(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所与の要求電気ブレーキ力の指令信号に基づく電気ブレーキの制御を行うとともに、電制対象軸の状態値が電制用滑走検知閾値条件を満たした場合に電制再粘着制御を行う電気ブレーキ制御部と、
所与の要求空気ブレーキ力の指令信号に基づく空気ブレーキの制御を行うとともに、空制対象軸の状態値が空制用滑走検知閾値条件を満たした場合に空制再粘着制御を行う空気ブレーキ制御部と、
所与の要求ブレーキ力に基づいて前記要求電気ブレーキ力の指令信号及び前記要求空気ブレーキ力の指令信号を生成する協調制御部と、
を備えた電空協調ブレーキ制御システムの制御方法であって、
ブレーキ開始の際に前記空制用滑走検知閾値条件の方が、前記電制用滑走検知閾値条件よりも敏感に滑走を検知可能とさせるために相対的に前記状態値の閾値が低い条件となるように設定する設定ステップと、
ブレーキ中において、閾値条件を変更する条件として定められた閾値変更条件を満たした場合に、前記電制用滑走検知閾値条件の方が、前記空制用滑走検知閾値条件よりも敏感に滑走を検知可能とさせるために相対的に前記状態値の閾値が低い条件に変更する変更ステップと、
を含む制御方法。
前記変更ステップは、前記電制用滑走検知閾値条件を満たした前記電制対象軸、及び/又は、前記空制用滑走検知閾値条件を満たした前記空制対象軸、の滑走の程度を表す加速度、滑走速度又はこれらの相当値でなる滑走指標値に基づき定められた滑走の程度が比較的大きいことを示す条件を満たすことを、前記閾値変更条件に少なくとも含めて、前記閾値変更条件を満たすかを判定する、
請求項1又は2に記載の制御方法。
前記変更ステップは、1回のブレーキ中に前記電制用滑走検知閾値条件を満たした回数が所定回数に達したことを、前記閾値変更条件に少なくとも含めて、前記閾値変更条件を満たすかを判定する、
請求項1〜4の何れか一項に記載の制御方法。
前記変更ステップは、前記空気ブレーキのブレーキ力を示す空気ブレーキ力相当値、前記電気ブレーキのブレーキ力を示す電気ブレーキ力相当値、または、前記要求ブレーキ力が、所定の大きさ以上のブレーキ力であることを示す所定のブレーキ条件を満たすことを、前記閾値変更条件に少なくとも含めて、前記閾値変更条件を満たすかを判定する、
請求項1〜6の何れか一項に記載の制御方法。
前記電気ブレーキ制御部による前記電制対象軸と、前記空気ブレーキ制御部による前記空制対象軸とは、一部又は全部が同じ軸である、或いは、前記空気ブレーキ制御部による前記空制対象軸の一部が前記電気ブレーキ制御部による前記電制対象軸である、
請求項1〜7の何れか一項に記載の制御方法。
所与の要求電気ブレーキ力の指令信号に基づく電気ブレーキの制御を行うとともに、電制対象軸の状態値が電制用滑走検知閾値条件を満たした場合に電制再粘着制御を行う電気ブレーキ制御部と、
所与の要求空気ブレーキ力の指令信号に基づく空気ブレーキの制御を行うとともに、空制対象軸の状態値が空制用滑走検知閾値条件を満たした場合に空制再粘着制御を行う空気ブレーキ制御部と、
所与の要求ブレーキ力に基づいて前記要求電気ブレーキ力の指令信号及び前記要求空気ブレーキ力の指令信号を生成する協調制御部と、
を備えた電空協調ブレーキ制御システムであって、
ブレーキ開始の際に前記空制用滑走検知閾値条件の方が、前記電制用滑走検知閾値条件よりも敏感に滑走を検知可能とさせるために相対的に前記状態値の閾値が低い条件となるように設定する初期設定部と、
ブレーキ中において、閾値条件を変更する条件として定められた閾値変更条件を満たした場合に、前記電制用滑走検知閾値条件の方が、前記空制用滑走検知閾値条件よりも敏感に滑走を検知可能とさせるために相対的に前記状態値の閾値が低い条件に変更する変更部と、
を備えた電空協調ブレーキ制御システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気ブレーキと空気ブレーキとを併用する協調制御にあっては、電制側では電気ブレーキに係る電制対象軸の滑走を、空制側では空気ブレーキに係る空制対象軸の滑走を、それぞれ検知する。そして、電制側で滑走が検知されればその電制対象軸を対象に再粘着制御(電制再粘着制御)が行われ、空制側で滑走が検知されればその空制対象軸を対象に再粘着制御(空制再粘着制御)が行われるが、その際、空制側よりも電制側の方が滑走を検知し易いように閾値条件が定められているのが一般的であった。よって、滑走が生じた場合に先に再粘着制御が行われるのは、電制側であることが多かった。
【0007】
