(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6849319
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】熱処理ユニットのための較正方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/324 20060101AFI20210315BHJP
H01L 21/26 20060101ALI20210315BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
H01L21/324 T
H01L21/26 T
H01L21/316 S
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-96518(P2016-96518)
(22)【出願日】2016年5月12日
(65)【公開番号】特開2017-34229(P2017-34229A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2019年4月23日
(31)【優先権主張番号】1554322
(32)【優先日】2015年5月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507088071
【氏名又は名称】ソイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セバスチアン モーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ マッセリン
【審査官】
佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−207256(JP,A)
【文献】
特表2010−515254(JP,A)
【文献】
特表2012−510180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/324
H01L 21/26
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L個の基板位置(5)を有する熱処理ユニット(1)のN個の加熱ゾーン(2)の各々の公称温度設定点に適用される温度設定点補正値を決定するための較正方法であって、前記熱処理ユニット(1)および前記公称温度設定点は、基板目標特徴を確立することを目的とする方法を定め、前記方法は、以下のステップ、すなわち、
・前記L個の基板位置(5)のうちのM個の代表位置の各々における前記基板目標特徴の変化を前記N個の加熱ゾーン(2)の各々において適用された温度設定点変化に結び付ける感度モデルを確立するステップであって、前記変化は、それぞれ、前記基板目標特徴に関する差および前記公称温度設定点に関する差を反映する、該ステップと、
・前記熱処理ユニット(1)において、前記公称温度設定点に基づいて、プロセスを実行するステップと、
・M個の測定値を供給するために、前記ユニット(1)の各加熱ゾーン(2)の少なくとも代表測定位置において、前記基板目標特徴を測定するステップと、
・前記感度モデル、前記測定値、および前記基板目標特徴から、前記温度設定点補正値を決定するステップであって、前記感度モデルは、前記各加熱ゾーン(2)に適用された前記温度設定点変化に対する前記L個の基板位置(5)の測定位置に位置付けされた前記基板目標特徴の前記変化として表され、これによって、前記基板目標特徴を前記L個すべての基板位置(5)において獲得する、該ステップと
を含むことを特徴とする較正方法。
【請求項2】
前記温度設定点補正値は、前記感度モデルに適用されて、前記測定値と前記基板目標特徴との間の差の補償をもたらす、前記温度設定点変化として定められることを特徴とする請求項1に記載の較正方法。
【請求項3】
前記温度設定点補正値を決定する前記ステップは、前記測定値と前記基板目標特徴との間の前記差が特定の閾値を上回った場合に実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の較正方法。
【請求項4】
前記感度モデルは、他の加熱ゾーン(2)をそれらの前記公称温度設定点に維持したまま、各加熱ゾーン(2)において別々に連続して同じ温度設定点変化を適用することによって確立されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の較正方法。
【請求項5】
前記感度モデルは、以下によって決定される感度行列S
ijを含み、すなわち、
・
【数1】
ここで、1≦i≦N、1≦j≦Mであり、
・
【数2】
は、
i個の加熱ゾーン(2)に適用された温度設定点変化ΔT
iに対する前記熱処理ユニット(1)の測定位置jに位置付けられた前記基板目標特徴Xの前記変化である
