特許第6850056号(P6850056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6850056
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】術具
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20210322BHJP
【FI】
   A61B34/35
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-571565(P2020-571565)
(86)(22)【出願日】2020年9月1日
(86)【国際出願番号】JP2020033086
【審査請求日】2020年12月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】新藤 広樹
(72)【発明者】
【氏名】神山 知季
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−224243(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/250000(US,A1)
【文献】 国際公開第2017/10378(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00 − 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置を行う処置部が少なくとも設けられた本体と、
前記本体に取り付け可能とされ、前記本体の外部からの電力供給に用いられるコネクタを有するカバー部と、
前記コネクタから前記処置部への電力の供給に用いられ、前記本体への前記カバー部の取付けを許容する余剰長さを有する電気配線と、
前記本体に前記カバー部が取り付けられた際に、前記電気配線の配置位置を制限する制限部と、
を備える術具。
【請求項2】
請求項1に記載の術具であって、
前記制限部は、前記カバー部から前記本体に向かって延びる柔軟性を有する長尺状の部材であり、
前記電気配線は、前記制限部の周囲にらせん状に配置された、術具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の術具であって、
前記制限部は、内部を液体が流通可能である樹脂チューブである、術具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、術具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用ロボットに用いられる術具において、電気メスなど電力を用いるものが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
この種の術具では、電気メスなどの処置に用いられる処置部を有する本体と、外部電源からの電力の供給を受けるカバー部とを有するように構成される。
【0004】
カバー部にはコネクタが配置され、当該コネクタが外部電源と電気的に接続することで、外部電源からの電力がコネクタを介して供給される。そして、コネクタと、本体が有する処置部とは、本体とカバー部とにより形成された内部空間に収納された電気配線により電気的に接続される。これにより、処置部に外部電源からの電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−065975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述した術具の組み立てにおいて、あらかじめコネクタと処置部とが電気配線で電気的に接続された状態で、本体にカバー部が組み付けられる。
【0007】
このため、電気配線としては、組付けられた後の術具においてコネクタと本体とを電気的に接続するために必要となる長さよりも長いものが用いられる。
【0008】
そして、本体とカバー部とにより形成された内部空間に収納された電気配線は、組付けられた状態では、必要な長さよりも長いため、その余剰分の長さ(以下、「余剰長さ」とも表記する)だけ空間を要するため、術具の内部に配置された他の部品や配線などと干渉する可能性があった。
【0009】
本開示の一局面は、術具であって、術具の内部において、余剰長さを有する電気配線と他の部品との干渉を抑制することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、術具であって、本体と、カバー部と、電気配線と、制限部とを備える。本体には、医療処置を行う処置部が少なくとも設けられる。カバー部は、本体に取り付け可能とされ、本体の外部からの電力供給に用いられるコネクタを有する。電気配線は、コネクタから処置部への電力の供給に用いられ、本体へのカバー部の取り付けを許容する余剰長さを有する。制限部は、本体に前記カバー部が取り付けられた際に、電気配線の配置位置を制限する。
【0011】
このような構成によれば、術具の内部において余剰分の長さを有するように長く形成された電気配線の配置位置が制限部によって制限される。これにより、制限部により術具の内部において、電気配線の配置位置が制限されることで、電気配線と他の部品との干渉を抑制することができる。
【0012】
また、本開示の別の一態様によれば、制限部は、カバー部から本体に向かって延びる柔軟性を有する長尺状の部材であり、電気配線は、制限部の周囲にらせん状に配置されている。
【0013】
このような構成によれば、制限部の周囲に電気配線がらせん状に配置されることにより、電気配線の配置位置が制限される。さらに、電気配線のらせん状のピッチが変化することにより、制限部の形状に沿って伸縮させることができる。
【0014】
本開示の別の一態様によれば、制限部は、内部を液体が流通可能である樹脂チューブである。
【0015】
このような構成によれば、樹脂製チューブにより電気配線の配置位置が制限される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】術具の全体構成を表した図である。
