【文献】
ZHAO, Yan, et al.,3D-hybrid material design with electron/lithium-ion dual-conductivity for high-performance Li-sulfur batteries,J. Power Sources,2017年,Vol.340,p.160-166
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明について説明する。
【0014】
図1及び
図9を参照すると、本実施形態1はカーボンナノチューブ複合構造体10の製造方法を提供する。本実施のカーボンナノチューブ複合構造体10の製造方法は、以下のステップS11〜S15を含む。
S11では、複数のカーボンナノチューブ12を水に分散して、カーボンナノチューブ分散液を形成する。
S12では、カーボンナノチューブ分散液にアニリン溶液を添加して混合液を形成し、アニリン溶液はアニリンを溶媒に溶解して形成される。
S13では、混合液に開始剤を添加してアニリンの重合を開始させ、カーボンナノチューブ複合構造予備体を形成する。
S14では、カーボンナノチューブ複合構造予備体を真空環境で凍結乾燥する。
S15では、凍結乾燥後に保護ガス中でカーボンナノチューブ複合構造予備体を炭化して、カーボンナノチューブ複合構造10を形成する。
【0015】
ステップ(S11)において、カーボンナノチューブ12は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ或いは多層カーボンナノチューブであってもよい。カーボンナノチューブ12の直径は20nm〜30nmである。カーボンナノチューブ12の長さは100μmより長い。好ましくは、カーボンナノチューブの長さは300μmより長い。また、カーボンナノチューブ12の表面は純粋で、基本的に不純物を含まず、何れの化学修飾も行われていないことが好ましい。逆に、表面が純粋ではなく、不純物を含むカーボンナノチューブであったり、化学修飾が行われたカーボンナノチューブであると、カーボンナノチューブ12同士の間の作用力が破壊される。
【0016】
カーボンナノチューブ12の製造方法は以下の通りである。まず、基板にカーボンナノチューブアレイを成長させる。次いで、ブレード或いは他の工具によって、カーボンナノチューブアレイを基板から直接にこそぎ取って、カーボンナノチューブ12を取得する。好ましくは、カーボンナノチューブアレイは超配列カーボンナノチューブアレイである。
【0017】
前記カーボンナノチューブアレイは化学気相堆積法(CVD法)により成長される。次に、カーボンナノチューブアレイの成長工程について詳しく説明する。まず、基材を提供する。該基材は、P型又はN型のシリコン基材、或いは表面に酸化物が形成されたシリコン基材を利用する。本実施形態では、厚さが4インチのシリコン基材とする。次に、基材の表面に触媒層を堆積させる。該触媒層は、Fe、Co、Ni又はそれらの合金である。次に、触媒層が堆積された基材を、700〜900℃、大気圧の下で30〜90分間アニーリングする。最後に、基材を反応装置内に置いて、保護ガスを導入すると同時に基材を500〜700℃に加熱し、5〜30分間カーボンを含むガスを導入する。これにより、高さが200〜400μmの超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)に成長する。超配列カーボンナノチューブアレイは、相互に平行であって且つ基材に垂直な方向に成長する複数のカーボンナノチューブ12からなる。前記の方法により、超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブ12の表面は、純粋となり、アモルファス炭素又は触媒剤である金属粒子などの不純物が残らない純粋なカーボンナノチューブアレイが得られる。本実施形態において、超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブ12は比較的長く、その長さは300μm以上である。また、ブレードなどの工具を利用して、カーボンナノチューブ12をシリコンからこそぎ取った後、一部のカーボンナノチューブは相互に絡み合っている。
【0018】
