(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正極用給液スリットと前記負極用給液スリットとの前記入口部同士の組、及び、前記正極用排液スリットと前記負極用排液スリットとの前記出口部同士の組のうち少なくとも一組は、前記枠体の厚さ方向における互いに重なる範囲がそれぞれの開口幅の10%以上99%以下である請求項1に記載の枠体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示が解決しようとする課題]
更なるレドックスフロー電池の信頼性及び性能の向上が望まれている。
【0012】
RF電池では、セルフレームの枠体において、正極電解液用流路及び負極電解液用流路を構成する正極及び負極用の各スリット(給液スリット及び排液スリット)内に充電状態の電解液が満たされていると、各スリット内において電解液を通じてシャント電流が流れ、シャント電流による損失(シャント電流損失)が生じる。このシャント電流に起因して電解液が発熱し、電解液の温度が上昇する場合があり、場合によっては、正極電解液と負極電解液との間に温度差が生じることがある。例えば、RF電池の待機時は、スリット内に電解液が留まっているため、電解液を流通させる運転時に比較して、スリット内で電解液の温度が上昇し易い。電解液の温度が上昇すると、電解液に析出物が生じることがあり、電解液が劣化するなど電池性能の低下を招く虞がある。また、正極電解液と負極電解液との間に温度差が生じると、枠体に反りなどの変形が発生する可能性があり、枠体(セルフレーム)にダメージを与える虞がある。したがって、正負の電解液が流通する各スリット内における両電解液の温度を均一化しつつ、両電解液の温度上昇を抑制することが望まれる。
【0013】
また、セルフレームを積層してセルスタックを構成した場合、隣接するセルフレームの枠体の一面側と他面側とが互いに対向して突き合わされた状態となる。枠体の一面側(表面側)及び他面側(裏面側)には、正極電解液用流路及び負極電解液用流路を構成する正極及び負極用の各スリットがそれぞれ設けられている。セルスタックを構成したとき、隣接する枠体のうち、一方の枠体の一面側に設けられた正極用スリットが他方の枠体の他面側に対向し、他方の枠体の他面側に設けられた負極用スリットが一方の枠体の一面側に対向することになる。
【0014】
従来の枠体では、通常、正極及び負極用の各スリットが表裏で実質的に同じパターンで形成されている。ここで、正極用スリットにおける枠体の内側に開口する開口部(入口部又は出口部)と負極用スリットにおける枠体の内側に開口する開口部とが、表裏で同じ位置(つまり、枠体の厚さ方向に重なり合う位置)に設けられたセルフレームを用いてセルスタックを構成することを考える。この場合、セルスタックを構成したとき、一方の枠体の一面側に設けられた正極用スリットの開口部と、他方の枠体の他面側に設けられた負極用スリットの開口部とが互いに
突き合わされた状態になる。そのため、それぞれの開口部同士が互いに
突き合わされることによって、開口部の角部に面圧が集中して、角部に欠けなどの破損が生じる可能性があり、信頼性を損なう虞がある。また、開口部の角部に面圧が集中することによって、隣接する枠体の間に介在する隔膜などが損傷する可能性もある。
【0015】
そこで、本開示は、レドックスフロー電池の信頼性及び性能の向上を図ることができる枠体、セルフレーム、及びセルスタックを提供することを目的の一つとする。また、本開示は、信頼性が高く、電池性能に優れるレドックスフロー電池を提供することを目的の一つとする。
【0016】
[本開示の効果]
本開示によれば、レドックスフロー電池の信頼性及び性能の向上を図ることができる枠体、セルフレーム、及びセルスタックを提供できる。また、本開示によれば、信頼性が高く、電池性能に優れるレドックスフロー電池を提供できる。
【0017】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0018】
(1)実施形態に係る枠体は、
レドックスフロー電池の正極電極と負極電極との間に配置される双極板の周囲に設けられる枠体であって、
前記枠体は、
前記枠体に貫通して設けられ、前記正極電極に供給される正極電解液が流通する正極用給液マニホールド、及び、前記正極電極から排出される正極電解液が流通する正極用排液マニホールドと、
