(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電気掃除機を、図面を参照して説明する。すべての図面において、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の電気掃除機を説明する。
図1は、第1の実施形態の電気掃除機の構成例を示す斜視の模式図である。
図2は、第1の実施形態の電気掃除機の本体部の構成例を示す斜視の模式図である。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の電気掃除機100は、いわゆるスティック型の電気掃除機である。ただし、電気掃除機100は、キャニスタ型や、その他の形式の電気掃除機でもよい。
電気掃除機100は、掃除機本体10、延長管4、および吸込口体3を有する。
掃除機本体10は、空気を吸引する本体部1と、本体部1によって吸引される空気から塵埃を遠心分離する集塵装置2とを有する。本体部1および集塵装置2の詳細構成は後述する。
延長管4は、掃除機本体10に着脱可能に接続される長尺の管部材である。
吸込口体3は、使用時に床面に沿って移動される部分である。吸込口体3は、横長のケースを有し、そのケースの内部にブラシモータと、ブラシモータで回転される回転ブラシとを内蔵している。床面に対向する吸込口体3の下部には、床面の塵埃を含む空気(以下、含塵空気A1)を吸い込む開口部が形成されている。
吸込口体3は、長手方向の中央部から突出した接続管部を介して、延長管4と着脱可能に連結される。
吸込口体3および延長管4は、吸込口体3の開口部から掃除機本体10までの風路体を形成する。
延長管4および吸込口体3の内部には、それぞれ図示略の接続配線が設けられている。延長管4および吸込口体3が掃除機本体10に接続されると、それぞれの接続配線が、掃除機本体10と電気的に接続される。
例えば、吸込口体3に内蔵されたブラシモータは、接続配線を通して、後述する掃除機本体10の二次電池12および回路基板13と電気的に接続される。
【0010】
次に、掃除機本体10の本体部1の詳細構成について説明する。
図2に示すように、掃除機本体10の本体部1の外郭は、例えば合成樹脂製の本体ケース1aによって形成される。本体ケース1aは、筒状部1Aと、収容部1Bと、を有する。
筒状部1Aにおいて、長手方向の第1端部E1には、延長管4等が連結可能な接続部1bが形成されている。接続部1bには、延長管4の基端部が挿入可能な接続口1gが開口している。接続部1bには、延長管4に代えて電気掃除機100に付属する、吸気ノズル、吸気ブラシ等の適宜の吸気管が着脱可能である。接続口1gは、延長管4、その他の吸気管等を通して、含塵空気A1が流入可能である。
【0011】
筒状部1Aにおいて長手方向における第1端部E1と反対側の第2端部E2には収容部1Bが配置されている。
筒状部1Aの側面には、第1端部E1から第2端部E2に向かって、延長管着脱操作部1h、支点部1e、および集塵装置配置部1iがこの順に設けられている。
【0012】
延長管着脱操作部1hは、接続部1bにおける延長管4の装着操作と装着解除操作とを行うための部材である。例えば、延長管着脱操作部1hは接続部1bの内部に設けられた係合部材(図示略)を操作する操作ボタンなどを有する。
支点部1eは、後述する集塵装置2の装着時に集塵装置2の回動支点を形成する凹所である。
集塵装置配置部1iは、後述する集塵装置2の外周側面に沿って集塵装置2を配置する凹状の湾曲面を含む。集塵装置配置部1iは一部の凹所を除けば、円弧状の断面形状が筒状部1Aの長手方向に延びる凹曲面状に形成される。
集塵装置配置部1iは、長手方向において第1端部E1寄りに位置する凹曲面状の第1配置部1iAと、第2端部E2寄りに位置し、第1配置部1iAよりも大きな曲率半径を有する凹曲面状の第2配置部1iBと、を有する。第2配置部1iBの曲率半径は、集塵装置2の後述する第2円筒部2Bの外形と略同じ曲率半径を有する。
第1配置部1iAは、第2配置部1iBよりも上方に突出した段差部を形成している。第1配置部1iAの中央部には、後述する集塵装置2の吸気ガイド部22bが挿入可能な凹所1nが形成されている。凹所1nの奥には、筒状部1Aの内部と連通する吸気連通口1cが開口している。
第2配置部1iBには、後述する集塵装置2からの突起部との干渉を防止するための凹所1pが形成されている。
本体部1に後述する集塵装置2が装着された場合(以下、装着形態と称する)、接続部1b内に流入した含塵空気A1は、吸気連通口1cを通して集塵装置2に導入可能である。後述するように、第1カップ部22aから集塵装置2に流入した含塵空気A1は、集塵装置2によって含塵空気A1に含まれる塵埃が除去される。含塵空気A1から塵埃が除去された空気を清浄空気Acと称する。清浄空気Acは集塵装置2から本体部1に排気される。
【0013】
筒状部1Aにおいて、集塵装置配置部1iの下方の側面には、集塵装置2から本体部1の内部に吸気された清浄空気Acを本体部1の外部に排気する排気口1kが開口している。
【0014】
収容部1Bは、筒状部1Aの長手方向に対して傾斜する方向に延びている。収容部1Bの第1端部e1は、集塵装置配置部1iにおいて第2端部E2寄りの端部から立ち上がっている。
収容部1Bの第1端部e1には、後述する集塵装置2の先端係合部29bを案内する凸状の案内部1jが設けられている。案内部1jの突出方向の端面である係止面1qの中央部には、後述する集塵装置2の排気口29a(
図3参照)と連通可能に設けられた排気連通口1dが開口している。
係止面1qは、第2配置部1iBの端部から収容部1B側に向かって傾斜した傾斜面である。
収容部1Bは、筒状部1Aの第2端部E2との接続部において筒状部1Aの内部と連通している。
【0015】
収容部1Bにおいて、筒状部1Aとの接続部と反対側の側面には、使用者が掃除機本体10を把持可能な把持部1fが設けられている。把持部1fは、収容部1Bの第1端部e1から第2端部e2に向かって円弧状に延びている。把持部1fには、掃除機本体10の動作を設定するための設定ボタン1mが配置されている。
収容部1Bの内部には、電動送風機11、二次電池12、および回路基板13が収容されている。
二次電池12は、例えば、電動送風機11、回路基板13等の電気掃除機100内の電装部品に電力を供給する電源部である。二次電池12は、複数の電池を直列あるいは並列に接続した電池パックで構成されてもよい。
二次電池12は、図示略の充電接続部と電気的に接続されている。二次電池12は、充電接続部を通して、図示略の充電台から充電可能である。
【0016】