しかし、電動機制御装置の発生電気ブレーキ力がブレーキ受量器にフィードバックされているため、電制再粘着制御が行われると、その間の電制ブレーキ力の低下分が協調制御によって要求空気ブレーキ力に配分されて、空気ブレーキ力で補われることとなり、まわりまわって要求電気ブレーキ力が低減されることとなって、空制が支配的な状況になる場合があった。その結果、電制再粘着制御によって再粘着がなされたとしても要求電気ブレーキ力が低いままであるために回生電力量が低下してしまったり、要求空気ブレーキ力が増大するために制輪子の摩耗を招くといった問題があった。また、空気ブレーキ力の増大時に車両が前後動して乗り心地の悪化を招くおそれもあった。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑み、電空協調制御において、空制再粘着制御よりも電制再粘着制御の方が発動し易いことによって生じる回生電力量の低下や制輪子の摩耗といった問題を解消することを目的として考案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明は、
所与の要求電気ブレーキ力の指令信号に基づく電気ブレーキの制御を行うとともに、電制対象軸の状態値が電制用滑走検知閾値条件を満たした場合に電制再粘着制御を行う電気ブレーキ制御部(例えば、
図1の電気ブレーキ制御部20)と、
所与の要求空気ブレーキ力の指令信号に基づく空気ブレーキの制御を行うとともに、空制対象軸の状態値が空制用滑走検知閾値条件を満たした場合に空制再粘着制御を行う空気ブレーキ制御部(例えば、
図1の空気ブレーキ制御部30)と、
所与の要求ブレーキ力に基づいて前記要求電気ブレーキ力の指令信号及び前記要求空気ブレーキ力の指令信号を生成する協調制御部(例えば、
図1の協調制御部10)と、
を備えた電空協調ブレーキ制御システム(例えば、
図1の電空協調ブレーキ制御システム1)の制御方法であって、
ブレーキ開始の際に前記空制用滑走検知閾値条件の方が、前記電制用滑走検知閾値条件よりも敏感に滑走を検知可能とさせるために相対的に閾値が低い条件となるように設定する設定ステップ(例えば、
図2のステップS3)と、
ブレーキ中において、閾値条件を変更する条件として定められた閾値変更条件を満たした場合に、前記電制用滑走検知閾値条件の方が、前記空制用滑走検知閾値条件よりも敏感に滑走を検知可能とさせるために相対的に閾値が低い条件に変更する変更ステップ(例えば、
図2のステップS17)と、
を含む制御方法である。
【0010】
また、他の発明として、
所与の要求電気ブレーキ力の指令信号に基づく電気ブレーキの制御を行うとともに、電制対象軸の状態値が電制用滑走検知閾値条件を満たした場合に電制再粘着制御を行う電気ブレーキ制御部(例えば、
図1の電気ブレーキ制御部20)と、
所与の要求空気ブレーキ力の指令信号に基づく空気ブレーキの制御を行うとともに、空制対象軸の状態値が空制用滑走検知閾値条件を満たした場合に空制再粘着制御を行う空気ブレーキ制御部(例えば、
図1の空気ブレーキ制御部30)と、
所与の要求ブレーキ力に基づいて前記要求電気ブレーキ力の指令信号及び前記要求空気ブレーキ力の指令信号を生成する協調制御部(例えば、
図1の協調制御部10)と、
を備えた電空協調ブレーキ制御システム(例えば、
図1の電空協調ブレーキ制御システム1)であって、
ブレーキ開始の際に前記空制用滑走検知閾値条件の方が、前記電制用滑走検知閾値条件よりも敏感に滑走を検知可能とさせるために相対的に閾値が低い条件となるように設定する初期設定部(例えば、
図1の閾値条件初期設定部13)と、
ブレーキ中において、閾値条件を変更する条件として定められた閾値変更条件を満たした場合に、前記電制用滑走検知閾値条件の方が、前記空制用滑走検知閾値条件よりも敏感に滑走を検知可能とさせるために相対的に閾値が低い条件に変更する変更部(例えば、
図1の閾値条件変更部15)と、
を備えた電空協調ブレーキ制御システムを構成してもよい。
【0011】
第1の発明等によれば、ブレーキ開始の際は、電制用滑走検知閾値条件よりも空制用滑走検知閾値条件を満足し易くして、空制再粘着制御が優先して働くように設定する。一方、閾値変更条件を満たした場合には、空制用滑走検知閾値条件よりも電制用滑走検知閾値条件を満足し易くして、電制再粘着制御が優先して働くように設定する。これによれば、ブレーキ中、閾値変更条件を満たすまでの間は、電制側に比べて空制側が敏感に滑走を検知することが可能となり、空気ブレーキ力を優先的に引き下げる状態となる。したがって、従来のように、電制再粘着制御が優先的に働く結果、空制が支配的な状況となることを回避して、電制再粘着制御を有効に機能させ、回生電力量の増加を図ることができる。また、空制再粘着制御が優先的に働くことで空気ブレーキ力が緩められるため、制輪子の摩耗を抑えることが可能となる。
【0012】
また、第2の発明として、
前記電気ブレーキ制御部は、発生電気ブレーキ力を示すフィードバック信号を出力し、
