【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年8月8日に、藤倉ゴム工業株式会社が、三菱電機株式会社 三田製作所に、谷口和生及び白瀬利和が発明したバルブを卸した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シールリングの内周側に、前記シール面よりも高さの低いゴム製の内側リングが前記シールリングと一体に設けられており、前記内側リングの内周位置に前記リブが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシール構造体。
前記ホルダには前記ゴム保持部の表面から裏面にかけて貫通する穴が設けられており、前記内側リングと、前記ゴム保持部の裏面に設けられたゴム製の裏面層とが前記穴を介して一体化していることを特徴とする請求項2に記載のシール構造体。
前記穴は、複数個、前記内側リングの周方向に設けられており、複数の前記穴、及び各穴に対応する複数の前記裏面層が、夫々、前記周方向に一定間隔を空けて設けられていることを特徴とする請求項3に記載のシール構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、樹脂で形成されたホルダに、ゴム製のシールリングを成形してなるシール構造体において、シール性を向上させるうえで優れた平面度が要求される。
【0006】
しかしながら、従来のシール構造体の構造では、高い平面度が得られない問題があった。平面度が悪化するメカニズムを、
図13を用いて説明する。
【0007】
図13の左図(加硫時)に示すように、ホルダには金型の上型から下方向に強い押圧力が作用する。これは、ゴム製のシールリングを成形する際に、ばりが生じるのを極力防止するためである。この結果、ホルダは下方向に変形した状態となる。
【0008】
このように、ホルダが下方向に強く押された状態で、ホルダの表面にゴム製のシールリングが成形される。そして、
図13の右図に示すように、金型から成形品を取り出すと、樹脂製のホルダに弾性回復が生じ、この結果、シールリングのシール面の内側と外側とで高低差が生じる。この高低差が大きくなればなるほど平面度は悪化する。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、特に、従来に比べてシール面の平面度を向上させ、良好なシール性を得ることが可能なシール構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明におけるシール構造体は、樹脂製のホルダと、前記ホルダに保持されたゴム製のシールリングと、を有するシール構造体であって、前記ホルダは、
表面と裏面を有するゴム保持部と、前記ゴム保持部の外周縁から
、前記ゴム保持部の裏面側に延出する側壁部とを備えており、前記シールリングは、前記ゴム保持部の表面に設けられ、前記シールリングの表面は、シール面とされており、前記シールリングの内周と外周のうち、内周側にのみ、前記ゴム保持部の表面から突出したリブが設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明では、前記シールリングの内周側に、前記シール面よりも高さの低いゴム製の内側リングが前記シールリングと一体に設けられており、前記内側リングの内周位置に前記リブが設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明では、前記ホルダには前記ゴム保持部の表面から裏面にかけて貫通する穴が設けられており、前記内側リングと、前記ゴム保持部の裏面に設けられたゴム製の裏面層とが前記穴を介して一体化していることが好ましい。
【0013】
本発明では、前記穴は、複数個、前記内側リングの周方向に設けられており、複数の前記穴、及び各穴に対応する複数の前記裏面層が、夫々、前記周方向に一定間隔を空けて設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明では、前記シール面の平面度は、0.10mm以下であることが好ましい。
【0015】
本発明では、前記ホルダは、ポリフェニレンサルファイド樹脂にて成形されていることが好ましい。
【0016】
本発明では、ゴム材料には、フロロシリコーンゴム、及び、フッ素ゴムのいずれか1種が選択されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシール構造体によれば、従来に比べて、シール面の平面度を向上させ、良好なシール性を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
