(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850001
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】表層土の改良方法
(51)【国際特許分類】
E01C 13/08 20060101AFI20210322BHJP
E01C 13/02 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
E01C13/08
E01C13/02
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-144754(P2017-144754)
(22)【出願日】2017年7月26日
(65)【公開番号】特開2019-27055(P2019-27055A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】393014523
【氏名又は名称】株式会社ソイルリサイクル工業
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青野 幸三
【審査官】
田島 拳士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−322386(JP,A)
【文献】
特開平10−219618(JP,A)
【文献】
特開2009−257055(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0047015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 13/00−13/12
E01C 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層土の改良方法であって、
既存の表層土を略平坦に均す表層土均しステップ、
前記既存の表層土の上にアスファルト系乳剤を散布してコート層を形成するコート層形成ステップ、
前記コート層形成ステップの後、前記コート層が完全に硬化する前に、前記コート層の砕石を散布して上部から前記砕石に圧力を加える砕石埋設ステップであって、前記砕石の少なくとも一部を前記コート層に押し沈めることにより、前記コート層に埋設した前記砕石により、前記砕石の周囲に前記コート層を貫通する通水路が形成され、
前記砕石が押し沈められたコート層の上に砂を散布し、前記砂の表面に圧力を加えて均す砂均しステップ
表層土の改良方法。
【請求項2】
前記砂均しステップの後、前記砂の表面に人工芝を敷設する人工芝敷設ステップをさらに含んでいる、
請求項1に記載の表層土の改良方法。
【請求項3】
前記表層土均しステップの後、盛り土及び/又は透水ろ過層を形成するステップを含んでいる、
請求項1又は請求項2に記載の表層土の改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウンドやコート、公園などにおいて、表層土を改良する方法に関するものであり、より具体的には、透水性にすぐれ、人工芝の敷設に適した表層土への改良方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラウンドに人工芝を敷設する方法として、下層路盤の上に粒度の小さいバラの骨材を投入し、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂からなるエマルジョン状態の固結剤を散布して骨材どうしを一体化させ、その上に人工芝を敷設する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この固結剤は、経時崩壊によって骨材をばらけさせることで、敷設された人工芝に適度なクッション性を付与するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−105710号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ばらけた骨材は、人工芝面での激しい運動によって変形を生じ易く、人工芝に凹凸を生じさせると共に、保守に手間が掛かる問題があった。
【0005】
本発明の目的は、経時的な変化が少なく、透水性にすぐれ、人工芝の敷設に適した表層土の改良方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る表層土の改良方法は、
既存の表層土を略平坦に均す表層土均しステップ、
前記既存の表層土の上にアスファルト系乳剤を散布してコート層を形成するコート層形成ステップ、
前記コート層形成ステップの後、前記コート層が完全に硬化する前に、前記コート層の砕石を散布して上部から前記砕石に圧力を加える砕石埋設ステップであって、前記砕石の少なくとも一部を前記コート層に押し沈めることにより、前記コート層に埋設した前記砕石により、前記砕石の周囲に前記コート層を貫通する通水路が形成され、
前記砕石が押し沈められたコート層の上に砂を散布し、前記砂の表面に圧力を加えて均す砂均しステップ、
を含んでいる。
【0007】
前記砂均しステップの後、前記砂の表面に人工芝を敷設する人工芝敷設ステップをさらに含むことができる。
【0008】
前記表層土均しステップの後、盛り土及び/又は透水ろ過層を形成するステップを含むこともできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る表層土の改良方法によれば、略平坦とした既存の表層土の上にアスファルト系乳剤からなるコート層を形成している。コート層は、非透水性、或いは、透水性が極めて低いが、完全に硬化する前に砕石を散布して、砕石をコート層に押し沈めることにより、コート層には、押し沈められた砕石の周囲に隙間ができる。この隙間がコート層を貫通し、或いは、複数の隙間が繋がってコート層を貫通することで、コート層に通水路が形成され、透水性を可及的に高めることができる。
【0010】
そして、砕石が押し沈められたコート層の上に砂を散布して、均すことで、透水性にすぐれた平坦な地盤を提供できる。必要に応じて、その上に人工芝を敷設することもできる。
【0011】