前記協調制御部は、前記閾値変更条件を満たす前までは、前記要求ブレーキ力に対する所定の配分条件で要求電気ブレーキ力の指令信号及び前記要求空気ブレーキ力の指令信号を生成し、前記閾値変更条件を満たした後は、前記要求ブレーキ力を、前記フィードバック信号が示す前記発生電気ブレーキ力及び前記要求空気ブレーキ力で賄うように、要求電気ブレーキ力の指令信号及び前記要求空気ブレーキ力の指令信号を生成する、
第1の発明の制御方法を構成してもよい。
【0013】
第2の発明によれば、ブレーキを開始してから閾値変更条件を満たすまでは、所定の配分条件に従って要求電気ブレーキ力の指令信号及び要求空気ブレーキ力の指令信号を生成することとして、フィードバック信号を用いた協調制御を行わないため、より効果的に回生電力量を増加させ、制輪子の摩耗を抑えることが可能となる。その際、要求電気ブレーキ力の配分を多く、要求空気ブレーキ力の配分を少なくする配分条件とすれば、その効果がさらに高まる。
【0014】
また、第3の発明として、
前記変更ステップは、前記電制用滑走検知閾値条件を満たした前記電制対象軸、及び/又は、前記空制用滑走検知閾値条件を満たした前記空制対象軸、の滑走の程度を表す加速度、滑走速度又はこれらの相当値でなる滑走指標値に基づき定められた滑走の程度が比較的大きいことを示す条件を満たすことを、前記閾値変更条件に少なくとも含めて、前記閾値変更条件を満たすかを判定する、
第1又は第2の発明の制御方法を構成してもよい。
【0015】
第3の発明によれば、電制対象軸及び/又は空制対象軸の滑走の程度が比較的大きいときに、閾値変更条件を満たすとすることができる。
【0016】
また、第4の発明として、
前記変更ステップは、ブレーキ継続時間が所定時間経過したことを、前記閾値変更条件に少なくとも含めて、前記閾値変更条件を満たすかを判定する、
第1〜第3の何れかの発明の制御方法を構成してもよい。
【0017】
第4の発明によれば、ブレーキ継続時間が所定時間経過したときに、閾値変更条件を満たすとすることができる。
【0018】
また、第5の発明として、
前記変更ステップは、1回のブレーキ中に前記電制用滑走検知閾値条件を満たした回数が所定回数に達したことを、前記閾値変更条件に少なくとも含めて、前記閾値変更条件を満たすかを判定する、
第1〜第4の何れかの発明の制御方法を構成してもよい。
【0019】
第5の発明によれば、1回のブレーキ中に電制用滑走検知閾値条件を満たした回数が所定回数に達したときに、閾値変更条件を満たすとすることができる。
【0020】
また、第6の発明として、
前記変更ステップは、列車走行速度が所定速度以下となったことを、前記閾値変更条件に少なくとも含めて、前記閾値変更条件を満たすかを判定する、
第1〜第5の何れかの発明の制御方法を構成してもよい。
【0021】
第6の発明によれば、列車走行速度が所定速度以下となったときに、閾値変更条件を満たすとすることができる。
【0022】
また、第7の発明として、
前記変更ステップは、前記空気ブレーキのブレーキ力を示す空気ブレーキ力相当値、前記電気ブレーキのブレーキ力を示す電気ブレーキ力相当値、または、前記要求ブレーキ力が、所定の大きさ以上のブレーキ力であることを示す所定のブレーキ条件を満たすことを、前記閾値変更条件に少なくとも含めて、前記閾値変更条件を満たすかを判定する、
第1〜第6の何れかの発明の制御方法を構成してもよい。
【0023】
第7の発明によれば、空気ブレーキ力相当値、電気ブレーキ力相当値、または要求ブレーキ力が、所定の大きさ以上のブレーキ力となった場合に、閾値変更条件を満たすことができる。
【0024】
また、第8の発明として、
前記電気ブレーキ制御部による前記電制対象軸と、前記空気ブレーキ制御部による前記空制対象軸とは、異なる軸である、
第1〜第7の何れかの発明の制御方法を構成してもよい。
【0025】
また、第9の発明として、
前記電気ブレーキ制御部による前記電制対象軸と、前記空気ブレーキ制御部による前記空制対象軸とは、一部又は全部が同じ軸である、或いは、前記空気ブレーキ制御部による前記空制対象軸の一部が前記電気ブレーキ制御部による前記電制対象軸である、
第1〜第7の何れかの発明の制御方法を構成してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。以下では、本発明を電気車に適用した場合を例に挙げて説明するが、電動機によって動輪(動軸とも言える)を駆動して走行する車両(電動車両)であれば、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車等の自動車にも適用することが可能である。
【0028】
図1は、本実施形態の電空協調ブレーキ制御システム1の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、電空協調ブレーキ制御システム1は、協調制御部10と、電気ブレーキ制御部20と、空気ブレーキ制御部30とを備える。
【0029】
