特許第6850007号(P6850007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850007
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ロボット用保護カバー
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   B25J19/00 H
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-78009(P2018-78009)
(22)【出願日】2018年4月13日
(65)【公開番号】特開2019-181640(P2019-181640A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2020年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】593208751
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】永井 規夫
(72)【発明者】
【氏名】塚本 晃司
(72)【発明者】
【氏名】由本 渉
(72)【発明者】
【氏名】牧 征幸
【審査官】 尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−274373(JP,A)
【文献】 特開昭62−173192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアームを備えたロボットに装着されるロボット用保護カバーであって、
上記ロボットの特定の部位に装着され筒状に成形された第1の筒状部を備えた第1のカバーと、上記特定の部位に対して基端が回動自在に取り付けられたアームに装着されるとともに筒状に成形された第2の筒状部を備えた第2のカバーとを有し、
上記第1のカバーを構成する第1の筒状部の内周又は外周と、上記第2のカバーを構成する第2の筒状部の外周又は内周とには、それぞれ互いに摺接する摺接面をそれぞれ備えた摺接部材が各々相対的に固定手段を介して固定されてなることを特徴とするロボット用保護カバー。
【請求項2】
前記第1のカバーに固定された摺接部材を構成する摺接面と、前記第2のカバーに固定された摺接部材を構成する摺接面とは、該第1のカバーと第2のカバーとを互いに離間させる力が作用した際には、互いに密着し係合し合う位置関係とされてなることを特徴とする請求項1記載のロボット用保護カバー。
【請求項3】
前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材は、前記第1の筒状部又は第2の筒状部に沿った円弧状板部と、この円弧状板部から起立してなる第1の円弧状摺接板部と、該円弧状板部の他側から起立してなり上記第1の円弧状摺接板部に対向してなる第2の円弧状摺接板部と、を備え、
前記2つの摺接面は、互いに対向した上記第1の円弧状摺接板部と第2の円弧状摺接板部との各対向面であることを特徴とする請求項1又は2記載の何れかのロボット用保護カバー。
【請求項4】
前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材は、前記第1の筒状部又は第2の筒状部に沿った円弧状板部と、この円弧状板部の一側から起立してなる第1の円弧状摺接板部と、該円弧状板部の他側から起立してなり上記第1の円弧状摺接板部に対向してなる第2の円弧状摺接板部と、を備え、
前記2つの摺接面は、互いに対向した上記第1の円弧状摺接板部と第2の円弧状摺接板部との各対向面であるとともに、
該前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか他方の摺接部材は、上記第1の円弧状摺接板部に形成された摺接面に摺接する第1の摺接面と、上記第2の円弧状摺接板部に形成された摺接面に摺接する第2の摺接面と、を有してなることを特徴とする請求項3記載のロボット用保護カバー。
【請求項5】
前記第1のカバー及び第2のカバーは、それぞれ可撓性を有するシート状のカバー本体と、これらのカバー本体を前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って装着した後に該カバー本体の端部同士を着脱可能に固定するカバー本体固定手段と、を備え、
前記各摺接部材は、それぞれ複数の部材に分割された状態で、前記第1のカバー又は第2のカバーに固定されてなることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の何れかのロボット用保護カバー。
【請求項6】
前記固定手段は、前記第1のカバー又は第2のカバーの外側から又は内側から該第1のカバー又は第2のカバーを貫通して前記摺接部材を固定する固定具又は線材であることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の何れかのロボット用保護カバー。
【請求項7】
前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材は、樹脂を素材としてなり直線状に成形された状態で前記カバー本体に前記固定手段を用いて固定されてなるとともに、該カバー本体が前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って湾曲させられて筒状とされた際には、円弧状に変形されてなることを特徴とする請求項5記載のロボット用保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接用・塗装用・切削用或いは医療用その他のロボットに装着されるロボット用保護カバーであって、特にアームを備えたロボットに装着されるロボット用保護カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットは、製造現場や作業現場において広く活用されており、上記製造現場では、切削作業や溶接作業、塗装作業ばかりではなく、製造され搬送装置により搬送されてきた部品又は製品をピックアップする際にも使用されている。そして、こうした各種のロボットは、上方に起立した脚部又は支柱の先端に、駆動軸を介してアームが取り付けられ、このアームは駆動モータの駆動力により回動する構成を採用しているものが多く、中には、上記アームに対して更に別個のアームが回動自在に取り付けられているものも存在する。