本実施の形態では、シール構造体のシール性向上を目的とし、特に、低荷重時でのシール性向上を目指すべく、ホルダ形状を改良して、シール面の平面度を改善したものである。
【0021】
本実施の形態のシール構造体の全体構造について、
図1ないし
図3を用いて説明する。
図1に示すように、シール構造体1は、樹脂製のホルダ(基材)2と、ゴム製のシールリング3とを、有して構成される。
【0022】
ホルダ2について説明する。
図1に示すように、ホルダ2は、ゴム保持部4と、ゴム保持部4の外周縁から図示下方に延出する側壁部5とを有して構成される。側壁部5は、ゴム保持部4の周囲を囲む筒状を成している。
図1に示すように、側壁部5の下端部には横方向に突き出した脚部5aが設けられている。脚部5aは、例えば、相手側部材に対する固定部や位置決め部に適用される。
図2に示すように、ゴム保持部4は、円環状を成し、また、
図1、及び
図2に示すように、側壁部5は円筒形状を成すが、特に形状を限定するものではない。例えば、ゴム保持部4を、矩形状等、側壁部5を角柱形状等で形成することもできる。
【0023】
図1に示すように、ゴム保持部4は、表面4aと裏面4bとを有し、ゴム保持部4の表面4aの中央には図示上方に向けて突出する凸部17が設けられる。
図2に示すように、凸部17は、例えば円柱状で突出している。
【0024】
図2、及び
図3に示すように、凸部17の周囲には凸部17を中心にして略等角度ごとに、表面4aから裏面4bを貫通する複数の穴6が設けられている。
【0025】
ホルダ2は、上記したように樹脂製である。ホルダ2の材質を問うものでないが、加硫時に熱が負荷されるため、耐熱性樹脂であることが好ましく、例えば、ホルダ2は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、液晶ポリマー樹脂(LCP)、ポリアミド樹脂(PA)6(66)等にて成形することができる。このうち、ホルダ2は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)で成形されることが好適である。
【0026】
図1に示すように、ホルダ2のゴム保持部4の表面4aには、シールリング3が、ホルダ2と一体成形されている。シールリング3の表面は、シール面3aである。
図2に示すように、シールリング3は、円環状にて形成されている。ただし、シールリング3の形状を限定するものでなく、楕円状、四角状、三角状等、であってもよい。
【0027】
図1、
図2に示すように、シールリング3の内側には、シールリング3と一体となり、シールリング3と同様に円環状をなす内側リング7が設けられている。内側リング7の表面7aは、シールリング3のシール面3aよりも一段低い高さで形成される。シールリング3と内側リング7とは、ゴム製にて一体化されている。
【0028】
図1、
図2に示すように、内側リング7の位置にゴム保持部4を貫通する複数の穴6が設けられ、穴6を介して、内側リング7と一体化したゴム製の裏面層8が、ゴム保持部4の裏面4bに設けられている。
図3に示すように、裏面層8は、各穴6に対応して複数設けられ、
図3に示すように、各裏面層8は、凸部17に対応する凹部9を中心として周方向に一定間隔を空けて設けられている。
【0029】
シールリング3と一体を成す内側リング7及び裏面層8は、シールリング3のホルダ2に対する補強材として機能し、シールリング3とホルダ2間の接合強度を向上させることができる。
【0030】
裏面層8が、内側リング7と異なって複数に分離されているのは、ゴム保持部4の裏面4bへ穴6を通じて所定量のゴム材を効率よく流入させて所定厚の裏面層8を形成するためであり、このため、各穴6の周囲にのみ裏面層8を設けた。
【0031】
また、内側リング7の表面7aは、シールリング3のシール面3aよりも一段低い位置にあるため、シール面として機能していない。ただし、相手側部材の形状によっては、内側リング7の表面7aもシール面となることがある。
【0032】
図1に示すように、内側リング7は、シールリング3よりも薄肉である。内側リング7を厚くすると、ゴム材と樹脂製のホルダ2との熱膨張係数差によりシール面3aの平面度が悪化しやすくなるため、内側リング7は薄くすることが好適である。
【0033】