この電空協調ブレーキ制御システム1において、電気ブレーキ制御部20は、協調制御部10からの要求電気ブレーキ力REの指令信号に基づく電気ブレーキの制御を行うとともに、電制対象軸(動軸)の状態値が電制用滑走検知閾値条件を満たした場合に、再粘着制御(電制再粘着制御)を行う。一方、空気ブレーキ制御部30は、協調制御部10からの要求空気ブレーキ力RMの指令信号に基づく空気ブレーキの制御を行うとともに、空制対象軸の状態値が空制用滑走検知閾値条件を満たした場合に、再粘着制御(空制再粘着制御)を行う。本実施形態では、電制対象軸と空制対象軸が全て同じである(全ての電制対象軸が空制対象軸でもある)とし、電制対象軸であり空制対象軸でもある動軸の状態値に基づき、電気ブレーキ制御部20及び空気ブレーキ制御部30それぞれが滑走検知を行うこととする。
【0030】
ここで、本実施形態において「ブレーキ力」とは、ブレーキ力そのものでもよいし、減速度等のブレーキ力に相当する値であってもよく、またこれらを示す信号であってもよいこととし、これらを包括して「ブレーキ力」と呼ぶ。仮に、減速度等のブレーキ力相当値に本実施形態を適用する場合には、以下の説明においてブレーキ力をブレーキ力相当値と読み替えて適用すればよい。
【0031】
また、動軸の状態値とは、対応する動輪に滑走が発生しているか否かの判断材料となる値のことであり、例えば、速度差ΔVや加速度α、減速度β等を用いることができる。速度差ΔVは、運転台等から得られる車両の走行速度(列車走行速度)を示す基準速度Vmと、対象の動軸(動輪)の回転に係る速度Vとの差分である。滑走が発生していない状態では、ブレーキ動作中であるため速度Vが徐々に低下状態にあるところ、滑走の発生によって速度Vが基準速度Vmよりも低くなる。そのため、状態値を速度差ΔVとする場合は、速度差ΔVが所定の閾値に達したことで滑走の発生を検知できる。また、動軸の加速度αや減速度βを状態値とするのであれば、滑走の発生は、加速度αや減速度βが粘着走行では取り得ない値として予め定められた加速度α又は減速度βの閾値に達したことで検知できる。また、その他にも、状態値としてすべり率を用い、すべり率がその閾値に達した場合に滑走の発生を検知するとしてもよい。すべり率は、「速度Vの低下分/車両の走行速度(基準速度Vm)」で求めることができる。或いは、電制用滑走検知閾値条件及び空制用滑走検知閾値条件は、上記した2以上の状態値を用いた判定結果のOR条件又はAND条件とすることもできる。
【0032】
本実施形態では、状態値を減速度βとし、閾値として、電制用検知閾値β
Mと空制用検知閾値β
Tとを用いる場合を例示する。より詳細には、「減速度βが電制用検知閾値β
M以上であること」を電制用滑走検知閾値条件、「減速度βが空制用検知閾値β
T以上であること」を空制用滑走検知閾値条件とする。なお、その他の状態値を用いる場合には、該当する状態値に応じた電制用検知閾値と空制用検知閾値とを以下説明する減速度βを用いる場合と同様の要領で設定することで実現できる。
【0033】
協調制御部10は、例えば、ブレーキ受量器(BCU:Brake Control Unit)で構成することができ、ブレーキノッチ信号の入力を受けて、運転台等からの基準速度Vmをもとに車両全体で要求される要求ブレーキ力RTを算出し、所定の配分条件に従って電気ブレーキに要求される要求電気ブレーキ力REを算出する。配分条件は予め定めておくことができ、例えば、要求ブレーキ力RTの70%を要求電気ブレーキ力REとし、要求ブレーキ力RTの30%を要求空気ブレーキ力RMとする等、要求ブレーキ力RTの配分比率として定めておくことができる。勿論、走行速度別に配分比率を定めておくことができる。なお、協調制御部10に要求ブレーキ力RTが入力され、この要求ブレーキ力RTから要求電気ブレーキ力REを算出する構成としてもよい。要求電気ブレーキ力REは、例えば電制信号によって示されて、協調制御部10から電気ブレーキ制御部20に出力される。
【0034】
その後は、電気ブレーキと空気ブレーキとを併用してブレーキ制御を行うが、後述する協調制御切替部11によって協調制御がオンに切り替えられている間は、協調制御を実行する。すなわち、算出した要求電気ブレーキ力REの指令信号を生成して電気ブレーキ制御部20に出力するとともに、電気ブレーキ制御部20にて算出された発生電気ブレーキ力CEをフィードバック信号として入力する。そして、協調制御部10は、要求ブレーキ力RTを、フィードバック信号が示す発生電気ブレーキ力CE及び要求空気ブレーキ力RMで賄うように、要求空気ブレーキ力RMの指令信号を生成して空気ブレーキ制御部30に出力する。具体的には、協調制御部10は、要求ブレーキ力RTから発生電気ブレーキ力CEを減算した残余のブレーキ力を要求空気ブレーキ力RMとして算出し、その指令信号を空気ブレーキ制御部30に出力する。要求空気ブレーキ力RMは、空制信号等とも言われる。
