(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1方向に延伸する複数の線画を含む第1パターンを有する第1層部と、前記第1層部と重ねられ且つ前記第1方向とは異なる第2方向に延伸する複数の線画を含む第2パターンを有する第2層部と、前記第1層部の前記第2層部と対向する面の反対の接着面に配置された粘着部及び前記粘着部よりも接着力が低い低粘着部とを含むシートを撮像した画像から画像領域を抽出する画像領域抽出方法であって、
前記第1パターンと前記第2パターンが重ねられたことによりモアレが発生するモアレ領域を含むように撮像された前記シートを含むシート画像を示すシート画像データを取得し、
前記シート画像から、前記モアレ領域を抽出し、
前記粘着部が配置されている固定領域の大きさに基づいて、前記低粘着部が配置されている非固定領域を前記モアレ領域から抽出し、
前記非固定領域を含む非固定領域画像を示す非固定領域画像データを出力する、
ことを含む処理をコンピュータが実行する、ことを特徴とする画像領域抽出方法。
第1方向に延伸する複数の線画を含む第1パターンを有する第1層部と、前記第1層部と重ねられ且つ前記第1方向とは異なる第2方向に延伸する複数の線画を含む第2パターンを有する第2層部と、前記第1層部の前記第2層部と対向する面の反対の接着面に配置された粘着部及び前記粘着部よりも接着力が低い低粘着部とを含むシートを撮像した画像から画像領域を抽出する画像領域抽出プログラムであって、
前記第1パターンと前記第2パターンが重ねられたことによりモアレが発生するモアレ領域を含むように撮像された前記シートを含むシート画像を示すシート画像データを取得し、
前記シート画像から、前記モアレ領域を抽出し、
前記粘着部が配置されている固定領域の大きさに基づいて、前記低粘着部が配置されている非固定領域を前記モアレ領域から抽出し、
前記非固定領域を含む非固定領域画像を示す非固定領域画像データを出力する、
処理をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする画像領域抽出プログラム。
第1方向に延伸する複数の線画を含む第1パターンを有する第1層部と、前記第1層部と重ねられ且つ前記第1方向とは異なる第2方向に延伸する複数の線画を含む第2パターンを有する第2層部と、前記第1層部の前記第2層部と対向する面の反対の接着面に配置された粘着部及び前記粘着部よりも接着力が低い低粘着部とを含むシートを撮像した画像から画像領域を抽出する画像領域抽出装置であって、
前記第1パターンと前記第2パターンが重ねられたことによりモアレが発生するモアレ領域を含むように撮像された前記シートを含むシート画像を示すシート画像データを取得するシート画像データ取得部と、
前記シート画像から、前記モアレ領域を抽出するモアレ領域抽出部と、
前記粘着部が配置されている固定領域の大きさに基づいて、前記低粘着部が配置されている非固定領域を前記モアレ領域から抽出伸縮領域抽出部と、
前記非固定領域を含む非固定領域画像を示す非固定領域画像データを出力する非固定領域出力部と、
を有する、ことを特徴とする画像領域抽出装置。
第1方向に延伸する複数の線画を含む第1パターンを有する第1層部と、前記第1層部と重ねられ且つ前記第1方向とは異なる第2方向に延伸する複数の線画を含む第2パターンを有する第2層部と、前記第1層部の前記第2層部と対向する面の反対の接着面に配置された粘着部及び前記粘着部よりも接着力が低い低粘着部とを含むシートを撮像した画像から画像領域を抽出する画像領域抽出システムであって、
前記第1パターンと前記第2パターンが重ねられたことによりモアレが発生するモアレ領域を含むように撮像された前記シートを含むシート画像を示すシート画像データを取得するシート画像データ取得部と、
前記シート画像から、前記モアレ領域を抽出するモアレ領域抽出部と、
前記粘着部が配置されている固定領域の大きさに基づいて、前記低粘着部が配置されている非固定領域を前記モアレ領域から抽出伸縮領域抽出部と、
前記非固定領域を含む非固定領域画像を示す非固定領域画像データを出力する非固定領域出力部と、
を有する、ことを特徴とする画像領域抽出システム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は図面又は以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0024】
以下、本発明の例示の態様について説明するが、本発明は以下の態様に限定されず、特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱しない任意の改変が本発明に包含されることが意図される。
【0025】
<シート>
図1は、本開示のシートの例を示す図であり、
図1(A)は使用前の変形していない状態のシート、
図1(B)は使用時に変形した状態のシートを示している。本発明の一態様は、第1の主面S1、及び該第1の主面S1に対向する第2の主面S2を有するシート100を提供する。以下、第1の主面S1は表面と称されることがあり、第2の主面S2は接着面と称されることがある。シート100は、第1パターン(図示せず)を有する第1部101、第2パターン(図示せず)を有する第2部102、及び該第1部101と該第2部102との間に存在する第3部103を有する。一態様において、第1部101は、第2部102よりも大きい伸長性を有する。本開示で、「伸長性が大きい」とは、たとえば弾性率(ヤング率)の数値が小さいこと、同じ力で引っ張ったときの伸びの数値が大きいこと、破断に至るまでの伸びの数値が大きいことを意味する(必ずしもすべての数値条件を満たす必要はない)。一態様において、第1部101はシート100の第1の主面S1を含み、第2部102はシート100の第2の主面S2を含む。一態様において、第1パターンは第2パターンを介して視認可能である。一態様において、本開示のシートは、第1の主面S1の一部の領域が対象物に固定され得るように構成される。
【0026】
第1部101は第1パターンを有し、第2部102は第2パターンを有する。本開示のシート100は、第1パターンと第2パターンとが発生するモアレが検出可能であるように構成されている。より具体的には、第1パターンは第2パターンを介して視認可能である。ここで第1パターンが第2パターンを介して視認可能であるとは、第2の主面S2側からシート100を観察したときに、第1パターンが第2パターンと共に視覚化できることを意味する。視覚化の手段は任意に選択でき、例えば各種カメラを用いた可視光下でパターン撮影を例示できる。第1パターンが第2パターンを介して視認可能であるような構成によれば、第1パターンと第2パターンとの干渉によって発生するモアレもまた視認可能である。従って、本開示のシートによれば、対象物の変形を簡便に評価することが可能であり、例えば、対象物に近接する必要がなく遠方からの評価が可能である。
【0027】
第1パターンが第2パターンを介して視認可能であるための好ましい態様において、本開示のシートの、第1パターンから第2パターンを介してシート表面に至るまでの部位は、典型的には明澄な材料で構成されている。本開示で、「明澄な材料」とは、300〜830nm波長光における全光線透過率が30%以上であること、より好ましくは80%以上であることを意味する。上記全光線透過率は、ヘイズメーター(例えば、NDH2000ヘイズメーター(日本電色工業(株)製 東京都文京区))にて測定される値である。
【0028】
本開示のシートの主要な特徴の1つは、第1部の変位によって第1パターンが歪むこと、及び、第2部が有する第2パターンは、上記第1パターンの歪みの影響を実質的に受けないこと、すなわち実質的に歪まないことである。シートは、対象物に固定されたときに該対象物の変位を第1のパターイメージの歪みによって検出できる。そしてこの第1パターンの歪みと、歪んでいない第2パターンとによって生じるモアレを検出及び解析することにより、該対象物に生じた変位を評価できる。
【0029】
第1部101が、第2部102よりも大きい伸長性を有することで、第1部101が変形追従部(すなわち、シートが対象物に固定された状態で対象物に変位が生じた際に、該対象物の変位に追従して変位する能力を有する(
図1(B)に示すように)部位)として機能すると共に、第2部102が非変形追従部(すなわち、第1部に変位が生じた際に該変位に実質的に追従せず、従って実質的に変位が生じない(
図1(B)に示すように)部位)として機能することができる。典型的な態様において、第3部103は、変形緩衝部(すなわち、上記第2部102が上記第1部101の変位によって実質的に変位しないために十分な変形緩衝能力を有する(
図1(B)に示すように)部位)として機能できる。
【0030】
一態様において、本開示のシートは、第1の主面S1のうち一部の領域(本開示で、固定領域ともいう。)が対象物に固定され、他の領域(本開示で、非固定領域ともいう。)が対象物に固定されないような態様で、対象物に対して固定されることが予定される。一態様において、固定領域は、シートを、被着体としての対象物(例えば当該シートを建造物変形評価用に用いる場合の建造物)に接着させるのに十分な粘着性を備えている。一方、非固定領域は、対象物への接着を可能にするのに十分な粘着性を備えている必要はない。すなわち、本開示のシートの第1の主面は、対象物に対して、実質的に固定領域のみで接着されていてよい。
【0031】
図2は、本開示のシートの第1の主面における固定領域及び非固定領域の例を示す図である。
図2(A)は実施形態に係るシートにおける固定領域及び非固定領域の配置を示し、
図2(B)は第1変形例に係るシートにおける固定領域及び非固定領域の配置を示し、
図2(C)は第2変形例に係るシートにおける固定領域及び非固定領域の配置を示す。
【0032】
例示の態様において、第1固定領域101a、第2固定領域101b及び非固定領域101cの配置としては、以下に限定されないが例えば、
図2(A)に示すような第1の主面の幅W方向中央部に高さH)方向全体に亘って延びる矩形形状の非固定領域101cとこれを挟むように離隔して配置される第1固定領域101a及び第2固定領域101bが、幅W方向に広がっていく変位の測定(たとえば線状の損傷やひび割れの幅が広がっていく変位の測定)には適している。また、
図2(B)に示すような幅W方向及び高さH方向の中央部に配置された矩形形状の非固定領域101cとこれを囲む固定領域101a、
図2(C)に示すような幅W方向及び高さH方向の中央部に配置された楕円形状の非固定領域101cとこれを囲む固定領域101a等の配置は、幅Wと高さHの方向に放射状に広がっていく変位の測定(たとえば点状の損傷やひび割れが放射状に広がっていく変位の測定)には適している。
【0033】
本開示では、特に断らない限り、
