特許第6849912号(P6849912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6849912ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤の流動性の改良方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6849912
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤の流動性の改良方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20210322BHJP
   C08K 5/1575 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08K5/1575
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-24523(P2017-24523)
(22)【出願日】2017年2月14日
(65)【公開番号】特開2018-35335(P2018-35335A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年9月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-164310(P2016-164310)
(32)【優先日】2016年8月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000191250
【氏名又は名称】新日本理化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩崎祥平
(72)【発明者】
【氏名】前田崇之
(72)【発明者】
【氏名】内山陽平
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−121303(JP,A)
【文献】 特開2007−297465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00
C08K 5/1575
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性の改良されたポリオレフィン系樹脂用結晶核剤であって、
ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤が下記一般式(1)で示されるジアセタール化合物からなる結晶核剤、
又は、
レーザー回折式粒度分布測定より求めた粒径の平均値が0.5〜2.0μmである下記一般式(1)で示されるジアセタール化合物(A)及びレーザー回折式粒度分布測定より求めた粒径の平均値が4.0〜15.0μmである下記一般式(1)で示されるジアセタール化合物(B)との混合物からなる結晶核剤であり、
レーザー回折式粒度分布測定より求めた該結晶核剤の粒径の平均値が0.5〜4.0μm及び、均一度が3〜10であることを特徴とする微粒子状の結晶核剤。
【化1】
[式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を示す。Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2〜4のアルケニル基又は直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す。m及びnは、それぞれ1〜5の整数を示す。pは0又は1を示す。2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。2つのR基は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。]
【請求項2】
更に、粒子画像解析法により求めた該結晶核剤のアスペクト比の50%値が0.4〜0.7であり、且つLower値が、0.2〜0.4であることを特徴とする請求項1に記載の結晶核剤。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R及びRが、同一又は異なって、メチル基又はエチル基であり、かつ、Rが水素原子であり、m及びnが1又は2の整数であり、pが1である、請求項1に記載の結晶核剤。
【請求項4】
前記一般式(1)において、R及びRが、同一又は異なって、プロピル基又はプロポキシ基であり、かつ、Rがプロピル基又はプロペニル基であり、m及びnが1であり、pが1である、請求項1に記載の結晶核剤。
【請求項5】
下記一般式(1)で示されるジアセタール化合物からなる結晶核剤又はジアセタール化合物(A)が、気流式微粉砕機による微粉砕物である、請求項1又は請求項2に記載の結晶核剤の製造方法。
【化2】
[式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を示す。Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2〜4のアルケニル基又は直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す。m及びnは、それぞれ1〜5の整数を示す。pは0又は1を示す。2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。2つのR基は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。]
【請求項6】
ポリオレフィン系樹脂と請求項1〜の何れかに記載の結晶核剤を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のポリオレフィン系樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体。
【請求項8】
ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤の流動性改良方法であって、
ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤が下記一般式(1)で示されるジアセタール化合物からなる結晶核剤であり、該結晶核剤を全量又は一部気流式微粉砕機で微粉砕することにより得られる微粉砕物下記(a)と(b)の条件を同時に満たす性状とすることを特徴とする方法。
(a)レーザー回折式粒度分布測定より求めた粒径の平均値が0.5〜4.0μmであり、且つ均一度が3〜10である。
(b)粒子画像解析法により求めたアスペクト比の50%値が0.4〜0.7であり、且つLower値が、0.2〜0.4である。
【化3】
[式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を示す。Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2〜4のアルケニル基又は直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す。m及びnは、それぞれ1〜5の整数を示す。pは0又は1を示す。2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。2つのR基は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。]
【請求項9】
ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤の流動性改良方法であって
ーザー回折式粒度分布測定より求めた粒径の平均値が0.5〜2.0μmである下記一般式(1)で示されるジアセタール化合物(A)と、レーザー回折式粒度分布測定より求めた粒径の平均値が4.0〜15.0μmである下記一般式(1)で示されるジアセタール化合物(B)とを混合することにより得られるポリオレフィン系樹脂用結晶核剤が下記(a)と(b)の条件を同時に満たす性状とすることを特徴とする方法。
(a)レーザー回折式粒度分布測定より求めた粒径の平均値が0.5〜4.0μmであり、且つ均一度が3〜10である。
(b)粒子画像解析法により求めたアスペクト比の50%値が0.4〜0.7であり、且つLower値が、0.2〜0.4である。
【化4】
[式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を示す。Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2〜4のアルケニル基又は直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す。m及びnは、それぞれ1〜5の整数を示す。pは0又は1を示す。2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。2つのR基は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤の流動性の改良に関するものであり、詳しくは、流動性を改良すると同時に分散性も改良する方法、その方法により得られた流動性に優れ、且つ分散性にも優れたポリオレフィン系樹脂用結晶核剤、更にその結晶核剤を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂は、安価でバランスの良い性能を有し、汎用のプラスチックとして様々な用途で使用されている。また、一般にポリオレフィン系樹脂は結晶性の樹脂であり、生産効率の向上を目的に、また機械的特性や熱的特性、光学的特性を向上する目的で結晶核剤を加えて用いられることが多い。特に、光学的特性である透明性の改善には結晶核剤の配合が不可欠である。
【0003】
前記結晶核剤には、タルク等の無機系の結晶核剤とジアセタール系化合物、カルボン酸やリン酸エステルの金属塩等の有機系の結晶核剤があり、更に有機系の結晶核剤には溶解タイプと非溶解タイプの結晶核剤がある。透明性等の光学的特性の改善には前記ジアセタール系化合物に代表される溶解タイプの有機系の結晶核剤が特に有効であり、多く用いられている。
【0004】
