(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一の実施の形態] 以下、本発明に係る第一の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0010】
一般に、電波の受信強度はRSSI(Receive Signal Strength Indicator)と呼ばれる指標により示すことができる。基本的には、5.9GHz(ギガヘルツ)帯の無線電波を用いた車車間通信の場合には、他の車両が近い距離にあるほど強いRSSIで電波を受信することができる。一方で、車車間通信においては、各車は他の車両へ、自車位置の座標(緯度経度)、進行方向、速度、加速度等の情報を送信する。しかし、ここで送信される自車位置の座標はGPS(Global Positioning System)情報に基づくものであるが、GPS精度にばらつきがあり、それぞれの車ごとに異なる誤差を含む可能性がある。
【0011】
このように、車車間通信環境において他車を含む複数車の先行後続関係を特定する際には、受信した他車の位置情報だけでは先行後続関係を誤らせる可能性のある誤差を含んでいるためその精度は低く留まる可能性がある。そこで、RSSIから推定される距離情報を補助的に利用することで、その精度を高めることができると考えられる。
【0012】
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る車車間通信装置を示す図である。車車間通信装置100は、車車間通信部1と、GPS受信部2(位置情報受信部2)と、演算処理部3と、車車間通信アンテナ4と、GPSアンテナ5と、走行支援制御部6と、記憶部7と、を備える。車車間通信部1は、高周波部11と、変復調部12と、符号復号部13と、を備える。すなわち、車車間通信装置100は、走行支援部6を備えることにより、単なる車車間通信装置ではなく、走行支援装置であるともいえる。
【0013】
高周波部11は、車車間通信アンテナ4を介して所定の周波数の電波(例えば、5.9GHzの電波)を送受信する。そのため、車車間のみならず、路側機との通信も可能である。変復調部12は、高周波部11が受信した電波を復調し、復調データ14として符号復号部13へ受け渡すとともに、RSSIデータを算出して演算処理部3へ受け渡す。具体的には、変復調部12には、受信レベルを検出する受信レベル検出部19を含む。受信レベル検出部19は受信した電波の強度を所定の基準に従ってRSSIデータへと変換し、演算処理部3へ受け渡す。また、変復調部12は、符号復号部13から変調データ15を受け取ると、電波に変調し、高周波部11へ受け渡す。
【0014】
符号復号部13は、送信データを演算処理部3から受け取ると符号化して変復調部12へ受け渡す。また、符号復号部13は、復調データ14を変復調部12から受け取ると、復号して演算処理部3へ受け渡す。なお、本実施形態では、演算処理部3との間で送受信するデータをまとめて送受信データ16と表現している。また、符号復号部13は、変復調部12に対して同期をとるための信号であるFrame Sync18を送信する。
【0015】
演算処理部3は、各種の演算処理を行う。本実施形態においては、演算処理部3は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサやマイコン等のプログラミング可能な演算装置であればよい。また、演算処理部3には、RAM(Random Access Memory)やキャッシュ、レジスタ等の各種の書き換え可能な記憶素子が利用可能に併設されており、後述するRSSIテーブル41は当該記憶素子により構成される記憶部7に記憶される。
【0016】
図2は、第一の実施形態に係る車車間通信装置を搭載する車両の位置関係の例を示す図である。なお、
図2に示す車両の位置関係は、実際の道路上の車両の位置関係ではなく、車車間通信装置100が受信した電波に基づいて推定される位置関係である。
図2では、本発明に係る車車間通信装置100を搭載した自車31と、座標情報において自車31の直前を同一方向に走行する車両である先行車32と、座標情報において先行車32のさらに直前を同一方向に走行する車両である先々行車33と、が示されている。
【0017】
図3は、第一の実施形態に係る演算処理部における演算処理を説明する図である。