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の較正方法。
【請求項6】
前記感度モデルは、以下の式に従って、正規化された感度行列に基づいて定義されるゲイン行列G
ijを含み、すなわち、
・
【数3】
であり、
・前記正規化行列は、
【数4】
であり、ここで、
・
【数5】
は、前記N個の加熱ゾーン(2)に適用された温度設定点変化ΔT
Nに対する前記熱処理ユニット(1)の測定位置jに位置付けられた前記基板目標特徴Xの前記変化である
ことを特徴とする請求項5に記載の較正方法。
【請求項7】
標準化行列は、
【数6】
であり、ここで、
【数7】
は、前記熱処理ユニット(1)の前記測定位置jのすべてにわたる項S
jの平均であることを特徴とする請求項6に記載の較正方法。
【請求項8】
前記温度設定点補正値を決定することは、以下の式に従って、残差r
jを最小化することを含み、すなわち、
〇
【数8】
であり、ここで、
〇 (T
corr)
iは、
i個の加熱ゾーン(2)において適用される前記温度設定点補正値であり、
〇 ΔX
jは、前記熱処理ユニット(1)の測定位置jにおける前記測定値と前記基板目標特徴との間の前記差である
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の較正方法。
【請求項9】
前記温度設定点補正値を決定することは、前記熱処理ユニット(1)の各測定位置jについての前記残差rjの平方和として定義される全体的残差Rを最小化することを含むことを特徴とする請求項8に記載の較正方法。
【請求項10】
前記基板目標特徴の前記測定された値は、前記基板上の測定点、または前記基板上の測定点の平均であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の較正方法。
【請求項11】
前記基板目標特徴は、前記プロセス中に前記基板上に生成される酸化物の厚さであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の較正方法。
【請求項12】
前記基板目標特徴は、前記プロセス中に溶解されるSOI基板の埋め込み酸化物の厚さであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の較正方法。
【請求項13】
前記基板目標特徴は、前記プロセス後に残るSOI基板の埋め込み酸化物の厚さであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の較正方法。
【請求項14】
前記基板目標特徴は、前記プロセス後に獲得される前記基板の表面粗さであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の較正方法。
【請求項15】
前記温度設定点補正値は、前記プロセスを開始するときに、前記熱処理ユニット(1)の制御インターフェースに自動的に送信されることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1つに記載の較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクスおよびマイクロテクノロジの分野に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、熱処理プロセスに関し、特に、シリコンウエハまたはSOI(シリコンオンインシュレータ)ウエハに適用される熱処理に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な(例えば、酸化シリコンの)層の製造または基板の表面処理を可能にするマイクロエレクトロニクス熱処理方法は、ますます厳格になる均一性パラメータに対処する。
【0004】
事実、マイクロエレクトロニクスの進化は、集積密度および回路の速さの両方を改善することを目的として、構成要素の特徴寸法を減少させることを含意し、これと並行して、シリコンウエハおよび/またはSOIウエハの直径は、ウエハ当たりより一層多くのダイを製作することを目的として、200mmだったものが300mmに、さらには450mmにさえも増大している。したがって、必要なのは、より一層広い面積上により一層コントロールされて均一な厚さのより一層薄い層を獲得することである。
【0005】
したがって、熱処理方法は、ユニットのリアクタ内で起こる反応の不均一性に対する対応を迫られる。均一性のこの欠如は、以下のような数々の原因を有することができる。
【0006】
・例えば、加熱ゾーンの不均一なパワー、温度センサの本質的な精度、リアクタの形状、変動する気体フローなどに結び付けられる、機器の本質的な不均一性。
【0007】
・希釈効果(すなわち、試薬の窮乏化)、または抑制効果(すなわち、反応残留物の増加する濃度)を通した、リアクタ内で予想される反応速度の変化。