近年、汎用プラスチックにおいては、より一層の生産性の向上が進められており、その一環として原料のフィード性、即ちその流動性の改善も進められている。その様ななかで、上記結晶核剤、なかでもジアセタール系化合物の結晶核剤の流動性が悪いことが生産性向上の大きなネックとなっている。
【0005】
そのため、これまでにもジアセタール系化合物をはじめとした結晶核剤の流動性の改良に関して様々な検討がなされてきた。例えば、粒状化することにより流動性を改良する方法(特許文献1〜3)や、粒状化せず、流動性改良剤を加えることにより流動性を改良する方法(特許文献4〜8)などが提案されている。
【0006】
一つ目の粒状化する方法の場合、流動性は改良されるが、ポリオレフィン系樹脂中での分散性や溶解性が悪くなる傾向があり、その結果、核剤本来の透明性等の性能の低下だけでなく、白点等の外観上の問題も生じる懸念があった。そのためにバインダー等の添加剤を加える方法が一般的であり、広く使われている。しかし、用途によっては、バインダー等の添加剤を加えても上記問題が完全に解決されず、更には配合されたバインダー等の添加剤の性能面への影響が問題となるケースもあった。
【0007】
二つ目の粒状化せずに流動性改良剤を加える方法も、流動性の改良には有効であり、更に粒状化の様な分散性等の問題も少なく、これまで様々な用途で用いられてきた。しかし、上述のバインダーを加えた場合と同様に、用途によっては加えた添加剤である流動改良剤の性能面への影響が問題になるケースがあった。
【0008】
また、結晶核剤の性能は、その結晶核剤の樹脂中での分散性や溶解性に大きく依存することが知られている。その為、これまでにも樹脂中での分散性や溶解性を改善するために様々な検討がなされてきた。例えば、複数の核剤を併用する方法、分散性や溶解性を改良する添加剤を加える方法(特許文献9〜11)などが提案され、実用化されている。また、粒径を小さくする、即ち微粒子化する方法(特許文献12)なども有効な方法であり、広く用いられている。
【0009】
しかし、一つ目の添加剤を加える方法の場合、用途によっては加えた添加剤に起因するブリード等の新たな問題が生じる懸念があった。また、二つ目の微粒子化の場合、分散性には非常に優れているが、移送性等の取り扱い上の問題が生じる懸念があった。
【0010】
さらに、最近の傾向として、全般的に環境問題等を配慮して、また配合処方の融通性を確保するために、必要のない添加剤はできるだけ配合しない方向に進んでおり、上記流動性や分散性の改良に関してもバインダーや流動性改良剤、分散性改良剤などの添加剤を加えずに改良する方法が望まれている。なかでも、医療用途ではその傾向が特に顕著であり、配合できる添加剤に対して厳しい制約があり、本質的に添加剤を使用しない改良方法の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO98/33851号
【特許文献2】特開2001−81236号公報
【特許文献3】WO02/077094号
【特許文献4】特表2009−507982号公報
【特許文献5】特開2013−209662号公報
【特許文献6】特開2015−30849号公報
【特許文献7】特許第5920524号公報
【特許文献8】特開2016−121303号公報
【特許文献9】特開昭60−101131号公報
【特許文献10】特開平08−245843号公報
【特許文献11】特開2001−240698号公報
【特許文献12】特開平06−145431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、本質的に添加剤を使用することなくポリオレフィン系樹脂用結晶核剤の流動性を改良すると同時に分散性も改良する方法、その方法を含む流動性を改良すると同時に分散性も改良されたポリオレフィン系樹脂用結晶核剤の製造方法及び該方法により得られた流動性に優れ、且つ分散性にも優れたポリオレフィン系樹脂用結晶核剤、更にその結晶核剤を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上述の状況に鑑み、上記課題を解決すべく、これまでにも様々な検討を進めてきた。例えば、特開2016−121303号公報において、分散性の改良された上述の様な微粒子状の結晶核剤を特定の脂肪酸金属塩と組合せることにより、流動性も改良できることを報告した。しかし、上記の系でも、依然として脂肪酸金属塩という添加剤を使用することにより流動性や分散性を改良という技術思想の範疇であった。そこで、本発明者らは、更に全く添加剤を加えることなく、流動性や分散性を改良する方法を求めて、鋭意検討した結果、結晶核剤の粒子を特定の性状に調整するだけで、流動性と分散性を同時に改良できること、言い換えるなら特定の粒子形状を有する微粒子状の結晶核剤または結晶核剤の混合物が流動性と分散性を同時に満足し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は以下に示すポリオレフィン系樹脂用結晶核剤の流動性を改良すると同時に分散性も改良する方法、その方法により得られた流動性に優れ、且つ分散性にも優れた結晶核剤、更にその結晶核剤を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体を提供するものである。
【0015】
[項1] 流動性の改良されたポリオレフィン系樹脂用結晶核剤であって、
レーザー回折式粒度分布測定より求めた該結晶核剤の粒径の平均値が0.5〜4.0μmであり、且つ均一度が3〜10であることを特徴とする微粒子状の結晶核剤。
【0016】
[項2] 前記結晶核剤が、レーザー回折式粒度分布測定より求めた粒径の平均値が0.5〜2.0μmである結晶核剤(A)と、レーザー回折式粒度分布測定より求めた粒径の平均値が4.0〜15.0μmである結晶核剤(B)との混合物である、[項1]に記載の結晶核剤。
【0017】
[項3] 更に、粒子画像解析法により求めた該結晶核剤のアスペクト比の50%値が0.4〜0.7であり、且つLower値が、0.2〜0.4であることを特徴とする[項1]又は[項2]に記載の結晶核剤。
【0018】
[項4] 前記結晶核剤の粒径の平均値が1.0〜2.5μmであり、且つ均一度が4〜7である、[項1]〜[項3]の何れかに記載の結晶核剤。
【0019】
[項5] 前記結晶核剤(A)の粒径の平均値が0.5〜1.5μmである、[項1]〜[項4]の何れかに記載の結晶核剤。
【0020】
[項6] 前記結晶核剤のアスペクト比の50%値が0.45〜0.65である、[項1]〜[項5]の何れかに記載の結晶核剤。
【0021】
[項7] 前記結晶核剤又は結晶核剤(A)が、気流式微粉砕機による微粉砕物である、[項1]〜[項6]の何れかに記載の結晶核剤。
【0022】
[項8] 前記気流式微粉砕機が、ジェットミルタイプの粉砕機である[項7]に記載の結晶核剤。
【0023】
[項9] 前記結晶核剤が下記一般式(1)で示されるジアセタール化合物である、又は結晶核剤(A)及び結晶核剤(B)のうち少なくとも一つが、下記一般式(1)で示されるジアセタール化合物である、[項1]〜[項8]の何れかに記載の結晶核剤。
【化1】
[式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を示す。Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2〜4のアルケニル基又は直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す。m及びnは、それぞれ1〜5の整数を示す。pは0又は1を示す。2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。2つのR基は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。]
【0024】
[項10] 前記一般式(1)において、R及びRが、同一又は異なって、メチル基又はエチル基であり、かつ、Rが水素原子であり、m及びnが1又は2の整数であり、pが1である、[項9]に記載の結晶核剤。
【0025】
[項11] 前記一般式(1)において、R及びRが、同一又は異なって、プロピル基又はプロポキシ基であり、かつ、Rがプロピル基又はプロペニル基であり、m及びnが1であり、pが1である、[項9]に記載の結晶核剤。
【0026】
[項12] ポリオレフィン系樹脂と[項1]〜[項11]の何れかに記載の結晶核剤を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物。
【0027】
[項13] 結晶核剤の含有量が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部である、[項12]に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【0028】
[項14] 結晶核剤の含有量が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部である、[項13]に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【0029】
[項15] [項12]〜[項14]の何れかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物を原料とするポリオレフィン系樹脂成形体。
【0030】
[項16] ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤の流動性改良方法であって、
該結晶核剤を全量又は一部気流式微粉砕機で微粉砕することにより得られる微粉砕物を下記(a)と(b)の条件を同時に満たす性状とすることを特徴とする方法。
(a)レーザー回折式粒度分布測定より求めた粒径の平均値が0.5〜4.0μmであり、且つ均一度が3〜10である。
(b)粒子画像解析法により求めたアスペクト比の50%値が0.4〜0.7であり、且つLower値が、0.2〜0.4である。
【0031】
[項17] 前記結晶核剤の粒径の平均値が、1.0〜2.5μmであり、且つ均一度が4〜7である、[項16]に記載の方法。
【0032】
[項18] 前記結晶核剤のアスペクト比の50%値が0.45〜0.65である、[項16]又は[項17]に記載の方法。