【0003】
ところで、上記ロボットは各種の用途で使用されることから、その用途や使用環境から、該ロボットの全部又は一部を覆うロボット用保護カバーが提案され使用されている。こうしたロボット用保護カバーは、例えば、塗装用のロボットであれば、塗装の際に飛散した塗料がロボット(アーム)に付着することを防止することを主目的とし、溶接用のロボットであれば、溶接の際に飛散したスパッタがロボットに付着することを防止することを主目的としているが、こうした主目的以外にも、このロボット用保護カバーは、作業現場における塵埃やスパッタ等の異物が、上記アームの駆動軸に付着することにより、該アームの高精度な動作に悪影響を与え、或いは駆動軸に塗布された潤滑油が外部に漏出したりすることを防止することも目的としている。例えば、特開2010−274373号公報(特許文献1)に開示されたロボット用保護カバーは、複雑な形状からなるロボット全体を覆い、また該ロボットに対して容易に着脱可能とするために、ロボットを覆うカバーを複数に分割したものである。具体的には、第一モータ部、第一アーム、第2モータ部、第二アーム、軸部材を主な構成要素とするロボットに対して、カバーを、上記第一モータ部を覆う第一カバー、上記第一アームを覆う第二カバー、上記第二モータ部を覆う第三カバー、上記第二アームと軸部材とを覆う第四カバーに分割したものである。そして、上記第一カバーないし第四カバーには、それぞれスリーブを設け、特定のスリーブの外側又は内側に他のスリーブが挿入された状態で上記第一モータ部や第一アーム部等に取り付けられている。したがって、上記従来のロボット用保護カバーによれば、例えば、上記第一アームの駆動に伴って第二カバーが回転した場合であっても、上記第一モータ部を覆う第一カバーは第一アームを覆う第二カバーとは別体であることから、その影響は受けないこととなるばかりか、互いに重なり合う特定のスリーブと他のスリーブとにより第一アームの回転軸も外部に露出することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−274373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のロボット用保護カバーでは、上記回転軸は、互いに重なり合う特定のスリーブと他のスリーブとにより覆われているものの、該特定のスリーブと他のスリーブとの間は密着しているものではなく、所定の空間が形成されていることから、こうした空間から塵埃等の異物がカバー内に侵入する可能性が大きく、また、ロボットの駆動軸に塗布された潤滑油が外部に漏出する危険性も危惧される。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来のロボット用保護カバーが有する課題を解決するために提案されたものであり、外部からの異物が内部に侵入することを更に防止するとともに、駆動軸に塗布された潤滑油等が外部に漏出することを防止することができる新規なロボット用保護カバーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、第1の発明(請求項1記載の発明)は、少なくとも1つのアームを備えたロボットに装着されるロボット用保護カバーであって、上記ロボットの特定の部位に装着され筒状に成形された第1の筒状部を備えた第1のカバーと、上記特定の部位に対して基端が回動自在に取り付けられたアームに装着されるとともに筒状に成形された第2の筒状部を備えた第2のカバーとを有し、上記第1のカバーを構成する第1の筒状部の内周又は外周と、上記第2のカバーを構成する第2の筒状部の外周又は内周とには、それぞれ互いに摺接する摺接面をそれぞれ備えた摺接部材が各々相対的に固定手段を介して固定されてなることを特徴とするものである。
【0008】
上記第1の発明は、それぞれ摺接面を備えた2つの摺接部材が構成要素とされている。ここで、上記2つの摺接部材を、一方の摺接部材と他方の摺接部材とした場合、これら一方の摺接部材と他方の摺接部材との位置関係は、以下の二つのパターンに分けることができる。第1のパターンは、上記一方の摺接部材が第1のカバーを構成する第1の筒状部の内周に固定されており、上記他方の摺接部材を構成する第2の筒状部の外周に固定されているものである。また、第2のパターンは、上記一方の摺接部材が第1のカバーを構成する第1の筒状部の外周に固定されており、上記他方の摺接部材を構成する第2の筒状部の内周に固定されているものである。そして、ロボットの特定の部位に装着される上記第1のカバーに固定された一方の摺接部材と、アームに装着される上記第2のカバーに固定された他方の摺接部材は、それぞれ互いに摺接する摺接面を備えている。したがって、第1のカバーに形成された筒状部と第2のカバーに形成された筒状部との関係性は、上記第1のパターンによる場合には、該第1のカバーに形成された筒状部の内側に第2のカバーに形成された筒状部が位置することとなり、上記第2のパターンによる場合には、該第1のカバーに形成された筒状部の外側に第2のカバーに形成された筒状部が位置することとなる。
【0009】
そして、この第1の発明では、ロボットを構成するアームが回動した場合には、そのアームの回動動作に伴って、上記第2のカバーも回動するとともに、上記第1の摺接部材と第2の摺接部材とのそれぞれに形成された摺接面同士は、互いに摺接する。したがって、この第1の発明によれば、第1のカバーと第2のカバーとの間の隙間から塵埃等の異物が侵入した場合であっても、先ずは上記2つの摺接部材の一方により遮断され、次に他方の摺接部材により遮断される(異物は、互いに摺接する摺接面を備えた摺接部材を乗り越えなければ内部に侵入することができない)ことから、上記異物がロボットの特定の部位とアームとの間に侵入することを有効に防止することができる。
【0010】
なお、この第1の発明を構成する第1及び第2のカバーは、それぞれ完成されたロボットに装着されるタイプのものばかりではなく、該ロボットを構成する特定の部位に対してアームが組み付けられる前の段階において、該ロボットを構成する特定の部位又はアームに装着されるタイプのものであっても良い。また、上記互いに摺接する摺接面が形成された位置は、ロボットを構成するアームの基端よりも該アームの先端側であっても良いし、該ロボットの特定の部位側であっても良い。またさらに、本発明において、上記ロボットの特定の部位とは、ロボットを構成するも何らの回動動作等の動作を行わない部位ばかりではなく、例えば、一方のアームと他方のアームとが互いに回動自在に連結されてなるロボットにおいて、上記第1のカバーは上記一方のアームに装着される部材であり、上記第2のカバーは上記他方のアームに装着される部材であっても良い。