図2(A)に示すように、第1固定領域101aはシート100の一端に配置され、第2固定領域101bはシート100の他端に配置され、非固定領域101cが第1固定領域101aと第2固定領域101bとの間に配置される。
【0034】
図3〜5は、本開示のシートの例を示す図である。一態様において、第1固定領域101a、第2固定領域101bと非固定領域101cとの組合せは、高粘着面S111a、S111bと低粘着面S111cとの組合せ、高粘着面S121a、S121bと低粘着面121cとの組合せ、高粘着面S131a、S131bと低粘着面S131cとの組合せ、等である。これらの態様では、シート100の第1の主面S1は、高粘着面と低粘着面とで構成されることになる。本開示で、「高粘着面」とは、シートを被着体に貼りつけた際の接着力が「低粘着面」よりも強いこと意味する。接着力が強いとは、たとえばシートの被着体に対する剥離力(90°ピール等)、剪断力、保持力の数値が高いことを意味する(すべての数値が大きいことは必須ではない)。「低粘着面」は、いわゆる接着力が実質的にない面であってもよい。なお
図3〜5では、第1固定領域101a、第2固定領域101b及び非固定領域101cが
図2(A)に示すように配置される場合について例示している。
【0035】
一態様において、
図3に示すように、高粘着面S111a、S111bは第1部101の低粘着性の本体111上に配置された高粘着部(第1粘着部111a、及び該第1粘着部111aから離隔して配置された第2粘着部111bとして)によって与えられ、低粘着面S111cは本体111が露出している部位によって与えられる。
【0036】
図3の他の一態様において、
図4に示すように、高粘着面S121a、S121bは第1部101の高粘着性の本体121が露出している部位によって与えられ、低粘着面S121cは本体121上に配置された低粘着部121cによって与えられる。
【0037】
図3及び4の他の一態様において、
図5に示すように、高粘着面S131a、S131bは第1部101の本体131(高粘着性でも低粘着性でもよい)上に配置された高粘着部(第1粘着部131a、及び該第1粘着部131aから離隔して配置された第2粘着部131bとして)によって与えられ、低粘着面S131cは該本体131上に配置された低粘着部131cによって与えられる。
【0038】
上記低粘着性の本体は、例えば、高伸長性層として後述するような材料で構成できる。
【0039】
上記高粘着部は、感圧接着剤で構成されていることができ、例えば単層フィルム状の感圧接着フィルム、2つの感圧接着層を有する両面接着シート等が挙げられる。感圧接着剤は、例えば、粘着性ポリマーを含有する塗膜として形成できる。好ましい接着剤は、粘着性ポリマーと粘着性ポリマーとを架橋する架橋剤とを含有する。本開示で、粘着性ポリマーとは、常温(約25℃)で粘着性を示すポリマーである。感圧接着剤としては、アクリル系、ゴム系ポリウレタン、エポキシ系等が挙げられる。
【0040】
上記高粘着性の本体は、上記粘着性ポリマーで構成できる。
【0041】
上記低粘着部は、高伸長性層として後述するような材料であって被着体に対する実質的な接着力がない材料で構成されていてもよいし、フッ素系樹脂のように被着体に対する滑り容易性を向上する材料で構成されていてもよいし、上記高粘着部と同等の材料であって接着力が高粘着部よりも弱い材料であってもよい。
【0042】
本開示のシートの第1部、第2部及び第3部は、単層又は複数層で構成されていることができる。単層が適切な厚み及び物性を有していることによって、第1部、第2部及び第3部が構成されていてもよい。また、第1部、第2部及び第3部が、材質、厚み等が互いに異なる複数層で構成されていてもよい。また、更に別の例示の態様においては、第1部、第2部及び第3部が、第1部及び第2部として機能する層と、第3部として機能する層との2層で構成されることができ、又は、第1部として機能する層と、第2部及び第3部として機能する層との2層で構成されることができる。以上のように、シートの層構成は、第1部、第2部及び第3部として機能する部位を有することを条件として任意に設計可能である。
【0043】
第1パターン及び第2パターンとしては、モアレにより変位を評価するのに用いられる従来公知の任意パターンを採用できる。パターンイメージの詳細、例えばパターンイメージ形状の種類、ピッチ等は、目的の変位の量等に応じて適宜選択できる。パターンイメージ形状としては、グリッド、千鳥模様、ドット、複数の平行な直線等を例示できる。例示の態様において、第1及び第2パターンが、それぞれピッチ約0.4mm〜約0.8mm程度を有するグリッドであることができる。例えば、本開示のシートの好適な用途である建造物の壁面等の変形評価においては、例えば0.1〜2.0mm程度の変位の検出が所望される場合が多い。このような用途に適したパターンイメージの形状及びピッチの例としては、例えば、一辺が100mm程度のサイズのシートにおいて、ピッチ約0.3mm〜約1.0mm程度が挙げられる。
【0044】
好ましい態様において、第1部の変位量100%に対する第2部の変位量の割合は、約30%以下、約20%以下、約10%以下、又は約0%であることができる。上記割合は、後述する変位の測定方法において、シートの少なくとも一部が破断するまでのいずれかの任意の時点で満足されればよい。しかし好ましい態様においては、第1部の変位が0mmである状態から該変位を増大させたときに、例えばシートの少なくとも一部が破断するまでの全時点で、上記割合が満足される。
【0045】
また、好ましい態様において、第1部を10mm変位させたときに、第2部が示す変位は、約3mm以下、又は約2.0mm以下、又は約1.0mm以下、又は約0mmであることができる。
【0046】
但し上記の変位は、各々、以下の方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される。
【0047】
図6は、本開示のシートの例を示す図である。
図6(A)は第2の主面側からみたときの第2部について説明する図であり、
図6(B)は第2の主面側からみたときの第1部について説明する図である。
【0048】
第1部101は、第1パターンP101が例えば印刷によって形成される。第2部102は、第2パターンP102が例えば印刷によって形成されると共に、第2パターンP102の周囲に白色領域W102を介して黒色領域B102が例えば印刷によって形成される。白色領域W102及び黒色領域B102により形成されるガードバンドは、第1パターンP101及び第2パターンP102が重ねられたことによりモアレが発生するモアレ領域を識別するときに使用される。
【0049】
一態様において、シートは、対象物の変位(クラック等)の幅を当該ゲージとの照合により計測するために種々の線幅を表示するゲージ、シートを対象物に対して位置合わせするためのマークを表示するマーカー、及び寸法目盛を表示するルーラーから選ばれる1つ以上の目印を更に有してよい。これら目印は、シートの、第1部、第2部又は第3部に、例えば印刷により配置されてよい。
【0050】
好ましい態様において、第1部は、第1パターンを有する高伸長性層を含む。好ましい態様において、第2部は、第2パターンを有する低伸長性層を含む。好ましい態様において、第3部は、粘弾性層を含む。好ましい態様において、シートは、高伸長性層、低伸長性層及び粘弾性層からなる。
【0051】
典型的な態様において、高伸長性層と粘弾性層とは、高伸長性層自体の粘着性によって、若しくは粘弾性層自体の粘着性によって、若しくは別途の接着層によって、又はこれらの2つ以上の組合せによって、互いに接着されている。また典型的な態様において、粘弾性層と低伸長性層とは、粘弾性層自体の粘着性によって、若しくは低伸長性層自体の粘着性によって、若しくは別途の接着層によって、又はこれらの組合せによって、互いに接着されている。
【0052】
<高伸長性層>
高伸長性層は、第1部として機能するのに十分な伸長性を有する任意の材料で構成されていることができる。特定の態様において、パターンイメージの視認可能性の観点から高伸長性層は明澄である。好ましい態様において、高伸長性層は、ポリスチレン、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、ビニルコポリマー、(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルコポリマー及びポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。なお本開示で、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0053】
好ましい態様において、高伸長性層は、(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマーと、(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーとを(A):(B)質量比約10:90〜約90:10で含む。この場合、高伸長性層は優れた耐候性、及び被着体への追従性を有することができる。
【0054】
好ましい態様において、(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマーは、主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、カルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得たものであることができる。
【0055】
好ましい態様において、(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーは、主成分であるモノエチレン性不飽和モノマーと、アミノ基を含有する不飽和モノマーとを含む組成物を共重合させて得たものであることができる。
【0056】
(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマー及び(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーのそれぞれにおいて、上記共重合は、ラジカル重合により行なうことが好ましい。この場合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の公知の重合方法を用いることができる。開始剤としては過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのような有機過酸化物や、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4、4’−アゾビスー4−シアノバレリアン酸、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス2、4−ジメチルバレロ二トリル(AVN)等のアゾ系重合開始剤が用いられる。この開始剤の使用量としては、モノマー混合物100質量部あたり、約0.05質量部〜約5質量部とするのがよい。
