【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、第1の発明(請求項1記載の発明)は、少なくとも1つのアームを備えたロボットに装着されるロボット用保護カバーであって、上記ロボットの特定の部位に装着され筒状に成形された第1の筒状部を備えた第1のカバーと、上記特定の部位に対して基端が回動自在に取り付けられたアームに装着されるとともに筒状に成形された第2の筒状部を備えた第2のカバーとを有し、上記第1のカバーを構成する第1の筒状部の内周又は外周と、上記第2のカバーを構成する第2の筒状部の外周又は内周とには、それぞれ互いに摺接する摺接面をそれぞれ備えた摺接部材が各々相対的に固定手段を介して固定されてなることを特徴とするものである。
【0008】
上記第1の発明は、それぞれ摺接面を備えた2つの摺接部材が構成要素とされている。ここで、上記2つの摺接部材を、一方の摺接部材と他方の摺接部材とした場合、これら一方の摺接部材と他方の摺接部材との位置関係は、以下の二つのパターンに分けることができる。第1のパターンは、上記一方の摺接部材が第1のカバーを構成する第1の筒状部の内周に固定されており、上記他方の摺接部材を構成する第2の筒状部の外周に固定されているものである。また、第2のパターンは、上記一方の摺接部材が第1のカバーを構成する第1の筒状部の外周に固定されており、上記他方の摺接部材を構成する第2の筒状部の内周に固定されているものである。そして、ロボットの特定の部位に装着される上記第1のカバーに固定された一方の摺接部材と、アームに装着される上記第2のカバーに固定された他方の摺接部材は、それぞれ互いに摺接する摺接面を備えている。したがって、第1のカバーに形成された筒状部と第2のカバーに形成された筒状部との関係性は、上記第1のパターンによる場合には、該第1のカバーに形成された筒状部の内側に第2のカバーに形成された筒状部が位置することとなり、上記第2のパターンによる場合には、該第1のカバーに形成された筒状部の外側に第2のカバーに形成された筒状部が位置することとなる。
【0009】
そして、この第1の発明では、ロボットを構成するアームが回動した場合には、そのアームの回動動作に伴って、上記第2のカバーも回動するとともに、上記第1の摺接部材と第2の摺接部材とのそれぞれに形成された摺接面同士は、互いに摺接する。したがって、この第1の発明によれば、第1のカバーと第2のカバーとの間の隙間から塵埃等の異物が侵入した場合であっても、先ずは上記2つの摺接部材の一方により遮断され、次に他方の摺接部材により遮断される(異物は、互いに摺接する摺接面を備えた摺接部材を乗り越えなければ内部に侵入することができない)ことから、上記異物がロボットの特定の部位とアームとの間に侵入することを有効に防止することができる。
【0010】
なお、この第1の発明を構成する第1及び第2のカバーは、それぞれ完成されたロボットに装着されるタイプのものばかりではなく、該ロボットを構成する特定の部位に対してアームが組み付けられる前の段階において、該ロボットを構成する特定の部位又はアームに装着されるタイプのものであっても良い。また、上記互いに摺接する摺接面が形成された位置は、ロボットを構成するアームの基端よりも該アームの先端側であっても良いし、該ロボットの特定の部位側であっても良い。またさらに、本発明において、上記ロボットの特定の部位とは、ロボットを構成するも何らの回動動作等の動作を行わない部位ばかりではなく、例えば、一方のアームと他方のアームとが互いに回動自在に連結されてなるロボットにおいて、上記第1のカバーは上記一方のアームに装着される部材であり、上記第2のカバーは上記他方のアームに装着される部材であっても良い。
【0011】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記第1のカバーに固定された摺接部材を構成する摺接面と、前記第2のカバーに固定された摺接部材を構成する摺接面とは、該第1のカバーと第2のカバーとを互いに離間させる力が作用した際には、互いに密着し係合し合う位置関係とされてなることを特徴とするものである。
【0012】
この第2の発明では、前記第1のカバーと第2のカバーとを互いに離間させる力が作用した際には、互いに密着し係合し合う位置関係とされてなることから、ロボットを構成するアームの動作や、ロボットの外形形状と該ロボットを覆うカバー(第1のカバー及び第2のカバー)の寸法等との関係で、例えば、第2のカバーが大きく引っ張られた場合であっても、互いに摺接する摺接面同士の間隔が開いてしまい、異物の侵入予防性能が低下してしまう事態を有効に防止することができる。
