(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ECD1、ECD2、またはECD4のいずれか一つより選択されるHER2の細胞外ドメイン(ECD)に結合する一価抗体構築物を含む、患者における低HER2発現の癌を治療する方法に使用するための医薬組成物であって、該一価抗体構築物が、
a)HER2の該ECDに結合する、FabまたはscFvである抗原結合ポリペプチド構築物と、
b)2つの単量体Fcポリペプチドを含むヘテロ二量体Fcポリペプチド構築物であって、それぞれが変異型CH3ドメインを含み、該単量体Fcポリペプチドのうちの1つが該抗原結合ポリペプチド構築物に融合されている、ヘテロ二量体Fcポリペプチド構築物と
からなり、
該一価抗体構築物が、HER2に結合する対応する単一特異性二価抗体構築物と比較して、ADCCによって、低HER2発現細胞のより高い最大溶解度を示し、
ここで、該対応する単一特異性二価抗体構築物は、該一価抗体構築物の上記b)のヘテロ二量体Fcポリペプチド構築物における該抗原結合ポリペプチド構築物に融合されていない他方の単量体Fcポリペプチドも、上記a)と同一の第2の抗原結合ポリペプチド構築物に融合されている構築物である、
医薬組成物。
前記患者がトラスツズマブ、ペルツズマブ、T−DM1、および抗HER二価抗体のうちの1つ以上を用いた治療に部分的に応答性であるか、もしくは応答しない、請求項2記載の医薬組成物。
前記変異型CH3ドメインが、ネイティブのホモ二量体Fc領域に相当する安定性を持つヘテロ二量体Fcの形成を促進するアミノ酸変異を含み、かつ該変異型CH3ドメインが、約70℃以上、約75℃以上、もしくは約80℃以上の融解温度(Tm)を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
前記ヘテロ二量体Fcポリペプチド構築物が、Fcγ受容体の選択的結合を促進するアミノ酸修飾を含む変異型CH2ドメインを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(a)1つの単量体Fcポリペプチドが、変異T350V_L351Y_F405A_Y407Vを含み、他の単量体Fcポリペプチドが、変異T350V_T366L_K392L_T394Wを含むか;
(b)1つの単量体Fcポリペプチドが、変異T350V_T366L_K392M_T394Wを含み、他の単量体Fcポリペプチドが、変異T350V_L351Y_F405A_Y407Vを含むか;
(c)1つの単量体Fcポリペプチドが、変異L351Y_F405A_Y407Vをを含み、他の単量体Fcポリペプチドが、変異T366L_K392M_T394Wを含むか;
(d)1つの単量体Fcポリペプチドが、変異L351Y_F405A_Y407Vを含み、他の単量体Fcポリペプチドが、変異T366L_K392L_T394Wを含むか;または
(e)1つの単量体Fcポリペプチドが、変異L351Y_S400E_F405A_Y407Vを含み、他の単量体Fcポリペプチドが、変異T366I_N390R_K392M_T394Wを含む、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
前記一価抗体構築物が、FcRnに結合し、前記対応する単一特異性二価抗体構築物と比較して、より高い分布容積(Vss)を示す、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0039】
抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、それぞれがCH3ドメインを含む2つの単量体Fcポリペプチドを含み、1つのその単量体Fcポリペプチドが、抗原結合ポリペプチド構築物からの少なくとも1つのポリペプチドに融合する、二量体Fcポリペプチド構築物と、を含む一価抗体構築物が本明細書に提供され、その一価抗体構築物は、2つの抗原結合領域を持つ対応する単一特異性二価抗体構築物と比較して、その抗原を提示する標的細胞に対する結合密度およびB
maxの増加を示し、その一価抗体構築物は、対応する二価抗体構築物と比較して優れた効果および/または生物活性を示し、その優れた効果および/または生物活性は、結合密度の増加の結果であり、標的細胞の装飾の増加をもたらす。ここで挙げられる一価抗体構築物によるB
maxまたは結合密度の増加および標的の装飾の結果として生じる増加は、特異的標的結合の作用であり、非特異的結合によるものではない。ある特定の実施形態において、最大の結合は、1:1の標的対抗体比において生じる。
【0040】
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される一価抗体構築物は、以下の特質の少なくとも1つ以上を持つ:対応する単一特異性二価抗体構築物(FSA)と比較して増加したB
max;対応するFSAに相当するK
d;対応するFSAと比較して同等またはより遅いオフ速度;減少したまたは部分的なアゴニズム;標的の架橋および二量体形成がない;対象の標的細胞に特異的および/または選択的である;完全な、または部分的な標的細胞成長の阻害、または標的細胞成長の阻害が無い;エフェクター活性を誘発することができる完全Fc;ならびに標的細胞によってインターナライズされる能力。
【0041】
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される一価抗体構築物は、以下の最低限の特質を持つ:対応するFSAと比較して増加したB
max;対応するFSAに相当するK
d;対応するFSAと比較して同等またはより遅いオフ速度;減少したまたは部分的なアゴニズム;標的の架橋および二量体形成がない;対象の標的細胞に特異的および/または選択的である;完全な、または部分的な標的細胞成長の阻害、または標的細胞成長の阻害が無い;エフェクター活性を誘発することができる完全Fc;ならびに標的細胞によってインターナライズされる任意の能力。
【0042】
その構築物が、一価溶解性抗体、一価インターナライズ抗体、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである、一価抗体構築物が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、抗体構築物は、以下の効果要因を示すこれらの抗体のバランスに依存する一価溶解性抗体および/または一価インターナライズ抗体である:a)インターナライズされる一価抗体構築物の能力、b)一価抗体構築物の増加したB
maxおよびKd/オン−オフ速度、ならびにc)一価抗体構築物のアゴニズム/部分的アゴニズムの程度。
【0043】
抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、二量体Fc領域と、を含む一価抗体構築物を標的細胞に提供する段階を含む、少なくとも1つの標的細胞において抗体濃度を増加させる方法が本明細書に提供され、その一価抗体構築物は、2つの抗原結合領域を持つ対応する二価抗体構築物と比較して、その抗原を提示する標的細胞に対する結合密度およびBmaxの増加(最大結合)を示し、その一価抗体構築物は、対応する二価抗体構築物と比較してより良い治療効果を示し、ならびにその効果は、抗原の架橋、抗原二量体形成、抗原調節の阻止、または抗原活性化の阻止によって生じるものではない。反対に、これらが最終的な死滅効果を克服しない限り、効果が抗原調節または抗原活性化によって生じ得るということは事実である。
【0044】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その抗体構築物は、アビディティーを示さない。
【0045】
一価溶解性(Mv−L)抗体
その構築物がFSAと比較して増加したB
maxおよび同等か、またはより遅いオフ速度を持つ(このため、MV−Lおよび抗体依存性細胞傷害を用いて標的細胞のより高度な装飾をもたらす)、本明細書に記載の一価抗体構築物が提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のMV−L抗体構築物は、FSAと比較して増加したB
maxならびに速いオンおよび遅いオフ速度で、標的細胞に結合する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のMV−L抗体構築物は、同族リガンドの標的抗原への結合を遮断する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のMV−L抗体構築物は、インターナリゼーションを示さず、それにより細胞上の抗体の最大装飾および経路の機能遮断をもたらす。
【0046】
ある特定の実施形態において、MV−L抗体構築物は、1)FSAと比較して増加したB
maxおよび速いオンおよび同等か、もしくはより遅いオフ速度で標的細胞に結合し、飽和する、2)非アゴニストである、3)細胞成長を阻害する、4)同族リガンドの標的抗原への結合を遮断する、5)インターナリゼーションを示さない、ならびに、6)エフェクター活性に関与するFcドメインを含む。ある特定の実施形態において、MV−L抗体構築物は、標的細胞表面を最大限に装飾し、細胞生存および成長をもたらし得る対抗活性を生じることなく、標的抗原による標的細胞の活性化を遮断する。
【0047】
1つの実施形態において、本発明による一価溶解性抗体構築物は、1)単一特異性二価抗体構築物と比較して、増加したB
maxで標的細胞に結合し、速いオン速度および同等か、または遅いオフ速度を有する、2)非アゴニストである、3)細胞成長を阻害する、4)同族リガンドの標的抗原への結合を遮断する、5)最低限のインターナリゼーションを示す、ならびに、6)Fc受容体およびその補体系と相互作用し、免疫系に会合するFcドメインを含む。
【0048】
ある特定の実施形態において、MV−L抗体構築物は、FcγR受容体および補体タンパク質に結合することができ、高い細胞表面濃度において、抗体依存性細胞傷害を誘発するのにより効果的である。ある特定の実施形態においては、ADCC、ADCP、またはCDC等のFcエフェクター機能を通して標的細胞を死滅させるのに有用なMV−L抗体構築物がある。
【0049】
1つの実施形態において、MV−L抗体構築物は、FSAによって実現される会合に対する立体的な違いの結果として、エフェクター系と優先的に会合することができる。ある特定の実施形態において、MV−Lは、アゴニズムを示さずに標的抗原に結合するリガンドを実質的に遮断するが、FSAと比較して増加したBmaxおよび速いオン速度に加えて同等か、または遅いオフ速度は、FSAよりも未だ優れた効果的な最終効果をもたらすために、リガンドの部分的な遮断、ある程度のアゴニズムおよび細胞成長、ならびにインターナリゼーション克服することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるMV−L抗体構築物は、HER2に結合する。いくつかの実施形態において、抗体構築物は、少なくとも1つのHER2細胞外ドメインに結合する。ある特定の実施形態において、細胞外ドメインは、ECD1、ECD2、ECD3、およびECD4のうちの少なくとも1つである。ある特定の実施形態において、HER2結合MV−Lは、本明細書に提供されるOA5−Fab−Her2(4182)またはOA1−Fab−Her2(1040)である。
【0050】
ある特定の実施形態において、一価溶解性抗体構築物(MV−L)を用いる疾患細胞の増加した装飾は、単一特異性二価抗体構築物(FSA)よりも効果的にADCC、CDC、またはADCPを介して標的細胞の喪失をもたらす。
【0051】
一価インターナライジング(MV−Int)抗体
抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、それぞれがCH3ドメインを含む2つの単量体Fcポリペプチドを含む二量体Fcポリペプチド構築物と、を含む、一価抗体構築物が本明細書に提供され、その一価抗体構築物は、一価インターナライジング(MV−Int)抗体構築物である。ある特定の実施形態において、増加したB
maxおよびインターナリゼーションの度合いは、MV−Intカテゴリー内で一価抗体構築物を分類するための重要な要素である。ある特定の実施形態において、MV−Int抗体構築物は、FSAと比較して増加したB
maxおよび速いオン速度に加えて同等か、または遅いオフ速度で標的細胞と結合する。いくつかの実施形態において、Mv−Intは、標的細胞のより高度な装飾、同族リガンドの標的抗原への結合および効果的なインターナライジングの遮断、ならびに任意の細胞成長の阻害もしくは無誘導のうちの少なくとも1つを引き起こす。いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるMV−L抗体は、HER2に結合する。ある特定の実施形態において、HER2結合MV−Intは、本明細書に提供されるOA5−Fab−Her2(4182)またはOA1−Fab−Her2(1040)である。
【0052】
ある特定の実施形態において、MV−LおよびFSAと比較して高いBmaxおよび高いインターナリゼーションを有し、それによりMV−Intのより高い細胞内濃度をもたらすMV−Int構築物が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるMV−L抗体は、HER2に結合する。いくつかの実施形態において、抗体構築物は、少なくとも1つのHER2細胞外ドメインに結合する。ある特定の実施形態において、細胞外ドメインは、ECD1、ECD2、ECD3、およびECD4のうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、MV−L抗体は、HER2細胞外ドメインの二量体形成を阻害する。いくつかの実施形態において、抗体構築物は、少なくとも1つのHER2細胞外ドメインに結合する。ある特定の実施形態において、細胞外ドメインは、ECD1、ECD2、ECD3、およびECD4のうちの少なくとも1つである。
【0053】
いくつかの実施形態において、MV−Int抗体は、任意に細胞内へのペイロードを用いて本明細書に記載の抗体構築物を往復するためにトロイ(Trojan)として使用することにより、受容体を部分的に活性化することができる。そのようなMV−Int抗体は、抗体薬物複合体(ADC)の調製における使用に適しており、毒性薬物の標的細胞への送達が望まれる治療の適応において使用され得る。この様式において、急性細胞死をもたらすより高い毒性ペイロードの送達は、MV−Int中で与えられる一部のアゴニスト活性を克服することになる。いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるMV−Int抗体は、HER2に結合する。ある特定の実施形態においては、HER2結合一価抗体構築物であり、それはMV−LおよびMV−Intの両方である。事例として、OA1−Fab−Her2(1040)-v1040は、MV−LおよびMV−Intに対する十分な性質を示す。
【0054】
1つの実施形態において、MV−Intにより実現する、FSAと比べてより高度な装飾およびBmaxは、インターナリゼーションのレベルにおける差を代償し得る。
【0055】
1つの実施形態において、Mv−Int抗体構築物は、1)FSAと比較して増加したB
maxおよび速いオン速度に加えて同等か、または遅いオフ速度で標的細胞に結合する(このため、MV−Intを用いた標的細胞のより高度な装飾をもたらす)、2)同族リガンドの標的抗原への結合を遮断する、3)非アゴニストである、4)細胞成長を誘発しない、ならびに、5)単一特異性二価抗体構築物よりも大きい程度で効果的にインターナライズされる。別の実施形態において、一価インターナライズ抗体構築物は、1)FSAと比較して増加したB
maxおよび速いオン速度に加えて遅いオフ速度で標的細胞に結合する(このため、MV−Intを用いた標的細胞のより高度な装飾をもたらす)、2)同族リガンドの標的抗原への結合を遮断する、3)部分的にアゴニストである、4)細胞成長を誘発しない、ならびに、5)単一特異性二価抗体構築物よりも大きい程度で効果的にインターナライズされる。
【0056】
いくつかの実施形態において、免疫TおよびB細胞ならびに疾患細胞および薬物耐性疾患細胞によって増加した一価インターナライズ抗体構築物(MV−Int)の装飾およびインターナリゼーションは、FSAよりも効果的にADCを介して標的細胞の喪失をもたらす。1つの実施形態において、薬物分子と結合している一価インターナライズ抗体構築物(MV−Int)は、薬物不応性および耐性の患者、ならびに第一選択治療に反応しない患者の治療において有用である。いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるMV−Int抗体は、HER2に結合する。ある特定の実施形態においては、HER2結合一価抗体構築物であり、それはMV−LおよびMV−Intの両方である。例えば、OA1−Fab−Her2(1040)。
【0057】
一実施形態において、本明細書に記載の一価溶解性抗体構築物(MV−L)を用いたウイルス等の病原体の増加した装飾は、単一特異性二価抗体構築物(FSA)よりも効果的に病原体の喪失をもたらす。例えばHIV等のウイルスは、防御中和抗体反応が一貫して上昇するウイルスと比べた際の顕著な特徴である低密度のエンベロープスパイクを有することによって、二価抗体および二価結合を逃れるように進化してきた。その結果が、高親和性結合および強力な中和を実現するために抗体により通常用いられるアビディティーの極小化であり、それによりウイルスが抗体を逃れることが可能となる。本明細書に記載の一価抗体構築物は、単一のエピトープに対して結合するため、埋伏していない。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の一価抗体構築物は、単独で、またはすべての別個のウイルスエピトープを覆うように組み合わせて使用され得る。
【0058】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載のMV_L抗体構築物は、直接の標的化および病原体のオプソニン作用を介する抗体媒介クリアランスのために使用され得る。ある特定の実施形態において、MV−LおよびMv−Int抗体は両方とも、病原体に感染した細胞の抗体依存性の欠失に適している。いくつかの実施形態において、MV−LおよびMv−Int抗体構築物は、HIV感染T細胞を高度に装飾し、ADCC、CDC、ADCP、またはADCでの死滅による喪失のためにこれらの細胞を標識付ける。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の一価抗体構築物は、単独で、または他の一価抗体構築物と組み合わせて使用され得る。
【0059】
抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、それぞれがCH3ドメインを含む2つの単量体Fcポリペプチドを含み、1つのその単量体Fcポリペプチドが、抗原結合ポリペプチド構築物からの少なくとも1つのポリペプチドに融合する、二量体Fcポリペプチド構築物と、を含む、単離された一価抗体構築物が本明細書に提供され、その一価抗体構築物は、2つの抗原結合領域を持つ対応するFSA構築物と比較して、その抗原を提示する標的細胞に対する結合密度およびBmaxの増加(最大結合)を示し、その一価抗体構築物は、対応する二価抗体構築物と比較して優れた効果および/または生物活性を示し、ならびにその優れた効果および/または生物活性は結合密度の増加の結果である。
【0060】
本明細書に記載の単離された一価抗体構築物が、ある特定の実施形態において提供され、観測される平衡定数(Kd)を超える濃度で、および抗体の飽和濃度で、単一特異性二価抗体と比べて、結合密度およびBmaxの増加が観測される。いくつかの実施形態において、優れた効果および/または生物活性は、その対応する二価抗体構築物と比較して増加したFcγRまたは補体(C1q)結合ならびにより高いADCC、より高いADCP、およびより高いCDCのうちの少なくとも1つの結果である。具体的な実施形態において、単離された一価抗体構築物は、抗増殖性であり、かつインターナライズされる。ある特定の実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、そのFSAと比較したその結合密度およびBmaxの増加は、標的細胞の抗原の密度に依存しない。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物が提供され、その標的細胞は、癌細胞またはHER2を発現する疾患細胞である。一実施形態において、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物は、アビディティーを示さない。
【0061】
定義
本発明は、特定のプロトコル;本明細書に記載の細胞株、構築物、および試薬に限定されず、それ自体が変化し得ることが理解される。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明の範囲を限定するとは意図されず、それは添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることがまた理解される。
【0062】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明に属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法、装置、および材料が本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法、装置、および材料がここに記載される。
【0063】
例えば、ここで説明された発明に関連して使用され得る刊行物に記載される構築物および手順といった、本明細書で言及されるすべての刊行物および特許は、説明および開示のあらゆる目的において参照することにより本明細書に組み込まれる。本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前のその開示のために単に提供される。本明細書におけるいかなるものも、本発明者らが、先行の発明または任意の他の理由により、そのような開示に先行する権限がないことの承認であるとは解釈されない。
【0064】
「二量体」または「ヘテロ二量体」は、少なくとも第1の単量体ポリペプチドおよび第2の単量体ポリペプチドを含む分子である。ヘテロ二量体の場合、その単量体のうちの1つは、少なくとも1つのアミノ酸残基によって、他方の単量体と異なる。ある特定の実施形態において、二量体の会合は、表面領域の埋没によって行われる。いくつかの実施形態において、単量体ポリペプチドは、所望の二量体形成を支持する、および/または他の所望されない標本の形成を避けることによって二量体形成を行う静電相互作用および/または塩橋相互作用によって、互いに相互作用する。いくつかの実施形態において、単量体ポリペプチドは、所望の二量体形成を支持する、および/または他の会合の形成を避けることによって所望の二量体形成を行う疎水性相互作用によって、互いに相互作用する。ある特定の実施形態において、単量体ポリペプチドは、共有結合形成によって互いに相互作用する。ある特定の実施形態において、共有結合は、天然に存在するか、または導入される、所望の二量体形成を行うシステインの間で形成される。本明細書に記載のある特定の実施形態において、共有結合は、単量体間で形成されない。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、所望の二量体形成を支持する、および/または他の所望されない実施形態の形成を避けることによって二量体形成を行うパッキング/サイズ相補性/ノブ−イントゥー−ホール(knob into hole)/隆起(protruberance)−空洞タイプ相互作用によって互いに相互作用する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、二量体形成を行うカチオン−pi相互作用によって互いに相互作用する。ある特定の実施形態において、個々の単量体ポリペプチドは、溶液中で単離された単量体として存在することはできない。
【0065】
「Fc領域」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、免疫グロブリン重鎖のC末端ポリペプチド配列を含む二量体複合体を指し、C末端ポリペプチド配列は無傷抗体のパパイン消化から入手可能なものである。Fc領域は、ネイティブまたは異型のFc配列を含み得る。免疫グロブリン重鎖のFc配列の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc配列は、およそCys226位におけるアミノ酸残基から、またはおよそPro230位からFc配列のカルボキシル末端まで広がると通常定義される。免疫グロブリンのFc配列は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、および任意にCH4ドメインを含む。本明細書において「Fcポリペプチド」は、ポリペプチドFc領域を作り上げるポリペプチドのうちの1つを意味する。Fcポリペプチドは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgD、またはIgM等の任意の好適な免疫グロブリンから得ることができる。いくつかの実施形態において、Fcポリペプチドは、野生型ヒンジ配列(一般に、そのN末端において)の部分またはすべてを含む。いくつかの実施形態において、Fcポリペプチドは、機能的または野生型ヒンジ配列を含まない。
【0066】
「抗体依存性細胞媒介細胞傷害」および「ADCC」は、Fc受容体(FcR)(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)を発現する非特異的細胞傷害性細胞が、標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介反応を指す。
【0067】
「補体依存性細胞傷害」および「CDC」は、補体の存在下における標的の溶解を指す。補体活性化経路は、補体系(C1q)の第1の成分の同族の抗原と複合化する分子(例えば、抗体)への結合によって開始される。
【0068】
「抗体依存性細胞食作用」および「ADCP」は、単球またはマクロファージ媒介性食作用を介した標的細胞の破壊を指す。
【0069】
「Fc受容体」および「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述するために使用される。例えば、あるFcRは、ネイティブ配列ヒトFcRであり得る。一般に、FcRは、IgG抗体(γ受容体)に結合するものであり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、対立遺伝子の変異体およびあるいはこれらの受容体のスプライス形態も含まれる。FcγRII受容体は、主にそれらの細胞質ドメインにおいて一致しない類似のアミノ酸配列を有する、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)を含む。他のアイソタイプの免疫グロブリンもまた、ある特定のFcRによって結合され得る(例えば、Janeway et al.,Immuno Biology:the immune system in health and disease(Elsevier Science Ltd.,NY)(4th ed.,1999)を参照されたい)。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質のドメイン内に免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質のドメイン内に免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)を含む(Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234(1997)を再考察される)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25−34(1994);およびde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)において再考察される。将来的に同定されるものを含む他のFcRは、本明細書における「FcR」という用語に包含される。本用語はまた、母体IgGの胎児への転移の原因である新生児受容体FcRnを含む(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976);およびKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。
【0070】
「障害」は、本発明の抗体または方法を用いる治療から利益を受けるであろう任意の状態である。これは、哺乳動物を問題となる障害にさせる病理学的状態のものを含む、慢性および急性障害または疾患が挙げられる。本明細書において治療される障害の非限定的な例には、悪性および良性腫瘍;非白血病およびリンパ系悪性腫瘍;神経細胞、膠細胞、星状細胞、視床下部および他の腺性、マクロファージ、上皮性、間質性、ならびに胞胚腔障害;ならびに炎症性、免疫性、および他の血管新生関連障害が挙げられる。
【0071】
「癌」および「癌性」という用語は、典型的に未制御の細胞成長/増殖によって特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を指すか、または記述する。癌の例には、細胞腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。そのような癌のより具体的な例として、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮細胞腫、腹膜の癌、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫/神経膠腫(例えば、未分化星状細胞腫、多形性神経膠芽細胞腫、退形成乏突起神経膠腫、退形成乏突起膠星状細胞腫(anaplastic oligodendroastrocytoma)、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌腫、唾液腺細胞腫、腎癌、肝癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝細胞腫、ならびに種々のタイプの頭頸部癌が挙げられる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「炎症性疾患(複数可)」または「炎症性障害(複数可)」という用語は、結合組織における炎症、またはそれらの組織の変性によって特徴付けられる状態を包含する。ある特定の実施形態において、炎症性疾患または障害は、アルツハイマー、強直性脊椎炎、変形性関節炎、リウマチ様関節炎(RA)、および乾癬性関節炎が挙げられるが、これらに限定されない関節炎、喘息、アテローム性動脈硬化症、クローン病、大腸炎、皮膚炎、憩室炎、線維筋痛症、肝炎、過敏性腸症候群(IBS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、腎炎、パーキンソン病、ならびに潰瘍性大腸炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書で使用される場合、「治療」とは、治療される個体または細胞の自然経過を変化させるための臨床的処置を指し、予防のため、または臨床病理の経過中のいずれかで実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患の任意の直接または間接病理学的結果の減少、転移の防止、疾患進行の速度の減少、疾患状態の回復または緩和、ならびに寛解または改善された予後が挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、疾患または障害の進展を遅らせるために使用される。1つの実施形態において、本発明の抗体および方法は、腫瘍退縮に効果を及ぼす。1つの実施形態において、本発明の抗体および方法は、腫瘍/癌成長の阻害に効果を及ぼす。