前記枠体の一面側に設けられ、前記枠体の内側に開口する入口部を有し、前記正極用給液マニホールドから前記正極電極に正極電解液を供給する正極用給液スリットと、前記枠体の内側に開口する出口部を有し、前記正極電極から前記正極用排液マニホールドに前記正極電解液を排出する正極用排液スリットと、を備える正極電解液用流路と、
前記枠体に貫通して設けられ、前記負極電極に供給される負極電解液が流通する負極用給液マニホールド、及び、前記負極電極から排出される負極電解液が流通する負極用排液マニホールドと、
前記枠体の他面側に設けられ、前記枠体の内側に開口する入口部を有し、前記負極用給液マニホールドから前記負極電極に負極電解液を供給する負極用給液スリットと、前記枠体の内側に開口する出口部を有し、前記負極電極から前記負極用排液マニホールドに前記負極電解液を排出する負極用排液スリットと、を備える負極電解液用流路と、を備え、
前記正極用給液スリットと前記負極用給液スリットとの前記入口部同士の組、及び、前記正極用排液スリットと前記負極用排液スリットとの前記出口部同士の組のうち少なくとも一組は、前記枠体の厚さ方向において互いに部分的に重なるように設けられている。
【0019】
上記枠体によれば、正極及び負極用の各スリットの開口部(入口部及び出口部)同士の少なくとも一方の組が、枠体の厚さ方向において互いに部分的に重なるように設けられている。「枠体の厚さ方向において互いに部分的に重なる」とは、枠体の厚さ方向(一方の面から他方の面に向かう方向)から透視的に見たとき、枠体の厚さ方向に一部が重なり、かつ、枠体の周方向にずれていることを意味する。枠体の厚さ方向に部分的に重なることで、正極及び負極用の各スリットに流通する正負の電解液に温度差が生じた場合、高温側の電解液から低温側の電解液への熱伝導が起こり、正負の電解液の温度を均一化できる。また、熱伝導によって高温側の電解液が冷却され、電解液の温度上昇が抑制されるため、電解液成分の析出を抑制でき、電解液の劣化を抑制できる。正負の電解液に温度差が生じ難くなるため、枠体に反りなどの変形も発生し難い。
【0020】
更に、正極及び負極用の各スリットの開口部(入口部及び出口部)同士の少なくとも一方の組が、枠体の厚さ方向から見て、周方向にずれていることで、上記枠体を有するセルフレームを積層してセルスタックを構成したとき、それぞれの開口部同士が互いに
突き合わされた状態にならない。そのため、それぞれの開口部の角部に面圧が集中することを回避できるので、角部に欠けなどの破損が生じ難い。また、開口部の角部の面圧集中を回避することによって、隣接する枠体の間に介在する隔膜などが損傷することも抑制できる。したがって、上記枠体は、正負の電解液の温度を均一化しつつ、両電解液の温度上昇を抑制できながら、セルスタックを構成したときの枠体の破損などを抑制できるので、レドックスフロー電池の信頼性及び性能の向上を図ることができる。
【0021】
(2)上記枠体の一形態として、前記正極用給液スリットと前記負極用給液スリットとの前記入口部同士の組、及び、前記正極用排液スリットと前記負極用排液スリットとの前記出口部同士の組のうち少なくとも一組は、前記枠体の厚さ方向における互いに重なる範囲がそれぞれの開口幅の10%以上99%以下であることが挙げられる。
【0022】
正極及び負極用の各スリットの開口部(入口部及び出口部)同士の少なくとも一方の組において、枠体の厚さ方向における互いに重なる重複範囲がそれぞれの開口幅の10%以上であることで、高温側の電解液から低温側の電解液への熱伝導を確保し易い。そのため、正負の電解液の温度を効果的に均一化できると共に、高温側の電解液の冷却効率を高め、電解液の温度上昇をより抑制できる。また、重複範囲がそれぞれの開口幅の99%以下であることで、開口部の角部同士のずれを確保し易い。そのため、それぞれの開口部の角部に面圧が集中することを効果的に回避でき、面圧集中によって角部に欠けなどの破損が生じたり、隔膜などが損傷することをより抑制できる。上記枠体において、上記重複範囲の下限は、それぞれの開口幅の20%以上、30%以上、更に50%以上であることが好ましく、上限は、それぞれの開口幅の95%以下、更に90%以下であることが好ましい。
【0023】
(3)実施形態に係るセルフレームは、上記(1)又は(2)に記載の枠体と、前記枠体の内側に設けられる前記双極板とを有する。
【0024】
上記セルフレームによれば、上記した実施形態に係る枠体を有することから、レドックスフロー電池の信頼性及び性能の向上を図ることができる。
【0025】
(4)実施形態に係るセルスタックは、上記(3)に記載のセルフレームを備える。
【0026】