図2】術具の本体の側面を表した側面図である。
図3】術具の本体の断面を表した斜視図である。
図4】術具の本体の断面を表した側面図である。
図5】術具の本体の内部の電気配線の接続を表した図である。
【符号の説明】
【0017】
1…術具、10…処置部、20…本体、30…カバー部、31…コネクタ、33…蓋部、40…電気配線、50…制限部、60…連結部。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1.構成]
術具1は、手術などの医療行為に用いられる医療機器である。
【0019】
図1から図5までの図に示すように、術具1は、処置部10と、本体20と、カバー部30と、電気配線40と、制限部50と、連結部60と、を備える。
【0020】
図1に示すように処置部10は、術具1において、医療行為の処置に用いられる部分である。言い換えると、処置部10は、術具1において、処置を行う対象と接触する部分である。また、処置部10は、電力の供給を受けて所定の処置を行うために機能を発揮する。処置部10の具体例としては、例えば、手術用電気メスの刃部分として用いられる部分であってもよい。言い換えると、処置部10は、高周波電流を流すことにより発生するジュール熱を利用し、止血を行いながら患者の身体の部位を切開することに用いられる部位であってもよい。なお、処置部10は、電力を受けて機能を発揮するものであれば、手術用電気メスとしての機能を有するものに限定されない。例えば、図1に示すように鉗子形状に形成されていてもよい。
【0021】
連結部60は、処置部10と本体20とを連結する。連結部60は、例えば長尺状の円筒形状に形成され、内部に本体20から処置部10へと電力を供給するための配線が設けられてもよい。
【0022】
また、処置部10が動作を行うために必要な、駆動力を伝達するワイヤなどの部材が連結部60の内部に配置されていてもよい。さらに、処置部10に向かって液体を供給する通水管を有していてもよい。なお、通水管は、内部において例えば洗浄水などの液体を流通させるものであってもよい。通水管が流通させる液体は水に限定されるものではなく、種々の液体であってもよい。
【0023】
図2から図5に示すように本体20には、処置部10が動作を行うために必要な部品等が配置される。
【0024】
本体20及びカバー部30は、少なくとも電気配線40と制限部50とを格納する内部空間を構成する。本実施形態では、本体20には処置部10へ駆動力を伝達する構成が設けられる。さらに、本体20には、連結部60が設けられる。カバー部30は、凹状に形成される。当該凹状のカバー部30は、本体20に取り付けられることにより内部空間を構成する。
【0025】
図2に示すように、カバー部30は、コネクタ31及び蓋部33を有する。
【0026】
コネクタ31は、カバー部30が本体20に組付けられた状態の本体20において、本体20と連結した連結部60とは、反対側の領域に設けられる。言い換えると、コネクタ31と連結部60との間に制限部50が取り付けられている位置を挟むような位置に、コネクタ31は配置される。
【0027】
コネクタ31は、術具1の外部に配置された外部電源から電力の供給を受けることができるように構成される。すなわちコネクタ31は、外部電源が術具1に電力を供給する際に用いられるプラグなどが接続できるような形状に形成されてもよい。なお、コネクタ31の形状は、外部電源が接続できる形状に形成されていれば、凸形状のものであってもよく、凹形状のものであってもよく形状が限定されない。
【0028】
蓋部33は、カバー部30の開口に着脱可能に設けられてもよい。蓋部33は、カバー部30の開口を閉塞する形状を有する。カバー部30には、以下で詳述する制限部50の内部への液体の注入に用いられる開口が形成される。なお、制限部50の蓋部33はカバー部30に開口が形成されていない場合には、設けられなくてもよい。
【0029】
図3図4及び図5に示すように、電気配線40は、コネクタ31と処置部10とを電気的に接続する。なお、電気配線40は、コネクタ31から連結部60の内部の配線を介して処置部10へと電力を供給する。
【0030】
制限部50は、カバー部30から本体20に向かって延びる柔軟性を有する長尺状の部材である。なお、制限部50は電気配線40よりも固い素材が用いられていてもよい。
【0031】
また、制限部50は、例えば、内部を液体などが輸送可能となるように構成されたチューブであってもよい。制限部50のチューブは、例えば、樹脂材料により形成された樹脂チューブであってもよい。制限部50のチューブの第1の端部は、本体20の内部において連結部60側の先端に向かって延びるように、連結部60の円筒形状の内側に配置される。また、制限部50のチューブの第2の端部は、カバー部30側に配置される。また、制限部50のチューブは連結部60の内部に通水管が設けられている場合に、当該通水管に液体を供給するように構成されてもよい。
【0032】
なお、制限部50の形態は、長尺状の部材により形成されるものに限定されるものではなく、チューブ形状を有するものに限定されるものでもない。制限部50は、電気配線40の位置配置を制限するように構成されるものであれば、形状などは特に限定されるものではない。
【0033】
制限部50の第1の端部は、制限部50のチューブの第1の端部は、本体20の内部において連結部60の先端に向かって延びるように、連結部60の円筒形状の内側に配置される一方で、制限部50のチューブの第2の端部はカバー部30側に配置される。
【0034】
電気配線40は、長尺状に延びる制限部50の周面に沿って、らせん状に配置される。
【0035】
電気配線40は、柔軟性を有する線状の部材である。なお、電気配線40は制限部50よりも柔らかい素材が用いられていてもよい。
【0036】
電気配線40の第1の端部は、本体20に取り付けられた円筒状の連結部60の内側を通り、処置部10と電気的に接続された状態で、固定される。電気配線40の第2の端部は、コネクタ31の一部に固定される。また、電気配線40の一部が本体20の内部において、本体20と固定される。電気配線40の一部が本体20の内部において固定される機構は特に限定されないが、例えば、本体20が内部において、電気配線40の一部を挟持する挟持機構を有し、当該挟持機構により電気配線40の一部が挟み込まれることにより固定するものであってもよい。