超音波震動によって、複数のカーボンナノチューブ12を水に分散する。超音波震動した後、カーボンナノチューブ12は水に均一に分布し、綿毛構造体を形成する。カーボンナノチューブ12は、超配列カーボンナノチューブアレイから直接にこそぎ取って取得するので、超音波震動を行なっても、カーボンナノチューブ12は大きい比表面積を持つ。カーボンナノチューブ12の間に大きい分子間力があるので、カーボンナノチューブ12は相互に分離せず、相互に吸着して絡み合い、綿毛構造体を維持する。綿毛構造体は複数の穴を有する。複数の穴は水で満たされている。超音波震動の仕事率は300W〜1500Wであり、好ましくは、500W〜1200Wである。また、超音波震動の時間は10分間〜60分間である。
【0019】
カーボンナノチューブ12を水に効果的に分散させるために、界面活性剤を水に添加することができる。界面活性剤の種類は限定されない。例えば、脂肪酸グリセリド、ステアリン酸、ポリビニルピロリドンなどであってもよい。本実施形態において、界面活性剤はポリビニルピロリドンである。水は純粋な水を指す。カーボンナノチューブ12は、有機溶媒での分散効果が水でのそれより優れているが、一般に有機溶媒の凝固点は−100℃より低いため、後の冷凍乾燥の工程において不利である。カーボンナノチューブ12を水に分散させ、カーボンナノチューブ複合構造予備体における孔に水を充填することによって、後の冷凍乾燥工程を有利にする。
【0020】
ステップ(S12)において、溶媒はアニリンを溶解できる溶媒である。例えば、溶媒は塩酸、エタノールなどである。本実施形態では、アニリンを最初に超純水に溶解してアニリン超純水溶液を形成し、次に塩酸をアニリン超純水溶液に添加してアニリン溶液を形成する。
【0021】
ステップ(S13)において、アニリンは開始剤の作用で重合してポリアニリンを形成する。カーボンナノチューブ複合構造予備体は、カーボンナノチューブ12と、開始剤と、溶媒と、水と、を含む。ポリアニリンは、各カーボンナノチューブ12の外面に付着している。本実施形態では、カーボンナノチューブ複合構造予備体の形態はヒドロゲルである。開始剤でアニリンを重合させることができる限り、開始剤の材料は制限されない。例えば、開始剤は過硫酸アンモニウムであってもよい。本実施形態では、過硫酸アンモニウムを水に溶解して過硫酸アンモニウム水溶液を形成し、過硫酸アンモニウム水溶液を混合液に添加する。
【0022】
ステップ(S14)において、真空の環境でカーボンナノチューブ複合構造予備体を冷凍して乾燥させる方法は、以下の段階を含む。まず、カーボンナノチューブ複合構造予備体を冷凍乾燥装置に置いて、この装置を真空にした後、−50℃以下まで急激に冷却する。次いで、温度を各段階に分けて徐々に室温まで戻す。各段階の温度に達する際、カーボンナノチューブ複合構造予備体を1〜10時間乾燥させる。真空の環境でカーボンナノチューブ複合構造予備体を冷凍して乾燥させるため、カーボンナノチューブ複合構造予備体が崩れることを防止でき、ふっくらとしたカーボンナノチューブスポンジ状構造体を形成することができる。
図2に示すように、カーボンナノチューブ複合構造予備体を凍結乾燥して、CNT/PANIフォームを形成する。用語「CNT/PANI」は、カーボンナノチューブ12とポリアニリンとが形成された複合構造を表す。CNT/PANIフォームはスポンジ状構造体である。CNT/PANIフォームは、複数のカーボンナノチューブ12と、ポリアニリンと、を含む。各カーボンナノチューブ12の表面はポリアニリンで被覆されている。本実施形態において、ポリアニリンは各カーボンナノチューブ12の表面を完全に被覆する。
【0023】
ステップ(S15)において、保護ガスでポリアニリン及び開始剤を炭化する。保護ガスは不活性ガスである。例えば、不活性ガスはアルゴンガスであってもよい。炭化温度は800℃〜1200℃である。保護ガスが存在するため、カーボンナノチューブ12は炭化されない。本実施形態では、ポリアニリン及び過硫酸アンモニウム(開始剤)を炭化して、硫黄窒素共添加炭素(sulfur nitrogen−codoped carbon,SNC)層14を形成する。SNC層14は、各カーボンナノチューブ12の表面を完全に被覆する。カーボンナノチューブ複合構造体10は複数のカーボンナノチューブ12と、SNC層14と、を含む。SNC層14は各カーボンナノチューブ12の表面に被覆されている。
【0024】
