温度160〜180℃で3〜7分間混練りし、仕上げ練り工程では、90〜120℃になるまで2〜6分間混練することが好ましい。加硫条件としては、特に限定されるものではないが、通常未加硫状態でクリンチエイペックスに成型し、その他の部材と共に未加硫タイヤを製造し加硫するものであるから、タイヤの加硫条件とすることが好ましく、160〜180℃で8〜16分間加硫することが好ましい。
【0061】
<タイヤ>
本開示のタイヤは、上述の通り、70℃かつ1%歪みにおける複素弾性率E
*(E
*(70℃))が6.0〜13.0MPaであり、70℃かつ1%歪みにおける損失正接tanδ(tanδ(70℃))が0.10以下であり、100℃かつ0.5%歪みにおけるtanδ(tanδ(100℃))が0.07以下であり、以下の式(1):tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000≦10.0を満たすクリンチエイペックス用ゴム組成物で構成されるクリンチエイペックスを備えるものであり、空気入りタイヤが好ましい。空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤ、乗用車用高性能タイヤ、トラックやバス等の重荷重用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等タイヤ全般に用いることができる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
【0062】
<タイヤの製造方法>
本開示のタイヤは、上述のクリンチエイペックス用ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、加硫ゴム組成物とした場合に、70℃かつ1%歪みにおける複素弾性率E
*(E
*(70℃))が6.0〜13.0MPaであり、70℃かつ1%歪みにおける損失正接tanδ(tanδ(70℃))が0.10以下であり、100℃かつ0.5%歪みにおけるtanδ(tanδ(100℃))が0.07以下であり、以下の式(1):tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000≦10.0を満たすことを確認した未加硫のゴム組成物を、クリンチエイペックスの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。
【0063】
本開示の好ましい実施形態としては、以下が挙げられる。
[1]70℃かつ1%歪みにおける複素弾性率E
*(E
*(70℃))が6.0〜13.0MPa、好ましくは6.0〜12.0MPaであり、70℃かつ1%歪みにおける損失正接tanδ(tanδ(70℃))が0.10以下、好ましくは0.03〜0.08、より好ましくは0.03〜0.07、さらに好ましくは0.03〜0.05であり、100℃かつ0.5%歪みにおけるtanδ(tanδ(100℃))が0.07以下、好ましくは0.02〜0.07、より好ましくは0.02〜0.05、さらに好ましくは0.02〜0.03であり、以下の式(1)を満たすクリンチエイペックス用ゴム組成物で構成されるクリンチエイペックスを備えるタイヤ、
式(1) tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000≦10.0(好ましくは2.0≦tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000≦10.0、より好ましくは2.0≦tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000≦4.2)、
[2]クリンチエイペックス用ゴム組成物が、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、DBP吸油量が110ml/100g以上、好ましくは115〜128ml/100gであるカーボンブラックを40〜55質量部、好ましくは43〜55質量部、より好ましくは43〜50質量部含有し、かつカーボンブラックを配合物中に26.0〜32.0質量%、好ましくは26.1〜31.7質量%、より好ましくは26.1〜31.4質量%、さらに好ましくは26.1〜29.7質量%含むゴム組成物である上記[1]記載のタイヤ、
[3]ジエン系ゴム成分が、ブタジエンゴムを40質量%以上、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは65〜70質量%含み、該ブタジエンゴム中に1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含有するブタジエンゴムを含有する上記[2]記載のタイヤ、
[4]ジエン系ゴム成分が、ブタジエンゴムを40質量%以上、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは65〜70質量%含み、該ブタジエンゴム中にスズ変性ブタジエンゴムを含有する上記[2]記載のタイヤ、
[5]ジエン系ゴム成分が、ブタジエンゴムを40質量%以上、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは65〜70質量%含み、該ブタジエンゴム中に希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴムを含有する上記[2]記載のタイヤ、
[6]ジエン系ゴム成分が、ブタジエンゴムを40質量%以上、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは65〜70質量%含み、該ブタジエンゴム中にスズ変性ブタジエンゴムおよび1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含有するブタジエンゴムを含有する上記[2]記載のタイヤ、
[7]ジエン系ゴム成分が、ブタジエンゴムを40質量%以上、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは65〜70質量%含み、該ブタジエンゴム中にスズ変性ブタジエンゴムおよび希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴムを含有する上記[2]記載のタイヤ、
[8]ジエン系ゴム成分中の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含有するブタジエンゴムの含有量が10〜50質量%、好ましくは20〜35質量%、より好ましくは20〜30質量%、さらに好ましくは20〜25質量%である上記[3]記載のタイヤ、
[9]ジエン系ゴム成分中のスズ変性ブタジエンゴムの含有量が20〜65質量%、好ましくは30〜65質量%、より好ましくは35〜65質量%、さらに好ましくは40〜65質量%である上記[4]記載のタイヤ、
[10]ジエン系ゴム成分中の希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴムの含有量が10〜75質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは25〜65質量%、さらに好ましくは35〜65質量%である上記[5]記載のタイヤ、
[11]ジエン系ゴム成分中のスズ変性ブタジエンゴムの含有量が20〜45質量%、好ましくは30〜45質量%、より好ましくは35〜45質量%、さらに好ましくは40〜45質量%であり、ジエン系ゴム成分中の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含有するブタジエンゴムの含有量が20〜35質量%、好ましくは20〜30質量%、より好ましくは20〜25質量%である上記[6]記載のタイヤ、
[12]ジエン系ゴム成分中のスズ変性ブタジエンゴムの含有量が20〜60質量%、好ましくは30〜45質量%であり、ジエン系ゴム成分中の希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴムの含有量が20〜60質量%、好ましくは35〜50質量%である上記[7]記載のタイヤ、