本発明により改良された表層土は、強度にすぐれ、従来のように骨材がばらけて平坦度を失うこともないから、透水性にすぐれるだけでなく、耐久性にもすぐれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の表層土の改良方法により改良された地盤の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の表層土の改良方法の一実施形態を示す説明図である。
【
図3】
図3は、コート層に砕石を散布し、圧力を加えた状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の表層土の改良方法について、図面を参照しながら説明を行なう。
【0014】
図1は、本発明の表層土の改良方法により改良された地盤10の断面図である。また、
図2は、本発明の表層土の改良方法の一実施形態を示す説明図である。
【0015】
図1に示すように、本発明により改良された地盤10は、下層側から現況表層土12、盛り土14、透水ろ過層16、コート層20、砕石層30、砂層40及び人工芝50を含んで構成される。以下に説明するとおり、盛り土、透水ろ過層16は必須ではないが、現況表層土12の状態に応じて、或いは、透水性を高めるために形成することが望ましい。
【0016】
本発明の表層土の改良方法は、
図2(a)に示すように、改良前の現状表層土12を略平坦に均す表層土均しステップから開始することができる。現状表層土12は、必要に応じて掘削等して高さ調整することができる。もちろん、現状表層土12に均し作業が不要であれば、このステップは省略できる。
【0017】
現状表層土12を略平坦に均した後、
図2(b)に示すように、表層土12の上に、必要に応じてクレー精製土、自然土などで所定高さ盛り土14を行なう。また、通水性を高めるために、盛り土14の上に、必要に応じて砕石や小石などの透水ろ過層16を形成する。
【0018】
そして、その上に、
図2(c)に示すようにアスファルト系乳剤を散布し、コート層20を形成する(コート層形成ステップ)。アスファルト系乳剤は、1mm〜3mm、望ましくは約1.5mmの厚さとなるように散布する。
【0019】
アスファルト系乳剤は、温度条件により変化するが、約20℃において1日〜2日で硬化する。本発明では、アスファルト系乳剤からなるコート層20に砕石32を押し沈める必要があるから、アスファルト系乳剤が完全に硬化する前に砕石32を散布する処理を行なう(
図2(d)参照)。アスファルト系乳剤として、JIS K 2208(2000)のカチオン乳剤浸透用3号(PK−3:プライムコート用及びセメント安定処理層養生用、商品名:ソイル・ダステックスHD)を主成分とする乳剤を例示できる。また、施工地の温度等に合わせて、同1号(PK−1:温暖期浸透用及び表面処理用)や、同2号(PK−2:寒冷期浸透用及び表面処理用)を最大50重量%混合して使用することもできる。もちろん、アスファルト系乳剤はこれに限定されるものではない。
【0020】
コート層20に散布される砕石32は、3号(粒径30mm〜40mm)〜7号(粒径2.5mm〜5mm)のものを使用することが望ましい。散布する石を角の尖っている砕石32とすることで、角の尖っていない砂利に比べて書きする砕石埋設ステップにおいてコート層20に上手く埋設させることができる利点がある。
【0021】
砕石32は、
図2(d)に示すようにコート層20の上に1mm〜40mm、最も望ましくはコート層20よりも1mm〜3mm厚くなるように散布して砕石層30を形成する。そして、コンバインドローラーなどにより砕石32に圧力を加える(転圧)。これにより、
図2(e)及び
図3に示すように、砕石32の一部は、完全に硬化する前のコート層20に押し沈められる(砕石埋設ステップ)。このとき、砕石32の振動などにより、アスファルト系乳剤と砕石32は完全には密着せず、コート層20と砕石32の間には、
図4に示すように部分的に隙間34が形成される。
【0022】
アスファルト系乳剤は、透水性を具備しないが、上記したコート層20とコート層20に埋没した砕石32の間に形成された隙間34が、コート層20を貫通、或いは、複数の隙間34が繋がることでコート層20を貫通する。これにより、コート層20に通水路が形成され、コート層20が透水性を具備することになる。
【0023】
なお、アスファルト系乳剤に予め砕石32を混合して、砕石32が混入したコート層20を形成した場合では、アスファルト系乳剤と砕石32との間に隙間34が生じず、透水性は改善されない。このため、上記のように、コート層20の上に砕石32を散布し、転圧することが好適である。
【0024】
続いて、
図2(f)に示すように、砕石層30の上に砂を散布し、コンバインドローラーなどにより圧力を加えて略平坦に均し、砂層40を形成する(砂均しステップ)。砂は、粗粒砂や極粗粒砂(粒径0.5mm〜2mm)を採用することが望ましい。砂の一部は、
図3及び
図4に示すように、コート層20上の砕石32間に侵入する。
【0025】
そして、最後に、
図2(g)に示すように、砂層40の表面に必要に応じて人工芝50を敷設することで、表層土の改良が完了する(人工芝敷設ステップ)。
【0026】
コート層20は、砕石32を散布、転圧した後、砂層40や人工芝50の敷設、或いは、その後の経時により硬化するが、若干の弾力性を具備するため、改良された表層土はクッション性を具備する。
【0027】
また、
図4に示すように、砕石32の周囲に形成された隙間34が通水路となって、コート層20の透水性は確保される。一方、コート層20により、現況表層土12等からの水分の浸み出しやシルト成分の浮き上がりを阻止することができる。
【0028】
本発明では、アスファルト系乳剤からなるコート層20を具備することで、コート層20よりも上層の砕石層30、砂層40などの不等沈下を防止することができる。
【0029】
さらに、コート層20は、ばらけ難いため、長期使用によっても地盤10に凹凸を生じ難く、人工芝50が波打ってしまうような不具合を抑えることができる。
【0030】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各構成要素は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0031】
たとえば、上記した寸法等は一例であることは理解されるべきである。
【符号の説明】
【0032】
10 地盤
12 表層土
20 コート層
30 砕石層
32 砕石
34 隙間
40 砂層
50 人工芝