過硫酸アンモニウムは、開始剤として使用されるだけでなく、窒素元素及び硫黄元素のドーパント源としても使用されることができる。炭化の過程で、過硫酸アンモニウムは窒素元素及び硫黄元素に化学的に変換され、in situで重合されたポリアニリンは窒素ドープ炭素元素に化学的に変換される。各カーボンナノチューブ12の表面に非晶質SNC層14を形成し、同軸のカーボン骨格を得る。これにより、カーボンナノチューブ複合構造体10は、堅固で安定な「鳥の巣」のようなカーボンフレーム構造体となる。
【0025】
(実施例1)
超配向カーボンナノチューブアレイからの100mgのカーボンナノチューブ12及び15mgのポリビニルピロリドン(PVP K90)を超純水に分散させ、30分間に渡って超音波処理を施し、均一なカーボンナノチューブ分散液を形成する。次に、カーボンナノチューブ分散液を氷浴冷却しながら三口瓶に入れ、直ちにカーボンナノチューブ分散液を磁気撹拌する。150μLのアニリン(ANI,J&K Scientific, 98.5%)を20m Lの超純水に溶解してアニリン水溶液を形成する。5mLのHCl(0.1mol/L
−1)をアニリン水溶液に加えてアニリン溶液を形成する。アニリン溶液をカーボンナノチューブ分散液にゆっくり添加し、アニリン溶液を添加した後30分間撹拌する。次いで、50mLの過硫酸アンモニウム水溶液(過硫酸アンモニウム:368mg)を激しく撹拌しながら窒素気流で滴加する。24時間攪拌した後、CNT/PANIヒドロゲルを形成する。CNT/PANIヒドロゲルをペトリ皿(直径140mm)に入れ、数日間凍結乾燥してCNT/PANIフォームを形成する。凍結乾燥の温度は−76℃であり、真空度は1Paである。最後に、CNT/PANIフォームを管状炉に入れ、アルゴン気流で高温で炭化する。温度はゆっくり上昇させる。加熱速度は毎分3℃である。具体的な工程は次の通りである。温度を室温から275℃に上げ、1時間かけて予備炭化する。その後、温度を900℃に上げ、3時間かけて完全に炭化する。最後に、温度を室温まで冷却した後、カーボンナノチューブ複合構造体10を形成する。
【0026】
(比較例1)
超配向カーボンナノチューブアレイからの100mgのカーボンナノチューブ12及び15mgのポリビニルピロリドン(PVP K90)を超純水に分散させ、30分間に渡って超音波処理を施し、均一なカーボンナノチューブ分散液を形成する。次に、カーボンナノチューブ分散液を氷浴冷却しながら三口瓶に入れ、直ちにカーボンナノチューブ分散液を磁気撹拌する。その後、カーボンナノチューブ分散液をシャーレ(直径140mm)に入れて数日間凍結乾燥し、CNTフォームを形成する。凍結乾燥の温度は−76℃、真空度は約1Paである。
【0027】
実施例1と比べると、比較例1は、アニリン溶液と過硫酸アンモニウム水溶液とをカーボンナノチューブ分散液に添加する工程、及びカーボンナノチューブ複合構造予備体を炭化する工程を含まない。
【0028】
図3は比較例1のCNTフォームの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。
図4は比較例1のCNTフォームの透過型電子顕微鏡(TEM)の写真である。
図5は実施例1のカーボンナノチューブ複合構造体10のSEMの写真である。
図6は実施例1のカーボンナノチューブ複合構造体10のTEMの写真である。
図3及び
図5を比較し、
図4及び
図6を比較し、カーボンナノチューブ12の表面にコーティングで被覆されている。
図7は、カーボンナノチューブ複合構造体10のEDSスペクトルである。
図7に示すように、コーティングは、炭素元素、窒素元素及び硫黄元素を含む。これにより、コーティングは硫黄窒素共添加炭素(SNC)層14であることが分かる。炭素元素、窒素元素、及び硫黄元素の比率、ならびにSNC層14の厚さは、アニリン及び開始剤の量によって制御できる。例えば、炭素元素、窒素元素、及び硫黄元素の比率、ならびにSNC層14の厚さは、各物質の質量分率及び溶媒の濃度によって制御することができる。X線光電子分光法(XPS)の分析結果は、実施例1のカーボンナノチューブ複合構造体10中の炭素元素、窒素元素、及び硫黄元素の原子百分率比が95.4%:3.2%:1.4%である。
【0029】
さらに、
図5及び
図6に示すように、隣接するカーボンナノチューブ12の交差部はSNC層14によって結合され、カーボンナノチューブ複合構造10の安定性を向上させ、より多くの活性部位を導入する。