図3では、後述する車両の先行後続関係を特定する演算処理を説明するために、自車31が先行車32および先々行車33から受信したデータを
図2に追加して示している。
図3における先行車32は、車両IDが0x1dとされ、その緯度経度は「Lat−F,Lon−F」、先行車32が発する電波の自車31における受信強度はRSSI34、GPS受信部2の緯度経度の誤差半径R
136は50m(PositionConfidence=0100)であるとする。なお、以降は、車両IDが0x1dである車両自体を示す場合には、(0x1d)車両132と表記する。
【0018】
同様に、先々行車33は、車両IDが0x2bとされ、その緯度経度は「Lat−FF,Lon−FF」、先々行車33が発する電波の自車31における受信強度はRSSI35、GPS受信部の緯度経度の図示しない誤差半径は50m(PositionConfidence=0100)であるとする。なお、以降は、車両IDが0x2bである車両自体を示す場合には、(0x2b)車両133と表記する。
【0019】
図4は、第一の実施形態に係るRSSIテーブルのデータ構造例を示す図である。RSSIテーブル41には、車両ID41aごとに、緯度経度41bと、信頼度41cと、RSSI41dと、方位41eと、速度41fと、が対応付けられて格納される。ここで、信頼度41cは、
図5に示すGPS受信部2の測位誤差(PositionConfidence)を示す所定の値である。
【0020】
図5は、第一の実施形態に係るGPS受信部2の測位誤差の基準を示すデータの例を示す図である。ここで、GPSの信頼度とは、車車間通信の標準技術規格に基づく値である。例えばGPS信頼度が「0100」である場合は、そのGPS受信部2が持つ測位誤差半径は、50mであるといえる。その他の測位誤差半径として、PositionConfidenceの値ごとに、予め測位精度が対応付けられている。
【0021】
ここで、
図1から
図4を用いて、第一の実施形態を説明する。自車31の車車間通信部1は、周辺車両から報知されるデータを受信する。一般に、車車間通信システムでは、運転者のプライバシー保護のため、送信データは車両の個体情報とは無関係に匿名化されており、一時的に生成された車両IDと共に報知される。
【0022】
自車31の車車間通信装置100は、周辺にいる(0x1d)車両132から車車間通信のデータを受信する。例えば、車車間通信部1は、
図4のように緯度経度データが「Lat−F(Latitude−Forward),Lon−F(Longitude−Forward)」、GPS信頼度(=PositionConfidence)が「0100」、方位が「East」、車速が「50km/H」となる車車間通信情報を
図3に示すRSSI34の強度で受信して、演算処理部3へ受け渡し、演算処理部3は当該データをRSSIテーブル41に格納する。
【0023】
次に、車車間通信部1は、同じく周辺にいる(0x2b)車両133から緯度経度データ「Lat−FF,Lon−FF」と、GPS信頼度「0100」と、方位「East」と、車速「50km/H」となる車車間通信情報を
図3に示すRSSI35の強度で受信し、RSSIテーブル41に格納する。
【0024】
図6は、第一の実施形態に係る自車の受信電波レベルと復調された受信データのタイミングの例を示す図である。電波レベル51、54は各々(0x1d)車両132、(0x2b)車両133から受信した電波レベルを示し、RSSIデータ52、55は各々(0x1d)車両132、(0x2b)車両133から受信したRSSIデータを示す。受信データ53、56は各々(0x1d)車両132、(0x2b)車両133から復調復号した受信データである。
【0025】
この例を用いて、RSSIテーブル41を作成する過程を説明する。車車間通信装置100の符号復号部13は、(0x1d)車両132のデータを受信したタイミングで、Frame Sync18を出力する。受信レベル検出部19は、Frame Sync18が入力されると、その時の受信信号をA/D(アナログ−デジタル)変換し、RSSIデータ17として演算処理部3へ出力する。このようにして、車両ID、緯度経度、信頼度、RSSIが対応付けられたデータがRSSIテーブル41に格納される。なお、この例では説明の簡略化のため、RSSIテーブル41には先行車と先々行車との情報を格納しているが、他にも周囲に車車間通信可能な車両がある場合には、同様に周囲の車両の情報も格納することはいうまでもない。