【0074】
「実質的に精製された」という用語は、その天然に生じる環境すなわちネイティブ細胞において、あるいはある特定の実施形態において組換え生成されたヘテロ多量体の場合の宿主細胞において見られるような、タンパク質に通常付随するかまたは相互作用する成分を実質的もしくは本質的に含まない本明細書に記載の構築物またはその変異体を指し、実質的に細胞物質を含まず、混在タンパク質が(乾燥重量で)約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満であるタンパク質の調製物を含む。ヘテロ多量体またはその変異体が宿主細胞によって組換え生成される場合、ある特定の実施形態におけるタンパク質は、細胞の乾燥重量の約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%、もしくは約1%以下で存在する。ヘテロ多量体またはその変異体が宿主細胞によって組換え生成される場合、ある特定の実施形態におけるタンパク質は、細胞の乾燥重量の約5g/L、約4g/L、約3g/L、約2g/L、約1g/L、約750mg/L、約500mg/L、約250mg/L、約100mg/L、約50mg/L、約10mg/L、または約1mg/L以下で培養培地に存在する。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の方法によって生成される「実質的に精製された」ヘテロ多量体は、SDS/PAGE分析、RP−HPLC、SEC、およびキャピラリー電気泳動等の適切な方法によって判定されるように、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%の純度水準、特異的に少なくとも約75%、80%、85%の純度水準、より特異的に、少なくとも約90%の純度水準、少なくとも約95%の純度水準、少なくとも約99%以上の純度水準を有する。
【0075】
「組換え宿主細胞」または「宿主細胞」は、挿入に用いられる方法、例えば、直接取込み、形質導入、f交配、または当該技術分野で知られている組換え宿主細胞を作製するための他の方法にかかわらず、外来性ポリヌクレオチドを含む細胞を指す。外来性ポリヌクレオチドは、非統合ベクター、例えばプラスミドとして維持されてもよく、または代替として、宿主ゲノムに統合され得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「培地(medium)」または「培地(media)」という用語は、細菌宿主細胞、酵母宿主細胞、昆虫宿主細胞、植物宿主細胞、真核宿主細胞、哺乳類宿主細胞、CHO細胞、原核宿主細胞、大腸菌もしくはシュードモナス宿主細胞、および細胞含有物を含む任意の宿主細胞を支持し得るか、または含み得る、任意の培養培地、溶液、固体、半固体、または剛性支保を含む。このため、この用語は、そこで宿主細胞が成長した培地、例えば、増殖ステップの前または後のいずれかの培地を含む、その中にタンパク質が分泌された培地を包含し得る。この用語はまた、本明細書に記載のヘテロ多量体が細胞内で生成され、そのヘテロ多量体を放出するように宿主細胞が溶解されるか、または崩壊される場合等に、宿主細胞ライセートを含む緩衝剤または試薬を包含し得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、「リフォールディング」とは、ポリペプチドを含むジスルフィド結合を不適切に折りたたまれた状態、または折りたたまれていない状態から、ネイティブまたはジスルフィド結合に対して適切な折りたたみ高次構造に形質転換する任意のプロセス、反応、または方法を述べる。
【0078】
本明細書で使用される場合、「コフォールディング(cofolding)」とは、具体的に、互いに相互作用し、折りたたまれていないか、または不適切に折りたたまれたポリペプチドの、ネイティブポリペプチドへのまたは適切に折りたたまれたポリペプチドへの形質転換をもたらす、少なくとも2つの単量体ポリペプチドを用いるリフォールディングプロセス、反応、または方法を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「調節された血清半減期」という用語は、その未調節の形態と比べて、本明細書に記載の抗体構築物を含む抗原結合ポリペプチドの循環半減期における正または負の変化を意味する。血清半減期は、構築物の投与後の種々の時点における血液試料を採取して、各試料における分子の濃度を決定することによって測定される。血清中の濃度と時間との相互関係に基づいて血清半減期を計算することができる。血清半減期の増加は、少なくとも約2倍であることが望ましいが、それよりも少ない増加は、例えば、十分な投薬のレジメンを可能にするか、または毒性効果を回避する場合、有用であり得る。いくつかの実施形態において、増加は少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍である。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「調節された治療半減期」は、未調節の形態と比べて、本明細書に記載の一価抗体構築物を含む、治療的有効量の抗原結合ポリペプチドの半減期の正または負の変化を意味する。治療半減期は、投与後の種々の時点におけるその分子の薬物動態学的および/または薬力学的性質を測定することによって測定される。増加した治療半減期は、特定の有利な投薬レジメン、特定の有利な総用量を可能にするか、または望ましくない効果を回避することが望ましい。いくつかの実施形態において、治療半減期の増加は、効力の増加、その標的に対する修飾された分子の結合性の増加もしくは減少、プロテアーゼ等の酵素による分子の破壊の増加もしくは減少、または修飾されていない分子の作用の別のパラメーターもしくは機構の増加または減少、あるいは分子の受容体媒介性排除の増加もしくは減少に起因する。
【0081】
核酸またはタンパク質に対して適用される場合、「単離された」という用語は、核酸もしくはタンパク質が天然の状態において会合する細胞内の成分の少なくともいくつかを含まないか、または核酸もしくはタンパク質がインビボまたはインビトロの生成物の濃度を超えるレベルに濃縮されていることを示す。それは、均一な状態であってもよい。単離された物質は、乾燥または半乾燥状態のいずれかであってもよく、溶液(水溶液が挙げられるが、これらに限定されない)に溶解した状態であってもよい。それは、薬学的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含んでいる医薬組成物の成分であってもよい。純度および均一性は典型的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高性能液体クロマトグラフィー等の分析化学技術を用いて決定される。タンパク質が、調製物中の大部分を占める種である場合、実質的に精製されている。特に、単離された遺伝子は、この遺伝子に隣接し、目的の遺伝子以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離されている。「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が、電気泳動ゲルにおいて実質的に一本のバンドを生じさせることを示す。特に、この用語は、核酸またはタンパク質が少なくとも85%純粋であるか、少なくとも90%純粋であるか、少なくとも95%純粋であるか、少なくとも99%純粋であるか、またはそれ以上純粋であることを意味していてもよい。
【0082】
「核酸」という用語は、デオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、またはリボヌクレオチド、およびそれらの一本鎖または二本鎖の形態のポリマーを指す。具体的に限定されない限り、この用語は、参照の核酸と同様の結合性質を有し、かつ天然に生じるヌクレオチドと同じような方法で代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有している核酸を包含する。別途具体的に限定されない限り、この用語はまた、PNA(ペプチド核酸)を含むオリゴヌクレオチド類似体、アンチセンス技術に使用されるDNAの類似体(ホスホロチオエート、ホスホロアミダート等)も指す。別途指示されない限り、特定の核酸配列はまた、それらの保存的に修飾された変異体(縮重コドンの置換体が挙げられるが、これらに限定されない)、相補的配列、および明確に示された配列も、暗に包含する。具体的には、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が、混合された塩基および/またはデオキシイノシン残基によって置換された配列を作製することによって、縮重コドンの置換体が実現され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。
【0083】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために、本明細書において交換可能に使用される。つまり、ポリペプチドに対する記述は、ペプチドの記載およびタンパク質の記載に等しく適用され、その逆もまた同様である。これらの用語は、天然に生じるアミノ酸ポリマーだけでなく、1個以上のアミノ酸残基が天然にコードされていないアミノ酸であるアミノ酸ポリマーにも適用される。本明細書で使用される場合、これらの用語は、アミノ酸残基がペプチド共有結合によって連結されている、完全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖(全長のタンパク質が挙げられる)を包含する。
【0084】
「アミノ酸」という用語は、天然に生じるアミノ酸、および天然に生じないアミノ酸、ならびに、天然に生じるアミノ酸と同じように機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を指す。天然にコードされたアミノ酸は、20個の一般的なアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン)、ならびにピロリジンおよびセレノシステインである。アミノ酸類似体は、天然に生じるアミノ酸と同じ基本的な化学構造を有する化合物、すなわち、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム等の炭素が水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合している化合物を指す。このような類似体は、修飾されたR基を有しているか(ノルロイシン等)、または修飾されたペプチドの骨格を有しているが、天然に生じるアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持している。アミノ酸についての参照は、例えば、天然に生じるタンパク新生L−アミノ酸;D−アミノ酸、化学的に修飾されたアミノ酸(アミノ酸の変異体および誘導体等);βアラニン、オルニチン等の天然に生じる非タンパク新生アミノ酸;およびアミノ酸の特徴であると当該技術分野において知られている性質を有する化学的に合成された化合物を含む。天然に生じないアミノ酸の例としては、αメチルアミノ酸(例えばαメチルアラニン)、D−アミノ酸、ヒスチジン様アミノ酸(例えば、2−アミノ−ヒスチジン、βヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン)、余分なメチレンを側鎖に有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸)、ならびに側鎖におけるカルボン酸の官能基がスルホン酸基と置換されたアミノ酸(例えばシステイン酸)が挙げられるが、これらに限定されない。合成のネイティブでないアミノ酸、置換されたアミノ酸、または1個以上のD−アミノ酸を含む、非天然アミノ酸を本発明のタンパク質に組み込むことは、多くの異なる方法において有利であり得る。D−アミノ酸を含有するペプチド等は、L−アミノ酸を含有する対応物と比較して、インビトロまたはインビボにおける増加した安定性を示す。このため、D−アミノ酸を組み込むというペプチドの構築等は、細胞内でのより高い安定性が望まれるか、必要とされる場合、特に有用であり得る。より具体的には、このような性質が望ましいときに、D−ペプチド等は、内因性のペプチダーゼおよびプロテアーゼに対して耐性を示し、それにより分子のバイオアベイラビリティを改善し、インビボにおける寿命を延長する。さらに、D−ペプチド等は、Tヘルパー細胞への、主要組織適合遺伝子複合体のクラスII拘束性の提示のために、効率良く処理されることができず、ゆえに、全生物において体液性免疫反応を誘導する可能性が低い。
【0085】
本明細書においてアミノ酸は、IUPAC−IUB生物化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推薦する一般的に知られた3文字表記または1文字表記のどちらかによって示すことがある。同様に、ヌクレオチドは、一般的に受け容れられている1文字コードによって示すことがある。
【0086】
「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的に修飾された変異体」は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸か、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は、本質的に同一の配列を指す。遺伝コードの縮重のため、多くの機能的に同一の核酸が、任意の所与のタンパク質をコードしている。例えば、GCA、GCC、GCG、およびGCUのコドンは、すべてアミノ酸アラニンをコードしている。このため、コドンによってアラニンが特定されるすべての位置では、コードされるポリペプチドを変化させることなく、記載された対応するコドンの何れかへコドンを変化させることができる。このような核酸の変異は「サイレント変異」であり、保存的に修飾された変異の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書のすべての核酸配列はまた、この核酸のすべての可能性のあるサイレント変異を表している。当業者は、機能的に同一の分子が得られるように、核酸における各コドンが修飾され得ることを理解するだろう(メチオニンに対する通常唯一のコドンであるAUG、およびトリプトファンに対する通常唯一のコドンであるTGGは除く)。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列に潜在的に含まれる。
【0087】
アミノ酸配列に関しては、コードされた配列中の単一のアミノ酸または数%のアミノ酸を変更、付加、または欠失する核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の配列に対する個々の置換、欠失、または付加は、そのような変更によってアミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、または化学的に類似のアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす「保存的に修飾された変異体」であることを当業者は理解するだろう。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的な置換表は当業者に既知である。このような保存的に修飾された変異体は、本発明の、多型の変異体、種間のホモログ(interspecies homologs)および対立遺伝子に加えられるものであり、それらを排除するものではない。
【0088】
機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的な置換表は当業者に既知である。以下の8群のそれぞれは、互いに保存的な置換となるアミノ酸を含んでいる:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および[0139]8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W H Freeman&Co.;2nd edition(December 1993)を参照されたい。
【0089】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、「同一の」または「同一性」パーセントという用語は、2つ以上の配列またはサブ配列が同じであることを指す。以下の配列比較アルゴリズム(または当業者に利用可能な他のアルゴリズム)の1つを使用して測定されるか、または手動で整列させて目視によって検査して測定されるように、配列を比較ウィンドウまたは指定された領域にわたって最大限に対応するように対比および整列させる場合に、アミノ酸残基またはヌクレオチドの割合が同じである場合、配列は「実質的に同一」である(すなわち、指定の領域にわたって約60%の同一性、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の同一性)。この定義はまた、試験配列の相補性にも言及する。同一性は、少なくとも約50アミノ酸またはヌクレオチド長の領域にわたって、あるいは75〜100アミノ酸またはヌクレオチド長の領域にわたって、あるいは、指定されない場合は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列全体にわたって存在し得る。本発明のポリヌクレオチド配列またはそのフラグメントを有する標識されたプローブを用いて、ストリンジェントなハイブリッド形成条件下でライブラリーをスクリーニングするステップと、このポリヌクレオチド配列を含有する全長のcDNAおよびゲノムクローンを単離するステップと、を含むプロセスによって、ヒト以外の種からのホモログを含む、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを得ることができる。このようなハイブリッド形成技術は、当業者によく知られている。
【0090】
配列比較に関しては、典型的に一方の配列を参照配列として、これを試験配列と比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列と参照配列とをコンピューターに入力し、サブ配列の座標を指定し、必要に応じて配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。プログラムのデフォルトのパラメーターを使用してもよく、代わりのパラメーターを指定してもよい。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいて参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0091】
本明細書で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、2つの配列を最適に整列させた後に、配列が隣接する位置の同数の参照配列と比較され得る20〜600、一般的に約50〜約200、より一般的に約100〜約150から成る群より選択される、いくつかの隣接する位置のいずれか1つの区分への参照を含む。比較のために配列を整列させる方法は、当業者に既知である。限定されないが、Smith and Waterman(1970)Adv.Appl.Math.2:482cのローカルホモロジーアルゴリズムによって、Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443のホモロジーアラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman(1988)Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 85:2444の類似探索手法によって、これらのアルゴリズムのコンピューター実装(computerized implementation)(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または手動による整列、目視の検査(例えばAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(1995 supplement)を参照のこと)によって、比較のための最適な整列が行われ得る。
【0092】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために適切であるアルゴリズムの1例は、それぞれ、Altschul et al.(1997)Nuc.Acids Res.25:3389−3402およびAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−410に記載されているBLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information(ワールドワイドウェブのncbi.nlm.nih.govにて利用可能である))から公的に利用可能である。BLASTアルゴリズムのパラメーターであるW、T、およびXは、整列の感度および速度を決定する。(ヌクレオチド配列用の)BLASTNプログラムは、11の語長(W)、期待値(E)が10、M=5、N=−4、および両鎖の比較をデフォルトとして使用する。アミノ酸配列用のBLASTPプログラムは、3の語長、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff and Henikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915を参照されたい)の50のアライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、ならびに両鎖の比較をデフォルトとして使用する。BLASTアルゴリズムは、典型的に「低複雑性」フィルタを使用することなく実施される。
【0093】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析も実施する(例えば、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:5873−5787を参照されたい)。BLASTアルゴリズムから得られる類似性の尺度の1つは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間に偶然に一致が生じる確率の目安を提供する、最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸を参照核酸と比較した場合の最小合計確率が約0.2未満、または約0.01未満、または約0.001未満であるとき、核酸は参照配列と類似しているとみなされる。
【0094】
「〜と選択的に(または特異的に)ハイブリッド形成する」という語句は、特定のヌクレオチド配列が複合混合物(全細胞、ライブラリーDNA、またはRNAが挙げられるが、これらに限定されない)に存在するときに、ストリンジェントなハイブリッド形成条件下で、その配列に対してのみ分子が結合すること、二重鎖を形成すること、またはハイブリッド形成することを指す。
【0095】
「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」という語句は、当該技術分野において知られているような低イオン強度および高温の条件下における、DNA、RNA、または他の核酸、あるいはそれらの組合せの配列のハイブリッド形成を指す。典型的に、ストリンジェントな条件下において、プローブは、核酸の複合混合物(全細胞、ライブラリーDNA、またはRNAが挙げられるが、これらに限定されない)中のその標的サブ配列とハイブリッド形成するが、この複合混合物中の他の配列とはハイブリッド形成しない。ストリンジェントな条件は配列に依存し、また、異なる環境においては異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリッド形成する。核酸のハイブリッド形成の広範な指針は、Tijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Probes,"Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays"(1993) に見られる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「真核生物」という用語は、動物(哺乳動物、昆虫、爬虫類、鳥類等が挙げられるが、これらに限定されない)、繊毛虫類、植物(限定されないが、単子葉植物、双子葉植物、藻類等が挙げられるが、これらに限定されない)、菌類、酵母、鞭毛虫、微胞子虫、原生生物等の系統学的なドメイン(phylogenetic domain)の真核生物(Eucarya)に属する生物を指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、「原核生物」という用語は、原核の生物を指す。例えば、非真核の生物は、系統学的なドメインの真正細菌(大腸菌(Escherichia coli)、サーマス サーモフィラス(Thermus thermophilus)、バチルス ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、シュードモナス フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)等が挙げられるがこれらに限定されない)、または系統学的なドメインの古細菌(メタノコッカス ジャナスキー(Methanococcus jannaschii)、メタノバクテリウム サーモアウトトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)、ハロフェラックス ボルカニ(Haloferax volcanii)およびハロバクテリウム種(Halobacterium) NRC−1等のハロバクテリウム属、アーケオグロブス フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)、パイロコッカス フリオサス(Pyrococcus furiosus)、パイロコッカス ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、アエロピラムペルニクス(Aeuropyrum pernix)等が挙げられるが、これらに限定されない)に属し得る。
【0098】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、治療、観察、または実験の対象である動物を指し、いくつかの実施形態において哺乳動物であり、他の実施形態においてはヒトである。動物は、ペット(例えば、イヌ、ネコ等)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)、または実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット等)であり得る。
【0099】
本明細書において使用される場合、「有効量」という用語は、投与される一価抗体構築物の量であって、治療される疾患、状態、または障害の症状のうちの1つ以上をある程度軽減する量を指す。本明細書に記載の構築物を含有する組成物は、予防的、増強的、および/または治療的な治療のために投与され得る。
【0100】
「増強する」または「増強すること」という用語は、所望の効果を、効力または持続時間のいずれかに関して、増加または延長することを意味する。このため、薬物分子または治療薬の効果の増強に関して、「増強する」という用語は、系における治療薬の効果を、効力または持続時間のいずれかに関して増加または延長する能力を指す。本明細書で使用される場合、「増強に有効な量」は、所望の系における別の治療薬の効果を増強するのに十分な量を指す。患者に使用される場合に、この使用のための有効量は、疾患、障害、または状態の重症度および過程(course)、薬歴、患者の健康状態および薬物に対する反応性、ならびに治療を担当する医師の判断に左右される。
【0101】
本明細書で使用される場合、「修飾」という用語は、ポリペプチドの長さに対する変更、アミノ酸配列の長さに対する変更、ポリペプチドの化学構造に対する変更、ポリペプチドの翻訳同時修飾、またはポリペプチドの翻訳後修飾等の所与のポリペプチドに対してなされる任意の改変を指す。ポリペプチドについて議論されている「(修飾)」形態という用語は、任意に修飾されており、つまり、議論されているポリペプチドは修飾されていてもよく、または修飾されなくてもよい。
【0102】
「翻訳後修飾」という用語は、ポリペプチド鎖に組み込まれた後にそのアミノ酸に生じる、天然または非天然のアミノ酸の任意の修飾を指す。この用語は、ほんの一例として、インビボにおける翻訳同時修飾、インビトロにおける翻訳同時修飾(細胞外の翻訳系におけるもの等)、インビボにおける翻訳後修飾、およびインビトロにおける翻訳後修飾を包含する。
【0103】
本明細書で使用される場合、「単一特異性二価抗体構築物」という用語は、その両方が同じエピトープ/抗原に結合する(単一特異性である)2つの抗原結合ドメイン(二価)を有する抗体構築物を指す。抗原結合ドメインは、Fab(フラグメント抗原結合)、scFv(単鎖Fv)、およびsdab(単一ドメイン抗体)等のタンパク質構築物であり得るが、これらに限定されない。単一特異性二価抗体構築物はまた、本明細書において、「フルサイズ抗体」または「FSA」とも称される。単一特異性二価抗体構築物は、測定される一価抗体構築物の性質と比較する基準である。
【0104】
「アビディティー」という用語は、本明細書において、結合親和性と、治療用単一特異性二価抗体の主要構造および生物学的特質とを組み合わせた相乗強度を指すために使用される。アビディティーの欠如および結合の相乗強度の損失は、見かけの標的となる結合親和性の減少をもたらし得る。一方で、固定数の抗原を有する標的細胞上において、多価の(または二価の)結合からもたらされるアビディティーは、一価の結合を示す抗体と比べて小さい数の抗体分子で標的抗原の上昇した占有率を生じる。二価溶解性抗体の利用において、標的細胞に結合する少ない数の抗体分子を用いることで、抗体依存性の細胞傷害性死滅機序が効率的に生じず、減少した効果がもたらされることがある。ADCC、CDC、ADCPが一般に、Fc濃度閾値依存性と見なされるように、ADCCを媒介するのに不十分な抗体が結合される。アゴニスト抗体の場合、アビディティーが減少すると、二量体化する抗原を架橋し、二量体化し、ならびにその経路を活性化するその効率が減少する。
【0105】
ラクダ科のVhHドメイン等の「単一ドメイン抗体」または「Sdab」は、個々の免疫グロブリンドメインである。Sdabsは、かなり安定しており、抗体のFc鎖との融合パートナーとして容易に発現する(Harmsen MM,De Haard HJ(2007)."Properties, production,and applications of camelid single−domain antibody fragments".Appl.Microbiol Biotechnol.77(1):13−22)。
【0106】
