(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6849511
(24)【登録日】2021年3月8日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】電動機の軸受交換方法
(51)【国際特許分類】
F16C 35/06 20060101AFI20210315BHJP
H02K 5/16 20060101ALI20210315BHJP
F16C 35/067 20060101ALI20210315BHJP
F16C 35/063 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
F16C35/06 A
H02K5/16 Z
F16C35/067
F16C35/063
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-75168(P2017-75168)
(22)【出願日】2017年4月5日
(65)【公開番号】特開2018-179038(P2018-179038A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】茨木 保
【審査官】
古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−103871(JP,A)
【文献】
特開2014−018077(JP,A)
【文献】
特開2012−060794(JP,A)
【文献】
特開2010−137766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/66
F16C 35/00−39/06
F16C 43/00−43/08
H02K 5/00− 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の電動機ケースの両側にブラケットが夫々連結され、両ブラケットに一対の軸受を介して回転軸が軸支され、回転軸に固定される油切り部材に形成した第1の凹凸部と、径方向内方に位置する両ブラケットの部分に夫々形成した第2の凹凸部とを非接触で噛み合わせた電動機にて軸受を交換する電動機の軸受交換方法であって、
各軸受の外輪の軸方向内方の端面及び上面に、ブラケットに嵌合されて固定される軸受箱が当接すると共に、その軸方向外方の端面に軸受箱に固定される軸受押えが当接するものにおいて、
軸受押えを取り外した後、回転軸から軸受箱を軸受と共に抜きとり、油切り部材とブラケットとの第1及び第2の両凹凸部を径方向で互いに接触させて、回転軸に対して電動機ケースに固定の固定子が仮支持された状態とする取外工程と、
軸受箱内の所定位置に軸受をセットして回転軸に外挿した後、回転軸の延長線上に圧入工具支えを同心にセットすると共に、圧入工具を圧入工具支えと回転軸とに外挿し、圧入工具支えで案内させながら圧入工具を軸方向内方に移動させることで、この圧入工具により軸受の軸方向外方の側面を押圧してブラケットと軸受箱とを嵌合させる組付工程とを含むことを特徴とする電動機の軸受交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の軸受交換方法に関し、より詳しくは、鉄道車両に用いられる全閉形の主電動機にて固定子と回転子とを分解することなく、軸受を交換するためのものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道車両に用いられる主電動機として、外気を取り込まずに外枠に設けた冷却フィンや冷却器によって冷却する所謂全閉形のものが広く採用されている。このような全閉形の主電動機は例えば特許文献1で知られている。このものは、筒状の電動機ケースを備え、電動機ケースの両側には、電動機ケース内を閉塞するブラケットが夫々連結され、両ブラケットに一対の軸受を介して回転軸が軸支されている。回転軸には、両軸受の軸方向内方に位置させて油切り部材(オイルスロワ)が夫々固定されている。油切り部材には径方向に凹凸を繰り返す第1の凹凸部が形成されている。また、径方向内方に位置する両ブラケットの部分には径方向に凹凸を繰り返す第2の凹凸部が夫々形成され、第1の凹凸部と第2の凹凸部とを非接触で噛み合わせて所謂ラビリンスシールを構成し、後述の両軸受箱内に収納される潤滑剤が電動機ケース内に流出しないようにしている。そして、回転軸には回転子が固定されると共に、回転子を囲うように電動機ケース内には固定子が固定されている。
