(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、焙煎器11、特に手作業感を味わえる手動式の焙煎器11の一部断面側面図であり、この焙煎器11は、加熱される焙煎空間12と、焙煎空間12の底面13の上方に隙間14をあけて設けられて底面13に対し相対回転する撹拌部15を備えている。この焙煎空間12の加熱は、外部の熱源、たとえば調理用加熱器21で行われる。
図1では、調理用加熱器21としてガスコンロ22を例示している。
図1中、23は五徳である。
【0020】
焙煎器11は、上面が開口した有底円筒状で内部に前述の焙煎空間12を形成する本体部材31と、この本体部材31に対して上から着脱可能に取り付けられる回転ユニット51を備えている。回転ユニット51は、
図2に示したように分解可能な複数の部材で構成される。これらのほかに、必要に応じて本体部材31を五徳23の上で支える補助脚部材71を備えてもよい。これらの部材は金属製である。
【0021】
本体部材31は、本体部材31と回転ユニット51の断面図である
図3に示したように、平らな円板状に形成された前述の底面13と、底面13の全周から湾曲部32を介して立ち上がる周壁33を有している。周壁33は円筒状であり、周壁33の外周面にはハンドル34が設けられている。図示例では外周面の一部に形成された棒状のハンドル34を示しているが、ハンドル34の形態は適宜設定でき、たとえば両手鍋のように一組のハンドルを備えてもよい。
【0022】
周壁33の上端面には平面視円環状の受け面35が形成されている。受け面35は全周において同一高さであり、受け面35の幅は、回転ユニット51を安定して支持し得る適宜幅に設定される。受け面35は図示例の様な平坦面であるほか、例えば凹溝状や凸条状であってもよい。
【0023】
また本体部材31の底面13には凹凸が形成されている。凹凸は、底面13の基準となる面に対して凸部を形成して凹凸とするも、凹部を形成して凹凸とするも、凸部と凹部の双方を形成して凹凸とするもよい。図示例では、
図3のA−A断面図である
図4にも示したように、底面13の中心から放射状に延びる複数本の凸部36を形成することによって凹凸を形成している。
【0024】
回転ユニット51を構成する複数の部材は、
図2、
図3に示したように、筒状の支持体52と、支持体52内に着脱可能に取り付けられる対流促進部としての対流促進部材53と、支持体52の上端の開口部52aに回転不可に着脱可能な肩部材54と、肩部材54の中央に形成された窓部54aに着脱可能に嵌められる蓋体55である。
【0025】
支持体52は、筒状、特に上端部の上端口部56は円筒状である。この上端口部56は、本体部材31の受け面35の内周縁よりも大径に形成されており、上端口部56を除いたそれより下側の下側部分57を本体部材31の内側の焙煎空間12内に収容した状態で回転するものである。この支持体52の下端部に、前述の撹拌部15が形成されている。
【0026】
支持体52の上端口部56の下側には、上側ほど外周側に広がる傾斜面56aを有し、この傾斜面56aより下に、本体部材31の上端部の内周面より若干小径の外周面を有する適宜高さのストレート部56bが形成されている。一方、傾斜面56aより上に受け面35上を動く滑動部材58を備えている。滑動部材58は、図示例のように例えば軸受で構成するとよい。軸受には金属製のものはもちろん、セラミック製のものも使用できる。
【0027】
具体的には、複数個の軸受を滑動部材58として備える場合、それら滑動部材58は支持体52の周方向に沿って等間隔に6個配設するとよい。そしてこの場合には、そのうち一つ置きに並ぶ3個の滑動部材58を一組とする二組のうちの一組の滑動部材58が受け面35に接し、他の一組の滑動部材58が受け面35から若干浮くように設定する。つまり、受け面35に接する一組の滑動部材58が主に滑動を担い、他の一組の滑動部材58が主に支持体52の傾きを抑制して良好な支持を行うようにして、支持体52の安定化と円滑な回転をはかる。
【0028】
支持体52の下側部分57は円筒状の周壁で構成されており、全体に複数の貫通穴57aが形成されている。下側部分57は円筒状であるほか、例えば六角筒状などの角筒状であってもよい。そして支持体52の下端部における支持体52の中心線と直交する直線との交点部分には、