「HER受容体」は、ヒト上皮成長因子受容体(HER)ファミリーに属する受容体タンパク質チロシンキナーゼであり、EGFR、HER2、HER3、およびHER4受容体を含む。HER受容体は、一般に、HERリガンドに結合し得る細胞外ドメイン;親油性膜貫通ドメイン;保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン;およびリン酸化され得るいくつかのチロシン残基を有するカルボキシル末端シグナル伝達ドメインを含む。
【0107】
HER2の細胞外(ecto)ドメインは、ドメインI(ECD1、約1〜195のアミノ酸残基)、ドメインII(ECD2、約196〜319のアミノ酸残基)、ドメインIII(ECD3、約320〜488のアミノ酸残基)、およびドメインIV(ECD4、約489〜630のアミノ酸残基)の4つのドメインを含む(シグナルペプチドを伴わない残基番号)。Garrett et al.Mol.Cell.11:495−505(2003)、Cho et al.Nature421:756−760(2003)、Franklin et al.Cancer Cell 5:317−328(2004)、Tse et al.Cancer Treat Rev.2012 Apr;38(2):133−42(2012)、またはPlowman et al.Proc.Natl.Acad.Sci.90:1746−1750(1993)を参照されたい。
【0108】
発現「ErbB2」および「HER2」は、本明細書において交換可能に使用され、例えば、Semba et al.,PNAS(USA)82:6497−6501(1985)およびYamamoto et al.Nature 319:230−234(1986)に記載されるヒトHER2タンパク質を指す(遺伝子バンク受入番号X03363)。「erbB2」および「neu」という用語は、ヒトErbB2タンパク質をコードする遺伝子を指す。p185またはp185neuは、neu遺伝子のタンパク質生成物を指す。好ましいHER2は、ネイティブ配列ヒトHER2である。
【0109】
「HERリガンド」とは、HER受容体に結合するか、および/またはそれを活性化するポリペプチドを意味する。本明細書において特に対象となるHERリガンドは、上皮成長因子(EGF)(Savage et al.,J.Biol.Chem.247:7612−7621(1972));トランスフォーミング成長因子α(TGF−α)(Marquardt et al.,Science 223:1079−1082(1984));schwanomaまたはケラチノサイト自己分泌型成長因子としても知られるアンフィレギュリン(Shoyab et al.Science 243:1074−1076(1989);Kimura et al.Nature 348:257−260(1990);およびCook et al.Mol.Cell.Biol.11:2547−2557(1991));ベータセルリン(Shing et al.,Science 259:1604−1607(1993);およびSasada et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.190:1173(1993));ヘパリン結合上皮成長因子(HB−EGF)(Higashiyama et al.,Science 251:936−939(1991));エピレギュリン(Toyoda et al.,J.Biol.Chem.270:7495−7500(1995);およびKomurasaki et al.Oncogene 15:2841−2848(1997));ヘレグリン(以下を参照されたい);ニューレグリン2(NRG−2)(Carraway et al.,Nature 387:512−516(1997));ニューレグリン3(NRG−3)(Zhang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.94:9562−9567(1997));ニューレグリン4(NRG−4)(Harari et al.Oncogene 18:2681−89(1999))、またはcripto(CR−1)(Kannan et al.J.Biol.Chem.272(6):3330−3335(1997))等のネイティブ配列ヒトHERリガンドである。EGFRに結合するHERリガンドには、EGF、TGF−α、アンフィレギュリン、ベータセルリン、HB−EGF、およびエピレギュリンが挙げられる。HER3に結合するHERリガンドには、ヘレグリンが挙げられる。HER4に結合することができるHERリガンドには、ベータセルリン、エピレギュリン、HB−EGF、NRG−2、NRG−3、NRG−4、およびヘレグリンが挙げられる。
【0110】
本明細書で使用される場合、「ヘレグリン」(HRG)は、米国特許第5,641,869号またはMarchionni et al.,Nature,362:312−318(1993)に開示されるヘレグリン遺伝子生成物によってコードされるポリペプチドを指す。ヘレグリンの例には、ヘレグリン−α、ヘレグリン−β1、ヘレグリン−β2、およびヘレグリン−β3(Holmes et al.,Science,256:1205−1210(1992);および米国特許第5,641,869号);neu分化因子(NDF)(Peles et al.Cell 69:205−216(1992));アセチルコリン受容体誘導活性(ARIA)(Falls et al.Cell 72:801−815(1993));グリア成長因子(GGF)(Marchionni et al.,Nature, 362:312−318(1993));感覚および運動神経由来因子(SMDF)(Ho et al.J.Biol.Chem.270:14523−14532(1995));γ−へレグリン(Schaefer et al.Oncogene 15:1385−1394(1997))が挙げられる。この用語は、そのEGF様ドメインフラグメント等のネイティブ配列HRGポリペプチドの生物活性フラグメントおよび/またはアミノ酸配列変異体を含む(例えば、HRGβ1177−244)。
【0111】
「HER活性化」または「HER2活性化」は、HER受容体またはHER2受容体のいずれか1つ以上の活性化またはリン酸化を指す。一般に、HER活性化は、シグナル伝達をもたらす(例えば、HER受容体または基質ポリペプチド内のチロシン残基をリン酸化するHER受容体の細胞内キナーゼドメインによって引き起こされるもの)。HER活性化は、対象とするHER受容体を含むHER二量体に結合するHERリガンドによって媒介され得る。HER二量体に結合するHERリガンドは、二量体内のHER受容体のうちの1つ以上のキナーゼドメインを活性化し、それによりHER受容体のうちの1つ以上の中でチロシン残基のリン酸化を、および/またはAktまたはMAPK細胞内キナーゼ等のさらなる基質ポリペプチド(複数可)内でチロシン残基のリン酸化をもたらし得る。
【0112】
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(ネイティブ配列Fc領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合;補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方調節等が挙げられる。
【0113】
抗体の「Fabフラグメント」(フラグメント抗原結合とも称される)は、それぞれ軽鎖および重鎖上の可変ドメインVLおよびVHとともに、軽鎖の定常ドメイン(CL)および重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。可変ドメインは、抗原結合に関与する相補性決定ループ(CDR、高頻度可変領域とも称される)を含む。Fab'フラグメントは、抗体ヒンジ領域から1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における少数の残基の追加によって、Fabフラグメントとは異なる。
【0114】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。1つの実施形態において、Fvポリペプチドは、scFvの抗原結合にとって所望の構造を形成できる、VHとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。HER2抗体scFvフラグメントは、国際公開第93/16185号、米国特許第5,571,894号、および米国特許第5,587,458号に記載される。
【0115】
非ヒト(例えば、齧歯動物)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンから得られる最小限の配列を含むキメラ抗体である。多くの部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種の高頻度可変領域由来の残基(ドナー抗体)によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの事例において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体中に見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに洗練させるために行なうことができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的に2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、このドメイン内では、高頻度可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応しており、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。
【0116】
ヒト化HER2抗体には、参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第5,821,337号の表3に記載のhuMAb4D5−1、huMAb4D5−2、huMAb4D5−3、huMAb4D5−4、huMAb4D5−5、huMAb4D5−6、huMAb4D5−7、およびhuMAb4D5−8、またはトラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標);ヒト化520C9(国際公開第93/21319号)および米国特許公開第2006/0018899号に記載の20'ヒト化2C4抗体が挙げられる。
【0117】
「エピトープ2C4」は、抗体2C4が結合するHER2の細胞外ドメイン中の領域である。2C4エピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載のもの等の通常の交差ブロッキングアッセイを行うことができる。代替として、抗体がHER2の2C4エピトープに結合するかどうかを評価するために、当該技術分野で知られている方法を使用してエピトープマッピングを行うことができ、および/またはHER2のどのドメイン(複数可)が抗体によって結合されるかを理解するために、抗体HER2構造を研究(Franklin et al.Cancer Cell 5:317−328(2004))することができる。エピトープ2C4は、HER2の細胞外ドメインのドメインII由来の残基を含む。2C4およびペルツズマブはドメインI、II、およびIIIの結合部のHER2の細胞外ドメインに結合する。Franklin et al.Cancer Cell 5:317−328(2004)。
【0118】
「エピトープ4D5」は、抗体4D5(ATCC CRL 10463)およびトラスツズマブが結合するHER2の細胞外ドメイン中の領域である。このエピトープは、HER2の膜貫通ドメインに近接しており、およびHER2のドメインIV内にある。4D5エピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載のもの等の通常の交差ブロッキングアッセイを行うことができる。代替として、抗体がHER2の4D5エピトープに結合するかどうかを評価するために、エピトープマッピングを行うことができる(例えば、米国特許公開第2006/0018899号の
図1を含む、約残基529から約残基625までを含む領域における任意の1つ以上の残基)。
【0119】
「エピトープ7C2/F3」は、7C2および/または7F3抗体(各々ATCCで沈着、以下を参照)が結合するHER2の細胞外ドメインのドメインI内のN末端における領域である。7C2/7F3エピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載のもの等の通常の交差ブロッキングアッセイを行うことができる。代替として、抗体がHER2上の7C2/7F3エピトープに結合するかどうかを証明するために、エピトープマッピングを行うことができる(例えば、HER2の約残基22から約残基53までの領域における残基のうちのいずれか1つ以上、米国特許公開第2006/0018899号の
図1を参照されたい)。
【0120】
本明細書で使用される場合、「抗原調節」という用語は、ADCにおけるもの等のインターナリゼーションまたは下方制御)を介する表面受容体密度の改変または損失を指す。
【0121】
抗原結合ポリペプチド構築物
抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物は、既知の抗体もしくは抗原結合ドメインから生じ得るか、または新規の抗体もしくは抗原結合ドメインから生じ得る。一価抗体構築物のための抗原結合ポリペプチド構築物の同定は、標的細胞の選択および標的細胞の表面上に発現する抗原の選択に基づく。例えば、一旦標的細胞が選択されると、次いで抗原は、a)標的細胞の細胞表面上で発現されるが、他の細胞の表面上では発現されない、またはb)標的細胞の細胞表面上でより高いレベルで発現されるが、他の細胞の表面上ではより低いレベルで発現されるように選択される。これは、標的細胞の選択的標的化を可能にする。
【0122】
標的細胞の選択
標的細胞は、一価抗体構築物の使用用途に基づいて選択される。1つの実施形態において、標的細胞は、癌、感染性疾患、自己免疫性疾患において、または炎症性疾患において活性化されるか、または増幅される細胞である。
【0123】
1つの実施形態において、一価抗体構築物が癌の治療において使用されることが意図される場合、標的細胞は、HER2 3+過剰発現を示す腫瘍に由来する。1つの実施形態において、標的細胞は、HER2低発現を示す腫瘍に由来する。1つの実施形態において、標的細胞は、HER2耐性を示す腫瘍に由来する。1つの実施形態において、標的細胞は、トリプルネガティブ(ER/PR/HER2)腫瘍である腫瘍に由来する。
【0124】
一価抗体構築物が癌の治療において使用されることが意図される実施形態において、標的細胞は、HER2 3+過剰発現を代表する癌細胞株、例えば、SKBR3、BT474である。1つの実施形態において、標的細胞は、HER2低発現を代表する癌細胞株、例えば、MCF7である。1つの実施形態において、標的細胞は、HER2耐性を代表する癌細胞株、例えば、JIMT1である。1つの実施形態において、標的細胞は、乳癌トリプルネガティブを代表する癌細胞株、例えば、MDA−MD−231細胞である。
【0125】
1つの実施形態において、本発明による一価抗体構築物は、乳癌細胞を標的化するように設計される。乳癌細胞の例示的なクラスには、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:プロゲステロン受容体(PR)陰性およびエストロゲン受容体(ER)陰性細胞、低HER2発現細胞、培地HER2発現細胞、高HER2発現細胞、または抗HER2抗体耐性細胞。
【0126】
1つの実施形態において、本明細書に記載の一価抗体構築物は、胃および食道腺癌を標的化するように設計される。例示的な組織学的タイプには、腸管表現型を有するHER2陽性近位胃癌腫ならびにHER2陽性遠位瀰漫性胃癌腫が挙げられる。胃癌細胞の例示的なクラスには、(N−87、OE−19、SNU−216、およびMKN−7)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
別の実施形態において、本明細書に記載の一価抗体構築物は、脳内の転移性HER2+乳癌腫瘍を標的化するように設計される。胃癌細胞の例示的なクラスには、BT474(上記の乳癌に対して)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
抗原の選択
上で示されるように、抗原結合ポリペプチド構築物が結合する抗原は、一価抗体構築物が結合することが意図される標的細胞に応じて選択される。1つの実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物が結合する抗原は、1)標的細胞の表面上で増加する発現、またはb)他の細胞の表面に比べて標的細胞の表面上での選択的発現、に基づいて選択される。したがって、1つの実施形態において、一価抗体構築物は、表A1に示される標的細胞型のうちの1つを標的化するように設計される。
【0129】
(表A1)抗体および代表的な標的細胞の一覧
【0130】
表A1は、示された細胞型の標的化に使用され得る既知の抗体をさらに同定し、ひいては、所望の標的細胞上で発現される抗原も同定する。例えば、表A1の「αCD16a」は、CD16aに対する抗体を使用して、NK細胞およびマクロファージを標的化できることを示す。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の一価抗体構築物は、表A1に示される抗体のうちの1つの抗原結合ドメインから得られる抗原結合ポリペプチド構築物を含む。
【0131】
本発明による一価抗体構築物が乳癌細胞を標的化するように設計される実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物は、乳癌細胞の表面上で発現される抗原に一価的に結合する。好適な抗原には、HER2が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態においては、抗原結合ポリペプチド構築物が標的細胞上の標的抗原の細胞外ドメインに結合するエピトープ。
【0132】
一価抗体構築物がHER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物は、HER2に、またはHER2の特定のドメインもしくはエピトープに結合する。1つの実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物は、HER2の細胞外ドメインに結合する。当該技術分野で知られているように、HER2抗原は、複数の細胞外ドメイン(ECD)を含む。
【0133】
1つの実施形態においては、ECD1、ECD2、ECD3、およびECD4から選択されるHER2のECDに結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む、本明細書に記載の一価抗体構築物である。別の実施形態において、一価抗体構築物は、ECD1、ECD2、およびECD4から選択されるHER2のECDに結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む。1つの実施形態において、一価抗体構築物は、ECD1に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む。1つの実施形態において、一価抗体構築物は、ECD2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む。1つの実施形態において、一価抗体構築物は、ECD4に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む。別の実施形態において、一価抗体構築物は、2C4(例えば、OA1−Fab−Her2)、4D5(OA3−scFv−Her2)、およびC6.5(OA4−scFv−BID2)から選択されるHER2のエピトープに結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む。
【0134】
抗体の選択
一価抗体構築物がHER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物は、Fabフラグメント、scFvs、およびsdabを含む種々の形式で、既知の抗HER2抗体または抗HER2結合ドメインから得ることができる。ある特定の実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物は、それらの抗体のヒト化またはキメラ型から得ることができる。1つの実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、またはそれらのヒト化型のFabフラグメントから得られる。1つの実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物は、scFvから得られる。そのような抗原結合ポリペプチド構築物の非限定的な例としては、一価抗体構築物OA3−scFv−Her2およびOA4−scFv−BID2中で見られるものが挙げられる。1つの実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物は、sdabから得られる。
【0135】
二量体/ヘテロ二量体Fc構築物
本発明による一価抗体構築物は、それぞれがCH3ドメインを含む2つの単量体Fcポリペプチドを含む二量体Fcポリペプチド構築物を含む。本発明の1つの実施形態において、二量体Fcポリペプチド構築物はヘテロ二量体であり、ヘテロ二量体Fcの形成を促進する修飾された単量体Fcポリペプチドを含む。1つの実施形態において、単量体Fcポリペプチドは、ヘテロ二量体Fcドメインの形成を促進するアミノ酸修飾を有する変異型CH3ドメインを含む。好適な変異型CH3ドメインは、当該技術分野で既知であり、例えば、国際特許公開第WO2012/058768号、米国特許第5,821,333号、同第7,695,936号[KiH]に記載されるものが挙げられる。1つの実施形態において、本発明によるヘテロ多量体は、その第1および第2のFcポリペプチドのうちの一方が、CH3アミノ酸修飾T366L/N390R/K392R/T394Wを含み、他方のFcポリペプチドが、CH3アミノ酸修飾L351Y/S400E/F405A/Y407Vを含む、IgG FcD構築物を含む。
【0136】
scFv、Fab、ドメイン抗体等の一価構築物は当該技術分野で既知であるが、これらの一価構築物は、エフェクター活性に有効なFcドメインを欠いている。二量体化しない(ホモ二量体化もヘテロ二量体化もしない)Fcの単鎖から成る一価抗原結合構築物もまた、文献[Engineering a Monomeric Fc Modality by N−Glycosylation for the Half−Life Extension of Biotherapeutics.Ishino T,Wang M,Mosyak L,Tam A,Duan W,Svenson K,Joyce A,O'Hara DM,Lin L,Somers WS,Kriz R.J Biol Chem.2013Apr 24.PMID:23615911]において既知であるが、本発明による構築物と異なり、これらの構築物もまた二量体Fcドメインに依存する免疫エフェクター機能性を欠いている。
【0137】
ヘテロ二量体Fc形成を促進するために単量体Fcポリペプチドを修飾するさらなる方法が、国際特許公開第WO96/027011号(knobs into holes)において、Gunasekaran et al.(Gunasekaran K.et al.(2010)J Biol Chem.285,19637−46,electrostatic design to achieve selective heterodimerization)において、Davis et al.(Davis,JH.et al.(2010)Prot Eng Des Sel;23(4):195−202,strand exchange engineered domain(SEED)technology)において、ならびにLabrijn et al[Efficient generation of stable bispecific IgG1 by controlled Fab−arm exchange.Labrijn AF,Meesters JI,de Goeij BE,van den Bremer ET,Neijssen J,van Kampen MD,Strumane K,Verploegen S,Kundu A,Gramer MJ,van Berkel PH,van de Winkel JG,Schuurman J,Parren PW.Proc Natl Acad Sci U S A.2013 Mar 26;110(13):5145−50において、記載されている。
【0138】
いくつかの実施形態において、修飾単量体Fcポリペプチドは、その融解温度によって決定されるヘテロ二量体Fcポリペプチド構築物の安定性を増加させるアミノ酸修飾をさらに含む。好適なアミノ酸修飾が当該技術分野で既知であり、例えば、国際特許出願第PCT/CA2012/050780号に記載されるものが挙げられる。特に、1つの実施形態において、ヘテロ二量体Fcポリペプチド構築物は、両方のペプチド内にアミノ酸修飾T350Vを有する修飾単量体Fcポリペプチドを含む。
【0139】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、本一価抗体構築物は、抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、変異型CH3ドメインを含む二量体Fcポリペプチド構築物と、を含む。いくつかの実施形態において、変異型CH3ドメインは、ネイティブのホモ二量体Fc領域に相当する安定性を有するそのヘテロ二量体の形成を促進するアミノ酸
変異を含む。いくつかの実施形態において、変異型CH3ドメインは、約70℃以上の融解温度(T
m)を有する。いくつかの実施形態において、変異型CH3ドメインは、約75℃以上の融解温度(T
m)を有する。選択された実施形態において、変異型CH3ドメインは、約80℃以上の融解温度(T
m)を有する。
【0140】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、本一価抗体構築物は、抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、CH3ドメインを含みFc構築物がそのCH3ドメイン内に野生型Fc領域と比べて追加のジスルフィド結合を含まない、二量体Fcポリペプチド構築物と、を含む。ある特定の実施形態において、Fc構築物は、変異型CH3ドメイン内に野生型Fc領域と比べて追加のジスルフィド結合を含み、その変異型CH3ドメインは少なくとも約77.5℃の融解温度(T
m)を有する。具体的な実施形態において、二量体Fc構築物は、約75%を超える純度で形成されたヘテロ二量体Fc構築物である。いくつかの実施形態において、二量体Fc構築物は、約80%を超える純度で形成されたヘテロ二量体Fc構築物である。ある特定の実施形態において、二量体Fc構築物は、約90%を超える純度で形成されたヘテロ二量体Fc構築物である。いくつかの他の実施形態において、二量体Fc構築物は、約95%を超える純度で形成されたヘテロ二量体Fc構築物である。
【0141】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、本一価抗体構築物は、抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、優れた生物物理学的性質と同様の安定性を有し、Fcポリペプチドに融合しない一価抗原結合ポリペプチドと比べて製造が容易である、二量体Fcポリペプチド構築物と、を含む。
【0142】
FcRn結合およびPKパラメーター
当該技術分野で知られているように、FcRnへの結合は、エンドサイトーシスされた抗体をエンドソームから血流へ再利用する(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181−220;Ghetie et al.,2000,Annu Rev Immunol 18:739−766)。このプロセス、完全長分子のサイズが大きいことによる腎臓濾過の除外と対になって、1〜3週間の範囲の好都合な抗体血清半減期をもたらす。FcのFcRnへの結合はまた、抗体輸送において重要な役割を果たす。このように、1つの実施形態において、本発明の一価抗体構築物は、FcRnに結合することができる。
【0143】
エフェクター機能を改善するためのさらなる修飾
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、本一価抗体構築物は、抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、CH3ドメインを含み変異型CH2ドメインをさらに含む、二量体Fcポリペプチド構築物と、を含む。いくつかの実施形態において、変異型CH2ドメインは、FcγRの選択的結合を促進する非対称なアミノ酸修飾を含んでいる。いくつかの実施形態において、変異型CH2ドメインは、本明細書に記載の単離された一価抗体の分離および精製を可能にする。
【0144】
いくつかの実施形態においては、抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチドを含む、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その抗原結合ポリペプチドは、ポリペプチドを介してCH2およびCH3ドメインを含む単量体Fcポリペプチドに融合する。
【0145】
いくつかの実施形態においては、抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチドを含む、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その抗原結合ポリペプチドはFabであり、Fabの重鎖はポリペプチドを介してCH2およびCH3ドメインを含む単量体Fcポリペプチドに融合し、Fabの軽鎖はポリペプチドを介してCH2およびCH3ドメインを含む第2の単量体Fcポリペプチドに融合する。
【0146】
いくつかの実施形態においては、抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチドを含む、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その抗原結合ポリペプチドは、CH2およびCH3ドメインを含む単量体Fcポリペプチド、ならびにいずれの抗原にも結合することができない第2のポリペプチドに融合し、その第2のポリペプチドはCH2およびCH3ドメインを含む第2の単量体Fcポリペプチドに融合し、2つの単量体Fcポリペプチドは二量体を形成するように対になる。
【0147】
いくつかの実施形態において、本発明による一価抗体構築物は、そのエフェクター機能を改善するように修飾され得る。そのような修飾は当該技術分野で既知であり、アフコシル化、または活性化受容体、主にADCCのFCGR3aに対する、およびCDCのC1qに対する抗体のFc部分の親和性の操作を含む。以下の表は、エフェクター機能操作に関する文献において報告される異なる設計を要約する。
【0148】
このようにして、1つの実施形態において、本一価抗体構築物は、改善されたエフェクター機能を与える、上記表に示される1つ以上のアミノ酸修飾を含む二量体Fcポリペプチド構築物を含むことができる。別の実施形態において、本一価抗体構築物は、エフェクター機能を改善するためにアフコシル化される。
【0149】