シールリング3、内側リング7及び、裏面層8は、ゴム材にて形成される。適用されるゴム材質を特に限定するものではないが、例えば、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、フッ素ゴム、パーフロロポリエーテルゴム、エチレンプロピレンゴム等を提示することができる。このうち、フロロシリコーンゴム、或いは、フッ素ゴムを選択することが好ましい。また、ゴム硬度を特に限定するものでないが、例えば、ゴム硬度は50°以上が好ましい。
【0034】
シールリング3、内側リング7及び、裏面層8は、樹脂製のホルダ2に対して、コンプレッション成形、トランスファー成形、射出成形等により、未加硫ゴムを金型内に流入させて、圧力を負荷しつつ加熱して加硫することで成形される。
【0035】
上記したように、本実施の形態では、ホルダ形状を改良して、シール面の平面度を向上させるものである。ここで、「平面度」とは、
図1、
図2に示すシール面3aの内周縁部3bと、外周縁部3cとの高低差で評価される。なお、シール面が段差を有しているような場合は、段差を介した各シール面で平面度を評価することができる。また、本実施の形態では、シール面3a内の周線O1上(例えば、シール面3aの中心線上)での高低差も従来に比べて小さくすることができる。
【0036】
以下、本実施の形態のホルダ2形状を説明するが、その前に、比較例としてのホルダ形状について説明する。
【0037】
図4は、比較例のホルダの断面図である。
図4に示すように、比較例のホルダ10のゴム保持部11の表面11aには、円環内リブ12と、円環外リブ13とが設けられている。このようなリブ12、13を設けることで、ゴム製のシールリング3にばりが生じるのを防止することができる。
【0038】
比較例のホルダ10の形状は、特許文献1に記載の樹脂部品の形状に準じたものであるが、ゴム保持部11と、その外周縁から筒状の側壁部14が延出するホルダ形状では、成形時の樹脂歪みにより、
図5A(
図4のA領域を拡大した図)に示すように、円環外リブ13が、円環内リブ12よりも上方に持ち上がるように成形されやすい。すなわち、
図5Aに示すように、円環外リブ13と円環内リブ12との間の表面11aは、円環外リブ13に向けて高くなる方向に傾斜した状態にて成形される。
【0039】
この結果、
図5Aに示すように、円環内リブ12と円環外リブ13との間に高低差σ1が生じる。
【0040】
このため、
図5Bに示すように、ホルダ10を金型にセットした際、ホルダ10が金型に押圧され、特に、円環内リブ12と円環外リブ13との高低差σ1を無くすように、円環内リブ12よりも上方に突出する円環外リブ13に強い押圧力が作用して図示下方向に圧縮される(
図5Bの点線から実線への変化を参照)。その圧縮量は、
図5Aに示す高低差σ1とほぼ同等となる。
【0041】
この結果、ゴム材を加硫接着して、シールリングを備えた成形品(シール構造体)を、金型から取り出すと、ホルダに弾性回復が生じて、
図13で説明したように、シール面の平面度が悪化する。
【0042】
これに対して、本実施の形態のホルダ2は、上記した円環内リブ12と円環外リブ13のうち、円環外リブ13を除去した形状である。
【0043】
すなわち、
図6に示すように、ホルダ2のゴム保持部4の表面4aには、円環リブ20が設けられているが、この円環リブ20は、
図4の円環内リブ12に該当する。この円環リブ20は、シールリング3の内側に位置しており、
図1の形状では、ちょうど、内側リング7の内周位置に設けられている。すなわち、
図1及び
図2の内側リング7の内周縁部7bに沿って円環リブ20が設けられている。
【0044】
図7A(
図6のB領域を拡大した図)に示すように、表面4aは、円環リブ20からゴム保持部4の外周縁部4cに向かって表面高さが徐々に高くなるようにやや傾斜している。これは、
図5Aでも説明したように、樹脂歪みに起因するものである。
【0045】
ただし、
図7Aに示す実施の形態では、円環リブ20と、外周縁部4cとの高低差σ2を、
図5Aの比較例の高低差σ1よりも小さくすることができる。
【0046】
このため、
図7Bに示すように、ホルダ2を金型にセットし、ゴム材をホルダ2に加硫接着させる際の金型から受ける押圧力に基づく圧縮量を、
図5Bに示す比較例よりも小さくできる。なお、後述する新規な金型を用いることで、
図7Bに示すように、円環リブ20が多少圧縮される(