【0013】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は第2の発明の何れかにおいて、前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材には、互いに対向する2つの摺接面を有し、他方の摺接部材は、該一方の摺接部材に形成された2つの摺接面の間に位置してなることを特徴とするものである。
【0014】
この第3の発明では、前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材には、互いに対向する2つの摺接面を有している。そして、これら2つの摺接面の間に、他方の摺接部材が位置している。したがって、この第3の発明では、例えば、上記2つの摺接面を有した摺接部材が第1のカバーに固定されている場合には、第2のカバーに固定された摺接部材は、上記2つの摺接面の間に位置している。換言すれば、上記第2のカバーに固定された摺接部材は、上記第1のカバーに固定された摺接部材に形成された2つの摺接面の内の一方の摺接面に摺接する第1の摺接面と、上記2つの摺接面の内の他方の摺接面に摺接する第2の摺接面を有している。
【0015】
したがって、上記第3の発明によれば、外部からの異物は、上記2つの摺接面を経なければロボットの特定の部位とアームとの間に侵入することができないことから、より一層該異物の侵入を防止することができるばかりではなく、アームの回動動作に伴って部分的に偏った張力が第1又は第2のカバーに作用した場合であっても、例えば、第1のカバーに2つの摺接面を有した摺接部材が固定されている場合において、該2つの摺接面の間に位置した第2のカバーの摺接部材が、第1のカバーに固定された摺接部材から外れる等の事態も有効に解消することができる。
【0016】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第3の発明において、前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材は、前記第1の筒状部又は第2の筒状部に沿った円弧状板部と、この円弧状板部の一側から起立してなる第1の円弧状摺接板部と、該円弧状板部の他側から起立してなり上記第1の円弧状摺接板部に対向してなる第2の円弧状摺接板部と、を備え、前記2つの摺接面は、互いに対向した上記第1の円弧状摺接板部と第2の円弧状摺接板部との各対向面であるとともに、該前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか他方の摺接部材は、上記第1の円弧状摺接板部に形成された摺接面に摺接する第1の摺接面と、上記第2の円弧状摺接
板部に形成された摺接面に摺接する第2の摺接面と、を有してなることを特徴とするものである。
【0017】
この第4の発明では、上記一方の摺接部材には、円弧状板部と、第1の円弧状摺接板部と、第2の円弧状摺接板部を備えている。そして、これら第1の円弧状摺接板部と第2の円弧状摺接板部との対向面が、それぞれ摺接面とされている。一方、上記他方の摺接部材は、上記第1の円弧状摺接板部に形成された摺接面に摺接する第1の摺接面と、上記第2の円弧状摺接
板部に形成された摺接面に摺接する第2の摺接面とを有している。すなわち、この第4の発明に係るロボット用保護カバーでは、第1のカバーには2つの摺接面を備え、第2のカバーにも2つの摺接面を備え、ロボット用保護カバーとしては合計4つの摺接面を有しているものであって、一方の摺接部材と他方の摺接部材とが互いに摺接する箇所は全部で2か所とされている。
【0018】
したがって、上記第4の発明による場合であっても、外部から侵入する異物や外部に排出される潤滑油等は、上記第1の円弧状摺接板部、他方の摺接部材及び第2の円弧状板部をそれぞれ乗り越えて移動しなければならないことから、より一層該異物の侵入を防止することができるとともに、第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材とが互いに摺接する箇所は全部で2か所であることから、アームの回動動作に伴って回動する第2のカバーの動作は、該第2のカバーの一部に偏った張力が発生した場合であっても、極めて安定的な回動動作を確保することが可能となる。
【0019】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記第1、第2、第3又は第4の何れかの発明において、前記第1のカバー及び第2のカバーは、それぞれ可撓性を有するシート状のカバー本体と、これらのカバー本体を前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って装着した後に該カバー本体の端部同士を着脱可能に固定するカバー本体固定手段と、を備え、前記各摺接部材は、それぞれ複数の部材に分割された状態で、前記第1のカバー又は第2のカバーに固定されてなることを特徴とするものである。