【0033】
[項19] 前記気流式微粉砕機が、ジェットミルタイプの粉砕機である[項16]〜[項18]の何れかに記載の方法。
【0034】
[項20] 前記結晶核剤が、下記一般式(1)で示されるジアセタール化合物である、[項16]〜[項19]の何れかに記載の方法。
【化2】
[式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を示す。Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2〜4のアルケニル基又は直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す。m及びnは、それぞれ1〜5の整数を示す。pは0又は1を示す。2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。2つのR基は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。]
【0035】
[項21] 前記一般式(1)において、R及びRが、同一又は異なって、メチル基又はエチル基であり、かつ、Rが水素原子であり、m及びnが1又は2の整数であり、pが1である、[項20]に記載の方法。
【0036】
[項22] 前記一般式(1)において、R及びRが、同一又は異なって、プロピル基又はプロポキシ基であり、かつ、Rがプロピル基又はプロペニル基であり、m及びnが1であり、pが1である、[項20]に記載の方法。
【0037】
[項22] ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤の流動性改良方法であって、
レーザー回折式粒度分布測定より求めた該結晶核剤の粒径の平均値が0.5〜2.0μmである結晶核剤(A)と、レーザー回折式粒度分布測定より求めた該結晶核剤の粒径の平均値が4.0〜15.0μmである結晶核剤(B)とを混合することにより得られる混合物を下記(a)と(b)の条件を同時に満たす性状とすることを特徴とする方法。
(a)レーザー回折式粒度分布測定より求めた粒径の平均値が0.5〜4.0μmであり、且つ均一度が3〜10である。
(b)粒子画像解析法により求めたアスペクト比の50%値が0.4〜0.7であり、且つLower値が、0.2〜0.4である。
【0038】
[項23] 前記結晶核剤(A)の粒径の平均値が、0.5〜1.5である、[項22]に記載の方法。
【0039】
[項24] 前記結晶核剤(A)又は結晶核剤(B)の少なくとも一つが、下記一般式(1)で示されるジアセタール化合物である、[項22]又は[項23]に記載の方法。
【化3】
[式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を示す。Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2〜4のアルケニル基又は直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す。m及びnは、それぞれ1〜5の整数を示す。pは0又は1を示す。2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。2つのR基は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。]
【0040】
[項25] 前記一般式(1)において、R及びRが、同一又は異なって、メチル基又はエチル基であり、かつ、Rが水素原子であり、m及びnが1又は2の整数であり、pが1である、[項24]に記載の方法。
【0041】
[項26] 前記一般式(1)において、R及びRが、同一又は異なって、プロピル基又はプロポキシ基であり、かつ、Rがプロピル基又はプロペニル基であり、m及びnが1であり、pが1である、[項24]に記載の方法。
【発明の効果】
【0042】
本発明のポリオレフィン系樹脂用結晶核剤は、非常に流動性に優れており、生産性の向上などに大きく寄与することができる。また、本発明のポリオレフィン系樹脂用結晶核剤は、ポリオレフィン系樹脂中での分散性や溶解性にも非常に優れており、成形品の性能面でも非常に有用である。従って、本発明のポリオレフィン系樹脂用結晶核剤は、生産性に優れ、様々な用途で幅広く使用することが可能であり、得られた成形品は優れた性能を有しており、多くの用途で非常に有用である。特に、添加剤の使用が制限されている医療用途などでは、本質的に添加剤を使用することなく、流動性と分散性を同時に改良できる技術として今後の活用が大いに期待される。
【発明を実施するための形態】
【0043】
<ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤>
本発明の結晶核剤は、流動性の改良されたポリオレフィン系樹脂用結晶核剤であり、微粒子状の結晶核剤であり、反応工程、後処理工程等よりなる通常の製造方法により得られた汎用の粒径の結晶核剤の粉末を更にジェットミルタイプの気流式微粉砕機などの粉砕機を用いて、本発明に係る結晶核剤の性状となるように粉砕条件等を調整して、微粉砕することにより容易に得ることができる。但し、本発明において、その製造方法は、限定されるものではなく、本発明に係る性状の結晶核剤が得られる方法であれば、例えば、反応、後処理等の製造過程で粒子形状を調整する方法、製造後に調整する方法、何れでも良く、また、製造後の調整方法に関しても、再結晶化から湿式、乾式を問わず粉砕する方法まで、何れの方法でも良い。更に、粉砕方法に関しても、乾式の気流粉砕方法から湿式粉砕方法まで、本発明の性能が得られる限り、特に限定されるものではない。
【0044】
また、上記微粉砕品等の微粒子状の結晶核剤と汎用の粒径の結晶核剤を本発明に係る結晶核剤の性状になる様に混合比率を調整して、単純混合する方法を採用することもできる。その場合、混合する結晶核剤の種類は、本発明の効果を奏する限り、必ずしも同一である必要はない。
【0045】
本発明の微粒子状の結晶核剤は、レーザー回折式粒度分布測定より求めた該結晶核剤粒子の粒径の平均値が0.5〜4.0μm、好ましくは0.5〜3.0μm、より好ましくは0.5〜2.5μmであり、且つ均一度が3〜7、好ましくは4〜7であることを特徴としている。
【0046】
更に好ましくは、本発明の微粒子状の結晶核剤は、粒子画像解析法により求めた該結晶核剤のアスペクト比の50%値が0.4〜0.7、好ましくは0.45〜0.65であり、且つLower値が、0.2〜0.4であることを特徴としている。
【0047】
粒径に関しては、上述の通り、平均粒径が小さいほど、また、粒径の大きな粒子が少ないほど、ポリオレフィン系樹脂中での分散性や溶解性に優れることが知られている。しかし、結晶核剤単独では、粒径が小さくなると流動性が低下する傾向にあることもまたよく知られている。逆に、平均粒径が大きいほど、流動性に優れることが知られている。しかし、結晶核剤単独では、粒径が大きくなると、分散性や溶解性が低下する傾向にあることもよく知られている。
【0048】
本発明の結晶核剤の平均粒径は、上記流動性と分散性や溶解性とのバランスが取れる範囲より、大き過ぎず、且つ小さ過ぎない範囲に調整することが重要であり、更に粒度分布の範囲を調整することにより、流動性をより一層改善することが可能となった点に、最大の特徴を有するものである。
【0049】
本明細書及び特許請求の範囲において、「粒径の平均値」とは、レーザー回折粒度分布測定により求めた粒度分布における体積基準累積50%での粒径(d50)を意味する。なお本明細書においては、「粒径の平均値」を「平均粒径」と言うことがある。同様に、本明細書及び特許請求の範囲における「粒径の均一度」とは、上記粒度分布における体積基準累積60%での粒径(d60)と体積基準累積10%での粒径(d10)の比(d60/d10)を求めて、その均一度とした。d60/d10の値が1に近いほど、粒度分布が狭いことを意味する。
【0050】
また、上記レーザー回折粒度分布測定は、汎用の装置を用いた、汎用の方法・条件による方法が採用可能であり、例えば、具体的には、次の様な方法が例示される;レーザー回折式粒度分布計(マルバーンインスツルメンツ社製、「マスターサイザー3000」)を用いて、湿式測定セル中で十分に撹拌混合することで、分散剤として界面活性剤を加えた水溶液中に試料を分散させ、続いて、得られた混合物を装置内で更に撹拌、循環させながら、超音波を当てて装置内にて十分に均一に分散させた後、超音波を当てながら試料の粒度分布を測定することができる。
【0051】
また、アスペクト比に関しても、流動性に影響する因子の一つであることが知られている。しかしながら、流動性の改善には、対象化合物の種類や流動場の状態によって異なり、どのような因子を検討すべきかの指針は定まっておらず、実質的にはアスペクト比の因子を含めた複数の因子の複合的な作用を想像しながら検討される。本発明では、様々な条件で調製された微粒子のアスペクト比を粒子画像解析法により測定した結果、ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤においては、アスペクト比が大きな粒子が少なく、特定の範囲にアスペクト比の中心を持った形状の微粒子が、流動性の改善に影響することを確認した。
【0052】
なお、上記のアスペクト比の大きな粒子の割合に関しては、アスペクト比のLower値の測定結果の数値を指標とし、アスペクト比の中心は、アスペクト比の累積50%値の測定結果の数値を指標とした。
【0053】
即ち、本明細書及び特許請求の範囲において、「50%値」とは、粒子画像解析法による測定により求められたアスペクト比の分布における累積50%値であり、上記の通りアスペクト比の中心を意味する。同様に、本明細書及び特許請求の範囲における「Lower値」とは、粒子画像解析法による測定により求められたアスペクト比の分布における累積10%値であり、その値が大きいほど上記の通りアスペクト比の大きな粒子の割合が少ないことを意味する。
【0054】