電動送風機11は、ファンモータまたはメインモータと呼ばれるモータと、モータにより回転されるインペラとを含む。電動送風機11は、駆動されることで負圧を発生させる。電動送風機11は、発生させた負圧により接続口1gから集塵装置2に含塵空気A1を吸い込む。さらに電動送風機11は、集塵装置2において塵埃が遠心分離された空気を掃除機本体10の外部に排気する。電動送風機11のモータとしては、例えば、直流モータが使用できる。ただし、電動送風機11はこれに限定されない。
【0017】
回路基板13は、配線パターンが設けられたプリント配線板と、プリント配線板に実装された複数の電子部品とを含む。回路基板13は、例えば、電気掃除機100の動作を制御する制御部と、二次電池12を充電する定電流回路などの充電回路部と、を含む。
【0018】
次に、掃除機本体10の集塵装置2の詳細構成について説明する。
図1に示すように、集塵装置2の長手方向には、第1円筒部2Aと、第2円筒部2Bとがこの順に並んでいる。第1円筒部2Aおよび第2円筒部2Bの外形は、それぞれ略円筒状である。ただし第2円筒部2Bの外径は第1円筒部2Aの外径よりも大径である。
第1円筒部2Aは、吸気側の装置部分であり、後述する第1分離部を内部に含む。第2円筒部2Bは、排気側の装置部分であり、後述する第2分離部を内部に含む。
集塵装置2は、その長手軸線が筒状部1Aの長手軸線と平行な姿勢で、筒状部1Aの側方に配置されている。第2円筒部2Bの長手方向の端部は、図示略の案内部1j(
図2参照)に案内されて収容部1Bの第1端部e1と連結されている。
【0019】
図3は、第1の実施形態の電気掃除機の集塵装置の構成例を示す斜視の模式図である。
図3には、集塵装置配置部1i(二点鎖線参照)上に配置される側面を図示前側に配置した集塵装置2の外観が示されている。
集塵装置2は、全体として略円柱状の外形を有する。集塵装置2の外周部には、中心軸線Oに沿って、カップ22、カバー25、および蓋体29がこの順に配置されている。
【0020】
カップ22は、集塵装置2によって分離された塵埃を回収する容器である。カップ22は、略有底円筒状の部材である。カップ22は、中心軸線Oと同軸に配置される。カップ22は、第1円筒部2Aと、第2円筒部2Bの一部の外表面を形成している。カップ22は、回収された塵埃の量が視認可能な光透過性を有する材料で形成される。
カップ22は、第1カップ部22a、吸気ガイド部22b、および第2カップ部22dを含む。
【0021】
第1カップ部22aは、第1円筒部2Aの軸方向の端部および第1円筒部2Aの側部を覆う有底円筒状に形成される。
吸気ガイド部22bは第1カップ部22aの側面から第1カップ部22aの略接線方向に突出する筒状部である。吸気ガイド部22bは、本体部1の凹所1nに挿入可能な形状を有する。吸気ガイド部22bにおいてその突出方向の先端部には、吸気口22cが開口している。
吸気ガイド部22bの傾斜は、吸気口22cからカップ22内に流入する含塵空気A1によって旋回流を形成するために設けられている。
図3に示す例では、吸気ガイド部22bの傾斜によって形成される旋回流の旋回方向(第1旋回方向)は、カップ22を図示上側から見たとき、反時計回りである。
装着形態において、吸気ガイド部22bは、吸気連通口1cを通る含塵空気A1を漏洩させないように凹所1nと係止する。その際、吸気口22cは吸気連通口1cと連通する。
【0022】
第1カップ部22aの底面部22fは、中心軸線Oに直交する平面からなる。このため、
図3に示すように、底面部22fを水平な床面に載置することによって、集塵装置2は、その中心軸線Oが鉛直方向に延びる起立姿勢で配置可能である。このとき、カップ22、カバー25、および蓋体29は、下側からこの順に配置されている。
【0023】
以下、特に断らない限りは、集塵装置2の各部の位置関係について、
図3に示す起立姿勢に基づいて説明する。
中心軸線Oに沿う方向であって、第1円筒部2Aから第2円筒部2Bに向かう方向(図示の鉛直上向き方向)をZ1方向と称する。Z1方向は、装着形態において、筒状部1Aの長手方向に沿って第1端部E1から第2端部E2に向かう方向と一致する。Z1方向の反対方向をZ2方向と称する。Z1方向またはZ2方向を単にZ方向と称する場合がある。
誤解のおそれがない場合には、任意の位置に対してZ1方向寄りに位置することを、上、上方、上側に位置すると表現する場合がある。同様にZ2方向寄りに位置することを、下、下方、下側に位置すると表現する場合がある。Z方向に見ることを平面視と称する場合がある。
Y1方向は、中心軸線Oに直交する面内において、吸気口22cの中心から中心軸線Oに向かう方向である。Y2方向は、Y1方向の反対方向である。Y1方向またはY2方向を単にY方向と称する場合がある。本実施形態では、Y方向は、集塵装置配置部1iに対する集塵装置2の着脱方向になっている。
X1方向、中心軸線Oに直交する面内において、Y方向と直交する方向の1つである。X1方向は、起立姿勢における集塵装置2をY1方向から見たとき、向かって左から右に向かう方向である。X2方向は、X1方向の反対方向である。X1方向またはX2方向を単にX方向と称する場合がある。
【0024】
第1カップ部22aの外表面において吸気口22cよりもZ2方向寄りの部位には、係止部22eが突設されている。
係止部22eは、本体部1の支点部1eと着脱可能に係合される。係止部22eが支点部1eに係合されると、筒状部1Aの長手方向および長手方向に対する左右方向の位置決めがなされる。これにより、集塵装置2のZ1方向の端部は、支点部1eと係合された係止部22eを中心として集塵装置配置部1i側へと回動することができる。
【0025】
第2カップ部22dは、カップ22の開口部を形成する筒状部である。第2カップ部22dは、第1カップ部22aの先端部から漸次拡径した後、第2円筒部2Bの外径に等しい円筒状に形成されている。第2カップ部22dは、後述する第2塵埃回収室S2を側方から覆う範囲に形成されている。
第2カップ部22dの上端部には、径方向内側に突出する係合突起(図示略)が形成されている。一方、第2円筒部2Bの内部には、第2カップ部22dの係合突起と軸方向に係合可能かつ中心軸線O回りの回転によって係合解除可能な係合部が形成されている。これにより、第2カップ部22dは、第2円筒部2Bと着脱可能に係合している。
【0026】
カバー25は、第2カップ部22dを除く第2円筒部2Bの側面を形成する筒状部材である。カバー25は、第2カップ部22dのZ1方向の端部に隣接して中心軸線Oと同軸に配置されている。
カバー25には、装着形態においてY方向から見て、第2配置部1iBと重なる範囲に、切欠き25a、開口部25bが形成されている。
切欠き25aは、後述する蓋体29の蓋体着脱部29dの外形に沿う略U字状に形成されている。