【0008】
マイクロエレクトロニクス産業において通常利用される熱処理ユニットは、大量の基板(一般に最大で200基板)を含むことが可能な大きいサイズのリアクタから成る。それらの寸法のため、この種類のユニットは、リアクタに沿って規則的に配置された複数の加熱要素を含み、それらの要素は、複数の加熱ゾーンを定める。
【0009】
熱処理ユニットの加熱ゾーンの各々に適用される温度設定点は、目標基板特徴を確立することを目的としたプロセスを定める。この目標基板特徴は、特定の(例えば、酸化物の)層の厚さ、または特定の閾値を下回る表面粗さ値である。
【0010】
基板特徴に関して最も要求が厳しい方法の場合、方法の初期最適化中に、または特徴においてドリフトが観測された場合には方法の2つの実施の間に、加熱ゾーンの各々において設定点補正を適用するのが普通である。この補正ステップは、一般に、「較正」と呼ばれる。
【0011】
一般に使用される1つの較正方法は、温度と問題の基板特徴とを全体的に結び付ける経験的関係に基づいている。したがって、基板特徴が、熱処理中に生じる酸化物の厚さである場合、与えられた方法について、公称温度に関する特定の温度差ΔTが酸化物厚さの差ΔXを生じさせることが、経験的に確立される。プロセスの実行後に、基板特徴におけるドリフトが観測された場合、そのドリフトを補償するために、作業員が、この全体的関係に基づいて、すべての加熱ゾーンの温度設定点に対して近似的補正を適用する。この純粋に人的な方法は、ユニットの較正を担当する作業員による評価に依存し、炉の異なる位置において処理されたウエハ上で測定されたΔXに応じて、適用される補正値ΔTは、作業員の経験に応じて変化させることができる。今では、いくつかの要求が厳しいマイクロエレクトロニクスプロセスは、獲得された結果に関して、近似のレベルを許容することができず、その理由は、これによって、作業工程の歩留まりが大きく影響されるからである。
【0012】
さらに、このプロセスは、完全には機能しない。事実、それは、加熱ゾーンが互いに独立していないという事実を考慮していない。第1の加熱ゾーンに対するΔT
1の適用は、ユニットの1または複数の加熱ゾーンiに影響することができる。設定点補正が大きいほど、作業員に予想される温度設定点補正後の結果に対して著しい差を生じさせることによって、加熱ゾーンの相互影響は、最終結果により大きく干渉する。
【0013】
本発明は、上で説明された先行技術の様々な難点を是正することを目的とする。
【0014】
本発明の1つの目的は、特に、熱処理ユニットにおいて利用されるプロセスを較正する信頼性の高い方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、それをより工業的で大量製造要求に適合したものにするために、自動較正方法を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2014/072109号パンフレット
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】O.Kononchuck他、「Novel trends in SOI Technology for CMOS applications」、journal Solid State Phenomena、156ないし158巻(2010)、69から76ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、熱処理ユニットのための改善された較正方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明では、L個の基板位置を有する熱処理ユニットのN個の加熱ゾーンの各々の公称温度設定点に適用される温度設定点補正値を決定するための較正方法に関し、熱処理ユニットおよび公称設定点は、基板目標特徴を確立することを目的とする方法を定め、方法は、以下のステップ、すなわち、
・L個の位置のうちのM個の代表位置の各々における基板特徴の変化をN個の加熱ゾーンの各々において適用された温度設定点変化に結び付ける感度モデルを確立するステップであって、変化は、それぞれ、目標特徴に関する差および公称設定点に関する差を反映する、ステップと、
・熱処理ユニットにおいて、公称設定点に基づいて、プロセスを実行するステップと、
・M個の測定値を供給するために、ユニットの各加熱ゾーンの少なくとも代表測定位置において、基板特徴を測定するステップと、
・感度モデル、測定値、および目標基板特徴から温度設定点補正値を決定するステップと
を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の有利な特徴によれば、別々に、または組み合わせて、
−決定ステップは、温度設定点補正値によって補正された公称設定点に基づいて、熱処理ユニットにおいてプロセスを実行するステップが後続し、