【0011】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記第1のカバーに固定された摺接部材を構成する摺接面と、前記第2のカバーに固定された摺接部材を構成する摺接面とは、該第1のカバーと第2のカバーとを互いに離間させる力が作用した際には、互いに密着し係合し合う位置関係とされてなることを特徴とするものである。
【0012】
この第2の発明では、前記第1のカバーと第2のカバーとを互いに離間させる力が作用した際には、互いに密着し係合し合う位置関係とされてなることから、ロボットを構成するアームの動作や、ロボットの外形形状と該ロボットを覆うカバー(第1のカバー及び第2のカバー)の寸法等との関係で、例えば、第2のカバーが大きく引っ張られた場合であっても、互いに摺接する摺接面同士の間隔が開いてしまい、異物の侵入予防性能が低下してしまう事態を有効に防止することができる。
【0013】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は第2の発明の何れかにおいて、前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材には、互いに対向する2つの摺接面を有し、他方の摺接部材は、該一方の摺接部材に形成された2つの摺接面の間に位置してなることを特徴とするものである。
【0014】
この第3の発明では、前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材には、互いに対向する2つの摺接面を有している。そして、これら2つの摺接面の間に、他方の摺接部材が位置している。したがって、この第3の発明では、例えば、上記2つの摺接面を有した摺接部材が第1のカバーに固定されている場合には、第2のカバーに固定された摺接部材は、上記2つの摺接面の間に位置している。換言すれば、上記第2のカバーに固定された摺接部材は、上記第1のカバーに固定された摺接部材に形成された2つの摺接面の内の一方の摺接面に摺接する第1の摺接面と、上記2つの摺接面の内の他方の摺接面に摺接する第2の摺接面を有している。
【0015】
したがって、上記第3の発明によれば、外部からの異物は、上記2つの摺接面を経なければロボットの特定の部位とアームとの間に侵入することができないことから、より一層該異物の侵入を防止することができるばかりではなく、アームの回動動作に伴って部分的に偏った張力が第1又は第2のカバーに作用した場合であっても、例えば、第1のカバーに2つの摺接面を有した摺接部材が固定されている場合において、該2つの摺接面の間に位置した第2のカバーの摺接部材が、第1のカバーに固定された摺接部材から外れる等の事態も有効に解消することができる。
【0016】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第3の発明において、前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材は、前記第1の筒状部又は第2の筒状部に沿った円弧状板部と、この円弧状板部の一側から起立してなる第1の円弧状摺接板部と、該円弧状板部の他側から起立してなり上記第1の円弧状摺接板部に対向してなる第2の円弧状摺接板部と、を備え、前記2つの摺接面は、互いに対向した上記第1の円弧状摺接板部と第2の円弧状摺接板部との各対向面であるとともに、該前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか他方の摺接部材は、上記第1の円弧状摺接板部に形成された摺接面に摺接する第1の摺接面と、上記第2の円弧状摺接板部に形成された摺接面に摺接する第2の摺接面と、を有してなることを特徴とするものである。
【0017】
この第4の発明では、上記一方の摺接部材には、円弧状板部と、第1の円弧状摺接板部と、第2の円弧状摺接板部を備えている。そして、これら第1の円弧状摺接板部と第2の円弧状摺接板部との対向面が、それぞれ摺接面とされている。一方、上記他方の摺接部材は、上記第1の円弧状摺接板部に形成された摺接面に摺接する第1の摺接面と、上記第2の円弧状摺接板部に形成された摺接面に摺接する第2の摺接面とを有している。すなわち、この第4の発明に係るロボット用保護カバーでは、第1のカバーには2つの摺接面を備え、第2のカバーにも2つの摺接面を備え、ロボット用保護カバーとしては合計4つの摺接面を有しているものであって、一方の摺接部材と他方の摺接部材とが互いに摺接する箇所は全部で2か所とされている。
【0018】
したがって、上記第4の発明による場合であっても、外部から侵入する異物や外部に排出される潤滑油等は、上記第1の円弧状摺接板部、他方の摺接部材及び第2の円弧状板部をそれぞれ乗り越えて移動しなければならないことから、より一層該異物の侵入を防止することができるとともに、第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材とが互いに摺接する箇所は全部で2か所であることから、アームの回動動作に伴って回動する第2のカバーの動作は、該第2のカバーの一部に偏った張力が発生した場合であっても、極めて安定的な回動動作を確保することが可能となる。
【0019】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記第1、第2、第3又は第4の何れかの発明において、前記第1のカバー及び第2のカバーは、それぞれ可撓性を有するシート状のカバー本体と、これらのカバー本体を前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って装着した後に該カバー本体の端部同士を着脱可能に固定するカバー本体固定手段と、を備え、前記各摺接部材は、それぞれ複数の部材に分割された状態で、前記第1のカバー又は第2のカバーに固定されてなることを特徴とするものである。
【0020】