上記セルスタックによれば、上記した実施形態に係るセルフレームを備えることから、レドックスフロー電池の信頼性及び性能の向上を図ることができる。
【0027】
(5)別の実施形態に係るセルスタックは、
レドックスフロー電池の正極電極と負極電極との間に配置される双極板と、前記双極板の周囲に設けられる枠体とを有するセルフレームを備えるセルスタックであって、
前記枠体は、
前記枠体に貫通して設けられ、前記正極電極に供給される正極電解液が流通する正極用給液マニホールド、及び、前記正極電極から排出される正極電解液が流通する正極用排液マニホールドと、
前記枠体の一面側に設けられ、前記枠体の内側に開口する入口部を有し、前記正極用給液マニホールドから前記正極電極に正極電解液を供給する正極用給液スリットと、前記枠体の内側に開口する出口部を有し、前記正極電極から前記正極用排液マニホールドに前記正極電解液を排出する正極用排液スリットと、を備える正極電解液用流路と、
前記枠体に貫通して設けられ、前記負極電極に供給される負極電解液が流通する負極用給液マニホールド、及び、前記負極電極から排出される負極電解液が流通する負極用排液マニホールドと、
前記枠体の他面側に設けられ、前記枠体の内側に開口する入口部を有し、前記負極用給液マニホールドから前記負極電極に負極電解液を供給する負極用給液スリットと、前記枠体の内側に開口する出口部を有し、前記負極電極から前記負極用排液マニホールドに前記負極電解液を排出する負極用排液スリットと、を備える負極電解液用流路と、を備え、
前記正極用給液スリットと前記負極用給液スリットとの前記入口部同士の組、及び、前記正極用排液スリットと前記負極用排液スリットとの前記出口部同士の組は、前記枠体の厚さ方向において互いに重なり合うように設けられており、
前記セルフレームが積層され、隣接する前記セルフレームの前記枠体の一面側と他面側とが互いに対向した状態において、一方の前記枠体の一面側に設けられた前記正極用給液スリットの前記入口部及び前記正極用排液スリットの前記出口部と、他方の前記枠体の他面側に設けられた前記負極用給液スリットの前記入口部及び前記負極用排液スリットの前記出口部とが、それぞれ積層方向に互いに部分的に重なるように設けられている。
【0028】
上記セルスタックによれば、セルフレームの枠体において、正極及び負極用の各スリットの開口部(入口部及び出口部)同士の組が、枠体の厚さ方向において互いに重なり合うように設けられている。「枠体の厚さ方向において互いに重なり合う」とは、枠体の厚さ方向(一方の面から他方の面に向かう方向)から透視的に見たとき、実質的に同じ位置に重複していることを意味する。例えば、正極及び負極用の各スリットの開口部同士の組において、枠体の厚さ方向における互いに重なる重複範囲がそれぞれの開口幅の90%超100%以下であることが挙げられる。枠体の厚さ方向に重なり合うことで、正極及び負極用の各スリットに流通する正負の電解液に温度差が生じた場合、高温側の電解液から低温側の電解液への熱伝導が起こり、正負の電解液の温度を均一化できる。また、熱伝導によって高温側の電解液が冷却され、電解液の温度上昇が抑制されるため、電解液成分の析出を抑制でき、電解液の劣化を抑制できる。正負の電解液に温度差が生じ難くなるため、枠体に反りなどの変形も発生し難い。上記セルスタックを構成する個々のセルフレームの枠体において、正極及び負極用の各スリットの開口部同士の組の厚さ方向における上記重複範囲の下限は、それぞれの開口幅の95%超、更に99%超であることが好ましい。
【0029】
セルスタックは、複数のセルフレームを積層して構成され、隣接するセルフレームの枠体の一面側と他面側とが互いに対向した状態となる。上記セルスタックでは、隣接する枠体のうち、一方の一面側に設けられた正極用の各スリットの開口部(入口部及び出口部)と、他方の他面側に設けられた負極用の各スリットの開口部とが積層方向に互いに部分的に重なるように設けられている。「積層方向に互いに部分的に重なる」とは、セルフレームの積層方向から透視的に見たとき、積層方向に一部が重なり、かつ、枠体の周方向にずれていることを意味する。つまり、隣接するセルフレームの枠体同士において、一方の正極用の各スリットの開口部と他方の負極用の各スリットの開口部とが、積層方向から見て、周方向にずれていることから、それぞれの開口部同士が互いに