また、上記粒子画像解析法によるアスペクト比の測定は、汎用の装置を用いた、汎用の方法・条件による方法が採用可能であり、例えば、具体的には、次の様な方法が例示される;測定容器中でイオン交換水に分散剤として界面活性剤を加えた後に、測定試料を加え、分散処理を行い、測定試料を均一に分散させる。その後、フロー式粒子像分析装置(マルバーンインスツルメンツ社製、「FPIA−3000」)を用いて、測定を行い、得られたデータより試料のアスペクト比の分布を測定することができる。
【0055】
結晶核剤の性状の調整方法
本発明に係る結晶核剤の性状を調整する方法は、上述の通り、目的の性状が得られる方法であれば、どの様な方法を用いてもよいが、好ましくは汎用の粒径の結晶核剤の製造後に調整する方法が調整の容易さ等の観点より推奨される。
【0056】
前記の製造後に調整する方法としては、例えば、ジェットミルタイプの気流式粉砕機等を用いて微粉砕する方法などが粒径等の性状の調整の容易さ等の観点より推奨される。その場合、微粉砕条件を目的の性状になる様にコントロールする方法や、予め微粉砕した結晶核剤と未粉砕の結晶核剤(例えば、汎用の粒径の結晶核剤)を目的の性状になる様に比率を調整して混合する方法などの方法が挙げられる。
【0057】
微粉砕した結晶核剤と未粉砕の結晶核剤を混合する方法の場合、その比率は各々の粒径により異なり、必ずしも決まった範囲である必要はないが、通常、微粉砕品/未粉砕品の比率が1/1〜3/1程度の範囲で調整する方法が、生産性の面でも性能的な面でも好ましい。特に、用途によっては、単一の種類の核剤で所望の性能が得られない場合があり、その場合には一方の結晶核剤のみを微粉砕することにより本発明の結晶核剤を得ることが可能であり、優位である。
【0058】
結晶核剤の種類
本発明のポリオレフィン系樹脂用結晶核剤の種類は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されるものではないが、例えば、ジアセタール系化合物、カルボン酸塩系化合物、リン酸エステル塩系化合物、アミド系化合物、ロジン系化合物などが例示される。なかでも、上記ジアセタール系化合物において、本発明の効果が最も顕著である。
【0059】
上記ジアセタール系化合物としては、具体的には、下記一般式(1)で示されるジアセタール化合物が例示される。
【化4】
[式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシ基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を示す。Rは、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数2〜4のアルケニル基又は直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す。m及びnは、それぞれ1〜5の整数を示す。pは0又は1を示す。2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。2つのR基は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成していてもよい。]
【0060】
上記ジアセタール系化合物の中でも、更に好ましい化合物としては、例えば、上記一般式(1)中のR及びRが、同一又は異なって、メチル基又はエチル基であり、かつ、Rが水素原子であり、m及びnが1又は2の整数であり、pが1である化合物などが挙げられる。
【0061】
また、次の様な化合物も更に好ましい化合物として例示することができる;上記一般式(1)において、R及びRがプロピル基又はプロポキシ基であり、かつ、Rがプロピル基又はプロペニル基であり、m及びnが1であり、pが1である化合物。
【0062】
上記ジアセタール化合物の具体的な態様としては、次の様な化合物が例示される。1,3:2,4−ジ−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−tert−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−tert−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−tert−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,3’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,4’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,5’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,6’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,5’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,3’−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,4’−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,5’−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,6’−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,5’−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,4’,5’−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’,5’−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,4’,5’−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’,5’−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メトキシベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−メトキシベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メトキシベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−エトキシベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−エトキシベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エトキシベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−イソプロポキシベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−イソプロポキシベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロポキシベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−プロポキシベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−プロポキシベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロポキシベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メトキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−メトキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メトキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−エトキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−エトキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エトキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−イソプロポキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−イソプロポキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロポキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−プロポキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−プロポキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロポキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−フルオロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−フルオロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−フルオロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−ブロモベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−ブロモベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−ブロモベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(p−メチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(p−エチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(p−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