この第5の発明では、前記第1のカバー及び第2のカバーは、それぞれ可撓性を有するシート状のカバー本体と、カバー本体固定手段と、を備えており、このカバー本体固定手段は、カバー本体を前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って装着した後に該カバー本体の端部同士を着脱可能に固定するものである。そして、上記カバー本体固定手段は、少なくともカバー本体の端部同士を着脱可能に固定する機能を備えていれば良く、例えば、該カバー本体の各端部の一方に面状ファスナーの一方を固定し、該端部の他方に面状ファスナーの他方を固定したものであっても良いし、或いは、該カバー本体の各端部のそれぞれに互いに係合する係合部材を設けたものであっても良い。
【0021】
さらに、この第5の発明では、前記各摺接部材は、それぞれ複数の部材に分割された状態で、前記第1のカバー又は第2のカバーに固定されている。これら複数の部材に分割された摺接部材は、それぞれ円弧状に成形された状態でそれぞれ上記カバー本体に固定されたものであっても良いし、該カバー本体が前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って装着される前においては、直線状となされ、前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って撓んだ際に、同じように撓む素材によって成形されたものであっても良い。
【0022】
したがって、この第5の発明によれば、完成されたロボットに対してそのまま装着することができるとともに、カバーを交換する際においても、ロボットを分解する(ロボットを構成する特定の部位からアームを取り外す)ことなく装着することが可能となる。また、この第5の発明によれば、このロボット用保護カバーが装着される特定の部位やアームの形状がいびつな形状であったり凹部や凸部が形成されたりしている場合であっても、それらの形状に対応してカバー本体を撓ませることによって確実にロボットに装着することができるばかりではなく、該ロボットに対してほぼ密着した状態で装着することができる。
【0023】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)は、上記第1、第2、第3、第4又は第5の発明の何れかにおいて、前記固定手段は、前記第1のカバー又は第2のカバーの外側から又は内側から該第1のカバー又は第2のカバーを貫通して前記摺接部材を固定する固定具又は線材であることを特徴とするものである。
【0024】
この第6の発明では、前記固定手段は、前記第1のカバー又は第2のカバーの外側から又は内側から該第1のカバー又は第2のカバーを貫通して前記摺接部材を固定する固定具又は線材であることから、アームが高速で回動したり、或いは上記第1又は第2のカバーがアームの回動動作により全部又は一部に高い張力が作用したりした場合であっても、上記摺接部材が脱落してしまうことを有効に防止することができる。
【0025】
また、第7の発明(請求項7記載の発明)は、上記第5の発明において、前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材は、樹脂を素材としてなり直線状に成形された状態で前記カバー本体に前記固定手段を用いて固定されてなるとともに、該カバー本体が前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って湾曲させられて筒状とされた際には、円弧状に変形されてなることを特徴とするものである。
【0026】
この第7の発明では、前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材は、樹脂を素材としてなり直線状に成形された状態で前記カバー本体に前記固定手段を用いて固定されてなるとともに、該カバー本体が前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って湾曲させられて筒状とされた際には、円弧状に変形されてなるものであることから、カバー本体に対する固定作業が極めて容易になる。すなわち、カバー本体がロボットの外形形状に対応して複数のシート体を縫合する等して成形される場合には、その一部のシート体の一面の所定個所に上記摺接部材を固定する作業が伴うが、こうした摺接部材の固定作業の際に、該摺接部材は直線状とされていることから、円弧状に成形されている摺接部材を固定する作業に比べて格段にその固定作業が容易となる。
【発明の効果】
【0027】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)によれば、第1のカバーと第2のカバーとの間の隙間から塵埃等の異物が侵入した場合であっても、先ずは上記2つの摺接部材の一方により遮断され、次に他方の摺接部材により遮断される(異物は、互いに摺接する摺接面を備えた摺接部材を乗り越えなければ内部に侵入することができない)ことから、上記異物がロボットの特定の部位とアームとの間に侵入することを有効に防止することができる。
【0028】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)では、前記第1のカバーと第2のカバーとを互いに離間させる力が作用した際には、互いに密着し係合し合う位置関係とされてなることから、ロボットを構成するアームの動作や、ロボットの外形形状と該ロボットを覆うカバー(第1のカバー及び第2のカバー)の寸法等との関係で、例えば、第2のカバーが大きく引っ張られた場合であっても、互いに摺接する摺接面同士の間隔が開いてしまい、異物の侵入予防性能が低下してしまう事態を有効に防止することができる。
【0029】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)によれば、外部からの異物は、上記2つの摺接面を経なければロボットの特定の部位とアームとの間に侵入することができないことから、より一層該異物の侵入を防止することができるばかりではなく、アームの回動動作に伴って部分的に偏った張力が第1又は第2のカバーに作用した場合であっても、例えば、第1のカバーに2つの摺接面を有した摺接部材が固定されている場合において、該2つの摺接面の間に位置した第2のカバーの摺接部材が、第1のカバーに固定された摺接部材から外れる等の事態も有効に解消することができる。