突き合わされた状態にならない。そのため、それぞれの開口部の角部に面圧が集中することを回避できるので、角部に欠けなどの破損が生じ難い。また、開口部の角部の面圧集中を回避することによって、隣接する枠体の間に介在する隔膜などが損傷することも抑制できる。したがって、上記セルスタックは、正負の電解液の温度を均一化しつつ、両電解液の温度上昇を抑制できながら、枠体(セルフレーム)の破損などを抑制できるので、レドックスフロー電池の信頼性及び性能の向上を図ることができる。ここで、隣接するセルフレームの一方の枠体の一面側に設けられた正極用の各スリットの開口部と、他方の枠体の他面側に設けられた負極用の各スリットの開口部とが積層方向に互いに重なる重複範囲としては、例えば、それぞれの開口幅の10%以上99%以下であることが挙げられる。隣接するセルフレームの枠体において、一方の一面側に設けられた正極用の各スリットの開口部と、他方の他面側に設けられた負極用の各スリットの開口部との積層方向における上記重複範囲の下限は、それぞれの開口幅の20%以上、30%以上、更に50%以上であることが好ましく、上限は、それぞれの開口幅の95%以下、更に90%以下であることが好ましい。
【0030】
(6)実施形態に係るレドックスフロー電池は、上記(4)又は(5)に記載のセルスタックを備える。
【0031】
上記レドックスフロー電池によれば、上記した実施形態に係るセルスタックを備えることから、信頼性が高く、電池性能に優れる。
【0032】
[本願発明の実施形態の詳細]
本願発明の実施形態に係る枠体、セルフレーム、セルスタック、及びレドックスフロー電池(RF電池)の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一又は相当部分を示す。なお、本願発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
《RF電池》
図1、
図2を参照して、実施形態に係るレドックスフロー電池(以下、RF電池)の一例を説明する。RF電池1は、正極電解液及び負極電解液に酸化還元により価数が変化する金属イオンを活物質として含有する電解液を使用し、正極電解液に含まれるイオンの酸化還元電位と、負極電解液に含まれるイオンの酸化還元電位との差を利用して充放電を行う電池である。ここでは、RF電池1の一例として、正極電解液及び負極電解液に活物質となるVイオンを含有するバナジウム電解液を使用したバナジウム系RF電池の場合を示す。
図1中のセル100内の実線矢印は充電反応を、破線矢印は放電反応をそれぞれ示している。RF電池1は、例えば、負荷平準化用途、瞬低補償や非常用電源などの用途、大量導入が進められている太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの出力平滑化用途などに利用される。
【0034】
RF電池1は、水素イオンを透過させる隔膜101で正極セル102と負極セル103とに分離されたセル100を備える。正極セル102には正極電極104が内蔵され、かつ正極電解液を貯留する正極電解液用タンク106が導管108、110を介して接続されている。導管108には、正極電解液を正極セル102に圧送するポンプ112が設けられており、これらの部材106、108、110、112によって正極電解液を循環させる正極用循環機構100Pが構成されている。同様に、負極セル103には負極電極105が内蔵され、かつ負極電解液を貯留する負極電解液用タンク107が導管109、111を介して接続されている。導管109には、負極電解液を負極セル103に圧送するポンプ113が設けられており、これらの部材107、109、111、113によって負極電解液を循環させる負極用循環機構100Nが構成されている。各タンク106、107に貯留される各電解液は、充放電を行う運転時には、ポンプ112、113によりセル100(正極セル102及び負極セル103)内に循環され、充放電を行わない待機時には、ポンプ112、113が停止され、循環されない。
【0035】
《セルスタック》
セル100は通常、
図2、
図3に示すような、セルスタック2と呼ばれる構造体の内部に形成される。セルスタック2は、サブスタック200(
図3参照)と呼ばれる積層体をその両側から2枚のエンドプレート220で挟み込み、両側のエンドプレート220を締付機構230で締め付けることで構成されている(
図3に例示する構成では、複数のサブスタック200を備える)。サブスタック200は、セルフレーム3、正極電極104、隔膜101、及び負極電極105を複数積層してなり、その積層体の両端に給排板210(
図3の下図参照、
図2では省略)が配置された構成である。
【0036】
《セルフレーム》
セルフレーム3は、
図2、