【0037】
電気配線40の長さは、余剰長さを有するような長さに形成される。すなわち、電気配線40は、処置部10へと電力を供給する際に本体20に固定される部分からカバー部30に配置されたコネクタ31までの長さよりも、電気配線40の本体20に固定される部分から第2の端部までの電気配線40の線方向に沿った長さが余剰長さだけ長くなるように形成される。
【0038】
また、本体20に固定される電気配線40の一部及びコネクタ31に固定される電気配線40の一部はそれぞれ第1の端部及び第2の端部に限定されるものではない。例えば、電気配線40の端部以外の部分が本体20及びコネクタ31にそれぞれ固定されていてもよい。ここで、電気配線40において、当該電気配線40が本体20に固定されている部分と、電気配線40がコネクタ31に固定されている部分との間の直線距離よりも、当該それぞれの位置に固定されている部分の線状方向に沿った長さが余剰長さ分だけ長くなるように構成されてもよい。
【0039】
図5に、本体20の内部における電気配線40による本体20とコネクタ31との電気的な接続を示す。また、電気配線40は、制限部50に巻き付いた状態で、少なくとも一部が制限部50の長手方向に沿って移動可能に配置される。具体的には、たとえば電気配線40のらせん状のピッチが可変となるように配置されてもよい。ここでいう、らせん状のピッチとは、例えば、らせん状に配置された電気配線40の線の一部と、制限部50の長手方向に沿って当該線の一部の位置と隣接した電気配線40の線の一部との、制限部50の長手方向に沿った距離をいう。
【0040】
[2.作用]
<カバー部の本体への取り付け>
まず、制限部50の第1の端部が、本体20側に配置される。また、電気配線40の第1の端部は、本体20において処置部10と電気的に接続される。電気配線40は制限部50の周面に沿って、制限部50の第1の端部とは反対側の端部である第2の端部に向かってらせん状に巻きつけられる。電気配線40の第1の端部と反対側の端部を第2の端部として、電気配線40の第2の端部は、制限部50の第2の端部付近まで巻き付けられる。次に、電気配線40の第2の端部はコネクタ31と電気的に接続される。電気配線40とコネクタ31との電気的な接続は、はんだなどで固定されたものであってもよい。ここで、電気配線40の第2の端部は、引き伸ばされることにより電気配線40のらせん状のピッチが広げられる。言い換えると、制限部50における電気配線40がらせん状に巻きつけられている領域が長くなる。
【0041】
コネクタ31と接続された電気配線40は、カバー部30を本体20に取り付けることにより、電気配線40が引き伸ばされることにより広げられていた、らせん状のピッチが狭められる。言い換えると、制限部50における電気配線40がらせん状に巻きつけられている領域が短くなる。
【0042】
電気配線40は、図5に示すようにらせん状のピッチが狭められた状態で、本体20とカバー部30との間に収納される。そして、電気配線40の当該らせん状の内側、言い換えると、らせん状の中心軸側には制限部50が配置されているため、制限部50に巻き付けられた電気配線40の配置位置は制限部50から離れることが抑制される。
【0043】
[3.効果]
(1)本実施形態の本体20を有する術具1によれば、カバー部30が離れた状態から本体20に取り付けられた状態になったとしても、余剰長さを有する電気配線40が制限部50から離れて、本体20の内部に配置された他の部品と干渉することを抑制することができる。
【0044】
(2)また、本実施形態の本体20によれば、制限部50の周囲に電気配線40がらせん状に配置されることにより、電気配線40の配置位置が制限される。さらに、電気配線40のらせん状のピッチが変化することにより、制限部50の形状に沿って伸縮させることができ、制限部50から配置位置が離れて配置されることが抑制され本体20の内部の部品などと干渉することが抑制される。
【0045】
また、余剰長さ分の電気配線40を巻き取るための巻き取り機構などを本体20に配置する必要がなく、本体20の大きさが大型化することを抑制しつつ、電気配線40が本体20の内部の他の部品と干渉することを抑制することができる。
【0046】
[4.変形例]
(1)上記実施形態では、本体20は、連結部60を介して処置部10と接続される。しかし、術具1の構成としては、処置部10と連結部60と本体20とが一体となって形成されるものであってもよい。
【0047】
(2)また、連結部60を有しない構成であってもよい。すなわち、処置部10と本体20とが直接接続される構成であってもよく、一体となって形成されていてもよい。本体20に処置部10が設けられている構成であってもよい。
【0048】
(3)本体20は内部に移動する部位を備えていてもよい。さらに、当該本体20の内部を移動する部位が移動する範囲、言い換えると当該部位が位置しうる範囲である可動範囲と、制限部50により制限された電気配線40が配置され得る範囲とは重ならないように設定されてもよい。具体的には、可動範囲から離れた位置に制限部50のチューブが位置するように配置されてもよい。
【0049】
(4)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【要約】
術具であって、術具の内部において、余剰長さを有する電気配線と他の部品との干渉を抑制する。術具であって、本体と、カバー部と、電気配線と、制限部とを備える。本体には、医療処置を行う処置部が少なくとも設けられる。カバー部は、本体に取り付け可能とされ、本体の外部からの電力供給に用いられるコネクタを有する。電気配線は、コネクタから処置部への電力の供給に用いられ、本体へのカバー部の取り付けを許容する余剰長さを有する。制限部は、本体に前記カバー部が取り付けられた際に、電気配線の配置位置を制限する。
図1
図2
図3
図4
図5