開口部25bは、例えば、掃除ブラシ(図示略)などの付属品を配置するために形成されている。
図3に示す例では、開口部25bのZ2方向の端縁には、Y2方向に突出する付属品固定台25cが突出している。付属品固定台25cの形状は、付属品固定台25cに装着された付属品とともに、第1配置部1iAにおける凹所1pの内部に挿入可能な形状を有する。
【0027】
蓋体29は、起立姿勢における集塵装置2の天面部を形成する部材である。蓋体29の平面視形状は、カバー25の上端を上方から覆うことができる略円形である。
蓋体29は、外周部におけるY2方向の端部に、第2円筒部2Bに設けられた図示略の係止部と着脱可能に係合する蓋体着脱部29dを有する。
蓋体着脱部29dは、X方向に延びる回動支軸を中心として回動可能に設けられている。さらに、蓋体着脱部29dは図示略の弾性部材によってY1方向に付勢されており、蓋体着脱部29dのZ2方向の端部においてY1方向に突出する係合突起(図示略)が、第2円筒部2Bの内部に形成された係合部(図示略)に係合している。これにより、蓋体29は、第2円筒部2Bを着脱可能に係合している。
蓋体29の装着時には、蓋体29は、カバー25をカップ22との間に挟持している。
【0028】
蓋体29のZ1方向の表面には、傾斜面29cと先端係合部29bとが設けられている。
傾斜面29cは、装着形態において案内部1jの係止面1qと係止可能な傾斜を有する。傾斜面29cの中心部には、Y方向に長い矩形状の排気口29a(第3排気口)がZ方向に貫通している。
先端係合部29bは、傾斜面29cのX方向の両端部からZ1方向に延びる2つの壁体で形成される凹溝状に形成されている。先端係合部29bのX方向の内面は、案内部1jの側面に沿って互いに係合可能な形状に形成される。
このような構成により、装着形態における先端係合部29bは、収容部1Bの案内部1jの側面を間に挟んで、案内部1jと係合している。具体的には、係止部22eを支点部1eに係合させた状態で、集塵装置2のZ1方向の端部を集塵装置配置部1i側へと回動させることで、案内部1jと先端係合部29bとがX方向およびY方向において互いに係合する。
この係合時には、排気口29aと排気連通口1dとがZ方向において互いに対向する位置に配置される。さらに、傾斜面29cは、案内部1jの係止面1qと互いに当接し、傾斜面29cおよび排気連通口1dの周囲が先端係合部29bと案内部1jとの係合によって気密にシールされる。
このとき、第2円筒部2BのY2方向の側面は、第2配置部1iBに沿って配置される。
このような装着形態における集塵装置2と本体部1との係合は、収容部1Bの外表面に設けられた図示略の係合操作部によって解除可能である。
【0029】
次に、集塵装置2の内部構成について説明する。
図4は、
図3におけるA−A断面図である。
図5は、第1の実施形態の電気掃除機の集塵装置の斜視の分解図である。
【0030】
図4に示すように、集塵装置2の内部には、Z1方向において、第1分離部21、塵埃案内部23、第2分離部24(分離部)、整流部材27(整流部)、および第2フィルタ28(フィルタ)がこの順に配置されている。
集塵装置2の内部には、装着形態では、吸気口22cから排気口29aに向かう風路が形成される。
【0031】
第1分離部21は、図示略の吸気口22cからカップ22の内部に吸い込まれた含塵空気A1に含まれる塵埃のうち粗い塵埃(粗塵D1)を遠心分離する。
第1分離部21は、下部円筒部21Aと、上部風路部21Bとを有する。
下部円筒部21Aは、第1カップ部22aよりも小径の外形を有する有蓋円筒状に形成されている。下部円筒部21Aは、第1カップ部22aの内部において底面部22fおよび第1カップ部22aの内周面から離間した位置に、中心軸線Oと同軸に配置されている。
下部円筒部21AのZ2方向の端部には下部開口21aが開口し、Z1方向の端部には下部開口21aよりも狭い上部開口21bが開口している。下部円筒部21Aの側部には、下部円筒部21Aの外周を旋回する含塵空気A1を底面部22fに向けるリブ21eが径方向外側に突出している。
下部円筒部21Aの側面と第1カップ部22aの内周面との間の隙間は、含塵空気A1の旋回風路を形成している。旋回風路では、含塵空気A1に含まれる粗塵D1が遠心分離される。粗塵D1は、第1カップ部22aの内周面に沿って底面部22fに溜まる。
塵埃のうち粗塵D1が除去された含塵空気A2は、底面部22fに回り込み、下部開口21aから下部円筒部21A内で旋回しながらZ1方向に進む。
【0032】
上部風路部21Bは、上部開口21bから中心軸線Oと同軸にZ1方向に延びる筒状体である。上部風路部21Bの側面には、第1カップ部22a内に分離された粗塵D1が風路に入り込むことを抑制する第1フィルタ21cが設けられている。
上部風路部21BのZ1方向の端部には、後述する第2分離部24に含塵空気A2を流入させる第1排気口21dが開口している。
カップ22の内部において、第1分離部21の内部を除く空間は、粗塵D1が回収される第1塵埃回収室S1を構成している。
【0033】
塵埃案内部23は、後述する第2分離部24を下方から支持する。さらに塵埃案内部23は、第2分離部24と連通しており、第2分離部24によって遠心分離される細塵D2を回収する第2塵埃回収室S2を形成する。細塵D2は、含塵空気A1における粗塵D1よりも細かい塵埃である。細塵D2は、第2分離部24によって除去可能な塵埃である。
塵埃案内部23は、第2分離部24を支持する上板部23aと、塵埃案内板23cとを有する。上板部23aの中心部には、上部風路部21Bの開口と略同径の内径を有する開口部23bが中心軸線Oと同軸に形成されている。
上板部23aにおいて開口部23bよりも径方向外側には、複数の開口部23dがZ方向に貫通している。開口部23dは、Z方向に貫通し、後述する第2分離部24の塵埃排出口24gとそれぞれ連通する。
塵埃案内板23cは、各開口部23dよりも内側における上板部23aの下面から、Z2方向に漸次拡径するホーン状に形成されている。
上板部23aの径方向の外縁および塵埃案内板23cの下端部における径方向の外縁と、第2カップ部22dの内周面との間には、図示略のパッキンが配置されている。
このような構成により、第2塵埃回収室S2は、第2分離部24の下方における平面視略円環状の空間からなる。第2塵埃回収室S2は、開口部23dを除くと、気密にシールされている。
【0034】
第2分離部24は、第1分離部21の第1排気口21dから排気された含塵空気A2に含まれる細塵D2を遠心分離する。
第2分離部24は、通気風路部24a、導風部24b、第2分離部本体24e、および上カバー26を有する。本実施形態では、通気風路部24a、導風部24b、および第2分離部本体24eは、樹脂成形等によって一体的に形成されている。