図4に示したように撹拌部15の両端が形成されている。
【0029】
撹拌部15は、本体部材31の底面13と平行を保ったまま回転するものであり、直線状や曲線状などの適宜の形態に形成されるが、この例では、相対回転中心P、つまり前述の支持体52の中心線位置から外周方向に延びる途中に、相対回転後方に向けて平面視凹状に湾曲する湾曲部15aを有する形状としている。このような形態の撹拌部15を、相対回転中心Pを挟んで2つ形成して、全体として平面視S字形の撹拌翼59を構成している。
【0030】
撹拌部15の縦断面形状も適宜形成されるが、この例では、縦断面形状を長方形に形成している。撹拌部15の高さは、被焙煎物の種類などに応じて適宜設定される。被焙煎物がたとえばコーヒー豆のような粒状のものである場合、相対回転によって被焙煎物が撹拌部15を容易に乗り越えないように、撹拌部15の高さH1は、
図5に示したように、被焙煎物Xの長軸方向の長さL1以上の高さに設定される。このような構成の撹拌部15を有した撹拌翼59は、適宜幅の帯状の金属板をS字状に加工することで形成できる。
【0031】
支持体52の下部である、支持体52の下側部分57には、相対回転方向後方ほど高い切欠部61が形成されている。つまり、前述の撹拌部15の端を形成する2箇所を除いて切欠部61が形成されている。切欠部61は、図示したように輪郭線が複数段階にわたって段々と高くなる形状であるとよい。このほか、例えば輪郭線が傾斜する形状や螺旋状に曲がる形状の切欠部としてもよい。そしてその切欠部61における相対回転方向後端に、外周斜め前方(相対回転方向の前方)に突出する規制片62が形成されている。規制片62は縦長の板状であって、本体部材31の内周面に接しない程度の突出長さに設定されている。
【0032】
このような支持体52と本体部材31との関係において、支持体52の撹拌部15と本体部材31の底面13との間の隙間14の高さH2(
図5参照)は、次のように設定される。つまり、その隙間14の高さH2は、焙煎空間12内に投入された複数の粒状緩衝材Yで狭められ、投入された被焙煎物Xを撹拌部15の相対回転によって転動させる高さである。
【0033】
ここで、粒状緩衝材Yは、一義的には撹拌部15の相対回転に際して被焙煎物Xを転動させるためのものであり、被焙煎物Xよりも重く小さい粒状である。好ましくは熱をもつものであるとよく、例えば砂利や小石、鋼球、遠赤外線を効果的に放射する粒体などを粒状緩衝材Yとして使用する。粒状緩衝材Yの形状はある程度の厚みがあって被焙煎物Xをとの間に抵抗を付与して被焙煎物Xの転動を可能にする形状であればよく、具体的な形状は問わない。
【0034】
したがって、隙間14の高さH2は、おおよそ粒状緩衝材Yの高さより高く、被焙煎物Xの高さ程度より低いとよい。具体的には、粒状緩衝材Yを基準にすると、隙間14の高さH2は
図5に示したように粒状緩衝材Yの1層の高さH3の1倍から2倍程度以上の高さに設定するとよい。被焙煎物Xを基準にすると、隙間14の高さH2は被焙煎物Xの1層の高さH4と同程度以上の高さ設定するとよい。好ましくは、隙間14の高さH2は、粒状緩衝材Yの1層の高さH3の1倍から2倍程度の高さ、被焙煎物Xの1層の高さH4と同程度の高さであるとよい。撹拌部15の下を通過して撹拌されない粒状緩衝材Yの数が多いと、無駄になるからである。
【0035】
ここで、「1層の高さ」とは、粒状緩衝材Yや被焙煎物Xを平面上に撒いて層を形成した場合の高さのことであり、高さの値には適宜の幅が生じる。これは、一定大の球形でない粒状緩衝材Yや被焙煎物Xは長軸方向と短軸方向、更には厚さ方向において長さが異なり、層を形成するときの向きが定まらないからである。
【0036】
対流促進部材53は、焙煎空間12内を上昇する熱気を降下させるものであり、
図3に示したように平面視円環板状に形成されている。中央部の開口53aは、上に抜ける熱気を制限するのに必要な適宜の大きさに設定される。対流促進部材53は、支持体52の上下方向中間部の内周面に形成された段差部52bに嵌めて取り付けられる。嵌めるだけで一体化できるようにクリアランスを小さくしたり、嵌合部分の形状を平面視多角形にしたり、別体の留め具を備えたりしてもよい。
【0037】
このような形態の対流促進部材53には、
図3に示したように棒状の温度計81を必要に応じて備えることができる。温度計81の保持は、対流促進部材53の一部に挿通穴(図示せず)を開けて、この挿通穴に温度計81の棒状部分を挿すとよい。