【0057】
高伸長性層において、(A)カルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマー及び(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーの一方のTgを0℃以上とし、かつ他方のTgを0℃以下とすることが好ましい。高いTgを有する(メタ)アクリルコポリマーは高伸長性層に高い引張強さを与える一方、低いTgを有する(メタ)アクリルコポリマーは高伸長性層の伸び特性を良好にするからである。
【0058】
好ましい態様において、(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマー及び(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーの重量平均分子量は、それぞれ、約10、000以上、又は約50、000以上、又は約100、000以上であり、また約10、000、000以下、又は約1、000、000以下である。
【0059】
好ましい態様において、上記モノエチレン性不飽和モノマーとしては、一般式CH2=CR1COOR2(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は直鎖又は分岐状のアルキル基、フェニル基、アルコキシアルキル基、又はフェノキシアルキル基である)で表されるモノマー、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル類が挙げられる。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレートや2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。モノエチレン性不飽和モノマーは、所望のガラス転移温度、引張強さ、及び伸び特性を得るために、その目的に応じて1種又は2種以上を使用できる。
【0060】
例えば、メチルメタクリレート(MMA)、n−ブチルメタクリレート(BMA)等、単体で重合した場合のホモポリマーが0℃以上のTgを有するような(メタ)アクリル系モノマーを主成分として共重合させることにより、容易にTgが0℃以上の(メタ)アクリルコポリマーを得ることができる。
【0061】
また、エチルアクリレート(EA)、n−ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)等、単体で重合した場合のホモポリマーが0℃以下のTgを有するような成分を主成分として共重合させることにより、容易にTgが0℃以下の(メタ)アクリルコポリマーを得ることができる。
【0062】
ここで、(A)カルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマー、及び(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーのガラス転移温度(Tg)は、各ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、FOXの式(下式)より求められる。
1/Tg=X1/(Tg1+273.15)+X2/(Tg2+273.15)+・・・
+Xn/(Tgn+273.15)
(Tg1:成分1のホモポリマーのガラス転移点
Tg2:成分2のホモポリマーのガラス転移点
X1:重合の際に添加した成分1のモノマーの重量分率
X2:重合の際に添加した成分2のモノマーの重量分率
X1+X2+・・・+Xn=1)
【0063】
上記モノエチレン性不飽和モノマーと共重合してカルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマーを構成する、カルボキシル基を含有した不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0064】
カルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分として(具体的には約80質量部〜約95.5質量部の範囲で)、かつカルボキシル基を含有する不飽和モノマーを約0.5質量部〜約20質量部の範囲で共重合して得るのが好ましい。
【0065】
上記モノエチレン性不飽和モノマーと共重合してアミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーを構成する、アミノ基を含有する不飽和モノマーとしては、N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N、N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、及びビニルイミダゾール等の含窒素複素環を有するビニルモノマーに代表される3級アミノ基を有するモノマー等が挙げられる。
【0066】
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分として(具体的には約80質量部〜約95.5質量部の範囲で)、かつアミノ基を含有する不飽和モノマーを約0.5質量部〜約20質量部の範囲で共重合して得るのが好ましい。
【0067】
上記のようにカルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーとをそれぞれ別々に重合した後、通常のフィルム成形方法により、高伸長性層を形成できる。例えば、これらのポリマーの溶液を混合し、ライナーの剥離面上に塗布し、乾燥・固化させることにより高伸長性層を形成することができる。塗布装置としては、通常のコータ、例えば、バーコータ、ナイフコータ、ロールコータ、ダイコータ等を用いることができる。固化操作は、揮発性溶媒を含む塗料の場合の乾燥操作や、溶融した樹脂成分を冷却する操作と同様である。また、高伸長性層は、溶融押出成形法によっても形成することができる。
【0068】
高伸長性層の形成において、カルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーとの配合比を変化することにより、所望の引張強さ及び伸び特性を有する高伸長性層を得ることができる。具体的には、カルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマーとアミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーのうち、Tgが相対的に高いポリマー:Tgが相対的に低いポリマーの配合比を、約10:90〜約90:10、又は約20:80〜約90:10、又は約30:70〜約90:10とすることができる。好ましい態様においては、Tgが相対的に高いコポリマーの量を、Tgが相対的に低いコポリマーの量よりも多くする。
【0069】
好ましい態様において、高伸長性層は、上記(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマー及び上記(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーに加え、(C)カルボキシル基と反応する官能基を有する架橋剤を更に含む。この架橋剤は、(A)カルボキシ基含有(メタ)アクリルコポリマーと(B)アミノ基含有(メタ)アクリルコポリマーとの架橋に寄与する。このような架橋により網目構造が形成され、高伸長性層の低温における伸び特性が更に向上する。有利には、架橋剤は、カルボキシル基と反応することのできる官能基を有し、具体的にはビスアミド系架橋剤(例えば、3M製RD1054)、アジリジン系架橋剤(例えば、日本触媒製ケミタイトPZ33、アビシア製NeoCrylCX−100)、カルボジイミド系架橋剤(例えば、日清紡製カルボジライトV−03、V−05、V−07)、エポキシ系架橋剤(例えば綜研化学製E−AX、E−5XM、E5C)等を使用できる。架橋剤の使用量は、(A)カルボキシル基含有(メタ)アクリルコポリマー100質量部に対して約0.1〜約5質量部である。
【0070】
高伸長性層は、所望に応じて更に各種の添加剤を1種以上含んでもよい。添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、滑材、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等を例示できる。
【0071】
好ましい態様において、高伸長性層は、例えば数mm程度の変位に対して破断しないような強度を有している。この観点において、高伸長性層は、引張強度約100MPa以下を有することが好ましい。またこの観点において、高伸長性層の厚みは、例えば、約10μm〜約150μm、又は約30μm〜約100μmであってよい。
【0072】
好ましい態様において、高伸長性層は、第1及び第2の主面を有し、該第1の主面上に第1パターンを有する。第1パターンは例えば印刷層である。例えば、前述したようなポリマーから形成した伸長性フィルムの表面に所望パターンを直接印刷する方法、支持体上に形成した所望パターンを有する印刷層を該伸長性フィルム上に転写する方法、等によって、印刷層を有する高伸長性層を形成できる。印刷は、インクジェット、グラビア、凸版、フレキソ、スクリーン、静電複写、昇華放熱転写等で行うことができる。例示の態様においては、上記第1の主面が粘弾性層と対向するように高伸長性層と粘弾性層とが互いに固定されている。この場合、第1パターンが粘弾性層によって保護され、損傷しにくい点で有利である。別の例示の態様においては、上記第2の主面が粘弾性層と対向してもよい。この場合、第1パターンがコート層等により保護されてもよい。
【0073】
<低伸長性層>
低伸長性層は、高伸長性層よりも伸長性が小さい層である。低伸長性層は、第2部として機能するのに十分な低伸長性を有する任意の材料で構成されていることができる。パターンイメージの視認可能性の観点から低伸長性層は典型的には明澄である。
【0074】
好ましい態様において、低伸長性層は、ポリエステル、ポリオレフィン及びポリビニルからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。低伸長性層は、典型的には硬質フィルムであることができる。硬質フィルムは市販で入手可能なものであってもよく、市販品としては例えばポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリアセタール、ポリフェニレン、ポリエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ナイロン及びポリカーボネート等が挙げられる。
【0075】