−設定点補正値は、モデルに適用されて、測定値と目標特徴との間の差の補償をもたらす、設定点変化として定められ、
−設定点補正値を決定するステップは、測定値と目標特徴との間の差が特定の閾値を上回った場合に実行され、
−感度モデルは、他の加熱ゾーンをそれらの公称設定点に維持したまま、各加熱ゾーンにおいて別々に連続して同じ温度設定点変化を適用することによって確立され、
−感度モデルは、以下によって決定される感度行列S
ijを含み、すなわち、
・
【0021】
【数1】
【0022】
ここで、1≦i≦N、1≦j≦Mであり、
・
【0023】
【数2】
【0024】
は、加熱ゾーンiに適用された温度変化ΔT
iに対する熱処理ユニットの測定位置jに位置付けられた基板特徴Xの変化であり、
−感度モデルは、以下の式に従って、正規化された感度行列に基づいて定義されるゲイン行列G
ijを含み、すなわち、
・
【0025】
【数3】
【0026】
であり、
・正規化行列は、
【0027】
【数4】
【0028】
であり、ここで、
・
【0029】
【数5】
【0030】
は、N個の加熱ゾーンに適用された温度変化ΔT
Nに対する熱処理ユニットの測定位置jに位置付けられた基板特徴Xの変化であり、
−標準化行列は、
【0031】
【数6】
【0032】
であり、ここで、
【0033】
【数7】
【0034】
は、熱処理ユニットの測定位置jのすべてにわたる項S
jの平均であり、
−設定点補正値を決定することは、以下の式に従って、残差r
jを最小化することを含み、すなわち、
〇
【0035】
【数8】
【0036】
であり、ここで、
〇(T
corr)
iは、加熱ゾーンiにおいて適用される温度設定点補正値であり、
〇 ΔX
jは、熱処理ユニットの測定位置jにおける測定値と目標特徴との間の差であり、
−設定点補正値を決定することは、熱処理ユニットの各測定位置jについての残差r
jの平方和として定義される全体的残差Rを最小化することを含み、
−設定点補正値は、プロセスを開始するときに、熱処理ユニットの制御インターフェースに自動的に送信される。
【0037】
したがって、本発明による較正方法は、熱処理プロセスにおけるドリフトの場合に適用される設定点補正値の自動決定を、ユニットおよび関連するプロセスのためにあらかじめ確立された感度モデルに基づいて可能にする。
【0038】
この方法は、人による評価に依存せず、熱処理ユニットの様々な加熱ゾーンの相互影響を考慮する。
【0039】
この較正方法は、大量製造環境における複数の熱処理ユニットを備える設置された機器ベースの工業的制御および管理と適合する。
【0040】
本発明の他の有利な特徴によれば、別々に、または組み合わせて、
−基板特徴の測定された値は、基板上の測定点、または基板上の測定点の平均であり、
−基板特徴は、プロセス中に基板上に生じる酸化物の厚さであり、
−基板特徴は、プロセス中に溶解されるSOI基板の埋め込み酸化物の厚さであり、
−基板特徴は、プロセス後に残るSOI基板の埋め込み酸化物の厚さであり、
−基板特徴は、プロセス後に獲得される基板の表面粗さである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明は、以下の説明を読み、それに付属する図を検討した後に、より良く理解される。これらの図は、もっぱら本発明の非限定的な説明として提供される。
【
図1】複数の加熱ゾーンおよび複数の基板位置を含む熱処理ユニットを示す図である。
【
図2】(a)〜(e)は、熱処理ユニットにおける与えられたプロセスのために定められた、各加熱ゾーンiに別々に連続して適用された温度設定点変化に対する、各測定位置jにおいて確立されたゲインを表すグラフであり、(a)はi=1、(b)はi=2、(c)はi=3、(d)はi=4、(e)はi=5である。
【
図3】熱処理ユニットにおける与えられたプロセスの後に、M個の位置から獲得された基板特徴Xについての測定プロファイル(「較正前」と呼ばれる)と、プロセスへの本発明による較正方法の適用後に、M個の位置から獲得された同じ基板特徴Xについての測定プロファイル(「較正後」)とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
熱処理ユニット1は、通常、大きなサイズのリアクタ3から成り、その中で、ローディング支持4は、処理される多数の基板を受け入れることが可能であり、今後、本明細書では、基板位置5の数はLであると見なされる。水平炉または垂直炉では、Lは、通常、50から200の範囲にわたることができる。
【0043】
リアクタ3のサイズは、温度設定点をより正確に調整し、リアクタ3の全長にわたって、すなわち、L個すべての基板位置5について、より均一な温度プロファイルを獲得することを可能にするために、それに沿って複数の加熱ゾーン2を有することも課す。今後、本明細書では、炉3のリアクタのレベルにおける加熱ゾーン2の数はNであると見なされる。Nは、通常、3から6まで変化する。