【0003】
駆動側に位置する軸方向一方の第1軸受は円筒ころ軸受で構成され、その外輪の軸方向内方の端面及び上面には、ブラケットに嵌合されて固定される第1軸受箱が当接し、軸受押えを兼用するようにしている。第1軸受の外輪の軸方向外方の端面には、他の油切り部材を介して第1軸受押え(軸受カバー)が取り付けられ、第1軸受の軸方向への抜け止めがなされている。また、反駆動側に位置する軸方向他方の第2軸受は玉軸受で構成され、その外輪の軸方向内方の端面及び上面には、ブラケットに嵌合されて固定される第2軸受箱が当接し、軸受押えを兼用するようにしている。また、第2軸受の軸方向外方の端面には第2軸受押えが当接し、これに当接する軸受カバーにより第2軸受が抜け止めされるようにしている。
【0004】
上記主電動機にて第1及び第2の各軸受を交換しようする場合、回転軸に固定の回転子と固定子を分解する必要はない。即ち、反駆動側の第2軸受の交換を例に説明すると、回転軸から油切り部材を取り外した後、第1軸受押えを取り外す。そして、反駆動側のブラケットに固定の第2軸受箱を第2軸受と共に抜きとる。第2軸受箱を取り外すと、第2軸受により回転軸に対して電動機ケースに固定の固定子を支持できないため、その自重で第2油切り部材と反駆動側のブラケットとの第1及び第2の両凹凸部が径方向で互いに接触することで、回転軸に対して電動機ケースに固定の固定子が仮支持された状態となる。ここで、回転軸に対して電動機ケースに固定の固定子が仮支持された状態では、回転軸に対して固定子が芯ずれしている。このため、第2軸受を再度組み付けるときに、例えば軸受の転動体にスラスト方向の荷重が付加されたのでは軸受の損傷を招く虞がある。このため、軸受の損傷を招くことなく、作業性よく各軸受の交換することができる方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−103871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、軸受の損傷を招くことがない作業性の良い電動機の軸受交換方法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、筒状の電動機ケースの両側にブラケットが夫々連結され、両ブラケットに一対の軸受を介して回転軸が軸支され、回転軸に固定される油切り部材に形成した第1の凹凸部と、径方向内方に位置する両ブラケットの部分に夫々形成した第2の凹凸部とを非接触で噛み合わせた電動機にて軸受を交換する電動機の軸受交換方法であって、各軸受の外輪の軸方向内方の端面及び上面に、ブラケットに嵌合されて固定される軸受箱が当接すると共に、その軸方向外方の端面に軸受箱に固定される軸受押えが当接するものにおいて、軸受押えを取り外した後、回転軸から軸受箱を軸受と共に抜きとり、油切り部材とブラケットとの第1及び第2の両凹凸部を径方向で互いに接触させて、回転軸に対して電動機ケースに固定の固定子が仮支持された状態とする取外工程と、軸受箱内の所定位置に軸受をセットして回転軸に外挿した後、回転軸の延長線上に圧入工具支えを同心にセットすると共に、圧入工具を圧入工具支えと回転軸とに外挿し、圧入工具支えで案内させながら圧入工具を軸方向内方に移動させることで、この圧入工具により軸受の軸方向外方の側面を押圧してブラケットと軸受箱とを嵌合させる組付工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、圧入工具支えで圧入工具を案内させることで、圧入工具と回転軸との同心を維持したままこの圧入工具により軸受の側面を押圧してブラケットと軸受箱とを再度嵌合させるため、組付時、軸受の転動体にスラスト方向の負荷がかかることが抑制され、軸受が損傷するといった不具合は生じない。しかも、圧入工具支えと圧入工具とをセットして、圧入工具支えで案内させながら圧入工具を軸方向内方に移動させるだけであるから、軸受組付の作業性もよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態の軸受交換方法が実施できる電動機の断面図。