典型的な態様において、低伸長性層は、使用時に環境中に露出する場合がある。従って低伸長性層は優れた耐候性を有していることが好ましい。この観点から好ましい低伸長性層としては、ポリエステルが挙げられる。
【0076】
典型的な態様において、低伸長性層は、高伸長性層に変位が生じたときに実質的に変位しないために十分な強度を有している。この観点において、低伸長性層は、引張強度約50MPa以上を有することが好ましい。またこの観点において、低伸長性層の厚みは、例えば、約10μm〜約150μm、又は約50μm〜約100μmであってよい。
【0077】
好ましい態様において、低伸長性層は、第1及び第2の主面を有し、該第1の主面上に第2パターンを有する。第2パターンは例えば印刷層である。例えば、非伸長性フィルムの表面に所望パターンを直接印刷する方法、支持体上に形成した所望パターンを有する印刷層を非伸長性フィルム上に転写する方法、等によって、印刷層を有する低伸長性層を形成できる。印刷は、インクジェット、グラビア、凸版、フレキソ、スクリーン、静電複写、昇華放熱転写等で行うことができる。例示の態様においては、上記第1の主面が粘弾性層と対向するように低伸長性層と粘弾性層とが互いに固定されている。この場合、第2パターンが粘弾性層によって保護され、損傷しにくい点で有利である。別の例示の態様においては、上記第2の主面が粘弾性層と対向してもよい。この場合、第2パターンがコート層等により保護されてもよい。
【0078】
<粘弾性層>
粘弾性層は、第1部の変位を弾性変形作用により減衰させる能力を有し、第2部が第1部の変位によって実質的に変位しないために十分な変形緩衝能力を有する任意の粘弾性材料で構成されていることができる。パターンイメージの視認可能性の観点から粘弾性層は典型的には明澄である。
【0079】
好ましい態様において、粘弾性層は、ポリオレフィン及びオレフィンコポリマー(以下、纏めてオレフィン(コ)ポリマーともいう。)、ビニルコポリマー(例えば塩化ビニルポリマー等)、(メタ)アクリルポリマー及び(メタ)アクリルコポリマー(以下、纏めて(メタ)アクリル(コ)ポリマーともいう。)(例えば、ポリ(メタ)アクリレート、アクリル酸及びアクリルアミドの共重合体等)、ポリウレタン(例えばポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン等)、並びにシリコーンポリマー(例えばメチルビニルシリコーン等)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。また、粘弾性層はゴム層であってもよく、ゴムとしてはブタン系ゴム、ブチル系ゴム等が挙げられる。
【0080】
(メタ)アクリル(コ)ポリマーの原料モノマーとしては、例えば、炭素数が14から22の直鎖又は分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリルモノマー(以下、C14−22(メタ)アクリルモノマーともいう。)、例えばイソステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ベヘニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソパルミチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0081】
原料モノマーは、不飽和モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸等)、不飽和ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、イタコン酸等)、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、又は2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基含有モノマーを含んでもよい。
【0082】
例えば、原料モノマーが、C14−22(メタ)アクリルモノマーとカルボキシル基含有モノマーとを含む場合、配合は、C14−22モノマー約92質量%〜約95質量%に対し、カルボキシル基含有モノマーは約5質量%〜約8質量%であることができる。カルボキシル基含有モノマーの量が約5質量%以上である場合、粘弾性層のせん断貯蔵弾性率G’が大きく、凝集力が良好である点で有利である。また、損失正接tanδが大きく変位緩衝性能において有利である。一方、カルボキシル基含有モノマーの量が約8質量%以下である場合、変位緩衝性能の温度依存性が小さい点で有利である。
【0083】
オレフィン(コ)ポリマーとしては、飽和ポリオレフィン、すなわち、実質的に炭素間二重結合及び三重結合を持たないポリオレフィンが挙げられる。例えば、飽和ポリオレフィンに含まれる炭素間結合のうち、90%以上が単結合であることが好ましい。飽和ポリオレフィンの例としては、ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリα−オレフィン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、水添ポリブタジエン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上で組み合わせて用いてもよい。
【0084】
飽和ポリオレフィンには非結晶性のポリマーを用いることもできる。非結晶性のポリマーとは、結晶化度が極めて低いか、結晶化状態になり得ないポリマーを意図する。非結晶性のポリマーでは、ガラス転移温度は測定されるが、融点は測定されない。非結晶性のポリマーを用いた場合、粘弾性層の0℃〜40℃でのせん断貯蔵弾性率G’を、例えば1.5×104〜5.0×106パスカル(Pa)に調整して、良好な変形緩衝性能を得ると共に粘弾性層と他の層とを良好に接着することができる。
【0085】
飽和ポリオレフィンブロックと、芳香族ビニルモノマーブロックとを含むブロック共重合体(以下、ブロック共重合体)もまた使用でき、これは、実質的に炭素間二重結合及び三重結合を持たないポリオレフィンからなるブロックと、芳香族ビニルモノマーからなるブロックとを含む。飽和ポリオレフィンブロックに含まれる炭素間結合のうち、90%以上が単結合であることが好ましい。芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、インデン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上で組み合わせて用いてもよい。ブロック共重合体としては、たとえば、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0086】
飽和ポリオレフィンブロックは非結晶性のものを用いることもできる。非結晶性のものを用いた場合、粘弾性層の0〜40℃でのせん断貯蔵弾性率G’を、例えば約1.5×104〜約5.0×106パスカル(Pa)に調整して、良好な変形緩衝性能を得ると共に粘弾性層と他の部材とを良好に接着することができる。
【0087】
飽和ポリオレフィン、及び/又はブロック共重合体の配合比は、(メタ)アクリル(コ)モノマー100質量部に対して、約2質量部〜約40質量部とすることができる。約2質量部以上である場合温度依存性の小さい粘弾性層が得られ、約40質量部以下である場合耐候性が良好であり、長期の使用の信頼性、及び他の部材の接着性において有利である。
【0088】
(メタ)アクリル(コ)ポリマーの重量平均分子量は、約10、000〜約2、000、000の範囲とすることができる。上記範囲は、弾性率が高く、長期使用の信頼性において有利である粘弾性層を得る点で有利である。
【0089】
粘弾性層は、上記のようなポリマーに加え、粘着付与樹脂、例えばロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂(水素添加ロジン系樹脂、不均化ロジン樹脂、重合ロジン系樹脂等)、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、C5系及びC9系の石油樹脂、クマロン樹脂等を含んでもよい。また、増粘剤、チキソトロープ剤、増量剤、充填剤等の通常用いられる添加剤を含んでもよい。
【0090】
粘弾性層に使用できる粘弾性材料の例のより詳細な例は、例えば特開2009−249485号公報、特開2006−28224号公報等に記載されている。
【0091】
粘弾性層が薄すぎる場合には、高伸長性層の変形によって低伸長性層も変形する場合があり、一方厚すぎる場合には、第1パターンと第2パターンとが観測角によってずれる場合があり、従ってモアレの視認性が低下する場合がある。好ましい態様において、粘弾性層の厚みは、約100μm〜約1.5mm、又は約500μm〜約1.0mmである。
【0092】
<シートの特性>
好ましい態様において、シートを引張試験に供したときに、高伸長性層は、引張強度0.5MPa以上100MPa以下及び伸び3%以上200%以下を示す。好ましい態様において、シートを引張試験に供したときに、低伸長性層は、引張強度50MPa以上350MPa以下及び伸び1%以上200%以下を示す。好ましい態様において、シートを引張試験に供したときに、粘弾性層は、引張強度0.01MPa以上100MPa以下及び伸び10%以上3000%以下を示す。
【0093】
引張強度及び伸びは、JISK6251(2010年度版・ISO37)に規定される方法に準拠し、以下の条件で測定される。
・測定サンプル形状:JISK6251に記載される「ダンベル状3号形」
・引張速度:300mm/min
・測定温度:23±1℃
引張強度T(単位:MPa)は、測定サンプルの各層の破断に至るまでの最大引張力F(単位:N)と、測定サンプルの各層の断面積A(単位:mm2)とを測定し、以下の式から求める。
T=F/A
伸びE(単位:%)は、測定サンプルにおける各層の破断時の標線間距離L1(単位:mm)と、標線間距離L0(25mm)とを測定し、以下の式から求める。
E=(L1−L0)/L0×100
【0094】
本開示のシートを上記引張試験に供した際には、通常、各層が順次破断し、例示の態様では低伸長性層、粘弾性層及び高伸長性層の順に破断する。従って上記方法にて各層の引張強度及び伸びとして測定される値には他の層による寄与が含まれることになるが、本開示ではそのような測定値をシートにおける各層の引張強度及び伸びとして規定する。
【0095】
好ましい態様において、シートの高伸長性層のみをシート面内方向に引っ張ったときに、高伸長性層の破断が低伸長性層の破断よりも先に生じる。このことは、
図5を参照して上記した変位の測定方法において、高伸長性層の破断が低伸長性層の破断よりも先に生じることによって確認できる。
【0096】
また、好ましい態様において、高伸長性層の上記破断時において、低伸長性層の伸びは、高伸長性層の伸びに対して0〜35%である。この比は、高伸長性層の破断時における、高伸長性層の伸びと低伸長性層の伸びとの比として評価できる。このような比は、モアレによる対象物の変位量の精度良い評価に寄与する。