【0038】
肩部材54は、支持体52の開口部52aに嵌合可能な蓋状に形成されており、中央には前述の窓部54aが形成されている。窓部54aは平面視円形である。肩部材54と支持体52との間で相対回転不可となるようにするためには、嵌合がきつくなるようにクリアランスを調節するほか、たとえば対向面間に逆ねじを形成したり、ねじやバックルなどの留め具を備えたりしてもよい。肩部材54の上面の一部には、回転操作のための回転ハンドル54bが形成されている。この回転ハンドル54bに手をかけて回転させることで、肩部材54と一体の支持体52は、本体部材31に対して相対回転可能である。
【0039】
蓋体55は、肩部材54の中央の窓部54aに着脱可能であり、平面視円形に形成されている。蓋体55は、肩部材54に対する装着時には肩部材54にのっているだけであり、肩部材54の回転に伴って回転するものである。上面の中央にはつまみ55aが形成されている。この蓋体55は、内部を透視できるようにガラスのような透明体を用いて構成するとよい。
【0040】
焙煎器11は以上のように構成されている。
【0041】
なお、本体部材31を支える補助脚部材71は、円筒状に形成されており、上端部の直径は本体部材31の底部の湾曲部32を支える大きさに設定されている。補助脚部材71の下側部には、五徳23に形成されている複数本の支持片23aに嵌る溝部72が形成されている。補助脚部材71の高さや溝部72の深さは、支持する本体部材31の底をガスコンロ22上の所望の高さに支持できるように設定されている。
【0042】
焙煎器11は、次のようにして焙煎に使用される。つまり、焙煎器11と粒状緩衝材Yを用意し、焙煎空間12に被焙煎物Xと粒状緩衝材Yを投入したのち、撹拌部15を底面13に対して相対回転して被焙煎物Xを粒状緩衝材Yと共に転動させながら加熱する。
【0043】
被焙煎物Xの一例としてのコーヒー豆Xaを焙煎する焙煎方法を具体的に説明すると、まず、焙煎器11を組み立てて、
図1に示したようにガスコンロ22にのせる。このとき、焙煎器11の焙煎空間12には粒状緩衝材Yを投入しておく。粒状緩衝材Yの投入量は、少なくとも焙煎空間12の底面13全体の8割を覆う程度であるとよい。このあと、任意で予熱を開始する。
【0044】
つぎに、蓋体55を外してコーヒー豆Xaを投入する。コーヒー豆Xaの投入量は、1粒から200g程度まで、必要に応じて適宜設定される。蓋体55は閉じても外したままでもよく、好みに応じて選択される。
【0045】
つづいて、回転ハンドル54bに手をかけて回転ユニット51回転を開始する。好みの焙煎が行えるように回転の態様・程度は適宜加減する。回転数は、毎分60回転以下であるとよい。より好ましい回転速度は、毎分20〜40回転程度である。この操作は内部の焙煎状態を適宜見ながら行える。
【0046】
加熱により1爆ぜ、2爆ぜと、焙煎が進む中、蓋体55を閉じている場合には、必要に応じて水蒸気を逃がすために蓋体55を外し、火力の調整も行う。窓部54aを通して内部を観察し、コーヒー豆Xaか偏って加熱ムラが生じそうな場合には、補助脚部材71上で本体部材31を傾けて、コーヒー豆Xaを均して良好な転動をはかり、加熱ムラの発生を防止する。
【0047】
好みの焙煎状態で加熱を終了し、焙煎空間12からコーヒー豆Xaと粒状緩衝材Yを取り出し、コーヒー豆Xaを分離して冷却を行う。
【0048】
焙煎終了後は、焙煎器11を分解して洗浄を行う。複数の部材からなる回転ユニット51も分解可能であるので、容易に清潔な状態を保てる。
【0049】
焙煎過程においては、コーヒー豆Xaと粒状緩衝材Yは、縦断面視では
図6に示したように、平面視では
図7に示したようになる。つまり、粒状緩衝材Yはコーヒー豆Xaよりも重いので、主に底面13を覆うように下に位置しており、コーヒー豆Xaは粒状緩衝材Yの上に乗ったり粒状緩衝材Yに混ざったりしている。
【0050】
回転ユニット51の回転により撹拌部15が移動すると(
図7の太線矢印参照)、粒状緩衝材Yとコーヒー豆Xaは撹拌部15によって集められるように転がりながら移動する。撹拌部15は湾曲部15aを有するので、凹みの大きい部分に向けて相対移動するように転動する。この結果、撹拌部15の相対回転方向前方には、撹拌部15に近い方ほど厚さが厚くなるように主にコーヒー豆Xaが堆積することになり、堆積部分の上面は傾斜する。この堆積状態のまま粒状緩衝材Yとコーヒー豆Xaは転動し、撹拌部15の近傍であって傾斜面の端部にあるコーヒー豆Xaは、相対回転に伴って撹拌部15を乗り越えて撹拌部15より相対回転方向後方に落下し転動する(