【
図2】
図1の電動機の構成部品の一部を取り外した状態で示す断面図。
【
図3】(a)及び(b)は、第1軸受の取付手順を示す部分拡大断面図。
【
図4】(a)及び(b)は、第2軸受の取付手順を示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、電動機を所謂全閉形のものとし、固定子と回転子とを分解することなく、軸受を交換するための本発明の電動機の軸受交換方法の実施形態を説明する。以下において、軸方向のうち電動機ケースの内側に向かう方向を内方として、
図1に示す電動機の姿勢を基準に「上」、「下」、「左」、「右」といった方向を示す用語を用いるものとする。
【0011】
図1及び
図2を参照して、EMは、全閉形の電動機である。電動機EMは、電動機ケース1を備え、電動機ケース1の左右には、電動機ケース1内を閉塞するブラケット2a,2bが夫々連結されている。両ブラケット2a,2bには一対の軸受3a,3bを介して回転軸4が軸支されている。駆動側に位置する軸方向一方(
図1中、左側)の第1軸受3aは円筒ころ軸受で構成され、その外輪31aの軸方向内方の端面及び上面には、左側のブラケット2aに固定される、グリス等の潤滑剤を収納する収納部を持つ第1軸受箱5aが当接し、軸受押えを兼用するようにしている。この場合、左側のブラケット2aの所定位置には受入凹部20aが形成されると共に、第1軸受箱5aの軸方向内方側には、受入凹部20aに嵌合する凸状部51aが形成されており、左側のブラケット2aの受入凹部20aに第1軸受箱5aの凸状部51aが嵌合すると、回転軸4と左側のブラケット2a、ひいては、回転軸4と電動機ケース1に固定の固定子Stとの同心が取れるようにしている。なお、第1軸受箱5aの凸状部51aの軸方向内方の端面には縮径部(本実施形態では、面取り面)52aが形成され、回転軸4とブラケット2aとが芯ずれした状態でも左側のブラケット2aに対して第1軸受箱5aの縮径部52aを挿入できるようにしている。
【0012】
第1軸受3aの外輪31aの軸方向外方の端面には、第1の油切り部材(オイルスロワ)6aを介して第1軸受押え(軸受カバー)7aが取り付けられ、軸受の軸方向への抜け止めがなされている。なお、回転軸4には、第1軸受3aの軸方向内方に位置させて第2の油切り部材(オイルスロワ)6bが固定され、第2の油切り部材6bには径方向に凹凸を繰り返す第1の凹凸部61が形成されて、径方向内方に位置する左側のブラケット2aの部分には径方向に凹凸を繰り返す第2の凹凸部21が夫々形成されている。そして、第1の凹凸部61と第2の凹凸部21とを非接触で噛み合わせて所謂ラビリンスシールを構成して、第1軸受箱5a内に収納される潤滑剤が電動機ケース1内に流出しないようにしている。
【0013】
反駆動側に位置する軸方向他方(
図1中、右側)の第2軸受3bは玉軸受で構成され、その外輪32aの軸方向内方の端面及び上面に、右側のブラケット2bに固定される、グリス等の潤滑剤を収納する収納部を持つ第2軸受箱5bが当接すると共に、第2軸受3bの内輪32bの軸方向外方の端面には、第2軸受押え7bが当接し、第2軸受押え7bに当接するカバー7cにより第2軸受3bが抜け止めされるようにしている。この場合もまた、右側のブラケット2bの所定位置には受入凹部20bが形成されると共に、第2軸受箱5bの軸方向内方側には、受入凹部20bに嵌合する凸状部51bが形成されており、右側のブラケット2bの受入凹部20bに第2軸受箱5bの凸状部51bが嵌合すると、回転軸4とブラケット2b、ひいては、回転軸4と電動機ケース1に固定の固定子Stとの同心を取れるようにしている。なお、第2軸受箱5bの凸状部51bの軸方向内方の端面には縮径部52bが形成されている。
【0014】