(p−クロロベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(2’,4’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(2’,4’−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−(p−メチルベンジリデン)−2,4−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(p−エチルベンジリデン)−2,4−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(p−メチルベンジリデン)−2,4−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−(p−エチルベンジリデン)−2,4−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−p−エチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−(p−メチルベンジリデン)−2,4−O−(p−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(p−クロロベンジリデン)−2,4−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,3’−ジメチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,4’−ジメチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,5’−ジメチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,6’−ジメチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,5’−ジメチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,3’−ジエチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,4’−ジエチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,5’−ジエチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,6’−ジエチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジエチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,5’−ジエチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’−メチル−4’−メトキシベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジクロロベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メトキシカルボニルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’−メチル−4’−フルオロベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’−ブロモ−4’−エチルベンジリデン)−1−メチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,3’−ジメチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,4’−ジメチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,5’−ジメチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,6’−ジメチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,5’−ジメチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,3’−ジエチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,4’−ジエチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,5
’−ジエチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,6’−ジエチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジエチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,5’−ジエチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’−メチル−4’−メトキシベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジクロロベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メトキシカルボニルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’−メチル−4’−フルオロベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’−ブロモ−4’−エチルベンジリデン)−1−エチルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,3’−ジメチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,4’−ジメチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,5’−ジメチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,6’−ジメチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,5’−ジメチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,3’−ジエチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,4’−ジエチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,5’−ジエチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,6’−ジエチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジエチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,5’−ジエチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’−メチル−4’−メトキシベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジクロロベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メトキシカルボニルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エトキシカルボニルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−プロポキシカルボニルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−2,4−O−(p−プロポキシベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3−O−(p−プロポキシベンジリデン)−2,4−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’−メチル−4’−フルオロベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’−ブロモ−4’−エチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−1−プロペニルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エトキシカルボニルベンジリデン)−1−プロペニルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−プロポキシカルボニルベンジリデン)−1−プロペニルソルビトール、1,3−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−2,4−O−(p−プロポキシベンジリデン)−1−プロペニルソルビトール、1,3−O−(p−プロポキシベンジリデン)−2,4−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−1−プロペニルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,3’−ジメチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,4’−ジメチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,5’−ジメチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,6’−ジメチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