【0035】
一方、協調ブレーキ制御がオフの場合には、上記したようなフィードバック信号を用いた協調ブレーキ制御は行わずに、要求ブレーキ力RTを上述した配分比率(配分条件)で配分することで要求電気ブレーキ力REと要求空気ブレーキ力RMとを算出する。要求ブレーキ力RTから、算出した要求電気ブレーキ力REを減算した残余のブレーキ力を要求空気ブレーキ力RMとして算出する、とも言える。そして、要求電気ブレーキ力REの指令信号を生成して電気ブレーキ制御部20に出力するとともに、要求空気ブレーキ力RMの指令信号を生成して空気ブレーキ制御部30に出力する。
【0036】
協調制御部10は、協調制御切替部11を備える。協調制御切替部11は、協調制御のオン(有り)/オフ(無し)を切り替えてその実行の有無を設定する。本実施形態では、ブレーキノッチの変更操作を含む1回のブレーキ操作(ブレーキ開始から終了まで)に係るブレーキ制御の期間をブレーキの1単位として、1回のブレーキ中に協調制御のオン/オフを切り替える。より具体的には、協調制御切替部11は、ブレーキ開始の際に協調制御をオフに切り替え、閾値条件変更部15が閾値変更条件を満たすと判定した時点で、協調制御をオンに切り替える。なお、1回のブレーキノッチの変更操作に係るブレーキ制御の期間をブレーキの1単位とし、ブレーキノッチが変更されるたびに上記協調制御のオン/オフ切替を行う構成としてもよい。
【0037】
また、協調制御部10は、閾値条件初期設定部13と、閾値条件変更部15とを備え、電制用滑走検知閾値条件を定める電制用検知閾値β
Mと、空制用滑走検知閾値条件を定める空制用検知閾値β
Tとを設定する。
【0038】
具体的には、閾値条件初期設定部13は、ブレーキノッチ信号が入力されると、電制用検知閾値β
Mと、空制用検知閾値β
Tとを初期設定する。本実施形態では、ブレーキ開始の際に、電制用滑走検知閾値条件よりも空制用滑走検知閾値条件の方が敏感に滑走を検知可能とさせるため、空制用検知閾値β
Tの初期値β
T0を電制用検知閾値β
Mの初期値β
M0未満の値として設定する(β
T0<β
M0)。具体的な閾値β
M0,β
T0の各値は、予め定めておけばよい。これにより、ブレーキ開始時の空制用滑走検知閾値条件は、電制用滑走検知閾値条件と比べて相対的に閾値が低い条件とされる。
【0039】
一方、閾値条件変更部15は、1回のブレーキ中、閾値条件を変更する条件として定められた閾値変更条件を満たすかを判定する。本実施形態では、例えば、「ブレーキノッチ信号が入力されてからのブレーキ継続時間が所定時間(例えば3秒等)を経過したこと」を閾値変更条件として判定する。そして、閾値変更条件を満たすと判定した場合には、その旨を協調制御切替部11に通知するとともに、空制用滑走検知閾値条件よりも電制用滑走検知閾値条件の方が敏感に滑走を検知可能とさせるため、変更後の電制用検知閾値β
M1を変更後の空制用検知閾値β
T1未満の値として設定する(β
M1<β
T1)。具体的な閾値β
M1,β
T1の各値は、予め定めておけばよい。これにより、閾値変更条件を満たした場合の電制用滑走検知閾値条件は、空制用滑走検知閾値条件と比べて相対的に閾値が低い条件とされる。
【0040】
ここでの電制用検知閾値β
M及び空制用検知閾値β
Tの設定(初期設定或いは設定変更)により、ブレーキ開始の際は、空制用滑走検知閾値条件は、電制用滑走検知閾値条件よりも満足し易い(電制用滑走検知閾値条件よりも先に満足する)条件となり、ブレーキ開始の際は、空制再粘着制御が優先的に働くこととなる。これに対し、ブレーキ中、閾値変更条件を満たすと、電制用滑走検知閾値条件は空制用滑走検知閾値条件よりも満足し易い条件となり、ブレーキ中において閾値変更条件を満たした場合は、電制用再粘着制御が優先的に働くこととなる。
【0041】
電気ブレーキ制御部20は、動輪(動軸とも言える)を駆動する電動機を制御する電動機制御装置で構成することができ、例えば、インバータ装置の一機能として実現することができる。電気ブレーキ制御部20は、要求電気ブレーキ力REに応じた制動トルクを発生させ、電動機を発電機として働かせることでブレーキ力を得る。電気ブレーキは、発電ブレーキ及び回生ブレーキの何れでもよいが、本実施形態では回生ブレーキとする。この電気ブレーキ制御部20は、電制滑走検知部21と、電制再粘着制御部23と、発生電気ブレーキ力算出部25とを含む。
【0042】
電制滑走検知部21は、電制対象軸(動軸)の状態値として減速度βを算出する減速度算出部211を備え、求めた減速度βに基づき滑走の発生を検知する。具体的には、電制滑走検知部21は、閾値条件初期設定部13によって初期設定され、閾値条件変更部15によって変更される電制用検知閾値β
M(=β
M0又はβ
M1)を用いて減速度算出部211が算出した減速度βを閾値判定し、減速度βが電制用検知閾値β