また、回転軸4には、上記同様、第2軸受3bの軸方向内方に位置させて第3の油切り部材(オイルスロワ)6cが固定され、第3の油切り部材6cには径方向に凹凸を繰り返す第1の凹凸部62が形成されて、径方向内方に位置する右側のブラケット2bには径方向に凹凸を繰り返す第2の凹凸部22が夫々形成され、第1の凹凸部62と第2の凹凸部22とを非接触で噛み合わせて所謂ラビリンスシールを構成するようにしている。そして、回転軸4には回転子Rtが固定されると共に、回転子Rtを囲うように電動機ケース1内には固定子Stが固定されている。なお、
図1中、Fcはファンであり、電動機EMの構造自体は公知のものであるため、これ以上の詳細な説明は省略する。以下に、
図3、
図4も参照して、ブラケット2a,2bに対して両軸受箱5a,5bを夫々圧入できる治具8,9を用いた第1及び第2の両軸受3a,3bの交換方法を説明する。
【0015】
第1軸受3aの取外工程においては、先ず、駆動側(
図1中、左側)にて軸受押え7aと第1の油切り部材6aとを取り外し、左側のブラケット2aに固定された第1軸受箱5aを第1軸受3aの外輪31aと共に抜きとる(
図2参照)。これにより、第2の油切り部材6bと左側のブラケット2aとの第1及び第2の各凹凸部61,21が径方向で互いに接触して、回転軸4に対して電動機ケース1に固定の固定子Stが仮支持された状態となり、この状態では、回転軸4に対して電動機ケース1に固定の固定子Stが芯ずれしている。なお、第1及び第2の各凹凸部61,21との間の隙間を局所的に狭くしておけば、第1及び第2の各凹凸部61,21を互いに確実に接触できてよい。そして、回転軸4に残る第1軸受3aの内輪31bを取り外すことで、第1軸受3aの取外作業が完了する。
【0016】
第1軸受3aの組付作業においては、先ず、第1軸受3aの内輪31bを回転軸4に取り付けた後、治具8の圧入工具支え81を回転軸4の延長線上に同心にセットする。圧入工具支え81は、頭部81aと、頭部81aから軸方向外方にのびるロッド部81bとで構成され、頭部81aが回転軸4の端面に公知の方法で係止されるようになっている。そして、第1軸受3aの外輪31aを第1軸受箱5aの所定位置に組み込んで一体化した後、回転軸4に外挿し、この状態で軸方向外方から圧入工具82を圧入工具支え81と回転子軸4とに外挿する。
【0017】
圧入工具82は有底筒状の部材で構成され、軸方向内方側に位置する開口面側(
図3中、右側)の端部内面には内寸が回転軸4の外径と同等であって回転軸4の外周面を摺動自在な第1の突条部82aが設けられている。また、開口面の周縁部には、軸方向内方に向けて突出する第2の突条部82bが設けられ、圧入工具82を軸方向内方に移動させるとき、第1軸受3aの外輪31aのみを押圧できるようにしている。開口面の周縁部には更に、第1軸受箱5aの軸方向外方の端面に係合する係合段差部82cが形成されている。また、圧入工具82の軸方向外側に位置する側板部82dには、圧入工具支え81のロッド部81bが挿通する挿通孔82eが開設され、圧入工具82を回転軸4の回転軸線に沿う移動を案内するようにしている(
図3(a)参照)。
【0018】
圧入工具82がセットされると、挿通孔81eを通して圧入工具82より軸方向外方に突出するロッド部81bの部分に、圧入工具82を押圧するために中心に貫通穴83aが空いたシリンダ83bを取り付け、シリンダ83bの一端を固定するためにストッパ83cを圧入工具支え81に取り付ける。この状態でシリンダ83bを軸方向内方に向けて動作させると、圧入工具支え81のロッド部81bで案内されながら圧入工具82が軸方向内方に移動する。これにより、圧入工具82の第1の突条部82aが第1軸受3aの外輪31aの側面を押圧すると共に、係合段差部82cが第1軸受箱5aを押圧し、左側のブラケット2aの受入凹部20aに第1軸受箱5aの凸状部51aの先端が侵入し、第1軸受箱5aがブラケット2aに嵌合して外輪31aと内輪31bとが適正な位置になる。このとき、第2の油切り部材6bと左側のブラケット2aとの第1及び第2の各凹凸部61,21が所定の隙間を持つ非接触状態に戻り、組付工程が完了する。そして、上記と逆の手順で治具8を取り外した後、軸受押え7aと第1の油切り部材6aとを取り付けて第1軸受3aの交換が完了する。