【0044】
どの熱処理プロセスも、基板目標特徴を確立することを目的とする。例えば、与えられたプロセスは、シリコン基板上における200nmの酸化物の形成を目標とする。ここで、基板目標特徴は、200nmの酸化物厚さである。
【0045】
プロセスは、そのプロセスに関する炉の設定において定められ、記憶された、温度、気体フロー、および時間パラメータによっても特徴付けられる。例えば、与えられたプロセスは、アルゴン中性雰囲気において5°/分のレートで温度を上げ下げすること、および湿潤な酸化雰囲気において30分にわたって温度を950℃に保つことを含む、950℃における酸化プロセスである。プロセスが確立された場合、L個すべての基板位置において基板目標特徴を獲得することを可能にする、公称パラメータが定められる。これらの公称パラメータは、特に、N個の加熱ゾーンの各々についての公称温度設定点を含む。
【0046】
いずれのプロセスに関しても、それを超えると、プロセスによって生成される基板特徴が、もはや必要とされるようなものではなく、設定の新しい較正を必要とする、閾値または限界を定めるのが普通である。これらの限界は、通常、制御限界と呼ばれ、それらは、熱処理ユニットの自然なドリフトまたは異常なドリフトと直面した場合に、迅速に反応することを可能にする。
【0047】
熱処理プロセスが実施された後、基板特徴を測定するステップが、プロセスの性能を確立するために達成され、このステップは、特徴がまだ目標に的中していること、すなわち、プロセスのために定められた制御限界内にあることを検証することを可能にする。測定ステップは、リアクタの長さに沿って分布するL個の位置から得られたすべての処理された基板に対して実施される。このステップの継続時間を制限するために、測定は、より限られた数M個の処理された基板に対して有利に実施される。M個の測定位置は、獲得された測定プロファイルが、リアクタの全長にわたる基板特徴に関してプロセスの性能を代表するように選択される。測定されるM個の基板は、N個の加熱ゾーンを代表する炉の位置からも有利に取得される。M個の位置は、一般に、リアクタの全長にわたって規則的に分布する。
【0048】
プロセスを実施した後、基板特徴におけるドリフトが観測された場合、ドリフトを補償し、目標特徴に戻るように、プロセスが再び起動される前に、ユニットに入力される温度設定点補正値を決定することが必要である。
【0049】
本発明による較正方法は、L個の基板位置を有する熱処理ユニットのN個の加熱ゾーンの各々の公称設定点に適用される温度設定点補正値を決定することを可能にする。
【0050】
この方法の第1のステップは、M個の測定位置の各々について、基板特徴の変化をN個の加熱ゾーンにおいて個別に適用された温度設定点変化に結び付ける、与えられたプロセスのための感度モデルを確立することに本質が存する。
【0051】
基板目標特徴を生み出すプロセスは、初期的には、N個の加熱ゾーンの各々における温度設定点を含む公称パラメータによって定められる。温度設定点変化ΔTは、第1の加熱ゾーンにおいて適用され、他の加熱ゾーンは、それぞれの公称設定点を維持する。このプロセスは、リアクタのL個の位置の間に、または少なくともM個の測定位置の間に分配される基板に適用される。これらの基板は、通常、感度モデルを確立するためのテスト基板を構成する。その後、基板特徴が、処理された基板上で測定される。測定は、N個の加熱ゾーンを代表する炉の位置から取得されたM個の基板において有利に達成され、Mは、L以下である。選択されたM個の測定位置は、リアクタの全長も代表し、すなわち、リアクタのL個の位置も代表する。例えば、25個の測定位置は、150個の位置を含むリアクタの全長にわたって一様に分布するように選択される。
【0052】
基板特徴XのM個の測定値を、公称パラメータを用いて獲得された目標特徴と比較することは、他の加熱ゾーンをそれらの公称設定点に維持したまま、第1の加熱ゾーンにおける温度設定点変化ΔTに対して測定されたM個の位置の各々における特徴の変化ΔXを計算することを可能にする。
【0053】
炉のM個の位置における基板特徴Xの変化を第1の加熱ゾーンにおいて個別に適用された温度設定点変化に結び付ける変化データのこの第1のシリーズは、感度モデルを供給することを可能にする。
【0054】
その後、データの第2のシリーズが、今度は、すべての他のゾーンをそれぞれの公称設定点に維持したまま、第2の加熱ゾーンにおいて温度設定点変化を適用して、プロセスおよびその後の測定を繰り返すことによって生み出される。各加熱ゾーンiに対しても、同じことが行われ、iは、両端を含む1とNとの間にある。
【0055】
このステージにおいて、与えられたプロセスのために、
【0057】