図7の白抜き矢印参照)。落下して転がったコーヒー豆Xaは後続の撹拌部15によって集められ、前述と同様の転動が繰り返される。このような撹拌に際して底面13の凹凸は接触抵抗を増大して、粒状緩衝材Yとコーヒー豆Xaの転動を促進する。
【0051】
このため、コーヒー豆Xaが本体部材31の周壁33に直接接したまま加熱されるようなことはなく、均一な撹拌がなされ、局所的に焦げたりすることなくムラのない焙煎が行える。この結果、焙煎品質も高くなる。
【0052】
また、このように転動を繰り返すコーヒー豆Xaの上方では、対流促進部材53が、上昇する熱気を押さえ込んで降下させて、対流を促す。このため、熱の回りは良好で、焙煎が効率よい。しかも、底面13を覆うとともにコーヒー豆Xaと共に転動する粒状緩衝材Yが熱を持つので、ガスコンロ22からの熱を均一に分布させるうえに、粒状緩衝材Yの熱によっても焙煎がなされる。この点からも、均一で効率的な焙煎が行える。
【0053】
撹拌を行う撹拌部15は、筒状の支持体52下端部に形成されているので、回転力を効率よく伝達できて、撹拌部15の回転は円滑に行える。撹拌部15を筒状の支持体52の下端部に形成しているため、支持体52は焙煎空間12の内周面に近い位置に存在することになるが、切欠部61と規制片62を有しているので、コーヒー豆Xaが支持体52の外周側に引っかかって共回りすることを防止できるとともに、コーヒー豆Xaを内周側に誘導することができる。このため、前述のような均一な撹拌を確実に行わせることができる。
【0054】
しかも、撹拌は手で回転して行うので、電動で行う場合と比較して、自分で焙煎するという感覚を得られる。また焙煎具合を見ながら回転の仕方を変えたりすることができる。つまり調整や工夫が可能である。このため喜びや満足感をもたらすことができる。またコーヒー豆Xaの種類や焙煎時の湿度や気温などの状況に応じた調整が可能であるので、前述のように均一な撹拌ができることによって高品質な焙煎を可能にしながらも、焙煎に工夫を加える余地を残して自ら焙煎を行う楽しみを持たせられる。この結果、前述のような喜びや満足感をもたらして、自家焙煎の需要拡大をはかれる。
【0055】
以下、その他の例を説明する。この説明において、前述の構成と同一の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0056】
図8は、焙煎器11の本体部材31と回転ユニット51の縦断面図であり、対流促進部材53の他の例を示している。この対流促進部材53は、筒状に形成されたものである。
【0057】
つまり、肩部材54の窓部54aに係止するフランジ53bを上端に有し、フランジ53bより下側の部分が適宜径の円筒状に形成されている。
【0058】
このような対流促進部材53を有する場合も、前述と同様に、肩部材54との協働により上昇する熱気を降下させて焙煎空間12内で対流させることができる。
【0059】
図9は、焙煎器11の本体部材31と回転ユニット51の縦断面図であり、撹拌部15を回転不可状態で備えた例を示している。
【0060】
この焙煎器11は、本体部材31の底面13の中央に支柱63を立設し、この支柱63の上端に、撹拌部15が着脱可能に取り付けられている。
図10は
図9のB−B断面図であり、この図に示すように、撹拌部15を有する撹拌翼59は、平面視S字状に形成され、相対回転中心Pとなる長手方向の中間位置に、筒状の取り付け部59aが形成されている。取り付け部59aの支柱63に対する取り付けは、ボルト64の螺合で行うことができる。
【0061】
一方、回転ユニット51における支持体52は下端に底板52cを有して、下端面が閉塞されている。この底板52cの上面が、この焙煎器11における底面13である。このため、底板52cの上面と撹拌部15との間に所定の高さの隙間14が形成されるように、支柱63の長さや支持体52の底板52cの位置などを設定している。
【0062】
底板52cの中央には、本体部材31の支柱63を挿通するルーズホール52dが形成されている。また、底板52cには支持体52の下側部分57と同様に複数の貫通穴52eを有している。これら貫通穴52eは底面13の凹凸を構成する。