,5’−ジメチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,3’−ジエチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,4’−ジエチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,5’−ジエチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2’,6’−ジエチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジエチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エトキシカルボニルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−プロポキシカルボニルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−2,4−O−(p−プロポキシベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3−O−(p−プロポキシベンジリデン)−2,4−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,5’−ジエチルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’−メチル−4’−メトキシベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジクロロベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メトキシカルボニルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’−メチル−4’−フルオロベンジリデン)−1−アリルソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’−ブロモ−4’−エチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール等が例示される。
【0063】
特に、好ましい態様としては、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−1−プロピルソルビトールなどが例示される。
【0064】
また、上記具体的な態様のジアセタール化合物は、単独で用いてもよいが、他の性能、例えば低温加工性等の観点から、2種以上のジアセタール化合物を併用、または予め混合した態様で用いてもよい。
【0065】
上記併用または混合系で用いる場合、例えば、1,3:2,4−ジ−O−ベンジリデン−D−ソルビトールと1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトールの組合せや1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトールと1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールの組合せ、1,3:2,4−ジベンジリデン−D−ソルビトールと1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールの組合せ、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトールと1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールの組合せ、1,3:2,4−ビス−O−(p−クロロベンジリデン)−D−ソルビトールと1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールの組合せなどが例示され、どちらか一方のみを微粉砕して用いても構わない。
【0066】
上記ジアセタール化合物は、例えば、日本国特公昭48−43748号公報、特開昭53−5165号公報、特開昭57−185287号公報、特開平2−231488号公報等に記載されている製造方法などを用いて容易に製造することができる。また、現在ポリオレフィン用結晶核剤として市販されているもの、例えば、ミリケン社(米国)のミラッド3988、ミラッドNX8000、新日本理化(株)のゲルオールD、ゲルオールMD、ゲルオールDXRなどを、汎用の粒径の結晶核剤(例えば結晶核剤(B))としてそのまま使用してもよく、また微粉砕の結晶核剤(例えば流動性の改良されたポリオレフィン系樹脂用結晶核剤や結晶核剤(A))のための原料の結晶核剤として使用してもよい。
【0067】
また、本発明に係るジアセタール系化合物以外の結晶核剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム塩、p−tert−ブチル安息香酸アルミニウム塩、下記一般式(3)で示されるシクロヘキサンジカルボン酸金属塩、下記一般式(4)で表されるノルボルナンジカルボン酸金属塩などのカルボン酸塩系化合物、下記一般式(5)で示されるリン酸エステル塩系化合物、下記一般式(6)で示されるアミド系化合物、下記一般式(7)で示されるロジン酸又はその金属塩化合物(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどのアルカリ金属塩)等のロジン系化合物などが例示される。
【化5】
[式中、M及びMは、いずれもリチウムイオンを示すか、またはMとMの2つの金属イオンが単一の金属イオンにまとめられてなる二価の金属カチオン:カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、マグネシウム若しくは一塩基性アルミニウムを示す。R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基(ここで、いずれか2つのビシナル(隣接炭素に結合)またはジェミナル(同一炭素に結合)アルキル基は、一緒になって6個までの炭素原子を有する炭化水素環を形成してもよい)、ヒドロキシ基、炭素数1〜9のアルコキシ基、炭素数1〜9のアルキレンオキシ基、アミノ基、炭素数1〜9のアルキルアミノ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素および沃素)又はフェニル基を示す。]
【化6】
[式中、M及びMは、同一又は異なって、金属カチオン若しくは有機カチオンを示すか、または該2つの金属イオンがまとめられてなる単一の金属イオン(二価の金属カチオン、例えばカルシウムイオン等)を示す。R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、及びR26は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜9のアルコキシ基、炭素数1〜9のアルキレンオキシ基、アミノ基、及び炭素数1〜9のアルキルアミノ基、ハロゲン原子、フェニル基、アルキルフェニル基又は最大9個の炭素原子を有するジェミナル若しくはまたはビシナルの炭素環を示す。好ましくは、金属カチオンはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銀、ナトリウム、リチウム、ルビジウム、カリウム等から成る群から選択される。]
【化7】
[式中、R27〜R30は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜9のアルキル基を表し、R31は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、dは1又は2の整数であり、dが1のとき、Mはアルカリ金属を表し、dが2のとき、Mはアルカリ土類金属、亜鉛又はヒドロキシアルミニウムを表す。]
【化8】
[式中、fは、2〜6の整数を表す。R32は、炭素数2〜18の飽和若しくは不飽和の脂肪族ポリカルボン酸残基、炭素数3〜18の脂環族ポリカルボン酸残基又は炭素数6〜18の芳香族ポリカルボン酸残基を表す。2〜6個のR33は、同一又は異なって、それぞれ、炭素数5〜30の飽和若しくは不飽和の脂肪族アミン残基、炭素数5〜30の脂環族アミン残基又は炭素数6〜30の芳香族アミン残基を表す。]
【化9】
[式中、R34 、R35 およびR36 は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0068】
<ポリオレフィン系樹脂組成物>
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、本発明の流動性の改良された微粒子状のポリオレフィン系樹脂用結晶核剤とポリオレフィン系樹脂とを、必要に応じてその他のポリオレフィン系樹脂用添加剤を加えて、室温にてドライブレンド後、所定の条件にて溶融混合することにより、容易に得ることができる。
【0069】
ポリオレフィン系樹脂中の本発明の結晶核剤の濃度は、ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤としての効果を奏する限り、特に制約はないが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部であることが好ましい。
【0070】
[ポリオレフィン系樹脂]