【0030】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)による場合であっても、外部から侵入する異物や外部に排出される潤滑油等は、上記第1の円弧状摺接板部、他方の摺接部材及び第2の円弧状板部をそれぞれ乗り越えて移動しなければならないことから、より一層該異物の侵入を防止することができるとともに、第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材とが互いに摺接する箇所は全部で3か所であることから、アームの回動動作に伴って回動する第2のカバーの動作は、該第2のカバーの一部に偏った張力が発生した場合であっても、極めて安定的な回動動作を確保することが可能となる。
【0031】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)によれば、完成されたロボットに対してそのまま装着することができるとともに、カバーを交換する際においても、ロボットを分解する(ロボットを構成する特定の部位からアームを取り外す)ことなく装着することが可能となる。また、この第5の発明によれば、このロボット用保護カバーが装着される特定の部位やアームの形状がいびつな形状であったり凹部や凸部が形成されたりしている場合であっても、それらの形状に対応してカバー本体を撓ませることによって確実にロボットに装着することができるばかりではなく、該ロボットに対してほぼ密着した状態で装着することができる。
【0032】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)では、前記固定手段は、前記第1のカバー又は第2のカバーの外側から又は内側から該第1のカバー又は第2のカバーを貫通して前記摺接部材を固定する固定具又は線材であることから、アームが高速で回動したり、或いは上記第1又は第2のカバーがアームの回動動作により全部又は一部に高い張力が作用したりした場合であっても、上記摺接部材が脱落してしまうことを有効に防止することができる。
【0033】
また、上記第7の発明(請求項7記載の発明)によれば、上記カバー本体に対する固定作業が極めて容易になる。すなわち、カバー本体がロボットの外形形状に対応して複数のシート体を縫合する等して成形される場合には、その一部のシート体の一面の所定個所に上記摺接部材を固定する作業が伴うが、こうした摺接部材の固定作業の際に、該摺接部材は直線状とされていることから、円弧状に成形されている摺接部材を固定する作業に比べて格段にその固定作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ロボットにロボット用保護カバーが装着された状態を示す正面図である。
図2図1に示す第1のアームに装着された第2のカバーと第2のアームに第3のカバーが装着された状態を拡大して示す正面図である。
図3】第2のカバーを構成する上端側筒状部と、一方及び他方の内側摺接部材半体と、固定金具とを示す分解斜視図である。
図4】第2のカバーを構成する上端側筒状部の外周に一方及び他方の内側摺接部材半体が固定金具を介して固定された状態を示す斜視図である。
図5】一方及び他方の内側摺接部材半体を一部破断して示す斜視図である。
図6】固定金具を示す斜視図であり、(a)は各脚部が変形される前の状態を示す斜視図であり、(b)は各脚部が変形された後の状態を示す斜視図である。
図7】第3のカバーを構成する下端側筒状部の内周に一方及び他方の外側摺接部材半体が固定金具を介して固定された状態を示す斜視図である。
図8】一方及び他方の外側摺接部材半体を一部破断して示す斜視図である。
図9】一方及び他方の内側摺接部材半体と一方及び他方の外側摺接部材半体が互いに連結した状態を拡大して示す断面図である。
図10】本発明を構成する第1のカバーが展開された状態を示す斜視図である。
図11図10に示す第1のカバーが筒状とされた状態を示す斜視図である。
図12】本発明を構成する第2のカバーが展開された状態を示す斜視図である。
図13図11に示す第2のカバーが筒状とされた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための最良の形態に係るロボット用保護カバーを、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
この実施の形態に係るロボット用保護カバー(符号は省略する。)は、図1中二点鎖線で示すロボット1に装着されるものである。そこで、先ず、このロボット1に関して簡単に説明し、その後に本発明に係るロボット用保護カバーについて詳細に説明する。上記ロボット1は、下端が工場等の床面に接地されるベースブロック2と、このベースブロック2の側部に対して基端が回動自在に組み付けられている第1のアーム3と、この第1のアーム3の先端側の側部に基端が回動自在に組み付けられている第2のアーム4と、この第2のアーム4の先端側の側部に基端が回動自在に組み付けられている第3のアーム5と、この第3のアーム5の先端に基端が回動自在に組み付けられているロボットヘッド6と、をそれぞれ備えている。なお、上記ベースブロック2又は第1のアーム3の基端側の内部、該第1のアーム3の先端側の内部又は第2のアーム4の基端側の内部、該第2のアーム4の先ベースブロック2端側の内部又は上記第3のアーム5の内部には、それぞれ第1、第2、第3又は第4のアーム3,4,5又は上記ロボットヘッド6を回転駆動させる図示しない駆動モータが内蔵されている。なお、上記ロボット1を構成するベースブロック2と第1のアーム3との間には、僅かな幅の接合部(符号は省略する。)が形成され、該第1のアーム3と第2のアーム4との間にも上記接合部(符号は省略する。)が形成されている。また、上記第2のアーム4と第3のアーム5との間にも、上記接合部(符号は省略する。)が形成され、該第3のアーム5とロボットヘッド6との間にも接合部(符号は省略する。)が形成されている。したがって、後述するロボット用保護カバーは、上記ロボット1の表面を覆うとともに、上記接合部に塵埃等の異物が外部から侵入することを防止することを目的としたものである。
【0037】