【0026】
車車間通信装置100の演算処理部3は、RSSIテーブル41を読み出し、(0x1d)車両132の緯度経度である「Lat−F,Lon−F」と、自車31の緯度経度である「Lat−M,Lon−M」と、の差を用いて自車31と(0x1d)車両132との車間距離D1を計算する。ここでは例えば、
図3に示したように計算結果は、D1=60mとする。
【0027】
次に、演算処理部3は、(0x2b)車両133の緯度経度である「Lat−FF,Lon−FF」と、自車31の緯度経度である「Lat−M,Lon−M」と、の差を用いて自車31と(0x2b)車両133との車間距離D2を計算する。ここでは例えば、
図3に示したように計算結果は、D2=80mとする。
【0028】
そして、演算処理部3は、(0x1d)車両132の測位誤差半径R
1=50mおよび(0x2b)車両133の測位誤差半径R
2=50mと、(0x1d)車両132と(0x2b)車両133との車間距離ΔD(下式(1)にて算出)と、を下式(2)を用いて比較する。
【0029】
ΔD=D2−D1=20m・・・式(1)
【0030】
R
1,R
2 > ΔD・・・・・・・・・式(2)
【0031】
上式(2)が成立する場合、演算処理部3は、(0x1d)車両132のRSSIデータである「0x7a(16進数)」と、(0x2b)車両133のRSSIデータである「0xe5(16進数)」とを比較し、大きいRSSIデータを有する車両を特定する。この例では、車間距離ΔDは測位誤差半径R
1、R
2のいずれよりも小さいから、2台の車両が報知している緯度経度により推定される先行後続関係は正しくない可能性がある。さらには、RSSIは2台の車両が報知している緯度経度上、遠い位置にある(0x2b)車両133の方が大きい。従って、この例では、(0x2b)車両133の方が、(0x1d)車両132よりも自車31に近い蓋然性が高く、演算処理部3は(0x2b)車両133が自車31の直前を走行する先行車であると判定する。この状態を
図7に示す。なお、
図7に示す車両の位置関係は、実際の道路上の車両の位置関係ではなく、車車間通信装置100が受信した電波に基づいて推定される位置関係である。
【0032】
図7は、位置を正しく補正された車両の例を示す図である。演算処理部3により位置が正しく補正された(0x2b)車両133は、自車31の直前距離D´の位置に示されている。なお、距離D´については、後述する算出方法により演算処理部3が算出する。
【0033】
このように処理する事で、GPS誤差が大きい状況においても、先行車を正しく把握して車速、加速度、車両サイズ等を、安全走行支援に活用できる。
【0034】
次に、上述の動作を
図8のフローチャートにより説明する。
【0035】
図8は、先行車判定処理のフローチャート例を示す図である。まず、自車31の演算処理部3は、同一方向前方の車両絞り込みを行う(ステップ61)。具体的には、演算処理部3は、周辺車両から受信したデータの内、方位が自車と同じで、かつ受信した緯度経度から計算して自車より前方を走行しているデータを残す。周辺車両からの車車間通信による報知メッセージに含まれる方位データは、一般的に、0.0125°の単位である。そのため、演算処理部3は、当該処理において、自車との方位の差が±5.0°内の車両データを自車の方位と同じ方位であるとみなして処理する。
【0036】
次に、演算処理部3は、RSSIテーブル41に情報を格納する(ステップ62)。具体的には、演算処理部3は、ステップ61において残した受信データをRSSIテーブル41に格納する。
【0037】
次に、演算処理部3は、先行車両間距離計算を行う(ステップ63)。具体的には、演算処理部3は、自車と(0x1d)車両132との距離D1と、自車と(0x2d)車両133との距離D2と、を算出する。そして、演算処理部3は、距離D1と距離D2との差分距離ΔDを算出する。当該距離D1、D2、ΔDを算出する処理については、
図9を用いて説明する。
【0038】
図9は、先行する他車両間距離算出処理のフローチャート例を示す図である。まず、演算処理部3は、(0x1d)車両132の緯度経度の情報である「Lat−F,Lon−F」と、自車31の緯度経度である「Lat−M,Lon−M」とを用いて自車31と(0x1d)車両132との車間距離D1を計算する(ステップ81)。