その同族の抗原に対する抗原結合ポリペプチド構築物の親和性を増加させることが望ましい事例において、当該技術分野で知られている方法を使用して、その抗原に対する抗原結合ポリペプチド構築物の親和性を増加させることができる。そのような方法の例は、以下の参照文献内に記載されている、Birtalan et al.(2008)JMB 377,1518−1528;Gerstner et al(2002)JMB 321,851−862;Kelley et al.(1993)Biochem 32(27),6828−6835;Li et al.(2010)JBC 285(6),3865−3871、およびVajdos et al.(2002)JMB 320,415−428。
【0150】
そのような方法の1つの例は、親和性成熟(affinity maturation)である。HER2抗原結合ドメインの親和性成熟のための1つの例示的な方法は、以下に記載されている。トラスツズマブ/HER2(PDBコード1N8Z)複合体およびペルツズマブ/HER2複合体(PDBコード1S78)の構造をモデル化に使用する。分子動力学(MD)を用いて、水性環境におけるWT複合体の内在性の動的性質を評価することができる。柔軟な骨格を用いて平均場およびデッドエンド排除(dead−end elimination)法を使用して、スクリーニングされる変異体のモデル構造を最適化および調製することができる。パッキングに続いて、接触密度、クラッシュスコア(clash score)、疎水性、および静電気を含む、いくつかの特徴が点数化される。一般化ボルン法によって、溶媒環境の効果の正確なモデル化が可能となり、残基型を交代させるタンパク質の特定の位置の変異に従って、その自由エネルギー差を算出する。接触密度およびクラッシュスコアは、有効なタンパク質パッキングの重要な側面である相補性の尺度を提供する。スクリーニング手順は、知識ベースのポテンシャル、ならびに対残基相互作用エネルギーおよびエントロピー計算に依存する結合分析スキームを用いる。HER2結合を強化することが知られている文献の
変異およびそれらの組み合わせを以下の表に要約する。
【0151】
(表1B)トラスツズマブ−HER2系に対するHER2への結合を増加することが知られているトラスツズマブ
変異
【0152】
(表1C)ペルツズマブ−HER2系に対するHER2への結合を増加することが知られているペルツズマブ
変異
【0153】
本明細書に記載の一価抗体構築物は、一旦標的細胞に結合するとインターナライズされる。1つの実施形態において、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物と比較して同程度にインターナライズされる。いくつかの実施形態において、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物と比較してより効率的にインターナライズされる。
【0154】
増加したBmaxおよびKD/オン−オフ速度
Bmaxは飽和抗体濃度で実現され、Kd(抗体のオンおよびオフ速度)は、Bmaxに寄与する。遅いオンおよび速いオフ速度を有する抗体は、結合の速いオンおよび遅いオフ速度を有する抗体と比較して、見かけのBmaxが低くなる。本発明による一価抗体構築物に関しては、BmaxがFSAでそれ以上増加されない飽和濃度において、FSAに対するBmaxにおいて明らかな分離が生じる。この有意性は、不飽和濃度においてはあまりない。1つの実施形態において、単一特異性二価抗体構築物と比較して一価抗体構築物のBmaxおよびKD/オン−オフ速度の増加は、標的細胞上の標的抗原発現のレベルに左右されない。一価抗体構築物がHER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む1つの実施形態において、単一特異性二価抗体構築物と比較して一価抗体構築物のBmaxおよびKD/オン−オフ速度の増加は、標的細胞上のHER2発現のレベルに左右されない。
【0155】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その一価抗体構築物は、2つの抗原結合領域を持つ対応する単一特異性二価抗体構築物と比較して、その抗原を提示する標的細胞に対する結合密度およびBmaxの増加(最大結合)を示す。いくつかの実施形態において、その結合密度およびBmaxの増加は、対応する二価抗体構築物の結合密度およびBmaxの少なくとも約125%である。ある特定の実施形態において、結合密度およびBmaxの増加は、対応する二価抗体構築物の結合密度およびBmaxの少なくとも約150%である。いくつかの実施形態において、結合密度およびBmaxの増加は、対応する二価抗体構築物の結合密度およびBmaxの少なくとも約200%である。いくつかの実施形態において、結合密度およびBmaxの増加は、対応する二価抗体構築物の結合密度およびBmaxの少なくとも約110%を超える。
【0156】
端的に、アゴニズムは、生化学的/生物学的作用を誘起する細胞上のいくつかの受容体に対する固有の活性を有する薬剤の結合の結果である。アゴニストは、TRK(チロシン受容体キナーゼ)を含む多くの細胞表面タンパク質ファミリーに対して同定されてきた。TRKに関して、アゴニスト結合は、下流シグナル伝達事象を誘起する受容体ヘテロ二量体形成を促進する。生物学的作用の範囲は、効果と呼ばれる。アゴニズムは、受容体リン酸化等の近位の近位生化学的マーカー、または細胞増殖等の遠位のバイオマーカーの両方によって評価され得る。MV−LまたはMV−Intにおいて、抗体媒介性細胞傷害での死滅の作用機序によって克服される場合、ある程度のアゴニズムが許容され得る。MV−Intの場合、ある程度のアゴニズムは、インターナリゼーションの速度および範囲を増加させ、それによりMV−Int細胞内レベルおよび細胞を死滅させるための毒性ペイロードの送達が増加され得る。
【0157】
二価抗体による受容体の架橋および二量体形成は、標的受容体上の同族のアゴニスト作用を模倣する。架橋の効率は典型的に、効果に関連付けられる。MV−LおよびMV−Intの場合、一価結合は、FSAのように受容体を架橋することはできなかった。しかしながら、データは、一価抗体が受容体リン酸化または細胞増殖に対する影響等のいくつかのアゴニスト作用を誘発することができることを示す。
【0158】
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される一価抗体構築物は、二価抗体の一体型のアビディティーを欠いており、同じように2つの標的抗原を空間的に制限しない。
【0159】
優れた効果/生物活性
本明細書に示されるように、本明細書に記載の一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物と比較して優れた効果および/または生物活性を示す。本発明による一価抗体構築物の効果および/または生物活性の1つの非限定的な例は、標的細胞の成長を阻害する一価抗体構築物の能力に代表される。1つの実施形態において、一価抗体構築物の優れた効果および/または生物活性は、主として、単一特異性二価抗体構築物と比較して増加した一価抗体構築物のエフェクター機能の結果である。一価抗体構築物のこのタイプの例は、一価溶解性抗体(MV−L)に代表される。
【0160】
ADCC
増加したエフェクター機能は、ADCC、ADCP、またはCDCのうちの少なくとも1つを含む。このため、1つの実施形態において、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物よりも高いレベルのADCCによる細胞死滅を示す。この実施形態によると、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物のADCC活性の約1.2〜1.6倍の活性増加を示す。1つの実施形態において、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物よりもADCCによる細胞死滅において約1.3倍の増加を示す。1つの実施形態において、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物よりもADCCによる細胞死滅において約1.4倍の増加を示す。1つの実施形態において、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物よりもADCCによる細胞死滅において約1.5倍の増加を示す。
【0161】
1つの実施形態において、一価抗体構築物は、HER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含み、対応する単一特異性二価抗体構築物のADCC活性の約1.2〜1.6倍の活性増加を示す。1つの実施形態において、一価抗体構築物は、HER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含み、対応する単一特異性二価抗体構築物よりもADCCによる細胞死滅において約1.3倍の増加を示す。1つの実施形態において、一価抗体構築物は、HER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含み、対応する単一特異性二価抗体構築物よりもADCCによる細胞死滅において約1.5倍の増加を示す。
【0162】
ADCP
1つの実施形態において、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物よりも高いレベルのADCPによる細胞死滅を示す。
【0163】
CDC
1つの実施形態において、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物よりも高いレベルのCDCによる細胞死滅を示す。1つの実施形態において、一価抗体構築物は、HER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含み、対応する単一特異性二価抗体構築物よりもCDCによる細胞死滅において約1.5倍の増加を示す。
【0164】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その構築物は、2つの抗原結合ポリペプチド構築物を持つ対応する二価抗体構築物のADCC、ADCP、およびCDCのうちの少なくとも1つの少なくとも約125%を有する。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その構築物は、2つの抗原結合ポリペプチド構築物を持つ対応する二価抗体構築物のADCC、ADCP、およびCDCのうちの少なくとも1つの少なくとも約150%を有する。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その構築物は、2つの抗原結合ポリペプチド構築物を持つ対応する二価抗体構築物のADCC、ADCP、およびCDCのうちの少なくとも1つの少なくとも約300%を有する。
【0165】
FcγRへの増加した結合能
いくつかの実施形態において、一価抗体構築物は、1つ以上のFcγRに対してより高い結合能(Rmax)を示す。一価抗体構築物がHER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む1つの実施形態において、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物を超える約1.3〜2倍の1つ以上のFcγRに対するRmaxの増加を示す。一価抗体構築物がHER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む1つの実施形態において、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物を超える約1.3〜1.8倍のCD16 FcγRに対するRmaxの増加を示す。一価抗体構築物がHER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む1つの実施形態において、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物を超える約1.3〜1.8倍のCD32 FcγRに対するRmaxの増加を示す。一価抗体構築物がHER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む1つの実施形態において、一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物を超える約1.3〜1.8倍のCD64 FcγRに対するRmaxの増加を示す。
【0166】
FcγRの増加した親和性
本明細書に提供される一価抗体構築物は、対応する二価抗体構築物と比較してFcγRの予想外に増加した親和性を有する。装飾の結果として得られる増加したFc濃度は、増加したADCC、ADCP、CDC活性と一致している。
【0167】
いくつかの実施形態において、一価抗体構築物は、1つ以上のFcγRの増加した親和性を示す。一価抗体構築物がHER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含む1つの実施形態において、一価抗体構築物は、少なくとも1つのFcγRの増加した親和性を示す。この実施形態によると、一価抗体構築物は、CD32の増加した親和性を示す。
【0168】
別の実施形態においては、本明細書に記載の一価抗体構築物であり、本一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物と比較して増加したインターナリゼーションを示し、それにより優れた効果および/または生物活性をもたらす。
【0169】
薬物動態パラメーター
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される一価抗体構築物は、市販の治療用抗体に相当する薬物動態(PK)特性を示す。1つの実施形態において、本明細書に記載の一価抗体構築物は、血清濃度、t1/2、β半減期、および/またはCLに関して、既知の治療用抗体と同様のPK特性を示す。1つの実施形態において、一価抗体構築物は、その単一特異性二価抗体構築物に相当するか、またはそれを超えるインビボ安定性を示す。そのようなインビボ安定性パラメーターは、血清濃度、t1/2、β半減期、および/またはC
Lを含む。
【0170】
1つの実施形態において、本明細書に提供される一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物と比較してより高い分布容積(Vss)を示す。抗体の分布容積は、血漿または血液の容積(Vp)、組織の容積(VT)、および組織対血漿分割(kP)に関連する。線形条件下において、IgG抗体は、動物またはヒトにおける血管内投与に従って、まず血漿区画および血管外液中に分配される。いくつかの実施形態において、新生児Fc受容体(FcRn)による取込み等の能動輸送過程はまた、抗体生体内分布、中でも結合タンパク質に影響する。
【0171】
別の実施形態において、本発明による一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物と比較してより高い分布容積(Vss)を示し、同様の親和性でFcRnに結合する。
【0172】
HER2結合構築物
本明細書に記載の一価抗体構築物のいくつかの実施形態において、二量体Fcポリペプチド構築物は、ヘテロ二量体である。1つの実施形態において、本明細書に記載の一価抗体構築物は、HER2を発現する細胞を標的化するように設計され、抗原結合ポリペプチド構築物はHER2に結合する。HER2は、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーに属する癌原遺伝子であり、しばしば乳癌の対象において過剰発現される。HER2タンパク質はまた、neu遺伝子、EGFR2、CD340、ErbB2、およびp185の生成物ともされる。いくつかの実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物はHER2に結合し、標的細胞は、低度、中程度、または高度HER2発現細胞である。一実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物はHER2に結合し、標的細胞は低HER2発現細胞である。別の実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物はHER2に結合し、標的細胞は、二価HER2結合抗体に対する減少した結合性を有する低HER2発現細胞である。さらなる実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物はHER2に結合し、標的細胞は、トラスツズマブに対する減少した結合性を有する低HER2発現細胞である。一実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物はHER2に結合し、標的細胞は癌細胞である。ある特定の実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物はHER2に結合し、標的細胞は乳癌細胞である。
【0173】
本明細書に記載の一価抗体構築物のいくつかの実施形態において、二量体Fcポリペプチド構築物は、ヘテロ二量体である。記載される一価抗体構築物のいくつかの実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物はHER2に結合する。いくつかの実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物は、少なくとも1つのHER2細胞外ドメインに結合する。ある特定の実施形態において、細胞外ドメインは、ECD1、ECD2、ECD3、およびECD4のうちの少なくとも1つである。ある特定の実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物は、低度、中程度、または高度HER2発現細胞である標的細胞によって発現されるHER2に結合する。ある特定の実施形態において、HER2発現細胞は、二価HER2結合抗体への減少した結合性を示す。一実施形態において、抗原結合ポリペプチド構築物はHER2に結合し、標的細胞は、エストロゲン受容体陰性細胞、プロゲステロン受容体陰性細胞、および二価HER2結合抗体に対する減少した結合性を有する抗HER2抗体耐性腫瘍細胞のうちの少なくとも1つである。
【0174】
本明細書に記載の一価抗体構築物のいくつかの実施形態において、二量体Fcポリペプチド構築物は、ヘテロ二量体である。本明細書に記載の一価抗体構築物のある特定の実施形態において、一価抗原結合ポリペプチド構築物は、抗原に結合することができるFabフラグメント、scFvおよびsdAb、抗原結合ペプチド、またはタンパク質ドメインである。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物が提供され、一価抗原結合ポリペプチド構築物は、Fabフラグメント重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを含む。
【0175】
HER2に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、それぞれがCH3ドメインを含む2つの単量体Fcポリペプチドを含み、1つのその単量体Fcポリペプチドが、抗原結合ポリペプチド構築物からの少なくとも1つのポリペプチドに融合する、二量体Fcポリペプチド構築物と、を含む、HER2に結合する単離された一価抗体構築物が本明細書に提供され、その抗体構築物は、抗増殖性であり、かつ標的細胞によってインターナライズされ、その構築物は、HER2に結合する対応する二価抗体構築物と比較して標的細胞上で提示されるHER2に対して結合密度およびBmaxの増加(最大結合)を示し、その構築物は、その対応する二価HER2結合抗体構築物と比較してより高いADCC、より高いADCP、およびより高いCDCのうちの少なくとも1つを示す。
【0176】
低HER2発現を有する標的細胞上のHER2に結合する単離された一価抗体構築物がある特定の実施形態において提供され、本一価抗体構築物は、HER2に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、それぞれがCH3ドメインを含む2つの単量体Fcポリペプチドを含み、1つのその単量体Fcポリペプチドが抗原結合ポリペプチド構築物からの少なくとも1つのポリペプチドに融合する、二量体Fcポリペプチド構築物と、を含み、その抗体構築物は、抗増殖性であり、かつ標的細胞によってインターナライズされ、その構築物は、HER2に結合する対応する二価抗体構築物と比較して標的細胞上で提示されるHER2に対して結合密度およびBmaxの増加(最大結合)を示し、その構築物は、その対応する二価HER2結合抗体構築物と比較してより高いADCC、より高いADCP、およびより高いCDCのうちの少なくとも1つを示す。ある特定の実施形態において、低HER2発現を有する標的細胞は、癌細胞である。いくつかの実施形態において、低HER2発現を有する標的細胞は、乳癌細胞である。
【0177】
ECD1、ECD2、およびECD3〜4のうちの少なくとも1つである細胞外ドメイン(ECD)でHER2に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、それぞれがCH3ドメインを含む2つの単量体Fcポリペプチドを含み、1つのその単量体Fcポリペプチドが、抗原結合ポリペプチド構築物からの少なくとも1つのポリペプチドに融合する、二量体Fcポリペプチド構築物と、を含む、HER2に結合する単離された一価抗体構築物が本明細書に提供され、その抗体構築物は抗増殖性であり、かつ標的細胞によってインターナライズされ、その構築物は、HER2に結合する対応する二価抗体構築物と比較して、標的細胞上で提示されるHER2 ECD1、2、および3〜4のうちの少なくとも1つに対する結合密度およびBmaxの増加(最大結合)を示し、その構築物は、その対応する二価HER3結合抗体構築物と比較して、より高いADCC、より高いADCP、およびより高いCDCのうちの少なくとも1つを示す。
【0178】
ECD1、ECD2、ECD3、およびECD4のうちの少なくとも1つである細胞外ドメイン(ECD)でHER2に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、それぞれがCH3ドメインを含む2つの単量体Fcポリペプチドを含み、1つのその単量体Fcポリペプチドが、抗原結合ポリペプチド構築物からの少なくとも1つのポリペプチドに融合する、二量体Fcポリペプチド構築物と、を含む、HER2に結合する単離された一価抗体構築物が本明細書に提供され、その抗体構築物は抗増殖性であり、かつ標的細胞によってインターナライズされ、その構築物は、HER2に結合する対応する二価抗体構築物と比較して、標的細胞上で提示されるHER2 ECD1、2、3、および4のうちの少なくとも1つに対する結合密度およびBmaxの増加(最大結合)を示し、その構築物は、その対応する二価HER2結合抗体構築物と比較して、より高いADCC、より高いADCP、およびより高いCDCのうちの少なくとも1つを示す。
【0179】
一実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その抗体構築物は、標的細胞増殖を阻害する。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その一価HER2結合ポリペプチド構築物は、Fab、scFv、sdAb、またはポリペプチドのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その構築物は、2つの抗原結合ポリペプチド構築物を持つ対応する二価抗体構築物のより高い程度のADCC、ADCP、およびCDCのうちの少なくとも1つを有する。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その構築物は、2つの抗原結合ポリペプチド構築物を持つ対応する二価抗体構築物のADCC、ADCP、およびCDCのうちの少なくとも1つの少なくとも約105%を有する。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の単離された一価抗体構築物であり、その構築物は、2つの抗原結合ポリペプチド構築物を持つ対応する二価抗体構築物のADCC、ADCP、およびCDCのうちの少なくとも1つの約110%超を有する。
【0180】
抗体構築物の組換えおよび合成生成方法:
安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法がある特定の実施形態において提供され、本方法は、重鎖可変ドメインおよび第1のFcドメインポリペプチドを含む第1の重鎖ポリペプチドをコードする、第1のDNA配列;第2のFcドメインポリペプチドを含むその第2の重鎖ポリペプチドをコードする第2のDNA配列であって、第2の重鎖ポリペプチドが可変ドメインを欠いている、第2のDNA配列;ならびに軽鎖可変ドメインを含む軽鎖ポリペプチドをコードする、第3のDNA配列を用いて、その第1のDNA配列、その第2のDNA配列、およびその第3のDNA配列が、既定の比率で哺乳類細胞にトランスフェクトされるように少なくとも1つの安定した哺乳類細胞へトランスフェクトする段階と、その重鎖および軽鎖ポリペプチドがその少なくとも1つの安定した哺乳類細胞内で所望のグリコシル化一価非対称抗体として発現されるように少なくとも1つの哺乳類細胞内のその第1のDNA配列、その第2のDNA配列、およびその第3のDNA配列を翻訳する段階と、を含む。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法であり、本方法は、2つの細胞のそれぞれが異なる比率で重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを発現するように、その第1のDNA配列、その第2のDNA配列、およびその第3のDNA配列を異なる既定の比率で少なくとも2つの異なる細胞へトランスフェクトする段階を含む。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法であり、本方法は、その第1、第2、および第3のDNA配列を含むマルチシストロンベクターを少なくとも1つの哺乳類細胞へトランスフェクトする段階を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの哺乳類細胞は、VERO、HeLa、HEK、NS0、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、W138、BHK、COS−7、Caco−2、およびMDCK細胞、ならびにそれらのサブクラスおよび変異体から成る群から選択される。
【0181】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法であり、第1のDNA配列:第2のDNA配列:第3のDNA配列の既定の比率は、約1:1:1である。いくつかの実施形態において、第1のDNA配列:第2のDNA配列:第3のDNA配列のその既定の比率は、翻訳される第1の重鎖ポリペプチドの量が第2の重鎖ポリペプチドの量および軽鎖ポリペプチドの量にほぼ等しくなるようなものである。
【0182】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法であり、その少なくとも1つの安定した哺乳類細胞の発現生成物は、単量体重鎖もしくは軽鎖ポリペプチド、または他の抗体と比較して、より大きい割合の所望のグリコシル化一価抗体を含む。
【0183】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法であり、本方法は、所望のグリコシル化一価抗体を同定し、精製する段階を含む。いくつかの実施形態において、その同定は、液体クロマトグラフィーおよび質量分析法の1つまたは両方によるものである。
【0184】
重鎖可変ドメインおよび第1のFcドメインポリペプチドを含む第1の重鎖ポリペプチドをコードする、第1のDNA配列;第2のFcドメインポリペプチドを含む第2の重鎖ポリペプチドをコードする第2のDNA配列であって、第2の重鎖ポリペプチドが可変ドメインを欠いている第2のDNA配列;ならびに軽鎖可変ドメインを含む軽鎖ポリペプチドをコードする、第3のDNA配列を用いて、その第1のDNA配列、その第2のDNA配列、およびその第3のDNA配列が、既定の比率で哺乳類細胞にトランスフェクトされるように少なくとも1つの安定した哺乳類細胞へトランスフェクトする段階と、その重鎖および軽鎖ポリペプチドがその少なくとも1つの安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体として発現されるように、少なくとも1つの哺乳類細胞内のその第1のDNA配列、その第2のDNA配列、およびその第3のDNA配列を翻訳する段階と、を含み、そのグリコシル化一価非対称抗体は、対応する野生型抗体と比較してより高いADCC、CDC、およびADCPのうちの少なくとも1つを有する、改善されたADCCを持つ抗体構築物を生成する方法が本明細書に提供される。
【0185】
ある特定の実施形態においては、酵母、細菌等の微生物、またはヒトもしくは動物細胞株からの分泌物によって組換え分子として生成される抗体構築物がある。実施形態において、ポリペプチドは、宿主細胞から分泌される。
【0186】
実施形態は、本明細書に記載のヘテロ多量体タンパク質を発現するように形質転換された酵母細胞等の細胞を含む。形質転換された宿主細胞自体に加えて、これらの細胞の培養物、好ましくはモノクローナル(クローン的に同種)培養物、栄養培地においてモノクローナル培養物から得られた培養物が提供される。ポリペプチドが分泌される場合、培地は、細胞を有するか、または濾過または遠心分離で除かれた場合には細胞を有さないポリペプチドを含む。細菌(例えば、大腸菌およびバシラス サチリス(Bacillus subtilis))、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)、糸状菌類(例えば、アスペルギルス(Aspergillus))、植物細胞、動物細胞、ならびに昆虫細胞を含む、多くの発現系が既知であり、使用され得る。
【0187】
本明細書に記載の抗体構築物は、例えば、宿主染色体中または遊離プラスミド上に挿入されたコード化配列から、従来の方法で生成される。酵母は、通常の方法のいずれか、例えば電気穿孔法において、所望のタンパク質に対するコード化配列で形質転換される。電気穿孔法による酵母の形質転換の方法は、Becker&Guarente(1990)Methods Enzymol.194,182に開示されている。
【0188】
うまく形質転換された細胞、すなわち、本発明のDNA構築物を含む細胞は、よく知られた技術によって同定され得る。例えば、発現構築物の導入から得られる細胞は、成長し、所望のポリペプチドを生成することができる。細胞を収集および溶解し、それらのDNA含量を、Southern(1975)J.Mol.Biol.98,503またはBerent et al.(1985)Biotech.3,208によって記載されるもの等の方法を使用して、DNAの存在に対して検査した。代替として、上清中のタンパク質の存在は、抗体を使用して検出され得る。
【0189】
有用な酵母プラスミドベクターには、pRS403−406およびpRS413−416が挙げられ、一般的に利用可能である。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405、およびpRS406は、酵母組み込みプラスミド(YIp)であり、酵母選択可能マーカーHIS3、7RP1、LEU2、およびURA3を組み込む。プラスミドpRS413−416は、酵母動原体プラスミド(Ycp)である。