そして、こうした構成に係るロボット1のベースブロック2には、該ベースブロック2全体を覆う第1のカバー11が装着され、上記第1のアーム3には該第1のアーム3全体を覆う第2のカバー12が装着され、上記第2のアーム4には該第2のアーム4全体を覆う第3のカバー13が装着されている。また、上記第3のアーム5には該第3のアーム全体を覆う第4のカバー14が装着され、上記ロボットヘッド6には該ロボットヘッド6全体を覆う第5のカバー15が装着されている。なお、上記第1ないし第5のカバー11・・・15は、何れも完成された(全ての構成要素が組み付けられた)ロボット1に装着されるものであるとともに該ロボット1から取り外し可能とされているものである。そして、上記第1のカバー11と第2のカバー12との連結構造、第2のカバー12と第3のカバー13との連結構造、第3のカバー13と第4のカバー14との連結構造並びに第4のカバー14と第5のカバー15との連結構造は、何れも同一であることから、以下では、上記第2のカバー12と第3のカバー13との連結構造について説明する。
【0038】
そこで先ず、上記第2のカバー12に付いて詳細に説明する。なお、この第2のカバーは、本発明を構成する第1のカバーである。この第2のカバー12は、図2に示すように、カバー本体12aと後述する摺接部材とを構成要素としてなるものであり、上記カバー本体12aは、可撓性を有する複数のシート体が互いに縫合されることにより、上記第1のアーム3の形状に対応してやや袋状に成形されてなるものであり、該カバー本体12aの上端側の一側には、上記ロボット1の接合部を覆う上端側筒状部12bが形成されている。この上端側筒状部12bは、上下方向に長さを有する上記カバー本体12aの上端から図2中右方向、すなわち上記第2のアーム4側に僅かに突出してなるものであり、上記カバー本体12aを形成するシート体(符号は省略する。)とは別個に用意された帯状のシート体(符号は省略する。)の端部が上記カバー本体12aを形成するシート体に縫合されてなるものである。なお、上記カバー本体12aには、該カバー本体12aを第1のアーム3に被せた後に、該カバー本体12aの端部同士を互いに固定する図示しない面状ファスナーが固定されている。図4は、上記帯状のシート体の端部同士を固定することにより円筒状となされた上端側筒状部12bと、後述する摺接部材(一方の内側摺接部材半体25及び他方の内側摺接部材半体26)と、該摺接部材(一方の内側摺接部材半体25及び他方の内側摺接部材半体26)を上記上端側筒状部12bに固定するための複数の固定金具27とをそれぞれ分解して示すものであり、図4は、上記第2のカバー12を構成する上端側筒状部12bの外周に一方及び他方の内側摺接部材半体25,26が固定金具27を介して固定された状態を示す斜視図である。上記上端側筒状部12bとなるシート体は、帯状のシート体の一端側の一面に図示しない一方の面状ファスナーが固定され、他端側の他面には、上記一方の面状ファスナーに接合・密着される図示しない他方の面状ファスナーが固定され、これら一方及び他方の面状ファスナーが互いに接合されることにより、図3又は図4に示す上端側筒状部12bとされる。なお、この上端側筒状部12bには、上記固定金具27の後述する左右の折曲用脚部27b,27cが挿通される二つ一組のスリット12dが該シート体の長さ方向に並んで形成されている。
【0039】
そして、上記上端側筒状部12bの外周には、図3又は図4に示すように、一方の内側摺接部材半体25と他方の内側摺接部材半体26が上記固定金具27により固定されている。これら一方及び他方の内側摺接部材半体25,26は、本発明を構成する摺接部材であって、それぞれ樹脂により同一形状に成形されてなるものであり、図5に拡大して示すように、それぞれ上記上端側筒状部12bの外周面に内周面が接触してなる円弧状板部25a,26aと、この円弧状板部25a,26aの外周の中央から突出してなる円弧状凸条部25b,26bと、を備えている。これら一方の内側摺接部材半体25と他方の内側摺接部材半体26は、それぞれ上記上端側筒状部12bの曲率と同じ曲率で円弧状に成形されてなるものであり、互いに端部同士が接近するように上記上端側筒状部12bの外周に固定されることにより、全体でリング状とされるものである。なお、上記それぞれの円弧状凸条部25b,26bの両側面は、それぞれ本発明を構成する摺接面であり、これらの摺接面の一方は、後述する上記第3のカバー13の下端側筒状部13bの内周に固定された一方又は他方の外側摺接部材半体35,36の摺接面の一方に摺接される部位であり、該摺接面の他方は、該一方又は他方の外側摺接部材半体35,36の摺接面の他方に摺接される部位である。そして、上記円弧状板部25a,26aの左右両側には、それぞれ切欠き25c,26cが上記一方の内側摺接部材半体25と他方の内側摺接部材半体26の周回り方向に所定間隔を隔てて形成されている。
【0040】
また、上記固定金具27は、ステンレススチール等の金属材料からなるものであり、図6に示すように、方形状に成形された主板部27aと、この主板部27aの両端からそれぞれ起立してなる折曲用脚部27b,27cとから構成され、上記折曲用脚部27b,27cの上端側中途部はそれぞれの先端が互いに近接するように若干折曲されている。そして、この固定金具27を構成する折曲用脚部27b,27cは、それぞれ上記スリット12dに挿通されるとともに、先端側中途部を所定の器具の操作により、該折曲用脚部27b,27cの先端が互いに近接するように折曲されることにより上記円弧状板部25a,26aを左右両側から把持し、上記一方の内側摺接部材半体25と他方の内側摺接部材半体26とを、上記上端側筒状部12bの外周に固定するものである。
【0041】
次に、上記第3のカバー13の構成について説明する。なお、この第3のカバーは、本発明を構成する第2のカバーである。この第3のカバー13は、図2に示すように、カバー本体13aと後述する摺接部材とを構成要素としてなるものであり、上記カバー本体13aは、可撓性を有する複数のシート体が互いに縫合されることにより、上記第2のアーム4の形状に対応してやや袋状に成形されてなるものであり、該カバー本体13aの下端側の他側には、上記ロボット1の接合部を覆う下端側筒状部13bが形成されている。この下端側筒状部13bは、上下方向に長さを有する上記カバー本体13aの下端側から図2中左方向、すなわち上記第1のアーム3側に僅かに突出してなるものであり、上記カバー本体13aを形成するシート体(符号は省略する。)とは別個に用意された帯状のシート体(符号は省略する。)の端部が、上記図示しない一方及び他方の面状ファスナーが互いに密着されることにより筒状とされ、該筒状とされた帯状のシート体の一側が上記カバー本体13aを形成するシート体に縫合されることにより、上記下端側筒状部13bとされてなるものである。