【0035】
通気風路部24aは、Z1方向に延びる略円筒状に形成されている。通気風路部24aの内周面は、第1排気口21dと同軸である。通気風路部24aの内部は、第1排気口21dと連通している。
【0036】
導風部24bは、通気風路部24aのZ1方向の端部に形成され、第1排気口21dの内径以上の内径を有する内周面を有する。導風部24bの内周面には、含塵空気A2を周方向の複数成分に分岐させる複数の開口部24fが形成されている。通気風路部24aの開口部24fの数は、後述する第2分離部本体24eと同数である。
各開口部24fは、後述する第2分離部本体24eにそれぞれ連通している。
【0037】
第2分離部本体24eは、Z1方向の端部に設けられた略円筒状の第1筒状部24cと、第1筒状部24cのZ2方向の端部からZ2方向に向かって縮径する管状のコーン部24dと、を有する。
第2分離部本体24eは、各開口部24fの径方向外側にそれぞれ設けられている。第2分離部本体24eの個数は、特に限定されないが、本実施形態では一例として、10個である。第2分離部本体24eは、中心軸線Oを中心とする円周上に等間隔に配置されている。
【0038】
第1筒状部24cは、径方向内側の開口部24fと対向して配置され、Z方向において開口部24fと同程度の長さを有する。第1筒状部24cと、径方向に対向する開口部24fとは互いに連通しており、それぞれの間には、開口部24fから径方向外側に流れる含塵空気A2を第2分離部本体24eの内部に導く風路が形成されている。
【0039】
コーン部24dのZ2方向の端部は、塵埃案内部23の開口23aまで延びている。
コーン部24dのZ2方向の端部には、第1筒状部24cよりも小径の円孔である塵埃排出口24gがZ方向に開口している。
塵埃排出口24gは、塵埃案内部23の各開口部23dと互いに対向し、互いに気密に接続している。
【0040】
上カバー26は、Z1方向に開口する略有底円筒状に形成され、第2分離部24を上方から覆っている。上カバー26は、天板部26a、円筒部26d、排出筒部26b、およびフィルタ体支持部26cを有する。
【0041】
天板部26aは、後述する排出筒部26bによる開口部を除いて、各第2分離部本体24eのZ1方向の開口を塞ぐ円板状に形成されている。
円筒部26dは、天板部26aの外縁部からZ1方向に延びる略円筒状に形成されている。円筒部26dの外周面は、カバー25の内周面に着脱可能に嵌合する。円筒部26dのZ1方向の先端には、カバー25のZ1方向の端部から径方向内側に延びるフランジ25cが係止している。
円筒部26dよりも径方向内側には、フィルタ体支持部26cが天板部26aからZ1方向に向かって突出している。フィルタ体支持部26cは、後述する第2フィルタ28を支持するための突起部である。例えば、フィルタ体支持部26cは、第2フィルタ28の外周部を下方から支持する円筒状の突起からなる。フィルタ体支持部26cの高さは円筒部26dよりも低い。
【0042】
排出筒部26bは、天板部26aから各第1筒状部24cの内側に向かってZ2方向に延びる円筒状に形成されている。排出筒部26bの外径は、第1筒状部24cの内径よりも小さい。排出筒部26bは、第1筒状部24cの中心軸線と同軸に配置されている。第1筒状部24cの長さは、第1筒状部24cと同程度である。
第1筒状部24cの内部には、排出筒部26bの外側の開口部24fから吸引される含塵空気A2が排出筒部26b回りに旋回可能な風路が形成される。
さらに、排出筒部26bの内側には、第2分離部本体24eの内部と、天板部26aの上方とをZ方向に連通させる風路が形成されている。
図5に示すように、天板部26aには、各排出筒部26bのZ1方向の端部の内周面による開口部26e(排気口、第2排気口)が形成されている。開口部26eは、第2分離部本体24eの個数および配置に応じて形成される。本実施形態では、10個の開口部26eが、中心軸線Oを中心とする仮想円C0の円周上において互いに離間しており、かつ周方向に等間隔に配置されている。
【0043】
このような構成により、
図4に示すように、各開口部24fから各第2分離部本体24eに排気された含塵空気A2は、それぞれ排出筒部26bと第1筒状部24cとをZ2方向に見て反時計回りに旋回しながらZ2方向に進む。
含塵空気A2が、コーン部24dの内周面に沿って旋回することにより、含塵空気A2に含まれる細塵D2が遠心分離される。細塵D2は、コーン部24dの内面に沿ってZ2方向に移動する。塵埃排出口24gに到達した細塵D2は、塵埃排出口24gと連通する開口部23dを通して、第2塵埃回収室S2内に落下する。第2塵埃回収室S2内に落下した細塵D2は、塵埃案内板23cの傾斜に沿って移動し、第2塵埃回収室S2内に回収される。
含塵空気A2のうち細塵D2が除去された空気を、以下では低塵空気A3と称する。
第2塵埃回収室S2は密閉されているのに対して、排出筒部26bの内部は、本体部1の吸引によって負圧になる。このため、低塵空気A3の多くは、開口部23dを通過することなくコーン部24dの中心部をZ1方向に進む。低塵空気A3は、排出筒部26bの内部を通過して、開口部26eから第2分離部24の上方に排気される。
【0044】
次に、第2分離部24と蓋体29との間の内部構成について説明する。
図5に示すように、上カバー26と蓋体29との間には、Z1方向において、整流部材27、および第2フィルタ28がこの順に配置されている。
【0045】
整流部材27は、各開口部26eからZ1方向に排気される低塵空気A3の流れ方向を変える部材である。整流部材27によって変更される低塵空気A3の流れ方向は、開口部26eの直上に向かう方向に集中しなければ特に限定されない。低塵空気A3の流れ方向は、後述する第2フィルタ28の中心部を含む広範囲の領域に到達可能な方向とされる。
図5に示す例では、整流部材27は、上カバー26の上方において、少なくとも開口部26eに重なる範囲に設けられる。整流部材27によって形成される低塵空気A3の流れ方向は、開口部26eが配列された円周よりも内側に向かう方向であることがより好ましい。
【0046】
次に、整流部材27の詳細構成について説明する。
図6は、第1の実施形態の電気掃除機における整流部の構成例を示す斜視の模式図である。
図7Aは、第1の実施形態の電気掃除機における整流部の構成例を示す平面視の模式図である。
図7Bは、
図7AにおけるB−B断面図である。
【0047】
図6、7A、7Bに示すように、整流部材27は、平板部27A、エンボス部27B、フィルタ支持部27f、および下側板27gを有する。本実施形態では、平板部27Aとエンボス部27Bとにより、「カバー部」の一例が形成されている。