図5及び
図6は、カーボンナノチューブ複合構造体10がカーボンナノチューブネットワーク構造を有することを示している。カーボンナノチューブネットワーク構造は導電性を有し、堅固且つ安定であり、高硫黄負荷及び迅速な電荷移動に有利である。カーボンナノチューブネットワーク構造は、リチオ化プロセスにおける電極活物質の体積膨張を減少することができ、且つ電極の機械的曲げ及び折り畳みに耐えることができる。
【0030】
図8は、カーボンナノチューブ複合構造体10とCNTフォームの機械的試験結果を示す。2%の相対変位の範囲で、カーボンナノチューブ複合構造体10のひずみは、CNTフォームのひずみの5倍である。初期変位後の2つの曲線が同じ傾きを有することは、カーボンナノチューブ複合構造体10が弾性変形から塑性変形へと変化していることを示している。SNC層14は、初期延伸時に隣接するカーボンナノチューブ12の交差部に締付または結合の機能を有し、さらに延伸すると、過度の応力がSNC層14の締付または結合の機能を弱め、弾性変形を塑性変形に変換させる。
【0031】
SNC層14の結合機能により、カーボンナノチューブ複合構造体10の変形に抵抗する能力はCNTフォームの変形に抵抗する能力よりはるかに大きい。カーボンナノチューブ複合構造体10及びCNTフォームをストリップ(帯状体)に切断し、次いでストリップを機械的試験機(Instron MicroTester 5848)によって引っ張る。ストリップの幅は8mm〜10mmであり、ストリップの長さは1cmより大きい。20N荷重での引張速度は、毎分1%の歪み速度である。引張試験は、カーボンナノチューブ複合構造体10のヤング率が810.12MPaであり、CNTフォームのヤング率がわずか106.82MPaであることを示す。
【0032】
図9を参照すると、本実施形態1はカーボンナノチューブ複合構造体10を提供する。カーボンナノチューブ複合構造体10は前記カーボンナノチューブ複合構造体10の製造方法によって形成する。カーボンナノチューブ複合構造体10はカーボンナノチューブネットワーク構造体と、SNC層14と、を含む。カーボンナノチューブネットワーク構造体は、互いに絡み合った複数のカーボンナノチューブ12を含む。隣接するカーボンナノチューブ12の間には孔がある。SNC層14は、各カーボンナノチューブ12の表面に被覆される。好ましくは、SNC層14は、各カーボンナノチューブ12の表面の全体に被覆される。SNC層14は、隣接する二つのカーボンナノチューブ12の交差部を結合して、カーボンナノチューブ12を固定するので、カーボンナノチューブ複合構造体10は崩壊せず、カーボンナノチューブ複合構造体10の全体的な安定性が向上する。SNC層14が各カーボンナノチューブ12の表面に被覆されているとき、カーボンナノチューブ複合構造体10は依然として複数の孔を有する。カーボンナノチューブ複合構造体10は複数の孔を有するので、カーボンナノチューブ複合構造体10の比表面積が大きく、弾性が良好となる。カーボンナノチューブ複合構造体10は完全な弾性体である。SNC層14は、炭素、窒素、及び硫黄の3つの元素を含む。一つの実施形態では、SNC層14は、炭素、窒素、及び硫黄の3つの元素からなる。
【0033】
図10及び
図11を参照すると、本実施形態2は正極20の製造方法を提供する。本実施形態2の正極20の製造方法は、以下のステップS21〜S26を含む。
S21では、複数のカーボンナノチューブを水に分散して、カーボンナノチューブ分散液を形成する。
S22では、カーボンナノチューブ分散液にアニリン溶液を添加して混合液を形成し、アニリン溶液はアニリンを溶媒に溶解して形成される。
S23では、混合液に開始剤を添加してアニリンの重合を開始させ、カーボンナノチューブ複合構造予備体を形成する。
S24では、カーボンナノチューブ複合構造予備体を真空環境で凍結乾燥する。
S25では、凍結乾燥後に保護ガスでカーボンナノチューブ複合構造予備体を炭化して、カーボンナノチューブ複合構造体10を形成する。
S26では、カーボンナノチューブ複合構造体10に正極活物質22を添加する。
【0034】
実施形態2の正極20の製造方法は、実施形態1のカーボンナノチューブ複合構造体10の製造方法と基本的に同じである。異なるのは、正極20の製造方法はステップ(S26)を含む点である。
【0035】