によって定められるN×M個の項を含む、i個の行(iは1とNとの間)とj個の列(jは1とMとの間)とを備える、いわゆる感度行列S
ijを定めることが可能である。
【0058】
したがって、感度行列の各項は、加熱ゾーンiの温度設定点変化によって引き起こされた位置jにおける特徴の変化
【0060】
と、その設定点変化ΔT
iとの間の比である。
【0061】
この感度行列は、感度モデルの重要な要素の1つを構成する。
【0062】
感度モデルの別の構成要素は、やはりプロセスに従属する正規化行列である。それを確立するために、温度設定点変化ΔTが、N個すべての加熱ゾーンにおいて同時に適用され、プロセスおよび基板特徴のM回の測定が繰り返される。
【0063】
これは、N個の加熱ゾーンにおいて同時に適用された温度設定点変化ΔTに対して測定された、M個の位置の各々における特徴の変化を獲得することを可能にする。j個の列(jは1とMとの間)を備える正規化行列S
jは、
【0066】
したがって、正規化行列の各項は、N個の加熱ゾーンにおける温度設定点変化によって引き起こされた位置jにおける特徴の変化
【0068】
と、その設定点変化ΔT
Nとの間の比である。
【0069】
与えられたプロセスのために定められた感度行列および正規化行列は、
【0071】
によって定められる、これら2つの行列の間の比である、ゲイン行列を確立するために使用される。
【0072】
この無次元のゲイン行列は、与えられたプロセスについての特徴のプロファイルに対する、様々な加熱ゾーンにおける設定点変化の影響を反映し、目下の文脈では、プロファイルは、熱処理ユニットのリアクタの全長にわたるM個の測定位置からの基板の特徴Xの値によって定められる。
【0073】
与えられた基板位置における(0より大きいまたは小さい値を有する)ゲインの大きさが大きいほど、関連する加熱ゾーンにおいて適用された温度設定点変化は、その与えられた位置において処理される基板の特徴により強い変化を引き起こす。
【0074】
このステージにおいて、与えられたプロセスのための感度モデルの構成要素が確立される。
【0075】
プロセスの実行およびその後の基板特徴の測定の後、基板特徴においてドリフトが観測された場合、すなわち、少なくとも1つの位置jにおいて測定された特徴と目標特徴との間の差が、そのプロセスのために定められた制御限界よりも大きい場合、設定点補正値を決定する本発明による較正方法のステップが実行される。
【0076】
そのステップは、
特徴ドリフトプロファイルと、可変設定点の変化に結合されたゲイン行列に基づいた特徴変化プロファイルとを比較することに本質が存する。これは、以下の関係に依存する。
【0078】
項Aは、特徴ドリフトプロファイルに対応し、ΔX
jは、熱処理ユニットの測定位置jにおける測定値と目標特徴との間の差であり、その差は、上で定められた正規化行列S
jによって正規化される。
【0079】
項Bは、各加熱ゾーンiにおける可変の設定点変化(ΔT
corr)
iに結合されたゲイン行列G
ijに基づいた、特徴変化プロファイルに対応する。
【0080】
目的は、(ΔT
corr)
iを変化させることによって、すなわち、プロセスのために確立されたゲイン行列に従って、各位置jにおける測定された特徴と目標特徴との間の差を補償することを可能にする、設定点変化の異なる組み合わせをテストすることによって、これら2つの項の間の残差r
jを最小化することである。
【0081】
M個の基板位置についての最適設定点変化を定めるために、残差最小化計算が、各位置jにおける残差r
jの平方であるとして定められる全体的残差Rに対して達成される。獲得される最適設定点変化(ΔT
corr)
iは、加熱ゾーンiにおいて適用される温度設定点補正値を表す。これは、較正方法の決定ステップの結果である。
【0082】
第1の実施形態によれば、補正を決定するステップは、それ自体よく知られた数値最適化方法(例えば、勾配法)を実装するソフトウェアを用いて獲得される。基板特徴の測定に続いて、作業員は、使用されるプロセスについての言及、獲得された測定値を入力し、この補正値決定ステップを実施する計算プログラムを起動する。プログラムは、特に、そのプロセスのための事前に定められたゲイン行列を含む。N個の加熱ゾーンにおいて適用される補正値は、画面上に表示され、作業員が、それらを熱処理ユニットに入力することを可能にする。
【0083】
第2の実施形態によれば、この決定ステップ中にソフトウェアによって決定された補正値は、ソフトウェアインターフェースから熱処理ユニットの制御インターフェースに自動的に送信され、いかなる人的入力も回避する。
【0084】