【0097】
好ましい態様において、第1部又は高伸長性層のヤング率は、約0.5GPa以下、又は約0.1GPa以下、又は約0.05GPa以下である。また、好ましい態様において、第2部又は低伸長性層のヤング率は、約1.0GPa以上、又は約1.5GPa以上、又は約2.0GPa以上である。なお上記ヤング率は、幅10mmに切り出したサンプルを、チャック間距離100mmで引張試験機にセットし、1mmpmのスピードで鉛直方向に引張り、ひずみ%で0.05〜0.25%となる部分のS−Sカーブの傾きよりヤング率を算出することで得られる値である。
【0098】
固定領域、すなわち高粘着面の好ましい接着特性としては、JISK5600(ISO 2409)に準拠した、モルタル板に対する接着力が、剪断方向で約1.0N/cm2以上であることが挙げられる。このような接着特性は、例えば対象物がコンクリート、金属等である場合にシートを対象物に良好に固定できる点で有利である。
【0099】
好ましい態様において、本開示のシートは、第1及び第2パターン、並びに、ゲージ、マーカー及びルーラーを除く実質的に全ての部位が明澄な材料で構成されている。
【0100】
第1の主面において、固定領域の面積に対する非固定領域の面積の比(例えば、高粘着面の面積Aに対する低粘着面の面積Bの比B/A)は、モアレの視認性を良好にする観点から、好ましくは約1%以上、又は約5%以上であり、対象物に対する良好な固定の観点から、好ましくは約500%以下、又は約300%以下であるとよい。
【0101】
第1の主面において、第1の主面の面積に対する固定領域の面積(例えば、第1の主面の面積Cに対する、高粘着部の面積(例えば第1粘着部及び第2粘着部の合計面積)Dの比D/C)の比は、対象物に対する良好な固定の観点から、好ましくは約10%以上、又は約30%以上であり、モアレの視認性を良好にする観点から、好ましくは約99%以下、又は約95%以下であるとよい。
【0102】
また、低粘着面のアスペクト比は、モアレによる変位評価の際に、二次元平面でx軸とy軸の両方向で同量に近い空間周波数解析を行えるようにするための観点から、約0.5〜約2.0、又は約0.7〜約1.3、又は約0.9〜約1.1であるとよい。
【0103】
本開示のシートのサイズは、被着体や測定対象の損傷に応じて貼り易さも鑑みて適宜設計できる。例示の態様において、第1の主面の総面積(すなわち固定領域と非固定領域との合計面積)は、約1cm2〜約1000cm2、又は約2cm2〜約500cm2が建造物のコンクリートのひび割れを測定する用途には適している。
【0104】
なお、本開示の一態様に係るシートは、固定領域及び非固定領域を有するが、本開示は、第1の主面の実質的に全面が固定領域である他は前述の本開示のシートと同様であるようなシートも包含し、特に、このようなシートにおいてゲージ、マーカー、及びルーラーから選ばれる1つ以上の目印を設ける態様も包含する。
【0105】
<第1実施形態に係る画像領域抽出装置の構成及び機能>
図7は、第1実施形態に係る画像領域抽出装置の概略構成を示す図である。
【0106】
画像領域抽出装置1は、例えば多機能携帯電話(いわゆる「スマートフォン」)であり、無線通信ネットワークへの接続、近距離無線通信、所定のアプリケーションプログラムの実行等を可能とする。そのために、画像領域抽出装置1は、端末通信部11と、近距離通信部12と、操作部13と、ディスプレイ14と、端末記憶部15と、撮像部16と、測位システム部17と、時計部18と、端末処理部20とを有する。なお、画像領域抽出装置1は、通信機能と撮像装置を有する通信装置であればよく、例えば携帯端末(Personal Digital Assistant、 PDA)、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤ、タブレットPC等の端末装置でもよい。
【0107】
端末通信部11は、主に2.1GHz帯を感受帯域とするアンテナを含む、通信インターフェース回路を有し、画像領域抽出装置1を通信ネットワークに接続する。端末通信部11は、不図示の基地局により割り当てられるチャネルを介して、基地局との間でCDMA(Code Division Multiple Access)方式等による無線信号回線を確立し、基地局との間で無線通信を行う。そして、端末通信部11は、基地局から受信したデータを端末処理部20に供給する。また、端末通信部11は、端末処理部20から供給されたデータを基地局に送信する。なお、端末通信部11は、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)等のプロトコルに従って不図示のサーバとの間のデータ通信を行う。また、端末通信部11は、主に2.4GHz帯を感受帯域とするアンテナを含む通信インターフェース回路を有し、基地局を介さずにWi−Fi(登録商標)等の無線LANの基地局を介して無線通信を行う。
【0108】
近距離通信部12は、Bluetooth LE(Low Energy)(登録商標)等の通信方式に従った近距離無線通信を行うためのインターフェース回路を有し、他の端末装置等との間で近距離無線通信を行う。そして、近距離通信部12は、他の端末装置等から受信したデータを端末処理部20に供給する。また、近距離通信部12は、端末処理部20から供給されたデータを他の端末装置等に送信する。なお、近距離通信部12は、Bluetooth(登録商標)、RFID(Radio Frequency IDentification)、ZigBee等の他の通信方式に従った近距離無線通信を行うためのインターフェース回路を有してもよい。
【0109】
操作部13は、画像領域抽出装置1の操作が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、キーパッド等である。ユーザは、このデバイスを用いて、文字、数字等を入力することができる。操作部13は、ユーザの指示を受け付け、受け付けた指示に対応する信号を発生し、端末処理部20に出力する。また、操作部13は、タップ、ドラッグ、フリック等の接触により、ユーザの指示を受け付け、受け付けた指示に対応する信号を発生し、端末処理部20に出力する。
【0110】
ディスプレイ14は、動画像、静止画像等の出力が可能であればどのようなデバイスでもよい。ディスプレイ14は、端末処理部20から供給される動画像データに応じた動画像、静止画像データに応じた静止画像等を表示する。
【0111】
端末記憶部15は、例えば、半導体メモリを有する。端末記憶部15は、端末処理部20での処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、端末記憶部15は、ドライバプログラムとして、端末通信部11を制御する携帯電話通信デバイスドライバプログラム、無線LAN通信デバイスドライバプログラムを記憶する。また、端末記憶部15は、近距離通信部12を制御する近距離無線通信デバイスドライバプログラム、操作部13を制御する入力デバイスドライバプログラム、ディスプレイ14を制御する出力デバイスドライバプログラム等を記憶する。また、端末記憶部15は、アプリケーションプログラムとして、ウェブページの取得及び表示を行うウェブブラウザプログラム、及び画像領域抽出処理を実行する画像領域抽出処理プログラムを含む種々のプログラムを記憶する。コンピュータプログラムは、例えばフラッシュメモリを含む半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて端末記憶部15にインストールされてもよい。
【0112】
また、端末記憶部15は、データとして、撮像処理及び画像領域抽出処理で使用される情報及びデータ、並びに撮像処理及び画像領域抽出処理で求められたデータを記憶する。さらに、端末記憶部15は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。一態様では、端末記憶部15は、画像領域抽出処理で使用される基準縦横比151を記憶する。基準縦横比151は、第1固定領域101aの幅W1を第1固定領域101aの高さHで除した第1基準縦横比k
1(=W1/H)、及び第2固定領域101bの幅W2を第2固定領域101bの高さHで除した第2基準縦横比k
2(=W2/H)を含む。
【0113】
撮像部16は、アレイ状に配置された撮像素子と、撮像素子を駆動する素子駆動部とを有する。撮像素子は、電荷結合素子(CCD)型センサ、又はアクティブピクセルセンサ(APS)型センサと、カラーフィルタとを有し、入射した光に応じた電荷を蓄積する。素子駆動部は、カラーフィルタを介して撮像素子に光が入射することで、撮像素子のそれぞれで蓄積された電荷を電気信号に変換して端末処理部20に出力する。
【0114】
測位システム部17は、端末処理部20からの指示に従って、画像領域抽出装置1が存在する位置を測定する。測位システム部17は、主に1.5GHz帯を感受帯域とするアンテナを含む、GPS回路を有し、不図示のGPS衛星からGPS信号を受信する。測位システム部17は、そのGPS信号をデコードし、時刻情報等を取得する。測位システム部17は、時刻情報等に基づいてGPS衛星から測位システム部17までの擬似距離を計算し、その擬似距離を代入して得られる連立方程式を解くことにより、画像領域抽出装置1が存在する位置(緯度及び経度等)を測定し、位置情報として出力する。
【0115】
時計部18は、クロック回路等で構成され、日時を計数し、各種情報の更新処理等のための日にち情報及び時刻情報を生成する。
【0116】
端末処理部20は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。端末処理部20は、画像領域抽出装置1の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。端末処理部20は、画像領域抽出装置1の各種処理が端末記憶部15に記憶されているプログラム、操作部13の操作等に応じて適切な手順で実行されるように、端末通信部11、近距離通信部12等の動作を制御する。端末処理部20は、端末記憶部15に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、端末処理部20は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
【0117】