ステップ(S26)において、カーボンナノチューブ複合構造体10に正極活物質22を添加する方法は、以下のサブステップS261〜S263を含む。
S261では、正極活物質22を溶媒に溶解させて正極活物質溶液を形成する。
S262では、カーボンナノチューブ複合構造体10に正極活物質溶液を添加する。
S263では、溶媒を除去する。
【0036】
ステップ(S261)において、正極活物質22の種類は限定されない。好ましくは、正極活物質22は、ポリスルフィドである。 例えば、ポリスルフィドは、Li
2S
6またはLi
2S
8などの硫化リチウムである。溶媒の種類は限定されないが、正極活物質22を溶解できる溶媒であってもよい。好ましくは、溶媒は有機溶媒である。一つの実施形態において、正極活物質22はLi
2S
8であり、溶媒は1,2−ジメトキシエタンと1,3−ジオキソランとの混合液である。
【0037】
ステップ(S262)において、好ましくは、正極活物質溶液をカーボンナノチューブ複合構造体10に滴す。ステップ(S263)において、溶媒の除去方法は限定されないが、例えば、加熱により溶媒を蒸発させるとよい。
【0038】
(実施例2)
超配向カーボンナノチューブアレイからの100mgのカーボンナノチューブ12及び15mgのポリビニルピロリドン(PVP K90)を超純水に分散させ、30分間に渡って超音波処理を施し、均一なカーボンナノチューブ分散液を形成する。次に、カーボンナノチューブ分散液を氷浴冷却しながら三口瓶に入れ、直ちにカーボンナノチューブ分散液を磁気撹拌する。150μLのアニリン(ANI,J&K Scientific, 98.5%)を20mLの超純水に溶解してアニリン水溶液を形成する。5mLのHCl(0.1mol/L
−1)をアニリン水溶液に添加して、アニリン溶液を形成する。アニリン溶液をカーボンナノチューブ分散液にゆっくり添加し、アニリン溶液を添加した後30分間撹拌する。次いで、50mLの過硫酸アンモニウム水溶液(過硫酸アンモニウム:368mg)を激しく撹拌しながら窒素気流で滴す。24時間攪拌した後、CNT/PANIヒドロゲルを形成する。CNT/PANIヒドロゲルをペトリ皿(直径140mm)に入れ、数日間凍結乾燥してCNT/PANIフォームを形成する。凍結乾燥の温度は−76℃であり、真空度は1Paである。最後に、CNT/PANIフォームを管状炉に入れ、アルゴン気流で高温で炭化する。温度はゆっくり上昇させる。加熱速度は毎分3℃である。具体的な工程は次の通りである。温度を室温から275℃に上げ、1時間かけて予備炭化する。その後、温度を900℃に上げ、3時間かけて完全に炭化する。最後に、温度を室温まで冷却した後、カーボンナノチューブ複合構造体10を形成する。
【0039】
1,2−ジメトキシエタンと1,3−ジオキソランとの混合液(20mL)をフラスコに入れた後、式(1)に従って、市販の硫黄(1444mg)及び対応する化学量論的硫化リチウム粉末(Li
2S、276mg)をフラスコに入れる。混合液におけるDMEとDOLとの体積比は1:1である。次いで、フラスコをアルゴンガスで満たされたグローブボックスに入れ、フラスコにおける溶液を50℃で12時間磁気撹拌する。カーボンナノチューブ複合構造体10(直径10mm、平均質量1.6mg)を真空オーブンで温度50℃で12時間乾燥し、水分酸素吸着を減らす。次いで、22μLのLi
2S
8溶液(0.3M)を乾燥したカーボンナノチューブ複合構造10に滴す。これは、2.2mgcm
−2の硫黄負荷量に相当する。温度50℃で溶媒を蒸発させて、CNT/SNC/Li
2S
8三次元正極を得る。大面積正極20はパウチ電池に適する。そのサイズは48mm×48mmに達することができる。面積硫黄負荷は4.4mgcm
−2または7mgcm
−2であってもよい。
【0040】
Li
2S + 7S→Li
2 S
8 式(1)
【0041】
(比較例2)
超配向カーボンナノチューブアレイからの100mgのカーボンナノチューブ12及び15mgのポリビニルピロリドン(PVP K90)を超純水に分散させ、30分間に渡って超音波処理を施し、均一なカーボンナノチューブ分散液を形成する。次に、カーボンナノチューブ分散液を氷浴冷却しながら三口瓶に入れ、直ちにカーボンナノチューブ分散液を磁気撹拌する。その後、カーボンナノチューブ分散液をペトリ皿(直径140mm)に入れて数日間凍結乾燥し、CNTフォームを形成する。凍結乾燥の温度は−76℃、真空度は約1Paである。