[13]クリンチエイペックス用ゴム組成物が、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、オイルを2〜30質量部、好ましくは2〜15質量部、より好ましくは2〜7質量部含むゴム組成物である上記[1]〜[12]のいずれかに記載のタイヤ。
【実施例】
【0064】
以下、本開示を実施例に基づいて説明するが、本開示はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0065】
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
・NR:TSR20
・BR1:宇部興産(株)製のBR150B(ビニル結合量:1.5%、シス1,4結合含有率:97%)
・BR2:日本ゼオン(株)製のBR1250H(スズ変性BR、開始剤としてリチウムを用いて重合、ビニル結合量:10〜13%、シス1,4結合含有率:40%、Mw/Mn:1.5、スズ原子の含有量:250ppm)
・BR3:宇部興産(株)製のVCR617(シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶分散体、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点:200℃、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量:15〜18質量%、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量:17質量%、シス1,4結合含有率:92%)
・BR4:JSR(株)製のBR730(Nd系触媒を用いて合成したBR、シス1,4結合含有率:95%、ビニル結合量:0.8%)
・BR5:ランクセス社製のCB25(Nd系触媒を用いて合成したBR、シス1,4結合含有率:97%、ビニル結合量:0.7%)
・カーボンブラック1:三菱ケミカル(株)製のダイアブラック(登録商標)SH(ASTM No.N347、N
2SA:78m
2/g、DBP:128ml/100g)
・カーボンブラック2:三菱ケミカル(株)製のダイアブラック(登録商標)E(FEF、N550、N
2SA:41m
2/g、DBP:115ml/100g)
・カーボンブラック3:三菱ケミカル(株)製のダイアブラック(登録商標)G(N660、N
2SA:28m
2/g、DBP:84ml/100g)
・オイル:H&R(株)製のVivaTec400(TDAEオイル、Tg:−58℃)
・ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355(パラフィン系)
・老化防止剤1:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
・老化防止剤2:住友化学(株)製のアンチゲンRD(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
・ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
・硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミOT(10%オイル含有不溶性硫黄)
・加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS))
・加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS))
【0066】
実施例1〜20および比較例1〜8
表1〜3に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度170℃になるまで5分間混練りし、混練物を得た。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間プレス加硫することで、試験用ゴム組成物を作製し、以下の方法により、損失正接tanδおよび複素弾性率E
*を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0067】
<損失正接tanδおよび複素弾性率E
*の測定>
(株)上島製作所製のスペクトロメーターを用いて、各試験用加硫ゴムシートの動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度70℃の条件下でtanδおよびE
*を測定した。また、温度100℃、動的歪振幅0.5%、周波数10Hzでのtanδを測定した。
【0068】
また、前記未加硫ゴム組成物を所定の形状の口金を備えた押し出し機でタイヤクリンチエイペックスの形状に押し出し成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、タイヤ(サイズ:205/65R15、スタッドレスタイヤ)を製造した。
【0069】
各実施例および比較例により得られたタイヤについて、以下の評価を行なった。その結果を表1〜3に示す。
【0070】
<操縦安定性、乗り心地性>
タイヤ(205/65R15)を車両(3000cc)の全輪に装着させ、一般的な走行条件のテストコースにて実車走行を行なった。操舵時のコントロールの安定性(操縦安定性)および乗り心地性をテストドライバーが官能評価し、比較例1を100として指数表示した。操縦安定性指数が大きいほど操縦安定性が優れることを示し、乗り心地性指数が大きいほど乗り心地性能が優れることを示す。操縦安定性指数は105以上を目標値とし、乗り心地性指数は102以上を目標値とする。
【0071】
<転がり抵抗(低燃費性指数)>
転がり抵抗試験機を用い、タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、その逆数を比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れる。低燃費指数は107以上を目標値とし、より好ましくは110以上を目標値とする。
【0072】
<H/S性能>
タイヤを正規リム15×6JJに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を230kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機にネガティブキャンバー角を付して装着した。このキャンバー角は−3°であった。このタイヤに3.74kNの縦荷重を負荷した。このタイヤを、270km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行時間を測定した。タイヤの破壊は、いずれもビード部の損傷によるものだった。この走行時間の数値について比較例1の結果を100として指数表示した。この数値は大きいほどH/S性能が優れていることを示し、107以上を目標値とし、より好ましくは110以上を目標値とする。なお、このH/S性能は、ハイスピード性能を意味する。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
表1〜3の結果より、70℃かつ1%歪みにおける複素弾性率E
*(E
*(70℃))が6.0〜13.0MPaであり、70℃かつ1%歪みにおける損失正接tanδ(tanδ(70℃))が0.10以下であり、100℃かつ0.5%歪みにおけるtanδ(tanδ(100℃))が0.07以下であり、式(1):tanδ(70℃)/E
*(70℃)×1000≦10.0を満たすクリンチエイペックス用ゴム組成物で構成されるクリンチエイペックスを備えることにより、得られるタイヤは、操縦安定性や乗り心地といったクリンチエイペックスとしての機能は維持しながら、低発熱性および高速耐久性能を向上できることがわかる。