図7Bの点線から実線への変化を参照)。一方、外周縁部4cの位置では金型が当接した状態であり、ホルダ2には金型から適度な負荷を受けている。これにより、本実施の形態においては、成形されるシールリング3に、ばりが生じるのを効果的に抑制しつつ、シール面の平面度を、比較例に比べて改善することができる。
【0047】
シール面の平面度を特に限定するものではないが、本実施の形態での平面度は、具体的には、0.10mm以下であることが好ましい。後述する実験に示すように、使用するゴム材を変えても、良好な平面度を保てることがわかっている。
【0048】
図8は、シールリング3の断面模式図である。
図8の左図から順番に説明すると、左図は、
図1に示したシールリング3の形状に該当するものであり、シール面3aが平坦面で形成される。このような形態においては、シール面3aの平面度を、内周縁部3bと外周縁部3cとの高低差で評価できる。続いて右側のシールリング3のシール面3dは、曲面状で形成されている。シール面3dはその中心部分が最も突出するように湾曲している。このような形状の場合、シール面3dの平面度は、内周縁部と外周縁部との高低差でなく、最も突出した周線O2上の高低差で評価することができる。続く右側の、シールリング3では、ゴム基材3eの表面に複数の突出部3fが一体的に形成されている。各突出部3fは同じ形状であり、高さが一致している。したがって、各突出部3fの表面がシール面を構成する。なお、各突出部3fは、シール面3dと同様に湾曲している。このような形態では、各突出部3fの最も突出した周線O3、O4上の高低差で、平面度を評価することができる。最後に、最も右側のシールリング3では、ゴム基材3gの表面に、断面が三角状の突起部3hが一体的に形成されている。係る構成では、突起部3hの最も突き出した周線O5上の高低差で平面度を評価することができる。
【0049】
図8に示すように、シール面は平面以外であってもよく、例えば、湾曲していたり、或いは直線状に傾斜していてもよい。
【0050】
続いて、ホルダ2に、ゴム製のシールリング3を一体的に成形する際に使用する金型について説明する。
【0051】
図9は、従来の金型を示す断面図である。
図9の上図に示すように、金型30は、上型31、及び下型33を有して構成される。
【0052】
図9の上図に示すように、上型31、及び下型33との間に、ホルダ10をセットする。ここでは、
図4の比較例のホルダ10を用いて説明する。
図9に示すように、金型には、ゴム材が充填される内部空間34が設けられる。また、内部空間34と繋がる注入口35が設けられ、この注入口35を通して、内部空間34に未加硫ゴムを注入することができる。
【0053】
図9の下図は、
図9の上図の点線部分を拡大した図であるが、
図9の下図に示すように、ホルダ10の円環外リブ13は上型31により図示下方向への押圧力を受けており、このためホルダ10は下方向に圧縮される。
図9の上図に示すように、下型33の、ホルダ10の側壁部14の脚部15が収容される空間33aでは、上型31を被せる前の状態で、脚部15と、空間33aの底面との間に隙間T1を備える。このような隙間T1が設けられることで、上型31にてホルダ10が図示下方向に押圧された際、側壁部14の内側上端部14a付近を起点として、側壁部14を下方向に圧縮(変形)させることができる。
【0054】
しかしながら、従来のホルダ10の形状では、ホルダ10の圧縮量が大きく、その結果、弾性回復によるシール面の平面度の悪化が懸念される。そこで、本実施の形態では、
図6、
図7で説明したように、ホルダ2の形状を改良し、またホルダ形状の改良に基づいて、以下に説明する新規の金型を適用することができる。
【0055】
すなわち、
図10の上図に示すように、下型33の、ホルダ2の側壁部5の脚部5aが収容される空間33bでは、上型31を被せる前の状態で、脚部5aと、空間33bの底面との間に隙間がなく(すなわち、脚部5aと空間33bの底面とが接触した状態である)、或いは、隙間があっても、その間隔は、
図9の上図に示す間隔T1よりも十分に小さい。或いは、従来の金型を用い、隙間T1を限りなく0に近づける板材を空間33aの底面に配置してもよい。
【0056】
図10の下図に示すように、ホルダ2のゴム保持部4の外周縁部4c付近が上型31と接触しており、このとき、ホルダ2に設けられた円環リブ20が上型31に押圧されて若干下方に圧縮される。しかしながら、このときの圧縮量は、
図9の下図での圧縮量に比べて十分に小さく、また、ゴム保持部4の外周縁部4c付近での圧縮は無く或いは、非常に小さいために、弾性回復は小さく、シール面の平面度を、従来よりも良好にすることができる。