【0042】
1,2−ジメトキシエタンと1,3−ジオキソランとの混合液(20mL)をフラスコに入れた後、式(1)に従って、市販の硫黄(1444mg)及び対応する化学量論的硫化リチウム粉末(Li
2S、276mg)をフラスコに入れる。混合液におけるDMEとDOLとの体積比は1:1である。次いで、フラスコをアルゴンガスで満たされたグローブボックスに入れ、フラスコ内の溶液を50℃で12時間磁気撹拌する。カーボンナノチューブ複合構造体10(直径10mm、平均質量1.6mg)を真空オーブンで温度50℃で12時間乾燥し、水分酸素吸着を減らす。次いで、22μLのLi
2S
8溶液(0.3M)を乾燥したCNTフォームに滴す。温度50℃で溶媒を蒸発して、CNT/Li
2S
8正極を得る。
【0043】
実施例2と比べると、比較例2は、アニリン溶液及び過硫酸アンモニウム水溶液をカーボンナノチューブ複合構造分散液に添加する工程、並びにカーボンナノチューブ複合構造予備体を炭化する工程を含まない。
【0044】
図11を参照すると、実施形態2は正極20を提供する。正極20は正極20の製造方法によって形成される。正極20は、集電体と、正極活物質22と、を含む。集電体は実施形態1のカーボンナノチューブ複合構造体10である。集電体は、SNC層14と、絡み合った複数のカーボンナノチューブ12と、を含む。SNC層14は各カーボンナノチューブ12の表面に被覆される。隣接する二つのカーボンナノチューブ12の交差部は、SNC層14によって結合される。正極活物質22は、SNC層14の表面に付着される。SNC層14は、カーボンナノチューブ12と正極活物質22との間に設置される。正極活物質22がポリスルフィドであれば、SNC層14はポリスルフィドに対する吸着性が良好となり、硫黄(ポリスルフィド)をカーボンナノチューブ12に強固に固定することができる。
【0045】
図12を参照すると、実施形態3は正極20を用いた電池30を提供する。電池30は、正極20と、負極32と、セパレータ34と、電解質36と、シェル38と、を含む。シェル38は一つの空間を有する。正極20と、負極32と、セパレータ34と、電解質36とはシェル38の空間に設置される。セパレータ34は、正極20と負極32との間に設置される。正極20、セパレータ34、及び負極32の順に間隔をあけて積層される。電解質36は、正極20、セパレータ34、及び負極32の間に設置される。正極20は、集電体と、正極活物質22と、を含む。集電体はカーボンナノチューブ複合構造体10である。集電体は、SNC層14と、互いに絡み合った複数のカーボンナノチューブ12と、を含む。SNC層14は各カーボンナノチューブ12の表面に被覆される。隣接する二つのカーボンナノチューブ12の交差部は、SNC層14によって結合される。正極活物質22は、SNC層14の表面に付着される。SNC層14は、カーボンナノチューブ12と正極活物質22との間に設置される。
【0046】
正極活物質22の材料は限定されず、硫化リチウムであってもよい。硫化リチウムは、例えば、Li
2S
6またはLi
2S
8である。負極32の材料は限定されず、例えば、マグネシウム、亜鉛、またはアルミニウムなどであってもよい。セパレータ34及び電解質36の材料は限定されず、正極20及び負極32に応じて選択できる。電池30は、リチウム−硫黄電池、リチウム−マグネシウム電池、リチウム−亜鉛電池、またはリチウム−アルミニウム電池であってもよい。
【0047】
一つの実施形態では、電池30はリチウム硫黄電池である。セパレータ34は、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)で変性されたセルガード2400(Celgard 2400)である。窒素ドープカーボンナノチューブで変性されたセルガード2400は、シャトルポリスルフィド二重層バリア(shuttled polysulfide double layer barrier)を形成することができ、さらに硫黄を固定する。負極32の材料はリチウムである。電解液36は、DMEとDOLとの混合液に1molL
−1のLiTFSIと1wt%のLiNO