端末処理部20は、撮像指示部21と、シート画像データ取得部22と、モアレ領域抽出部23と、非固定領域抽出部24と、非固定領域出力部25と、撮像処理終了判定部26と、非固定領域選択指示部27と、非固定領域画像決定部28とを有する。モアレ領域抽出部23は、画像変換部231と、ローパスフィルタ部232と、エッジ強調処理部233と、ポリゴン抽出部234と、候補ポリゴン決定部235と、モアレ領域判定部236と、パラメータ変更部237と、モアレ領域決定部238とを有する。非固定領域抽出部24は、頂点抽出部241と、モアレ領域高さ決定部242と、固定領域幅決定部243と、非固定領域決定部244とを有する。端末処理部20が有するこれらの各部は、端末処理部20が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、端末処理部20が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとして画像領域抽出装置1に実装されてもよい。
【0118】
<第1実施形態に係る画像領域抽出装置による画像領域抽出処理>
図8は、画像領域抽出装置1による画像領域抽出処理を示すフローチャートである。
【0119】
まず、撮像指示部21は、不図示のオペレータによる画像領域抽出プログラムの立上げ処理に応じて、不図示のオペレータにシートの撮像を指示する撮像指示を示す撮像指示信号をディスプレイ14に出力する(S101)。一態様では、撮像指示は、文字列「シートを撮影して下さい」を含む。ディスプレイ14は、撮像指示信号が入力されると、撮像指示信号に対応する撮像指示に含まれる文字列を表示する。
【0120】
次いで、シート画像データ取得部22は、不図示のオペレータによる画像領域抽出装置1を使用したシートの撮像動作に応じて、撮像部16を介してシートを含むシート画像を示すシート画像データを取得する(S102)。シート画像データに対応するシート画像は、第1パターンP101と第2パターンP102が重ねられたことによりモアレが発生するモアレ領域を含むように撮像されたカラー画像である。
【0121】
次いで、モアレ領域抽出部23は、S102の処理で取得されたシート画像データに対応するシート画像から、第1パターンP101と第2パターンP102が重ねられたことによりモアレが発生するモアレ領域を抽出する(S103)。
【0122】
次いで、非固定領域抽出部24は、S103の処理で抽出されたモアレ領域から、粘着部が配置されている固定領域の大きさに基づいて、粘着部が配置されていない非固定領域を抽出する(S104)。
【0123】
次いで、非固定領域出力部25は、S104の処理で抽出された非固定領域を含む非固定領域画像を示す非固定領域画像データを、ディスプレイ14に表示する表示位置を示す表示位置情報と共に、ディスプレイ14に出力する(S105)。ディスプレイ14は、非固定領域画像データに対応する非固定領域画像を、表示位置情報に対応する表示位置に表示する。
【0124】
次いで、撮像処理終了判定部26は、撮像回数が所定の回数に達したか否かを判定する(S106)。撮像処理終了判定部26によって撮像回数が所定の回数に達していないと判定される(S106−NO)と、処理はS101に戻る。以降、撮像処理終了判定部26によって撮像回数が所定の回数に達したと判定される(S106−YES)まで、S101〜S106の処理が繰り返される。
【0125】
撮像処理終了判定部26によって撮像回数が所定の回数に達したと判定される(S106−YES)と、非固定領域選択指示部27は、所定の回数に亘って撮像されたシート画像から抽出された非固定領域画像の何れを選択するかを示す選択指示信号を出力する(S107)。一態様では、撮像指示は、文字列「画像を1つ選択して下さい」を含む。
【0126】
図9は、所定の個数の非固定領域画像及び撮像指示を表示する画像領域抽出装置1を示す図である。
図9に示す例では、6個の非固定領域画像が表示される。
【0127】
非固定領域画像141〜非固定領域画像146のそれぞれは、ディスプレイ14に選択可能に表示される。また、文字列「画像を1つ選択して下さい」を含む撮像指示147は、非固定領域画像141〜非固定領域画像146と共にディスプレイ14に表示される。不図示のオペレータは、ディスプレイ14の非固定領域画像141〜非固定領域画像146の何れか1つが表示された領域をタッチする等して、非固定領域画像141〜非固定領域画像146の何れか1つを選択する。非固定領域画像決定部28は、不図示のオペレータが選択した非固定領域画像を使用する非固定領域画像に決定する(S108)。
【0128】
非固定領域画像決定部28によって決定された非固定領域画像は、端末記憶部15に記憶されるアプリケーションプログラムに基づいて端末処理部20によって実行される種々の処理に使用される。例えば、非固定領域画像は、シートが貼付けされた壁面に発生したクラックに重ねて貼付けられるとき、非固定領域に発生するモアレの変化に基づいて、シートが貼付けされたクラックのクラック幅の変化量を推定するクラック幅変化量推定処理に使用される。
【0129】
図10は、S103の処理のより詳細な処理を示すフローチャートである。
【0130】
まず、画像変換部231は、シート画像データ取得部22によって取得されたカラー画像であるシート画像をカラー画像からグレースケール画像に変換する(S201)。次いで、ローパスフィルタ部232は、シート画像に含まれる小さなエッジを除去するために、S201の処理でグレースケール画像に変換されたシート画像にローパスフィルタリング処理を実行する(S202)。S202のローパスフィルタリング処理により、シート画像は、ノイズが除去された画像となる。
【0131】
次いで、エッジ強調処理部233は、S202の処理でローパスフィルタリングされたシート画像にエッチを強調するエッジ強調処理を実行する(S203)。一態様では、エッジ強調処理部233は、エッチ強調フィルタ(edge enhancement filter)を含む。次いで、ポリゴン抽出部234は、S203の処理でエッジが強調されたシート画像に輪郭抽出処理(contour process)を実行して、シート画像に含まれる複数のポリゴンを抽出する(S204)。
【0132】
次いで、候補ポリゴン決定部235は、S204の処理で抽出された複数のポリゴンからモアレ領域候補となる候補ポリゴンを決定する(S205)。候補ポリゴン決定部235は、S204の処理で抽出された四角形のポリゴンの中で、シート画像の面積に対するポリゴンの面積の比率が基準面積比に最も近いポリゴンを、候補ポリゴンを決定する。基準面積比は、非固定領域101cが伸縮していない状態における非固定領域101cの面積のシート画像100の面積に対する面積比である。
【0133】
次いで、モアレ領域判定部236は、S205の処理で決定された候補ポリゴンに対応する領域がモアレ領域であるか否かを判定する(S206)。モアレ領域判定部236は、S205の処理で決定された候補ポリゴンの縦横比が所定のしきい値範囲内にあるとき、S205の処理で決定された候補ポリゴンに対応する領域がモアレ領域であると判定する。また、モアレ領域判定部236は、S205の処理で決定された候補ポリゴンの縦横比が所定のしきい値範囲外であるとき、S205の処理で決定された候補ポリゴンに対応する領域がモアレ領域ではないと判定する。
【0134】
一態様では、しきい値範囲は、非固定領域101cが伸縮していない状態におけるシート100のモアレ領域と黒色領域B102との間に配置される白色領域W102の縦横比を中心値とすることができる。しきい値範囲の中心値を白色領域W102の縦横比とすることで、モアレ領域判定部236は、白色領域W102の縦横比に対応する四角形のポリゴンの領域をモアレ領域と判定することができる。
【0135】
モアレ領域判定部236によって候補ポリゴンに対応する領域がモアレ領域ではないと判定されると、パラメータ変更部237は、S205及びS206の処理で使用されるパラメータを変更し(S207)、処理はS204に戻る。パラメータ変更部237は、S205の処理で使用されるしきい値面積比、及びS206の処理で使用されるしきい値範囲の少なくとも一方を変更する。
【0136】
モアレ領域判定部236によって候補ポリゴンに対応する領域がモアレ領域であると判定されると、モアレ領域決定部238は、候補ポリゴンに対応する領域をモアレ領域に決定する(S208)。
【0137】
図11はS104の処理のより詳細な処理を示すフローチャートであり、
図12はS104の処理を説明するための図である。
図12(A)はS104の処理を説明するための第1の図であり、
図12(B)はS104の処理を説明するための第2の図であり、
図12(C)はS104の処理を説明するための第3の図である。
【0138】
まず、頂点抽出部241は、S103の処理で抽出された四角形のモアレ領域1200の4つの頂点の座標を抽出する(S301)。
【0139】
次いで、モアレ領域高さ決定部242は、S301の処理で抽出されたモアレ領域1200の4つの頂点の座標から抽出される長辺の長さをモアレ領域1200の幅Wに決定すると共に、短辺の長さをモアレ領域1200の高さHに決定する(S302)。
図12(A)に示すように、モアレ領域1200の高さHは、モアレ領域1200の幅Wよりも短い。
【0140】
次いで、固定領域幅決定部243は、S302の処理で決定されたモアレ領域1200の高さHと、端末記憶部15に記憶される基準縦横比151とから固定領域の幅を決定する(S303)。固定領域幅決定部243は、モアレ領域1200の高さHと、第1基準縦横比k
1(=W1/H)とから、第1固定領域1201の幅W1(=k
1×H)を決定する。また、固定領域幅決定部243は、モアレ領域1200の高さHと、第2基準縦横比k
2(=W2/H)とから、第2固定領域1202の幅W2(=k
2×H)を決定する。
【0141】
そして、非固定領域決定部244は、S301の処理で抽出されたモアレ領域1200の4つ頂点の座標、及びS303の処理で決定された固定領域の幅から、非固定領域を決定する(S304)。非固定領域決定部244は、モアレ領域1200の長辺の両端に位置する2つの頂点の座標V11及びV12と、第1固定領域1201の幅W1及び第2固定領域1202の幅W2とから非固定領域1203の2つの頂点V21及びV22を決定する。また、非固定領域決定部244は、モアレ領域1200の長辺の両端に位置する2つの頂点の座標V13及びV14と、第1固定領域1201の幅W1及び第2固定領域1202の幅W2とから非固定領域1203の2つの頂点V23及びV24を決定する。
【0142】
<第2実施形態に係る画像領域抽出システムの構成及び機能>
図13は、第2実施形態に係る画像領域抽出システムを示す図である。
【0143】
画像領域抽出システム2では、不図示の交換機が、広域通信回線網である通信ネットワーク6を介して相互に接続される。交換機は、ある地域をカバーする無線通信ネットワークを通信ネットワーク6に接続する。無線通信ネットワークには、地域内をカバーする無線ゾーンを管理するように基地局5が配置される。基地局5は、基地局5が属する不図示の無線ネットワーク制御装置を介して交換機に接続される。そして、その地域内の端末装置3が、サーバ4等と通信を行う際に、端末装置3は、基地局5を介して交換機に接続され、さらに通信ネットワーク6に接続される。