最後に、第3の実施形態によれば、自動システムは、様々なユニット、すなわち、熱処理ユニット、測定ユニット、および補正値決定ステップを実施するためのソフトウェアインターフェースを接続する。処理される基板は、しばしば25のバッチにグループ化されて、測定される。各バッチのバーコードは、製造実行システム(MES)を介して、プロセス情報を伝える。自動制御ステップは、測定後に実行され、獲得された特徴の値と目標特徴との間の差を検証する。差が固定された制御限界の外にある場合、ルーチンが、計算ソフトウェアを起動し、測定データが、測定ユニットから回収され、(バッチによって伝えられる情報の一部である)呼び出されたプロセスに関連するゲイン行列が使用される。計算が終了した場合、ルーチンは、設定点補正値を炉の制御インターフェースに伝達する。
【0085】
実施例1:
SOI基板に適用される通常の仕上げ処理は、一般に1100℃を超える高温においてシリコンの最上層を中性または還元雰囲気にさらすことに本質が存する、スムージングアニール処理を含む。とりわけ、表面再構成によって、この処理は、高温の雰囲気にさらされる層の粗さを低減させることを可能にする。
【0086】
酸化物溶解効果のせいで、この処理は、厚さなど、下層の誘電体層の特徴も変更する。この現象は、特に、文献(例えば、非特許文献1を参照)において報告されている。事実、その文献は、高温の中性または還元処理雰囲気において、誘電体層の酸素原子が、最上層を通って拡散し、それの表面と反応して、炉の雰囲気によって排出される揮発性種を生成しがちであることを説明している。
【0087】
この種類の処理の後に検証される様々な基板特徴の中で、重要なものは、SOI構造の埋め込み酸化物の厚さの減少である。
【0088】
埋め込み酸化物の厚さの減少は、処理された基板上の数々の地点で、例えば、40地点で測定される。平均値が、これらの測定値から抽出され、それは、このプロセスのために検証される基板特徴に対応する。それは、一般に、当業者によく知られた正規+/−3シグマ法則に従った、そのプロセスのために定められた制御限界の間になければならない。
【0089】
このプロセスのために検討される熱処理ユニットの種類では、基板位置の数は、一般に、150であり、加熱ゾーンの数は、
図1に示されるように、一般に、5である。
【0090】
感度モデルは、炉のリアクタの全長に沿って径方向に分布し、正確に5個の加熱ゾーンを代表する、25個の測定位置に基づいて生成される。
【0091】
感度行列および正規化行列は、3℃に等しい温度設定点変化ΔTに対して定められた。この変化は、それがこの種類のプロセスについて予想される補正の範囲に対応するために選択されたものであり、したがって、感度モデルは、適切な変化範囲において生成され、より良い精度を保証する。
【0092】
図2は、このプロセスのために獲得されたゲイン行列を表すグラフを示している。横軸上にプロットされた各測定位置に対して、ゲインが縦軸上にプロットされている。各曲線(a)から(e)は、与えられた加熱ゾーンi(1から5までのi)における、3℃の温度設定点変化の適用時に獲得されるゲインを表す。例えば、
図2における曲線(b)は、他の加熱ゾーンをそれぞれの公称設定点に維持したままでの、第2の加熱ゾーン(i=2)における温度設定点変化の適用に対応する。
【0093】
与えられた基板位置における(0より大きいまたは小さい値を有する)ゲインの大きさが大きいほど、関連する加熱ゾーンにおいて適用された温度設定点変化は、その与えられた位置において処理される基板の特徴により強い変化を引き起こす。
【0094】
図3は、関連する溶解プロセスについての基板特徴のドリフトの状況を示している。白抜きの四角形を伴う曲線は、複数の測定位置における(縦軸上に任意の単位でプロットされた)測定された酸化物厚さの減少と目標とする酸化物厚さの減少との間の著しい差を示している。この差は、(破線で示された)このプロセスのために定められた制御限界よりも大きい。
【0095】
その後、この差を補償して、プロセスの制御限界に戻り、目標特徴にできるだけ近づくように、適用される温度設定点補正値を決定するために、本発明による較正方法が適用され、したがって、
図3における結果の曲線は、ゼロにできるだけ近くなるべきである。
【0096】
測定された基板特徴は、観測された特徴の差を最も良く補償することを可能にする設定点補正値を、関連するプロセスに関連するゲイン行列を使用して生成する、計算ソフトウェアに注入される。その後、それらの補正値は、基板の新しいシリーズに対する新しいプロセスを起動する前に、熱処理ユニットの制御インターフェースに入力される。それらの基板は、炉を出るときに測定される。
図3における塗り潰された三角形を伴う曲線は、測定された酸化物厚さの減少と目標とする酸化物厚さの減少との間の差を示しており、この差は、較正方法の適用後の測定された25個の位置にわたって一様であり、0に非常に近いことが分かる。この場合、基板特徴は、目標通り、このプロセスのために定められた制御限界内にある。
【0097】
実施例2:
熱酸化は、シリコンおよびSOI分野における別の通常の種類の熱処理である。特に、スマートカットプロセスによって、SOI基板を製作するために、組み立てられる基板の少なくとも1つにおいて熱酸化物層を成長させるのが普通である。その酸化物層は、最終的なSOI構造の埋め込み酸化物層を構成する。
【0098】
酸化物厚さが、処理後の基板上の複数の地点で、例えば、40地点で測定される。平均値が、これらの測定値から抽出され、それは、このプロセスのために監視される基板特徴に対応する。それは、一般に、正規+/−3シグマ法則に従った、このプロセスのために定められた制御限界の間になければならない。
【0099】
このプロセスのために検討される熱処理ユニットの種類では、基板位置の数は、150であり、加熱ゾーンの数は、5である。
【0100】
感度モデルは、炉のリアクタの全長に沿って規則的に分布し、正確に5個の加熱ゾーンを代表する、25個の測定位置に基づいて生成される。
【0101】
感度行列および正規化行列は、3℃に等しい温度設定点変化ΔTに対して定められた。その変化は、それがこの種類のプロセスについて予想される補正範囲に対応するために選択されたものであり、したがって、感度モデルは、適切な変化範囲において生成され、より良い精度を保証する。その後、ゲイン行列が、確立されることができる。
【0102】
関連する酸化プロセスについての基板特徴におけるドリフトの場合、このプロセスのために定められた制御限界よりも大きい著しい差が、測定された酸化物厚さと目標とする酸化物厚さとの間に観測される。
【0103】
その後、この差を補償して、プロセスの制御限界に戻り、目標特徴にできるだけ近づくように、適用される温度設定点補正値を決定するために、本発明による較正方法が適用される。
【0104】
特徴は、観測された特徴の差を最も良く補償することを可能にする設定点補正値を、関連するプロセスに関連するゲイン行列を使用して生成する、計算ソフトウェアに注入される。その後、これらの補正値は、基板の新しいシリーズに対する新しいプロセスを起動する前に、熱処理ユニットの制御インターフェースに入力される。それらの基板は、炉を出るときに測定される。
【0105】
較正後、基板特徴は、目標通り、このプロセスのために定められた制御限界を下回る。
【0106】
実施例3:
この較正方法は、例えば、非常に短時間にわたる非常に高い温度での表面スムージングプロセスを可能にする、RTA(高速熱アニール)ユニットまたはRTP(高速熱プロセス)ユニットなどのシングルウエハ熱処理ユニットにも適用される。この状況では、リアクタは、大きいサイズのチューブではなく、シングルウエハを受け入れることが可能なチェンバである。これらのユニットにおいて実施されるプロセスは、非常に高速な温度上昇を伴う非常に高い温度で実施されるので、加熱の均一性が、やはりきわめて重要であり、基板における温度が制御されない場合、同じく高速な反応速度が、大きい不均一性を生み出すことができる。加熱要素は、ハロゲンランプから成る。
【0107】
検証される基板特徴は、文献(例えば、特許文献1を参照)において説明されているような、層の光反射率およびその厚さの相互依存に基づいた技法である、DRM(差分反射率顕微鏡法)によって測定される、表面粗さである。
【0108】
感度モデルを定めるために、各加熱要素または加熱要素のグループが、加熱ゾーンとして扱われる。測定位置は、処理されたウエハ上の異なるゾーンに対応し、ウエハの表面全体をカバーする。
【0109】
感度行列および正規化行列は、3℃に等しい温度設定点変化ΔTに対して定められる。その変化は、それがこの種類のプロセスについて予想される補正範囲に対応するために選択されたものであり、したがって、感度モデルは、適切な変化範囲において生成され、より良い精度を保証する。その後、ゲイン行列が、確立されることができる。
【0110】
関連するシングルウエハスムージングプロセスについての基板特徴におけるドリフトの場合、測定された粗さと目標とする粗さとの間に、このプロセスのために定められた制御限界を上回る著しい差が観測される。
【0111】
その後、この差を補償して、プロセスの制御限界に戻り、目標特徴にできるだけ近づくように、適用される温度設定点補正値を決定するために、本発明による較正方法が適用される。
【0112】
特徴は、観測された特徴の差を最も良く補償することを可能にする設定点補正値を、関連するプロセスに関連するゲイン行列を使用して生成する、計算ソフトウェアに注入される。その後、それらの補正値は、基板の新しいシリーズに対する新しいプロセスを起動する前に、熱処理ユニットの制御インターフェースに入力される。それらの基板は、炉を出るときに測定される。
【0113】
較正後、基板特徴は、目標通り、このプロセスのために定められた制御限界を下回る。
【0114】
本発明による較正方法は、処理された基板の特徴においてドリフトが観測された場合に、様々な加熱ゾーンにおいて適用される温度設定点補正値を自動的に正確に定めるために、数々の他の熱処理プロセスに適用される。