3を溶解させたものである。DMEとDOLとの体積比は1:1である。電池30が2025コイン電池である場合、負極32はリチウム片である。負極32の直径は、15.6mmであり、その厚さは450μmである。電池30がパウチ電池である場合、負極32はリチウム箔である。負極32の厚さは100μmである。リチウム箔のサイズは正極20のサイズと一致する必要がある。リチウム箔のサイズは48mm×48mmである。
【0048】
適切な量の電解質36を電池システムに添加する必要がある。電解質36の量は電解質36と硫黄との比に基づいて計算される。電池がパウチ電池である場合、電解液36が電池30に十分に浸されるために、電池システムは真空シールの前に15分間放置される。一つの実施形態では、コイル電池において、電解質36と硫黄との体積質量(E/S)比は12:1である。他の実施形態では、パウチ電池において、電解質36と硫黄との体積質量は15:1である。
【0049】
一つの実施形態では、カーボンナノチューブ複合構造体10を直径10mmのシート状体に切断する。次いで、Li
2S
8溶液をシート状体に添加する。そして、溶媒を蒸発させた後にCNT/SNC/S正極を形成する。CNT/SNC/S正極において、面積硫黄負荷は4.4mgcm
−2である。負極32はリチウム片である。電解質36は、DMEとDOLとの混合液に1mol/L
−1のLiTFSI及び1wt%のLiNO
3を溶解して形成する。DMEとDOLとの体積比は1:1である。セパレータ34は、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)で変性されたCelgard 2400である。正極20、負極32、電解質36、及びセパレータ34は、2025電池シェルに設置され、第一コイル電池を形成する。上記と同様の方法でCNT/S正極を形成する。CNT/S正極、負極32、電解質36、及びセパレータ34は、2025電池シェルに設置され、第二コイル電池を形成する。第一コイル電池及び第二コイル電池における、負極32、セパレータ34、電解質36、及びシェル38は同じものである。第一コイル電池の正極は第二コイル電池の正極と異なる。第一コイル電池において、正極はCNT/SNC/S正極である。第二コイル電池において、正極はCNT/S正極である。 CNT/SNC/S正極及びCNT/S正極の性能を比較するために、第一コイル電池及び第二コイル電池の様々な特性試験が行われる。
【0050】
図13は第一コイン型電池のCNT/SNC/S正極のサイクル数が異なる場合のサイクリックボルタンメトリー曲線(cyclic voltammetry curves)を示す。
図13に示すように、20サイクル目と1サイクル目のCNT/SNC/S正極のサイクリックボルタンメトリー曲線はほぼ同じであり、CNT/SNC/S正極のサイクル特性は良好であることが分かる。
図14は第一コイン電池のCNT/SNC/S正極及び第二コイン電池のCNT/S正極における1C倍率でのサイクル比容量曲線を示す。
図14に示すように、異なるサイクル数において、CNT/SNC/S正極のサイクル比容量はCNT/S正極のサイクル比容量よりも大きい。CNT/SNC/正極の正極活物質の利用率は、CNT/S正極の正極活物質の利用率よりも大きいことが分かる。
【0051】
図15は、第一コイン電池及び第二コイン型電池の正極における0.1C倍率での充放電電圧容量曲線を示す。
図15に示すように、CNT/SNC/S正極の活性化障壁はCNT/S正極の活性化障壁よりも低い。SNC層14は放電生成物である硫化リチウムの変換に対して触媒作用を有することを示している。放電生成物である硫化リチウムは触媒されて、電池30の電気化学反応速度を向上させ、容量減衰を減少させる。容量減衰を減少させると、電池30のサイクル寿命を延ばすことができる。これにより、急速な容量減衰によって引き起こされる短いサイクル寿命の問題を解決することができる。
【0052】
図16は、第一コイン型電池及び第二コイン型電池における正極のリチウムイオン拡散係数解析の比較図である。吸収スペクトルに示すように、3時間放置した後、硫黄物質に対応する特性吸収ピークが急激に低下し、SNC層14のポリスルフィドへの吸着性が良好となり、カーボンナノチューブ12に硫黄を固定でき、電池30の硫黄負荷効果を高めることができる。
図14に示すように、カーボンナノチューブ12に被覆されたSNC層14は、電池30の硫黄負荷効果を高めるので、CNT/SNC/S正極における正極活物質(硫黄)の利用率は、CNT/S正極における正極活物質(硫黄)の利用率より高い。
【0053】