【0144】
また、通信ネットワーク6は、イーサネット(登録商標)等の有線LANにより、不図示のゲートウェイを介して、インタネット7と接続される。インタネット7には、サーバ4が更に接続される。
【0145】
<第2実施形態に係る端末装置の構成及び機能>
図14は、端末装置3の概略構成を示す図である。
【0146】
端末装置3は、画像領域抽出装置1と同様に、例えば多機能携帯電話(いわゆる「スマートフォン」)であり、無線通信ネットワークへの接続、近距離無線通信、所定のアプリケーションプログラムの実行等を可能とする。端末装置3は、端末記憶部19及び端末処理部30を端末記憶部15及び端末処理部20の代わりに有することが画像領域抽出装置1と相違する。端末記憶部19及び端末処理部30以外の端末装置3の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された画像領域抽出装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。端末記憶部19は、基準縦横比151を記憶しないこと以外は、端末記憶部15と同様の構成及び機能を有するので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0147】
端末処理部30は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。端末処理部30は、端末装置3の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。端末処理部30は、端末装置3の各種処理が端末記憶部19に記憶されているプログラム、及び操作部13の操作等に応じて適切な手順で実行されるように、端末通信部11、近距離通信部12等の動作を制御する。端末処理部30は、端末記憶部19に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、端末処理部30は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
【0148】
端末処理部30は、シート撮像処理部31と、シート撮像データ送信部32と、非固定領域出力部33と、非固定領域選択指示部34と、非固定領域画像決定部35とを有する。シート撮像処理部31は、撮像指示部311と、シート画像データ取得部312と、撮像処理終了判定部313とを有する。端末処理部30が有するこれらの各部は、端末処理部30が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、端末処理部30が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとして端末装置3に実装されてもよい。
【0149】
<第2実施形態に係るサーバの構成及び機能>
図15は、第2実施形態に係る画像領域抽出装置の一態様であるサーバ4の概略構成を示す図である。
【0150】
サーバ4は、種々の情報処理が可能な情報処理装置であり、サーバ通信部41と、サーバ記憶部42と、サーバ出力部43と、サーバ入力部44と、サーバ処理部50とを備える。
【0151】
サーバ通信部41は、イーサネット(登録商標)などの有線の通信インターフェース回路を有する。サーバ通信部41は、不図示のLAN及びインタネット7を介して端末装置3等と通信を行う。そして、サーバ通信部41は、端末装置3等から受信したデータをサーバ処理部50に供給する。また、サーバ通信部41は、サーバ処理部50から供給されたデータを端末装置3等に送信する。
【0152】
サーバ記憶部42は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置、及び光ディスク装置のうちの少なくとも一つを有する。サーバ記憶部42は、サーバ処理部50による処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、サーバ記憶部42は、ドライバプログラムとして、サーバ通信部41を制御する通信デバイスドライバプログラム等を記憶する。また、サーバ記憶部42は、オペレーティングシステムプログラムとして、TCP/IP等の通信方式による接続制御プログラム等を記憶する。また、サーバ記憶部42は、アプリケーションプログラムとして、各種データの送受信を行うデータ処理プログラム、及び画像領域抽出処理を実行する画像領域抽出処理プログラム等を記憶する。コンピュータプログラムは、例えばCD−ROM、DVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いてサーバ記憶部42にインストールされてもよい。
【0153】
また、サーバ記憶部42は、データとして、画像領域抽出処理で使用される情報及びデータ、並びに画像領域抽出処理で求められたデータを記憶する。さらに、サーバ記憶部42は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。一態様では、サーバ記憶部42は、端末記憶部15と同様に、画像領域抽出処理で使用される基準縦横比151を記憶する。基準縦横比151は、第1固定領域101aの幅W1を第1固定領域101aの高さHで除した第1基準縦横比k
1(=W1/H)、及び第2固定領域101bの幅W2を第2固定領域101bの高さHで除した第2基準縦横比k
2(=W2/H)を含む。
【0154】
サーバ出力部43は、動画像、静止画像等の出力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル式の表示装置、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。サーバ出力部43は、サーバ処理部50から供給される動画像データに応じた動画像、静止画像データに応じた静止画像等を表示する。
【0155】
サーバ入力部44は、サーバ4への入力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル式の入力装置、キーパッド等である。ユーザは、このデバイスを用いて、文字及び数字等を入力することができる。サーバ入力部44は、ユーザの指示を受け付け、受け付けた指示に対応する信号を発生し、サーバ処理部50に出力する。
【0156】
サーバ処理部50は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。サーバ処理部50は、サーバ4の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。サーバ処理部50は、サーバ4の各種処理がサーバ記憶部42に記憶されているプログラム等に応じて適切な手順で実行されるように、サーバ通信部41等の動作を制御する。サーバ処理部50は、サーバ記憶部42に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、サーバ処理部50は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
【0157】
サーバ処理部50は、非固定領域抽出処理部51と、伸縮画像データ送信部52とを有する。非固定領域抽出処理部51は、シート画像データ取得部511と、モアレ領域抽出部512と、非固定領域抽出部513とを有する。モアレ領域抽出部512は、画像変換部521と、ローパスフィルタ部522と、エッジ強調処理部523と、ポリゴン抽出部524と、候補ポリゴン決定部525と、モアレ領域判定部526と、パラメータ変更部527と、モアレ領域決定部528とを有する。非固定領域抽出部513は、頂点抽出部531と、モアレ領域高さ決定部532と、固定領域幅決定部533と、非固定領域決定部534とを有する。サーバ処理部50が有するこれらの各部は、サーバ処理部50が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、サーバ処理部50が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとしてサーバ4に実装されてもよい。
【0158】
<第2実施形態に係る画像領域抽出システムによる画像領域抽出処理>
図16は、画像領域抽出システム2による画像領域抽出処理を示すフローチャートである。
【0159】
まず、シート撮像処理部31は、所定の回数に亘ってシートを撮像する撮像処理を実行する(S401)。次いで、シート撮像データ送信部32は、S401の処理で撮像されたシートを含む所定の個数のシート画像を示すシート画像データをサーバ4に送信する(S402)。
【0160】
次いで、非固定領域抽出処理部51は、受信したシート画像データに対応する所定の個数のシート画像に含まれるシートから非固定領域を抽出する非固定領域抽出処理を所定の回数に亘って実行する(S403)。次いで、伸縮画像データ送信部52は、S403の処理で抽出された非固定領域を含む非固定領域画像を示す非固定領域画像データを端末装置3に送信する(S404)。
【0161】
次いで、非固定領域出力部33は、受信した非固定領域画像データに含まれる所定の個数の伸縮画像を、ディスプレイ14に表示する表示位置を示す表示位置情報と共に、ディスプレイ14に出力する(S405)。ディスプレイ14は、所定の個数の非固定領域画像を、表示位置情報に対応する表示位置に表示する。
【0162】
次いで、非固定領域選択指示部34は、所定の個数の非固定領域画像の何れを選択するかを示す選択指示信号を出力する(S406)。一態様では、撮像指示は、文字列「画像を1つ選択して下さい」を含む。そして、非固定領域画像決定部35は、不図示のオペレータが選択した非固定領域画像を使用する非固定領域画像に決定する(S407)。
【0163】
図17(A)はS401の処理のより詳細な処理を示すフローチャートであり、
図17(B)はS403の処理のより詳細な処理を示すフローチャートである。
【0164】
S401において、まず、撮像指示部311は、不図示のオペレータによる画像領域抽出プログラムの立上げ処理に応じて、不図示のオペレータにシートの撮像を指示する撮像指示を示す撮像指示信号をディスプレイ14に出力する(S501)。一態様では、撮像指示は、文字列「シートを撮影して下さい」を含む。ディスプレイ14は、撮像指示信号が入力されると、撮像指示信号に対応する撮像指示に含まれる文字列を表示する。
【0165】
次いで、シート画像データ取得部312は、不図示のオペレータによる端末装置3を使用したシートの撮像動作に応じて、撮像部16を介してシートを含むシート画像を示すシート画像データを取得する(S502)。シート画像データに対応するシート画像は、第1パターンP101と第2パターンP102が重ねられたことによりモアレが発生するモアレ領域を含むように撮像されたカラー画像である。
【0166】