【0063】
このように構成された焙煎器11では、組み立てに際しては、撹拌翼59を支柱63から外してから、回転ユニット51を本体部材31に嵌める。このあとで撹拌翼59を支柱63に装着する。
【0064】
この構成においては、回転ユニット51を回転すると支持体52上の被焙煎物Xと粒状緩衝材Yがその回転方向に移動し、このときに撹拌部15が不動であることによって、被焙煎物Xと粒状緩衝材Yが前述と同様のメカニズムによって撹拌される。
【0065】
図11は、支柱63部分の拡大図であり、撹拌部15を有する撹拌翼59に緩衝機構を備えた例を示している。すなわち、撹拌翼59を取り付けるボルト64に雄ねじを有しない軸部64aを備え、この軸部64aの外周に圧縮コイルばね65を保持している。
【0066】
このように構成すると、撹拌部15の相対回転に際して撹拌部15が付勢力に抗して上下に変位可能であるので、被焙煎物Xに過度の負荷が作用した場合であっても撹拌を行うことができる。
【0067】
また、
図9、
図11に示したような焙煎器11においては、支柱63の上端部に適宜厚さのスペーサ(図示せず)を必要に応じて介装することによって、底面13と撹拌部15の間の隙間14の高さを調節することができる。
【0068】
撹拌部15を筒状の支持体52の下端部に形成した構造で、隙間14の高さを調節可能にする高さ調節機構を備えるには、例えば
図12に示したように、撹拌部15を有する撹拌翼59の両端に取り付け板部59bを形成して、この取り付け板部59bに備えた長穴59cを利用して支持体52に対して上下に位置調節可能にボトル59dで固定するとよい。
【0069】
図13は、焙煎器11の縦断面図であり、撹拌部15が上から垂設されて焙煎空間12内で回転する棒状の支持体66の下端部に形成された例を示している。
【0070】
この焙煎器11の本体部材31は、上下方向の中間部に、対流促進部材53を着脱可能に取り付けるための段差部67を有している以外は、前述と同様に構成されている。
【0071】
回転ユニット51については、前述の支持体52を必要とせず、肩部材54の下側に支持体66が備えられている。支持体66の上端部は、肩部材54の下面からのびる複数本の支持杆66aによって回転不可に固定されている。そして支持体66の下端に、撹拌部15を有して全体として平面視S字状をなす撹拌翼59が固定されている。撹拌翼59は支持体66に対して着脱可能であるとよい。洗浄が隅々まできれいに行えるうえに、形状や大きさの異なる撹拌翼59と交換できるからである。
【0072】
この焙煎器11では、肩部材54の回転ハンドル54bに手をかけて回転させることで撹拌できる。
【0073】
図14は、焙煎器11の縦断面図であり、
図13の例と同様に、撹拌部15が上から垂設されて焙煎空間12内で回転する棒状の支持体66の下端部に形成された例を示している。しかし、
図14の焙煎器11では
図13の場合とは異なり、回転ユニット51を有さず、撹拌部15を有する軸状の支持体68の回転で撹拌を行う構造である。
【0074】
すなわち、本体部材31は
図13に示した焙煎器11の本体部材31と同様の構成であるが、回転ユニット51に代えて、本体部材31の上端に嵌める蓋状の蓋部材69を有している。蓋部材69の一部には本体部材31のハンドル34の上に重なるハンドル69aを備えている。ハンドル34,69aの対向面には
図14に破線で示したように互いに嵌り合う嵌合構造を形成するとよい。また、蓋部材69の下面側の中央には、支持体68を遊挿する保持筒69bが複数本の支持杆69cで支持されている。保持筒69bの上面には、支持体68を遊挿する穴を中心に有した円環状の閉鎖板69d形成されている。
【0075】
蓋部材69の中央には、焙煎空間12内を視認可能にする窓部69eが形成され、蓋体55が着脱可能に備えられる。蓋体55の中央には、支持体68の上端に備えられた回転ハンドル68a部分に通して着脱可能にする大きさの貫通穴55bを有している。前述の閉鎖板69dの大きさは貫通穴55bよりも大きく設定される。
【0076】
また、前述の保持筒69bと同様の保持筒53cが、対流促進部材53の中心に支持杆53dによって支持される。
【0077】