上記ポリオレフィン系樹脂としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されることなく、従来公知のポリオレフィン系樹脂が使用可能であり、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂などが例示される。より具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、エチレン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のエチレンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン50重量%以上、好ましくは70重量%以上のプロピレンコポリマー、ブテンホモポリマー、ブテン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のブテンコポリマー、メチルペンテンホモポリマー、メチルペンテン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のメチルペンテンコポリマー、ポリブタジエン等が例示される。また、上記コポリマーはランダムコポリマーであってもよく、ブロックコポリマーであってもよい。更に、これらの樹脂の立体規則性がある場合は、アイソタクチックでもシンジオタクチックでもよい。上記コポリマーを構成し得るコモノマーとして、具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン等の炭素数2〜12のα−オレフィン、1,4−エンドメチレンシクロヘキセン等のビシクロ型モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等が例示される。
【0071】
かかる重合体を製造するために適用される触媒としては、一般に使用されているチーグラー・ナッタ型触媒はもちろん、遷移金属化合物(例えば、三塩化チタン、四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物)を塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウムを主成分とする担体に担持してなる触媒と、アルキルアルミニウム化合物(トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等)とを組み合わせてなる触媒系、メタロセン触媒等も使用できる。
【0072】
本発明に係るポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(以下「MFR」と略記する。JIS K 7210−1999)は、その適用する成形方法により適宜選択されるが、通常0.01〜200g/10分程度、好ましくは0.05〜100g/10分程度が推奨される。
【0073】
[その他の添加剤]
また、上述の通り、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、その使用目的やその用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲でその他のポリオレフィン系樹脂用添加剤が含まれていてもよい。
【0074】
上記ポリオレフィン系樹脂用添加剤としては、例えば、ポリオレフィン等衛生協議会編「ポジティブリストの添加剤要覧」(2002年1月)に記載されている各種添加剤が挙げられる。具体的には、蛍光増白剤(2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール)、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン等)、酸化防止剤、安定剤(金属化合物、エポキシ化合物、窒素化合物、燐化合物、硫黄化合物等)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等)、界面活性剤、滑剤(パラフィン、ワックス等の脂肪族炭化水素、炭素数8〜22の高級脂肪酸、炭素数8〜22の高級脂肪酸金属(Al、Ca)塩、炭素数8〜22の高級脂肪族アルコール、ポリグリコール、炭素数4〜22の高級脂肪酸と炭素数4〜18の脂肪族1価アルコールとのエステル、炭素数8〜22の高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン誘導体等)、充填剤(タルク、ハイドロタルサイト、マイカ、ゼオライト、パーライト、珪藻土、炭酸カルシウム、ガラス繊維等)、発泡剤、発泡助剤、ポリマー添加剤、可塑剤(ジアルキルフタレート、ジアルキルヘキサヒドロフタレート等)、架橋剤、架橋促進剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、有機無機の顔料(インディゴ化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ウルトラマリン化合物、アルミン酸コバルト化合物等)、加工助剤、他の核剤等の各種添加剤が例示される。
【0075】
これらの添加剤を使用する場合、その使用量は、本発明の効果を阻害しない限り、通常使用されている範囲で使用すればよく、例えば、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.0001〜100重量部程度、より好ましくは0.001〜50重量部程度で使用されるのが一般的である。
【0076】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が例示され、具体的な酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系酸化防止剤、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系酸化防止剤、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3,9−ビス(2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンなどの亜リン酸エステル系酸化防止剤等が例示される。中でも、フェノール系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、亜リン酸エステル系の酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3,9−ビス(2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンなどが特に推奨される。
【0077】
<ポリオレフィン系樹脂成形体>
本発明のポリオレフィン系樹脂成形体は、上記本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、慣用されている成形方法に従って成形することにより得られる。前記成形方法としては、本発明の効果を奏する限り、特に制約はなく、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧空成形、回転成形、フィルム成形等の従来公知の成形方法のいずれも採用できる。
【0078】
かくして得られたポリオレフィン系樹脂成形体は、透明性等の光学的特性や耐衝撃性等の機械的特性に優れており、成形品やシート、フィルムとして、自動車部材、電気部材、機械部品、日常雑貨など様々な用途で、非常に有用である。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や応用例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
【0080】
[結晶核剤の性状]
(1)粒度分布の測定
レーザー回折式粒度分布計(マルバーンインスツルメンツ社製、「マスターサイザー3000」)を用いて、以下の方法により測定した。まず、湿式測定セルを用い、十分に撹拌混合することで、分散剤としてノニオン系界面活性剤を加えた水溶液中に、試料を分散させ、続いて、得られた混合物を装置内で更に撹拌、循環させながら、超音波を当てて装置内にて十分に均一に分散させた。その後、超音波を当てながら試料の粒度分布を測定した。得られた粒度分布より、体積基準累積50%粒径(d50)を求め、平均粒径とした。同様に、粒度分布より、体積基準累積60%粒径(d60)と体積基準累積10%粒径(d10)を求め、その比(d60/d10)を計算し、粒径の均一度とした。d60/d10の値が1に近いほど、粒径が均一、即ち単分散に近い粒度分布を有すると言える。
【0081】
(2)アスペクト比の測定
フロー式粒子像分析装置(マルバーンインスツルメンツ社製、「FPIA−3000」)を用いて、以下の方法により測定した。測定容器中でイオン交換水30mlに分散剤として界面活性剤を加えた後に、測定試料を20mg加え、5分間分散処理を行い、試料を均一に分散させて、測定試料を調製した。得られた測定試料を用いて、測定を行い、上記装置付属の解析ソフトにより、アスペクト比の分布を求め、さらにその分布より、累積50%値と累積10%値を求め、各々アスペクト比の中心を意味する50%値、アスペクト比の大きな粒子の割合の目安となるLower値とした。上述の通り、Lower値は、その値が大きいほどアスペクト比の大きな粒子の割合が少ないと言える。
【0082】
[流動性の評価]
(3)粉体流動性試験(漏斗試験)
結晶核剤を、漏斗の上縁までの距離が5cmとなる高さから、開口部の直径15cm、穴の直径1.5cmの金属製の漏斗の上口へ注ぎ込み、振動させずに漏斗下口より落下させる。結晶核剤の漏斗から排出状態より、以下の基準に従って、結晶核剤の流動性を四段階評価にて判定した。
(評価基準)
◎:結晶核剤が全て速やかに漏斗から排出され、漏斗内壁の付着物もほとんど確認されない
○:結晶核剤がわずかに漏斗から排出されずに残るが、わずかな衝撃により残った結晶核剤も全て排出される
△:結晶核剤が漏斗から排出されずに残り、わずかな衝撃だけでは漏斗上に残った結晶核剤を完全に排出することは困難である
×:結晶核剤が漏斗から排出されずに多量に残り、衝撃を与えても漏斗上に残った結晶核剤を排出することは困難である
【0083】
[成形体の性状]
(4)ヘイズ値の測定
東洋精機製作所製のヘイズメータを用いて、JIS K7136(2000)に準じた方法でヘイズ値を測定した。評価試料には、1mm厚み射出成形品のポリプロピレン系樹脂成形体を使用した。得られたヘイズ値の数値が小さい程、透明性に優れていることを示す。
【0084】
(5)白点評価
射出成形した50mm×50mm×1mm形状のポリオレフィン系樹脂成形体を評価試料として使用し、目視観察で成形体中の白点の数をカウントした。得られた結果は、試料5枚の平均値をとり、その試料の白点数とし、得られた評価結果より、以下の基準により優劣を判断した。
非常に良好:白点数が3個未満であり、成形体の性能上、全く問題のないレベルである。