次いで、撮像処理終了判定部313は、撮像回数が所定の回数に達したか否かを判定する(S503)。撮像処理終了判定部313によって撮像回数が所定の回数に達していないと判定される(S503−NO)と、処理はS501に戻る。以降、撮像処理終了判定部313によって撮像回数が所定の回数に達したと判定される(S503−YES)まで、S501〜S503の処理が繰り返される。撮像処理終了判定部313によって撮像回数が所定の回数に達したと判定される(S503−YES)と、処理は終了する。
【0167】
S403において、まず、シート画像データ取得部511は、受信したシート画像データを取得する(S601)。シート画像データは、所定の個数のシート画像に対応する。
【0168】
次いで、モアレ領域抽出部512は、S601の処理で取得されたシート画像データに対応する所定の個数のシート画像の何れか1つから、第1パターンP101と第2パターンP102が重ねられたことによりモアレが発生するモアレ領域を抽出する(S602)。画像変換部521〜モアレ領域決定部528によるS602のより詳細な処理は、S103の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0169】
次いで、非固定領域抽出部513は、S602の処理で抽出されたモアレ領域から、粘着部が配置されている固定領域の大きさに基づいて、粘着部が配置されていない非固定領域を抽出する(S603)。頂点抽出部531〜非固定領域決定部534によるS603のより詳細な処理は、S104の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0170】
次いで、抽出処理終了判定部514は、非固定領域抽出処理の実行回数が所定の回数に達したか否かを判定する(S604)。抽出処理終了判定部514によって非固定領域抽出処理の実行回数が所定の回数に達していないと判定される(S604−NO)と、処理はS602に戻る。以降、抽出処理終了判定部514によって非固定領域抽出処理の実行回数が所定の回数に達したと判定される(S604−YES)まで、S602〜S604の処理が繰り返される。抽出処理終了判定部514によって非固定領域抽出処理の実行回数が所定の回数に達したと判定される(S604−YES)と、処理は終了する。
【0171】
<実施形態に係る画像領域抽出方法の作用効果>
図18に示すように、クラック110に貼り付けられたシート100の非固定領域101cがクラック110のクラック幅が大きくなるに従って伸長する。一方、第1固定領域101a及び第2固定領域101bはクラック110のクラック幅の大きさにかかわらず、大きさは変化しない。実施形態に係る画像領域抽出方法では、第1固定領域101a及び第2固定領域101bの大きさがクラック110のクラック幅の大きさに変化に応じて変化しないことを利用して、簡易な演算に基づいて非固定領域101cを抽出することができる。
【0172】
<実施形態に係る画像領域抽出方法の変形例>
本開示で使用されるシートでは、非固定領域は離隔して配置される第1固定領域と第2固定領域との間に配置されるが、実施形態に係る画像領域抽出方法に使用されるシートはこのような形状に限定されるものではない。
【0173】
図19(A)は第1変形例に係るシートを示す図であり、
図19(B)は第2変形例に係るシートを示す図である。
図19(A)に示すシートは
図2(B)に示すシートと同様な構成を有し、
図19(B)に示すシートは
図2(C)に示すシートと同様な構成を有する。
【0174】
シート200において、クラック210の拡大した場合でもシート200の高さHが略同一である場合、非固定領域201cの幅W3は、シート200の幅W、第1基準縦横比k
1及び第2基準縦横比k
2から決定される。第1基準縦横比k
1は、非固定領域201cが拡縮していない状態におけるシート200の左端と非固定領域201cの左端との間の長さW1のシート200の高さHに対する比率(W1/H)である。第2基準縦横比k
2は、非固定領域201cが拡縮していない状態におけるシート200の右端と非固定領域201cの右端との間の長さW2のシート200の高さHに対する比率(W2/H)である。
【0175】
シート300において、クラック310の拡大した場合でもシート300の高さHが略同一である場合、非固定領域301cの幅W3は、シート300の幅W、第1基準縦横比k
1及び第2基準縦横比k
2から決定される。第1基準縦横比k
1は、非固定領域301cが拡縮していない状態におけるシート300の左端と非固定領域301cの左端との間の長さW1のシート300の高さHに対する比率(W1/H)である。第2基準縦横比k
2は、非固定領域301cが拡縮していない状態におけるシート300の右端と非固定領域301cの右端との間の長さW2のシート300の高さHに対する比率(W2/H)である。
【0176】
<実施形態に係る画像領域抽出方法と周波数解析による画像領域抽出方法との比較>
図20は、実施形態に係る画像領域抽出方法と比較される周波数解析による画像領域抽出方法(本開示で、周波数解析法ともいう。)を説明するための図である。
図20(A)はクラックが発生した壁面にシートを貼付けたときに撮影されたモアレ領域の例を示し、
図20(B)はクラック幅が拡大した後に撮影されたモアレ領域の例を示す。
図20(C)は周波数解析法におけるスキャンの例を示し、
図20(D)は周波数解析法における非固定領域の判定例を示す。
【0177】
図20(A)に示すように、シート400をクラックが発生した貼付けたときは、第1固定領域401a、第2固定領域401b及び非固定領域401cに発生するモアレの空間周波数は同一である。一方、
図20(B)に示すように、クラック幅が拡大した後では、非固定領域401cに発生するモアレの空間周波数は、第1固定領域401a及び第2固定領域401bに発生するモアレの空間周波数よりも高くなる。
【0178】
図20(C)に示すように、周波数解析法は、微小領域410内で空間周波数を計算し、微小領域410が高周波数領域か及び低周波数領域の何れの領域に属するかをシート400の全領域に亘って順次スキャンしながら判定することで非固定領域を抽出する。
【0179】
図20(D)に示すように、周波数解析法は、低周波数領域と判定された領域は第1固定領域401a及び第2固定領域401bであり非固定領域401cではないとし、高周波数領域と判定された領域を非固定領域401cとして抽出する。
【0180】
図21は、実施形態に係る画像領域抽出方法と周波数解析法との比較を示す図である。
図21(A)はクラックが発生した壁面にシートを貼付けたときに撮影されたモアレ領域の例を示し、
図20(B)はクラック幅が拡大した後に撮影されたモアレ領域の例を示し、
図20(C)はクラック幅に変化がないときに撮影されたモアレ領域の例を示す。
図20(D)は、実施形態に係る画像領域抽出方法が非固定領域を判定できるのに対し、周波数解析法非固定領域を判定できない第1のサンプルシートを示す。
図20(E)は、実施形態に係る画像領域抽出方法が非固定領域を判定できるのに対し、周波数解析法非固定領域を判定できない第2のサンプルシートを示す。
【0181】
図21(A)及び21(C)に示すように、シート500をクラックが発生した貼付けたとき及び非固定領域501cが伸縮しないときは、第1固定領域501a、第2固定領域501b及び非固定領域501cに発生するモアレの空間周波数は同一である。一方、
図21(B)に示すように、クラック幅が拡大した後では、非固定領域501cに発生するモアレの空間周波数は、第1固定領域501a及び第2固定領域501bに発生するモアレの空間周波数よりも高くなる。
【0182】
第1サンプルシート510は、左端に位置する第1端部511a及び右端に位置する第2端部511bに発生するモアレの空間周波数を、第1端部511aと第2端部511bとの間に位置する中央部511cの空間周波数よりも高くなるように形成される。
【0183】
実施形態に係る画像領域抽出方法は、第1端部511a及び第2端部511bのそれぞれの縦横比に基づいて中央部511cを抽出するので、第1サンプルシート510から中央部511cを抽出することができる。一方、周波数解析法は、第1端部511a及び第2端部511bに発生するモアレの空間周波数よりもモアレの空間周波数が小さい領域を中央部511cとするので、第1サンプルシート510から中央部511cを抽出することができない。なお、周波数解析法の変形例として、第1端部511a及び第2端部511bに発生するモアレの空間周波数が略同一であり且つ発生する空間周波数が第1端部511a及び第2端部511bと異なる領域を中央部511cとして抽出する方法がある。周波数解析法の変形例は、発生する空間周波数が第1端部511a及び第2端部511bと異なる領域を中央部511cとして抽出するので、第1サンプルシート510から中央部511cを抽出することができる。
【0184】
第2サンプルシート520は、左端に位置する第1端部521a及び右端に位置する第2端部521bに発生するモアレの空間周波数を、第1端部521aと第2端部521bとの間に位置する中央部521cの空間周波数よりも高くなるように形成される。第1端部521aは、左端に位置し且つ発生するモアレの空間周波数が中央部521cの空間周波数よりも高い第1−1端部521a1と、発生するモアレの空間周波数が第1−1端部521a1より空間周波数が更に高い第1−2端部521a2とを有する。第2端部521bは、右端に位置し且つ発生するモアレの空間周波数が中央部521cの空間周波数よりも高い第2−1端部521b1と、発生するモアレの空間周波数が第2−1端部521b1より空間周波数が更に高い第2−2端部521b2とを有する。
【0185】
実施形態に係る画像領域抽出方法は、第1端部521a及び第2端部521bのそれぞれの縦横比に基づいて中央部521cを抽出するので、第2サンプルシート520から中央部521cを抽出することができる。一方、周波数解析法は、第1端部511a及び第2端部511bに発生するモアレの空間周波数よりもモアレの空間周波数が小さい領域を中央部511cとするので、第1サンプルシート510から中央部511cを抽出することができない。また、周波数解析法の変形例は、第1−1端部521a1及び第2−1端部521b1と周波数が相違する第1−2端部521a2、第2−2端部521b2及び中央部511cを中央部抽出し、中央部511cのみを抽出することはできない。
【0186】
表1は、第1サンプルシート510及び第2サンプルシート520を使用した中央部の抽出結果をまとめた表である。実施形態に係る画像領域抽出方法は、第1サンプルシート510及び第2サンプルシート520の双方で、中央部を正確に抽出することができる。周波数解析法は、第1サンプルシート510では変形例によれば中央部を抽出できるが、第2サンプルシート520では中央部を正確に抽出することはできない。