【0190】
相補的付着末端を介してDNAをベクターに操作的に連鎖するために、種々の方法が開発されている。例えば、相補的ホモポリマー区域を、ベクターDNAに挿入されるDNAセグメントに付加することができる。次いで、ベクターおよびDNAセグメントは、相補的ホモポリマー尾部間の水素結合により連結されて組換えDNA分子を形成する。
【0191】
1つ以上の制限部位を含む合成リンカーは、DNAセグメントをベクターに連結する別の方法を提供する。エンドヌクレアーゼ制限消化によって生成されたDNAセグメントを、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼで、あるいは、3'5'−エキソヌクレアーゼ活性で突出している_−一本鎖末端を除去し、かつポリマー形成活性で陥凹3'末端を塞ぐ酵素である、大腸菌DNAポリメラーゼ1で処理する。
【0192】
したがって、これらの活性の組み合わせにより平滑末端DNAセグメントが生成される。次いで、この平滑末端セグメントを、バクテリオファージT4DNAリガーゼ等の平滑末端DNA分子の連結を触媒することができる酵素の存在下でモル過剰のリンカー分子とインキュベートする。ゆえに、この反応の生成物は、末端にポリマーリンカー配列を保有するDNAセグメントである。次いで、これらのDNAセグメントは、適切な制限酵素で切断され、DNAセグメントのものと適合する末端を生成する酵素で切断されている発現ベクターに連結される。
【0193】
種々の制限エンドヌクレアーゼ部位を含む合成リンカーは、いくつかの販売元から市販されている。
【0194】
アルブミン融合タンパク質を発現する宿主として本発明の実施において有用であると考えられる酵母の例示的な属は、ピキア(Pichia)属(以前はハンゼヌラ(Hansenula)属として分類された)、サッカロミセス(Saccharomyces)属、クリベロミセス(Kluyveromyces)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、カンジダ(Candida)属、トルロプシス(Torulopsis)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、シテロミセス(Citeromyces)属、パチソレン(Pachysolen)属、ザイゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属、デバロミセス(Debaromyces)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、フミコーラ(Humicola)属、ムコール(Mucor)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、メトシュニコウイア(Metschunikowia)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ルコスポリジウム(Leucosporidium)属、ボトリオアスカス(Botryoascus)属、スポリジオボラス(Sporidiobolus)属、エンドミコプシス(Endomycopsis)属等である。好ましい属は、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属、クルイベロミセス属、ピキア属、およびトルラスポラ属から成る群から選択されるものである。サッカロミセス種の例は、S.セレビシア、S.イタリクス(S.italicus)、およびS.ルキシイである。
【0195】
クルイベロミセス種の例は、K.フラジリス(K. fragilis)、K.ラクチス(K. lactis)、およびK.マルキシアナス(K. marxianus)である。好適なトルラスポラ種は、T.デルブリュッキイ(T. delbrueckii)である。ピキア(ハンゼヌラ)種の例は、P.アンガスタ(P.angusta)(以前はH.ポリモルファ(H. polymorpha))、P.アノマラ(P. anomala)(以前はH.アノマラ(H. anomala))、およびP.パストリス(P. pastoris)である。S.セレビシアの形質転換の方法は、一般に、欧州特許第251 744号、欧州特許第258 067号、および国際公開第90/01063号において教示されており、それらのすべては、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0196】
本明細書に記載の抗体構築物タンパク質、宿主細胞、ならびに合成および組換え技術によるヘテロ多量体タンパク質の生成物をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。このベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス、またはレトロウイルスベクターであり得る。レトロウイルスベクターは、複製能があるか、または複製欠損であり得る。後者の場合、ウイルス増殖は、一般に、補完できる宿主細胞においてのみ生じる。
【0197】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物をコードするポリヌクレオチドは、宿主内での増殖のための選択可能マーカーを含むベクターに連結される。一般に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物等の沈殿物に、または荷電脂質との複合物に導入される。ベクターがウイルスである場合、それは適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでパッケージングされ、次いで、宿主細胞内に形質導入される。
【0198】
ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチド挿入は、適切なプロモーター、数例を挙げると、ファージλPLプロモーター、大腸菌lac、trp、phoA、およびracプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、ならびにレトロウイルスのLTRのプロモーター等に操作的に連結される。他の好適なプロモーターが当業者によく知られるであろう。発現構築物は、転写開始、終了のための部位、および転写領域においては、翻訳のためのリボソーム結合部位をさらに含む。構築物によって発現される転写物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるポリペプチドの始端に翻訳開始コドンを、およびその終端に適切に位置する終止コドン(UAA、UGA、またはUAG)を含む。
【0199】
示されるように、発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択可能マーカーを含む。そのようなマーカーには、真核細胞培養におけるジヒドロ葉酸レダクターゼ、G418、グルタミンシンターゼ、またはネオマイシン耐性、ならびに大腸菌および他の細菌内における培養におけるテトラサイクリン、カナマイシン、またはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。適切な宿主の代表的な例には、大腸菌、ストレプトミセス、およびサルモネラ・チフィリウム細胞等の細菌細胞;酵母細胞(例えば、サッカロミセス・セレビシアまたはピキア・パストリス(ATCCアクセッション番号201178))等の真菌細胞;ドロソフィラS2およびスポドプテラSf9細胞等の昆虫細胞;CHO、COS、NSO、293、およびボーズメラノーマ細胞等の動物細胞;ならびに植物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。上記宿主細胞のための適切な培養培地および状態が、当該技術分野で既知である。
【0200】
細菌における使用に好適なベクターの中には、QIAGEN,Inc.から入手可能なpQE70、pQE60、およびpQE−9;pBluescriptベクター、ファージスクリプトベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A;Stratagene Cloning Systems,Inc.から入手可能なpNH46A;ならびにPharmacia Biotech,Incから入手可能なptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5が挙げられる。好ましい真核ベクターの中は、Stratageneから入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、およびpSG;ならびにPharmaciaから入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLである。酵母系における使用に好適な発現ベクターには、pYES2、pYD1、pTEF1/Zeo、pYES2/GS、pPICZ、pGAPZ、pGAPZalph、pPIC9、pPIC3.5、pHIL−D2、pHIL−S1、pPIC3.5K、pPIC9K、およびPAO815(すべてInvitrogen,Carlbad,CAから入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適なベクターが、当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0201】
1つの実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物をコードするポリヌクレオチドは、原核もしくは真核細胞の特定の区画への本発明のタンパク質の局在化を指示するか、および/または原核もしくは真核細胞からの本発明のタンパク質の分泌を指示するシグナル配列に融合する。例えば、大腸菌においては、細胞膜周辺腔へのタンパク質の発現を指示することが望ましいことがある。細菌の細胞膜周辺腔へのポリペプチドの発現を指示するために抗体構築物がそこに融合するシグナル配列またはタンパク質(またはそのフラグメント)の例には、pelBシグナル配列、マルトース結合タンパク質(MBP)シグナル配列、MBP、ompAシグナル配列、ペリプラズム大腸菌熱不安定性エンテロトキシンBサブユニットのシグナル配列、ならびにアルカリフォスファターゼのシグナル配列が挙げられるが、これらに限定されない。New England Biolabs.から入手可能なベクターのpMALシリーズ(具体的には、pMAL−.rho.シリーズ)等のいくつかのベクターがタンパク質の局在化を指示する融合タンパク質の構築用に市販されている。具体的な実施形態において、本発明のポリヌクレオチドアルブミン融合タンパク質は、pelBペクチン酸リアーゼシグナル配列に融合され、グラム陰性細菌においてそのようなポリペプチドの発現および精製の効率を上昇させる。米国特許第5,576,195号、および同第5,846,818号を参照されたく、それらの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0202】
哺乳類細胞におけるその分泌を指示するための抗体構築物に融合されるシグナルペプチドの例には、MPIF−1シグナル配列(例えば、GenBankアクセッション番号AAB51134のアミノ酸1−21)、スタンニオカルシンシグナル配列(MLQNSAVLLLLVISASA
(配列番号:1))、およびコンセンサスシグナル配列(MPTWAWWLFLVLLLALWAPARG
(配列番号:2))が挙げられるが、これらに限定されない。バキュロウイルス発現系と併せて使用され得る好適なシグナル配列は、gp67シグナル配列(例えば、GenBankアクセッション番号AAA72759のアミノ酸1−19)である。
【0203】
選択可能マーカーとしてグルタミンシンターゼ(GS)またはDHFRを使用するベクターは、それぞれ、メチオニンスルホキシミンまたはメトトレキサートの薬物の存在下で増幅され得る。ベクターに基づくグルタミンシンターゼの利点は、グルタミンシンターゼ陰性である細胞株(例えば、マウス骨髄腫細胞株、NSO)の利用可能性である。グルタミンシンターゼ発現系は、内因性遺伝子の機能を抑制するさらなる阻害剤を与えることによりグルタミンシンターゼ発現細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)中でも機能することができる。グルタミンシンターゼ発現系およびその構成要素は、PCT公開:WO87/04462;WO86/05807;WO89/10036;WO89/10404;およびWO91/06657に詳述されており、それらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、グルタミンシンターゼ発現ベクターは、Lonza Biologics,Inc.(Portsmouth,N.H.)から入手可能である。マウス骨髄腫細胞におけるGS発現系を使用したモノクローナル抗体の発現および生成は、Bebbington et al.,Bio/technology 10:169(1992)に、およびBiblia and Robinson Biotechnol.Prog.11:1(1995)に記載され、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0204】
本明細書に記載の単離された一価抗体構築物をコードする核酸を含む宿主細胞が、本明細書に提供される。ある特定の実施形態においては、本明細書に記載の宿主細胞であり、その抗原結合ポリペプチド構築物をコードするその核酸と、Fc構築物をコードするその核酸とは、単一のベクター中に存在する。
【0205】
本明細書に記載の単離された一価抗体構築物を調製する方法が本明細書に提供され、本方法は、(a)抗体構築物をコードする核酸を含む宿主細胞を培養するステップと、(b)宿主細胞培養物から抗体構築物を回収するステップと、を含む。
【0206】
本明細書に記載のベクター構築物を含む宿主細胞、およびさらに、当該技術分野で既知の技術を使用して、1つ以上の異種の制御領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)と操作可能に会合されるヌクレオチド配列を含む宿主細胞がまた提供される。宿主細胞は、哺乳類細胞(例えば、ヒト由来細胞)等の高等真核生物、もしくは酵母細胞等の下等真核細胞であってもよく、または宿主細胞は、細菌細胞等の原核細胞であってもよい。挿入される遺伝子配列の発現を調節するか、または望ましい特定の様式で遺伝子生成物修飾および処理する宿主株が選択され得る。ある特定のプロモーターからの発現は、ある特定のインデューサーの存在下で増加され、このようにして、遺伝子操作されたポリペプチドの発現が制御され得る。さらに、異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳および翻訳後プロセシングならびに修飾(例えば、リン酸化、切断)のための特性および特定の機序を有する。適切な細胞株は、異種タンパク質の所望の修飾およびプロセシングの発現を確実にするように選択され得る。
【0207】
宿主細胞への核酸および本発明の核酸構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン媒介性トランスフェクション、カチオン性脂質媒介性トランスフェクション、電気穿孔法、形質導入、感染、または他の方法によって達成され得る。そのような方法は、Davis et al.,Basic Methods In Molecular Biology(1986)等の多くの標準実験マニュアルに記載されている。本発明のポリペプチドが、事実上、組換えベクターを欠いている宿主細胞によって発現され得るということが特に意図される。
【0208】
本明細書で考察されるベクター構築物を含む宿主細胞を包含する事に加えて、本発明はまた、内因性遺伝物質を欠失させるか、もしくは置き換えるように、および/または遺伝物質を含むように操作された脊椎動物由来、特に哺乳類由来の一次、二次、および不死化宿主細胞を包含する。内因性ポリヌクレオチドに操作可能に会合された遺伝物質は、内因性ポリヌクレオチドを活性化するか、変化させるか、および/または増幅する。
【0209】
加えて、当該技術分野で知られている技術を使用して、異種のポリヌクレオチドおよび/または異種の制御領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)を、相同的組み換えを介して治療用タンパク質をコードする内因性ポリヌクレオチド配列と操作可能に会合することができる(例えば、1997年6月24日に取得された米国特許第5,641,670号;国際特許第WO96/29411号;国際特許第WO94/12650号;Koller et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935(1989);およびZijlstra et al.,Nature 342:435−438(1989)を参照されたく、そのそれぞれの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0210】
本明細書に記載の抗体構築物は、硫酸アンモニウムもしくはエタノール沈殿法、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性荷電相互作用クロマトグラフィー、ならびにレクチンクロマトグラフィーを含む、よく知られた方法によって、組換え細胞培養物から回収および精製され得る。精製に高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を用いることが最も好ましい。
【0211】
ある特定の実施形態において、本発明のヘテロ多量体タンパク質は、Q−セファロース、DEAE セファロース、poros HQ、poros DEAF、Toyopearl Q、Toyopearl QAE、Toyopearl DEAE、Resource/Source QおよびDEAE、Fractogel QおよびDEAEカラム上でのクロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されないアニオン交換クロマトグラフィーを用いて精製される。
【0212】
具体的な実施形態において、本明細書に記載のタンパク質は、SP−セファロース、CMセファロース、poros HS、poros CM、Toyopearl SP、Toyopearl CM、Resource/Source SおよびCM、Fractogel SおよびCMカラム、ならびにそれらの等価物および相当物が挙げられるが、これらに限定されないカチオン交換クロマトグラフィーを用いて精製される。
【0213】
加えて、本明細書に記載の抗体構築物は、当該技術分野で知られている技術を用いて化学的に合成され得る(例えば、Creighton,1983,Proteins:Structures and Molecular Principles,W.H.Freeman&Co.,N.Y and Hunkapiller et al.,Nature,310:105−111(1984)を参照されたい)。例えば、ポリペプチドのフラグメントに対応するポリペプチドは、ペプチドシンセサイザーの使用によって合成され得る。さらに、所望に応じて、非古典的なアミノ酸または化学アミノ酸類似体が、ポリペプチド配列への置換または添加として導入されてもよい。非古典的なアミノ酸には、一般的なアミノ酸のD−異性体、2,4ジアミノ酪酸、αアミノイソ酪酸、4アミノ酪酸、Abu、2アミノ酪酸、g−Abu、e−Ahx、6アミノヘキサン酸、Aib、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、フルオロ−アミノ酸、β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸等のデザイナーアミノ酸、および一般的にアミノ酸類似体が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、アミノ酸は、D(右旋性)またはL(左旋性)であり得る。
【0214】
一価抗体構築物の試験。FcγR、FcRn、およびC1q結合
本発明による一価抗体構築物は、対応する単一特異性二価抗体構築物と比較して強化されたエフェクター機能を示す。一価抗体構築物のエフェクター機能は、以下のように試験され得る。インビトロおよび/またはインビボ細胞傷害アッセイを行い、ADCP、CDC、および/またはADCC活性を評価することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行い、FcγR結合を測定することができる。ADCCを媒介するための一次細胞である、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991)の464ページにある表3に要約されている。対象の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの一例は、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されている。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替として、または追加として、対象の分子のADCC活性をインビボで、例えば、Clynes et al.PNAS(USA)95:652−656(1998)に開示されるもの等の動物モデルにおいて評価することができる。C1q結合アッセイを行い、一価抗体構築物がC1qに結合することができ、これによりCDCを活性化させるかどうかを判定することもできる。補体活性化を評価するために、CDCアッセイ、例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)を実施してもよい。当該技術分野でよく知られている方法を使用して、抗体のSPRおよびインビボでのPK判定によるFcRn結合を実施してもよい。
【0215】
生物学的および治療的用途:
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の構築物は、1つ以上の生物活性を試験するためのアッセイに使用される。構築物が特定のアッセイにおいて活性を示す場合、その抗体構築物によって構成される抗原結合構築物は生物活性に関連付けられる疾患に関係する可能性がある。このため、この構築物は、その関連疾患の治療に役立つ。
【0216】
ある特定の実施形態においては、抗原分子の多量体形成を阻害するための医薬品の製造のための本明細書に記載の一価抗体構築物の使用がある。ある特定の実施形態においては、抗原のその同族の結合パートナーへの結合を阻害するための一価抗体構築物の使用がある。
【0217】
ある特定の実施形態において、疾患または障害を治療する方法であって、そのような治療、予防、または回復が望まれる患者に本明細書に記載の抗体構築物をその疾患または障害を治療する、予防する、または回復するのに有効な量で投与する段階を含む方法が提供される。
【0218】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物は、内分泌系の疾患および/または障害の診断、予後、予防、および/または治療に使用される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物は、神経系の疾患および/または障害の診断、予後、予防、および/または治療に使用される。
【0219】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物は、免疫系の疾患および/または障害の診断、予後、予防、および/または治療に使用される。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物は、呼吸器系の疾患および/または障害の診断、予後、予防、および/または治療に使用される。
【0220】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物は、心血管系の疾患および/または障害の診断、予後、予防、および/または治療に使用される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物は、生殖器系の疾患および/または障害の診断、予後、予防、および/または治療に使用される。
【0221】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物は、消化器系の疾患および/または障害の診断、予後、予防、および/または治療に使用される。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物は、血液に関連する疾患または障害の診断、予後、予防、および/または治療に使用される。
【0222】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物および/または本明細書に記載の抗体構築物をコードするポリヌクレオチドは、プロホルモン活性化、神経伝達物質活性、細胞シグナル伝達、細胞増殖、細胞分化、および細胞遊走が挙げられるが、これらに限定されない活性に関連する疾患および/または障害の診断、検出、および/または治療において使用される。
【0223】
ある態様において、本明細書に記載の抗体構築物は、開示される疾患、障害、または状態のうちの1つ以上を治療するために抗体構築物を患者に投与する段階を含む、抗体ベースの療法を対象とする。本明細書に記載の治療化合物には、本明細書に記載の抗体構築物、本明細書に記載の抗体構築物をコードする核酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0224】
具体的な実施形態においては、抗体ベースの療法であり、その療法は、神経障害、免疫障害、筋肉障害、増殖障害、胃腸障害、肺障害、心血管障害、腎臓障害、増殖性障害、ならびに/または癌性疾患および状態、ならびに/または本明細書の他の箇所に記載されるものを含むが、これらに限定されない1つ以上の疾患、障害、または状態を治療するために、抗体の少なくとも1つのフラグメントまたは変異体を含む本明細書に記載の抗体構築物を患者に投与する段階を含む。
【0225】
抗体の少なくとも1つのフラグメントまたは変異体を含む本明細書に記載の抗体構築物は、単独で、または他の種類の治療(例えば、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、および抗腫瘍剤)と組み合わせて投与されてもよい。一般に、患者のものと同じ種である種起源または種反応性(抗体の場合)の生成物の投与が好ましい。このため、一実施形態において、ヒト抗体、フラグメント誘導体、類似体、または核酸が、治療または予防のためにヒト患者に投与される。
【0226】
患者における感染性疾患を治療する方法もまた提供され、本方法は、治療的有効量の本明細書に記載の一価抗体構築物を患者に投与する段階を含む。ある特定の実施形態において、感染性疾患は、ウイルス性因子によって引き起こされる。ある特定の実施形態において、感染性疾患は、細菌性因子または真菌因子によって引き起こされる。一定量の本明細書に記載の一価抗体構築物を与えることによって治療され得る細菌因子には、コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriae)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、大腸菌、ストレプトコッカス、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、C.ディフィシル(C. difficile)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、C.パルバム(C. parvum)、バンコマイシン耐性腸球菌(enterococcus)、メチシリン耐性S.アウレウス(S. aureus)、およびその他が挙げられ、これらに限定されない。一定量の本明細書に記載の一価抗体構築物を与えることによって治療され得るウイルス性因子には、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、A群、サイトメガロウイルス(CMV)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、狂犬病、ワクチニア、水疱性口内炎ウイルス(VZV)、HIV、WNV、SARが挙げられるが、これらに限定されない。一定量の本明細書に記載の一価抗体構築物を与えることによって治療され得る真菌因子には、クリプトコッカス髄膜炎、C.ネオフォルマンス(C. neoformans)(CN)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)(HC)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0227】
個体において対象のバイオマーカーの存在を検出するためのキットが提供され、そのキットは、(a)本明細書に記載の単離された一価抗体構築物、ならびに(b)使用説明書を含む。ある特定の実施形態においては、HER2およびその可溶性ECDのうちの少なくとも1つの検出のためのキットであり、そのキットは、(a)本明細書に記載の単離された一価HER2結合抗体構築物、ならびに(b)使用説明書を含む。いくつかの実施形態においては、HER2およびその可溶性ECDのうちの少なくとも1つの濃度を判定するためのキットであり、そのキットは、(a)本明細書に記載の単離された一価HER2結合抗体構築物、ならびに(b)使用説明書を含む。
【0228】
癌の治療
癌を治療するための医薬品の製造のための本明細書に記載の一価抗体構築物の使用が、本明細書に提供される。免疫系障害のための医薬品の製造のための本明細書に記載の一価抗体構築物の使用もまた、提供される。ある特定の実施形態においては、腫瘍の成長を阻害するための医薬品の製造のための本明細書に記載の一価抗体構築物の使用がある。ある特定の実施形態においては、腫瘍を縮小させるための医薬品の製造のための本明細書に記載の一価抗体構築物の使用がある。
【0229】
癌を治療するための医薬品の製造のための本明細書に記載の一価HER2結合担体構築物の使用が、本明細書に提供される。ある特定の実施形態において、癌は、低HER2発現の癌である。ある特定の実施形態において、癌は、二価HER2抗体による治療に抵抗性である。トラスツズマブでの治療に抵抗性の癌を治療するための医薬品の製造のための本明細書に記載の一価HER2結合担体構築物の使用が、本明細書に提供される。
【0230】
1つの実施形態において、本明細書に記載の一価抗体構築物は、癌の治療に使用される。1つの実施形態において、本明細書に記載のHER2結合ポリペプチド構築物を含む一価抗体構築物は、HER1機能不全、HER2機能不全、HER3機能不全、および/またはHER4機能不全を含む、HER機能不全と関連する、癌または任意の増殖性疾患の治療に有用である。ある特定の実施形態において、癌は、乳癌、胃癌、脳腫瘍、肺癌のうちの少なくとも1つであるか、または癌腫の少なくとも1つの種類である。
【0231】
1つの実施形態において、本明細書に記載のHER2結合一価抗体構築物は、乳癌細胞の治療に使用される。ある特定の実施形態において、HER2結合一価抗体構築物は、乳癌を患う個体に投与するための医薬組成物の調製に使用される。いくつかの実施形態においては、個体における乳癌の治療であり、本治療は、少なくとも1つの本明細書に記載のHER2結合一価抗体構築物の有効量をその個体に提供することによるものである。
【0232】