【0020】
この第5の発明では、前記第1のカバー及び第2のカバーは、それぞれ可撓性を有するシート状のカバー本体と、カバー本体固定手段と、を備えており、このカバー本体固定手段は、カバー本体を前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って装着した後に該カバー本体の端部同士を着脱可能に固定するものである。そして、上記カバー本体固定手段は、少なくともカバー本体の端部同士を着脱可能に固定する機能を備えていれば良く、例えば、該カバー本体の各端部の一方に面状ファスナーの一方を固定し、該端部の他方に面状ファスナーの他方を固定したものであっても良いし、或いは、該カバー本体の各端部のそれぞれに互いに係合する係合部材を設けたものであっても良い。
【0021】
さらに、この第5の発明では、前記各摺接部材は、それぞれ複数の部材に分割された状態で、前記第1のカバー又は第2のカバーに固定されている。これら複数の部材に分割された摺接部材は、それぞれ円弧状に成形された状態でそれぞれ上記カバー本体に固定されたものであっても良いし、該カバー本体が前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って装着される前においては、直線状となされ、前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って撓んだ際に、同じように撓む素材によって成形されたものであっても良い。
【0022】
したがって、この第5の発明によれば、完成されたロボットに対してそのまま装着することができるとともに、カバーを交換する際においても、ロボットを分解する(ロボットを構成する特定の部位からアームを取り外す)ことなく装着することが可能となる。また、この第5の発明によれば、このロボット用保護カバーが装着される特定の部位やアームの形状がいびつな形状であったり凹部や凸部が形成されたりしている場合であっても、それらの形状に対応してカバー本体を撓ませることによって確実にロボットに装着することができるばかりではなく、該ロボットに対してほぼ密着した状態で装着することができる。
【0023】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)は、上記第1、第2、第3、第4又は第5の発明の何れかにおいて、前記固定手段は、前記第1のカバー又は第2のカバーの外側から又は内側から該第1のカバー又は第2のカバーを貫通して前記摺接部材を固定する固定具又は線材であることを特徴とするものである。
【0024】
この第6の発明では、前記固定手段は、前記第1のカバー又は第2のカバーの外側から又は内側から該第1のカバー又は第2のカバーを貫通して前記摺接部材を固定する固定具又は線材であることから、アームが高速で回動したり、或いは上記第1又は第2のカバーがアームの回動動作により全部又は一部に高い張力が作用したりした場合であっても、上記摺接部材が脱落してしまうことを有効に防止することができる。
【0025】
また、第7の発明(請求項7記載の発明)は、上記第5の発明において、前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材は、樹脂を素材としてなり直線状に成形された状態で前記カバー本体に前記固定手段を用いて固定されてなるとともに、該カバー本体が前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って湾曲させられて筒状とされた際には、円弧状に変形されてなることを特徴とするものである。
【0026】
この第7の発明では、前記第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材との何れか一方の摺接部材は、樹脂を素材としてなり直線状に成形された状態で前記カバー本体に前記固定手段を用いて固定されてなるとともに、該カバー本体が前記ロボットの特定の部位の外周又は前記アームの外周に沿って湾曲させられて筒状とされた際には、円弧状に変形されてなるものであることから、カバー本体に対する固定作業が極めて容易になる。すなわち、カバー本体がロボットの外形形状に対応して複数のシート体を縫合する等して成形される場合には、その一部のシート体の一面の所定個所に上記摺接部材を固定する作業が伴うが、こうした摺接部材の固定作業の際に、該摺接部材は直線状とされていることから、円弧状に成形されている摺接部材を固定する作業に比べて格段にその固定作業が容易となる。