【0039】
次に、演算処理部3は、(0x2b)車両133の緯度経度の情報である「Lat−FF,Lon−FF」と、自車31の緯度経度である「Lat−M,Lon−M」とを用いて自車31と(0x2b)車両133との車間距離D2を計算する(ステップ82)。
【0040】
そして、演算処理部3は、距離D1とD2とを比較し、自車31に近い方をNear車両、遠い方をFar車両と判定する(ステップ83)。具体的には、演算処理部3は、自車31と(0x1d)車両132との距離D1と、自車31と(0x2b)車両133との距離D2と、を比較し、小さい方(本例では(0x1d)車両132)をNear車両、大きい方(本例では(0x2b)車両133)をFar車両とする。
【0041】
そして、演算処理部3は、(0x1d)車両132と(0x2b)車両133との車間距離であるΔDを、下式(3)により、D1とD2の差として算出する(ステップ84)。
【0042】
車両間距離ΔD=|D1−D2|・・・・・・式(3)
【0043】
以上が、他車両間距離算出処理の流れである。他車両間距離算出処理によれば、先行車と先々行車との間の車間距離を算出することができる。
【0044】
図8に戻ると、演算処理部3は、計算結果である車両間距離ΔDと、各車両から車車間通信を介して受信した誤差半径Rとを比較する(ステップ64)。なお、誤差半径Rについては、(0x1d)車両132の誤差半径はR
1であり、(0x2b)車両133の誤差半径はR
2であるから、演算処理部3は、ΔDとR
1,R
2を比較する。
【0045】
車間距離ΔDが測位誤差半径R
1、R
2のいずれかよりも小さい場合(ステップ64において「Yes」の場合)には、演算処理部3は、Near車両((0x1d)車両132)のRSSIと、Far車両((0x2b)車両133)のRSSIを比較する(ステップ65)。
【0046】
車間距離ΔDが測位誤差半径R
1、R
2のいずれよりも大きいか同じ場合(ステップ64において「No」の場合)には、演算処理部3は、Near車両が自車31に近い先行車と判定する(ステップ66)。
【0047】
Far車両のRSSIの方が、Near車両のRSSIより大きければ(ステップ65で「Yes」の場合)、演算処理部3は、Far車両の方が自車31に近い、すなわちFar車両が先行車であると判定する(ステップ67)。
【0048】
Near車両のRSSIの方が、Far車両より大きければ(ステップ65で「No」の場合)、演算処理部3は、Near車両の方が自車31に近い、すなわちNear車両が先行車であると判定する(ステップ68)。
【0049】
Far車両が自車31に近いと判定された場合(ステップ67で「Yes」の場合)、演算処理部3は、先行車との車間距離補正処理を行う(ステップ69)。
【0050】
この処理は、測位誤差半径R、補正後の先行車との車間距離をD´、Far車両と自車31との距離をD2とすると、
D´= D2−R×k・・・・・・式(4)
ここで、k : GPS誤差に関する補正係数、0.5<k<1.0 とする。例えば、
図3に示したように、当初計算した自車から先々行車までの距離D2=80m、k=0.8とする場合、D´= 80−50×0.8=40mとなり、(0x1d)車両132との距離D1=60mよりも自車に近い正しい位置を得ることができる。
【0051】
なお、上記車間距離補正処理については、上式(4)に限られるものではない。他の車間距離補正処理方法の例を述べる。自車31から(0x1d)車両132、(0x2b)車両133までのそれぞれの距離が各々D1、D2であり、RSSIの差をΔRs[dB]とすると、フリスの電波伝搬損失公式より、下式(5)が成り立つ。
【0052】
ΔRs=20log(λ/D1)−20log(λ/D2)・・・式(5)
【0053】
従って、20log(D1/D2)=ΔRsとなり、D1とD2の距離の比は下式(6)により求められる。
【0054】
D1/D2=10
(ΔRs/20)・・・式(6)
【0055】
(0x1d)車両132と(0x2b)車両133は、実際は(0x2b)車両133の方が自車31に、ΔRs分だけ近い。従って、上式(6)を用いて、D2を補正した距離D´は、下式(7)であらわされる。