1つの実施形態において、本明細書に記載のHER2結合一価抗体構築物は、現在の抗HER2療法に部分的に応答性である患者の治療に使用される。1つの実施形態において、本明細書に記載のHER2結合一価抗体構築物は、現在の抗HER2療法に抵抗性である患者の治療に使用される。別の実施形態において、本明細書に記載のHER2結合一価抗体構築物は、現在の抗HER2療法に対する抵抗性が発生しつつある患者の治療に使用される。
【0233】
1つの実施形態において、本明細書に記載のHER2結合一価抗体構築物は、現在の抗HER2療法に非応答性である患者の治療に有用である。ある特定の実施形態において、これらの患者は、トリプルネガティブ癌を患う。いくつかの実施形態において、トリプルネガティブ癌は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびHer2の遺伝子の発現が低度からわずかである、乳癌である。ある特定の他の実施形態において、本明細書に記載のHER2結合一価抗体構築物は、任意に1つ以上の現在の抗HER2療法と組み合わせて、現在の抗HER2療法に非応答性の患者に提供される。いくつかの実施形態において、現在の抗HER2療法には、抗HER2もしくは抗HER3単一特異性二価抗体、トラスツズマブ、ペルツズマブ、T−DM1、二重特異性HER2/HER3 scFv、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、本明細書に記載の一価抗体構築物は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、T−DM1、抗HER2、または抗HER3に応答しない患者の治療に、単独で、または組み合わせて使用される。
【0234】
1つの実施形態において、HER2に結合する抗原結合ポリペプチド構築物を含むHER2結合一価抗体構築物は、転移性乳癌を有する患者の治療に使用することができる。1つの実施形態において、HER2結合一価抗体は、局所進行性または進行性の転移性乳癌を有する患者の治療に有用である。1つの実施形態において、HER2結合一価抗体は、難治性乳癌を有する患者の治療に有用である。1つの実施形態において、HER2結合一価抗体は、以前の抗HER2療法で患者が進行した場合に、転移性乳癌の治療のためにその患者に提供される。1つの実施形態において、本明細書に記載のHER2結合一価抗体は、トリプルネガティブ乳癌を有する患者の治療に使用することができる。1つの実施形態において、本明細書に記載のHER2結合一価抗体は、進行性、難治性HER2増幅型ヘレグリン陽性癌を有する患者の治療に使用される。
【0235】
癌治療のための他の既知の療法と組み合わせて投与されるHER2結合一価抗体構築物が、提供される。この実施形態によると、一価抗体構築物は、B
maxおよび抗体依存性細胞傷害活性をFSAよりも高く有意に増加させるために、結合標的エピトープが重複しない他の一価抗体構築物または多価抗体と組み合わせて投与され得る。例えば、本発明による一価抗HER2抗体は、次のように組み合わせて投与することができる:1)OA1−Fab−Her2(herceptinに基づく)等の一価抗体構築物とOA5−Fab−Her2(ペルツズマブに基づく)との組み合わせ、2)OA1−Fab−Her2および/またはOA5−Fab−Her2とセツキシマブ二価EGFR抗体との組み合わせ、ならびに3)同じ標的細胞上で同じおよび異なる表面抗原を対象とする非競合型抗体の複数の組み合わせ。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の一価抗体構築物は、進行性のHER2増幅型ヘレグリン陽性乳癌を有する患者の治療のために、Herceptin(商標)、TDM1、アフコシル化抗体、またはPerjetaから選択される治療法と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の一価抗体構築物は、食道末端部、胃食道(GE)接合部、および胃のHER2発現癌腫を有する患者に、Herceptin(商標)またはPerjetaと組み合わせて投与される。
【0236】
遺伝子療法:
具体的な実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物をコードする配列を含む核酸は、遺伝子療法として、タンパク質の異常な発現および/または活性と関連する疾患または障害を治療、阻害、または予防するために投与される。遺伝子療法とは、発現されたか、または発現可能な核酸を対象に投与することによって行われる治療法を指す。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらがコードしたタンパク質を生成し、これが治療効果を媒介する。当該技術分野で利用可能な遺伝子療法の方法のうちのいずれかを使用することができる。
【0237】
治療的/予防的投与および組成物
本明細書に記載の抗体構築物または医薬組成物の有効量を対象に投与することによる治療、阻害、および予防の方法が提供される。一実施形態において、抗体構築物は、実質的に精製される(例えば、その効果を制限するか望ましくない副作用をもたらす物質を実質的に含まない)。ある特定の実施形態において、対象は、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ等の動物を含むがこれらに限定されない動物であり、ある特定の実施形態では、哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0238】
種々の送達系、例えば、リポソームへのカプセル封入、マイクロ粒子、マイクロカプセル、化合物の発現、受容体媒介性エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu,J.Biol.Chem.262:4429−4432(1987)を参照されたい)、レトロウイルスもしくは他のベクターの一部として核酸の構築が可能な組み換え細胞が、既知であり、本明細書に記載の抗体構築物製剤を投与するために使用することができる。導入の方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。化合物または組成物は、任意の便宜的な経路、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜の裏層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜等)を通じた吸収によって投与することができ、また他の生物学的活性剤と一緒に投与してもよい。投与は、全身的または局所的であり得る。加えて、ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体構築物組成物を、脳室内および髄腔内注射を含む任意の好適な経路によって、中枢神経系に導入することが望ましく、脳室内注射は、例えば、オマヤレザーバー等のレザーバーに取り付けられた、脳室内カテーテルによって促進され得る。例えば、吸入器またはネブライザー、およびエアロゾル化剤を有する製剤の使用による肺内投与もまた利用され得る。
【0239】
具体的な実施形態において、本明細書に記載の抗体構築物または組成物を、治療が必要な場所に局所的に投与することが望ましく、これは、例えば、限定するものではなく、外科手術中の局所注入によって、局所適用、例えば、手術後の創傷包帯と併せて、注射によって、カテーテルを用いて、坐剤を用いて、または埋め込み装置を用いて、達成することができ、その埋め込み装置は、シアラスティック(sialastic)膜等の膜、または繊維を含む、多孔質、無孔質、またはゼラチン状材料でできている。好ましくは、本発明の抗体を含むタンパク質を投与する際、タンパク質が吸収されない材料を使用するように注意する必要がある。
【0240】
別の実施形態において、抗体構築物または組成物は、小胞、特にリポソーム中で送達され得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990),Treat et al.,in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353−365(1989);Lopez−Berestein,ibid.,pp.317−327を参照されたく、広くは前書を参照のこと)。
【0241】
さらに別の実施形態において、抗体構築物または組成物は、制御放出系において送達することができる。1つの実施形態において、ポンプが使用され得る(Langer(上記)、Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987)、Buchwald et al.,Surgery 88:507(1980)、Saudek et al.,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照されたい)。別の実施形態において、ポリマー材料が使用され得る(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974)、Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984)、Ranger and Peppas,J.,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照されたく、また、Levy et al.,Science 228:190(1985)、During et al.,Ann.Neurol.25:351(1989)、Howard et al.,J.Neurosurg.71:105(1989)も参照されたい)。さらに別の実施形態において、制御放出系は、治療標的、例えば、脳の近位で行うことができ、したがって、全身用量のごく一部のみを要する(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release(上記)vol.2,pp.115−138(1984)を参照されたい)。
【0242】
本明細書に記載の抗体構築物をコードする核酸を含む具体的な実施形態において、核酸は、それがコードするタンパク質の発現を促進するために、適切な核酸発現ベクターの一部としてそれを構築し、それが細胞内に入るようにそれを投与することによって、例えば、レトロウイルスベクターの使用によって(米国特許第4,980,286号を参照されたい)、または直接注射によって、またはマイクロ粒子の衝突を使用して(例えば、遺伝子銃、Biolistic,Dupont)、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクション剤でコーティングして、または核に侵入することが既知のホメオボックス様ペプチドとの結合でそれを投与することによって(例えば、Joliot et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:1864−1868(1991)を参照されたい)等によって、インビボで投与され得る。あるいは、核酸は、相同的組み換えによって、細胞内に導入され、発現のために宿主細胞のDNAに組み込まれ得る。
【0243】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の一本アームの一価抗体構築物は、結合標的エピトープが重複しない他の一本アームの一価または多価抗体との組み合わせとして、投与される。
【0244】
医薬組成物もまた、本明細書に提供される。このような組成物は、治療有効量の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む。具体的な実施形態において、「薬学的に許容される」とは、動物、およびより具体的にはヒトにおける使用について、連邦もしくは州政府によって承認されているか、または米国薬局方もしくは他の広く認識される薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療剤がそれとともに投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。このような薬学的担体は、ピーナツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等といった、石油、動物、植物、または合成起源のものを含む、水および油等の滅菌の液体であり得る。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合に、好ましい担体である。食塩溶液ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液もまた、特に注射可能溶液のための液体担体として、用いることができる。好適な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。組成物は、所望に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤もまた含有してもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続放出製剤等の形態をとり得る。組成物は、トリグリセリド等の従来的な結合剤および担体とともに、坐剤として製剤化されてもよい。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含み得る。好適な薬学的担体の例は、"Remington's Pharmaceutical Sciences"by E.W.Martinに記載されている。このような組成物は、患者への適切な投与のための形態をもたらすように、好適な量の担体とともに、好ましくは精製された形態で治療有効量の化合物を含有する。製剤は、投与方法に適したものでなければならない。
【0245】
ある特定の実施形態において、抗体構築物を含む組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合される医薬組成物として、日常的な手順に従って製剤化される。典型的に、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤、および注射部位の痛みを和らげるためのリグノカイン等の局所麻酔薬も含み得る。一般に、成分は、別々に、または単位剤形に一緒に混合されてのいずれかで、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたは小袋といった密封容器中の凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、供給される。組成物が注入によって投与される場合、これは、滅菌の医薬品グレードの水または食塩水を含有する注入ボトルによって分注され得る。組成物が注射によって投与される場合、成分を投与前に混合することができるように、注射用の滅菌水または食塩水のアンプルが提供され得る。
【0246】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、中性または塩形態として製剤化される。薬学的に許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来するものといった、アニオンにより形成されるもの、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来するものといった、カチオンにより形成されるものが含まれる。
【0247】
治療用タンパク質の異常な発現および/または活性と関連する疾患または障害の治療、阻害、および阻止に有効な本明細書に記載の組成物の量は、標準的な臨床技法によって決定することができる。加えて、インビトロアッセイを任意に用いて、最適な投薬量範囲の特定に役立ててもよい。製剤中に用いられる正確な用量は、投与の経路、および疾患または障害の重症度に左右されることになり、施術者の判断および各患者の状況に応じて決定されるべきである。有効用量は、インビトロまたは動物モデルの試験システムから導出された用量応答曲線から推定される。
【0248】
薬物分子との結合:
ある特定の実施形態においては、薬物分子と結合している本明細書に記載の一価抗体構築物を含む医薬組成物がある。ある特定の実施形態において、少なくとも1つの薬物分子は、治療薬である。ある特定の実施形態において、薬物分子は、毒素である。ある特定の実施形態において、薬物分子は、抗原類似体である。一実施形態において、薬物分子は、天然の生成物、その類似体、またはプロドラッグである。
【0249】
ある特定の実施形態において、薬物分子は、生体分子である。一実施形態において、薬物分子は、天然または合成の核酸である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの薬物分子は、DNA、PNA、および/またはRNAオリゴマーのうちの1つ以上である。
【0250】
治療的または予防的活性の実証:
本明細書に記載の抗体構築物または医薬組成物を、インビトロで試験し、次いで、ヒトにおける使用の前に、所望される治療的または予防的活性について、インビボで試験する。例えば、化合物または医薬組成物の治療的または予防的有用性を実証するためのインビトロアッセイには、細胞株または患者組織試料に対する化合物の効果が含まれる。細胞株および/または組織試料に対する化合物または組成物の効果は、ロゼット形成アッセイおよび細胞溶解アッセイを含むがこれらに限定されない、当業者に既知の技術を利用して判定することができる。本発明によると、特定の化合物の投与が適応されるかどうかを判定するために使用可能であるインビトロアッセイには、患者の組織試料を培養で成長させて、抗体構築物に暴露させるかまたはそれを投与し、組織試料に対するこのような抗体構築物の効果を観測する、インビトロ細胞培養アッセイが含まれる。
【0251】
例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解性切断、抗体分子または他の細胞リガンドへの結合等によって、翻訳の間または後に異なって修飾される抗体構築物が提供される。多数の化学修飾のいずれも、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH
4による特異的な化学切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在下での代謝合成等を含むがこれらに限定されない、既知の技術によって実行することができる。
【0252】
本明細書に包含されるさらなる翻訳後修飾には、例えば、N結合型またはO結合型炭水化物鎖、N末端もしくはC末端のプロセシング)、アミノ酸骨格への化学成分の付加、N結合型もしくはO結合型炭水化物鎖の化学修飾、ならびに原核生物宿主細胞発現の結果としてのN末端メチオニン残基の付加もしくは欠失が含まれる。抗体構築物は、タンパク質の検出および単離を可能にするために、酵素、蛍光、同位体、または親和性標識といった、検出可能な標識で修飾される。
【0253】
好適な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、βガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、好適な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジンビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリトリンが挙げられ、発光物質の例には、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ、ならびに好適な放射性物質の例には、ヨウ素、炭素、硫黄、トリチウム、インジウム、テクネチウム、タリウム、ガリウム、パラジウム、モリブデン、キセノン、フッ素が挙げられる。
【0254】
具体的な実施形態において、抗体構築物またはそれらのフラグメントまたは変異体は、放射性金属イオンと会合している大環状キレート剤に付着している。
【0255】
言及されるように、本明細書に記載の抗体構築物は、翻訳後プロセシング等の天然のプロセスによって、または当該技術分野でよく知られている化学修飾技術によってのいずれかで修飾される。同じ種類の修飾が、所与のポリペプチド内のいくつかの部位において同じまたは異なる程度に存在し得ることが理解されよう。本発明のポリペプチドは、例えば、ユビキチン化を受けて分枝状であってもよく、および分枝を伴うか、または伴わない環状であってもよい。環状、分枝状、および分枝環状ポリペプチドは、翻訳後の天然プロセスの結果であってもよく、または合成法によって作製され得る。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP−リボース化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリスチル化、酸化、ペグ化、タンパク分解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニン化等の転移RNA媒介性のタンパク質へのアミノ酸付加、およびユビキチン化が含まれる。(例えば、PROTEINS−−STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES,2nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993);POST−TRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,pgs.1−12(1983);Seifter et al.,Meth.Enzymol.182:626−646(1990);Rattan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.663:48−62(1992)を参照されたい)。
【0256】
ある特定の実施形態において、抗体構築物はまた、固体支持体に付着されてもよく、この固体支持体は、本発明のアルブミン融合タンパク質よって結合されるか、それに結合するか、またはそれと会合するポリペプチドの免疫アッセイまたは精製に特に有用である。このような固体支持体には、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0257】
また、ポリペプチドの可溶性、安定性、および循環時間の増加、または免疫原性の低下等のさらなる利点を提供し得る、本抗体構築物の化学修飾された誘導体もまた本明細書に提供される(米国特許第4,179,337号を参照されたい)。誘導体化のための化学的成分は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーから選択され得る。このタンパク質は、分子内の無作為な位置、または分子内の既定の位置で修飾されてもよく、また、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の付着された化学成分を含んでもよい。
【0258】
ポリマーは、任意の分子量であってもよく、分枝または非分枝であってもよい。ポリエチレングリコールに関して、好ましい分子量は、取り扱いおよび製造を容易にするため、約1kDa〜約100kDaである(「約」という用語は、ポリエチレングリコールの調製物中で、いくつかの分子が述べられた分子量よりいくらか大きいか、または小さい重量であることを示す)。他のサイズが、所望の治療プロファイル(例えば、所望の持続放出の持続期間、存在する場合生物活性に対する効果、取り扱いの容易さ、抗原性の程度または欠如、および治療用タンパク質または類似体に対するポリエチレングリコールの他の既知の効果)に応じて使用されてもよい。例えば、ポリエチレングリコールは、約200、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、10,500、11,000、11,500、12,000、12,500、13,000、13,500、14,000、14,500、15,000、105,500、16,000、16,500、17,000、17,500、18,000、18,500、19,000、19,500、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、75,000、80,000、85,000、90,000、95,000、または100,000kDaの平均分子量を有し得る。
【0259】
本明細書に記載の抗体構築物の存在または量は、当該技術分野で既知の免疫アッセイであるELISAを使用して判断され得る。本明細書に記載のヘテロ多量体を検出/定量化するために有用な1つのELISAプロトコルは、ELISAプレートを抗ヒト血清アルブミン抗体で被覆するステップと、そのプレートを遮断して非特異的結合を防止するステップと、ELISAプレートを洗浄するステップと、本明細書に記載のタンパク質を含有する溶液を(1以上の異なる濃度で)付加するステップと、(本明細書中に記載されるかまたはそうでなければ当該技術分野で既知のように)検出可能な標識に結合された二次抗−抗体構築物ポリペプチド特異的抗体を付加するステップと、二次抗体の存在を検出するステップと、を含む。
【0260】
ある特定の実施形態においては、本明細書に記載の一価抗体構築物およびアジュバントを含む、医薬組成物がある。ある特定の実施形態においては、一価抗体構築物と結合している薬物分子をさらに含む、本明細書に記載の医薬組成物がある。ある特定の実施形態において、薬物分子は、自己免疫性障害の治療のためのものである。いくつかの実施形態において、薬物分子は、癌の治療のためのものである。いくつかの実施形態において、薬物分子は、化学治療薬である。
【0261】
その方法を必要とする患者に有効量の本明細書に記載の医薬組成物を提供する段階を含む、癌を治療する方法が本明細書に提供される。1つの実施形態において、治療される癌は、乳癌である。別の実施形態において、治療される癌は乳癌であり、その乳癌の細胞は、高、中、または低密度でHER2タンパク質を発現する。HER2は受容体のEGFRファミリーに属し、乳癌の対象において過剰発現される傾向にある。HER2タンパク質はまた、遺伝子、EGFR2、CD340、ErbB2、およびp185の生成物ともされる。以下の表Aは、いくつかの代表的な乳癌細胞株におけるHER2の発現レベルを記載する(Subik et al.(2010)Breast Cancer:Basic Clinical Research:4;35−41;Prang et a.(2005)British Journal of Cancer Research:92;342−349)。表に示されるように、MCF−7およびMDA−MB−231細胞は低HER2発現細胞と考えられ、SKOV3細胞は中HER2発現細胞と考えられ、ならびにSKBR3細胞は高HER2発現細胞と考えられる。
【0263】
いくつかの実施形態においては、免疫系障害を治療する方法であり、本方法は、その方法を必要とする患者に有効量の本明細書に記載の医薬組成物を提供する段階を含む。ある特定の実施形態においては、腫瘍の成長を阻害する方法であり、本方法は、腫瘍を有効量の本明細書に記載の一価抗体構築物を含む組成物と接触させる段階を含む。腫瘍を有効量の本明細書に記載の一価抗体構築物を含む組成物と接触させる段階を含む、腫瘍を縮小させる方法が提供される。いくつかの実施形態においては、抗原分子の多量体形成を阻害する方法であり、本方法は、抗原を有効量の本明細書に記載の一価抗体構築物を含む組成物と接触させる段階を含む。抗原に結合させるのに十分な量の本明細書に記載の一価抗体構築物を含む組成物と接触させる段階を含む、抗原がその同族の結合パートナーと結合することを阻害する方法が本明細書に提供される。
【0264】
安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法がある特定の実施形態において提供され、本方法は、重鎖可変ドメインおよび第1のFcドメインポリペプチドを含む第1の重鎖ポリペプチドをコードする、第1のDNA配列;第2のFcドメインポリペプチドを含むその第2の重鎖ポリペプチドをコードする第2のDNA配列であって、第2の重鎖ポリペプチドが可変ドメインを欠いている、第2のDNA配列;ならびに軽鎖可変ドメインを含む軽鎖ポリペプチドをコードする、第3のDNA配列を用いて、その第1のDNA配列、その第2のDNA配列、およびその第3のDNA配列が、既定の比率で哺乳類細胞にトランスフェクトされるように少なくとも1つの安定した哺乳類細胞へトランスフェクトする段階と、その重鎖および軽鎖ポリペプチドがその少なくとも1つの安定した哺乳類細胞内で所望のグリコシル化一価非対称抗体として発現されるように少なくとも1つの哺乳類細胞内のその第1のDNA配列、その第2のDNA配列、およびその第3のDNA配列を翻訳する段階と、を含む。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法であり、本方法は、2つの細胞のそれぞれが異なる比率で重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドを発現するように、その第1のDNA配列、その第2のDNA配列、およびその第3のDNA配列を異なる既定の比率で少なくとも2つの異なる細胞へトランスフェクトする段階を含む。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法であり、本方法は、その第1、第2、および第3のDNA配列を含むマルチシストロン(multi−cistrionic)ベクターを少なくとも1つの哺乳類細胞へトランスフェクトする段階を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの哺乳類細胞は、VERO、HeLa、HEK、NS0、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、W138、BHK、COS−7、Caco−2、およびMDCK細胞、ならびにそれらのサブクラスおよび変異体から成る群から選択される。
【0265】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法であり、第1のDNA配列:第2のDNA配列:第3のDNA配列の既定の比率は、約1:1:1である。いくつかの実施形態において、第1のDNA配列:第2のDNA配列:第3のDNA配列のその既定の比率は、翻訳される第1の重鎖ポリペプチドの量が第2の重鎖ポリペプチドの量および軽鎖ポリペプチドの量にほぼ等しくなるようなものである。
【0266】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法であり、その少なくとも1つの安定した哺乳類細胞の発現生成物は、単量体重鎖もしくは軽鎖ポリペプチド、または他の抗体と比較して、より大きい割合の所望のグリコシル化一価抗体を含む。
【0267】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法であり、本方法は、所望のグリコシル化一価抗体を同定し、精製する段階を含む。いくつかの実施形態において、その同定は、液体クロマトグラフィーおよび質量分析法の1つまたは両方によるものである。
【0268】
重鎖可変ドメインおよび第1のFcドメインポリペプチドを含む第1の重鎖ポリペプチドをコードする、第1のDNA配列;第2のFcドメインポリペプチドを含む第2の重鎖ポリペプチドをコードする第2のDNA配列であって、第2の重鎖ポリペプチドが可変ドメインを欠いている、第2のDNA配列;ならびに軽鎖可変ドメインを含む軽鎖ポリペプチドをコードする、第3のDNA配列を用いて、その第1のDNA配列、その第2のDNA配列、およびその第3のDNA配列が、既定の比率で哺乳類細胞にトランスフェクトされるように少なくとも1つの安定した哺乳類細胞へトランスフェクトする段階と、その重鎖および軽鎖ポリペプチドがその少なくとも1つの安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体として発現されるように、少なくとも1つの哺乳類細胞内のその第1のDNA配列、その第2のDNA配列、およびその第3のDNA配列を翻訳する段階と、を含み、そのグリコシル化一価非対称抗体は、対応する野生型抗体と比較してより高いADCCを有する、改善されたADCCを持つ抗体構築物を生成する方法が本明細書に提供される。