【0048】
図7Aに示すように、平板部27Aは、中心部に平面視円形状の開口部27Cが形成された平面視略円環状である。開口部27Cの内径は、平面視にて各開口部26eの少なくとも一部を覆うことができる大きさであれば特に限定されない。
開口部27Cの内径は、平面視にて各開口部26eの全体を覆う大きさであることがより好ましい。例えば、
図7Aに示す例では、開口部27Cの内径は、二点鎖線で示す各開口部26eの配列に内接する円の円径に略等しい。ただし、これは一例であり、開口部27Cの内径は、各開口部26eの配列に内接する円の径より小さくてもよい。
Z方向から見た開口部27Cの開口面積は、開口部26eの開口面積の合計よりも広い開口面積を有することがより好ましい。
図7Aに示す例では、開口部27Cの開口面積は、開口部26eの開口面積の合計よりも広い開口面積を有する。
【0049】
図6に示すように、エンボス部27Bは、平板部27AからZ1方向に突出されたドーム状に形成される。
図7Aに示すように、エンボス部27Bは、各開口部26eを覆うように開口部26eと同数形成されている。各エンボス部27Bは、それぞれが覆う開口部26eの中心を通り、中心軸線Oとの距離がdの直線Lに沿って延びている。距離dは0よりも大きく、開口部27Cの内径の半分よりも小さい。
図7Bに直線Lを含む鉛直断面(B−B断面)を示すように、エンボス部27BのZ2方向の表面は、凹溝27b(窪み部)を形成している。凹溝27bは、中心軸線Oに関する径方向外側の溝閉端部27a(第1端部)から、中心軸線Oに関する径方向内側の溝開端部27c(第2端部)に向かって延在している。
溝開端部27cは、エンボス部27Bと開口部27Cに沿う円筒面とが交差して形成される端縁である。溝開端部27cは、凹溝27bにおける溝開口部27dを形成する。
凹溝27bの断面形状は、低塵空気A3の風損を低減できる形状であれば、特に限定されない。
本実施形態では、一例として、延在方向に直交する凹溝27bの断面形状はU字状である。溝開端部27cによる延在方向の開口形状も、延在方向から見ると、凹溝27bと同様なU字状である。例えば、凹溝27bの断面形状は、半円形であってもよいし、半円とは異なるU字形でもよい。
溝閉端部27aは、平板部27AからZ1方向に略四分球状に陥没する凹湾曲面であり、凹溝27bと滑らかに接続している。
【0050】
図7Aに示すように、凹溝27bの溝幅(延在方向に直交する方向の幅)は、Wである。Wの大きさは、開口部26eの内径以上であることがより好ましい。
例えば、
図7Aに示す例では、開口部27Cは、溝開口部27dと、平板部27Aの端縁である平板端部27eと、が周方向に交互に配置されて構成されている。低塵空気A3の排気効率の観点では、開口部27Cにおける平板端部27eの占める割合は小さいほどより好ましい。開口部27Cにおける平板端部27eの占める割合は0であってもよい。
【0051】
図7Bに示すように、凹溝27bの深さはHである。Hの大きさは、低塵空気A3の風損を考慮して適宜設定されればよい。例えば、H=W/2が好ましい。例えば、Hは後述するhよりも大きいことがより好ましい。
凹溝27bの長さは、その延在方向と開口部27Cの大きさとにもよるが、開口部26eを上方から半分以上覆うことができる長さであることがより好ましい。例えば、直線Lを含み平板部27Aに垂直な断面における凹溝27bの長さd27bは、開口部26eの半径以上であることがより好ましい。長さd27bは、凹溝27bの深さHよりも長いことがより好ましい。
【0052】
各エンボス部27Bの延在方向は、Z2方向に見ると、各開口部26eの中心O26eから中心軸線Oに向かう線分Rに対して傾斜している。
図7Aに示す例では、各エンボス部27Bの溝閉端部27aから溝開端部27cに向かう延在方向は、各線分Rに対してそれぞれ中心軸線Oに向かって右側に傾斜している。これにより、各エンボス部27Bの溝開口部27dからエンボス部27Bの延在方向に向かう各低塵空気A3は、Z2方向から見て反時計回りの旋回流を形成する。この場合、旋回流の旋回方向は、第1分離部21および第2分離部24内の含塵空気A1、A2の旋回方向(第1旋回方向)と一致している。
第1分離部21および第2分離部24内の含塵空気A1、A2の旋回方向が、Z2方向から見て時計回りの場合には、各エンボス部27Bの延在方向の傾斜は各線分Rに対して逆転される。
このように、エンボス部27Bの延在方向は、各エンボス部27Bから排気される低塵空気A3の旋回方向と一致する旋回方向を有する旋回流を形成できるように定めることがより好ましい。
【0053】
図7Bに示すように、フィルタ支持部27fは、平板部27Aの外縁から、Z1方向に延びる壁体で形成される。フィルタ支持部27fの突出高さは、後述する第2フィルタ28をエンボス部27Bの上方で支持できる適宜の高さとされる。
下側板27gは、平板部27Aの外縁から、Z2方向に延びる壁体で形成される。下側板27gは、平板部27Aを天板部26aと隙間を空けて配置するために設けられている。下側板27gの突出高さは、h(ただし、h>0)である。
hの大きさは、開口部26eから排気される低塵空気A3の風損を考慮して適宜設定されればよい。
【0054】
このような構成の整流部材27の材料および形成方法は特に限定されない。例えば、整流部材27は、樹脂成形によって形成されてもよい。
【0055】
図5に示すように、第2フィルタ28は、フィルタ本体28a(フィルタ)と、枠体28bとを有する。
【0056】
フィルタ本体28aは、第2分離部24によって遠心分離されない微細な塵埃を、低塵空気A3から除去するために設けられている。
フィルタ本体28aは、少なくとも開口部27CをZ方向に覆う大きさを有する。フィルタ本体28aの大きさは、
図4に示す例のように、整流部材27のフィルタ支持部27fの内側全体を覆う大きさであることがより好ましい。
【0057】
フィルタ本体28aの材料としては、このような塵埃が除去可能な適宜の材料、例えば、多数の細孔を有するスポンジ部材等が用いられる。
【0058】
図5に示すように、枠体28bは、フィルタ本体28aの外縁を保持する略円筒状の部材である。枠体28bは、フィルタ本体28aの上方および下方に突出している。
枠体28bの下面における外周側にはパッキン30が設けられている。
図4に示すように、枠体28bのZ2方向の端部は、整流部材27の平板部27A上に当接している。これにより、整流部材27上のフィルタ本体28aの高さが規定される。本実施形態では、フィルタ本体28aは、整流部材27のエンボス部27Bの上端と接する位置に配置されている。