一つの実施形態では、カーボンナノチューブ複合構造体10を48mm×48mmのシート状体に切断し、次いでLi
2S
8溶液をシート状体に添加する。溶媒を蒸発させた後にCNT/SNC/S正極20が形成される。CNT/SNC/S正極において、面積硫黄負荷は4.4mgcm
−2である。負極32はリチウム片である。DMEとDOLとの混合液に1molL
−1のLiTFSIと1wt%のLiNO
3を溶解して電解質36を形成する。DMEとDOLとの体積比は1:1である。セパレータ34は、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)で変性されたCelgard 2400である。そして、正極20、負極32、電解質36、及びセパレータ34は、アルミニウムシェルに配置されて、第一パウチ電池を形成する。
【0054】
図17は、異なる曲げ角度で第一パウチ電池によって照明されたLED電池パックの光学画像を示す。挿入図は第一パウチ電池の正極を示す。
図17に示すように、第一パウチ電池が、0°、45°、135°、または180°で曲がっているとき、第一パウチ電池はLED電池パックを照らすことができる。これにより、第一パウチ電池は優れた柔軟性を有し、第一パウチ電池を曲げたとしてもその使用に影響しない。
図18は異なる曲げ角度を有する第一パウチ電池のサイクル比容量曲線を示す。
図18に示すように、異なる曲げ角度で第一パウチ電池は良好な充電性能および放電性能を有する。
【0055】
もう一つの実施形態では、カーボンナノチューブ複合構造体10を48mm×48mmのシート状体に切断し、次いでLi
2S
8溶液をシート状体に添加する。溶媒を蒸発させた後にCNT/SNC/S正極20が形成される。CNT/SNC/S正極において、面積硫黄負荷は7mgcm
−2である。負極32はリチウム片である。DMEとDOLとの混合液に、1molL
−1のLiTFSIと1wt%のLiNO
3を溶解して電解質36を形成する。DMEとDOLとの体積比は1:1である。電解質36と硫黄との体積質量比は12:1あるいは15:1である。セパレータ34は、窒素ドープカーボンナノチューブ(NCNT)で修飾されたCelgard 2400である。そして、正極20、負極32、電解質36、及びセパレータ34は、アルミニウムシェルに設置され、第二パウチ電池を形成する。
図19は0.5倍率での異なる曲げ角度を有する第二パウチ電池のサイクル比容量曲線を示す。
図19における第二パウチ電池には、電解質36と硫黄との体積質量比は15:1であり、面積硫黄負荷は7mgcm
−2である。
図19に示すように、異なる曲げ角度で第二パウチ電池は良好な充電性能および放電性能を有する。
【0056】
カーボンナノチューブ複合構造体10及びその製造方法は、以下の利点を有する。第一に、SNC層14が各カーボンナノチューブ12の表面に被覆されて、同軸カーボン骨格を形成し、隣接するカーボンナノチューブの交差部はSNC層14によって結合され、カーボンナノチューブ複合構造体10の安定性を高める。カーボンナノチューブ複合構造体10のヤング率は810.12MPaであり、SNC層14を含まないCNTフォームのヤング率は、わずか106.82MPaである。第二に、複数のカーボンナノチューブ12の交差部がSNC層14によって結合され、より多くの活性部位を導入する。第三に、カーボンナノチューブ複合構造体10がカーボンナノチューブネットワーク構造を有し、導電性を有するカーボンナノチューブネットワーク構造は、リチオ化プロセスにおける電極活物質の体積膨張を減少することができ、電極の機械的な曲げ及び折り畳みに耐えることができる。第四に、SNC層14は、放電生成物である硫化リチウムの変換に対して触媒効果を有し、電池30の電気化学反応速度を向上させ、容量減衰を減少させる。これにより、電池30のサイクル寿命を延ばすことができる。第五に、SNC層14がポリスルフィドへの吸着性が良好となり、カーボンナノチューブ12に硫黄を固定することができ、電池30の硫黄負荷効果を高めることができる。これにより、正極活物質(硫黄)の利用率を高めることができる。第六に、可撓性を有するカーボンナノチューブ複合構造体10は集電体として、電池30に良好な可撓性を持たせることができ、いかなる曲げもその使用に影響を与えない。さらに、電池30は、異なる曲げ角度の下でも依然として良好な充放電性能を有する。