Mに達して電制用滑走検知閾値条件を満たす場合に、滑走の発生を検知する。
【0043】
電制再粘着制御部23は、電制滑走検知部21が滑走の発生を検知した場合に電制再粘着制御を行い、滑走した対象の動軸を再粘着させる制御を行う。この電制再粘着制御においては、制動トルク(インバータであれば制動トルク分電流)を低減させて電気ブレーキ力を引き下げる制御を行う。そして、状態値が所定の閾値を下回ったこと等を再粘着検知条件として判定し、再粘着検知条件を満足した場合に制動トルクを増加させて、引き下げた電気ブレーキ力を要求電気ブレーキ力REまで回復させる制御を行う。
【0044】
発生電気ブレーキ力算出部25は、現在発生している電気ブレーキ力を算出し、発生電気ブレーキ力CEとして出力する。発生している電気ブレーキ力は、例えば、電気ブレーキ制御部20によって制御されている制動トルクと、動軸の回転速度(或いは回転周波数)とを用いて算出される。
【0045】
空気ブレーキ制御部30は、圧縮空気を動力源としてブレーキシリンダを駆動し、車輪踏面やブレーキディスクに制輪子を押し付ける機械的な動作によって摩擦力を発生させる空気ブレーキの動作を制御する機能部であり、ブレーキシリンダの給気や排気を制御してブレーキシリンダ圧(BC圧)を調整することで、要求空気ブレーキ力RMに応じた空気ブレーキ力を発生させるように空気ブレーキを制御する。例えば、現在の空気ブレーキ力に相当する値(以下「空気ブレーキ力相当値」という)が、要求空気ブレーキ力RMに対応する値となるようにBC圧を調整することで実現することができる。空気ブレーキ力相当値は、例えば、BC圧を検知する圧力センサの検知信号とすることができる。この空気ブレーキ制御部30は、空制滑走検知部31と、空制再粘着制御部33とを含む。
【0046】
空制滑走検知部31は、空制対象軸(本実施形態では動軸)の状態値として減速度βを算出する減速度算出部311を備え、求めた減速度βに基づき滑走の発生を検知する。具体的には、空制滑走検知部31は、閾値条件初期設定部13によって初期設定され、閾値条件変更部15によって変更される空制用検知閾値β
T(=β
T0又はβ
T1)を用いて減速度算出部311が算出した減速度βを閾値判定し、減速度βが空制用検知閾値β
Tに達して空制用滑走検知閾値条件を満たす場合に、滑走の発生を検知する。
【0047】
空制再粘着制御部33は、空制滑走検知部31が滑走の発生を検知した場合に空制再粘着制御を行い、滑走した対象の動軸を再粘着させる制御を行う。この再粘着制御においては、BC圧を低減させて空気ブレーキ力を引き下げる制御を行う。そして、状態値が所定の閾値を下回ったこと等を再粘着検知条件として判定し、再粘着検知条件を満足した場合にBC圧を増加させて、引き下げた空気ブレーキ力を要求空気ブレーキ力RMまで回復させる制御等を行う。
【0048】
次に、電空協調ブレーキ制御システム1の処理の流れについて、
図2を参照して説明する。協調制御部10を処理の主体として説明する。まず、
図2に示すように、協調制御部10は、ブレーキが開始されるまで、すなわちブレーキノッチ信号が入力されるまで待機状態となる。そして、ブレーキノッチ信号が入力されると(ステップS1:YES)、閾値条件初期設定部13が、電制用検知閾値β
Mと空制用検知閾値β
Tとを各々の初期値β
M0,β
T0として初期設定し、電制用検知閾値β
M0を電制滑走検知部21に出力するとともに、空制用検知閾値β
T0を空制滑走検知部31に出力する(ステップS3)。また、協調制御切替部11が、協調制御をオフに切り替える(ステップS5)。そして、ステップS3の処理により、電気ブレーキ制御部20では、電制滑走検知部21が電制用検知閾値β
M0を用いて滑走の発生を検知し、検知した場合は電制再粘着制御部23が電制再粘着制御を行うこととなる。一方、空気ブレーキ制御部30では、空制滑走検知部31が空制用検知閾値β
T0を用いて滑走の発生を検知し、検知した場合は空制再粘着制御部33が空制再粘着制御を行うこととなる。
【0049】
続いて、協調制御部10は、ブレーキノッチ信号に従い、基準速度Vmをもとに要求ブレーキ力RTを算出する(ステップS7)。そして、協調制御がオフの間は(ステップS9:NO)、所定の配分条件に従って要求ブレーキ力を配分し、要求電気ブレーキ力REの指令信号を電気ブレーキ制御部20に出力するとともに、要求空気ブレーキ力RMの指令信号を空気ブレーキ制御部30に出力する(ステップS11)。ここでの指令信号に応答し、電気ブレーキ制御部20は、要求電気ブレーキ力REに従って制動トルクを発生させ、電気ブレーキを駆動する。一方、空気ブレーキ制御部30は、要求空気ブレーキ力RMに従ってBC圧を制御し、空気ブレーキを駆動する。その後、閾値条件変更部15が、タイマーを起動してブレーキ継続時間の計時を開始し(ステップS13)、ステップS15に移行する。