図3に示すように、正極電極104と負極電極105との間に配置される双極板31と、双極板31の周囲に設けられる枠体32とを有する。双極板31の一面側には、正極電極104が接触するように配置され、双極板31の他面側には、負極電極105が接触するように配置される。枠体32の内側には、双極板31が設けられ、正極電極104及び負極電極105が双極板31を挟んで収納される。サブスタック200(セルスタック2)では、隣接する各セルフレーム3の双極板31の間にそれぞれ1つのセル100が形成されることになり、隣接する各セルフレーム3の枠体32の一面側と他面側とが互いに対向して突き合わされた状態となる。
【0037】
双極板31は、例えば、プラスチックカーボンなどで形成され、枠体32は、例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などのプラスチックで形成されている。双極板31は、例えば、射出成型、プレス成型、真空成型などの公知の方法によって成形されている。セルフレーム3は、双極板31の周囲に枠体32が射出成型などにより一体化されている。
【0038】
《枠体》
枠体32は、正極電極104及び負極電極105の各電極に供給される正極電解液及び負極電解液の各電解液が流通する給液マニホールド33、34、及び、各電極から排出される各電解液が流通する排液マニホールド35、36を備える。また、枠体32には、各給液マニホールド33、34から各電極に各電解液を供給する給液スリット33s、34sと、各電極から各排液マニホールド35、36に各電解液を排出する排液スリット35s、36sとを備える。正極電極104及び負極電極105への正負の各電解液の流通は、給排板210(
図3の下図参照)を介して、
図3に示す枠体32に貫通して設けられた給液マニホールド33、34及び排液マニホールド35、36と、枠体32の一面側と他面側にそれぞれ設けられた給液スリット33s、34s及び排液スリット35s、36sにより行われる(
図4、
図5も合わせて参照)。
【0039】
この例では、給液マニホールド33及び排液マニホールド35は正極電解液が流通するマニホールドである。具体的には、給液マニホールド33は正極電極104に供給される正極電解液が流通する正極用給液マニホールドであり、排液マニホールド35は正極電極104から排出される正極電解液が流通する正極用排液マニホールドである。一方、給液マニホールド34及び排液マニホールド36は負極電解液が流通するマニホールドである。具体的には、給液マニホールド34は負極電極105に供給される負極電解液が流通する負極用給液マニホールドであり、排液マニホールド36は負極電極105から排出される負極電解液が流通する負極用排液マニホールドである。
【0040】
また、
図4に示す枠体32の一面側(表面側)に設けられた給液スリット33s及び排液スリット35sは正極電解液用流路32pを構成するスリットである。具体的には、給液スリット33sは正極用給液マニホールド33から正極電極104に正極電解液を供給する正極用給液スリットであり、排液スリット35sは正極電極104から正極用排液マニホールド35に正極電解液を排出する正極用排液スリットである。正極用給液スリット33sは枠体32の内側に開口する入口部33iを有し、正極用排液スリット35sは枠体32の内側に開口する出口部35oを有する。一方、
図5に示す枠体32の他面側(裏面側)に設けられた給液スリット34s及び排液スリット36sは負極電解液用流路32nを構成するスリットである。具体的には、給液スリット34sは負極用給液マニホールド34から負極電極105に負極電解液を供給する負極用給液スリットであり、排液スリット35sは負極電極から105から負極用排液マニホールド36に負極電解液を排出する負極用排液スリットである。負極用給液スリット34sは枠体32の内側に開口する入口部34iを有し、負極用排液スリット36sは枠体32の内側に開口する出口部36oを有する。正極用給液スリット33sと負極用給液スリット34sとは、スリットの形状、長さ、幅及び深さが実質的に同じであり、正極用排液スリット35sと負極用排液スリット36sとは、スリットの形状、長さ、幅及び深さが実質的に同じである。
【0041】
各スリットの深さは、例えば、0.5mm以上10mm以下、更に1.0mm以上5.0mm以下とし、枠体32の機械的強度を確保する観点から、枠体32の厚さの10%以上45%以下程度を満たすことが挙げられる。各スリットの幅は、例えば、0.5mm以上20mm以下、更に1.0mm以上8.0mm以下を満たすことが挙げられる。ここでは、各スリットの長さ方向に直交する断面形状が矩形状であるが、これに限らず、各スリットの断面形状は、例えば、三角形状、台形状、半円形状、半楕円形状などであってもよい。