良好:白点数が3〜15個の範囲であり、結晶核剤としての性能上、問題はないが、他の物性面で未分散物の影響が出る可能性がある。
不良:白点数が15個を超えて存在が確認され、明らかに、結晶核剤の性能面でも十分に効果が発現されておらず、更に未分散物が様々な物性面で問題を生ずる可能性が高い。
【0085】
実施例中の化合物の略号
EDBS:1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール
DMDBS:1,3:2,4−ビス−O−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール
PDBN:1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−1−n−プロピルソルビトール
CDBS:1,3:2,4−ビス−O−(p−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール
【0086】
[実施例1]
(株)セイシン企業社製のジェット粉砕機「シングルトラック・ジェットミルSTJ−400」を用いて、室温下、圧力0.7MPa、処理量30kg/時の条件下で、汎用の粒径のDMDBS(新日本理化(株)社製、ゲルオールDXR)を微粉砕して、微粒子状の結晶核剤を調製した。得られた微粒子状の結晶核剤の粒度分布を測定し、その粒度分布より求められる平均値及び均一度を表1に示した。また、得られた微粒子状の結晶核剤のアスペクト比を測定し、その分布より求められる50%値及びLower値を表1に示した。続いて、得られた上記結晶核剤を用いて、粉体流動性試験(漏斗試験)にて、粉体流動性の評価を行い、結果を合わせて表1に示した。
【0087】
次に、ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレンランダムコポリマー(MFR=7g/10分(荷重2160g、温度230℃)、(株)プライムポリマー製、R−720)100重量部、結晶核剤として上記で得られた結晶核剤0.2重量部、及びその他添加剤としてステアリン酸カルシウム(日東化成工業(株)製、商品名「Ca−St」)0.05重量部、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン(株)製、商品名「IRGANOX1010」)0.05重量部、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン(株)製、商品名「IRGAFOS168」)0.05重量部をドライブレンドした。そのドライブレンド物を一軸押出機(田辺プラスチックス機械株式会社製VS―20)を用いてバレル温度250℃にて溶融混合後、押し出されたストランドを冷却し、ペレタイザーでカッティングして、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。
【0088】
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製NS40−5A)にて射出成形温度(加熱温度)240℃、金型温度(冷却温度)40℃の条件下で成形して、厚みが1mmのポリオレフィン系樹脂成形体を得た。得られた成形体を評価試料として用いて、ヘイズ値を測定し、得られた結果を合わせて表1に示した。また、同じ評価試料を用いて白点評価を行った結果、上記結晶核剤がポリオレフィン系樹脂中で非常に良好な分散性を示すことが確認された。
【0089】
[実施例2]
DMDBSの代わりにEDBSを用いた以外は実施例1と同様に実施して、本発明の結晶核剤を調製し、得られた結晶核剤の粒度分布、アスペクト比の測定、粉体流動性の評価を行い、その結果を表1に示した。続いて、実施例1と同様に実施して、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。得られた成形体を用いてヘイズ値を測定し、結果を表1に示した。また、白点評価の結果より、上記結晶核剤のポリオレフィン系樹脂中での分散性は非常に良好であった。
【0090】
[実施例3]
DMDBSの代わりにPDBNを用いた以外は実施例1と同様に実施して、本発明の結晶核剤を調製し、得られた結晶核剤の粒度分布、アスペクト比の測定、粉体流動性の評価を行い、その結果を表1に示した。続いて、実施例1と同様に実施して、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。得られた成形体を用いてヘイズ値を測定し、結果を表1に示した。また、白点評価の結果より、上記結晶核剤のポリオレフィン系樹脂中での分散性は非常に良好であった。
【0091】
[比較例1]
実施例1で得られた微粒子状の結晶核剤を再度実施例1と同条件にて微粉砕して、より微細な微粒子状の結晶核剤を調製し、本発明外の結晶核剤を得た。得られた結晶核剤の粒度分布、アスペクト比の測定、粉体流動性の評価を行い、その結果を表1に示した。続いて、実施例1と同様に実施して、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。得られた成形体を用いてヘイズ値を測定し、結果を表1に示した。また、白点評価の結果より、上記結晶核剤のポリオレフィン系樹脂中での分散性は非常に良好であった。
【0092】
[比較例2]
微粉砕前の汎用の粒径のDMDBSを用いて、粉体流動性の評価を行い、その結果を粒度分布、アスペクト比の数字と合わせて表1に示した。続いて、実施例1と同様に実施して、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た、得られた成形体を用いてヘイズ値を測定し、結果を表1に示した。また、白点評価の結果より、上記結晶核剤のポリオレフィン系樹脂中での分散性は良好であった。
【0093】
[比較例3]
微粉砕前の汎用の粒径のEDBSを用いて、粉体流動性の評価を行い、その結果を粒度分布、アスペクト比の数字と合わせて表1に示した。続いて、実施例1と同様に実施して、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。得られた成形体を用いてヘイズ値を測定し、結果を表1に示した。また、白点評価の結果より、上記結晶核剤のポリオレフィン系樹脂中での分散性は良好であった。
【0094】
[比較例4]
微粉砕前の汎用の粒径のPDBNを用いて、粉体流動性の評価を行い、その結果を粒度分布、アスペクト比の数字と合わせて表1に示した。続いて、実施例1と同様に実施して、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。得られた成形体を用いてヘイズ値を測定し、結果を表1に示した。また、白点評価の結果より、上記結晶核剤のポリオレフィン系樹脂中での分散性は非常に良好であった。
【0095】
【表1】
【0096】
[実施例4]
結晶核剤(A)として比較例1で得られた微粒子状の結晶核剤を用い、結晶核剤(B)として微粉砕前のDMDBSを用いて、室温下で(A)/(B)=2/1の比率(重量比)で混合して、本発明の結晶核剤を調製した。得られた結晶核剤の粒度分布、アスペクト比の測定、粉体流動性の評価を行い、その結果を表2に示した。続いて、実施例1と同様に実施して、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。得られた成形体を用いてヘイズ値を測定し、結果を表2に示した。また、白点評価の結果より、上記結晶核剤のポリオレフィン系樹脂中での分散性は非常に良好であった。
【0097】
[実施例5]
結晶核剤(B)として、微粉砕前のEDBSを用いた以外は、実施例4と同様に実施して結晶核剤を調製し、得られた結晶核剤の粒度分布、アスペクト比の測定、粉体流動性の評価を行い、その結果を表2に示した。続いて、実施例1と同様に実施して、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。得られた成形体を用いてヘイズ値を測定し、結果を表2に示した。また、白点評価の結果より、上記結晶核剤のポリオレフィン系樹脂中での分散性は非常に良好であった。
【0098】
[実施例6]
結晶核剤(B)として、未粉砕のCDBS(粒径の平均値7.5、均一度4.1)を用いた以外は、実施例4と同様に実施して結晶核剤を調製し、得られた結晶核剤の粒度分布、アスペクト比の測定、粉体流動性の評価を行い、その結果を表2に示した。続いて、実施例1と同様に実施して、ポリプロピレン系樹脂成形体を得た。得られた成形体を用いてヘイズ値を測定し、結果を表2に示した。また、白点評価の結果より、上記結晶核剤のポリオレフィン系樹脂中での分散性は非常に良好であった。
【0099】
【表2】
【0100】
上記表1及び表2の結果より、本発明の範囲内の性状を有する結晶核剤(実施例1〜6)は、本発明の範囲外の性状を有する結晶核剤と比較して、粉体流動性に非常に優れていることがわかる。また表1及び表2の結果より、本発明の結晶核剤は、ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤としての本来の性能に関しても、従来の結晶核剤と比較して、同等かそれ以上の性能を示すことが確認できる。この結果より、本発明の結晶核剤を用いることにより、ポリオレフィン系樹脂との配合時や配合後の成形加工時における作業性が大きく改善され、更に本発明の結晶核剤を用いたポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体が非常に優れた性能を有し、様々な用途で非常に有用であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の結晶核剤は、特定の性状に調整することにより流動性が大きく改良されており、その結晶核剤は、非常に流動性に優れた結晶核剤として、様々な用途で使用することができる。また、本発明の結晶核剤は、ポリオレフィン系樹脂用結晶核剤としての本来の性能である成形品の透明性等に関しては、これまでと同等かそれ以上の性能を有しており、自動車部材、電気部材、機械部品、日用雑貨、衣装等のケース、食品等の容器など、様々な用途で使うことができる。特に、不要な添加剤等の混入が敬遠される医療用途などでは、添加剤を加えることなく、流動性を改良できる技術として今後の活用が大いに期待される技術である。