【0019】
他方、第2軸受3bの交換作業は基本的に第1軸受3aの交換作業と同じであり、その取外工程においては、先ず、反駆動側(
図1中、右側)にて第2軸受押え7bを取り外し、第2軸受箱5bを第2軸受3bと共に取り外す。このとき、第3の油切り部材6cと右側のブラケット2bとの第1及び第2の各凹凸部62,22が径方向で互いに接触して、回転軸4に対して電動機ケース1に固定の固定子Stが仮支持された状態となる。第2軸受箱5bと共に抜きとられた第2軸受3bはプレス等によって取り外される。これにより、第2軸受3bの取外工程が完了する。
【0020】
第2軸受3bの取付工程においては、他の治具9を構成する圧入工具支え91を回転軸4の端面に取り付ける。圧入工具支え91は、上記同様、頭部91aと、頭部91aから軸方向外方にのびるロッド部91bとで構成され、回転軸4の軸線方向の延長線上にセットされる。頭部91aの外径は第2軸受3bの内径と同等に設定されている。そして、第2軸受3bを第2軸受箱5bの所定位置に組み込んで一体化した後、頭部91aに外挿し、この状態で軸方向外方から圧入工具92をセットする。この場合、圧入工具92は有底筒状の部材で構成され、圧入工具92の開口面側の端面で第2軸受3bの側面(内輪32b及び外輪32aの側面)を押圧できるようにしている。そして、上記と同様に、圧入工具92を押圧するために中心に貫通穴93aが空いたシリンダ93bを取り付け、シリンダ93bの一端を固定するためにストッパ93cを圧入工具支え91に取り付ける。そして、シリンダ93bを軸方向内方に向けて動作させると、圧入工具支え91のロッド部91bで案内させながら圧入工具92が軸方向内方に移動する。これにより、圧入工具92が第2軸受3bの側面を押圧し、右側のブラケット2bの受入凹部20bに第2軸受箱5bの凸状部51bの先端が侵入して第2軸受箱5bが右側のブラケット2bに組み付けられる。このとき、第3の油切り部材6cと右側のブラケット2bとの第1及び第2の各凹凸部62,22が所定の隙間を持つ非接触状態に戻る。そして、上記と逆の手順で治具9を取り外した後、軸受押え7bとカバー7cとを取り付けて第2軸受3bの交換が完了する。
【0021】
以上説明したように、本実施形態では、第1軸受3a及び第2軸受3bの組付時、圧入工具支え81,91で圧入工具82,92を夫々案内させることで、圧入工具82,92と回転軸4との同心を維持したままこの圧入工具82,92により第1軸受3a及び第2軸受3bの側面を夫々押圧してブラケット2a,2bと軸受箱5a,5bとを再度嵌合させるため、第1軸受3aまたは第2軸受3bの転動体にスラスト方向の負荷がかかることが抑制され、第1軸受3a及び第2軸受3bが損傷するといった不具合は生じない。しかも、治具8,9をセットして、圧入工具支え81,91で案内させながら圧入工具82,92を軸方向内方に移動させるだけであるから、軸受組付の作業性もよい。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、圧入工具支え81,91や圧入工具82,92の構成は上記にものに限定されるものではなく、圧入工具82,92と回転軸4との同心を維持したままブラケット2a,2bに対して両軸受箱5a,5bを夫々圧入できるものであれば、その形態は問わない。また、上記実施形態では、ブラケット2a,2bの所定位置には受入凹部20a,20bが形成されると共に、軸受箱5a,5bの軸方向内方側に受入凹部20a,20bに嵌合する凸状部51a,51bが形成されたものを例に説明したが、ブラケット2a,2bに対して軸受箱5a,5bが嵌合して同心をとれるものであればその形態は問わない。
【符号の説明】
【0023】
EM…全閉形の電動機、1…電動機ケース、2a,2b…ブラケット、21…第2の凹凸部、3a,3b…軸受、4…回転軸、6a,6b,6c…油切り部材、7a,7b…軸受押え、81,91…圧入工具支え、82,92…圧入工具、St…固定子、Rt…回転子。