【0042】
この例に示す枠体32(セルフレーム3)の場合、正極電解液は、
図4に示すように、給液マニホールド33から枠体32の下部に形成された給液スリット33sを介して正極電極104(
図3参照)に供給され、枠体32の上部に形成された排液スリット35sを介して排液マニホールド35に排出される。同様に、負極電解液は、
図5に示すように、給液マニホールド34から枠体32の下部に形成された給液スリット34sを介して負極電極105(
図3参照)に供給され、枠体32の上部に形成された排液スリット36sを介して排液マニホールド36に排出される。枠体32の内側下縁部及び内側上縁部には、縁部に沿って整流部(図示せず)が形成されていてもよい。整流部は、給液スリット33s、34sから供給される各電解液を各電極の下縁部に沿って拡散させたり、各電極の上縁部から排出される各電解液を排液スリット35s、36sへ集約する機能を有する。
【0043】
その他、各セルフレーム3の枠体32の間には、電解液の漏洩を抑制するため、Oリングや平パッキンなどの環状のシール部材37(
図2、
図3参照)が配置されている。枠体32には、シール部材37を配置するためのシール溝38(
図4、
図5参照)が形成されている。
【0044】
[実施形態1]
実施形態に係る枠体32の特徴の一つは、正極用給液スリット33sと負極用給液スリット34sとの入口部33i、34i同士の組、及び、正極用排液スリット35sと負極用排液スリット36sとの出口部35o、36o同士の組のうち少なくとも一組が、枠体32の厚さ方向において互いに部分的に重なるように設けられている点にある。以下、
図4〜
図8を参照して、実施形態1に係る枠体32(セルフレーム3)、及びこのセルフレーム3を備えるセルスタック2について、詳しく説明する
【0045】
図4、
図5に示すセルフレーム3の枠体32は、
図6Aに示すように、正極用給液スリット33sの入口部33iと負極用給液スリット34sの入口部34iとが、枠体32の厚さ方向において互いに部分的に重なるように位置する。また、このセルフレーム3の枠体32は、
図6Bに示すように、枠体32の正極用排液スリット35sの出口部35oと負極用排液スリット36sの出口部36oとが、枠体32の厚さ方向において互いに部分的に重なるように位置する。したがって、実施形態1に係るセルフレーム3では、入口部33i、34i同士の組と出口部35o、36o同士の組のそれぞれが、枠体32の厚さ方向において互いに部分的に重なるように設けられている。
【0046】
図6Aに示すように、入口部33i、34i同士の組が枠体32の厚さ方向に部分的に重なることで、正極用給液スリット33sに流通する正極電解液と負極用給液スリット34sに流通する負極電解液との間で熱伝導が効率よく行われる。一方、
図6Bに示すように、出口部35o、36o同士の組が枠体32の厚さ方向に部分的に重なることで、正極用排液スリット35sに流通する正極電解液と負極用排液スリット36sに流通する負極電解液との間で熱伝導が効率よく行われる。したがって、正極電解液と負極電解液との間に温度差が生じた場合、高温側の電解液から低温側の電解液への熱伝導が起こり、両電解液の温度を均一化しつつ、両電解液の温度上昇を抑制できる。
【0047】
セルフレーム3を用いてセルスタック2(
図2、
図3参照)を構成した場合、
図7A、Bに示すように、隣接するセルフレーム3の枠体32の一面側と他面側とが互いに対向して積層される。入口部33i、34i同士の組が、枠体32の厚さ方向から見て周方向にずれていることで、
図7Aに示すように、入口部33i、34iの角部(
図7A中の丸で囲む部分)同士が互いに
突き合わされた状態にならない。そのため、入口部33i、34iの角部に面圧が集中することを回避できる。一方、出口部35o、36o同士の組が、枠体32の厚さ方向から見て周方向にずれていることで、
図7Bに示すように、出口部35o、36oの角部(
図7B中の丸で囲む部分)同士が互いに
突き合わされた状態にならない。そのため、出口部35o、36oの角部に面圧が集中することを回避できる。したがって、セルフレーム3を積層したときに、正極及び負極用の各スリット33s〜36sにおける開口部(入口部33i、34i及び出口部35o、36o)の角部に欠けなどの破損が生じ難い。
【0048】