このような構成の焙煎器11では、支持体68の回転ハンドル68aに手をかけて回転させることで撹拌できる。
【0078】
図15は、焙煎器11の断面図であり、本体部材31の上端に形成される受け面35を内周側に向けて突出形成された内リブ31aの上面に形成した例である。この場合には、本体部材31の周壁33の下部を絞って小径に形成し、回転ユニット51の支持体52の外径を本体部材31の下部の内周面より若干小さい大きさにすることによって、支持体52の本体部材31内での傾きを抑制できため、円滑な回転を実現できる。
【0079】
なお、内リブ31aを有するため内容物、つまり被焙煎物Xや粒状緩衝材Y、洗浄水などの排出を容易にするため、周壁33における内リブ31aの下側の部位に、横穴(図示せず)を形成してもよい。
【0080】
図16は、温度計81を備えた焙煎器11の断面図である。前述の
図3で示した例では、1本の温度計81を備えたが、
図16の例では、複数本備えて、複数の部位の温度を計測することによって、より良い焙煎を実現できるようにしている。
【0081】
具体的には、2本の温度計81a,81bを備えて、一方の温度計81aで底面13近くの温度を計測し、他方の温度計81bで被焙煎物Xの温度を計測するように、それぞれの温度計81a,81bの先端の検温部を位置させている。温度計81a,81bの保持は、回転ユニット51の適宜位置に対して行う。図示例では、支持体52の上部の内周面に装着した保持部材82で温度計81a,81bを保持して、回転ユニット51の回転と共に温度計81a,81bが底面13に対して相対回転するように構成する。
【0082】
このように2本の温度計81a,81bを備えた場合には、底面13近くの温度と共に被焙煎物X自体の温度を計測できるので、2本の温度計81a,81bの計測値とその差に応じて火力を調節する。この方法によれば、効率的に焙煎できるとともに、被焙煎物Xが急激に高温になって焦げてしまうことを防止できる。
【0083】
図17は、調理用加熱器21にのせた状態の焙煎器11の一部断面側面図である。この例では、調理用加熱器21として、IHクッキングヒータ24を使用している。
【0084】
IHクッキングヒータ24を利用する場合には、補助脚部材71に非導電性の部材、たとえば木材や耐熱性樹脂などからなる脚部73を備えて、焙煎器11の底を適宜高さに保持して焙煎を行う。これにより、IHクッキングヒータ24の温度制限に影響を受けることなく被焙煎物Xを焙煎することができる。なお、脚部73の位置が磁界の範囲外になるのであれば、脚部73は金属製でもよい。
【0085】
また、IHクッキングヒータ24の場合には、ガスコンロ22の場合とは異なり中心部分が高温になりがちである。そして前述のような撹拌部15で行う焙煎においては、中心部分に被焙煎物Xが滞りがちになる。このため、
図18に示したようなバッフル部15bを形成して、中心部に停滞しようとする被焙煎物Xを減らすとよい。図示例の撹拌部15は、相対回転中心Pを挟んで2つ形成して撹拌翼59としたものであるので、各撹拌部15の一端、換言すれば撹拌翼59の長手方向の中心部に、バッフル部15bが形成されている。バッフル部15bは、平面視円形であり、上部は円錐形に形成されている。このバッフル部15bの形状は一例であり、その大きさや形状は適宜設定される。たとえば図示例のような平面視円形のほか、多角形状であってもよい。
【0086】
焙煎空間12の加熱を行う熱源を外部に求める場合には、調理用加熱器21に限らず、たとえばストーブや焚火など、適宜の熱源を利用することができる。
【0087】
熱源は、焙煎空間12の内部又は外部に備えてもよい。
【0088】
このほか、たとえば、前述した底面の凹凸や、前述した筒状の支持体52の貫通穴57aは省略することもできる。
【0089】
回転ユニット51を構成する各部材は、必ずしも別部材で構成するのではなく、一部または全部を一体に形成したものであってもよい。対流促進部は、前述のように別部材(対流促進部材53)で構成して着脱可能にするのではなく、別の部材と一体であってもよい。
【0090】
撹拌翼59は、前述のように撹拌部15を、相対回転中心Pを挟んで2つ備えて全体として平面視S字状とするほか、撹拌部15を等間隔に3個、4個と3個以上備えることもできる。撹拌翼59をどのような形態とするかは、被焙煎物Xの種類や量、粒状緩衝材Yの形状や大きさ、量などの条件に応じて設定される。