枠体28bのZ1方向の端部は、蓋体29の外周部における凹溝に嵌合している。これにより、第2フィルタ28の位置が蓋体29によって規制される。枠体28bは、蓋体29からZ2方向に突出したフィルタ押え29eによって第2フィルタ支持部26cとの間に挟まれている。
枠体28bに設けられたパッキン30は、枠体28bとフィルタ体支持部26cとの間に挟まれている。
このような構成によって、上カバー26と第2フィルタ28との間の空間がパッキン30によってシールされる。
【0059】
このような構成により、整流部材27は、上カバー26と蓋体29との間に挟持される。整流部材27は、図示略のネジなどの固定部材によって上カバー26に固定されている。
蓋体29とフィルタ本体28aとの間には、風路を形成する隙間が形成されている。
フィルタ本体28aを間に挟んで、整流部材27の開口部27Cと、蓋体29の排気口29aとは、Z方向に対向している。
【0060】
次に、電気掃除機100の動作について、整流部材27の作用を中心に説明する。
図8Aは、第1の実施形態の電気掃除機における整流部の作用を説明する断面の模式図である。
図8Bは、第1の実施形態の電気掃除機におけるフィルタの汚れ方を示す平面視の模式図である。
【0061】
電気掃除機100を用いる掃除の一例では、例えば、
図1に示すように、集塵装置2を装着した掃除機本体10に、延長管4および吸込口体3を接続する。使用者は、把持部1fを把持して吸込口体3を床面上に載置し、電動送風機11の駆動を開始する。これにより、電動送風機11による吸引が開始される。電気掃除機100の各風路が負圧になるので、吸込口体3の開口部から含塵空気A1が吸引される。
含塵空気A1は、接続口1gから本体部1の内部に吸引され、吸気連通口1cを通して集塵装置2の内部に吸い込まれる(
図2参照)。
【0062】
図3に示すように、集塵装置2に吸い込まれる含塵空気A1は、吸気口22cおよび吸気ガイド部22bを通して、カップ22内に入る。このとき、含塵空気A1は、吸気ガイド部22bの傾斜に沿って、カップ22の接線方向に流入する。この結果、
図4に示すように、含塵空気A1は、吸気ガイド部22b内で一定方向に旋回する。このとき、含塵空気A1内の粗塵D1は、遠心分離されて第1カップ部22aの下部に溜まる。
【0063】
粗塵D1が除去された含塵空気A2は、下部円筒部21Aの内部を旋回しつつ、Z1方向に進む。含塵空気A2は、上部風路部21BをZ1方向に進んで第1排気口21dから第2分離部24の通気風路部24a内に排気される。
含塵空気A2は各開口部24fに達すると、各開口部24fを通して、各第2分離部本体24eに分流される。
【0064】
各第2分離部本体24eに吸引された含塵空気A2は、排出筒部26bの外周を旋回した後、コーン部24dに沿って旋回しつつZ2方向に進む。このとき、含塵空気A2に含まれる細塵D2が遠心分離される。上述したように、細塵D2は塵埃排出口24gおよび開口部23bを経由して第2塵埃回収室S2内に回収される。
【0065】
細塵D2が除去された低塵空気A3は、コーン部24dの中心部を通ってZ1方向に移動する。低塵空気A3は、排出筒部26bの内部を通って開口部26eからZ1方向に排気される。このとき、低塵空気A3は、含塵空気A1、A2と同様の旋回方向に旋回しながら開口部26eから排気される。
図8Aに示すように、開口部26eの直上には、整流部材27が配置されている。
低塵空気A3の流れ方向は、整流部材27のうち特に開口部26eの直上に位置するエンボス部27Bによって、エンボス部27Bの延在方向に曲げられる(矢印A3a参照)。その際、低塵空気A3は、溝閉端部27aおよび凹溝27bの湾曲面に沿って滑らかに流れ方向が曲げられる。これにより、低塵空気A3の風損が低減できる。
さらに本実施形態では、平面視における各凹溝27bの延在方向が中心軸線Oに対して一定方向に逸れているので、
図7Aに示すように、各低塵空気A3は、それぞれの旋回方向と同方向の旋回流が形成される点でも、風損を低減することができる。
【0066】
流れ方向が変えられる際に、低塵空気A3は、溝閉端部27aおよび凹溝27bと衝突する。このとき、
図8Aに示すように、低塵空気A3中の微細塵D3の少なくとも一部は、溝閉端部27aおよび凹溝27bの表面にトラップされ、表面に堆積する。
【0067】
集塵装置2は、本体部1によって排気口29aから吸引されているので、上カバー26と蓋体29の間の空間は負圧になる。このため、
図8Aに示すように、溝開口部27dを出た低塵空気A3は、開口部27Cの範囲Z1方向に略均等に吸引される。この結果、低塵空気A3は、矢印A3bで示すように、開口部27Cの内側の全体を通して、Z1方向に吸引される。
開口部27Cを通過した低塵空気A3は、開口部27Cに面する部位を中心にフィルタ本体28aを透過する。低塵空気A3は、フィルタ本体28aを透過した後、図示略の排気口29aから本体部1の排気連通口1dに清浄空気Acとして排気される。
【0068】
このように、集塵装置2では、整流部材27の作用によって、低塵空気A3が開口部27Cを通して、開口部26eの大きさよりも広範囲に拡散した状態でフィルタ本体28aを透過する。この結果、低塵空気A3に含まれる微細塵D3も、フィルタ本体28aの広範囲に分散して捕集される。
これにより、フィルタ本体28aは、
図8Bに模式的に示すよう汚れていく。フィルタ本体28aの経時的な汚れは、中心軸線Oを中心とする略同心円状に分布する。フィルタ本体28aの外縁部F1(主に開口部26eよりも径方向外側)は、ほとんど低塵空気A3が透過しないので、微細塵D3による汚れは少ない。
これに対して、開口部27Cと重なる中心部F3では、全体的に低塵空気A3が透過するので、最も汚れやすい。開口部27Cよりも径方向外側であって、開口部26eと重なる範囲の中間部F2では、低塵空気A3が溝開口部27dを回り込んで進入するので、外縁部F1と中心部F3との中間の汚れが発生する。
【0069】
このように、整流部材27の作用によって、低塵空気A3の透過領域が広範囲にわたる結果、フィルタ本体28aの汚れは、中間部F2と中心部F3とにわたる。この結果、フィルタ本体28aにおいては、外縁部F1を除く領域が、微細塵D3の除去に利用されていることが分かる。
【0070】
次に、本実施形態の作用を比較例と対比して説明する。
図9Aは、比較例の電気掃除機の空気の流れを説明する断面の模式図である。
図9Bは、比較例の電気掃除機におけるフィルタの汚れ方を示す平面視の模式図である。
【0071】
図9Aに示すように、比較例の集塵装置102は、集塵装置2から整流部材27を除去されている以外は、集塵装置2と同様の構成を有する。集塵装置102は、集塵装置2と同様にして掃除機本体10に装着できる。