図6Aに示す入口部33i、34i同士の組は、その開口幅をWiとするとき、枠体32の厚さ方向における互いに重なる重複範囲Liが開口幅Wiの10%以上99%以下を満たすことが挙げられる。また、
図6Bに示す出口部35o、36o同士の組は、その開口幅をWoとするとき、枠体32の厚さ方向における互いに重なる重複範囲Loが開口幅Woの10%以上99%以下を満たすことが挙げられる。入口部33i、34i同士の組の重複範囲Li及び出口部35o、36o同士の組の重複範囲Loはそれぞれ、0.1Wi≦Li≦0.99Wi、0.1Wo≦Lo≦0.99Woで表される。重複範囲Li(Lo)が開口幅Wi(Wo)の10%以上を満たす場合、正極及び負極用の給液スリット33s、34sの入口部33i、34i(排液スリット35s、36sの出口部35o、36o)において、高温側の電解液から低温側の電解液への熱伝導を確保し易い。そのため、正負の電解液の温度を効果的に均一化できると共に、高温側の電解液の冷却効率を高め、電解液の温度上昇をより抑制できる。重複範囲Li(Lo)が開口幅Wi(Wo)の99%以下を満たす場合、入口部33i、34i(出口部35o、36o)の角部のずれを確保し易く、面圧集中による角部の破損を効果的に抑制できる。本実施形態において、上記重複範囲Li及びLoはそれぞれ、上記開口幅Wi及びWoの20%以上、30%以上、更に50%以上であることが好ましく、95%以下、更に90%以下であることが好ましい。
【0049】
{作用効果}
実施形態1に係る枠体32は、次の作用効果を奏する。
【0050】
入口部33i、34i同士及び出口部35o、36o同士の組が枠体32の厚さ方向に部分的に重なることで、正負の電解液に温度差が生じた場合に、高温側の電解液から低温側の電解液への熱伝導が起こり、正負の電解液の温度を均一化できる。熱伝導によって高温側の電解液が冷却され、電解液の温度上昇が抑制されるため、電解液成分の析出を抑制でき、電解液の劣化を抑制できる。また、正負の電解液に温度差が生じ難くなるため、枠体32に反りなどの変形も発生し難い。
【0051】
更に、入口部33i、34i同士及び出口部35o、36o同士の組が枠体32の厚さ方向から見て周方向にずれていることで、セルフレーム3を積層したとき、隣接する枠体32の入口部33i、34i同士及び出口部35o、36o同士が互いに
突き合わされた状態になることを回避できる。そのため、入口部33i、34i及び出口部35o、36oの角部に面圧が集中することを回避できるので、角部に欠けなどの破損が生じ難い。また、角部の面圧集中を回避することによって、隣接する枠体32の間に介在する隔膜101が損傷することも抑制できる。したがって、セルフレーム3は、正負の電解液の温度を均一化しつつ、両電解液の温度上昇を抑制できながら、セルスタック2を構成したときの枠体32の破損などを抑制できるので、RF電池1の信頼性及び性能の向上を図ることができる。
【0052】
実施形態1では、入口部33i、34i同士及び出口部35o、36o同士の組のそれぞれが、枠体32の厚さ方向において互いに部分的に重なるように設けられている形態を例に挙げて説明した。これに限らず、入口部33i、34i同士の組のみが部分的に重なるように設けられていてもよいし、出口部35o、36o同士の組のみが部分的に重なるように設けられていてもよい。
【0053】
[実施形態2]
以下、
図8〜
図10を参照して、別の実施形態に係るセルスタック2について、説明する。以下では、実施形態1との相違点を中心に説明し、実施形態1で説明した内容と同じ内容についてはその説明を省略する。実施形態2に係るセルスタック2の特徴の一つは、
図8、
図9に示すように、セルスタック2を構成する個々のセルフレーム3の枠体32において、正極用給液スリット33sと負極用給液スリット34sとの入口部33i、34i同士の組、及び、正極用排液スリット35sと負極用排液スリット36sとの出口部35o、36o同士の組が、枠体32の厚さ方向において互いに重なり合うように設けられている点にある。また、セルスタック2の別の特徴の1つは、
図10に示すように、隣接するセルフレーム3同士において、一方の枠体32の一面側に設けられた正極用給液スリット33sの入口部33i及び正極用排液スリット35sの出口部35oと、他方の枠体32の他面側に設けられた負極用給液スリット34sの入口部34i及び負極用排液スリット36sの出口部36oとが、それぞれ積層方向に互いに部分的に重なるように設けられている点にある。
【0054】
実施形態2に係るセルスタック2では、
図8、