【0056】
補正距離D´=D2×(10
(ΔRs/20))・・・・式(7)
【0057】
例えば、ΔRs= −6.0dB、自車31から(0x2b)車両133までの距離D2=80mの場合、補正距離D´=80×(10
(−6/20))=100×0.501=50mとなる。
【0058】
そして、走行支援制御部6は、補正された車間距離D´に応じて、運転者に対し音声により先行車両への接近を注意喚起する、等の安全走行支援処理を行う(ステップ70)。
【0059】
なお、走行支援制御部6は、これに限らず、例えば運転者に対してディスプレイ等の視覚表示により先行車両への接近を注意喚起するようにしてもよいし、あるいは自車31の制動装置を制御して減速させるようにしてもよい。さらには、走行支援制御部6は、補正された車間距離D´に先行車32と先々行車33との間の車間距離を足して算出される自車31と先々行車33との間の車間距離を用いて、運転者に対して音声またはディスプレイ等の視覚表示により先々行車33への接近を注意喚起するようにしてもよいし、あるいは自車31の制動装置を制御して減速させるようにしてもよい。このようにすることで、先々行車33との車間距離を用いて走行を支援することができるため、より安全なタイミングで予防操作を行うことが可能となる。
【0060】
以上が、第一の実施形態に係る車車間通信装置100である。本実施形態に係る車車間通信装置を用いることで、前方を同方向に走行する車両の先行後続関係を精度高く特定し、地図データが不要な車車間通信装置、およびその車車間通信装置を用いた走行支援装置を安価に実現できる。
【0061】
[第二の実施形態]第二の実施形態においては、一部を除き基本的に第一の実施形態と略同様であり、差異について以下に説明する。
【0062】
図10に、本発明の第二の実施形態に係る車車間通信装置の、自車31の受信電波レベルと、RSSIデータの取得タイミングを示す。
【0063】
図10は、第二の実施形態に係る受信電波レベルとRSSIデータの取得タイミングの例を示す図である。自車31は移動しながら他車両から電波を受信しており、その受信強度は同一受信スロット内でもリップル変動する。このリップル変動の影響を除去して、他車両からの受信レベルを正確に測定する。第二の実施形態に係る変復調部12の受信レベル検出部19は、1受信スロット内をサンプリング周期Ts57で複数回サンプリングしてその平均値をRSSIデータ17とする。
【0064】
図10においては、112μsecの受信スロットを、Ts=13μsecで8回サンプリングして平均値を求めている例が記載されている。このような第二の実施形態に係る車車間通信装置によれば、他車から受信する電波の受信レベルにリップル変動が発生しても、先行車との車間距離を測定可能である。
【0065】
[第三の実施形態]第三の実施形態においては、一部を除き基本的に第一の実施形態と略同様であり、差異について以下に説明する。
【0066】
図11に、本発明の第三の実施形態に係る車車間通信装置の、ベースバンド受信部(
図1の変復調部12の受信系と符号復号部13の受信系を合わせた回路)を示す。
【0067】
図11は、第三の実施形態に係るベースバンド受信部の構成例を示す図である。ベースバンド受信部には、波形等化器91と、遅延分散検出器92と、スイッチ93と、アナログフィルタ94と、A/D変換器95と、デジタルフィルタ96と、シンボルタイミング再生部97と、振幅位相復調部98と、ビタビ復号部99と、が含まれる。
【0068】
車車間通信に用いられる変調多重方式が、振幅位相変調の場合、その受信回路はA/D変換後、波形等化処理、振幅位相復調およびビタビ復調されて受信データ16´に変換される。この復調においてシンボル速度で変調された信号からシンボルタイミングが再生され、波形等化器91へシンボルCLK101として入力される。
【0069】
ここで、自動車のような移動受信ではマルチパスフェージングを受けた信号が受信されるため、第三の実施形態に係るベースバンド受信部では、波形等化器91がフェージング影響を軽減するように、振幅及び位相を補正する。
【0070】
遅延分散検出器92は、受信信号がフェージングで受けた遅延分散を検出し、最も遅延分散が小さい成分、つまり他の車両の車車間通信装置の送信アンテナから自装置の受信アンテナへの直達波成分を分離する。そして、遅延分散検出器92の受信レベル検出部19は、直達波成分の信号レベルを、RSSI−D102としてスイッチ93へ出力する。