集塵装置102によれば、整流部材27を有しないため、低塵空気A3は、排出筒部26b内の流れ方向を変えることなく、開口部26eからZ1方向に直進する(矢印A3c参照)。低塵空気A3は、開口部26eの直上のフィルタ本体28aを透過した後、図示略の排気口29aから本体部1の排気連通口1dに清浄空気Acとして排気される。
この結果、フィルタ本体28aの汚れは、
図9Bに示すように、開口部26eと重なる直上部F12に集中する。直上部F12を除く非直上部F11には、低塵空気A3がほとんど透過しないため、非直上部F11では微細塵D3はほとんど捕集されない。
【0072】
このように、比較例の集塵装置102では、微細塵D3の捕集に主として使用されるフィルタ本体28aは、直上部F12であるので、本実施形態の集塵装置2に比べると、フィルタ本体28aの利用効率が低い。このため、直上部F12が目詰まりするとフィルタ本体28aの寿命が尽きてしまう。
比較例の集塵装置102において、非直上部F11の面積を狭めるために、第2分離部本体24eを径方向内側に移動したり、第2分離部本体24eの内径を大きくしたりすることも考えられる。しかし、この場合、通気風路部24aが狭くなったり、第2分離部24内での空気の旋回風速の低下を引き起こしたりするため、第2分離部24における遠心分離性能が低下してしまう。
【0073】
これに対して、集塵装置2に使用するフィルタ本体28aは、第2分離部本体24eが集塵装置2の外周部の近くに配置されていても、整流部材27の作用によって、汚れが広範囲に分散する。このため、フィルタ本体28aの目詰まりが起こりにくくなる。この結果、フィルタ本体28aの寿命は、比較例の集塵装置102における寿命よりも長くなる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の電気掃除機100によれば、整流部材27を有するため、塵埃を遠心分離する第2分離部の下流に配置されるフィルタの寿命を向上することができる。
【0075】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の電気掃除機を説明する。
図10は、第2の実施形態の電気掃除機における整流部の構成例を示す断面の模式図である。
【0076】
図1に示すように、本実施形態の電気掃除機100aは、第1の実施形態の電気掃除機100の集塵装置2に代えて、集塵装置2aを有する。
図10に主要部を示すように、集塵装置2aは、整流部材27に代えて整流部材37(整流部)を有する。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0077】
整流部材37は、整流部材27のエンボス部27Bに代えてエンボス部37Bを有する。エンボス部37Bは、エンボス部27Bの各凹溝27bに代えて、それぞれ凹溝37b(窪み部、傾斜部)を有する。本実施形態では、平板部27Aとエンボス部37Bとにより、「カバー部」の一例が形成されている。
凹溝37bは、延在方向において溝閉端部27aから溝開口部27dに向かうにつれて、Z1方向のフィルタ本体28aに向かって傾斜している。凹溝37bは、溝閉端部27aと滑らかに接続している。
凹溝37bの溝深さは、溝閉端部27aから溝開口部27dに向かうにつれて漸次増大している。溝深さの変化量は、低塵空気A3の風損を考慮して適宜に設定できる。
図10に示す例では、凹溝37bの溝底面は、天板部26aおよびフィルタ本体28aに対して、一定角度θだけ傾斜している。ただし、凹溝37bの溝底面は、溝閉端部27aから溝開口部27dに向かうにつれて、傾斜角が漸減したり、漸増したりしてもよい。
凹溝37bの延在方向に直交する断面形状は、凹溝27bと同様のU字状である。ただし、凹溝37bの溝幅は、溝閉端部27aから溝開口部27dに向かうにつれて漸次拡幅していてもよいし、一定幅であってもよい。
【0078】
このように、エンボス部37Bの凹溝37bが溝閉端部27aから溝開口部27dに向かうにつれてフィルタ本体28aに向かって傾斜しているため、開口部26eから排気される低塵空気A3は、凹溝37bの傾斜に沿って、斜めに流れてフィルタ本体28aに入射する(矢印A3d参照)。
すなわち、凹溝27bのように、傾斜を有しない場合に比べて、低塵空気A3の流れ方向の変化が低減されるので、低塵空気A3の風損が低減できる。同様に、溝開口部27dから排気され、図示略の排気口29aに向かって低塵空気A3がZ1方向に流れ方向が変えられる際にも、傾斜を有しない場合に比べると流れ方向の変化が少なくなる。
低塵空気A3は、第1の実施形態と同様、開口部27Cを通して、フィルタ本体28aを透過するので、フィルタ本体28aの寿命は、第1の実施形態と同様に向上する。
【0079】
本実施形態の電気掃除機100aによれば、整流部材37を有するため、第1の実施形態と同様、塵埃を遠心分離する第2分離部の下流に配置されるフィルタの寿命を向上することができる。さらに、本実施形態によれば、低塵空気A3の風損をより低減できるので、電動送風機11の負荷を低減することができる。
【0080】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の電気掃除機を説明する。
図11は、第3の実施形態の電気掃除機における整流部の構成例を示す平面視の模式図である。
図12は、
図11におけるC−C断面図である。
【0081】
図1に示すように、本実施形態の電気掃除機100bは、第1の実施形態の電気掃除機100の集塵装置2に代えて、集塵装置2bを有する。
集塵装置2bは、整流部材27に代えて、
図11に示す整流部材47(整流部)を有する。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0082】
図11に示すように、整流部材47は、整流部材27のエンボス部27Bに代えてエンボス部47Bを有する。本実施形態では、平板部27Aとエンボス部47Bとにより、「カバー部」の一例が形成されている。
エンボス部47Bの延在方向は、エンボス部27Bの延在方向が中心軸線Oから逸れる方向であるのに対して、中心軸線Oに向かう方向である。
図12に示すように、エンボス部47Bの延在方向の断面は、第2の実施形態におけるエンボス部37Bの断面と同様である。すなわち、エンボス部47BのZ2方向の表面は、溝閉端部27aと、凹溝37bとからなる。
【0083】
本実施形態における整流部材47は、エンボス部47Bが、エンボス部37Bと異なる方向に延在している以外は、第2の実施形態の整流部材37と同様に構成されている。
このため、溝開口部27dからフィルタ本体28aに向かう低塵空気A3による旋回流の形成がエンボス部47Bによって促進されない以外は第2の実施形態と同様にして、低塵空気A3が、開口部27Cから斜め方向に排気されてフィルタ本体28aに入射する。