【0050】
すなわち、ステップS15では、閾値条件変更部15は、ステップS13で計時を開始したブレーキ継続時間を用いて、閾値変更条件を満たすか判定する。閾値変更条件を満たさなければ(ステップS15:NO)、ステップS21に移行する。一方、閾値変更条件を満たすと判定した場合には(ステップS15:YES)、閾値条件変更部15は、電制用検知閾値β
Mと空制用検知閾値β
Tとを変更し、変更後の電制用検知閾値β
M1を電制滑走検知部21に出力するとともに、空制用検知閾値β
T1を空制滑走検知部31に出力する(ステップS17)。また、協調制御切替部11が、協調制御をオンに切り替える(ステップS19)。その後、ステップS21に移行する。そして、ステップS19の処理により、電気ブレーキ制御部20では、電制滑走検知部21が電制用検知閾値β
M1を用いて滑走の発生を検知し、検知した場合は電制再粘着制御部23が電制再粘着制御を行う。また、空気ブレーキ制御部30では、空制滑走検知部31が空制用検知閾値β
T1を用いて滑走の発生を検知し、検知した場合は空制再粘着制御部33が空制再粘着制御を行う。
【0051】
そして、ステップS21では、ブレーキ継続中か否かを判定し、ブレーキ継続中の場合は(ステップS21:YES)、ステップ7に戻る。そして、協調制御部10は、協調制御がオンになると(ステップS9:YES)、協調制御を実行して要求ブレーキ力RTを配分し、要求電気ブレーキ力REの指令信号を電気ブレーキ制御部20に出力するとともに、要求空気ブレーキ力RMの指令信号を空気ブレーキ制御部30に出力する(ステップS23)。その後、ステップS21に移行する。ここでの指令信号に応答し、電気ブレーキ制御部20は、要求電気ブレーキ力REに従って電気ブレーキを駆動し、空気ブレーキ制御部30は、要求空気ブレーキ力RMに従って空気ブレーキを駆動する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、1回のブレーキ中、ブレーキを開始してから閾値変更条件を満たすまでの間は協調制御をオフにし、所定の配分条件で要求ブレーキ力RTを要求電気ブレーキ力REと要求空気ブレーキ力RMとに配分することができる。またその間は、電制用滑走検知閾値条件よりも空制用滑走検知閾値条件を満足し易くして、空制再粘着制御が優先的に働くようにする。一方、閾値変更条件を満たした場合には協調制御をオンにし、空制用滑走検知閾値条件よりも電制用滑走検知閾値条件を満足し易くして、電制再粘着制御が優先的に働くようにする。したがって、ブレーキ中、閾値変更条件を満たすまでの間は、従来のような、電制再粘着制御が優先的に働くことで空制が支配的な状況となることを回避して、電制再粘着を有効に機能させて回生電力量の増加を図ることが可能となる。また、空制再粘着制御が優先的に働くことで空気ブレーキ力が緩められるため、制輪子の摩耗を抑えることが可能となる。
【0053】
なお、上記実施形態では、ブレーキ継続時間を用いて閾値変更条件を満たすか判定することとした。これに対し、「電制用滑走検知閾値条件を満たした電制対象軸の滑走の程度を表す滑走指標値に基づき定められた滑走の程度が比較的大きいことを示す条件を満たすこと」を閾値変更条件として判定するとしてもよい。或いは、「空制用滑走検知閾値条件を満たした空制対象軸の滑走の程度を表す滑走指標値に基づき定められた滑走の程度が比較的大きいことを示す条件を満たすこと」を閾値変更条件として判定するとしてもよいし、これらのOR条件やAND条件を閾値変更条件とすることもできる。例えば、滑走指標値には、電制対象軸及び/又は空制対象軸の加速度α、速度差ΔVである滑走速度、又はこれらの相当値を用いることができる。
【0054】
この場合は、電制滑走検知部21及び/又は空制滑走検知部31は、加速度α等を状態値として算出し、閾値条件変更部15に出力する。そして、閾値条件変更部15は、入力値を滑走指標値として用い、例えば予め定められる所定の閾値(小滑走を超える滑走となったことを判定するための閾値)と比較することで、閾値変更条件を満たすか否か(滑走の程度が比較的大きいか否か)を判定する。
【0055】
また、相当値としては、例えば、電制滑走検知部21及び/又は空制滑走検知部31による滑走検知の結果を用いることができる。電制滑走検知部21や空制滑走検知部31が加速度αや速度差ΔVを状態値として用いて滑走検知を行う場合には、その検知結果は、それら状態値の相当値と言える。
【0056】
また、「1回のブレーキ中に電制用滑走検知閾値条件を満たした回数が所定回数に達したこと」を閾値変更条件としてもよい。電制用滑走検知閾値条件を満たした回数は、適宜定めておけばよい。この場合には、電制滑走検知部21が滑走を検知した場合に、その旨を閾値条件変更部15に通知する(
図1の破線矢印)。そして、閾値条件変更部15は、通知の回数を計数して閾値変更条件を満たすか判定する。