【0071】
これと並行して、遅延分散検出器92は、遅延分散の強弱を検出して、直達波成分が他の遅延成分の合計より小さいと判断した場合にスイッチ93を制御して、RSSI−D102をRSSI17として、演算処理部3へ出力する。このような第三の実施形態に係る車車間通信装置によれば、マルチパスフェージングが発生している受信環境においても、他の車両から直接受信する信号強度を測定でき、精度の高い車間距離測定が可能である。
【0072】
[第四の実施形態]第四の実施形態においては、一部を除き基本的に第一の実施形態と略同様であり、差異について以下に説明する。
【0073】
図12に、本発明の第四の実施形態に係る車車間通信装置の、車車間通信装置を示す。
【0074】
図12は、第4実施形態に係る車車間通信部の構成例を示す図である。車車間通信部1´は、高周波部11と車車間通信アンテナ4との間にLNA(Low Noise Amplifier、低雑音増幅器)20と、HPA(High Power Amplifier、高出力増幅器)23と、アンテナスイッチ21と、を含む。また、変復調部12には、AGC(Automatic Gain Control)回路22が含まれ、AGC回路22からはRFAGC24信号が出力される。
【0075】
無線送受信回路には、復調部入力レベルを一定範囲内に維持するために、初段受信増幅器の利得調整を行う回路があり、この調整信号をRFAGC(高周波自動利得制御)信号と言う。既に述べたように自動車のような移動受信では、アンテナから入力される受信信号レベルは変動し、受信レベルが低いとAGC回路22は大きなRFAGC24信号によりLNA20の利得を上げ、受信レベルが高いとAGC回路22は小さなRFAGC24信号によりLNA20の利得を下げる。つまり、受信レベルの振幅変動は、RFAGC24信号の反転信号と等しいといえる。
【0076】
本実施形態における変復調部12の受信レベル検出部19は、A/D変換した受信レベルに、RFAGC24信号の反転信号成分を加算して、RSSIデータ17として演算処理部3へ出力する。このような第四の実施形態に係る車車間通信装置によれば、AGC回路22が高速に補正した受信レベル変動も測定でき、補正の影響を除外して受信強度を適切に把握できるため、精度の高い車間距離測定が可能である。
【0077】
[第五の実施形態]第五の実施形態においては、一部を除き基本的に第一の実施形態と略同様であり、差異について以下に説明する。
【0078】
第一の実施形態におけるGPS信頼度となる測位誤差半径が誤差半径ではなく、誤差楕円の長半径と短半径とで示される場合がある。その場合、演算処理部3は、長半径を誤差半径とする。
【0079】
あるいは同様に、第一の実施形態におけるGPS信頼度となる測位誤差半径が誤差半径では無く、PDOP(Position Dilution Of Precision)で示された場合、演算処理部3は、一般的なアルゴリズムによりPDOPを誤差半径へ変換する。
【0080】
このような第五の実施形態に係る車車間通信装置によれば、さまざまな方式や車種に対応した車車間通信を行い、精度高く車両間の先行後続関係を特定することができる。
【0081】
[第六の実施形態]第六の実施形態においては、一部を除き基本的に第一の実施形態と略同様であり、差異について以下に説明する。
【0082】
図13、
図14、
図15を用いて、本発明に係る車車間通信装置の第六の実施形態を説明する。
図13は、大地で反射した先行車からの電波を受信する例を示す模式図である。自車31には、受信用アンテナ121が搭載されており、先行車32には送信用アンテナ122が搭載されている。送信用アンテナ122から発せられた電波は、アンテナ間で直接送受信される直達波123だけでなく、大地125で反射した大地反射波124としても受信用アンテナ121に到達する。
【0083】
この時の受信用アンテナ121における受信信号レベルは直達波123と大地反射波124とを合成した信号レベルとなり、電波の波長と、送受信間の距離によって決まり、直達波123と大地反射波124の位相が反転しているときは受信レベルが低下する、所謂受信ヌル点となるのが知られている。
【0084】