【0269】
抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、二量体Fc領域と、を含む一価抗体構築物を標的細胞に提供する段階を含み、その一価抗体構築物は、2つの抗原結合領域を持つ対応する二価抗体構築物と比較して、その抗原を提示する標的細胞に対する結合密度およびBmaxの増加(最大結合)を示し、その一価抗体構築物は、対応する二価抗体構築物と比較してより良い治療効果を示し、ならびにその効果は、抗原の架橋、抗原二量体形成、抗原調節の阻止、または抗原活性化の阻止によって生じるものではない、少なくとも1つの標的細胞において抗体濃度を増加させる方法が本明細書に提供される。
【0270】
抗原に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、CH3ドメインを含む二量体Fcポリペプチド構築物と、を含む、単離された一価抗体構築物が本明細書に提供され、その一価抗体構築物は、2つの抗原結合領域を持つ対応する二価抗体構築物と比較して、その抗原を提示する標的細胞に対する結合密度およびBmaxの増加(最大結合)を示し、その一価抗体構築物は、対応する二価抗体構築物と比較してより良い治療効果を示し、ならびにその効果は、抗原の架橋、抗原二量体形成、抗原調節の阻止、または抗原活性化の阻止によって生じるものではない。
【0271】
HER2に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、CH3ドメインを含む二量体Fcポリペプチド構築物と、を含む、HER2に結合する単離された一価抗体構築物が本明細書に提供され、その抗体構築物は標的細胞によってインターナライズされ、その構築物はHER2に二価的に結合する対応する二価抗体構築物と比較して標的細胞上で提示されるHER2に対する結合密度およびBmaxの増加(最大結合)を示し、その構築物はその対応する二価HER2結合抗体構築物と比較してより高いADCC、より高いADCP、およびより高いCDCのうちの少なくとも1つを示す。
【0272】
重鎖可変ドメインおよび第1のFcドメインポリペプチドを含む第1の重鎖ポリペプチドをコードする、第1のDNA配列;第2のFcドメインポリペプチドを含むその第2の重鎖ポリペプチドをコードする第2のDNA配列であって、第2の重鎖ポリペプチドが可変ドメインを欠いている、第2のDNA配列;ならびに軽鎖可変ドメインを含む軽鎖ポリペプチドをコードする、第3のDNA配列を用いて、その第1のDNA配列、その第2のDNA配列、およびその第3のDNA配列が、既定の比率で哺乳類細胞にトランスフェクトされるように少なくとも1つの安定した哺乳類細胞へトランスフェクトする段階と、その重鎖および軽鎖ポリペプチドがその少なくとも1つの安定した哺乳類細胞内で所望のグリコシル化一価非対称抗体として発現されるように少なくとも1つの哺乳類細胞内のその第1のDNA配列、その第2のDNA配列、およびその第3のDNA配列を翻訳する段階と、を含む、安定した哺乳類細胞内でグリコシル化一価抗体構築物を生成する方法が本明細書に提供される。
【0273】
個体において対象のバイオマーカーの存在を検出するためのキットが提供され、そのキットは、(a)本明細書に記載の単離された一価抗体構築物と、(b)使用説明書とを含む。
【0274】
また、本明細書に記載の一価抗体構築物をコードし、発現するために、本明細書に記載の核酸分子を含有するように修飾される形質転換体が提供される。
【0275】
低HER2発現を有する標的細胞上のHER2に結合する単離された一価抗体構築物がある特定の実施形態において提供され、本一価抗体構築物は、HER2に一価的に結合する抗原結合ポリペプチド構築物と、それぞれがCH3ドメインを含む2つの単量体Fcポリペプチドを含み、1つのその単量体Fcポリペプチドが抗原結合ポリペプチド構築物からの少なくとも1つのポリペプチドに融合する、二量体Fcポリペプチド構築物と、を含み、その抗体構築物は、抗増殖性であり、かつ標的細胞によってインターナライズされ、その構築物は、HER2に結合する対応する二価抗体構築物と比較して標的細胞上で提示されるHER2に対して結合密度およびBmaxの増加(最大結合)を示し、その構築物は、その対応する二価HER2結合抗体構築物と比較してより高いADCC、より高いADCP、およびより高いCDCのうちの少なくとも1つを示す。ある特定の実施形態において、低HER2発現を有する標的細胞は、癌細胞である。いくつかの実施形態において、低HER2発現を有する標的細胞は、乳癌細胞である。
【0276】
抗原が本明細書に提供される一価抗体構築物に結合することによる、抗原細胞外ドメインのタンパク質分解性切断を防ぐ方法もまた提供される。
【0277】
種々の刊行物が本明細書に引用され、それらの開示は参照することによりその全体が組み込まれる。
【実施例】
【0279】
以下の実施例は、本発明の実施を例示するために提供される。これらは、本発明の全範囲を制限することも、定義することも意図するものではない。
【0280】
実施例1:構築物の調製および発現
以下の一価抗HER2抗体および対照を調製し、試験した。
1.OA1−Fab−Her2、一価抗HER2抗体であり、Her2結合ドメインは鎖AのFabであり、Fc領域は、変異T350V_L351Y_F405A_Y407Vを鎖Aに有し、T350V_T366L_K392L_T394Wを鎖Bに有するヘテロ二量体であり、抗原結合ドメインのエピトープは、Her2のドメイン4である。
2.OA2−Fab−Her2、一価抗HER2抗体であり、Her2結合ドメインは鎖
AのFabであり、Fc領域は、変異T350V_L351Y_F405A_Y407Vを鎖
Bに有し、T350V_T366L_K392L_T394Wを鎖
Aに有するヘテロ二量体であり、抗原結合ドメインのエピトープは、Her2のドメイン4である。
3.OA3−scFv−Her2、一価抗HER2抗体であり、Her2結合ドメインはscFvであり、Fc領域は、変異L351Y_S400E_F405A_Y407Vを鎖Aに有し、T366I_N390R_K392M_T394Wを鎖Bに有するヘテロ二量体であり、抗原結合ドメインのエピトープは、Her2のドメイン4である。
4.FSA−scFv−Her2、二価抗Her2抗体であり、いずれのHer2結合ドメインもscFv形式であり、Fc領域は、変異L351Y_S400E_F405A_Y407Vを鎖Aに有し、T366I_N390R_K392M_T394Wを鎖Bに有するヘテロ二量体であり、抗原結合ドメインのエピトープは、Her2のドメイン4である。
5.FSA−Fab−Her2、二価抗Her2抗体であり、いずれのHer2結合ドメインもFab形式であり、Fc領域は、変異T350V_L351Y_F405A_Y407Vを鎖Aに有し、T350V_T366L_K392L_T394Wを鎖Bに有するヘテロ二量体であり、抗原結合ドメインのエピトープは、Her2のドメイン4である。
6.wt FSA Hcptn、対照としてCHOにおいて内部生成した野生型Herceptin。抗原結合ドメインのエピトープは、Her2のドメイン4である。
6A.市販のHerceptin、対照としてRocheから購入した野生型Herceptin。抗原結合ドメインのエピトープは、Her2のドメイン4である。
7.OA4−scFv−BID2、一価抗HER2抗体であり、Her2結合ドメインは鎖AのscFvであり、Fc領域は、変異L351Y_F405A_Y407Vを鎖Aに有し、T366L_K392M_T394Wを鎖Bに有するヘテロ二量体である。抗原結合ドメインのエピトープは、Her2のドメイン1である。
8.FSA−scFv−BID2、二価抗Her2抗体であり、いずれのHer2結合ドメインもscFv形式であり、Fc領域はWTである。抗原結合ドメインのエピトープは、Her2のドメイン1である。
Rocheから購入した市販のHerceptinを除いて、CHOにおいて発現され、実施例1および実施例16に記載されるすべての抗体は、フコシル化抗体である。市販のHerceptin抗体は、CHOにより生成された抗体と比べて、より高い割合のアフコシル化を含有する。
【0281】
これらの抗体および対照を、以下のようにクローニングし、発現させた。抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を、ヒト/哺乳動物での発現のために最適化されたコドンを用いた遺伝子合成を介して構築した。Fab配列は、既知のHer2/neu結合Ab(Carter P.et al.(1992)Humanization of an anti P185 Her2 antibody for human cancer therapy.Proc Natl Acad Sci 89,4285.)から生成し、Fcは、IgG1アイソタイプであった。scFv配列、FSA−scFv−Her2およびOA3−scFv−Her2は、既知のHer2/neu結合Ab(Findley et al.(1990)Characterization of murine monoclonal antibodies reactive to either the human epidermal growth factor receptor or HER2/neu gene product.Cancer Res.,50:1550)から生成した。scFv配列、FSA−scFv−BID2およびOA4−scFv−BID2は、既知のHer2/neu結合Ab(Schier R.et al.(1995)In vitro and in vivo characterization of a human anti−c−erbB−2 single−chain Fv isolated from a filamentous phage antibody library.Immunotechnology 1,73)から生成した。
【0282】
最終的な遺伝子生成物を、哺乳動物発現ベクターpTT5(NRC−BRI、Canada)にサブクローニングし、CHO細胞において発現させた(Durocher,Y.,Perret,S.&Kamen,A.High−level and high−throughput recombinant protein production by transient transfection of suspension−growing CHO cells.Nucleic acids research 30,E9(2002))。
【0283】
対数成長期(1.5〜2百万細胞/mL)に、1mg/mLの25kDaのポリエチレンイミン水溶液(PEI、Polysciences)をPEI:DNA比2.5:1で、CHO細胞にトランスフェクトした。(Raymond C.et al.A simplified polyethylenimine−mediated transfection process for large−scale and high−throughput applications.Methods.55(1):44−51(2011))。ヘテロ二量体を形成するのに最適な濃度範囲を判定するために、DNAを、ヘテロ二量体の形成を可能にする重鎖A(HC−A)、軽鎖(LC)、および重鎖Bの最適なDNA比(例えば、HC−A/HC−B/LC比=25:25:50%(OAA)、50:0:50%(WT hcptn)、25:25:50(FSA−Fab−Her2)、50:50:0(FSA−scFv−BID2)、および50:50:0(OA4−scFv−BID2)で、トランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を5〜6日後に採取し、培養培地を4000rpmでの遠心分離の後に収集し、0.45μmのフィルタを用いて浄化した。
【0284】
実施例2:抗体の精製および分析
上述の一価抗HER2抗体および対照抗体を、次のように精製した。浄化した培養培地を、MabSelect SuRe(GE Healthcare)プロテインAカラムに充填し、pH7.2で、10カラム体積のPBS緩衝液で洗浄した。抗体を、pH3.6で10カラム体積のクエン酸緩衝液で溶出し、抗体を含有するプールした画分を、pH11でTRISにより中和した。
図8Aは、プロテインA精製後のwt FSA Hcptn、FSA−Fab−Her2、OA1−Fab−Her2、およびOA2−Fab−Her2のSDS−PAGE分析の結果を示す。「FSA」と記したレーンには、フルサイズ抗体(2つのFabアームおよびFc領域)を充填した。「無関係」と記したレーンには、無関係のタンパク質試料を充填した。抗Her2 OAAが発現し、抗Her2 FSAのものに相当する量および純度まで精製する。
【0285】
プロテインA抗体の溶出液を、ゲル濾過(SEC)によってさらに精製した。ゲル濾過については、3.5mgの抗体混合物を1.5mLまで濃縮し、1mL/分の流量で、AKTA Express FPLCを介してSephadex 200 HiLoad 16/600 200pgカラム(GE Healthcare)に充填した。pH7.4のPBS緩衝液を、1mL/分の流量で使用した。精製された抗体に対応する画分を収集し、約1mg/mLまで濃縮し、−80℃で保管した。精製されたタンパク質を、実施例8に記載のようにLCMSによって分析した。
【0286】
プロテインAクロマトグラフィーおよびSECによって精製された抗体を、次の実施例に記載されるアッセイに使用した。
【0287】
実施例3:一価抗HER2抗体(scFv)は、SKOV3細胞において、二価抗HER2抗体と比較して増加した濃度依存性結合密度(B
max)を示す
例示的な一価抗HER2抗体(OA3−scFv−Her2)の結合を、以下に記載されるように、Her2を発現する細胞株SKOV3において、二価抗Her2抗体(FSA−scFv−Her2)のものと比較した。SKOV細胞株は、2+レベルでHer2受容体を発現し、中程度の細胞当たりの密度で受容体を発現すると考えられる。この実施例で試験した一価抗体は、scFvである抗体結合領域を含む。
【0288】
SKOV3細胞の表面への試験抗体の結合を、フローサイトメトリーによって判定した。細胞をPBSで洗浄し、1×10
5細胞/100μlでDMEM中に再懸濁させた。100μlの細胞懸濁液を各微小遠心分離管に添加した後、10μl/管の抗体変異体を添加した。管を、4℃で2時間、ローテーターでインキュベートした。微小遠心管を、室温で2分間、2000RPMで遠心分離し、細胞ペレットを500μlの培地で洗浄した。各細胞ペレットを、培地中で2μg/試料に希釈した100μlの蛍光色素標識した二次抗体に再懸濁させた。次いで、試料を、4℃で1時間、ローテーターでインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を、2000RPMで2分間遠心分離し、培地中で洗浄した。細胞を500μlの培地中に再懸濁させ、5μlのヨウ化プロピジウム(PI)を含有する管に濾過し、製造業者の説明に従ってBD LSRIIフローサイトメーターで分析した。
【0289】
結果を
図3AおよびBに示し、抗Her2 OA抗体が、抗Her2 FSA(フルサイズ抗体)と比較してより高い結合密度およびB
maxで、濃度依存方式でSKOV3細胞に結合することを示す。したがって、二価抗体と同じ濃度では、より多くのOA抗体分子がHer2抗原を提示する細胞に結合し、それを装飾する。この実施例で試験したOA抗Her2抗体は、scFv抗原結合ドメインを含み、二価scFv抗原結合ドメインを有するFSAと比較してより高いB
maxで結合する。
【0290】
実施例4:一価抗HER2抗体(Fab)は、細胞上のHer2密度に依存しない二価抗体と比較してより高いB
maxを示す
例示的な一価抗HER2抗体(OA1−Fab−Her2およびOA2−Fab−Her2)の結合を、以下に記載されるように、3つのHer2発現細胞株、MDA−MB−231、SKOV3、およびSKBR3において、二価抗Her2抗体(FSA−Fab−Her2)および野生型Herceptin(商標)(wt FSA Hcptn)のものと比較した。MDA−MB−231細胞株は、低密度(0−1+)でHer2を発現すると考えられ、SKOV3細胞株は、中密度(2+)でHer2を発現すると考えられ、SKBR3細胞株は、高密度(3+)でHer2を発現すると考えられる(Subik et al.(2010)Breast Cancer:Basic Clinical Research:4;35−41およびPrang et a.(2005)British Journal of Cancer Research:92;342−349を参照されたい)。この実施例で試験した一価抗体は、Fabである抗体結合領域を含む。
【0291】
SKBR3細胞への試験抗体の結合を、実施例2に記載のように、フローサイトメトリーによって判定した。
【0292】
結果を
図4A〜Cに示し、K
DおよびB
maxの値を以下の表に示す。
【0293】
(表1)MDA−MB−231細胞における結合データ
【0294】
(表2)SKOV3細胞における結合データ
【0295】
(表3)SKBR3細胞における結合データ
【0296】
(表4)結合における変化倍率−FSA−Fab−Her2対OA1−Fab−Her2
【0297】
表4は、1+、2+、および3+のHer2受容体密度を有する細胞株に対する飽和状態での結合について、FSA−Fab−Her2とOA1−Fab−Her2との間のK
DおよびB
maxの変化倍率を要約する。OA1−Fab−Her2は、試験したすべての細胞株にわたって、FSA−Fab−Her2と対比して、B
maxに一貫したおおよそ1.4倍の増加を有し、K
Dに3倍の増加を有した。
【0298】
図4は、一価抗HER2抗体が、二価抗体結合が飽和となる濃度において、より高い結合密度およびB
maxを有し、OA結合密度の増加が細胞上のHer2の密度に依存しないことを示す。抗Her2 OAA(一本アーム抗体)は、低(MDA−MB−231)、中(SKOV3)、および高(SKBr3)Her2密度を示す細胞において、抗Her2 FSAと比較してより高いBmaxを有する。
【0299】
Fab抗原結合ドメインを有する抗Her2 OAAは、二価Fab抗原結合ドメインを有するFSAと比較してより高いBmaxで結合する。
【0300】
実施例5:一価抗HER2抗体は、二価抗HER2抗体と比較して増加したADCCを示す
wt FSA HcptnおよびFSA−Fab−Her2と比較した、ADCCを媒介する例示的な一価抗HER2抗体(OA1−Fab−Her2)の能力を、SKBR3細胞において次のように判定した。
【0301】
概要:標的細胞を、試験抗体(45μg/mLから10倍下降濃度)で30分間予めインキュベートした後、エフェクター細胞を、5:1のエフェクター/標的細胞比で添加し、37℃/5%CO
2インキュベータにおいて、さらに6時間インキュベーションを継続した。試料を、45ug/mlから10倍下降の8つの濃度で試験し、一方で内部対照Herceptin(wt FSA Hcptn)は、10μg/mlから10倍下降で滴定した。LDH放出を、LDHアッセイキットを用いて測定した。
【0302】
用量応答研究を、事前に最適化したエフェクター/標的(E/T)比(5:1)で、種々の濃度の試料を用いて行った。半最大有効濃度(EC
50)値を、GraphPad PrismによるSigmoidal用量応答非線形回帰適合を用いて分析した。
【0303】
細胞を、37℃/5%CO
2でマッコイ5A完全培地中に維持し、ATCCからのプロトコルに従って、10%FBSを補充した好適な培地で定期的に継代培養した。P10よりも少ない継代数の細胞を、このアッセイに使用した。試料を、アッセイで使用する前に、1%FBSおよび1%Pen/strepを補充したフェノールレッド不含MEM培地で0.3〜300nMの濃度に希釈した。
【0304】
ADCCアッセイ
SKBR3標的細胞(ATCC、カタログ番号HTB−30)を、800rpmで3分間の遠心分離によって採取した。細胞をアッセイ培地で一度洗浄し、遠心分離を行い、ペレットより上の培地を完全に除去した。細胞を、アッセイ培地で穏やかに懸濁させて、単一細胞溶液を作製した。SKBR3細胞の数を、4×細胞ストック(50μlのアッセイ培地中10,000細胞)に調節した。試験抗体を、次いで、上に記載された所望の濃度まで希釈した。
【0305】
SKBR3標的細胞を、次のようにアッセイプレートに播種した。50μlの4×標的細胞ストックおよび50μlの4×試料希釈剤を、96ウェルのアッセイプレートのウェルに添加し、プレートを、室温で30分間細胞培養インキュベータにおいてインキュベートした。エフェクター細胞(NK92/FcRγ3a(158V/V)、100μl、E/T=5:1、すなわち、1ウェル当たり50,000エフェクター細胞)を添加して反応を開始し、交差振盪によって穏やかに混合した。プレートを、インキュベータにおいて37℃/5%CO2で6時間インキュベートした。
【0306】
Triton X−100を、エフェクター細胞を有さない細胞対照および抗体に1%の最終濃度で添加して、標的細胞を分解し、これらの対照は、最大溶解対照として機能した。ADCCアッセイ緩衝液(98%フェノールレッド不含MEM培地、1%Pen/Strep、および1%FBS)を、エフェクター細胞を有さない細胞対照および抗体に添加し、これは、最小LDH放出対照として機能した。抗体の存在なしでエフェクター細胞とともにインキュベートした標的細胞は、両方の細胞を一緒にインキュベートした場合、非特異的LDH放出のバックグラウンド対照として設定した。細胞生存率を、LDHキット(Roche、カタログ番号11644793001)で分析した。吸光度データを、Flexstation 3においてOD492nmおよびOD650nmで読み取った。
【0307】
データ分析
細胞溶解のパーセンテージを、以下の式に従って計算した:
細胞溶解の割合(%)=100*(実験データ−(E+T))/(最大放出−最小放出)。データは、Graphpad(v4.0)によって提示し、分析した。
【0308】
用量応答曲線を
図5に示し、試験した抗体のEC
50および最大溶解度を以下の表5に示す。
【0309】
(表5)
【0310】
結果は、一価非対称抗Her2抗体OA1−Fab−Her2が、濃度依存性溶解および二価抗体対照と比較してより高い最大溶解度を示すことを表す。一価非対称抗Her2抗体OA1−Fab−Her2は、二価抗体対照(FSA)と比較してより高い最大NK細胞媒介性の標的細胞溶解度(%)を示す。
【0311】
実施例6:一価抗HER2抗体は、二価抗HER2抗体と比較して増加したCDCを示す
二価抗体と比較した、SKBR3細胞のCDCを媒介する一価抗HER2抗体の能力を、次のように判定した。
【0312】
SKBR−3細胞を、T150細胞培養フラスコにおいて、10%ウシ胎仔血清を含む25mLのDMEM/F−12中に2.5×106生細胞で播種した。細胞を、37℃および5%CO2でのインキュベーションによって予め培養した。
【0313】
5日間のSKBR3の予め培養した後、トリプシン処理し、細胞を採取した。細胞懸濁液を分離フィルタ上ですすぎ、アッセイ結果を歪める可能性のある細胞集団を回避した。細胞を、1mL当たり1×10
6生細胞でT25懸濁細胞培養フラスコに播種した。抗CIPS(補体阻害因子)抗体(例えば、ラット抗CD59およびマウス抗CD55)を、5×10
6の生細胞当たり10μgの抗体で細胞懸濁液に添加した。細胞懸濁液を、45分間、5%CO2で抗CIP抗体とともにインキュベートした。
【0314】
試験抗Her2抗体の希釈物を調製し、白色の発光96ウェルプレートに添加した。プレートには、全細胞溶解のための対照と自然発生溶解のための対照とが含まれた。
【0315】
SKBR3細胞を懸濁フラスコから採取し、細胞密度および生存率を判定した。細胞懸濁液を、4.0×10
5生細胞/mLの濃度で生成した。この懸濁液50μLを、必要に応じて白色の発光96ウェルプレートのウェルに播種した。プレートを、37℃および5%CO2で30分間インキュベートした。10μLの血清をすべてのウェルに添加し、プレートを37℃および5%CO2で3時間半インキュベートした。
【0316】
全細胞溶解を、次のように誘発した。CytoTox−Gloキット(Promega)を使用して、2mLのアッセイ緩衝液を33.0μLのジギトニンと混合した。この溶液10μLを、全細胞溶解対照の各ウェルに添加した。プレートを、37℃および5%CO2で30分間インキュベートした。
【0317】
読み出しおよび分析を、次のように行った。凍結乾燥させた基質を、CytoTox Gloキットの説明書(Promega)に従って5mLのアッセイ緩衝液で再構築した。この溶液50μLを、プレートの72ウェルすべてに添加した。プレートを室温で15分間インキュベートし、発光強度をTECAN Infinite F200プレートリーダーを使用して判定した。
【0318】
特異的細胞溶解を次のように計算した:
特異的細胞溶解度[%]=[MFI(試料)−MFI(自然発生)]/[MFI(全)−MFI(自然発生)]×100。
【0319】
結果を
図6A〜Cに示し、EC
50、R2、および最大溶解度を以下の表6に示す。
【0320】
(表6)
【0321】
これらの結果は、試験した一価抗体が、同じ試験濃度において、二価抗体と比較して増加した濃度依存性およびより高いCDC効果を示すことを表す。抗Her2 OAAの投与は、抗Her2 FSAと比較して、標的細胞に対するより高い補体依存性細胞傷害性をもたらす。
【0322】
実施例7:一価抗HER2抗体は、二価抗HER2抗体と比較して増加したADCPを示す
二価抗体と比較した、SKBR3細胞のADCPを媒介する一価抗HER2抗体の能力を、次のように判定した。
【0323】
ADCPプロトコル
概要:このプロトコルは、抗体の連続希釈物とともに事前にインキュベートした、PKH26で標識化した標的細胞で共培養した、インビトロ分化マクロファージを使用した。24時間インキュベートした後、マクロファージをAPC(アロフィコシアニン)結合型抗CD45および/またはCD11b抗体で染色した。続いて、標的細胞の食作用をフローサイトメトリーによって分析した。
【0324】
本方法は、次のように実行した。PBMCを、勾配密度の遠心分離によって健常ヒトドナーの白血球分離材料から調製した。CD14陽性細胞を、磁気ビーズを使用して分離し、細胞培養培地中に2×10
6の生細胞/mLで播種した。マクロファージの分化を、500U/mLの顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)の添加によって誘発した。細胞は合計7日間培養し、GM−CSFは3日目に添加した。
【0325】
細胞のマーカー発現を、抗CD45、抗CD11b、抗CD14、および抗CD16抗体を用いてフローサイトメトリー分析によって調べた。
【0326】
使用した標的細胞株はSKBR3であった。HER−2の存在を、Herceptin(商標)(Roche)およびFITC結合型抗ヒトIgG二次抗体を用いてフローサイトメトリーにより確認した。標的細胞をPKH26(Sigma−Aldrich)で染色した。標的細胞を、試験抗Her2抗体の1:6希釈物によりオプソニン化し(60分間)、1:1の比率でマクロファージとともに22時間インキュベートした。
【0327】
単球を、APC結合型抗CD45および抗CD11b抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。CD45陽性細胞による食作用を、PKH26蛍光強度によって判定した。
【0328】
プレート当たりの対照には次のものが含まれた(二連で):PKH26染色SK−BR−3細胞のみの標的細胞対照、単球のみのエフェクター細胞対照、ならびに非特異的IgG1抗体によるエフェクターおよび標的細胞対照。(プレート特異的バックグラウンド除去=非特異的抗体とともにインキュベートしたエフェクターおよび標的細胞対照)。
【0329】
抗体依存性食作用のパーセンテージを、1)バックグラウンド除去した標的細胞対照の平均蛍光強度を100%に設定すること、ならびに2)エフェクターおよび標的細胞アイソタイプ対照の平均蛍光強度を0%に設定することによって、判定した。
【0330】
次の等式を、抗体依存性食作用のパーセンテージの計算に使用した。
BSMFI=バックグラウンド除去した平均蛍光強度
【0331】
この実験の結果を
図7A〜Cに示し、これは、試験した一価抗HER2抗体が二価抗Her2抗体と比較して増加したADCPを示したことを示す。
図5は、(A)ドナー1の代表的なADCP(91% CD16+細胞)、(B)ドナー1の研究2からの代表的なADCPデータ(45% CD16+細胞)、(C)CD16+細胞/ドナーの割合に基づいて、OA1−Fab−Her2およびOA2−Fab−Her2の変化倍率をWT−FSA Hcptnに対して比較した全データプロット(研究1および2の全ドナー)を示す。抗Her2 OAAの投与は、エフェクター細胞としてインビトロで分化させたマクロファージのより高い割合の抗体依存性細胞食作用(SKBr3標的細胞)を媒介し、ADCP効果もまた、エフェクター:標的細胞の割合が関係し、
図7Cにおいて、より多いエフェクターマクロファージ数ではより高い効果が観測される。
【0332】
表7は、
図7Aのプロットから得られたデータを提供する。
【0333】
(表7)ドナー1および2の平均(ドナー1は91%、ドナー2は93%のCD16+)
【0334】
表8および9は、
図7Bのプロットから得られたデータを提供する
【0335】
(表8)ドナー1(43% CD16+濃縮)
【0336】
(表9)ドナー2(14% CD16+濃縮)
【0337】
実施例8:ヘテロ二量体Fc領域を有する一価抗HER2抗体の精製および収率
一価のOA1−Fab−Her2およびOA2−Fab−Her2の精製および収率を、実施例2に記載のように、プロテインAおよびSEC精製の後にLCMSによって試験した。
【0338】
ヘテロ二量体純度のLCMS分析
例示的な一価抗HER2抗体の純度を、標準的条件下でLCMSを使用して判定した。抗体を、LC−MSに充填する前にPNGasFで脱グリコシル化した。液体クロマトグラフィーは、次の条件下においてAgilent 1100 Series HPLCで行った。
流量:分離ポストカラムでの1mL/分〜MSでの100uL/分
溶媒:A=ddH
2O中0.1%ギ酸、B=65%アセトニトリル、25%THF、9.9%ddH
2O、0.1%ギ酸
カラム:2.1×30mm PorosR2
カラム温度:80℃、溶媒も事前に加熱
勾配:20%B(0〜3分)、20〜90%B(3〜6分)、90〜20%B(6〜7分)、20%B(7〜9分)
【0339】
質量分析法(MS)を、続いて、次の条件下においてLTQ−Orbitrap XL質量分析計で実行した。
イオン化の方法:イオンマックスエレクトロスプレー
較正および調整方法:CsIの2mg/mL溶液を、10μL/分の流量で注入する。Orbitrapを、次いで、Automatic Tune機能を使用してm/z 2211で調整する(観測される全体的なCsIイオン範囲:1690〜2800)。
コーン電圧:40V
チューブレンズ:115V
FT分解能:7,500
スキャン範囲m/z400〜4000
スキャン遅延:1.5分
【0340】
データの分子量プロファイルを、ThermoのPromassデコンボリューションソフトウェアを用いて生成した。
【0341】
LC−MS結果を
図8B〜Dに示し、
図8Bは、OA1−Fab−Her2のLCMS分析を示し、
図8Cは、OA2−Fab−Her2のLCMS分析を示し、