【0057】
また、「列車走行速度が所定速度以下となったこと」を閾値変更条件としてもよい。所定速度は、例えば低速域と判断できる閾値速度などを採用することができる。この場合には、閾値条件変更部15は、基準速度Vmを閾値判定し、所定速度以下となった時点で閾値変更条件を満たすと判定する。
【0058】
閾値変更条件は、ブレーキ継続時間、滑走指標値、電制用滑走検知閾値条件を満たした回数、及び列車走行速度に係る各閾値変更条件のうちの2以上の判定結果のOR条件又はAND条件とすることもできる。
【0059】
さらに、閾値変更条件には、現在の空気ブレーキ力を示す値である空気ブレーキ力相当値、現在の電気ブレーキ力を示す値である電気ブレーキ力相当値、または、要求ブレーキ力RTが、所定の大きさ以上のブレーキ力であることを示す所定のブレーキ条件を満たすことを、閾値変更条件に少なくとも含めてもよい。この場合、空気ブレーキ力が一定程度以上の大きさとなっていたり、電気ブレーキ力が一定程度以上の大きさとなっていたり、一定程度以上の大きさのブレーキ力が要求されている状態のときには、空制用滑走検知閾値条件よりも電制用滑走検知閾値条件の方が敏感に滑走を検知可能となるように閾値条件を切り替えて、電制用再粘着制御を発動し易い状態にすることができる。なお、電気ブレーキ力相当値とは、算出される発生電気ブレーキ力CEの値であってもよいし、回生ブレーキによって生じる電気ブレーキ力に相応する電動機の電流や電力等の値でもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、ブレーキノッチ信号の入力に応じて要求ブレーキ力RTを配分する際の配分条件(要求電気ブレーキ力REの配分比率と要求空気ブレーキ力RMの配分比率)を固定として説明したが、ブレーキ中に可変に設定するとしてもよい。例えば、電気ブレーキを優先的に用いる制御とすることができる。具体的には、要求電気ブレーキ力REが所定値に満たない間は要求ブレーキ力RTの全て(100%)を要求電気ブレーキ力REとして配分する一方、所定値に達した場合には、徐々に要求電気ブレーキ力REの比率を下げ、要求空気ブレーキ力RMの比率を上げていく構成としてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、電制対象軸と空制対象軸とが全て同じ場合を説明したが、電制対象軸と空制対象軸のうちの一部が同じ場合(車軸の一部が電制対象軸であり、かつ空制対象軸でもある場合)にも同様に適用できる。或いは、空制対象軸のうちの一部が電制対象軸である場合、例えば、車軸の全てが空制対象軸であり、そのうちの一部が電制対象軸である場合等にも同様に適用できる。また、電制対象軸と空制対象軸とが全く異なる軸である場合も同様に、適用が可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、協調制御部10を独立した機能部として説明したが、協調制御部10と空気ブレーキ制御部30とを1つの機能部(装置)として構成することとしてもよい。
【0063】
また、閾値条件初期設定部13及び閾値条件変更部15を、協調制御部10が有する構成として説明したが、電気ブレーキ制御部20及び空気ブレーキ制御部30それぞれが、閾値条件初期設定部13及び閾値条件変更部15を有する構成としてもよい。その場合には、ブレーキノッチ信号を電気ブレーキ制御部20及び空気ブレーキ制御部30それぞれに入力することとすればよい。
【0064】
また、閾値条件初期設定部13及び閾値条件変更部15が、電制用検知閾値β
Mと空制用検知閾値β
Tとを、電気ブレーキ制御部20及び空気ブレーキ制御部30それぞれに出力する構成として説明したが、次のようにしてもよい。すなわち、電気ブレーキ制御部20が電制用検知閾値β
M0,β
M1を、空気ブレーキ制御部30が空制用検知閾値β
T0,β
T1を記憶しておき、閾値条件初期設定部13及び閾値条件変更部15は、切替信号を出力することとする。切替信号を入力した電気ブレーキ制御部20及び空気ブレーキ制御部30が、該当する電制用検知閾値β
M(=β
M0又はβ
M1)や空制用検知閾値β
T(=β
T0又はβ
T1)を選択して滑走検知用の設定閾値として使用することとする。
【0065】
また、発生電気ブレーキ力算出部25は、現在発生している電気ブレーキ力を算出し、それを発生電気ブレーキ力CEとして出力することとして説明したが、次のようにしてもよい。すなわち、算出した電気ブレーキ力に所与の加算値を加えたブレーキ力を、発生電気ブレーキ力CEとして出力する。このようにすることで、協調制御がオンのときに、要求空気ブレーキ力RMを加算値分だけ低減させる作用が発揮されるため、電制再粘着制御が働く場合に、滑走発生と再粘着制御とが繰り返し生じてしまうといった事象を低減させる効果が期待できる。