【0057】
本実施の形態におけるシール構造体の適用例については、特に限定されるものでないが、例えば、バルブのシール構造体として好適に使用することができる。
【実施例】
【0058】
以下に本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。ただし、本発明は、この実施例により限定されるものではない。まず、以下のホルダ形状からなるサンプルを成形した。
【0059】
<ホルダ−1>
材質:ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)
リブの有無:円環内リブと円環外リブ(
図4)
<ホルダ−2>
材質:ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)
リブの有無:円環内リブ(円環外リブ無し)(
図6)
<ホルダ−3>
材質:アルミ
リブの有無:無し
【0060】
また、金型、及びゴム材には以下のものを使用した。
<金型−1>
図9の構造
<金型−2>
図10の構造
<ゴム材−1>
フッ素ゴム:FKM60
<ゴム材−2>
フッ素ゴム:FKM50
【0061】
ホルダを金型にセットし、ホルダに負荷をかけた状態で、未加硫ゴムを注入し、所定温度に加熱して未加硫ゴムを加硫してシールリングをホルダ表面に一体化したシール構造体を成形した。この際、シールリングの内側には、
図2で示した内側リングを一体に成形し、また、
図3で示した裏面層を成形した。
【0062】
上記のホルダ、金型、及びゴム材の組み合わせにより、表1に示す実施例1、実施例2、比較例及び参照例の各シール構造体を形成した。なお各シール構造体の大きさについては、各シール構造体を問わずほぼ同じとし、また製造条件についても統一した。
【0063】
【表1】
【0064】
平面度は、
図2に示すシール面の内周縁部と外周縁部との高低差にて測定した。なお、各シール構造体における内周縁部は、約φ12〜14mmで、外周縁部は、約φ15〜17mmであった。
【0065】
表1に示すように、実施例1では、シール面の平面度は、0.06mmであった。また、実施例2では、シール面の平面度は、0.08mmであった。なお、実施例1及び実施例2におけるシール面の中心線上の高低差は、約0.02mm以下であった。
【0066】
一方、比較例では、シール面の平面度が0.15mmであった。これに対して、参照例では、シール面の平面度が、0.03mmであった。
【0067】
参照例は、ホルダにアルミを使用しており、樹脂製ではない。このため、参照例のホルダに金型より強い負荷をかけても、弾性回復は、樹脂製よりも小さく、リブも必要ないし、平面度も小さく抑えることが可能である。よって、平面度悪化の問題は、ホルダが樹脂製のためであり、本実施例のように、円環外リブを除去し、円環内リブのみを残すことで、ばりの発生を抑制しつつ、シール面の平面度を向上させた。以下、平面度と、シール性との実験について説明する。
【0068】
実験では、
図11に示すように、シール構造体を相手側部材にセットして、シール構造体のシール面側に負圧をかけ、この時、シール構造体の脚部側には重さの異なる錘にて荷重をかけた。実験では、錘の重さを異ならせ、シール面の平面度の違いによるシール限界(負圧量)を測定した。なお、この実験にて使用したホルダは、全て樹脂製であった。平面度=0.06mmは、実施例1に該当し、平面度=0.15mmは、比較例に該当する。また、平面度=0.10については、実施例2と同様の構成のシール構造体を使用して実験した。
【0069】
実験結果を
図12に示す。
図12に示すように、平面度が0.06mmの場合、他の平面度に比べて、シール限界となる負圧量が大きく、シール性に優れていることがわかった。例えば、−3.7kPa未満の負圧量をシール限界とする場合、平面度が0.06mmの場合、荷重は50g程度でもよいが、平面度が0.10mmでは、倍の100g程度の荷重を必要とし、更に、平面度が0.15mmの場合、300g程度の荷重が必要となることがわかった。
【0070】
このように、平面度を0に近づけることで、低荷重時でのシール性を向上させることができるとわかった。ここで、「低荷重時」とは、荷重が300g以下、好ましくは100g以下、更に好ましくは50g以下を指し、良好なシール性については、シール限界となる負圧量が、−3.7kPa未満であることを指す。これを満たすのは、平面度が0.10mm以下であることがわかった。