車車間通信で用いる5.9GHz(ギガヘルツ)の波長で計算すると、このヌル点は、先行車32との車間距離が40mから150mまでとなる範囲では、50m付近(誤差を考慮すると、45m〜55mの範囲)と、105m付近(誤差を考慮すると、100m〜110mの範囲)の2か所に有り、この車間距離において受信したRSSIは著しく小さい値となる。そのため、このような車間距離で受信した電波のRSSIは実際の車間距離を表さない。
【0085】
図14は、第六の実施形態に係る車車間通信装置の構成例を示す図である。第六の実施形態に係る演算処理部3は、ヌル点検出補正部23を有する。
【0086】
図15は、第六の実施形態に係るRSSIテーブルに格納されるデータ例を示す図である。RSSI[dBm]45aは、受信したRSSIデータから演算処理部3がアンテナ受信レベルへ変換したRSSIレベル(例えばdBm表示)であり、メッセージカウンタ45bは、受信メッセージを時系列にカウントするメッセージカウンタである。緯度経度から求めた自車との車間距離[m]45cは、受信した緯度経度を用いて計算した自車との距離を示す情報である。
【0087】
演算処理部3は、受信した前方走行車両の緯度経度から自車との車間距離を計算して記録憶し、同一車両IDのデータは受信した順にメッセージカウンタをインクリメントしてメッセージカウンタ45bとして記憶する。
【0088】
ヌル点検出補正部23は、RSSIテーブル41´のメッセージカウンタ45bが最新である車間距離45cが、予め分かっているヌル点(例えば、45m〜55m、および100m〜110m)に含まれる場合、最新(
図15の例ではメッセージカウンタ=「3」)のRSSI45aをそれより前の二つと比較する。
【0089】
図15の例では、前二つの(RSSI、車間距離)データは、(−46、80)、(−50、130)であり、最新の車間距離は105mである。この場合には、RSSIは、本来であれば−46dBmと−50dBmの間でなくてはならないのに対し、最新のRSSIは「−61dBm」である。そのため、ヌル点検出補正部23は、大地反射波124による受信レベル低下が起きている(例えば閾値は10dB以上)と判断し、車両ID「0x1d」のメッセージカウンタ=「3」のRSSI45aを補正する。
【0090】
このようなRSSIの補正方法の一例としては、ヌル点検出補正部23は、メッセージカウンタ=「1」、=「2」の中間の距離に相当する「RSSI=−46−2.4=−48.4dBm」へと補正することが考えられる。しかし、これに限られず、ヌル点検出補正部23は、メッセージカウンタ=「1」、=「2」の漸近線を算出し、漸近線上の最新のRSSIに相当する値へと補正することも考えられる。このよう第六の実施形態に係る車車間通信装置によれば、大地による反射波の影響を強く受ける状況であっても、先行車との車間距離を精度高く測定可能である。
【0091】
以上が、第一〜第六の実施形態に係る車車間通信装置および走行支援装置である。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態では、略同一方向へ向かって走行する車両であって位置情報から算出される位置が直近となる二台の先行後続関係を特定しているが、これに限られず、方向が逆となる車両を含めるようにしてもよい。このようにすることで、すれ違い走行している車両についても距離を特定できるため、運転者へ警告を示す等、走行支援を行うことが可能となる。または、車線を白線認識処理等により特定し、同一方向であっても別車線の車両は除外するようにしても良いし、あるいは車線毎に直近2台の先行後続関係を特定するようにしてもよい。これにより、車線が異なるために追突するおそれのない車両について追突を予測してしまう等の誤認識を減らし、精度高く走行支援を行うことができるようになる。
【0092】
上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、削除をすることも可能である。
【0093】
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0094】
なお、上述した実施形態にかかる制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えても良い。以上、本発明について、実施形態を中心に説明した。