【発明の効果】
【0027】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)によれば、第1のカバーと第2のカバーとの間の隙間から塵埃等の異物が侵入した場合であっても、先ずは上記2つの摺接部材の一方により遮断され、次に他方の摺接部材により遮断される(異物は、互いに摺接する摺接面を備えた摺接部材を乗り越えなければ内部に侵入することができない)ことから、上記異物がロボットの特定の部位とアームとの間に侵入することを有効に防止することができる。
【0028】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)では、前記第1のカバーと第2のカバーとを互いに離間させる力が作用した際には、互いに密着し係合し合う位置関係とされてなることから、ロボットを構成するアームの動作や、ロボットの外形形状と該ロボットを覆うカバー(第1のカバー及び第2のカバー)の寸法等との関係で、例えば、第2のカバーが大きく引っ張られた場合であっても、互いに摺接する摺接面同士の間隔が開いてしまい、異物の侵入予防性能が低下してしまう事態を有効に防止することができる。
【0029】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)によれば、外部からの異物は、上記2つの摺接面を経なければロボットの特定の部位とアームとの間に侵入することができないことから、より一層該異物の侵入を防止することができるばかりではなく、アームの回動動作に伴って部分的に偏った張力が第1又は第2のカバーに作用した場合であっても、例えば、第1のカバーに2つの摺接面を有した摺接部材が固定されている場合において、該2つの摺接面の間に位置した第2のカバーの摺接部材が、第1のカバーに固定された摺接部材から外れる等の事態も有効に解消することができる。
【0030】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)による場合であっても、外部から侵入する異物や外部に排出される潤滑油等は、上記第1の円弧状摺接板部、他方の摺接部材及び第2の円弧状板部をそれぞれ乗り越えて移動しなければならないことから、より一層該異物の侵入を防止することができるとともに、第1のカバーに固定された摺接部材と前記第2のカバーに固定された摺接部材とが互いに摺接する箇所は全部で3か所であることから、アームの回動動作に伴って回動する第2のカバーの動作は、該第2のカバーの一部に偏った張力が発生した場合であっても、極めて安定的な回動動作を確保することが可能となる。
【0031】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)によれば、完成されたロボットに対してそのまま装着することができるとともに、カバーを交換する際においても、ロボットを分解する(ロボットを構成する特定の部位からアームを取り外す)ことなく装着することが可能となる。また、この第5の発明によれば、このロボット用保護カバーが装着される特定の部位やアームの形状がいびつな形状であったり凹部や凸部が形成されたりしている場合であっても、それらの形状に対応してカバー本体を撓ませることによって確実にロボットに装着することができるばかりではなく、該ロボットに対してほぼ密着した状態で装着することができる。
【0032】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)では、前記固定手段は、前記第1のカバー又は第2のカバーの外側から又は内側から該第1のカバー又は第2のカバーを貫通して前記摺接部材を固定する固定具又は線材であることから、アームが高速で回動したり、或いは上記第1又は第2のカバーがアームの回動動作により全部又は一部に高い張力が作用したりした場合であっても、上記摺接部材が脱落してしまうことを有効に防止することができる。
【0033】
また、上記第7の発明(請求項7記載の発明)によれば、上記カバー本体に対する固定作業が極めて容易になる。すなわち、カバー本体がロボットの外形形状に対応して複数のシート体を縫合する等して成形される場合には、その一部のシート体の一面の所定個所に上記摺接部材を固定する作業が伴うが、こうした摺接部材の固定作業の際に、該摺接部材は直線状とされていることから、円弧状に成形されている摺接部材を固定する作業に比べて格段にその固定作業が容易となる。