図9Aに示すように、セルフレーム3の枠体32において、正極用給液スリット33sの入口部33iと負極用給液スリット34sの入口部34iとが、枠体32の厚さ方向において互いに重なり合うように位置する。また、
図8、
図9Bに示すように、枠体32の正極用排液スリット35sの出口部35oと負極用排液スリット36sの出口部36oとが、枠体32の厚さ方向において互いに重なり合うように位置する。したがって、実施形態2のセルスタック2におけるセルフレーム3(枠体32)では、入口部33i、34i同士の組と出口部35o、36o同士の組のそれぞれが、枠体32の厚さ方向において互いに重なり合うように設けられている。
【0055】
図9Aに示すように、入口部33i、34i同士の組が枠体32の厚さ方向に重なり合うことで、正極用給液スリット33sに流通する正極電解液と負極用給液スリット34sに流通する負極電解液との間で熱伝導が効率よく行われる。一方、
図9Bに示すように、出口部35o、36o同士の組が枠体32の厚さ方向に重なり合うことで、正極用排液スリット35sに流通する正極電解液と負極用排液スリット36sに流通する負極電解液との間で熱伝導が効率よく行われる。したがって、正極電解液と負極電解液との間に温度差が生じた場合、高温側の電解液から低温側の電解液への熱伝導が起こり、両電解液の温度を均一化しつつ、両電解液の温度上昇を抑制できる。
【0056】
入口部33i、34i同士の組、及び、出口部35o、36o同士の組は、
図8に示すように、枠体32の厚さ方向から透視的に見たとき、実質的に同じ位置に重複して設けられている。
図9Aに示す入口部33i、34i同士の組は、その開口幅をWiとするとき、枠体32の厚さ方向における互いに重なる重複範囲Liが開口幅Wiの90%超100%以下を満たすことが挙げられる。また、
図9Bに示す出口部35o、36o同士の組は、その開口幅をWoとするとき、枠体32の厚さ方向における互いに重なる重複範囲Loが開口幅Woの90%超100%以下を満たすことが挙げられる。この例では、重複範囲Li及びLoが開口幅Wi及びWoと同等である(Li=Wi、Lo=Wo)。本実施形態において、上記重複範囲Li及びLoはそれぞれ、上記開口幅Wi及びWoの95%超、更に99%超であることが好ましい。
【0057】
ここで、実施形態2のセルスタック2では、複数のセルフレーム3が互いにずれて積層されている。そして、セルフレーム3が積層された状態において、
図10Aに示すように、隣接する枠体32のうち、一方の一面側に設けられた正極用給液スリット33sの入口部33iと、他方の他面側に設けられた負極用給液スリット34sの入口部34iとが積層方向に互いに部分的に重なるように設けられている。また、
図10Bに示すように、一方の一面側に設けられた正極用排液スリット35sの出口部35oと、他方の他面側に設けられた負極用排液スリット36sの出口部36oとが積層方向に互いに部分的に重なるように設けられている。
【0058】
つまり、実施形態2のセルスタック2では、
図10A、Bに示すように、隣接する枠体32同士において、一方の一面側に設けられた入口部33i及び出口部35oと、他方の他面側に設けられた入口部34i及び出口部36oとが、それぞれ積層方向から見て周方向にずれている。そのため、入口部33i、34iの角部(
図10A中の丸で囲む部分)同士、並びに、出口部35o、36oの角部(
図10B中の丸で囲む部分)同士が互いに
突き合わされた状態にならない。よって、入口部33i、34iの角部、並びに、出口部35o、36oの角部に面圧が集中することを回避できる。したがって、正極及び負極用の各スリット33s〜36sにおける開口部(入口部33i、34i及び出口部35o、36o)の角部に欠けなどの破損が生じ難い。
【0059】
一方の枠体32の一面側に設けられた入口部33i及び出口部35oと、他方の枠体32の他面側に設けられた入口部34i及び出口部36oとが積層方向に互いに重なる重複範囲Lxは、例えば、それぞれの開口幅Wi及びWo(
図9参照)の10%以上99%以下を満たすことが挙げられる。本実施形態において、上記重複範囲Lxは、上記開口幅Wi及びWoの20%以上、30%以上、更に50%以上であることが好ましく、95%以下、更に90%以下であることが好ましい。
【0060】
実施形態2に係るセルスタック2は、実施形態1で説明した内容と同様の効果を奏することができる。
【0061】
[本願発明の実施形態の用途]
本願発明の実施形態に係る枠体、セルフレーム、及びセルスタックは、RF電池に好適に利用可能である。