図8Dは、約0.8%の2本の軽鎖+1本の短い重鎖(72,898Da)、約0.7%の短い重鎖単独(25,907Da)で検出された混入物質を示すOA2−Fab−Her2のLCMSスペクトルの拡大表示である。
図8Bに関して、一本アームのヘテロ二量体の計算されたMWは98,653Daであり(OA1−Fab−Her2またはOA2−Fab−Her2)、一本アームのホモ二量体の計算されたMWは52,159Daであり(1つの重鎖のみ)、全長鎖のホモ二量体の計算されたMWは145,147Daである(2対のフルサイズ重鎖、A/A(OA1−Fab−Her2の場合)またはB/B(OA2−Fab−Her2の場合)。
【0342】
図8Cに関して、一本アームのヘテロ二量体の計算されたMWは98,653Daであり、一本アームのホモ二量体の計算されたMWは51,815Daであり、全長鎖ホモ二量体の計算されたMWは145,492Daであり、一本の短いアームおよび2本の軽鎖の計算されたMWは72,898Daであり、短い重鎖単独の計算されたMWは25,907Daである。
【0343】
要約すると、
図8B〜Cは、LCMS分析によって判定される、プロテインAおよびサイズ排除クロマトグラフィー後の純度が95%を上回る、精製された一価抗HER2抗体の収率を示す。OA1−Fab−Her2の収率は、LCMS分析によって判定すると、プロテインAおよびサイズ排除クロマトグラフィーの後、ヘテロ二量体100%であった。OA2−Fab−Her2の収率は、98.5%を上回るヘテロ二量体であり、2本の軽鎖および1本の短い重鎖が0.8%、ならびに短い重鎖種単独が0.7%であった。
【0344】
(表10)OA1−Fab−Her2の精製データの要約
【0345】
実施例9:一価抗HER2抗体は、インターナライズされ、標的細胞の成長を阻害する
SKBR3細胞によってインターナライズされる一価抗HER2抗体の能力を、次のように試験した。
【0346】
SKBR3細胞を、2000〜4000細胞/ウェルで、96ウェルプレートにDMEM中100μl/ウェルで蒔いた。プレートを37℃で一晩インキュベートした。
【0347】
細胞傷害性研究/成長阻害アッセイ
試験抗体を培地に希釈し、10μl/ウェルで三連に細胞に添加した。プレートを37℃で3日間インキュベートした。細胞生存率を、alamarBlue(商標)(BIOSOURCE #DAL1100)を用いて測定した。10μl/のalamarBlue(商標)を、ウェル毎に添加し、プレートを37℃で2時間インキュベートした。吸光度を530/580nmで読み取った。
【0348】
インターナリゼーション研究
抗ヒトサポリン結合型二次抗体(Fab−Zapヒト、カタログ番号IT−51)を、製造業者のプロトコル(Advanced Targeting Systems,San Diego,CA)に従って細胞に添加する前に当モル濃度で一次ヒト抗体とともにインキュベートした。細胞培養上清を除去することなく、25μlを1時間で添加した。プレートを水道水で4回洗浄し、室温で空気乾燥させた。100μlの0.057%(wt/vol)SRB(スルホローダミンB)を、30分間各ウェルに添加した。プレートを1%(vol/vol)酢酸で4回迅速にすすぎ、室温で空気乾燥させた。100μlの10mM Tris塩基溶液(pH10.5)を添加し、プレートを5分間振盪させた。ODを、マイクロプレートリーダーで510nmにおいて測定した。
【0349】
図9AおよびBは、インターナリゼーション実験の結果を示す。
図9aは、試験した抗体のインターナリゼーションの割合を示し、一方で
図9bは、対照と比べた効果の割合としてプロットしたデータを示す。このデータは、試験した一価抗HER2抗体が、標的細胞によってインターナライズされることを示す。抗Her2 OAAおよび抗Her2 FSAは、10nMで60%に等しいインターナリゼーションの割合(%)を有する。
【0350】
表11は、データの要約を示す。
【0351】
(表11)インターナリゼーションデータ
【0352】
図10は、細胞成長アッセイの結果を示す。1nMで45%の抗Her2 FSAの最大成長阻害と比較して、一価抗HER2抗体は30nMで35%の(SKBR3標的細胞の)最大成長阻害を示す。表12はデータの要約を提供する。
【0353】
(表12)
【0354】
(a)実施例10:一価抗HER2抗体は、等しいK
DでFcRnに結合する
FcRnに結合する一価抗HER2抗体の能力を、次のようにSPRによって試験した。
【0355】
FcRnは、約3000RUまで、標準的なNHS/EDC結合を介してBioRad GLMチップに固定化した。抗体変異体を、50ul/分の流量で120秒間注入し、300秒間解離させた。100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM、1.23nMの濃度系列、および二重参照用のブランク緩衝液。センサグラムを、Proteon Managerにおいて平衡適合モデルを用いて分析した。
【0356】
結果を
図11A(wt FSA Hcptn)、9B(FSA−Fab−Her2)、および11C(OA1−Fab−Her2)に示す。これらの図は、一価抗HER2抗体および二価抗Her2抗体が、同等のK
DでFcRnに結合することを示す。結果の要約を、以下の表13に見出すことができる。
【0357】
(表13)
【0358】
実施例11:一価抗HER2抗体(scFv)は、SKOV3細胞において、二価抗HER2抗体と比較して増加した濃度依存性結合密度(B
max)を示す
別の例示的な一価抗HER2抗体(OA4−scFv−BID2)の結合を、以下に記載のように、対応する二価抗Her2抗体(FSA−scFv−BID2)のもの、およびHer2を発現する細胞株であるSKOV3における他の一価抗HER2抗体のものと比較した。他の箇所に記載されるように、SKOV細胞株は、2+レベルでHer2受容体を発現し、これは、中程度の細胞当たりの密度であると考えられる。結合アッセイを、実施例3に記載のように実行した。
【0359】
結果を
図12に示し、表14および15に要約する。結果は、一価抗HER2抗体OA4−scFv−BID2が、二価FSA−scFv−BID2と比較してより高いB
maxを有すること、およびOA1−Fab−Her2が、当モル濃度でOA4−scFv−BID2と対比してより高いBmaxを有することを示す。
【0360】
(表14)試験した抗体の結合特性の要約
【0361】
(表15)試験した抗体の結合における変化倍率
【0362】
実施例12:一価抗HER2抗体は、トリプルネガティブおよびHer2 1+の細胞株において、増加したADCCを示す
wt FSA HcptnおよびFSA−Fab−Her2と比較した、ADCCを媒介する例示的な一価抗HER2抗体(OA1−Fab−Her2)の能力を、実施例5に記載のプロトコルに従って、トリプルネガティブ細胞株MDA−MD−231およびHer2 1+細胞株MCF7において判定した。MDA−MD−231細胞を、DMEM培地で成長させ、一方でMCF7細胞は、イーグル最小必須培地(Gibco番号11095)で成長させ、いずれの培地も、0.01mg/mlのヒト組み換えインスリン(Invitrogen)、10%FBS(Gibco#10099)、および1%非必須アミノ酸Gibco#11140)が補充されていた。
【0363】
用量応答曲線を
図21A(MCF7細胞)および
図21B(MDA−MD−231)に示し、抗体のEC
50および最大溶解度を表16および17に示す。
【0364】
(表16)EC
50および最大溶解度(MCF7細胞)
【0365】
これらの結果は、FSA−Fab−Her2対OA1−Fab−Her2のEC
50の変化倍率は10.3(増加)であったが、最大溶解度の変化倍率は1.3(増加)であったことを示す。
【0366】
(表17)EC
50および最大溶解度(MDA−MD−231細胞)
【0367】
MDA−MD−231細胞におけるFSA−Fab−Her2対OA1−Fab−Her2のEC
50の変化倍率は1.8(増加)であったが、最大溶解度の増加倍率は、1.5(増加)であった。
【0368】
実施例13:一価抗HER2抗体は、FSAと比較してより広範な分布(Vss)およびt1/2βを有する
例示的な一価抗HER2抗体(OA1−Fab−Her2)の薬物動態(PK)を試験し、対照二価抗Her2抗体(wt FSA Hcptn)のものと比較した。これらの研究は、以下に記載のように実行した
系統/性別:CD−1ヌード/雄性
処置時の動物の標的体重:0.025kg
動物数:12
体重:投与量の計算のため処置の前日に記録。
臨床兆候の観察:注射後最大2時間、および1日目〜11日目には1日2回。
1日目に、10mg/kgの用量で、試験物質を尾静脈への静脈内注射によってマウスに投与した。おおよそ0.060mLの血液試料を、以下の表のように、投与後最大240時間までの選択された時点で(1つの時点につき3匹の動物)顎下腺または伏在静脈から採取した。処置前の血清試料(Pre−Rx)を、ナイーブ動物から得た。血液試料は、室温で15〜30分間凝固させた。血液試料を、2700rpmで10分間、室温で遠心分離し、血清を−80℃で保管した。最後の出血については、血液を心穿刺によって採取した。
用量レベル:10mg/kg
【0369】
血清濃度をELISAによって判定した。簡単に言うと、Her2を、PBS中0.5ug/mlで、HighBind 384プレート(Corning 3700)のプレートにおいて25ul/ウェルでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。ウェルをPBS−0.05%tween−20で3回洗浄し、室温で1〜2時間、1%BSAを含有するPBS、80ul/ウェルで遮断した。抗体血清および標準物質の希釈物を、1%BSAを含有するPBSで調製した。遮断後、遮断物を除去し、抗体希釈物をウェルに移した。ELISAプレートを1000gで30秒間遠心分離して気泡を除去し、プレートを室温で2時間インキュベートした。プレートをPBS−0.05%tween−20および25ul/ウェルのAP結合型ヤギ抗ヒトIgGで3回洗浄し、Fc(Jackson ImmunoResearch)を添加し(1%BSAを含有するPBS中1:5000希釈で)、室温で1時間インキュベートした。プレートをPBS−0.05%tween−20で4回洗浄し、25ul/ウェルのAP基質(5.5mLのpNPP緩衝液中1錠)を添加した。Perkin Elmer Envisionリーダーを使用して、ODを、異なる時間間隔(0〜30分間)で405nmにおいて読み取った。反応を、OD405が2.2に達する前に、5uLの3N NaOHを添加して停止させた。最後の読み取りを行う前に、プレートを1000gで2分間遠心分離した。
【0370】
血清濃度を、WinnonLinソフトウェアバージョン5.3を使用して分析して、PKパラメーターを得た。血清試料は、2セットの複数希釈物において分析し、有効範囲内の結果を許容し平均化した。ELISA分析後の定量化下限(LLOQ)に満たない血清濃度値は、平均血清濃度の計算について0とみなした。ELISAアッセイから得られたLLOQは、おおよそ1.2μg/mLであった。
【0371】
結果を
図22に示し、試験したPKパラメーターを表18に示す。
【0372】
(表18)PKパラメーター
【0373】
図22に示される結果は、試験した一価抗HER2抗体が、ヒトでの投与のために適当なPKパラメーターを有することを示す。とりわけ、一価抗HER2抗体は、より高いVss(安定な状態での量)を有し、抗体がより多くの量で分布し、組織内へのより大きな分布を有することを示す。
【0374】
実施例14:一価抗HER2抗体処置は、SKBR3細胞においてErb2およびMAPKのリン酸化を低減させる
シグナル伝達分子のリン酸化に対する、例示的な一価抗HER2抗体(OA1−Fab−Her2)によるSKBr3の処置の効果を、次のように判定した。
【0375】
ウエスタン免疫ブロットによるリン酸化の検出のために、12ウェルプレートに、血清含有培地中50,000細胞/ウェルで播種し、37℃でインキュベートした。24時間後に培地を置き換え、処置用抗体を、100nMの最終濃度でウェルに加え、37℃で30分間インキュベートした。抗体をインキュベートした後、適切なウェルを、1nMで15分間、培地中のrhHRGβ1で処置を行った。プレートを氷上に設置することによって処置を停止させ、培地を吸引し、氷冷dPBSでウェルを洗浄した。溶解−M緩衝液を添加し(50μl/ウェル)、穏やかに振盪させながら5分間室温でインキュベートした。
【0376】
細胞溶解物を14,000gで10分間遠心分離し、細胞溶解物を除去し、還元または非還元緩衝液中に保管し、5分間沸騰させた(試料の還元)。BCAタンパク質の判定を、製造業者の説明に従って、残りの粗製細胞溶解物を用いて完了させた。SDS−PAGEゲルを、3μg/ウェルで充填し、イモビロン−P PVDF膜上に移した。膜をzenopure水で洗浄し、メタノール中に2分間浸漬させ、一晩(または室温で1時間)空気乾燥させた。膜を、適切な一次抗体(マウス抗PY20 ZYMED、Invitrogen;ウサギ抗ErbB2;ウサギ抗全Akt;ウサギ抗P−Akt(Ser473);ウサギ抗p44/p42;ウサギ抗P−p44/p42、Cell Signaling Technologies)とともに、4℃で一晩インキュベートした。膜を、TBS−T中で4×20分間洗浄し、二次抗体(HRP結合型ヤギ抗マウスIgG;HRP結合型ロバ抗ウサギIgG;Jackson ImmunoResearch)とともに、室温で30分間、穏やかに旋回振盪させながらインキュベートした。膜をTBS−T中で4×20分間洗浄し、ECL基質の添加前に水ですすいだ。フィルムを種々の時点で露光させ、AFP mini−med 90で現像した。
【0377】
p−AKTの検出については、PathScan Phospo−AKT Sandwich ELISAキット(Cell Signaling Technology、カタログ番号7252)を使用し、プロトコルは、製造業者の説明に詳述されるものに従った。
【0378】
図23AおよびBは、ErbB、MAPK、およびAktのリン酸化に関する結果を示す。これらの結果は、OA1−Fab−Her2での処置が、hIgG対照と比べて総p−MAPkおよびp−ErbB2の量を低減させることを示す。試験した3つの抗Her2抗体の中でも、最も大きなp−MAPkおよびp−ErbB2の低減は、OA1−Fab−Her2で見られる。ELISAによって測定されるAktのリン酸化の度合いの定量的評価を、
図24AおよびBに示す。これらの結果は、OA1−Fab−Her2処置が、未処置対照(「CTL」)およびhIgG対照と比べて総p−AKTの量を低減させることを示す。試験した3つの抗Her2抗体の中でも、最も大きなp−AKTの低減は、OA1−Fab−Her2で見られる。
【0379】
実施例15:一価抗HER2抗体は、二価抗Her2抗体と比較して増加したCD16aおよびCD32a/bへの結合を示す
FcγR CD16aおよびCD32a/bに結合する例示的な一価抗HER2抗体の能力を、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて試験した。
【0380】
表面プラズモン共鳴分析:抗体Fcに対するFcγRの親和性を、BIO−RADからのProteOn XPR36システムを使用してSPR(表面プラズモン共鳴)によって測定した。緩衝液(10mMのHepes pH6.8)中のHER−2を、3000RUまで、アミン結合を通じてCM5チップに固定化した。抗HER2 F(ab)2を含有する抗体形式のFc変異体を、300RUまでHER−2表面に固定化した。泳動緩衝液および界面活性剤を、pH6.8に維持した。精製された検体FcRを、この泳動緩衝液中に希釈し、20〜30mul/分の流量で2分間注入した後、さらに4分間解離させた。各抗体の5つの2倍希釈物(20nMで開始)を、三連で分析した。センサグラムを、1:1Langmuir結合モデルに全体的に適合させた。すべての実験は室温で行った。
【0381】
SPR結合研究の結果を表19に示す。
【0382】
(表19)一価抗HER2抗体の結合能力
【0383】
表19の結果は、OA1−Fab−Her2が、より多くのFc領域が抗原(Her2)固定化抗体への結合に利用可能であるため、FcγRsへの結合に関して対照FSA−Fab−Her2と比較してより高いRmaxを示すことを表す。さらに、OA1−Fab−Her2は、1.4〜2.0倍に増加したCD32に対する親和性を示す。
【0384】
実施例16:追加の構築物の調製および発現
実施例1に記載される構築物1〜8に加えて、以下の追加の一価抗HER2抗体および対照を調製し、試験した。
9.OA5−Fab−Her2、一価抗HER2抗体であり、Her2結合ドメインは鎖AのFabであり、Fc領域は、
変異T350V_L351Y_F405A_Y407Vを鎖Aに有し、T350V_T366L_K392L_T394Wを鎖Bに有するヘテロ二量体であり、抗原結合ドメインのエピトープは、Her2のドメイン2である。
10.OA6−Fab−Her2、一価抗HER2抗体であり、Her2結合ドメインは鎖BのFabであり、Fc領域が、
変異T350V_L351Y_F405A_Y407Vを鎖Aに有し、T350V_T366L_K392L_T394Wを鎖Bに有するヘテロ二量体であり、抗原結合ドメインのエピトープは、Her2のドメイン2である。
11.FSA−Fab−Pert、二価抗Her2抗体であり、いずれのHer2結合ドメインもFab形式のペルツズマブであり、Fc領域は、
変異L351Y_S400E_F405A_Y407Vを鎖Aに有し、T366I_N390R_K392M_T394Wを鎖Bに有するヘテロ二量体である。抗原結合ドメインのエピトープは、Her2のドメイン2である。
【0385】
これらの構築物を、実施例1に記載の方法に従って調製し、発現させた。
【0386】
実施例17:一価抗HER2抗体OA5−Fab−Her2およびOA6−Fab−Her2の精製
これらの構築物を、実施例1に記載の方法に従って調製し、発現させた。
図30Aは、プロテインA精製後のOA5−Fab−Her2およびOA6−Fab−Her2の純度を示す。
図30Bは、LC/MSによる5つのヘテロ二量体純度分析を示し、これは、OA5−Fab−Her2およびOA6−Fab−Her2のいずれも、プロテインAおよびサイズ排除クロマトグラフィー後に99%を超える純度に精製され得ることを示す。ヘテロ二量体の純度は、実施例8に記載される方法に従って行った。
【0387】
実施例18:一価抗HER2抗体(Fab)は、JIMT−1およびBT−474細胞において、FSAと対比してより高いB
maxを有する
例示的な一価抗HER2抗体(OA5−Fab−Her2およびOA6−Fab−Her2)の結合を、Her2を発現する細胞株であるJIMT−1およびBT−474において、これらの抗Her2抗体の二価形式のもの(FSA−Fab−pert)と比較した。これらの細胞株は、候補抗癌薬の効果を試験するために、異種移植モデルにおいて使用される。JIMT−1細胞株は、2+レベルでHer2受容体を発現し、したがって、中程度の細胞当たりの密度で受容体を発現すると考えられる。BT−474細胞株は、herceptin抵抗性細胞株であり、3+レベルでHer2受容体を発現し、したがって、高い細胞当たりの密度で受容体を発現すると考えられる。この実施例で試験した一価抗体は、Fabである抗体結合領域を含む。これらの細胞の表面に結合するこれらの抗体の能力を、実施例3に記載のフローサイトメトリーによって判定したが、10%FBSを含有するDMEM培地を、JIMT−1細胞およびBT−474細胞の培養に使用したことを除く。
【0388】
結果を
図25A(JIMT−1細胞)および
図25B(BT−474細胞)に示し、K
DおよびB
maxの値は、以下の表20および21に示す。
【0389】
(表20)JIMT−1細胞での結合データ
【0390】
図25Aおよび表20に示されるデータは、OA1−Fab−Her2対FSA−Fab−Her2のK
Dにおける変化倍率が2.57(増加)であり、一方でOA1−Fab−Her2対FSA−Fab−Her2のB
maxにおける変化倍率が1.43(増加)であることを示す。OA5−Fab−Her2対FSA−Fab−pertのK
Dにおける変化倍率は2.26(増加)であり、一方でOA5−Fab−Her2対FSA−Fab−pertのB
maxにおける変化倍率は1.46(増加)である。
【0391】
(表21)BT−474細胞の結合データ
【0392】
図25Bおよび表21に示されるデータは、OA1−Fab−Her2対FSA−Fab−Her2のK
Dにおける変化倍率は6.35(増加)であり、一方でOA1−Fab−Her2対FSA−Fab−Her2のB
maxにおける変化倍率は1.52(増加)であることを示す。OA5−Fab−Her2対FSA−Fab−pertのK
Dにおける変化倍率は4.66(増加)であり、一方でOA5−Fab−Her2対FSA−Fab−pertのB
maxにおける変化倍率は1.45(増加)である。
【0393】
要約すると、この実施例において試験したいずれの細胞型においても、試験した一価抗Her2抗体は、関連する二価対照抗体と比較してより高いB
maxを有する。これらの結果はまた、ペルツズマブ(OA5−Fab−Her2およびOA6−Fab−Her2)に基づく一価抗HER2抗体が、herceptin(OA1−Fab−Her2)に基づくものよりも高いB
maxを有することを示す。
【0394】
実施例19:一価抗HER2抗体は、BT−474細胞の成長を阻害する
10%FBS含有DMEM中で成長させた、BT−474細胞およびJIMT−1細胞の成長を阻害する一価抗HER2抗体の能力を、実施例9に記載される方法を使用して試験した。
【0395】
BT−474細胞の結果を
図26AおよびBに示し、試験した抗体の最大成長阻害の割合(%)を表22に示す。
【0396】
(表22)最大成長阻害
【0397】
試験した抗体(FSA−Fab−Her2、wt FSA Hcptn、OA1−Fab−Her2、OA2−Fab−Her2、OA5−Fab−Her2、OA6−Fab−Her2、FSA−Fab−pert、または市販Herceptin(商標)のいずれも、JIMT−1細胞の成長を阻害することができなかった(データは示されない)。
【0398】
実施例20:一価抗HER2抗体は、インターナライズされる
BT−474細胞によってインターナライズされる例示的な一価抗HER2抗体の能力を、実施例9で使用した「間接的な」方法とは異なる「直接的な」方法を使用して判定した。
【0399】
直接的なインターナリゼーション方法は、Schmidt,M.et al.,Kinetics of anti−carcinoembryonic antigen antibody internalization:effects of affinity,bivalency,and stability.Cancer Immunol Immunother(2008)57:1879−1890に詳述されるプロトコルに従った。具体的には、抗体を、製造業者の説明に従ってAlexaFluor(登録商標)488タンパク質標識化キット(Invitrogen、カタログ番号A10235)を使用して標識化した。
【0400】
インターナリゼーションアッセイについては、12ウェルプレートに、1×10
5細胞/ウェルで播種し、37℃+5%CO
2で一晩インキュベートした。翌日に、標識化した抗体を、10および200nMでDMEM+10%FBS中に添加し、37℃+5%CO
2で24時間インキュベートした。暗所条件下で、培地を吸引し、ウェルを2×500μLのPBSで洗浄した。細胞を採取するために、細胞解離緩衝液を37℃で添加した(250μL)。細胞をペレット状にし、50μg/mLで抗Alexa Fluor488、ウサギIgG画分(Molecular Probes、A11094、ロット1214711)ありまたはなしで100μLのDMEM+10%FBS中に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。分析の前に、300μLのDMEM+10%FBSで試料を濾過し、4ulのヨウ化プロピジウムを添加した。試料を、LSRIIフローサイトメーターを使用して分析した。
【0401】
結果を
図27AおよびBに示す。
図27Aは、OA1−Fab−Her2およびOA5−Fab−Her2(200nMで)がいずれも、親FSA抗体に相当するパーセンテージでBT−474細胞中にインターナライズすることができることを図示する。OA5−Fab−Her2の場合、そのFSAであるFSA−Fab−Pert(51%)と比較して、より高い総インターナリゼーションがOA(62%)で見られる。
図27Bは、OA1−Fab−Her2およびOA5−Fab−Her2(200nMで)がいずれも、親FSA抗体に相当するパーセンテージでJIMT−1(herceptin耐性)細胞中にインターナライズすることができることを図示する。BT−474およびJIMT−1では、OA5−Fab−Her2は、OA1−Fab−Her2と比較してより高いインターナリゼーション(%)を有する。
【0402】
実施例21:一価抗HER2抗体は、Her2 1+細胞株(MCF7細胞)において増加したADCCを示す
(OA1−Fab−Her2)において試験した例示的な一価抗HER2抗体に加えて、関連対照FSA抗体と比較した、ADCCを媒介する追加の一価抗HER2抗体OA4−scFv−BID2、OA5−Fab−Her2、およびOA6−Fab−Her2の能力を試験した。追加の対照には、市販Herceptin(商標)抗体、wt FSA Hcptn、およびFSA−Fab−Her2が含まれた。ADCC活性を、実施例5および12に記載されるプロトコルに従って、Her2 1+細胞株MCF7において測定した。
【0403】
結果を、
図21C、D、およびEに示す。
図21Cは、MCF−7(Her2 1+)細胞でのADCCアッセイにおけるOA1−Fab−Her2、OA4−scFv−BID2、およびOA5−Fab−Her2の比較を示す。
図21Cの結果は、OA1−Fab−Her2での処置が最も高い最大標的細胞溶解を媒介すること、およびこの最大標的細胞溶解が、市販Herceptinのものを上回ることを示す。市販Herceptinは、約18%少ないコアフコース残基を有し、コアフコースの欠如または低減は、フコシル化抗体と比較して、インビトロ標的細胞溶解(ADCCによる)を強化することが知られている(Suzuki E.et al.2007,A non−fucosylated anti−HER2 antibody augments antibody−dependent cellular cytotoxicity in breast cancer patients Clin Cancer Res.13:1875−1882)。OA1−Fab−Her2は、市販Herceptinと比べてより高い割合のフコシル化ペプチド配列を持つにも関わらず、より高い標的細胞溶解を媒介することができる。
図21Dの結果は、FSA抗Her2変異体を比較し、市販Herceptinと比べて低下した標的細胞溶解を示す。市販HerceptinとFSA−Fab−Her2(フコシル化の違いを除いて同一の分子)とを比較することにより、グリコシル化によりもたらされる大きな影響を例証する。
図21Eの結果は、親FSA抗体、FSA−Fab−Her2と比較して、さらには市販Herceptinと比較して、OA1−Fab−Her2に媒介されるより優れた死滅を示す。3つのOA抗Her2抗体の中でも、OA1−Fab−Her2は、MCF−7細胞において最も高い標的細胞溶解度(%)を媒介する。
【0404】
実施例22:一価抗HER2抗体(scFv)は、MALME−3M細胞においてFSAと対比してより高いB
maxを有する
例示的な一価抗HER2 OA4−scFv−BID2の結合を、MALME−3M細胞において、この抗Her2抗体の二価形態であるFSA−scFv−BID2のものと比較した。アッセイは、実施例3に記載のようにフローサイトメトリーによって行った。結果を
図28に示す。データは、OA4−scFv−BID2が、FSA−scFv−BID2抗体と比較して優れたMALME−3M細胞への結合を示すことを表す。
【0405】
実施例23:細胞を死滅させる一価抗体構築物−ADCの能力
毒性薬物分子と結合した一価抗体構築物OA1−Fab−Her2(OA−Fab−MCC−DM1)を、次のように調製した:抗体薬物複合体を、Chari et al.1992,Immunoconjugates containing novel maytansinoids:promising anti−cancer drugs.Cancer Res 1992;52:127−31に記載されるチオエーテル結合にN−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)を用いて調製した。BT474細胞の成長を阻害するこの分子の能力を、実施例9に記載の方法を使用して試験した。結果を
図29に示し、72時間の処置後、OA1−Fab−Her2−MCC−DM1が、100nMにおいて、OA1−FSA−Her2による38%の成長阻害と比較して、BT−474における63%の成長阻害をもたらしたことを示す。このデータは、OA−Fab−MCC−DM1が、OA1−Fab−Her2と比較して優れた成長阻害を示すことを表す。
【0406】
実施例24:例示的な一価抗体構築物の結合動態および親和性の判定
HER2に対するOA2−Fab−Her2の結合動態および親和性を、BIO−RADからのProteOn XPR36システムを使用してSPRによって次のように判定した。おおよそ3300RUの抗ヒトIgG 25ug/mlを、標準的なアミン結合を用いてGLCチップに固定化した。Wt FSA HcptnまたはOA2−Fab−Her2(PBST中20ug/ml、25ul/分)を、おおよそ700RUの捕捉レベルまで、抗ヒトIgGを固定化したチップに捕捉した。組み換えヒトHER2を、60、20、6.66、2.22、0.74nMでPBST中に希釈し、50μl/分の流量で2分間注入した後、さらに4分間解離させた。HER2希釈物を三連に分析した。センサグラムを、1:1Langmuir結合モデルに全体的に適合させた。すべての実験は室温で行った。
【0407】
結果を以下の表23に示し、k
a(オンレート、動態結合速度)、k
d(オフレート、動態解離速度)、およびK
D(平衡解離定数)を提供する。
【0408】
(表23)対応する単一特異性二価抗体構築物と比較したOA2−Fab−HER2の結合動態および親和性の要約
【0409】
これらの結果は、試験した例示的な一価抗体構築物のオンレート、オフレート、および平衡解離定数が、対応する単一特異性二価抗体構築物のものに相当することを示す。
【0410】
実施例で用いた試薬は、市販入手可能であるか、または、当該技術分野で既知の市販入手可能な器具、方法、もしくは試薬を用いて調製することができる。前述の実施例は、本発明の種々の態様および本発明の方法の実施を例示する。実施例は、本発明の多数の異なる実施形態の完全な説明を提供することを意図するものではない。したがって、上述の発明は、理解の明確さの目的で図解および例としてある程度詳細に記載されているが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱することなく、多数の変更および修正がなされ得ることを理解するであろう。
【0411】
本明細書に記述されるすべての出版物、特許、および特許出願は、それぞれ個別の出版物、特許、または特許出願が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれることが示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。