なお、上記カバー本体13aには、該カバー本体13aを第2のアーム4に被せた後に、該カバー本体13aの端部同士を互いに固定する図示しない面状ファスナーが固定されている。図7は、上記帯状のシート体の端部同士を固定することにより円筒状となされた下端側筒状部13bと、後述する摺接部材(一方の外側摺接部材半体35及び他方の外側摺接部材半体36)と、該摺接部材(一方の外側摺接部材半体35及び他方の外側摺接部材半体36)を上記上端側筒状部13bに固定するための複数の固定金具27とをそれぞれ示すものであり、図8は、上記一方の外側摺接部材半体35と他方の外側摺接部材半体36とをそれぞれ示す斜視図である。なお、上記下端側筒状部13bとなるシート体は、図4に示す上記上端側筒状部12bと同じように、帯状のシート体の一端側の一面に図示しない一方の面状ファスナーが固定され、他端側の他面には、上記一方の面状ファスナーに接合・密着される図示しない他方の面状ファスナーが固定され、これら一方の面状ファスナーと他方の面状ファスナーとが接合されることにより、図7に示す下端側筒状部13bとされる。なお、この下端側筒状部13bにも、上述した各固定金具27の上記左右の折曲用脚部27b,27cが挿通される図示しない二つ一組のスリットが該シート体の長さ方向に並んで形成されている。
【0042】
そして、上記下端側筒状部13bの内周には、図7に示すように、一方の外側摺接部材半体35と他方の外側摺接部材半体36が上記固定金具27により固定されている。これら一方及び他方の外側摺接部材半体35,36は、本発明を構成する摺接部材であって、それぞれ樹脂により同一形状に成形されてなるものであり、図8に拡大して示すように、それぞれ上記下端側筒状部13bの内周面に外周面が接触してなる円弧状板部35a,36aと、この円弧状板部35a,36aから内側に突出・起立し互いに対向する円弧状摺接板部35b,35c,36b,36cと、を備えている。これら円弧状摺接板部35b,35c,36b,36cの間隔は、先に説明した一方及び他方の内側摺接部材半体25,26を構成する円弧状凸条部25b,26bの肉厚よりもやや広いものとされている。すなわち、上記円弧状摺接板部35bと円弧状摺接板部35cとの間や、円弧状摺接板部36bと円弧状摺接板部36cとの間は、上記一方の内側摺接部材半体25を構成する円弧状凸条部25b又は他方の内側摺接部材半体26を構成する円弧状凸条部26bが配置される部位である。そして、互いに対向する円弧状摺接板部35bと円弧状摺接板部35cとの各対向面及び互いに対向する円弧状摺接板部36bと円弧状摺接板部36cとの各対向面であって、上記一方の内側摺接部材半体25又は他方の内側摺接部材半体26を構成する円弧状凸条部25b,26bと対向する対向面は、それぞれ本発明を構成する摺接面である。そして、上記円弧状摺接板部35b,35c,36b,36cには、それぞれ切欠き35d,35e,36d,36eが、上記一方の外側摺接部材半体35と他方の外側摺接部材半体36の周回り方向に所定間隔を隔てて形成されている。そして、これら一方の外側摺接部材半体35と他方の外側摺接部材半体36とは、上記下端側筒状部13bに形成された図示しない二つ一組のスリットに挿通された上記固定金具27の脚部27b,27cにより上記切欠き35d,35e,36d,36eが形成された部位にてグリップ(係合)されて、上記下端側筒状部13bの内周に固定されている。
【0043】
したがって、上記第2のカバー12を上記第1のアーム3に装着し、その後に上記第3のカバー13を構成する下端側筒状部13bを該第2のカバー12を構成する上端側筒状部12bの外周に被せ、且つ、上記一方の外側摺接部材半体35に形成された円弧状摺接板部35bと円弧状摺接板部35cとの間、又は上記他方の外周側摺接部材36に形成された円弧状摺接板部36bと円弧状摺接板部36cとの間に、一方の内側摺接部材半体25を構成する円弧状凸条部25b又は上記他方の内側摺接部材半体26を構成する円弧状凸条部26bを挿入させて、該第3のカバー13を上記第2のアーム4に装着させることにより、図9に示すように、上記一方の内側摺接部材半体25又は他方の内側摺接部材半体26と一方の外側摺接部材半体35と他方の外側摺接部材半体36とは、互いに連結した状態となる。この結果、上記ロボット1を構成する上記第2のアーム4が図示しない駆動モータの駆動により回動すると、この第2のアーム4の動作に伴って上記第3のカバー13も回転し、上記一方の外側摺接部材半体35と他方の外側摺接部材半体36とは、上記一方の内側摺接部材半体25を構成する円弧状凸条部25b又は上記他方の内側摺接部材半体26を構成する円弧状凸条部26bによりガイドされながら回動する。この際、上記円弧状凸条部25bや上記円弧状凸条部26bに形成された各摺接面と、上記各円弧状摺接板部35b,35c,36b,36cのそれぞれに形成された摺接面とは、互いに摺接する。
【0044】
したがって、上述した実施の形態に係るロボット用保護カバー11、特に第2のカバー12と第3のカバー13によれば、上記第1のアーム3と第2のアーム4との間に形成された接合部に、外部から塵埃等の異物が侵入することを確実に防止することが可能となる。また、上記第2のカバー12と第3のカバー13とは、上述した連結構造により連結されていることから、例えば、上記第2のアーム4の回動操作中において、該第2のアーム4に装着された第3のカバー13の全部又は一部に対して、上記第2のカバー12から離間される力が作用した場合であっても、上記互いに連結状態が解除され、該第2のカバー12から第3のカバー13が外れてしまうことがなく、ひいては上記第1のアーム3と第2のアーム4との間に形成された接合部が外部に露出し、或いは、上記各摺接面と摺接面とが離間してしまう等の事態を有効に防止することができる。
【0045】