本実施形態では、旋回流の形成が促進されない点では、第2の実施形態よりも風損が大きくなるが、フィルタ本体28aの寿命に関しては、第1および第2の実施形態と同様である。
【0084】
本実施形態の電気掃除機100bによれば、整流部材47を有するため、第1の実施形態と同様、塵埃を遠心分離する第2分離部の下流に配置されるフィルタの寿命を向上することができる。
【0085】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の電気掃除機を説明する。
図13は、第4の実施形態の電気掃除機における整流部の構成例を示す平面視の模式図である。
図14は、
図13におけるD−D断面図である。
【0086】
図1に示すように、本実施形態の電気掃除機100cは、第1の実施形態の電気掃除機100の集塵装置2に代えて、集塵装置2cを有する。
集塵装置2cは、整流部材27に代えて、
図13に示す整流部材57(整流部)を有する。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0087】
図13に示すように、整流部材57は、整流部材27のエンボス部27Bに代えてエンボス部57Bを有する。本実施形態では、平板部27Aとエンボス部57Bとにより、「カバー部」の一例が形成されている。
エンボス部57Bは、中心軸線Oを中心としてZ1方向に突出する平面視円形のドーム状に形成されている。エンボス部27Bの中心部には、開口部27Cに代えて円状の貫通孔による開口部57Cが形成されている。開口部57Cの内径の大きさは開口部27Cの内径と同様である。
図13に示す例では、開口部57Cは、開口部26eよりも径方向内側に形成されている。
図14に示すように、中心軸線Oを含む断面では、エンボス部57Bの内面57a(傾斜部)は、径方向外側から中心軸線Oに向かうにつれて、平板部27AからのZ1方向の高さが漸増する形状を有する。これにより、内面57aは、平板部27AのZ2方向の表面から中心軸線Oに向かって斜め上方向に傾斜している。ただし、
図14に示す例では、傾斜の変化率は、径方向外側から内側に向かって漸次減少している。
【0088】
本実施形態における整流部材57では、エンボス部57Bは、開口部26eが配列される円環状の領域の全体を覆っている。各開口部26eの中心O26eと中心軸線Oを含む断面では、内面57aは、第2の実施形態におけるエンボス部37Bの延在方向の断面と略同様な形状に湾曲している。この断面形状は中心軸線O回りの全周に共通である。このため、内面57aは、周方向に互いに隣り合う開口部26eの間の天板部26a上においても同様な断面形状を有する。
【0089】
このような構成により、開口部26eを通過する低塵空気A3は、内面57aの湾曲に沿って、流れ方向が矢印A3eのように変更される。このとき、低塵空気A3は、周方向に自由に移動できる。この結果、低塵空気A3はその旋回成分に応じて、内面57a上を周方向に進むことができるので、周方向への移動が規制される場合に比べて風損が低減される。
これにより、開口部57Cを通過する低塵空気A3(矢印A3f参照)は、旋回成分を含んだ状態で、斜め方向に排気され、フィルタ本体28aに入射する。
さらに、本実施形態によれば、低塵空気A3が開口部57Cから排気される際に周方向の規制を受けない。これにより、低塵空気A3が開口部57Cの周方向に拡散しやすくなる点でも、開口部57Cに対向するフィルタ本体28aの広い範囲に低塵空気A3が入射しやすくなる。
【0090】
本実施形態では、風損が低減された状態で、フィルタ本体28aの広い範囲に低塵空気A3が排気されるので、フィルタ本体28aの寿命を延ばすことができる。
【0091】
本実施形態の電気掃除機100cによれば、整流部材57を有するため、第1の実施形態と同様、塵埃を遠心分離する第2分離部の下流に配置されるフィルタの寿命を向上することができる。
【0092】
上記各実施形態では、電気掃除機は、掃除機本体10に延長管4を直接接続するスティック型の電気掃除機であるとして説明したが、電気掃除機は、これには限定されない。例えば、電気掃除機は、被掃除面上を走行可能な掃除機本体に対してホース体などを介して延長管を接続する、いわゆるキャニスタ型の電気掃除機、あるいは自律走行する自走式の電気掃除機などであってもよい。
【0093】
上記各実施形態では、集塵装置から排気される清浄空気Acは、集塵装置の排気口29aから集塵装置の軸方向に排気されるとして説明したが、集塵装置の清浄空気Acを排気する排気口は、軸方向に開口していなくてもよい。例えば、排気口は、径方向に開口していてもよい。
【0094】
上記各実施形態では、整流部は、周方向に連続する板状に形成されるとしてとして説明したが、整流部は、第2分離部等の分離部の排気口に少なくとも対向する位置に設けられた片状の平板、L字状の屈曲板、湾曲板、凹溝などが、周方向に不連続に設けられてもよい。
例えば、整流部は、平板部27Aから直角に立ち上がる側面部と側面部の先端から水平またはフィルタに向かって傾斜するように延びる方向変更部とを有する屈曲板、湾曲板が用いられてもよい。この場合、空気が周方向にもれるので、空気の旋回を拘束しないで流れ方向を変えることができる。
【0095】
上記各実施形態では、整流部は、エンボス部で形成されるとして説明したが、整流部は、第2分離部の第2排気口に対向する部位に空気の流れ方向を変える部位が形成されていればよい。例えば、上記各実施形態における各エンボス部のZ1方向の表面形状は、低塵空気A3の流れ方向を変える機能を有しないので、突湾曲面には限定されない。例えば、各エンボス部のZ1方向の表面形状は平面であってもよい。
【0096】
上記各実施形態では、電気掃除機が第1分離部と第2分離部とを有し、第2分離部の第2排気口から排気される空気の流れ方向を整流部によって変更してフィルタに向けるとして説明した。しかし、整流部が空気を遠心分離する分離部は、2段目の第2分離部には限定されない。例えば、整流部は第1分離部から排気される空気の流れ方向を変更してもよい。あるいは、電気掃除機が1つあるいは1段の分離部のみを有する場合に、1つあるいは1段の分離部から排気される空気の流れ方向を整流部によって変更してフィルタに向けてもよい。
【0097】
以上、説明した少なくともひとつの実施形態によれば、分離部における排気口から排気される空気の流れ方向を変える整流部を持つため、清掃効率の向上を図ることができる電気掃除機を提供することができる。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。