なお、上記実施の形態では、上述した一方の内側摺接部材半体25や他方の内側摺接部材半体26を上記第2のカバー12を構成する上端側筒状部12bの内周に固定し、上述した一方の外側摺接部材半体35や他方の外側摺接部材半体36を上記第3のカバー13を構成する下端側筒状部13bの内周に固定したものを説明したが、本発明は、上記実施の形態とは逆に、上記一方の内側摺接部材半体25や他方の内側摺接部材半体26を上記第3のカバー13を構成する下端側筒状部13bの内周に固定し、上記一方の外側摺接部材半体35や他方の外側摺接部材半体36を上記第2のカバー12を構成する下端側筒状部13bの外周に固定したものであっても良い。また、上記実施の形態では、上記一方の内側摺接部材半体25や他方の内側摺接部材半体26を上記第2のカバー12を構成する上端側筒状部12bの内周に固定する固定手段や、上記一方の外側摺接部材半体35や他方の外側摺接部材半体36を上記第3のカバー13を構成する下端側筒状部13bの内周に固定する固定手段として、上記固定金具27を用いたが、本発明を構成する固定手段は、本発明を構成する摺接部材を上記下側筒状部12bや上側筒状部13bに固定することができるものであれば、特に限定されるものではなく、具体的には、接着剤を使用して接着してなるものであっても良いし、針金等の線材や樹脂製結束具を用いても良い。
【0046】
また、上記実施の形態では、本発明を構成する摺接部材が、一方の内側摺接部材半体25や他方の内側摺接部材半体26、一方の外側摺接部材半体35や他方の外側摺接部材半体36のように、摺接部材をそれぞれ2分割したものであるが、本発明を構成する摺接部材は、上記2分割したものばかりではなく、図10に示す内側摺接部材41や図12に示す外側摺接部材42のように、単一の部材であっても良い。この内側摺接部材41は、軟質樹脂により一体成形されてなるものであって、図10に示すように、所定形状のロボットの図示しない一方のアームの外形形状に沿って筒状に湾曲される前のシート体51の表面に図示しない固定手段を介して固定されたものであり、該シート体51の表面に下面が接している平板部41aと、この平板部41aの一側から起立してなる一方の摺接板部41bと、上記平板部41aの他側から起立してなり上記一方の摺接板部41bと面対向してなる他方の摺接板部41cと、を備えている。そして、上記一方の摺接板部41b及び他方の摺接板部41cのそれぞれ上端から下端側には、逆三角形状の切欠き41d,41eが、該一方の摺接板部41b及び他方の摺接板部41cの長さ方向に亘って所定間隔を置いて形成されている。そして、上記シート体51が一方のアームの外形形状に沿って湾曲されてロボット用保護カバーとされた場合には、図11に示すように、逆三角形状の切欠き41d,41eの面積が増大して上記一方及び他方の摺接板部41b,41cもリング状に湾曲される。上記シート体51と上記内側摺接部材41は、本発明を構成する第1のカバーである。なお、上記シート体51の一側側表面には、一方の面状ファスナー44が固定され、該シート体51の他側側裏面には、上記一方の面状ファスナー44に密着される他方の面状ファスナー45が固定されている。
【0047】
一方、上記外側摺接部材42は、軟質樹脂により一体成形されてなるものであって、図12に示すように、上記一方のアームに対して回動自在に連結された図示しない他方のアームの外形形状に沿って筒状に湾曲される前のシート体52の表面に図示しない固定手段を介して固定されたものであり、該シート体52の裏面に接している平板部42aと、この平板部42aの幅方向に中央から起立してなる中央摺接板部42bと、を備えている。そして、上記中央摺接板部42bには、逆三角形状の切欠き42cが該中央摺接板部42bの長さ方向に亘って所定間隔を置いて形成されている。なお、上記シート体52の一側側表面には、一方の面状ファスナー47が固定され、該シート体52の他側側裏面には、上記一方の面状ファスナー47に密着される他方の面状ファスナー48が固定されている。そして、上記シート体52が他方のアームの外形形状に沿って湾曲されてロボット用保護カバーとされた場合には、図13に示すように、上記中央摺接板部42bもリング状に湾曲され、上記それぞれの切欠き42cの面積は減少する。なお、上記シート体52と上記外側摺接部材42は、本発明を構成する第2のカバーである。また、上記一方及び他方の面状ファスナー44,45と、上記一方及び他方の面状ファスナー47,48は、それぞれ本発明を構成するカバー本体固定手段である。
【0048】
そして、上記第1のカバーを上記一方のアームに装着し、次いで、この第1のカバーを構成する上記一方の摺接板部41bと他方の摺接板部41cとの間に、上記中央摺接板部42bが挿入されるように、上記第2のカバーを上記他方のアームに装着することにより、上記一方のアーム又は他方のアームの何れか一方又は両方が回動した際には、上記外側摺接部材42を構成する中央摺接板部42bの一面は、上記内側摺接板部41を構成する一方の摺接板部41bと他方の摺接板部41cとの対向面の一方に摺接し、該中央摺接板部82bの他面は、該一方の摺接板部41bと他方の摺接板部41cの他方の摺接面に摺接する。
【0049】
したがって、上述した内側摺接板部41と外側摺接板部42とをロボット用保護カバーの部品として使用することにより、上記一方のアームと他方のアームとの間の接続部に塵埃等の異物が侵入したり、各アームの連結部に塗布された潤滑油等が外部に漏出したりすることを有効に防止することができるばかりか、本発明を構成する摺接部材を、先に説明した実施の形態に係る一方の内側摺接部材半体25と他方の内側摺接部材半体26、或いは一方の外側摺接部材半体35と他方の外側摺接部材半体36のように、該摺接部材を分割する必要性はない。さらには、上記内側摺接板部41と外側摺接板部42は、平常時は直線状とされていることから、ロボットの各アームに湾曲して装着される前のシート体51,52に固定する作業も極めて簡便なものとなる。
【符号の説明】
【0050】
1 ロボット
3 第1のアーム
4 第2のアーム
12 第2のカバー
12a カバー本体
12b 上端側筒状部
13 第3のカバー
13a カバー本体
13b 下端側筒状部
25 一方の内側摺接部材半体
25a 円弧状板部
25b 円弧状凸条部
25c 切欠き
26 他方の内側摺接部材半体
26a 円弧状板部
26b 円弧状凸条部
26c 切欠き
27 固定金具
35 一方の外側摺接部材半体
35a 円弧状板部
35b 円弧状摺接板部
35c 円弧状摺接板部
35d 切欠き
35e 切欠き
36 他方の外側摺接部材半体
36a 円弧状板部
36b 円弧状摺接板部
36c 円弧状摺接板部
36d 切欠き
36e 切欠き
41 内側摺接部材
41b 一方の摺接板部
41c 他方の摺接板部
42 外側摺接部材
42b 中央摺接板部
44 一方の面状ファスナー
45 他方の面状ファスナー
47 一方の面状ファスナー
48 他方の面状ファスナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13